説明

アルツハイマー病の処置のための薬学的方法、投与レジメンおよび投薬形態

【課題】ADの治療のためのより有効で安全な薬剤を提供すること。
【解決手段】一般に本発明は、絶食患者に単回経口投与すると、mLあたり約30〜95μgのCmaxを与える活性成分としてのR−フルルビプロフェンを有する薬学的用量に関する。記載されたガイドラインに従って1日2回、少なくとも4ヶ月、軽度から中程度のアルツハイマー病を有する(またはアルツハイマー病に対する予防を希望する)個体にその用量を投与すると、認知試験で特徴付けられる認知機能の減退の改善または減少が患者で観察される。本発明の組成物は少なくとも1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤、塩または担体と共に処方される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2003年7月11日付け米国特許仮出願第60/486,769号、2003年11月5日付け米国特許仮出願第60/517,666号および2004年4月7日付け米国特許仮出願第60/560,685号の優先権を主張するものであり、それぞれの全文を本明細書に引用して援用する。
【0002】
(1.発明の技術分野)
本発明は神経変性障害の治療または予防治療のための組成物を提供する。本発明はR−フルルビプロフェンと、1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤、希釈剤または担体とを有する組成物を提供する。本組成物は、このような治療を必要とする患者にR−フルルビプロフェンを投与することによる、神経変性障害の治療法に使用される。本発明はまた、様々なアルツハイマー病患者における認知機能の改善法を提供する。本発明はアルツハイマー病、痴呆および軽度認知欠陥等の神経変性障害の治療および予防に有用である。さらに、本発明は一般的に、および特にある患者集団におけるアルツハイマー病の予防または治療のためのある種の用量および投薬療法を包含する。
【背景技術】
【0003】
(2.発明の背景)
痴呆は人が正常な日常活動を行う能力に重大な影響を与える脳疾患である。老人の間ではアルツハイマー病(AD)は痴呆の最も一般的な型であり、思考、記憶および言語を制御する脳の部分を含む。世界中で集中的に研究しているにもかかわらず、ADの原因はいまだに未知であり、治療法がない。最も一般的にはADは60歳以後に始まり、そのリスクは加齢と共に増加する。若年層もADに罹患するが、はるかに数が少ない。65〜74歳の男女の3%がADを有すると予測されている。85歳以上のほぼ半分がこの病気を有すると思われる。ADは加齢の正常な部分ではない。アルツハイマー病は遺伝的および環境因子で生じ得る複合病である。米国のみでは、4百万の成人がアルツハイマー病を有する。今日、アルツハイマー病は無数の家族の生活に深刻な打撃を与えるばかりでなく、ベビーブーム世代が成熟するに連れてさらに大きな問題になると恐れられる。米国におけるADの経済的負担は1年に1000億ドル以上であり、患者あたりの平均生涯コストは174,000ドルであると見積もられている。不幸なことに、ADに適用される治療法はない。
【0004】
1906年にAlois Alzheimer博士は異常な精神病で死亡した女性の脳組織の変化に注目した。彼女の脳組織中で、博士は異常なクランプ(現在ではアミロイドプラークとして知られる)および繊維束の変化(現在では神経原線維変化として知られる)を発見したが、それらは現在ではADの病理的特質であると考えられる。ADを有する人の他の脳の変化も発見されている。例えば、ADでは記憶やその他の精神能力に必須の脳領域中に神経細胞の喪失が見られる。科学者はまた、神経細胞間で複雑なメッセージをやり取りする脳中の化学物質レベルが低くなっていることを見出している。神経細胞間のこれらのメッセージを妨害することにより、ADは正常な思考と記憶を乱すと思われる。
【0005】
神経細胞およびシナプス喪失で影響される同じ脳領域中でプラークと変化(tangle)が見出される。神経細胞およびシナプスの喪失は、認知機能の減退の主な原因であると一般に認められている。AD患者では、変化の数はアミロイド負荷より認知低下により強く関連付けられている(Albert Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93:13547−13551(1996))。ADにおける神経細胞およびシナプス喪失に関与する細胞的、生化学的および分子的事象は知られていない。多くの研究により、アミロイドが神経細胞に対し直接的に毒性であり(Iversenら、Biochem.J.311:1−16(1995);Weiss et al.J.Neurochem.62:372−375(1994);Lorenzo et al.Ann.N.Y.Acad.Sci.777:89−95(1996);Storey et al.Neuropathol.Appl.Neurobiol.2:81−97(1999))、挙動傷害を生じることが示されている。アミロイドの毒性または変化は、補体カスケードの活性化により悪化する可能性がある(Rogers et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.21:10016−10020(1992);Rozemuller et al.Res.Immunol.6:646−9(1992);Rogers et al.Res.Immunol.6:624−30(1992);Webster et al.J.Neurochem.69(1):388−98(1997))。このことは、ADにおける炎症プロセスとADに見られる神経細胞死の関与を示唆する(Fagarasan et al.Brain Res.723(1−2):231−4(1996);Klaria et al.Neurodegeneraton 5(4):497−503(1996);Kalaria et al.Neurobiol.Aging 17(5):687−93(1996);Farlow Am.J.Health Syst.Pharm.55、Suppl.2:S5−10(1998))。
【0006】
アミロイドβタンパク質(Aβ)の沈着がある形のADを引き起こすという証拠が、ADのある家族型(FAD)の遺伝的および分子的研究により提供された(例えばIi Drugs Aging 7(2):7−109(1995);Hardy Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94(6):2095−7(1977);Selkoe、J.Biol.Chem.271(31):18295−8(1996)参照)。AD患者におけるアミロイドプラークの形成は、Aβの異常プロセシングがADの原因の一つであり得ることを示唆している。Aβは39〜42アミノ酸のペプチドであり、すべてのアルツハイマー症で観察される老人性プラークの核を形成する。異常プロセシングがADの主な原因であれば、FADと(遺伝的に)結びつく家族性アルツハイマー病(FAD)突然変異が何らかの方法でAβ沈着を助長する変化を誘発すると思われる。今までに知られているFAD遺伝子は3種類ある(Hardy et al.Science 282:1075−9(1998);Ray et al.(1998))。これらのFAD遺伝子の突然変異がAβ沈着を増加する結果となり得る。
【0007】
3種のFAD遺伝子の第1はAβ前駆体、またはアミロイド前駆体タンパク質(APP)をコードする(Selkoe J.Biol.Chem.271(31):18295−8(1996))。APP遺伝子の突然変異は極めて希であるが、その全ては100%の浸透率でADを引き起こし、モデルトランスフェクト細胞およびトランスジェニック動物の双方で全AβまたはAβ42の何れかの生産増加をもたらす。他の2つのFAD遺伝子はプレセニリン1および2(PS1、PS2)をコードする(Hardy Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94(6):2095−7(1997))。プレセニリンは8個の膜横断ドメインを含み、いくつかの証拠はそれらが細胞内タンパク質輸送に関与することを示唆している。他の研究は、プレセニリンがプロテアーゼとして作用することを示唆している。プレセニリン遺伝子の突然変異はAPP遺伝子の突然変異より一般的であり、それらの全ても100%の浸透率でFADを引き起こす。APPの突然変異と同様に、PS1およびPS2の突然変異がAPP代謝を変化させ、Aβ42の生産が上昇する結果となることが(インビトロおよびインビボの)研究から示されている。
【0008】
NSAID使用の疫学的関連によれば、シクロオキシゲナーゼ(COX)は主要なアルツハイマー病治療薬の標的である。NSAIDの第一標的はシクロオキシゲナーゼであり、アルツハイマー病を発症するリスクを減少する(例えばHoozemans et al.Curr.Drug Targets 4(6):461−8(2003);およびPasinetti et al.J.Neurosci.Res.54(1):1−6(1998)参照)。疫学的研究は慢性的なNSAIDの使用がアルツハイマー病に罹るリスクを減らす、および/または発病を遅らせる様に思われると示している(例えばMcGeer et al.Nurology、47(2):425−435(1996);およびEtminan et al.BMJ.327(7407);128(2003)参照)。COX−1を阻害せず、より毒性が少ない様に思われるため、COX−2選択的インヒビターは長期の薬剤使用の魅力ある候補である。AD治療の標的としてのCOX−2の使用を支持する公表された最近の研究では、ADのマウスモデルでCOX−2の過剰発現がADの神経病理と関連することが報告されている(Xiang et al.Neurobiol.Aging 23:327−34(2002))。しかしながら、特定のNSAIDの最近の臨床試験は、抗炎症剤がアルツハイマー病の治療または予防に有用であるという仮説に疑問を提起している。COX−2選択的NSAIDであるロフェコキシブの毎日25mgの用量がAD治療に対し効力を示さないことが報告された。他のNSAIDであるナプロキセンも、同じ臨床試験でアルツハイマーの治療に有効ではなかった。Aisen et al.JAMA 289:2819−26(2003)、およびReines et al.Neurology 62(1):66−71(2004)参照。これらの著者は、ナプロキセンおよびロフェコキシブによる結果が、AD治療のためのNSAIDの使用を支持していないと結論した。COX−2選択的NSAIDであるセレコキシブも、AD治療のためのいくつかの最近の臨床試験で効力を示さなかった。Jhee et al.,“A Double-Blind, Placebo−Controlled Pharmacokinetic (PK), Pharmacodynamic (PD) and Safety Study of Celecoxib Treatment for Four Weeks in Alzheimer’s Disease (AD),”Abstract from 7th International Geneva/Springfield Symposium on Advances in Alzheimer’s Therapy(2002);Clinical Research and Regulatory Affairs、21(1):49−66(2004)にも記載;およびSainati et al. (Abstract from 6th International Stockhorm/Springfirled Symposium on Advances on Alzheimer’s Therapy,Abstract Book 2000;180)参照。逆に、インビボアルツハイマー病エキシト毒性モデルシステムでロフェコキシブが神経保護を示すことが最近報告された(Scali et al.Neuroscience 117:909−919(2003))。しかしながら、多くの予防臨床試験でロフェコキシブは軽度の認知障害を有する患者でアルツハイマー病の進行を予防しなかった。実際、この臨床試験の結果は、プラセボを服用している患者の4.5%と比較して、ロフェコキシブを服用している患者の6.4%がADを発症したことを示した(例えばVisser et al.abstract from Annual meeting of the American College of Neuropsychopharmacology San Juan、Puerto Rico、2003;およびLanders,Wall Street Journal、2003年12月10日参照)。従って、一般的なクラスの薬剤としてのNSAIDがアルツハイマー病の治療および/または予防に有用ではないと考えられることを臨床試験は示している。
【0009】
Aβアミロイドプラークがこの病気の中心的な病理的兆候であるため、Aβ形成がアルツハイマー病の進行に影響するもう一つの標的である。最近、ある種のNSAIDが、プラーク形成に関連するAβの形であるAβ42のレベルを低下することが可能であることが示唆された。Koo et al.の米国特許出願第2002/0128391号、または米国特許出願公報第2002/0128319号はアルツハイマー病治療のためのAβ42低下量のNSAIDの使用を開示している。COX活性をほとんど阻害しないR−フルルビプロフェンがトランスジェニックマウスモデルおよびCHO細胞でAβ42を低下することが、Koo et al.により報告された。
【0010】
動物モデルで効力の強い証拠があるにも係わらず、患者からAβプラークを除去するために設計された治療を用いる最近の臨床試験は失敗した(Pfiefer et al.Science、289:1379(2002))。動物モデルで有効であったAβ低下治療は、ヒトでは重大な問題を生じた。臨床研究の観点で、Atwood et al.(Science、299:1014(2003))は「多くの証拠はアミロイドβのこの沈着が傷害に対する神経保護反応であると思われる」、および「これらの結果は、またしても、その機能を最初に理解しなければ、遍在的に組織で発現するタンパク質、すなわちアミロイドβを除去することが無益であることを示している」と注釈した。
【0011】
さらに、APPのプロセシングを変化させる様に設計されたガンマセクレターゼインヒビターは、慢性的なヒトの使用に適さない様に思われる毒性化合物であることが判明した。De Strooper et al.Nature 398:518−522(1999);Wong et al.J.Biol.Chem.279:12876−12882(2004);およびHadland et al.PNAS、98(13):7487−91(2001)参照。従って、ガンマセクレターゼインヒビターが現実的な治療/予防の選択肢であるかどうかは明らかでない。実際、最近指摘される様に、ADに関連するPS−1の突然変異がAβプロセシングを変化させるのではなく、むしろカルシウム恒常性に影響することによって病気を引き起こすと思われる。
【0012】
いくつかの疫学的研究は、ある種の悪性度に対するリスクが少ないイブプロフェンおよびアスピリン等のNSAIDの長期使用と、アルツハイマータイプの痴呆が特徴である神経変性プロセスとの間の関連を報告している。NSAIDの長期使用に関連する癌およびアルツハイマー病のリスクの減少に対し、様々な説明がなされている。NSAIDの主要な作用はシクロオキシゲナーゼ(COX)活性の阻害である様に思われる。従って、主要な仮説は、COX酵素に影響することにより、NSAIDがある種の癌およびアルツハイマー病のリスクを減少するということである。他の説明にはアポトーシスの介在、成長因子の調節、および核因子κB(NF−κB)経路の調節が含まれる。
【0013】
Rogers et al.による特許文献1は、シクロオキシゲナーゼの阻害、従ってプロスタグランジン合成の阻害により、NSAIDがアルツハイマー病の治療に有用であると主張している。Brietner et al.による特許文献2は、アルツハイマー病の発症を遅延させるためのCOX阻害NSAIDの使用を報告している。Brietner et al.による特許文献3は、COX阻害NSAIDの使用に関するものである。
【0014】
フルルビプロフェンは化学名(R,S)−(2−フルオロ−ビフェニルイル)プロピオン酸を有するラセミ体の非ステロイド性抗炎症薬である。50ミリグラム(mg)および100mgのラセミ体フルオロビオフェン錠剤がANSAID(登録商標)として、FROBEN(登録商標)が慢性炎症疾患の治療のために市販されている。
【0015】
文献には様々なR−フルルビプロフェン含有組成物が記載されている。Brune et al.J.Clin.Pharmacol.32:944−952(1992)は50mgのR−フルルビプロフェンを含む錠剤の使用を開示している。Jerussi et al.(J.Clin.Pharmacol.32:944−952(1992))は、胃十二指腸寛容試験における100mgを1日2回、R−フルルビプロフェンの使用を記載している。非特許文献1は、ヒトの被験体における化学体性感覚誘発電位に関連する痛みにおける50mgおよび100mg投薬量の使用を記載している。著者らはこの用量におけるR−フルルビプロフェンが鎮痛効果を生じると結論した。非特許文献2はヒトにおける1つの光学異性体の性質を研究するために、50mgのR−フルルビプロフェンの使用を開示している。非特許文献3はR−フルルビプロフェンの水疱液およびヒト血清中の効果と性質とを研究するために、75mgのR−フルルビプロフェンの使用を開示している。Brune et al.による特許文献4は、痛みと炎症病状の治療に有効である、99.5%:0.5%〜0.5%:99.5%の比率であらかじめ分離したフルルビプロフェン光学異性体の10〜100mgの投薬量を含む薬剤を開示している。Geisslinger et al.による特許文献5は、痛みと炎症病状の治療に有効である、10〜100mgの投薬量の実質的に純粋なR−フルルビプロフェン、および40%までのS−光学異性体の混合物を含む医薬を開示している。
【0016】
米国でADの治療に現在用いられている5種類の薬剤中の4種類、すなわちタクリン(コグネックス(登録商標))、ドネペジル(アリセプト(登録商標))、リバスチグミン(エクセロン(登録商標))およびガランタミン(レミニル(登録商標))はアセチルコリンエステラーゼのインヒビターである。他の薬剤メマンチンが最近、中〜重症ADの治療に推奨された。より最近、メマンチンが軽度から中程度のADの治療で効力を示すことが報告された。メマンチンはNMDA受容体拮抗剤である。
【特許文献1】米国特許第5,192,753号明細書
【特許文献2】米国特許第5,643,960号明細書
【特許文献3】米国特許第6,025,395号明細書
【特許文献4】米国特許第5,206,029号明細書
【特許文献5】米国特許第5,200,198号明細書
【非特許文献1】Lotsch et al.,Bri.J.Clin.Pharm.,1995年,第40巻,p.339−346
【非特許文献2】Geisslinger et al.,1994年,Br.J.Clin.Parmacol.,第37巻,第4号,p.392−4
【非特許文献3】Oelker et al.,Br.J.Clin.Parmacol.,1997年,第43巻,第2号,p.145−53
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
メマンチンおよびアセチルコリンエステラーゼインヒビターを含む、現在ADの治療に使用されている薬剤はあまり効力がなく、望ましくない副作用を有する。従って、より有効で安全な薬剤に対するいまだ満たされない必要性が多くある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(3.発明の要旨)
一般に、本発明はR−フルルビプロフェンを活性成分として有する薬学的組成物に関する。より具体的には、本発明はアルツハイマー病の治療または予防に有用な、例えば400mg、800mg、1200mgおよび1600mgの組成物または毎日の用量のR−フルルビプロフェンの特定の薬剤処方または用量(すなわち単位投薬形態)に関する。以下により詳細に説明する様に、例えば400mgの投薬形態の用量を絶食患者に本発明の組成物の単回経口投与した場合、ミリリッター(mL)あたり約30〜95マイクログラム(μg)のCmax(投与後の最大血漿濃度)を与える。組成物を少なくとも4ヶ月、好ましくは少なくとも8ヶ月、より望ましくは少なくとも1年間、1日2回(b.i.d)投与した場合、認知試験、全体的な機能の尺度、日常生活の活動度、挙動、生化学的疾患マーカーの進行、脳容積の変化、および/またはプラーク病変で特徴付けられる認知機能の改善、または低下の減少が示される。認知試験とは、患者または患者群で認知低下の測定が可能な試験である。このような試験の例にはADAS−cog(Alzheimer’s Disease Assessment Scale、cognitive subscale)およびMMSE(Mini−Mental State Exam)等の認知試験、NPI(Neuropsychiatric Inventory)等の挙動試験、ADCS−ADL(Alzheimer’s Disease Cooperative Study−Activities of Daily Living)等の日常生活活動試験、CIBIC−plus(Clinician Interview Based Impression of Change)およびCDR−sb(Clinical Dementia Rating)等の総合的機能試験が含まれる。本発明の組成物は少なくとも1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤、塩または担体と共に処方される。本発明の薬学的組成物は経口で、好ましくは錠剤またはカプセル投薬形態で送達される。本発明のR−フルルビプロフェン組成物をアルツハイマー病等の神経変性障害に対する治療および予防法に用いることができる。
【0019】
第1の態様では、本発明は用量あたり約400mg〜800mgの量のR−フルルビプロフェンを含む投薬量を提供する。絶食患者に対する単回経口投与により、mLあたり約30〜95μgのCmaxが得られる。少なくとも4ヶ月間、好ましくは少なくとも8ヶ月間、より好ましくは少なくとも1年間の本発明態様の組成物の1日2回(b.i.d)の経口投与により、認知試験で特徴付けられる認知機能の改善または減退の減少が得られる。認知機能の減退の改善は対照と比較して少なくとも25%、より好ましくは少なくとも40%、さらに望ましくは少なくとも60%であることが好ましい。対照はプラセボで治療した複数の患者であるか、または一定期間の認知試験において減退が予想され得る。例えば、プラセボで治療された軽度から中程度のアルツハイマー病を有すると思われる患者が一定期間(例えば1年間)の治療後にADAS−cog試験で約5.5ポイント高い得点であると予想されるのに対し、同じ期間中、本発明の組成物で治療された患者がADAS−cogスケールで約2.2ポイント高い得点である場合、例えば認知機能の減退は約60%の改善を示し;または約3.3ポイント高い得点である場合、例えば認知機能の減退は約40%の改善を示す。もちろん、実際の得点数値は与えられた試験に依存する。例えば、MMSEのより高い数字は認知の改善を示し、より低い得点(すなわち26以下)はある程度の痴呆を示す。
【0020】
経口投与がカプセルまたは錠剤形態で提供されることが望ましい。本発明の本態様の具体的な実施態様では、投薬量はR−フルルビプロフェン、薬学的に受容可能な塩、離型剤、および任意に追加成分でなる薬学的組成物として提供される。本発明の態様の他の具体的な実施態様では、R−フルルビプロフェン、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムから構成される錠剤である単位投薬形態中の薬学的組成物として投薬量が提供される。本発明の態様の他の具体的な実施態様では、R−フルルビプロフェン、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムから構成される被覆錠剤である単位投薬形態中の薬学的組成物として投薬量が提供され、それらはすべてラクトース一水和物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、二酸化チタン、トラセチン/三酢酸グリセロールおよび酸化鉄の混合物中で被覆される。本発明の態様の他の具体的な実施態様では、R−フルルビプロフェン、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムから構成されるカプセルである単位投薬形態中の薬学的組成物として投薬量が提供される。
【0021】
関連する態様では、本発明はR−フルルビプロフェンの投与を含む、アルツハイマー病を有する、または有すると疑われる個体の治療法であって、投薬によりmLあたり約30〜約95μgのCmaxを与える治療法を提供する。より具体的な実施態様では、前記CmaxはmLあたり40〜80μgである。本発明はさらに前記個体にR−フルルビプロフェンを投与することを含む個体の認知機能の尺度の減退を改善する方法であって、その投与により対照と比較して認知機能の尺度の減退を減少させる結果となる改善方法を提供する。具体的な実施態様では、前記対照はR−フルルビプロフェンを投与しない個体における認知機能の前記尺度の減退であって、前記個体はアルツハイマー病を有しているか、有していると疑われる。他の具体的な実施態様では、前記対照はフルルビプロフェンを投与しない複数の患者における認知機能の前記尺度の平均減退であって、前記個体はアルツハイマー病を有するか、有していると疑われる。他の具体的な実施態様では、認知機能の前記尺度の減退の減少は対照と比較して少なくとも25%である。他の具体的な実施態様では、認知機能の前記尺度の減退の減少は前記対照と比較して少なくとも40%である。他の具体的な実施態様では、認知機能の前記尺度の減退の改善は対照と比較して少なくとも60%である。他の具体的な実施態様では、認知機能の前記尺度はADAS−cog試験である。また別な具体的な実施態様では、前記減退の減少は1年間にわたるADAS−cog試験で約2.2ポイントである。他の具体的な実施態様では、前記減退の減少は1年間にわたるADAS−cog試験で約3.3ポイントである。他の具体的な実施態様では、前記R−フルルビプロフェンを1日2回、約400mgの用量で投与する。他の具体的な実施態様では、前記R−フルルビプロフェンを1日2回、約800mgの用量で投与する。
【0022】
第2の態様では、本発明は生化学的疾患マーカーの進行における減退の改善または減少を与えるに適した、約400mg〜約800mgの量のR−フルルビプロフェンを有する投薬量を提供する。絶食患者に対する単回経口投与により、mLあたり約30〜95μgのCmaxが得られる。少なくとも4ヶ月間、好ましくは少なくとも8ヶ月間、より望ましくは少なくとも1年間の、1日2回(b.i.d.)の本発明の本態様の組成物の経口投与により、生化学的疾患マーカーの進行における減退の改善または減少が得られる。生化学的疾患マーカーの例にはアミロイドベータペプチド(Aβ)、Aβ42およびタウが含まれる。生化学的疾患マーカーの進行における減退の減少は、プラセボで治療した個体と比較して少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より望ましくは少なくとも40%が好ましい。経口用量がカプセルまたは錠剤型で提供されることが望ましい。本発明の本態様の具体的な実施態様では、投薬量はR−フルルビプロフェン、薬学的に受容可能な塩、離型剤および任意に追加成分でなる薬学的組成物として提供される。本発明の本態様の他の具体的な実施態様では、R−フルルビプロフェン、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムから構成される錠剤である単位投薬形態中の薬学的組成物として投薬量が提供される。本発明の本態様の他の具体的な実施態様では、R−フルルビプロフェン、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムから構成される被覆錠剤である単位投薬形態中の薬学的組成物として投薬量が提供され、その全てがラクトース一水和物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、二酸化チタン、トラセチン/三酢酸グリセロールおよび酸化鉄の混合物中に被覆される。本発明の本態様の他の具体的な実施態様では、R−フルルビプロフェン、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムから構成されるカプセルである単位投薬形態中の薬学的組成物として投薬量が提供される。
【0023】
関連する態様では、本発明はアルツハイマー病を有する、または有すると疑われる個体におけるアルツハイマー病の減退速度を改善または減少する(すなわち進行を逆転するかまたは遅くする)方法であって、R−フルルビプロフェンを前記個体に投与することを含む方法を提供する。疾患の進行は少なくとも1つのまたは複数のアルツハイマー病マーカーでモニターし得る。具体的な実施態様では、前記投与によりmLあたり約30〜約95μgのCmaxが得られる。より具体的な実施態様では、前記投与によりmLあたり約40〜約80μgのCmaxが得られる。より具体的な実施態様では、前記投与は少なくとも4ヶ月間、少なくとも1日1回続けられる。他の具体的な実施態様では、前記投与は少なくとも8ヶ月間、または少なくとも12ヶ月間、少なくとも1日1回続けられる。具体的な実施態様では、前記疾患マーカーはアミロイドベータペプチド(Aβ)、Aβ42またはタウである。他の具体的な実施態様では、前記R−フルルビプロフェンを1日2回、約400mgの用量で投与する。他の具体的な実施態様では、前記R−フルルビプロフェンを1日2回、約800mgの用量で投与する。
【0024】
第3の態様において、本発明はADに関連するプラーク病変における減退の改善または減少を提供するのに適した、用量あたり約400mg〜約800mgのR−フルルビプロフェンを有する投薬量を提供する。絶食患者に対する単回経口投与により、mLあたり約30〜95μgのCmaxが得られる。1日2回、少なくとも4ヶ月、好ましくは少なくとも8ヶ月、より望ましくは少なくとも1年間の、本実施態様の組成物の経口投与により、プラーク病変における減退の改善または減少が得られる。プラーク病変における減退の減少、すなわち改善が、プラセボで治療した患者と比較して少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より望ましくは少なくとも40%であることが好ましい。プラーク病変は例えば陽電子放出断層撮影法等の様々な技術で評価し得る。経口用量がカプセルまたは錠剤の投薬形態で提供されることが好ましい。本発明の本態様の具体的な実施態様では、R−フルルビプロフェン、薬学的に受容可能な塩、離型剤および任意にその他の成分でなる薬学的組成物として投薬量が提供される。本発明の本態様の他の具体的な実施態様では、R−フルルビプロフェン、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムから構成される錠剤である単位投薬形態の薬学的組成物として投薬量が提供される。本発明の本態様の他の具体的な実施態様では、R−フルルビプロフェン、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムから構成される被覆錠剤である単位投薬形態中の薬学的組成物として投薬量が提供され、それらはすべてラクトース一水和物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、二酸化チタン、トラセチン/三酢酸グリセロールおよび酸化鉄の混合物中で被覆される。
【0025】
関連する態様では、本発明はアルツハイマー病を有する、または有すると疑われる患者におけるアルツハイマー病に関連するプラーク病変の減退を改善または減少する方法であって、前記患者へのR−フルルビプロフェンの投与を含む方法を提供する。具体的な実施態様では、前記用量によりmLあたり約30〜約95μgのCmaxを与える。より具体的な実施態様では、前記CmaxはmLあたり40〜80μgの間である。他の具体的な実施態様では、前記投与は少なくとも1日1回、少なくとも4ヶ月間続けられる。他の具体的な実施態様では、前記投与は少なくとも1日1回、少なくとも8ヶ月または少なくとも12ヶ月間続けられる。他の具体的な実施態様では、前記R−フルルビプロフェンは1日2回、約400mgの用量で投与される。他の具体的な実施態様では、前記R−フルルビプロフェンは1日2回、約800mgの用量で投与される。
【0026】
第4の実施態様では、本発明はこの様な治療を必要とする患者に薬学的組成物を投与することを含むアルツハイマー病の治療法であって、この薬学的組成物が有効量のR−フルルビプロフェンおよび少なくとも1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤、塩または担体を含む治療法を提供する。絶食患者に対する経口投与において、有効量の用量によりmLあたり約30〜95μgのCmaxが得られる。本発明の本態様の組成物の、1日2回、少なくとも4ヶ月、好ましくは少なくとも8ヶ月、より望ましくは少なくとも1年間の経口投与により、認知試験、生化学疾患マーカーの進行、および/またはプラーク病変が特徴である認知機能の減退の改善または減少が得られる。経口用量がカプセルまたは錠剤の投薬形態で提供されることが望ましい。本発明の本態様によれば、R−フルルビプロフェンおよび1つ以上の薬学的に受容可能な塩、賦形剤および担体を有する、アルツハイマー病治療に有効量の薬学的組成物を治療が必要な患者に投与する。本発明の本態様の方法には、軽度から中程度のアルツハイマー病を有すると思われる個体を特定することが含まれる。軽度から中程度のアルツハイマー病を有すると思われる個体を、この様な診断の当業者に可能な任意の方法で診断することができる。例えば、診断はDSM−IV(TR)に従うか、および/またはあり得るADに対するNINCDS−ADRDA基準に一致する。本発明の本態様によれば、軽度から中程度のアルツハイマー病と思われる個体が薬学的組成物の経口用量を服用するが、その量は1日2回(例えば400mgのR−フルルビプロフェンを含む錠剤2錠を1日2回、または400mgのR−フルルビプロフェンを含む錠剤1錠を1日2回)、少なくとも90日間、好ましくは120日間、より好ましくは少なくとも180日間、さらに望ましくは少なくとも365日間である。この様な治療を受ける患者では認知機能の減退の改善または減少、生化学疾患マーカーの進行における減退の改善または減少、および/またはプラーク病変の減退の改善または減少が見られると思われる。認知機能の減退の減少を、ADAS−cog等の認知機能試験を用いて評価することができる。例えば、プラセボで治療された軽度から中程度のアルツハイマー病を有すると思われる個体が一定期間(例えば1年間)の治療後にADAS−cog試験で約5.5ポイント高い得点であると予想されるのに対し、同じ期間中、本発明の組成物で治療された個体がADAS−cogスケールで約2.2ポイント高い得点である場合、例えば認知機能の減退は約60%の改善を示し;または約3.3ポイント高い得点である場合、例えば認知機能の減退は約40%のみの改善を示す。
【0027】
第5の態様では、本発明はこの様な治療が必要である、または望ましい患者に対し薬学的組成物を投与することを含むアルツハイマー病の発症を阻止する方法であって、この薬学的組成物が有効量のR−フルルビプロフェンおよび1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤を含む方法を提供する。絶食患者に対し有効量を経口投与することにより、mLあたり約30〜95μgのCmaxが得られる。1日2回、少なくとも4ヶ月間、好ましくは少なくとも8ヶ月間、より望ましくは少なくとも1年間のR−フルルビプロフェン組成物の経口投与により、認知機能、生化学疾患マーカーの進行および/またはプラーク病変の減退の開始を遅らせる。本実施態様によれば、ADの発症に対する予防治療が望ましい、または必要とする患者に1日2回、約400mg〜約800mgのR−フルルビプロフェンを投与する。経口投与がカプセルまたは錠剤の投薬形態で提供されることが望ましい。予防治療は患者が治療を希望する、または必要とし続ける限り維持されることが好ましい。ADに対する予防治療を必要とする、または所望する個体は、ADを発症するリスク因子を有する患者である。例えば、AD発症のリスク因子は遺伝的因子または環境因子である。ある実施態様では、リスク因子は年齢である。遺伝的リスク因子を個体の家族歴の確認、またはAD発症に対する疾病素因を与える遺伝子を同定する遺伝的試験の実施等、様々な方法で評価することができる。さらに、リスク因子を遺伝的および生化学的マーカーをモニターして評価することができる。
【0028】
第6の態様では、本発明はこのような治療を必要とする患者に有効量のR−フルルビプロフェンおよび1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物を投与することを含むアルツハイマー病の発症を減速する方法を提供し、この方法において、絶食被験体に対し経口投与による有効量の用量により、mLあたり約30〜95μgのCmaxが得られる。1日2回、少なくとも4ヶ月間、好ましくは8ヶ月間、より望ましくは1年間のR−フルルビプロフェン組成物の経口投与により、認知機能、生化学疾患マーカーの進行、および/またはプラーク病変の減退の減速が得られる。本発明の本態様によれば、ADに進行すると思われる軽度認知障害を有する個体が特定される。または、個体がAD発症の前駆期であり得る。アルツハイマー病に進行すると思われる、またはAD発症の前駆期にある軽度の認知障害を有する患者を特定すると、患者に対し予防治療法が処方される。予防治療法には、この様な治療を必要とする、または所望する個体にアルツハイマー病の発症を減速するのに十分な薬学的組成物を投与することが含まれる。本発明の本態様に用いるためのR−フルルビプロフェン組成物は、予防効果を有して慢性的な長期使用に適する様に設計されている。
【0029】
第7の態様では、本発明はこの様な治療を所望する患者における認知減退を治療するための療法を選択する方法を提供する。本態様の方法には認知減退に対するリスク因子の評価が含まれる。リスク因子の評価には病因遺伝子、対立遺伝子および多形の遺伝試験が含まれる。リスク因子はまた脳卒中、脳損傷、年齢および食事等の環境因子を指す。リスク因子または特定の患者に関連する諸因子によって、認知減退治療のための特定の治療法が選ばれる。例えば、APP、PS1またはPS2等の家族性アルツハイマー病遺伝子の突然変異がリスク因子である。認知減退に対するその他のリスク因子は年齢である。頭部外傷も認知減退に対するまた別なリスク因子である。患者のリスク因子に基づき、医師は患者に対する具体的な治療処置または予防治療を処方する。
【0030】
第8の実施態様では、本発明は認知機能を改善する方法に関する。より具体的には、本発明の本態様はアルツハイマー病患者が経験する様な認知減退を経験する患者における認知機能を改善する方法を提供する。本発明は、R−フルルビプロフェンを活性成分として有する認知改善に有効な量の薬学的組成物を投与した場合、病気の結果として認知減退を経験したアルツハイマー患者が認知の改善を経験し得るという発見に基づいている。ある実施態様では、本発明は認知減退を経験する患者において、認知機能を改善する方法を提供する。この方法によれば、治療を必要とする、または所望する個体(例えばアルツハイマー病、または軽度の認知障害を有する患者)に1日あたり約100mg〜1800mgの量のR−フルルビプロフェンを有する組成物を、少なくとも4週間、好ましくは少なくとも4ヶ月間、より好ましくは少なくとも6ヶ月間投与する。本発明で使用される組成物は、1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤、塩または担体と共に調合される。薬学的組成物を好ましくは錠剤またはカプセル単位投薬形態で経口投与することができる。絶食被験体に対し認知改善有効量のR−フルルビプロフェンの単回経口投与することにより、mLあたり約30〜95μgのCmaxが得られる。1日2回(b.i.d.)、少なくとも4週間、好ましくは少なくとも4ヶ月、さらに好ましくは少なくとも6ヶ月、より望ましくは少なくとも1年間のR−フルルビプロフェン組成物の経口投与により、認知試験で特徴付けられる認知機能の改善が得られる。認知機能の改善が、プラセボで治療された患者と比較して統計的に有意であることが好ましい。例えば、ADAS−cog試験が認知試験として用いられた場合、軽度から中程度のアルツハイマー病を有すると思われるプラセボで治療された個体が、特定の期間(例えば1年)の治療後にADAS−cog試験で約5.5ポイント高い得点であると予想されるのに対し、R−フルルビプロフェン組成物で同じ期間治療された個体(軽度から中程度のアルツハイマー病を有する)がADAS−cog尺度で高くない、またはより良い得点(すなわち、低い得点)であると考えられる。経口投与がカプセルまたは錠剤の投薬形態で提供されることが望ましい。本発明の本態様の具体的な実施態様では、投薬量はR−フルルビプロフェン、薬学的に受容可能な塩、離型剤、および任意に別な成分でなる薬学的組成物として提供される。
【0031】
上記に加えて、本発明は以下を提供する:
(項目1)
活性成分としてのR−フルルビプロフェン、および1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的単位投薬形態であって、絶食被験体に経口投与する場合、この薬学的単位投薬形態が、mLあたり約30μg〜約95μgの血漿Cmaxを与える、薬学的単位投薬形態。
(項目2)
約mg400mg〜約800mgのR−フルルビプロフェンを含む、項目1に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目3)
約350mgのR−フルルビプロフェンを含む、項目1に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目4)
約400mgのR−フルルビプロフェンを含む、項目1に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目5)
約450mgのR−フルルビプロフェンを含む、項目1に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目6)
約500mgのR−フルルビプロフェンを含む、項目1に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目7)
約550mgのR−フルルビプロフェンを含む、項目1に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目8)
約600mgのR−フルルビプロフェンを含む、項目1に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目9)
約650mgのR−フルルビプロフェンを含む、項目1に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目10)
約700mgのR−フルルビプロフェンを含む、項目1に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目11)
約800mgのR−フルルビプロフェンを含む、項目1に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目12)
約850mgのR−フルルビプロフェンを含む、項目1に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目13)
上記単位投薬形態が、実質的に(S)−立体異性体を含まないR−フルルビプロフェンを含む、項目1〜12のいずれか1項に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目14)
(S)−フルルビプロフェンが、上記薬学的単位投薬形態中の全フルルビプロフェンの10.0重量%以下である、項目1に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目15)
(S)−フルルビプロフェンが、上記薬学的単位投薬形態中の全フルルビプロフェンの1.0重量%以下である、項目1に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目16)
上記個体に項目1、2または13のいずれか1項に記載の薬学的単位投薬形態を投与することを含む、神経変性障害を有する個体の治療法であって、この薬学的単位投薬形態を、認知試験において改善または減退の減少を生じるに十分な時間と量で投与する、治療法。
(項目17)
上記神経変性障害がアルツハイマー病である、項目16に記載の方法。
(項目18)
上記薬学的単位投薬形態を少なくとも30日間投与する、項目16に記載の方法。
(項目19)
上記薬学的単位投薬形態を少なくとも60日間投与する、項目16に記載の方法。
(項目20)
上記薬学的単位投薬形態を少なくとも90日間投与する、項目16に記載の方法。
(項目21)
上記薬学的単位投薬形態を少なくとも120日間投与する、項目16に記載の方法。
(項目22)
上記薬学的単位投薬形態を少なくとも150日間投与する、項目16に記載の方法。
(項目23)
上記薬学的単位投薬形態を少なくとも180日間投与する、項目16に記載の方法。
(項目24)
上記薬学的単位投薬形態を少なくとも210日間投与する、項目16に記載の方法。
(項目25)
上記薬学的単位投薬形態を少なくとも240日間投与する、項目16に記載の方法。
(項目26)
上記薬学的単位投薬形態を少なくとも300日間投与する、項目16に記載の方法。
(項目27)
上記薬学的単位投薬形態を少なくとも400日間投与する、項目16に記載の方法。
(項目28)
上記薬学的単位投薬形態を少なくとも500日間投与する、項目16に記載の方法。
(項目29)
上記薬学的単位投薬形態を少なくとも600日間投与する、項目16に記載の方法。
(項目30)
上記認知試験がADAS−cog試験である、項目16に記載の方法。
(項目31)
上記認知試験がCDR−sb試験である、項目16に記載の方法。
(項目32)
認知機能の減退の上記減少が、ADAS−cog試験で測定して少なくとも約20%〜60%である、項目16に記載の方法。
(項目33)
上記個体が、軽度から中程度のアルツハイマー病を有すると診断された人である、項目16に記載の方法。
(項目34)
上記個体が、Mini Mental State Exam(MMSE)で26〜10(26〜10を含む)までのスコアを有する、項目16に記載の方法。
(項目35)
上記個体が、MMSEで26〜19(26〜19を含む)までのスコアを有する、項目16に記載の方法。
(項目36)
上記個体が、MMSEで18〜10(18〜10を含む)までのスコアを有する、項目16に記載の方法。
(項目37)
上記個体が、上記神経変性障害のための薬剤を現在服用しており、この薬剤はフルルビプロフェンを含まない、とする項目16に記載の方法。
(項目38)
上記個体の年齢が55〜80歳である、項目16に記載の方法。
(項目39)
上記個体が、アルツハイマー病治療用の第2の薬剤を現在服用している、項目16に記載の方法。
(項目40)
上記個体が、R−フルルビプロフェンを服用する前にアルツハイマー病治療用の第2の薬剤を服用していた、項目16に記載の方法。
(項目41)
上記第2の薬剤がアセチルコリンエステラーゼインヒビターである、項目39または40に記載の方法。
(項目42)
上記アセチルコリンエステラーゼインヒビターが、ガランタミン(Galanthamine)、ガランタミン(galantamine)、レミニル、E2020、ドネペジル、アリセプト、フィソスチグミン、タクリン、テトラヒドロアミノアクリジン、THA、リバスチグミン、フェンセリン、メトリホネート、プロメン、フペラジン、または上記の1つ以上の組み合わせである、項目41に記載の方法。
(項目43)
上記個体がアルツハイマー病治療用の非薬剤物質を併用している、項目16に記載の方法。
(項目44)
R−フルルビプロフェンを服用する前に上記個体がアルツハイマー病治療用の非薬剤物質を服用している、項目16に記載の方法。
(項目45)
上記非薬剤物質が抗酸化剤である、項目43または44に記載の方法。
(項目46)
上記抗酸化剤がビタミンCである、項目45に記載の方法。
(項目47)
上記ビタミンCを、R−フルルビプロフェンの用量あたり500mg〜1000mgの用量で服用する、項目46に記載の方法。
(項目48)
上記抗酸化剤がビタミンEである、項目45に記載の方法。
(項目49)
上記ビタミンEを、R−フルルビプロフェンの用量あたり400IU〜800IUの用量で服用する、項目46に記載の方法。
(項目50)
上記個体が、癲癇、局所脳病変、任意の主要な精神障害に対するDSM−IV(TR)基準、フルルビプロフェンまたは他のNSAIDに対する過敏症の病歴、輸血または手術を必要とする上部GI出血の病歴、活動性胃および十二指腸潰瘍疾患、NSAID関連潰瘍の病歴、活動性悪性腫瘍、皮膚の基底膜癌腫または扁平細胞癌腫を除く活動性悪性腫瘍の病歴、慢性または急性腎臓、肝臓または代謝障害、制御不能な心臓状態、現在の抗凝固剤治療、および任意のCYP2C9インヒビターによる現在の治療でなる群より選ばれる状態を有さない、項目16に記載の方法。
(項目51)
錠剤形態である、項目1に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目52)
上記Cmaxが、投与後1.75時間と3.75時間との間で達成される、項目1に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目53)
上記Cmaxが、投与後1.0時間と3.0時間との間で達成される、項目1に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目54)
活性成分としてR−フルルビプロフェンと1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤とを含む薬学的単位投薬形態であって、絶食被験体に経口投与した場合、この薬学的投与量は、約100μM〜約600μMの血漿Cmaxを与える、単位投薬形態。
(項目55)
上記Cmaxが約160μm〜約320μmである、項目54に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目56)
上記Cmaxが約200μm〜約240μmである、項目54に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目57)
活性成分としてR−フルルビプロフェンと1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤とを含む薬学的単位投薬形態であって、絶食被験体に経口投与した場合、この薬学的単位投薬形態がmLあたり約0.05μg〜約7.5μgの脳脊髄液中のCmaxを与える、単位投薬形態。
(項目58)
上記脳脊髄膜中のCmaxが、mLあたり約0.08μg〜4.5μgである、項目57に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目59)
上記脳脊髄膜中のCmaxが、mLあたり約0.20μg〜3.0μgである、項目57に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目60)
活性成分としてR−フルルビプロフェンと1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤とを含む薬学的単位投薬形態であって、絶食患者に経口投与した場合、この薬学的単位投薬形態が約2μM〜約30μMの脳脊髄液中のCmaxを与える、単位投薬形態。
(項目61)
上記脳脊髄液中のCmaxが約3.2μM〜約20μMである、項目60に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目62)
上記脳脊髄液中のCmaxが約4μM〜約12μMである、項目60に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目63)
上記Cmaxが、投与後約1時間〜約3.75時間で達成される、項目1または54に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目64)
上記Cmaxが、投与後約1.75時間〜約3.75時間で達成される、項目63に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目65)
上記Cmaxが、投与後約1.0時間〜約3.0時間で達成される、項目63に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目66)
上記Cmaxが、投与後約1時間〜約6時間で達成される、項目57または60に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目67)
R−フルルビプロフェンを必要とする個体にR−フルルビプロフェンを投与する方法であって、投与後1.0時間〜3.75時間にmLあたり約25μg〜約150μgの血漿Cmaxを達成するのに十分な量で、R−フルルビプロフェンをこの個体に経口投与することを含む、方法。
(項目68)
上記Cmaxが、mLあたり約40〜約95μgである、項目67に記載の方法。
(項目69)
上記Cmaxが、mLあたり約50〜約80μgである、項目67に記載の方法。
(項目70)
上記血漿Cmaxが、投与後1.0〜3.75時間で達成される、項目67に記載の方法。
(項目71)
上記血漿Cmaxが、投与後1.75時間〜3.75時間で達成される、項目67に記載の方法。
(項目72)
上記血漿Cmaxが、投与後1.0時間〜3.0時間で達成される、項目67に記載の方法。
(項目73)
R−フルルビプロフェンを必要とする個体にR−フルルビプロフェンを投与する方法であって、投与後1.0時間〜3.75時間に約100μM〜約600μMの血漿Cmaxを達成するのに十分な量で、R−フルルビプロフェンをこの個体に経口投与する、方法。
(項目74)
上記Cmaxが約160μM〜約380μMである、項目73に記載の方法。
(項目75)
上記Cmaxが約200μM〜約240μMである、項目73に記載の方法。
(項目76)
上記血漿Cmaxが投与後1.0時間〜3.75時間で達成される、項目73に記載の方法。
(項目77)
上記血漿Cmaxが投与後1.75時間〜3.75時間で達成される、項目73に記載の方法。
(項目78)
上記血漿Cmaxが投与後1.0時間〜3.0時間で達成される、項目73に記載の方法。
(項目79)
R−フルルビプロフェンを必要とする個体にR−フルルビプロフェンを投与する方法であって、投与後約1.0時間〜約6時間にmLあたり約0.05μg〜約7.5μgの脳脊髄膜中のCmaxを達成するのに十分な量で、R−フルルビプロフェンをこの個体に経口投与する、方法。
(項目80)
上記脳脊髄液中のCmaxが、mLあたり約0.08〜約4.5μgである、項目79に記載の方法。
(項目81)
R−フルルビプロフェンを必要とする個体にR−フルルビプロフェンを投与する方法であって、投与後約1.0時間〜約6時間に約2μM〜約30μMの脳脊髄液中のCmaxを達成するのに十分な量で、R−フルルビプロフェンをこの個体に経口投与する、方法。
(項目82)
上記脳脊髄液中のCmaxが、約3.2μM〜約20μMである、項目81に記載の方法。
(項目83)
上記脳脊髄液中のCmaxが、約4.0μM〜約12μMである、項目81に記載の方法。
(項目84)
上記個体が軽度から中程度の痴呆を示す、項目67、73、79または81のいずれか1項に記載の方法。
(項目85)
上記痴呆がアルツハイマー病である、項目84に記載の方法。
(項目86)
約400mgのR−フルルビプロフェン、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムから構成される、R−フルルビプロフェンの薬学的単位投薬形態。
(項目87)
約200mgのR−フルルビプロフェン、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムから構成される、R−フルルビプロフェンの薬学的単位投薬形態。
(項目88)
さらに被覆を含有する、項目83または84に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目89)
ゼラチン中にカプセル化されている、項目83または84に記載の薬学的単位投薬形態。
(項目90)
上記薬学的単位投薬形態が400mgであり、1日2回投与する、項目16に記載の方法。
(項目91)
上記薬学的単位投薬形態が400mgであり、1日2回投与する、項目16に記載の方法。
(項目92)
上記量が400mgである、項目67、73、79または81のいずれか1項に記載の方法。
(項目93)
上記量が800mgである、項目67、73、79または81のいずれか1項に記載の方法。
【0032】
本発明の前記および他の利点と特徴、およびそれらが実施される方法は、好ましい例示実施態様を説明する付随実施例に関連して採用された以下の本発明の詳細な説明を考慮して、より容易に明らかになると思われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(5.発明の詳細な説明)
一般に、本発明はR−フルルビプロフェンを活性成分として有する薬学的組成物に関する。本発明は、一定投薬量の前記薬学的組成物を被験体に投与すると、本発明の方法に特に有用である薬物動態および治療特性を提供する経口組成物を包含する。本発明はまた、この様な治療を所望する、または必要とする個体による、本発明の治療法に従う本発明の組成物の使用を包含し、その結果AD等の神経変性障害に伴う認知機能、生化学疾患マーカーの進行、および/またはプラーク病変における減退の改善または減少をもたらす。本発明の組成物は1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤、塩または担体で調合される。本発明の薬学的組成物は経口で、好ましくは錠剤またはカプセル投薬形態で送達される。本発明のR−フルルビプロフェン組成物を、アルツハイマー病等の神経変性障害に対する治療、阻止および予防法に使用することができる。
【0034】
(5.1 定義)
本明細書で用いる用語「症状の増進を阻止する」とは、症状を増進または悪化させないことと、症状の増進速度を減少させることの双方を指す。例えば、症状を特定の疾患マーカー、すなわちあるタンパク質の量として測定できる。本明細書に示す定義によれば、増進を阻止するとは、そのタンパク質の量が増加しない、またはそれが増加する速度が減少することを意味する。
【0035】
本明細書で用いる用語「アルツハイマー病を治療する」とは、認知試験で診断された軽度のアルツハイマー病の少なくとも1つの指数を有している、または有する患者の病気の進行を遅くする、または反転することを言う。アルツハイマー病の治療にはこの病気の1つまたは複数の症候を減少、低減または改善することが含まれる。
【0036】
本明細書で用いる用語「アルツハイマー病を阻止する」とは、病気の発症または1つまたは複数のその症状を遅くする、または停止することを指す。特にその用語は、1つまたは複数のアルツハイマー病の兆候の発症を遅くする、または停止することを意味し、この兆候の発症を遅くするかまたは停止することをしない場合、この兆候は、1つまたは複数の認知試験で少なくとも軽度アルツハイマー病の診断をもたらす。
【0037】
本明細書で用いる用語「消化管毒性の減少した」とは、R−フルルビプロフェンの投与が、対応するラセミ体またはS−フルルビプロフェンよりヒトまたは他の哺乳類の消化管に対し潰瘍原性が少ないことを意味する。潰瘍原性活性の1つの尺度は小腸潰瘍スコアである。ラットをR−フルルビプロフェンの経口投与で30日間、毎日処置する。30日の終わりに、ラットを殺し腸を摘出する。粘膜中の相当なサイズの病変部を測定する。測定された潰瘍の直径の和に等しい累積スコアが潰瘍スコアとして報告される。対照ラットのスコアに基本的に等しい潰瘍スコア、または対応するS−光学異性体またはNSAIDラセミ体と比較して、少なくとも50〜90%、好ましくは少なくとも80%の潰瘍スコアの減少が、消化管毒性における減少と考えられる。他の実施態様では、用語「消化管毒性の減少した」とは、望ましくない消化管毒性副作用が減少する様に、より低い量のフルルビプロフェンを投与する能力を指す。
【0038】
本明細書で用いる用語「R−フルルビプロフェン」とは、非ステロイド性抗炎症薬のR−光学異性体を指す。R−フルルビプロフェンを実質的に純粋なR−光学異性体として、またラセミ混合物の一部として投与し得る。好ましい実施態様では、フルルビプロフェンのS−光学異性体に伴う副作用を避けるため、R−フルルビプロフェンの量を調節する。本明細書で用いる用語「実質的に(S)−立体異性体を含まない」とは、フルルビプロフェンのS−光学異性体に対しR−光学異性体の割合が多い組成物を意味する。好ましい実施態様では、本明細書で用いる用語「実質的にS−立体異性体を含まない」とは、好ましい実施態様では組成物が少なくとも90重量%のR−フルルビプロフェンと10重量%以下のS−フルルビプロフェンを含む組成物を、より好ましい実施態様では少なくとも95重量%のR−フルルビプロフェンと5重量%以下のS−光学異性体を含む組成物を意味する。これらの割合は組成物中に存在するフルルビプロフェンの全量に基づく。ある好ましい実施態様では、用語「実質的にS−立体異性体を含まない」とは、組成物が約99重量%のR−フルルビプロフェンと1%以下のS−フルルビプロフェンとを含むことを意味する。他の好ましい実施態様では、用語「実質的にS−立体異性体を含まない」とは、存在するフルルビプロフェンの全量に対し組成物が99重量%以上のフルルビプロフェンのR−光学異性体を含むことを意味する。用語「フルルビプロフェンの実質的に光学的に純粋なR−異性体」、「フルルビプロフェンの光学的に純粋なR−異性体」、「光学的に純粋なR−フルルビプロフェン」および「フルルビプロフェンのR−異性体」も、前記の量に包含される。用語「実質的に含まない」とは、組成物中にS−フルルビプロフェンが存在したとしても、その量はその組成物を投与した患者に副作用を誘発するのに不十分であるか、またはせいぜい患者にとって受容可能かであるか、有益な効果(単数または複数)が上回ることを示す。
【0039】
本明細書で用いる用語「単位投薬形態」とは、ヒトの患者に対し単位投薬量として適当なカプセルまたは錠剤等の物理的に独立した単位を指す。各単位は、本発明の結果として所望の治療効果を与える所望の薬物動態プロファイルを生じることが見出された、一定量のR−フルルビプロフェンを含む。投薬量単位は、少なくとも1種の薬学的に受容可能な担体、塩、賦形剤、またはその組み合わせと一緒にしたR−フルルビプロフェンで構成される。
【0040】
本明細書で用いる用語「用量」または「投薬量」とは、個体が1回で服用する、または投与される活性成分の量を指す。例えば、800mgのR−フルルビプロフェンの用量とは、1日2回の用法・用量の場合は、個体が朝と夕方に、800mgのR−フルルビプロフェンを服用する状況を指す。800mgのR−フルルビプロフェン用量を2回以上の用量単位、例えば2個の400mgのR−フルルビプロフェン錠剤または2個の400mgのR−フルルビプロフェンカプセルに分割することができる。
【0041】
本明細書で用いる用語「約」とは、+/−20%の範囲を示す。例えば、「約400mgのR−フルルビプロフェン」とは320mg〜480mgのR−フルルビプロフェンの範囲を意味する。
【0042】
本明細書で用いる、アルツハイマー病またはその症状またはマーカー等の病気を特徴付けるために用いられた場合の用語「減退」とは、より進行が少ない状態からより進行した状態までの期間にわたる病気、その症状またはマーカーの悪化または進行を意味する。アルツハイマー病の場合、減退は挙動、認知、病状の生化学または臨床パラメータの1つまたは複数の重症度の悪化または増加を示す。「減退」はまた、実際の生のスコアが増加するか否かにかかわらず、状態の悪化を示す認知試験の1つまたは複数のスコアの進行を示す。
【0043】
本明細書で用いる「アルツハイマー病」と「AD」とは同じ意味である。
【0044】
(5.2 患者集団)
アルツハイマー病等の神経変性障害を有するか、有すると疑われる任意の個体を、本発明の組成物と方法を用いて治療し得る。本発明の組成物と方法から特に恩恵を受ける個体には、例えばNINCDS−ADRDA基準等の医学的に承認された診断に従って、軽度から中程度のアルツハイマー病であると診断された個体が含まれる。病気の進行は、例えば以下の認知機能の医学的に承認された尺度に従う:例えば、Mini−Mental State Exam(MMSE;Mohs et al.Int.Psychogeriatr.8:195−203(1996)参照)];ADAS−cog(Alzheimer Disease Assessment Scale−Cognitive;Galasko et al.Alzheimer Dis Assoc Disord,11 suppl 2:S33−9(1997)参照);Behavioral Pathology in Alzheimer Disease Rating Scale (BEHAVE−AD);Blessed Test;CANTAB−Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery;CERAD(The Consortium to Establish a Registry for Alzheimer‘s Disease) Clinical and Neuropsychological Test(MMSEを含む);Clock Draw Test;Cornell Scale for Depression in Dementia(CSDD);Geriatric Depression Scale(GDS);Neuropsychiatric Inventory(NPI);the 7 Minute Screen;the Alzheimer’s Disease Cooperative Study Activities of Daily Living scale(ADCS−ADL);McKhann et al.:Neurology 34:939−944(1984)参照;DSM−IV(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders−Fourth Edition(DSM−IV)、American Psychiatric Association出版、Washington D.C.1994);またはNINCDS−ADRDA基準(Folstein et al.J.Psychiatr.Res.12:189−198(1975)参照)。ADを有する可能性があると診断された個体を、MMSE等の公認された認知機能の尺度により軽度から中程度の病態を有すると特定することができる。さらに、脳の異なった領域を評価し、プラークおよび変化の頻度を予測することが可能な方法も用いることができる。これらの方法はBraak et al.Acta Neuropathol.82:239−259(1991);Khachaturian Arch.Neuro.42:1097−1105(1985);Mirra et al.(1991)、Neurology 41:479−486;およびMirra et al.Arch Pathol Lab Med 117:132−144(1993)により記述されている。ADの重症度は一般に前記の初期試験の1つで決定される。例えば、26〜19のMMSEスコアは軽度のADを示し、18〜10のスコアは中程度のADを示す。
【0045】
これらの試験に基づくアルツハイマー病の診断は、仮定または可能性として記録され、1つまたは複数の別な基準で任意で支持され得る。例えば、アルツハイマー病の診断はADの家族歴の証拠、低速波活性の増加等のEEGの非特異的変化、連続観察で裏付けられるCT上の進行性脳萎縮、鬱病、不眠症、失禁、妄想、幻想、幻覚、破滅的単語失語症、情緒的または身体的噴出、性障害、体重減少、および/または筋肉緊張増加、ミオクローノスまたは歩行障害等の付随神経異常などの随伴症状の証拠により支持される。
【0046】
さらに、一般にADに関連するアミロイドの沈着を、Pittsburgh化合物B(PIB)等のアミロイド特異性トレーサーを用いる陽電子放出断層撮影法(PET)を用いて検出し得る。Klunk et al.Ann.Neurol.55(3):306−309(2004)参照。正常脳組織と比較して、例えばPIBにより可視化される前頭、頭頂、側頭および後頭皮質中、および線条体中のアミロイド沈着の増加は、ADの診断を助ける。一般に、アミロイド沈着数および密度が増加すると、ADがより進行していることを示す。
【0047】
1つ以上の非−AD神経変性障害または病状が以前にあってもなくても、個体が同時にADを有する、またはその後ADを有すると診断されれば、本発明は軽度から中程度のADを有する個体の治療を包含することが好ましい。
【0048】
本発明の化合物と方法は、ADに対する投薬療法を以前に受けた個体の他、以前にADに対する投薬療法を受けたことがない個体に対しても有用であり、またR−フルルビプロフェン以外のADに対する投薬療法を現在受けている個体、およびR−フルルビプロフェン以外のADに対する投薬療法を受けていない個体に対しても有用である。
【0049】
どのような年齢の個体でも、本発明の薬学的組成物により本発明の方法で治療し得るが、本発明は55歳〜80歳の間の年齢の個体におけるアルツハイマー病を治療または防止するための好ましい実施態様を包含する。様々な実施態様において、本発明の処置または予防法で治療される個体は、年齢55〜70歳、年齢60〜80歳、年齢55〜65歳、年齢60〜75歳、年齢65〜80歳、年齢55〜60歳、年齢60〜65歳、年齢65〜70歳、年齢70〜75歳、年齢75〜80歳、または年齢80歳以上である。
【0050】
従って、ある実施態様では、本発明は有効量のR−フルルビプロフェンの投与を含む、アルツハイマー病を有することが分かっている、またはアルツハイマー病を有することが疑われる個体の治療法を提供する。具体的な実施態様では、前記個体は軽度から中程度のアルツハイマー病を有していると診断される。より具体的な実施態様では、前記個体は認知試験により軽度から中程度のアルツハイマー病を有すると診断される。より具体的な実施態様では、前記認知試験はMini−Mental State Exam(MMSE)である。さらに具体的な実施態様では、前記MMSEで前記個体は26〜19(26と19を含む)までのスコアを有する。他の具体的な実施態様では、前記MMSEで前記個体は18〜10(18と10を含む)までのスコアを有する。他の具体的な実施態様では、前記MMSEで前記個体は26〜10(26と10を含む)までのスコアを有する。
【0051】
他の実施態様では、本発明は有効量のR−フルルビプロフェンの投与を含む、アルツハイマー病を有することが分かっている、またはアルツハイマー病を有することが疑われる個体の治療法であって、前記個体がアルツハイマー病の治療のための第2の薬剤を同時に服用する方法を提供する。さらに別な実施態様では、前記個体は軽度から中程度のアルツハイマー病を有すると診断されている。具体的な実施態様では、前記第2の薬剤はアセチルコリンエステラーゼ(AChE)インヒビターである。さらに具体的な実施態様では、前記AChEインヒビターはガランタミン(ガランタミン、レミニル);E2020(ドネペジル、アリセプト);フィソスチグミン;タクリン(テトラヒドロアミノアクリジン、THA);リバスチグミン;フェンセリン;メトリホネート(プロメン);またはフペラジン、またはそれらの任意の組み合わせである。他の実施態様では、前記第2の薬剤はアセチルコリンエステラーゼインヒビター以外の薬剤である。好ましい実施態様では、本発明の方法または組成物はアリセプトによる治療を行っている患者または個体に使用される。本発明はまた、従来のAD治療で難治性、またはその治療で改善を示さない患者の治療法を包含する。
【0052】
他の実施態様では、前記個体はアルツハイマー病の治療のために非医薬物質を併用している。具体的な実施態様では、前記非医薬物質は抗酸化剤である。より具体的な例では、前記抗酸化剤はビタミンCまたはビタミンEである。さらに具体的な実施態様では、前記ビタミンCはR−フルルビプロフェンの用量あたり500〜1000mgの用量で服用される。さらに別な実施態様では、前記ビタミンEはR−フルルビプロフェンの用量あたり400〜800IUの用量で服用される。この点に関して、本発明はアルツハイマー病の治療に対する補助剤としての抗酸化剤であって、基本的に栄養補助剤でない1つ以上のこの様な抗酸化剤の使用を包含する。
【0053】
他の実施態様では、本発明は有効量のR−フルルビプロフェンの投与を含む、軽度から中程度のアルツハイマー病を有すると診断された個体の治療法であって、前記個体がR−フルルビプロフェンを服用する前にアルツハイマー病治療用の第2の薬剤を服用している方法を提供する。具体的な実施態様では、前記第2の薬剤はアセチルコリンエステラーゼ(AChE)インヒビターである。より具体的な実施態様では、前記AChEインヒビターはガランタミン(ガランタミン、レミニル);E2020(デネペジル、アリセプト);フィソスチグミン;タクリン(テトラヒドロアクリジン、THA);リバスチグミン;フェネセリン;メトリホネート(プロメン);またはフペラジン;または前記の任意の組み合わせである。他の実施態様では、前記第2の薬剤はアセチルコリンエステラーゼインヒビター以外の薬剤である。
【0054】
他の実施態様では、前記個体はR−フルルビプロフェンを服用する前にアルツハイマー病治療用の非薬剤物質を服用している。具体的な実施態様では、前記非薬剤物質は抗酸化剤である。より具体的な実施態様では、前記抗酸化剤はビタミンCまたはビタミンEである。さらに具体的な実施態様では、前記ビタミンCを用量あたり500〜1000mgの用量で服用する。他のさらに具体的な実施態様では、前記ビタミンEを用量あたり400〜800IUの用量で服用する。この点に関し、本発明はアルツハイマー病の治療に対する補助剤としての抗酸化剤であって、基本的に栄養補助剤でない1つ以上のこの様な抗酸化剤の使用を包含する。
【0055】
アルツハイマー病を有する、または有すると疑われる如何なる個体も本明細書の何れかに記載のR−フルルビプロフェンで治療し得るが、R−フルルビプロフェンの使用が特に有効なある種の患者のサブ集団を特定し得る。例えば、本発明は以下を有さない個体にR−フルルビプロフェンが使用される好ましい方法を包含する:(1)過去2年間の癲癇、前頭部外傷、意識を失う頭部負傷、および/または傷害直後の錯乱の病歴;(2)精神病、大うつ病、躁鬱病、アルコールまたは薬物中毒を含む任意の重大な精神病に対するDSM−IV(TR)基準;(3)COX−2特異的インヒビターを含むフルルビプロフェンまたは他のNSAIDに対する過敏症の病歴;(4)過去3年間の輸血または外科手術を必要とする上部消化管出血の病歴;(5)活動性胃および十二指腸潰瘍疾患;(6)NSAID関連潰瘍の病歴;(7)皮膚の基底細胞癌腫または扁平細胞癌腫を除く、活動性悪性腫瘍または悪性腫瘍の病歴;(8)クレアチニン>1.5mg/dL、AST>2.5×正常の上限(ULN)、またはALT>2.5×ULNで定義される慢性または急性腎臓、肝臓または代謝性疾患;未治療の心臓疾患(New York Heart Association クラスIIIまたはIV);(9)ワーファリン等の現在の抗凝固剤治療;(10)任意のCYP2C9インヒビターによる現在の治療(例えばアミオダロン、フルコナゾール、フルボキサミン、イソニアジド、フェニルブタゾン、プロベニシド、スルファメトキサゾール、スルファフェナゾール、トリメトプリム、ザフィルルカスト、ダンシェン(Salvia miltiorrhiza);ナガバクコ)またはCYP2C9基質フルバスタチン、トルブタミドまたはグリブリド(グリベンクラミド);または任意の用量のNSAIDまたはアスピリン>325mg/日の慢性使用が見られない個体。
【0056】
また別な実施態様では、本発明は有効量のR−フルルビプロフェンを投与することを含む、中程度の認知障害(MCI)を有することが疑われる個体における認知減退を遅らせる方法を提供する。中程度の認知障害は、個体の特定の年齢に対し予想されるよりは大きいが、アルツハイマー病の可能性に対し現在受け入れられる定義には合致しない記憶喪失が特徴である、正常な老化とアルツハイマー病との間の臨床状態である。例えばPeterson et al.Arch.Neurol.58:1985−1992(2001);Peterson Nature Rev.2:646−653(2003);およびMorris et al.J.Mol.Neuro.17:101−118(2001)参照。従って、本実施態様によれば、MCIを有すると疑われる、またはMCIと診断される個体を、用量あたり400mg〜約800mgのR−フルルビプロフェンを有する組成物で1日2回、少なくとも4週間、少なくとも4ヶ月、好ましくは少なくとも8ヶ月、より好ましくは少なくとも1年間治療する。具体的には、MCIを有する患者は最初に記憶喪失を訴えるか、記憶喪失を示す。患者と共にいる個体が記憶欠損を確認することが好ましい。さらに、より広範囲の認知障害を示す一般的な認知が完全に損なわれておらず、重大な障害がないため日常生活は影響されない場合があり、患者は痴呆になってはいない。本実施態様に従って治療される、MCIを有する、またはMCIを有すると疑われる個体は、認知減退および/またはAD進行の可能性を遅らせ得ると期待され得る。
【0057】
(5.3 投薬量)
本発明は、用量あたり約400mg〜約800mgのR−フルルビプロフェンを含む投与量により、軽度から中程度のADの治療に有効であると信じられるPKプロファイルが得られると言う発見に基づいている。理論に制約されず、得られたPKプロファイルが治療効果を最大にするが副作用を最小にし、その結果患者に最大の恩恵を与えると信じられる。用量は、約350mgのR−フルルビプロフェン、約400mgのR−フルルビプロフェン、450mgのR−フルルビプロフェン、500mgのR−フルルビプロフェン、550mgのR−フルルビプロフェン、600mgのR−フルルビプロフェン、650mgのR−フルルビプロフェン、700mgのR−フルルビプロフェン、750mgのR−フルルビプロフェン、800mgのR−フルルビプロフェンまたは850mgのR−フルルビプロフェンの単回または反復投与(すなわち錠剤またはカプセル)で、1日2回提供され得る。用量は400mgであることが好ましく、本発明の好ましい組成物は、例えば錠剤またはカプセル中に400mgのR−フルルビプロフェンと、経口投与に適した担体または媒体を含む。他の好ましい組成物は800mgのR−フルルビプロフェンであり、本発明の好ましい組成物は、例えば錠剤またはカプセル中に400mgのR−フルルビプロフェンと、経口投与に適した担体または媒体を含む。組成物が実質的にS−フルルビプロフェンを含まないことが好ましい。
【0058】
ある実施態様では、絶食被験体への単回経口投与により、用量あたり約25〜150μg/mL、好ましくは用量あたり30〜95μg/mLのCmaxが得られる。本発明の組成物を絶食被験体へ単回投与することにより、約200時間・μg/mL〜約600時間μg/mLのAUC(濃度対時間曲線の下の面積;全薬剤曝露)が得られる。tmax(Cmaxへの時間)は約0.50〜約3.75時間、または約0.75〜約3時間、または約1.00〜約3.75時間であることが好ましい。tmaxが投与後約2時間で達成されることが好ましい。t1/2(半減期)は約3.75〜約8.5時間であることが好ましい。または、低用量療法では個体に約200mgの用量のR−フルルビプロフェンが提供される。例えば低用量を400〜400b.i.d.投与後に用いることができる。
【0059】
少なくとも4ヶ月間、好ましくは8ヶ月間、より好ましくは1年間の用量の、1日2回の経口投与により、認知機能、生化学疾患マーカーの進行および/またはプラーク病変の減退の改善または減少が得られる。
【0060】
本発明の組成物が実質的にフルルビプロフェンのS−立体異性体を含まないことが望ましい。ある態様では、実質的にS−立体異性体を含まないことは、前記薬学的組成物中の全フルルビプロフェン(S+Rフルルビプロフェン)のうち、少なくとも90重量%のR−フルルビプロフェンと10重量%以下のS−フルルビプロフェンを意味する。他の態様では、実質的にS−立体異性体を含まないことは、薬学的組成物中の全フルルビプロフェン(S+Rフルルビプロフェン)のうち、少なくとも95重量%のR−フルルビプロフェンと5重量%以下のS−フルルビプロフェンを意味する。さらに別な態様では、実質的にS−立体異性体を含まないことは、薬学的組成物中の全フルルビプロフェン(S+Rフルルビプロフェン)のうち、少なくとも99重量%のR−フルルビプロフェンと1重量%以下のS−フルルビプロフェンを意味する。さらに別な態様では、実質的にS−立体異性体を含まないことは、薬学的組成物中の全フルルビプロフェン(S+Rフルルビプロフェン)のうち、少なくとも99.9重量%のR−フルルビプロフェンと0.1重量%以下のS−フルルビプロフェンを意味する。ある態様では、好ましい投薬形態は錠剤である。他の態様では、好ましい投薬形態はカプセルである。他の態様では、組成物は認知機能、生化学疾患マーカーの進行、プラーク病変、生活指標の質および/または任意の疾患パラメータの組み合わせの減退の改善または減少を与える。
【0061】
認知機能の減退を、認知試験で特徴付けることができる。認知機能の減退がプラセボで治療した個体と比較して少なくとも25%であることが好ましく、より好ましくは少なくとも40%、さらに好ましくは少なくとも60%である。例えば、軽度から中程度のアルツハイマー病を有すると思われる、プラセボで治療した個体が一定期間(例えば1年間)のADAS−cog試験で約5.5ポイント高いスコアであると予想されるのに対し、同じ期間中、本発明の組成物で治療した個体はADAS−cog試験で約3,3ポイント高いスコアである、すなわち未治療の個体に対し認知機能で60%の減退を示す、または2.2ポイント高いスコアである、すなわち同じ期間中治療した場合、未治療の個体に対し認知機能の40%の減退を示す。
【0062】
本発明の本態様の具体的な実施態様では、用量はR−フルルビプロフェン、薬学的に受容可能な塩、離型剤、およびその他の任意の成分でなる薬学的組成物として提供される。本発明の本実施態様の他の具体的な実施態様では、用量はR−フルルビプロフェン、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムから構成される錠剤である薬学的組成物として提供される。本発明の本態様の他の具体的な実施態様では、用量はR−フルルビプロフェン、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムから構成されるカプセルの薬学的組成物として提供され、その全てがラクトース一水和物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、二酸化チタン、トラセチン/三酢酸グリセロールおよび酸化鉄中にカプセル化される。
【0063】
(5.4 PKプロファイル)
本発明はR−フルルビプロフェンの個体、例えば軽度から中程度のADを有する個体への投与であって、所望の薬物動態プロファイル、例えば一定期間中の血漿中のR−フルルビプロフェン濃度を得るような投与を提供する。この様な好ましい薬物動態プロファイル、および/またはエンドポイントは、特定の用量、例えば1日に1回または2回の400mgまたは800mgの投与で達成されるか、または体重、体脂肪率、代謝、NSAIDの服用等の因子を考慮した、特定の服用者に対し個別に処方した用量の投与により達成される。
【0064】
従って、ある実施態様では、本発明は個体に対するR−フルルビプロフェンの投与法であって、前記R−フルルビプロフェンがmLあたり約25〜約150μg血漿Cmaxとなるのに十分な量で投与され、前記個体がADを有すると分かっているか、ADを有すると疑われている場合の方法を提供する。より具体的な実施態様では、前記血漿CmaxはmLあたり約30〜約95μgである。他のより具体的な実施態様では、前記CmaxはmLあたり約40〜約80μgである。他の実施態様では、前記Cmaxは約100μMと約600μMとの間である。より具体的な実施態様では、前記Cmaxは約160μM〜約380μMである。他のより具体的な実施態様では、前記Cmaxは約170μM〜約240μMである。具体的な好ましい実施態様では、前記個体は軽度から中程度のADを有する。
【0065】
他の実施態様では、本発明はR−フルルビプロフェンを個体に投与する方法であって、前記R−フルルビプロフェンが脳脊髄液中でmLあたり約0.05〜約7.5μgのCmaxとなるのに十分な量で投与され、前記個体がADを有することが分かっている、または有することが疑われる場合の方法を提供する。他の実施態様では、前記CmaxはmLあたり約0.08〜約4.5μgである。他の実施態様では、本発明は個体にR−フルルビプロフェンを投与する方法であって、前記R−フルルビプロフェンが脳脊髄液中でmLあたり約2〜約30μM、約3.2μM〜約20μM、または約4μM〜約12μMのCmaxとなるに十分な量が投与される。
【0066】
血漿Cmaxに達する時間は治療される個体によるが、0.75〜3.75時間の間であることが好ましい。様々な好ましい実施態様では、tmax(Cmaxへの時間)は約1.0〜約3.75時間、または約1.00〜約3時間、または約1.00〜約2.5時間である。投与後のtmaxが約2時間であることが好ましい。t1/2(半減期)は約3.75〜約8.5時間であることが好ましい。
【0067】
脳脊髄液のCmaxに達するためには若干長い時間であると予想されるが、このCmaxは本発明によるR−フルルビプロフェンの投与後、約1時間〜約6時間で達成されると期待される。
【0068】
血漿または脳脊髄液中のR−フルルビプロフェン濃度を任意の公知の方法で評価し得る。脳脊髄液中のR−フルルビプロフェン濃度の測定は以下の様に行われる。フルルビプロフェンを含む脳脊髄液、および内部標準、例えばフルルビプロフェン−Dを移動相と混合し遠心分離する。次いで上澄みを96孔ブロックに移し、エナンチオ選択的カラムを搭載したMicromass Ultima LC−MS−MS上に抽出液の一定量を注入する。m/z243→199フルルビプロフェン生成イオンのピーク面積をm/z246→202フルルビプロフェン−D内部標準生成イオンのピーク面積と比較して測定する。バルク中で調製し凍結した強化された血漿標品由来の各光学異性体に対する加重(1/x)線形最小二乗回帰分析を用いて、定量分析を行う。
【0069】
血漿中の半減期も治療される個体に依存すると思われる。血漿中の半減期が約3.75〜約8.5時間であることが好ましい。絶食被験体に単回投与することにより、約200時間・μg/mL〜約600時間μg/mLのAUC(濃度対時間曲線の下の面積;全薬剤曝露量)が得られることが好ましい。従って、ある実施態様では、本発明はアルツハイマー病の1つまたは複数の兆候を有する個体にR−フルルビプロフェンを投与する方法であって、前記投与により前記個体のR−フルルビプロフェンの血漿濃度が投与後3.75時間以下で30〜95μg/mLである方法を提供する。具体的な実施態様では、投与後1.75時間以内に前記血漿濃度に到達する。他の具体的な実施態様では、投与後0.75〜3.75時間で前記血漿濃度に到達する。他の具体的な実施態様では、前記血漿濃度は50〜80μg/mLである。他の具体的な実施態様では、前記個体は軽度から中程度のアルツハイマー病を有すると診断されているか、または認知試験により軽度から中程度のアルツハイマー病を有すると診断されると思われる個体である。
【0070】
他の実施態様では、本発明は1つもしくはそれより多くの認知の尺度の改善を必要とする個体にR−フルルビプロフェンを投与する方法であって、投与後3.75時間でmLあたり30〜95μgの血漿レベルに達する様な方法でR−フルルビプロフェンを経口投与する方法を提供する。さらに、本発明はこれらのレベルを1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月1年間、または好ましくは1年以上達成するための反復投与を包含する。
【0071】
他の実施態様では、本発明はアルツハイマー病を有する、または有すると疑われる個体を治療する方法であって、mLあたり約30〜約95μgのCmaxとなるに十分な量のR−フルルビプロフェンを投与する方法を提供する。より具体的な実施態様では、前記CmaxはmLあたり40〜80μgの間である。さらに、本発明は個体の認知機能尺度における減退を減少する方法であって、対照と比較して前記投与により認知機能の前記尺度における減退が減少する、R−フルルビプロフェンを投与する方法を提供する。具体的な実施態様では、前記対照はR−フルルビプロフェンを投与しない個体における認知機能の前記尺度の減退であって、前記個体はアルツハイマー病を有するか、有すると疑われる。他の具体的な実施態様では、前記対照はR−フルルビプロフェンを投与しない複数の個体における認知機能の前記尺度の平均減退であって、前記個体はアルツハイマー病を有するか、有すると疑われる。他の具体的な実施態様では、認知機能の前記尺度の前記減退の減少は対照と比較して少なくとも25%である。他の具体的な実施態様では、認知機能の前記尺度の前記減退の減少は対照と比較して少なくとも40%である。他の具体的な実施態様では、認知機能の前記尺度の前記減退の減少は対照と比較して少なくとも60%である。他の具体的な実施態様では、認知機能の前記尺度はADAS−cog試験である。より具体的な実施態様では、前記減退は1年間にわたるADAS−cog試験で2.2ポイントである。他のより具体的な実施態様では、前記減退は1年間にわたるADAS−cog試験で3.3ポイントである。他の具体的な実施態様では、前記R−フルルビプロフェンを約400mg用量で1日2回投与する。他の具体的な実施態様では、前記R−フルルビプロフェンを約800mg用量で1日2回投与する。
【0072】
他の実施態様では、本発明はアルツハイマー病を有する、または有すると疑われる個体における1つまたは複数のアルツハイマー病のマーカーの進行を改善する、またはこのマーカーの進行における減退を減少する方法であって、前記個体にR−フルルビプロフェンを投与する方法を提供する。ある具体的な実施態様では、mLあたり約30〜約95μgのCmaxを達成する量で前記R−フルルビプロフェンを投与する。より具体的な実施態様では、前記CmaxはmLあたり40〜80μgの間である。ある具体的な実施態様では、前記投与は少なくとも4ヶ月間、少なくとも1日1回続けられる。ある具体的な実施態様では、前記投与は少なくとも8ヶ月間、少なくとも1日1回続けられる。ある具体的な実施態様では、前記投与は少なくとも12ヶ月間、少なくとも1日1回続けられる。ある具体的な実施態様では、前記疾患マーカーはアミロイドベータペプチド(Aβ)、Aβ42またはタウである。他の具体的な実施態様では、前記R−フルルビプロフェンを1日2回、約400mg用量で投与する。他の具体的な実施態様では、前記R−フルルビプロフェンを1日2回、約800mg用量で投与する。
【0073】
他の実施態様では、本発明はアルツハイマー病を有する、または有すると疑われる個体におけるアルツハイマー病と関連するプラーク病変を改善、またはこのプラーク病変における減退を減少する方法であって、前記個体にR−フルルビプロフェンを投与する方法を提供する。具体的な実施態様では、R−フルルビプロフェンの前記投与によりmLあたり約30〜約95μgのCmaxが達成される。より具体的な実施態様では、前記CmaxはmLあたり40〜80μgの間である。具体的な実施態様では、前記投与は少なくとも1日1回、少なくとも4ヶ月間続けられる。他の具体的な実施態様では、前記投与は少なくとも1日1回、少なくとも8ヶ月間続けられる。他の具体的な実施態様では、前記R−フルルビプロフェンを1日あたり約400mg用量で投与される。他の具体的な実施態様では、前記R−フルルビプロフェンを1日あたり約800mg用量で投与される。
【0074】
ある実施態様では、本発明は個体にR−フルルビプロフェンを投与する方法であって、前記R−フルルビプロフェンをmLあたり約35〜約50μgの血漿Cmaxとなるに十分な量で投与し、前記個体がADを有する、または有すると疑われる方法を提供する。より具体的な実施態様では、前記血漿CmaxはmLあたり約38〜約48μgである。他のより具体的な実施態様では、前記CmaxはmLあたり約39〜約46μgである。他の実施態様では、本発明は個体にR−フルルビプロフェンを投与する方法であって、mLあたり約45〜約58μgの血漿Cmaxとなるに十分な量の前記R−フルルビプロフェンを投与し、前記個体がADを有する、または有すると疑われる方法を提供する。より具体的な実施態様では、前記血漿CmaxはmLあたり約47〜約56μgである。より具体的な実施態様では、前記血漿CmaxはmLあたり約48〜約55μgである。具体的な好ましい実施態様では、前記個体は軽度から中程度のADを有する。他の具体的な好ましい実施態様では、前記個体はMCIを有する。
【0075】
他の実施態様では、血漿Cmaxに達する時間は治療される個体によるが、0.75〜2.25時間の間であることが好ましい。様々な好ましい実施態様では、tmax(Cmaxへの時間)は約1.0〜約2.1時間、約1.25時間〜約2時間、または約1.00時間〜2.5時間である。t1/2(半減期)は約6.00〜約10.0時間であることが好ましく、約6.5〜約9.5時間であることがより好ましく、約7〜約9時間であることがより好ましい。AUC(曲線の下の面積;全薬剤曝露)は約350(時間μg/mL)〜750(時間μg/mL)、約400(時間μg/mL)〜650(時間μg/mL)、または約450(時間μg/mL)〜700(時間μg/mL)であることが好ましい。具体的な好ましい実施態様では、前記個体は軽度から中程度のADを有する。他の具体的な好ましい実施態様では、前記個体はMICを有する。
【0076】
さらに別な実施態様では、血漿Cmaxに達する時間は治療される個体によるが、好ましくは0.25〜2.00時間の間である。様々な好ましい実施態様では、tmax(Cmaxへの時間)は約0.25〜約1.75時間、または約0.50〜約1.75時間、または約0.5〜約1.25時間である。t1/2(半減期)は好ましくは約3.5〜約8.5時間、より好ましくは約4.0〜約8.0時間、より好ましくは約4.8〜約7.5時間である。AUC(曲線の下の面積;全薬剤曝露)は約250(時間μg/mL)〜約700(時間μg/mL)、約300(時間μg/mL)〜約650(時間μg/mL)、または約350(時間μg/mL)〜約600(時間μg/mL)であることが好ましい。具体的な好ましい実施態様では、前記個体は軽度から中程度のADを有する。他の具体的な好ましい実施態様では、前記個体はMCIを有する。
【0077】
(5.5 予防および治療法)
ある実施態様では、本発明は有効量のR−フルルビプロフェンおよび1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤を含む一定量の薬学的組成物を、治療を必要とする患者に投与することを含むアルツハイマー病の治療法であって、絶食被験体に一定量の有効量を経口投与することにより、用量あたり30〜95μg/mLのCmaxが得られる方法を提供する。1日2回、少なくとも4ヶ月間、より好ましくは8ヶ月間、より好ましくは1年間、経口投与することにより、認知機能、生化学的疾患マーカーの進行、および/またはプラーク病変の改善または減退の減少が見られる。用量を単回または反復投与(すなわち錠剤またはカプセル)で1日2回行い得るが、その用量は約350mgのR−フルルビプロフェン、約400mgのR−フルルビプロフェン、約450mgのR−フルルビプロフェン、約500mgのR−フルルビプロフェン、約550mgのR−フルルビプロフェン、約600mgのR−フルルビプロフェン、約650mgのR−フルルビプロフェン、約700mgのR−フルルビプロフェン、約750mgのR−フルルビプロフェン、約800mgのR−フルルビプロフェン、または約850mgのR−フルルビプロフェンである。好ましくは用量は400mgであり、従って好ましい方法は例えば錠剤またはカプセル中の400mgのR−フルルビプロフェンおよび経口投与に適した担体または媒体を含む本発明の組成物を使用する。他の好ましい用量は800mgのR−フルルビプロフェンであり、従って好ましい方法は例えば錠剤またはカプセル中の400mgのR−フルルビプロフェンおよび経口投与に適した担体または媒体を含む本発明の組成物を使用する。または、本発明は低用量に基づく治療法であって、用量が約200mgのR−フルルビプロフェンを有する方法を提供する。組成物がフルルビプロフェンの(S)−立体異性体を実質的に含まないことが好ましい。
【0078】
他の実施態様では、本発明は治療を必要とする患者に有効量のR−フルルビプロフェンおよび1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤を有する薬学的組成物を投与することを含むアルツハイマー病の発症を予防する方法であって、絶食被験体に有効量を単回経口投与することにより、用量あたり30〜95μg/mLのCmaxが得られ、1日2回、少なくとも4ヶ月、より好ましくは8ヶ月、より好ましくは1年間の単回経口投与により、認知機能、生化学的疾患マーカーの進行、および/またはプラーク病変の改善または減退の減少が得られる方法を提供する。絶食被験体に一定用量を投与することにより、約200時間μg/mL〜約600時間μg/mLのAUC(濃度対時間曲線の下の面積;全薬剤曝露)が与えられることが好ましい。tmax(Cmaxへの時間)が約0.75〜3.75時間であることが好ましい。t1/2(半減期)は約3.75〜約8.5時間であることが好ましい。用量を1日2回、単回または反復投与(すなわち錠剤またはカプセル)で与えることが好ましく、用量は約350mgのR−フルルビプロフェン、約400mgのR−フルルビプロフェン、約450mgのR−フルルビプロフェン、約500mgのR−フルルビプロフェン、約550mgのR−フルルビプロフェン、約600mgのR−フルルビプロフェン、約650mgのR−フルルビプロフェン、約700mgのR−フルルビプロフェン、約750mgのR−フルルビプロフェン、約800mgのR−フルルビプロフェン、または約850mgのR−フルルビプロフェンである。用量が400mgであることが好ましく、従って好ましい方法は、例えば錠剤またはカプセル中の400mgのR−フルルビプロフェンと経口投与に適した担体または媒体を有する本発明の組成物を使用する。他の好ましい用量は800mgのR−フルルビプロフェンであり、従って好ましい方法は、例えば錠剤またはカプセル中の400mgのR−フルルビプロフェンと経口投与に適した担体または媒体を有する本発明の組成物を使用する。または、本発明は低用量に基づく予防法を提供し、その用量は約200mgのR−フルルビプロフェンを有する。組成物が実質的にフルルビプロフェンの(S)−立体異性体を含まないことが好ましい。
【0079】
さらに別な実施態様では、本発明はこの様な治療を必要とする患者に有効量のR−フルルビプロフェンと1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤とを有する薬剤を投与することを含む、アルツハイマー病の発症を減速する方法であって、絶食被験体に有効量の単回投与することにより、mLあたり約40〜95μgのCmaxが得られ、1日2回、少なくとも4ヶ月、好ましくは8ヶ月、より望ましくは1年間の一定用量の経口投与により、認知機能、生化学的疾患マーカーの進行、および/またはプラーク病変の改善または減退の減少が得られる。絶食被験体に単回投与することにより、約200時間μg/mL〜約600時間μg/mLのAUC(濃度対時間曲線の下の面積;全薬剤曝露)が得られることが好ましい。tmax(Cmaxへの時間)が約0.75〜3.75時間であることが好ましい。t1/2(半減期)が約3.75〜約8.5時間であることが好ましい。用量を1日2回、単回投薬単位または多回投薬単位(すなわち錠剤またはカプセル)で与えることができるが、その用量は約350mgのR−フルルビプロフェン、約400mgのR−フルルビプロフェン、約450mgのR−フルルビプロフェン、約500mgのR−フルルビプロフェン、約550mgのR−フルルビプロフェン、約600mgのR−フルルビプロフェン、約650mgのR−フルルビプロフェン、約700mgのR−フルルビプロフェン、約750mgのR−フルルビプロフェン、約800mgのR−フルルビプロフェン、または約850mgのR−フルルビプロフェンを含む。用量が400mgであることが好ましく、従って好ましい方法は例えば、錠剤またはカプセル中に400mgのR−フルルビプロフェンと、経口投与に適した担体または媒体とを含む組成物を使用する。他の好ましい用量は800mgのR−フルルビプロフェンであり、好ましい方法は例えば、錠剤またはカプセル中に400mgのR−フルルビプロフェンと、経口投与に適した担体または媒体とを含む組成物を使用する。または、本発明は低用量に基づく予防法を提供するが、その用量は約200mgのR−フルルビプロフェンを含む。組成物が実質的にフルルビプロフェンの(S)−立体異性体を含まないことが望ましい。
【0080】
本明細書に記載の本発明の化合物、および本発明の投薬形態を1日あたり1回、2回、3回、4回またはそれ以上投与してもよい。
【0081】
錠剤は、同じ量のR−フルルビプロフェンを含むカプセルと比較して予想外に改善された薬物動態プロファイルを与えることが発見された。カプセル投薬形態と比較して、錠剤ではCmaxがより低く、ピークが幅広く、アルツハイマー病を治療するための薬物送達が改善されていることが発見された。
【0082】
軽度から中程度のADを治療する(および予防する)ためのR−フルルビプロフェンの用量が約400mg〜約800mgであるという予期しない発見に導いた本発明の他の発見は、モデル器官と細胞系とで評価したプラーク病変における減退を減少または低下する最大の改善が、活性成分のこの範囲内で見られ、この予期しない範囲以上または以下ではプラーク病変の指標の減退速度の減少が少ないと言うことである。さらに、この範囲以上では毒性の問題が無視できなくなる。
【0083】
本明細書の薬物動態パラメータは、各用量に対する約12名の群の平均に基づいている(12名が200mgのBIDで治療され、12名が400mgのBIDで治療され、12名が800mgのBIDで治療され、12名がプラセボで治療される)。当業者は、個々の個体は異なり、そして与えられた範囲外の薬物動態パラメータが得られ得ることを理解する。同様に、効力または治療のエンドポイントパラメータは個体群に対する平均と、与えられた範囲外になる効力を経験する個体とに基づいている。
【0084】
本発明の他の実施態様では、本発明は認知機能の改善法に関する。より具体的には、本発明の本実施態様は、アルツハイマー病患者または軽度認知障害(MIC)患者が経験したような認知減退を経験する個体における、認知機能改善法を提供する。病気の結果として認知減退を経験したアルツハイマー病患者にR−フルルビプロフェンを活性成分として有する認知改善有効量の薬学的組成物を投与した場合、認知の改善を経験することができるという発見に本発明は基づいている。ある実施態様では、本発明は認知減退を経験している個体における認知機能改善法を提供する。この方法によれば、治療を必要とする、または希望する個体(例えばアルツハイマー病を有する、または軽度認知障害を有する患者)に、1日あたり約100mg〜約1800mgのR−フルルビプロフェンを含む組成物を少なくとも4週間、好ましくは少なくとも4ヶ月、より好ましくは少なくとも6ヶ月投与する。個体に投与するR−フルルビプロフェンの量は1日あたり約200〜1800mgが好ましく、より好ましくはその量は1日あたり約350〜1650mgである。本発明で使用された組成物は1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤、塩および担体と共に処方される。薬学的組成物を経口で、好ましくは錠剤またはカプセル投薬形態で送達することができる。認知改善有効量のR−フルルビプロフェンの絶食被験体に単回経口投与することにより、mLあたり約30〜95μgのCmaxが得られる。R−フルルビプロフェン組成物を1日2回(b.i.d.)、少なくとも4週間、好ましくは少なくとも4ヶ月、さらに好ましくは少なくとも6ヶ月間、より望ましくは1年間経口投与することにより、認知試験で特徴付けられる認知機能の改善が見られる。認知機能の改善が、プラセボで治療した個体と比較して統計的に有意であることが好ましい。例えば、軽度から中程度のアルツハイマー病を有すると思われるプラセボで治療した個体が、一定の治療時間後(例えば、約1年間)にADAS−cog試験で約5.5ポイント低いスコアであると期待されるのに対し、同じ期間、R−フルルビプロフェン組成物で治療した個体(軽度から中程度のアルツハイマー病を有する)はADAS−cogスケールでより高くない、またはより良いスコア、すなわちより低いスコア(例えば0.25、0.5、0.75、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0または4.0またはそれ以上のポイントで改善)となると思われる。経口用量がカプセルまたは錠剤で与えられることが望ましい。本発明の本態様の具体的な実施態様では、投薬量はR−フルルビプロフェン、薬学的に受容可能な塩、離型剤および任意にその他の成分を含む薬学的組成物として提供される。
【0085】
本発明の他の実施態様では、本発明は認知試験の成績の改善法に関する。より具体的には、本発明の本実施態様は、アルツハイマー病を経験した、または軽度の認知障害を有する患者等の認知減退を経験した個体のADAS−cog試験の性能を改善する方法を提供する。アルツハイマー病または軽度の認知障害等の疾患または病状の結果、認知減退を経験した個体が、R−フルルビプロフェンを活性成分として含む認知改善有効量の薬学的組成物を投与するとADAS−cog試験の成績を改善し得ると言う発見に本発明は基づいている。本方法によれば、治療を必要とする、または希望する個体が特定され、ADAS−cog試験が行われる。次いで、個体は一日あたり約100mg〜約1800mgのR−フルルビプロフェンを含む組成物で少なくとも4週間、好ましくは少なくとも4ヶ月間、より好ましくは少なくとも6ヶ月間治療される。個体に投与されるR−フルルビプロフェンの量が1日当たり約200〜1800mgであることが好ましく、1日あたり約350〜1650mgであることがより好ましい。次いで本方法で治療された個体にADAS−cog試験を行うと、その個体は試験の成績が改善すると期待される。成績が改善するとは、治療された個体群がADAS−cog試験で統計的に有意な方法で同じ、またはより良い(すなわちより低い)スコアであることを意味する。ADAS−cog試験で0.25、0.5、0.75、1.0、1.5、2.0、3.0、4.0またはそれ以上(すなわちより低い)のポイントで改善されていることが好ましい。本発明で使用された組成物は1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤、塩、または担体と共に処方される。薬学的組成物は経口で、好ましくは錠剤またはカプセル投薬形態で送達することができる。絶食被験体に認知改善有効量のR−フルルビプロフェンを単回経口投与することにより、mLあたり約30〜95μgのCmaxが得られる。1日2回(b.i.d)、少なくとも4週間、好ましくは少なくとも4ヶ月、より好ましくは少なくとも6ヶ月、より望ましくは1年間のR−フルルビプロフェンの経口投与により、ADAS−cog試験の成績が改善する。ADAS−cog試験の成績の改善が、プラセボで治療した個体と比較して統計的に有意であることが好ましい。例えば、軽度から中程度のアルツハイマー病を有すると思われる、プラセボで治療した個体が一定期間の治療(例えば1年間)後にADAS−cog試験で約5.5ポイントのスコアであると期待されるのに対し、同じ期間、R−フルルビプロフェン組成物で治療した個体(軽度から中程度のアルツハイマー病を有する)はADAS−cog試験でより良いスコア、すなわちより低いスコア(例えば0.25、0.5、0.75、1.0、1.5、2.0、3.0、4.0またはそれ以上のポイントで改善)であると思われる。経口投与がカプセルまたは錠剤型であることが望ましい。本発明の本態様の具体的な実施態様では、投薬量はR−フルルビプロフェン、薬学的に受容可能な塩、離型剤、および任意にその他の成分で構成される薬学的組成物として提供される。
【0086】
(5.6 薬学的処方物)
本発明の薬学的組成物と投薬量を任意の薬学的に受容可能な方法で投与し得るが、錠剤およびカプセル形式が好ましい。しかしながら、本明細書に記載のR−フルルビプロフェンの投薬量では、同じ量のR−フルルビプロフェンを含むカプセルと比較して錠剤は予想以上に改善された薬物動態プロファイルを与える。これは錠剤ではCmaxがより低く、ピークがより幅広く、カプセル投薬形態と比較してアルツハイマー病を治療するための薬物送達が改善されるためである。
【0087】
錠剤、ピル、カプセル、トローチ等は以下の任意の成分、または同様な性質の化合物を含むことができる:微結晶性セルロース、トラカントゴムまたはゼラチン等の結合剤;澱粉またはラクトース等の賦形剤;アルギン酸、プリモゲルまたはコーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステローテ等の潤滑剤;コロイド状二酸化シリコン等の流動促進剤;スクロースまたはサッカリン等の甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ芳香剤等の芳香剤。単位投薬形態がカプセルである場合、前記のタイプの材料に加えて脂肪酸油等の液状担体を含む。さらに、単位投薬形態は投薬単位の物理的形状を修飾する他の材料、例えば糖、セラックまたはその他の腸溶剤等を含み得る。
【0088】
活性成分および植物油、または例えばポリエチレングリコール等の非水溶水混和性材料の混合物を含む軟質ゼラチンカプセルを調製することもできる。硬質ゼラチンカプセルは例えばラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、ジャガイモ澱粉、コーンスターチ、アミロペクチン、セルロース誘導体またはゼラチン等の固体粉体担体と組み合わせた活性成分の顆粒を含み得る。
【0089】
他の投薬形態(前記参照)と比較して薬物動態プロファイルが改善され、患者(例えば投薬量の精度、コンパクト性、携帯性、味の無刺戟性の他、服用し易さ)と製造業者(例えば調製の簡単さと経済性、安定性の他、包装、輸送および配達の便利性)との双方に対し恩恵があるため、錠剤が好ましい投薬形態である。錠剤は適当な添加剤を含む、または含まない治療用薬物を含む固体薬学的投薬形態である。
【0090】
具体的には錠剤は成型、圧縮または一般に受け入れられる錠剤形成法で製造される。従って、圧縮錠剤は通常大量生産法で調製されるが、成型錠剤は小スケール操作であることが多い。
【0091】
経口用錠剤は具体的には以下の方法で調製されるが、他の技術も用いられる。固体物質を所望の粒径に粉砕または篩い分けし、結合剤を均一に混ぜて適当な溶剤中に懸濁する。活性成分と助剤とを結合剤溶液と混合する。得られた混合物を湿らせて均一な懸濁物とする。典型的には湿らせることで粒子が若干凝集し、得られた塊を所定のサイズを有するステンレス鋼篩を通して軽く圧縮する。所定の長さの時間、制御乾燥ユニット中で乾燥し、所望の粒径と一貫性が得られる。乾燥混合物の顆粒を静かに篩い分けして粉末を除去する。この混合物に崩壊剤、耐摩擦剤および耐付着剤を加える。最後に、適当なパンチと鋳型を有する装置を用いて混合物を錠剤に圧縮し、所定の錠剤サイズを得る。装置の運転パラメータは当業者が選択し得る。
【0092】
一般に錠剤調製法には3つの一般的な方法がある:(1)湿式顆粒化法;(2)乾燥顆粒化法;および(3)直接圧縮。これらの方法は当業者に公知である。Remington’s Pharmaceutical Science,16th and 18th Eds.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa(1980および1990)参照。また、U.S.Pharmacopeia XXI、U.S,Pharmacopeial Convention,Inc.,Rockville、Md.(1985)参照。
【0093】
様々な錠剤処方が本発明により行われる。これらには糖被覆錠剤、フィルム被覆錠剤、腸溶性錠剤、複数圧縮錠剤、長期作用錠剤等の錠剤投薬形態が含まれる。糖被覆錠剤(SCT)は糖被覆を含む圧縮錠剤である。このような被覆は着色可能で、不愉快な味と臭いを有する薬剤物質を被覆し、酸化に鋭敏な材料を保護するのに有用である。フィルム被覆錠剤(FCT)は水溶性の材料の薄層フィルムで被覆された圧縮錠剤である。フィルム形成性を有するいくつかのポリマー物質を使用し得る。フィルム被覆は糖被覆と同じ一般的な特性を与えると共に、被覆操作に必要な時間を大幅に減少する利点を有する。腸溶性被覆錠剤も本発明での使用にも適している。腸溶性被覆錠剤(ECT)は胃液中の溶解に耐性があるが、腸で崩壊する圧縮錠剤である。腸溶性被覆を胃で不活性化または分解する物質、すなわち粘膜を刺激する物質を含む錠剤、または薬剤の遅延放出手段として使用することができる。
【0094】
複数圧縮錠剤(MCT)は、層状錠剤または圧縮被覆錠剤等の1回以上の圧縮サイクルで製造された圧縮錠剤である。層状錠剤は先に圧縮された顆粒上の別な錠剤顆粒化により調製される。2層、3層またはそれ以上の層の複数層錠剤を製造するため、操作を繰り返す。具体的には、層状錠剤を作製するために特別な錠剤プレスが必要である。例えば、全文を本明細書に引用して援用する米国特許第5、213、738号参照。
【0095】
プレス被覆錠剤は複数圧縮錠剤のまた別な形である。乾式被覆錠剤とも呼ばれるこの様な錠剤は、先に圧縮した錠剤を錠剤成型装置に供給し、先に形成した錠剤の周りに他の顆粒層を圧縮することで調製される。これらの錠剤は、コア錠剤中に薬剤物質の味をマスクする点で糖被覆錠剤の利点を維持する一方、圧縮錠剤の全ての利点、すなわちスロット化、モノグラム化等の利点を有する。圧縮被覆錠剤を、両立性のない薬剤を分離するために使用することもできる。さらに、その錠剤をコア錠剤に腸溶性を与えるために使用できる。双方のタイプの錠剤(すなわち層状錠剤と圧縮被覆錠剤)を、例えば本発明の長期作用投薬形態の設計に使用し得る。
【0096】
長期作用錠剤形態の本発明の薬学的組成物または単位投薬形態は、一定期間の薬物療法を与える様な方法で薬剤物質を放出するために処方された圧縮錠剤を含む。投与後一定期間、またはある生理的条件が存在するまで薬剤物質の放出が阻止される遅延作用性錠剤を含むいくつかの錠剤タイプがある。薬剤の完全な用量を胃腸液中に周期的に放出する反復作用錠剤を形成し得る。また、中に含まれた薬剤物質の増加分を胃腸液中に連続的に放出する長期放出錠剤も形成し得る。
【0097】
従来の薬学的調合技術に従って、実際の使用において、光学的に純粋なR(−)−フルルビプロフェンを活性成分として、薬学的に受容可能な担体との完全混合物中に組み合わせることができる。投与に必要な調合形式により、薬学的に受容可能な担体は例えば経口、非経口(静脈内、皮下、硬膜内および筋肉内を含む)、経皮、および局所等の投与に所望される調製の形態に依存する広い範囲の形態を取り得る。経口投与形態のための組成物を調製する場合、従来の任意の薬学的媒体または賦形剤を用いることができる。これらには懸濁液、エリキシルまたは溶液等の経口液体調合物の場合は例えば水、グリコール類、油類、アルコール類、芳香剤、保存剤、着色剤等;エアロゾル;または粉末、カプセル、カプレットおよび錠剤等の経口固体調合物の場合は澱粉、糖類、微結晶性セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤等の賦形剤が含まれる。固体経口調合物は通常、液体調合物より好ましい。投与し易いため、錠剤およびカプセルは最も有利な経口単位投薬形態であり、その場合、固体の薬学的に受容可能な賦形剤が明らかに用いられる。必要があれば、錠剤を標準の水性技術または非水性技術で被覆してもよい。好ましい固体経口調合物は錠剤およびカプセルである。
【0098】
光学的に純粋なR(−)−フルルビプロフェン、または薬学的に受容可能な塩、溶媒和物またはその包接化合物を含む組成物を安定化するため、薬学的安定化剤を使用し得る。受容可能な安定化剤にはL−システイン塩酸塩、グリシン塩酸塩、リンゴ酸、メタ重亜硫酸、クエン酸、酒石酸およびL−システイン二塩酸塩が含まれるが、それらに限定されない。例えば全文を本明細書に引用して援用する米国特許第5,731,000号、第5,763,493号、5,541,231号および第5,358,970号参照。
【0099】
前記の通常の投薬形態に加えて、制御放出手段、および/または所定の期間中に一定の薬学的活性を維持するのに必要な速度で活性成分を放出可能な送達手段により、活性成分(すなわち光学的に純粋なR−フルルビプロフェン)を投与できる。この様な投薬形態は所定の期間中、薬剤を体に供給し、従って通常の非制御処方より長い時間、薬剤レベルを治療レベルに維持する。本発明の活性成分の投与に用いられる制御放出薬学的組成物および送達手段の例は、米国特許第3,847,770号、第3,916,899号、第3,536,809号、第3,598,123号、第3,630,200号、第4,008,719号、第4,687,610号、第4,769,027号、第5,674,533号、第5、059,595号、第5,591,767号、第5,120,548号、第5、073,543号、第5,639,476号、第5,354,566号および第5,733,566号に記載され、全文を本明細書に引用して援用する。
【0100】
経口投与に適した本発明の薬学的組成物は、カプセル、カチェット、カプレットまたは錠剤またはエアロゾルスプレーとして別個の単位で提供され得、それぞれ所定の量の活性成分を粉末、顆粒、または水または非水液体中の溶液または懸濁液、水中油型乳剤、または水中油乳濁液として含んでいる。この様な組成物を薬学の任意の方法で調製し得るが、その方法は活性成分を1つ以上の必要な成分を構成する薬学的に受容可能な担体と組み合わせる工程を含む。一般に、活性成分を液体の薬学的に受容可能な担体、または細かく砕いた固体の薬学的に受容可能な担体と、またはその双方と均一かつ密接に混合し、次いで必要があれば生成物を所望の投薬形態に成型することにより組成物を調製する。例えば、錠剤を任意には少なくとも1種のアクセサリー成分と共に圧縮または成型することで調製し得る。粉末または顆粒等の自由に流動する形で、任意に結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、崩壊剤、および/または界面活性剤または分散剤と混合して、適当な装置中で圧縮して圧縮錠剤を調製し得る。不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物を適当な装置中で成型して、成型錠剤を製造し得る。
【0101】
R−フルルビプロフェンの投薬形態、例えば400mgまたは800mgを、アルツハイマー病の治療に適していると分かっている任意の他の化合物と組み合わせることができる。例えば、R−フルルビプロフェンをアセチルコリンエステラーゼ(AChE)インヒビターと組み合わせてもよい。アルツハイマー病の治療に有用なAChEインヒビターの例にはガランタミン(ガランタミン、レミニル)、E2020(ドネペジル、アリセプト)、フィソスチグミン、タクリン(テトラヒドロアミノアクリジン、THA)、リバスチグミン、フェネセリン、メトリホネート(プロメン)またはフペラジンが含まれるが、それらに制約されない。R−フルルビプロフェンの用量を1つ以上の薬学的に受容可能な抗酸化剤、例えばビタミンC(例えばR−フルルビプロフェンの用量あたり500〜1000mg)、および/またはビタミンE(例えばR−フルルビプロフェンの用量あたり400〜800IU)と組み合わせ得る。
【0102】
(5.7 R−フルルビプロフェンの調製)
本発明の薬学的組成物および処方の製造、および本発明の方法の実施に有用なフルルビプロフェンを、光学的に純粋なR−フルルビプロフェンを製造する任意の既知の方法で製造できる。
【0103】
R−フルルビプロフェンは例えばSepracor Inc.(Marlborough、MA)から市販されている。
【0104】
R−フルルビプロフェンの市販品に加えて、フルルビプロフェンのラセミ混合物がいくつかの業者、例えばSigma(St.Louis、MO)から得られる。光学的に純粋なR−異性体フルルビプロフェン(または所望の鏡像体過剰率のR−フルルビプロフェン)が、周知の方法に従ってラセミ混合物を分割して得られる。
【0105】
R−フルルビプロフェン組成物は例えばGeisslinger et.al.の米国特許第5,200,198号に開示されている。
【0106】
R−フルルビプロフェンをラセミ体から分割する方法はHardy et.al.の米国特許第5,599,969号に開示されるが、その特許はラセミ体をトルエンとメタノールの混合溶媒中でα−メチルベンジルアミン塩と接触させ、次いでジアステレオマー塩を再結晶する工程を開示している。次いでジアステレオマー塩を分離し、分割されたフルルビプロフェン光学異性体が得られる。Boots Co.の米国特許第4,209,638号はフルルビプロフェンを含む2−アリルプロピオン酸を分割する工程を開示しているが、その工程ではある条件下でフルルビプロフェンラセミ体をキラル有機窒素塩基と混合し、次いでジアステレオマー塩の回収と分離を行う。ラセミ体アリルプロピオン酸を分割する工程を開示する他の特許にはPAZの米国特許第4、983,765号、Ethyl Corp.の米国特許第5,015,764号、Ethyl Co.の米国特許第5,235,100号、Albemarle Corp.の米国特許第5,574,183号、Sumitomo Chemical Companyの米国特許第5,510,519号が含まれる。
【0107】
R−フルルビプロフェンとアリルプロピオン酸とを錠剤化する方法は例えばHurner et.al.の米国特許第5,667,807号、Geisslinger et.al.の米国特許第5,565,613号、Robinson et.al.の米国特許第6,471,991号、およびVladyka et.al.の米国特許第6,379,707号に開示されている。
【実施例】
【0108】
(6.実施例)
(6.1 実施例1:R−フルルビプロフェン含有錠剤)
【0109】
【表1】

(6.2 実施例2:R−フルルビプロフェン含有被覆錠剤)
【0110】
【表2】

(6.3 実施例3:R−フルルビプロフェンカプセル)
【0111】
【表3】

(6.4 実施例4:R−フルルビプロフェン錠剤)
【0112】
【表4】

(6.5 実施例5:R−フルルビプロフェンの臨床試験)
血漿および脳脊髄液(CSF)中の診査バイオマーカーAβ42の観測レベルを低下する効力を示す臨床試験、すなわちR−フルルビプロフェンの安全性のフェーズI試験を以下の様に行った。
【0113】
目的:55〜80歳の健康な被験体におけるR−フルルビプロフェンの経口用量を増加して安全性と耐性を評価する;R−フルルビプロフェン投与後の血漿中のR−フルルビプロフェンの薬物動態パラメータおよびCSF中のR−フルルビプロフェンの濃度を求める;およびR−フルルビプロフェンまたはプラセボ投与前、および21日後のAβ42、Aβ40およびAβ38の血漿およびCSF濃度を測定する。正常な高齢者は副作用(AE)を思い出し、報告することがAD患者より容易である。
【0114】
臨床仮説:55〜80歳の健康な被験体は、いくつかの用量レベルの1つでR−フルルビプロフェンを21日間投与することに耐性があり、AEの重症度が軽度から中程度の痴呆を有する患者におけるその後の試験を妨げないと思われる。
【0115】
(試験計画)
(研究デザイン)
男性と女性とを含み、二重盲検、プラセボ対照、連続、用量レベル増加、多回用量試験として研究を行った。16名を3つの連続的コホートのそれぞれに割り当てた:BID200mg、BID400mgおよびBID800mgのR−フルルビプロフェン、それぞれプラセボBIDに対応。各コホートは活性薬剤(n=12)対プラセボ(n=4)の評価比率3:1を含み、3つのプラセボ治療群を併せた後に12名の4つの治療群を得た。試験を現場で調節し、性別に階層化した。対照に21日間、一定の用量でR−フルルビプロフェン、または対応するプラセボを経口投与する。血液および尿試料を実験室安全データとして、試験1日目、21日目、および試験通院の最終日(30日間の追跡)に採取した。試験薬による治療の試験1日目および21日目に、血液とCSFを薬物動態およびバイオマーカー測定のために採取する。
【0116】
R−フルルビプロフェン治療の12名、プラセボ治療の4名でなる各連続的コホート中の16名を含む48名を本発明試験に登録する。
【0117】
(包含基準)
試験に参加するためには、被験体は以下の全ての包含基準に合致する必要がある:
・55〜80歳の男女
・認知試験および試験通院手順の承諾を確認するため、英語を読み書きする能力
・重大な認知および機能障害がないこと(Mini−Mental State Examination[MMSE]スコア>27/30)
・女性は不妊手術を受けているか、閉経後1年以上である必要がある。
・試験期間中、心臓保護用量レベルのアスピリンの使用を制限する意思がある(例えば1日あたりアスピリン100mg以下)
・適度の肝臓、腎臓および血液学的機能を有する。
【0118】
(除外基準)
・パーキンソン病等の重大な神経症、脳卒中、脳腫瘍、多発性硬化症または発作性疾患
・過去12ヶ月に重症の鬱病、精神分裂症等の重症の精神病、または最近の(過去12ヶ月)のアルコールまたは薬物中毒
・セレコキシブおよびロフェコキシブ等のシクロオキシゲナーゼ2(COX−2)特異的インヒビターを含むNSAIDに対する過敏症の病歴
・過去3年間に輸血を必要とする上部消化管(GI)出血の病歴
・過去12ヶ月に診断された活動性潰瘍疾患;これには規則的に(毎日)上部消化管保護のための薬物療法を受けている患者が含まれ、薬物にはプロトンポンプインヒビター、H−2受容体拮抗剤、および細胞保護剤が含まれる。以下の薬剤が例示される:ラベプラゾール/アシペックス(登録商標)、オメプラゾール/プリロセク(登録商標)/ネキシマム(登録商標)、パントプロゾール/プロトニクス(登録商標)、ランソプロゾール/プレバシド(登録商標)(プロトンポンプインヒビター)、シメチジン/タガメット(登録商標)、ランチジン/ザンタック(登録商標)、ファモチジン/ペプシド(登録商標)(H−2受容体拮抗剤)、ミソプロストール/シトテック(登録商標)、スクラルフェート/カラフェート(登録商標)(細胞保護剤)。
・過去5年間のNSAID関連潰瘍の病歴
・試験1日目以前の2ヶ月間で7日/月以上の頻度の任意の用量のNSAIDまたは免疫抑制剤の使用
・皮膚の基底細胞癌腫および扁平細胞癌腫を除く、エントリー前の24ヶ月以内の活動性悪性腫瘍の病歴または証拠
・慢性または急性腎臓または肝臓疾患、または重症出血性疾患またはその他の病状。これは試験責任医師の意見では試験参加から除外する必要がある
・腰椎穿刺の禁忌(抗凝固剤、腰仙骨棘領域中の重篤な構造異常または感染、リドカインに対する過敏症)
・スクリーニング前30日以内、または半減期の5倍の期間の長い方のいずれかの試験薬または手段の使用
・試験1日目以前の12週間内の大きな手術
・New York Heart AssociationクラスIIIまたはIV
・30日以内の活動性全身感染症またはその他の重大な制御不能な医学的状態
・痴呆または精神状態変調
・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する抗ウイルス治療。HIV陽性であるが抗ウイルス治療を受けていない被験体は参加し得る。
・ランダム化前12週間以内にワーファリン等の抗凝固剤治療
・本試験に以前に参加・ランダム化以前の2週間以内にCYP2C9インヒビターによる治療。以下の薬剤と漢方薬がCYP2C9の例である:アミオダロン/コルダロン(登録商標)、フルコナゾール/ディフルカン(登録商標)、フルバスタチン/レスコール(登録商標)、フルボキサミン/ルボックス(登録商標)、イソニアジド/INH(登録商標)、ロバスタチン/メバコール(登録商標)、ミコナゾール、パロキセチン/パキシル(登録商標)、フェニルブタゾン、プロベニシド/ベネミド(登録商標)、セルタリン/ゾロフト(登録商標)、スルファメトキサゾール/ガンタノール(登録商標)、スルファフェナゾール、テニポシド/ブモン(登録商標)、トリメトプリム/バクトリム(登録商標)、ザフィルルカスト/アコレート(登録商標)、ダンシェン(Salvia miltiorrhiza)、ナガバクコ。
・漢方薬の使用は試験責任医師により禁止される。漢方薬による管理臨床試験は行われていない。従って、試験薬との相互作用の可能性を無視できない。漢方薬の使用は厳密にモニターされ、試験責任医師により記録され、その裁量で禁止される。
【0119】
(治療手順)
(薬剤用量、投与およびスケジュール)
薬剤用量および投与スケジュールは以下の表にまとめられる。被験体は1カプセルをボトルAから服用し、1カプセルをボトルBから、1日2回(BID)、20日間服用する様に指示される。ボトルAおよびBはR−フルルビプロフェンまたはプラセボを含んでいる。日間の投薬間隔は約12時間であり、試験薬を各日のほぼ同じ時間に服用する。20日後(すなわち試験21日目)、試験参加者は以下に記す様な薬物動態試験を行う。試験の4群に対する毎日の用量は:
・400mgのR−フルルビプロフェン(200mgカプセル1個とプラセボカプセル1個をBIDで服用)
・800mgのR−フルルビプロフェン(400mgカプセル1個とプラセボカプセル1個をBIDで服用)
・1600mgのR−フルルビプロフェン(400mgカプセル2個をBIDで服用)
・プラセボ(プラセボカプセル2個をBIDで服用)。
【0120】
【表5】

(試験手順)
(安全評価)
(完全健康診断)
スクリーニング、試験21日目および30日目の追跡来院時に医療有資格者により完全健康診断が行われる。皮膚、頭/耳/眼/喉(HEENT)、呼吸器系、心臓血管系、胃腸系、内分泌系/代謝系、尿生殖器系、神経系、血液系/リンパ系および筋骨格系を含めて、主要な身体系の再検査を行う。スクリーニングおよび試験21日目に直腸試験で糞便試料を採取し、潜血の有無を試験する。糞便潜血が試験21日目に採取した試料中に検出された場合のみ、直腸検査を追跡来院30日に行う。身長(スクリーニング来院時のみ身長を測定)、体重および生命徴候(収縮期および拡張期血圧、心拍、体温および呼吸)の評価が含まれる。
【0121】
(簡易健康診断)
簡易健康診断が試験1日目に医療有資格者により行われる。適当な場合、身体系の再検査を検討し、先の来院からの変化を評価し記録する。臨床的な変化を全て、良質の医療のための原則(good medical practice)により追跡する。今まで、および新規副作用の評価を記録する。他の身体系も適当な場合は評価する。簡易健康診断データを適当なCRF上に記録する。
【0122】
(臨床検査分析)
臨床検査分析用の血液および尿試料をスクリーニングで採取し、中央検査室で分析する。検査値が臨床検査正常範囲外であった場合、試験責任医師は偏差の有意性を示す。有意であれば、臨床試験が繰り返される。試料を以下の表に列記したパラメータについて分析する。
【0123】
【表6】

(心電図)
標準安静時12誘導心電図(ECG)をスクリーニング来院時、試験1日目に試験薬の1回目の服用後、約2〜3時間;試験21日目に試験薬の最後の用量の投与後、約2〜3時間;試験最終日30日目追跡来院、または検査中の臨床的に指定された日に行う。主任心臓病専門医が各コホートに対する治療の最後に全てのECGを再検討する。
【0124】
(薬物動態評価)
臨床化学分析、血液学、凝固パラメータおよび尿分析につき、絶食被験体から試験21日目に血液試料及び尿試料を採取する。血液試料を試験21日目の試験薬の最終用量の投与後0.5、1、2、4および6時間、可能であれば8および24時間に採取する。薬物動態分析のために採取した血液の全量は約64mLである。PK/PD分析のための全ての血液試料をR−フルルビプロフェンおよびS−フルルビプロフェンについて分析し、R−フルルビプロフェンのS−フルルビプロフェンへの生物転換の程度を評価する。
【0125】
(血漿および脳脊髄液中のAβ38、Aβ40、Aβ42)
腰椎穿刺による脳脊髄液(CSF)の採取後、低レベルのAβに対する感度を増加させたサンドイッチ酵素免疫測定法(ELISA)でAβ40およびAβ42のCSFレベルを測定する。
【0126】
(臨床評価/認知の尺度)
Mini−Mental State Examination(MMSE)をスクリーニング被験体に行う。MMSEは方向感覚、記憶、集中および計算、言語(名前、理解、反復、筆記)および2つの交差5角形複製能力を簡単に評価する。最高スコアは30ポイントであり、低いスコアはより重症の認知障害を示す。
【0127】
(評価のタイミング)
(スクリーニング来院)
参加することに関心のある被験体に、この来院で適格性基準を評価するのに必要な情報を提供する。適格性基準に合致する被験体は、個体を研究するための説明を受けた上で同意書(インフォームドコンセント)に署名する。MMSEは管理される。処方された、および処方箋なしの薬物治療、および最近60日間NSAIDの使用歴を含み、被験体の病歴を再検討する。生命徴候を記録し、全体的な健康診断および神経学的検査を行う。直腸検査で糞便試料を採取し、潜血の有無を調べる。ECGを採取し、臨床化学分析、血液学、凝固パラメータおよび尿分析のために血液および尿試料を採取する。
【0128】
(ベースライン/ランダム化:試験1日目)
スクリーニング来院の30日以内に予定される試験1日目の来院は朝に予定され、被験体は前日の深夜から絶食(液体抜きまたは食物抜き)している。病院に到着すると、対照は簡単な健康診断を受け、臨床化学分析、血液学、凝固パラメータおよび尿分析のため血液および尿試料を採取する。ランダム化番号および治療群を指定後、腰椎穿刺によりCSFを採取し、血液試料を採取しAβ測定のために血漿を調製する。腰椎穿刺後できるだけ早く、被験体は試験薬物療法の最初の用量を摂取する。
【0129】
試験薬物の最初の用量の投与後の約2〜3時間で、標準安静時12誘導心電図を測定し、生体反転の証拠を分析するため、試験薬物療法のための最初の用量の投与後3〜6時間でさらに血液試料を採取する。参加者は試験7日目、14日目および20日目に指示に従っていることを実証するための電話訪問を受ける。
【0130】
(試験21日目の来院)
先の来院と同様、被験体は来院する前に終夜絶食することが要請される。血液、尿および糞便試料を採取し、前の様に分析する。被験体は盲検検査担当者が投与する試験薬の病院における最後の用量を摂取し、標準食を取り、先週中のAEについて質問される。次いで被験体に全体的な健康診断を行う。試験薬の最終用量投与の2〜3時間後に標準安静時12誘導心電図を行う。試験21日目の試験薬の最終用量投与後の0.5、1、2、4および6時間、および可能ならば8および24時間にPK分析のための血液試料をさらに採取する。試験薬の最後の用量後の6時間以内に、CSFを採取するために腰椎穿刺を被験体に行う。最終用量後の以下の各間隔で約5〜6名の患者は腰椎穿刺を受ける:0〜2時間、2〜4時間および4〜6時間。全体的な健康診断のため、試験薬投与の最終日後約30日に被験体は病院に戻る。
【0131】
評価予定を以下の表に示す。
【0132】
【表7】

1.試験薬を試験1日目〜試験20日目に1日2回服用する。試験薬の朝の用量のみ試験21日目に服用する。
2.試験薬の最終用量後、0.5、1、2、4および6時間に採血する。可能ならば血液試料を最終用量投与後の8および24時間に採取する。
3.試験21日目に試験が陽性である場合のみ。
4.絶食を午後10時に開始し、最初の用量および腰椎穿刺まで続ける。
【0133】
(統計的考察)
安全性および許容性のエンドポイントには副作用、生命徴候、健康診断、ECG、臨床検査(血清生化学検査、血液学および尿分析、および糞便潜血)、および(R)−フルルビプロフェンの(S)−フルルビプロフェンへの生体反転が含まれる。R−フルルビプロフェンの(S)−フルルビプロフェンへの生体反転を(R)−フルルビプロフェンまたは(S)−フルルビプロフェンそれぞれの血漿濃度測定により評価する。他のエンドポイントは血漿薬物動態パラメータ、R−フルルビプロフェンのCSF濃度、およびアミロイド種Aβ42、Aβ40およびAβ38を含むCSFおよび血漿のAβ濃度である。薬物動態はR−フルルビプロフェンの血漿濃度の時間変化を測定して評価される。R−フルルビプロフェンの脳脊髄液濃度の時間変化は、可能であればCSF測定の実際の時間と、全ての被験体由来のデータの組み合わせとを用いて評価される。診査バイオマーカーであるアミロイド断片、Aβ38、Aβ40およびAβ42を、治療21日目のR−フルルビプロフェンの異なった用量レベル投与の前後に血漿およびCSF中で測定する。CSFおよび血漿中のバイオマーカーのベースラインレベルを、CSFおよび血漿中のバイオマーカーの最終レベルにおける治療の差を解析するための共変量として使用する。R−フルルビプロフェンの実際の、または見積もった血漿またはCSFレベルを、バイオマーカーの予測レベルにおける定量項として使用する。
【0134】
これは健康な被験体における安全性の検討であるため、効能分析を行わない。バイオマーカーの評価により、AD患者の将来の試験における効能評価に関連する基礎を提供するAβ−低下活性の証拠が提供されると思われる。
【0135】
(安全性分析)
全ての副作用の被験体発生率を、身体系、好ましい項目および重症度で作表し得る。表および/または「検査による」死亡の注釈、副作用による早期の中断を含む重症および有意の副作用も提供される。十分な数の事件があれば、グループ間の発生率を比較する統計解析を行う。
【0136】
ベースライン来院から検査終了来院への移動表は、健康診断の結果と全ての測定された臨床試験パラメータとを表す。定量臨床検査パラメータにおけるベースラインからの変化を、治療グループ間で比較する。生命徴候とECGパラメータとに対する記述統計が各来院およびベースラインからの変化に対して提供される。治療群をベースラインからの変化の差で比較する。
【0137】
R−フルルビプロフェンから(S)−フルルビプロフェンへの生体反転の発生率を治療群でまとめ、グループ間で比較する。
【0138】
(他の分析)
R−フルルビプロフェンの血漿濃度時間プロファイルを非線形モデリングを用いて解析し、PKパラメータの予備的推定値を得る。推定値には個体および平均半減期、クリアランス、AUC、Cmax、Tmaxおよび平均定常状態濃度が含まれる。R−フルルビプロフェンの脳脊髄液レベルを集計する。血漿濃度の時間変化が他の患者コホート中で見出されたものと同様であれば、集団PKパラメータを見積もるためにBayesian推定を使用し、この集団で観察されたPKパラメータを別な臨床試験で観察されたデータに照らして評価することができる。推定値には平均および個体PKパラメータの他、被験体間変動性の大きさも含まれる。
【0139】
治療群により、試験21日目のAβ42、Aβ40およびAβ38の血漿およびCSFレベルについて、集計統計が作表される。CSF中のAβ42レベルのベースラインからの変化が、共変量としてAβ42のベースラインを用いる共分散の分析を用いてグループ間で比較される。心臓保護アスピリンの使用とAβ42のレベルの変化との間の関係が決定される。
【0140】
(試験薬物療法:R−フルルビプロフェン−包装と処方)
全ての試験投薬形態(R−フルルビプロフェン200mg〜400mg、およびプラセボカプセル)を高密度ポリエチレン(HDPE)ボトル中に充填し、誘引内部シール付き耐冷却蓋を用いてキャップする。1名の被験体が試験1〜21日目を完了するのに必要な用量を含む2個のボトル(ボトルAおよびBそれぞれ1個)含むキット中にボトルを梱包する。
【0141】
(法規制および倫理的責務)
(試験の実施)
試験をアルツハイマー病共同研究(ADCS)標準操作手順に従って行う。これらの試験は以下のガイドラインを考慮する:
・E6医薬品の臨床試験の実施の基準(Good Clinical Practice):包括ガイダンス(Consolidated Guidance):(International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for the Registration of Pharmaceuticals for Human Use[ICH]、1996年5月)
・臨床試験を扱う連邦規制規則のUSタイトル21(21CFRパート11、50、54,56、312および314)
・人間における医学研究に関するヘルシンキ宣言(”Recommendations
Guiding Physicians in Biomedical Research Involving Human Patients,“ Helsinki 1964、修正:東京1975年、Venice 1983, Hong Kong 1989 and revised version of Somerset West,
Repulblic of SOuth Africa、1996年10月)。
【0142】
(インフォームドコンセントの要素)
被験体にリスクを伴う通常外、または非日常医療行為に入る前に、21CFRパート50に従う署名されたICFを各被験体から得るものとする(付録D参照)。インフォームドコンセント書類を潜在患者集団の言語(単数または複数)で準備するものとする。
【0143】
被験体が試験に参加する前に、目的、方法、予期される恩恵、および試験の潜在的な危険を適切に説明し、そしてプロトコール特異性行為または試験薬物療法を行う前に、試験責任医師は被験体から書面でインフォームドコンセントをえる責任がある。
【0144】
21CFRパート312.62で要求される様に、インフォームドコンセントの取得を被験体の診療記録に記入し、ICFに署名し、被験体とインフォームドコンセントの説明を行った担当者(必ずしも試験責任医師でなくてもよい)とは各自日付を記入するものとする。オリジナルの署名ICFを病院の方針に従って保管し、署名インフォームドコンセントのコピーを被験体に渡すものとする。
【0145】
(6.6 実施例6:アルツハイマー病に対するR−フルルビプロフェンの臨床試験)
本実施例はアルツハイマー型の軽度から中程度の痴呆を有する被験体における、認知および総合機能の尺度に対するR−フルルビプロフェンによる日常治療の効果のランダム化、二重盲検、プラセボ対照試験を提供する。
【0146】
(臨床仮説)
仮説:十分に耐え得る用量でのR−フルルビプロフェンによる治療は、ADAS−cog、CDR−sb、ADCS−ADL、NPI、CIBIC+およびMMSEを含む標準手段により測定した、アルツハイマー型の軽度から中程度の痴呆を有する被験体の認知および総合機能における減退を遅らせる。
【0147】
(試験デザイン)
被験体はアルツハイマー型の軽度から中程度の痴呆を有すると診断され、15以上、26以下のMini Mental State Examinationスコア(MMSE)を有する。用量が少なくとも3ヶ月間一定であれば、被験体はアセチルコリンエステラーゼ(AChE)インヒビターを服用していてもよい。被験体はAChEインヒビターの使用/無使用に対するランダム化で階層化される。3つの治療群中の201名の被験体(アームあたり67名の被験体)の標的が、12ヵ月後に任意の追跡治療を伴う12ヶ月に登録される(2つの治療群)。
【0148】
(被験体の適格性)
本発明試験の被験体はアルツハイマー型の軽度から中程度の痴呆を有し、以下の参加基準に合致する。
【0149】
(包含基準)
試験に参加するために、被験体はスクリーニング中に以下の包含基準に合致する:
・DSM IV(TR)による痴呆の診断を受け、可能なアルツハイマー病に対するNINCDS−ADRDA基準に一致する。
・12ヶ月以内にCTまたはMRIを受け、臨床的に有意の局所頭蓋内病変がないことが示されている。先の12ヶ月内にスキャンを受けていない場合は、CTスキャンを受ける。
・スクリーニングMMSEスコアが15以上、26以下である。
・スクリーニングModified Hachinski虚血Ischaemicスコアが4以下である。
・55歳以上の男女で、登録時に地域社会に住んでいる(すなわち保養施設または介護施設に住んでいない)。
・被験体のインフォームドコンセント書式(ICF)に署名し、試験期間中、参加する意思があり、参加が可能である。
・認知試験と試験来院手順に従うことを確認するため、英語の読み書き能力がある。
・知的障害を除外するため、6年間の教育または十分な職歴がある。
・女性被験体は不妊手術を受けているか、閉経後1年以上である必要がある。
・試験期間中、継続的なアスピリンの使用は心臓保護治療のみに限定される(例えば1日あたり325mg以下のアスピリン)。
【0150】
・治療用量がスクリーニングの前の少なくとも3ヶ月間一定であれば、AChEインヒビターを服用している被験体を登録してもよい:AChEインヒビターが禁忌であるか無効であれば、AChEインヒビターを服用していない被験体を登録してもよい。以前にAChEインヒビターで治療された被験体は、スクリーニング前の少なくとも30日間は薬を絶つ必要がある。
・被験体には英語を読み、理解し話すことができる、信頼できる介助人があり、介助人が来院時に同伴し、介助人承諾書に署名しなければならない。介助人は被験体と同居するか、または被験体の挙動の時間変化の有益な評価を行うに十分な被験体との接触が少なくとも週4日あり、毎日の試験投薬に従う用意ある必要がある。
・用量がランダム化前の少なくとも3ヶ月間一定であれば、抗うつ剤、抗精神病剤および/または抗不安剤、ビタミンE、および/またはGingco bilobaを服用している被験体は資格がある。
・試験評価に参加するのに適当な視力と聴力。
【0151】
(除外基準)
以下の除外基準のいずれかに当てはまる被験体は試験に参加しない:
・スクリーニングの前30日以内にADに対するメマンチン治療。
・癲癇、局所脳病変、意識喪失を伴う脳障害および/または傷害直後の錯乱の現在の徴候または過去2年間の病歴、または精神病、重症の鬱病、躁うつ病、アルコールまたは薬物中毒などの主要な精神障害に対するDSM−IV(TR)基準。
・フルルビプロフェンまたはCOX−2特異的インヒビターを含む他のNSAIDに対する過敏症の病歴。
・任意の用量のNSAIDの常用、または試験1日目前2ヶ月間、1ヶ月に7日以上のアスピリン325mg以上の服用
・過去3年以内の輸血または手術を必要とする上部GI出血の病歴
・過去3ヶ月以内の胃または十二指腸潰瘍の診断書
・NSAID関連潰瘍の病歴
・皮膚の基底細胞ガン腫または扁平細胞ガン腫を除き、参加前24ヶ月以内の重症疾患の病歴または証拠。前立腺がんを有する男性は、スポンサーの裁量で登録し得る。
・以下で定義される慢性または急性腎臓、肝臓または代謝病:
・クレアチニン>1.5mg/dL
・AST>2.5×正常の上限(ULN)
・ALT>2.5×ULN
・スクリーニング前の90日以内または半減期の5倍以内(いずれか長い方)の何らかの試験治療薬の使用
・試験1日目以前の12週間以内の大きな手術および関連する合併症
・制御不能な心臓状態(付録Bに記載されるNew York Heart AssociationクラスIIIまたはIV)
・ランダム化前の12週間以内のワーファリン等の抗凝固剤治療
・ランダム化前の2週間以内の何らかのCYP2C9インヒビター治療。CYP2C9インヒビターの例は以下の薬剤または漢方薬である:アミオダロン、フルコナゾール、フルボキサミン、イソニアジド、フェニルブタゾン、プロベニシド、スルファメトキサゾール、スルファフェナゾール、トリメトプリム、ザフィルルカスト、ダンシェン(Salvia miltiorrhiza);ナガバクコ
・CYP2C9基質フルバスタチン、トルブタミンまたはグリブリド(グリベンクラミド)による治療。
【0152】
(薬剤の用量、投与およびスケジュール)
薬剤の用量、投与およびスケジュールを以下にまとめる。被験体はボトルAから錠剤1個、ボトルBから錠剤1個を1日2回服用するように指示される。1日の間の投薬間隔は約12時間である。12ヶ月の試験に参加中、試験薬を毎日ほぼ同じ時刻に服用しなければならない。試験の3アームに対する1日の全用量は:
・800mgのR−フルルビプロフェン(400mgR−フルルビプロフェン錠剤1個およびプラセボ錠剤1個として服用、BID)
・1600mgのR−フルルビプロフェン(400mgR−フルルビプロフェン錠剤2個、BID)
・プラセボ(プラセボ錠剤2個、BID)
試験投薬を食事と共に、または食事なしで服用する。
【0153】
(併用治療)
併用薬物療法を全ての試験来院で評価する。薬剤併用は処方された、または処方箋なしの薬剤投与であり、包含/除外基準に一致しなければならない。2種以上の薬剤を併用する場合はいつでも、薬剤間の相互作用が存在する可能性がある。特に、フルルビプロフェンは酵素チトクロームP450(CYP)2C9の基質である薬剤の代謝を阻害することが示されている。
【0154】
試験責任医師は薬剤併用および漢方薬を厳密に追跡し、記録する必要があり、担当者の裁量で禁止する必要がある。管理された臨床試験を行わなければ、試験薬との相互作用の可能性を無視できない。試験期間中の規定された治療には以下が含まれる:
・AChEインヒビターの投薬の開始または変更
・メマンチンによる治療
・COX−2特異的インヒビターを含む7日間以上のNSAIDの使用または1ヶ月あたりアスピリン325/mg(心臓保護用量のアスピリン325mg/日の使用は許される)
・CYP2C9基質:R−フルルビプロフェンは酵素CYP2C9の基質である薬剤の代謝を阻害することが示されている。フルルビプロフェンおよびグリブリド、および経口低脂質剤であるトルブタミンおよびグリブリド(グリベンクラミド)による被験体の治療が試験中に必要になった場合、試験責任医師はその被験体を試験から除外する。試験中にワーファリンを必要とする被験体に対する凝固の綿密な追跡等の抗凝固剤治療が必要になった場合、試験責任医師は適当な予防策を取ることが推奨される。
・CYP2C9インヒビター:CYP2C9インヒビター(例えばアミノダロン、フルコナゾール、フルボキサミン、イソニアジド、ミコナゾール、フェニルブタゾン、プロベニシド、スルファメトキサゾール、スルファフェナゾール、テニポシド、トリメトプリム、ザフィルルカスト、ダンシェン(Salvia miltiorrhiza)、ナガバクコの併用
・アンダイス(登録商標)、フロベン(登録商標)、または任意の他のフルルビプロフェン含有医薬
・他の試験薬または手段
・細胞毒性化学療法。
【0155】
(研究法)
(効力評価)
試験中に各被験体に対しその適当な日の同じ時刻に効力評価を行うことが好ましい。
【0156】
(ADAS−cog)
アルツハイマー病評価尺度認知機能検査(ADAS−cog)は記憶、注意、推理、言語、方向性および習慣を評価する心理測定手段である。認知機能の変化を評価するため、ADAS−cogを資格のある専門家が行う。1日目、3ヶ月目、6ヶ月目、9ヶ月目、12ヶ月目、または12ヶ月目、15ヶ月目、18ヶ月目、21ヶ月目および24ヶ月目前の早期終了(または試験終了)に検査が行われる。
【0157】
(CDR−sb)
臨床痴呆評価尺度sum of boxes(CDR−sb)は、痴呆の重症度をなし、疑わしい、軽度、中程度または重症として格付けする臨床尺度である。スコアは6個のドメイン、すなわち記憶、方向性、判断および問題解決、地域社会問題、家庭と趣味、および個体的介護を評価する構造的面接を用いる被験体と介助者との面接に基づいている。地域別検査を標準化するために訓練が行われる。この手段は、CIBIC+検査も行うが、被験体の他の評価には関与しない経験のある各付け担当者により行われる。1日目、3ヶ月目、6ヶ月目、9ヶ月目、12ヶ月目、または12ヶ月目、15ヶ月目、18ヶ月目、21ヶ月目および24ヶ月目より前の早期終了(または試験終了)時に検査が行われる。
【0158】
(NPI)
神経精神医学的評価(NPI)は、資格のある専門家による介助者との面接に基づく、ADにおける広範囲の心理病理学を評価するために設計される。1日目、6ヶ月目、および12ヶ月目、または12ヶ月目より前の早期終了時に検査が行われる。
【0159】
(ADCS−ADL)
AD患者の実際的な機能の変化を評価するために設計されたアルツハイマー病評価尺度認知機能検査(ADCS−ADL)は、資格のある専門家により行われる。被験体が過去4週間中に調査票にある各項目を試みたか、およびその性能レベルにつき、介助者が質問される。この手段には伝統的な尺度(身支度、着替え、歩行、入浴、食事、トイレ)の他、手段ADL尺度(ショッピング、食事の用意、家庭用電気器具の使用、約束を守る、読書)を評価するための項目が含まれる。1日目、6ヶ月目、および12ヶ月目、または12ヶ月目より前の早期終了時に検査が行われる。
【0160】
(CIBIC+)
医師・介護者による臨床症状評価(CIBIC+)は、介助者との面接に基づく総合機能を評価するための手段である。被験体のCDR−sb検査も行うが、他の評価には関与しない経験のある各付け担当者によりCIBIC+検査が行われる。1日目、3ヶ月目、6ヶ月目、9ヶ月目、および12ヶ月目、または12ヶ月目より前の早期終了時に検査が行われる。検査の目的のため、1日目の面接がビデオテープに記録される。
【0161】
(MMSE)
Mini Mental State Examination(MMSE)はAD検査のために頻繁に用いられるスクリーニング手段である。この手段は方向性、記憶、注意、集中、名前、反復、理解、文章作成および2個の交叉する多角形を複製する能力を評価する。MMSEは適格性を確立するためにスクリーニング中に行われる。被験体の査定の変化を評価するため、6ヶ月目、12ヶ月目または12ヶ月目、18ヶ月目、24ヶ月目より前の早期終了(または試験の終了)時に検査が行われる。
【0162】
(安全性評価)
(全体的な健康診断)
スクリーニング時、および12ヶ月目、または12ヶ月目および24ヶ月目より前の早期終了(または試験終了)時に、全体的な健康診断が医学的に資格のある専門化により行われる。皮膚、頭/耳/眼/鼻/喉(HEENT)、呼吸器系、心臓血管系、胃腸系、内分泌系/代謝系、尿生殖器系(臨床的に明らかな場合)、神経系、血液系/リンパ系および筋骨格系を含む主要な身体系の再検討が行われる。身長(身長はスクリーニング来院時のみに測定される)、体重、および生命徴候(収縮期および拡張期血圧、心拍、体温、および呼吸)の評価も含まれる。全ての全体的な健康診断データが適当な原本書類に記録される。
【0163】
(簡易健康診断)
1、3、6、9、15、18、21ヶ月目、および30日の投薬中止追跡期間に、医学的に資格のある専門家により簡易健康診断を行う。先の来院からの如何なる変化も評価および記録して、身体系の再検討を評価する。生命徴候(収縮期および拡張期血圧、心拍、体温、および呼吸)の評価も含まれる。臨床検査結果の変化も評価される。医療行為の標準に従って、臨床的に優位な変化を追跡する。
【0164】
(心電図)
標準安静時12誘導心電図(ECG)測定をスクリーニング時、および12ヶ月目および24ヶ月目より前の早期終了(または試験終了)時に行うことが好ましい。ECG測定値、および可能ならばコンピュータ解析を試験責任医師がその場で再検討する。試験責任医師はECGの報告書を再検討し、署名し日付を記入する。試験責任医師により適当とみなされる場合は、臨床的に有意なECGによる発見を追跡する。
【0165】
(月例電話訪問)
可能なAE、試験投薬の遵守および訪問スケジュールを査定するために、介助者との毎月の電話による会話を行う。電話訪問は2週間、2、4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、22、23ヶ月の間に行われる(付属A、評価スケジュール参照)。
【0166】
(生命徴候)
生命徴候(収縮および拡張期血圧、心拍、体温および呼吸)を以下の来院のそれぞれで評価する:スクリーニング時、1日目、1、3、6、9、12ヶ月目、または12、15、18、21、24ヶ月目より前の早期終了(または検査終了)時、および30日間の投薬なしの追跡時に行う。
【0167】
(血液学、生化学および尿分析)
臨床化学分析用血液および尿試料をスクリーニング、1日目、1ヶ月目、3ヶ月目、6ヶ月目、9ヶ月目、12ヶ月目、または12ヶ月目、15ヶ月目、18ヶ月目、21ヶ月目、24ヶ月目より前の早期終了時(または検査終了時)、30日の無試験薬追跡時に採取し、測定値が検査室の正常範囲であるかどうか、もし範囲外であれば偏差が臨床的に有意であるかどうかを決定するために分析する。臨床的に有意である場合、適切な医療行為に従って臨床化学試験を繰り返す。各来院毎に臨床化学分析のために役17mLの血液を採取する。治療医療の介入が必要な場合、試験責任医師がAEであると考える場合、または検査の中断につながる場合のみ、異常な分析値をAEとして報告する。任意の来院時にヘモグロビン値がベースライン値から1.5g/dL以上減少すると、尿中の潜血を試験する標準治療が推奨される。それ以上の追跡ガイドラインは「Suggested Algorithm for Potential Upper GI Event」に見られる(付録C参照)。
【0168】
(統計的考察)
(試験デザイン)
(1次目的)
R−フルルビプロフェンの1回または2回用量レベルで治療されたAD患者の、ADAS−cogまたはCDR−sbで測定した認知および総合機能の変化の評価。
【0169】
(2次的および診査目的)
ADCS−ADLで測定した日常生活活動の変化の評価(2次的目的)、およびCIBIC+、MMSEおよびNPIで測定した総合性能、認知および挙動の変化の評価(診査目的)。
【0170】
(補助的観察)
本試験の補助的観察は以下を評価するためである:
・本被験体集団中のR−フルルビプロフェン治療の安全性
・R−フルルビプロフェンの集団PKおよびR−フルルビプロフェンの生体反転。
【0171】
(追跡治療の目的)
試験の二重盲検プラセボ対照部分における、プラセボに対し最初にランダム化された被験体に対し、R−フルルビプロフェンによる治療の機会を提供すること、および被験体が選ぶならば、全ての被験体がR−フルルビプロフェンによる治療を継続できるようにすること;およびADAS−cog、CDR−sbおよびMMSEで測定して認知および総合機能の長期変化を評価すること、およびAD患者の長期安全性を評価すること。
【0172】
(試験のエンドポイント、サブセットおよび共変量)
主な効力エンドポイントは、傾斜に基づくモデルを用いるCDR−sbおよびADAS−cogにおける変化率である。2次的な効力エンドポイントはADCS−ADLのスコアである。診査エンドポイントはCIBIC+、MMSEおよびNPIである。
【0173】
安全性エンドポイントにはAE発生率、健康診断におけるベースラインからの変化、および臨床化学検査結果が含まれる。補助的エンドポイントは、試験中に採取した血液試料由来の測定に基づくPKパラメータである。
【0174】
1次、2次および診査エンドポイントに対する効力分析には、共変量としてのベースラインスコア、および階層変数の項目(ベースラインにおけるAChEインヒビターの使用もしくは不使用)が含まれる。
【0175】
「Intent to Treat(ITT)」アプローチが用いられるが、任意の試験治療を受け、事後ベースライン効力評価を受ける全てのランダム化被験体が適当な帰属法を用いるITT集団に含まれる。Per Protocol分析集団には、主要な試験計画書に違反しなかったITT被験体中の全ての被験体が含まれる。主要な試験計画書に対する違反は、観察されたデータに基づき盲検を解く前に決定される。全ての効力分析をこの集団に対して繰り返す。2つの分析集団間の効力の結果の差を全て調べ、説明する。
【0176】
1次効力分析をITT集団で行い、800mgのBID治療群とプラセボ群との間でCDR−sbおよびADAS−cogスコアを比較する。CDR−sbおよびADAS−cogの双方に対する両側検定が、中間分析に対して調節した名目アルファ=0.05を用いて行われる。2次効力分析でも、両側検定により400mgのBID治療群をプラセボ群と比較する。タイプI誤差率を複数の比較で調節する。
【0177】
(試料サイズの考察)
試料サイズの計算は、12ヶ月目の各患者に対するADAS−cogスコアにおける平均減退の2グループ間の比較に基づいている。800mgBID群の効果サイズを60%、プラセボ群で推定減退5.5ポイントと仮定して、12ヶ月内に2.2ポイントの減退が観察されると思われる。推定標準偏差が6.4であれば、片側アルファ=0.05および脱落率28%で80%のパワーを達成するためには群あたり67のサンプルサイズが必要である。
【0178】
前記の最初のパワー計算はADAS−cogのみを用いる片側検定に基づいているが、1次分析はADAS−cogおよびCDR−sbの双方に対する両側検定について有意性分析を行うことに基づいている。ADAS−cogとCDR−sb双方についての差を検出する結合パワーを計算するため、ADAS−cogに対して同じ仮定を用い、CDR−sbに対する標準偏差を2.2として平均12ヶ月減退を1.57と仮定し、2次パワー計算を行った。ADAS−cogおよびCDR−sbの変化の間の相関を0.29と仮定した。最初の脱落率28%は慎重すぎると思われるため、この2次パワー計算には脱落率20%を使用した。30%を超える効果サイズは疾患改善効果を有する薬剤に対して臨床的に有意であると思われるため、文献に基づいて80%の効果サイズが妥当である。
【0179】
前記仮定を用い、本試験は両側検定、および名目アルファ=0.05を用いるADAS−cogおよびCDR−sb双方に対する80%効果サイズを検出するための80%パワーを有する。さらに、アルファ=0.01における両側検定を用いて効果サイズ80%を約50%のパワーで検出できる。
【0180】
(分析の計画された方法)
(一般考察)
個体群統計および他のベースライン特性を、ITT分析集団およびPer Protocol分析集団中の全ての被験体についてまとめる。被験体の身長、体重および年齢を表にまとめる。治療群をベースラインにおける類似性について統計的に評価し、その結果をITTおよびPer Protocol分析集団の間で比較し、適当であれば調節またはサブセット分析を行う。
【0181】
病歴、階層群(検査の最初におけるAChEインヒビター使用/不使用)、併用薬物療法、および検査治療遵守を治療群毎に表にまとめる。試験場所全体にわたる被験体の分布が治療群で表示される。定量データを平均、標準誤差、中間値および範囲でまとめる。計数値および割合を分類データで示す。
【0182】
(効力分析)
最初の効力成績、すなわちCDR−sbおよびADAS−cogを、800mgBID群とプラセボ群との間のCDR−sbおよびADAS−cogの変化率を比較して分析する。共変量としてのベースラインスコア、および試験の最初におけるAChEインヒビター使用/無使用に対する因子を用い、スロープに基づくモデルを用いて変化率を評価する。アルファ=0.10レベルで無意味であれば、相互作用を試験し、モデルから除外する。治療効果を試験するため、両側p−値を使用する。中間分析に対しタイプI誤差率を適当に調節する。同じモデルを用い、多重比較に対して調節する2次分析として、400mgBID群を800mgBID群およびプラセボ群と比較する。
【0183】
2次効力成績、ADCS−ADLに対するスコアの変化、および診査効力成績、CIBIC+、MMSEおよびNPIに対するスコアの変化を、治療項目、ベースラインスコアおよびベースラインにおけるAChEインヒビターの使用による一般線形モデルを用いて分析する。治療とベースラインスコア、およびベースラインにおけるAChEインヒビターの使用の間の相互作用を試験し、アルファ=0.10レベルで無意味であればモデルから除外する。
【0184】
(安全性分析)
任意の試験治療を受ける全てのランダム化被験体が安全性集団に含まれ、これが1次安全性分析集団である。
【0185】
AE発生率、健康診断、生命徴候測定、ECG測定、臨床検査値、および生体反転率に基づき安全性を評価する。AEの発生率を計数値および割合で治療群によりまとめる。治療と時間(投薬後)による生命徴候とECG測定に対する記述統計が提供される。R−フルルビプロフェンの血漿レベルの時間変化を治療群によりまとめる。
【0186】
(試験投薬治療−R−フルルビプロフェンおよびプラセボ錠剤)
(投薬形態および梱包)
全ての試験投薬形態(R−フルルビプロフェン400mgおよびプラセボ錠剤)を、誘導シールした内部シールによって冷却耐性密封を用いて蓋をした高密度ポリエチレンボトルに充填する。ボトルを各キット中に6個のボトルを含むキット中に包装する。各キット(ボトル「A」3個、ボトル「B」3個)は1名の被験体の3ヶ月間に必要な用量を含む。各キット中の各ボトルは、ボトルを被験体に分配する直前に取り外される取り外し可能盲検パネル付き2−パート−3−パネル二重盲検ボトルラベルでラベルされる。その後3ヶ月毎に、被験体が12ヶ月の投薬を完了するまで新しいキットが各被験体に分配される。合計4キットが各被験体に分配され、試験の12ヶ月投薬期間が完了する。
【0187】
(ラベル付け)
各キット、およびその中に含まれるボトルは、盲検を終了した時点で各ボトルの内容物を正確に同定する独自のランダム化されたキット番号で個別にラベルされる。ラベルの盲検部分は、投薬形態の識別と製造業者の製造ロット番号を含む。
【0188】
各ボトルラベルに含まれるキー情報には試験薬剤有効期日とラベルの取り外し可能部分(取り外し、CRFに添付される)が含まれる。
【0189】
(6.7 実施例7:R−フルルビプロフェンによるアルツハイマー病の治療)
R−フルルビプロフェンを400mgの活性成分を含む錠剤、または400mgの活性成分を含むカプセルとして1日2回投与することができる。この様な治療を必要とする患者により高い用量を投与することができるが、その場合は患者が例えば800mg用量のR−フルルビプロフェンを朝に、800mg用量のR−フルルビプロフェンを夕方に服用することを含み得る。典型的には、軽度から中程度のアルツハイマー病の治療では、観察の適当な組み合わせを用いて個体が医師により診断される。軽度から中程度のアルツハイマー病の可能性を示す1つの指針は、MMSE試験で約15〜約26のスコアである。軽度から中程度のアルツハイマー病を示す他の指針は認知機能の減退である。R−フルルビプロフェンを液体または薬注形式で投与することもできる。投薬量を分割または変更し、食餌と共に、または別に服用することもできる。例えば、400mg用量を200mgの錠剤またはカプセルに分割することもできる。
【0190】
病気の段階によって、NSAID(すなわちR−フルルビプロフェン)を液体、カプセルまたは錠剤投薬形態で1日2回投与することもできるが、用量は様々な量のR−フルルビプロフェンを有する(すなわち850mg、750mg、700mg、650mg、600mg、550mg、500mg、450mg、350mg、300mg、250mg、200mg、150mgおよび100mg)。ここでも、投薬量を分割または変更し、食事と共に、または食事と別に服用することができる。用量をアルツハイマー病またはその症候に対する薬餌療法を行いながら服用することができる。例えば、NSAIDを400mgの活性成分(すなわちR−フルルビプロフェン)、およびアセチルコリンインヒビター(すなわちタクリン(コグネックス(登録商標))、ドネペジル(アリセプ(登録商標)ト)、リバスチグミン(エクセロン(登録商標))、およびガランタミン(レミニル(登録商標))、および/またはNMDA拮抗剤(すなわちメマンチン))を含む錠剤として朝に投与することができる。これらの化合物の高い用量に伴う副作用を避けるため、アセチルコリンエステラーゼインヒビター(および/またはNMDA拮抗剤)、および/またはNSAIDの量を下げることが望ましいと思われる。または、アセチルコリンエステラーゼインヒビター(および/またはNMDA拮抗剤)およびNSAIDを単位投薬形態、すなわち液体、錠剤、カプセル等に一緒に処方することができる。
【0191】
約400mg〜約800mgのR−フルルビプロフェンで本実施例の治療法を行う軽度から中程度のアルツハイマー病を有する患者は、認知機能(ADAS−cogまたはCDR-sbで測定)、プラーク病変および/または生化学疾患マーカーの進行における減退の減少を経験することができる。
【0192】
(6.8 実施例8:アルツハイマー病の予防)
アルツハイマー病の発症の前に、または疾患の極めて初期段階(例えばMCIで診断された患者)で、アルツハイマー病に対する予防を所望する患者をR−フルルビプロフェンで治療することができる。予防を必要とする患者を、分析可能な疾患マーカーをモニターすること、疾患に対する素因を与える遺伝子の検出、食事等の他の危険因子、アルツハイマー病に関連する他の病態を追跡することにより評価できる。患者をNMDA拮抗剤(例えばメマンチン)およびR−フルルビプロフェンの組み合わせで治療し、アルツハイマー病の発症またはその症候を遅らせる、または阻止することができる。
【0193】
アルツハイマー病に対する予防、またはアルツハイマー病の症候の悪化の予防を所望する患者を、アルツハイマー病の症候の発症または進行を遅らせるのに十分な量のR−フルルビプロフェンで治療することができる。例えば、患者を800mgのNSAID(すなわちR−フルルビプロフェン)で1日2回治療することができる。他の予防法には患者に400mgのR−フルルビプロフェンを1日2回投与することが含まれる。これらの活性成分のこれらの量を変更して、副作用を減少する、または最も良い治療の恩恵を得ることができる。例えば、1日2回の200mgのR−フルルビプロフェンを投与して、より高いレベルの活性成分の使用に伴う副作用を減少する。予防治療はまた、例えば別な日、または別な週にR−フルルビプロフェンで治療することでもよい。他の予防法には4週間の間を置いて3週間R−フルルビプロフェンで治療すること、または数ヶ月の後で1ヶ月治療せず、次いでオン/オフスケジュールを変えて数ヶ月治療し、副作用または毒性問題を減少することが挙げられるが、これらに限定されない。
【0194】
約400mg〜800mgのR−フルルビプロフェン用量による本実施例の予防法を行っている、アルツハイマー病に対する予防を所望する、またはその必要のある患者は、アルツハイマー病の発症を減速するか遅らせる、またはアルツハイマー病の発生を阻止することができる。200mgの薬剤用量を1日2回投与することを含む低投薬量予防法を用いることが有利である。
【0195】
本明細書に記載した全ての文献と特許出願は、本発明が属する当業者のレベルを示すものである。個々の文献と特許出願を具体的かつ個別に引用して援用すること示すことと同程度に、全ての文献と特許出願を本明細書に引用して援用する。文献と特許出願を単に引用することは、必ずしもそれらが本出願に対し先行技術であることを認めることにはならない。
【0196】
理解を明確にする目的で前記の発明を説明と例示の例としてある程度詳細に記載してきたが、付属するクレームの範囲内である程度の変更と修正を行い得ることは明白であると思われる。
【0197】
(6.9 実施例9:薬物動態の検討)
前記実施例5に記載の様に臨床試験を行った。WinNonlin(登録商標)(Pharsight,Mountain View、CA)バージョン4.0を用いて薬物動態パラメータを求めた。1次消去および均一加重による1コンパートメントモデルを、吸収速度(K01)、消去速度(K10)および容積(V_F)に対するWinNonlin推定パラメータ境界で用いた。得られた個々の、および平均値パラメータにはK10半減期、Cmax(最大血漿濃度)、Tmax(最大血漿濃度時間)、AUC(血漿の時間/濃度曲線の下の面積)およびCl_F(クリアランス)が含まれる。モデルは以下の様に時間Tにおける濃度を計算する:
C(T)=DK01/V/(K01−K10)(EXP(−K10T)−EXP(−K01T) (1)、
ここで、C(T)は時間Tにおける濃度であり;Dは用量であり;Vは体積であり;V_Fは全身利用度分布の体積であり、K01は吸収速度定数であり;K10は排除速度定数であり、CL_Fは全身利用度のクリアランスであり;Tは時間である。モデルの概略を図1に示す。
【0198】
実際の投薬と採取時間は分析時にはできないという事実のため、単回投与(200mgBID、400mgBIDおよび800mgBID群に対しそれぞれ200、400および800mg)、および予期される血漿採取時点を用いてデータをモデル化した。
【0199】
800mgBID群中の患者#3および#10をモデル化する場合、曲線から離れる誤差を生じた。800mgBID群中の10名の他の患者由来の、WinNonlinで推定したK01,K10およびV_Fに対する平均パラメータ境界を有するソフトウエアを供給して誤差を解決した。K10_HLは最終半減期であり、当業者が認める様に、本明細書に開示する全てのT1/2値はK10_HLである。
【0200】
200BID、400BIDおよび800BIDに対する薬物動態分析の予測を図2に示す。得られた結果を以下の表に示す。
【0201】
【表8】

(7.引用文献)
本明細書に引用する全ての文献を、個々の文献または特許出願が具体的かつ個別に全ての目的のために引用して援用されるのと同程度に、全文を本明細書に引用して援用する。
【0202】
当業者に明らかなように、本発明の修正と変法の多くをその精神と範囲から逸脱せずに行うことができる。本明細書に記載の具体的な実施態様は例としてのみ提示されるものであり、本発明は付随するクレーム項と同時に、この様なクレームが標榜する等価のものの全範囲でのみ制約される。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】実施例5に説明する薬物動態学的研究に用いられた1コンパートメント薬物動態モデルを示す。
【図2】実施例5に開示された研究から得られた薬物動態の結果を示す。グラフは投与から0〜25時間後の個体の血漿中の200b.i.d.、400b.i.d.または800b.i.d.用量の平均濃度を示す。円:各投薬群に対する実際の平均血漿濃度、線:図1のモデルを用いる各投薬群に対する予測血漿濃度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の、R−フルルビプロフェンを含む組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−262091(P2007−262091A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181527(P2007−181527)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【分割の表示】特願2006−518971(P2006−518971)の分割
【原出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(304057634)ミリアド ジェネティクス, インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】