説明

アルコール損傷細胞賦活化剤

【課題】胃腸粘膜細胞の、アルコール存在下における細胞の損傷に対して、細胞を賦活化させる作用があり、かつ安全性の高い物質を提供する。
【解決手段】グリセリン酸又はその塩を有効成分とする、胃腸粘膜損傷細胞の賦活化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールにより損傷を受けた胃腸粘膜細胞の賦活化を促進することができる化合物に関連するものである。より詳細には、アルコール損傷細胞賦活化を促進するサプリメント、飲食用組成物、または医薬品の製造のための、D−グリセリン酸、L−グリセリン酸、DL−グリセリン酸、及びそれらの塩からなる群より選択される1または複数の化合物を、それを必要とする対象者に対して、有効量投与することを含むものである。
【背景技術】
【0002】
通常、飲酒によって体内に吸収されたアルコール(エタノール)は、5%が呼気、尿、汗などによってそのまま排出され、95%は肝臓においてアセトアルデヒドに分解されることが知られている。アセトアルデヒドは、ミトコンドリア内でさらに酸化され酢酸となり、エネルギー代謝や同化代謝へと取り込まれる。
エタノールの吸収は、主に胃および小腸粘膜で行われる。これらの組織細胞表面は粘膜で覆われており、摂取したエタノールによって粘膜層が損傷を受ける。このように粘膜層が損傷を受けた状態では、下層の組織細胞が露出状態となり、消化液等に曝されることで炎症を起こし、その結果、潰瘍等の疾患が誘発される。特に胃では、強酸である胃酸やエタノールに胃粘膜細胞が曝されることで、胃潰瘍といった疾患の誘発につながることが知られている。胃粘膜細胞の損傷緩和のための予防または治療薬としては、主に胃酸分泌の抑制効果を有するプロトンポンプ拮抗剤と胃腸粘膜細胞の保護剤があり、従来から前者のタイプとしては、オメプラゾール、レバプラザンが、また、後者のタイプとしては、スクラルファート、レバミピドなどが広く用いられていたが、最近になってレバプラザンには胃腸管粘膜の保護効果もあることが報告されている(特許文献1)。しかしながら、スクラルファートはアルミニウムを含むため透析患者への使用は禁忌であり、他も合成化合物であってアレルギーなどの副作用が懸念される。
D−グリセリン酸(D-GA)は、植物体内で発見された天然に産出する有機酸の一種であり、きわめて安全性が高いことも知られている。グリセリン酸には界面活性効果に加えて種々の優れた生理各的機能が報告されており(非特許文献1−3、特許文献3)、最近では、アルコール代謝の促進作用も報告されている(特許文献4、非特許文献4)。また、各種の無機酸又は有機酸の亜鉛塩が胃液のpHを高め過酸分泌を防ぐことが知られており(特許文献2)、その有機酸の1つとしてグリセリン酸も例示されている。
しかしながら、グリセリン酸又はその塩がアルコールを吸収する消化器官である胃や腸の粘膜細胞に対して防護的な保護作用があることや、アルコール存在下における細胞の賦活性の回復を促進することは、これまでに知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−517462号公報
【特許文献2】特表2009−524669号公報
【特許文献3】特開平5−139947号公報
【特許文献3】特表2006−507268号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Science, 123, 415 (1956)
【非特許文献2】Nature, 184, 819(1959)
【非特許文献3】Fitoterapia, 57, 307(1986)
【非特許文献4】Metabolism, 56, 895(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アルコールを吸収する消化器官である胃や腸の粘膜細胞において、アルコール存在下における細胞の損傷に対して、細胞を賦活化させる作用又は細胞の賦活性の回復を促進する作用のある物質であって、かつ安全性の高い物質を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、グリセリン酸又はその塩を用いてアルコール(エタノール)存在下での胃や腸の粘膜細胞に対する作用を研究する中で、アルコール存在下の胃腸粘膜細胞に対して賦活活性作用を及ぼすことを見出した。
具体的には、DおよびL-グリセリン酸塩、またその混合物を用いることで、アルコールにより損傷を受けたマウス及びヒトの胃由来の上皮細胞株の賦活活性が、グリセリン酸塩を投与しない場合と比較して有意に上昇させることができることを見出した。
このことは、グリセリン酸又はその塩には、体内に吸収されたアルコールの代謝を促進するだけでなく、アルコールによって損傷を受けた胃腸の粘膜細胞に対して直接的に働きかけ、その賦活化能を促進する作用を同時に有することを示すものである。
上記知見を得たことで、本発明者らは以下の本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は以下の通りのものである。
〔1〕 グリセリン酸又はその塩を有効成分とする、胃腸粘膜損傷細胞の賦活化剤。
〔2〕 前記胃腸粘膜損傷が、アルコール誘導性の損傷である前記〔1〕に記載の賦活化剤。
〔3〕 グリセリン酸又はその塩を有効成分とし、医薬的に許容可能な担体を含むことを特徴とする、アルコール誘導性の胃腸粘膜損傷に基づく胃腸管損傷性疾患の予防又は治療用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るグリセリン酸又はその塩は、アルコール損傷を受けた胃腸粘膜細胞に対して優れた賦活作用を有する。したがって、アルコール消費時の弊害であるアルコール誘導性の胃腸粘膜の損傷を回復させる効果、及び、アルコール誘導性の胃腸粘膜の損傷に基づく胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの重篤なる胃腸管損傷性疾患に対して予防または治療効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ラット胃粘膜上皮細胞株(RGM1)に対するエタノール毒性試験
【図2】D−グリセリン酸カルシウム塩のRGM1細胞に対する賦活活性(エタノール存在下)
【図3】L−グリセリン酸カルシウム塩のRGM1細胞に対する賦活活性(エタノール存在下)
【図4】75%D/25%L−グリセリン酸カルシウム塩のRGM1細胞に対する賦活活性(エタノール存在下)
【図5】DL−グリセリン酸カルシウム塩のRGM1細胞に対する賦活活性(エタノール存在下)
【図6】25%D/75%L−グリセリン酸カルシウム塩のRGM1細胞に対する賦活活性(エタノール存在下)
【図7】ヒト胃上皮由来細胞株(KatoIII)に対するエタノール毒性試験
【図8】D−グリセリン酸カルシウム塩のKatoIII細胞に対する賦活活性(エタノール存在下)
【図9】L−グリセリン酸カルシウム塩のKatoIII細胞に対する賦活活性(エタノール存在下)
【図10】DL−グリセリン酸カルシウム塩のKatoIII細胞に対する賦活活性(エタノール存在下)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明におけるグリセリン酸としては、D体、L体もしくはそれらの混合物であるが、その混合物としては、D体及びL体を任意の比率で配合した場合と共に、単離前のラセミ混合物も包含する。またグリセリン酸塩としては、薬理学的に許容される一価又は二価の塩であれば何でもいいが、水溶性であることが望ましい。典型的にはカルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である。グリセリン酸は粘調性があり扱いにくい点、及びグリセリン酸塩のうち、グリセリン酸カルシウムがD−体及びL−体のそれぞれの精製品が市販されていることから、本実施例では、当該精製D−、L−グリセリン酸カルシウム(Sigma社製)を用いることとした。
また、胃腸粘膜を形成する培養上皮細胞が、エタノール存在下で培養することで、エタノールの細胞毒性作用で受ける細胞の損傷を、どの程度回復させることができるかを検証するために、ラットの胃粘膜上皮細胞由来の公知培養細胞株(RGM1細胞株:理研セルバンク)と共に、ヒトの胃粘膜上皮細胞に由来する公知の培養細胞株(KatoIII細胞株:理研セルバンク)を用い、細胞毒性を及ぼすエタノール濃度(3%又は2%)に設定した培地中で24時間〜72時間培養し、有意差をもって死滅する細胞数が減少することを観察した。
本発明は、グリセリン酸又はその塩についての「胃腸粘膜損傷細胞の賦活化剤」、特にアルコール誘導性の胃腸粘膜損傷細胞に対する賦活化剤としての用途発明である。ここで、「アルコール誘導性」とは、飲酒などのエタノール摂取に起因することを意味し、「アルコール誘導性の胃腸粘膜損傷に基づく胃腸管損傷性疾患」とは、大量のエタノール摂取を原因とする胃炎、胃潰瘍、又は十二指腸潰瘍などの胃腸管粘膜細胞損傷性の各種疾患を意味する。
【実施例】
【0011】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
(実施例1) ラット胃粘膜上皮細胞株(RGM1)に対するエタノール毒性試験
グリセリン酸による胃腸粘膜細胞に対する賦活活性を確認するため、ラット胃粘膜上皮細胞株であるRGM1細胞株(理研セルバンク)を用意した。RGM1細胞株は、20%Fetal Bovine Serum(FBS, bio west, Cat. No. S1820, Lot no. S05417S1820)含有DMEM/Ham’sF12培地(ナカライテスク、Cat. No. 14133-95)を使用して、CO2インキュベーター(5%CO2、37℃)内で、週2回の培地交換で培養した。
細胞を5×104個/mlに調整し、100μlを96well culture plate(Corning, Cat. No. 3276)に分注し培養後、1日経過後、各濃度のエタノール(0−10%、ナカライテスク)を添加した培地100μlに交換して24時間および72時間培養した。
培養終了時に培地を取り除き、生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク、cat. No. 07553-44)を10%の濃度で添加した培地100μlを加えて、37℃、5%CO2で3時間までインキュベートし、その間、1時間おきにマイクロプレートリーダー(Precision micro plate reader, Molecular Device)でサンプルの吸光度を測定した(測定波長:450nm, 対象波長:595nm)。細胞の増殖性を、(1時間後の吸光度)−(30分後の吸光度)の変化率として算出し、細胞賦活活性は、エタノールを添加していない条件(コントロール)の増殖性を100として示した。
上記の試験結果を図1に示す。エタノール5%添加では、24時間後の細胞生存率はコントロールと比べて23%低下し、72時間ではエタノール2%添加で50%まで細胞生存率が低下した。
これらの結果から、RGM細胞を用いた賦活化試験では、細胞賦活効果が観察しやすいエタノール濃度として3%の濃度に設定して培養を行った。その際、グリセリン酸の立体異性体又はその混合比により効果が異なる可能性が考えられたため、D体及びL体精製品を用い、その配合比を変えて賦活効果を観察することとした。各実施例では、グリセリン酸またはその塩として、D体及びL体それぞれの精製品が市販されているD−及びL−グリセリン酸カルシウムを用いてエタノール存在下の細胞賦活効果を調べた。
【0012】
(実施例2)RGM1細胞株に対するD−グリセリン酸カルシウム塩の細胞賦活作用
D−グリセリン酸カルシウム塩(Sigma社製)は、約20mgを秤量して、20mg/mlになるように製氷水で溶解した。この溶液を0.2μmフィルター(Minisart 0.2μm、Sartorius, Code no 16534)でろ過滅菌し、20mg/mlのストック溶液とした。
細胞を5×104個/mlに調整し、100μlを96well culture plate(Corning, Cat. No. 3276)に分注し培養後、1日経過後、各濃度のD−グリセリン酸カルシウム(0.002-20μg/ml)およびエタノール(3%)を添加した培地100μlに交換して24時間および72時間培養した。
培養終了時に培地を取り除き、生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク、cat. No. 07553-44)を10%の濃度で添加した培地100μlを加えて、37℃、5%CO2で3時間までインキュベートし、その間、1時間おきにマイクロプレートリーダー(Precision micro plate reader, Molecular Device)でサンプルの吸光度を測定した(測定波長:450nm, 対象波長:595nm)。細胞の増殖性は、(1時間後の吸光度)−(30分後の吸光度)の変化率として算出し、細胞賦活活性は、D−グリセリン酸カルシウム塩を添加していない条件の変化率を100として示した。
上記の試験結果を図2に示す。エタノール存在下、24時間後ではサンプル濃度依存的にRGM1細胞の細胞賦活性は低下した。72時間後では影響を与えなかった。
【0013】
(実施例3)RGM1細胞株に対するL−グリセリン酸カルシウム塩の細胞賦活作用
L−グリセリン酸カルシウム塩(Sigma社製)は、実施例2のD−グリセリン酸カルシウム塩と同様に、約20mgを秤量して、20mg/mlになるように製氷水で溶解した。この溶液を0.2μmフィルター(Minisart 0.2μm、Sartorius, Code no 16534)でろ過滅菌し、20mg/mlのストック溶液とした。
細胞賦活性試験は、実施例2と同様に行い、D−グリセリン酸カルシウム塩の代わりにL−グリセリン酸カルシウム塩を用いて行った。
上記の試験結果を図3に示す。エタノール存在下、24時間後ではサンプル濃度依存的にRGM1細胞の細胞賦活性が上昇した。一方で、72時間後では影響を与えなかった。
【0014】
(実施例4)RGM1細胞株に対するD/L−グリセリン酸カルシウム塩混合基質の細胞賦活作用
グリセリン酸の立体異性体細胞賦活作用に及ぼす立体異性体の最適な配合比率を検討するために、DおよびL−グリセリン酸カルシウム塩は、実施例2および3で調整した20mg/mlのストック溶液を用い、D体/L体の混合比が75/25、50/50、25/75の3種類を調整した。
細胞賦活性試験は、実施例2と同様に行い、基質としてD−グリセリン酸カルシウム塩の代わりにD/L−グリセリン酸カルシウム塩混合基質を用いた。
D/L=75/25の場合、時間に関わらずその作用は見られなかった(図4)。D/L=50/50の場合では、24時間および72時間後において、基質濃度依存的に細胞賦活作用が見られ、特に、濃度20μg/mlの時に、24時間後および72時間後では細胞賦活作用が22%および28%上昇した(図5)。また、D/L=25/75の場合では、時間に関わらず細胞賦活作用に対する影響は見られなかった(図6)。
これらの結果から、同じ濃度において、ラセミ混合物であるD/L=50/50のグリセリン酸カルシウム塩による細胞賦活作用が最大となることが明らかとなった。
【0015】
(実施例5)ヒト胃上皮由来細胞株(KatoIII)に対するエタノール毒性試験
グリセリン酸によるヒト胃腸粘膜細胞に対する賦活活性を確認するため、ヒト胃上皮由来細胞株であるKatoIII細胞(理研セルバンク)を用意した。KatoIII細胞株を、10%Fetal Bovine Serum(FBS, bio west, Cat. No. S1820, Lot no. S05417S1820)含有PRMI1640培地(ナカライテスク、Cat. No. 30264-85)を使用して、CO2インキュベーター(5%CO2、37℃)内で、週2回の培地交換で培養した。
細胞を5×104個/mlに調整し、100μlを96 well culture plate(Corning, Cat. No. 3276)に分注し培養後、1日経過後、各濃度のエタノール(0-5%、ナカライテスク)を添加した培地100μlに交換して24時間および72時間培養した。
培養終了時に培地を取り除き、生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク、cat. No. 07553-44)を10%の濃度で添加した培地100μlを加えて、37℃、5%CO2で3時間までインキュベートし、その間、1時間おきにマイクロプレートリーダー(Precision micro plate reader, Molecular Device)でサンプルの吸光度を測定した(測定波長:450nm, 対象波長:595nm)。細胞の増殖性は、(1時間後の吸光度)−(30分後の吸光度)の変化率として算出し、細胞賦活活性は、エタノールを添加していない条件(コントロール)の増殖性を100として示した。
上記の試験結果を図7に示す。24時間後の細胞生存率は、コントロールと比べて、エタノール5%添加した場合にも有意な差は見られなかった。一方で、72時間ではエタノール2%添加では、コントロールに対して45%細胞生存率が低下した。
これらの結果から、KatoIII細胞株を用いた賦活化試験では、細胞賦活効果が観察しやすいエタノール濃度として2%の濃度に設定して培養を行い、添加するグリセリン酸カルシウム塩のD−体、L−体及びそれらの混合物それぞれの細胞賦活効果を調べた。
【0016】
(実施例6)KatoIII細胞株を用いたD−グリセリン酸カルシウム塩の細胞賦活作用
D−グリセリン酸カルシウム塩は、実施例2で調整したものを用いた。
細胞を5×104個/mlに調整し、100μlを96well culture plate(Corning, Cat. No. 3276)に分注し培養後、1日経過後、各濃度のD−グリセリン酸カルシウム(0.002-20μg/ml)およびエタノール(3%)を添加した培地100μlに交換して24時間および72時間培養した。
培養終了時に培地を取り除き、生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク、cat. No. 07553-44)を10%の濃度で添加した培地100μlを加えて、37℃、5%CO2で3時間までインキュベートし、その間、1時間おきにマイクロプレートリーダー(Precision micro plate reader, Molecular Device)でサンプルの吸光度を測定した(測定波長:450nm, 対象波長:595nm)。細胞の増殖性は、(1時間後の吸光度)−(30分後の吸光度)の変化率として算出した。
上記の試験結果を図8に示す。エタノール存在下、24時間後では明確な細胞賦活活性は見られなかったが、72時間後ではサンプル濃度依存的にKatoIII細胞の細胞賦活性が上昇し、D体20μg/mlの場合でコントロールと比較して33%上昇した。
【0017】
(実施例7)KatoIII細胞株を用いたL−グリセリン酸カルシウム塩の細胞賦活作用
L−グリセリン酸カルシウム塩は、実施例3で調整したものを用いた。
細胞賦活性試験は、実施例2と同様に行い、D−グリセリン酸カルシウム塩の代わりにL−グリセリン酸カルシウム塩を用いて行った。
上記の試験結果を図9に示す。エタノール存在下、24時間後では細胞賦活作用は見られなかったが、72時間後では、サンプル濃度依存的にKatoIII細胞の細胞賦活性が上昇した。
【0018】
(実施例8)KatoIII細胞株を用いたDL−グリセリン酸カルシウム塩の細胞賦活作用
DL−グリセリン酸カルシウム塩のストック溶液(20mg/ml)は、実施例2のとおりD−グリセリン酸カルシウムの代わりにDL−グリセリン酸カルシウム塩を用いて調整した。
細胞賦活性試験は、実施例2と同様に行い、基質としてD−グリセリン酸カルシウム塩の代わりにDL−グリセリン酸カルシウム塩を用いた。
上記の結果を図10に示す。24時間後では、KatoIII細胞の賦活活性の上昇は見られなかったが、72時間後においては、基質濃度依存的に細胞賦活作用が見られ、特に、濃度20μg/mlの時に、細胞賦活活性がコントロールの場合(無添加)と比較して98%上昇した。これらの結果から、KatoIII細胞においても、ラセミ混合物であるDL−グリセリン酸カルシウム塩による細胞賦活作用が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリン酸又はその塩を有効成分とする、胃腸粘膜損傷細胞の賦活化剤。
【請求項2】
前記胃腸粘膜損傷が、アルコール誘導性の損傷である請求項1に記載の賦活化剤。
【請求項3】
グリセリン酸又はその塩を有効成分とし、医薬的に許容可能な担体を含むことを特徴とする、アルコール誘導性の胃腸粘膜損傷に基づく胃腸管損傷性疾患の予防又は治療用組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−232902(P2012−232902A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100301(P2011−100301)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度経済産業省委託研究「日米エネルギー環境技術研究・標準化協力事業(日米クリーン・エネルギー技術協力)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】