説明

アルコール飲料の製造方法

【課題】
未成熟な野菜類及び/又は果実類を用いても、完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを充分にもった、上等な野菜酒(野菜類酒)及び/又は果実酒(果実類酒)を作ることである。
【解決手段】
液状を呈する固液混合物に太陽光や太陽光類似光を当て、固液混合物を熟成して完熟する。この時、糖度も上がるが、固液混合物が完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを持つ。熟成した固液混合物に酵母を加える。酵母の営む代謝により、熟成した固液混合物の糖類を無酸素的に分解してエチル・アルコールと炭酸ガスを生じ発酵し、完熟した風味や香りのあるアルコール飲料を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未熟な野菜類及び/又は果実類を用いた、アルコール飲料の製造方法に関する技術分野である。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、リンゴ、モモ、ナシ、サクランボ、イチゴ、ブドウ、コケモモ、柑橘類、トマト、ニンジンなどの様々な野菜類及び/又は果実類を使って、数多くの国で、様々なアルコール飲料が製造されている。
【0003】
果汁に酵母を加えて発酵させる過程において、白麹菌を用いて製麹した白麹を添加し、発酵期間中時々かきまぜながら白麹中に蓄積された有機酸を発酵液中に抽出させる(例えば、特許文献1参照。)。がある。
【0004】
また、果実類を常法により粉砕、搾汁して生果汁を得、これに酸素または酸素含有気体を強制的に接触反応せしめ、色源体を予め酸化重合させて色度を一旦100〜250%増大させる(例えば、特許文献2参照。)。がある。
【0005】
また、野菜類及び/又は果実類を破砕し、全体としては液状を呈する固液混合物を得、固液混合物を加熱殺菌して冷却した後、これにアルコール発酵用の酵母で予備発酵した酵母液を咥えてアルコール発酵させる(例えば、特許文献3参照。)。がある。
【0006】
2〜3世紀頃に酒造りと共に中国から渡来した壷酢がある。黒酢(壷酢)は暖めると発酵が早くなる。黒酢を入れた壷に太陽の光を当てて、壷を暖めて発酵する(例えば、特許文献4参照。)。がある。
【0007】
【特許文献1】 特許第3503112号公報
【特許文献2】 特許第3023814号公報
【特許文献3】 特公平6−22443号公報
【特許文献4】 特開2005−198596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
野菜類及び/又は果実類を用いたアルコール発酵において、野菜類及び/又は果実類を常法により粉砕、搾汁して生果汁を得て、酵母などの微生物の営む代謝により、糖類を無酸素的に分解してエチル・アルコールと炭酸ガスを生じ発酵する。
【0009】
この場合、一般的な野菜類及び/又は果実類の収穫の方法では、完熟した野菜類及び/又は果実類のみを収穫する事は非常に難しく手間のかかるものである。
【0010】
加工工場まで野菜類及び/又は果実類を輸送しなければならないので、収穫から加工するまでに数日間から数週間の時間がかかる。完熟した野菜類及び/又は果実類を収穫した場合には、収穫時がその野菜類及び/又は果実類の最高の状態であるので、加工するまでに野菜類及び/又は果実類の状態が段々と悪くなる。
【0011】
よって、野菜類及び/又は果実類を未成熟な状態で収穫し、野菜類及び/又は果実類を常法により粉砕、搾汁して生野菜汁及び/又は生果汁を得て、酵母などの微生物を用いて、その野菜類及び/又は果実類の糖類を無酸素的に分解してエチル・アルコールと炭酸ガスを生じ発酵している。
【0012】
この場合、野菜類及び/又は果実類が未成熟であるので風味や香りが充分でなく、糖度も低く、上等な野菜酒(野菜類酒)及び/又は果実酒(果実類酒)を作ることができない。
【0013】
生野菜汁及び/又は果汁の濃縮に、加熱濃縮法と冷凍濃縮法がある。
【0014】
加熱濃縮法は、加熱によって生野菜汁及び/又は果汁の水分を除去する方法である。加熱濃縮法は、糖度を高めることができるが、加熱によって生野菜汁及び/又は果汁の品質が損なわれる危険がある。
【0015】
冷凍濃縮法では生野菜汁及び/又は果汁の品質の低下を防ぐ事ができるが、糖度を高めることが困難である。糖度を上げるには冷凍温度を非常に下げなければならないので、製造コストが非常にかかってしまう。
【0016】
その他の生野菜汁及び/又は果汁の濃縮法として、逆浸透濃縮法と真空濃縮法がある。
【0017】
逆浸透濃縮法は、逆浸透膜による生野菜汁及び/又は果汁の濃縮方法である。逆浸透膜は海水から淡水化する装置にも使われている。逆浸透濃縮法は、生野菜汁及び/又は果汁に浸透圧以上の圧力をかけ、逆浸透膜を通して生野菜汁及び/又は果汁の水分を除去する、生野菜汁及び/又は果汁の濃縮方法である。
【0018】
真空濃縮法は、生野菜汁及び/又は果汁を入れた容器の中を真空又は大変に気圧の低い状態にすると、生野菜汁及び/又は果汁の沸点が低くなり、低い温度で煮沸ができ、生野菜汁及び/又は果汁の水分を除去する、生野菜汁及び/又は果汁の濃縮方法である。
【0019】
加熱濃縮法、冷凍濃縮法、逆浸透濃縮法、真空濃縮法などの現在用いられている様々な濃縮法では糖度を上げて生野菜汁及び/又は果汁を濃縮することはできるが、風味や香りを上げるための生野菜汁及び/又は果汁の熟成は見られない。
【0020】
加熱濃縮法、冷凍濃縮法、逆浸透濃縮法、真空濃縮法などの現在用いられている様々な濃縮法では、生野菜汁及び/又は果汁の風味や香りを最上の状態に上げることができない。
【0021】
本特許願の課題は、未成熟な野菜類及び/又は果実類を用いても、完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを充分にもった、上等な野菜酒(野菜類酒)及び/又は果実酒(果実類酒)を作ることである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
野菜類及び/又は果実類を破砕し、生野菜汁及び/又は果汁の液状を呈する固液混合物(固体と液体との混合物)を得る。
【0023】
固液混合物を加熱濃縮法、冷凍濃縮法、逆浸透濃縮法及び真空濃縮法から選択される一種以上の濃縮法で加工して、固液混合物を濃縮する。
【0024】
又は、固液混合物の濃縮法を用いず、固液混合物の濃縮はしない。
【0025】
固液混合物に太陽光や太陽光類似光を当て、固液混合物を熟成して完熟する。この時、糖度も上がるが、固液混合物が完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを持つ。
【0026】
太陽光類似光とは、発光ダイオード(LED)、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯の光りである。
【0027】
発光ダイオードは、赤、橙、黄、緑、青、などの赤外域から青色までの波長で発光するものがある。
【0028】
特許第3845826号に記載したが、短時間の約96℃程度の加熱では、果実が熟成するシステムは壊れない。
【0029】
本特許願の発明は、特許第3845826号などの実験で作った複数の液体に、別の実験で使っていた酵母又は天然の酵母が偶然に混入したと考えられる。その酵母の営む代謝により、熟成した固液混合物の糖類を無酸素的に分解してエチル・アルコールと炭酸ガスを生じ発酵したのを発見した。炭酸ガス泡を含んだ果実酒が偶然できた。飲んでみると、炭酸ガス泡を含んだ大変旨い果実酒であった。
【0030】
加熱濃縮法、冷凍濃縮法、逆浸透濃縮法及び真空濃縮法から選択される一種以上の濃縮法で加工しても、野菜類及び/又は果実類が熟成するシステムは壊れない。
【0031】
太陽光や太陽光類似光を当てて、熟成した固液混合物に、酵母などの微生物を加える。酵母などの微生物の営む代謝により、熟成した固液混合物の糖類を無酸素的に分解してエチル・アルコールと炭酸ガスを生じ発酵し、完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを持つ野菜酒(野菜類酒)及び/又は果実酒(果実類酒)を製造することができる。
【0032】
野菜類及び/又は果実類を破砕し、液状を呈する固液混合物を得、固液混合物を加熱濃縮法、冷凍濃縮法、逆浸透濃縮法及び真空濃縮法から選択される一種以上の濃縮法で固液混合物を濃縮し、固液混合物に太陽光、発光ダイオード、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯から選択される一種以上の光りを当てて、固液混合物を熟成し、熟成した固液混合物に酵母を加え、酵母が熟成した固液混合物の糖類を無酸素的に分解してエチル・アルコールと炭酸ガスを生じ発酵し、完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを持つアルコール飲料を製造することができる、以上のことを特徴とするアルコール飲料の製造方法である。
【0033】
野菜類及び/又は果実類を破砕し、液状を呈する固液混合物を得、固液混合物に太陽光、発光ダイオード、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯から選択される一種以上の光りを当てて、固液混合物を熟成し、熟成した固液混合物に酵母を加え、酵母が熟成した固液混合物の糖類を無酸素的に分解してエチル・アルコールと炭酸ガスを生じ発酵し、完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを持つアルコール飲料を製造することができる、以上のことを特徴とするアルコール飲料の製造方法である。
【発明の効果】
【0034】
未成熟な野菜類及び/又は果実類を用いても、野菜類及び/又は果実類を破砕し、液状を呈する固液混合物を得て、固液混合物に太陽光、発光ダイオード、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯から選択される一種以上の光りを当てて、固液混合物が熟成して完熟するので、上等な野菜酒(野菜類酒)及び/又は果実酒(果実類酒)を作ることができる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0035】
発明の実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
図1において、未成熟な野菜類及び/又は果実類を洗浄する、洗浄工程。
【0036】
図1において、野菜類及び/又は果実類を破砕し、液状を呈する固液混合物(固体と液体との混合物)を得る、破砕工程。
【0037】
図1において、液状を呈する固液混合物を加熱濃縮法、冷凍濃縮法、逆浸透濃縮法及び真空濃縮法から選択される一種以上の濃縮法で固液混合物を濃縮する、濃縮工程。
【0038】
図1において、液状を呈する固液混合物を滅菌する、滅菌工程。ただし、滅菌工程が必要で無いときは、滅菌工程をしない。
【0039】
図1において、液状を呈する固液混合物に太陽光、発光ダイオード、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯から選択される一種以上の光りを当てて、固液混合物が熟成する、熟成工程。
【0040】
図1において、熟成した液状を呈する固液混合物に酵母を加えて発酵する、発酵工程。
【0041】
図1において、アルコール飲料の完成。以上のことを特徴とするアルコール飲料の製造方法である。
【0042】
また、液状を呈する固液混合物を濃縮する、濃縮工程が無い製造方法では、
図2において、未成熟な野菜類及び/又は果実類を洗浄する、洗浄工程。
【0043】
図2において、野菜類及び/又は果実類を破砕し、液状を呈する固液混合物(固体と液体との混合物)を得る、破砕工程。
【0044】
図2において、液状を呈する固液混合物を滅菌する、滅菌工程。ただし、滅菌工程が必要で無いときは、滅菌工程をしない。
【0045】
図2において、液状を呈する固液混合物に太陽光、発光ダイオード、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯から選択される一種以上の光りを当てて、固液混合物が熟成する、熟成工程。
【0046】
図2において、熟成した液状を呈する固液混合物に酵母を加えて発酵する、発酵工程。
【0047】
図2において、アルコール飲料の完成。以上のことを特徴とするアルコール飲料の製造方法である。
【実施例1】
【0048】
発明の実施例を図面参照して説明する。
図1において、未成熟なリンゴを洗浄する、洗浄工程。
【0049】
図1において、リンゴを破砕し、液状を呈する固液混合物(固体と液体との混合物)を得る、破砕工程。
【0050】
図1において、液状を呈する固液混合物を逆浸透濃縮法で濃縮する、濃縮工程。
【0051】
図1において、滅菌工程を行わず、次の工程に移る。
【0052】
図1において、液状を呈する固液混合物に赤色の発光ダイオードを2日間当てて、固液混合物が熟成する、熟成工程。
【0053】
図1において、熟成した液状を呈する固液混合物に酵母と砂糖を加えて発酵する、発酵工程。
【0054】
図1において、完熟したリンゴ酒の完成。以上のことを特徴とするアルコール飲料の製造方法である。
【実施例2】
【0055】
図1において、未成熟なトマトを洗浄する、洗浄工程。
【0056】
図1において、トマトを破砕し、液状を呈する固液混合物(固体と液体との混合物)を得る、破砕工程。
【0057】
図1において、液状を呈する固液混合物を真空濃縮法で濃縮する、濃縮工程。
【0058】
図1において、液状を呈する固液混合物を95℃で1分間滅菌する、滅菌工程。
【0059】
図1において、液状を呈する固液混合物に太陽光を7日間当てて、固液混合物が熟成する、熟成工程。
【0060】
図1において、熟成した液状を呈する固液混合物に酵母を加えて発酵する、発酵工程。
【0061】
図1において、完熟したトマト酒の完成。以上のことを特徴とするアルコール飲料の製造方法である。
【実施例3】
【0062】
また、液状を呈する固液混合物を濃縮する、濃縮工程が無い製造方法では、
図2において、未成熟なブドウを洗浄する、洗浄工程。
【0063】
図2において、ブドウを破砕し、液状を呈する固液混合物(固体と液体との混合物)を得る、破砕工程。
【0064】
図2において、滅菌工程を行わず、次の工程に移る。
【0065】
図2において、液状を呈する固液混合物に橙色の発光ダイオードを3日間当てて、固液混合物が熟成する、熟成工程。
【0066】
図2において、熟成した液状を呈する固液混合物に酵母を加えて発酵する、発酵工程。
【0067】
図2において、完熟したブドウ酒の完成。以上のことを特徴とするアルコール飲料の製造方法である。
【実施例4】
【0068】
図2において、未成熟なオレンジを洗浄する、洗浄工程。
【0069】
図2において、オレンジを破砕し、液状を呈する固液混合物(固体と液体との混合物)を得る、破砕工程。
【0070】
図2において、液状を呈する固液混合物を80℃で2分間滅菌する、滅菌工程。
【0071】
図2において、液状を呈する固液混合物に橙色の高圧ナトリウムランプを10日間当てて、固液混合物が熟成する、熟成工程。
【0072】
図2において、熟成した液状を呈する固液混合物に酵母と砂糖を加えて発酵する、発酵工程。
【0073】
図2において、完熟したオレンジ酒の完成。以上のことを特徴とするアルコール飲料の製造方法である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
未成熟な野菜類及び/又は果実類を用いても、熟成工程をして、完熟した野菜類及び/又は果実類を用いるので、従来の果実酒や野菜酒と比べて、風味や香りが数段と向上したアルコール飲料ができる。
【0075】
台風などで落ちた果実でも、完熟した風味や香りのあるアルコール飲料ができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明のアルコール飲料の製造方法の実施例を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明のアルコール飲料の製造方法の実施例を説明するためのフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜類及び/又は果実類を破砕し、液状を呈する固液混合物を得、固液混合物を加熱濃縮法、冷凍濃縮法、逆浸透濃縮法及び真空濃縮法から選択される一種以上の濃縮法で固液混合物を濃縮し、固液混合物に太陽光、発光ダイオード、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯から選択される一種以上の光りを当てて、固液混合物を熟成し、熟成した固液混合物に酵母を加え、酵母が熟成した固液混合物の糖類を無酸素的に分解してエチル・アルコールと炭酸ガスを生じ発酵し、完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを持つアルコール飲料を製造することができる、以上のことを特徴とするアルコール飲料の製造方法。
【請求項2】
野菜類及び/又は果実類を破砕し、液状を呈する固液混合物を得、固液混合物に太陽光、発光ダイオード、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、水銀ランプ及び植物用蛍光灯から選択される一種以上の光りを当てて、固液混合物を熟成し、熟成した固液混合物に酵母を加え、酵母が熟成した固液混合物の糖類を無酸素的に分解してエチル・アルコールと炭酸ガスを生じ発酵し、完熟した野菜類及び/又は果実類の風味や香りを持つアルコール飲料を製造することができる、以上のことを特徴とするアルコール飲料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−73029(P2008−73029A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286950(P2006−286950)
【出願日】平成18年9月23日(2006.9.23)
【特許番号】特許第3931297号(P3931297)
【特許公報発行日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(599015641)