説明

アルコール飲料および製造方法および容器詰方法

【課題】 現在使用する製造装置をそのまま用いて、木桶仕込みや木製釜蒸留を用いて製造したアルコール飲料等と比較して、香りや味等で遜色のないアルコール飲料とその製造方法、容器詰方法を提供する。
【解決手段】 木質の材料を、アルコール飲料の製造過程で当該飲料の原料液に浸漬するように入れたこと、を特徴とするアルコール飲料。および、木質の材料を、当該飲料の製造過程で原料液に入れること、を特徴とするアルコール飲料の製造方法。また、容器内に、アルコール飲料と木質の材料を入れて封止すること、を特徴とするアルコール飲料の容器詰方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール飲料とその製造方法とその容器詰方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料には醸造酒、蒸留酒、熟成酒等があり、それぞれ独自の製造方法、貯蔵方法、容器詰方法等を使って作られ、これらにより、それぞれ独特の香りや味を特徴として持っている。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、最近のアルコール飲料の製造方法を見ると、衛生管理上や品質の向上、安定性の向上のためと考えられるが、金属製の容器を用いた装置での製造が主流となっている。このため、需要や生産者が少なくなり、入手が困難になっていることもあると思われるが、木桶を使った仕込みや木製釜を使った蒸留などの製造工程は無くなりつつある。したがって、これら装置を作っている木質の材料ゆかりの独特の香りや味を持ったアルコール飲料等を楽しむ機会はないに等しくなっている。同様に、独特の香りや味を楽しめる木樽詰アルコール飲料等も、大きさや容量が適当で楽に入手でき、手軽に楽しめるようなものは流通していないといってよい。
【0004】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、現在使用する製造装置をそのまま用いて、木桶仕込みや木製釜蒸留を用いて製造したアルコール飲料等と比較して、香りや味等で遜色のないアルコール飲料とその製造方法を提供することを目的としている。また、木樽入りアルコール飲料等と比較して、楽に入手でき手軽に楽しめる、香りや味等で遜色のないアルコール飲料とその容器詰方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係わるアルコール飲料は、木質の材料を、アルコール飲料の製造過程で当該飲料の原料液に浸漬するように入れたこと、を特徴とする。
【0006】
請求項2に係わるアルコール飲料の製造方法は、木質の材料を、アルコール飲料の製造過程で当該飲料の原料液に入れること、を特徴とする。
【0007】
請求項3に係わる容器詰アルコール飲料は、容器内に、アルコール飲料と木質の材料を、当該飲料に木質の材料が浸漬するように入れ、当該容器の口部を封止したこと、を特徴とする。
【0008】
請求項4に係わるアルコール飲料の容器詰方法は、容器内に、アルコール飲料と木質の材料を入れて封止すること、を特徴とする。
【0009】
請求項5に係わる請求項1から請求項4に記載の木質の材料は、前記記載の当該材料であって、当該飲料を原料から製造、貯蔵、流通までのすべての過程で使用するおよび/または使用していた、蒸籠、桶、釜、樽等の容器や管等を構成する木質の材料であること、を特徴とする。
【0010】
請求項6に係わる請求項1から請求項5に記載の木質の材料は、前記記載の当該材料であって、当該材料に焼き印や焼き焦がし、透かし彫り等の加工をしたものであること、を特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図示例とともに詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係わるアルコール飲料製造方法の具体的な実施例について示した概略図である。本実施例では、アルコール飲料に清酒等の醸造酒を想定している。図1では、発酵装置1の中にアルコール飲料の原料液2があり、原料液2が発酵している状態を示している。また、この発酵中の原料液2に、木質材料3は浸漬されている。この発酵装置1は金属製であり、原料液2と接触しても何の変化も生じない。しかし、浸漬されている木質材料3は原料液2と接触することにより、原料液の作用をうけ、木質材料3の成分が原料液2中に抽出される。従来おこなわれていた木桶仕込みの発酵をみると、木桶の内表面と原料液が接触し、上記と同様に木桶材料の成分が原料液中に抽出される。このように本発明によれば、金属製発酵装置1をそのまま用いても、木桶仕込みと同様に木質材料3の成分が原料液2中に溶け込んだ、独特の香りと味を持つアルコール飲料が製造できる。
【0013】
図2は、本発明に係わるアルコール飲料製造方法の具体的な他の実施例について示した概略図である。本実施例では、アルコール飲料に焼酎等の蒸留酒を想定している。図2では、蒸留装置4の中にアルコール飲料の原料液2があり、原料液2が加熱装置5で加熱され、蒸留されている状態を示している。木質材料3は、蒸留中の原料液2に浸漬されている状態と、蒸留装置出口部で蒸留液6に浸漬されている状態を示している。蒸留液6は原料液2の形態が変化したものであり、アルコール飲料の原料液2と解釈できる。木質材料3は、どちらか一方に配置でも、両方に配置でも良い。この蒸留装置4は金属製であり、原料液2と接触しても何の変化も生じない。しかし、浸漬されている木質材料3は原料液2と接触することにより、原料液2の作用をうけ、木質材料3の成分が原料液2中に抽出される。従来おこなわれていた木製等の容器や管を用いた蒸留装置での蒸留をみると、容器や管の内表面と原料液が接触し、上記と同様に木製等の材料の成分が原料液中に抽出される。このように本発明によれば、金属製の蒸留装置4をそのまま用いても、木製等の容器や管を用いた蒸留装置での蒸留と同様に木質材料3の成分が原料液2中に溶け込んだ、独特の香りと味を持つアルコール飲料が製造できる。
【0014】
また、本発明によれば、入手が困難になった機器を用いなくとも、機器に使われている木質材料3があれば、材料ゆかりの香りや味を持ったアルコール飲料を製造でき、また、提供できる。しかも、木質材料3の形状は問わないので、木質材料3の成分が効果的に抽出されるように表面積の大きな形状とすることができる。この場合、必要に応じてティーパックのような袋に入れて浸漬しても良い。この結果、木質材料3の有効利用を計ることができる。また、木質材料3の一部を焼き焦がす等の加工を施すことにより、別の香りや味を持つアルコール飲料も提供できる。満足できる香りや味を得られれば良く、本発明は木質材料3を原料液2にどの様に浸漬するかにはとらわれない。また、上記に詳述したのは発酵過程と蒸留過程であるが、本発明はこの過程にとらわれるものではない。
【0015】
図3は、本発明に係わる容器詰アルコール飲料の具体的な実施例について示した概略図である。本実施例では、アルコール飲料に清酒等の醸造酒を想定している。図3では、適当な形と容量を持ち内容が判るような透明度の容器7に、アルコール飲料9と木質材料3がいれられていて、容器7上部が封止部材8で封止されている容器詰アルコール飲料を示している。アルコール飲料9に浸漬されている木質材料3は、変形可能な薄板形であり、本実施例では、アルコール飲料の説明書きが表面に焼き印加工10されている。この容器7はガラスやプラスチック等でできており、アルコール飲料9と接触しても何の変化も生じない。しかし、浸漬されている木質材料3はアルコール飲料9と接触することにより、アルコール飲料9の作用をうけ、木質材料3の成分がアルコール飲料9中に抽出される。木樽詰のアルコール飲料をみると、木樽の内表面とアルコール飲料が接触し、上記と同様に木樽材料の成分がアルコール飲料中に抽出される。このように本発明によれば、適当な容量を持つガラス等の容器7を用いた場合でも、木樽詰と同様に木質材料3の成分がアルコール飲料9中に溶け込んだ、独特の香りと味を持つ容器詰アルコール飲料にすることができる。また、適当な容量であるので手軽に入手でき、独特の香りと味を楽しむことが可能となる。
【0016】
図4は、本発明に係わる容器詰アルコール飲料の具体的な他の実施例について示した概略図である。本実施例では、アルコール飲料にウイスキー等の熟成酒を想定している。図4では、適当な形と容量を持つ容器7に、アルコール飲料9と木質材料3がいれられていて、容器上部が封止部材8で封止されている容器詰アルコール飲料を示している。この容器7は陶器やガラス等でできており、アルコール飲料9と接触しても何の変化も生じない。しかし、浸漬されている木質材料3はアルコール飲料9と接触することにより、アルコール飲料9の作用をうけ、木質材料3の成分がアルコール飲料中に抽出される。ウイスキー等の熟成酒では原料液を木樽詰し、10年、20年と長期保存して熟成させる。この間、木樽の内表面と原料液が接触し、上記と同様に木樽材料の成分が原料液中に抽出され、長期間かけて香りや味が変化していく。しかし、保存が終わって陶器やガラス等の容器に容器詰めされると、その後は熟成は進まず、香りや味は変化しない。本発明によれば、適当な容量を持ち陶器やガラス等の容器7を用いた容器詰後でも、木樽詰保存時と同様に木質材料3の成分がアルコール飲料中に溶け出すために、熟成を進行させることができる。したがって、容器詰時とは異なった香りや味を持ち、時間とともに追熟成可能な容器詰アルコール飲料を提供できる。また、適当な容量であるので手軽に入手でき、容器ごとに微妙に異なる香りや味を楽しむことが可能となる。
【0017】
また、本発明によれば、木質材料3をアルコール飲料9とともに容器詰めすることにより、材料ゆかりの香りや味を持った容器詰アルコール飲料とすることができ、また、時間とともに追熟成可能な容器詰アルコール飲料を提供できる。しかも、木樽等の機器に使われている材料であれば、実績のある香りと味を、最新の機器と製法を用いても再現できる。昔の機器を集めて、再現する必要はないのである。
【0018】
また、本発明では、木質材料3を使うことによる香りや味を追求することが目的であり樽材としての要求はないので、樽材には向かない端材や間伐材を木質材料3として利用することができ、資源の有効利用が可能である。また、木質材料3の成分が効果的に抽出されるように表面積を大きくするように加工することが好ましく、この結果、木樽としての役目が終わった木樽材料も使用可能となり、さらなる資源の有効利用を計ることができる。表面積を大きくする加工をした場合、必要に応じてティーパックのような袋に入れて浸漬することで、木質材料3が分散することを防ぐことができ、飲みやすい容器詰めアルコール飲料とすることができる。
【0019】
さらに、本発明によれば、木質材料3に焼き印や透かし彫り等の加工10をすることにより、宣伝効果のあるラベルとすることができる。この場合、内容が確認できる透明度を持つ容器を使うと効果的である。また、焼き印や焼き焦がし等の加工は、木質材料3の成分が溶け出すのに有効な手段の一つであるとともに、微妙に変化した香りや味を持つアルコール飲料を提供できる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、請求項1及至2の発明によれば、金属製の製造装置を用いて、木桶や木樽の材料ゆかりの香りや味を持つアルコール飲料を製造できる。したがって、現在生産されなくなりつつある木桶や木樽等の機器を用いなくとも、独特の香りや味を持つアルコール飲料を提供できる。
【0021】
また、請求項3及至4の発明によれば、適当な容量の容器を用いて、木樽の材料ゆかりの香りや味を持つ容器詰アルコール飲料を提供できる。また、容器詰後であっても、追熟成可能な容器詰アルコール飲料をも提供可能である。容量が適当であるため、特別な機会でしか味わえなかった樽酒のような、独特の香りや味を持つアルコール飲料を手軽に楽しむことができる。また、容器詰後にも追熟成可能であるので、アルコール飲料の保管等の環境の違いで、各々の容器ごとに微妙に香りや味が異なる容器詰アルコール飲料を提供できる。
【0022】
また、請求項5及至6の発明によれば、アルコール飲料の製造や保存、保管などに使用しているおよび/または使用していた木桶や木樽等の機器の材料を使うので、木桶や木樽等の機器を使ってアルコール飲料を製造しなくても、材料ゆかりの香りや味を持つアルコール飲料を提供できる。また、木質材料に焼き印や透かし彫り等の加工を使って、アルコール飲料をアピールするラベルとすることができる。また、木質材料に焼き印や焼き焦がしの加工をすることで、木質材料の成分を効果的に抽出させるとともに、微妙に変化した香りや味を持つ容器詰アルコール飲料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わるアルコール飲料製造方法の具体的な実施例について示した概略図である。
【図2】 本発明に係わるアルコール飲料製造方法の具体的な他の実施例について示した概略図である。
【図3】 本発明に係わる容器詰アルコール飲料の具体的な実施例について示した概略図である。
【図4】 本発明に係わる容器詰アルコール飲料の具体的な他の実施例について示した概略図である。
【符号の説明】
1 発酵装置
2 原料液
3 木質材料
4 蒸留装置
5 加熱装置
6 蒸留液
7 容器
8 封止部材
9 アルコール飲料
10 焼き印加工

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質の材料を、
アルコール飲料の製造過程で当該飲料の原料液に浸漬するように入れたこと
を特徴とする、アルコール飲料。
【請求項2】
木質の材料を、
アルコール飲料の製造過程で当該飲料の原料液に入れること
を特徴とする、アルコール飲料の製造方法。
【請求項3】
容器内に、
アルコール飲料と木質の材料を、当該飲料に木質の材料が浸漬するように入れ、当該容器の口部を封止したこと
を特徴とする容器詰アルコール飲料。
【請求項4】
容器内に、
アルコール飲料と木質の材料を入れて封止すること
を特徴とするアルコール飲料の容器詰方法。
【請求項5】
前記記載の当該材料は、
当該飲料を原料から製造、貯蔵、流通までのすべての過程で使用するおよび/または使用していた、
蒸籠、桶、釜、樽等の機器を構成する木質の材料であること
を特徴とする、請求項1から請求項4に記載の木質の材料。
【請求項6】
前記記載の当該材料は、
当該材料に焼き印や焼き焦がし、透かし彫り等の加工をしたものであること
を特徴とする、請求項1から請求項5に記載の木質の材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−340709(P2006−340709A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199397(P2005−199397)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(502377006)