アルコール飲料の風味改善剤
【課題】アルコール飲料に添加するだけで、簡便かつ効果的にその香り・呈味・酸味等を改善することができる、安全性の高い新規なアルコール飲料の風味改善剤及び/又はpH調整剤を提供する。
【解決手段】モズク由来フコイダンを有効成分としてなる剤を、アルコール飲料に所定量(例えば、モズク由来フコイダンとして0.0001〜15.0w/v%)添加することで、その香り・呈味・酸味等を簡便かつ効果的に改善できる。特に、アルコール飲料の不快臭低減、好ましい香りの増強、熟成感の付与、呈味の増強、酸味の低減、溶液pHの調整などが可能となる。
【解決手段】モズク由来フコイダンを有効成分としてなる剤を、アルコール飲料に所定量(例えば、モズク由来フコイダンとして0.0001〜15.0w/v%)添加することで、その香り・呈味・酸味等を簡便かつ効果的に改善できる。特に、アルコール飲料の不快臭低減、好ましい香りの増強、熟成感の付与、呈味の増強、酸味の低減、溶液pHの調整などが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール飲料の風味改善剤等に関する。詳細には、アルコール飲料に添加して用いる、アルコール飲料の不快臭低減、好ましい香りの増強、熟成感の付与、呈味の増強、酸味の低減等の用途の風味改善剤及び/又はpH調整剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料の熟成は、保存状態によってアルコール飲料の性質が変化し、様々な特性を獲得することによる。具体的には、温度、光(紫外線)、保存容器、湿度などの外的要因によってアルコール飲料中の物質が化学反応し、複雑な成分を生み出すことによる。その反応過程は、単純な酸化反応だけでなく、エタノールと水との界面での反応、揮発性成分の大気中への揮発による反応、紫外線等によるラジカル反応などが断続的に起こり、結果的に高級アルコール、エステルなどの物質が生じると考えられている。
【0003】
アルコール飲料の熟成には大きく分けて3タイプがあり、例えば日本酒においては濃熟型(常温貯蔵によって風味に劇的な変化が生じた個性豊かな酒)、中間型(低温貯蔵から常温貯蔵へ、またはその逆による濃熟と淡熟の中間タイプの酒)、淡熟型(低温貯蔵による吟醸酒の香り、味を保ったまま程よい苦味等が付加された酒)と呼ばれて分類される。
【0004】
アルコール飲料の熟成は、上述のような様々な要因によって年単位で変化していく反応であるため、化学的に検証することは難しく詳細な解明はなされていない。また、熟成には非常に時間がかかり、長期保存による酸化臭などの不快臭の増加などデメリットもあることから、簡便かつ効率的に熟成感を付与する方法が望まれ、さらに熟成感付与を包含する総合的なアルコール飲料用風味改善剤等の開発が望まれ、研究されてきた。
【0005】
熟成感付与に限らず、アルコール飲料の風味改善用途の物質(剤)としては、現在までにおいて、発酵風味や熟成感付与目的での有機酸発酵液(特許文献1)や、不快臭等のマスキング目的でのスクラロース(特許文献2)などが知られているが、より有効で、且つ、安全性の高い新たな風味改善剤等の開発がさらに求められているのが現状である。
【0006】
一方、食物繊維のひとつであるフコイダンは、沖縄モズク(ナガマツモ科オキナワモズク:Cladosiphon okamuranus)、糸モズク(細モズク)(モズク科モズク:Nemacystus decipiens)、太モズク(Tinocladia crassa)、ヒバマタ(Fucus distichus)、ガゴメコンブ(Kjellmaniella crassifolia)、メカブ(Undaria pinnatifida)などの褐藻類に存在する、分子量数十万のフコースを構成糖とするヘテロ硫酸化多糖であり、食経験の豊富な海藻由来の安全な機能性天然成分として近年注目されている。また、フコイダンを酵素などにより低分子化した低分子フコイダンの開発、及びこの低分子フコイダンを使用した機能性食品等の食品開発も進められている。
【0007】
上述のように、フコイダンの生理機能を利用した医薬剤や健康食品はこれまでに多数開発されているが、フコイダンの生理機能以外の用途については、今までほとんど知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−289181号公報
【特許文献2】特開2010−042021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、アルコール飲料に添加するだけで、簡便かつ効果的にその香り・呈味・酸味等を改善することができる、安全性の高い新規なアルコール飲料の風味改善剤及び/又はpH調整剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究の結果、モズク由来フコイダンを有効成分としてなる剤をアルコール飲料に所定量添加することで、アルコール飲料の不快臭(エタノール刺激臭、酸臭、硫黄臭、カビ臭、脂肪臭など)低減、好ましい香りの増強、熟成感の付与、呈味の増強、酸味の低減などがされ、その風味・呈味・酸味等が簡便かつ効果的に改善されることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明の実施形態は次のとおりである。
(1)モズク由来フコイダンを有効成分としてなること、を特徴とするアルコール飲料の風味改善剤。
(2)アルコール飲料の風味改善が、アルコール飲料中のイソアミルアルコールの揮発性を高めること、及び/又は、エタノール、イソ酪酸、イソ吉草酸、カプロン酸から選ばれるすくなくともひとつの揮発性を低減すること、及び/又は、アルコール飲料に熟成感を付与すること、及び/又は、アルコール飲料の酸味を低減すること、及び/又は、アルコール飲料の旨味及び/又は塩味を増強すること、を特徴とする(1)に記載の剤。
(3)アルコール飲料が、蒸留酒(芋焼酎、麦焼酎、米焼酎、そば焼酎、泡盛、ウイスキー、バーボン、ラム、ブランデー、テキーラ等)又はそれを希釈したものであること、を特徴とする(1)又は(2)に記載の剤。
(4)モズク由来フコイダンが、モズクの熱水抽出物及び/又はその処理物であること、を特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の剤。
(5)モズクの熱水抽出物が、モズクと水の混合物を加熱した後、これを濾過し、得られた濾液を脱塩した液体であること、を特徴とする(4)に記載の剤。
(6)モズク由来のフコイダンが、モズクの熱水抽出物を更に精製処理して得た精製物及び/又はその処理物であること、を特徴とする(4)又は(5)に記載の剤。
(7)該処理物が、濃縮物、ペースト化物、乾燥物、乳化物、液状物、希釈物から選ばれる少なくともひとつであること、を特徴とする(4)〜(6)のいずれか1つに記載の剤。
(8)モズク由来フコイダンが、分子量5万以上の高分子フコイダンであり、かつ硫酸基含有量が10〜20%であること、を特徴とする(1)〜(7)のいずれか1つに記載の剤。
(9)モズクが、糸モズク、太モズク、沖縄モズクの少なくともひとつであること、を特徴とする(1)〜(8)のいずれか1つに記載の剤。
(10)(1)〜(9)のいずれか1つに記載の剤をモズク由来フコイダンとして0.0001〜15.0w/v%となるように添加してなる、その風味が改善されたアルコール飲料。
(11)アルコール飲料にモズク由来フコイダンを0.0001〜15.0w/v%となるように添加すること、を特徴とするアルコール飲料の風味改善方法。
(12)モズク由来フコイダンを有効成分としてなること、を特徴とするアルコール飲料のpH調整剤。
(13)アルコール飲料が、蒸留酒又はそれを希釈したものであること、を特徴とする(12)に記載の剤。
(14)アルコール飲料にモズク由来フコイダンを0.0001〜15.0w/v%となるように添加すること、を特徴とするアルコール飲料をpH4.5〜6に調整する方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アルコール飲料(特にウイスキーや焼酎などの蒸留酒)の不快臭の低減、吟醸香などの好ましい香りの増強、熟成感の付与、酸味の低減、旨味や塩味の増強、溶液pHの調整などをすることができる。言い換えると、アルコール飲料の味全体が丸くなり、古酒のような熟成感のある、風味等が改善されたアルコール飲料を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】麦焼酎のエタノール揮発量を比較したグラフである。左側より、無添加品(コントロール)、アルギン酸添加品(アルギン酸)、アルギン酸ナトリウム添加品(アルギン酸ナトリウム)、モズク由来フコイダン添加品(フコイダン)を示す。
【図2】麦焼酎のイソアミルアルコール揮発量を比較したグラフである。左側より、無添加品(コントロール)、アルギン酸添加品(アルギン酸)、アルギン酸ナトリウム添加品(アルギン酸ナトリウム)、モズク由来フコイダン添加品(フコイダン)を示す。
【図3】モズク由来フコイダン含有液を添加したビールの各評価項目(横軸)の官能評価結果グラフである。縦軸は官能評価の変化率(モズク由来フコイダン添加品/無添加品)を示す(以下の図4〜10も同様である)。
【図4】モズク由来フコイダン含有液を添加した日本酒の各評価項目(横軸)の官能評価結果グラフである。
【図5】モズク由来フコイダン含有液を添加した赤ワインの各評価項目(横軸)の官能評価結果グラフである。
【図6】モズク由来フコイダン含有液を添加した白ワインの各評価項目(横軸)の官能評価結果グラフである。
【図7】モズク由来フコイダン含有液を添加したウイスキー(水割り)の各評価項目(横軸)の官能評価結果グラフである。
【図8】モズク由来フコイダン含有液を添加したウイスキー(ストレート)の各評価項目(横軸)の官能評価結果グラフである。
【図9】モズク由来フコイダン含有液を添加した芋焼酎(水割り)の各評価項目(横軸)の官能評価結果グラフである。
【図10】モズク由来フコイダン含有液を添加した芋焼酎(ストレート)の各評価項目(横軸)の官能評価結果グラフである。
【図11】モズク由来フコイダン含有液を1、2、4v/v%添加した芋焼酎(ストレート)の味覚センサーによる分析結果グラフである。
【図12】モズク由来フコイダン含有液を水又は芋焼酎(ストレート)に添加した際の溶液pH変化を示すグラフである。
【図13】モズク由来フコイダン含有液を蒸留酒(芋焼酎、麦焼酎、米焼酎、そば焼酎、泡盛、ウイスキー、バーボン、ラム、ブランデー、テキーラ)に添加した際の各溶液pH変化を示すグラフである。
【図14】モズク由来フコイダン含有液を芋焼酎(ストレート)に添加した際のイソ酪酸揮発量を示したグラフである。
【図15】モズク由来フコイダン含有液を芋焼酎(ストレート)に添加した際のイソ吉草酸揮発量を示したグラフである。
【図16】モズク由来フコイダン含有液を芋焼酎(ストレート)に添加した際のカプロン酸揮発量を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明においては、アルコール飲料の風味改善剤及び/又はpH調整剤の有効成分として、食経験が豊富で且つ安全性も高い海藻であるモズク由来のフコイダンを使用する。モズクは、沖縄モズク(ナガマツモ科オキナワモズク:Cladosiphon okamuranus)、糸モズク(細モズク)(モズク科モズク:Nemacystus decipiens)、太モズク(Tinocladia crassa)であることが好ましい。
【0016】
モズク由来フコイダンは、モズクから抽出、単離、精製したフコイダンの精製品(市販品を含む)が使用できるのはもちろんのこと、モズクの熱水抽出物、その処理物も使用可能である。また、これに限定されるものではないが、モズク由来フコイダンは、分子量がプルランを基準として5万以上、好ましくは10万以上、更に好ましくは20万〜200万(例えば30万〜100万)であり、かつ、硫酸基含有量が10%〜20%であること、好ましくは11%〜17%、更に好ましくは13%〜14%であることが望ましい。
【0017】
モズクからフコイダンを抽出するには、酢酸水溶液又は塩酸等により酸性(pH3.0〜6.0)に調整し、50℃以上、好ましくは60〜100℃、更に好ましくは60〜90℃、例えば60〜75℃の熱水を用いて、30分〜3時間生鮮モズク(切断、ペースト化、乾燥、冷凍したもののいずれでもよい)を抽出した後(例えば、オートクレーブで100℃、45分〜1時間30分程度処理した後)、得られた抽出液を電気透析により脱塩する。本発明の熱水抽出物には、上記のようにモズクを単に熱水で抽出して得た抽出液、その濾液、これ(ら)を更に脱塩してなる抽出液が包含されるほか、第4級アンモニウム塩処理、アルコール沈殿、イオン交換樹脂クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、超精密濾過などによって精製した精製物も包含される。
【0018】
また、本発明においては、モズクの熱水抽出物の処理物も使用可能である。該処理物としては、濃縮物、ペースト化物、乾燥物(噴霧乾燥物、凍結乾燥物、真空乾燥物、ドラム乾燥物等)、乳化物、液状物、希釈物等が挙げられる。特に乾燥物については、重量が最も軽く容積も小さくなることから製造加工時の適性が高く、また輸送コストを低減できる。
【0019】
モズク由来フコイダンを有効成分としてなる風味改善剤及び/又はpH調整剤を添加するアルコール飲料としては、ビール、発泡酒、リキュール類、日本酒、ワイン(果実酒)、芋焼酎、麦焼酎、米焼酎、そば焼酎、泡盛、ウイスキー、バーボン、ブランデー、スピリッツ、ウォッカ、テキーラ、ジン、ラム、白酒などが例示され、アルコールを含有する飲料であれば限定されないが、特に蒸留酒(芋焼酎、麦焼酎、米焼酎、そば焼酎、泡盛、ウイスキー、バーボン、ブランデー、スピリッツ、ウォッカ、テキーラ、ジン、ラム、白酒等)が好ましい。また、これらを水や果汁飲料などの非アルコール飲料で希釈したものも包含される。さらには、上記アルコール飲料の2種以上を混合したもの(例えばカクテルなど)も包含される。
【0020】
モズク由来フコイダンを有効成分としてなる風味改善剤及び/又はpH調整剤のアルコール飲料への添加量は、その効果が発揮される量であれば特に限定はされないが、例えばモズク由来フコイダンとして0.0001〜15.0w/v%となるような添加量が例示される。なお、モズク由来フコイダンとして0.001〜1w/v%となるような添加量がより好ましく、0.002〜0.3w/v%が更に好ましい。モズク由来フコイダンの添加量が少なすぎるとその効果が十分に発揮されず、また多すぎるとアルコール飲料に過度の粘度上昇や着色が発生するためあまり好ましくない。
【0021】
このようにして、アルコール飲料にモズク由来フコイダンを有効成分としてなる風味改善剤及び/又はpH調整剤を所定量添加するだけで、簡便かつ効率的に、アルコール飲料の不快臭の低減、吟醸香などの好ましい香りの増強、先味・後味の向上やきめの改善、甘味やうま味・塩味の付与(増強)、酸味や苦味の低減、熟成感の付与、溶液pHの調整(特に、pH4.5〜6の範囲への緩衝作用的調整)などをすることができ、その風味等を良好なものに改善できる。
【0022】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内においてこれらの様々な変形が可能である。
【実施例1】
【0023】
(モズク由来フコイダンの製造)
以下の実施例2で示す試験には、株式会社海産物のきむらや製品である高分子もずくフコイダン「シーアルガ エフ(登録商標)」、実施例3〜6で示す試験には、株式会社海産物のきむらや製品である高分子もずくフコイダン 「フコミン(登録商標)」をモズク由来フコイダン含有液として使用した。これらの製品の製造は、次のようにして行った。
【0024】
モズクとして沖縄モズク(Cladosiphon okamuranus)を用いた。このモズクをその湿重量の1〜5倍量の水に懸濁させ、酢酸水溶液を加えて酸性に調整した。次いで60〜90℃で加熱維持し、フコイダンを溶出させた後、遠心分離して沈殿物を除去した。上清から低分子成分を電気透析によって除去することでフコイダンを濃縮、脱塩し、モズク由来フコイダン含有液を得た。
得られたモズク由来フコイダンの分子量は、プルラン分子量を標準とした換算分子量として約30万、硫酸基含有量は13%であった。
【実施例2】
【0025】
(アルコール飲料への添加試験I)
モズク由来フコイダンを添加した麦焼酎、及び、他の海藻由来多糖類を添加した麦焼酎の風香味について比較確認するため、以下の試験を実施した。
【0026】
まず、市販の麦焼酎2000mlに対し、モズク由来フコイダン含有液10ml(10mlあたり乾燥重量で270mgのモズク由来フコイダンを含む)又はアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製)10ml(10mlあたり乾燥重量で270mgのアルギン酸ナトリウムを含む)を添加したものを作製し(それぞれの濃度は0.0135w/v%)、添加直後及び常温一ヶ月保管後の風香味を訓練されたパネラー2名により官能評価した。なお、コントロールとしては、無添加の麦焼酎を用いた。
【0027】
その結果、無添加品と比較して、モズク由来フコイダン添加品及びアルギン酸ナトリウム添加品はいずれもアルコールの尖った風味(エタノール刺激臭)が抑制され、全体として味が丸くなった。さらに、モズク由来フコイダン添加品はアルギン酸ナトリウム添加品と異なり、味に深みがでて古酒のような熟成した風味となった。この風味の傾向は、特に常温一ヶ月保管後において顕著に見られた。
【0028】
次に、同様の試験として、市販の麦焼酎2000mlに対し、モズク由来フコイダン270mg、アルギン酸ナトリウム270mg、アルギン酸(東京化成工業株式会社製)270mgをそれぞれ添加したものを作製し、添加直後の揮発性成分の量をガスクロマトグラフィ/質量分析法(GC/MS)を用いて測定した。なお、コントロールとしては、無添加の麦焼酎を用いた。
【0029】
測定結果を図1及び図2に示す。第一に、無添加品と比較して、モズク由来フコイダン添加品及びアルギン酸ナトリウム添加品のエタノール揮発量はいずれも低下した(図1、無添加品と比較してモズク由来フコイダン添加品は約3%、アルギン酸ナトリウムは約12%低下)。しかし、アルギン酸ナトリウム添加品は揮発性成分全体の揮発量が低下しており、香りがほとんどしなくなっていたのに対し、モズク由来フコイダン添加品は吟醸香に分類される高級アルコールの代表的成分であるイソアミルアルコールの揮発量が無添加品の約2倍となっていた(図2)。なお、アルギン酸添加品は、無添加品と比較してエタノール及びイソアミルアルコールの両方が若干増加していた(図1、図2)。
【0030】
以上より、麦焼酎へのモズク由来フコイダン添加により、エタノール刺激臭を低減させ且つイソアミルアルコール臭を増加させ、麦焼酎の味を丸くして古酒のような熟成した風味とするように改善することが示された。特に、モズク由来フコイダン添加によって、アルコール飲料の保管時の熟成感付与が顕著に促進された。
【実施例3】
【0031】
(アルコール飲料への添加試験II)
モズク由来フコイダンを各種アルコール飲料に添加した際の風味について確認するため、以下の試験を実施した。
【0032】
市販のビール、日本酒、赤ワイン、白ワイン、ウイスキー(ストレート、水割り)、芋焼酎(ストレート、水割り)に対して、それぞれモズク由来フコイダン含有液を濃度が0.1v/v%となるように添加し(モズク由来フコイダン濃度は0.0027w/v%)、添加直後に無添加品との比較官能試験を訓練されたパネラー5名により行った。官能試験はクローズドパネルテスト形式で行い、評価項目は、香りとして酢酸イソアミル臭、カプロン酸エチル臭、アルコール臭、海藻臭、カラメル臭、老香、香辛料香、アルデヒド臭、酸臭、生魚臭、硫黄臭、樹脂臭、カビ臭、脂肪臭を、外観として色調と濁度を、味として甘辛味、後味、きめ、酸味、苦味、渋味、うま味、塩味、炭酸味を選択した。そして、無添加品との比較として変化率(モズク由来フコイダン添加品の官能評価点/無添加品の官能評価点)を算出した。
【0033】
各サンプルの評価項目の変化率の結果を図3〜10に示した。この結果及びサンプル間での評価項目の変化率の標準偏差から、芋焼酎(ストレート)がモズク由来フコイダン添加により最も変化が見られ、全体的傾向として蒸留酒であるウイスキー、芋焼酎(水割りも含む)の風味変化が顕著であった。
【0034】
さらに評価項目を詳細に検討すると、全体的には、風味の変化として後味の向上(よりすっきりとなる)、きめの改善(あらさがとれて丸く、なめらかとなる)が見られた。また、いわゆる不快臭(悪臭)である酸臭、硫黄臭、カビ臭、脂肪臭などが抑制傾向であった。ビールやワインの変化率は、蒸留酒と比較すると小さかったが、呈味にやや向上傾向が見られた。なお、モズク由来フコイダンを添加しても海藻臭には変化がなく、モズク由来フコイダン自体のわずかな風味は添加するアルコール飲料の風味改善に影響しないことも示された。
【0035】
以上より、各種アルコール飲料(特に、蒸留酒)へのモズク由来フコイダン添加により、後味の向上作用、きめの改善作用、エタノール臭低減、酢酸イソアミルやカプロン酸エチル臭の増加、不快臭の低減作用などが発揮され、風味が改善することが示された。
【実施例4】
【0036】
(アルコール飲料への添加試験III)
モズク由来フコイダンを焼酎に添加した際の呈味について確認するため、以下の試験を実施した。
【0037】
市販の芋焼酎(ストレート)に対して、モズク由来フコイダン含有液を濃度が1.0、2.0、4.0v/v%となるようにそれぞれ添加し(モズク由来フコイダン濃度は0.027、0.054、0.108w/v%)、添加直後に未添加品との呈味比較を味覚センサー(TS−5000Z、株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)により分析した。評価項目は、先味として酸味、苦味雑味、渋味刺激、旨味、塩味、甘味の5点、後味として苦味、渋味、旨味コクの3点とした。
【0038】
各サンプルの分析結果を図11に示した。この結果から、フコイダン添加により芋焼酎の酸味が大きく低減されること、旨味・塩味が若干増強されることが明らかとなった。
【実施例5】
【0039】
(アルコール飲料への添加試験IV)
モズク由来フコイダンを蒸留酒に添加した際の溶液pH変化について確認するため、以下の試験を実施した。
【0040】
市販の各蒸留酒(芋焼酎、麦焼酎、米焼酎、そば焼酎、泡盛、ウイスキー、バーボン、ラム、ブランデー、テキーラ)に対して、モズク由来フコイダン含有液を濃度が1.0、2.0、4.0v/v%となるようにそれぞれ添加し(モズク由来フコイダン濃度は0.027、0.054、0.108w/v%)、溶液pHを測定した。比較として、水にモズク由来フコイダン含有液を濃度が2.0、4.0v/v%となるようにそれぞれ添加したものの溶液pHも測定した。
【0041】
結果を図12、13に示した。この結果から、モズク由来フコイダン添加により、pH4.0〜5.0程度の各蒸留酒のpHを0.5程度上昇させることが明らかとなった。また、水の場合は、逆にpH5.5付近まで下降させることが明らかとなり、モズク由来フコイダン含有剤がpH調整剤(特に、pH4.5〜6の範囲への緩衝作用的な調整剤)としての効果を発揮していることも示された。
【実施例6】
【0042】
(アルコール飲料への添加試験V)
モズク由来フコイダンを添加した芋焼酎の不快臭の揮発量について確認するため、以下の試験を実施した。
【0043】
市販の芋焼酎2000mlに対し、モズク由来フコイダン含有液を濃度が2.0〜20.0v/v%となるようにそれぞれ添加したものを作製し(モズク由来フコイダン濃度は0.054〜0.54w/v%)、添加直後の揮発性不快臭成分(イソ酪酸、イソ吉草酸、カプロン酸)の量をガスクロマトグラフィ/質量分析法(GC/MS)を用いて測定した。
【0044】
測定結果を図14〜16に示す。イソ酪酸、イソ吉草酸、カプロン酸のいずれについても、モズク由来フコイダン添加により揮発量が減少すること、及び、モズク由来フコイダン含有液4.0〜10.0v/v%程度の添加によりその揮発抑制効果が最大となり、揮発量が65〜75%にまで抑制された。また、それ以上添加しても効果の上昇はあまりないことが明らかとなった。
【0045】
以上より、芋焼酎へのモズク由来フコイダン添加により、エタノールだけでなく他の揮発性不快臭成分(イソ酪酸、イソ吉草酸、カプロン酸)の揮発量も抑制(低減)できることが示された。
【0046】
本発明を要約すれば、以下の通りである。
【0047】
本発明は、アルコール飲料に添加するだけで、簡便かつ効果的にその香り・呈味・酸味等を改善することができる、安全性の高い新規なアルコール飲料の風味改善剤及び/又はpH調整剤を提供することを目的とする。
【0048】
そして、モズク由来フコイダンを有効成分としてなる剤を、アルコール飲料に所定量(例えば、モズク由来フコイダンとして0.0001〜15.0%(w/v))添加することで、その香り・呈味・酸味等を簡便かつ効果的に改善できる。特に、アルコール飲料の不快臭低減、好ましい香りの増強、熟成感の付与、呈味の増強、酸味の低減、溶液pHの調整などが可能となる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール飲料の風味改善剤等に関する。詳細には、アルコール飲料に添加して用いる、アルコール飲料の不快臭低減、好ましい香りの増強、熟成感の付与、呈味の増強、酸味の低減等の用途の風味改善剤及び/又はpH調整剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料の熟成は、保存状態によってアルコール飲料の性質が変化し、様々な特性を獲得することによる。具体的には、温度、光(紫外線)、保存容器、湿度などの外的要因によってアルコール飲料中の物質が化学反応し、複雑な成分を生み出すことによる。その反応過程は、単純な酸化反応だけでなく、エタノールと水との界面での反応、揮発性成分の大気中への揮発による反応、紫外線等によるラジカル反応などが断続的に起こり、結果的に高級アルコール、エステルなどの物質が生じると考えられている。
【0003】
アルコール飲料の熟成には大きく分けて3タイプがあり、例えば日本酒においては濃熟型(常温貯蔵によって風味に劇的な変化が生じた個性豊かな酒)、中間型(低温貯蔵から常温貯蔵へ、またはその逆による濃熟と淡熟の中間タイプの酒)、淡熟型(低温貯蔵による吟醸酒の香り、味を保ったまま程よい苦味等が付加された酒)と呼ばれて分類される。
【0004】
アルコール飲料の熟成は、上述のような様々な要因によって年単位で変化していく反応であるため、化学的に検証することは難しく詳細な解明はなされていない。また、熟成には非常に時間がかかり、長期保存による酸化臭などの不快臭の増加などデメリットもあることから、簡便かつ効率的に熟成感を付与する方法が望まれ、さらに熟成感付与を包含する総合的なアルコール飲料用風味改善剤等の開発が望まれ、研究されてきた。
【0005】
熟成感付与に限らず、アルコール飲料の風味改善用途の物質(剤)としては、現在までにおいて、発酵風味や熟成感付与目的での有機酸発酵液(特許文献1)や、不快臭等のマスキング目的でのスクラロース(特許文献2)などが知られているが、より有効で、且つ、安全性の高い新たな風味改善剤等の開発がさらに求められているのが現状である。
【0006】
一方、食物繊維のひとつであるフコイダンは、沖縄モズク(ナガマツモ科オキナワモズク:Cladosiphon okamuranus)、糸モズク(細モズク)(モズク科モズク:Nemacystus decipiens)、太モズク(Tinocladia crassa)、ヒバマタ(Fucus distichus)、ガゴメコンブ(Kjellmaniella crassifolia)、メカブ(Undaria pinnatifida)などの褐藻類に存在する、分子量数十万のフコースを構成糖とするヘテロ硫酸化多糖であり、食経験の豊富な海藻由来の安全な機能性天然成分として近年注目されている。また、フコイダンを酵素などにより低分子化した低分子フコイダンの開発、及びこの低分子フコイダンを使用した機能性食品等の食品開発も進められている。
【0007】
上述のように、フコイダンの生理機能を利用した医薬剤や健康食品はこれまでに多数開発されているが、フコイダンの生理機能以外の用途については、今までほとんど知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−289181号公報
【特許文献2】特開2010−042021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、アルコール飲料に添加するだけで、簡便かつ効果的にその香り・呈味・酸味等を改善することができる、安全性の高い新規なアルコール飲料の風味改善剤及び/又はpH調整剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究の結果、モズク由来フコイダンを有効成分としてなる剤をアルコール飲料に所定量添加することで、アルコール飲料の不快臭(エタノール刺激臭、酸臭、硫黄臭、カビ臭、脂肪臭など)低減、好ましい香りの増強、熟成感の付与、呈味の増強、酸味の低減などがされ、その風味・呈味・酸味等が簡便かつ効果的に改善されることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明の実施形態は次のとおりである。
(1)モズク由来フコイダンを有効成分としてなること、を特徴とするアルコール飲料の風味改善剤。
(2)アルコール飲料の風味改善が、アルコール飲料中のイソアミルアルコールの揮発性を高めること、及び/又は、エタノール、イソ酪酸、イソ吉草酸、カプロン酸から選ばれるすくなくともひとつの揮発性を低減すること、及び/又は、アルコール飲料に熟成感を付与すること、及び/又は、アルコール飲料の酸味を低減すること、及び/又は、アルコール飲料の旨味及び/又は塩味を増強すること、を特徴とする(1)に記載の剤。
(3)アルコール飲料が、蒸留酒(芋焼酎、麦焼酎、米焼酎、そば焼酎、泡盛、ウイスキー、バーボン、ラム、ブランデー、テキーラ等)又はそれを希釈したものであること、を特徴とする(1)又は(2)に記載の剤。
(4)モズク由来フコイダンが、モズクの熱水抽出物及び/又はその処理物であること、を特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の剤。
(5)モズクの熱水抽出物が、モズクと水の混合物を加熱した後、これを濾過し、得られた濾液を脱塩した液体であること、を特徴とする(4)に記載の剤。
(6)モズク由来のフコイダンが、モズクの熱水抽出物を更に精製処理して得た精製物及び/又はその処理物であること、を特徴とする(4)又は(5)に記載の剤。
(7)該処理物が、濃縮物、ペースト化物、乾燥物、乳化物、液状物、希釈物から選ばれる少なくともひとつであること、を特徴とする(4)〜(6)のいずれか1つに記載の剤。
(8)モズク由来フコイダンが、分子量5万以上の高分子フコイダンであり、かつ硫酸基含有量が10〜20%であること、を特徴とする(1)〜(7)のいずれか1つに記載の剤。
(9)モズクが、糸モズク、太モズク、沖縄モズクの少なくともひとつであること、を特徴とする(1)〜(8)のいずれか1つに記載の剤。
(10)(1)〜(9)のいずれか1つに記載の剤をモズク由来フコイダンとして0.0001〜15.0w/v%となるように添加してなる、その風味が改善されたアルコール飲料。
(11)アルコール飲料にモズク由来フコイダンを0.0001〜15.0w/v%となるように添加すること、を特徴とするアルコール飲料の風味改善方法。
(12)モズク由来フコイダンを有効成分としてなること、を特徴とするアルコール飲料のpH調整剤。
(13)アルコール飲料が、蒸留酒又はそれを希釈したものであること、を特徴とする(12)に記載の剤。
(14)アルコール飲料にモズク由来フコイダンを0.0001〜15.0w/v%となるように添加すること、を特徴とするアルコール飲料をpH4.5〜6に調整する方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アルコール飲料(特にウイスキーや焼酎などの蒸留酒)の不快臭の低減、吟醸香などの好ましい香りの増強、熟成感の付与、酸味の低減、旨味や塩味の増強、溶液pHの調整などをすることができる。言い換えると、アルコール飲料の味全体が丸くなり、古酒のような熟成感のある、風味等が改善されたアルコール飲料を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】麦焼酎のエタノール揮発量を比較したグラフである。左側より、無添加品(コントロール)、アルギン酸添加品(アルギン酸)、アルギン酸ナトリウム添加品(アルギン酸ナトリウム)、モズク由来フコイダン添加品(フコイダン)を示す。
【図2】麦焼酎のイソアミルアルコール揮発量を比較したグラフである。左側より、無添加品(コントロール)、アルギン酸添加品(アルギン酸)、アルギン酸ナトリウム添加品(アルギン酸ナトリウム)、モズク由来フコイダン添加品(フコイダン)を示す。
【図3】モズク由来フコイダン含有液を添加したビールの各評価項目(横軸)の官能評価結果グラフである。縦軸は官能評価の変化率(モズク由来フコイダン添加品/無添加品)を示す(以下の図4〜10も同様である)。
【図4】モズク由来フコイダン含有液を添加した日本酒の各評価項目(横軸)の官能評価結果グラフである。
【図5】モズク由来フコイダン含有液を添加した赤ワインの各評価項目(横軸)の官能評価結果グラフである。
【図6】モズク由来フコイダン含有液を添加した白ワインの各評価項目(横軸)の官能評価結果グラフである。
【図7】モズク由来フコイダン含有液を添加したウイスキー(水割り)の各評価項目(横軸)の官能評価結果グラフである。
【図8】モズク由来フコイダン含有液を添加したウイスキー(ストレート)の各評価項目(横軸)の官能評価結果グラフである。
【図9】モズク由来フコイダン含有液を添加した芋焼酎(水割り)の各評価項目(横軸)の官能評価結果グラフである。
【図10】モズク由来フコイダン含有液を添加した芋焼酎(ストレート)の各評価項目(横軸)の官能評価結果グラフである。
【図11】モズク由来フコイダン含有液を1、2、4v/v%添加した芋焼酎(ストレート)の味覚センサーによる分析結果グラフである。
【図12】モズク由来フコイダン含有液を水又は芋焼酎(ストレート)に添加した際の溶液pH変化を示すグラフである。
【図13】モズク由来フコイダン含有液を蒸留酒(芋焼酎、麦焼酎、米焼酎、そば焼酎、泡盛、ウイスキー、バーボン、ラム、ブランデー、テキーラ)に添加した際の各溶液pH変化を示すグラフである。
【図14】モズク由来フコイダン含有液を芋焼酎(ストレート)に添加した際のイソ酪酸揮発量を示したグラフである。
【図15】モズク由来フコイダン含有液を芋焼酎(ストレート)に添加した際のイソ吉草酸揮発量を示したグラフである。
【図16】モズク由来フコイダン含有液を芋焼酎(ストレート)に添加した際のカプロン酸揮発量を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明においては、アルコール飲料の風味改善剤及び/又はpH調整剤の有効成分として、食経験が豊富で且つ安全性も高い海藻であるモズク由来のフコイダンを使用する。モズクは、沖縄モズク(ナガマツモ科オキナワモズク:Cladosiphon okamuranus)、糸モズク(細モズク)(モズク科モズク:Nemacystus decipiens)、太モズク(Tinocladia crassa)であることが好ましい。
【0016】
モズク由来フコイダンは、モズクから抽出、単離、精製したフコイダンの精製品(市販品を含む)が使用できるのはもちろんのこと、モズクの熱水抽出物、その処理物も使用可能である。また、これに限定されるものではないが、モズク由来フコイダンは、分子量がプルランを基準として5万以上、好ましくは10万以上、更に好ましくは20万〜200万(例えば30万〜100万)であり、かつ、硫酸基含有量が10%〜20%であること、好ましくは11%〜17%、更に好ましくは13%〜14%であることが望ましい。
【0017】
モズクからフコイダンを抽出するには、酢酸水溶液又は塩酸等により酸性(pH3.0〜6.0)に調整し、50℃以上、好ましくは60〜100℃、更に好ましくは60〜90℃、例えば60〜75℃の熱水を用いて、30分〜3時間生鮮モズク(切断、ペースト化、乾燥、冷凍したもののいずれでもよい)を抽出した後(例えば、オートクレーブで100℃、45分〜1時間30分程度処理した後)、得られた抽出液を電気透析により脱塩する。本発明の熱水抽出物には、上記のようにモズクを単に熱水で抽出して得た抽出液、その濾液、これ(ら)を更に脱塩してなる抽出液が包含されるほか、第4級アンモニウム塩処理、アルコール沈殿、イオン交換樹脂クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、超精密濾過などによって精製した精製物も包含される。
【0018】
また、本発明においては、モズクの熱水抽出物の処理物も使用可能である。該処理物としては、濃縮物、ペースト化物、乾燥物(噴霧乾燥物、凍結乾燥物、真空乾燥物、ドラム乾燥物等)、乳化物、液状物、希釈物等が挙げられる。特に乾燥物については、重量が最も軽く容積も小さくなることから製造加工時の適性が高く、また輸送コストを低減できる。
【0019】
モズク由来フコイダンを有効成分としてなる風味改善剤及び/又はpH調整剤を添加するアルコール飲料としては、ビール、発泡酒、リキュール類、日本酒、ワイン(果実酒)、芋焼酎、麦焼酎、米焼酎、そば焼酎、泡盛、ウイスキー、バーボン、ブランデー、スピリッツ、ウォッカ、テキーラ、ジン、ラム、白酒などが例示され、アルコールを含有する飲料であれば限定されないが、特に蒸留酒(芋焼酎、麦焼酎、米焼酎、そば焼酎、泡盛、ウイスキー、バーボン、ブランデー、スピリッツ、ウォッカ、テキーラ、ジン、ラム、白酒等)が好ましい。また、これらを水や果汁飲料などの非アルコール飲料で希釈したものも包含される。さらには、上記アルコール飲料の2種以上を混合したもの(例えばカクテルなど)も包含される。
【0020】
モズク由来フコイダンを有効成分としてなる風味改善剤及び/又はpH調整剤のアルコール飲料への添加量は、その効果が発揮される量であれば特に限定はされないが、例えばモズク由来フコイダンとして0.0001〜15.0w/v%となるような添加量が例示される。なお、モズク由来フコイダンとして0.001〜1w/v%となるような添加量がより好ましく、0.002〜0.3w/v%が更に好ましい。モズク由来フコイダンの添加量が少なすぎるとその効果が十分に発揮されず、また多すぎるとアルコール飲料に過度の粘度上昇や着色が発生するためあまり好ましくない。
【0021】
このようにして、アルコール飲料にモズク由来フコイダンを有効成分としてなる風味改善剤及び/又はpH調整剤を所定量添加するだけで、簡便かつ効率的に、アルコール飲料の不快臭の低減、吟醸香などの好ましい香りの増強、先味・後味の向上やきめの改善、甘味やうま味・塩味の付与(増強)、酸味や苦味の低減、熟成感の付与、溶液pHの調整(特に、pH4.5〜6の範囲への緩衝作用的調整)などをすることができ、その風味等を良好なものに改善できる。
【0022】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内においてこれらの様々な変形が可能である。
【実施例1】
【0023】
(モズク由来フコイダンの製造)
以下の実施例2で示す試験には、株式会社海産物のきむらや製品である高分子もずくフコイダン「シーアルガ エフ(登録商標)」、実施例3〜6で示す試験には、株式会社海産物のきむらや製品である高分子もずくフコイダン 「フコミン(登録商標)」をモズク由来フコイダン含有液として使用した。これらの製品の製造は、次のようにして行った。
【0024】
モズクとして沖縄モズク(Cladosiphon okamuranus)を用いた。このモズクをその湿重量の1〜5倍量の水に懸濁させ、酢酸水溶液を加えて酸性に調整した。次いで60〜90℃で加熱維持し、フコイダンを溶出させた後、遠心分離して沈殿物を除去した。上清から低分子成分を電気透析によって除去することでフコイダンを濃縮、脱塩し、モズク由来フコイダン含有液を得た。
得られたモズク由来フコイダンの分子量は、プルラン分子量を標準とした換算分子量として約30万、硫酸基含有量は13%であった。
【実施例2】
【0025】
(アルコール飲料への添加試験I)
モズク由来フコイダンを添加した麦焼酎、及び、他の海藻由来多糖類を添加した麦焼酎の風香味について比較確認するため、以下の試験を実施した。
【0026】
まず、市販の麦焼酎2000mlに対し、モズク由来フコイダン含有液10ml(10mlあたり乾燥重量で270mgのモズク由来フコイダンを含む)又はアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製)10ml(10mlあたり乾燥重量で270mgのアルギン酸ナトリウムを含む)を添加したものを作製し(それぞれの濃度は0.0135w/v%)、添加直後及び常温一ヶ月保管後の風香味を訓練されたパネラー2名により官能評価した。なお、コントロールとしては、無添加の麦焼酎を用いた。
【0027】
その結果、無添加品と比較して、モズク由来フコイダン添加品及びアルギン酸ナトリウム添加品はいずれもアルコールの尖った風味(エタノール刺激臭)が抑制され、全体として味が丸くなった。さらに、モズク由来フコイダン添加品はアルギン酸ナトリウム添加品と異なり、味に深みがでて古酒のような熟成した風味となった。この風味の傾向は、特に常温一ヶ月保管後において顕著に見られた。
【0028】
次に、同様の試験として、市販の麦焼酎2000mlに対し、モズク由来フコイダン270mg、アルギン酸ナトリウム270mg、アルギン酸(東京化成工業株式会社製)270mgをそれぞれ添加したものを作製し、添加直後の揮発性成分の量をガスクロマトグラフィ/質量分析法(GC/MS)を用いて測定した。なお、コントロールとしては、無添加の麦焼酎を用いた。
【0029】
測定結果を図1及び図2に示す。第一に、無添加品と比較して、モズク由来フコイダン添加品及びアルギン酸ナトリウム添加品のエタノール揮発量はいずれも低下した(図1、無添加品と比較してモズク由来フコイダン添加品は約3%、アルギン酸ナトリウムは約12%低下)。しかし、アルギン酸ナトリウム添加品は揮発性成分全体の揮発量が低下しており、香りがほとんどしなくなっていたのに対し、モズク由来フコイダン添加品は吟醸香に分類される高級アルコールの代表的成分であるイソアミルアルコールの揮発量が無添加品の約2倍となっていた(図2)。なお、アルギン酸添加品は、無添加品と比較してエタノール及びイソアミルアルコールの両方が若干増加していた(図1、図2)。
【0030】
以上より、麦焼酎へのモズク由来フコイダン添加により、エタノール刺激臭を低減させ且つイソアミルアルコール臭を増加させ、麦焼酎の味を丸くして古酒のような熟成した風味とするように改善することが示された。特に、モズク由来フコイダン添加によって、アルコール飲料の保管時の熟成感付与が顕著に促進された。
【実施例3】
【0031】
(アルコール飲料への添加試験II)
モズク由来フコイダンを各種アルコール飲料に添加した際の風味について確認するため、以下の試験を実施した。
【0032】
市販のビール、日本酒、赤ワイン、白ワイン、ウイスキー(ストレート、水割り)、芋焼酎(ストレート、水割り)に対して、それぞれモズク由来フコイダン含有液を濃度が0.1v/v%となるように添加し(モズク由来フコイダン濃度は0.0027w/v%)、添加直後に無添加品との比較官能試験を訓練されたパネラー5名により行った。官能試験はクローズドパネルテスト形式で行い、評価項目は、香りとして酢酸イソアミル臭、カプロン酸エチル臭、アルコール臭、海藻臭、カラメル臭、老香、香辛料香、アルデヒド臭、酸臭、生魚臭、硫黄臭、樹脂臭、カビ臭、脂肪臭を、外観として色調と濁度を、味として甘辛味、後味、きめ、酸味、苦味、渋味、うま味、塩味、炭酸味を選択した。そして、無添加品との比較として変化率(モズク由来フコイダン添加品の官能評価点/無添加品の官能評価点)を算出した。
【0033】
各サンプルの評価項目の変化率の結果を図3〜10に示した。この結果及びサンプル間での評価項目の変化率の標準偏差から、芋焼酎(ストレート)がモズク由来フコイダン添加により最も変化が見られ、全体的傾向として蒸留酒であるウイスキー、芋焼酎(水割りも含む)の風味変化が顕著であった。
【0034】
さらに評価項目を詳細に検討すると、全体的には、風味の変化として後味の向上(よりすっきりとなる)、きめの改善(あらさがとれて丸く、なめらかとなる)が見られた。また、いわゆる不快臭(悪臭)である酸臭、硫黄臭、カビ臭、脂肪臭などが抑制傾向であった。ビールやワインの変化率は、蒸留酒と比較すると小さかったが、呈味にやや向上傾向が見られた。なお、モズク由来フコイダンを添加しても海藻臭には変化がなく、モズク由来フコイダン自体のわずかな風味は添加するアルコール飲料の風味改善に影響しないことも示された。
【0035】
以上より、各種アルコール飲料(特に、蒸留酒)へのモズク由来フコイダン添加により、後味の向上作用、きめの改善作用、エタノール臭低減、酢酸イソアミルやカプロン酸エチル臭の増加、不快臭の低減作用などが発揮され、風味が改善することが示された。
【実施例4】
【0036】
(アルコール飲料への添加試験III)
モズク由来フコイダンを焼酎に添加した際の呈味について確認するため、以下の試験を実施した。
【0037】
市販の芋焼酎(ストレート)に対して、モズク由来フコイダン含有液を濃度が1.0、2.0、4.0v/v%となるようにそれぞれ添加し(モズク由来フコイダン濃度は0.027、0.054、0.108w/v%)、添加直後に未添加品との呈味比較を味覚センサー(TS−5000Z、株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)により分析した。評価項目は、先味として酸味、苦味雑味、渋味刺激、旨味、塩味、甘味の5点、後味として苦味、渋味、旨味コクの3点とした。
【0038】
各サンプルの分析結果を図11に示した。この結果から、フコイダン添加により芋焼酎の酸味が大きく低減されること、旨味・塩味が若干増強されることが明らかとなった。
【実施例5】
【0039】
(アルコール飲料への添加試験IV)
モズク由来フコイダンを蒸留酒に添加した際の溶液pH変化について確認するため、以下の試験を実施した。
【0040】
市販の各蒸留酒(芋焼酎、麦焼酎、米焼酎、そば焼酎、泡盛、ウイスキー、バーボン、ラム、ブランデー、テキーラ)に対して、モズク由来フコイダン含有液を濃度が1.0、2.0、4.0v/v%となるようにそれぞれ添加し(モズク由来フコイダン濃度は0.027、0.054、0.108w/v%)、溶液pHを測定した。比較として、水にモズク由来フコイダン含有液を濃度が2.0、4.0v/v%となるようにそれぞれ添加したものの溶液pHも測定した。
【0041】
結果を図12、13に示した。この結果から、モズク由来フコイダン添加により、pH4.0〜5.0程度の各蒸留酒のpHを0.5程度上昇させることが明らかとなった。また、水の場合は、逆にpH5.5付近まで下降させることが明らかとなり、モズク由来フコイダン含有剤がpH調整剤(特に、pH4.5〜6の範囲への緩衝作用的な調整剤)としての効果を発揮していることも示された。
【実施例6】
【0042】
(アルコール飲料への添加試験V)
モズク由来フコイダンを添加した芋焼酎の不快臭の揮発量について確認するため、以下の試験を実施した。
【0043】
市販の芋焼酎2000mlに対し、モズク由来フコイダン含有液を濃度が2.0〜20.0v/v%となるようにそれぞれ添加したものを作製し(モズク由来フコイダン濃度は0.054〜0.54w/v%)、添加直後の揮発性不快臭成分(イソ酪酸、イソ吉草酸、カプロン酸)の量をガスクロマトグラフィ/質量分析法(GC/MS)を用いて測定した。
【0044】
測定結果を図14〜16に示す。イソ酪酸、イソ吉草酸、カプロン酸のいずれについても、モズク由来フコイダン添加により揮発量が減少すること、及び、モズク由来フコイダン含有液4.0〜10.0v/v%程度の添加によりその揮発抑制効果が最大となり、揮発量が65〜75%にまで抑制された。また、それ以上添加しても効果の上昇はあまりないことが明らかとなった。
【0045】
以上より、芋焼酎へのモズク由来フコイダン添加により、エタノールだけでなく他の揮発性不快臭成分(イソ酪酸、イソ吉草酸、カプロン酸)の揮発量も抑制(低減)できることが示された。
【0046】
本発明を要約すれば、以下の通りである。
【0047】
本発明は、アルコール飲料に添加するだけで、簡便かつ効果的にその香り・呈味・酸味等を改善することができる、安全性の高い新規なアルコール飲料の風味改善剤及び/又はpH調整剤を提供することを目的とする。
【0048】
そして、モズク由来フコイダンを有効成分としてなる剤を、アルコール飲料に所定量(例えば、モズク由来フコイダンとして0.0001〜15.0%(w/v))添加することで、その香り・呈味・酸味等を簡便かつ効果的に改善できる。特に、アルコール飲料の不快臭低減、好ましい香りの増強、熟成感の付与、呈味の増強、酸味の低減、溶液pHの調整などが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モズク由来フコイダンを有効成分としてなること、を特徴とするアルコール飲料の風味改善剤。
【請求項2】
アルコール飲料の風味改善が、アルコール飲料中のイソアミルアルコールの揮発性を高めること、及び/又は、エタノール、イソ酪酸、イソ吉草酸、カプロン酸から選ばれるすくなくともひとつの揮発性を低減すること、を特徴とする請求項1に記載の剤。
【請求項3】
アルコール飲料が、蒸留酒又はそれを希釈したものであること、を特徴とする請求項1又は2に記載の剤。
【請求項4】
モズク由来フコイダンが、モズクの熱水抽出物及び/又はその処理物であること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤。
【請求項5】
モズクの熱水抽出物が、モズクと水の混合物を加熱した後、これを濾過し、得られた濾液を脱塩した液体であること、を特徴とする請求項4に記載の剤。
【請求項6】
モズク由来のフコイダンが、モズクの熱水抽出物を更に精製処理して得た精製物及び/又はその処理物であること、を特徴とする請求項4又は5に記載の剤。
【請求項7】
該処理物が、濃縮物、ペースト化物、乾燥物、乳化物、液状物、希釈物から選ばれる少なくともひとつであること、を特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の剤。
【請求項8】
モズク由来フコイダンが、分子量5万以上の高分子フコイダンであり、かつ硫酸基含有量が10〜20%であること、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の剤。
【請求項9】
モズクが、糸モズク、太モズク、沖縄モズクの少なくともひとつであること、を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の剤をモズク由来フコイダンとして0.0001〜15.0w/v%となるように添加してなるアルコール飲料。
【請求項11】
アルコール飲料にモズク由来フコイダンを0.0001〜15.0w/v%となるように添加すること、を特徴とするアルコール飲料の風味改善方法。
【請求項12】
モズク由来フコイダンを有効成分としてなること、を特徴とするアルコール飲料のpH調整剤。
【請求項13】
アルコール飲料が、蒸留酒又はそれを希釈したものであること、を特徴とする請求項12に記載の剤。
【請求項14】
アルコール飲料にモズク由来フコイダンを0.0001〜15.0w/v%となるように添加すること、を特徴とするアルコール飲料をpH4.5〜6に調整する方法。
【請求項1】
モズク由来フコイダンを有効成分としてなること、を特徴とするアルコール飲料の風味改善剤。
【請求項2】
アルコール飲料の風味改善が、アルコール飲料中のイソアミルアルコールの揮発性を高めること、及び/又は、エタノール、イソ酪酸、イソ吉草酸、カプロン酸から選ばれるすくなくともひとつの揮発性を低減すること、を特徴とする請求項1に記載の剤。
【請求項3】
アルコール飲料が、蒸留酒又はそれを希釈したものであること、を特徴とする請求項1又は2に記載の剤。
【請求項4】
モズク由来フコイダンが、モズクの熱水抽出物及び/又はその処理物であること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤。
【請求項5】
モズクの熱水抽出物が、モズクと水の混合物を加熱した後、これを濾過し、得られた濾液を脱塩した液体であること、を特徴とする請求項4に記載の剤。
【請求項6】
モズク由来のフコイダンが、モズクの熱水抽出物を更に精製処理して得た精製物及び/又はその処理物であること、を特徴とする請求項4又は5に記載の剤。
【請求項7】
該処理物が、濃縮物、ペースト化物、乾燥物、乳化物、液状物、希釈物から選ばれる少なくともひとつであること、を特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の剤。
【請求項8】
モズク由来フコイダンが、分子量5万以上の高分子フコイダンであり、かつ硫酸基含有量が10〜20%であること、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の剤。
【請求項9】
モズクが、糸モズク、太モズク、沖縄モズクの少なくともひとつであること、を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の剤をモズク由来フコイダンとして0.0001〜15.0w/v%となるように添加してなるアルコール飲料。
【請求項11】
アルコール飲料にモズク由来フコイダンを0.0001〜15.0w/v%となるように添加すること、を特徴とするアルコール飲料の風味改善方法。
【請求項12】
モズク由来フコイダンを有効成分としてなること、を特徴とするアルコール飲料のpH調整剤。
【請求項13】
アルコール飲料が、蒸留酒又はそれを希釈したものであること、を特徴とする請求項12に記載の剤。
【請求項14】
アルコール飲料にモズク由来フコイダンを0.0001〜15.0w/v%となるように添加すること、を特徴とするアルコール飲料をpH4.5〜6に調整する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−100651(P2012−100651A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224406(P2011−224406)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(390016953)株式会社海産物のきむらや (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(390016953)株式会社海産物のきむらや (9)
【Fターム(参考)】
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