説明

アルツハイマー病の治療のためのアミノメチルベータセクレターゼ阻害剤

本発明はアルツハイマー病等のβセクレターゼ酵素が関与する疾患の治療に有用なβセクレターゼ酵素阻害剤であるアミノメチル化合物に関する。本発明はこれらの化合物を含有する医薬組成物と、βセクレターゼ酵素が関与する前記疾患の治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はβセクレターゼ酵素の阻害剤として有用な類のアミノメチル化合物と、アルツハイマー病等のβセクレターゼ酵素が関与する疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病はアミロイドが細胞外プラーク及び細胞内神経原線維変化として脳に異常沈着することを特徴とする。アミロイド蓄積速度は形成速度、凝集速度及び脳からの排出速度の総計である。アミロイドプラークの主成分は4kDアミロイド蛋白質(βA4、別称Aβ、β蛋白質及びβAP)であり、ずっと大きな寸法の前駆体蛋白質の蛋白分解物であることが一般に認められている。アミロイド前駆体蛋白質(APP又はAβPP)は大きな細胞外ドメインと、膜貫通領域と、短い細胞質テールからなる受容体様構造をもつ。AβドメインはAPPの細胞外ドメインと膜貫通ドメインの両者の一部を占めるので、Aβドメインの遊離はそのNH末端とCOOH末端を生成するために2つの別個の蛋白分解イベントが存在することを意味する。APPを膜から遊離し、APPの可溶性COOH切断形(APP)を生成する分泌メカニズムは少なくとも2種類ある。APPとそのフラグメントを膜から遊離するプロテアーゼは「セクレターゼ」と呼ばれる。殆どのAPPはAβ蛋白質の内部で切断してα−APPを遊離し、無傷のAβを遊離させない推定αセクレターゼにより遊離される。一部のAPPはAPPのNH末端付近で切断して完全Aβドメインを含むCOOH末端フラグメント(CTF)を生成するβセクレターゼ(「βセクレターゼ」)により遊離される。
【0003】
こうして、βセクレターゼないしβアミロイド前駆体蛋白分解酵素(「BACE」)の活性はアルツハイマー病の特徴であるAPPの異常切断、Aβ生成、及びβアミロイドプラークの脳内蓄積を引き起こす(R.N.Rosenberg,Arch.Neurol.,vol.59,Sep 2002,pp.1367−1368;H.Fukumotoら,Arch.Neurol.,vol.59,Sep 2002,pp.1381−1389;J.T.Huseら,J.Biol.Chem.,vol 277,No.18,issue of May 3,2002,pp.16278−16284;K.C.Chen and W.J.Howe,Biochem.Biophys.Res.Comm,vol.292,pp 702−708,2002参照)。従って、βセクレターゼないしBACEを阻害することができる治療剤はアルツハイマー病の治療に有用であると思われる。
【0004】
本発明の化合物はβセクレターゼないしBACEの活性を阻害し、従って不溶性Aβの形成を防ぎ、Aβ生成を阻止することによりアルツハイマー病を治療するために有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はβセクレターゼ酵素の阻害剤として有用であり、アルツハイマー病等のβセクレターゼ酵素が関与する疾患の治療に有用なアミノメチル化合物に関する。本発明はこれらの化合物を含有する医薬組成物と、βセクレターゼ酵素が関与する前記疾患の治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は式I:
【0007】
【化10】

[式中、
Aは5又は6員環ヘテロアリール基であり;
は−C0−3アルキレンであり、前記アルキレンは置換されていないか又は1個以上の
(1)ハロ、
(2)−C3−12シクロアルキル、
(3)−OH、
(4)−CN、
(5)−O−C1−10アルキル、及び
(6)−C1−10アルキルで置換されており;
は、
(1)−C6−10アリール、
(2)ヘテロアリール、
(3)−C1−10アルキル、及び
(4)−C3−8シクロアルキルから構成される群から選択され、前記シクロアルキルは場合によりC6−10アリール基と縮合しており、
前記Rアルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリール部分は置換されていないか又は1個以上の
(a)ハロ、
(b)−C1−10アルキル(前記アルキルは置換されていないか又はハロゲンで置換されている)、
(c)−OH、
(d)−CN、
(e)−O−C1−10アルキル、
(f)−C3−12シクロアルキル、及び
(g)−NR1011で置換されており、
10及びR11は、
(i)水素、
(ii)C1−10アルキル、及び
(iii)C0−6アルキレン−C6−10アリールから構成される群から選択されるか、
又はR10とR11はN原子と一緒になって4又は5個の環炭素原子をもつ炭素環基を形成し、環炭素原子の1個以上はN原子、O原子、S原子、−NH−基、−(C=O)−基又は−SO−基で置換されていてもよく;
は、
(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、及び
(3)−C2−10アルケニルから構成される群から選択され、
前記Rアルキル又はアルケニルは置換されていないか又は1個以上の
(a)ハロ、
(b)−C3−12シクロアルキル、
(c)−OH、
(d)−CN、
(e)−O−C1−10アルキル、
(f)−C6−10アリール、もしくは
(g)ヘテロアリールで置換されており、
前記アルキル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリール部分は置換されていないか又は1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−O−C1−10アルキル、
(v)−C1−10アルキル、もしくは
(vi)−C3−12シクロアルキルで置換されており;
及びRは、
(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C3−12シクロアルキル、
(4)−C2−10アルケニル、
(5)−C2−10アルキニル、
(6)−C0−3アルキレン−C6−10アリール、
(7)−C0−3アルキレン−ヘテロアリール、
(8)−C0−3アルキレン−Q−C1−10アルキル、及び
(9)−C0−3アルキレン−Q−C0−3アルキレン−C6−10アリールから構成される群から独立して選択され、
前記R及びRアルキル、アルキレン、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びヘテロアリール部分は置換されていないか又は1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル(前記アルキルは置換されていないか又は1個以上のハロゲンで置換されている)、
(e)−O−C1−10アルキル、
(f)−C3−12シクロアルキル、
(g)−C6−10アリール、
(h)ヘテロアリール、
(i)−SO21
(j)−SR21で置換されており、
21
(i)−C1−10アルキル(前記アルキルは置換されていないか又は1個以上のハロゲンで置換されている)、
(ii)−C6−10アリール、及び
(iii)ヘテロアリールから構成される群から選択され、
前記アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリール部分は置換されていないか又は1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−O−C1−10アルキル、
(v)−C3−12シクロアルキル、及び
(vi)−C6−10アリールで置換されており、

(a)−S−、
(b)−SO−、及び
(c)−O−から構成される群から選択されるか;
あるいはRとRはそれらが結合している炭素と一緒になって3〜12個の環炭素原子をもち、場合により1個の環二重結合をもつ炭素環基を形成し、環炭素原子の1個以上はN原子、O原子、S原子、−NH−基、−(C=O)−基又は−SO−基で置換されていてもよく;
X及びYは
(1)水素、
(2)−(Q)−C1−10アルキル、
(3)−(Q)−C3−12シクロアルキル、
(4)−(Q)−C2−10アルケニル、
(5)−(Q)−C2−10アルキニル、
(6)−(Q)−C0−3アルキレン−C6−10アリール、及び
(7)−(Q)−C0−3アルキレン−ヘテロアリールから構成される群から独立して選択され、
前記X及びYアルキル、アルキレン、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール部分は置換されていないか又は1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−O−C1−10アルキル、
(e)−C1−10アルキル(前記アルキルは置換されていないか又は1個以上のハロで置換されている)、
(f)−C3−12シクロアルキル、
(g)−C6−10アリール、及び
(h)ヘテロアリールで置換されており、

(a)結合、
(b)−S(=O)
(c)−S−、
(d)−O−、
(e)−NR12−、
(f)−NR12−S(=O)−、
(g)−NR12−C(=O)−(O)−、
(h)−C(=O)−(O)−、
(i)−O−C(=O)−、及び
(j)−NR12−CR1314−NR15−から構成される群から独立して選択され、
12、R13、R14及びR15は、
(i)水素、
(ii)−C1−10アルキル、
(iii)−C0−3アルキレン−C6−10アリール、又は
(iv)ヘテロアリールから構成される群から独立して選択されるか、
あるいはXとYはそれらが結合している窒素と一緒になって炭素環基:
【0008】
【化11】

を形成し、Z
(a)−CR1617
(b)−C(=O)、
(b)−CR1617C(=O)−、
(c)−C(=O)−C(=O)−、
(d)−C(=O)−CR1617、及び
(e)−SOから構成される群から選択され、
16及びR17
(i)水素、
(ii)C1−10アルキル、及び
(iii)C0−6アルキレン−C6−10アリールから構成される群から選択され、

(a)−CR1819
(b)−O−、
(c)−NR20、及び
(d)−N(C=O)−から構成される群から選択され、
18及びR19
(i)水素、
(ii)−C1−10アルキル、
(iii)−C2−10アルケニル、
(iv)−C2−10アルキニル、
(v)−C0−3アルキレン−C6−10アリール、
(vi)−C0−3アルキレン−C3−12シクロアルキル、及び
(vii)−C0−3アルキレン−NR1819から構成される群から選択され、
18及びR19
(A)水素、又は
(B)−C1−3アルキルから構成される群から選択されるか、
あるいはR18とR19はそれらが結合しているN原子と一緒になって4又は5個の環炭素原子をもつ炭素環基を形成し、環炭素原子の1個以上はN原子、O原子、S原子、−NH−基、−(C=O)−基又は−SO−基で置換されていてもよく;
20
(i)水素、
(ii)−C1−10アルキル(前記アルキルは置換されていないか又は1個以上のハロゲンで置換されている)、
(iii)−C(=O)−O−C1−10アルキル、
(iv)−C(=O)−C1−10アルキル、
(v)−C(=O)−O−C0−3アルキレン−C6−10アリール、
(vi)−C(=O)−C0−3アルキレン−C6−10アリールから構成される群から選択され、
前記アルキル、アルキレン、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル及びアリール部分は置換されていないか又は1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−C1−10アルキル(前記アルキルは置換されていないか又は1個以上のハロゲンで置換されている)、
(v)−O−C1−10アルキル、及び
(vi)−C3−12シクロアルキルで置換されており、
、R、R及びR
(a)水素、及び
(b)C1−3アルキルから構成される群から選択され、前記アルキルは置換されていないか又は1個以上のハロゲンで置換されているか、
あるいはRとRは一緒になってRとRが結合しているN含有環と縮合するC6−10アリールを形成してもよく、前記C6−10アリールは置換されていないか又は1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル(前記アルキルは置換されていないか又は1個以上のハロゲンで置換されている)、
(e)−O−C1−10アルキル、及び
(f)−C3−12シクロアルキルで置換されており;
mは0又は1であり;
nは1又は2である]の化合物及び医薬的に許容可能なその塩、並びにその個々のエナンチオマー及びジアステレオマーに関する。
【0009】
本発明はβセクレターゼ酵素活性ないしβアミロイド前駆体蛋白質分解酵素(「BACE」)活性の阻害を必要とする哺乳動物等の患者又は対象における前記活性の阻害剤としての上記式(I)の化合物の使用に関し、有効量の前記化合物を投与することを含む。「βセクレターゼ酵素」、「βアミロイド前駆体蛋白質分解酵素」、及び「BACE」なる用語は本明細書では同義に使用する。ヒト以外にも多様な他の哺乳動物を本発明の方法により治療することができる。
【0010】
本発明は更にヒト及び動物におけるβセクレターゼ酵素活性の阻害用医薬又は組成物の製造方法として、本発明の化合物を医薬担体又は希釈剤と配合する段階を含む方法に関する。
【0011】
本発明の好ましい態様において、Aは、
【0012】
【化12】

から構成される群から選択される。特に好ましいA基としては、
【0013】
【化13】

が挙げられる。
【0014】
本発明の好ましい態様において、QはCHである。本発明のより好ましい態様において、QはCHであり、Rはフェニル(好ましくは非置換フェニル)である。
【0015】
代替態様において、QはCアルキレン(結合)でもよく、RはRとNH基に更に結合する炭素と直接結合する。
【0016】
本発明の好ましい態様において、RはC1−10アルキル、より好ましくはC1−3アルキル、より好ましくは非置換C1−3アルキル(好ましくは非置換メチル)である。
【0017】
本発明の所定態様において、XとYはそれらが結合している窒素と一緒になって炭素環基:
【0018】
【化14】

を形成する。これらの態様では、Zは−C(=O)−C(=O)−であり、ZはNR20であることが好ましい。これらの態様の別の好ましい変形では、Zは−C(=O)−であり、ZはNR20である。別の好ましい変形では、Zは−CR1617C(=O)−、−C(=O)−CR1617(R16及びR17は各々水素であることが好ましい)及び−SOから選択され、ZはNR20である。
【0019】
所定態様では、XとYが一緒になって炭素環基を形成するとき、下式:
【0020】
【化15】

に示すように、RとRは一緒になってRとRが結合しているN含有環と縮合するC6−10アリールを形成してもよい。
【0021】
この態様では、縮合C6−10アリールは置換されていなくてもよいし、1個以上のR22で置換されていてもよく、R22は、
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル(前記アルキルは置換されていないか又は1個以上のハロゲンで置換されている)、
(e)−O−C1−10アルキル、及び
(f)−C3−12シクロアルキルから構成される群から選択される。
【0022】
1態様では、本発明の化合物は式(II):
【0023】
【化16】

(式中、R、R、X及びYは上記に定義した通りである)の化合物及び医薬的に許容可能なその塩、並びにその個々のエナンチオマー及びジアステレオマーである。
【0024】
本発明の化合物は式(II’):
【0025】
【化17】

(式中、R、R、X及びYは上記に定義した通りである)の化合物及び医薬的に許容可能なその塩、並びにその個々のエナンチオマー及びジアステレオマーがより好ましい。
【0026】
式(I)、(II)及び(II’)の1態様において、Rは水素又はC1−3アルキルである。所定態様において、Rは水素又はC1−3アルキルであり、Rは水素又はC0−3アルキレン−C6−10アリールである。
【0027】
別の態様において、本発明は式(III):
【0028】
【化18】

(式中、R、R、R、R、Q、Z及びZは上記に定義した通りである)の化合物及び医薬的に許容可能なその塩、並びにその個々のエナンチオマー及びジアステレオマーに関する。
【0029】
本発明の化合物は式(III’):
【0030】
【化19】

(式中、R、R、Z及びZは上記に定義した通りである)の化合物及び医薬的に許容可能なその塩、並びにその個々のエナンチオマー及びジアステレオマーと、式(III”):
【0031】
【化20】

(式中、R、R、Z及びZは上記に定義した通りである)の化合物及び医薬的に許容可能なその塩、並びにその個々のエナンチオマー及びジアステレオマーがより好ましい。
【0032】
III、III’及びIII”の化合物の1態様において、Zは−C(=O)−C(=O)−、−CH−C(=O)−、又は−C(=O)−CHであり、ZはN−R20が好ましい。
【0033】
III、III’及びIII”の化合物の別の態様において、ZはSO又は−C(=O)−であり、Zは−CR1819又はN−R20が好ましい。
【0034】
本発明の別の態様は下記実施例の標題化合物と医薬的に許容可能なその塩から選択される化合物を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
単独又は別の置換基の一部として本明細書で使用する「アルキル」なる用語は指定炭素原子数の飽和直鎖又は分岐鎖炭化水素基を意味する(例えばC1−10アルキルとは炭素原子数1〜10のアルキル基を意味する)。本発明で使用するのに好ましいアルキル基は炭素原子数1〜6のC1−6アルキル基である。アルキル基の例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0036】
単独又は別の置換基の一部として本明細書で使用する「アルキレン」なる用語は指定炭素原子数の飽和直鎖又は分岐鎖2価炭化水素基を意味する。(例えば「−Cアルキレン−C6−10アリール」基における)Cアルキレンなる用語は結合を表し、アルキレン基が存在しないことを意味する。
【0037】
単独又は別の置換基の一部として本明細書で使用する「アルケニル」なる用語は単一炭素−炭素二重結合をもつ指定炭素原子数の直鎖又は分岐鎖炭化水素基を意味する(例えばC2−10アルケニルとは炭素原子数2〜10のアルケニル基を意味する)。本発明で使用するのに好ましいアルケニル基は炭素原子数2〜6のC2−6アルケニル基である。アルケニル基の例としてはエテニルとプロペニルが挙げられる。
【0038】
単独又は別の置換基の一部として本明細書で使用する「アルキニル」なる用語は単一炭素−炭素三重結合をもつ指定炭素原子数の直鎖又は分岐鎖炭化水素基を意味する(例えばC2−10アルキニルとは炭素原子数2〜10のアルキニル基を意味する)。本発明で使用するのに好ましいアルキニル基は炭素原子数2〜6のC2−6アルキニル基である。アルキニル基の例としてはエチニルとプロピニルが挙げられる。
【0039】
単独又は別の置換基の一部として本明細書で使用する「シクロアルキル」なる用語は指定炭素原子数の飽和単環、多環、スピロ環又は架橋環状炭化水素基を意味する(例えばC3−12シクロアルキルとは炭素原子数3〜12のシクロアルキル基を意味する)。好ましいシクロアルキル基としてはC3−8シクロアルキル基、特にC3−8単環式シクロアルキル基が挙げられる。単環式シクロアルキル基の例としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。架橋シクロアルキル基の例としてはアダマンチルとノルボルニルが挙げられる。
【0040】
単独又は別の置換基の一部として本明細書で使用する「炭素環」なる用語は上記に定義したシクロアルキル基、又は非芳香族複素環基を意味する。単独又は別の置換基の一部としての非芳香族複素環基とは環炭素原子の1個以上がヘテロ原子(例えばN、S又はO)、−NH−基、−C(=O)基又は−SO−基で置換された上記に定義したシクロアルキル基を意味する。例えば、非芳香族複素環は−(C=O)−O−又は−(C=O)−N−基を含むことができる。本発明で使用するのに適した非芳香族複素環としてはピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル及びイミダゾリジニルが挙げられる。
【0041】
上記に定義した非芳香族複素環基が置換されているとき、置換基は複素環基の環炭素原子に結合していてもよいし、置換を可能にする原子価をもつ環ヘテロ原子(即ち窒素、酸素又は硫黄)に結合していてもよい。置換基は環炭素原子に結合していることが好ましい。同様に、非芳香族複素環基が本明細書で置換基として定義されるとき、結合点は複素環基の環炭素原子にあってもよいし、結合を可能にする原子価をもつ環ヘテロ原子(即ち窒素、酸素又は硫黄)にあってもよい。結合は環炭素原子に位置することが好ましい。
【0042】
単独又は別の置換基の一部として本明細書で使用する「アリール」なる用語は指定炭素原子数の芳香族又は環状基を意味する(例えばC6−10アリールとは炭素原子数6〜10のアリール基を意味する)。本発明で使用するのに好ましいアリール基としてはフェニルとナフチルが挙げられる。
【0043】
「ハロ」又は「ハロゲン」なる用語はフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを意味する。
【0044】
単独又は別の置換基の一部として本明細書で使用する「ヘテロアリール」なる用語は少なくとも1個の環ヘテロ原子(O、N又はS)をもつ芳香族環状基を意味する。本発明で使用するヘテロアリール基の例としてはフラニル、ピラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、チエニル、チオフェニル、チアゾリル、ベンゾチオフェニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリミジニル、ピリダジニル、テトラゾリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、キノリル、インデニル、トリアジニル、トリアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、ベンゾオキサゾリル、及びイソキノリルが挙げられる。好ましいヘテロアリール基は5〜10員環である。より好ましいヘテロアリール基は5又は6員環である。
【0045】
本明細書に定義するヘテロアリール基が置換されているとき、置換基はヘテロアリール基の環炭素原子に結合していてもよいし、置換を可能にする原子価をもつ環ヘテロ原子(即ち、窒素、酸素又は硫黄)に結合していてもよい。置換基は環炭素原子に結合していることが好ましい。同様に、ヘテロアリール基が本明細書で置換基として定義されるとき、結合点はヘテロアリール基の環炭素原子にあってもよいし、結合を可能にする原子価をもつ環ヘテロ原子(即ち窒素、酸素又は硫黄)にあってもよい。結合は環炭素原子に位置することが好ましい。
【0046】
本発明の化合物は少なくとも1個の不斉中心をもつ場合がある。分子上の各種置換基の種類に応じて2個以上の不斉中心が存在する場合もある。不斉中心をもつ化合物はエナンチオマー(光学異性体)、ジアステレオマー(立体配置異性体)又はその両者を形成し、混合物及び純化合物又は部分精製化合物としての可能な全エナンチオマー及びジアステレオマーを本発明の範囲に含むものとする。本発明はこれらの化合物のこのような全異性形を含むものとする。
【0047】
エナンチオマーもしくはジアステレオマーの含有率の高い化合物の個々の合成、又はそのクロマトグラフィー分離は本明細書に開示する方法を適切に変更することにより当分野で公知の通りに実施することができる。その絶対立体化学は公知絶対配置の不斉中心を含む試薬で必要に応じて誘導体化した結晶生成物又は結晶中間体のX線結晶解析により決定することができる。
【0048】
所望により、個々のエナンチオマーを単離するように化合物のラセミ混合物を分離してもよい。分離は化合物のラセミ混合物を純エナンチオマー化合物とカップリングしてジアステレオマー混合物を形成した後に分別結晶法やクロマトグラフィー等の標準方法により個々のジアステレオマーを分離する等の当分野で周知の方法により実施することができる。カップリング反応は多くの場合には純エナンチオマー酸又は塩基を使用する塩形成である。その後、付加キラル残基の開裂によりジアステレオマー誘導体を純エナンチオマーに変換することができる。キラル固定相を使用するクロマトグラフィー法により化合物のラセミ混合物を直接分離することもでき、このような方法は当分野で周知である。
【0049】
あるいは、当分野で周知の方法により公知配置の光学的に純粋な出発材料又は試薬を使用して立体選択的合成により化合物の任意エナンチオマーを得ることもできる。
【0050】
本発明の化合物は下記一般手順に従って製造することができる。
【0051】
スキーム1.1では、1.1.1型アミノ酸誘導体を対応する1.1.2型Boc保護アミノ酸に変換する。ヒドラジンとカップリングすると、1.1.3型中間体が得られる。グリシンシッフ塩基1.1.4の2段階アルキル化により1.1.5等の保護第3級カルビンアミンアミノ酸誘導体が得られる。化合物1.1.2の代替経路としてシッフ塩基脱保護後にエステル還元してもよい。1.1.5の合成のための1.1.4のアルキル化は文献に記載されているようにエナンチオ選択的に実施することができる(K.Maruokaら,J.Am.Chem.Soc.2000,122,5228−5229及びM.Northら,Tetrahedron Lett.2003,44,2045−2048参照)。
【0052】
【化21】

【0053】
スキーム1.2は1.2.4型中間体の合成を示す。アミノ酸誘導体1.2.1のザンドマイヤー反応により対応するα−ブロモ酸1.2.2が得られ、酸性条件下でメチルエステル1.2.3に容易に変換することができる。酸1.2.2とアシルヒドラジド1.1.3のEDCカップリングと脱水により所望オキサジアゾール1.2.4が得られる。
【0054】
【化22】

【0055】
アミノアルコール1.3.2の合成をスキーム1.3に示す。保護アミノ酸1.1.2の還元後に酸化すると、アルデヒド1.3.1が得られる。求核条件下でエポキシ化後にアンモニアでエポキシドを開環すると、アミノアルコール1.3.2が得られる。
【0056】
【化23】

【0057】
2.1.4、2.1.5及び2.1.6型中間体の合成をスキーム2.1に示す。市販エチレンジアミン誘導体2.1.1の還元アミノ化後にBoc脱保護すると、共通中間体2.1.3が得られる。共通中間体をエチルグリコラートと反応させるとジケトピペラジン2.1.4が得られ、カルボニルジイミダゾールと反応させると尿素2.1.5が得られ、塩化スルホニルと反応させるとスルファミン酸塩2.1.6が得られる。
【0058】
【化24】

【0059】
スキーム2.1からの付加物をスキーム2.2に示すように2.2.3及び2.2.4型の酸に更に変換することができる。2.2.1をブロモ酢酸メチルでアルキル化すると2.2.2が得られ、その後、エステル鹸化すると酸2.2.3が得られる。2.2.2のアルキル化は鹸化により2.2.4型の酸を生じるような塩基性条件下で実施することができる。アルキル化シーケンスの種類に応じてモノ置換付加物(R=H)とスピロ環系(Rはジブロモエタン等の二官能性求電子剤であり、塩基2当量を使用する)が得られる。2.2.4(R=H)の代替経路として、2.2.1を1.2.3型のα−ブロモエステルでアルキル化した後に鹸化してもよい。
【0060】
【化25】

【0061】
スキーム3.1は2.2.3及び2.2.4型の酸(一般式として酸3.1.1により示す)のカップリングを示す。脱水とBoc脱保護により3.1.2が得られる。
【0062】
【化26】

【0063】
スキーム3.2は3.1.2型の化合物の代替経路を示す。3.1.2の代替経路として、誘導体2.1.4、2.1.5又は2.1.6(一般式として3.2.1により示す)の脱保護後にα−ブロモオキサジアゾール1.2.4でアルキル化し、Boc脱保護してもよい。
【0064】
【化27】

【0065】
スキーム3.3は3.3.1型のオキサゾールの合成を示す。酸2.2.3及び2.2.4(一般式として3.1.1により示す)のカップリング、アルコール酸化、環脱水及びBoc脱保護により3.3.1が得られる。
【0066】
【化28】

【0067】
「実質的に純粋」なる用語は当分野で公知の分析技術によりアッセイした場合に単離材料が少なくとも90%純粋、好ましくは95%純粋、より好ましくは99%純粋であることを意味する。
【0068】
「医薬的に許容可能な塩」なる用語は無機又は有機塩基と無機又は有機酸を含む医薬的に許容可能な非毒性塩基又は酸から製造される塩を意味する。本発明の化合物は化合物の遊離塩基形態に存在する酸官能基の数に応じてモノ、ジ又はトリス塩とすることができる。無機塩基から誘導される遊離塩基及び塩としてはアルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、三価鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、三価マンガン、二価マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等が挙げられる。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩が特に好ましい。固体形態の塩は2種以上の結晶構造で存在してもよいし、水和物形態でもよい。医薬的に許容可能な非毒性有機塩基から誘導される塩としては第一、第二、及び第三アミン、置換アミン(天然置換アミンを含む)、環状アミン、並びに塩基性イオン交換樹脂(例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等)の塩が挙げられる。本発明の化合物が塩基性である場合には、無機酸や有機酸等の医薬的に許容可能な非毒性酸から塩を製造することができる。このような酸としては酢酸、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、琥珀酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、フマル酸、及び酒石酸が特に好ましい。
【0069】
本発明の化合物はアルツハイマー病の治療、改善、防止又は危険低減に有用である。例えば、本化合物はアルツハイマー型の痴呆の予防と、アルツハイマー型の初期、中期又は後期痴呆の治療に有用であると思われる。本化合物はアミロイド前駆体蛋白質(別称APP)の異常切断により媒介される疾患、及びβセクレターゼの阻害により治療又は予防することができる他の病態の治療、改善、防止又は危険低減にも有用であると思われる。このような病態としては軽度認知障害、トリソミー21(ダウン症候群)、脳アミロイド血管症、変性痴呆、オランダ型遺伝性アミロイド性脳卒中(HCHWA−D)、クロイツェルフェルト・ヤコブ病、プリオン疾患、筋萎縮性測索硬化症、進行性核上麻痺、頭部外傷、卒中、ダウン症候群、膵炎、封入体筋炎、他の末梢アミロイド症、糖尿病及びアテローム性動脈硬化症が挙げられる。
【0070】
本発明の化合物を投与する対象又は患者は一般にβセクレターゼ酵素活性の阻害が所望される男性又は女性であるが、βセクレターゼ酵素活性の阻害又は上記疾患の治療が所望される他の哺乳動物(例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、サル、チンパンジー又は他のサル類もしくは霊長類)でもよい。
【0071】
本発明の化合物は薬剤を併用したほうが単剤よりも安全又は有効である場合には、本発明の化合物が有用である疾患又は病態の治療に1種以上の他の薬剤と併用することができる。更に、本発明の化合物は本発明の化合物の副作用又は毒性を治療、予防、防止、改善、又は危険低減する1種以上の他の薬剤と併用することもできる。このような他の薬剤はこのような用途に通常使用されている経路と量で本発明の化合物と同時又は順次投与することができる。従って、本発明の医薬組成物としては、本発明の化合物以外に1種以上の他の活性成分を含有するものが挙げられる。併用剤は単位剤形併用製剤の一部として投与してもよいし、1種以上の付加薬剤を治療レジメンの一部として別個の剤形で投与するキット又は治療プロトコールとして投与してもよい。
【0072】
単位用量又はキット形態の本発明の化合物と他の薬剤の併用剤の例としては例えば他のβセクレターゼ阻害剤又はγセクレターゼ阻害剤;τリン酸化阻害剤;M1受容体ポジティブアロステリックモジュレーター;Aβオリゴマー形成阻害剤;5−HTモジュレーター(例えばPRX−03140、GSK742467、SGS−518、FK−962、SL−65.0155、SRA−333及びキサリプロデン);p25/CDK5阻害剤;NK1/NK3受容体アンタゴニスト;COX−2阻害剤;HMG−CoAレダクターゼ阻害剤;NSAID(例えばイブプロフェン);ビタミンE;抗アミロイド抗体(例えば抗アミロイドヒト化モノクローナル抗体);抗炎症性化合物(例えば(R)−フルルビプロフェン、ニトロフルルビプロフェン、ロシグリタゾン、ND−1251、VP−025、HT−0712及びEHT−202);CB−1受容体アンタゴニスト又はCB−1受容体逆アゴニスト;抗生物質(例えばドキシサイクリン及びリファムピン);N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニスト(例えばメマンチン及びネラメキサン);コリンエステラーゼ阻害剤(例えばガランタミン、リバスチグミン、ドネペジル、タクリン、フェンセリン、ラドスチジル及びABT−089);成長ホルモン分泌促進剤(例えばイブタモレン、メシル酸イブタモレン、及びカプロモレリン);ヒスタミンHアンタゴニスト(例えばABT−834、ABT829及びGSK189254);AMPAアゴニスト又はAMPAモジュレーター(例えばCX−717、LY451395及びS−18986);PDE IV阻害剤;GABA逆アゴニスト;ニューロンニコチンアゴニスト;選択的M1アゴニスト;微小管親和性調節キナーゼ(MARK)リガンド;P−450阻害剤(例えばリトナビル)等のアルツハイマー治療薬;あるいは本発明の化合物の効力、安全性、利便性を増すか又は望ましくない副作用もしくは毒性を低減する受容体又は酵素に作用する他の薬剤との併用剤が挙げられる。上記併用剤は例証に過ぎず、限定的ではない。
【0073】
本明細書で使用する「組成物」なる用語は所定量又は比率の特定成分を含有する製剤と、特定量の特定成分の併用により直接又は間接的に得られる任意製剤を意味する。医薬組成物に関してこの用語は1種以上の活性成分と場合により不活性成分を含むキャリヤーを含有する製剤と、成分の任意2種以上の配合、錯化もしくは凝集、成分の1種以上の解離、又は成分の1種以上の他の型の反応もしくは相互作用により直接又は間接的に得られる任意製剤を含むものとする。一般に、医薬組成物は活性成分を液体キャリヤー又は微粉状固体キャリヤー又は両者と均質混和した後に必要に応じて生成物を所望製剤に成形することにより製造される。医薬組成物には、疾患の進行又は病態に所望効果を与えるために十分な量の目的活性化合物が含有される。従って、本発明の医薬組成物は本発明の化合物と医薬的に許容可能なキャリヤーを混合することにより製造される任意組成物を含む。
【0074】
経口用医薬組成物は医薬組成物の製造に当分野で公知の任意方法により製造することができ、このような組成物は医薬的にエレガントで口当たりのよい製剤にするために甘味剤、香味剤、着色剤及び防腐剤から構成される群から選択される1種以上の添加剤を添加することができる。タブレットはタブレットの製造に適した医薬的に許容可能な非毒性賦形剤との混合物として活性成分を含有することができる。これらの賦形剤としては例えば不活性希釈剤(例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム);顆粒化剤及び崩壊剤(例えばコーンスターチ又はアルギン酸);結合剤(例えば澱粉、ゼラチン又はアラビアガム)及び滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク)が挙げられる。タブレットはコーティングしなくてもよいし、胃腸管での崩壊と吸収を遅らせることにより長時間持続作用を提供するように公知技術によりコーティングしてもよい。
【0075】
経口用組成物は活性成分を不活性固体希釈剤(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリン)と混合したハードゼラチンカプセルの形態でもよいし、活性成分を水又は油性媒体(例えば落花生油、流動パラフィン、又はオリーブ油)と混合したソフトゼラチンカプセルの形態でもよい。
【0076】
他の医薬組成物としては、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物として活性材料を含有する水性懸濁液が挙げられる。更に、植物油(例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油又はココナツ油)又は鉱油(例えば流動パラフィン)に活性成分を懸濁することにより油性懸濁液に製剤化することもできる。本発明の医薬組成物は水中油エマルションの形態でもよく、これに更に甘味剤や香味剤等の賦形剤を添加してもよい。
【0077】
医薬組成物は公知技術に従って製剤化することが可能な注射用滅菌水性又は油性懸濁液の形態でもよいし、薬剤の直腸投与用座剤形態で投与することもできる。
【0078】
本発明の化合物は当業者に公知の吸入装置を使用して吸入投与してもよいし、経皮パッチにより投与してもよい。
【0079】
「医薬的に許容可能」とはキャリヤー、希釈剤又は賦形剤が製剤の他の成分と適合可能でなければならず且つそのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0080】
化合物「の投与」又は「を投与する」なる用語は治療に有用な形態と治療に有用な量で個体の体内に導入可能な形態で治療を必要とする個体に本発明の化合物を提供することを意味し、限定されないが、経口剤形(例えばタブレット、カプセル、シロップ、懸濁液等);注射剤形(例えばIV、IM、又はIP等);経皮剤形(例えばクリーム、ゼリー、散剤、又はパッチ);バッカル剤形;吸入用散剤、スプレー、懸濁液等;及び直腸座剤が挙げられる。
【0081】
「有効量」又は「治療有効量」なる用語は研究者、獣医、医師又は他の臨床医学者により求められる組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発する該当化合物の量を意味する。
【0082】
本明細書で使用する「治療」又は「治療する」なる用語は本発明の化合物の任意投与を意味し、(1)疾患の症状又は症候をもつか又は示す動物において疾患を抑制する(即ち症状及び/又は症候の更なる進行を抑える)か、あるいは(2)疾患の症状又は症候をもつか又は示す動物において疾患を改善する(即ち症状及び/又は症候を逆行させる)ことを含む。「防止」なる用語は防止する病態を予防、治療、根絶、改善又は他の方法でその重篤度を低減することを含む。
【0083】
本発明の化合物を含有する組成物は単位剤形の形態とすると簡便であり、製薬分野で周知の任意方法により製造することができる。「単位剤形」なる用語は患者又は薬剤を患者に投与する者が全用量を収容した単一容器又はパッケージを開封することができ、2個以上の容器又はパッケージからの成分を混合する必要がないように、全活性成分及び不活性成分を適切なシステムに一体にした単一用量を意味する。単位剤形の典型例は経口投与用タブレットもしくはカプセル、注射用単一用量バイアル、又は直腸投与用座剤である。単位剤形の前記具体例は限定的ではなく、単位剤形の典型例を表すものに過ぎない。
【0084】
本発明の化合物を含有する組成物はキット形態とし、活性成分又は不活性成分、キャリヤー、希釈剤等の2種以上の成分に加え、患者又は薬剤を患者に投与する者が実際の剤形を調製するための説明書を添付すると簡便である。このようなキットは必要な全材料及び成分をキットに梱包してもよいし、材料又は成分を使用又は調製するための説明書は患者又は薬剤を患者に投与する者が別に入手するようにしてもよい。
【0085】
アルツハイマー病又は本発明の化合物の適応症である他の疾患を治療、改善、防止、又は危険低減する場合には、1日用量約0.1mg〜約100mg/kg動物体重の本発明の化合物を好ましくは1日1回又は1日2〜6回に分けるか又は持続放出形態で投与すると一般に満足な結果が得られる。合計1日用量は約1.0mg〜約2000mg、好ましくは約0.1mg〜約20mg/kg体重である。体重70kgの成人の場合、合計1日用量は一般に約7mg〜約1,400mgとなる。最適治療応答が得られるようにこの投与レジメンを調節することができる。1日1〜4回、好ましくは1日1回又は2回のレジメンで化合物を投与することができる。
【0086】
本発明の化合物又は医薬的に許容可能なその塩の特定投与用量としては1mg、5mg、10mg、30mg、80mg、100mg、150mg、300mg及び500mgが挙げられる。本発明の医薬組成物は活性成分約0.5mg〜1000mg;より好ましくは活性成分約0.5mg〜500mg;又は活性成分0.5mg〜250mg;又は活性成分1mg〜100mgを含有する製剤として提供することができる。治療に有用な特定医薬組成物は活性成分約1mg、5mg、10mg、30mg、80mg、100mg、150mg、300mg及び500mgを含有することができる。
【0087】
しかし、当然のことながら、任意特定患者の特定用量レベル及び投与頻度は変えることができ、使用する特定化合物の活性、この化合物の代謝安定性と作用期間、年齢、体重、一般健康状態、性別、食事、投与方法及び時間、排泄速度、薬剤併用、特定病態の重篤度、並びに宿主が受けている治療等の種々の因子によって異なる。
【0088】
βセクレターゼ酵素活性阻害剤としての本発明の化合物の有用性は当分野で公知の方法により立証することができる。酵素阻害は以下のように測定する。
【0089】
ECLアッセイ:ビオチン化BACE基質を使用して均質終点電気化学発光(ECL)アッセイを実施する。基質のKmは100μMを上回り、基質の溶解限度により測定できない。典型的反応は約0.1nM酵素、0.25μM基質、及び緩衝液(50mM NaOAc,pH4.5,0.1mg/ml BSA,0.2%CHAPS,15mM EDTA及び1mMデフェロキサミン)で総反応容量100μLとする。反応は30分間進行した後に、1M Tris−HCl(pH8.0)25μLを加えることにより停止する。得られた酵素生成物のC末端残基を特異的に認識するルテニル化抗体を加えることにより、生成物をアッセイする。ストレプトアビジンをコーティングした磁性ビーズを溶液に加え、サンプルをM−384(Igen Inc.,Gaithersburg,MD)分析に付す。これらの条件下で、基質の10%未満がBACE1によりプロセシングされる。これらの試験で使用する酵素はバキュロウイルス発現システムで産生された可溶性(膜貫通ドメインと細胞質延長部を除く)ヒト蛋白質とする。化合物の阻害能を測定するために、阻害剤のDMSO溶液(100μMから出発して3倍系列の希釈倍率で12種の阻害剤濃度を調製)を反応混合物に加える(最終DMSO濃度は10%とする)。全実験は上記標準反応条件を使用して室温で実施する。化合物のIC50を測定するために、4パラメーター式を曲線フィットに使用する。解離定数の再現誤差は一般に2倍未満である。
【0090】
HPLCアッセイ:BACE1により分解され、クマリンと結合したN末端フラグメントを遊離する基質(クマリン−CO−REVNFEVEFR)を使用して均質終点HPLCアッセイを実施する。基質のKmは100μMを上回り、基質の溶解限度により測定できない。典型的反応は約2nM酵素、1.0μM基質、及び緩衝液(50mM NaOAc,pH4.5,0.1mg/ml BSA,0.2%CHAPS,15mM EDTA及び1mMデフェロキサミン)で総反応容量100μLとする。反応は30分間進行させ、1M Tris−HCl(pH8.0)25μLを加えることにより反応を停止する。得られた反応混合物をHPLCにロードし、5分間直線勾配を使用して生成物を基質から分離する。これらの条件下で、基質の10%未満がBACE1によりプロセシングされる。これらの試験で使用する酵素はバキュロウイルス発現システムで産生された可溶性(膜貫通ドメインと細胞質延長部を除く)ヒト蛋白質とする。化合物の阻害能を測定するために、阻害剤のDMSO溶液(ECLにより予測された阻害能に応じた濃度範囲で12種の阻害剤濃度を調製)を反応混合物に加える(最終DMSO濃度は10%とする)。全実験は上記標準反応条件を使用して室温で実施する。化合物のIC50を測定するために、4パラメーター式を曲線フィットに使用する。解離定数の再現誤差は一般に2倍未満である。
【0091】
特に、下記実施例の化合物は上記アッセイの一方又は両方でβセクレターゼ酵素を阻害する活性をもち、一般にIC50は約1nM〜500μMであった。このような結果はこれらの化合物がβセクレターゼ酵素活性の阻害剤として使用する場合に固有活性をもつことを示している。
【0092】
本明細書では本発明の化合物の数種の製造方法をスキーム及び実施例に例証する。出発材料は当分野で公知の手順又は本明細書に例証する手順により製造する。下記実施例は本発明を更に十分に理解できるようにすることを目的とする。これらの実施例は例証に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0093】
中間体A:(R)−N−(tert−ブトキシカルボニル)−α−メチルフェニルアラニン
【0094】
【化29】

【0095】
ジオキサン20mL中の(R)−α−メチルフェニルアラニン(1.00g,5.58mmol)のスラリーに3N NaOH(7.4mL,22.32mmol)とBocO(1.28g,5.86mmol)を加えた。反応を14時間進行させた。1N HClを滴下することによりpHを〜1まで下げ、水で希釈し、水層をEtOAcで(3回)抽出した。有機層を合わせてNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮すると、所望生成物が白色フォームとして得られた。これをそれ以上精製せずに使用した。H NMR(d−MeOH,400Mhz)δ 7.25−7.17(m,3H),7.12(d,J=6.6Hz,2H),3.27(d,J=13.4Hz,1H),3.15(d,J=13.4Hz,1H),1.45(s,9H),1.39(s,3H)。LCMS[(M−Boc)+H]=180。
【0096】
中間体B:(R−N−(tert−ブトキシカルボニル)−α−メチルフェニルアラニンヒドラジド
【0097】
【化30】

【0098】
(R)−N−Boc−α−メチルフェニルアラニン(中間体A,1.50g,5.37mmol)のCHCN(25mL)溶液にEDC(1.75g,9.13mmol)を加えた後、ヒドラジン(0.421mL,13.43mmol)を加えた。すぐに白色沈殿が形成され、溶液は1時間かけて徐々に透明になった。反応を室温で一晩進行させ、飽和NaHCO水溶液を加えてクエンチし、EtOAcで希釈した。層分離し、水層を新たにEtOAcで(3回)洗浄した。有機層を合わせてNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮すると、白色フォームが得られ、それ以上精製せずに使用した。H NMR(d−MeOH,400MHz)δ 7.27−7.20(m,3H),7.11(d,J=7.7Hz,2H),3.30(d,J=13.5Hz,1H),3.02(d,J=13.5Hz,1H),1.46(s,9H),1.31(s,3H)。LCMS[(M−Boc)+H]=194。
【0099】
中間体C:2−ブロモ−4−フェニルブタン酸メチル
【0100】
【化31】

【0101】
Garrouste,Patrickら,Synthesis and activity of HIV protease inhibitors.Eur.J.Med.Chem.1998,33,423−436に記載の合成法により2−アミノ−4−フェニルブタン酸から製造した。H NMR(CDCl)δ 7.30(m,2H),7.20(m,3H),4.18(m,1H),3.76(s,3H),2.77(m,2H),2.34(m,2H)。
【0102】
中間体D:1−ブチルピペラジン−2,3−ジオン
【0103】
【化32】

【0104】
国際特許出願WO2003006423 A1に記載の製法。
【0105】
中間体E:2−(4−ブチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−イル)酢酸メチル
【0106】
【化33】

【0107】
国際特許出願WO2003006423 A1に記載の製法。
【0108】
中間体F:2−(4−ブチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−イル)酢酸
【0109】
【化34】

【0110】
国際特許出願WO2003006423 A1に記載の製法。
【0111】
中間体G:2−(4−ブチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−イル)−3−フェニルプロパン酸
【0112】
【化35】

【0113】
ステップA:アルキル化
2−(4−ブチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−イル)酢酸メチル(中間体E,270mg,1.1mmol)のTHF(10mL)溶液を−78℃まで冷却し、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(THF中1M溶液,1.3mL,1.3mmol)を滴下した。反応混合物を−78℃で30分間撹拌し、臭化ベンジル(0.33mL,2.75mmol)を加えた。混合物を2.5時間かけて室温まで昇温させ、飽和NHCl溶液でクエンチし、EtOAcで抽出した。有機層を合わせてブラインで洗浄し、乾燥し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル,50−100% EtOAc/ヘキサン)に付すと、2−(4−ブチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−イル)−3−フェニルプロパン酸メチルが得られた。H NMR(CDCl)δ 7.26(m,5H),5.35(ABXのX,1H,J=11Hz,J=5.6Hz),3.76(s,3H),3.47−3.34(m,6H),3.12(m,2H),1.49(m,2H),1.27(m,2H),0.90(t,3H,J=7.3Hz)。
【0114】
ステップB:加水分解
ステップAからの2−(4−ブチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−イル)−3−フェニルプロパン酸メチル(130mg,0.39mmol)をTHF 10mLと水3.9mLに溶かした溶液に水酸化リチウム一水和物(50mg,1.2mmol)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌し、HCl(1M,1.2mL)を一晩加えた。溶媒を蒸発させると、2−(4−ブチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−イル)−3−フェニルプロパン酸が得られた。H NMR(CDOD)δ 7.26(m,5H),5.18(ABXのX,1H,J=11.6Hz,J=5Hz),3.55−3.17(m,8H),1.50(m,2H),1.27(m,2H),0.92(t,3H,J=7.3Hz)。
【0115】
中間体H:2−(4−ブチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−イル)−4−フェニルブタン酸
【0116】
【化36】

【0117】
ステップA:アルキル化
1−ブチルピペラジン−2,3−ジオン(中間体D,500mg,2.9mmol)のDMF(4mL)懸濁液を0℃まで冷却し、水素化ナトリウム(鉱油中60%分散液,128mg,3.2mmol)を加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌し、0℃まで再冷却し、2−ブロモ−4−フェニルブタン酸メチル(中間体C,820mg,3.2mmol)のDMF(1mL)溶液を滴下した。混合物を室温で1時間撹拌し、ブラインでクエンチし、EtOAcで抽出した。乾燥し、溶媒を蒸発させ、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル,35−90%EtOAc/ヘキサン)に付すと、2−(4−ブチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−イル)−4−フェニルブタン酸メチルが得られた。H NMR(CDCl)δ 7.29(m,2H),7.18(m,3H),5.27(ABXのX,1H,J=10.8Hz,J=4.6Hz),3.72(s,3H),3.63(m,1H),3.54(m,1H),3.47(m,2H),3.38(m,1H),3.28(m,1H),2.67(m,2H),2.36(m,1H),2.03(m,2H),1.57(m,2H),1.35(m,2H),0.95(t,3H,J=7.3Hz)。
【0118】
ステップB:加水分解
中間体Gの合成のステップBに記載した手順。
【0119】
H NMR(CDOD)δ 7.25(m,2H),7.20(m,3H),4.98(ABXのX,1H,J=11Hz,J=4.4Hz),3.58(m,2H),3.46(m,4H),2.69(m,2H),2.37(m,1H),2.17(m,1H),1.58(m,2H),1.36(m,2H),0.97(t,3H,J=7.4Hz)。
【実施例1】
【0120】
1−((5−((R)−2−アミノ−1−フェニルプロパン−2−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)メチル)−4−ブチルピペラジン−2,3−ジオン
【0121】
【化37】

【0122】
ステップA:カップリング
2−(4−ブチル−2,3−ジオキソピペラジン−1−イル)酢酸(中間体F,142mg,0.62mmol)、(R)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−ベンジルプロパンヒドラジド(中間体B,225mg,0.77mmol)、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(131mg,0.68mmol)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(93mg,0.68mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(0.12mL,0.68mmol)のDMF(6.2mL)溶液を室温で一晩撹拌した。反応混合物をEtOAcで希釈し、水とブラインで洗浄した。乾燥し、溶媒を蒸発させ、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル,0−10%MeOH/CHCl)に付すと、1−((2−((R)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−メチル−3−フェニルプロパノイル)ヒドラジノ)アセチル)−4−ブチルピペラジン−2,3−ジオンが得られた。H NMR(CDCl)δ 7.26(m,3H),7.17(m,2H),4.25(ABのA,1H,J=15.9Hz),4.20(ABのB,1H,J=15.6Hz),3.74(m,1H),3.62(m,3H),3.47(m,3H),3.08(m,1H),1.57(m,2H),1.46(s,9H),1.40(s,3H),1.36(m,2H),0.94(t,3H,J=7.2Hz)。
【0123】
ステップB:脱水
ステップAからの1−((2−((R)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−メチル−3−フェニルプロパノイル)ヒドラジノ)アセチル)−4−ブチルピペラジン−2,3−ジオン(80mg,0.16mmol)と水酸化(メトキシカルボニルスルファモイル)トリエチルアンモニウム内部塩(152mg,0.64mmol)のジクロロエタン(1.6mL)溶液を120℃の電子レンジで8分間加熱した。濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル,80−100%EtOAc/ヘキサン)に付すと、1−((5−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1−フェニルプロパン−2−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)メチル)−4−ブチルピペラジン−2,3−ジオンが得られた。H NMR(CDCl)δ 7.30(m,3H),7.05(m,2H),4.92(m,3H),3.61(m,2H),3.55(m,2H),3.48(m,3H),3.30(d,1H,J=13.6Hz),1.60(s,3H),1.57(m,2H),1.40(s,9H),1.35(m,2H),0.94(t,3H,J=7.3Hz)。
【0124】
ステップC:脱保護
ステップBからの1−((5−((R)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1−フェニルプロパン−2−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)メチル)−4−ブチルピペラジン−2,3−ジオン(78mg,0.16mmol)をTFA 1.5mLとCHCl 0.5mLに溶かした溶液を室温で1時間撹拌した。濃縮し、逆相分取HPLC(5−95%MeCN/HO+0.1%TFA,C18 PRO YMC 20x150mm)により精製し、凍結乾燥すると、1−((5−((R)−2−アミノ−1−フェニルプロパン−2−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)メチル)−4−ブチルピペラジン−2,3−ジオンがTFA塩として得られた。H NMR(CDOD)δ 7.30(m,3H),7.02(m,2H),4.92(s,2H),3.74(m,2H),3.67(m,2H),3.49(m,2H),3.38(m,2H),1.80(s,3H),1.62(m,2H),1.37(m,2H),0.97(t,3H,J=7.4Hz)。
【実施例2】
【0125】
1−(1−(5−((R)−2−アミノ−1−フェニルプロパン−2−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−2−フェニルエチル)−4−ブチルピペラジン−2,3−ジオン
【0126】
【化38】

【0127】
ステップA:カップリング
中間体Fの代わりに中間体Gを使用した以外は実施例1の合成のステップAに記載した手順。
【0128】
H NMR(CDCl)δ 7.26(m,8H),7.15(m,2H),5.44(m,1H),4.67(m,1H),3.73−3.34(m,7H),3.23−2.99(m,3H),1.58(s,3H),1.51(m,2H),1.47(s,9H),1.28(m,2H),0.91(t,3H,J=7.3Hz)。
【0129】
ステップB:脱水
実施例1の合成のステップBに記載した手順。
【0130】
H NMR(CDCl)δ 7.26(m,8H),7.03(m,1H),6.95(m,1H),6.28(m,1H),3.59−3.16(m,10H),1.51(s,3H),1.42(m,2H),1.39(s,9H),1.28(m,2H),0.91(t,3H,J=7.3Hz)。
【0131】
ステップC:Boc脱保護
実施例1の合成のステップCに記載した手順。
【0132】
HRMS ES:C2733の計算値476.2656;実測値476.2661。
【実施例3】
【0133】
1−(1−(5−((R)−2−アミノ−1−フェニルプロパン−2−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−3−フェニルプロピル)−4−ブチルピペラジン−2,3−ジオン
【0134】
【化39】

【0135】
ステップA:カップリング
中間体Fの代わりに中間体Hを使用した以外は実施例1の合成のステップAに記載した手順。
【0136】
H NMR(CDCl)δ 7.27(m,7H),7.20(m,3H),5.14(m,1H),4.73(m,1H),3.68(m,2H),3.44(m,4H),3.26(m,1H),3.05(m,1H),2.71(m,1H),2.62(m,1H),2.33(m,1H),2.04(m,1H),1.55(m,2H),1.47(s,9H),1.42(s,3H),1.34(m,2H),0.93(t,3H,J=7.2Hz)。
【0137】
ステップB:脱水
実施例1の合成のステップBに記載した手順。
【0138】
H NMR(CDCl)δ 7.27(m,5H),7.21(m,3H),7.05(m,2H),6.01(m,1H),3.58−3.32(m,5H),3.19(m,2H),2.76(m,2H),2.49(m,2H),2.28(m,1H),1.52(s,3H),1.37(s,9H),1.34(m,2H),1.26(m,2H),0.94(t,3H,J=7.3Hz)。
【0139】
ステップC:Boc脱保護
実施例1の合成のステップCに記載した手順。
【0140】
HRMS ES:C2835の計算値490.2813;実測値490.2827。
【0141】
当分野で公知の中間体を使用して上記一般スキームに従って以下の付加化合物を製造することができる。
【0142】
【表1】







【0143】
本明細書全体を通して以下の略語を使用する。
Me:メチル
Bu:ブチル
i−Bu:イソブチル
t−Bu:tert−ブチル
Et:エチル
Pr:プロピル
i−Pr:イソプロピル
Ar:アリール
Ph:フェニル
Ac:アセチル
DMSO:ジメチルスルホキシド
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
CHAPS:3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート
aq:水溶液
rt:室温
HPLC:高性能液体クロマトグラフィー。
【0144】
以上、所定特定態様に関して本発明を記載及び例証したが、当業者に自明の通り、発明の精神と範囲から逸脱せずに手順とプロトコールの種々の応用、変更、変形、置換、削除及び追加が可能である。従って、本発明は特許請求の範囲により定義され、特許請求の範囲は妥当な範囲で広義に解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、
【化1】

[式中、
Aは5又は6個の環原子を有するヘテロアリール基であり;
は−C0−3アルキレンであり、前記アルキレンは置換されていないか又は1個以上の
(1)ハロ、
(2)−C3−12シクロアルキル、
(3)−OH、
(4)−CN、
(5)−O−C1−10アルキル、及び
(6)−C1−10アルキルで置換されており;
は、
(1)−C6−10アリール、
(2)ヘテロアリール、
(3)−C1−10アルキル、及び
(4)−C3−8シクロアルキル(前記シクロアルキルは場合によりC6−10アリール基と縮合している)
から構成される群から選択され、
前記Rアルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリール部分は置換されていないか又は1個以上の
(a)ハロ、
(b)−C1−10アルキル(前記アルキルは置換されていないか又はハロゲンで置換されている)、
(c)−OH、
(d)−CN、
(e)−O−C1−10アルキル、
(f)−C3−12シクロアルキル、及び
(g)−NR1011で置換されており、
ここで、R10及びR11は、
(i)水素、
(ii)C1−10アルキル、及び
(iii)C0−6アルキレン−C6−10アリール
から構成される群から選択されるか、
又はR10及びR11はN原子と一緒になって4又は5個の環炭素原子をもつ炭素環基を形成し、環炭素原子の1個以上はN、O又はS原子、あるいは−NH−、−(C=O)−又は−SO−基で置換されていてもよく;
は、
(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、及び
(3)−C2−10アルケニル
から構成される群から選択され、
ここで前記Rアルキル又はアルケニルは置換されていないか又は1個以上の
(a)ハロ、
(b)−C3−12シクロアルキル、
(c)−OH、
(d)−CN、
(e)−O−C1−10アルキル、
(f)−C6−10アリール、もしくは
(g)ヘテロアリールで置換されており、
及び前記アルキル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリール部分は置換されていないか又は1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−O−C1−10アルキル、
(v)−C1−10アルキル、もしくは
(vi)−C3−12シクロアルキルで置換されており;
及びRは、
(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C3−12シクロアルキル、
(4)−C2−10アルケニル、
(5)−C2−10アルキニル、
(6)−C0−3アルキレン−C6−10アリール、
(7)−C0−3アルキレン−ヘテロアリール、
(8)−C0−3アルキレン−Q−C1−10アルキル、及び
(9)−C0−3アルキレン−Q−C0−3アルキレン−C6−10アリールから構成される群から独立して選択され、
ここで前記R及びRアルキル、アルキレン、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びヘテロアリール部分は置換されていないか又は1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル(前記アルキルは置換されていないか又は1個以上のハロゲンで置換されている)、
(e)−O−C1−10アルキル、
(f)−C3−12シクロアルキル、
(g)−C6−10アリール、
(h)ヘテロアリール、
(i)−SO21
(j)−SR21で置換されており、
ここで、R21
(i)−C1−10アルキル(前記アルキルは置換されていないか又は1個以上のハロゲンで置換されている)、
(ii)−C6−10アリール、及び
(iii)ヘテロアリールから構成される群から選択され、
及び前記アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリール部分は置換されていないか又は1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−O−C1−10アルキル、
(v)−C3−12シクロアルキル、及び
(vi)−C6−10アリールで置換されており、
及びQ
(a)−S−、
(b)−SO−、及び
(c)−O−から構成される群から選択されるか;
あるいはRとRはそれらが結合している炭素と一緒になって3ないし12個の環炭素原子をもち、及び場合により1個の環二重結合をもつ炭素環基を形成し、ここで環炭素原子の1個以上はN、O又はS原子、あるいは−NH−、−(C=O)−又は−SO−基で置換されていてもよく;
X及びYは
(1)水素、
(2)−(Q)−C1−10アルキル、
(3)−(Q)−C3−12シクロアルキル、
(4)−(Q)−C2−10アルケニル、
(5)−(Q)−C2−10アルキニル、
(6)−(Q)−C0−3アルキレン−C6−10アリール、及び
(7)−(Q)−C0−3アルキレン−ヘテロアリールから構成される群から独立して選択され、
ここで前記X及びYアルキル、アルキレン、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール部分は置換されていないか又は1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−O−C1−10アルキル、
(e)−C1−10アルキル(前記アルキルは置換されていないか又は1個以上のハロで置換されている)、
(f)−C3−12シクロアルキル、
(g)−C6−10アリール、及び
(h)ヘテロアリールで置換されており、

(a)結合、
(b)−S(=O)
(c)−S−、
(d)−O−、
(e)−NR12−、
(f)−NR12−S(=O)−、
(g)−NR12−C(=O)−(O)−、
(h)−C(=O)−(O)−、
(i)−O−C(=O)−、及び
(j)−NR12−CR1314−NR15
から構成される群から独立して選択され、
ここでR12、R13、R14及びR15は、
(i)水素、
(ii)−C1−10アルキル、
(iii)−C0−3アルキレン−C6−10アリール、又は
(iv)ヘテロアリールから構成される群から独立して選択されるか、
あるいはXとYはそれらが結合している窒素と一緒になって炭素環基:
【化2】

を形成し、
ここでZ
(a)−CR1617
(b)−C(=O)、
(b)−CR1617C(=O)−、
(c)−C(=O)−C(=O)−、
(d)−C(=O)−CR1617、及び
(e)−SOから構成される群から選択され、
及びR16及びR17
(i)水素、
(ii)C1−10アルキル、及び
(iii)C0−6アルキレン−C6−10アリールから構成される群から選択され、

(a)−CR1819
(b)−O−、
(c)−NR20、及び
(d)−N(C=O)−から構成される群から選択され、
ここでR18及びR19
(i)水素、
(ii)−C1−10アルキル、
(iii)−C2−10アルケニル、
(iv)−C2−10アルキニル、
(v)−C0−3アルキレン−C6−10アリール、
(vi)−C0−3アルキレン−C3−12シクロアルキル、及び
(vii)−C0−3アルキレン−NR1819から構成される群から選択され、
ここでR18及びR19
(A)水素、又は
(B)−C1−3アルキルから構成される群から選択されるか、
あるいはR18とR19はそれらが結合しているN原子と一緒になって4又は5個の環炭素原子をもつ炭素環基を形成し、ここで環炭素原子の1個以上はN、O又はS原子、あるいは−NH−、−(C=O)−又は−SO−基で置換されていてもよく;
20
(i)水素、
(ii)−C1−10アルキル(前記アルキルは置換されていないか又は1個以上のハロゲンで置換されている)、
(iii)−C(=O)−O−C1−10アルキル、
(iv)−C(=O)−C1−10アルキル、
(v)−C(=O)−O−C0−3アルキレン−C6−10アリール、
(vi)−C(=O)−C0−3アルキレン−C6−10アリールから構成される群から選択され、
前記アルキル、アルキレン、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル及びアリール部分は置換されていないか又は1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−C1−10アルキル(前記アルキルは置換されていないか又は1個以上のハロゲンで置換されている)、
(v)−O−C1−10アルキル、及び
(vi)−C3−12シクロアルキルで置換されており、
、R、R及びR
(a)水素、及び
(b)C1−3アルキル、(前記アルキルは置換されていないか又は1個以上のハロゲンで置換されている)
から構成される群から選択されるか、
あるいはRとRは一緒になってRとRが結合しているN含有環と縮合するC6−10アリールを形成してもよく、ここで前記C6−10アリールは置換されていないか又は1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル(前記アルキルは置換されていないか又は1個以上のハロゲンで置換されている)、
(e)−O−C1−10アルキル、及び
(f)−C3−12シクロアルキルで置換されており;
mは0又は1であり;
nは1又は2である]
及び医薬的に許容可能なその塩、並びにその個々のエナンチオマー及びジアステレオマー。
【請求項2】
Aが、
【化3】

から構成される群から選択される請求項1の化合物。
【請求項3】
がCHであり、及びRがフェニルである請求項1又は2の化合物。
【請求項4】
がC1−10アルキルである請求項1から3のいずれかに記載の化合。
【請求項5】
がC1−3アルキルである請求項4の化合物。
【請求項6】
X及びYがそれらが結合している窒素と一緒になって炭素環基:
【化4】

を形成する請求項1から5のいずれかの化合物。
【請求項7】
が−C(=O)−C(=O)−であり、及びZがNR20であるか、又はZが−C(=O)−であり、及びZがNR20である請求項6の化合物。
【請求項8】
が−CR1617C(=O)−、−C(=O)−CR1617−及び−SO−から選択され、及びZがNR20である請求項6の化合物。
【請求項9】
化合物が式(II)
【化5】

(式中、R、R、X及びYは請求項1に定義した通りである)を有する請求項1の化合物及び医薬的に許容可能なその塩、並びにその個々のエナンチオマー及びジアステレオマー。
【請求項10】
化合物が式(II’)
【化6】

(式中、R、R、X及びYは請求項1に定義した通りである)を有する請求項9の化合物及び医薬的に許容可能なその塩、並びにその個々のエナンチオマー及びジアステレオマー。
【請求項11】
が水素又はC1−3アルキルであり、及びRが水素又はC0−3アルキレン−C6−10アリールである請求項1から10のいずれかの化合物。
【請求項12】
化合物が式(III):
【化7】

(式中、R、R、R、R、Q、Z及びZは請求項1に定義した通りである)を有する請求項1の化合物及び医薬的に許容可能なその塩、並びにその個々のエナンチオマー及びジアステレオマー。
【請求項13】
化合物が式(III’)
【化8】

(式中、R、R、Z及びZは請求項1に定義した通りである)をもつ請求項12の化合物及び医薬的に許容可能なその塩、並びにその個々のエナンチオマー及びジアステレオマー。
【請求項14】
化合物が式(III”):
【化9】

(式中、R、R、Z及びZは請求項1に定義した通りである)をもつ請求項13の化合物及び医薬的に許容可能なその塩、並びにその個々のエナンチオマー及びジアステレオマー。
【請求項15】
1−((5−((R)−2−アミノ−1−フェニルプロパン−2−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)メチル)−4−ブチルピペラジン−2,3−ジオン;
1−(1−(5−((R)−2−アミノ−1−フェニルプロパン−2−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−2−フェニルエチル)−4−ブチルピペラジン−2,3−ジオン;及び
1−(1−(5−((R)−2−アミノ−1−フェニルプロパン−2−イル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−3−フェニルプロピル)−4−ブチルピペラジン−2,3−ジオン;
から構成される群から選択される請求項1の化合物並びに医薬的に許容可能なその塩。
【請求項16】
治療有効量の請求項1から15のいずれかの化合物又は医薬的に許容可能なその塩、ならびに医薬的に許容可能なキャリヤーを含有する医薬組成物。
【請求項17】
βセクレターゼ活性の阻害を要する哺乳動物におけるβセクレターゼ活性の阻害方法であって、治療有効量の請求項1から15のいずれかの化合物又は医薬的に許容可能なその塩を前記哺乳動物に投与することを含む前記方法。
【請求項18】
アルツハイマー病の治療を要する患者におけるアルツハイマー病の治療方法であって、治療有効量の請求項1から15のいずれかの化合物又は医薬的に許容可能なその塩を前記患者に投与することを含む前記方法。
【請求項19】
アルツハイマー病の改善又は防止を要する患者におけるアルツハイマー病の改善又は防止方法であって、治療有効量の請求項1から15のいずれか一項の化合物又は医薬的に許容可能なその塩を前記患者に投与することを含む前記方法。

【公表番号】特表2008−527040(P2008−527040A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552194(P2007−552194)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/001366
【国際公開番号】WO2006/078576
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】