説明

アルコキシ置換された1,2−ビス−シリル−エタンの製造法

【課題】ビニル置換されたクロロシランの製造に際して生じる廃棄物を、経済的及び生態学的に、アルコキシ置換された1,2−ビス−シリル−エタンに変える方法を提供する。
【解決手段】一般式1のアルコキシ置換された1,2−ビス−シリル−エタンの製造法であって、第1の工程において、一般式2及び3の化合物を含有する混合物を、一般式ROHのアルコールと反応させ、得られた混合物を第2の工程において、還元条件に付して一般式1の化合物を得る方法。一般式1;(RO)(3−n)Si−CH−CH−SiR(3−n)(OR、一般式2;Cl(3−n)Si−CH−CH−SiR(3−n)Cl、一般式3;Cl(3−n)Si−CH=CH−SiR(3−n)Cl[式中、R及びRは、1価の、非置換又はハロゲン置換された、炭化水素基を意味し、nは1〜3の整数を意味する。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,2−ビス−クロロシリル−エタンと1,2−ビス−クロロシシリル−エテンの混合物からのアルコキシ置換された1,2−ビス−シリル−エタンの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコキシ置換された1,2−ビス−オルガノシリル−エタンは、経済的な観点から大変関心を持たれており、かつ、今日では多数の技術的な適用分野を包含し、なかでも、シリコーンシーリング剤又は接着剤のための架橋剤として又は半導体の表面処理に際して用いられる。
【0003】
殊に、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン(CAS16068−37−4)及び1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン(CAS18406−41−2)が上記の製品群の重要な例である。
【0004】
アルコキシ置換された1,2−ビス−シリル−エタンの製造は、久しく公知であり、かつ、これまで2種の基本的に異なる方法が用いられている。
【0005】
第一に、ヒドロシリル化が挙げられ、ここで、アルコキシ−H−シランとエチンとの二重反応(I)(EP477894、EP189197(比較例3)、DE10034894(比較例)、US2637738(実施例2)及びWatanabe等、J.Organomet.Chem.,1980,195(3),第363頁〜第374頁)
【化1】

のみならず、貴金属触媒の存在下でのアルコキシビニルシランとアルコキシ−H−シランとの反応(II)(Pomerantseva等、J.Gen.Chem.USSR,1984,54(2),第316頁〜第318頁)
【化2】

も記載されていた。
【0006】
他方の変法(III)は、Lakhtin等(Russian Journal of General Chemistry,2001,71(8),第1252頁〜第1254頁)が、相応する1,2−ビス−クロロシリル−エタンのアルコキシ化
【化3】

でもって説明している。
【0007】
いずれの変法も、使用される原料(アルコキシ−H−シラン、アルコキシビニルシラン、1,2−ビス−クロロシリル−エタン)が、一部に煩雑な方法で、ことさら製造及び精製されなければならないという著しい欠点がある。
【0008】
Ptを触媒としたCln2(3-n)Si−Hとアセチレンとのヒドロシリル化によるビニル置換されたクロロシラン(Cln2(3-n)Si−CH=CH2)の製造(IV)の場合、副生成物として、なかでも1,2−ビス−クロロシリル−エタン(Cln2(3-n)Si−CH2−CH2−SiR2(3-n)Cln)及び1,2−ビス−クロロシリル−エテン(Cln2(3-n)Si−CH=CH−SiR2(3-n)Cln)が発生する。
【0009】
【化4】

【0010】
これらの副反応を軽減するための方法は、例えばEP785204に記載されていたが、しかしながら、完全に抑制することは可能ではないので、ビニル置換されたクロロシランは、物理的な分離操作(例えば蒸留)によって副生成物から分離されなければならない。なかでも1,2−ビス−クロロシリル−エタン及び1,2−ビス−クロロシリル−エテンを含有する残留混合物は、ビニル置換されたクロロシランの製造に際し液状希釈剤として一部分を使用することができる(DE2131742)。
【0011】
この副反応に際しての不飽和化合物の割合は、副生成物が反応(III)と類似して目的生成物に直接に変換されうることを妨げる。ずっと大きな部分を、それゆえこれまでは、さらに使用することができず、かつ、廃棄されなければならなく、この場合、廃棄のためのさらなる費用が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP477894
【特許文献2】EP189197
【特許文献3】DE10034894
【特許文献4】US2637738
【特許文献5】EP785204
【特許文献6】DE2131742
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Watanabe et al.,J.Organomet.Chem.,1980,195(3)
【非特許文献2】Pomerantseva et al.,J.Gen.Chem.USSR,1984,54(2)
【非特許文献3】Lakhtin et al.(Russian Journal of General Chemistry,2001,71(8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、従来技術の欠点を回避する、アルコキシ置換された1,2−ビス−シリル−エタンの製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の対象は、一般式1
(R1O)n2(3-n)Si−CH2−CH2−SiR2(3-n)(OR1n (1)
のアルコキシ置換された1,2−ビス−シリル−エタンの製造法であって、該製造法に際して、第1の工程において、一般式2及び3
Cln2(3-n)Si−CH2−CH2−SiR2(3-n)Cln (2)
Cln2(3-n)Si−CH=CH−SiR2(3-n)Cln (3)
の化合物を含有する混合物を、一般式4
1OH (4)
のアルコールと反応させ、かつ、第2の工程において、一般式1の化合物及び一般式5
(R1O)n2(3-n)Si−CH=CH−SiR2(3-n)(OR1n (5)
の化合物を含有する、得られた混合物を、還元条件に付して、一般式5の化合物を一般式1の化合物に変え、上記式中、
1及びR2は、1価の、非置換又はハロゲン置換された、炭素原子1〜16個を有する炭化水素基を意味し、かつ、
nは、1、2又は3の値を意味する。
【0016】
この方法により、ビニル置換されたクロロシランの製造に際して生じる廃棄物を、経済的及び生態学的に、一般式1のアルコキシ置換された1,2−ビス−シリル−エタンに変えることができる。
【0017】
基R1及びR2のための例は、直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、2,2,4−トリメチルペンチル基、n−ノニル基及びオクタデシル基;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、アダマンチルエチル基又はボルニル基;アリール基又はアルカリール基、例えばフェニル基、エチルフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基又はナフチル基;アラルキル基、例えばベンジル基、2−フェニルプロピル基又はフェニルエチル基、ならびに上に述べた基のハロゲン化された誘導体、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基及び3−ヨードプロピル基である。有利な基R1及びR2は、炭素原子1〜10個、殊に1〜6個ならびに場合によりハロゲン置換基、殊にフッ素置換基及び塩素置換基を含有する。特に有利な基R1及びR2は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル及びフェニルである。基R1として殊に有利なのは、メチル、エチル、n−プロピル及びn−ブチルである。
【0018】
第1の工程において使用される混合物は、そのつど、一般式2及び3の化合物のみを又は一般式2及び3の種々の異なる化合物を含有してよい。
【0019】
有利には、ここで、基R2が同じであり、かつ、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル及びフェニルの群からの基である化合物を意味する混合物が使用される。
【0020】
有利には、ここで、nが2や3の値をとる化合物を含有する混合物が使用される。
【0021】
特に有利には、ここで、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン及び1,2−ビス−(トリクロロシリル)エテンを含有する混合物もしくは1,2−ビス−(ジクロロメチルシリル)エタン及び1,2−ビス−(ジクロロメチルシリル)エテンを含有する混合物が使用される。
【0022】
第1の工程における一般式4のアルコールとの反応のために、適切には、一般式2及び3の化合物を、1000:1〜1:1000のモル比で、特に有利には100:1〜1:100のモル比で、極めて有利には10:1〜1:10のモル比で含有する混合物が使用される。
【0023】
第1の工程におけるSiCl基と一般式4のアルコールとの反応のために、一般式2及び3の化合物の存在するSiCl基に対するアルコールの適した比が選択される。アルコール:SiClのモル比は、1:1〜1:1000の範囲から、有利には1:1〜1:10の範囲から選択されることができる。
【0024】
第1の方法工程は、不連続的にも連続的にも実施されることができ、ここで、連続的なプロセスが有利である。
【0025】
第1の方法工程は、溶媒又は溶媒混合物を、該溶媒もしくは該溶媒混合物が反応に影響を及ぼさないか又は不所望な副反応につながらない限りにおいて、添加するか又は添加しないで実施されることができる。
【0026】
反応が不連続的に行われる場合、該反応は、好ましくは、適した不活性溶媒又は溶媒混合物中で実施される。反応が連続的に行われる場合、該反応は、好ましくは、溶媒又は溶媒混合物中を添加しないで実施される。
【0027】
第1の方法工程において溶媒が使用される場合には、0.1MPa(絶対)にて120℃までの沸点もしくは沸点範囲を有する溶媒又は溶媒混合物が有利である。
【0028】
不活性溶媒は、有利には、脂肪族もしくは芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、又は上述の溶媒の混合物を含む群から選択される。
溶媒として、目的生成物も使用することができる。
【0029】
炭化水素の群からは、殊にヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル又はトルエンが有利である。
【0030】
第1の方法工程は、触媒を添加するか又は添加しないで実施されることができる。好ましくは、反応は触媒の不存在下で実施される。第1の工程において発生する塩化水素の分離は、化学的にも物理的にも行うことができる。化学的な分離のために、塩化水素を結合するための当業者に公知の全ての方法が使用可能である。有利なのは、塩基、例えば、リチウム、ナトリウム及びカリウムと、炭素原子1〜6個を有する第1級アルコール、殊にメタノール、エタノール及びn−ブタノールとのアルコラート;例えばアルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物、例えばLiOHNaOH、KOH、RbOH、CsOH、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Sr(OH)2、Ba(OH)2;アミド、例えばナトリウムアミド及びカリウムアミド;水素化物、例えば水素化ナトリウム、水素化カリウム及び水素化カルシウム;炭素原子1〜6個を有するアルキル基を有する第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミン、殊にトリメチルアミン及びトリエチルアミン;アンモニアである。
【0031】
有利には、塩化水素が塩基と反応させられ、かつ、反応生成物が分離される。特に有利には、この分離はアンモニアの使用下で行われ、かつ、生じるアンモニウム塩が濾過によって除去される。有利な物理的な分離は、塩化水素の蒸留分離によって行われる。
【0032】
第1の方法工程は、好ましくは、−40〜180℃の温度で実施され、有利には少なくとも0℃で、特に有利には少なくとも20℃で、かつ、有利にはせいぜい150℃で、殊にせいぜい120℃で実施される。
【0033】
第2の方法工程において還元条件を生むために、当業者に公知の全ての方法が、一般式5の化合物を一般式1の化合物に変えるために考慮に入れられる。好ましくは、混合物に、第2の方法工程において、水素化剤、殊に水素が混ぜられる。
例えば、第2の方法工程において、水素との接触反応を行ってよい。
【0034】
触媒として、この反応のために、遷移金属、有利には鉄/白金族(周期律表の第8族〜第10族)の元素及び、そこから特に有利には白金金属(Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt)が考慮に入れられる。
【0035】
触媒は、純粋な金属の形態で、金属塩として又は金属錯体として使用されることができる。そのうえまた、担体材料(例えば活性炭又はAl23)への固定が可能である。それから触媒は、反応混合物中で均一に溶解された状態のみならず不均一でも存在してよい。有利には、固定化触媒、特に有利には活性炭上のパラジウムが使用される。
【0036】
反応混合物中での触媒の濃度は、広範な範囲にわたって変化してよい。有利には、純粋な触媒(担体材料、錯化剤等なし)の濃度は、少なくとも0.001質量%、特に有利には少なくとも0.005質量%、かつ、有利にはせいぜい0.1質量%、殊にせいぜい0.01質量%である。
【0037】
第2の方法工程は、溶媒又は溶媒混合物を、該溶媒もしくは該溶媒混合物が反応に影響を及ぼさないか又は不所望な副反応につながらない限りにおいて、添加するか又は添加しないで実施されることができる。
【0038】
第2の方法工程において溶媒が使用される場合には、0.1MPaにて120℃までの沸点もしくは沸点範囲を有する溶媒又は溶媒混合物が有利である。
【0039】
不活性溶媒は、有利には、脂肪族もしくは芳香族炭化水素、エーテル、アルコール又は上述の溶媒の混合物を含む群から選択される。
【0040】
アルコールの群からは、殊に一般式4のアルコールが有利である。特に有利には、アルコールは、メタノール、エタノール及びn−ブタノールから成る群から選択される。
【0041】
第2の方法工程が溶媒又は溶媒混合物を添加して実施される場合、出発化合物の濃度は、0%と100%の限界値の間ですべての任意の値をとってよい。有利には、濃度は、20〜80%の範囲に、特に有利には50〜70%の範囲にある。
【0042】
第2の方法工程に必要とされる水素は、任意の圧力間隔において提供されることができる。有利には、この圧力間隔は、1〜100バールの間、特に有利には1〜10バールの間にある。
【0043】
第2の方法工程において必要とされる反応温度は、基体及び溶媒もしくは溶媒混合物の選択によって決定される。有利には、室温と反応混合物の沸点の間にある温度が選択される。好ましくは、第2の方法工程における温度は、少なくとも20℃、特に有利には少なくとも50℃、かつ、有利にはせいぜい120℃、殊にせいぜい100℃である。
【0044】
反応経路は、通常の方法、例えばガスクロマトグラフィーによるか又はHPLCによって容易に追跡されることができる。反応継続時間は、一般式5の不飽和化合物の所望の割合が完全に反応するように選択される。
【0045】
双方の本発明による方法工程の間に、精製工程を挟むことができる。有利には、第1の方法工程後の生成物は、第2の方法工程が続けられる前に、蒸留による精製に供される。
【0046】
本発明による方法に従って、有利には、アルコキシ置換された1,2−ビス−シリル−エタン、殊に1,2−ビス(トリアルコキシシリル)エタン、1,2−ビス(ジアルコキシメチルシリル)エタンならびに1,2−ビス(モノアルコキシジメチルシリル)エタンを製造することができ、ここで、アルコキシは、有利にはメトキシ又はエトキシである。
【0047】
このように、本発明による方法に従って、好ましくは、1,2−ビス−(トリクロロシリル)エタン(Cl3Si−CH2−CH2−SiCl3)及び1,2−ビス(トリクロロシリル)エテン(Cl3Si−CH=CH−SiCl3)を含有する混合物が、一般式4のアルコール、エタノールと反応させられ、かつ、得られた反応混合物はパラジウムの存在下で水素により還元に供されて、目的生成物1,2−ビス−(トリエトキシシリル)エタン((EtO)3Si−CH2−CH2−Si(OEt)3)が得られる。
【0048】
特別な実施形態において、本発明による方法は、以下の通り実施される:
好ましくは、一般式2及び3の化合物を含有する混合物が、反応容器に装入され、かつ好ましくは、不活性溶媒、例えばトルエン中に溶解される。
【0049】
引き続き、一般式4のアルコール、例えばエタノールが、溶液に添加され、かつ、ここで反応容器の中味が十分に混合される。好ましくは、アンモニアの添加が続いて行われ、好ましくは、添加されたアンモニアがもはや塩化水素によって結合されなくなるまで行われる。沈殿した塩化アンモニウムが、好ましくは濾過によって除去され、かつ、濾過液は、好ましくは蒸留によって精製される。同様に、第1の方法工程は、一般式2及び3の化合物の混合物と一般式4のアルコールとの、反応塔内での、例えば向流法(Gegenstromverfahren)での連続的な反応によって行うことができる。ここで、生じる塩化水素が、好ましくは蒸留により反応系から除去される。
【0050】
第2の方法工程は、例えば、第1の工程において得られた混合物の、アルコール、例えばエタノールといった溶媒中での水素化によって、連続的にも不連続的にも、好ましくはオートクレーブ中で行うことができる。このために、溶液に、好ましくはパラジウム触媒が添加され、かつ、好ましくは、高められた水素圧の下で反応が実施される。
【0051】
このように、本発明による方法に従って、好ましくは、簡単かつ経済的であることから、例えば1,2−ビス−(トリエトキシシリル)エタンを、1,2−ビス−(トリクロロシリル)エタンと1,2−ビス−(トリクロロシリル)エテンからの混合物から出発して、きわめて優れた収率で製造することができる。
【0052】
前出の式の全ての前出の記号は、それらの意味を、それぞれ互いに無関係に有する。全ての式中で、ケイ素原子は4価である。
【0053】
下記の実施例では、そのつど他に示されていない限り、全ての量及び%記載は、質量を基準としており、全ての圧力は、0.10MPa(絶対)であり、かつ全ての温度は、20℃である。
【実施例】
【0054】
本発明による例1:
温度計、還流冷却器、攪拌機及び供給容器を有する2Lのフラスコ内に、窒素ブランケット下で、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン(79%)、ビス(トリクロロシリル)エテン(12%)、トリクロロビニルシラン(6%)及びトリクロロエチルシラン(3%)を含有する混合物300gを、溶媒としてのトルエン200mL中に装入し、かつ、50〜60℃の温度に調節する。次いで、エタノール300gを、この温度で計量供給し、かつ、さらに60分間、この温度で攪拌する。引き続き、60分間にわたって、生じた塩化水素の大部分を窒素の導入によって放出する。
残留する塩化水素は、ガス状のアンモニアの導入によって結合させられる。アンモニアの取り込みが終了した後、さらに10分間、50〜60℃で攪拌し、反応を完結させる。塩ペーストを濾過分離し、かつ、濾過液を蒸留により(ガラス充填剤が充填された40cmの塔、10:1の還流比を有する自動式の塔頂部、p=1ミリバール、166℃までの底部温度、128〜130℃の生成物混合物の沸点)精製する。
留出物40gを、エタノール20g中に溶解し、かつ、触媒(活性炭粉末上のパラジウム5〜10%、Degussa社のE1525 MA/W 10%)0.02gを添加する。懸濁液に、オートクレーブ中で5バールの水素圧をかけ、かつ、80℃に加熱する。4時間後に、反応を終了し、触媒を濾過分離し、かつ、生成物を蒸留により精製する。97.5%の純度を有する(nD20=1.4090、HCl含量=2.3ppm、ハーゼン色指数=46)生成物1,2−ビス−(トリエトキシシリル)エタンが得られるパラジウムは、生成物中でもはや検出可能ではない。組成物の評価を、そのつどガスクロマトグラフィーにより行う。
【0055】
本発明による例2:
試験の実施及び分析の結果は、例1と比較可能であるが、しかしながら、塩化水素の分離のために、ナトリウムメチラートを使用し、かつ、生じるNaClを濾過分離する。
【0056】
本発明による例3:
試験の実施及び分析の結果は、例1と比較可能であるが、しかしながら、不活性溶媒としてトルエンの代わりに石油エーテルを使用する。
【0057】
本発明による例4:
試験の実施及び分析の結果は、例1と比較可能であるが、しかしながら、不活性溶媒としてトルエンの代わりに生成物1,2−ビス−(トリエトキシシリル)エタンを使用する。
【0058】
本発明による例5:
試験の実施及び分析の結果は、例1と比較可能であるが、しかしながら、パラジウム触媒としてMerk社のパラジウム/活性炭(Pd 10%)を1バールの水素圧で使用する。反応は6時間後に終了した。
【0059】
本発明による例6:
試験の実施及び分析の結果は、例1と比較可能であるが、しかしながら、水素化に際して、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタンと1,2−ビス(トリエトキシシリル)エテンを含有する164gを、エタノール154g中に溶解し、かつ、Heraeus社の10% Pd/C 50% H2O K−02105タイプ5gと1バールの水素圧で反応させる。反応は1時間後に終了した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1
(R1O)n2(3-n)Si−CH2−CH2−SiR2(3-n)(OR1n (1)
のアルコキシ置換された1,2−ビス−シリル−エタンの製造法であって、
その際、第1の工程において、一般式2及び3
Cln2(3-n)Si−CH2−CH2−SiR2(3-n)Cln (2)
Cln2(3-n)Si−CH=CH−SiR2(3-n)Cln (3)
の化合物を含有する混合物を、一般式4
1OH (4)
のアルコールと反応させ、かつ、第2の工程において、一般式1の化合物及び一般式5
(R1O)n2(3-n)Si−CH=CH−SiR2(3-n)(OR1n (5)
の化合物を含有する、得られた混合物を、還元条件に付して、一般式5の化合物を一般式1の化合物に変え、上記式中、
1及びR2は、1価の、非置換又はハロゲン置換された、炭素原子1〜16個を有する炭化水素基を意味し、かつ、
nは、1、2又は3の値を意味する、
アルコキシ置換された1,2−ビス−シリル−エタンの製造法。
【請求項2】
基R1を、メチル、エチル、n−プロピル及びn−ブチルから選択する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
基R2が同じであり、かつ、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル及びフェニルの群からの基を意味する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
第1の工程において使用される混合物が、一般式2及び3の化合物を、100:1〜1:100のモル比で含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
第1の方法工程において、一般式4のアルコールとの反応を連続的に行う、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
第2の方法工程における還元条件が、水素との接触反応を意味する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。

【公開番号】特開2012−107011(P2012−107011A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250654(P2011−250654)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】