説明

アルツハイマー病を治療するためのスピロピペリジンβセクレターゼ阻害剤

本発明は、βセクレターゼ酵素の阻害剤であり、βセクレターゼ酵素が関与する疾患(例えば、アルツハイマー病)の治療において有用である式(I)を有するスピロピペリジン化合物に関する。本発明はまた、前記化合物を含む医薬組成物、並びに前記した化合物及び組成物のβセクレターゼ酵素が関与する前記疾患の治療における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、βセクレターゼ酵素の阻害剤として有用であり、例えば、アルツハイマー病のβセクレターゼ酵素が関与する疾患治療に有用なスピロピペリジン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病は、記憶障害及び認知機能不全を特徴とする進行性神経変性障害である。アルツハイマー病は、病理学的にはアミロイドが細胞外プラーク及び細胞内神経原線維濃縮体の形態で脳に異常沈着することを特徴とする。
【0003】
アミロイド蓄積の速度は形成速度、凝集速度及び脳からの排出速度の組合せである。アミロイドプラークの主成分は、サイズの非常に大きい前駆体タンパク質のタンパク質分解物である4kDアミロイドタンパク質(βA4、別称Aβ、βタンパク質及びβAP)であることが一般に認められている。アミロイド前駆体タンパク質(APPまたはAβPP)は、大きな細胞外ドメイン、膜貫通領域及び、短い細胞質テールからなる受容体様構造を有している。AβドメインはAPPの細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインの両方の一部を占めるので、Aβドメインの遊離はそのNH末端及びCOOH末端を生成するために2つの異なるタンパク質分解イベントが存在することを意味する。APPを膜から遊離させ、APPの可溶性のCOOH切断形(APPs)を生成する分泌メカニズムには少なくとも2種類のものが存在する。APP及びそのフラグメントを膜から遊離させるプロテアーゼは“セクレターゼ”と称されている。多くのAPPsは、Aβタンパク質内で切断してα−APPsを遊離させ、無傷のAβを遊離させない推定αセクレターゼにより遊離される。ごく一部のAPPsはβセクレターゼ(“βセクレターゼ”)により遊離され、APPのNH末端の近くで切断し、完全なAβドメインを含むCOOH末端フラグメント(CTFs)を生成する。
【0004】
よって、βセクレターゼまたはβアミロイド前駆体タンパク質切断酵素(“BACE”)の活性は、アルツハイマー病の特徴であるAPPの異常切断、Aβ生成、βアミロイドプラークの脳内蓄積を引き起こす(R.N.Rosenberg,Arch.Neurol.,vol.59,2002年9月,p.1367−1368;H.Fukumotoら,Arch.Neurol.,vol.59,2002年9月,p.1381−1389;J.T.Huseら,J.Biol.Chem.,vol.277,No.18,2002年5月3日発行,p.16278−16284;及びK.C.Chen及びW.J.Howe,Biochem.Biophys.Res.Comm.,vol.292,p.702−708,2002参照)。従って、βセクレターゼまたはBACEを阻害し得る治療薬はアルツハイマー病の治療のために有用であり得る。
【0005】
本発明の化合物は、βセクレターゼまたはBACEの活性を阻害し、よって不溶性Aβの形成を防止し、Aβの生成を阻止することによりアルツハイマー病を治療するために有用である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】R.N.Rosenberg,Arch.Neurol.,vol.59,2002年9月,p.1367−1368
【非特許文献2】H.Fukumotoら,Arch.Neurol.,vol.59,2002年9月,p.1381−1389
【非特許文献3】J.T.Huseら,J.Biol.Chem.,vol.277,No.18,2002年5月3日発行,p.16278−16284
【非特許文献4】K.C.Chen及びW.J.Howe,Biochem.Biophys.Res.Comm.,vol.292,p.702−708,2002
【発明の概要】
【0007】
本発明は、βセクレターゼ酵素の阻害剤として有用な一般式(I):
【0008】
【化1】

を有する化合物及びその医薬的に許容され得る塩に関する。
【0009】
本発明はまた、治療有効量の式(I)を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩及び医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物に関する。本発明はまた、βセクレターゼ酵素が関与する疾患(例えば、アルツハイマー病)の哺乳動物の治療方法、並びに前記した本発明の化合物及び医薬組成物の前記疾患の治療における使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1つの実施形態において、本発明は、一般式(I):
【0011】
【化2】

[式中、

(1)N、及び
(2)CR
{ここで、R
(a)水素、
(b)−C1−10アルキル(ここで、アルキルは場合によりハロゲンで置換されている)、
(c)ハロゲン、
(d)−OH、または
(e)−OC1−10アルキル(ここで、アルキルは場合によりハロゲンで置換されている)
からなる群から選択される}
からなる群から選択され;

(1)−NR1A1B
(ここで、R1A及びR1Bは各々
(a)−C1−10アルキル、または
(b)アリール
からなる群から選択され、前記アルキルは場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)アリール、または
(iv)−CN
で置換されており、前記アリールは場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−C1−10アルキル、
(v)−C3−12シクロアルキル、
(vi)−O−C1−10アルキル、
(vii)−Co−6アルキル−アリール
で置換されており、或いは
1A及びR1Bはこれらが結合している窒素と一緒に連結して、3〜9個の環炭素原子を含む環構造を形成し、前記環炭素原子の1個以上は場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル、
(e)−C3−12シクロアルキル、
(f)−O−C1−10アルキル、
(g)−C0−6アルキル−アリール
で置換されており、前記したアルキル、シクロアルキルまたはアリール部分は場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−C1−6アルキル、
(v)−C2−6アルケニル、
(vi)−OC1−6アルキル、または
(vii)−C1−6ハロアルキル
で置換されている)、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C3−12シクロアルキル、
(4)−C1−10アルキニル、
(5)アリール、及び
(6)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記したXアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルキニル部分は場合により1個以上の
(a)−C1−10アルキル、
(b)ハロ、
(c)−OH、
(d)−CN、
(e)−O−C1−10アルキル、または
(f)−C0−6アルキル−アリール
で置換されており;

(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C2−10アルケニル、
(4)−C2−10アルキニル、
(5)−C3−12シクロアルキル、
(6)4〜8個の環原子を有し、1個の環原子は窒素及び酸素からなる群から選択されるヘテロ原子である非芳香族ヘテロ環式基、
(7)アリール、及び
(8)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記したアルキル、シクロアルキル、ヘテロ環式基、アルケニル、アルキニル、アリールまたはヘテロアリールR部分は場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル、
(e)−C3−12シクロアルキル、
(f)−O−C1−10アルキル、
(g)−C0−6アルキル−アリール、
(h)−C0−6アルキル−ヘテロアリール、
(i)−NC(=O)−NR6’
(j)−NC(=O)−C1−3アルキル−NR6’
(k)−NC(=O)R
(l)−NR6’
(m)−SO
(n)−SO6’、または
(o)4〜8個の環原子を有し、1個の環原子は窒素及び酸素からなる群から選択されるヘテロ原子である非芳香族ヘテロ環式基
で置換されており、前記したアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及びヘテロ環式部分は場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−C1−10アルキル(ここで、前記アルキルは場合により1個以上のハロで置換されている)、
(v)−OC1−10アルキル(ここで、前記アルキルは場合により1個以上のハロで置換されている)、
(vi)−SO1−3アルキル、
(vii)−SONR6’
(viii)−NRSO1−3アルキル、
(ix)−CO、及び
(x)−CONR6’
で置換されており;
Qは結合または−C1−6アルキルであり、前記アルキルは場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル、
(e)−C3−12シクロアルキル、
(f)−O−C1−10アルキル、
(g)アリール、及び
(h)ヘテロアリール
で置換されており;

(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C2−10アルケニル、
(4)−C2−10アルキニル、
(5)−C3−12シクロアルキル、
(6)−C3−12シクロアルケニル、
(7)アリール、及び
(8)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記したアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはヘテロアリールR部分は場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル、
(e)−C2−10アルケニル、
(f)−C3−12シクロアルキル、
(g)−O−C3−12シクロアルキル、
(h)−O−C1−10アルキル、
(i)−O−C3−12ヘテロ環式基(ここで、前記ヘテロ環式基は4〜8個の環原子を有し、1個の環原子が窒素、硫黄及び酸素からなる群から選択されるヘテロ原子である)、
(j)アリール、
(k)ヘテロアリール、
(1)−NR6’
で置換されており、前記したアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリール部分は場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−C1−10アルキル、
(v)−OC1−10アルキル、
(vi)−NR6’
(vii)−C2−6アルケニル、
(viii)−C1−6ハロアルキル、
(ix)−SO1−3アルキル、
(x)−SONR6’、または
(xi)−CONR6’
で置換されており、ただしQが結合のときにはRは水素であり;

(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C3−4アルケニル、及び
(4)アリール
からなる群から選択され、前記したアルキル、アルケニルまたはアリールR基は場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−C1−6アルキル、
(d)−CN、
(e)−O−C1−10アルキル、
(f)−NR(ここで、R及びRは(i)水素、及び(ii)−アルキルからなる群から選択される)
(g)−S(O)−C1−10アルキル(ここで、nは0、1または2である)、
(h)−C(=O)−R(ここで、Rは(i)水素、(ii)OH、(iii)−C1−6アルキル、(iv)−OC1−6アルキル、及び(v)アリールからなる群から選択される)
で置換されており;
及びR6’
(1)水素、
(2)−C1−6アルキル、
(3)−C3−7シクロアルキル、
(4)−C1−6ハロアルキル、
(5)−C0−6アルキル−アリール、
(6)−C0−6アルキル−ヘテロアリール、
(7)ハロ、及び
(8)4〜8個の環原子を有し、1個の環原子は窒素及び酸素からなる群から選択されるヘテロ原子である非芳香族ヘテロ環式基
からなる群から選択され、前記したアリールまたはヘテロアリールRまたはR6’部分は場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−C1−6アルキル、
(c)−O−C1−6アルキル、及び
(d)−NO
で置換されている]
を有するスピロピペリジン化合物及びその医薬的に許容され得る塩に関する。
【0012】
式(I)を有する化合物の1つの実施形態において、XはNである。
【0013】
式(I)を有する化合物の1つの実施形態において、XはNR1A1B(ここで、R1A及びR1Bはこれらが結合している窒素と一緒に連結して、3〜9個の環炭素原子を含み、前記環炭素原子の1個以上が場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−C1−10アルキル、
(c)−C3−12シクロアルキル、
(d)−O−C1−10アルキル、
(e)−Co−6アルキル−アリール
で置換されている環構造を形成し、前記したアルキル、シクロアルキルまたはアリール部分は場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−C1−6アルキル、
(iii)−OC1−6アルキル、または
(iv)−C1−6ハロアルキル
で置換されている)
である。
【0014】
別の実施形態において、XはNR1A1B(ここで、R1A及びR1Bは各々場合により置換されているC1−10アルキル(適当にはC1−6アルキル)である。代替実施形態において、R1Aはアリールであり、R1Bは場合により置換されているC1−10アルキル(適当にはC1−6アルキル)である。
【0015】
1つの実施形態において、Rは、場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル、
(e)−C3−12シクロアルキル、
(f)−O−C1−10アルキル、
(g)−C0−6アルキル−アリール(ここで、前記アリールは場合により1個以上の(i)ハロ、(ii)−OH、(iii)−SO、及び(iv)−SONR6’
で置換されている)、及び
(h)−C0−6アルキル−ヘテロアリール
で置換されているアリール(例えば、フェニル)である。
【0016】
式(I)を有する化合物の1つの実施形態において、Qは−C1−3アルキル(例えば、−CH−)であり、R
(1)−C1−10アルキル、
(2)−C2−10アルキニル、
(3)−C3−12シクロアルキル、
(4)アリール、及び
(5)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記したアルキル、シクロアルキル、アルキニル、アリールまたはヘテロアリールR部分は場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−C1−10アルキル、
(d)−C3−12シクロアルキル、または
(e)−O−C1−10アルキル
で置換されている。
【0017】
式(I)を有する化合物の1つの実施形態において、Rは−C1−10アルキル(例えば、メチル)または−C3−4アルケニルである。
【0018】
本発明はまた、治療有効量の式(I)を有する化合物を投与することによるβセクレターゼ酵素が関与する疾患(例えば、アルツハイマー病)の哺乳動物の治療方法に関する。
【0019】
本発明はまた、有効量の式(I)を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩及び医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物に関する。
【0020】
本発明は更に、式(I)を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩を薬用担体または希釈剤と組み合わせることを含むヒト及び動物においてβセクレターゼ酵素活性を阻害するための薬剤または組成物の製造方法に関する。
【0021】
式(I)を有する化合物の属には、式(II):
【0022】
【化3】

[式中、X、R1A、R1B、Q、R及びRは上に記載されている通りであり、R10
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル、
(e)−C3−12シクロアルキル、
(f)−O−C1−10アルキル、
(g)−C0−6アルキル−アリール(ここで、前記アリールは場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−C1−6アルキル、
(v)−C2−6アルケニル、
(vi)−OC1−6アルキル、
(vii)−C1−6ハロアルキル、
(viii)−SO1−3アルキル、
(ix)−SONRNR6’
(x)−CONR6’
で置換されている)
(h)−C0−6アルキル−ヘテロアリール、
(i)−NC(=O)−NR6’
(j)−NC(=O)−C1−3アルキル−NR6’
(k)−NC(=O)R
(l)−NR6’、及び
(m)4〜8個の環原子を有し、1個の環原子が窒素及び酸素からなる群から選択されるヘテロ原子である非芳香族ヘテロ環式基
からなる群から選択され、前記したアルキル、シクロアルキル及びヘテロアリールR10部分は場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−C1−10アルキル、
(v)−OC1−10アルキル、
(vi)−SO1−3アルキル、
(vii)−SONR6’
(viii)−NRSO1−3アルキル、
(ix)−CO、及び
(x)−CONR6’
で置換されている]
を有する化合物の亜属及びその医薬的に許容され得る塩がある。
【0023】
1つの実施形態では、本発明は、治療有効量の式(I)を有する化合物を投与することによるBACE1酵素活性の阻害方法に関する。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、治療有効量の式(I)を有する化合物を投与することによるBACE2酵素活性の阻害方法に関する。
【0025】
本発明はまた、式(I)を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩を薬用担体または希釈剤と組み合わせることを含むヒトにおけるアルツハイマー病を治療するための薬剤または組成物の製造方法に関する。
【0026】
本明細書中でそれ自体または別の置換基の一部として使用されている用語「アルキル」は、指定されている炭素原子数を有する飽和直鎖または分岐鎖状炭化水素基を意味する(例えば、C1−10アルキルは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を意味する)。本発明で使用するのに適したアルキル基は1〜6個の炭素原子を有するC1−6アルキル基である。アルキル基の例にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が含まれる。
【0027】
例えば用語「−Cアルキル−C6−12アリール」中の用語「Cアルキル」は結合を指す。
【0028】
本明細書中でそれ自体または別の置換基の一部として使用されている用語「アルケニル」は、1つの炭素−炭素二重結合及び指定されている炭素原子数を有する直鎖または分岐鎖状炭化水素基を意味する(例えば、C2−10アルケニルは2〜10個の炭素原子を有するアルケニル基を意味する)。本発明で使用するのに適したアルケニル基は2〜6個の炭素原子を有するC2−6アルケニル基である。アルケニル基の例にはエテニル及びプロペニルが含まれる。
【0029】
本明細書中でそれ自体または別の置換基の一部として使用されている用語「アルキニル」は、1つの炭素−炭素三重結合及び指定されている炭素原子数を有する直鎖または分岐鎖状炭化水素基を意味する(例えば、C2−10アルキニルは2〜10個の炭素原子を有するアルキニル基を意味する)。本発明で使用するのに適したアルキニル基は2〜6個の炭素原子を有するC2−6アルキニル基である。アルキニル基の例にはエチニル及びプロピニルが含まれる。
【0030】
本明細書中でそれ自体または別の置換基の一部として使用されている用語「シクロアルキル」は、指定されている炭素原子数を有する飽和環式炭化水素基を意味する(例えば、C3−12シクロアルキルは3〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する)。本明細書中で使用されている用語「シクロアルキル」には単環式、二環式及び三環式飽和炭素環、並びに架橋及び縮合環炭素環(例えば、スピロ縮合環系)が含まれる。
【0031】
本発明で使用するのに適したシクロアルキル基は3〜8個の炭素原子を有する単環式C3−8シクロアルキル基である。単環式シクロアルキル基の例にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が含まれる。架橋シクロアルキル基の例にはアダマンチル及びノルボルニルが含まれる。縮合シクロアルキル基の例にはデカヒドロナフタレンが含まれる。
【0032】
本明細書中でそれ自体または別の置換基の一部として使用されている用語「ヘテロ環式」は、環炭素原子の1個以上がヘテロ原子(例えば、NまたはO)で置換されている上に定義したシクロアルキル基を意味する。本発明で使用するのに適した非芳香族ヘテロ環式基にはピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル及びイミダゾリジニルが含まれる。1つの実施形態では、本発明で使用するためのヘテロ環式基は4〜8個の環原子及び1個の窒素または酸素ヘテロ原子を有する。
【0033】
上に定義したヘテロ環式基が置換されている場合、置換基はヘテロ環式基の環炭素原子、または置換を可能にする原子価を有する環ヘテロ原子(すなわち、窒素、酸素または硫黄)に結合され得る。置換基が環炭素原子に結合しているのが適当である。同様に、ヘテロ環式基が本明細書中で置換基として定義されている場合には、結合点はヘテロ環式基の環炭素原子、または置換を可能にする原子価を有する環ヘテロ原子(すなわち、窒素、酸素または硫黄)上にあり得る。1つの実施形態では、環炭素原子に結合している。
【0034】
本明細書中でそれ自体または別の置換基の一部として使用されている用語「アリール」は、指定されている炭素原子数を有する芳香族または環式基を意味する(例えば、C6−10アリールは6〜10個の炭素原子を有するアリール基を意味する)。用語「アリール」には多環系(例えば、縮合環系)及び単環系が含まれ、分子の一部が芳香族であり、一部が非芳香族である多環系も含まれる。本発明で使用するのに適した単環アリール基はフェニルである。適当な縮合環アリール基にはナフチル、テトラヒドロナフチル及びインダニルが含まれる。
【0035】
用語「ハロ」または「ハロゲン」にはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードが含まれる。
【0036】
本明細書中でそれ自体または別の置換基の一部として使用されている用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1個の環ヘテロ原子(O、NまたはS)を有する芳香族環式基を意味する。用語「ヘテロアリール」には多環系及び単環系が含まれる。適当なヘテロアリール基は5〜12個の環原子を有する。ヘテロアリール基の例にはピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、テトラゾリル、フラニル、イミダゾリル、インダゾリル、トリアジニル、ピラニル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、インジニル及びベンゾオキサゾリルが含まれる。
【0037】
本明細書中に定義したヘテロアリール基が置換されている場合、置換基はヘテロアリール基の環炭素原子、または置換を可能にする原子価を有する環ヘテロ原子(すなわち、窒素、酸素または硫黄)に結合され得る。1つの実施形態では、置換基は環炭素原子に結合している。同様に、ヘテロアリール基が本明細書中で置換基として定義されている場合には、結合点はヘテロアリール基の環炭素原子、または置換を可能にする原子価を有する環ヘテロ原子(すなわち、窒素、酸素または硫黄)上にあり得る。1つの実施形態では、環炭素原子に結合している。
【0038】
本明細書中で使用されている用語「ベータ−セクレターゼ」または「βセクレターゼ」は、文献中でときどき「BACE」、「BACE1」(例えば、Vassarら,1999,Science,286:735−741参照)または「BACE2」(例えば、Farzanら,2000,PNAS,97:9712−9717参照)として公知の酵素を指す。BACE1は501アミノ酸の膜結合アスパラギン酸プロテアーゼである。BACE1はβセクレターゼの公知の機能特性及び特徴をすべて有している。Asp−1またはメマプシン−1とも称されるBACE2は膜結合アスパラギン酸プロテアーゼのBACEファミリーの第2メンバーである。BACE1とBACE2の違いを更に検討するためには、Roggo,Current Topics in Medicinal Chemistry,2002,2:359−370を参照されたい。
【0039】
本発明の化合物はBACE1酵素及びBACE2酵素の両方の阻害剤である。
【0040】
式(I)を有する化合物は少なくとも1つの不斉中心を有する。分子上の各種置換基の種類に応じて追加の不斉中心が存在することがある。
【0041】
不斉中心を有する化合物によりエナンチオマー(光学異性体)及び/またはジアステレオマー(立体配置異性体)が生ずる。混合物の形態(純粋なまたは部分的に精製されている化合物として)の考えられるエナンチオマー及びジアステレオマーのすべてが式(I)の範囲に含まれる。
【0042】
本明細書中に記載されている化合物は1つ以上の二重結合を含み得、よってシス/トランス異性体及び他の立体配置異性体が生じ得る。式(I)を有する化合物は上記した考えられる異性体のすべて及び前記異性体の混合物を含む。
【0043】
エナンチオマーまたはジアステレオマーに富む化合物の独立合成またはそのクロマトグラフ分離は、本明細書中に記載されている方法を適当に修飾することにより当業界で公知のようになされ得る。その絶対立体化学は結晶性生成物、または所要により公知の絶対配置を有する不斉中心を含む試薬を用いて誘導体化される結晶性中間体をX線結晶学にかけることにより決定され得る。
【0044】
所望により、化合物のラセミ混合物は、個々のエナンチオマーまたはジアステレオマーが単離されるように分離され得る。この分離は当業界で公知の方法により、例えば化合物のラセミ混合物をエナンチオマー的に純粋な化合物にカップリングしてジアステレオマー混合物を形成した後、標準方法(例えば、分別結晶またはクロマトグラフィー)により個々のジアステレオマーを分離する。カップリング反応はしばしばエナンチオマー的に純粋な酸または塩基を用いる塩の形成である。次いで、ジアステレオマー誘導体は、付加したキラル残基を切断することにより純粋なエナンチオマーに変換され得る。化合物のラセミ混合物は、キラル固定相を用いるクロマトグラフ方法によっても直接分離され得、この方法は当業界で公知である。
【0045】
或いは、化合物のエナンチオマーまたはジアステレオマーは、公知の立体配置を有する光学的に純粋な出発物質または試薬を用いて当業界で公知の方法により立体選択的に合成することにより得られ得る。
【0046】
本発明の化合物は、容易に入手し得る出発物質を用いて試薬及び慣用の合成手順により以下の反応スキーム(ここに記載されている変数は上に定義されている通りであるかまたは由来する)に従って製造され得る。それ自体有機合成業界の当業者に公知であるが、詳細に記載されていない変形を使用することも可能である。
【0047】
本発明は、本発明の化合物の製造における中間体として有用な化合物の合成方法をも提供する。
【0048】
スキーム1Aは、タイプ1A.8及び1A.9の化合物の合成を概説している。4−メトキシピリジン(1A.1)から出発して、ピペリジノン1A.2はCbzClの存在下で適切なグリニャール試薬を用いて製造した後、Zn/HOAc還元すると、所望のピペリジノン1A.2が生ずる。Cbz保護ピペリジノンをZn(CN)の存在下でストレッカー反応にかけると、所望の立体異性体のストレッカー生成物が主要異性体として得られる。或いは、TMSCN/HOAcを用いてJ.Cossy,Synthesis,1995,11,1368−1370に記載されているのと類似のストレッカー反応を実施し、生じたジアステレオマー生成物の混合物を加熱しながらEtOH中でTMSCNで処理すると、主要異性体が所望生成物であるように混合物を平衡化させ得る。適当な物質(例えば、トリクロロアセチルイソシアネート)を用いてアシル化した後、R.Sargesら,JOC,1982,47,4081−4085に記載されているのと類似の手順でメタノール/水を用いて環化すると、分離できる中間体イミノヒダントイン1A.6が生じ、これは適当なアミンと加熱することによりR置換された中間体1A.7に直接変換され得る。次いで、窒素保護基を除去するとタイプ1A.8の化合物が得られ、またはアルキル化剤及び塩基(例えば、炭酸カリウム)を用いてアルキル化すると、QR置換基を有する化合物が得られる。或いは、RCOHをカップリングして1A.6とアミド結合を形成し、次いで適当な還元剤(例えば、LAH)を用いて還元すると、Qがメチレンであるタイプ1A.9の化合物が得られる。ホウ水素化物試薬の存在下で適当なアルデヒドまたはケトンを用いて還元アミノ化することを含む第3代替法によっても、化合物1A.9が得られる。
【0049】
【化4】

【0050】
中間体1A.6の製造は国際特許出願WO 2007/011833に既に記載されている。1A.6に適当なアミンを付加すると、中間体1A.7が生ずる。還元水素化分解してCbzを除去すると、タイプ1A.8の化合物が生じ、これを穏和な塩基を用いてRQ−Xでアルキル化すると1A.9の化合物が生じ、または適当な酸RCOHとカップリングした後LAHで還元すると、タイプ1A.9の別の化合物が生じ得る。
【0051】
タイプ1B.5及び1B.6(R=H)の関連化合物はスキーム1Bに従って製造され得る。Boc保護されているピペリジノンから出発して、スキーム1Aに示す類似のトランスフォーメーションは1B.4の脱保護まで利用される。1B.4をTFAで脱保護すると、タイプ1B.5の化合物が得られる。1B.5をアルキル化または還元アルキル化すると、タイプ1B.6の別の化合物が得られる。
【0052】
【化5】

【0053】
スキーム1Cは、Boc保護されている1C.1から出発して、各種NR1A1B基を後段階で導入できるタイプ1C.4の化合物の製造を示す。ピペリジンベンジルカルバメート1C.1を標準方法を用いて直交脱保護した後、3つの標準方法(a、bまたはc)の1つを用いてQRを導入し、最後に各種HNR1A1Bを用いて置換/脱保護すると、タイプ1C.4の化合物が得られる。
【0054】
【化6】

【0055】
スキーム2Aは、XがCHまたは置換炭素である本発明の化合物の形成を示す。R.Jonesら,Tetrahedron Letters,24(43),1983,4751−4754に記載されている方法と同様にして、適当に置換されている中間体に対してストレッカー反応を行うとニトリル2A−1が生じ、これをアシル化すると2A−2が生じ、更にまず塩基(例えば、NaOMe)で処理した後強い水性酸(例えば、6N HCl)で処理することにより2A−3に環化され得る。次いで、2A−3を適当なアミンで処理すると化合物2A−4が生じ、フッ素化剤で処理してフッ素で置換すると化合物2A−5が得られ得る。
【0056】
【化7】

【0057】
スキーム3Aは、Xが場合により置換されている炭素である化合物の製造を示す。アミン及びTMSCNの存在下で中間体2A−3からストレッカー付加物3A−1が生ずる。3A−1をアミノ酸3A−2に加水分解した後、還元し、3A−3に酸化する。次いで、アルデヒドを有機金属試薬(例えば、グリニャールまたはリチウム試薬)を用いて処理するか、またはRh(I)触媒の存在下でアリールボロン酸で処理する。生じたアルコールを再酸化し、Fries,G.;Jassmann,E.;Kowarsch,R.;Bekker,H.;Loew,H.Ger.(East)(1974),9pp,GEXXA8 DD 106380 19740612に記載されている方法と同様にしてKOCN及び熱を用いてヘテロ環3A−4に閉環する。
【0058】
【化8】

【0059】
スキーム4Aは、X及びXが場合により炭素である化合物の製造、またはスキーム2A(X=NR1A1B、X=炭素)の代替例として示す。ケトアミド2A−3(国際特許出願WO 2006/044497及びこの中の実施例39、ステップ3において既に報告されているケトアミドの製造についてのスキーム4Bを参照)をTfO及び塩基を用いてトリフレートとして4A−1に、トシルクロリドを用いてトシレートに、またはPBrを用いて臭化物に活性化する。その後、中間体4A−1を触媒量の遷移金属(例えば、Ni(0)またはPd(0))の存在下で各種のアリール、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニルまたはアルキル有機金属試薬を用いて各種クロスカップリング条件で処理すると、タイプ4A−4のカップリングした化合物が得られる。更に、タイプ4A−1の中間体を、付加−脱離反応による2A−4(X=NR18NR1bである4A−2)への代替製造方法として直接使用してもよい。前と同様にして、フルオロ化合物4A−5(X=NR13NR16)は化合物4A−4からフッ素化剤を用いて製造され得る。
【0060】
【化9】

【0061】
用語「実質的に純粋」は、単離された物質が当業界で公知の分析技術によりアッセイして少なくとも90%の純度、好ましくは95%の純度、更により好ましくは99%の純度を有している。
【0062】
用語「医薬的に許容され得る塩」は、無機または有機の塩基及び無機または有機の酸を含めた医薬的に許容され得る非毒性の塩基または酸から製造される塩を指す。本発明の化合物は、遊離塩基形態の化合物中に存在する酸官能基の数に応じてモノ、ジまたはトリス塩であり得る。遊離塩基及び無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第一鉄、第二鉄、リチウム、マグネシウム、第一マンガン、第二マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等が含まれる。固体形態の塩は2つ以上の結晶構造で存在し得、水和物の形態であってもよい。医薬的に許容され得る有機非毒性塩基から誘導される塩には、第1級、第2級及び第3級アミン、天然に存在する置換アミンを含めた置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等の塩が含まれる。本発明の化合物が塩基性の場合、塩は無機酸及び有機酸を含めた医薬的に許容され得る非毒性酸から製造され得る。前記酸には、酢酸、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等が含まれる。
【0063】
本発明は、有効量の本明細書中に開示されている式(I)を有する化合物を投与することを含むβセクレターゼ酵素活性またはβアミロイド前駆体タンパク質切断酵素(“BACE”)活性の阻害を要する患者または被験者(例えば、哺乳動物)における上記活性の阻害剤としての前記化合物の使用に関する。用語「βセクレターゼ酵素」、「βアミロイド前駆体タンパク質切断酵素」及び「BACE」は本明細書中で互換可能に使用されている。ヒトに加えて、各種の他の哺乳動物が本発明の方法に従って治療され得る。
【0064】
本発明の化合物は、アルツハイマー病の治療、改善、抑制または危険低減に有用である。例えば、本発明の化合物はアルツハイマー型認知症を予防するため、及びアルツハイマー型の初期、中期または後期認知症を治療するためにも使用され得る。本発明の化合物は、軽度のアルツハイマー病を治療するため、中程度のアルツハイマー病を治療するため、または重度のアルツハイマー病を治療するためにも使用され得る。本発明の化合物は、アミロイド前駆体タンパク質(APPとも称される)の異常切断により媒介される疾患及びβセクレターゼを阻害することにより治療または予防され得る他の状態のリスクを治療、改善、抑制または危険低減させる際にも使用され得る。前記状態には、軽度認知障害、21トリソミー(ダウン症候群)、脳アミロイドアンギオパチー、退行性認知症、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性大脳出血(HCHWA−D)、クロイツフェルト・ヤコブ疾患、プリオン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、頭部外傷、卒中、膵炎、封入体筋炎、他の末梢アミロイドーシス、糖尿病及びアテローム性動脈硬化症が含まれる。
【0065】
本発明の化合物が投与される被験者または患者は通常、βセクレターゼ活性の阻害を望んでいる男性または女性のヒトであるが、βセクレターゼ活性の阻害または上記した障害の治療を望んでいる他の哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジ、家兎、サル、チンパンジーまたは他の類人猿、或いは霊長類も含まれ得る。
【0066】
本発明の化合物は、本発明の化合物が有用である疾患または状態の治療において1つ以上の他の薬物と併用され得、こうした薬物の併用はいずれかの薬物の単独よりもより安全であるかまたはより有効である。加えて、本発明の化合物は、本発明の化合物の副作用または毒性のリスクを治療、予防、コントロール、回復または軽減させる他の薬物の1つ以上と併用され得る。前記した他の薬物は、当該薬物について一般的に使用されているルート及び量で本発明の化合物と同時にまたは順次投与され得る。従って、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物に加えて1つ以上の他の活性成分を含有するものが含まれる。配合剤は、単位投与形態の配合品の一部として、または1つ以上の追加薬物を治療レジメンの一部として別々の剤形で投与するキットまたは治療プロトコルとして投与され得る。
【0067】
本明細書中で使用されている用語「組成物」は、所定の量または比率で特定成分を含む製品及び特定量の特定成分の組合せから直接または間接的に生ずる製品を包含すると意図される。医薬組成物に関連するこの用語は、1つ以上の活性成分及び任意の不活性成分からなる担体を含む製品;及び2つ以上の成分の組合せ、複合体化または集合から、1つ以上の成分の解離から、または1つ以上の成分の他のタイプの反応または相互作用から直接または間接的に生ずる製品を包含すると意図される。
【0068】
単位投与またはキットの形態での本発明の化合物と他の薬物の配合剤の例には、抗アルツハイマー病剤、例えば他のβセクレターゼ阻害剤またはγセクレターゼ阻害剤;アルファ7ニコチンアゴニスト、ADAM 10リガンドまたはアクチベーター;グリシン輸送阻害剤;タウリン酸化阻害剤;LXR βアゴニスト;ApoE4立体配座モジュレーター;Aβオリゴマー形成のブロッカー;p25/CDK5阻害剤;HMG−CoAレダクターゼ阻害剤;PPAR−ガンマアゴニスト、例えばピオグリタゾン及びロシグリタゾン;NK1/NK3受容体アンタゴニスト;イブプロフェンを含めたNSAID;ビタミンE;抗アミロイドヒト化モノクローナル抗体を含めた抗アミロイド抗体;COX−2阻害剤;抗炎症化合物、例えば(R)−フルルビプロフェン;CB−1受容体アンタゴニストまたはCB−1受容体逆アゴニスト;抗生物質、例えばドキシサイクリン及びリファンピン;N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)受容体アンタゴニスト、例えばメマンティン及びネラメキサン;NR2Bアンタゴニスト;アンドロゲン受容体モジュレーター;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、例えばガランタミン、リバスチグミン、ドネペジル及びタクリン;mGluR5モジュレーター;成長ホルモン分泌促進物質、例えばイブタモレン、メシル酸イブタモレン及びカプロモレリン;ヒスタミンH3アンタゴニスト;AMPAアゴニスト;PDE IV阻害剤;GABA逆アゴニスト;GABAα5受容体リガンド;GABA受容体リガンド;カリウムチャネルブロッカー;ニューロンニコチンアゴニスト;mGluR2モジュレーター;HDAC阻害剤;微小管アフィニティー調節リガンド(MARK)リガンド;P−450阻害剤、例えばリトナビル;或いは本発明の化合物の効果、安全性、便宜性を高めるかまたは本発明の化合物の望ましくない副作用または毒性を低下させる受容体または酵素に作用する他の薬物との配合剤が含まれる。配合剤の上記リストは例示にすぎず、決して限定的と意図されない。
【0069】
医薬組成物には、本発明の化合物である活性化合物が疾患のプロセスまたは状態に対して所望効果を与えるのに十分な量で含まれている。従って、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物を医薬的に許容され得る担体と混合することにより作成される組成物が含まれる。
【0070】
担体は、投与、例えば経口または(静脈内を含めた)非経口のために所望する製剤の形態に応じて広範囲のいろいろな形態をとり得る。よって、本発明の医薬組成物は経口投与に適したばらばらの単位、例えば各々が所定量の活性成分を含有しているカプセル剤、カシェ剤または錠剤として提供され得る。更に、組成物は散剤、顆粒剤、溶液剤、または水性液体中懸濁液剤、非水性液剤、水中油型エマルジョン剤または油中水型エマルジョン剤として提供され得る。上記した一般的な剤形に加えて、本発明の化合物は制御放出手段及び/またはデリバリーデバイスによっても投与され得る。
【0071】
経口投与用医薬組成物は医薬組成物を製造するために当業界で公知の方法に従って製造され得、この組成物は、医薬的に上品で口にあう製剤を提供するために甘味料、着香料、着色料及び保存料からなる群から選択される1つ以上の物質を含み得る。錠剤は、本発明の化合物を錠剤の製造に適した非毒性の医薬的に許容され得る賦形剤と混合して含み得る。賦形剤の例は、不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;顆粒化及び崩壊剤、例えばコーンスターチまたはアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチンまたはアラビアガム;及び滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであり得る。錠剤にコーティングを被せていなくても、胃腸管での崩壊及び吸収を遅らせて、長期間にわたり持続作用を与えるために公知技術によりコーティングしてもよい。
【0072】
本発明の化合物を含有する錠剤は、場合により1つ以上の補助成分または佐剤と一緒に圧縮または成形することにより製造され得る。圧縮錠は、適当な機械において自由流動形態(例えば、粉末または顆粒状)の本発明の化合物を場合により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性または分散剤と混合して圧縮することにより製造され得る。成形錠は、適当な機械において不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を成形することにより製造され得る。各錠剤は好ましくは約0.1〜約500mgの活性成分を含有しており、各カシェ剤またはカプセル剤は約0.1〜約500mgの本発明の化合物を含有している。
【0073】
経口投与用組成物は、本発明の化合物が不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリン)と混合されてなる硬ゼラチンカプセル剤として、または本発明の化合物が水または油性媒体(例えば、落花生油、流動パラフィンまたはオリーブ油)と混合されてなる軟ゼラチンカプセル剤としても提供され得る。
【0074】
他の医薬組成物には、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合して活性物質を含有している水性懸濁液剤が含まれる。加えて、油性懸濁液剤は、本発明の化合物を植物油(例えば、アラキス油、オリーブ油、ゴマ油または落花生油)または鉱油(例えば、流動パラフィン)中に懸濁させることにより製剤化され得る。油性懸濁液剤は各種賦形剤をも含み得る。本発明の医薬組成物は、賦形剤(例えば、甘味料及び着香料)を含んでいてもよい水中油型エマルジョン剤の形態をもとり得る。
【0075】
医薬組成物は、滅菌注射可能な水性または油性懸濁液の形態、または前記した滅菌注射可能溶液または分散液を即時調合するための滅菌粉末の形態であってもよい。いずれの場合も、最終注射可能形態は滅菌でなければならず、容易に注射し得るように十分に流動性でなければならない。医薬組成物は製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、好ましくは微生物(例えば、細菌及び真菌)の汚染作用から保護されていなければならない。
【0076】
本発明の医薬組成物は、エアゾール剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ダスティングパウダー等のような局所使用に適した形態であってもよい。更に、組成物は経皮デバイスで使用するのに適した形態であってもよい。これらの製剤は慣用のプロセシング方法により製造され得る。例えば、クリーム剤または軟膏剤は、所望のコンシステンシーを有するクリーム剤または軟膏剤を作成すべく親水性材料及び水を約5〜約10重量%の本発明の化合物と混合することにより製造される。
【0077】
本発明の医薬組成物は、担体が固体である直腸内投与に適した形態であってもよい。混合物が単位投与座剤を形成することが好ましい。適当な担体にはカカオ脂及び当業界で一般的に使用されている他の材料が含まれる。
【0078】
「医薬的に許容される」とは、担体、希釈剤または賦形剤が製剤の他の成分と相容性でなければならず、そのレシピエントにとって有害であってはならないことを意味する。
【0079】
用語「化合物の投与」または「化合物を投与する」は、治療を要する個人に対して本発明の化合物を個人の身体に導入され得る形態で治療有用な形態及び治療有用な量で与えることを意味する。前記形態には経口剤形、例えば錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液剤等;注入可能剤形、例えばIV、IM、IP等;経皮剤形、例えばクリーム剤、ゼリー剤、散剤またはパッチ剤;口腔内剤形;吸入用散剤、スプレー剤、懸濁液剤等;及び直腸内座剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
用語「有効量」または「治療有効量」は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医が求めている組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を引き出す当該化合物の量を意味する。
【0081】
本明細書中で使用されている用語「治療」または「治療する」は本発明の化合物の投与を意味し、(1)疾患の病理または症候を患っているかまたは呈している動物における疾患の抑制(すなわち、病理及び/または症候の更なる発現の停止)、または(2)疾患の病理または症候を患っているかまたは呈している動物における疾患の回復(すなわち、病理及び/または症候の逆転)が含まれる。用語「コントロールする」は、コントロールしようとする症状の治療、根絶、回復、または他の方法での重症の軽減を含む。
【0082】
本発明の化合物を含有する組成物は有利には単位投与形態で提供され得、製薬業界で公知の方法により製造され得る。用語「単位投与形態」は、患者または患者に対して薬物を投与する人が全投与成分が収容されている1つの容器またはパッケージを開けるだけでよく、2つ以上の容器またはパッケージから成分を一緒に混合しなくてすむようにすべての活性成分及び不活性成分が適当なシステム中で組み合わされている1つの投与を意味する。単位投与形態の典型的な例は、経口投与用錠剤またはカプセル剤、注射用1回投与バイアルまたは直腸内投与用座剤である。この単位投与形態のリストは決して限定的と意図されず、単位投与形態の典型例を表しているにすぎない。
【0083】
本発明の化合物を含有する組成物は有利には、患者または患者に対して薬物を投与する人が実際の投与形態を調製するための説明書と一緒に活性成分または不活性成分、担体、希釈剤等であり得る2つ以上の成分が用意されているキットとして提供され得る。前記キットには必要なすべての物質及び成分が収容されており、または患者または患者に対して薬物を投与する人が独立して入手しなければならない材料または成分を使用または作成するための説明書を含んでいてもよい。
【0084】
本発明の化合物が適応されるアルツハイマー病または他の疾患のリスクを治療、回復、コントロールまたは軽減させる場合、通常本発明の化合物を動物の体重1kgあたり約0.1〜約100mgの1日用量で、好ましくは1日1回で、2〜6回/日に分割して、または持続放出形態で投与すると満足な結果が得られる。全1日用量は約1.0〜約2000mg/kg体重、好ましくは約0.1〜約20mg/kg体重である。70kgの成人の場合、全1日用量は通常約7〜約1,400mgである。この投与レジメンは最適の治療応答を与えるように調節され得る。化合物は1〜4回/日、好ましくは1〜2回/日のレジメンで投与され得る。
【0085】
単一投与形態を生ずるように担体材料と組み合わされ得る本発明の化合物の量は、治療対象の宿主及び具体的投与モードに応じて異なる。例えば、ヒトに対して経口投与しようとする製剤は有利には約0.005mg〜約2.5gの本発明の化合物を含有し得、これは適切で便利な量の担体材料とコンパウンドされている。単位投与形態は通常約0.005〜約1000mgの本発明の化合物、典型的には0.005mg、0.01mg、0.05mg、0.25mg、1mg、5mg、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mgまたは1000mgを含有し、1日1〜3回投与される。
【0086】
しかしながら、特定患者に対する具体的な用量レベル及び投与頻度は変更可能であり、使用する具体的化合物の活性、該化合物の代謝安定性及び作用時間、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与モード及び時間、排泄率、薬物の組合せ、具体的状態の重症度及び治療を受ける宿主を含めた各種要因に依存している。
【0087】
本発明の化合物のβセクレターゼ酵素活性の阻害剤としての有用性は当業界で公知の方法により立証され得る。酵素阻害は以下のように調べられる。
【0088】
ECLアッセイ:均一な終点電気化学ルミネッセンス(ECL)アッセイはビオチニル化BACE基質を用いて実施する。基質のKmは100μM以上であり、基質の溶解度の限界のために測定できない。典型的な反応物は約0.1nM 酵素、0.25μMの基質及びバッファー(50mM NaOAc(pH4.5)、0.1mg/ml BSA、0.2% CHAPS、15mM EDTA及び1mM デフェロキサミン)を含有し、反応物の全容量は100μlである。反応を30分間進行させた後、25μLの1M トリス−HCl(pH8.0)を添加することにより停止させる。生じた酵素産物のC末端残基を特異的に認識するルテニル化抗体を添加することにより当該産物をアッセイする。ストレプトアビジンを被覆した磁気ビーズを溶液に添加し、サンプルをM−384(メリーランド州ゲーサーズバーグに所在のIgen Inc.)分析にかける。これらの条件下で、10%未満の基質がBACE 1によりプロセッシングされる。本研究で使用する酵素は、バキュロウイルス発現系において産生される可溶性(膜貫通ドメイン及び細胞質延長部を除く)ヒトタンパク質である。化合物の阻害効力を調べるために、100μMから出発して3倍連続希釈して12濃度の阻害剤を調製する。阻害剤をDMSO中に含む溶液を反応混合物に導入する(最終DMSO濃度=10%)。実験はすべて室温で上記した標準反応条件を用いて実施する。化合物のIC50を測定するために、カーブフィッティングのために4パラメーター式を使用する。解離定数の再現時の誤差は典型的には2倍未満である。
【0089】
特に、下記実施例の化合物は上記アッセイにおいてβセクレターゼ酵素を阻害する活性を有し、通常IC50は約1nM〜200μMである。これらの結果は、βセクレターゼ酵素活性の阻害剤として使用する際の化合物の固有活性を示している。
【0090】
本発明の化合物を製造するための幾つかの方法を本明細書中のスキーム及び実施例において説明する。出発物質は当業界で公知または本明細書中に例示されている手順に従って製造される。下記実施例は本発明がより十分に理解されるように提示されている。これらの実施例は例示にすぎず、本発明を決して限定するものと解釈されるべきでない。
【0091】
中間体A:トランス−4−アゼチジン−1−イル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−8−カルボン酸ベンジル
【0092】
【化10】

【0093】
トランス−4−アミノ−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−8−カルボン酸ベンジル(2006年7月14日に出願された国際特許出願PCT/US2006/27594に既に記載されている1A.6,200mg,0.48ミリモル)にアゼチジン(33.0μl,0.48ミリモル)を添加した。ニートな反応混合物を密封し、室温で18時間攪拌した。反応物を真空中で濃縮して、粗なトランス−4−アゼチジン−1−イル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−8−カルボン酸ベンジルを得た。LCMS(M+H)=451.1。
【0094】
実施例1
トランス−4−アゼチジン−1−イル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン
【0095】
【化11】

【0096】
トランス−4−アゼチジン−1−イル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−8−カルボン酸ベンジル(220mg,0.49ミリモル)をメタノール(4.0ml)中に含む溶液に水酸化パラジウム(15.0mg,20% Pd)を添加した。反応溶液を脱ガスし、水素ガスを充填した。反応混合物を室温で4時間攪拌した後、セライトを用いて濾過し、EtOAcで濯いだ。濾液を真空中で濃縮して、トランス−4−アゼチジン−1−イル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカ−3−エン−2−オン(82%)を得た。LCMS(M+H)=317.2。
【0097】
実施例2
トランス−4−アゼチジン−1−イル−1−(3−フルオロフェニル)−8−(3−イソプロポキシベンジル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン
【0098】
【化12】

【0099】
トランス−4−アゼチジン−1−イル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン(100mg,0.32ミリモル)をDMF(3.0ml)中に含む溶液に3−イソプロポキシベンジルクロリド(58.4mg,0.32ミリモル)、炭酸カリウム(218mg,1.58ミリモル)及びヨウ化ナトリウム(2.4mg,0.02ミリモル)を添加した。反応物を70℃で1.5時間攪拌した。反応混合物を水で希釈し、生成物をEtOAc(3×10ml)で抽出した。合わせた有機層を3M LiCl(3×10ml)及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮した。粗な物質をフラッュクロマトグラフィー(シリカ,0〜10% メタノール/ジクロロメタン)により精製して、トランス−4−アゼチジン−1−イル−1−(3−フルオロフェニル)−8−(3−イソプロポキシベンジル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オンを白色泡状物(36%)として得た。
【0100】
LCMS(M+H)=465.1。H NMR(400MHz,CDOD)δ 7.31(m,1H),7.06(m,4H),6.75(dd,J=8.0,2.0Hz,1H),6.62(m,2H),4.75(br s,2H),4.52(sept,J=6.0Hz,1H),4.25(br s,2H),3.75(d,J=13.6Hz,1H),3.16(d,J=13.6Hz,1H),2.58(m,1H),2.51(quint,J=7.9Hz,2H),2.34(td,J=13.9,5.3Hz,1H),2.24(m,2H),2.06(m,2H),1.92(td,J=12.8,2.7Hz,1H),1.28(dd,J=6.2,1.4Hz,6H),1.16(d,J=6.4Hz,3H)。
【0101】
以下の実施例は一般的スキーム1A及び1Bに従って実施例1及び2と同様にして製造した。
【0102】
【表1】






【0103】
中間体B:(5R,7S)−4−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−8−カルボン酸ベンジル
【0104】
【化13】

【0105】
THF(180mL)中のトランス−4−アミノ−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−8−カルボン酸ベンジル(国際特許出願WO 2007/011833に既に記載されている1A.6,7g,17ミリモル)にBocO(4.1g,18.8ミリモル)を添加した。混合物を70℃の油浴中に置き、18時間攪拌した。反応物を室温まで冷却し、真空中で濃縮し、自動SiOフラッュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)を用いて精製して、5.6gの(5R,7S)−4−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−8−カルボン酸ベンジルを白色固体(64%)として得た。LCMS(M+H)=411(M+H−Boc)。
【0106】
中間体C:[(5R,7S)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−4−イル]カルバミン酸tert−ブチル
【0107】
【化14】

【0108】
脱ガスMeOH(25mL)中の中間体B(2.0g,3.92ミリモル)が装入されているフラスコにPd(OH)(20%wt,100mg)を添加した。このフラスコにHバルーンをパージし、1気圧H下で6時間維持した。この後、反応物をセライトを用いて濾過し、EtOAcで濯ぎ、濃縮乾固して、1.5gの[(5R,7S)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−4−イル]カルバミン酸tert−ブチルを白色泡状物として得た。LCMS(M+H)=277(M+H−Boc)。
【0109】
中間体D:[(5R,7S)−8−(シクロブチルメチル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−4−イル]カルバミン酸tert−ブチル
【0110】
【化15】

【0111】
0℃で中間体C(1.45g,3.85ミリモル)及びシクロブタンカルボキシアルデヒド(0.97g,11.6ミリモル;TPAP/NMOを用いてアルコールから製造)をDCM(60mL)中に含む溶液にNaHB(OAc)(1.23g,5.8ミリモル)を添加した。混合物を室温までゆっくり加温し、18時間攪拌した。混合物を水性NaHCO及びDCMで希釈した。有機層を単離し、水及びブラインで順次洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮乾固すると、2.6gの粗な物質が生じた。自動SiOクロマトグラフィー(MeOH/DCM)を用いて精製して、1.5gの所望の[(5R,7S)−8−(シクロブチルメチル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−4−イル]カルバミン酸tert−ブチルを白色泡状物として得た。LCMS(M+H)=445。
【0112】
実施例31
トランス−8−(シクロブチルメチル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−4−[2−(2−メチルベンジル)ピロリジン−1−イル]−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン
【0113】
【化16】

【0114】
シンチレーションバイアル中の中間体D(184mg,0.41ミリモル)をジメチルアセトアミド(0.5mL)中に含む溶液に2−(2−メチルベンジル)ピロリジン(218mg,1.24ミリモル)を添加した。容器を密封し、110℃の油浴中に置き、2日間攪拌した。反応物を室温まで冷却し、0.45ミクロンフリットを用いて濾過し、RP−HPLCにより精製した。生成物画分を凍結乾燥して、10mgの標記化合物を得た。LCMS(M+H)=503。
【0115】
以下の実施例は一般的スキーム1Cに従って中間体Dを用いて実施例31と同様にして製造した。
【0116】
【表2】


【0117】
表3中の下記実施例は、中間体1A.6及び各種の代替HNR基を用いて一般的スキーム1Cに従って、中間体D(方法Cスキーム1A)に類似のアルキル化条件を用いて実施例2のスキーム1Aと同様にして製造した。
【0118】
【表3】

【0119】
実施例39
トランス−8−(シクロブチルメチル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−4−フェニル−1,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン
【0120】
【化17】

【0121】
ステップ1 ストレッカー1A.6のCbz除去:トランス−4−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−メチルピペリジン−4−カルボニトリル
【0122】
【化18】

【0123】
MeOH(200mL)中のトランス−4−アミノ−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−8−カルボン酸ベンジル(国際特許出願WO 2007/011833に既に記載されている1A.6,19g,51.7ミリモル)に20% Pd/C(22g,10ミリモル)を添加した。混合物を大気H下に置き、室温で一晩攪拌した。反応物をセライトを用いて濾過し、濾液を濃縮し、5% EtOAc/DCMを用いるSiOフラッュクロマトグラフィーにより精製して未反応の出発物質を除去した後、10% MeOH/DCMで溶離して、9.96gのトランス−4−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−メチルピペリジン−4−カルボニトリル及び5.95gの関連シスジアステレオマーを得た。LCMS(M+H)=234。
【0124】
ステップ2 還元アルキル化:トランス−1−(シクロブチルメチル)−4−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−メチルピペリジン−4−カルボニトリル
【0125】
【化19】

【0126】
ステップ1からのトランス−4−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−メチルピペリジン−4−カルボニトリル(9.96g,42.7ミリモル)のDCE(142mL)溶液に酢酸(2.44mL,42.7ミリモル)を添加した。シクロブタンカルボキシアルデヒド(14.3g,85ミリモル)を添加し、反応物を室温で10分間攪拌した後、NaHB(OAc)(13.6g,64ミリモル)を添加した。30分間攪拌した後、混合物をDCMで抽出し、1N NaOHで洗浄した。合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥し、溶媒を減圧下で蒸発させて、8.0gの標記中間体を得た。生成物を更に精製することなく使用した。LCMS(M+H)=303。
【0127】
ステップ3 ケトアミドへの環化:トランス−8−(シクロブチルメチル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,8−ジアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン
【0128】
【化20】

【0129】
ステップ2からのトランス−1−(シクロブチルメチル)−4−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−メチルピペリジン−4−カルボニトリル(8.0g,26.5ミリモル)のDCM(50mL)溶液にエチルマロニルクロリド(50mL,39ミリモル)を1滴ずつ添加した後、TEA(5.55mL,39.8ミリモル)及びDMAP(162mg,1.3ミリモル)を順次添加した。反応物を室温で一晩攪拌した。混合物をDCMで抽出し、ブラインで洗浄した。合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。混合物をSiOカラムクロマトグラフィー(5% MeOH/DCM)により精製し、生成物画分を合わせ、蒸発させると、橙色油状物(11g)が生じた。生じた物質をMeOH(15mL)中に再溶解し、NaOMe(1.71g,31.8ミリモル)を添加した。反応物を室温で1時間攪拌し、混合物を減圧下で濃縮乾固した。粗な混合物に6M HCl(60mL)を添加し、反応物を4時間還流させた。混合物を室温まで冷却し、氷に注ぎ、KOHペレットを添加して中性とした。混合物をEtOAc、次いでDCMで繰り返し抽出した。有機相をNaSOで乾燥し、濃縮乾固した。粗な物質をSiOクロマトグラフィー(5% MeOH/DCM)により精製し、真空中で乾燥して、標記生成物を淡色油状物として得た。LCMS(M+H)=345。
【0130】
ステップ4 トシレートの形成:トランス−8−(シクロブチルメチル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−4−イル4−メチルベンゼンスルホネート
【0131】
【化21】

【0132】
ステップ3からのトランス−8−(シクロブチルメチル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,8−ジアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオンケトアミド(2.3g,6.7ミリモル)をDCM(15mL)中に溶解した。ピリジン(0.52g,6.7ミリモル)及びトシルクロリド(1.3g,6.7ミリモル)を順次添加した。反応物を30分間攪拌し、1N NaOH(15mL)を添加して洗浄した。水性層をDCM(2×15mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、NaSOで乾燥した。溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をSiOカラムクロマトグラフィー(2% MeOH/DCM)により精製し、生成物画分を合わせ、濃縮して、淡ピンク色粉末を得た。LCMS(M+H)=499。
【0133】
ステップ5 実施例39を得るためのNi触媒のクロスカップリング
トランス−8−(シクロブチルメチル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−4−イル4−メチルベンゼンスルホネート(200mg,0.40ミリモル)及び1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンニッケル(II)クロリド(42mg,0.08ミリモル)を脱ガスTHF(5.0mL)中に溶解した。ヨウ化フェニル亜鉛(1.20mL,2.0M 0.60ミリモル)をシリンジを用いて添加した。混合物を55℃に加熱し、一晩攪拌した。この後、3当量の追加1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンニッケル(II)クロリド及び3当量のヨウ化フェニル亜鉛を添加した。混合物を室温まで冷却し、水及びDCMで希釈した。有機相を単離し、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、粗な生成物をRP−HPLCにより精製した。生成物画分を濃縮し、AD Chiralカラムを用いて更に精製した。2つの主要ピークが溶離し、M+Hに基づいて生成物に一致する物質を含んでいることが判明した(このうちの1つはトランスジアステレオマー、他はシスと推定された)。LCMS(M+H)=405。
【0134】
表1〜3中に塩基性基または酸性基を有する化合物を記載し、遊離塩基酸として命名されている。反応及び精製条件に基づいて、表1〜3中の塩基性基を有する各種化合物は遊離塩基形態または塩(例えば、HCl塩)のいずれかの形態で、或いは遊離塩基及び塩の両方の形態で単離した。
【0135】
明細書を通じて以下の略号が使用されている。
Me:メチル、
Et:エチル、
Bu:ブチル、
t−Bu:tert−ブチル、
i−Bu:イソブチル
Pr:プロピル、
i−Pr:イソプロピル、
Ac:アセチル、
Bn:ベンジル、
Ar:アリール、
Ph:フェニル
Boc:tert−ブチルオキシカルボニル、
TFA:トリフルオロ酢酸、
THF:テトラヒドロフラン、
Cbz:カルボベンジルオキシ、
TMS:トリメチルシリル、
TPAP:過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム、
NMO:N−メチルモルホリン−N−オキシド、
DMAP:ジメチルアミノピリジン、
LAH:水素化アルミニウムリチウム、
TEA:トリエチルアミン、
DMF:N,N’−ジメチルホルムアミド、
DMSO:ジメチルスルホキシド、
EDTA:エチレンジアミンテトラ酢酸、
CHAPS:3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート、
BSA:ウシ血清アルブミン、
Ac:アセチル、
aq:水性、
rt:室温、
h:時、
min:分
【0136】
本発明を特定の実施形態を参照して記載し、説明してきたが、当業者は本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく各種の変更、修飾及び置換を加え得ることを認識している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化22】

[式中、

(1)N、及び
(2)CR
{ここで、R
(a)水素、
(b)−C1−10アルキル(ここで、アルキルは場合によりハロゲンで置換されている)、
(c)ハロゲン、
(d)−OH、または
(e)−OC1−10アルキル(ここで、アルキルは場合によりハロゲンで置換されている)
からなる群から選択される}
からなる群から選択され;

(1)−NR1A1B
(ここで、R1A及びR1Bは各々
(a)−C1−10アルキル、または
(b)アリール
からなる群から選択され、前記アルキルは場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)アリール、または
(iv)−CN
で置換されており、前記アリールは場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−C1−10アルキル、
(v)−C3−12シクロアルキル、
(vi)−O−C1−10アルキル、
(vii)−Co−6アルキル−アリール
で置換されており、或いは
1A及びR1Bはこれらが結合している窒素と一緒に連結して、3から9個の環炭素原子を含む環構造を形成し、前記環炭素原子の1個以上は場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル、
(e)−C3−12シクロアルキル、
(f)−O−C1−10アルキル、
(g)−C0−6アルキル−アリール
で置換されており、前記したアルキル、シクロアルキルまたはアリール部分は場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−C1−6アルキル、
(v)−C2−6アルケニル、
(vi)−OC1−6アルキル、または
(vii)−C1−6ハロアルキル
で置換されている)、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C3−12シクロアルキル、
(4)−C1−10アルキニル、
(5)アリール、及び
(6)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記したXアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルキニル部分は場合により1個以上の
(a)−C1−10アルキル、
(b)ハロ、
(c)−OH、
(d)−CN、
(e)−O−C1−10アルキル、または
(f)−C0−6アルキル−アリール
で置換されており;

(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C2−10アルケニル、
(4)−C2−10アルキニル、
(5)−C3−12シクロアルキル、
(6)4から8個の環原子を有し、1個の環原子は窒素及び酸素からなる群から選択されるヘテロ原子である非芳香族ヘテロ環式基、
(7)アリール、及び
(8)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記したアルキル、シクロアルキル、ヘテロ環式基、アルケニル、アルキニル、アリールまたはヘテロアリールR部分は場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル、
(e)−C3−12シクロアルキル、
(f)−O−C1−10アルキル、
(g)−C0−6アルキル−アリール、
(h)−C0−6アルキル−ヘテロアリール、
(i)−NC(=O)−NR6’
(j)−NC(=O)−C1−3アルキル−NR6’
(k)−NC(=O)R
(l)−NR6’
(m)−SO
(n)−SONR6’、または
(o)4から8個の環原子を有し、1個の環原子は窒素及び酸素からなる群から選択されるヘテロ原子である非芳香族ヘテロ環式基
で置換されており、前記したアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及びヘテロ環式部分は場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−C1−10アルキル(ここで、前記アルキルは場合により1個以上のハロで置換されている)、
(v)−OC1−10アルキル(ここで、前記アルキルは場合により1個以上のハロで置換されている)、
(vi)−SO1−3アルキル、
(vii)−SONR6’
(viii)−NRSO1−3アルキル、
(ix)−CO、及び
(x)−CONR6’
で置換されており;
Qは結合または−C1−6アルキルであり、前記アルキルは場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル、
(e)−C3−12シクロアルキル、
(f)−O−C1−10アルキル、
(g)アリール、及び
(h)ヘテロアリール
で置換されており;

(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C2−10アルケニル、
(4)−C2−10アルキニル、
(5)−C3−12シクロアルキル、
(6)−C3−12シクロアルケニル、
(7)アリール、及び
(8)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記したアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはヘテロアリールR部分は場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル、
(e)−C2−10アルケニル、
(f)−C3−12シクロアルキル、
(g)−O−C3−12シクロアルキル、
(h)−O−C1−10アルキル、
(i)−O−C3−12ヘテロ環式基(ここで、前記ヘテロ環式基は4から8個の環原子を有し、1個の環原子が窒素、硫黄及び酸素からなる群から選択されるヘテロ原子である)、
(j)アリール、
(k)ヘテロアリール、
(1)−NR6’
で置換されており、前記したアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリール部分は場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−C1−10アルキル、
(v)−OC1−10アルキル、
(vi)−NR6’
(vii)−C2−6アルケニル、
(viii)−C1−6ハロアルキル、
(ix)−SO1−3アルキル、
(x)−SONR6’、または
(xi)−CONR6’
で置換されており、ただしQが結合のときにはRは水素であり;

(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C3−4アルケニル、及び
(4)アリール
からなる群から選択され、前記したアルキル、アルケニルまたはアリールR基は場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−C1−6アルキル、
(d)−CN、
(e)−O−C1−10アルキル、
(f)−NR(ここで、R及びRは(i)水素、及び(ii)−アルキルからなる群から選択される)
(g)−S(O)−C1−6アルキル(ここで、nは0、1または2である)、
(h)−C(=O)−R(ここで、Rは(i)水素、(ii)OH、(iii)−C1−6アルキル、(iv)−OC1−6アルキル、及び(v)アリール
からなる群から選択される)
で置換されており;
及びR6’
(1)水素、
(2)−C1−6アルキル、
(3)−C3−7シクロアルキル、
(4)−C1−6ハロアルキル、
(5)−C0−6アルキル−アリール、
(6)−C0−6アルキル−ヘテロアリール、
(7)ハロ、及び
(8)4から8個の環原子を有し、1個の環原子は窒素及び酸素からなる群から選択されるヘテロ原子である非芳香族ヘテロ環式基
からなる群から選択され、前記したアリールまたはヘテロアリールRまたはR6’部分は場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−C1−6アルキル、
(c)−O−C1−6アルキル、及び
(d)−NO
で置換されている]
を有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩。
【請求項2】
はNである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
はNR1A1B(ここで、R1A及びR1Bはこれらが結合している窒素と一緒に連結して、3から9個の環炭素原子を含み、前記環炭素原子の1個以上が場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−C1−10アルキル、
(c)−C3−12シクロアルキル、
(d)−O−C1−10アルキル、
(e)−C0−6アルキル−アリール
で置換されている環構造を形成し、前記したアルキル、シクロアルキルまたはアリール部分は場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−C1−6アルキル、
(iii)−OC1−6アルキル、または
(iv)−C1−6ハロアルキル
で置換されている)
である請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
はNR1A1B(ここで、R1A及びR1Bは各々場合により置換されているC1−10アルキルであるか、またはR1Aはアリールであり、R1Bは場合により置換されているC1−10アルキルである)である請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
は場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル、
(e)−C3−12シクロアルキル、
(f)−O−C1−10アルキル、
(g)−C0−6アルキル−アリール(ここで、前記アリールは場合により1個以上の(i)ハロ及び(ii)−OHで置換されている)、及び
(h)−C0−6アルキル−ヘテロアリール
で置換されているアリールである請求項1から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
Qは−CH−であり、R
(1)−C1−10アルキル、
(2)−C2−10アルキニル、
(3)−C3−12シクロアルキル、
(4)アリール、及び
(5)ヘテロアリール
からなる群から選択され、前記したアルキル、シクロアルキル、アルキニル、アリールまたはヘテロアリールR部分は場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−C1−10アルキル、
(d)−C3−12シクロアルキル、または
(e)−O−C1−10アルキル
で置換されている請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
は−C1−10アルキルまたは−C3−4アルケニルである請求項1から6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
はメチルである請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
式(I)を有する化合物は式(II):
【化23】

[式中、R10
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル、
(e)−C3−12シクロアルキル、
(f)−O−C1−10アルキル、
(g)−C0−6アルキル−アリール(ここで、前記アリールは場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−C1−6アルキル、
(v)−C2−6アルケニル、
(vi)−OC1−6アルキル、
(vii)−C1−6ハロアルキル、
(viii)−SO1−3アルキル、
(ix)−SONRNR6’
(x)−CONR6’
で置換されている)
(h)−C0−6アルキル−ヘテロアリール、
(i)−NC(=O)−NR6’
(j)−NC(=O)−C1−3アルキル−NR6’
(k)−NC(=O)R
(1)−NR6’、及び
(m)4から8個の環原子を有し、1個の環原子が窒素及び酸素からなる群から選択されるヘテロ原子である非芳香族ヘテロ環式基
からなる群から選択され、前記したアルキル、シクロアルキル及びヘテロアリール部分は場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)−C1−10アルキル、
(v)−OC1−10アルキル、
(vi)−SO1−3アルキル、
(vii)−SONR6’
(viii)−NRSO1−3アルキル、
(ix)−CO、及び
(x)−CONR6’
で置換されている]
を有する化合物である請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容され得る塩。
【請求項10】
はNである請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
1A及びR1Bはこれらが結合している窒素と一緒に連結して、4から9個の環炭素原子を含み、該環炭素原子の1個以上が場合により1個以上の
(a)ハロ、
(b)−C1−10アルキル、
(c)−C3−12シクロアルキル、
(d)−O−C1−10アルキル、
(e)−C0−6アルキル−アリール
で置換されている環構造を形成し、前記したアルキル、シクロアルキルまたはアリール部分は場合により1個以上の
(i)ハロ、
(ii)−C1−6アルキル、
(iii)−OC1−6アルキル、または
(iv)−C1−6ハロアルキル
で置換されている請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
トランス−4−アゼチジン−1−イル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−4−アゼチジン−1−イル−1−(3−フルオロフェニル)−8−(3−イソプロポキシベンジル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−1−(3−フルオロフェニル)−8−(3−イソプロポキシベンジル)−7−メチル−4−ピロリジン−1−イル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−1−(3−フルオロフェニル)−8−(3−イソプロポキシベンジル)−7−メチル−4−(2−メチルピロリジン−1−イル)−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−1−(3−フルオロフェニル)−8−(3−イソプロポキシベンジル)−7−メチル−4−ピペリジン−1−イル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−ブタ−2−イニル−4−(3,3−ジフルオロアゼチジン−1−イル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−ブタ−2−イニル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−4−(2−フェニルアゼチジン−1−イル)−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−ブタ−2−イニル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−4−ピロリジン−1−イル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−ブタ−2−イニル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−4−(3−メチルピロリジン−1−イル)−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−ブタ−2−イニル−4−[3−(フルオロメチル)ピロリジン−1−イル]−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−ブタ−2−イニル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−4−[3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル]−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−ブタ−2−イニル−4−(3−シクロヘキシルピロリジン−1−イル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−ブタ−2−イニル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−4−(3−フェニルピロリジン−1−イル)−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−4−(3−ベンジルピロリジン−1−イル)−8−ブタ−2−イニル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−ブタ−2−イニル−4−(1,3−ジヒドロ−2H−イソインドル−2−イル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−ブタ−2−イニル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−4−(2−メチルピロリジン−1−イル)−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−ブタ−2−イニル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−4−(2−プロピルピロリジン−1−イル)−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−ブタ−2−イニル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−4−(2−フェニルピロリジン−1−イル)−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−4−(2−ベンジルピロリジン−1−イル)−8−ブタ−2−イニル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−ブタ−2−イニル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−4−[2−(2−フェニルエチル)ピロリジン−1−イル]−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−ブタ−2−イニル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−4−ピペリジン−1−イル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−4−(2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル)−8−ブタ−2−イニル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
(5R,7S)−1−(3−フルオロフェニル)−4−[2RS−(3−メトキシフェニル)ピロリジン−1−イル]−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
(5R,7S)−8−ブタ−2−イン−1−イル−1−(3−フルオロフェニル)−4−[2RS−(3−メトキシフェニル)ピロリジン−1−イル]−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
(5R,7S)−1−(3−フルオロフェニル)−4−[2RS−(3−イソブチルフェニル)ピロリジン−1−イル]−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
(5R,7S)−8−ブタ−2−イン−1−イル−1−(3−フルオロフェニル)−4−[2RS−(3−イソブチルフェニル)ピロリジン−1−イル]−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
1−(3−フルオロフェニル)−8−(3−イソプロポキシベンジル)−4−ピロリジン−1−イル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
(5R,7S)−8−(シクロブチルメチル)−4−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
(5R,7S)−4−(2−ベンジルピロリジン−1−イル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
(5R,7S)−4−(2−ベンジルピロリジン−1−イル)−8−(シクロブチルメチル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−(シクロブチルメチル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−4−[2−(2−メチルベンジル)ピロリジン−1−イル]−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−4−[2−(3−クロロベンジル)ピロリジン−1−イル]−8−(シクロブチルメチル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−(シクロブチルメチル)−1−(3−フルオロフェニル)−4−[2−(3−メトキシベンジル)ピロリジン−1−イル]−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−4−[2−(4−クロロベンジル)ピロリジン−1−イル]−8−(シクロブチルメチル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−(シクロブチルメチル)−4−[2−(2−フルオロベンジル)ピロリジン−1−イル]−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
(5R,7S)−4−[2−(2−クロロベンジル)ピロリジン−1−イル]−8−(シクロブチルメチル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
(5R,7S)−4−(2−ベンジルピロリジン−1−イル)−1−(3−ブロモフェニル)−8−(シクロブチルメチル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
(5R,7S)−4−(2−ベンジルピロリジン−1−イル)−1−(3−クロロフェニル)−8−(シクロブチルメチル)−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン、
トランス−8−(シクロブチルメチル)−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−4−フェニル−1,8−ジアザスピロ[4.5]デカ−3−エン−2−オン
からなる群から選択される請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容され得る塩。
【請求項13】
治療有効量の請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容され得る塩及び医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項14】
アルツハイマー病の治療を要する患者に対して治療有効量の請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容され得る塩、或いはそのエナンチオマーまたはジアステレオマー及び医薬的に許容され得る担体を投与することを含む前記患者におけるアルツハイマー病の治療方法。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容され得る塩を薬用担体または希釈剤と組み合わせることを含むアルツハイマー病の治療を要する患者においてアルツハイマー病を治療するための薬剤または組成物の製造方法。

【公表番号】特表2010−508272(P2010−508272A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534689(P2009−534689)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/022819
【国際公開番号】WO2008/054698
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】