説明

アルジネート印象材と印象用トレーとの接着剤

【課題】金属製、レジン製およびモデリングコンパウンド製のいずれのトレーに対しても高い接着力を示し、操作性も良い、アルジネート印象材と印象用トレーとの間の接着剤を提供すること。
【解決手段】分子中にアミノ基を有するカップリング剤、好適には3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等の分子量が150〜300である上記カップリング剤、および溶剤、好適にはアルコール類、アセトン、および酢酸エステル類から選ばれた少なくとも1種の溶媒を含んでなる、歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルジネート印象材と印象用トレーとを接着するための接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
歯牙等を修復するために、鋳造歯冠修復処理または欠損補綴処理等を必要とする際には、まず、支台歯等の型を取る。次に、その採得された型を用いて、石膏製等の模型を作製する。そして、その模型を元に補綴物を作製し、作製された補綴物を支台歯等に装着する。この支台歯等の型を印象と称し、印象を採得するための硬化体を印象材と称する。
【0003】
一般的に、印象材として、アルジネート印象材、寒天印象材、シリコーンゴム印象材、ポリサルファイドゴム印象材、あるいはポリエーテルゴム印象材等が用いられる。その中でも、アルジネート印象材は、安価かつ取扱いが容易であるため、最も広く用いられる。アルジネート印象材は、アルギン酸塩を主成分とする基材と、硫酸カルシウムを主成分とする硬化材とから成り、当該基材と当該硬化材とを水の存在下で練和すると、ゲル状硬化体が得られることを利用した印象材である。
【0004】
アルジネート印象材を用いて印象を採得する作業は、以下の手順で行う。まず、歯列を模した印象用トレーに、硬化前の基材と硬化材とを混練したものを盛り付ける。次に、口腔内の歯牙を包み込むように、印象材を盛り付けたトレーを歯牙に押し付ける。そして、印象材が硬化した後に、印象材とトレーとを一体として歯牙から外して、口腔外に撤去する。
【0005】
印象を採得する際に用いられるトレーは、既製トレーあるいは個人トレーの2種類に大別される。既製トレーは、既製の大きさおよび形状を有するトレーである。具体的な既製トレーとしては、ステンレス、真鍮、あるいは真鍮にクロムめっきを施した金属製トレー等が挙げられる。また、個人トレーは、各個人に合わせてその形状が個別に作製されるトレーである。具体的な個人トレーとしては、ポリメタクリル酸エステルからなるレジン製トレー、あるいは熱可塑性樹脂からなるモデリングコンパウンド製トレー等が挙げられる。
【0006】
アルジネート印象材は、前述の各トレーに対する密着性が低いので、印象材を歯牙から外す際に、印象材がトレーから剥離することがある。印象材がトレーから剥離すると、印象の形状が大きく変化しやすいため、精度の高い印象が採得できないという問題が生じる。
【0007】
上述の問題を解決するために、網状、アンダーカット状あるいはパンチ穴を有するトレーを用いる方法も考えられる。このような形状を有するトレーを用いることにより、トレーに接触する印象材の面積が増加するため、印象材とトレーとの保持力が向上する。したがって、印象材をトレーから剥離しにくくすることができる。
【0008】
一方、上述のような形状のトレーではなく、プレート状等の既製トレーあるいは個人トレーを用いる際には、別の方法にて印象材とトレーとの保持力を高める必要がある。その方法としては、アルカリ土類金属塩を含有する接着剤や、微粉体および溶剤を含有する接着剤を用いて接着する方法が提案されている。(特許文献1、2を参照。)
【特許文献1】特開H10−175812号公報
【特許文献2】特開2001−17449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述の従来技術には次のような問題がある。網状等の特定の形状を付与すると、トレーのコストが高くなる。また、特許文献1に示されている接着剤は、アルカリ土類金属イオンとアルジネート印象材との架橋反応によりトレーに印象材を保持しているが、金属製のトレーにしか効果はない。また、特許文献2に示されている接着剤は、溶剤の浸透力によってトレーの表面を膨潤、溶解させ微粉体をトレー表面に付着させることにより、物理的勘合力によって印象材を保持しているにすぎず、レジン製トレーやモデリングコンパウンド製トレーには有効であるが、金属製トレーには効果がないといった問題点があった。さらにこの接着剤を長期間保存した場合、分散させていた微粉体が徐々に沈降してしまうといった問題があった。このような状況に鑑み本発明者らは、高分子量のポリアミン化合物、溶剤、さらに有機過酸化物を含む接着剤が、金属製、レジン製およびモデリングコンパウンド製のいずれのトレーに対しても高い接着力を有することを見い出し先に出願した(特願2007−171692号)。しかしながら、一般に、この接着剤に含まれる高分子量のポリアミン化合物の粘度が高いものになり易く、このため、接着に十分に有効な量を添加すると接着剤の粘度も高くなってしまい、該接着剤を筆などでトレーに塗布する際、トレーに塗布しにくいといった問題があり、操作性の改良が望まれていた。また、塗布後、溶剤を乾燥した時にトレー上に残るポリアミン化合物の皮膜が厚くなりすぎ接着力のばらつきの原因となる可能性があった。
【0010】
そこで本発明では、操作性が良くかつ高い接着力を有する、アルジネート印象材と印象用トレーとの間の接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するため、本発明者は鋭意研究した結果、分子中にアミノ基を有するカップリング剤を溶剤中に含んでなる組成物を、トレーとアルジネート印象材との間に存在せしめたところ、良好な操作性でありながら、トレーとアルジネート印象材との間に安定した高い接着力が発現することを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、分子中にアミノ基を有するカップリング剤、および溶剤を含んでなる歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着剤である。
【0013】
このような組成の接着剤を採用すると、アルジネート印象材が印象用トレーから剥がれてしまうことを効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、印象材とトレーとの間の接着剤の接着力を向上させることができる。また、トレーへの塗布性などの操作性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着剤の好適な実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0016】
本実施の形態に係る接着剤に用いられる、分子中にアミノ基(−NH)を有するカップリング剤は、分子中にアミノ基を有しかつ加水分解性基を有するカップリング剤である。ここで加水分解性基とは、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などのアルコキシ基に代表される、水の存在下で酸またはアルカリ触媒によって加水分解される基である。
【0017】
このような分子中にアミノ基(−NH)を有するカップリング剤としては、公知の、分子中にアミノ基を有するシランカップリング剤や、チタネート系カップリング剤を用いることができる。
【0018】
該分子中にアミノ基を有するカップリング剤は、接着性、つまり分子量あたりのアミノ基の個数、および使用しやすい粘度などの観点から、分子量500以下が好ましく、400以下のものがより好ましく、150〜300が最も好ましい。アミノ基の個数は、通常、1個であるが2個以上であっても良く、その場合、上記分子量あたりにおいてアミノ基が1個存在するものであるのが好ましい。また、分子中の加水分解性基は2個以上のものが好ましい。
【0019】
該分子中にアミノ基を有するシランカップリング剤を具体的に例示すると、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、3−(2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル)トリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリエトキシシランなどが挙げられる。
【0020】
また、分子中にアミノ基を有するチタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネートなどが挙げられる。
【0021】
なかでも、分子中にアミノ基を有するシランカップリング剤の方が好ましく、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランが特に好ましく用いられる。これらは単独にまたは2以上を混合して用いることができる。
【0022】
本発明の接着剤における、分子中にアミノ基を有するカップリング剤の配合量は、接着性の観点から、接着剤100質量部に対して1〜50質量部が好ましく、5〜40質量部がより好ましく、10〜30質量部が最も好ましい。
【0023】
本発明の接着剤の特徴は、上記に例示したような、分子中にアミノ基を有するカップリング剤を含むことである。該カップリング剤は低分子量であり、接着剤とした時の粘度は低いためにトレーへの塗布性が良好である。また、トレーへの塗布後、溶剤を除去した時にトレー上に残る皮膜の厚みも均一にすることが容易であるため、接着力のばらつきを抑えることができる。
【0024】
トレー上に残ったカップリング剤の被膜は、アルジネート印象材と接触すると、該カップリング剤中のアミノ基とアルジネート印象材中のカルボキシル基との間で架橋が形成される。あわせて、カップリング剤中のメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などの加水分解性基がアルジネート印象材中の水分およびアルカリ成分によって、シラノール基などに分解され、さらに縮合し3次元的に架橋されるため、アルジネート印象材とトレーとを強固に接着できると考えられる。
【0025】
本実施の形態に係る接着剤において使用される溶剤は、接着剤の操作性を向上させるために用いられる。したがって、流動性およびトレーとの親和性に優れる溶剤であれば、公知のものが何ら制限なく使用できる。具体的には、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、若しくはブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;トルエン、キシレン、若しくはベンゼン等の芳香族炭化水素類;へキサン、ペンタン、ブタン等の脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等の塩素系溶剤が挙げられる。その中でも、揮発性が高く、後述する乾燥が容易なものが好ましい。さらには、レジン製トレーやモデリングコンパウンド製トレーに対して浸透力が高いことから、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類が特に好適に用いられる。
【0026】
本発明の接着剤における、溶剤の配合量は、接着性の観点から、接着剤100質量部に対して50〜99質量部が好ましく、60〜95質量部がより好ましく、70〜90質量部が最も好ましい。
【0027】
本実施の形態に係る接着剤の製造方法は特に限定されないが、マグネチックスターラーや羽根撹拌等による通常の混合などで製造することができる。
【0028】
本実施の形態に係る接着剤の使用方法は、特に制限されない。一般には、ハケ、ヘラ、筆、あるいはローラー等でトレーに塗布、またはトレーに噴霧する方法を採用することができる。
【0029】
接着剤をトレーに塗布または噴霧した後には、好ましくは、余剰な溶剤を揮発させるために乾燥させる。乾燥の方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、減圧乾燥、あるいは、加熱乾燥と送風乾燥を組み合わせる熱風乾燥等を採用するのが好ましい。
本実施の形態に係る接着剤が適用されるアルジネート印象材としては、公知のものが何ら制限されることなく用いられる。アルジネート印象材の具体的な種類として、アルギン酸塩を主成分とする基材ペーストと、硫酸カルシウムを主成分とする硬化材ペーストとを混合して用いるタイプ、あるいはアルギン酸塩および硫酸カルシウムを主成分とする粉体に水を混合して用いるタイプが挙げられる。
【0030】
さらに詳しく述べると、ペーストを混合して用いるタイプのアルジネート印象材に用いられる基材ペーストは、アルギン酸カリウム、シリカ粉末、水酸化カリウム、ポリアクリル酸および水等から構成される。同様に、硬化材ペーストは、粒状シリカ、流動パラフィン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、リン酸三ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、超微粒子シリカおよび硫酸カルシウム等から構成される。粉体に水を混合して用いるタイプのアルジネート印象材において、その粉体は、アルギン酸カリウム、シリカ粉末、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、リン酸三ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、または硫酸カルシウム等から成る。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、接着試験方法を(1)に、使用したトレーの種類を(2)に、評価方法を(3)に、塗布性の評価方法を(4)に、実施例および比較例で用いたカップリング剤およびアミン化合物を(5)に示す。
(1)接着試験方法
予め調製した接着剤を、(2)に記す各トレーに筆「トクソー毛筆No.5」(株式会社トクヤマデンタル製)で塗布し、エアーブローにて余剰の溶剤を揮発させた。そして、該トレーに練和したアルジネート印象材を盛り付けた後、300gの加重をかけて、37℃下で3分間放置した。その後、硬化した印象材をトレーから引き剥がした。
【0032】
次に、(3)に記す評価基準に従い、印象材とトレーとの界面にて凝集破壊を引き起こしている面積の割合に基づいて、接着性能を評価した。全ての接着試験において、APミキサーII(株式会社トクヤマデンタル製)にて練和した、ペーストタイプのアルジネート印象材「AP−1ペースト」(株式会社トクヤマデンタル製)を用いた。
(2)トレーの種類
X:金属製トレーとして、ニッケルめっきを施した真鍮製トレー「COE104」(株式会社ジーシー製)を用いた。
Y:レジン製トレーとして、「オストロンII」(株式会社ジーシー製)を板状に硬化させたものを用いた。
Z:モデリングコンパウンド製トレーとして、「モデリングコンパウンド中性」(株式会社ジーシー製)を用いた。
(3)接着性の評価基準
◎:印象材とトレーを手で引き剥がすと、全面的に印象材の凝集破壊を引き起こす。
○:印象材とトレーを手で引き剥がすと、印象材の大部分が凝集破壊を引き起こすが、一部はトレーとの界面から剥がれる。
△:印象材とトレーを手で引き剥がすと、印象材の一部が凝集破壊を引き起こすが、大部分はトレーとの界面から剥がれる。
×:印象材とトレーを手で引き剥がすと、全面的に印象材がトレーの界面で容易に剥がれる。
(4)塗布性の評価基準
上記(1)の接着試験において、筆による接着剤の塗布のしやすさ、および溶剤を除去した後にトレーに残存する皮膜の状態を観察し、以下の基準に従い評価した。
◎:十分に塗布しやすい粘度であり、また、皮膜は全体的にほぼ均一である。
○:若干粘度が高く少し塗布しにくいが、皮膜は全体的にほぼ均一である。
△:粘度が高く塗布しにくく、皮膜の厚みは不均一である。
(5)実施例および比較例で用いたカップリング剤、アミン化合物およびその他化合物
C1:3−アミノプロピルトリメトキシシラン(分子量179)
C2:3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン(分子量191)
C3:3−アミノプロピルトリエトキシシラン(分子量221)
C4:3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン(分子量222)
C5:2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン(分子量268)
C6:イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート (分子量573)
C7:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン (分子量262)
A1:アミノメチルトリメチルシラン(分子量107)
PAA:ポリアリルアミン(分子量3000)
BPO:過酸化ベンゾイル。
【0033】
実施例1
分子中にアミノ基を有するカップリング剤として、0.1gの3−アミノプロピルトリメトキシシラン、溶剤として9.9gのアセトンをスクリュー管中に量りとり撹拌混合し、均一な溶液の接着剤を調製した。得られた接着剤を用いて、各種トレーに対する接着試験を行った。結果を表1に示す。金属製トレーに対しては高い接着力を示し、レジン製トレーおよびモデリングコンパウンド製トレーに対しても比較的高い接着力を示した。尚、この接着剤のトレーに対する塗布性は良好であり、トレーに残存する皮膜も均一であった(塗布性評価◎)。また、この接着剤は均一な溶液であるため、沈降なども問題も生じなかった。
【0034】
実施例2〜7
実施例1と同様のカップリング剤を用いて、表1に示すように、該カップリング剤の濃度および溶剤を変化させて接着剤を調製した。得られた接着剤を用いて、各種トレーに対する接着試験を行った。結果を表1に示す。いずれの組成においても、金属製トレーに対しては高い接着力を示し、レジン製トレーおよびモデリングコンパウンド製トレーに対しても比較的高い、または高い接着力を示した。尚、これらの接着剤のトレーに対する塗布性は良好であった(塗布性評価◎)。また、これらの接着剤は均一な溶液であるため、沈降なども問題も生じなかった。
【0035】
実施例8〜18
分子中にアミノ基を有するカップリング剤、及び溶剤を変化させて、表1に示す各組成で実施例1と同様に接着剤を調製し接着試験を行った。結果を表1に示すが、いずれのトレーに対しても高い、または比較的高い接着力を示した。さらに実施例16を除いて、これらの接着剤のトレーに対する塗布性、トレー上の皮膜は良好であった(塗布性評価◎)。実施例16の接着剤は、若干粘度が高く少し塗布しにくかったが、トレー上の皮膜は均一であった(塗布性評価○)。また、これらの接着剤は均一な溶液であるため、沈降なども問題も生じなかった。
【0036】
比較例1
分子中にアミノ基を有さないカップリング剤として、1gの3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、溶剤として、9gのアセトンを用いて実施例1と同様に接着剤を調製し接着試験を行った。いずれのトレーに対しても接着しておらず、トレーから印象材を引き剥がすと、印象材がトレーから簡単に剥離した。
【0037】
比較例2
分子中にアミノ基は有するが、加水分解性基を有さない化合物として、1gのアミノメチルトリメチルシラン、溶剤として、9gのアセトンを用いて実施例1と同様に接着剤を調製し接着試験を行った。いずれのトレーに対しても接着しておらず、トレーから印象材を引き剥がすと、印象材がトレーから簡単に剥離した。
【0038】
比較例3
いずれのカップリング剤も含まず、溶剤としてのアセトンのみを接着剤とし、試験を行った結果、いずれのトレーに対しても接着しておらず、トレーから印象材を引き剥がすと、印象材がトレーから簡単に剥離した。
【0039】
参考例1
特願2007−171692号に記載されている接着剤を以下のように調製し接着試験を行った。
1gのポリアリルアミン(分子量3000)と0.5gの過酸化ベンゾイルを8.5gのエタノールに均一に溶解し接着剤を調製した。接着試験の結果を表1に示すが、いずれもトレーに対しても高い接着性を示した。しかし、この接着剤は粘度が高く、塗布しにくく、皮膜も均一ではなかった(塗布性評価△)。
【0040】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、アルジネート印象材を使用して歯牙の型取りを行う歯科治療の分野に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子中にアミノ基を有するカップリング剤、および(B)溶剤を含んでなることを特徴とする、歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着剤。
【請求項2】
(A)分子中にアミノ基を有するカップリング剤が、分子量が150〜300のものである請求項1記載の歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着剤。
【請求項3】
(B)溶剤が、アルコール類、アセトン、および酢酸エステル類から選ばれた少なくとも1種である請求項1または請求項2に記載の歯科用アルジネート印象材と印象用トレーとの接着剤。

【公開番号】特開2009−46424(P2009−46424A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213798(P2007−213798)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(391003576)株式会社トクヤマデンタル (222)
【Fターム(参考)】