説明

アルコール含有物用包装袋

【課題】アルコール濃度が50質量%以上の液体、又はその含浸物を包装する包装袋であって、内容物保存性の促進試験として60℃で一ヶ月間の保存試験にも耐え、且つ保存後、袋の開封時の手切れ性もよく、更に袋に用いる積層体の製造の際の有機溶剤の排出量も低減できるアルコール含有物用包装袋を提供する。
【解決手段】アルコール含有物用包装袋を、基材層、接着層、バリヤー層、アンカーコート層(AC層)、ポリオレフィン系樹脂層を順に積層した積層体をヒートシールして形成すると共に、該積層体のAC層は、不飽和カルボン酸又はその無水物0.01〜5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂を不揮発性水性化助剤を用いずに数平均粒子径1μm以下に分散した水性分散液をバリヤー層に厚み0.1〜2μmに塗布して形成し、ポリオレフィン系樹脂層はAC層の上に押出しコート法又は押し出しラミネート法で積層して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール含有物用包装袋に関し、更に詳しくは、アルコール濃度が50質量%以上の液体、またはその液体の含浸物を安全に密封包装できると共に、包装袋に用いる積層体の製造の際に排出される有機溶剤の量を削減でき、更に、包装された内容物を取り出す際の包装袋の引き裂きによる開封性を向上させたアルコール含有物用包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルコール含有物を密封包装する包装袋としては、例えば、基材層、バリヤー層、シーラント層(通常はポリオレフィン系樹脂層)などを、それぞれ接着層を介して積層した積層体をヒートシールして作製した包装袋が使用されていた。しかし、包装される内容物が、酒類などのようにアルコール濃度が50質量%以下のように比較的低いものの場合は問題ないが、アルコール濃度が50質量%以上のように高い場合は、長期の保存中にアルコール成分が積層体に浸透し、特にバリヤー層とシーラント層の間の接着層を侵す結果、シーラント層がバリヤー層から剥離(デラミネーション)して包装袋が破損する問題があった。
【0003】
上記バリヤー層にシーラント層を積層する方法として、一般的には、バリヤー層面に接着層としてアンカーコート層を設け、その上にシーラント層の樹脂を押し出しコートして積層する方法、またはバリヤー層面に予めフィルム状に製膜したシーラント層のフィルムを、接着層として二液硬化型ポリウレタン系接着剤などのドライラミネート用接着剤を用いて、ドライラミネーション法で貼り合わせて積層する方法が採られている。
【0004】
そして、上記アンカーコート層に用いるアンカーコート剤(以下、AC剤と記載する)としては、有機チタン系AC剤、イソシアネート系AC剤(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系AC剤、ポリブタジエン系AC剤などのAC剤が市販され使用されているが、いずれも内容物が前記高濃度のアルコールを含む場合は、その耐アルコール性が不足し、前記内容物を密封包装した包装袋の保存性の促進試験として、60℃で一ヶ月程度の保存試験を行うとシーラント層がバリヤー層から剥離する問題があった。
【0005】
また、バリヤー層にシーラント層を前記ドライラミネーション法で貼り合わせる場合も同様に、前記ドライラミネート用接着剤の耐アルコール性が不足し、前記保存試験によりシーラント層がバリヤー層から剥離する問題があった。
【0006】
また、前記AC剤やドライラミネート用接着剤は、一部のものを除いて、その塗布液に有機溶剤を使用しており、塗布の際に有機溶剤を排出して環境に悪影響を及ぼす問題もあった。
【0007】
このような問題を解決する手段として、前記バリヤー層にシーラント層の樹脂を押し出しコートして積層する方法において、バリヤー層面にアンカーコート層を設けずに、バリヤー層としてアルミニウム箔を使用すると共に、アルミニウム箔などの金属に優れた接着性を示すとされるエチレン−メタクリル酸のランダム共重合体(EMAA樹脂)をシーラント層の樹脂として使用し、それを直接アルミニウム箔面に押し出しコートして積層する方法で前記積層体を作製し、その積層体で包装袋を作製した結果、その包装袋に前記高濃度のアルコールを含む内容物を密封包装し、且つ前記保存試験を行っても、シーラント層がバリヤー層から剥離することがなく、良好な接着性を有する包装袋を作製することができた。
【0008】
しかし、この包装袋でも、前記保存試験によるシーラント層の剥離(デラミネーション)は防止できたものの、バリヤー層に対するシーラント層のラミネート強度自体は必ずしも十分ではなく、そのために包装袋を開封する際の引き裂き性、即ち、手切れ性がよくないという問題があった。
【0009】
上記のような問題点を完全に解決するために、更に、バリヤー層にシーラント層を押し出しコートなどで積層する際に使用するAC剤について種々研究した結果、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下のように小さくなるように分散した水性分散液であって、且つその水性分散体中には不揮発性水性化助剤を含まないように形成した水性分散液をAC剤として、乾燥時の厚みが0.1〜2μmとなるように薄く塗布することにより、バリヤー層の塗布面がアルミニウム箔などの金属箔や二軸延伸ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックフィルムであってもその面に良好に接着すると共に、その上にシーラント層として押し出しコートなどで積層されたポリオレフィン系樹脂層も良好に接着させ、更にこのAC剤を使用して作製した積層体を用いて製袋された包装袋は、前記のような高濃度のアルコールを含む内容物を密封包装して前記のような保存試験を行ってもシーラント層が剥離することがなく、また、開封時の手切れ性についても良好であることを見出し本発明を完成するに至った。
【0010】
尚、前記のような高濃度のアルコールを含有する内容物を安全に密封包装し、長期保存できる包装袋に関する先行技術文献は見当たらない。
【0011】
只、前記のような構成のポリオレフィン樹脂水性分散体及びその製造方法に関する特許文献はあり、その水性分散体を含有してなるコーティング剤組成物及び接着剤組成物も記載され、その塗膜が耐水性に優れていることも記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
しかし、この特許文献1に記載されたポリオレフィン樹脂水性分散体の塗膜が耐アルコール性にも優れ、包装袋に用いる積層体の製造において、シーラント層の積層の際のAC剤としてこの水性分散体を用いて前記のような高濃度のアルコールに対しても優れた耐性を有する包装袋を製造できることは一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3699935号公報(第1頁〜第15頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前述のような問題点を解決するためになされたものであり、その課題は、アルコール濃度が50質量%以上の液体、またはその液体の含浸物を包装する積層体をヒートシールしてなる包装袋であって、その内容物を密封包装した後、保存性の促進試験として、60℃、一ヶ月間の条件で保存試験をしてもシーラント層のポリオレフィン系樹脂層が剥離することがないという優れた耐アルコール性を有し、また、袋を開封する際の手切れ性もよく、更に、積層体を製造する際の有機溶剤の排出量も少なくできるという、性能、使用適性に優れると共に、環境に対しても悪影響の少ないアルコール含有物用包装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題は、以下の本発明により解決することができる。
【0016】

アルコール濃度が50質量%以上の液体、または該液体の含浸物を包装する包装袋であって、該包装袋が、少なくとも基材層、接着層、バリヤー層、アンカーコート層、ポリオレフィン系樹脂層をこの順に積層してなる積層体で形成され、
且つ、前記積層体のアンカーコート層は、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%含むポリオレフィン重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液であって、且つその水性分散液中には不揮発性水性化助剤を実質的に含まないように形成された水性分散液を、前記バリヤー層面に乾燥時の厚みが0.1〜2μmとなるように塗布、加熱乾燥して形成され、
また、前記ポリオレフィン系樹脂層は、前記アンカーコート層面にポリオレフィン系樹脂を押し出しコートする方法、またはポリオレフィン系樹脂フィルムを同様なポリオレフィン系樹脂を用いて押し出しラミネートする方法で形成されており、また、ポリオレフィン系樹脂層の表面全体に高さが数μmから20μmの凹凸が設けられ、手切れ性が高められていることを特徴とするアルコール含有物用包装袋。
【0017】
前記バリヤー層が、アルミニウム箔、またはアルミニウム酸化物もしくは珪素酸化物を基材フィルムに蒸着してなる蒸着フィルムであることを特徴とする請求項1に記載のアルコール含有物用包装袋。
【0018】
前記基材層が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムで、バリヤー層がアルミニウム箔で、ポリオレフィン系樹脂層が低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載のアルコール含有物用包装袋。

即ち、請求項1に記載した発明は、アルコール濃度が50質量%以上の液体、または該液体の含浸物を包装する包装袋であって、該包装袋が、少なくとも基材層、接着層、バリヤー層、アンカーコート層、ポリオレフィン系樹脂層をこの順に積層してなる積層体で形成され、
且つ、前記積層体のアンカーコート層は、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%含むポリオレフィン重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液であって、且つその水性分散液中には不揮発性水性化助剤を実質的に含まないように形成された水性分散液を、前記バリヤー層面に乾燥時の厚みが0.1〜2μmとなるように塗布、加熱乾燥して形成され、
また、前記ポリオレフィン系樹脂層は、前記アンカーコート層面にポリオレフィン系樹脂を押し出しコートする方法、またはポリオレフィン系樹脂フィルムを同様なポリオレフィン系樹脂を用いて押し出しラミネートする方法で形成されており、また、ポリオレフィン系樹脂層の表面全体に高さが数μmから20μmの凹凸が設けられ、手切れ性が高められていることを特徴とするアルコール含有物用包装袋からなる。
【0019】
請求項2に記載した発明は、前記バリヤー層が、アルミニウム箔、またはアルミニウム酸化物もしくは珪素酸化物を基材フィルムに蒸着してなる蒸着フィルムであることを特徴とする請求項1に記載のアルコール含有物用包装袋からなる。
【0020】
請求項3に記載した発明は、前記基材層が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムで、バリヤー層がアルミニウム箔で、ポリオレフィン系樹脂層が低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載のアルコール含有物用包装袋からなる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載した発明によれば、アルコール含有物用包装袋を前記のように構成しているので、以下に列挙するような作用効果が得られる。
(1)包装袋を形成する積層体にバリヤー層を設けているので、内容物の透過を確実に遮断でき、内容物の保存性を高めることができる。
(2)包装袋のシーラント層をポリオレフィン系樹脂で形成しているのでヒートシール性に優れると共に、耐内容物性、即ち、耐アルコール性にも優れた包装袋とすることができる。
(3)バリヤー層にシーラント層のポリオレフィン系樹脂層を積層する際のバリヤー層面に設けるアンカーコート層を前記のように構成しているので、バリヤー層のアンカーコート層積層面がアルミニウム箔などの金属箔であっても、蒸着フィルムなどのプラスチックフィルム面であっても良好に接着し、且つピンホールなどの欠陥のない均一なアンカーコート層が形成され、アルコールに対する遮断性も向上する。また、アンカーコート層の上にシーラント層のポリオレフィン系樹脂層を積層する際には、ポリオレフィン系樹脂を押し出しコートするか、またはポリオレフィン系樹脂フィルムを同様なポリオレフィン系樹脂を用いて押し出しラミネートする方法で積層しているので、シーラント層はアンカーコート層面に強固に熱接着され、シーラント層のラミネート強度は優れたものになる。
従って、本発明の包装袋に、内容物としてアルコール濃度が50質量%以上の液体、またはその液体の含浸物を密封包装し、60℃、一ヶ月間の保存試験を行ってもシーラント層の剥離(デラミネーション)を防止できると共に、包装袋の開封時の手切れ性も良好にすることができる。
(4)また、アンカーコート層を前記のようなポリオレフィン共重合樹脂の水性分散液で形成しているので、積層体製造時の有機溶剤の排出量を低減することができ、環境に対する悪影響も少なくすることができる。
【0022】
更に、前記ポリオレフィン系樹脂層の表面全体に高さが数μmから20μmの凹凸が設けられ、手切れ性が高められた構成としているので、請求項1に記載した発明の作用効果に加えて、内容物を密封包装した包装袋を開封する際に、一層容易に手で袋を引き裂いて開封できるようになる。
【0023】
請求項2に記載した発明によれば、請求項1に記載した発明のアルコール含有物用包装袋の構成において、前記バリヤー層が、アルミニウム箔、またはアルミニウム酸化物もしくは珪素酸化物を基材フィルムに蒸着してなる蒸着フィルムである構成としているので、請求項1に記載した発明の作用効果に加えて、アルコール含有物用包装袋のガスバリヤー性を一層優れたものにできると同時に、内容物中のアルコール成分の外部への透過も一層少なくでき、内容物の保存性を一層向上させることができる。
【0024】
請求項3に記載した発明によれば、請求項1に記載した発明のアルコール含有物用包装袋の構成において、前記基材層が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムで、バリヤー層がアルミニウム箔で、ポリオレフィン系樹脂層が低密度ポリエチレンである構成としているので、請求項1に記載した発明の作用効果に加えて、前記基材層、バリヤー層、ポリオレフィン系樹脂層のいずれもが耐アルコール性およびアルコールの遮断性に一層優れているので、内容物の保存性に一層優れたアルコール含有物用包装袋とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のアルコール含有物用包装袋に使用する積層体の第1の実施例の構成を示す模式断面図である。
【図2】本発明のアルコール含有物用包装袋に使用する積層体の第2の実施例の構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のアルコール含有物用包装袋は、包装袋の製造に用いる積層体の構成に特徴を有するものであり、例えば、図1、図2に示すような構成の積層体を袋状にヒートシールして製造することができる。従って、袋自体の形式は、特に限定はされず、例えば、三方シール形式や四方シール形式の袋、或いは、ピロー形式の袋などの平袋のほか、スタンディングパウチなどの自立袋、更にはガセット袋などいずれの形式の袋でもよい。
また、本発明のアルコール含有物用包装袋に密封包装される内容物は、先にも記載したように、アルコール濃度が50質量%以上の液体、またはその液体の含浸物であるが、そのアルコール自体については、特に限定はされず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、各種異性体を含むプロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコールなどの一価アルコールのほか、エチレングリコール、ポリメチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールなどいずれであってもよい。
【0027】
以下、図面を用いて本発明を具体的に説明する。
【0028】
図1は、本発明のアルコール含有物用包装袋に使用する積層体の第1の実施例の構成を示す模式断面図である。
【0029】
また、図2は、本発明のアルコール含有物用包装袋に使用する積層体の第2の実施例の構成を示す模式断面図である。
【0030】
また、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの図面に限定されるものではない。
【0031】
図1に示した積層体10は、図において上側から、基材層1、接着層2、バリヤー層3、アンカーコート層4、ポリオレフィン系樹脂層5が順に積層されて構成されている。
【0032】
この積層体10を用いてアルコール含有物用包装袋を製造する際には、ポリオレフィン系樹脂層5をシーラント層として使用するもので、ポリオレフィン系樹脂層5が袋の内面側になるように向けて積層体10を配置し、ヒートシールして製袋するものである。この点は、次の図2に示す積層体20においても同様である。
【0033】
図2に示した積層体20は、その積層構成自体は、前記図1に示した積層体10と同様に、図において上側から、基材層1、接着層2、バリヤー層3、アンカーコート層4、ポリオレフィン系樹脂層5が順に積層された構成であるが、図1に示した積層体10と異なる点は、積層体20を用いてアルコール含有物用包装袋を製造する際に、袋の内面側となるポリオレフィン系樹脂層5の表面全体に、高さが数μm〜20μmの凹凸6が設けられていることである。
【0034】
図1、図2に示した積層体10、20の構成において、アンカーコート層4は、前述したように、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液であって、且つその水性分散体中には不揮発性水性化助剤を実質的に含まないように形成された水性分散液を、前記バリヤー層3面に乾燥時の厚みが0.1〜2μmとなるように塗布、加熱乾燥して形成するものである。
【0035】
シーラント層となるポリオレフィン系樹脂層5は、図1に示した積層体10のようにポリオレフィン系樹脂層5の表面に高さが数μm〜20μmの凹凸を設けていない場合は、前記アンカーコート層4面に、ポリオレフィン系樹脂を押し出しコートする方法、またはポリオレフィン系樹脂フィルムを同様なポリオレフィン系樹脂を用いて押し出しラミネート(所謂、サンドイッチラミネート)する方法で形成することができる。
【0036】
また、図2に示した積層体20のようにポリオレフィン系樹脂層5の表面全体に高さが数μm〜20μmの凹凸を設ける場合は、ポリオレフィン系樹脂層5の積層を押し出しコート法で行い、その際に使用する冷却ロールに、前記高さが数μm〜20μmの凹凸の賦型が可能な凹凸を設けた冷却ロールを使用することにより、生産性よく表面に高さが数μm〜20μmの凹凸を設けたポリオレフィン系樹脂層5を積層することができる。
【0037】
只、押し出しラミネート法でも、ポリオレフィン系樹脂層5の表面全体に高さが数μm〜20μmの凹凸を設けることは可能であるが、その場合は、押し出しラミネートで貼り合わせるポリオレフィン系樹脂フィルムの表面に予め前記凹凸を形成しておくか、またはポリオレフィン系樹脂フィルムをそれと同様なポリオレフィン系樹脂を用いて押し出しラミネート法で貼り合わせた後、熱エンボスなどの方法でポリオレフィン系樹脂フィルム面に前記凹凸を設ける必要があり、その分、積層体20の製造工程が増すため、生産性が低下し経済性の面で不利である。
【0038】
前記ポリオレフィン系樹脂層5の表面全体に設ける高さが数μm〜20μmの凹凸は、積層体20で作製された包装袋に充填、密封された内容物を取り出す際に、袋を手で引き裂いて開封する時の手切れ性を向上させるために設けるものであり、そのためには、前記凹凸は、例えば、四角錐台形状、ピラミッド形などの小さな凸部が碁盤目状などに密に配列され、その凹部が袋の引き裂き方向に直線状につながる形状、または細長い畝状の凸部が密に配列され、その凹部が引き裂き方向に一致するように形成された形状の凹凸であることが一層好ましい。
【0039】
また、凹凸の高さは、ポリオレフィン系樹脂層5の厚みによっても異なるが、数μm〜20μmの高さが好ましく、10μm〜20μmの高さが更に好ましい。
【0040】
凹凸の高さが数μm、例えば、7〜8μmより小さい場合は手切れ性の向上効果を得にくくなり、また、凹凸の高さが20μmを超える場合はヒートシール部の均一性が損なわれ易くなるため好ましくない。
【0041】
図1、図2に示した積層体10、20の構成において、基材層1としては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどを好適に使用できるほか、紙や合成紙なども使用することができる。
【0042】
また、バリヤー層3としては、アルミニウム箔などの金属箔のほか、アルミニウムなどの金属やアルミニウム酸化物、珪素酸化物などの無機酸化物を二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの基材フィルムに蒸着した蒸着フィルム、ポリアクリロニトリルフィルムなどを使用することができる。前記蒸着フィルムを使用する場合、蒸着層の厚みは150〜2000Åの範囲が適当である。
【0043】
前記基材層1とバリヤー層3の間の接着層2は、基材層1とバリヤー層3とを貼り合わせる方法によって異なり、両者をドライラミネーション法で貼り合わせることが接着強度を強くでき、引き裂き性も向上できる点で好ましいが、その場合は接着層2として、例えば、ドライラミネート用の二液硬化型ポリウレタン系接着剤などを使用することができる。
【0044】
また、基材層1とバリヤー層3とを押し出しラミネート法で貼り合わせることも可能であり、その場合は接着層2として、ポリオレフィン系の熱接着性樹脂、例えば、低密度ポリエチレンのほか、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどの単体、またはこれらにハードレジンなどの接着性向上剤をブレンドした樹脂などを使用することができる。
【0045】
以下に、実施例、比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【実施例1】
【0046】
図1に示した構成の積層体10で外形寸法が縦170mm、横130mmの長方形で四方シール形式のアルコール含有物用包装袋を作製することとし、積層体10を基材層1に厚みが12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムと記載する)を用い、バリヤー層3には厚みが7μmのアルミニウム箔(以下、AL箔と記載する)を用い、両者を接着層2として二液硬化型ポリウレタン系接着剤(乾燥時塗布量2.5g/m2 )を用いてドライラミネート法で貼り合わせ、そのAL箔面に、アンカーコート層4として、無水マレイン酸2質量%を含有するポリオレフィン共重合樹脂の水性分散液(分散樹脂の数平均粒子径0.6μm、乳化剤不使用)を使用して、乾燥時の厚みが0.5μmとなるように塗布、加熱乾燥してアンカーコート層4を形成し、その上にポリオレフィン系樹脂層5として、厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレン(以下、L・LDPEと記載)フィルムを、低密度ポリエチレン(以下、LDPEと記載)を押し出し温度295℃で厚み20μmに押し出して、押し出しラミネート法で貼り合わせて作製し、これを上記形状、寸法にヒートシールして実施例1のアルコール含有物用包装袋を作製した。
(上記積層体の構成)
PETフィルム(厚み12μm)/ドライラミネート用接着剤層/AL箔(厚み7μm)/アンカーコート層(厚み0.5μm)/LDPE層(厚み20μm)/L・LDPEフィルム(厚み50μm)
【実施例2】
【0047】
前記実施例1のアルコール含有物用包装袋の構成において、積層体10の構成のうち、バリヤー層3のAL箔(厚み7μm)を厚み12μmのPETフィルムにアルミニウム酸化物を厚み400Åに蒸着した蒸着PETフィルム(厚み12μm)に換え、また、ポリオレフィン系樹脂層5を前記アンカーコート層の上にLDPEを押し出し温度295℃で厚み30μmに押し出しコートして形成した構成に換えたほかは総て実施例1と同様に形成して、実施例2のアルコール含有物用包装袋を作製した。
(上記積層体の構成)
PETフィルム(厚み12μm)/ドライラミネート用接着剤層/アルミニウム酸化物蒸着層・PETフィルム(厚み12μm)/アンカーコート層(厚み0.5μm)/LDPE層(厚み30μm)
【実施例3】
【0048】
前記実施例1のアルコール含有物用包装袋の構成において、積層体10の構成のうち、PETフィルム(厚み12μm)とAL箔(厚み7μm)との貼り合わせを、AL箔の貼り合わせ面にイソシアネート系のAC剤を乾燥時の厚みが0.5μmとなるように塗布、乾燥してアンカーコート層を形成しておいて、両者の間にLDPEを押し出し温度295℃で厚み15μmに押し出して貼り合わせる押し出しラミネート法で行い、また、AL箔面へのポリオレフィン系樹脂層5の積層は、前記アンカーコート層の上にLDPEを押し出し温度295℃で厚み30μmに押し出しコートする方法で行い、その押し出しの際に、冷却ロールとして表面全体に深さが18μmの逆四角錐台形状の凹部を整列して設けた冷却ロールを使用して、LDPE層の表面全体に高さが18μmの四角錐台形状の凸部が碁盤目状に設けられた構成に換えたほかは総て実施例1と同様に形成して、実施例3のアルコール含有物用包装袋を作製した。
【0049】
尚、前記PETフィルムとAL箔との押し出しラミネート法による貼り合わせにおいて、特に記載はしていないがPETフィルムの貼り合わせ面にはコロナ放電処理が施されている。
(上記積層体の構成)
PETフィルム(厚み12μm)/LDPE層(厚み15μm)/イソシアネート系アンカーコート層(厚み0.5μm)/アルミニウム箔(厚み7μm)/アンカーコート層(厚み0.5μm)/LDPE層(厚み30μm)(表面全体に前記凸部の賦型あり)
〔比較例1〕
アルコール含有物用包装袋に用いる積層体を、厚みが12μmのPETフィルムと厚みが7μmのAL箔と厚みが70μmのL・LDPEフィルムとを、この順にそれぞれドライラミネート用の二液硬化型ポリウレタン系接着剤を乾燥時の塗布量が2.5g/m2 となるように用いてドライラミネート法で貼り合わせて作製し、この積層体を実施例1と同様に、外形寸法が縦170mm、横130mmの長方形で四方シール形式の包装袋にヒートシールして比較例1のアルコール含有物用包装袋を作製した。
(上記積層体の構成)
PETフィルム(厚み12μm)/ドライラミネート用接着剤層/AL箔(厚み7μm)/ドライラミネート用接着剤層/L・LDPEフィルム(厚み70μm)
〔比較例2〕
アルコール含有物用包装袋に用いる積層体を、厚みが12μmのPETフィルムとアルミニウム酸化物を厚み400Åに蒸着した厚みが12μmの蒸着PETフィルムとをドライラミネート用の二液硬化型ポリウレタン系接着剤を乾燥時の塗布量が2.5g/m2 となるように用いてドライラミネート法で貼り合わせた後、その蒸着PETフィルムのPETフィルム面にイソシアネート系のAC剤を乾燥時の厚みが0.5μmとなるように塗布、乾燥してアンカーコート層を形成し、その上にLDPEを押し出し温度295℃で厚みが30μmとなるように押し出しコートしてLDPE層を形成して作製し、この積層体を実施例1と同様に、外形寸法が縦170mm、横130mmの長方形で四方シール形式の包装袋にヒートシールして比較例2のアルコール含有物用包装袋を作製した。
(上記積層体の構成)
PETフィルム(厚み12μm)/ドライラミネート用接着剤層/アルミニウム酸化物蒸着層・PETフィルム(厚み12μm)/イソシアネート系アンカーコート層(厚み0.5μm)/LDPE層(厚み30μm)
〔比較例3〕
アルコール含有物用包装袋に用いる積層体を、厚みが12μmのPETフィルムと厚みが7μmのAL箔とをドライラミネート用の二液硬化型ポリウレタン系接着剤を乾燥時の塗布量が2.5g/m2 となるように用いてドライラミネート法で貼り合わせた後、そのAL箔面に直接エチレン・メタクリル酸ランダム共重合体(以下、EMAA樹脂と記載する)を押し出し温度295℃で厚みが30μmとなるように押し出しコートしてEMAA樹脂層を形成して作製し、この積層体を実施例1と同様に、外形寸法が縦170mm、横130mmの長方形で四方シール形式の包装袋にヒートシールして比較例3のアルコール含有物用包装袋を作製した。
(上記積層体の構成)
PETフィルム(厚み12μm)/ドライラミネート用接着剤層/AL箔(厚み7μm)/EMAA樹脂層(厚み30μm)
〔比較例4〕
アルコール含有物用包装袋に用いる積層体を、厚みが12μmのPETフィルムと厚みが7μmのAL箔とをドライラミネート用の二液硬化型ポリウレタン系接着剤を乾燥時の塗布量が2.5g/m2 となるように用いてドライラミネート法で貼り合わせた後、そのAL箔面に直接LDPEを押し出し温度295℃で厚みが30μmとなるように押し出しコートし、押し出しの際に、冷却ロールとして表面全体に深さが18μmの逆四角錐台形状の凹部を整列して設けた冷却ロールを使用して、LDPE層の表面全体に高さが18μmの四角錐台形状の凸部を碁盤目状に形成して積層体を作製し、この積層体を実施例1と同様に、外形寸法が縦170mm、横130mmの長方形で四方シール形式の包装袋にヒートシールして比較例4のアルコール含有物用包装袋を作製した。
(上記積層体の構成)
PETフィルム(厚み12μm)/ドライラミネート用接着剤層/AL箔(厚み7μm)/LDPE層(厚み30μm)(表面全体に前記凸部の賦型あり)
〔アルコール含有物用包装袋の評価試験〕
以上のように作製した実施例1〜3、および比較例1〜4のアルコール含有物用包装袋について、その耐アルコール性、および開封時の手切れ性を下記の方法で試験し、その結果を表1にまとめて示した。
(1)耐アルコール性の試験方法
各包装袋を下記の試験条件で内容物の保存試験を行い、試験後の包装袋の層間剥離、特にシーラント層の剥離の有無、およびシーラント層のラミネート強度を調べた。
【0050】
試験条件1:各包装袋に内容物としてエチルアルコール70質量%水溶液を200ml充填し、脱気シールにより密封した後、60℃で一ヶ月間の保存試験を行った。
【0051】
試験条件2:各包装袋に内容物として100質量%のメチルアルコールを200ml充填し、脱気シールにより密封した後、60℃で一ヶ月間の保存試験を行った。
【0052】
試験条件3:各包装袋に内容物としてエチルアルコール70質量%水溶液を含浸させた脱脂綿を十分な量に充填し、脱気シールにより密封した後、60℃で一ヶ月間の保存試験を行った。
【0053】
尚、シーラント層のラミネート強度は、引張試験装置(テンシロン)を用いて引張速度50mm/分、試料幅15mmで測定した。
(2)開封時の手切れ性の試験方法
前記内容物の保存試験を行った後の各包装袋について、包装袋の上部の一方の側部のヒートシール部にノッチを設け、そのノッチを始点として袋の上部を横方向に手で引き裂き、その引き裂き時の引き裂き抵抗の大きさ、引き裂き方向の直線性、引き裂かれた引き裂端にシーラント層の剥がれが発生しているか否かを総合的に調べ、下記の基準で手切れ性を評価した。
(手切れ性の評価基準)
優れる:引き裂き抵抗が小さく、引き裂き方向が略直線状で、引き裂き端にシーラント層の剥がれ殆ど発生していないもの。
良好:引き裂き抵抗が中程度で、引き裂き方向に大きな曲がりがなく、引き裂き端のシーラント層の剥がれが僅かなもの。
劣る:引き裂き抵抗がやや大きく、引き裂き方向に曲がりがあり、引き裂き端のシーラント層の剥がれもやや多いもの。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示した試験結果から明らかなように、実施例1、2、3のアルコール含有物用包装袋は、耐アルコール性に関して、促進試験として前記試験条件1、2、3のような過酷な条件で保存試験をしても、いずれもシーラント層の剥がれはなく、また、シーラント層のラミネート強度についても3.9〜4.7N/15mm幅と高い強度を維持しており、耐アルコールに優れていた。
【0056】
また、包装袋開封時の手切れ性についても、シーラント層のラミネート強度が高いこともあって、実施例1、2のアルコール含有物用包装袋は、上記評価基準で良好であり、特に、実施例3のアルコール含有物用包装袋は、シーラント層のLDPE層に前記凹凸が設けられているため優れていた。
【0057】
これに対して比較例1〜4のアルコール含有物用包装袋のうち、比較例1、2、4のアルコール含有物用包装袋は、前記保存試験でいずれもシーラント層の剥がれが発生しており、耐アルコール性に劣っていた。唯一比較例3のアルコール含有物用包装袋は、シーラント層の剥がれは無かったが、シーラント層のラミネート強度が3.1〜3.5N/15mm幅で低いため、開封時の手切れ性が劣っており好ましくなかった。
尚、前記試験とは別に、実施例3と比較例3のアルコール含有物用包装袋について、その積層体の引裂荷重をエルメンドルフ引裂試験機により、10枚重ねで測定したところ、実施例3の積層体は0.23Nで、比較例3の積層体は0.42Nであり、約2倍近い差があり、実施例3の包装袋が手切れ性に優れることを裏付け結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のアルコール含有物用包装袋は、前述したように、特に、アルコール濃度が50質量%以上の液体、またはその液体の含浸物を包装するための包装袋として好適に使用できるものであるが、その性能を有効に利用できる用途であれば、内容物や用途などに関して特に制限はない。
【符号の説明】
【0059】
1…基材層
2…接着層
3…バリヤー層
4…アンカーコート層
5…ポリオレフィン系樹脂層
6…高さが数μm〜20μmの凹凸
10、20…積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール濃度が50質量%以上の液体、または該液体の含浸物を包装する包装袋であって、該包装袋が、少なくとも基材層、接着層、バリヤー層、アンカーコート層、ポリオレフィン系樹脂層をこの順に積層してなる積層体で形成され、
且つ、前記積層体のアンカーコート層は、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%含むポリオレフィン重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液であって、且つその水性分散液中には不揮発性水性化助剤を実質的に含まないように形成された水性分散液を、前記バリヤー層面に乾燥時の厚みが0.1〜2μmとなるように塗布、加熱乾燥して形成され、
また、前記ポリオレフィン系樹脂層は、前記アンカーコート層面にポリオレフィン系樹脂を押し出しコートする方法、またはポリオレフィン系樹脂フィルムを同様なポリオレフィン系樹脂を用いて押し出しラミネートする方法で形成されており、また、ポリオレフィン系樹脂層の表面全体に高さが数μmから20μmの凹凸が設けられ、手切れ性が高められていることを特徴とするアルコール含有物用包装袋。
【請求項2】
前記バリヤー層が、アルミニウム箔、またはアルミニウム酸化物もしくは珪素酸化物を基材フィルムに蒸着してなる蒸着フィルムであることを特徴とする請求項1に記載のアルコール含有物用包装袋。
【請求項3】
前記基材層が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムで、バリヤー層がアルミニウム箔で、ポリオレフィン系樹脂層が低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載のアルコール含有物用包装袋。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−100132(P2013−100132A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−259700(P2012−259700)
【出願日】平成24年11月28日(2012.11.28)
【分割の表示】特願2006−281058(P2006−281058)の分割
【原出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】