アルコール揮散剤
【課題】アルコールガスの揮散を阻害することなく、食品へのインク等の付着のおそれのないアルコール揮散剤を提供すること。
【解決手段】通気性を有するプラスチックフィルムからなる外包材と、アルコールガス透過性材料からなる内包材とを、外包材と内包材の間に空隙を有するよう重ね合わせ、内包材の内面同士が対向するように外包材と内包材の周縁部を接着して構成された包装袋の中に、アルコール吸着体を含有させてなるアルコール揮散剤を提供する。
【解決手段】通気性を有するプラスチックフィルムからなる外包材と、アルコールガス透過性材料からなる内包材とを、外包材と内包材の間に空隙を有するよう重ね合わせ、内包材の内面同士が対向するように外包材と内包材の周縁部を接着して構成された包装袋の中に、アルコール吸着体を含有させてなるアルコール揮散剤を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、密封包装内又は密封容器内に食品と共に封入して用いるアルコール揮散剤に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来から食品を保存するための保存剤として、乾燥剤、酸素吸収剤、アルコール揮散剤等の包装系内の雰囲気を調節するものが知られている。その中でもアルコール揮散剤は、カビの増殖抑制効果が高く、パン類や菓子類を中心に広く普及している。
【０００３】
食品の保存に用いられるアルコール揮散剤は、エタノールを雲母やシリカ等の吸着材に吸着させたアルコール吸着体をアルコールガス透過性の小袋に充填したものであり、食品と共に封入し、包装系内でアルコールガスを揮散させることにより食品の保存性を向上させるものである。
【０００４】
アルコール揮散剤の包装袋としては、有孔または無孔のプラスチックフィルムや、不織布、紙などの材料が用いられているが、現在、市場に流通しているアルコール揮散剤は、特許文献１に記載されるように、食品との接触面に耐水・耐油加工が施された紙を使用したものが主流となっている。
【０００５】
食品との接触面に紙を使用したアルコール揮散剤は生産性に優れ、アルコールガスが徐々に揮散されるという利点を有する反面、耐水・耐油加工の際に塗布された撥水剤や撥油剤が、アルコールの作用によって食品に付着するという問題がある。また、紙表面に製品名等が印刷されているため、食品にインクが転写し商品価値が損なわれるおそれがあった。
【０００６】
撥水剤やインク等の付着を防止するために、有孔プラスチックフィルムと不織布または紙とを積層し、食品との接触面をプラスチックフィルムとした包装材も提案されているが、有孔プラスチックフィルムと不織布または紙が密着して一体化していることから、不織布または紙から揮散するアルコールがプラスチックフィルムの孔以外の部分により遮断されるため、アルコールの揮散が阻害され、食品の保存効果が十分に得られないという問題があった。
【０００７】
従って、アルコールガスの揮散を阻害することなく、食品へのインク等の付着のおそれのないアルコール揮散剤が望まれていた。
【特許文献１】特公平４−２１５８６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
本発明は、従来のアルコール揮散剤において問題となっていた、印刷インク、撥水剤、撥油剤などの食品への付着を防止すると共に、保存効果に優れたアルコール揮散剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
本発明者等は、アルコール揮散剤の包装袋について鋭意研究した結果、特定の材料からなる外包材と内包材を用いて、外包材と内包材の間に空隙を有するよう重ね合わせ、内包材の内面同士が対向するように外包材と内包材の周縁部を接着して包装袋を構成することにより、アルコールガスの揮散を阻害することなく、印刷インク等が食品に付着するという不具合が解消されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【００１０】
すなわち本発明は、通気性を有するプラスチックフィルムからなる外包材と、アルコールガス透過性材料からなる内包材とを、外包材と内包材の間に空隙を有するよう重ね合わせ、内包材の内面同士が対向するように外包材と内包材の周縁部を接着して構成された包装袋の中に、アルコール吸着体を含有させてなるアルコール揮散剤を提供する。
【００１１】
以下に本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【００１２】
図１に示すように、本発明のアルコール揮散剤の包装袋１は外包材２と内包材３との二重構造で構成される。内包材３は内面同士が対向するように周縁部４で外包材２と共に接着され、周縁部４以外の部分では、外包材２と内包材３の間には空隙５が設けられており、外包材２と内包材３は密着・一体化していない。内包材３の内部には、アルコールを吸着したアルコール吸着体６が充填されている。なお、本発明において空隙とは外包材と内包材との間にアルコールガスが流通し得る空間が存在することを意味し、外包材と内包材とが部分的に接着されたものであってもアルコールガスが流通し得るものは、本発明の範囲に属する。
【００１３】
外包材２は通気性を有するプラスチックフィルムからなる。通気性を有するプラスチックフィルムは、アルコールを含む気体を透過させるプラスチックフィルムであれば特に限定されず、ガスバリア性フィルムに孔を穿設したもの、あるいはガス透過性の有孔または無孔フィルムのいずれもが使用可能であるが、強度に優れる点から、ガスバリア性またはガス透過性フィルムに孔７を穿設し開孔させたものが好ましく使用される。
【００１４】
このような外包材２を構成するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ビニロン、セロファン、アルミ、酸化アルミまたはシリカの蒸着フィルム、およびこれらの２種以上を積層したフィルムが例示され、その中でも強度、ヒートシール性およびコストバランスの点で優れた、ポリエチレンテレフタレートの単層フィルム及びポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンおよび延伸または無延伸のポリプロピレンの二種以上の積層フィルムに孔を穿設したものが好ましく使用される。特に、外包材２を構成するプラスチックフィルムとしては、図１に示すように、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）８にポリエチレンを積層し、内包材３と対向する面にポリエチレン（ＰＥ）層９を配設したものがより好ましく使用される。
【００１５】
プラスチックフィルムの穿設方法としては、例えば加熱針、剣山状の金属ブラシ金型、レーザー光等を用いた方法が採用される。
【００１６】
孔を設ける場合の孔径は特に限定されず、又、穿設される孔７の数は、孔径、アルコール揮散剤のサイズ、アルコール吸着体量や、外装袋の両面に開孔するか片面のみに開孔するかなどによって適宜定めればよいが、外包材のガーレ式透気度が３００００ｓ／１００ｍｌ以下、好ましくは１００〜２００００ｓ／１００ｍｌとなるように、孔径及び孔数を設定するのが良い。外包材の透気度が３００００ｓ／１００ｍｌを越えれば、内包材から揮散したアルコールガスが、外包材を通気し難いことにより阻害される傾向がある。
【００１７】
適当なアルコール揮散量を達成するためには、例えば、アルコール吸着体０．３〜３ｇ程度を含有し、サイズが４．５ｘ６ｃｍのアルコール揮散剤の外包材の両面に孔を穿設する場合、孔径１０〜１０００μｍ程度の孔を１平方センチメートルあたり１〜３０個程度穿設するとよい。
【００１８】
本発明において、ガーレ式透気度は王研式透気度試験機（旭精工（株）製）で測定される。
【００１９】
孔７の形状についても限定されるものではないが、包装袋の強度の点で円形または楕円形が好ましい。
【００２０】
また、外包材２として使用可能な通気性を有する無孔フィルムをとしては、セロファン、ナイロン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。通気性を有する無孔フィルムを使用する場合、特に孔を穿設する必要はないが、アルコール揮散量を調整するために孔を穿設するのが好ましい。
【００２１】
外包材の厚さは好ましくは２０〜５０μｍである。
【００２２】
内包材３としては、アルコールガス透過性の材料であれば特に限定されず、有孔および無孔フィルムの他、不織布、紙等が使用可能である。好ましい内包材３としては、アルコールおよびアルコール吸着体の漏れ防止の点から、ガス透過性の無孔シートが挙げられる。ガス透過性の無孔シートとしては、エチレンまたは酢酸ビニルの重合体フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、不織布、紙などが使用可能であるが、強度やヒートシール性に優れ、コストバランスの点においても有利であることから、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム（ＥＶＡ）１０と不織布または紙１１との積層シートが好ましく使用される。この場合好ましくは、内包材の不織布または紙側を外包材と対向させる。
【００２３】
内包材３の積層シートに使用する場合の、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムの厚みは、１５〜３５μｍであるのが好ましく、２０〜３５μｍであるのがより好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムの厚みが１５μｍ未満の場合には強度が不十分となる傾向があり、３５μｍを超える場合にはアルコールの揮散が阻害され、食品の保存効果が不十分になる傾向がある。
【００２４】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムは、無孔フィルムとして用いるのが好ましいが、孔を設けた有孔フィルムとして用いてもよい。
【００２５】
内包材３を積層シートとする場合、有孔フィルムと不織布又は紙とを積層してもよく、有孔フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンなどのプラスチックフィルムに孔を穿設したものが使用できる。
【００２６】
上記積層シートに使用する不織布としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、各種ナイロン等の材質からなるものが挙げられる。ポリエチレンテレフタレートは単一成分であってもイソフタル酸等を含んだ共重合体であってもよい。またポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン等の単一成分であっても、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセンおよびオクテン等のオレフィン類との共重合体であってもよく、また、オレフィン以外の成分との共重合体であってもよい。その中でも不織布としては２軸延伸ポリプロピレンからなるものが好ましい。また紙としては、和紙、洋紙、レイヨン紙、化繊布、レイヨンと化繊布の混合紙などが挙げられ、その中でも洋紙が好ましい。
【００２７】
これらの不織布や紙は、撥水剤や撥油剤によって耐水・耐油加工されたものであってもよいが、本発明においては外包材によって内包材が覆われるため、耐水・耐油加工する必要はなく、食品汚染のおそれがないことから、耐水・耐油加工されていない不織布または紙が好ましい。
【００２８】
不織布または紙の厚みは、いずれも目付量が１５〜７０ｇ／ｍ２のものが好ましく、２０〜５０ｇ／ｍ２のものがより好ましい。不織布または紙の厚みが１５ｇ／ｍ２未満の場合はヒートシール時に破損するおそれがあり、７０ｇ／ｍ２を超える場合はヒートシールによる製袋が困難となる傾向がある。
【００２９】
本発明のアルコール揮散剤においては、外包材２と内包材３とが密着（一体化）されず、その間に空隙５を有している。外包材２と内包材３の間に空隙５を設けることによって、内包材３を介して揮散したアルコールガスが空隙５に充満し、外包材２の孔７を通過して食品を封入した密封容器内に拡散する。従来の空隙を有さない二層シートでは、外層の孔以外の部分によって内層からのアルコールの揮散が阻害されていたが、本発明のように内包材と外包材との間に空隙を設けることにより、外包材によってアルコールの揮散が阻害されることがなく、また揮散量を容易に調整することができる。
【００３０】
外包材と内包材のアルコールガス透過量は、特に限定されないが、外包材のアルコールガス透過量が内包材のアルコールガス透過量以上となるようにするのがアルコール揮散率を調整しやすい点で好ましい。アルコールガス透過量の目安としては、温度４０℃、湿度５０％の環境下における２４時間後の透過量が、外包材が５０ｇ／ｍ２以上、内包材が２０ｇ／ｍ２以上があるのが好ましく、外包材のアルコールガス透過量が内包材より、３０ｇ／ｍ２以上大きいことが好ましい。
【００３１】
本発明のアルコール揮散剤に製品名等の印刷を施す場合は、外包材２の食品と接触する面以外に印刷を施せばよく、外包材がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンおよび延伸または無延伸のポリプロピレンの二種以上の積層フィルムの場合、積層面のいずれかの面に印刷すればよい。例えば、図１の外包材２において、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ８）又はポリエチレン（ＰＥ９）のいずれか一方に印刷し、他方のフィルムを印刷面１２に積層することによって印刷面１２と食品とが接触することがなく、食品へのインクの付着が防止される。例えば、外包材のポリエチレンテレフタレートフィルムに印刷し、その印刷面にポリエチレンを積層するのがよい。
【００３２】
外包材２が単層フィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレートの単層フィルムからなる場合、外包材２の内包材と対向する面に印刷を施すことによって、印刷面と食品との接触を阻止し得る。
【００３３】
また、印刷を施す外包材２の印刷面よりも外側の層は透明フィルムであればよく、無色あるいは有色透明フィルムを目的に応じて適宜採用すればよい。
【００３４】
本発明のアルコール揮散剤において周縁部４の接着方法としては、ヒートシール、接着剤等の方法が挙げられるが、生産効率の点でヒートシールによる接着が好ましい。また、ヒートシールによる製袋方法には折り込み三方シールおよび四方シールがあり、本発明においてはいずれの製袋方法でもよいが、様々なサイズの袋を効率良く製造できる点やヒートシール時のトラブルが少ない点で折り込み三方シール包装体とするのが好ましい。
【００３５】
本発明のアルコール揮散剤に使用するアルコールとしては特に制限はなく、一般に食品工業用途に用いられているエタノールのいずれを用いてもよく、変性剤を含有するものであってもよい。
【００３６】
本発明のアルコール揮散剤において、内部に封入するアルコール吸着体に使用する吸着材は、アルコールを吸着することが可能であれば特に限定されず、シリカ、焼成雲母、バーミキュライト、タルク、ゼオライト、パーライト、ベントナイト、珪藻土、アルミナ、不織布、パルプ等、従来からアルコール揮散剤に使用されているものを使用することができる。その中でもシリカ、焼成雲母、バーミキュライト、不織布、パルプが好ましく、アルコールの吸着力の点でシリカがより好ましい。
【００３７】
吸着材へアルコールを吸着させる態様、吸着材自体のアルコール吸着量は、従来からアルコール揮散剤に用いられているものを適宜用いればよい。
【発明の効果】
【００３８】
本発明のアルコール揮散剤は、包装袋が通気性を有するプラスチックフィルムからなる外包材と、アルコールガス透過性材料からなる内包材との二重構造であり、外包材と内包材の間に空隙を有することから、アルコールガスを充分に揮散させることができ、また、印刷インクが食品に付着するという不具合を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００３９】
【図１】本発明のアルコール揮散剤の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【００４０】
１ 包装袋
２ 外包材
３ 内包材
４ 周縁部
５ 空隙
６ アルコール吸着体
７ 孔
８ ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）
９ ポリエチレン（ＰＥ）
１０ エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム（ＥＶＡ）
１１ 不織布
１２ 印刷面
【技術分野】
【０００１】
本発明は、密封包装内又は密封容器内に食品と共に封入して用いるアルコール揮散剤に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来から食品を保存するための保存剤として、乾燥剤、酸素吸収剤、アルコール揮散剤等の包装系内の雰囲気を調節するものが知られている。その中でもアルコール揮散剤は、カビの増殖抑制効果が高く、パン類や菓子類を中心に広く普及している。
【０００３】
食品の保存に用いられるアルコール揮散剤は、エタノールを雲母やシリカ等の吸着材に吸着させたアルコール吸着体をアルコールガス透過性の小袋に充填したものであり、食品と共に封入し、包装系内でアルコールガスを揮散させることにより食品の保存性を向上させるものである。
【０００４】
アルコール揮散剤の包装袋としては、有孔または無孔のプラスチックフィルムや、不織布、紙などの材料が用いられているが、現在、市場に流通しているアルコール揮散剤は、特許文献１に記載されるように、食品との接触面に耐水・耐油加工が施された紙を使用したものが主流となっている。
【０００５】
食品との接触面に紙を使用したアルコール揮散剤は生産性に優れ、アルコールガスが徐々に揮散されるという利点を有する反面、耐水・耐油加工の際に塗布された撥水剤や撥油剤が、アルコールの作用によって食品に付着するという問題がある。また、紙表面に製品名等が印刷されているため、食品にインクが転写し商品価値が損なわれるおそれがあった。
【０００６】
撥水剤やインク等の付着を防止するために、有孔プラスチックフィルムと不織布または紙とを積層し、食品との接触面をプラスチックフィルムとした包装材も提案されているが、有孔プラスチックフィルムと不織布または紙が密着して一体化していることから、不織布または紙から揮散するアルコールがプラスチックフィルムの孔以外の部分により遮断されるため、アルコールの揮散が阻害され、食品の保存効果が十分に得られないという問題があった。
【０００７】
従って、アルコールガスの揮散を阻害することなく、食品へのインク等の付着のおそれのないアルコール揮散剤が望まれていた。
【特許文献１】特公平４−２１５８６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
本発明は、従来のアルコール揮散剤において問題となっていた、印刷インク、撥水剤、撥油剤などの食品への付着を防止すると共に、保存効果に優れたアルコール揮散剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
本発明者等は、アルコール揮散剤の包装袋について鋭意研究した結果、特定の材料からなる外包材と内包材を用いて、外包材と内包材の間に空隙を有するよう重ね合わせ、内包材の内面同士が対向するように外包材と内包材の周縁部を接着して包装袋を構成することにより、アルコールガスの揮散を阻害することなく、印刷インク等が食品に付着するという不具合が解消されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【００１０】
すなわち本発明は、通気性を有するプラスチックフィルムからなる外包材と、アルコールガス透過性材料からなる内包材とを、外包材と内包材の間に空隙を有するよう重ね合わせ、内包材の内面同士が対向するように外包材と内包材の周縁部を接着して構成された包装袋の中に、アルコール吸着体を含有させてなるアルコール揮散剤を提供する。
【００１１】
以下に本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【００１２】
図１に示すように、本発明のアルコール揮散剤の包装袋１は外包材２と内包材３との二重構造で構成される。内包材３は内面同士が対向するように周縁部４で外包材２と共に接着され、周縁部４以外の部分では、外包材２と内包材３の間には空隙５が設けられており、外包材２と内包材３は密着・一体化していない。内包材３の内部には、アルコールを吸着したアルコール吸着体６が充填されている。なお、本発明において空隙とは外包材と内包材との間にアルコールガスが流通し得る空間が存在することを意味し、外包材と内包材とが部分的に接着されたものであってもアルコールガスが流通し得るものは、本発明の範囲に属する。
【００１３】
外包材２は通気性を有するプラスチックフィルムからなる。通気性を有するプラスチックフィルムは、アルコールを含む気体を透過させるプラスチックフィルムであれば特に限定されず、ガスバリア性フィルムに孔を穿設したもの、あるいはガス透過性の有孔または無孔フィルムのいずれもが使用可能であるが、強度に優れる点から、ガスバリア性またはガス透過性フィルムに孔７を穿設し開孔させたものが好ましく使用される。
【００１４】
このような外包材２を構成するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ビニロン、セロファン、アルミ、酸化アルミまたはシリカの蒸着フィルム、およびこれらの２種以上を積層したフィルムが例示され、その中でも強度、ヒートシール性およびコストバランスの点で優れた、ポリエチレンテレフタレートの単層フィルム及びポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンおよび延伸または無延伸のポリプロピレンの二種以上の積層フィルムに孔を穿設したものが好ましく使用される。特に、外包材２を構成するプラスチックフィルムとしては、図１に示すように、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）８にポリエチレンを積層し、内包材３と対向する面にポリエチレン（ＰＥ）層９を配設したものがより好ましく使用される。
【００１５】
プラスチックフィルムの穿設方法としては、例えば加熱針、剣山状の金属ブラシ金型、レーザー光等を用いた方法が採用される。
【００１６】
孔を設ける場合の孔径は特に限定されず、又、穿設される孔７の数は、孔径、アルコール揮散剤のサイズ、アルコール吸着体量や、外装袋の両面に開孔するか片面のみに開孔するかなどによって適宜定めればよいが、外包材のガーレ式透気度が３００００ｓ／１００ｍｌ以下、好ましくは１００〜２００００ｓ／１００ｍｌとなるように、孔径及び孔数を設定するのが良い。外包材の透気度が３００００ｓ／１００ｍｌを越えれば、内包材から揮散したアルコールガスが、外包材を通気し難いことにより阻害される傾向がある。
【００１７】
適当なアルコール揮散量を達成するためには、例えば、アルコール吸着体０．３〜３ｇ程度を含有し、サイズが４．５ｘ６ｃｍのアルコール揮散剤の外包材の両面に孔を穿設する場合、孔径１０〜１０００μｍ程度の孔を１平方センチメートルあたり１〜３０個程度穿設するとよい。
【００１８】
本発明において、ガーレ式透気度は王研式透気度試験機（旭精工（株）製）で測定される。
【００１９】
孔７の形状についても限定されるものではないが、包装袋の強度の点で円形または楕円形が好ましい。
【００２０】
また、外包材２として使用可能な通気性を有する無孔フィルムをとしては、セロファン、ナイロン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。通気性を有する無孔フィルムを使用する場合、特に孔を穿設する必要はないが、アルコール揮散量を調整するために孔を穿設するのが好ましい。
【００２１】
外包材の厚さは好ましくは２０〜５０μｍである。
【００２２】
内包材３としては、アルコールガス透過性の材料であれば特に限定されず、有孔および無孔フィルムの他、不織布、紙等が使用可能である。好ましい内包材３としては、アルコールおよびアルコール吸着体の漏れ防止の点から、ガス透過性の無孔シートが挙げられる。ガス透過性の無孔シートとしては、エチレンまたは酢酸ビニルの重合体フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、不織布、紙などが使用可能であるが、強度やヒートシール性に優れ、コストバランスの点においても有利であることから、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム（ＥＶＡ）１０と不織布または紙１１との積層シートが好ましく使用される。この場合好ましくは、内包材の不織布または紙側を外包材と対向させる。
【００２３】
内包材３の積層シートに使用する場合の、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムの厚みは、１５〜３５μｍであるのが好ましく、２０〜３５μｍであるのがより好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムの厚みが１５μｍ未満の場合には強度が不十分となる傾向があり、３５μｍを超える場合にはアルコールの揮散が阻害され、食品の保存効果が不十分になる傾向がある。
【００２４】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムは、無孔フィルムとして用いるのが好ましいが、孔を設けた有孔フィルムとして用いてもよい。
【００２５】
内包材３を積層シートとする場合、有孔フィルムと不織布又は紙とを積層してもよく、有孔フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンなどのプラスチックフィルムに孔を穿設したものが使用できる。
【００２６】
上記積層シートに使用する不織布としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、各種ナイロン等の材質からなるものが挙げられる。ポリエチレンテレフタレートは単一成分であってもイソフタル酸等を含んだ共重合体であってもよい。またポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン等の単一成分であっても、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセンおよびオクテン等のオレフィン類との共重合体であってもよく、また、オレフィン以外の成分との共重合体であってもよい。その中でも不織布としては２軸延伸ポリプロピレンからなるものが好ましい。また紙としては、和紙、洋紙、レイヨン紙、化繊布、レイヨンと化繊布の混合紙などが挙げられ、その中でも洋紙が好ましい。
【００２７】
これらの不織布や紙は、撥水剤や撥油剤によって耐水・耐油加工されたものであってもよいが、本発明においては外包材によって内包材が覆われるため、耐水・耐油加工する必要はなく、食品汚染のおそれがないことから、耐水・耐油加工されていない不織布または紙が好ましい。
【００２８】
不織布または紙の厚みは、いずれも目付量が１５〜７０ｇ／ｍ２のものが好ましく、２０〜５０ｇ／ｍ２のものがより好ましい。不織布または紙の厚みが１５ｇ／ｍ２未満の場合はヒートシール時に破損するおそれがあり、７０ｇ／ｍ２を超える場合はヒートシールによる製袋が困難となる傾向がある。
【００２９】
本発明のアルコール揮散剤においては、外包材２と内包材３とが密着（一体化）されず、その間に空隙５を有している。外包材２と内包材３の間に空隙５を設けることによって、内包材３を介して揮散したアルコールガスが空隙５に充満し、外包材２の孔７を通過して食品を封入した密封容器内に拡散する。従来の空隙を有さない二層シートでは、外層の孔以外の部分によって内層からのアルコールの揮散が阻害されていたが、本発明のように内包材と外包材との間に空隙を設けることにより、外包材によってアルコールの揮散が阻害されることがなく、また揮散量を容易に調整することができる。
【００３０】
外包材と内包材のアルコールガス透過量は、特に限定されないが、外包材のアルコールガス透過量が内包材のアルコールガス透過量以上となるようにするのがアルコール揮散率を調整しやすい点で好ましい。アルコールガス透過量の目安としては、温度４０℃、湿度５０％の環境下における２４時間後の透過量が、外包材が５０ｇ／ｍ２以上、内包材が２０ｇ／ｍ２以上があるのが好ましく、外包材のアルコールガス透過量が内包材より、３０ｇ／ｍ２以上大きいことが好ましい。
【００３１】
本発明のアルコール揮散剤に製品名等の印刷を施す場合は、外包材２の食品と接触する面以外に印刷を施せばよく、外包材がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンおよび延伸または無延伸のポリプロピレンの二種以上の積層フィルムの場合、積層面のいずれかの面に印刷すればよい。例えば、図１の外包材２において、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ８）又はポリエチレン（ＰＥ９）のいずれか一方に印刷し、他方のフィルムを印刷面１２に積層することによって印刷面１２と食品とが接触することがなく、食品へのインクの付着が防止される。例えば、外包材のポリエチレンテレフタレートフィルムに印刷し、その印刷面にポリエチレンを積層するのがよい。
【００３２】
外包材２が単層フィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレートの単層フィルムからなる場合、外包材２の内包材と対向する面に印刷を施すことによって、印刷面と食品との接触を阻止し得る。
【００３３】
また、印刷を施す外包材２の印刷面よりも外側の層は透明フィルムであればよく、無色あるいは有色透明フィルムを目的に応じて適宜採用すればよい。
【００３４】
本発明のアルコール揮散剤において周縁部４の接着方法としては、ヒートシール、接着剤等の方法が挙げられるが、生産効率の点でヒートシールによる接着が好ましい。また、ヒートシールによる製袋方法には折り込み三方シールおよび四方シールがあり、本発明においてはいずれの製袋方法でもよいが、様々なサイズの袋を効率良く製造できる点やヒートシール時のトラブルが少ない点で折り込み三方シール包装体とするのが好ましい。
【００３５】
本発明のアルコール揮散剤に使用するアルコールとしては特に制限はなく、一般に食品工業用途に用いられているエタノールのいずれを用いてもよく、変性剤を含有するものであってもよい。
【００３６】
本発明のアルコール揮散剤において、内部に封入するアルコール吸着体に使用する吸着材は、アルコールを吸着することが可能であれば特に限定されず、シリカ、焼成雲母、バーミキュライト、タルク、ゼオライト、パーライト、ベントナイト、珪藻土、アルミナ、不織布、パルプ等、従来からアルコール揮散剤に使用されているものを使用することができる。その中でもシリカ、焼成雲母、バーミキュライト、不織布、パルプが好ましく、アルコールの吸着力の点でシリカがより好ましい。
【００３７】
吸着材へアルコールを吸着させる態様、吸着材自体のアルコール吸着量は、従来からアルコール揮散剤に用いられているものを適宜用いればよい。
【発明の効果】
【００３８】
本発明のアルコール揮散剤は、包装袋が通気性を有するプラスチックフィルムからなる外包材と、アルコールガス透過性材料からなる内包材との二重構造であり、外包材と内包材の間に空隙を有することから、アルコールガスを充分に揮散させることができ、また、印刷インクが食品に付着するという不具合を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００３９】
【図１】本発明のアルコール揮散剤の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【００４０】
１ 包装袋
２ 外包材
３ 内包材
４ 周縁部
５ 空隙
６ アルコール吸着体
７ 孔
８ ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）
９ ポリエチレン（ＰＥ）
１０ エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム（ＥＶＡ）
１１ 不織布
１２ 印刷面
【特許請求の範囲】
【請求項１】
通気性を有するプラスチックフィルムからなる外包材と、アルコールガス透過性材料からなる内包材とを、外包材と内包材の間に空隙を有するよう重ね合わせ、内包材の内面同士が対向するように外包材と内包材の周縁部を接着して構成された包装袋の中に、アルコール吸着体を含有させてなるアルコール揮散剤。
【請求項２】
外包材のガーレ式透気度が３００００ｓ／１００ｍｌ以下である請求項１記載のアルコール揮散剤。
【請求項３】
外包材が、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ビニロン、セロファン、蒸着フィルム、およびこれらの２種以上の積層体のいずれかに孔を穿設したフィルムである請求項１または２に記載のアルコール揮散剤。
【請求項４】
外包材がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンおよび延伸または無延伸のポリプロピレンの二種以上の積層有孔フィルムからなり、積層面のいずれかの面に印刷が施されている請求項１〜３いずれかに記載のアルコール揮散剤。
【請求項５】
内包材が、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、不織布、紙およびこれらの２種以上を積層したシートのいずれかである請求項１〜４いずれかに記載のアルコール揮散剤。
【請求項６】
内包材がエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムと不織布または紙との積層シートからなり、内包材の不織布または紙面が外包材と対向している請求項１〜５いずれかに記載のアルコール揮散剤。
【請求項７】
エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムの厚みが１５〜３５μｍである請求項６記載のアルコール揮散剤。
【請求項８】
アルコール吸着体が、シリカ、焼成雲母、バーミキュライト、パルプ、不織布のいずれかにエタノールを吸着させたものである請求項１〜７いずれかに記載のアルコール揮散剤。
【請求項１】
通気性を有するプラスチックフィルムからなる外包材と、アルコールガス透過性材料からなる内包材とを、外包材と内包材の間に空隙を有するよう重ね合わせ、内包材の内面同士が対向するように外包材と内包材の周縁部を接着して構成された包装袋の中に、アルコール吸着体を含有させてなるアルコール揮散剤。
【請求項２】
外包材のガーレ式透気度が３００００ｓ／１００ｍｌ以下である請求項１記載のアルコール揮散剤。
【請求項３】
外包材が、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ビニロン、セロファン、蒸着フィルム、およびこれらの２種以上の積層体のいずれかに孔を穿設したフィルムである請求項１または２に記載のアルコール揮散剤。
【請求項４】
外包材がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンおよび延伸または無延伸のポリプロピレンの二種以上の積層有孔フィルムからなり、積層面のいずれかの面に印刷が施されている請求項１〜３いずれかに記載のアルコール揮散剤。
【請求項５】
内包材が、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、不織布、紙およびこれらの２種以上を積層したシートのいずれかである請求項１〜４いずれかに記載のアルコール揮散剤。
【請求項６】
内包材がエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムと不織布または紙との積層シートからなり、内包材の不織布または紙面が外包材と対向している請求項１〜５いずれかに記載のアルコール揮散剤。
【請求項７】
エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムの厚みが１５〜３５μｍである請求項６記載のアルコール揮散剤。
【請求項８】
アルコール吸着体が、シリカ、焼成雲母、バーミキュライト、パルプ、不織布のいずれかにエタノールを吸着させたものである請求項１〜７いずれかに記載のアルコール揮散剤。
【図１】
【公開番号】特開２００９−１７９３３０（Ｐ２００９−１７９３３０Ａ）
【公開日】平成２１年８月１３日（２００９．８．１３）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−１７５３２（Ｐ２００８−１７５３２）
【出願日】平成２０年１月２９日（２００８．１．２９）
【出願人】（３０４００２９５５）ドレンシー株式会社 (5)
【出願人】（０００１８９６５９）上野製薬株式会社 (76)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年８月１３日（２００９．８．１３）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１月２９日（２００８．１．２９）
【出願人】（３０４００２９５５）ドレンシー株式会社 (5)
【出願人】（０００１８９６５９）上野製薬株式会社 (76)
【Ｆターム（参考）】
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