説明

アルツハイマー病についてのバイオマーカーとしての神経分泌タンパク質VGFのフラグメント

本発明は、患者のアルツハイマー病状態を認定するのにおいて有用な神経分泌タンパク質VGFペプチドを提供する。詳細には、このペプチドおよびその改変型は、被験体サンプルをアルツハイマー病または非アルツハイマー病として分類するために用いられ得る。このペプチドバイオマーカーは、SELDI質量分析法によって検出され得る。本発明によって、ある被験体におけるアルツハイマー病状態を認定するための方法が提供され、この方法は、(a)該被験体由来の生物学的サンプルにおいて少なくともVGFペプチド−1を測定する工程と、(b)この測定値とアルツハイマー病状態とを関連付ける工程とを、包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/691,637号(2005年6月16日出願)に対する優先権を主張する。さらに、本出願は、PCT出願第US06/13727(2006年4月11日出願)の一部継続出願であり、このPCT出願は、米国仮特許出願第60/673,277号(2005年4月19日出願)の優先権を主張する。加えて、本出願は、米国特許出願第10/982,545号(2004年11月6日出願)の一部継続出願であり、この米国出願は、米国仮特許出願60/572,617号(2004年5月18日出願)および米国仮特許出願60/586,503号(2004年7月8日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は概して、臨床診断に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
アルツハイマー病は、一旦失われれば取り替えられない脳細胞の死滅をもたらす進行性の神経変性障害である。神経病理学は、アミロイド斑、神経原線維変化、シナプス喪失および選択性の神経細胞死滅の存在によって特徴付けられ得る。この斑(plaques)は、異常なレベルの細胞外アミロイドβペプチド(Aβ)の結果であるが、濃縮体(tangles)は、細胞内の過リン酸化タウタンパク質の存在に関連している。症状は、最初に記憶の低下を、次に認知機能および正常な挙動の悪化を伴って、臨床的に出現する。年齢は、単独の最も顕著な危険因子であって、65歳から5年ごとに頻度が2倍に増大する。罹患率の研究によって、2000年には、USだけでADを有する人の数は、450万であると見積もられ、この数は最高齢の年齢群の急激な増加に起因して今後50年にほぼ3倍に増大すると予想される。先進国での痴呆患者の数の増大は、社会および保健医療システムにとって膨大な負担となるであろう。
【0004】
ADの病因の理解の長足の進歩にもかかわらず、著名な疾患改変効果を示す薬物はない。疾患の進行を遅らせる新規なクラスの薬物を開発するために大きな労力が払われているが、アセチルコリンエステラーゼインヒビターによって代表される現行の治療は主に、症状の緩和に限定されている(非特許文献1)。初期の診断は、初期の治療にとって必要条件であり、神経変性を遅らせる目的の薬物が臨床効果を示す場合は、さらに重要となる。
【0005】
ADの臨床診断のための現行の基準は、他の認知症の排除に大きく依存しており、そして可能な場合、神経心理学的な試験および神経画像処理検査を含む(非特許文献2)。臨床基準を用いて80〜90%という合理的に高い正確性の割合が報告されているが(非特許文献3)、それらの研究は、疾患の後期段階で患者を典型的に診断する専門的な施設によって行われている。慣用的な臨床診療における診断の正確性は、特にこの疾患の軽度または前駆症状性の段階の間、おそらくかなり低い。疾患の明確な診断は現在、脳組織病理学の検査によってのみ可能であり、そして臨床的に実現可能なプロセスではない。
【0006】
いくつかの候補バイオマーカーは、それぞれアミロイド斑および、神経原線維変化の主な成分である、Aβ1−42およびタウのように脳脊髄液(CSF)において発見されている。これらの試験は、市販されており、そして研究および診断目的のために欧州の一部で慣用的に用いられている。しかし、これらのバイオマーカーの診断能力は、特に他の認知症に対する特異性に関して、最適ではない(非特許文献4)。多くの他のマーカーは、血清およびCSFの両方で提案されており、これには、アミロイド前駆体タンパク質、アポE,イソプロスタン(脂質酸化のマーカー)およびホモシステインが挙げられる。これらが診断マーカーとして用いられ得るか否かは、まだ確認されていない(非特許文献5)。
【非特許文献1】Davis R Eら(1995)Arzneimittelforschung,45:425〜431
【非特許文献2】McKhann G.ら,(1984)Neurology 34:939〜944
【非特許文献3】Kosunen Oら,(1996)Acta Neuropathol 91:185〜193
【非特許文献4】Blennow KおよびHampel H,(2003)Lancet Neurol.2:605〜613
【非特許文献5】Frank R A.ら(2003)Neurobiol of Aging 24:521〜536
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、ADを早期段階で検出し、疾患の進行をモニターし、そしてAD、正常な被験体、非AD認知症および他の神経学的障害の間を識別し得る単純な生化学的試験の必要性は満たされていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の簡単な説明)
本発明は、アルツハイマー病を診断するために有用な新規なバイオマーカーおよびバイオマーカーの組み合わせ、ならびにアルツハイマー病を診断するためにこのバイオマーカーを用いるための方法およびキットを提供することによってこれらの必要性を満たす。
【0009】
さらに詳細には、1実施形態において、本発明は、ある被験体におけるアルツハイマー病状態を認定するための方法を提供し、この方法は、この被験体由来の生物学的サンプルにおいて少なくとも1つのバイオマーカーを測定する工程であって、この少なくとも1つのバイオマーカーが、表1に示されるVGFペプチド−1(すなわち、M6608)である工程と;この測定値とアルツハイマー病状態とを関連付ける工程と、を包含する。別の関連の実施形態では、この少なくとも1つのバイオマーカーは、改変型のVGFペプチド−1、例えば、翻訳後改変型、例えば、さらに短縮またはグリコシル化された型である。
【0010】
本発明は、アルツハイマー病状態を認定するために有用なバイオマーカーを測定するためのいくつかの異なる方法を提供する。例えば、本発明の1実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカーは、SELDIプローブの吸着性表面上でこのバイオマーカーを捕獲すること、およびこの捕獲されたバイオマーカーを、レーザー脱離質量分析によって検出することによって測定される。1実施形態では、この吸着剤は、イオン交換吸着剤を含む。関連の実施形態では、このイオン交換吸着剤は、Q10Biochip(Ciphergen Biosystems,Inc.)である。別の実施形態では、この吸着剤は、生体特異性の吸着剤を含む。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明のバイオマーカー、例えば、表1のVGFペプチドは、質量分析法以外の方法によって、例えば、サンプル中のバイオマーカーの存在を検出または定量するためのバイオマーカーの量の測定に関与しないか、あるいは必要としない方法によって測定されてもよい。例えば、本発明のバイオマーカーは、イムノアッセイによって検出されてもよい。1実施形態では、本発明は、VGFペプチド−1に特異的な抗体を含むイムノアッセイを提供する。例えば、VGFペプチド−1のN末端は、特異的に検出され得る。1実施形態では、本発明は、VGFペプチド−1に特異的な抗体を利用するイムノアッセイを提供する。関連の実施形態では、この抗体は、グリコシル化されるか、そうでなければ、翻訳後改変された型のVGFペプチド−1を認識した。
【0012】
好ましい実施形態では、本発明は、脳脊髄液(「CSF」)を含む体液中のVGFペプチド−1を検出する方法を提供する。
【0013】
関連の実施形態では、バイオマーカー発現とアルツハイマー病状態との関連付けは、ソフトウェア分類アルゴリズムによって行われる。
【0014】
さらに別の実施形態では、このアルツハイマー病状態は、アルツハイマー病および非アルツハイマー病から選択される。本発明はさらに、この状態に基づいて被験体処置を管理する方法を提供する。1実施形態では、本発明はさらに、被験体に対して被験体のアルツハイマー病状態を報告する工程を包含する。関連の実施形態では、本発明はさらに、有形的表現媒体上にアルツハイマー病状態を記録する工程を包含する。
【0015】
例えば、その測定値がアルツハイマー病に関連するならば、被験体処置を管理する工程は、疾患進行および/もしくは退行の症状について被験体をモニタリングする工程、そして/または被験体に治療的なケアを提供する工程を包含する。さらに別の実施形態では、本発明の診断方法はさらに、被験体管理後にVGFペプチド−1を測定する工程と、この測定値と疾患進行とを関連付ける工程とを包含する。
【0016】
関連の実施形態では、本発明は、アルツハイマー病の経過を決定するための方法を提供し、この方法は、被験体由来の生物学的サンプルにおいて少なくとも1つのバイオマーカーを初回に測定する工程であって、この少なくとも1つのバイオマーカーがVGFペプチド−1である工程と;この被験体由来の生物学的サンプルにおいてこの選択されたバイオマーカーの1つ以上を2回目に測定する工程と;この第一の測定値と第二の測定値とを比較して、アルツハイマー病の経過を決定する工程と、を包含する。関連の実施形態では、この方法における第二の測定は、被験体管理後に生じる。さらなる関連の実施形態では、被験体におけるアルツハイマー病状態の経過を決定するための方法は、疾患状態の経過を報告する工程、および/または有形的表現媒体上で疾患状態の経過を記録する工程を包含する。
【0017】
別の実施形態では、被験体管理は、被験体に対してコリネステラーゼインヒビターを投与する工程を包含する。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、被験体由来のサンプルにおいて少なくとも1つのバイオマーカーを測定する工程であって、この少なくとも1つのバイオマーカーがVGFペプチド−1である工程を包含する方法を提供する。
【0019】
1実施形態では、本発明はさらに、精製されたVGFペプチド−1を提供する。別の実施形態では、本発明は、VGFペプチド−1に結合するか、または結合し得る、生体特異的捕獲試薬を含む組成物を提供する。関連の実施形態では、この生体特異的捕獲試薬は抗体である。
【0020】
さらに別の実施形態では、本発明は、製品を含むキットを提供し、これが次に、固体支持体と、それに対して結合された少なくとも1つの捕獲試薬とを含み、この捕獲試薬がVGFペプチド−1を結合する。別の関連の実施形態では、この捕獲試薬は、VGFペプチド−1を高い特異性および選択性で結合する試薬、例えば、VFGペプチド−1に特異的なモノクローナル抗体である。このキットはまた、選択されたバイオマーカーを測定するための固体支持体を用いるため、そしてこの測定値とアルツハイマー病状態とを関連付けるための説明書も含む。1実施形態では、このキットはさらに、固体支持体を用いてVGFペプチド−1を測定するための説明書を含む。さらに別の実施形態では、この捕獲試薬を含む固体支持体は、SELDIプローブである。さらに別の実施形態では、この捕獲試薬(単数または複数)は、疎水性吸着剤を含む。さらに別の実施形態では、このキットは、VGFペプチド−1を含む容器を備える。別の関連の実施形態では、このキットの捕獲試薬(単数または複数)は、陰イオン交換クロマトグラフィー吸着剤を含む。
【0021】
さらに別の実施形態では、本発明は、製品を含むキットを提供し、この製品は、固体支持体およびそれに対して結合された少なくとも1つの捕獲試薬を含み、そしてこの捕獲試薬はVGFペプチド−1バイオマーカーを含み、ここでこのキットはさらに、VGFペプチド−1を含む容器を含む。さらに別の実施形態では、少なくとも1つの結合された捕獲試薬を含む固体支持体は、SELDIプローブである。
【0022】
さらに別の実施形態では、本発明は、ソフトウェア製品を提供し、この製品は、サンプルに起因するデータにアクセスするコードであって、このデータがサンプル中の少なくとも1つのバイオマーカーの測定値を包含し、この少なくとも1つのバイオマーカーがVGFペプチドを含むコードを包含し;このソフトウェアはさらに、サンプルのアルツハイマー病状態を分類する分類アルゴリズムをこの測定の関数として遂行するコードを含む。関連の実施形態では、この分類アルゴリズムは、サンプルのアルツハイマー病状態を、1つ以上のバイオマーカーの測定の関数として分類し、この1つ以上のバイオマーカーはVGFペプチド−1を含む。
【0023】
本発明はさらに、質量分析またはイムノアッセイによってVGFペプチド−1を検出する工程を包含する、方法を提供する。
【0024】
さらに別の実施形態では、本発明は、被験体由来のサンプルにおけるバイオマーカーの相関から決定されるアルツハイマー病状態に関連する診断をこの被験体に連絡する工程であって、このバイオマーカーはVGFペプチド−1を包含する工程を包含する方法を提供する。関連の実施形態では、この診断は、コンピューター処理媒体を介して被験体に連絡される。
【0025】
さらに別の実施形態では、本発明は、VGFペプチド−1と相互作用する化合物を特定するための方法を提供し、この方法は、上記バイオマーカーと試験化合物とを接触させる工程と、この試験化合物がこのバイオマーカーと相互作用するか否かを決定する工程と、を包含する。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、細胞中におけるバイオマーカーの濃度を調節するための方法を提供し、このバイオマーカーは、ペプチド−1であり、この方法は、この細胞とアンチセンスまたは干渉RNA分子とを接触させる工程を包含し、このアンチセンスまたは干渉RNA分子は、この細胞中のVGFペプチド−1の発現を阻害する。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、細胞中のバイオマーカーの過剰発現に関連する被験体における状態を処置する方法を提供し、このバイオマーカーはVGFペプチド−1であり、この方法は、治療上有効な量のアンチセンスまたは干渉RNA分子をこの被験体に投与する工程を包含し、このアンチセンスまたは干渉RNA分子は、この細胞中のこのバイオマーカーの発現を阻害する。関連の実施形態では、この処置される条件はアルツハイマー病である。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、細胞または組織においてVGFペプチド−1の濃度を調節するための方法を提供し、この方法は、この細胞または組織と、プロテアーゼインヒビターとを接触させる工程を包含し、このプロテアーゼインヒビターは、天然のVGFタンパク質のVGFペプチド−1の産生をもたらす位置での切断を妨げる。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、被験体においてある状態を処置する方法を提供し、この方法は、天然のVGFタンパク質の切断を妨げる、治療上有効な量のプロテアーゼインヒビターを被験体に投与する工程を包含する。関連の実施形態では、この状態はアルツハイマー病である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
(I.序)
バイオマーカーは、有機の生体分子であって、1つの表現型状態(例えば、疾患を有する)の被験体から採取されたサンプルにおいて別の表現型状態(例えば、疾患を有さない)と比較して示差的に存在する。あるバイオマーカーは、種々の群におけるバイオマーカーの平均または中央の発現レベルが、統計的に有意であると計算される場合、異なる表現型状態の間で示差的に存在する。統計的な相違についての共通の試験としては、とりわけ、t−検定、ANOVA,Kruskal−Wallis、Wilcoxon、Mann−Whitneyおよびオッズ比が挙げられる。バイオマーカーによって、単独でまたは組み合わせて、ある被験体が1つの表現型状態または別の表現型状態に属する相対的なリスクの測定が得られる。従って、それらは疾患(診断)、薬物の治療有効性(治療的診断法(theranostics))および薬物の毒性のマーカーとして有用である。
【0031】
(II.アルツハイマー病のバイオマーカー)
本発明は、アルツハイマー病、詳細には、アルツハイマー病対正常な状態(非アルツハイマー病)を有する被験体に示差的に存在するポリペプチドベースのバイオマーカーを提供する。このバイオマーカーは、質量分析計によって決定されるような質量対電荷比によって、飛行時間質量分析におけるそれらのスペクトルの形状によって、そして吸収剤表面に対するそれらの結合特徴によって特徴付けられる。これらの特徴によって、特定の検出された生体分子が本発明のバイオマーカーであるか否かを決定するための1方法が得られる。これらの特徴は、生体分子の固有の特徴を示し、そして生体分子が識別される様式での工程限界でない。1局面では、本発明は、これらのバイオマーカーを単離型で提供する。
【0032】
このバイオマーカーは、Ciphergen Biosystems,Inc.(Fremont,CA)(「Ciphergen」)由来のProteinChipアレイを使用するSELDI技術を用いて開発された。CSFサンプルは、アルツハイマー病と診断された被験体、および正常と診断された被験体から収集した。このサンプルを、SELDIバイオチップに供し、そしてサンプル中のポリペプチドのスペクトルを、CiphergenPBSII質量分析計での飛行時間分光測定によって生成した。このようにして得たスペクトルを、Biomarker Wizardを有するCiphergen Express(商標)Data Manager SoftwareおよびCiphergen Biosystems,Inc.由来のBiomarker Pattern Softwareによって分析した。各々の群の質量スペクトルを、散布図分析に供した。Mann−Whitney試験分析を使用して、アルツハイマー病およびコントロール群を、散布図における各々のタンパク質クラスターについて比較して、そして2つの群の間で有意に異なる(p<0.0001)タンパク質を選択した。この方法は、実施例のセクションにさらに詳細に記載される。
【0033】
このように開発されかつ特定されたアルツハイマー病のバイオマーカーは、表1に提示される。このバイオマーカーであるVGFペプチド−1は、正常と比較してアルツハイマー病で上昇する。表1のVGFペプチドバイオマーカーは、神経分泌性タンパク質VEGFのフラグメントである。全長VGFは、616アミノ酸タンパク質である(SwissProtアクセッション番号015240)。VGFペプチド−1は、以下のアミノ酸配列を有する:SQEETPGHRR KEAEGTEEGG EEEDDEEMDP QTIDSLIELS TKLHLPADDV VSIIEEVEE(配列番号1)。これは、全長タンパク質のアミノ酸421〜479に相当する。全長VGFタンパク質に対するVGFペプチド−1の関係は、実施例のセクションにさらに詳細に記載される。
【0034】
(表1)
【0035】
【化1】

本発明のバイオマーカーは、質量スペクトルによって決定されるような質量対電荷比によって特徴付けられる。各々のバイオマーカーの質量対電荷比は、「M」の後に表1に提供される。従って、例えば、M6620.0は、6620.0という質量対電荷比が測定されている。VGFペプチドに対応するピークは以前に、「Saposin D and FAM 3C are Biomarkers for Alzheimer’s Disease」と題された、米国仮特許出願第60/673,277号;そして2004年11月6日出願の、「Biomarkers for Alzheimer’s Disease」と題されたPCT/US2004/037994(国際特許公開WO2005/047484)においておよそ6608m/zのアルツハイマー病バイオマーカーとして観察された。この質量対電荷比は、Ciphergen Biosystems,Inc. PBS II質量分析計で得られた質量スペクトルから決定された。この装置は、約+/−0.15パーセントの質量正確性を有する。さらに、この装置は、約400〜1000m/dmという質量分解能を有し、ここでmは、質量であり、dmは0.5ピーク高さの質量スペクトルピーク幅である。このバイオマーカーの質量対電荷比は、Biomarker Wizard(商標)ソフトウェア(Ciphergen Biosystems,Inc.)を用いて決定した。Biomarker Wizardは、PBSIIによって決定されるとおり、分析した全てのスペクトル由来の同じピークの質量対電荷比をクラスタ形成すること、このクラスターで最大および最小の質量対電荷比をとること、および2で割ることによってバイオマーカーに質量対電荷比を割り当てる。従って、提供された質量は、これらの仕様を反映する。質量の決定におけるさらなる正確性は、同一性が確認されているピーク(すなわち、公知のアミノ酸配列のペプチドに相当するピーク)を用いてその装置を較正することによって獲得され得る。
【0036】
本発明のバイオマーカーはさらに、飛行時間質量分析計におけるそれらのスペクトルピークの形状によって特徴付けられる。VGFペプチドバイオマーカーを示すピーク(単数または複数)の形状を示す質量スペクトルを図1に示す。
【0037】
本発明のバイオマーカーはさらに、クロマトグラフィー表面に対するそれらの結合特性によって特徴付けられる。表1の「ProteinChipアッセイ」カラムは、バイオマーカーが結合するバイオチップのタイプを指している。詳細には、VGFペプチドは、pH9.0で陰イオン交換吸着剤(例えば、Ciphergen(登録商標)Q10 ProteinChip(登録商標)アレイ)に結合する。「SPA」とは、ProteinChipアレイと組み合わせてエネルギー吸収マトリックスとして用いられる因子であるシナピン酸を指す。
【0038】
VGFペプチドの同一性が決定される方法は、実施例のセクションに記載される。同一性が決定されているバイオマーカーについては、バイオマーカーの存在は、当該分野で公知の他の方法によって決定され得る。
【0039】
バイオマーカーの検出のための好ましい生物学的な供給源は、脳脊髄液(「CSF」)である。しかし、このバイオマーカーは、他の体液、例えば、血清、血液または尿に存在し得る。
【0040】
本発明のバイオマーカーは、生体分子である。従って、本発明は、これらの生体分子を単離型で提供する。このバイオマーカーは、生物学的な体液、例えばCSFから単離され得る。それらは、当該分野で公知の任意の方法によって、それらの質量およびそれらの結合特徴の両方に基づいて単離され得る。例えば、生体分子を含むサンプルは、本明細書に記載されるように、クロマトグラフィー分画に供されてもよく、そして例えば、アクリルアミドゲル電気泳動によるさらなる分離に供されてもよい。バイオマーカーの同定の知識によってまた、イムノアフィニティークロマトグラフィーによるそれらの単離が可能になる。
【0041】
あるグループの研究者ら(Yalkinogluら)は、VGFの内部フラグメントを、アルツハイマー病のCSFにおけるバイオマーカーとして独立して開示している(2004年3月4日公開、国際公開番号WO2004/019043)。この刊行物は、このバイオマーカーがSELDI技術を用いて見出されたことを示す。しかし、この刊行物は、VGFフラグメントが4.823kDの質量を有し、全長VGFのほぼアミノ酸378〜398に相当することを示す。従って、これは本発明のVGFペプチド−1とは異なるフラグメントであり、これは、約6620Daの質量が測定されており、そしてVGFのアミノ酸421〜479に相当する。
【0042】
(III.タンパク質のバイオマーカーおよび種々の型)
タンパク質は高頻度に、複数の異なる型でサンプル中に存在する。これらの形態は、翻訳前および翻訳後の改変のいずれかまたは両方から生じ得る。翻訳前改変型としては、対立遺伝子改変体、スプライシング改変体およびRNA編集型(RNA editing forms)が挙げられる。翻訳後改変型としては、タンパク質分解性切断(例えば、シグナル配列の切断、または親タンパク質のフラグメント)、グリコシル化、リン酸化、脂質化、酸化、メチル化、システイニル化、スルホン化およびアセチル化から生じる形態が挙げられる。サンプル中のタンパク質を検出または測定する場合、種々の形態の間を識別する能力は、相違の性質および検出または測定するために用いられる方法に依存する。例えば、モノクローナル抗体を用いるイムノアッセイは、エピトープを含有するタンパク質の全ての形態を検出し、そしてそれらの間を識別しない。しかし、タンパク質上の種々のエピトープに関する2つの抗体を用いるサンドイッチイムノアッセイは、両方のエピトープを含むタンパク質の全ての形態を検出し、そしてエピトープの1つしか含まない形態は検出しない。診断アッセイでは、種々の形態のタンパク質を識別できなくても、用いられる特定の方法によって検出される形態が任意の特定の形態として等しく良好なバイオマーカーである場合、ほとんど影響がない。しかし、特定の形態(または特定の形態のサブセット)のタンパク質が、特定の方法によって一緒に検出される種々の形態のコレクションよりも優れたバイオマーカーである場合、このアッセイの力は損なわれ得る。この場合、タンパク質の形態の間を識別し、タンパク質の所望の形態(単数または複数)を特異的に検出および測定するアッセイ方法を使用することが有用である。種々の形態の分析物を識別すること、または分析物の特定の形態を特異的に検出することは、分析物を「解明、分解、解像する、リソルビング(resolving)」と呼ばれる。
【0043】
質量分析は、あるタンパク質の異なる形態を解明する特に強力な方法である。なぜなら、この異なる形態は代表的には、質量分析によって解明され得る異なる質量を有するからである。従って、あるタンパク質の1形態が、別の形態のバイオマーカーよりも疾患について優れたバイオマーカーである場合、質量分析は、伝統的なイムノアッセイでは形態を識別できずかつ有用なバイオマーカーを特異的に検出できない有用な形態を、特異的に検出しかつ測定し得る。
【0044】
1つの有用な方法論は、質量分析をイムノアッセイと組み合わせる。第一に、生体特異的な捕獲試薬(例えば、バイオマーカーおよびそれの他の形態を認識する、抗体、アプタマーまたはAffibody)を用いて、目的のバイオマーカーを捕獲する。好ましくは、この生体特異的な捕獲試薬は、固相、例えば、ビーズ、プレート、メンブレンまたはアレイに結合される。未結合の物質が洗い流された後、その捕獲された分析物を、質量分析によって検出および/または測定する。(この方法はまた、タンパク質に結合するか、そうでなければ抗体によって認識され、そしてそれ自体がバイオマーカーであり得る、タンパク質インターアクター(interactors)の捕獲を生じる)。種々の形態の質量分析が、タンパク質の形態の検出のために有用であり、これには、レーザー脱離アプローチ、例えば、伝統的なMALDIまたはSELDI、およびエレクトロスプレーイオン化が挙げられる。
【0045】
従って、特定のタンパク質を検出する、または特定のタンパク質の量を測定すると本明細書において言及する場合、これは、種々の形態のタンパク質を解明して、または解明することなくタンパク質を検出および測定することを意味する。例えば、「VGFペプチド−1を測定すること(measuring VGF peptide−1)」という工程は、アミノ酸配列が配列番号1に対応するポリペプチドを、サンプル中の種々の形態のタンパク質の間を識別しない手段(例えば、特定のイムノアッセイ)によって、そして同じ形態を他の形態から識別するか、またはタンパク質の特定の形態を測定する手段(例えば、質量分析)によって測定する工程を包含する。対照的に、タンパク質の特定の形態(単数または複数)(例えば、M6620の任意のおよび/または全ての形態、ならびにリン酸化、グリコシル化などによって改変されるM6620の形態)を測定することが所望される場合、特定の形態(単数または複数)を特定する。例えば、「M6620を測定する(measuring M6620)」とは、6620Daのみかけの分子量を有するポリペプチドを測定することを意味し、従って、M6620をVGFペプチド−1の他の形態から識別する。
【0046】
(IV.アルツハイマー病のバイオマーカーの検出)
本発明のバイオマーカーは、任意の適切な方法によって検出され得る。この目的に使用され得る検出パラダイムとしては、光学的な方法、電気化学的方法(電圧測定および電流測定の技術)、原子間力顕微鏡および高周波方法、例えば、多極共鳴分光法(multipolar resonance spectroscopy)が挙げられる。光学的方法の例は、共焦点および非共焦点の顕微鏡に加えて、蛍光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率および複屈折または屈折率の検出である(例えば、表面プラズモン共鳴、偏光解析法、共振ミラー法、回折格子結合器導波管法(grating coupler waveguide method)または干渉法)。
【0047】
1実施形態では、サンプルをバイオチップによって分析する。バイオチップは一般に、固体基板を含み、全体に平坦な表面を有し、ここに捕獲試薬(吸着剤またはアフィニティー試薬とも呼ばれる)が結合される。高頻度に、バイオチップの表面は、複数のアドレス可能な位置を含み、その各々がそこに結合した捕獲試薬を有する。
【0048】
タンパク質バイオチップは、ポリペプチドの捕獲のために適合したバイオチップである。多くのタンパク質バイオチップが当該分野で記載されている。これらとしては例えば、Ciphergen Biosystems,Inc.(Fremont,CA)、Zyomyx(Hayward,CA)、Invitrogen(Carlsbad,CA)、Biacore(Uppsala,Sweden)およびProcognia(Berkshire,UK)によって作成されるタンパク質バイオチップが挙げられる。このようなタンパク質バイオチップの例は、以下の特許または公開特許出願に記載される:米国特許第6,225,047号(Hutchens & Yip);米国特許第6,537,749号(KuimelisおよびWagner);米国特許第6,329,209号(Wagnerら);PCT国際出願第WO00/56934号(Englertら);PCT国際公開番号WO 03/048768(Boutellら);米国特許第6,902,897号(Tweedieら)および米国特許第5,242,828号(Bergstromら)。
【0049】
(質量分析による検出)
好ましい実施形態では、本発明のバイオマーカーは、気相イオンを検出するために質量分析計を使用する方法である質量分析によって検出される。質量分析計の例は、飛行時間、磁場(magnetic sector)、四極子フィルター(quadrupole filter)、イオントラップ、イオンサイクロトロン共鳴、静電気場アナライザー(electrostatic sector analyzer)およびそれらのハイブリッドである。
【0050】
さらに好ましい方法では、この質量分析計は、レーザー脱離/イオン化質量分析計である。レーザー脱離/イオン化質量分析計では、分析物は、質量分析計のプローブの接点に係合して質量分析計へイオン化および導入のためのイオン化エネルギーに分析物を提示するように適合されたデバイスである、質量分析プローブの表面に置かれる。レーザー脱離質量分析計は、代表的には紫外レーザーからのレーザーエネルギーを、ただし赤外線レーザからのレーザーエネルギーも使用して、表面から分析物を脱着して、それらを揮発させてイオン化し、そしてそれらを質量分析計のイオン光学に利用可能にさせる。LDIによるタンパク質の分析は、MALDIの形態をとっても、またはSELDIの形態をとってもよい。LDIによるタンパク質の分析は、MALDIの形態をとっても、またはSELDIの形態をとってもよい。
【0051】
単一のTOF装置におけるレーザー脱離/イオン化質量分析法は代表的には、直線的な抽出方式で行われる。タンデム型質量分析は、直交抽出方式を使用し得る。
【0052】
(SELDI)
本発明における使用のための好ましい質量分析技術は、例えば、両方ともHutchensおよびYipの米国特許第5,719,060号および同第6,225,047号に記載されるような、「表面増感レーザー脱離およびイオン化(Surface Enhanced Laser Desorption and Ionization)」または「SELDI」である。これは、脱離/イオン化気相分光測定の方法(例えば、質量分析)をいい、ここでは分析物(ここでは、1つ以上のバイオマーカー)が、SELDI質量分析プローブの表面に捕獲される。
【0053】
SELDIはまた、「アフィニティー捕獲質量分析法(affinity capture mass spectrometry)」または「表面増感アフィニティー捕獲(Surface−Enhanced Affinity Capture)」(「SEAC」)とも呼ばれている。このバージョンは、プローブ表面上にある物質を有するプローブの使用であって、これは、この物質と分析物との間の非共有結合的なアフィニティー相互作用(吸着)を通じて分析物を捕獲するプローブの使用に関している。この物質は、「adsorbent(吸着剤)」、「捕獲試薬(capture reagent」、「親和性試薬(affinity reagent)」または「結合部分(binding moiety)」と種々に呼ばれる。このようなプローブは、「アフィニティー捕獲プローブ(affinity capture probes)」および「吸着表面(adsorbent surface)」を有するという事ができる。この捕獲試薬は、分析物に結合し得る任意の物質であってもよい。この捕獲試薬は、物理的吸着または化学的吸着によってプローブ表面に結合される。特定の実施形態では、このプローブは、表面に既に結合されている捕獲試薬を有する。他の実施形態では、このプローブは、事前に活性化され、そして、例えば、共有結合または配位共有結合を形成する反応を通じて捕獲試薬を結合し得る反応性部分を含む。エポキシドおよびアシル−イミジゾールは、抗体または細胞レセプターのようなポリペプチド捕獲試薬を共有結合するのに有用な反応性部分である。ニトリロ三酢酸およびイミノ二酢酸は、ヒスチジン含有ペプチドと非共有結合的に相互作用する金属イオンを結合するキレート剤として機能する有用な反応性部分である。吸着剤は一般に、クロマトグラフィー吸着剤および生体特異的吸着剤として分類される。
【0054】
「クロマトグラフィー吸着剤(Chromatographic adsorbent)」とは、クロマトグラフィーにおいて代表的に用いられる吸着物質をいう。クロマトグラフィー吸着剤としては、例えば、イオン交換物質、金属キレーター(例えば、ニトリロ三酢酸またはイミノ二酢酸)、固定された金属キレート、疎水性相互作用吸着剤、親水性相互作用吸着剤、色素、単純な生体分子(例えば、ヌクレオチド、アミノ酸、単糖および脂肪酸)および混合様式の吸着剤(例えば、疎水性誘引/静電気的反発吸着剤)が挙げられる。
【0055】
「生体特異的吸着剤(biospecific adsorbent)」とは、生体分子、例えば、核酸分子(例えば、アプタマー)、ポリペプチド、ポリサッカライド、脂質、ステロイドまたはそれらの結合体(例えば、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、核酸(例えば、DNA)−タンパク質結合体)を含む吸着剤をいう。特定の場合、この生体特異的吸着剤は、高分子構造、例えば、多タンパク質複合体、生物学的な膜またはウイルスであってもよい。生体特異的吸着剤の例は、抗体、レセプタータンパク質および核酸である。生体特異的吸着剤は代表的には、クロマトグラフィー吸着剤よりも標的分析物に高い特異性を有する。SELDIにおける使用のための吸着剤のさらなる例は、米国特許第6,225,047号に見出され得る。「生体選択吸着剤(bioselective adsorbent)」とは、少なくとも10−8Mの親和性で分析物に結合する吸着剤をいう。
【0056】
Ciphergen Biosystems,Inc.によって生成されるプロテインバイオチップは、それに対してアドレス可能な位置で結合されたクロマトグラフィーまたは生体特異的な吸着剤を有する表面を含む。CiphergenのProteinChip(登録商標)アレイとしては、NP20(親水性);H4およびH50(疎水性);SAX−2、Q−10およびLSAX−30(陰イオン交換);WCX−2、およびCM−10およびLWCX−30(陽イオン交換);IMAC−3,IMAC−30およびIMAC−50(金属キレート);およびPS−10、PS−20(アシル−イミジゾール、エポキシドとの反応性表面)およびPG−20(アシル−イミジゾールを通じてカップリングされるプロテインG)が挙げられる。疎水性ProteinChipアレイは、イソプロピルまたはノニルフェノキシ−ポリ(エチレングリコール)メタクリレート官能基を有する。陰イオン交換ProteinChipアレイは、四級アンモニウム官能基を有する。陽イオン交換ProteinChipアレイは、カルボキシレート官能基を有する。固定された金属キレートProteinChipアレイは、ニトリロ三酢酸官能基(IMAC3およびIMAC30)またはO−メタクリロイル−N,N−bis−カルボキシメチルチロシン官能基(IMAC50)を有し、これがキレート化によって、遷移金属イオン、例えば、銅、ニッケル、亜鉛およびガリウムを吸着する。前活性化されたProteinChipアレイは、アシル−イミジゾールまたはエポキシド官能基を有し、これが、共有結合のためにタンパク質上の基と反応し得る。
【0057】
このようなバイオチップはさらに、以下に記載される:米国特許第6,579,719号(HutchensおよびYip,「Retentate Chromatography」、Jun.17,2003);米国特許第6,897,072号(Richら,「Probes for a Gas Phase Ion Spectrometer」、May 24,2005);米国特許第6,555,813号(Beecherら,「Sample Holder with Hydrophobic Coating for Gas Phase Mass Spectrometer」、Apr.29,2003);米国特許公開番号U.S.2003−0032043 A1(PohlおよびPapanu,「Latex Based Adsorbent Chip」、July 16,2002);ならびにPCT国際出願番号WO03/040700(Umら,「Hydrophobic Surface Chip」、May 15,2003);米国特許公開番号US2003−0218130 A1(Boschettiら,「Biochips With Surfaces Coated With Polysaccharide−Based Hydrogels」、Apr.14,2003)および米国特許第7,045,366号(Huangら,「Photocrosslinked Hydrogel Blend Surface Coatings」、May 16,2006)。
【0058】
一般には、吸着表面を有するプローブを、サンプル中に存在し得るバイオマーカー(単数または複数)が吸着剤に結合することを可能にするのに十分な時間このサンプルと接触させる。インキュベーション期間後、この基質を洗浄して、未結合の物質を除去する。任意の適切な洗浄溶液を用いてもよいが、好ましくは、水溶液が使用される。分子が結合したままである程度は、洗浄のストリンジェンシーを調節することによって操作され得る。洗浄溶液の溶出特徴は、例えば、pH、イオン強度、疎水性、カオトロピックの程度、界面活性剤強度、および温度に依存し得る。プローブがSEACおよびSENDの両方の特性を有さない限り(本明細書に記載のとおり)、次いでエネルギー吸収分子を、結合されたバイオマーカーを有する基板に適用する。
【0059】
さらに別の方法では、当業者は、バイオマーカーに結合する抗体を有する固相結合免疫吸着剤でバイオマーカーを捕獲し得る。未結合物質を除くためにこの吸着剤を洗浄した後、このバイオマーカーを固相から抽出して、バイオマーカーを結合するSELDIバイオチップに適用すること、およびSELDIによる分析によって検出する。
【0060】
この基板に結合されたバイオマーカーは、飛行時間質量分析のような気相イオン分光計で検出される。このバイオマーカーは、レーザーのようなイオン源によってイオン化され、この生成されたイオンは、イオン光学アセブリによって収集され、次いで質量アナライザーが通過イオンを分散して分析する。次いで、この検出器は、検出されたイオンの情報を質量対電荷比に変換する。バイオマーカーの検出は代表的には、シグナル強度の検出を包含する。従って、バイオマーカーの量および質量の両方が検出され得る。
【0061】
(SEND)
レーザー脱離質量分析の別の方法は、表面増感ニート脱離(Surface−Enhanced Neat Desorption)(「SEND」)と呼ばれる。SENDは、プローブ表面に化学的に結合されるエネルギー吸収分子を含むプローブ(「SENDプローブ」)の使用に関与する。「エネルギー吸収分子(energy absorbing molecules)」(EAM)という句は、レーザー脱離/イオン源からエネルギーを吸収し得、その後にそれと接触している分析分子の脱離およびイオン化に寄与し得る分子を意味する。EAMカテゴリーは、高頻度に「マトリックス(matrix)」と呼ばれる、MALDIで用いられる分子を包含し、そして桂皮酸誘導体、シナピン酸(SPA)、シアノ−ヒドロキシ−桂皮酸(CHCA)およびジヒドロキシ安息香酸、フェルラ酸、およびヒドロキシアセト−フェノン誘導体によって例示される。特定の実施形態では、エネルギー吸収分子は、直鎖状または架橋されたポリマー、例えば、ポリメタクリレートに組み込まれる。例えば、この組成物は、α−シアノ−4−メタクリロイルオキシ桂皮酸およびアクリレートのコポリマーであってもよい。別の実施形態では、この組成物は、α−シアノ−4−メタクリロイルオキシ桂皮酸、アクリレートおよび3−(トリ−エトキシ)シリルプロピルメタクリレートのコポリマーである。別の実施形態では、この組成物は、α−シアノ−4−メタクリロイルオキシ桂皮酸およびオクタデシルメタクリレートのコポリマーである(「C18 SEND」)。SENDはさらに、米国特許第6,124,137号およびPCT国際公開番号WO03/64594(Kitagawa,「Monomers And Polymers Having Energy Absorbing Moieties Of Use In Desorption/Ionization Of Analytes」、Aug.7,2003)に記載される。
【0062】
SEAC/SENDは、SELDIのレーザー脱離質量分析のバージョンであり、ここでは捕獲試薬およびエネルギー吸収分子の両方が、サンプル提示表面に結合される。従って、SEAC/SENDプローブは、外部マトリックスを適用する必要なしに、アフィニティー捕獲およびイオン化/脱離を通じて分析物の捕獲を可能にする。C18 SENDバイオチップは、SEAC/SENDのバージョンであり、捕獲試薬として機能するC18部分、およびエネルギー吸収部分として機能するCHCA部分を含む。
【0063】
(SEPAR)
LDIの別のバージョンは、表面増感感光性アタッチメントおよびリリース(Surface−Enhanced Photolabile Attachment and Release)(「SEPAR」)と呼ばれる。SEPARは、分析物を共有結合し得、次いでこの分析物を光に対する、例えばレーザー光に対する露光後にこの部分での感光性結合を破壊することを通じて放出し得る、表面に対して結合された部分を有するプローブの使用に関与する(米国特許第5,719,060号を参照のこと)。SEPARおよびSELDIの他の形態は、本発明に従うバイオマーカーまたはバイオマーカーのプロフィールを検出することに容易に適合される。
【0064】
(MALDI)
MALDIは、タンパク質および核酸のような生体分子を分析するために用いられるレーザー脱離/イオン化の伝統的な方法である。1つのMALDI方法では、サンプルをマトリックスと混合し、MALDIアレイに直接沈着させる。しかし、血清および尿のような生物学的サンプルの複雑性によって、この方法は、サンプルの事前の分画なしには最適性が劣る。従って、特定の実施形態では、バイオマーカーは好ましくは、樹脂のような固体支持体に結合された生体特異的物質(例えば、抗体)またはクロマトグラフィー物質で最初に捕獲される(例えば、スピンカラムで)。本発明のバイオマーカーを結合する特異的なアフィニティー物質は上記されている。アフィニティー物質での精製後、バイオマーカーを溶出し、次いでMALDIによって検出する。
【0065】
別の質量分析方法では、バイオマーカーを、このバイオマーカーを結合するクロマトグラフィー特性を有するクロマトグラフィー樹脂上で最初に捕獲してもよい。本発明の実施例では、これは、種々の方法を包含し得る。例えば、当業者は、陽イオン交換樹脂、例えば、CM Ceramic HyperD F樹脂上でこのバイオマーカーを捕獲し、この樹脂を洗浄し、このバイオマーカーを溶出して、MALDIによって検出し得る。あるいは、この方法には、陽イオン交換樹脂への適用前に陰イオン交換樹脂上でサンプルを分画することを先行してもよい。別の方法では、当業者は、陰イオン交換樹脂上で分画して、MALDIによって直接検出し得る。さらに別の方法では、当業者は、バイオマーカーを結合する抗体を含む免疫クロマトグラフィー樹脂上にバイオマーカーを捕獲して、この樹脂を洗浄して未結合の物質を除去し、この樹脂からバイオマーカーを溶出して、この溶出されたバイオマーカーをMALDIによって、またはSELDIによって検出し得る。
【0066】
(質量分析における他の形態のイオン化)
別の方法では、このバイオマーカーは、LC−MSまたはLC−LC−MSによって検出される。これは、液体クロマトグラフィーを1または2回通過することによってサンプル中のタンパク質を分離することを包含し、その後に、質量分析法の分析、代表的にはエレクトロスプレーイオン化が続く。
【0067】
(データ分析)
飛行時間質量分析法による分析物の分析によって、飛行時間スペクトルが得られる。最終的に分析された飛行時間スペクトルは代表的には、サンプルに対するイオン化エネルギーの単一のパルスからのシグナルを提示せず、むしろ多数のパルスからのシグナルの合計である。これによって、ノイズが減り、そしてダイナミック・レンジが増大する。次いで、飛行時間データを、データ処理に供する。CiphergenのProteinChip(登録商標)ソフトウェアでは、データ処理は代表的には、質量スペクトルを作製するTOF−to−M/Z変換、装置のオフセットを排除するベースライン差引き、および高頻度ノイズを減じるための高頻度ノイズフィルタリングを含む。
【0068】
バイオマーカーの脱離および検出によって生成されるデータは、プログラム可能なデジタルコンピューターの使用によって分析され得る。このコンピュータープログラムは、検出されたバイオマーカーの数、ならびに必要に応じて、検出された各々のバイオマーカーについてのシグナルの強度および決定された分子量を示すデータを分析する。データ分析は、バイオマーカーのシグナル強度を決定する工程および予め決定された統計学的分布から逸脱するデータを除く工程を包含し得る。例えば、この観察されたピークは、いくつかの参照に対して各々のピークの高さを算出することによって正規化され得る。この参照は、装置および化学物質、例えば、スケールでゼロに設定されるエネルギー吸収分子によって生成されるバックグラウンドノイズであり得る。
【0069】
コンピューターは、得られたデータを、提示のための種々の形態に変換し得る。標準的なスペクトルが提示され得るが、1つの有用な方式でのみ、ピーク高さおよび質量情報がスペクトルの外観から保持され、より明確な画像を生じ、そしてほぼ同一の分子量を有するバイオマーカーをより容易にみることができる。別の有用な方式では、2つ以上のスペクトルを比較し、これによって固有のバイオマーカーおよびサンプルの間で上方制御または下方制御されるバイオマーカーを都合よく強調する。任意のこれらの形式を用いて、当業者は特定のバイオマーカーがサンプルに存在するか否かを容易に決定し得る。
【0070】
分析は一般に、分析物由来のシグナルを提示するスペクトルにおけるピークの同定を包含する。ピーク選択は、視覚的に行われ得るが、ソフトウェアは、CiphergenのProteinChip(登録商標)ソフトウェアパッケージの一部として利用可能であり、これによって、ピークの検出が自動化され得る。一般には、このソフトウェアは、選択された閾値を上回るシグナル対ノイズ比を有するシグナルを同定すること、およびピークシグナルの質量中心でピークの質量を標識することによって機能する。1つの有用な適用では、多くのスペクトルを比較して、質量スペクトルのある程度の選択された割合に存在する同一のピークを特定する。このソフトウェアの1つのバージョンは、規定の質量範囲内の種々のスペクトルに出現する全てのピークをクラスター形成して、質量(M/Z)クラスターの中点に近い全てのピークに質量(M/Z)を割り当てる。
【0071】
データを分析するために用いられるソフトウェアは、シグナルの分析のためのアルゴリズムに適用して、シグナルが本発明によるバイオマーカーに対応するシグナルにおけるピークを提示するか否かを決定するコードを包含し得る。このソフトウェアはまた、観察されたバイオマーカーピークに関するデータを、分類ツリーまたはANN分析に供して、試験中の特定の臨床パラメーターの状態を示す、バイオマーカーのピークまたはバイオマーカーのピークの組み合わせが存在するか否かを決定し得る。データの分析は、直接または間接的にいずれかで、サンプルの質量分析的な分析から獲得できる種々のパラメーターに「重要(keyed)」であり得る。これらのパラメーターとしては、限定はしないが、1つ以上のピークの有無、ピークの形状またはピークのグループ、1つ以上のピークの高さ、1つ以上のピークの高さの対数、およびピーク高さデータの他の算術乗算が挙げられる。
【0072】
(アルツハイマー病のバイオマーカーのSELDI検出のための一般的プロトコール)
本発明のバイオマーカーの検出のための好ましいプロトコールは、以下のとおりである。次いで、試験されるべきサンプルを、表1に示されるような、陰イオン交換吸着剤を含むアフィニティー捕獲プローブ、例えばQ10ProteinChipと接触させる。このプローブを、未結合分子を洗い去るが、バイオマーカーを保持する緩衝液で洗浄する。Q10 ProteinChipに対して結合する場合、VGFペプチドバイオマーカーに適切な洗浄液は、pH9の100mM Tris緩衝液である。バイオマーカーは、レーザー脱離/イオン化質量分析法によって検出される。
【0073】
あるいは、バイオマーカーを認識する抗体が利用可能である場合、これらは、前活性化合物PS10またはPS20ProteinChipアレイ(Ciphergen Biosystems,Inc.)のような、プローブの表面に結合され得る。これらの抗体は、プローブ表面上にサンプル由来のバイオマーカーを捕獲し得る。次いで、このバイオマーカーは、例えば、レーザー脱離/イオン化質量分析法によって検出され得る。
【0074】
(イムノアッセイによる検出)
本発明の別の実施形態では、本発明のバイオマーカーは、質量分析以外の方法、またはバイオマーカーの質量の測定に依拠する他の方法によって、測定される。質量に依拠しない1つのこのような実施形態では、本発明のバイオマーカーは、イムノアッセイによって測定され得る。イムノアッセイは、バイオマーカーを捕獲するために、抗体のような生体特異的捕獲試薬を要する。抗体は、例えば、バイオマーカーで動物を免疫することによる、当該分野で周知の方法によって産生され得る。バイオマーカーは、それらの結合特徴に基づいて、サンプルから単離され得る。あるいは、ポリペプチドバイオマーカーのアミノ酸配列が公知である場合、このポリペプチドは、当該分野で周知の方法によって合成されて、抗体を生成するために用いられ得る。
【0075】
本発明は、例えば、ELISAまたは蛍光ベースのイムノアッセイを含むサンドイッチイムノアッセイを含む伝統的なイムノアッセイ、ならびに他の酵素イムノアッセイを意図する。SELDIベースのイムノアッセイでは、バイオマーカーのための生体特異的な捕獲試薬を、事前に活性化されたProteinChipアレイのようなMSプローブの表面に結合させる。次いで、このバイオマーカーを、この試薬を通じてバイオチップ上に特異的に捕獲させ、この捕獲されたバイオマーカーを質量分析法によって検出する。
【0076】
(V.被験体のアルツハイマー病状態の決定)
本発明のバイオマーカーは、被験体におけるアルツハイマー病の状態を評価するため、例えば、アルツハイマー病を診断するための診断試験で用いられ得る。「アルツハイマー病状態(Alzheimer’s disease status)」という句は、疾患の任意の識別可能な徴候を含み、これには、非アルツハイマー病、例えば、正常または非認知症が挙げられる。例えば、疾患状態としては、限定はしないが、アルツハイマー病の有無(例えば、アルツハイマー病対非アルツハイマー病)、疾患を発症するリスク、疾患の段階、疾患の進行(例えば、疾患または疾患の寛解の経時的な進行)および疾患の処置に対する有効性または応答が挙げられる。この状態に基づいて、さらなる手順が示され得、これにはさらなる診断試験または治療の手順もしくはレジメンが挙げられる。
【0077】
状態を正確に予測するための診断試験の力は通常、アッセイの感度、アッセイの特異性または受信者動作特性(receiver operated characteristic)(「ROC」)の曲線下面積として測定される。感度(sensitivity)とは、陽性であることが試験によって推測される真の陽性の割合であるが、特異性(specificity)とは、試験で陰性であると推測される真の陰性の割合である。ROC曲線は、試験の感度を1−特異性の関数として与える。ROC曲線下面積が大きいほど、試験の予測価値は強力である。試験の有用性の他の有用な測定値は、正の予測値および負の予測値である。正の予測値とは、正確に陽性である試験の陽性の人の割合である。負の予測値とは、正確に陰性である試験陰性の人の割合である。
【0078】
本発明のバイオマーカーは、少なくともp≦0.05、p≦10−2、p≦10−3、p≦10−4またはp≦10−5という種々のアルツハイマー病状態の統計的な相違を示す。これらのバイオマーカーを単独でまたは組み合わせて用いる診断試験によって、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%および約100%という感度および特異性が示される。
【0079】
(単一のマーカー)
VGFペプチド−1は、アルツハイマー病に示差的に存在しており、従って、アルツハイマー病状態の決定における補助に個々に有用である。この方法は、第一に、本明細書に記載される方法、例えば、SELDIバイオチップ上の捕獲、その後の質量分析計による検出を用いて被験体サンプルにおけるVGFペプチドを測定する工程、そして第二に、この測定値を、陰性のアルツハイマー病状態から陽性のアルツハイマー病状態を識別する診断量またはカットオフと比較する工程を包含する。この診断量とは、バイオマーカーの測定量であって、その上またはその下で被験体が特定のアルツハイマー病状態を有すると分類される測定量である。例えば、VGFペプチドは、アルツハイマー病の間、正常に比べて上方制御される。従って、診断カットオフを超える測定量によって、アルツハイマー病の診断がもたらされる。当該分野で十分理解されるとおり、あるアッセイで用いられる特定の診断カットオフを調節することによって、当業者は、診断医の選好に依存して診断アッセイの感度および特異性を増大することができる。特定の診断カットオフは、例えば、異なるアルツハイマー病状態を有する被験体から統計的に有意な数のサンプルでバイオマーカーの量を、ここで行われるように測定すること、そしてこのカットオフを診断医の所望のレベルの特異性および感度に適合させることによって、決定され得る。
【0080】
(マーカーの組み合わせ)
個々のバイオマーカーは有用な診断バイオマーカーであるが、バイオマーカーの組み合わせは、単独のバイオマーカーのみよりも特定の状態のより優れた予測値をもたらし得るということが見出されている。詳細には、サンプル中の複数のバイオマーカーの検出は、試験の感度および/または特異性を増大し得る。少なくとも2つのバイオマーカーの組み合わせは、時に、「バイオマーカー・プロフィール(biomarker profile)」または「バイオマーカー・フィンガープリント(biomarker fingerprint)」と呼ばれる。
【0081】
(アルツハイマー病状態)
アルツハイマー病状態を決定する工程は代表的には、診断試験の結果に基づいて個体を2つ以上の群(状態)のうちの1つに分類する工程を包含する。本明細書に記載される診断試験は、多数の異なる状態の間を分類するために用いられ得る。
【0082】
(疾患の存在を決定すること)
1実施形態では、本発明は、被験体におけるアルツハイマー病の有無(状態:アルツハイマー病対非アルツハイマー病)を決定するための方法を提供する。アルツハイマー病の有無は、関連のバイオマーカー(単数または複数)を測定すること、次いで、それらを分類アルゴリズムに供するか、またはそれらを特定のリスクレベルと関連するバイオマーカーの参照の量および/またはパターンと比較することのいずれかによって、決定される。
【0083】
(疾患を発症するリスクを決定する)
1実施形態では、本発明は、被験体で疾患を発症するリスクを決定するための方法を提供する。バイオマーカーの量またはパターンは、種々のリスク状態の特徴である(例えば、高い、中度または低い)。疾患を発症するリスクは、関連のバイオマーカー(単数または複数)を測定すること、次いでそれらを分類アルゴリズムに供するか、またはそれらを特定のリスクレベルと関連するバイオマーカーの参照の量および/またはパターンと比較することのいずれかによって、決定される。
【0084】
(疾患の段階を決定する)
1実施形態では、本発明は、被験体で疾患の段階を決定するための方法を提供する。疾患の各々の段階は、特徴的な量のバイオマーカー、または相対的な量の1セットのバイオマーカー(あるパターン)を有する。疾患の段階は、関連のバイオマーカー(単数または複数)を測定すること、次いでそれらを分類アルゴリズムに供するか、またはそれらを特定の段階と関連するバイオマーカーの参照の量および/またはパターンと比較することのいずれかによって、決定される。
【0085】
(疾患の経過(進行/寛解)を決定する)
1実施形態では、本発明は、被験体で疾患の経過を決定するための方法を提供する。疾患の経過とは、経時的な疾患の状態の変化をいい、これには、疾患の進行(悪化)および疾患の寛解(改善)を含む。経時的に、バイオマーカーの量または相対量(例えば、パターン)は変化する。例えば、表1のVGFペプチドマーカーは疾患とともに増大する。従って、このバイオマーカーの漸増量は、疾患の経過を示す。従って、この方法は、2つ以上の異なる時点で、例えば、初回および第二の時点で、被験体において1つ以上のバイオマーカーを測定する工程と、もしあれば量の変化を比較する工程とを包含する。疾患の経過は、これらの比較に基づいて決定される。
【0086】
同様に、疾患進行(または寛解)の速度の変化は、異なる時点で、バイオマーカー、例えば、表1のVGFペプチドバイオマーカーの量を測定すること、およびバイオマーカーのレベルの変化の速度を算出することによってモニターされ得る。疾患状態または疾患進行の速度を測定する能力は、治療を通じて疾患進行を遅らせるかまたは停止させることを目的とする薬物処置研究のために重要であり得る。
【0087】
(状態を報告する)
同様に、疾患進行(または寛解)の速度の変化は、バイオマーカー、例えば、表1のVGFペプチドバイオマーカーの量を、種々の時点で測定すること、およびバイオマーカーのレベルにおける変化の速度を算出することによってモニターされ得る。疾患状態または疾患の進行の速度を測定する能力は、治療を通じて疾患進行を遅らせるかまたは停止させることを目的とする薬物処置研究のために重要であり得る。
【0088】
本発明のさらなる実施形態は、例えば、技術者、医師または患者へのアッセイの結果もしくは診断またはその両方の連絡に関する。特定の実施形態では、コンピューターが、当事者、例えば、医師およびその患者に対してアッセイの結果もしくは診断またはその両方について連絡するために用いられる。ある実施形態では、アッセイが行われるか、またはアッセイ結果が国または管轄区域で分析され、これは、その結果または診断が連絡される国または管轄区域で異なる。
【0089】
本発明の好ましい実施形態では、任意のVGFペプチドバイオマーカーの試験被験体における種々の存在に基づく診断を、診断が得られた後できるだけ早く被験体に連絡する。この診断は、被験体の処置医師により被験体に連絡され得る。あるいは、この診断は、イーメールによって被験体に送られるか、または電話によって被験体に連絡されてもよい。コンピューターを用いてイーメールまたは電話によって診断を連絡してもよい。特定の実施形態では、診断試験の結果を含むメッセージを作成して、遠隔通信の当業者に周知であるコンピューターのハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを用いて被験体に自動的に送達してもよい。保健医療重視の連絡システムの1例は、米国特許第6,283,761号に記載される;しかし、本発明は、特定の連絡システムを利用する方法には限定されない。本発明の方法の特定の実施形態では、サンプルのアッセイ、疾患の診断およびアッセイ結果もしくは診断の連絡を含む方法工程の全てまたはいくつかは、多様な(例えば、外国の)管轄区域で行われ得る。
【0090】
(被験体管理)
アルツハイマー病状態を定量する方法の特定の実施形態では、この方法は、この状態に基づいて被験体処置を管理する工程をさらに含む。このような管理としては、アルツハイマー病状態を決定することに続く医師または臨床家の行為が挙げられる。例えば、医師がアルツハイマー病の診断を行うならば、処置の特定のレジメン、例えば、コリンエステラーゼインヒビターの処方または投与が続けられ得る。あるいは、非アルツハイマー病または非アルツハイマー病の診断の後に、患者が被っているかもしれない特定の疾患を決定するさらなる試験が続けられてもよい。また、この診断試験で、アルツハイマー病状態について決定的でない結果が得られる場合、さらなる試験が必要とされ得る。
【0091】
本発明のさらなる実施形態は、例えば、技術者、医師または患者へのアッセイの結果もしくは診断またはその両方の連絡に関する。特定の実施形態では、コンピューターが、当事者、例えば、医師およびその患者に対してアッセイの結果もしくは診断またはその両方について連絡するために用いられる。ある実施形態では、アッセイが行われるか、またはアッセイ結果が国または管轄区域で分析され、これは、その結果または診断が連絡される国または管轄区域で異なる。
【0092】
本発明の好ましい実施形態では、表1のVGFペプチドの被験体における有無に基づく診断を、この診断が得られた後できるだけ早く被験体に連絡する。この診断は、被験体の処置医師により被験体に連絡され得る。あるいは、この診断は、イーメールによって被験体に送られても、または電話によって被験体に連絡されてもよい。コンピューターを用いてイーメールまたは電話によって診断を連絡してもよい。特定の実施形態では、診断試験の結果を含むメッセージを作成して、遠隔通信の当業者に周知であるコンピューターのハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを用いて被験体に自動的に送達してもよい。保健医療重視の連絡システムの1例は、米国特許第6,283,761号に記載される。しかし、本発明は、特定の連絡システムを利用する方法には限定されない。本発明の方法の特定の実施形態では、サンプルのアッセイ、疾患の診断およびアッセイ結果もしくは診断の連絡を含む方法工程の全てまたはいくつかは、多様な(例えば、外国の)管轄区域で行われ得る。
【0093】
(VI.薬物の治療有効性を決定する)
別の実施形態では、本発明は、薬物の治療有効性を決定するための方法を提供する。これらの方法は、薬物の臨床トライアルを行うこと、および薬物に対する患者の進行をモニタリングすることに有用である。治療または臨床トライアルは、特定のレジメンにおいて薬物を投与する工程を包含する。このレジメンは、単一用量の薬物または複数用量の薬物を経時的に包含し得る。医師または臨床研究者は、投与の経過にわたって患者または被験体に対する薬物の影響をモニターする。薬物がこの状態に対して薬理学的な影響を有する場合、本発明のバイオマーカーの量または相対量(例えば、パターンまたはプロフィール)は、非疾患のプロフィールに変化する。例えば、VGFペプチドバイオマーカーは、疾患で増大される。従って、当業者は、処置の経過の間、被験体におけるこれらのバイオマーカーの量の経過を追跡し得る。従って、この方法は、薬物療法を受けている被験体において1つ以上のバイオマーカーを測定する工程と、このバイオマーカーの量をこの被験体の疾患状態と関連付ける工程とを包含する。本発明の1実施形態は、薬物療法の経過の間、例えば初回および2回目、少なくとも2つの異なる時点でバイオマーカーのレベルを決定する工程と、もしあればこのバイオマーカーの量の変化を比較する工程とを包含する。例えば、このバイオマーカーは、薬物投与の前後に、または薬物投与の間2つの異なる時点で測定されてもよい。治療の効果は、これらの比較に基づいて決定される。処置が有効であるならば、バイオマーカーは正常に向かう傾向であるが、処置が有効でなければ、バイオマーカーは疾患徴候に向かう傾向である。処置が有効であるならば、バイオマーカーは、正常に向かう傾向であるが、処置が有効でなければ、バイオマーカーは疾患徴候に向かう傾向である。
【0094】
(VII.アルツハイマー病状態を定量するための分類アルゴリズムの作成)
ある実施形態では、次いで、「公知のサンプル(known samples)」のようなサンプルを用いて作成されるスペクトル(例えば、質量スペクトルまたは飛行時間スペクトル)由来のデータを、分類モデルを「トレーニング(train)」するために用いてもよい。「公知のサンプル」とは、事前分類されているサンプルである。スペクトル由来であって、分類モデルを作成するために用いられるデータは、「トレーニングデータセット(training data set)」と呼ばれ得る。一旦トレーニングすれば、分類モデルは、公知のサンプルを用いて作成されるスペクトル由来のデータ中のパターンを認識し得る。次いで、分類モデルは未知のサンプルをクラスに分類するために用いられ得る。これは、例えば、特定の生物学的サンプルが、特定の生物学的条件(例えば、疾患対非疾患)に関連するか否かを予想するのに有用であり得る。
【0095】
分類モデルを形成するために用いられるトレーニングデータセットは、生データを含んでも、または事前処理されたデータを含んでもよい。ある実施形態では、生データは、飛行時間スペクトルまたは質量スペクトルから直接得ることが可能であって、次いで、上記のように必要に応じて「事前処理(pre−processed)」されてもよい。
【0096】
分類モデルは、データ中に存在する目的のパラメーターに基づいてデータの本体をクラスに分けようと試みる任意の適切な統計学的分類(または「学習(learning)」)方法を用いて形成され得る。分類方法は、監督されても監督されなくてもよい。監督された分類(supervised classification)および監督されない分類(unsupervised classification)のプロセスの例は、その教示が参照によって援用される、Jain,「Statistical Pattern Recognition:A Review」,IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence,Vol.22,No.1,January 2000に記載される。
【0097】
監督された分類では、公知のカテゴリーの例を含むトレーニングデータが、公知のクラスの各々を規定する関係の1つ以上のセットの関係を学習する学習機構に提示される。次いで、新規なデータをこの学習機構に適用してもよく、次いで、この学習機構が、この学習された関係を用いて新規なデータを分類する。監督された分類プロセスの例としては、線形回帰プロセス(例えば、多重直線回帰(multiple linear regression)(MLR)、部分的最小二乗(partial least squares)(PLS)回帰および主成分回帰(principal components regression)(PCR))、バイナリー・ディシジョン(二者択一)ツリー(binary decision trees)(例えば、再帰分割プロセス(recursive partitioning processes)、例えば、CART−分類および回帰ツリー(classification and regression trees))、人工的ニューロンネットワーク、例えば、バック・プロパゲーション・ネットワーク(back propagation networks)、判別分析(例えば、ベイズ識別器(Bayesian classifier)またはフィッシャー分析(Fischer analysis))、論理的識別器(logistic classifiers)、およびサポート・ベクター識別器(support vector classifiers)(サポート・ベクター・マシン(support vector machines))が挙げられる。
【0098】
好ましい監督された分類方法は、再帰分割プロセスである。再帰分割プロセスは、未知のサンプル由来のスペクトルを分類するために再帰的分割ツリーを用いる。再帰的分割プロセスについてのさらなる詳細は、Paulseらの米国特許出願番号2002 0138208 A1、「Method for analyzing mass spectra」に提供される。
【0099】
他の実施形態では、監督されない学習方法を用いて形成され得る分類モデルが作成される。監督されない分類は、トレーニングデータセットが由来したスペクトルを事前分類することなく、そのトレーニングデータセット中の類似性に基づいた分類を学習しようとする。監督されない学習方法は、クラスター分析を含む。クラスター分析は、データをお互いと極めて類似であり、そして他のクラスターのメンバーと極めて異なるメンバーを理想的には有するはずである、「クラスター(clusters)」または群に分けようとする。次いで、類似性をいくつかの距離メトリックを用いて測定するが、この距離メトリックは、データアイテム間の距離を測定し、お互いにより近接しているデータアイテムをまとめてクラスター形成する。クラスター形成技術としては、MacQueenのK平均法アルゴリズムおよびKohonenの自己組織化マップ(Self−Organizing Map)アルゴリズムが挙げられる。
【0100】
生物学的情報をクラスター形成するのにおける使用についてアサートする学習アルゴリズムは、例えば、PCT国際公開番号WO 01/31580(Barnhillら、「Methods and devices for identifying patterns in biological systems and methods of use thereof」)、米国特許出願番号2002 0193950 A1(Gavinら,「Method or analyzing mass spectra」)、米国特許出願番号2003 0004402 A1(Hittら、「Process for discriminating between biological states based on hidden patterns from biological data」)、および米国特許出願番号2003 0055615 A1(ZhangおよびZhang,「Systems and methods for processing biological expression data」)に記載される。
【0101】
分類モデルは、任意の適切なデジタルコンピューターで形成されて、用いられ得る。適切なデジタルコンピューターとしては、任意の標準的または専門的なオペレーティングシステム、例えば、Unix(登録商標)、Windows(登録商標)またはLinuxTMベースのオペレーティングシステムを用いる、マイクロ、ミニまたは大型のコンピューターが挙げられる。用いられ得るデジタルコンピューターは、目的のスペクトルを作成するために用いられる質量分析計とは物理的に隔てられてもよいし、または質量分析計へ連結されてもよい。
【0102】
本発明の実施形態に従うトレーニングデータセットおよび分類モデルは、デジタルコンピューターによって行われるかまたは用いられるコンピューターコードによって具現化され得る。コンピューターコードは、光学ディスクまたは磁気ディスク、スティック、テープなどを含む任意の適切なコンピューター読み取り可能な媒体に記録されてもよく、そして、C、C++、ビジュアル・ベーシックなどを含む任意の適切なコンピュータープログラミング言語で書かれてもよい。
【0103】
上記の学習アルゴリズムは、既に開発されたバイオマーカーの分類アルゴリズムを開発するため、またはアルツハイマー病の新規なバイオマーカーを見出すためその両方に有用である。次に、この分類アルゴリズムは、単独でまたは組み合わせて用いられるバイオマーカーの診断値(例えば、カットオフポイント)を提供することによって診断試験のための基礎を形成する。
【0104】
(VIII.画像化のためのバイオマーカーの使用)
非侵襲性の医学的画像化技術、例えば、ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(Positron Emisson Tomography)(PET)または単一光子放射型コンピューター断層撮影法(single photon emission computerized tomography)(SPECT)画像化は、ガン、冠動脈疾患および脳の疾患の検出のために特に有用である。PETおよびSPECTの画像化は、器官および組織の化学的作用を示すが、他の画像化技術−例えば、X線、CTおよびMRI−は構造を示す。PETおよびSPECT画像化の使用は、アルツハイマー病のような脳疾患の発達を定量およびモニタリングするための有用性を増してきている。ある場合には、PETまたはSPECT画像化の使用によって、症状の発現よりも数年早期にアルツハイマー病を検出することが可能になる。例えば、VassauxおよびGroot−wassink,「In Vivo Noninvasive Imaging for Gene Therapy」、J.Biomedicine and Biotechnology,2:92〜101(2003)を参照のこと。
【0105】
ヒトの脳におけるアミロイド沈着のインビボ画像化に適切な化合物を開発するために異なるストラテジーが用いられている。A−βおよびペプチドフラグメントに対するモノクローナル抗体は、ADを有する患者で試験した場合、脳による取り込みが限られている。アミロイド画像化のための低分子アプローチは、例えば、Nordberg A,Lancet Neurol.,3(9):519〜27(2004);Kung M Pら,Brain Res.,1025(1−2):98〜105(2004);Herholz Kら,Mol Imaging Biol.,6(4):239〜69(2004);Neuropsychol Rev.,Zakzanis K Kら,13(1):1〜18(2003);Herholz K,Ann Nucl Med.,17(2):79〜89(2003)によって記載されるとおり、いままでのところ最も成功している。
【0106】
本明細書に開示されるペプチドバイオマーカー、またはそのフラグメントは、PETおよびSPECT画像化適用の文脈で用いられ得る。PETまたはSPECT適用のための適切なトレーサー残基での改変後、アミロイドプラークタンパク質と相互作用するペプチドバイオマーカーを用いて、アルツハイマーの患者におけるアミロイド斑の沈着を画像化してもよい。
【0107】
アンチセンス技術を用いて、転写物であって、その翻訳が本明細書に特定されるバイオマーカーに関連する転写物の発現を検出してもよい。例えば、適切な放射性核種、例えば111Inで標識され、かつ脳の薬物標的システムに結合体化されて生物学的な膜障壁を通過して輸送し得るアンチセンスペプチド核酸(PNA)の使用は、脳腫瘍における内因性遺伝子発現の画像化を可能にすることが実証されている。Suzukiら,Journal of Nuclear Medicine,10:1766−1775(2004)を参照のこと。Suzukiらは、血液脳関門で輸送レセプターを標的し、その障壁にまたがってPNAの輸送を促進するモノクローナル抗体を含む送達系を利用する。
【0108】
(IX.組成物)
別の局面では、本発明は、本発明のバイオマーカーに基づく組成物を提供する。
【0109】
1実施形態では、本発明は、本発明のバイオマーカーを精製型で提供する。精製されたバイオマーカーは、抗体を惹起する抗原として有用性を有する。精製されたバイオマーカーはまた、アッセイ手順で標準として有用性を有する。本明細書において用いられる場合、「精製されたバイオマーカー(purified biomarker)」とは、他のタンパク質およびペプチドから、ならびに/またはこのバイオマーカーが見出される生物学的サンプル由来の他の物質から単離されているバイオマーカーである。バイオマーカーは、当該分野で公知の任意の方法を用いて精製され得、この方法としては、限定はしないが、機械的な分離(例えば、遠心分離)、硫酸アンモニウム沈殿、透析(サイズ排除透析を含む)、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、および金属キレートクロマトグラフィーが挙げられる。このような方法は、任意の適切な規模で、例えば、クロマトグラフィーカラムで、またはバイオチップで行われてもよい。
【0110】
別の実施形態では、本発明は、本発明のバイオマーカーを特異的に結合する生体特異的捕獲試薬を、必要に応じて精製型で提供する。好ましくは、生体特異的捕獲試薬は抗体である。1実施形態では、生体特異的捕獲試薬は、本発明のバイオマーカーを結合する抗体である。
【0111】
別の実施形態では、本発明は、本発明のバイオマーカーと、このバイオマーカーを特異的に結合する生体特異的捕獲試薬との間の複合体を提供する。他の実施形態では、生体特異的捕獲試薬は、固相に結合される。例えば、本発明は、本発明のバイオマーカーに結合する生体特異的捕獲試薬で誘導体化されたビーズまたはチップを含むデバイスを意図しており、そして、またこのデバイスでは、本発明のバイオマーカーが生体特異的な捕獲試薬に結合される。
【0112】
別の実施形態では、本発明は、吸着剤、例えば、クロマトグラフィー吸着剤であって、ここにさらに本発明のバイオマーカーが結合される吸着剤が結合される固体基板を含むデバイスを提供する。
【0113】
(X.アルツハイマー病のバイオマーカーの検出のためのキット)
別の局面では、本発明は、アルツハイマー病状態を定量するためのキットを提供し、このキットは、本発明に従うバイオマーカーを検出するために用いられる。1実施形態では、このキットは、固体支持体、例えば、チップ、マイクロタイタープレートまたはビーズもしくは樹脂を備え、これはその上に結合される捕獲試薬を有し、この捕獲試薬が、本発明のバイオマーカーを結合する。従って、例えば、本発明のキットは、ProteinChip(登録商標)アレイのようなSELDIの質量分析プローブを備えてもよい。生体特異的捕獲試薬の場合、キットは、反応性表面を有する固体支持体およびこの生体特異的捕獲試薬を含む容器を備えてもよい。
【0114】
このキットはまた、洗浄溶液または洗浄溶液を作成するための説明書を備えてもよく、ここで捕獲試薬および洗浄溶液の組み合わせによって、例えば、質量分析による引き続く検出のために固体支持体上にバイオマーカー(単数または複数)の捕獲が可能になる。このキットは、種々の固体支持体上に各々が存在する、より多くのタイプの吸着剤を備えてもよい。
【0115】
さらなる実施形態では、このようなキットは、適切な操作パラメーターのための説明書を、表示または別の挿入物の形態で備えてもよい。例えば、この説明書は、サンプルを収集する方法、検出されるべきプローブまたは特定のバイオマーカーを洗浄する方法について使用者に情報提供し得る。
【0116】
さらに別の実施形態では、このキットは、算出用の標準として用いられるべきバイオマーカーサンプルを含む1つ以上の容器を含んでもよい。
【0117】
(XI.スクリーニングアッセイにおけるアルツハイマー病のバイオマーカーの使用、およびアルツハイマー病を処置する方法)
本発明の方法は、他の適用を同様に有する。例えば、バイオマーカーは、インビトロまたはインビボにおいてバイオマーカーの発現を調節する化合物であって、次に患者のアルツハイマー病を処置または予防するのに有用であり得る化合物についてスクリーニングするために用いられ得る。別の実施例では、このバイオマーカーは、アルツハイマー病の処置に対する応答をモニターするために用いられ得る。さらに別の例では、このバイオマーカーは、被験体がアルツハイマー病を発症するリスクであるか否かを決定する遺伝研究で用いられてもよい。
【0118】
従って、例えば、本発明のキットは、疎水性機能を有する固体基板、例えば、タンパク質バイオチップ(例えば、Ciphergen Q10 ProteinChipアレイ、例えば、ProteinChipアレイ)、およびこの基板を洗浄するための酢酸ナトリウム緩衝液、ならびにこのチップ上で本発明のバイオマーカーを測定して、これらの測定値を用いてアルツハイマー病を診断するためのプロトコールを提供する説明書を備えてもよい。
【0119】
治療試験に適切な化合物は、表Iに列挙される1つ以上のバイオマーカーと相互作用する化合物を特定することによって最初にスクリーニングされ得る。例えば、スクリーニングは、表Iに列挙されるバイオマーカーを組み換え発現する工程、このバイオマーカーを精製する工程、およびこのバイオマーカーを基板に固定する工程を包含し得る。次いで、試験化合物を、この基板と、代表的には水性の状態で接触させて、その試験化合物とバイオマーカーとの間の相互作用を、例えば、溶出速度を塩濃度の関数として測定することによって測定する。特定のタンパク質は、表Iの1つ以上のバイオマーカーを認識して切断し得、ここでは、このタンパク質は、例えば、タンパク質のゲル電気泳動によって、標準的なアッセイで1つ以上のバイオマーカーの消化をモニタリングすることによって検出され得る。
【0120】
関連の実施形態では、ある試験化合物がVGFペプチドの活性を阻害する能力を測定してもよい。当業者は、特定のバイオマーカーの活性を測定するために用いられる技術は、バイオマーカーの機能および特性に依存して変化することを認識する。例えば、バイオマーカーの酵素活性は、適切な基質が利用可能であるという条件、そして基質の濃度または反応生成物の出現が容易に測定可能であるという条件でアッセイされ得る。潜在的に治療的な試験化合物が所定のバイオマーカーの活性を阻害または増強する能力は、試験化合物の存在下または非存在下で触媒の速度を測定することによって決定され得る。表Iのバイオマーカーの1つの非酵素的(例えば、構造的な)機能または活性をある試験化合物が妨げる能力も測定され得る。例えば、VGFペプチドを含む複数のタンパク質の複合体の自己アセンブリは、試験化合物の存在下または非存在下で分光法によってモニターされ得る。あるいは、バイオマーカーが、転写の非酵素的エンハンサーである場合、このバイオマーカーが転写を増強する能力を妨害する試験化合物は、その試験化合物の存在下または非存在下でインビボまたはインビトロでバイオマーカー依存性転写のレベルを測定することによって特定され得る。
【0121】
VGFペプチドの活性を調節し得る試験化合物は、アルツハイマー病または他のガンに罹患しているか、または発症するリスクがある患者に投与され得る。例えば、特定のバイオマーカーの活性を増大させる試験化合物の投与は、インビボで特定のバイオマーカーの活性がアルツハイマー病のタンパク質の蓄積を妨げる場合、患者のアルツハイマー病のリスクを軽減し得る。逆に、特定のバイオマーカーの活性を減少させる試験化合物の投与は、バイオマーカーの活性の増大がアルツハイマー病の発現の原因の少なくとも一部を担う場合、患者のアルツハイマー病のリスクを減少させ得る。
【0122】
さらなる局面では、本発明は、天然のタンパク質の改変型の増大したレベルに関連するアルツハイマー病のような障害の処置のために有用な化合物を特定するための方法を提供する。例えば、1実施形態では、細胞抽出物または発現ライブラリーを、表1のVGFペプチドを形成するように全長VGFタンパク質の切断を触媒する化合物についてスクリーニングしてもよい。このようなスクリーニングアッセイの1実施形態では、天然のVGFタンパク質またはVGFペプチドの切断は、タンパク質が未切断である場合クエンチされたままであるが、タンパク質が切断された場合に蛍光を発する、タンパク質に対して発蛍光団を結合させることによって検出され得る。あるいは、VGFの改変バージョンであって、ここでは切断不可能なVGFペプチドのN末端とC末端のアミノ酸の間のアミド結合を用いて、細胞プロテアーゼを選択的に結合するかまたは「捕獲、トラップする(trap)」してもよく、これによって全長VGFタンパク質をインビボにおいてその位置で切断する。プロテアーゼおよびそれらの標的をスクリーニングおよび特定するための方法は、科学論文において、例えば、Lopez−Ottinら、(Nature Reviews,3:509〜519(2002))において十分実証されている。
【0123】
臨床レベルでは、アルツハイマー病を処置するのにおける用途のための試験化合物をスクリーニングする工程は、被験体をある試験化合物に曝す前後に被験体からサンプルを得る工程を包含する。表1のVGFペプチドのサンプルにおけるレベルを測定し分析して、このバイオマーカーのレベルが、試験化合物への曝露後に変化するか否かを決定してもよい。サンプルは、本明細書に記載されるように質量分析計によって分析してもよいし、またはサンプルは、当業者に公知の任意の適切な方法によって分析してもよい。例えば、表Iに列挙される1つ以上のバイオマーカーのレベルは、バイオマーカーに特異的に結合する放射性標識または蛍光標識した抗体を用いるウエスタンブロットによって直接測定してもよい。あるいは、1つ以上のバイオマーカーをコードするmRNAのレベルの変化を測定して、被験体に対する所定の試験化合物の投与と関連付けてもよい。さらなる実施形態では、1つ以上のバイオマーカーの発現のレベルの変化は、インビトロの方法および物質を用いて測定され得る。例えば、表Iの1つ以上のバイオマーカーを発現するか、または発現し得るヒト組織培養細胞を、試験化合物と接触してもよい。試験化合物で処置されている被験体は、処置から生じ得る任意の生理学的効果について慣用的に試験される。詳細には、試験化合物は、ある被験体で疾患の確率を減じる能力について評価される。あるいは、試験化合物を、アルツハイマー病と以前に診断されている被験体に投与した場合、試験化合物は、その疾患の進行を遅らせるかまたは停止させる能力についてスクリーニングされる。
【実施例】
【0124】
(XII.実施例)
(実施例1.アルツハイマー病のバイオマーカーの開発)
(材料および方法)
研究デザインおよび臨床サンプル:Mini−Mental State Examination(MMSE)が24を超える83例の極めて軽い症例を含む、97例のアルツハイマー病患者(年齢:平均74.11、範囲50〜89)および49例の正常な個体(年齢:平均62.94歳、範囲39〜92)由来のCSFサンプル(150μl)をこの研究に用いた(表3を参照のこと)。
【0125】
(表3 臨床的な特徴)
【0126】
【化2】

値は平均値(SD)。
【0127】
全ての患者が、以下を含む徹底的な臨床の検討を受けた:医学的(病歴を含む);肉体的、神経学的および精神医学的な検査;スクリーニング実験室試験;脳波;および脳のコンピュータートモグラフィースキャン。痴呆の有無は、DSM−IV基準に従って診断した。ADの可能性は、NINCDS−ADRDA基準(McKhann G.ら(1984)Neurology 34:939〜944)に従って診断し、そして疾患の重篤度は、MMSEスコアを用いて評価した(Folstein M Fら(1975)J Psychiatr Res 12:189〜198)。
【0128】
CSFサンプルは、L3/L4またはL4/L5の間隙の腰椎穿刺によって得て、ポリプロピレンチューブに採取して、−80℃で保管した。全ての患者(または彼らの最近親者)および正常な個体に、研究参加のインフォームド・コンセントを与え、これは、ヘルシンキ宣言に従って行った。CSFサンプルは、3つの専門的な施設を通じ、スウェーデンのPiteae River Valley Hospital(ADサイト1、N=64)、フィンランドのUniversity of Kuopio(ADサイト2、N=33)、およびスウェーデンのUniversity of Gottenburg(正常、N=49)で調達した。プールした参照CSFにそったサンプルを、システム上のバイアスを排除することを補助する無作為な位置で、96ウェルマイクロタイタープレートにアリコートした。
【0129】
SELDI分析:臨床的なCSFサンプルを解凍して、各々5μlのサンプルを、50μlの適切な結合緩衝液に希釈して、ある範囲のProteinChip(登録商標)Arrayタイプ(Ciphergen Biosystems,Fremont,CA)にプロファイリングした。全てのアレイ調製は、組み込みのシェーカーを備えるBiomek(登録商標)2000ロボット(Beckman Coulter)を用いて行い、サンプルの配置は無作為にした。以下の結合緩衝液を各々のProteinChip Arrayタイプについて用いた:H50アレイについては、0.1%トリフルオロ酢酸を含有する10%アセトニトリル、IMAC30−Cuアレイについては100mMリン酸ナトリウム(pH7.0、0.5M NaCl)、CM10アレイについては100mM酢酸ナトリウム(pH4.0)、そしてQ10アレイについては100mM Tris(pH 9.0)。サンプルを室温で30分間結合させた。各々のアレイを、適切な結合緩衝液で3回洗浄して、水で2回リンスし、その後に質量分析計読取装置でのタンパク質の脱離およびイオン化を容易にするために用いられるEnergy Absorbing Molecules(EAM)の添加を行った。シナピン酸(SPA)および4−ヒドロキシ−α−シアノケイヒ酸(CHCA)を、EAM(Ciphergen Biosystems,Fremont,CA)として用いた。SPAを有するアレイを、CHCA読み取りをより低い質量領域に集中させながら、より低い質量およびより高い質量に集中するように、2つの異なる装置設定で読み取った(表1のVGFペプチドは、高エネルギー装置設定を用いて特定した)。各々のサンプルは、連続する日に別々のアレイにおいて三連で流した。アレイの分析は、ProteinChip Reader,シリーズPBS(IIc)(Ciphergen Biosystems,Fremont,CA)で行った。タンパク質残余(renentate)マップを作成し、ここで個々のタンパク質を、それらの質量および電荷(m/z)に基づいて固有のピークとして提示した。
【0130】
サンプルの調製およびアレイの分析の再現性を保証するため、参照CSF標準を、臨床サンプルの間のいくつかの別個のアリコートに無作為に分配させて、正確に同じ条件下で分析した。再現性は、各々のセットの取得パラメーター(acquisition parameters)についてプールした変動係数(CV)として測定した。CV値は、20〜25%(N=28)であると確認され、そしてアレイのロットとは独立していた。
【0131】
データ分析:ProteinChipプロファイリングスペクトルのデータを、ProteinChip Softwareバージョン3.1を用いて収集し、そしてCiphergenExpress(商標)Softwareバージョン3.0に直接移動して、ここでデータ処理および単変量解析を行なった。全てのスペクトルを内部質量較正して、ピーク強度を正規化した。ピークのクラスター形成は、EAMピークによって支配される、極めて低い質量領域を除いた範囲で行った。各々の群にまたがる個々のピークのP値は、マン・ホイットニー検定を用いて算出した。受信者動作特性曲線のAUC(ROC AUC)を、各々のピークについて算出して、特徴の数は、0.65を超える値を有するピークのみを維持することによって減少させた。最初の単変量解析において有意差を示す全てのピークを、手技的にチエックして、ニセのピークを排除した。さらなるデータ減少については、ADサンプルをサイトごとに別々に比較し(すなわちスウェーデン(ADサイト1)対健常対照者およびフィンランド(ADサイト2)対健常対照者)、両方の比較で0.65を超えるROC AUC値を有する候補バイオマーカーを選択して、同じ方向に変化させた。
【0132】
マーカー精製およびID:バイオマーカーは、ある範囲のBiosepra吸着剤を使用するクロマトグラフィー技術であって代表的にはその後のSDS−PAGEとの組み合わせを用いて精製した。精製スキームは、ProteinChip Readerを用いてモニターして、目的のバイオマーカーを追跡した。30kDaより小さいタンパク質については、目的のインタクトなバンドをゲルから抽出して、ProteinChip Readerを用いて再分析し、もとのバイオマーカーと一致する正確な質量を確認した。このゲル抽出したタンパク質を、溶液中でトリプシンを用いて消化して、30kDaより大きいタンパク質をゲル消化した。トリプシン消化物を、ProteinChip Readerを用いるペプチドマッピングによって、そしてPCI−100 ProteiChipインターフェースと適合したQ−STAR(Applied Biosystems)装置を用いるタンデムMSによって分析した。4kDaより小さいバイオマーカーを、クロマトグラフィー技術の組み合わせによって富化して、SDS−PAGE精製および/またはトリプシン消化なしにタンデムMSによって直接特定した。
【0133】
前の段落に記載される技術によって、表1のVGFペプチドバイオマーカーの特定が可能になった。
【0134】
表1のVGFペプチドは、Swiss Protein DatabaseにVGF_HUMAN(O15240)(アミノ酸23〜616)として記載される神経分泌タンパク質VFG由来である。寄託された配列は以下に示す:
【0135】
【化3】

6620Daのバイオマーカーに相当するペプチドに下線を付している(アミノ酸421〜479;理論的MW6621.98,pI3.98)(配列番号1)。配列決定されたトリプシンペプチドは、太字で強調している。このペプチドはセクレトグラニン(secretogranins)およびクロモグラニン(chromogranins)に由来する他のペプチドについて観察されるように、−KR−切断部位でプロホルモン転換酵素によって前駆体から切り出される可能性が高い。神経分泌タンパク質VGFは、インビボで神経内分泌細胞の小集団でのみ転写され、そしてインビトロで標的細胞においてニューロトロフィンによって誘導される(Canu Nら,Genomics.1997 Oct.15;45(2):443〜6);Levi Aら,Cell Mol Neurobiol.2004 August;24(4):517〜33))。
【0136】
本明細書に記載される実施例および実施形態は、例示の目的に過ぎないこと、そしてそれに照らして種々の改変または変化が、当業者に示唆され、そして本出願および添付の特許請求の範囲の趣旨および条項内に含まれるべきであることが理解される。本明細書に引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、全ての目的のためにその全体が参照によって本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】図1は、VGFペプチドバイオマーカーの代表的な質量スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある被験体におけるアルツハイマー病状態を認定するための方法であって:
(a)該被験体由来の生物学的サンプルにおいて少なくともVGFペプチド−1を測定する工程と;
(b)この測定値とアルツハイマー病状態とを関連付ける工程と;
を包含する、方法。
【請求項2】
前記バイオマーカーが、SELDIプローブの吸着性表面上でバイオマーカーを捕獲すること、および該捕獲されたバイオマーカーを、レーザー脱離質量分析法によって検出することによって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記吸着剤が陰イオン交換吸着剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記吸着剤が生体特異性の吸着剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
VGFペプチド−1がM6608である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
VGFペプチド−1が、VGFペプチド−1の量を測定する工程を包含しない方法によって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、イムノアッセイを包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルが脳脊髄液である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記関連付ける工程が、ソフトウェア分類アルゴリズムによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
アルツハイマー病状態が、アルツハイマー病および非アルツハイマー病から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(c)前記被験体に対して前記状態を報告する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(c)前記状態を有形的表現媒体上に記録する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
(c)前記状態に基づいて被験体処置を管理する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
(d)被験体管理後にVGFペプチド−1を測定する工程と、この測定値と疾患進行とを関連付ける工程とをさらに包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記管理が、アルツハイマー病に関連しているならば、被験体処置を管理する工程は、該被験体に対してコリンエステラーゼインヒビターを投与する工程を包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
(d)被験体管理後に少なくとも1つのバイオマーカーを測定する工程と、この測定値と疾患進行とを関連付ける工程とをさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
アルツハイマー病の経過を決定するための方法であって:
(a)被験体サンプルにおいてVGFペプチド−1を初回に測定する工程と;
(b)被験体サンプルにおいてVGFペプチド−1を2回目に測定する工程と;
(c)この第一の測定値および第二の測定値を比較する工程であって、この比較計測によって該被験体におけるアルツハイマー病の経過を決定する工程と、
を包含する、方法。
【請求項18】
被験体由来のサンプルにおいてVGFペプチド−1を測定する工程を包含する、方法。
【請求項19】
精製されたVGFペプチド−1を含む組成物。
【請求項20】
VGFペプチド−1に特異的に結合する生体特異的捕獲試薬を含む組成物。
【請求項21】
前記生体特異的捕獲試薬が抗体である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記生体特異的捕獲試薬が固体支持体に結合される、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
VGFペプチド−1に結合する生体特異的捕獲試薬を含む組成物。
【請求項24】
キットであって:
(a)固体支持体であって、それに対して結合された少なくとも1つの捕獲試薬を含み、この捕獲試薬がVGFペプチド−1を結合する固体支持体と;
(b)該VGFペプチド−1を検出するために該固体支持体を用いるための説明書と、
を備える、キット。
【請求項25】
前記VGFペプチド−1を検出するために前記固体支持体を用いるための説明書を備える、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
捕獲試薬を含む前記固体支持体が、SELDIプローブである、請求項24に記載のキット。
【請求項27】
前記捕獲試薬が陰イオン交換吸着剤である、請求項24に記載のキット。
【請求項28】
(c)VGFペプチド−1を含む容器、をさらに備える、請求項24に記載のキット。
【請求項29】
(c)陰イオン交換クロマトグラフィー吸着剤、をさらに備える、請求項24に記載のキット。
【請求項30】
キットであって:
(a)固体支持体であって、それに対して結合された少なくとも1つの捕獲試薬を含み、この捕獲試薬がVGFペプチド−1に結合する固体支持体と;
(b)VGFペプチド−1を含む容器と、
を備える、キット。
【請求項31】
捕獲試薬を含む前記固体支持体が、SELDIプローブである、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
(c)陰イオン交換クロマトグラフィー吸着剤をさらに含む、請求項30に記載のキット。
【請求項33】
ソフトウェア製品であって:
a.サンプルに起因するデータにアクセスするコードであって、該データがVGFペプチド−1の測定値を包含するコードと;
b.該サンプルのアルツハイマー病状態を分類する分類アルゴリズムを測定の関数として遂行するコードと;
を備えるソフトウェア製品。
【請求項34】
サンプル中のVGFペプチド−1を検出する工程を包含する、方法。
【請求項35】
被験体由来のサンプルにおける少なくともVGFペプチド−1の相関から決定されるアルツハイマー病状態に関連する診断を該被験体に連絡する工程を包含する、方法。
【請求項36】
前記診断が、コンピューター処理媒体を介して前記被験体に連絡される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
VGFペプチド−1と相互作用する化合物を特定するための方法であって:
a)バイオマーカーと試験化合物とを接触させる工程と;
b)該試験化合物が該バイオマーカーと相互作用するか否かを決定する工程と;
を包含する、方法。
【請求項38】
細胞中におけるVGFペプチド−1の濃度を調節するための方法であって:
a)該細胞とプロテアーゼインヒビターとを接触させる工程であって、該プロテアーゼインヒビターが、天然のVGFタンパク質の切断を妨げる工程、
を包含する、方法。
【請求項39】
被験体における状態を処置する方法であって:
治療上有効な量のプロテアーゼインヒビターを被験体に投与する工程であって、該プロテアーゼインヒビターが、天然のVGFタンパク質の切断を妨げる工程、
を包含する、方法。
【請求項40】
前記状態がアルツハイマー病である、請求項39に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−547003(P2008−547003A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517032(P2008−517032)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/023044
【国際公開番号】WO2006/138325
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(507345871)バーミリオン, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】