説明

アルツハイマー病モデルトランスジェニック動物

【構成】 1) ベータアクチンプロモーターのDNA配列、2) サイトメガロウイルスエンハンサーのDNA配列、3) ヒトベータアミロイド前駆体蛋白のシグナルペプチドをコードするDNA配列、および4) ヒトベータアミロイド前駆体蛋白の99ないし103個のアミノ酸残基長のC末端ペプチドをコードするDNA配列を含むことを特徴とする組み換え遺伝子が、体細胞および生殖細胞に組み込まれた、ヒト以外の哺乳動物であるアルツハイマー病モデルトランスジェニック動物。
【効果】 本発明のトランスジェニック動物は、動物脳内に形成される抗ベータ蛋白抗体反応性物質等のアルツハイマー病特有のパラメーターを減少させる能力に関する薬剤の効果検定に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、一般的に疾患の治療に関連した薬の開発に有効な動物モデルに関するものである。更に詳しくは、ベータアミロイド前駆体蛋白(β−amyloid precursor protein, APP:以後、これをAPPと呼ぶ)の一部をコードする外来性遺伝子構築体を自らのゲノムに取り込んだトランスジェニック(transgenic)動物の作製に関するもので、その中で、外来性遺伝子構築体をどの細胞タイプでも広く過剰発現させるよう仕組まれている。
【0002】
【従来の技術】最近の発生工学の発展により、外来性遺伝物質(DNA)を胚の核内へ注入するか感染させることにより、胚の染色体にその物質を組み込んだ胚(いわゆる形質転換胚)を作ることができるようになった(Gordon J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, vol.77, p.7380-7384, 1980;Jaenisch R. et al., Cell, vol.32, p.209-216, 1983)。この胚は、仮親(里親)に移植することにより、成長させることができ、得られた成体動物は外来性DNAを自らの染色体に取り込んでおり、且つそれを発現することができる。形質転換された個体は、一般的にトランスジェニック動物と呼ばれる(Gordon J. and Ruddle F., Science, vol.214,p.1244-1246, 1981)。取り込まれた外来性DNAは、トランスジーン(transgene)と呼ばれ、一般的にプロモーターとcDNA等の目的遺伝子とから成る。外来性DNAの発現は、成体にならずとも発現させることができ、例えば、胚の細胞分裂過程でも発現する場合がある。従って、その発現の結果、外来性DNAによりコードされる蛋白が生産され、特にその蛋白が生体にとって重要な機能を果たしているなら、その個体の発生のある時点では、個体の表現型に何らかの変化を引き起こすこともあり得る。表現型の変化を与える様式としては、個体で発現させるべき目的蛋白の過剰発現か、内在性の目的蛋白の発現の抑制があり、それを制御するのは、目的蛋白をコードする遺伝子の上流側に置かれているプロモーターかエンハンサーである。尚、発現抑制の仕方としては、アンチセンス法 (Katsuki M. et al., Science, vol.241, p.593-595, 1988)等が挙げられる。
【0003】個体が外来性DNAで形質転換された、あるいはその結果、本来の表現型が変わったという報告は、これまでに多くされており、特にPalmiter R.D. and Brinster R.L.(Annu. Rev. Genet., vol.20, p.465-499, 1986)や Gordon J.W.(Int. Rev. of Cytobiol., vol.115, p.171-229, 1989)等の総説に詳しく述べられている。このトランスジェニック動物は、1)発生過程での遺伝子発現のin vivoでの解析、2)遺伝病の克服または軽減に向けた研究等の分野で利用されうる。外来性DNAによる胚の形質転換は、外来性DNAを外から与えることにより、最終的に胚核内の染色体内のDNA配列の一部に組み込まれることにより達成される。これを達成するにはいくつかの方法があるが、例えば、外来性DNAを微小ピペットに吸入し、これを1細胞期の前核内へ注入する方法、所謂、顕微注入法(Gordon et al., 1980)が一般的である。
【0004】DNAを注入された胚はついで、偽妊娠雌の生殖道(輸卵管または子宮)に移植することにより、1個の生命体へと発生させることができる。この生命体は後日、外来性DNAを自らの染色体に取り込んでいるかどうか、PCR法やサザンブロット法等で解析されることとなる。もしこの取り込みが確認されたら、この動物はin vivoにおける遺伝子発現解析(例えば、ノーザンブロット法や免疫抗体法等による解析)に利用される。この発現により、ヒトのある遺伝病に似た形質を引き起こすことも可能である。
【0005】アルツハイマー病には、一説では後に述べるように、APPの過剰発現が関連すると考えられている(Terry R.D. and Katsman R, Ann. Neurol. vol.14, p.496-506, 1983)。アルツハイマー病患者脳には、アルツハイマー病特有の神経原線維変化 [neurofibrillay tangles (NFT)、paired helical filaments (PHF) :以後これをPHFと呼ぶ]、老人斑(neuritic plaque または senile plaque)及び脳アミロイド(amyloid)の沈着があり、脳アミロイドはAPPから生じるからである。しかも、最近では、後で述べる家族性アルツハイマー病や遺伝性脳血管アミロイドアンギオパチー(amyloid angiopathy)でAPPの遺伝子異常が発見されたことや、脳内に沈着したアミロイドの主成分であるアミロイドプラークコア蛋白(amyloid plaque core protein;APCP)あるいは、アミロイドコア蛋白(β−amyloid core protein)(後日、このポリペプチドは ベータ蛋白またはβ/A4蛋白と命名される。以後、これをβ/A4蛋白と呼ぶ)自体が神経毒性を有するという報告(Yankner B.A. et al., Science, vol.245, p.417-420, 1989)等から、APPからβ/A4蛋白が代謝され、沈着する機序の解明がアルツハイマー病の病因解明の最も本質的なアプローチと考えらている。しかし、残念ながら、これまでアルツハイマー病のモデルとなる動物が知られていないか、あるいは、確立されていないため、このような仮説を立証する手立てがなかった。そこで、人為的にAPP遺伝子を組み込ませたトランスジェニック動物を作り、このAPPをトランスジェニック動物脳内で過剰発現させ、アミロイド沈着を引き起こした結果、最終的にアルツハイマー病に似た動物、所謂ヒトアルツハイマー病モデルができる可能性がある。
【0006】最近、ヒトのAPPcDNAの全長あるいはー部分を過剰発現させることにより、脳内のアミロイド沈着を引き起こしたトランスジェニックマウスがいくつかの研究室から相次いで報告された(Kawabata S. et al., Nature, vol.345, p.476-478, 1991;Quon D. et al., Nature, vol.352, p.239-241, 1991;Wirak D.O. et al., Science, vol.253, p.323-325, 1991)。しかし、Kawabata らの報告は、その後、追試に成功せず、論文は撤回された(Nature, vol.356, p.265,1992)。更に、Wirakらの報告も、その形質変化はトランスジーンによるものではないということである(Science, 28, Feb., 1992)。特許出願でもいくつかのアルツハイマー病モデルトランスジェニック動物を確立したという報告が、例えばWO93/14200、WO93/02189、WO92/13069、WO92/06187、WO91/19810、EP451700及びWO89/06689として公開されているが、いずれも遺伝子の構築だけであったり、得られたトランスジェニック動物で単にAPPの沈着がみられたといった間接的な証拠しかない。従って、現在のところ、はっきりとしたアルツハイマー病モデル動物は確立されていないと思われる。これに対し、本発明で作出されたトランスジェニック動物は、アルツハイマー病に伴う様々な症状と類似した形質を示しており、この意味では本発明で作出されたトランスジェニック動物は、アルツハイマー病の発症原因の解明のための実験系を提供し、また、アルツハイマー病発症の阻止、あるいは、アルツハイマー病発症に伴う神経細胞死等を阻止するようなアルツハイマー病治療薬をスクリーニングするための系を提供し得るものと言える。
【0007】前にも述べたように、アルツハイマー病と関連した形態学的、病理学的変化としては、PHFの形成及び脳アミロイドの沈着の2点がある。PHFはアルツハイマー病以外の神経性疾患にも出現するが、神経と神経の間に見られるアミロイド沈着、所謂、老人斑及び脳血管周囲にも沈着するアミロイド沈着は、アルツハイマー病特異的と考えられている。特に、老人斑は高齢者のダウン症候群患者脳(アルツハイマー病も発症させている)でも見られる。老人斑アミロイドを構成する主要蛋白は、部分的に精製され、約4.2kDの39〜42個のアミノ酸から成るβ/A4蛋白から成ることが判明した(Glenner G. and Wong C.W., BBRC, vol.120, p.1131-1135, 1984)。このアミノ酸配列は決定され(Glenner G. and Wong C.W., 1984;Masters C.R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, vol.82, p.4245-4249, 1985)、そのアミノ酸配列はこれまで報告されている蛋白のものと全く異なるものであった。
【0008】近年、ヒト胎児脳組織cDNAライブラリーよりβ/A4蛋白を含む比較的大きなサイズの蛋白(前駆体)をコードするcDNAが単離され、そのDNA配列解析から、695個のアミノ酸より成る(この蛋白をA695という)こと、β/A4蛋白は、アミノ酸配列597−695の位置に相当することがわかった(Kang J. et al., Nature, vol.325, p.733-736, 1987)。更に、A695以外にも、もっと大きいサイズのAPPcDNA(A751、A770) が報告された(Kitaguchi et al., Nature, vol.331, p.530-532, 1988)。このA751蛋白はA695に56個分のアミノ酸が付与されたもので、この特殊なインサートは、クニツファミリー(Kunitz family)のセリンプロテアーゼインヒビター(serine protease inhibitor)(以下KPIと呼ぶ)に非常に高い相同性を示す(Kitaguchi et al., 1988)。一方、A770蛋白は、A751の57個のインサートのすぐ後にMRC OX−2抗原に相同性の高い19個分のアミノ酸が挿入されたタイプである。これらA751、A770は、全身臓器に多く発現している。尚、この3者は、同一の遺伝子(APP)からアルターナティブスプライシング(alternative splicing)によって生じることが示されており(Kitaguchi et al.,1988;Ponte P. et al., Nature, vol.331, p.525-527, 1988; Tanz R. et al.,Nature, vol.331, p.528-530, 1988)、いずれもC末端から99番目の間にβ/A4蛋白部分を有すること(28アミノ酸は細胞膜外に、11〜14アミノ酸は細胞膜内に存在)から、脳内のアミロイド沈着に関係する蛋白をコードするものと考えられる。
【0009】アルツハイマー病患者脳におけるAPPの脳内局在を、APPのいくつかの部位に対する数種の抗体を作製し、免疫組織化学的に検討すると、老人斑等が染められることが解かった(Wong C.W. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, vol.82, p.8729-8732, 1985;Allsop D. et al., Neurosci. Letter, vol.68, p.252-256, 1986; Shoji M. et al., Brain Res., vol.512, p.164-168, 1990a; Shoji M. et al., Am. J. Pathol., vol.137, p.1027-1032, 1990b;Shoji M. etal., Brain Res., vol.530, p.113-116, 1990c)。従って、アルツハイマー病患者脳で見つかった老人斑を構成するアミロイド蛋白はこれら抗体により認識されると言える。これらの抗体を用いて、例えば、APPをある動物の脳内で強制発現させた場合、APPとその代謝分画蛋白の神経における局在性を追跡することができる。
【0010】APPは全身臓器に広範に発現する蛋白であり、また、蛋白進化の過程でもよく保存された蛋白である(マウスとヒトでは、アミノ酸レベルで97%の一致が見られる)ことから、細胞間接着(cell-cell adhesion)や細胞分化等に重要な役割を果たしているものと想定されたが(Shivers B.D. et al., EMBO. J., vol.7, p.1365-1370, 1988)、正確な役割は未だに不明である。最近、β/A4蛋白が未分化な海馬神経細胞に対し、低濃度では神経栄養因子として働く一方、成熟した神経細胞に対しては、高農度では神経毒性として働くことが示され、注目されている(Yankner B.A. et al., 1989)。この実験系では、栄養因子と神経毒性として働く部分は、β/A4蛋白の25〜35番目のアミノ酸に相当し、この部分はタヒキニン系のペプチドと相同性があることが示された(Yankner B.A etal., 1989)。これに関連して興味深いのは、β/A4蛋白を大脳皮質または海馬内へ注入すると、この現象がin vivo においても起こること、及びPHFの構成成分である異常燐酸化タウ(tau)蛋白の生成が誘導された点である(KowallN.W. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, vol.88, p.7247-7251, 1991)。従って、β/A4蛋白蓄積とPHF生成の深い関連が示唆された。更に、もっと最近では、APPのC末端側の細胞内部位は、プロテイキナーゼCやCa2+/カルモジュリン依存性プロテイキナーゼIIにより燐酸化され (Gandy S. et al.,Proc. Natl. Acad. Sci., USA, vol.85, p.6218-6221, 1988)、また、細胞膜直下に存在する主要GTP結合蛋白であるG0とAPPが相互作用するという報告(Nishimoto I et al., Nature, vol.362, p.75-78, 1993)もあり、APPがシグナル伝達にも関与する可能性が指摘されている。
【0011】APP遺伝子はヒトの場合、第21染色体の長腕に存在することが知られている(Goldgaber D. et al., Science, vol.235, p.877-880, 1987)。近年、家族性アルツハイマー病 (familial Alzheimer's disease)のうち、早期発症型(発症年齢が65歳以下のもの)家系において、APPのアミノ酸番号642(KangJ. et al., 1987の配列に基づく;以下、APPの塩基配列、アミノ酸配列はKang J. et al., 1987に基づいて表記してある)にValからIleへの突然変異が発見された(Goate A. et al. , Nature, vol.349, p.704-706, 1991;NaruseS. et al., Lancet, vol.337, p.978-979, 1991; Yoshioka K. et al., BBRC,vol.178, p.1141- 1146, 1991;Hardy J. et al., Lancet, vol.337, p.1342-1343, 1991)。更に、同じアミノ酸部位にPhe、Glyという他の アミノ酸への突然変異が発見され(Murrell J. et al., Science, vol.254, p.97-99, 1991;Chartier-Harlin M-C et al., Nature, vol.353, p.844-846, 1991)、家族性アルツハイマー病の発症にこのValの変異が重要な役割を果たしていると考えられている。また、オランダ型(Dutch-type)の遺伝性脳出血に伴うアミロイド沈着の場合、β/A4蛋白の内部、即ちAPPのアミノ酸番号618にGluからGlnへの突然変異がみられる(Levy E. et al., Science, vol.248, p.1124-1126, 1990)。更には、β/A4蛋白のN末端側の2個のアミノ酸の変異(アミノ酸番号595のLysがAsnへ、及びアミノ酸番号596のMetがLeuへ変換)がスウェーデンの家族性アルツハイマー病と関連することが提唱され(Mullan M. et al., Nature Genet, vol.1, p.345-347, 1992)、このタイプはスウェーデン型突然変異と呼ばれる。このようにAPPに関する分子生物学的解析は進んだが、アルツハイマー病患者脳で何故アミロイドが蓄積され、沈着するか、そして、β/A4蛋白の蓄積によりどのように神経細胞が変性していくのかというメカニズムについては何ら有効な情報は未だない。
【0012】現在、最も問題となっているのは、脳内にアミロイド沈着が生じるためには、APPのどのような代謝経路に問題があるのかで、詳細に検討され始めている。例えば、APPcDNAを導入したヒト胎児性腎臓(embryonic kidney)細胞293株から、膜結合型C末端分画9kDを抽出し、そのN末端のアミノ酸配列を決定した結果、β/A4蛋白部分のN末端から16番目のLysでAPPが切断されていることが解かった(Esch F.S. et al., Science, vol.248, p.1122-1124,1990)。しかし、脳アミロイドとして沈着するには、APPはβ/A4蛋白部分のN末端とC末端で切断され凝集することが必要であり、Eschらの明らかにした代謝系では不溶性のβ/A4蛋白は生成されて来ない。この点から更に、様々な代謝系の関与やその異常等が推定されているが、未だ明らかな結果は得られていない。現在のところ、APPのプロセッシングには、1) APPをβ/A4蛋白部分の15番目のアミノ酸で終わる分子量100kD以上の分泌性派生体(secretedderivative)とC末端側の低分子産物とに分解される、いわゆる分泌経路(secretary pathway)と、2) β/A4蛋白の部分を全長の形で含むC末端側の様々な大きさのペプチドを生成する、いわゆるエンドゾーマル/リソゾーマル経路(endosomal/lysosomal pathway)の2つがあると考えられている(Golde T.E. et al, Science, vol.235, p.728-730, 1992)。
【0013】従って、上記家族性アルツハイマー病型、オランダ型、及びスウェーデン型のAPP遺伝子上の3箇所の突然変異が生じた際に、これらの2つの代謝経路はどのように影響されるのかという点はまだ解決されていないが、これらAPPアナログはAPPのプロセッシングの経路をエンドゾーマル/リソゾーマル経路に積極的に変える構造を持つものと想定される。この意味では、これらAPPアナログを過剰発現するトランスジェニック動物システムは、APPのプロセッシング機構を明らかにするための有用な材料を提供するものである。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、APPの合成に関する分子機構、詳しくは、APP合成後のAPPのプロセッシングに関する分子機構解明する方法を提供するものである。更に重要なことは、β/A4蛋白の合成と沈着を阻止するための薬剤のin vivoスクリーニング系を提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】アルツハイマー病に関連したAPPをコードするDNA断片を哺乳動物好ましくはマウスの1細胞期胚の前核に顕微注入し、次いでこの注入された胚は、偽妊娠メスに移植され、トランスジェニック動物出産へと至る。このトランスジェニック動物は、アルツハイマー病に関連するAPP蛋白を過剰発現すると考えられる。注入されたDNAには、トランスジェニック動物の非特異的で様々なタイプの細胞で目的の蛋白を発現せしめるようなプロモーターが含まれている。β/A4蛋白はAPPのC末端側領域から生成されるので、APPのC末端側領域のみの大量発現は、β/A4蛋白の形成を促進し、その結果として、特有の神経の退化及び老人斑の形成等が始まると考えられる。
【0016】本発明の重要な点は、β/A4蛋白を含むAPPのC末端側領域を強力なプロモーターの制御の下、神経やそれ以外のどのタイプの細胞でも過剰発現させることができる点である。そして、その結果、アルツハイマー病特有の海馬におけるアミロイドの沈着、燐酸化タウ蛋白の出現、グリア細胞の増加、海馬付近における神経細胞死、更には、動物の活発的な行動の低下が引き起こされる点である。また、内在性のAPPmRNAのアルターナティブスプライシングのパターンの変化もこの発現によって引き起こされる点である。更に、本発明の重要な点は、β/A4蛋白の中で最底1箇所アミノ酸の置換を持つアナログをコードするDNA配列を有するトランスジェニック動物を作出した点である。これにより、APPのエンドゾーマル/リソゾーマル経路におけるプロセッシングに変化をきたし、プロテアーゼの活性特異性が変わるような蛋白が生じる可能性があり、その結果、脳内での大量のアミロイドの蓄積が望まれる。従って、本発明で紹介されたトランスジェニック動物は、APP蛋白とプロテアーゼとの相互作用、あるいは、内在性APPと導入された外来性蛋白同志の相互作用等をin vivoで研究するための有用な系を提供するものであり、また、アルツハイマー病治療薬の探索にも利用できるものである。
【0017】本発明の目的は、β/A4蛋白に相当するAPPのC末端側領域、及びそのアナログを神経細胞や他の細胞に強力に発現せしめるために必要なDNA配列、所謂、組み換えDNAを有するトランスジェニック動物を提供することであり、本発明の有用性としては、このトランスジェニック動物がアルツハイマー病の病因解析及びアルツハイマー病治療薬のin vivo スクリーニングのために用いることができることである。本発明の特徴としては、このトランスジェニック動物がAPPの大量合成、燐酸化タウ蛋白の出現、グリア細胞の増加、神経細胞死等の一連のアルツハイマー病特有の症状を示すため、これまで知られているAPP遺伝子導入トランスジェニックマウスに比べ、よりアルツハイマー病に近い動物モデルであると言える本発明をより具体的に説明するため、以下に実施例を示す。
【0018】
【実施例】次に掲載する実施例は、DNA配列、融合(fusion)構築体、トランスジェニックマウス等をどのように作るか等を完全に開示し、記載することを目的としたものだが、これによって本発明が実施例に限定されるものではない。
【0019】実施例1トランスジェニックマウスで発現されるべきプラスミドpβA/NORβ、pβA/FADβ、pβA/Dβ、pβA/ΔNORβ及びpβA/NLβの構築マウスで発現させるべき目的遺伝子は以下のように作成した。正常なヒトAPPcDNAのシグナルペプチド(アミノ酸番号1番目から17番目)とβ/A4蛋白に相当するAPPのC末端側(アミノ酸番号597番目から695番目)との融合遺伝子(これをNORβと呼ぶ)をHorton R.M. et al (Gene, vol.77, p.61-68, 1989)の方法に習い合成した。先ず、ヒト脳 poly(A)RNA(#6516-1;Clontech社)を材料とし、RT−PCR法によりヒト脳cDNAライブラリーを合成した。用いたプライマー(primer)は、リバースプライマーBAPP−6(配列番号7)、センスプライマーBAPP−7(配列番号8)、センスプライマーBAPP−10(配列番号9)、 リバースプライマーBAPP−12(配列番号10)で、これらを適当に組み合わせて用いることにより、NORβを合成した。合成されたNORβは、2%アガロースゲルによる電気泳動で分画し、単離した。このNORβは、XbaI消化後、pGEM3Z(−)(Promega社)のXbaI部位へ導入し、この組み替えプラスミド(pGEM3Z/NORb)を大腸菌内にて増幅させ、ジデオキシ鎖終止法(dideoxy chain-termination)(Sanger et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, vol.74, p.5463-5468, 1977)によるシークエンシングを行い、NORβ配列が目的通り、正しいことを確認した
【0020】Dβ(配列番号1と配列番号3の結合したもの)及びFADβ(配列番号1と配列番号4の結合したもの)は、基本的にNORβと同じ構造であるが、DβはAPPアミノ酸番号618にGluからGlnへの変異を持つオランダ型の遺伝性脳出血アミロイドアンギオパチーで、FADβはAPPアミノ酸番号642においてValからIleへの変異を持つ家族性アルツハイマー病に各々対応する。また、Dβ及びFADβは、そのAPPcDNA(Kang J. et al., 1987)3′側の非コード領域約30bpを含んでいる。これらは、前記ヒト脳cDNAライブラリーを基にHortonらの方法に従い、PCR法で目的の配列を増幅した。Dβの場合、BAPP−10、 BAPP−6、BAPP−7の他、リバースプライマーBAPP−8(配列番号11)、 センスプライマーBAPP−2(配列番号12)、およびリバースプライマーBAPP−15(配列番号13)を用いた。FADβの場合、BAPP−10、 BAPP−6、BAPP−7の他、リバースプライマーBAPP−3(配列番号14)、センスプライマーBAPP−9(配列番号15)およびBAPP−15を用いた。
【0021】ΔNORβ(配列番号5のペプチドのN端にMetが付加したもの)は、17個のアミノ酸から成るシグナルペプチドがない点を除けば、基本的にNORβと同じ構造である。ΔNORβはセンスプライマーBAPP−13(配列番号16)およびBAPP−12を用い、pGEM3Z/NORβに対しPCRを行い、インサートを増幅させた。増幅された断片はpGEM3Zにクローニングされ、次いで、シークエンシングを行い、その配列の正しさを確認した。NLβ(配列番号6のペプチドのN端にMetが付加したもの)はΔNORβと同様、センスプライマーBAPP−14(配列番号17)およびBAPP−12を用い、pGEM3Z/NORβに対しPCRを行い、インサートを増幅させた。増幅された断片はpGEM3Zにクローニングされ、シークエンシングを行い、その配列の正しさを確認した。NLβはスウェーデン型の遺伝性アルツハイマー病に対応するもので、APPのアミノ酸番号595のLysがAsnへ、及びアミノ酸番号596のMetがLeuへ変異している
【0022】一方、上記標的遺伝子を発現させるためのべクターを以下のように作成した。ニワトリベータアクチンプロモーターとその上流にサイトメガロウイルスエンハンサーを有する哺乳動物発現ベクターpCAGGS(Niwa H. et al., Gene, vol.108, p.193-200, 1991)より2.3kb断片をSalI/PstI消化により切り出し、これをクローニングベクター pBluescript(Stratagene社)の SalI/PstI部位へ挿入し、pBsCAG−2ベクターを構築した(図1)。この2.3kb断片の中には、上記エンハンサー/プロモターの他に、ウサギベータグロビン遺伝子の一部(第2イントロン、第3エクソン、3′側非コード領域から成る)が含まれている。通常、cDNA等の発現させたい目的遺伝子は、第3エクソンのEcoRI部位に挿入される。このpBsCAG−2のEcoRI部位に上記目的遺伝子NORβ、FADβ、Dβ、ΔNORβ、及びNLβの各種DNA断片を挿入し、トランスジェニックマウス発現用プラスミドpβA/NORβ、pβA/FADβ、pβA/Dβ、pβA/ΔNORβ、及びpβA/NLβを構築した(図2)。マウス1細胞期胚へのDNA導入には、これら融合構築体よりSalI/BamHI消化によりトランスジーンを単離し、これを用いた。
【0023】尚、この構築には、DNAを消化したり、つなげたり、DNA断片を単離する等の操作が行なわれたが、このためには Maniatis T. et al (Molecular Cloning, A. Laboratory Manual, 1982)の標準的DNA組み換え技術が用いられた。また、インサートの結合部周辺のDNA配列は、シークエンシングにより確認された。
【0024】実施例2 1細胞期胚の回収及びそれへのDNA導入1細胞期胚は、既に雄と交配してあったB6C3F1雌マウスの輸卵管より回収した。回収した胚は前核期の初期ステージにあり、この時点では雄核と雌核とがまだ分離されており、容易に識別されうる。回収された胚からは周囲に存在する卵胞細胞 (cumulus cell)等を除去し、適当に洗浄後、DNA注入まで一時、37℃、5%CO2空気条件下で保存される。好ましくは、30mm径バクテリオロジカルディッシュ(bacteriological dish )(No.333656, Nunc社) 上、M16培養液(Whittingham D.G., J. Reprod. Fert., vol.4, p.7-21, 1971)50μl drop(パラフィン油で覆われる)で保存される。トランスジーンを含む融合構築体は、上述の方法で調製した。上述のいかなる融合構築体も、クローニングされ得、ここで述べる方法に習い、1細胞期胚に導入することができる。
【0025】次に、主にNORβ発現ベクター(pβA/NORβ)から得られるDNAの導入について詳細に解説するが、pβA/NORβ以外の他の融合構築体にも通用できる方法である。まず最初に、pβA/NORβは宿主大腸菌にクローニングされ、大量増幅の後、抽出された。更に精製するため、塩化セシウムによる超遠心、続く 臭化エチジュウム(ethidium bromide)の除去後、透析処理に付された。こうして精製されたプラスミドは、適当な制限酵素による消化(この場合、SalIとBamHIが用いられた)、続く0.8%アガロースゲル電気泳動により、目的のトランスジーンを単離することができる。こうして得られたトランスジーンは、外径が約1mmの注入ピペットを使い、1細胞期胚前核へ顕微注入される(Hogan B. etal., Manipulating the Mouse Embryo, 1986)。トランスジーンを含む約10μlのDNA溶液(約2000コピーのトランスジーンが含まれる)を吸引し、雄性前核へこのDNAを注入する。注入を受けた胚は、数時間か1日間培養に付され、次いで偽妊娠Day1(プラグ確認日をDay1と判定する)のICR仮親マウス輸卵管内へ移植される。移植を受けた仮親マウスは胎仔を出産するまで飼育される。出産後、新生児は離乳までの1月間、仮親マウスより保育を受け、次いで、尾DNAのサザンブロット解析に付される。トランスジェニック動物と判定されたF0マウス(founder)は、他の非トランスジェニックマウスと交配させ、そのF1子孫を得た後(それらは卵や精子の形で凍結保存される)、生後10〜30週目にてすべて殺処分し、ノーザンブロット解析、病理学的解析に付した。
【0026】表1には、一つの例として、βA−NORβトランスジーンを マウス1細胞期胚に注入して得られた結果が示されている。この中にはDNA注入後、移植されたマウス胚の数、注入された胚の移植後の生存胎仔の数、実際トランスジェニック動物と判定されたF0マウス胎仔の数、等が表示されている。
【0027】
【表1】


【0028】表1に示されるように、生まれた120匹のマウスうち、35匹は、トランスジェニック動物であった。これらのマウスを飼育した結果、1匹(0304)は、生後約10週目でその活発な動きが低下し、もう1匹(1102)は水頭症を発していた。他のトランスジェニック動物は、生後10〜30週目までは、正常様であった。これらは、すべて採材されるまでには、その配偶子が取られ、凍結保存に付された。そして、ノーザンブロット、ウエスタンブロットによりスクリーニングを行ない、発現の強い5系統(0202、0304、1002、1102、1301)を選択した、。以下の解析は、主にこの5系統に関するものである。
【0029】実施例3 トランスジーン由来のmRNA発現トランスジーン由来のmRNA発現は、0304、1102等を含むβA−NORβトランスジェニックマウスの系統においてノーザンブロット解析を行なった。トランスジェニック動物及び非トランスジェニックマウスの脳を含む各種臓器より、全RNAを単離し、20μgの全RNAを1.1%アガロース/1.1Mホルムアルデヒドゲル電気泳動に付し、次いで、ナイロン膜フイルターに移した。プレハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション液 [5XSSC(1XSSC=0.15M NaCl、15mM Na-citrate, pH7.4)、50%ホルムアミド、5mM EDTA、5mg/mlの変性サケDNA、 5X Denhardt試薬等を含む]の中で、42℃にて2時間行った。次いで、ランダムにプライミングしたcDNAプローブ(NORβ断片)を熱変性させた後、これをハイブリダイゼーション液に加え、ハイブリダイゼーションを行った。反応は42℃にて18時間行った。洗浄は、0.1XSSC/0.1%SDS中、56℃、20分間行った。フィルターは−80℃にて、24〜72時間暴した(増感スクリーン+コダックXAR−5フイルム使用)。ノーザンブロット解析の一例を図3R>3に示す。図3には、選択されたトランスジェニック動物系統のうち、比較的発現の強い0304、1102、及び、非トランスジェニック動物のサンプルが示されている。調べた臓器は、脳、肝、腎臓、小腸、精巣である。脳では、0304では、内在性のA695mRNA(〜3.4kb)の量に比べ、〜10倍程高いトランスジーン由来mRNAの発現(〜1kb)があるが、1102はそれと比べると、やや低い。非トランスジェニック動物は、トランスジーン由来mRNAの発現は全く見られない。同じ傾向は、他の臓器にも見られる。また、興味深いことに、トランスジェニックマウスでは、A695mRNAが増加している(例えば、1102及び0304の肝サンプルを参照)とか、A695mRNAの他にA751(〜3.8kb)、及びA770(〜3.85kb)mRNAも出現しているのが判かる(例えば、1102及び0304の脳サンプルを参照)。おそらく、外来性のNORβの過剰発現の結果、内在性のAPPmRNAのアルターナティブスプライシングのパターンが何らかの理由で変化を起こした結果と思われる。
【0030】実施例4 ウェスタンブロット解析βA−NORβトランスジェニック動物及び非トランスジェニック動物(コントロール)のマウス脳内のAPP蛋白発現様式をウェスタンブロット解析により決定した。蛋白ホモジネイトを、Shivers B.D.ら(1988)の方法に基づき、脳全てあるいは3/4から調製した。50μg量のサンプルを10/16%Tris-Tricine SDSゲルにて電気泳動に付し、イモビルム−Pメンブレン(Immobilm-P membrane)へエレクトロブロッティング(electroblotting )により転写させた。ブロットを抗APP抗体W61C [APPのC末端側ペプチド(660番目から695番目)に対するウサギ抗体;Shoji M. et al., 1990c](1/500希釈)と反応させ、ECL(Amersham社)システムによる非RI法による検出システムを用い、APP蛋白の検出を試みた。
【0031】ウェスタンブロット解析の一例を図4に示す。図4には、11系統のトランスジェニックマウスと非トランスジェニック動物の結果が示されている。即ち、これまで報告されている哺乳動物APP isoformの平均的サイズに相当する約120−kb近傍のいくつかのバンドがコントロール及びトランスジェニックマウスの脳及び各種臓器の蛋白ホモジネイト中に検出される。更に、今回発現させたトランスジーン由来の蛋白(11.4kD)がコントロールサンプルと比べ顕著に増加している。特に、高い発現(5〜6倍)は、0202、1002、1301トランスジェニック動物サンプルに見られる。しかしながら、この方法では、β/A4蛋白に相当する〜4.2kDのバンドは検出されず、この蛋白は調べたトランスジェニック動物脳では作られていないか、あっても少ないだろうと考えられる。
【0032】実施例5 抗体を用いたマウス脳の免疫組織化学的解析トランスジーンの発現を組織、細胞レベルで詳細に解析するため、トランスジェニック動物及び非トランスジェニック動物から得た脳を含む各種臓器に対し、抗APP抗体を用いた免疫組織化学的染色を行なった。調べたマウスは、βA−NORβを有する3系統のトランスジェニックマウス、及び非トランスジェニックマウスである。マウスをペントバルビタールで麻酔後、脳を含む各種臓器を摘出し、4%パラホルムアルデヒド(PBSが溶媒)にて1日間固定後、パラフィンへ包埋し、5μm厚の切片を作製した。切片は脱パラフィン後、脱水させ、0.5%過ヨーソ酸にて30分処理後、正常山羊血清でブロッキングを行い、適当に希釈された抗体(1/500)と反応させた。反応は、室温、3時間行ない、次いでビオチン化された抗ウサギIgGと反応させ(室温、2時間)、更にアビジンービオチンパーオキシダーゼ複合体(avidin-biotin peroxidase complex : ABC) と反応させた。これらの反応は、製造者(ABCキット; ベクター社, Burlingame, USA)の推薦する方法で行なった。パーオキシダーゼは、3,3′-diamino benzidine (DAB)/NiCl2にて発色、可視化される。切片の核染色は、メチルグリーンにて行なった。時に、切片を抗体で反応させる前に、切片はニッスル(Nissul)染色に付された。
【0033】βA−NORβ−0304系統のトランスジェニック動物脳切片と非トランスジェニック動物脳切片とをニッスル染色で観察すると、このトランスジェニック動物系統においては、神経細胞死が見られた。特に海馬付近のCA3領域を中心とした海馬錐体細胞での神経の変性、脱落が著しい。図5にその写真を示す。βA−NORβ−0304系統のトランスジェニック動物脳切片と非トランスジェニック動物脳切片とを抗APP抗体の一つW61Cで染色すると非トランスジェニック動物脳切片に比べ、トランスジェニック動物脳では、免疫反応は、大脳皮質、海馬等の神経細胞に特に強く見られた。更に陽性反応は、多数の神経突起に見られた。しかし、中脳、脳幹、小脳等には、ほとんど見られなかった。同じような所見は、他の抗体 [W63N;APPのN末端側のペプチド(18番目から38番目)に反応する抗体:Shoji M. et al., 1990c]を用いても見られた。図6にその写真を示す。
【0034】βA−NORβ−0304系統のトランスジェニック動物脳切片と非トランスジェニック動物脳切片とをグリア細胞(astrocyte)を特異的に染色する抗GFAP(glial fibrillary acidic protein)抗体と反応させると、トランスジェニック動物脳では非トランスジェニック動物に比べ、大脳皮質、海馬、前脳基底部に著明なグリア細胞の増加を認めた。図7にその写真を示す。グリア細胞の増加は、アルツハイマー病に相関するとされ(Beach T.G. et al., Glia, vol.2,p.420-436, 1989)、おそらく図5から推測されうるに、神経細胞の死滅後、グリア細胞がその後を埋める形で増殖したと考えられる。βA−NORβ−0304系統のトランスジェニック動物脳切片と非トランスジェニック動物脳切片とを異常燐酸化タウ蛋白と特異的に反応する抗体β1−28(Ihara Y. et al., Nature, vol.304, p.727-730, 1983) で切片を反応させると、トランスジェニック動物脳では、この抗体と反応する構造物が海馬付近に認められた[図8(A)]。このような陽性反応は非トランスジェニック動物脳では認められない[図8(B)]。
【0035】トランスジェニックマウスの全身写真を図9R>9に示す。図9の(A)はβA−NORβ−0304トランスジェニックマウス(写真中央)及び非トランスジェニックマウス(写真上方)の全身写真であり、(B)はβA−NORβ−0304トランスジェニックマウスの全身写真である。
【0036】
【発明の効果】本発明のトランスジェニックマウスは、マウス脳内に形成される抗ベータ蛋白抗体反応性物質、抗異常燐酸化タウ蛋白抗体反応性物質等のアルツハイマー病特有のパラメーターを減少させる能力に関する薬剤の効果検定に利用できる。例えば、検定されるべき薬剤は対照動物、即ち本発明のトランスジェニック動物でない動物群及び本発明のトランスジェニック動物に同時に投与される。この薬剤は、動物の脳内に上記パラメーターに影響を及ぼすのに充分な期間、あるいは神経細胞死を抑えるのに充分な期間を越えて連続的に投与され得るだろう。この充分な期間を経て薬剤を投与された後、トランスジェニック動物及び対照の非トランスジェニック動物は、供試され、脳内の解析が行われる。そして、上記パラメーターを比較することにより、薬剤の効能についてひとつの決定を下すことができる。
【0037】
【配列表】
配列番号:1配列の長さ:51配列の型:核酸鎖の数:二本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:cDNA to mRNA起源生物名:ヒト(homo sapiense)
配列の特徴:他の情報:ヒトベータアミロイド前駆体のシグナルペプチド配列ATG CTG CCC GGT TTG GCA CTG CTC CTG CTG GCC GCC TGG ACG GCT CGG 48Met Leu Pro Gly Leu Ala Leu Leu Leu Leu Ala Ala Trp Thr Ala Arg 1 5 10 15GCG 51Ala
【0038】配列番号:2配列の長さ:297配列の型:核酸鎖の数:二本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:cDNA to mRNA起源生物名:ヒト(homo sapiense)
配列の特徴:他の情報:ヒトベータアミロイド前駆体のC末端ペプチド配列GAT GCA GAA TTC CGA CAT GAC TCA GGA TAT GAA GTT CAT CAT CAA AAA 48Asp Ala Glu Phe Arg His Asp Ser Gly Tyr Glu Val His His Gln Lys 1 5 10 15TTG GTG TTC TTT GCA GAA GAT GTG GGT TCA AAC AAA GGT GCA ATC ATT 96Leu Val Phe Phe Ala Glu Asp Val Gly Ser Asn Lys Gly Ala Ile Ile 20 25 30GGA CTC ATG GTG GGC GGT GTT GTC ATA GCG ACA GTG ATC GTC ATC ACC 144Gly Leu Met Val Gly Gly Val Val Ile Ala Thr Val Ile Val Ile Thr 35 40 45 TTG GTG ATG CTG AAG AAG AAA CAG TAC ACA TCC ATT CAT CAT GGT GTG 192Leu Val Met Leu Lys Lys Lys Gln Tyr Thr Ser Ile His His Gly Val 50 55 60 GTG GAG GTT GAC GCC GCT GTC ACC CCA GAG GAG CGC CAC CTG TCC AAG 240Val Glu Val Asp Ala Ala Val Thr Pro Glu Glu Arg His Leu Ser Lys 65 70 75 80ATG CAG CAG AAC GGC TAC GAA AAT CCA ACC TAC AAG TTC TTT GAG CAG 288Met Gln Gln Asn Gly Tyr Glu Asn Pro Thr Tyr Lys Phe Phe Glu Gln 85 90 95ATG CAG AAC 297Met Gln Asn 99
【0039】配列番号:3配列の長さ:297配列の型:核酸鎖の数:二本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:cDNA to mRNA起源生物名:ヒト(homo sapiense)
配列の特徴:他の情報:ヒトベータアミロイド前駆体のC末端ペプチド配列GAT GCA GAA TTC CGA CAT GAC TCA GGA TAT GAA GTT CAT CAT CAA AAA 48Asp Ala Glu Phe Arg His Asp Ser Gly Tyr Glu Val His His Gln Lys 1 5 10 15TTG GTG TTC TTT GCA CAA GAT GTG GGT TCA AAC AAA GGT GCA ATC ATT 96Leu Val Phe Phe Ala Gln Asp Val Gly Ser Asn Lys Gly Ala Ile Ile 20 25 30GGA CTC ATG GTG GGC GGT GTT GTC ATA GCG ACA GTG ATC GTC ATC ACC 144Gly Leu Met Val Gly Gly Val Val Ile Ala Thr Val Ile Val Ile Thr 35 40 45 TTG GTG ATG CTG AAG AAG AAA CAG TAC ACA TCC ATT CAT CAT GGT GTG 192Leu Val Met Leu Lys Lys Lys Gln Tyr Thr Ser Ile His His Gly Val 50 55 60 GTG GAG GTT GAC GCC GCT GTC ACC CCA GAG GAG CGC CAC CTG TCC AAG 240Val Glu Val Asp Ala Ala Val Thr Pro Glu Glu Arg His Leu Ser Lys 65 70 75 80ATG CAG CAG AAC GGC TAC GAA AAT CCA ACC TAC AAG TTC TTT GAG CAG 288Met Gln Gln Asn Gly Tyr Glu Asn Pro Thr Tyr Lys Phe Phe Glu Gln 85 90 95ATG CAG AAC 297Met Gln Asn 99
【0040】配列番号:4配列の長さ:297配列の型:核酸鎖の数:二本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:cDNA to mRNA起源生物名:ヒト(homo sapiense)
配列の特徴:他の情報:ヒトベータアミロイド前駆体のC末端ペプチド配列GAT GCA GAA TTC CGA CAT GAC TCA GGA TAT GAA GTT CAT CAT CAA AAA 48Asp Ala Glu Phe Arg His Asp Ser Gly Tyr Glu Val His His Gln Lys 1 5 10 15TTG GTG TTC TTT GCA GAA GAT GTG GGT TCA AAC AAA GGT GCA ATC ATT 96Leu Val Phe Phe Ala Glu Asp Val Gly Ser Asn Lys Gly Ala Ile Ile 20 25 30GGA CTC ATG GTG GGC GGT GTT GTC ATA GCG ACA GTG ATC ATC ATC ACC 144Gly Leu Met Val Gly Gly Val Val Ile Ala Thr Val Ile Ile Ile Thr 35 40 45 TTG GTG ATG CTG AAG AAG AAA CAG TAC ACA TCC ATT CAT CAT GGT GTG 192Leu Val Met Leu Lys Lys Lys Gln Tyr Thr Ser Ile His His Gly Val 50 55 60 GTG GAG GTT GAC GCC GCT GTC ACC CCA GAG GAG CGC CAC CTG TCC AAG 240Val Glu Val Asp Ala Ala Val Thr Pro Glu Glu Arg His Leu Ser Lys 65 70 75 80ATG CAG CAG AAC GGC TAC GAA AAT CCA ACC TAC AAG TTC TTT GAG CAG 288Met Gln Gln Asn Gly Tyr Glu Asn Pro Thr Tyr Lys Phe Phe Glu Gln 85 90 95ATG CAG AAC 297Met Gln Asn 99
【0041】配列番号:5配列の長さ:309配列の型:核酸鎖の数:二本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:cDNA to mRNA起源生物名:ヒト(homo sapiense)
配列の特徴:他の情報:ヒトベータアミロイド前駆体のC末端ペプチド配列GAA GTG AAG ATG GAT GCA GAA TTC CGA CAT GAC TCA GGA TAT GAA GTT 48Glu Val Lys Met Asp Ala Glu Phe Arg His Asp Ser Gly Tyr Glu Val 1 5 10 15CAT CAT CAA AAA TTG GTG TTC TTT GCA GAA GAT GTG GGT TCA AAC AAA 96His His Gln Lys Leu Val Phe Phe Ala Glu Asp Val Gly Ser Asn Lys 20 25 30 GGT GCA ATC ATT GGA CTC ATG GTG GGC GGT GTT GTC ATA GCG ACA GTG 144Gly Ala Ile Ile Gly Leu Met Val Gly Gly Val Val Ile Ala Thr Val 35 40 45 ATC GTC ATC ACC TTG GTG ATG CTG AAG AAG AAA CAG TAC ACA TCC ATT 192Ile Val Ile Thr Leu Val Met Leu Lys Lys Lys Gln Tyr Thr Ser Ile 50 55 60 CAT CAT GGT GTG GTG GAG GTT GAC GCC GCT GTC ACC CCA GAG GAG CGC 240His His Gly Val Val Glu Val Asp Ala Ala Val Thr Pro Glu Glu Arg 65 70 75 80 CAC CTG TCC AAG ATG CAG CAG AAC GGC TAC GAA AAT CCA ACC TAC AAG 288His Leu Ser Lys Met Gln Gln Asn Gly Tyr Glu Asn Pro Thr Tyr Lys 85 90 95 TTC TTT GAG CAG ATG CAG AAC 309Phe Phe Glu Gln Met Gln Asn 100 103
【0042】配列番号:6配列の長さ:309配列の型:核酸鎖の数:二本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:cDNA to mRNA起源生物名:ヒト(homo sapiense)
配列の特徴:他の情報:ヒトベータアミロイド前駆体のC末端ペプチド配列GAA GTG AAT CTG GAT GCA GAA TTC CGA CAT GAC TCA GGA TAT GAA GTT 48Glu Val Asn Leu Asp Ala Glu Phe Arg His Asp Ser Gly Tyr Glu Val 1 5 10 15 CAT CAT CAA AAA TTG GTG TTC TTT GCA GAA GAT GTG GGT TCA AAC AAA 96His His Gln Lys Leu Val Phe Phe Ala Glu Asp Val Gly Ser Asn Lys 20 25 30 GGT GCA ATC ATT GGA CTC ATG GTG GGC GGT GTT GTC ATA GCG ACA GTG 144Gly Ala Ile Ile Gly Leu Met Val Gly Gly Val Val Ile Ala Thr Val 35 40 45 ATC GTC ATC ACC TTG GTG ATG CTG AAG AAG AAA CAG TAC ACA TCC ATT 192Ile Val Ile Thr Leu Val Met Leu Lys Lys Lys Gln Tyr Thr Ser Ile 50 55 60 CAT CAT GGT GTG GTG GAG GTT GAC GCC GCT GTC ACC CCA GAG GAG CGC 240His His Gly Val Val Glu Val Asp Ala Ala Val Thr Pro Glu Glu Arg 65 70 75 80 CAC CTG TCC AAG ATG CAG CAG AAC GGC TAC GAA AAT CCA ACC TAC AAG 288His Leu Ser Lys Met Gln Gln Asn Gly Tyr Glu Asn Pro Thr Tyr Lys 85 90 95 TTC TTT GAG CAG ATG CAG AAC 309Phe Phe Glu Gln Met Gln Asn 100 103
【0043】配列番号:7配列の長さ:26配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:他の核酸起源:なし生物名:なし株名:なし配列の特徴:リバースプライマーDNA。BAPP―6と名付けた。
配列TTCTGCATCC GCCCGAGCCG TCCAGG 26
【0044】配列番号:8配列の長さ:29配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:他の核酸起源:なし生物名:なし株名:なし配列の特徴:センスプライマーDNA。BAPP―7と名付けた。
配列GCTCGGGCGG ATGCAGAATT CCGACATGA 29
【0045】配列番号:9配列の長さ:25配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:他の核酸起源:なし生物名:なし株名:なし配列の特徴:センスプライマーDNA。BAPP―10と名付けた。
配列CTCTAGAGAT GCTGCCCGGT TTGGC 25
【0046】配列番号:10配列の長さ:30配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:他の核酸起源:なし生物名:なし株名:なし配列の特徴:リバースプライマーDNA。BAPP―12と名付けた。
配列GGCTCTAGAG CATGTTCTGC ATCTGCTCAA 30
【0047】配列番号:11配列の長さ:21配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:他の核酸起源:なし生物名:なし株名:なし配列の特徴:リバースプライマーDNA。BAPP―8と名付けた。
配列GTCTTGTGCA AAGAACACCA A 21
【0048】配列番号:12配列の長さ:21配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:他の核酸起源:なし生物名:なし株名:なし配列の特徴:センスプライマーDNA。BAPP―2と名付けた。
配列TTGGTGTTCT TTGCACAAGA T 21
【0049】配列番号:13配列の長さ:24配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:他の核酸起源:なし生物名:なし株名:なし配列の特徴:リバースプライマーDNA。BAPP―15と名付けた。
配列GGATCCAACT TCAGAGGCTG CTGT 24
【0050】配列番号:14配列の長さ:21配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:他の核酸起源:なし生物名:なし株名:なし配列の特徴:リバースプライマーDNA。BAPP―3と名付けた。
配列GGTGATGATG ATCACTGTCG C 21
【0051】配列番号:15配列の長さ:21配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:他の核酸起源:なし生物名:なし株名:なし配列の特徴:センスプライマーDNA。BAPP―9と名付けた。
配列GCGACAGTGA TCATCATCAC C 21
【0052】配列番号:16配列の長さ:38配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:他の核酸起源:なし生物名:なし株名:なし配列の特徴:センスプライマーDNA。BAPP―13と名付けた。
配列GGCTCTAGAG ATGGAAGTGA AGATGGATGC AGAATTCC 38
【0053】配列番号:17配列の長さ:38配列の型:核酸鎖の数:一本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:他の核酸起源:なし生物名:なし株名:なし配列の特徴:センスプライマーDNA。BAPP―14と名付けた。
配列GGCTCTAGAG ATGGAAGTGA ATCTGGATGC AGAATTCC 38
【図面の簡単な説明】
【図1】サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータアクチンプロモーターを有するプラスミドpBsCAG−2のプラスミドマップを表した図である。
【図2】サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータアクチンプロモーターとNORβ、Dβ、FADβ、ΔNORβ及びNLβとを結合した各種トランスジーンを表わした図である。
【図3】βA−NORβトランスジェニックマウス(1102,0304)及び非トランスジェニックマウスから採取した各種組織の全RNAのノーザンブロット解析結果を示した図である。分子量のサイズはKで示され、分子量マーカーは図の右側に記されている。
【図4】βA−NORβトランスジェニックマウス及び非トランスジェニックマウスから採取した脳抽出物のウェスタンブロット解析を示した図である。用いた抗体は抗APP抗体W61Cである。
【図5】(A)はβA−NORβ−0304トランスジェニック動物脳、そして(B)は非トランスジェニックマウス脳の海馬領域におけるニッスル染色を表わした写真である
【図6】(A)はβA−NORβ−0304トランスジェニック動物脳、そして(B)は非トランスジェニックマウス脳における抗APP抗体W61Cによる免疫反応産物の顕微鏡写真である。
【図7】(A)はβA−NORβ−0304トランスジェニック動物脳、そして(B)は非トランスジェニックマウス脳における抗GFAP抗体による免疫反応産物の顕微鏡写真である。
【図8】(A)はβA−NORβ−0304トランスジェニック動物脳、(B)は非トランスジェニックマウス脳における抗タウ抗体β1−28による免疫反応産物の顕微鏡写真である。
【図9】(A)はβA−NORβ−0304トランスジェニックマウス及び非トランスジェニックマウスの全身写真であり、(B)はβA−NORβ−0304トランスジェニックマウスの全身写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 1) ベータアクチンプロモーターのDNA配列、2) サイトメガロウイルスエンハンサーのDNA配列、3) ヒトベータアミロイド前駆体蛋白のシグナルペプチドをコードするDNA配列、および4) ヒトベータアミロイド前駆体蛋白の99ないし103個のアミノ酸残基長のC末端ペプチドをコードするDNA配列を含むことを特徴とする組み換え遺伝子が、体細胞および生殖細胞に組み込まれた、ヒト以外の哺乳動物であるアルツハイマー病モデルトランスジェニック動物。
【請求項2】 ヒトベータアミロイド前駆体蛋白のシグナルペプチドが、配列表の配列番号1のペプチドである請求項1のアルツハイマー病モデルトランスジェニック動物。
【請求項3】 1) ベータアクチンプロモーターのDNA配列、2) サイトメガロウイルスエンハンサーのDNA配列、および3) ヒトベータアミロイド前駆体蛋白の99ないし103個のアミノ酸残基長のC末端ペプチドをコードするDNA配列を含むことを特徴とする組み換え遺伝子が、体細胞および生殖細胞に組み込まれた、ヒト以外の哺乳動物であるアルツハイマー病モデルトランスジェニック動物。
【請求項4】 ヒトベータアミロイド前駆体蛋白のC末端ペプチドが、1) 配列番号2のアミノ酸配列を有する、正常ヒトベータアミロイド前駆体蛋白のペプチド、2) 配列番号3のアミノ酸配列を有する、22番目のグルタミン酸がグルタミンに変換した変異体ペプチド、3) 配列番号4のアミノ酸配列を有する、46番目のバリンがイソロイシンに変換した変異体ペプチド、4) 配列番号5のアミノ酸配列を有する正常ヒトベータアミロイド前駆体蛋白のペプチド、または5) 配列番号6のアミノ酸配列を有する、3番目のリジンがアスパラギンに、4番目のメチオニンがロイシンに変換した変異体ペプチドから選ばれる請求項1〜3のアルツハイマー病モデルトランスジェニック動物
【請求項5】 海馬領域において以下の組織病理学的特徴、1) ベータアミロイド前駆体蛋白質C末端ペプチドの大量合成、2) CA領域の海馬錐体細胞での神経細胞死、3) グリア細胞の増加、および4)異常リン酸化タウ蛋白質の沈着を有する、請求項1〜4のアルツハイマー病モデルトランスジェニック動物。
【請求項6】 マウスである請求項1〜5のアルツハイマー病モデルトランスジェニック動物。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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