説明

アルツハイマー病の治療用フェニルカルボン酸ベータセクレターゼ阻害剤

本発明はアルツハイマー病等のβセクレターゼ酵素が関与する疾患の治療に有用なβセクレターゼ酵素阻害剤である化合物に関する。本発明はこれらの化合物を含有する医薬組成物と、βセクレターゼ酵素が関与する前記疾患の予防又は治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルツハイマー病の治療用フェニルカルボン酸βセクレターゼ阻害剤に関する。
【0002】
本願は35U.S.C.§119(e)に基づき、2003年7月1日付け米国予備出願第60/483,992号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病はアミロイドが細胞外プラーク及び細胞内神経原線維変化として脳に異常沈着することを特徴とする。アミロイド蓄積速度は形成速度、凝集速度及び脳からの排出速度の総計である。アミロイドプラークの主成分は4kDアミロイド蛋白質(βA4、別称Aβ、β蛋白質及びβAP)であり、ずっと大きな寸法の前駆体蛋白質の蛋白分解物であることが一般に認められている。アミロイド前駆体蛋白質(APP又はAβPP)は大きな細胞外ドメインと、膜貫通領域と、短い細胞質テールからなる受容体様構造をもつ。AβドメインはAPPの細胞外ドメインと膜貫通ドメインの両者の一部を占めるので、Aβドメインの遊離はそのNH末端とCOOH末端を生成するために2つの別個の蛋白分解イベントが存在することを意味する。APPを膜から遊離し、APPの可溶性COOH切断形を生成する分泌メカニズムは少なくとも2種類ある。APPとそのフラグメントを膜から遊離するプロテアーゼは「セクレターゼ」と呼ばれる。殆どのAPPはAβ蛋白質の内部で切断してα−APPを遊離し、無傷のAβを遊離できないようにする推定αセクレターゼにより遊離される。一部のAPPはAPPのNH末端付近で切断して完全Aβドメインを含むCOOH末端フラグメント(CTF)を生成するβセクレターゼ(「βセクレターゼ」)により遊離される。
【0004】
こうして、βセクレターゼないしβアミロイド前駆体蛋白分解酵素(「BACE」)の活性はアルツハイマー病の特徴であるAPPの異常切断、Aβ生成、及びβアミロイドプラークの脳内蓄積を引き起こす(R.N.Rosenberg,Arch.Neurol.,vol.59,Sep 2002,pp.1367−1368;H.Fukumotoら,Arch.Neurol.,vol.59,Sep 2002,pp.1381−1389;J.T.Huseら,J.Biol.Chem.,vol 277,No.18,issue of May 3,2002,pp.16278−16284;K.C.Chen and W.J.Howe,Biochem.Biophys.Res.Comm,vol.292,pp 702−708,2002参照)。従って、βセクレターゼないしBACEを阻害することができる治療剤はアルツハイマー病の治療に有用であると思われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の化合物はβセクレターゼないしBACEの活性を阻害し、従って不溶性Aβの形成を防ぎ、Aβ生成を阻止することによりアルツハイマー病を治療するために有用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はアルツハイマー病等のβセクレターゼ酵素が関与する疾患の治療に有用なβセクレターゼ酵素阻害剤である化合物に関する。本発明はこれらの化合物を含有する医薬組成物と、βセクレターゼ酵素が関与する前記疾患の予防又は治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は式I:
【0008】
【化8】

{式中、R
(1)−C1−6アルキル、
(2)−C2−6アルケニル、
(3)−C2−6アルキニル[前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは置換されていないか又はフェニルで置換されており、前記フェニルは置換されていないか又は
(i)ハロ、
(ii)−C1−6アルキル、
(iii)−C2−6アルケニル、
(iv)−C2−6アルキニル、
(v)−OH、及び
(vi)−O−C1−6アルキルから選択される基で置換されている]、及び
(4)水素から構成される群から選択され;

(1)R−S(O)N(R)−
[式中、R
(a)−C1−6アルキル、
(b)−C2−6アルケニル、
(c)−C2−6アルキニル(前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは置換されていないか又は1〜6個のフルオロで置換されている)、
(d)フェニル、及び
(e)ベンジルから構成される群から独立して選択され、

(a)水素、
(b)−C1−6アルキル、
(c)−C2−6アルケニル、及び
(d)−C2−6アルキニルから構成される群から独立して選択される]、又は
(2)
【0009】
【化9】

[式中、R8a及びR8b
(a)水素、
(b)−CN、
(c)ハロ、
(d)−C1−6アルキル、
(e)−C2−6アルケニル、及び
(f)−C2−6アルキニルから構成される群から独立して選択される]から構成される群から選択され;

【0010】
【化10】

から構成される群から独立して選択され;
6a、R6b、及びR6c
(1)水素、及び
(2)ハロゲンから構成される群から独立して選択され;

(1)−C1−6アルキル、
(2)−C2−6アルケニル、
(3)−C2−6アルキニル(前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは置換されていないか又はフェニルで置換されている)、及び
(4)水素から構成される群から選択され;
13は−CH=CH−及び−O−から構成される群から選択され;
及びR10
(1)水素、
(2)−C1−6アルキル、
(3)−C2−6アルケニル、及び
(4)−C2−6アルキニル(前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは置換されていないか又はフェニルで置換されている)から構成される群から独立して選択されるか、
あるいはR及びR10は一緒になって置換されていないか又はC1−6アルキル、C1−6アルキル−O−C1−6アルキル、フェニルもしくはピリジルで置換されたピロリジン又はピペリジン環を形成してもよく;
11
(1)−OH、
(2)−O−C1−6アルキル、
(3)−O−C1−6アルキル−フェニル、
(4)−O−フェニル、及び
(5)フェニルから構成される群から選択され;
12
(1)−NR10、及び
(2)−OHから構成される群から選択され;
mは独立して0、1、又は2である}の化合物及び医薬的に許容可能なその塩に関する。
【0011】
本発明の1つの態様は式II:
【0012】
【化11】

{式中、R
(1)置換されていないか又はフェニルで置換されたC1−6アルキル、及び
(2)水素から構成される群から選択され;

(1)R−S(O)N(R)−
[式中、R
(a)置換されていないか又は1〜6個のフルオロで置換されたC1−6アルキル、
(b)フェニル、及び
(c)ベンジルから構成される群から独立して選択され、

(a)水素、及び
(b)−C1−6アルキルから構成される群から独立して選択される]、及び
(2)
【0013】
【化12】

[式中、R8a及びR8b
(a)水素、
(b)−CN、
(c)ハロ、及び
(d)−C1−6アルキルから構成される群から独立して選択される]から構成される群から選択され;

(1)置換されていないか又はフェニルで置換されたC1−6アルキル、及び
(2)水素から構成される群から選択され;
及びR10
(1)水素、及び
(2)置換されていないか又はフェニルで置換されたC1−6アルキルから構成される群から独立して選択され;
11
(1)−OH、
(2)−O−フェニル、及び
(3)フェニルから構成される群から選択される}の化合物に関する。
【0014】
本発明の1態様は式III:
【0015】
【化13】

{式中、R
(1)置換されていないか又はフェニルで置換されたC1−6アルキル、及び
(2)水素から構成される群から選択され;

(1)R−S(O)N(R)−
[式中、R
(a)置換されていないか又は1〜6個のフルオロで置換されたC1−6アルキル、
(b)フェニル、及び
(c)ベンジルから構成される群から独立して選択され、

(a)水素、及び
(b)−C1−6アルキルから構成される群から独立して選択される]、及び
(2)
【0016】
【化14】

[式中、R8a及びR8b
(a)水素、
(b)−CN、
(c)ハロ、及び
(d)−C1−6アルキルから構成される群から独立して選択される]から構成される群から選択され;

(1)置換されていないか又はフェニルで置換されたC1−6アルキル、及び
(2)水素から構成される群から選択され;
11
(1)−OH、
(2)−O−フェニル、及び
(3)フェニルから構成される群から選択される}の化合物に関する。
【0017】
本発明の1態様において、R
(1)ベンジル、
(2)フェニル−エチル−、
(3)メチル、及び
(4)水素から構成される群から選択される。
【0018】
本発明の別の態様において、RはCH−S(O)N(CH)−である。
【0019】
本発明の別の態様において、Rはシアノ−フェニル−である。
【0020】
本発明の別の態様において、Rはメチルである。
【0021】
本発明の別の態様において、R及びR10は、
(1)水素、及び
(2)メチルから構成される群から独立して選択される。
【0022】
本発明の別の態様において、R11は−OHである。
【0023】
本発明の別の態様は下記実施例の標題化合物と医薬的に許容可能なその塩から選択される化合物を含む。
【0024】
本発明の化合物は少なくとも1個の不斉中心をもつ。分子上の各種置換基の種類に応じて2個以上の不斉中心が存在していてもよい。不斉中心をもつ化合物はエナンチオマー(光学異性体)、ジアステレオマー(立体異性体)又はその両者を形成し、混合物及び純化合物又は部分精製化合物としての可能な全エナンチオマー及びジアステレオマーを本発明の範囲に含むものとする。本発明はこれらの化合物のこのような全異性形を含むものとする。
【0025】
エナンチオマーもしくはジアステレオマーの含有率の高い化合物の個々の合成、又はそのクロマトグラフィー分離は本明細書に開示する方法を適当に変更することにより当分野で公知の通りに実施することができる。その絶対立体化学は公知絶対配置の不斉中心を含む試薬で必要に応じて誘導体化した結晶生成物又は結晶中間体のX線結晶解析により決定することができる。
【0026】
所望により、個々のエナンチオマーを単離するように化合物のラセミ混合物を分離してもよい。分離は化合物のラセミ混合物を純エナンチオマー化合物とカップリングしてジアステレオマー混合物を形成した後に分別結晶法やクロマトグラフィー等の標準方法により個々のジアステレオマーを分離する等の当分野で周知の方法により実施することができる。カップリング反応は多くの場合には純エナンチオマー酸又は塩基を使用する塩形成である。その後、付加キラル残基の開裂によりジアステレオマー誘導体を純エナンチオマーに変換することができる。キラル固定相を使用するクロマトグラフィー法により化合物のラセミ混合物を直接分離することもでき、このような方法は当分野で周知である。
【0027】
あるいは、当分野で周知の方法により公知配置の光学的に純粋な出発材料又は試薬を使用して立体選択的合成により化合物の任意エナンチオマーを得ることもできる。
【0028】
本発明の化合物はスキーム1に要約する方法により製造される。
【0029】
【化15】

【0030】
本明細書においてそれ自体又は別の置換基の一部として使用する「アルキル」なる用語は指定炭素原子数の飽和直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する(例えば、C1−10アルキルは炭素原子数1〜10のアルキル基を意味する)。本発明で使用するのに好ましいアルキル基は炭素原子数1〜6のC1−6アルキル基である。アルキル基の例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0031】
本明細書においてそれ自体又は別の置換基の一部として使用する「アルケニル」なる用語は1個の炭素−炭素二重結合をもつ指定炭素原子数の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する(例えば、C2−10アルケニルは炭素原子数2〜10のアルケニル基を意味する)。本発明で使用するのに好ましいアルケニル基は炭素原子数2〜6のC2−6アルケニル基である。アルケニル基の例としてはエテニルとプロペニルが挙げられる。
【0032】
本明細書においてそれ自体又は別の置換基の一部として使用する「アルキニル」なる用語は1個の炭素−炭素三重結合をもつ指定炭素原子数の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する(例えば、C2−10アルキニルは炭素原子数2〜10のアルキニル基を意味する)。本発明で使用するのに好ましいアルキニル基は炭素原子数2〜6のC2−6アルキニル基である。アルキニル基の例としてはエチニルとプロピニルが挙げられる。
【0033】
「実質的に純粋」なる用語は当分野で公知の分析技術によりアッセイした場合に単離物質が少なくとも90%純粋、好ましくは95%純粋、より好ましくは99%純粋であることを意味する。「医薬的に許容可能な塩」なる用語は無機又は有機塩基と無機又は有機酸を含む医薬的に許容可能な非毒性塩基又は酸から製造される塩を意味する。無機塩基から誘導される塩としてはアルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、三価鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、三価マンガン、二価マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等の塩が挙げられる。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩が特に好ましい。固体形態の塩は2種以上の結晶構造でもよいし、水和物でもよい。医薬的に許容可能な非毒性有機塩基から誘導される塩としては第一、第二、及び第三アミン、置換アミン(天然置換アミンを含む)、環状アミン、並びに塩基性イオン交換樹脂(例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等)の塩が挙げられる。本発明の化合物が塩基性である場合には、無機酸や有機酸等の医薬的に許容可能な非毒性酸から塩を製造することができる。このような酸としては例えば酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、琥珀酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、フマル酸、及び酒石酸が特に好ましい。
【0034】
本発明はβセクレターゼ酵素活性ないしβアミロイド前駆体蛋白分解酵素(「BACE」)活性の阻害を必要とする哺乳動物等の患者又は対象における前記活性の阻害剤としての本明細書に開示する化合物の使用に関し、有効量の前記化合物を投与することを含む。「βセクレターゼ酵素」、「βアミロイド前駆体蛋白分解酵素」、及び「BACE」なる用語は本明細書では同義に使用する。ヒト以外にも多様な他の哺乳動物を本発明の方法により治療することができる。
【0035】
本発明は更にヒト及び動物におけるβセクレターゼ酵素活性の阻害用医薬又は組成物の製造方法として、本発明の化合物を医薬キャリヤー又は希釈剤と配合する方法に関する。
【0036】
本発明の化合物はアルツハイマー病、アミロイド前駆体蛋白質(別称APP)の異常切断により媒介される他の疾患、及びβセクレターゼの阻害により治療又は予防することができる他の症状の治療、進行予防、改善、防止又は危険低減に有用である。このような症状としては軽度認知障害、トリソミー21(ダウン症候群)、脳アミロイド血管症、変性痴呆、オランダ型遺伝性アミロイド性脳卒中(HCHWA−D)、クロイツェルフェルト・ヤコブ病、プリオン疾患、筋萎縮性測索硬化症、進行性核上麻痺、頭部外傷、卒中、ダウン症候群、膵炎、封入体筋炎、他の末梢アミロイド症、糖尿病及びアテローム硬化症が挙げられる。
【0037】
本発明の化合物を投与する対象又は患者は一般にβセクレターゼ酵素活性の阻害が所望される男性又は女性であるが、βセクレターゼ酵素活性の阻害又は上記疾患の治療が所望されるイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、サル、チンパンジー又は他のサル類もしくは霊長類等の動物でもよい。
【0038】
本発明の化合物は薬剤を併用したほうが薬剤単独よりも安全又は有効である場合には、本発明の化合物が有用である疾病又は症状の治療、予防、防止、改善、又は危険低減に他の1種以上の薬剤と併用することができる。更に、本発明の化合物は本発明の化合物の副作用又は毒性を治療、予防、防止、改善、又は危険低減する1種以上の他の薬剤と併用することもできる。このような他の薬剤はこのような用途に通常使用されている経路と量で本発明の化合物と同時又は順次投与することができる。従って、本発明の医薬組成物としては、本発明の化合物以外に1種以上の他の活性成分を含有するものが挙げられる。併用剤は単位剤形併用製剤の一部として投与してもよいし、1種以上の付加薬剤を治療レジメンの一部として別個の剤形で投与するキット又は治療プロトコールとして投与してもよい。
【0039】
単位剤形又はキット形態の本発明の化合物と他の薬剤の併用剤の例としては抗アルツハイマー薬(例えば他のβセクレターゼ阻害剤又はγセクレターゼ阻害剤);HMG−CoAレダクターゼ阻害剤;NSAID(例えばイブプロフェン);ビタミンE;抗アミロイド抗体(例えばヒト化モノクローナル抗体);CB−1受容体アンタゴニスト又はCB−1受容体逆アゴニスト;抗生物質(例えばドキシサイクリン及びリファムピン);N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニスト(例えばメマンチン);コリンエステラーゼ阻害剤(例えばガランタミン、リバスチグミン、ドネペジル及びタクリン);成長ホルモン分泌促進薬(例えばイブタモレン、メシル酸イブタモレン、及びカプロモレリン);ヒスタミンHアンタゴニスト;AMPAアゴニスト;PDE IV阻害剤;GABAA逆アゴニスト;ニューロンニコチン性アゴニスト;あるいは本発明の化合物の効力、安全性、利便性を増すか又は望ましくない副作用もしくは毒性を低減する受容体又は酵素に作用する他の薬剤との併用剤が挙げられる。併用剤の前記具体例は例証に過ぎず、限定的ではない。
【0040】
本明細書において使用する「組成物」なる用語は所定量又は比率の特定成分を含有する製剤と、特定量の特定成分の併用により直接又は間接的に得られる任意製剤を意味する。医薬組成物に関してこの用語は1種以上の活性成分と場合により不活性成分を含むキャリヤーを含有する製剤と、成分の任意2種以上の配合、錯化もしくは凝集、成分の1種以上の解離、又は成分の1種以上の他の型の反応もしくは相互作用により直接又は間接的に得られる任意製剤を含むものとする。一般に、医薬組成物は活性成分を液体キャリヤー又は微粉状固体キャリヤー又は両者と均質混和した後に必要に応じて生成物を所望製剤に成形することにより製造される。医薬組成物には、疾患の過程又は状態に所望効果を与えるために十分な量の目的活性化合物が含有される。従って、本発明の医薬組成物は本発明の化合物と医薬的に許容可能なキャリヤーを混合することにより製造される任意組成物を含む。
【0041】
経口用医薬組成物は医薬組成物の製造に当分野で公知の任意方法により製造することができ、このような組成物は医薬的にエレガントで口当たりのよい製剤にするために甘味剤、香味剤、着色剤及び防腐剤から構成される群から選択される1種以上の添加剤を添加することができる。タブレットはタブレットの製造に適した医薬的に許容可能な非毒性賦形剤と混合した活性成分を含有する。これらの賦形剤としては例えば不活性希釈剤(例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム);顆粒化剤及び崩壊剤(例えばコーンスターチ又はアルギン酸);結合剤(例えば澱粉、ゼラチン又はアラビアガム)及び滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク)が挙げられる。タブレットはコーティングしなくてもよいし、胃腸管での崩壊と吸収を遅らせることにより長時間持続作用を提供するように公知技術によりコーティングしてもよい。
【0042】
経口用組成物は活性成分を不活性固体希釈剤と混合したハードゼラチンカプセルの形態でもよいし、活性成分を水又は油性媒体と混合したソフトゼラチンカプセルの形態でもよい。
【0043】
水性懸濁液は水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合した活性材料を含有する。このような賦形剤としては懸濁剤、分散剤、湿潤剤等が挙げられる。水性懸濁液は更に、1種以上の防腐剤、着色剤、香味剤、又は甘味剤を添加することができる。
【0044】
油性懸濁液は植物油又は鉱油に活性成分を懸濁することにより製剤化することができる。油性懸濁液は増粘剤を添加することができる。口当たりのよい経口製剤を提供するために甘味剤や香味剤を添加することができる。これらの組成物は酸化防止剤の添加により防腐処理することができる。
【0045】
水を加えて水性懸濁液を調製するのに適した分散性散剤及び顆粒剤は分散剤又は湿潤剤、懸濁剤及び1種以上の防腐剤と混合した活性成分を提供する。更に例えば甘味剤、香味剤及び着色剤等の付加添加剤も添加することができる。
【0046】
本発明の医薬組成物は水中油エマルションの形態でもよく、更に甘味剤や香味剤等の添加剤を添加することができる。
【0047】
本発明の医薬組成物は公知技術に従って製剤化することが可能な注射用滅菌水性又は油性懸濁液の形態でもよいし、薬剤の直腸投与用座剤形態で投与することもできる。
【0048】
本発明の化合物は吸入、当業者に公知の吸入装置の使用、又は経皮パッチにより経皮投与することもできる。
【0049】
「医薬的に許容可能」とはキャリヤー、希釈剤又は賦形剤が製剤の他の成分と適合可能でなければならず且つそのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0050】
化合物「の投与」及び「を投与する」なる用語は治療に有用な形態と治療に有用な量で個体の体内に導入可能な形態で治療を必要とする個体に本発明の化合物を提供することを意味し、限定されないが、経口剤形(例えばタブレット、カプセル、シロップ、懸濁液等);注射剤形(例えばIV、IM、又はIP等);経皮剤形(例えばクリーム、ゼリー、散剤、又はパッチ);バッカル剤形;吸入用散剤、スプレー、懸濁液等;及び直腸座剤が挙げられる。
【0051】
「有効量」又は「治療有効量」なる用語は研究者、獣医、医師又は他の臨床医により求められる組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発する該当化合物の量を意味する。本明細書で使用する「治療」なる用語は特に該当疾病又は疾患の素因をもつ患者における上記症状の治療と予防又は予防治療の両者を意味する。
【0052】
本明細書で使用する「治療」なる用語は本発明の化合物の任意投与を意味し、(1)疾患の病態又は症候をもつか又は示す動物において疾患を抑制する(即ち病態及び/又は症候の更なる進行を抑える)か、あるいは(2)疾患の病態又は症候をもつか又は示す動物において疾患を改善する(即ち病態及び/又は症候を逆行させる)ことを含む。「防止」なる用語は防止する症状を予防、治療、根絶、改善又はその重篤度を低減することを含む。
【0053】
本発明の化合物を含有する組成物は単位剤形の形態とすると簡便であり、製薬分野で周知の任意方法により製造することができる。「単位剤形」なる用語は患者又は薬剤を患者に投与する者が全用量を収容した単一容器又はパッケージを開封することができ、2個以上の容器又はパッケージからの成分を混合する必要がないように、全活性成分及び不活性成分を適切なシステムに一体にした単一用量を意味する。単位剤形の典型例は経口投与用タブレットもしくはカプセル、注射用単一用量バイアル、又は直腸投与用座剤である。単位剤形の前記具体例は限定的ではなく、単位剤形製薬分野における典型例に過ぎない。
【0054】
本発明の化合物を含有する組成物はキット形態とし、活性成分、不活性成分、キャリヤー、希釈剤等の2種以上の成分に加え、患者又は薬剤を患者に投与する者が実際の剤形を調製するための説明書を添付すると簡便である。このようなキットは必要な全材料及び成分をキットに梱包してもよいし、材料又は成分を使用又は調製するための説明書は患者又は薬剤を患者に投与する者が別に入手するようにしてもよい。
【0055】
アルツハイマー病又は本発明の化合物の適応症である他の疾患を治療、予防、防止、改善、又は危険低減する場合には、1日用量約0.1mg〜約100mg/kg動物体重の本発明の化合物を好ましくは1日1回又は1日2〜6回に分けるか又は持続放出形態で投与すると一般に満足な結果が得られる。合計1日用量は約1.0mg〜約2000mg、好ましくは約0.1mg〜約20mg/kg体重である。体重70kgの成人の場合、合計1日用量は一般に約7mg〜約1,400mgである。最適治療応答が得られるようにこの投与レジメンを調節することができる。1日1〜4回、好ましくは1日1回又は2回のレジメンで化合物を投与することができる。
【0056】
本発明の化合物又は医薬的に許容可能なその塩の特定投与用量としては1mg、5mg、10mg、30mg、80mg、100mg、150mg、300mg及び500mgが挙げられる。本発明の医薬組成物は活性成分約0.5mg〜1000mg;より好ましくは活性成分約0.5mg〜500mg;又は活性成分0.5mg〜250mg;又は活性成分1mg〜100mgを含有する製剤として提供することができる。治療に有用な特定医薬組成物は活性成分約1mg、5mg、10mg、30mg、80mg、100mg、150mg、300mg及び500mgを含有する。
【0057】
しかし、当然のことながら、任意特定患者の特定用量レベル及び投与頻度は使用する特定化合物の活性、この化合物の代謝安定性と作用期間、年齢、体重、一般健康状態、性別、食事、投与方法及び時間、排泄速度、薬剤併用、特定症状の重篤度、及び宿主の施療中の治療等の種々の因子によって異なる。
【0058】
βセクレターゼ酵素活性阻害剤としての本発明の化合物の有用性は当分野で公知の方法により立証することができる。酵素阻害は次のように測定する。
【0059】
FRETアッセイ:BACE1により分解され、TAMRAから蛍光を放出する基質([TAMRA−5−CO−EEISEVNLDAEF−NHQSY]QFRET)と共に均質終点蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイを使用する。基質のKmは基質の溶解限度により測定できない。典型的反応は約30nM酵素、1.25μM基質、及び緩衝液(50mM NaOAc,pH4.5,0.1mg/ml BSA,0.2%CHAPS,15mM EDTA及び1mMデフェロキサミン)で総反応容量100μLとする。反応は30分間行い、96ウェルプレートLJL Analyst ADで励起波長530nmと発光波長580nmを使用してTAMRAフラグメント遊離を測定する。これらの条件下で、基質の10%未満がBACE1によりプロセシングされる。これらの試験で使用した酵素はバキュロウイルス発現システムで産生された可溶性(膜貫通ドメインと細胞質延長部を除く)ヒト蛋白質とした。化合物の阻害力価を測定するために、阻害剤のDMSO溶液(1mM、100μM、10μM、1μMの4種の阻害剤濃度を調製)を反応混合物に加えた(最終DMSO濃度は0.8%とする)。全実験は上記標準条件を使用して室温で実施した。化合物のIC50を測定するために、競合式V0/Vi=1+[I]/[IC50]を使用して化合物の阻害力価を予測した。解離定数の再現誤差は一般に2倍未満である。
【0060】
HPLCアッセイ:BACE1により分解され、クマリンと結合したN末端フラグメントを遊離する基質(クマリン−CO−REVNFEVEFR)と共に均質終点HPLCアッセイを使用する。基質のKmは100μMを上回り、基質の溶解限度により測定できない。典型的反応は約2nM酵素、1.0μM基質、及び緩衝液(50mM NaOAc,pH4.5,0.1mg/ml BSA,0.2%CHAPS,15mM EDTA及び1mMデフェロキサミン)で総反応容量100μLとする。反応は30分間行い、1M Tris−HCl(pH8.0)25μLを加えて反応を停止する。得られた反応混合物をHPLCにロードし、5分間直線勾配を使用して生成物を基質から分離した。これらの条件下で、基質の10%未満がBACE1によりプロセシングされる。これらの試験で使用した酵素はバキュロウイルス発現システムで産生された可溶性(膜貫通ドメインと細胞質延長部を除く)ヒト蛋白質とした。化合物の阻害力価を測定するために、阻害剤のDMSO溶液(FRETにより予測された力価に応じた濃度範囲で12種の阻害剤濃度を調製)を反応混合物に加えた(最終DMSO濃度は10%とする)。全実験は上記標準条件を使用して室温で実施した。化合物のIC50を測定するために、4パラメーター式を曲線フィットに使用する。解離定数の再現誤差は一般に2倍未満である。
【0061】
特に、下記実施例の化合物は上記アッセイでβセクレターゼ酵素を阻害する活性をもち、一般にIC50は約1nM〜1μMであった。このような結果はこれらの化合物がβセクレターゼ酵素活性の阻害剤として使用する場合に固有活性をもつことを示している。
【0062】
本発明の化合物の数種の製造方法を下記スキーム及び実施例に例証する。出発材料は当分野で公知の手順又は本明細書に例証する手順により製造する。下記実施例は本発明を更に十分に理解できるようにすることを目的とする。これらの実施例は例証に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0063】
中間体I
【0064】
【化16】

【0065】
ステップA.0℃のCHCl/ピリジン(3:1)100mL中の5−アミノイソフタル酸ジメチル(5.0g,23.90mmol)のスラリーに撹拌下に塩化メタンスルホニル(1.85mL,23.90mmol)を加えた。得られた混合物を室温で4時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、酢酸エチル(100mL)を加えると、沈殿が形成された。生成物を濾取すると、スルホンアミドが白色固体として得られた。H NMR(DMSOd6)δ8.15(s,1H),8.02(s,2H),3.89(s,6H),3.02(s,3H).LCMS[M−OCH=256.16。
【0066】
ステップB.水素化ナトリウム(0.153g,3.83mmol,60%油分散液)のDMF(10mL)溶液にステップAからのスルホンアミド(1.0g,3.48mmol)を加えた後にヨウ化メチル(0.43mL,6.97mmol)を加えた。1時間後に反応混合物をHO(100mL)でクエンチし、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機抽出相をMgSOで乾燥し、蒸発させると、生成物が得られた。H NMR(DMSOd6)δ8.40(s,1H),8.19(s,2H),3.91(s,6H),3.34(s,3H),3.01(s,3H).LCMS[M+H]=302.15。
【0067】
ステップC.ステップBからのジエステル(1.03g,3.38mmol)をTHF:MeOH(1:1)50mLに溶かし、0℃まで冷却した。1N NaOH(3.38mL,3.38mmol)を加え、反応混合物を室温まで8時間昇温させた。溶液を1N HCl(30mL)で酸性化し、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機抽出相を合わせてブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。シリカゲル(5%MeOH/CHCl+1%HOAc)で精製すると、モノ酸が得られた。H NMR(DMSOd6)δ8.30(s,1H),8.10(s,2H),3.84(s,3H),3.27(s,3H),2.94(s,3H).LCMS(M+H)=288.16。
【0068】
ステップD.CHCl5mL中のステップCからのモノ酸0.133g(0.46mmol)、BOP試薬(0.235g,0.55mmol)、(R)−(+)−α−メチルベンジルアミン(0.071mL,0.55mmol)、及びジイソプロピルアミン(0.24mL,1.39mmol)を含有する溶液を周囲温度で1時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(90%EtOAc/ヘキサン)にかけると、ベンジルアミドが得られた。H NMR(CDCl)δ8.26(s,1H),8.17(s,1H),8.06(s,1H),7.31(m,5H),6.50(d,J=7.1Hz,1H),5.33(q,J=7.1Hz,1H),3.96(s,3H),3.37(s,3H),2.88(s,3H),1.64(d,J=7.0Hz,3H).LCMS(M+H)=391.20。
【0069】
ステップE.THF:MeOH(1:1)10mL中のステップDからのベンジルアミド0.171g(0.438mmol)に2N NaOH(0.66mL,1.32mmol)を加えた。溶液を50℃まで1時間加熱した。冷却後、1N HCl(20mL)を加えて溶液を酸性化し、EtOAc(3×30mL)で抽出した。有機抽出相を合わせてMgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮すると、所望カルボン酸が得られた。H NMR(CDCl)δ8.22(t,1H),8.11(m,1H),8.06(m,1H),7.34(m,5H),6.47(d,J=7.1Hz,1H),5.33(m,1H),3.37(s,3H),2.87(s,3H),1.64(d,J=7.0Hz,3H).LCMS(M+H)=377.2。
【0070】
中間体II
【0071】
【化17】

【0072】
このカルボン酸はステップDのアミンとして(R)−4−フルオロ−α−メチルベンジルアミンを使用した以外は中間体Iと同様に製造した。
【0073】
中間体III
【0074】
【化18】

【0075】
ステップA.5−ヒドロキシイソフタル酸ジメチル(8.6g,41.1mmol)のアセトン(200mL)溶液に撹拌下にKCO(5.7g,41.1mmol)と臭化トランス−クロチル(5.5g,41.1mmol)を加えた。得られた混合物を16時間還流下に撹拌した。固形分を濾別し、濾液をほぼ蒸発乾涸させた。得られた残渣をエーテル200mLに溶かし、1N HCl 3×20mL、次いでブラインで洗浄した。有機抽出相をMgSOで乾燥し、蒸発させると、アリールエーテルAが得られた。H NMR(CDCl)δ8.25(s,1H),7.75(s,2H),5.93(m,1H),5.77(m,1H),4.58(d,J=2.2Hz,2H),3.91(s,6H),1.81(d,J=2.2Hz,3H).LCMS(M+H)=265.24。
【0076】
ステップB.THFとMeOHの1:1混合物300mL中にステップAからのイソフタレート9.4g(35.6mmol)を含有する0℃溶液を1N NaOH35.6mL(35.6mmol)で処理した。氷浴を周囲温度になるまで16時間撹拌した。反応混合物を約1/8容量まで濃縮した後に3N HCl 25mLで酸性化した。沈殿した固形分をEtOA300mLcに再溶解し、ブライン(2×25mL)で洗浄した。有機抽出相をMgSOで乾燥し、蒸発させると、所望カルボン酸が得られた。H NMR(CDCl)δ8.37(s,1H),7.82(s,2H),5.93(m,1H),5.77(m,1H),4.58(d,J=2.2Hz,2H),3.95(s,3H),1.77(d,J=2.2Hz,3H).LCMS(M+H)=252.18。
【0077】
ステップC.THF80mL中にカルボン酸III−C4.0g(16.0mmol)を含有する0℃溶液にEtN4.2mL(30.2mmol)とクロロギ酸エチル2.2mL(22.7mmol)を加えた。得られたスラリーを1時間撹拌し、NaN2.46g(37.8mmol)の水(15mL)溶液で処理した。室温で更に1時間後、反応混合物を水50mLで希釈し、トルエン(3×50mL)で洗浄した。有機抽出相を合わせてMgSOで乾燥し、16時間還流した。反応混合物を室温まで冷却し、ベンジルアルコール3.1mL(30.2mmol)とトリエチルアミン4.2mL(30.2mL)で処理した。反応混合物を24時間還流し、冷却し、EtOAc100mLと10%クエン酸35mLで希釈した。有機抽出相を水とブラインで洗浄した後、MgSOで乾燥した。カラムクロマトグラフィー(2:3 EtOAc/ヘキサン)にかけると、カルバメートCが得られた。H NMR(CDCl)δ7.38(m,8H),6.85(bs,1H),5.85(m,1H),5.65(m,1H),5.20(s,2H),4.44(d,J=6.0Hz,2H),3.82(s,3H),1.71(d,3H).LCMS(M+H)=356.25。
【0078】
ステップD.ステップCからのアリールエーテル3.56g(10.0mmol)のEtOAc(100mL)溶液を新たに調製したCH50mL(約0.5M,25mmol)で処理した。5分間撹拌後、Pd(OAc)112mg(0.5mmol)を加えると、激しくNを発生した。更に30分後に茶色スラリーを蒸発させ、クロマトグラフィー(1:1 EtOAc/ヘキサン)にかけると、所望シクロプロピルメチルエーテルが得られた。H NMR(CDCl)δ7.55(s,1H),7.44(m,7H),6.80(bs,1H),5.23(s,2H),3.85(s,3H),3.80(m,2H),1.04(d,3H),0.94(m,1H),0.75(m,1H),0.47(m,1H),0.38(m,1H).LCMS(M+H)=368.26。
【0079】
ステップE.ステップDからのカルバミン酸ベンジル(3.6g,10.0mmol)と10%Pd/C1.5gのEtOAc(100mL)溶液を水素ガスバルーン下に室温で5時間撹拌した。混合物をセライトパッドで濾過し、濃縮し、シリカゲル(50%EtOAc/ヘキサン)で精製すると、所望アニリンが得られた。H NMR(CDCl)δ6.99(s,2H),6.40(s,1H),3.85(s,3H),3.75(m,2H),1.77(m,1H),1.45(m,1H),1.04(d,3H),0.47(m,1H),0.33(m,1H).LCMS(M+H)=236.2。
【0080】
ステップF.CHCl30mLとピリジン5mL中にステップEからのアニリン(940mg,4.0mmol)を含有する0℃溶液に塩化メタンスルホニル(0.40mL,4.0mmol)を加えた。得られた混合物をこの温度で2時間撹拌した後にDCM100mLで希釈した。溶液を1N HCl(3×25mL)、水(2×25mL)、及びブライン(25mL)で洗浄した。有機相を乾燥し、濃縮するとスルホンアミドFが得られ、それ以上精製せずに次段階で使用した。LCMS(M+H)=314.1。
【0081】
ステップG.ステップFからのスルホンアミド(1.25g,4:0mmol)のDMF(20mL)溶液を95%水素化ナトリウム(106mg,4.4mmol)と過剰のヨウ化メチル(3mL)で処理した。得られた混合物を周囲温度で1時間撹拌し、エーテル200mLで希釈した。溶液を水(7×25mL)とブラインで洗浄した後にMgSOで乾燥した。シリカゲルクロマトグラフィー(2:3 EtOAc/ヘキサン)により精製すると、所望メチル化スルホンアミドが得られた。H NMR(CDCl w/0.05%DMSO−d6)δ7.65(s,1H),7.41(s,1H),7.15(s,1H),3.93(s,3H),3.80(t,2H),3.30(S,3H),2.87(s,3H),1.11(d,3H),0.88(m,1H),0.55(m,1H),0.37(m,1H).LCMS(M+H)=328.23。
【0082】
ステップH.ステップGからのエステル(625mg,2.0mmol)のTHF/MeOH(1:1)(12mL)溶液に撹拌下に15%NaOH(2.2mL,8.0mmol)を加えた。反応混合物を45℃で2時間撹拌した後に溶媒を蒸発させ、残渣を3N HCl(4.0mL,12mmol)で酸性化した。固形分をDCM75mLに取り、有機相をブラインで洗浄した。有機相を乾燥し、蒸発させると、所望カルボン酸が白色固体として得られた。H NMR(CDCl w/0.05%DMSO−d6)δ7.61(s,1H),7.44(s,1H),7.15(s,1H),3.83(t,2H),3.32(S,3H),2.83(s,3H),1.11(d,3H),0.88(m,1H),0.55(m,1H),0.37(m,1H).LCMS(M+H)=314.22。
【0083】
中間体IV
【0084】
【化19】

【0085】
ステップA:3−アミノ−5−ニトロ安息香酸(3.60g,19.78mmol)のMeOH(100mL)溶液に塩化チオニル(2.59g,21.76mmol)を加えた。溶液を65℃まで12時間加熱した。減圧濃縮すると、メチルエステル塩酸塩が得られた。H NMR(CDOD)δ8.62(s,1H),8.28(s,1H),8.19(s,1H),3.99(s,3H)。
【0086】
ステップB:ステップAからのアミノエステル3.53g(18.0mmol)のCHCl/ピリジン(3:1)(100mL)溶液に塩化メタンスルホニル(2.07g,18.0mmol)を加えた。反応混合物を周囲温度で1時間撹拌した後に溶媒を蒸発させた。ガム状残渣をEtOAc(100mL)に取り、1N HCl(100mL)で酸性化し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機抽出相を合わせてMgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮すると、スルホンアミドがオフホワイト固体として得られた。H NMR(CDOD)δ8.46(s,1H),8.30(s,1H),8.18(s,1H),3.97(s,3H),3.09(s,3H)。
【0087】
ステップC:水素化ナトリウム(0.26g,6.55mmol,60%油分散液)をDMF10mLに懸濁し、ステップBからのスルホンアミド(DMF10mL中)1.5g(5.45mmol)を加えた後にヨウ化メチル0.93g(6.55mL)を加えた。溶液を周囲温度で3時間撹拌した。反応混合物をHO(250mL)でクエンチし、EtOAc(3×200mL)で抽出し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィーにより精製すると、N−メチルスルホンアミドが得られた。LCMS(M−HO)=272.2。
【0088】
ステップD.EtOH50mLとHOAc(2mL)中にステップCからのニトロスルホンアミド(2.7g,mmol)と10%Pd/C0.15gを含有する溶液を水素ガスバルーン下に室温で12時間撹拌した。混合物をセライトパッドで濾過し、濃縮し、シリカゲル(100%EtOAc)で精製すると、所望アニリンが得られた。H NMR(CDOD)δ7.29(s,1H),7.26(s,1H),6.95(s,1H),3.87(s,3H),3.27(sm 3H),2.89(s,3H).LCMS(M+H)=258.2。
【0089】
【化20】

【実施例1】
【0090】
【化21】

【0091】
塩化2−ベンジル−1,3−ジヒドロキシプロパン−2−アンモニウム
室温のTHF6mL中のrac−ベンジルセリン(1)(0.40g,2.049mmol)の溶液にNaBH(0.271g 7.171mmol)を一度に加えた。溶液に還流冷却器を付け、0℃まで冷却した。THF2mL中のヨウ素(0.78g,3.073mmol)をカニューレで滴下した。添加の完了後、反応混合物を15時間加熱還流した。次に反応混合物を0℃まで冷却し、起泡が弱まるまでメタノールを加えることによりクエンチした。pHが1未満になるまで6N HClを加えることにより残渣を酸性化した後、濃縮すると、各種無機残渣で汚染した所望生成物2が得られた(未精製反応混合物をメタノールに再溶解し、セライトパッドで濾過し、新たな大量のメタノールで濯ぎ、望ましくない無機残渣をの一部を除去した)。この混合物をそれ以上精製せずに使用した。H NMR(400MHz,d−MeOH)δ7.341−7.250(m,5H),3.515(s,4H),2.998(s,2H)。
【実施例2】
【0092】
【化22】

【0093】
N−[1−ベンジル−2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]−N’−{[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]−5−[N−メチル−N−(メチルスルホニル)アミノ]}イソフタルイミド
CHCl 3mL中の塩酸アミン2(0.442g,2.2028mmol)と酸3(0.100g,0.254mmol;中間体III)のスラリーにジイソプロピルエチルアミン(0.180mL,1.014mmol)を加え、次いでBOP試薬(0.168g,0.380mmol)を加えた。2.5時間後に更にジイソプロピルエチルアミン(0.90mL,0.501mmol)とBOP試薬(0.085g,0.190mmol)を加えた。45分後に反応混合物を濃縮し、DMF 2mLとHO 0.25mLに再溶解した後、逆相分取HPLCにより精製した。所望アミド4を含有する弱酸性フラクションを凍結乾燥により濃縮した。H NMR(400MHz,d−MeOH)δ8.830(d,J=7.1Hz,1H),8.047(m,1H),7.969(m,1H),7.873(m,1H),7.419−7.254(m,3H),7.238−7.150(m,4H),7.065−7.020(m,2H),5.217(m,1H),3.849(d,J=9.7Hz,2H),3.732(d,J=9.7Hz,1H),3.335(s,3H),3.168(s,2H),2.939(s,3H),1.551(d,J=6.9Hz,3H).Low res.MS(ES)M+H=558。
【実施例3】
【0094】
【化23】

【0095】
2−アミノ−2−ベンジル−3−ヒドロキシプロピル−3−({[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]アミノ}カルボニル)−5−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]安息香酸エステル
CHCN 2mLとHO 0.4mL中のアミド4(19.2mg,0.0344mmol)の溶液にトリフルオロ酢酸(0.14mL)を加えた。反応を室温で14時間進行させた後、45℃まで7時間昇温させた。トリフルオロ酢酸のアリコート(0.050mL)を更に加え、反応混合物を45℃に14時間維持した。反応混合物を濃縮し、残渣をDMF 1mLに溶かした後、逆相分取HPLCにより精製すると、所望エステル5がジアステレオマーの1:1混合物として得られた。ジアステレオマーA:H NMR(400MHz,d−MeOH)δ9.058(br s,1H),8.425(m,1H),8.260(m,1H),8.136(m,1H),7.438−7.403(m,2H),7.355−7.247(m,5H),7.068−7.020(m,2H),5.246(m,1H),4.469(d,J=12.1Hz,1H),4.319(d,J=12.3Hz,1H),3.700(s,2H),3.386(s,3H),3.140(m,2H),2.964(s,3H),1.576(d,J=7.1Hz)。ジアステレオマーB:H NMR(400MHz,d−MeOH)δ9.038(br s,1H),8.400(m,1H),8.260(m,1H),8.136(m,1H),7.438−7.403(m,2H),7.355−7.247(m,5H),7.068−7.020(m,2H),5.246(m,1H),4.469(d,J=12.1Hz,1H),4.309(d,J=12.1Hz,1H),3.700(s,2H),3.386(s,3H),3.140(m,2H),2.964(s,3H),1.576(d,J=7.1Hz).Low res.MS(ES)M+H=558。
【0096】
以下の化合物は適当な出発材料と試薬を使用して上記実施例の化合物と同様に製造される。
【0097】
【表2】



【0098】
以上、所定特定態様に関して本発明を記載及び例証したが、当業者に自明の通り、発明の精神と範囲を逸脱せずに手順とプロトコールの種々の応用、変更、変形、置換、削除及び追加が可能である。従って、本発明は特許請求の範囲により定義され、特許請求の範囲は妥当な範囲で広義に解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

{式中、R
(1)−C1−6アルキル、
(2)−C2−6アルケニル、
(3)−C2−6アルキニル[前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは置換されていないか又はフェニルで置換されており、前記フェニルは置換されていないか又は
(i)ハロ、
(ii)−C1−6アルキル、
(iii)−C2−6アルケニル、
(iv)−C2−6アルキニル、
(v)−OH、及び
(vi)−O−C1−6アルキルから選択される基で置換されている]、
(4)水素から構成される群から選択され;

(1)R−S(O)N(R)−
[式中、R
(a)−C1−6アルキル、
(b)−C2−6アルケニル、
(c)−C2−6アルキニル(前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは置換されていないか又は1〜6個のフルオロで置換されている)、
(d)フェニル、及び
(e)ベンジルから構成される群から独立して選択され、

(a)水素、
(b)−C1−6アルキル、
(c)−C2−6アルケニル、
(d)−C2−6アルキニルから構成される群から独立して選択される]、
(2)
【化2】

[式中、R8a及びR8b
(a)水素、
(b)−CN、
(c)ハロ、
(d)−C1−6アルキル、
(e)−C2−6アルケニル、及び
(f)−C2−6アルキニルから構成される群から独立して選択される]から構成される群から選択され;

【化3】

から構成される群から独立して選択され;
6a、R6b、及びR6c
(1)水素、及び
(2)ハロゲンから構成される群から独立して選択され;

(1)−C1−6アルキル、
(2)−C2−6アルケニル、
(3)−C2−6アルキニル(前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは置換されていないか又はフェニルで置換されている)、及び
(4)水素から構成される群から選択され;
13は−CH=CH−及び−O−から構成される群から選択され;
及びR10
(1)水素、
(2)C1−6アルキル、
(3)C2−6アルケニル、
(4)C2−6アルキニル(前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは置換されていないか又はフェニルで置換されている)から構成される群から独立して選択されるか、
あるいはR及びR10は一緒になって置換されていないか又は−C1−6アルキル、−C2−6アルケニル、−C2−6アルキニル、−C1−6アルキル−O−C1−6アルキル、フェニルもしくはピリジルで置換されたピロリジン又はピペリジン環を形成してもよく;
11
(1)−OH、
(2)−O−C1−6アルキル、
(3)−O−C1−6アルキル−フェニル、
(4)−O−フェニル、及び
(5)フェニルから構成される群から選択され;
12
(1)−NR10、及び
(2)−OHから構成される群から選択され;
mは独立して0、1、又は2である}の化合物及び医薬的に許容可能なその塩。
【請求項2】
式II:
【化4】

{式中、R
(1)置換されていないか又はフェニルで置換されたC1−6アルキル、及び
(2)水素から構成される群から選択され;

(1)R−S(O)N(R)−
[式中、R
(a)置換されていないか又は1〜6個のフルオロで置換されたC1−6アルキル、
(b)フェニル、及び
(c)ベンジルから構成される群から独立して選択され、

(a)水素、及び
(b)−C1−6アルキルから構成される群から独立して選択される]、及び
(2)
【化5】

[式中、R8a及びR8b
(a)水素、
(b)−CN、
(c)ハロ、及び
(d)−C1−6アルキルから構成される群から独立して選択される]から構成される群から選択され;

(1)置換されていないか又はフェニルで置換されたC1−6アルキル、及び
(2)水素から構成される群から選択され;
及びR10
(1)水素、及び
(2)置換されていないか又はフェニルで置換されたC1−6アルキルから構成される群から独立して選択され;
11
(1)−OH、
(2)−O−フェニル、及び
(3)フェニルから構成される群から選択される}の請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式III:
【化6】

{式中、R
(1)置換されていないか又はフェニルで置換されたC1−6アルキル、及び
(2)水素から構成される群から選択され;

(1)R−S(O)N(R)−
[式中、R
(a)置換されていないか又は1〜6個のフルオロで置換されたC1−6アルキル、
(b)フェニル、及び
(c)ベンジルから構成される群から独立して選択され、

(a)水素、及び
(b)−C1−6アルキルから構成される群から独立して選択される]、及び
(2)
【化7】

[式中、R8a及びR8b
(a)水素、
(b)−CN、
(c)ハロ、及び
(d)−C1−6アルキルから構成される群から独立して選択される]から構成される群から選択され;

(1)置換されていないか又はフェニルで置換されたC1−6アルキル、及び
(2)水素から構成される群から選択され;
11
(1)−OH、
(2)−O−フェニル、及び
(3)フェニルから構成される群から選択される}の請求項1に記載の化合物。
【請求項4】

(1)ベンジル、
(2)フェニル−エチル−、
(3)メチル、及び
(4)水素から構成される群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
がCH−S(O)N(CH)−である請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
がシアノ−フェニル−である請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
がメチルである請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
及びR10が、
(1)水素、及び
(2)メチルから構成される群から独立して選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
11が−OHである請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
下記化合物:
【表1】


及び医薬的に許容可能なその塩から構成される群から選択される化合物。
【請求項11】
有効量の請求項1に記載の化合物又は医薬的に許容可能なその塩と医薬的に許容可能なキャリヤーを含有する医薬組成物。
【請求項12】
施療を要する哺乳動物におけるβセクレターゼ活性の阻害方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物又は医薬的に許容可能なその塩を前記哺乳動物に投与することを含む前記方法。
【請求項13】
施療を要する患者におけるアルツハイマー病の治療方法であって、有効量の請求項1に記載の化合物又は医薬的に許容可能なその塩を前記患者に投与することを含む前記方法。
【請求項14】
施療を要する患者におけるアルツハイマー病の予防、防止、改善又は危険低減方法であって、有効量の請求項1に記載の化合物又は医薬的に許容可能なその塩を前記患者に投与することを含む前記方法。

【公表番号】特表2007−522088(P2007−522088A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518686(P2006−518686)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/020525
【国際公開番号】WO2005/004803
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】