説明

アルコール検出装置

【課題】 使用者が呼気を強く吹き込んだ場合であっても良好な検出結果が得られるアルコール検出装置を提供することである。
【解決手段】 アルコール検出装置101を構成するケース体5において、フロントパネル3とファン7との間に大きな空間部Qを形成する。そして、運転者Mが吸気孔18に吹き込んだ強い呼気Aが、フロントパネル3とファン7との間の空間部Qでいったん停留してその流速を低下してから、ファン7によって下流側のセンサ部分(センサ支持部材8の第2支持部12)に送出されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者から排出される呼気中のアルコール濃度を検出するためのアルコール検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、車両(例えば、自動車)に搭載されるアルコール検出装置について説明する。近年、車両の飲酒運転は重大な社会問題となっていて、運転者が酒気を帯びた状態で車両を運転することは厳禁とされている。これを担保するため、各種の車両用アルコール検出装置の発明が出願されている。
【0003】
アルコール検出装置として、各種の技術が開示されている。しかし従来のアルコール検出装置の場合、運転者が弱い呼気を吹き込んだ場合には良好な検出結果が得られるが、使用者が強い呼気を吹き込んだ場合には、呼気がセンサ部分を通過するときの流速が大きくなり、安定した測定結果を得ることが困難になる。
【0004】
呼気中のエタノールを測定するシステムとして、特許文献1に開示される技術が存している。しかし、この技術だけで運転者が強い呼気を吹き込んだときに、常に安定した測定結果を得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−300119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した不具合に鑑み、使用者が呼気を強く吹き込んだ場合であっても良好な検出結果が得られるアルコール検出装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための第1の発明は、
使用者が吹き付けた呼気を導入するための呼気入口が設けられたケース体と、
前記ケース体における前記呼気入口の直下流側に該呼気入口と対向して配置され、前記呼気入口を通って流入した使用者の呼気を更に下流側に送るファンと、
前記ケース体における前記ファンよりも下流側に配置され、前記ファンによって送られた使用者の呼気中のアルコール分を検出するセンサと、を備え、
前記ケース体の呼気入口と前記ファンとの間に、前記使用者の呼気が前記ファンによってその下流側に送られる前にその呼気をいったん停留させるための空間部を形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るアルコール検出装置は上記したように構成されていて、使用者の呼気をいったん停留させるための空間部が形成されている。ケース体の呼気入口から流入した呼気は、空間部に停留することでその流速を低下させる。これにより、乱流状態の呼気が層流に近い状態となり、その状態でファンによって下流側のセンサ部分に送出されるため、常に良好な測定結果が得られる。
【0009】
前記ファンは、回転軸部とその外周面から半径方向に突出する複数枚の羽根部と、を備え、
前記空間部における前記呼気の送り方向の長さは、前記回転軸部の外周面からの羽根部の突出長さの半分以上で、突出長さ以下とすることができる。
【0010】
上記した課題を解決するための第2の発明は、
使用者が吹き付けた呼気を導入するための呼気入口が設けられたケース体と、
前記ケース体における前記呼気入口の直下流側に該呼気入口と対向して配置され、前記呼気入口を通って流入した使用者の呼気を更に下流側に送るために、回転軸部とその外周面から半径方向に突出する複数枚の羽根部とを有するファンと、
前記ケース体における前記ファンよりも下流側に配置され、前記ファンによって送られた使用者の呼気中のアルコール分を検出するセンサと、を備え、
前記ケース体の呼気入口は前記ファンの回転軸部と対向する位置に設けられていることを特徴としている。
【0011】
この発明では、ケース体の呼気入口がファンの回転軸部と対向する位置に設けられているため、使用者が吹き込んだ呼気はファンの回転軸部に当たり、その流速を低下して下流側のセンサ部分に送出されるため、常に良好な測定結果が得られる。
【0012】
上記した課題を解決するための第3の発明は、
使用者が吹き付けた呼気を導入するための呼気入口が設けられたケース体と、
前記ケース体における前記呼気入口の直下流側に、該呼気入口と対向して配置され、前記呼気入口を通って流入した使用者の呼気を更に下流側に送るファンと、
前記ケース体における前記ファンよりも下流側に配置され、前記ファンによって送られた使用者の呼気中のアルコール分を検出するセンサと、
前記ファンと前記センサとの間に配置され、前記ファンによって送られた使用者の呼気を当てて、該呼気を前記ファンと前記センサとの間にいったん停留させてから下流側に送って前記センサに接触させるための邪魔板と、
を備えることを特徴としている。
【0013】
この発明では、ファンとセンサとの間に邪魔板が設けられているため、使用者が吹き込んだ呼気は邪魔板に当たり、その流速を低下して下流側のセンサに送出される。これにより、常に良好な測定結果が得られる。
【0014】
前記ファンは、回転軸部とその外周面から半径方向に突出する複数枚の羽根部と、を備え、
前記邪魔板における前記回転軸部の軸心と対向する部分には、使用者の呼気を下流側に送るための通気孔が設けられ、
前記通気孔の内径は、前記ファンによって下流側に送られた呼気が前記邪魔板に当たって上流側に逆流し、前記ファンの回転軸部に当たってから前記センサが設けられた部分に送られるように前記ファンの回転軸部の外径よりも小とすることが望ましい。
【0015】
上記した課題を解決するための第4の発明は、
使用者が吹き付けた呼気を導入するための呼気入口が設けられたケース体と、
前記ケース体における前記呼気入口の直下流側に配置され前記呼気入口を通って流入した使用者の呼気を当てていったん停留させるための第1邪魔板と、
前記ケース体における前記第1邪魔板よりも下流側に配置され、該第1邪魔板を超えて送られた使用者の呼気中のアルコール分を検出するセンサと、
前記第1邪魔板と前記センサとの間に配置され、使用者の呼気が前記センサと接触する前にその呼気を当てていったん停留させるための第2邪魔板と、
を備えることを特徴としている。
【0016】
この発明では、ファンの代わりに第1邪魔板が設けられ、第1邪魔板とセンサとの間に第2邪魔板が設けられている。このため、使用者が吹き込んだ呼気は第1邪魔板に当たりその流速を低下させて、更に第2邪魔板に当たって下流側のセンサが設けられた部分に送出される。これにより、常に良好な測定結果が得られる。
【0017】
しかもこの発明の場合、ファンが不要であるため大幅なコスト低減が可能となる。
【0018】
そして、第1邪魔板に通気孔を設けることにより、使用者が弱い呼気を吹き込んだときであっても良好な測定結果が得られる。
【0019】
そして、これらのアルコール検出装置を、車両に搭載され、使用者がケース体の呼気入口を自身の口元に近づけて呼気を吹き込む形のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施例のアルコール検出装置101が搭載された運転席の概略図である。
【図2】第1実施例のアルコール検出装置101の全体斜視図である。
【図3】同じく分解斜視図である。
【図4】アルコール検出センサ16の斜視図である。
【図5】(a)は第1実施例のアルコール検出装置101の断面模式図、(b)は比較例のアルコール検出装置100の断面模式図である。
【図6】第2実施例のアルコール検出装置102の断面模式図である。
【図7】(a)は第3実施例のアルコール検出装置103の断面模式図、(b)は変形例のアルコール検出装置103’の断面模式図である。
【図8】(a)は第4実施例のアルコール検出装置104の断面模式図、(b)は変形例のアルコール検出装置104’の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書では、車両に搭載されたアルコール検出装置について説明する。
【0022】
図1は第1実施例のアルコール検出装置101が搭載された運転席の概略図、図2は第1実施例のアルコール検出装置101の全体斜視図、図3は同じく分解斜視図、図4はアルコール検出センサ16の斜視図である。
【実施例1】
【0023】
図1に示されるように、車両(自動車)の運転席に第1実施例のアルコール検出装置101が取り付けられている。このアルコール検出装置101は、例えば運転席のインストゥルメントパネル1に対して着脱自在に、ケーブル2で連結されている。運転席に着席した運転者M(使用者)が、車両のエンジンを始動させようとするとき、アルコール検出装置101に呼気を吹き付ける。この呼気中のアルコール濃度が所定値以下であれば、アルコール検出ECU(図示せず)は、運転者Mが酒気帯び状態ではないと判断し、エンジンの始動を許可する。もし、呼気中のアルコール濃度が所定値を超えるものであれば、アルコール検出装置101のECU(図示せず)は、運転者Mが酒気帯び状態であると判断し、エンジンの始動を許可しない。これにより、飲酒運転を防止する。
【0024】
図2及び図3に示されるように、第1実施例のアルコール検出装置101は、フロントパネル3とリアパネル4とを備えるケース体5に、複数種類のセンサ(後述)が装着された複合ガスセンサの形態としてなる。ケース体5には枠部材6が内装されていて、この枠部材6にファン7とセンサ支持部材8が取り付けられる。センサ支持部材8は、ファン7を固定する固定板部9と、呼気をスムーズに流すためにテーパ筒形状とされた第1支持部11と、各センサを固定するためにストレート筒形状とされた第2支持部12とを備えている。センサ支持部材8の第2支持部12に、基板13に実装された各センサ(温度センサ14、湿度センサ15、アルコール検出センサ16及び酸素センサ17)が支持される。
【0025】
フロントパネル3とリアパネル4とが一体となって形成されるケース体5は運転者Mが把持しやすい大きさであり(図1参照)、把持したときのフィーリングを良好にするためにその下部3a、4aが連続的に細くなっている。そして、そのフロントパネル3の正面部には、運転者Mが吹き付けた呼気を通すための吸気孔18(呼気入口)が設けられている。第1実施例のアルコール検出装置101の場合、多数の小径の吸気孔18が設けられている。
【0026】
センサ支持部材8の固定板部9に固定されたファン7は、フロントパネル3の吸気孔18に対向配置されるようにして枠部材6に組み付けられる。このファン7の駆動手段は、例えばアウターロータ型のブラシレスDCモータであり、枠部19と、枠部19に回転可能に支持される回転軸部21と、その外周面から半径方向に突出する複数枚(本実施例の場合、8枚)の羽根部22とを備えている。また、枠部材6には、スピーカ23が装着された基板24と、液晶パネル25及びスイッチ26が装着されたスイッチ基板27が取り付けられる。液晶パネル25は、運転者Mのアルコール濃度の検出結果を文字表示するものであり、フロントパネル3の表示窓28から運転者Mが視認可能である。スイッチ26は、ファン7、各センサ14〜17、スピーカ23及び液晶パネル25に通電して、アルコール検出装置101を作動可能とするものである。このスイッチ26は、フロントパネル3の側壁部に設けられた窓部29に突出状態で配置され、ノブ31を押すことによって作動する。なお、図3において32は、アルコール検出装置101のケーブル2を保護するためのブッシュであり、33は、リアパネル4に設けられた排気孔である。
【0027】
運転者Mがフロントパネル3の吸気孔18に吹き付けた呼気は、吸気孔18を通過し、ファン7によってセンサ支持部材8の部分に送出される。このとき、ファン7によって呼気が攪拌され、呼気と外気(呼気と同時に流入する空気、及び予めセンサ支持部材7内に存する空気)とが混ざり合う。そして、各センサ14〜17に接触することにより呼気のアルコール濃度が検出された後、リアパネル4の排気孔33ら外部(車両の室内)に排気される。
【0028】
次に、各センサ14〜17について説明する。温度センサ14は、例えば「サーミスタ」と称され、ニッケル、コバルト、マンガン等の酸化物よりなるセラミクス半導体である。呼気の温度は、運転者Mによる呼気の吹付け方法によって変化する。例えば、運転者Mが吹き付けた呼気が体内(肺)から生じたものである場合、その温度は高く、しかもアルコールを含んでいるか否かの判定が容易である。しかし、口内から生じたものであったり、不正手段によって吹き付けたものであったりする場合、その温度は低い。また、外気温によっても変化する。このため、温度センサ14により、呼気の温度を検出することにより、それが運転者Mの肺からの呼気であるか否かを判定する。
【0029】
湿度センサ15は、空気中の水分量の変化によってセンサ素子の導電率や静電容量が変化することによって、当該空気の湿度を計測するセンサ(例えば、容量変化型湿度センサ)である。ここでアルコール検出センサ16は、外気中の湿度にも反応してしまう場合がある。また、運転者Mの呼気には、当該運転者Mが酒気帯び状態でなくてもアルコールを含んでいるため、アルコール検出センサ16が通常状態(酒気を帯びていない状態)の呼気のアルコールを検出してしまう場合がある。このため、湿度センサ15が検出する湿度をモニタすることにより、アルコール検出センサ16が外気の湿度や通常状態の呼気のアルコールを検出しても、それらの検出値を採用しないようにすることができる。
【0030】
図4に示されるように、アルコール検出センサ16は半導体式のガスセンサであり、金属酸化物(例えば酸化スズ)の半導体の表面にガス(呼気中のアルコール)が吸着することによる電導度(電気抵抗)の変化を測定するものである。ベース部材34の上面に感ガス素子35(金属酸化物の半導体)が設置されていて、その周囲が金属のキャップ36で覆われている。キャップ36の上面に窓部36aが設けられ、その窓部36aが二重金網構造のメッシュ37で覆われている。このメッシュ37により、検出される呼気の流速の影響が軽減される。
【0031】
酸素センサ17は、外気と混ざり合うことによって希釈される呼気の酸素濃度を検出するものであり、例えばジルコニア固体電解質を用いたものとすることができる。ここで、車室内の外気の酸素濃度は、天候や乗員の数が変化してもほぼ一定である。しかし、呼気の酸素濃度(換言すれば、呼気の希釈率)は、外気によって希釈された場合であっても外気の酸素濃度よりも低い。即ち、酸素センサ17が検出する酸素濃度の変化をモニタすることにより、センサ支持部材8内の空気に呼気が含まれているか否かを判定することができる。
【0032】
第1実施例のアルコール検出装置101について、更に詳細に説明する。図5において、(a)は本発明の第1実施例のアルコール検出装置101の断面模式図であり、(b)は通常の状態(前述した不具合を想定しない状態)で設計されると想定されるアルコール検出装置100の断面模式図で、本発明との差異を明確にするための比較例として示したものである。なお、以下の図において、センサはアルコール検出センサ16と酸素センサ17のみを図示する。
【0033】
図5の(a)に示される第1実施例のアルコール検出装置101と図5の(b)に示される比較例のアルコール検出装置100とを比較すると、第1実施例のアルコール検出装置101は、フロントパネル3とファン7の回転軸部21との隙間eが、比較例のアルコール検出装置100における隙間e’よりも長くなっている。即ち、アルコール検出装置100における隙間e’が1〜2mmであるとすると、第1実施例のアルコール検出装置101の隙間eは5mm程度であり、フロントパネル3とファン7との間に大きな空間部Qが形成されている。
【0034】
運転者Mがアルコール検出装置100、101の吸気孔18に強い呼気Aを吹き込んだとき、比較例のアルコール検出装置100の場合、その呼気Aはすぐにファン7によって攪拌されて下流側に送出される。呼気Aによっては、図5の(b)の矢印38で示されるように、ファン7の羽根部22の隙間をすり抜けて大きな流速でセンサ部分(センサ支持部材8において、各センサ14〜17が配置されている部分。即ち、第2支持部12をいう。)に送出されてしまうものもある。すると、安定した測定結果を得ることが困難になる。
【0035】
これに対して第1実施例のアルコール検出装置101の場合、吹き込まれた呼気Aはいったん空間部Qで停留した後、ファン7によって下流側に送出される。図5の(a)において、空間部Qで停留している状態の呼気を符号A’で示す。即ち、運転者Mによって吹き込まれた強い呼気Aは、空間部Qで停留することによってその流速が小さくなった弱い呼気A’となり、ファン7によって攪拌されて下流側のセンサ部分(第2支持部12)に送出される。また、乱流状態の呼気Aが空間部Qで停留してその流速を小さくすることにより、層流に近い状態の呼気A’となり、ファン7によって下流側のセンサ部分に送出される。その状態を、矢印39で示す。これにより、運転者Mが呼気Aを強く吹き込んだ場合であっても、弱く吹き込んだ場合であっても、その呼気Aがセンサ部分を通過するときの流速が小さく、かつ一定となるため常に安定した測定結果を得ることができる。
【0036】
空間部Qの隙間eは、例えばファン7の羽根部22の突出長さH(回転軸部21の外周面から半径方向の突出長さ)の半分以上で、その突出長さH以下とすることができる。
【実施例2】
【0037】
次に、第2実施例のアルコール検出装置102について説明する。以下の実施例において、第1実施例のアルコール検出装置101と同一の部材には同一の符号を付し、第1実施例のアルコール検出装置101と異なる部分について説明する。図5の(b)に示される比較例のアルコール検出装置100では、フロントパネル3の吸気孔18は、ファン7の回転軸部21と対向する部分だけでなくその羽根部22と対向する部分にも設けられている。これにより、使用者が強く吹き込んだ呼気Aは、そのままの速い流速で羽根部22を通過して下流側に送出されるおそれがある。これに対して、図6に示される第2実施例のアルコール検出装置102は、フロントパネル3における吸気孔41が、ファン7の回転軸部21と対向する位置に設けられ、かつその大きさ(孔径d1)が回転軸部21の外径Dよりも小さくなっている。運転者Mが吹き込んだ強い呼気Aは、ファン7の回転軸部21に衝突して逆流するものと、周囲に流れてファン7により、下流側のセンサ部分に送出されるものとに分かれる。ここで、吸気孔41の孔径d1がファン7の回転軸部21の外径Dよりも小さいため、運転者Mが吹き込んだ強い呼気Aのうちの大半は逆流し、残りの一部の呼気Aがその流速を低下させて層流に近い状態となって下流側のセンサ部分に送出される。即ち、運転者Mが吹き込んだ呼気Aが、そのままファン7の羽根部22の隙間をすり抜けてしまうことが防止される。これにより、運転者Mが呼気Aを強く吹き込んだ場合であっても、弱く吹き込んだ場合であってもその呼気Aがセンサ部分を通過するときの流速が小さく、かつ一定となるため常に安定した測定結果を得ることができる。
【実施例3】
【0038】
次に、第3実施例のアルコール検出装置103について説明する。図7の(a)に示されるように、第3実施例のアルコール検出装置103は、センサ支持部材8におけるファン7とセンサ16、17との間で、ファン7よりも距離Lだけ下流側に離れた位置に、リング状の邪魔板42が取り付けられている。邪魔板42の軸心部分には、呼気Aが通る通気孔42aが設けられている。邪魔板42の通気孔42aの孔径d2は、ファン7の回転軸部21の外径Dよりも小さい。運転者Mが吹き込んだ強い呼気Aのうち、ファン7の羽根部22の隙間をすり抜けたものがあっても邪魔板42に当たって逆流し、ファン7の回転軸部21に当たってその流速を低下させ、かつ回転軸部21の外径Dよりも小さい孔径d2の通気孔42aを通ってセンサ部分に送出される。これにより、運転者Mが呼気Aを強く吹き込んだ場合であっても、弱く吹き込んだ場合であってもその呼気Aがセンサ部分を通過するときの流速が小さく、かつ一定となるため常に安定した測定結果を得ることができる。
【0039】
更に、図7の(b)に示される第3実施例の変形例のアルコール検出装置103’のように、ファン7の回転軸部21と邪魔板42との距離L’を第3実施例のアルコール検出装置103における距離Lよりも大きくし、ファン7と邪魔板42との間のスペースを大きくしてもよい。これにより、呼気Aの流速が更に低下されるため、より層流に近い状態となってセンサ部分に送出される。このスペースの距離L’は、例えばファン7の羽根部22の突出長さH以上とすることができる。
【実施例4】
【0040】
次に、第4実施例のアルコール検出装置104について説明する。図8の(a)に示される第4実施例のアルコール検出装置104は、第3実施例のアルコール検出装置103において、ファン7に代えて別の邪魔板43を設置したものである。即ち、第4実施例のアルコール検出装置104は、2つの邪魔板(第1邪魔板43と第2邪魔板44)を備えている。第1及び第2の邪魔板43、44は、フロントパネル3の側から所定の距離をおいてこの順で配置されている。第2邪魔板44の構成は、第3実施例のアルコール検出装置103の邪魔板42と同一である。第1邪魔板43は、第2邪魔板44と同程度の大きさであり、第1実施例のアルコール検出装置101のファン7の枠部19と同じ大きさの枠部45内に、フロントパネル3の吸気孔18と対向するように配置されている。そして、フロントパネル3と第1邪魔板43との間、第1邪魔板43と第2邪魔板44との間及び第2邪魔板44の外周面と枠体45の内周面との間にそれぞれ空間部Q1、Q2、Q3が形成されている。
【0041】
運転者Mが吹き込んだ強い呼気Aは、空間部Q1で第1邪魔板43に当たってその流速を低下させて空間部Q3に回り込み、空間部Q2で第2邪魔板44に当たって逆流し、更に流速を低下させて層流に近い状態となり、通気孔44aを通ってセンサ部分に送出される。また、空間部Q3に直接入り込んだ呼気Aは、空間部Q2で第2邪魔板44に当たって逆流し、更に流速を低下させて層流に近い状態となり、通気孔44aを通ってセンサ部分に送出される。これにより、運転者Mが呼気Aを強く吹き込んだ場合であっても、その呼気Aがセンサ部分を通過するときの流速が小さく、かつ一定となるため安定した測定結果を得ることができる。
【0042】
この実施例のアルコール検出装置104の場合、使用者が弱い呼気Aを吹き込んだ場合、その流速が低下して呼気Aが下流側のセンサ部分にまで送出されないおそれがある。これを防ぐため、図8の(b)に示される第4実施例の変形例のアルコール検出装置104’のように、第1邪魔板43に多数の細い通気孔43aを軸方向(呼気Aの送出方向)に沿って設けてもよい。これにより、第1邪魔板43に通気孔43aが設けられている場合であっても、運転者Mが強く吹き込んで乱流状態となっている呼気Aの大半は、第1邪魔板43に当たって逆流するため、センサの測定結果に悪影響を与えることはない。第1邪魔板43の通気孔43aの孔径は、フロントパネル3の1つの呼気孔18の孔径よりも小さくすることが望ましい。
【0043】
この結果、運転者Mが吹き込んだ呼気Aの強弱に関係なく、その呼気Aの流速を低下させて下流側のセンサ部分に送出することができる。第4実施例のアルコール検出装置104、104’ではファン7が不要となるため、大幅なコスト低減が可能となる。
【0044】
上記の第1ないし第4の実施例のアルコール検出装置101〜104、101’、104’では、アルコール検出センサ16と酸素センサ17とを呼気Aの送出方向に対して同一円周上に配置している。しかし、それらを呼気Aの送出方向に沿って直列に配置してもよい。
【0045】
本明細書では、上記の第1ないし第4の実施例のアルコール検出装置101〜104、101’、104’が車両に搭載される場合について説明した。しかし、上記のアルコール検出装置101〜104、101’、104’を車両に搭載される以外の用途で使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、車両(例えば、自動車)のアルコール検出装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
101〜104、103’、104’ アルコール検出装置
5 ケース体
7 ファン
14 温度センサ(センサ)
15 湿度センサ(センサ)
16 アルコール検出センサ(センサ)
17 酸素センサ(センサ)
18、41 吸気孔(呼気入口)
21 回転軸部
22 羽根部
42、43、44 邪魔板
43a 通気孔
A、A’ 呼気
M 運転者(使用者)
Q 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が吹き付けた呼気を導入するための呼気入口が設けられたケース体と、
前記ケース体における前記呼気入口の直下流側に該呼気入口と対向して配置され、前記呼気入口を通って流入した使用者の呼気を更に下流側に送るファンと、
前記ケース体における前記ファンよりも下流側に配置され、前記ファンによって送られた使用者の呼気中のアルコール分を検出するセンサと、を備え、
前記ケース体の呼気入口と前記ファンとの間に、前記使用者の呼気が前記ファンによってその下流側に送られる前にその呼気をいったん停留させるための空間部を形成したことを特徴とするアルコール検出装置。
【請求項2】
前記ファンは、回転軸部とその外周面から半径方向に突出する複数枚の羽根部と、を備え、
前記空間部における前記呼気の送り方向の長さは、前記回転軸部の外周面からの羽根部の突出長さの半分以上で、突出長さ以下であることを特徴とする請求項1に記載のアルコール検出装置。
【請求項3】
使用者が吹き付けた呼気を導入するための呼気入口が設けられたケース体と、
前記ケース体における前記呼気入口の直下流側に該呼気入口と対向して配置され、前記呼気入口を通って流入した使用者の呼気を更に下流側に送るために、回転軸部とその外周面から半径方向に突出する複数枚の羽根部とを有するファンと、
前記ケース体における前記ファンよりも下流側に配置され、前記ファンによって送られた使用者の呼気中のアルコール分を検出するセンサと、を備え、
前記ケース体の呼気入口は前記ファンの回転軸部と対向する位置に設けられていることを特徴とするアルコール検出装置。
【請求項4】
使用者が吹き付けた呼気を導入するための呼気入口が設けられたケース体と、
前記ケース体における前記呼気入口の直下流側に、該呼気入口と対向して配置され、前記呼気入口を通って流入した使用者の呼気を更に下流側に送るファンと、
前記ケース体における前記ファンよりも下流側に配置され、前記ファンによって送られた使用者の呼気中のアルコール分を検出するセンサと、
前記ファンと前記センサとの間に配置され、前記ファンによって送られた使用者の呼気を当てて、該呼気を前記ファンと前記センサとの間にいったん停留させてから下流側に送って前記センサに接触させるための邪魔板と、
を備えることを特徴とするアルコール検出装置。
【請求項5】
前記ファンは、回転軸部とその外周面から半径方向に突出する複数枚の羽根部と、を備え、
前記邪魔板における前記回転軸部の軸心と対向する部分には、使用者の呼気を下流側に送るための通気孔が設けられ、
前記通気孔の内径は、前記ファンによって下流側に送られた呼気が前記邪魔板に当たって上流側に逆流し、前記ファンの回転軸部に当たってから前記センサが設けられた部分に送られるように前記ファンの回転軸部の外径よりも小とされていることを特徴とする請求項4に記載のアルコール検出装置。
【請求項6】
使用者が吹き付けた呼気を導入するための呼気入口が設けられたケース体と、
前記ケース体における前記呼気入口の直下流側に配置され前記呼気入口を通って流入した使用者の呼気を当てていったん停留させるための第1邪魔板と、
前記ケース体における前記第1邪魔板よりも下流側に配置され、該第1邪魔板を超えて送られた使用者の呼気中のアルコール分を検出するセンサと、
前記第1邪魔板と前記センサとの間に配置され、使用者の呼気が前記センサと接触する前にその呼気を当てていったん停留させるための第2邪魔板と、
を備えることを特徴とするアルコール検出装置。
【請求項7】
前記第1邪魔板には、前記使用者の呼気の送り方向に沿って該呼気を通過させるための通気孔が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のアルコール検出装置。
【請求項8】
前記第1邪魔板の通気孔は、前記呼気入口の孔径よりも小さいものが複数設けられていることを特徴とする請求項7に記載のアルコール検出装置。
【請求項9】
車両に搭載され、使用者がケース体の呼気入口を自身の口元に近づけて呼気を吹き込むことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のアルコール検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−145147(P2011−145147A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5746(P2010−5746)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】