説明

アルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤

【課題】ヒトやヒトを除く動物に安全に適用可能な、アルツハイマー病治療剤の作用を効率的に増強するとともに、アルツハイマー病治療剤の長期連用による作用の低下を防止するための経口用製剤を提供する。
【解決手段】有効成分が、ヒトインターフェロン−α、及び、ヒトインターフェロン−β又はヒトインターフェロン−γからなる経口用剤により、アルツハイマー病治療剤の作用を相乗的に増強し且つアルツハイマー病治療剤の長期連用による作用の低下を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病治療剤の作用増強剤に関わるものであり、詳細には、有効成分である複数種のインターフェロンと、必要に応じて製剤学的に許容される1種又は2種以上の他の成分とを含んでなる、アルツハイマー病治療剤の作用を増強するための経口用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、神経細胞の損失に起因し言語障害、判断力、問題解決、計画、抽象的思考の問題、失行症、視覚機能欠損及び記憶障害を結果としてもたらす進行性認識機能障害(記憶、認知及び行動安定性の喪失)を特徴とする進行性神経変性障害であり、認知症原因の5割以上を占めている。斯かる疾患は、加齢に伴い発症率が増加するため、高齢化にともない、その患者数は年々増加している。
【0003】
アルツハイマー病の発症は、最近の事象を思い出す能力の障害によって特徴づけられるものの、疾病の進行に伴い、その他の知的能力も衰え、異常な行動、妄想及び身体機能の制御喪失などが高頻度に認められる。アルツハイマー病は、神経細胞に変性を来たす重大な疾患であり、それに伴う病態や神経機能障害を改善するために、種々の化合物を有効成分とする治療剤が提案されてはいるものの(例えば、特許文献1乃至4)、実用化されているものはまだ少ない。日本国においては、わずかに、アルツハイマー病治療剤としてコリンエステラーゼ阻害作用を有するドネペジル、ガランタミン及びリバスチグミン、神経保護作用を有するメマンチンが厚生労働省から認可されているのみである。
【0004】
アルツハイマー病は、通常、加齢とともに進行するので、その治療剤は長期連用が必須である。しかし、アルツハイマー病の主要な治療剤として既に臨床応用されているコリンエステラーゼ阻害剤は、長期連用により副作用が発生する場合や、半年以上の長期連用によりそのアルツハイマー病治療作用が低下する場合がある。
【0005】
一方、インターフェロンは、その抗ウイルス活性や抗腫瘍活性に基づき、ウイルス性肝炎やある種の腫瘍の治療剤として臨床応用されている。また、クラミジアの感染を予防・排除するため、インターフェロン−α、インターフェロン−β、或いは、インターフェロン−γと抗生物質との併用療法や、インターフェロン−αとヒドロキシ安息香酸類又はヒドロキシ桂皮酸類とを併用する方法なども提案されている(特許文献5及び6)。
【0006】
しかしながら、インターフェロン類を他の薬剤と併用する場合、あるいは、アルツハイマー治療剤を複数種併用する場合では、特に注射による投与等において大量投与による副作用発生が懸念される。また、アルツハイマー病はクラミジアの感染により必然的に生じるものではなく、抗クラミジア剤が必ずしもアルツハイマー病に有効な治療剤となるわけではない。
【0007】
かかる状況にあって、医療現場では、患者にとって肉体的・精神的負担の少ない用法、用量で、アルツハイマー病や、それに伴う病態や臨床症状を効果的、且つ、安全に改善することができる医薬用の製剤の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第1997/030703号
【特許文献2】特開平11−228417号公報
【特許文献3】特開2006−143708号公報
【特許文献4】特開2006−321737号公報
【特許文献5】特表2002−519374号公報
【特許文献6】特開2005−047896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ヒト又はヒトを除く動物に安全に適用可能な、アルツハイマー病治療剤の作用を効率的に増強するとともに、アルツハイマー病治療剤の長期連用による治療効果の低下を防止するための製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明者は、既に臨床応用されているコリンエステラーゼ阻害作用を有するアルツハイマー病治療剤の作用の増強と、長期連用による治療効果の低下防止に着目して鋭意研究し、検索したところ、低用量のヒトインターフェロン−αと、ヒトインターフェロン−β又はヒトインターフェロン−γとを経口投与することにより、通常の臨床投与量よりも低用量のアルツハイマー病治療剤を用いた場合でもその作用が増強されるとともに、斯かる治療剤を長期間連用しても、その治療効果が低下することがないことを見いだした。さらに、低用量のアルツハイマー病治療剤と、低用量のヒトインターフェロンとを併用しても、患者のQOLを低下させるような重篤な副作用は招来しないことも見出し本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明のアルツハイマー病治療剤の作用を増強するための経口用剤(以下、「アルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤」ともいう)の実施形態は次のとおりである。
(1)ヒトインターフェロン−α、及び、ヒトインターフェロン−β又はヒトインターフェロン−γ(言い換えれば、ヒトインターフェロン−α及びヒトインターフェロン−β、又は、ヒトインターフェロン−α及びヒトインターフェロン−γ)を有効成分としてなることを特徴とする、アルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤。
(2)ヒトインターフェロン−α:ヒトインターフェロン−β又はヒトインターフェロン−γを、活性比で1:0.25乃至2の割合で含有することを特徴とする、(1)に記載の剤。
(3)ヒトインターフェロン−αの投与量として50乃至400国際単位/kgヒト体重/回の投薬単位形態であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の剤。
(4)1回の投薬単位形態の製剤中に、ヒトインターフェロン−αを10,000国際単位と、ヒトインターフェロン−βを10,000国際単位或いはヒトインターフェロン−γを5,000国際単位とを含有することを特徴とする(1)乃至(3)の何れか1つに記載の剤。
(5)ヒトインターフェロンα中のサブタイプα2とサブタイプα8の質量比が9:1乃至2:8(好ましくは8:2乃至4:6、特に好適には3:1)のものを有効成分としてなることを特徴とする(1)乃至(4)の何れか1つに記載の剤。
(6)アルツハイマー病治療剤が、コリンエステラーゼ阻害剤及び/又はブチリルコリンエステラーゼ阻害剤であることを特徴とする(1)乃至(5)の何れか1つに記載の剤。
(7)コリンエステラーゼ阻害剤及び/又はブチリルコリンエステラーゼ阻害剤が、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン及び下記化1で表される三核型ペンタメチン系シアニン色素から選ばれる何れか1種又は2種以上であることを特徴とする(6)に記載の剤。
(8)三核型ペンタメチン系シアニン色素が、下記化2で表される化合物であることを特徴とする(7)に記載の剤。
(9)散剤、トローチ剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、舌下剤、フィルム剤、ゲル剤或いは錠剤の形態であることを特徴とする(1)乃至(8)の何れか1つに記載の剤。
(10)アルツハイマー病治療剤が単独ではアルツハイマー病に対する作用が認められない用量で用いられる際に適用されることを特徴とする、(1)乃至(9)の何れか1つに記載の剤。
【0012】
(11)アルツハイマー病治療剤と同時に或いは時間差をつけて、ヒトインターフェロン−α、及び、ヒトインターフェロン−β又はヒトインターフェロン−γ(言い換えれば、ヒトインターフェロン−α及びヒトインターフェロン−β、又は、ヒトインターフェロン−α及びヒトインターフェロン−γ)を有効成分としてなる剤を経口投与することを特徴とするヒト又はヒトを除く動物でのアルツハイマー病治療剤の作用を増強する方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルツハイマー病治療剤の用量を通常の臨床投与量よりも低減でき、その作用が顕著に高められるうえ、生体に対する毒性を低減できる、その結果として、アルツハイマー病治療剤による副作用を生ずることなくアルツハイマー病及びそれに伴う臨床症状の改善をできるという顕著な効果を奏する。さらに、本発明は、アルツハイマー病治療剤を単独で長期連用した場合に発生する作用の低下も起こしにくい。さらに、本発明の有効成分は、低用量のインターフェロンなので、これを経口投与してもインターフェロンによる副作用もなく、アルツハイマー病治療剤と併用した場合にも、患者のQOLを低下させるような副作用の発生は認められない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明でいうアルツハイマー病治療剤とは、アルツハイマー病やそれに伴う臨床症状の改善効果を有するものをいう。具体的には、既に臨床応用されているコリンエステラーゼ阻害剤を例示することができる。本発明でいうコリンエステラーゼ阻害剤とは、アルツハイマー病に特徴的な脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの減少を抑制し、アルツハイマー病の治療に使用される製剤をいい、コリンエステラーゼ及び/又はブチリルコリンエステラーゼの活性を抑制する物質又はそれを含有する組成物をいう。より具体的には、例えば、タクリン、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、イミノ−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペント[b]インドールカルバメート、N−ピリミジン4−アセチルアニリン誘導体、7−アリールオキシクマリン誘導体、N−プロパルギルアミノインダン及びN−プロパルギルフェネチルアミンなどのプロパルギルアミノカルバメート類やこれを含有する組成物などを例示することができる。また、コリンエステラーゼ阻害活性を有し、アルツハイマー病の治療効果を有する下記化1で表される三核型ペンタメチン系シアニン色素なども含まれる。
【0015】
【化1】

【0016】
上記式中におけるRで表されるアルキル基は炭素数が2乃至4であり、具体的には、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基のいずれかである。なお、Rで表されるアルキル基が直鎖で、かつ、炭素数が2又は3の三核型ペンタメチン系シアニン色素がより好ましく、アルキル基(R)の炭素数が2の色素が特に好ましい。Xは、ヨウ素アニオン又は塩素アニオンであり、インターフェロンの経口投与により増強されるアルツハイマー病治療効果の強さの点では、ヨウ素アニオンが好ましく、下記化2で表される色素(以下、「NK−4」と略記する)、或いは、その対アニオンが塩素イオンの色素がより好ましく、NK−4が特に好ましい。ちなみに、NK−4は、コリンエステラーゼ阻害活性を有し、スウェーデン型アルツハイマー病の原因遺伝子変異を導入したAPPトランスジェニックマウス(APP Tgマウス)認知障害を改善する作用を有する化合物で(例えば、国際公開第2010/087306号参照)、市販の細胞賦活剤の有効成分として用いられている。
【0017】
【化2】

【0018】
本発明のアルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤は、有効成分として、ヒトインターフェロン−αとともに、ヒトインターフェロン−β又はヒトインターフェロン−γを含有するものである(以下、単に「インターフェロン−α」、「インターフェロン−β」及び「インターフェロン−γ」ともいう)。本発明でいうインターフェロンαとは、ヒトの白血球又はリンパ芽球様細胞などの血液系細胞へセンダイウイルスなどのインターフェロン誘導剤を作用させることによって得られるインターフェロンである。インターフェロン−αの分子には多形性があり、インターフェロン−αの場合、インターフェロン−αに分類される分子は、アミノ酸配列の違いによって、サブタイプα1、サブタイプα2、サブタイプα5、サブタイプα6、サブタイプα7、サブタイプα8、サブタイプα14、サブタイプωなどに分類されている。本発明においては、どのサブタイプのインターフェロン−αを用いてもよいが、とりわけ、サブタイプα2及びα8のインターフェロン−αはコリンエステラーゼ阻害剤の作用の増強効果に優れているので、サブタイプα2とα8とが、質量比で9:1乃至2:8のものを用いるのが望ましく、8:2乃至4:6のものがより望ましく、3:1のものが特に望ましい。本発明のコリンエステラーゼ阻害剤の作用の増強剤に配合するインターフェロン−αは、特定のサブタイプのものを組換えDNA技術により産生させたり、ヒト末梢血有核細胞又は培養株化されたヒト細胞から適宜の誘導剤を用いて生産させた後、クロマトグラフィーなどを用いて単離、精製し用いてもよいし、斯かるインターフェロン−αをポリエチレングリコールなどにより修飾して徐放化したインターフェロン−αを用いてもよい。また、市販のインターフェロン−α製剤を適宜希釈し用いることもできる。
【0019】
本発明でいうインターフェロン−βとは、例えば、培養したヒト線維芽細胞にポリ−I:C(poly I:C)などの誘導剤を加えて産生させた後、クロマトグラフィーなどを用いて単離、精製することにより、工業的に生産したものを用いることができる(例えば、特開昭58−201794号公報参照)。また、組換えDNA技術を用いて、インターフェロン−βを、大腸菌、動物細胞、昆虫細胞、又は酵母などで発現させることにより、工業的に生産されたものを用いてもよいし、ポリエチレングリコールなどにより修飾して徐放化したインターフェロンを用いてもよい。また、市販のインターフェロン−β製剤を適宜希釈し用いてもよい。
【0020】
本発明でいうインターフェロン−γとは、例えば、培養したヒト骨髄単球系細胞にリポポリサッカライドなどの誘導剤を加えて産生させた後、クロマトグラフィーなどを用いて単離、精製することにより、工業的に生産したものを用いることができる(例えば、特開昭63−152993号公報参照)。また、組換えDNA技術を用い、インターフェロン−γを、大腸菌、動物細胞、昆虫細胞、又は酵母などで発現させた後、クロマトグラフィーなどを用いて単離、精製することにより、工業的に生産されたものを用いてもよいし、ポリエチレングリコールなどにより修飾して徐放化したインターフェロン−γを適宜希釈し用いてもよい。また、市販の製剤を適宜希釈し用いてもよい。
【0021】
本発明のアルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤は、有効成分であるインターフェロン−α、及び、インターフェロン−β又はインターフェロン−γを単独で用いてもよいが、通常、本発明の範囲を逸脱しない範囲で、製剤学的に許容される医薬品分野、医薬部外品分野或いは食品分野や化粧品分野で用いることのできる成分の1種又は2種以上を配合した製剤の形態で提供される。
【0022】
製剤学的に許容される成分としては、例えば、添加剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、安定化剤、界面活性剤、防腐剤(抗菌剤)、香料、増粘剤、抗酸化剤、キレート剤、ビタミン類、アミノ酸類、水性媒体、糖質、水溶性高分子、pH調整剤、発泡剤、医薬品・医薬部外品・化粧品・食品用の添加剤など例示することができ、これらの成分の1種又は2種以上を適宜組み合わせて配合し、目的とする剤型に応じて、常法により製造されたものであればよい。
【0023】
本発明のアルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤の有効成分であるインターフェロンは、対象とする製剤の組成やその使用目的を勘案し、原料の段階から製品が完成するまでの工程で配合すればよい。その方法としては、目的とする剤型に応じ、例えば、混和、混捏、溶解、融解、分散、懸濁、乳化、逆ミセル化、浸透、晶出、散布、塗布、付着、噴霧、被覆(コーティング)、注入、浸漬、固化、担持などの1種又は2種以上の方法が適宜に選ばれる。
【0024】
本発明のアルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤の剤型としては、例えば、散剤、錠剤、トローチ剤、カプセル、顆粒剤、液剤、舌下剤、フィルム剤、ゲル剤などの経口投与可能な形態に調製し、そのままで、或いは、必要に応じて、食事、飲料などに混合・溶解したり、経口投与器やスプレーなどの投与補助器具を適宜に用いながら、常法にしたがって口腔内に投与すればよい。なお、散剤、カプセル、顆粒剤、錠剤などの形態の製剤の場合でも、通常は、口腔内で製剤を溶解する方法で投与するのが望ましい。
【0025】
本発明のアルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤は、経口的に投与することにより、アルツハイマー病治療剤の作用を効果的に増強することができる。本発明のアルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤におけるインターフェロン−αの配合量は、アルツハイマー病治療剤とともにアルツハイマー病の患者に投与したとき、アルツハイマー病治療剤の作用を効果的に増強でき且つ副作用を発生しない用量であれば制限はなく、アルツハイマー病の患者の症状、重篤度、アルツハイマー病治療剤の種類、用量、用法、使用するインターフェロンの種類などにもよるが、通常、インターフェロン−αが2,500乃至20,000国際単位/回、望ましく、10,000国際単位/回となるように、1日1回、若しくは、1週間に1乃至5回投与すればよく、通常は、アルツハイマー病治療剤の投与と同時に投与すればよい。
【0026】
本発明によるアルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤の場合、インターフェロン−β又はインターフェロン−γ用量は、インターフェロン−αの用量に依存しており、インターフェロン−αと、インターフェロン−β又はインターフェロン−γとが、活性比で1:0.25乃至2の割合で用いられる。インターフェロン−αとインターフェロン−βとを用いる場合、その活性比は1:0.5乃至1がより好ましく、1:1が特に好ましい。インターフェロン−αとインターフェロン−γとを用いる場合、その活性比は1:0.5が特に好ましい。
【0027】
従って、本発明によるアルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤の場合、投薬単位形態の薬剤をも包含し、その投薬単位形態の薬剤とは、この発明の有効成分たるインターフェロンの、例えば、一日当たりの用量又はその整数倍(4倍まで)若しくはその約数(1/4まで)に相当する量を含有し、投与に適する物理的に分離可能な剤型にある薬剤を意味する。また、本発明によるアルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤は、有効成分としてインターフェロン−αと、インターフェロン−β又はインターフェロン−γとを必須の構成とするので、通常、その2種のインターフェロンの配合剤の形態で提供されるが、各々のインターフェロンを単独で含有する製剤を調製し、上記、用法、用量に従って、2剤を同時に、或いは、時間差をつけて投与することもできる。
【0028】
ちなみに、本願においてインターフェロンの活性は、インターフェロンがシンドビスウイルスによるFL細胞の細胞変性を抑制する度合をマイクロタイター法により測定し、その測定値を世界保健機関による各インターフェロンの型に対応する国際標準品を標準として算出される抗ウイルス活性の「国際単位」(International units;IU)で表示している。なお、斯かる測定法においては、培養細胞を用いることに起因して不可避的な測定誤差が発生するので、インターフェロンの抗ウイルス活性に基づき算出される、上記インターフェロンの製剤への配合量やインターフェロン−αのサブタイプの構成比に数%程度の幅があることはいうまでもないことである。
【0029】
本発明のアルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤を併用する場合のアルツハイマー病治療剤の用量は、その種類にもよるが、通常、その単独投与では、アルツハイマー病の治療効果や副作用が認められない範囲で設定される。具体的には、例えば、コリンエステラーゼ阻害剤の場合、通常の臨床投与量の100分の1以下、好ましくは200分の1以下が用いられ(例えば100分の1乃至500分の1、あるいは200分の1乃至400分の1など)、その用法は、1日1回乃至適宜間隔をあけて投与すればよく、好ましくは1日1回乃至3日に1回投与をすればよい。より具体的には、例えば、ドネペジル塩酸塩の場合、0.15〜2.0μg/kg体重を3日に1回経口投与すればよく、化2で表される化合物の場合、1乃至50ng/kg体重、好ましくは5乃至20ng/kg体重を1日1回経口投与すればよい。本発明のアルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤を併用することにより、斯かる低用量でもアルツハイマー病治療剤によるアルツハイマー病治療作用が効果的に発揮され、しかも、アルツハイマー治療剤を長期連用してもその効果が低下することもない。アルツハイマー病治療剤を通常の臨床投与量で用いた場合、本発明によるアルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤と併用しても、その増強効果は認められず、単独投与の場合と同様に副作用や長期連用した場合、治療効果の低下が認められる場合がある。ちなみに、所定量の本発明のアルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤を投与した場合、或いは、通常の臨床投与量の100分の1以下のコリンエステラーゼ阻害剤を、通常の用法で単独で投与した場合、何れの場合もアルツハイマー病の治療効果は全く認められない。また、アルツハイマー病治療剤を、通常の臨床投与量の100分の1以下の用量で、単独で投与、或いは、所定量の本発明のアルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤と併用した場合、何れの場合も患者のQOLに影響するような重篤な副作用は認められない。なお、本明細書でいうアルツハイマー病治療剤の「通常の臨床投与量」とは、対象とする化合物或いはそれを含む製剤を単独でヒトに投与した場合に、アルツハイマー病の治療効果が発揮される投与量を意味し、日本国或いは外国において所轄官庁より医薬品として製造承認されている製剤の場合、その製剤の承認された用量を意味する。
【0030】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内においてこれらの様々な変形が可能である。
【実施例1】
【0031】
アルツハイマー病治療剤の作用に及ぼすインターフェロンの経口投与の影響をヒトアルツハイマー型認知症のモデル系として汎用されているアミロイドβフラグメント投与マウスを用いて調べた。
【0032】
<被験試料>
インターフェロン−αは市販のインターフェロン製剤(大塚製薬株式会社販売、商品名『オーアイエフ 注射用 500万IU』、インターフェロン−α含量:500万国際単位/バイアル)を、0.5%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水を用い、100μl中に下記表1に示す量が含まれるように希釈し用いた。インターフェロン−βは市販のインターフェロン製剤(第一製薬株式会社販売、商品名『フェロン』、インターフェロン−β含量:600万国際単位/バイアル)を、0.5%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水を用い、100μl中に下記表1に示す量が含まれるように希釈し用いた。インターフェロン−γは、市販のインターフェロン製剤(塩野義製薬株式会社販売、商品名『イムノマックス(注)300』、インターフェロン−γ含量:300万国際単位/バイアル)を、0.5%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水を用い、100μl中に下記表1に示す量が含まれるように希釈し用いた。コリンエステラーゼ阻害剤として市販のドネペジル塩酸塩製剤(エーザイ株式会社販売、商品名『アリセプト 細粒0.5%』、ドネペジル塩酸塩含量:5mg/g)を用い、生理食塩水を用いて100μl中に下記表1に示す量が含まれるように希釈し用いた。対照1として、アミロイドβフラグメントを投与していないマウスに0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水(200μl/匹)のみを投与した。対照2として、アミロイドβフラグメント投与マウスに0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水(200μl/匹)のみを投与した。
【0033】
<実験方法>
ICRマウス(日本チャールスリバー社販売、オス、5週齢、体重25乃至30g)264匹を無作為に4匹ずつ66群に分け、試験終了まで単独飼育した。抱水クロラール(シグマ社販売、350mg/kg体重、腹腔内投与)麻酔を施したマウスを、背面固定し、頭部正中切開を加え、骨縫合を確認した後、ブレグマの左側方1.0mm、後方0.5mmに刺入点を定め、3mm刺入し、アミロイドβフラグメント(AnaSpec社販売、β−Amyloid25−35)溶液9nmol/6μl/匹を脳室内に投与した(投与法は、『Brain Research』、第706巻、181−193頁(1996年)参照。)。投与には28ゲージステンレス針(3mm)を装着したマイクロシリンジを用いた。刺入部位は、予めアミロイドβフラグメント溶液の代わりにエバンスブルー溶液(0.3μg/0.3μl)を投与し、左右前額断面の側脳室、背側第三脳室、腹側第三脳室などに着色が認められることを確認し決定した。投与後、頭皮を縫合し、翌日より、下記表1に示す組み合わせ及び投与量により、ドネペジル塩酸塩及びインターフェロンを単独又はこれらを組み合わせて、1日1回13日間、マイクロタイターピペットを用いて経口投与した。ドネペジル塩酸塩及び/又はインターフェロン投与による、アミロイドβフラグメント投与により引き起こされる記憶力の低下を抑制する効果を確認するため、アミロイドβフラグメントを脳室内に投与して後11乃至14日目に、以下に示す水迷路試験による行動学的評価を行った。
【0034】
<水迷路試験法>
直径130cmの円形プールに、白色インクで着色した水を深さ20cmまで満たし、水槽用ヒーターで水温を23±1℃に維持した。プールを4分割し一画の中央に、プールの側面から10cmの位置に避難用のプラットホームを水面下2cmになるように設置した。このプラットホームの位置は、試験終了まで一定の場所とした。マウスをプールの側面に向けて水面上に放ち、水面下に隠れたプラットフォームに到着するまでの時間を計測した。スタート位置は、プールを4分割したいずれかの画分の中央部、壁面より10cm離れた場所とし、試行毎にランダムに変更した。2分間自由にプラットフォームを探索させた後、マウスが2分以内にプラットフォームに到着できなかった場合は、プラットフォームへ誘導し、30秒間プラットフォームに留まらせた後、ペーパータオルを敷いたケージに移した。2回目の試験は、1回目の試験終了1分後に開始した。2回の試行の平均値を1日の値とした。この試験を4日間連続で行ない、試験4日目に各々の群のマウスがプラットフォームに到着するまでに要した平均時間を、試験開始日の各々の群のマウスがプラットフォームに到着するまでに要した平均時間で除し、100倍した値を、100から減じて、プラットフォーム認識時間改善率(%)とした。
【0035】
結果を下記表1に併せて示した。なお、表1には示さないが、対照2としてアミロイドβフラグメント投与マウスに0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水(200μl/匹)のみを投与したマウスのプラットフォーム認識時間改善率(%)(以下、「認識時間改善率」という。)は17%となった。この場合、認識時間改善率は、試験開始日にプラットホームの探索に要した時間が試験4日目にどれだけ短縮されたかを示す割合である。一度探索したプラットホームをマウスが記憶していれば、試験を繰り返すたびに認識時間改善率は上昇し、試験4日目に最大値となる。従って、アミロイドβフラグメント投与マウスに投与した物質のアルツハイマー病治療剤としての作用が強ければマウスの記憶力の低下が抑制されるため、認識時間改善率の低下が抑制され、正常マウス(対照1)の値に近くなる。逆に、その作用が弱ければ、マウスの記憶力の低下が抑制されないので、認識時間改善率は低下し、0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水のみを投与したアミロイドβフラグメント投与マウス(対照2)の値に近くなる。
【0036】
【表1】

【0037】
表1から明らかなように、ドネペジル塩酸塩を0.5乃至5μg/kg体重投与したマウスに、インターフェロン−αを200国際単位/kg体重又は400国際単位/kg体重と、それと等量のインターフェロン−β又はインターフェロン−γを経口投与したマウスでは、0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水のみを投与したアミロイドβフラグメント投与マウス(対照2)に比べ、認識時間改善率の低下の有意の抑制が認められた。これに対し、ドネペジル塩酸塩を、単独で200μg/kg体重投与したマウスでは、0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水を投与マウス(対照2)に比べ、認識時間改善率の有意の低下の抑制が認められたものの、50μg/kg体重以下を投与したマウスの認識時間改善率は、対照2のマウスとほぼ同程度の値を示した。ドネペジル塩酸塩を200μg/kg体重投与したマウスに、インターフェロン−α、インターフェロン−β又はインターフェロン−γを単独で、或いは、組み合わせて投与しても、ドネペジル塩酸塩を単独投与した場合以上の認識時間改善率の低下の抑制は認められなかった。また、本試験で用いた用量では、インターフェロン−α、インターフェロン−β或いはインターフェロン−γを単独投与しても、全く、認識時間改善率の改善は認められなかった。この結果は、通常の臨床投与量よりも低用量のドネペジル塩酸塩をアルツハイマー病の治療に用いる際に、インターフェロン−αとインターフェロン−β又はインターフェロン−γと併用することにより、ドネペジル塩酸塩を単独で200μg/kg体重投与した場合と同等、或いは、それ以上のアルツハイマー病治療作用が得られることを示している。なお、ドネペジル塩酸塩とインターフェロンを組み合わせて投与したマウスに、死亡例、体重減、行動の異常等の副作用は全く認められなかった。ちなみに、本試験で設定したドネペジル塩酸塩60μg/kg体重及び200μg/kg体重の投与量は、日本国厚生労働省が、アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制に用いる医薬品として承認した製剤の、体重50kgのアルツハイマー型認知症患者に対する通常の臨床投与量に相当する用量である。また、具体的なデータは示さないが、ドネペジル塩酸塩を0.5乃至5μg/kg体重投与したマウスに、インターフェロン−αを200国際単位/kg体重又は400国際単位/kg体重と、それと等量のインターフェロン−β又はインターフェロン−γとを筋肉内投与したマウスの認識時間改善率は、0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水のみを投与したアミロイドβフラグメント投与マウス(対照2)と同程度であった。
【実施例2】
【0038】
実施例1において、通常の臨床投与量の400分の1量という低用量のドネペジル塩酸塩の投与時に、インターフェロン−αと、インターフェロン−β又はインターフェロン−γとを各々200国際単位/kg体重又は400国際単位/kg体重経口投与することにより、ドネペジル塩酸塩を単独で200μg/kg体重の投与した場合と同等以上のアルツハイマー型認知症患者に対する治療効果が期待できることが明らかとなったので、本試験ではインターフェロン−αと、インターフェロン−β又はインターフェロン−γを併用する場合のドネペジル塩酸塩の有効投与量を決定する試験を行った。すなわち、インターフェロン−αと、インターフェロン−β及びインターフェロン−γ、並びに、ドネペジル塩酸塩の投与の組み合わせと投与量を下記表2に示すように設定した以外は、実施例1と全く同じ方法により試験を実施し、認識時間改善率を求めた。結果を下記表2に併せて示す。なお、表2には示さないが、0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水(200μl/匹)のみを投与したアミロイドβフラグメント投与マウス(対照2)の認識時間改善率は18%となった。
【0039】
【表2】

【0040】
表2から明らかなように、ドネペジル塩酸塩を0.15乃至2μg/kg体重投与したマウスに、インターフェロン−αを200国際単位/kg体重又は400国際単位/kg体重と、それと等量のインターフェロン−β又はインターフェロン−γとを投与したマウスでは、0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水のみを投与したアミロイドβフラグメント投与マウス(対照2)に比べ、認識時間改善率の有意の低下抑制が認められた。ドネペジル塩酸塩を0.05μg/kg体重投与したマウスでは、インターフェロン併用による認識時間改善率の低下抑制は全く認められなかった。この結果及び実施例1の結果は、ドネペジル塩酸塩をインターフェロンと組み合わせて投与する場合の投与量は0.15乃至5μg/kg体重が望ましく、0.15乃至1μg/kg体重がより望ましく、0.5μg/kg体重が特に望ましいことを示している。なお、ドネペジル塩酸塩とインターフェロンを組み合わせて投与したマウスに、死亡例、体重減、行動の異常等の副作用は全く認められなかった。
【実施例3】
【0041】
実施例2において、ドネペジル塩酸塩の有効投与量を決定したので、本試験では、インターフェロンの有効投与量を決定する試験を行った。すなわち、インターフェロン−αと、インターフェロン−β及びインターフェロン−γ、並びに、ドネペジル塩酸塩の投与の組み合わせと投与量を下記表3に示すように設定した以外は、実施例1と全く同方法により試験を実施し、認識時間改善率を求めた。結果を下記表3に併せて示す。なお、表3には示さないが、0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水(200μl/匹)のみを投与したアミロイドβフラグメント投与マウス(対照2)の認識時間改善率は16%となった。
【0042】
【表3】

【0043】
表3から明らかなよう、ドネペジル塩酸塩を通常の臨床投与量の400分の1に相当する0.5μg/kg体重と、インターフェロン−αを50乃至400国際単位/kg体重と、インターフェロン−β又はインターフェロン−γを50乃至400国際単位/kg体重経口投与したマウスでは、0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水のみを投与したアミロイドβフラグメント投与マウス(対照2)に比べ、認識時間改善率の有意の低下抑制が認められた。これに対し、インターフェロン−αを10国際単位/kg体重又は2,000国際単位/kg体重と、インターフェロン−β又はインターフェロン−γを10又は2,000国際単位/kg体重経口投与したマウスでは、ドネペジル塩酸塩を0.5μg/kg体重投与した場合でも、認識時間改善率の低下抑制は全く認められなかった。この結果は、ドネペジル塩酸塩をインターフェロンと組み合わせて投与する場合、ドネペジル塩酸塩の作用増強に必要なインターフェロンの投与量は、インターフェロン−αを50乃至400国際単位/kg体重と、インターフェロン−β又はインターフェロン−γを50乃至400国際単位/kg体重との併用が望ましいことを示している。なお、ドネペジル塩酸塩とインターフェロンを組み合わせて投与したマウスに、死亡例、体重減、行動の異常等の副作用は全く認められなかった。
【実施例4】
【0044】
実施例3において、インターフェロンの有効投与量を決定したので、本試験では、インターフェロンの有効な配合割合を決定する試験を行った。すなわち、インターフェロン−αと、インターフェロン−β及びインターフェロン−γ、並びに、ドネペジル塩酸塩の投与の組み合わせと投与量を下記表4に示すように設定した以外は、実施例1と全く同じ方法により試験を実施し、認識時間改善率を求めた。結果を下記表4に併せて示す。なお、0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水(200μl/匹)のみを投与したアミロイドβフラグメント投与マウス(対照2)の認識時間改善率は16%となった。
【0045】
【表4】

【0046】
表4から明らかなように、インターフェロン−α200国際単位/kg体重と、インターフェロン−β又はインターフェロン−γを50乃至400国際単位/kg体重とを経口投与することにより、通常の臨床投与量よりも低用量のドネペジル塩酸塩を投与したマウスにおいて、0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水のみを投与したアミロイドβフラグメント投与マウス(対照2)に比べ、認識時間改善率の低下の有意の抑制が認められた。また、その抑制率は、インターフェロン−αを200国際単位/kg体重とインターフェロン−βを100乃至200国際単位/kg体重、又は、インターフェロン−αを200国際単位/kg体重とインターフェロン−γを100国際単位/kg体重との投与でより高くなった。ドネペジル塩酸塩を0.05μg/kg体重又は20μg/kg体重投与したマウスでは、インターフェロン併用による認識時間改善率の低下抑制は全く認められなかった。この結果は、通常の臨床投与量よりも低用量のドネペジル塩酸塩をインターフェロンと組み合わせて投与する場合のインターフェロンの配合割合は、インターフェロン−αとインターフェロン−β又はインターフェロン−γとが、活性比で1:0.25乃至2の比率が望ましいことを示している。さらに、インターフェロン−αとインターフェロン−βでは、その配合割合が、活性比で1:0.5乃至1がより望ましく、1:1が特に望ましいことを示している。また、インターフェロン−αとインターフェロン−γでは、その配合割合が、活性比で1:0.5がより望ましいことを示している。なお、ドネペジル塩酸塩とインターフェロンを組み合わせて投与したマウスに、死亡例、体重減、行動の異常等の副作用は全く認められなかった。
【実施例5】
【0047】
実施例1乃至4により、コリンエステラーゼ阻害効果を有するアルツハイマー病治療剤を、通常の臨床投与量よりも低用量で用い、インターフェロン−αと、インターフェロン−β及びインターフェロン−γとを併用すると、斯かるアルツハイマー病治療の効果が増強されることが明らかとなったので、本試験では、ドネペジル塩酸塩以外のコリンエステラーゼ阻害活性を有し、アルツハイマー病治療効果が確認されている前記化2で表される化合物NK−4を投与する際に、インターフェロン−αと、インターフェロン−β又はインターフェロン−γを併用した場合の治療効果への影響を調べた。すなわち、インターフェロン−αと、インターフェロン−β又はインターフェロン−γ、並びに、NK−4の投与の組み合わせと投与量を下記表5に示すように設定した以外は、実施例1と全く同じ方法により試験を実施し、認識時間改善率を求めた。NK−4は、市販の細胞賦活剤(森田薬品工業株式会社販売、商品名『ルミン』、NK−4含量100mg/錠)を、乳鉢ですりつぶし、炭酸水素ナトリウムを加えて倍散し、0.1g/回経口投与した。結果を下記表5に併せて示す。なお、表5には示さないが、0.5%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水(100μl/匹)のみを投与したアミロイドβフラグメント投与マウス(対照2)の認識時間改善率は17%となった。ちなみに、NK−4の細胞賦活剤としての通常の臨床投与量は2μg/kg体重であり、アルツハイマー病治療効果を得るためには500μg/kg体重の投与が必要と考えられる(国際公開第2010/087306号参照)。
【0048】
【表5】

【0049】
表5から明らかなように、インターフェロン−αを200国際単位/kg体重とインターフェロン−βを100乃至400国際単位/kg体重、又は、インターフェロン−αを200国際単位/kg体重とインターフェロン−γを50乃至200国際単位/kg体重投与し、通常の臨床投与量よりも低い用量のNK−4を投与した場合、アミロイドβフラグメント投与に起因する認識時間改善率の低下が有意に抑制された。この結果は、インターフェロン−αとインターフェロン−βを活性比で1:0.5乃至2、或いは、インターフェロン−αとインターフェロン−γを活性比で1:0.25乃至1の配合割合で投与した場合、通常の臨床投与量より低用量のNK−4投与によるアルツハイマー病治療剤の作用を効果的に増強できることを示している。また、斯かるインターフェロンによる増強には、インターフェロン−αとインターフェロン−βを活性比で1:1の配合割合とするか、或いは、インターフェロン−αとインターフェロン−γを活性比で1:0.5の配合割合とするのが望ましいことも示された。
【実施例6】
【0050】
実施例5において、ドネペジル塩酸塩以外のコリンエステラーゼ阻害効果を有し、アルツハイマー病治療効果を有するNK−4においても、通常の臨床投与量よりも低用量で用いる際に、インターフェロン−αと、インターフェロン−β及びインターフェロン−γとを併用することにより、そのアルツハイマー病治療作用が増強されることが明らかとなったので、本試験では、ドネペジル塩酸塩、NK−4以外のコリンエステラーゼ阻害活性を有し、国内或いは外国でアルツハイマー病治療剤として市販されているガラクタミン及びリバスチグミンにつき、インターフェロン−αと、インターフェロン−β及びインターフェロン−γとを併用した場合の影響を調べた。すなわち、インターフェロン−αと、インターフェロン−β及びインターフェロン−γ、並びに、市販のアルツハイマー病治療剤の投与の組み合わせと投与量を下記表6に示すように設定した以外は、実施例1と全く同じ方法により試験を実施し、認識時間改善率を求めた。ガラクタミンは、市販のガラクタミン臭化水素酸塩錠(武田薬品工業株式会社販売、商品名『レミニールOD錠12mg』、ガラクタミンとして12mg/錠含有)を、乳鉢ですりつぶし、生理食塩水に溶解し、適宜希釈して、100μl/回経口投与した。リバスチグミンは、市販の酒石酸リバスチグミン製剤(ノバリテイス株式会社(NOVARTIS AG)販売、商品名『Exelon』、リバスチグミン含量6mg/錠))を、乳鉢で磨りつぶし、生理食塩水に溶解し、適宜希釈して、100μl/回経口投与した。結果を下記表6に併せて示す。なお、表6には示さないが、0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水(200μl/匹)のみを投与したアミロイドβフラグメント投与マウス(対照2)の認識時間改善率は16%となった。
【0051】
【表6】

【0052】
表6から明らかなように、インターフェロン−αを200国際単位/kg体重とインターフェロン−βを100乃至400国際単位/kg体重、又は、インターフェロン−αを200国際単位/kg体重とインターフェロン−γを50乃至200国際単位/kg体重投与し、通常の臨床投与量よりも低用量のガラタミン或いはリバスチグミンを投与した場合、アミロイドβフラグメント投与に起因するマウスの認識時間改善率の低下が有意に抑制された。この結果は、インターフェロン−αとインターフェロン−βを活性比で1:0.5乃至2、或いは、インターフェロン−αとインターフェロン−γを活性比で1:0.25乃至1の配合割合で投与した場合、通常の臨床投与量より低用量のガラタミン或いはリバスチグミン投与によるアルツハイマー病治療作用を効果的に増強できることを示している。また、斯かるインターフェロンによるアルツハイマー病治療剤の作用の増強効果は、インターフェロン−αとインターフェロン−βを活性比で1:1の配合割合とするか、或いは、インターフェロン−αとインターフェロン−γを活性比で1:0.5の配合割合とするのが特に望ましいことも示された。
【実施例7】
【0053】
ヒトアルツハイマー型認知症のモデル系として汎用されているスウェーデン型アルツハイマー病の原因遺伝子変異を導入した市販のAPPトランスジェニックマウス(APP Tgマウス)の記憶力に及ぼす、インターフェロンとコリンエステラーゼ阻害剤との併用による長期連用の影響を、コリンエステラーゼ阻害剤としてドネペジル塩酸塩を用いて調べた。すなわち、APP Tgマウス(Taconic社販売、メス、10週齢、体重15乃至23g)40匹を10日間予備飼育した後、体重が均等になるように、4群各10匹に分け、単独飼育とし、インターフェロン及びドネペジル塩酸塩を、下記表7に示す用量で週5回、15ヶ月間投与した。対照1として遺伝子変異を導入していないマウス(野生型、メス、10週齢、体重15乃至23g)10匹を10日間予備飼育後、単独飼育とし、0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水を週5回、15ヶ月間投与した。対照2としてAPP Tgマウスに0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水(200μl/匹)のみを週5回、15ヶ月間投与した。インターフェロン及び/又はドネペジル塩酸塩投与3ヶ月及び15ヶ月に、実施例1と同一の方法により水迷路試験を実施し、試験4日目に各々の群のマウスがプラットフォームに到着するまでに要した平均時間を、試験開始日の各々の群のマウスがプラットフォームに到着するまでに要した平均時間で除し、100倍した値を100から減じて認識時間改善率(%)とした。なお、0.25%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水(200μl/匹)のみを投与したAPP Tgマウス(対照2)の、投与3ヶ月及び15ヶ月における認識時間改善率は各々15%及び16%となった。
【0054】
【表7】

【0055】
表7から明らかなように、インターフェロン−αを200国際単位/kg体重とインターフェロン−βを200国際単位/kg体重、又は、インターフェロン−αを200国際単位/kg体重とインターフェロン−γを100国際単位/kg体重投与し、通常の臨床投与量よりも低い用量のドネペジル塩酸塩(0.5μg/kg体重)を投与した場合、投与開始3ヶ月及び15ヶ月において、アミロイドβ変異に起因する記憶障害による認識時間改善率の低下が有意に抑制された。これに対し、通常の臨床投与量(200μg/kg体重)のドネペジル塩酸塩のみを投与した場合、投与開始3ヶ月及び15ヶ月において、アミロイドβ変異に起因する記憶障害による認識時間改善率の低下が有意に抑制されたものの、投与15ヶ月における認識時間改善率は、投与3ヶ月のときの約2分の1に低下し、ドネペジル塩酸塩による治療効果の低下が認められた。この結果は、通常の臨床投与量より低用量のドネペジル塩酸塩投与と、インターフェロン−αとインターフェロン−β又はインターフェロン−γの経口投与の併用により、ドネペジル塩酸塩のもつアルツハイマー病治療作用を効果的に増強できるだけでなく、ドネペジル塩酸塩を通常の臨床投与量で長期連用した場合に認められるアルツハイマー病治療作用の低下も抑制できることを示している。
【実施例8】
【0056】
インターフェロン−αとインターフェロン−β又はインターフェロン−γを有効成分とする本発明による経口用製剤の安全性を確認する試験を実施した。すなわち、BALB/cマウス(日本チャールスリバー株式会社販売、6週齢、雌、平均体重20g)35匹を無作為に、5匹ずつ7群に分け、6群各5匹には、下記表8に示す投与量となるように、実施例1で用いたのと同じインターフェロンを、0.5%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水で希釈して、その何れかを200μl/マウスで経口投与し、経過を24時間観察した。残りの1群5匹には、対照として、0.5%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水のみを200μl/マウス経口投与し、その経過を24時間観察した。インターフェロン含有又は非含有0.5%(w/w)ヒト血清アルブミン含有生理食塩水投与24時間後、常法により、血液及び尿を採取し、骨髄機能、腎機能及び肝機能の指標となる臨床検査を行った。結果を下記表8に併せて示す。
【0057】
【表8】

【0058】
表8から明らかなように、投与直後から観察終了まで、外観的な変化は認められず、骨髄機能、腎機能及び肝機能の指標となる臨床検査値についても、対照のマウス(実験群1)と差は認められなかった。この結果は、インターフェロン−αとインターフェロン−βとを、各々200乃至100,000国際単位/kg体重、或いは、インターフェロン−αとインターフェロン−γとを、各々200乃至100,000国際単位/kg体重と100乃至50,000国際単位/kg体重、ヒトに経口投与してもその安全性は極めて高いことを示している。
【0059】
実施例1乃至8の結果は、インターフェロン−αとインターフェロン−β又はインターフェロン−γを有効成分として含有する経口用製剤が、通常の臨床投与量よりも低用量のアルツハイマー病治療剤、とりわけ、コリンエステラーゼ阻害剤をアルツハイマー病の治療に用いる際の作用の増強剤として極めて有用であることを示している。さらに、アルツハイマー病治療剤の作用増強剤としてのインターフェロン−αとインターフェロン−β又はインターフェロン−γの投薬形態は、50乃至400国際単位/kg体重/回の製剤が望ましいことを示している。さらに、斯かるアルツハイマー病治療剤の作用増強剤は、アルツハイマー病治療剤を通常の臨床投与量で長期連用した場合に生じる場合のある作用の低下を抑制できることも示している。また、斯かるアルツハイマー病治療剤の作用増強剤は、単独で経口投与しても、アルツハイマー病治療剤と併用しても、重篤な副作用を招来しない、安全な製剤である。
【実施例9】
【0060】
市販のインターフェロン−α製剤(大塚製薬株式会社販売、商品名『オーアイエフ 注射用500万IU』、インターフェロン−α含量:500万国際単位/バイアル)を、添付されている注射水を加えて600万国際単位/mlとなるように溶解した。これとは別に市販のインターフェロン−β製剤(第一製薬株式会社販売、商品名『フェロン』、インターフェロン−β含量:600万国際単位/バイアル)を、添付されている生理食塩水1mlを加えて溶解した。これらの溶液0.5mlずつを混合し、50gの無水結晶マルトース(株式会社林原商事販売、商品名『ファイントース』)に均一に噴霧し、真空乾燥し、粉砕した後、篩にかけて粒度100乃至500μmの粉状物を得た。粉状物にさらに適当量の無水結晶マルトースを均一に混合し、1g当たりインターフェロン−αとインターフェロン−βとを各々約10,000国際単位含む散剤を得た。
【0061】
また、市販のインターフェロン−α製剤(大塚製薬株式会社販売、商品名『オーアイエフ 注射用 500万IU』、インターフェロン−α含量:500万国際単位/バイアル)を、添付されている注射水を加えて600万国際単位/mlとなるように溶解した。これとは別に市販のインターフェロン−γ製剤(塩野義製薬株式会社販売、商品名『イムノマックス(注)300』、インターフェロン−γ含量:300万国際単位/バイアル)を、添付の注射用水1mlを加えて溶解した。これらの溶液0.5mlずつを混合し、100gの無水結晶マルトース(株式会社林原商事販売、商品名『ファイントース』)に均一に噴霧し、真空乾燥し、粉砕した後、篩にかけて粒度100乃至500μmの粉状物を得た。粉状物にさらに適当量の無水結晶マルトースを均一に混合し、1g当たりインターフェロン−α約10,000国際単位とインターフェロン−γ約5,000国際単位と含む散剤を得た。
【0062】
さらに、上記のようにして調製した粉末を、各々、常法により、造粒し、1g当たりインターフェロン−αとインターフェロン−βとを各々約10,000国際単位含む顆粒剤、及び、1g当たりインターフェロン−α約10,000国際単位とインターフェロン−γ約5,000国際単位とを含む顆粒剤を得た。また同様に、調製した粉末を、各々、常法により、ハードカプセルに0.5gずつ充填し、1g当たりインターフェロン−αとインターフェロン−βとを各々約10,000国際単位含むカプセル剤、及び、1g当たりインターフェロン−α約10,000国際単位とインターフェロン−γ約5,000国際単位とを含むカプセル剤を得た。
【0063】
さらには、市販のインターフェロン−α製剤(大塚製薬販売、商品名『オーアイエフ 注射用1000万IU』)に所定量の注射用水を加えて溶解した。これとは別に市販のインターフェロン−β製剤(第一製薬株式会社販売、商品名『フェロン』)に所定量の注射用蒸留水を加えて溶解した。これらの溶液の一部を、蒸留水にヒト血清アルブミンを1%(w/v)となるように溶解した溶液で希釈し、1g当たりインターフェロン−αを60,000国際単位とインターフェロン−βを60,000国際単位とを含有する溶液を得た。この溶液32質量部に対し、0.5質量部のツイーン80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)を15.0質量部のエタノールに溶解して混合し、さらに、その混合物に0.5質量部のトリエタノールアミンを15質量部のグリセリンに溶解して混合した後、少量のトリエタノールアミンを加えて、1ml当たりインターフェロン−αとインターフェロン−βを各々約20,000国際単位含む、ほぼ中性のゲル状製剤を得た。
【0064】
さらには、市販のインターフェロン−α製剤(大塚製薬株式会社販売、商品名『オーアイエフ』)に所定量の注射用水を加えて溶解した。これとは別に市販のインターフェロン−γ製剤(塩野義製薬株式会社販売、商品名『イムノマックス(注)300』)に所定量の注射用水を加えて溶解した。これらの溶液の一部を、蒸留水にヒト血清アルブミンを1%(w/v)となるように溶解した溶液で希釈し、1g当たりインターフェロン−αを30,000国際単位とインターフェロン−γを15,000国際単位とを含有する溶液を得た。この溶液32質量部に対し、0.5質量部のツイーン80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)を15質量部のエタノールに溶解して混合し、さらに、その混合物に0.5質量部のトリエタノールアミンを15質量部のグリセリンに溶解して混合した後、少量のトリエタノールアミンを加えて、1ml当たりインターフェロン−α約10,000国際単位とインターフェロン−γ約5,000国際単位と含む、ほぼ中性のゲル状製剤を得た。
【0065】
なお、これらの製剤は、適度の口腔内滞留時間を有し、アルツハイマー病の患者に飲ませ易い、粉末状、顆粒状又はゲル状のアルツハイマー病治療剤の作用増強剤であった。また、これらは、アルツハイマー病患者に、通常の臨床投与量の100分の1以下の用量のアルツハイマー病の治療剤を投与する際、本品を散剤又は顆粒剤の場合は0.25乃至1g/回、カプセル剤の場合は1乃至2カプセル/回、ゲル状製剤の場合は0.25乃至1ml/回経口投与することにより、アルツハイマー病治療剤の作用が増強され、重篤な副作用を招来することなく、アルツハイマー病及びそれに伴う臨床症状を改善することができる。また。斯かる用量でアルツハイマー病の治療剤と、本品を長期連用した場合でも、アルツハイマー病及びそれに伴う臨床症状の改善作用の低下は認められない。
【0066】
これらのような、本発明によるアルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤は、通常の臨床投与量よりも低用量のアルツハイマー病治療剤の投与時に併用することにより、斯かるアルツハイマー病治療剤、とりわけ、コリンエステラーゼ阻害作用を有するアルツハイマー病治療剤の作用を増強することができるので、医薬品分野で利用することができる。
【0067】
本発明を要約すれば、以下の通りである。
【0068】
本発明は、ヒトやヒトを除く動物に安全に適用可能な、アルツハイマー病治療剤の作用を効率的に増強するとともに、アルツハイマー病治療剤の長期連用による作用の低下を防止するための経口用製剤の提供を目的とする。
【0069】
そして、有効成分が、ヒトインターフェロン−α、及び、ヒトインターフェロン−β又はヒトインターフェロン−γからなる経口用剤により、アルツハイマー病治療剤の作用を相乗的に増強し且つアルツハイマー病治療剤の長期連用による作用の低下を防止する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインターフェロン−α、及び、ヒトインターフェロン−β又はヒトインターフェロン−γを有効成分としてなることを特徴とする、アルツハイマー病治療剤の作用増強経口用剤。
【請求項2】
ヒトインターフェロン−α:ヒトインターフェロン−β又はヒトインターフェロン−γを、活性比で1:0.25乃至2の割合で含有することを特徴とする、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
ヒトインターフェロン−αの投与量として50乃至400国際単位/kgヒト体重/回の投薬単位形態であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項4】
1回の投薬単位形態の製剤中に、ヒトインターフェロン−αを10,000国際単位と、ヒトインターフェロン−βを10,000国際単位或いはヒトインターフェロン−γを5,000国際単位とを含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の剤。
【請求項5】
ヒトインターフェロンα中のサブタイプα2とサブタイプα8の質量比が9:1乃至2:8のものを有効成分としてなることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の剤。
【請求項6】
アルツハイマー病治療剤が、コリンエステラーゼ阻害剤及び/又はブチリルコリンエステラーゼ阻害剤であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の剤。
【請求項7】
コリンエステラーゼ阻害剤及び/又はブチリルコリンエステラーゼ阻害剤が、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン及び下記化3で表される三核型ペンタメチン系シアニン色素から選ばれる何れか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項6に記載の剤。
【化3】

(式中、Rはエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基又はtert−ブチル基を表し、Xはヨウ素アニオン又は塩素アニオンを表す。)
【請求項8】
三核型ペンタメチン系シアニン色素が、下記化4で表される化合物であることを特徴とする請求項7に記載の剤。
【化4】

【請求項9】
散剤、トローチ剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、舌下剤、フィルム剤、ゲル剤或いは錠剤の形態であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の剤。
【請求項10】
アルツハイマー病治療剤が単独ではアルツハイマー病に対する作用が認められない用量で用いられる際に適用されることを特徴とする、請求項1乃至9の何れか1項に記載の剤。

【公開番号】特開2013−18729(P2013−18729A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152154(P2011−152154)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(510327965)
【Fターム(参考)】