説明

アルツハイマー病治療用の二環式スピロピペリジンベータ−セクレターゼ阻害剤

本発明は、ベータ−セクレターゼ酵素の阻害剤でありアルツハイマー病のようなベータ−セクレターゼが関与する疾患の治療に有用な式(I):


の二環式スピロピペリジン化合物に向けられている。本発明はまた、これらの化合物を含む医薬組成物、ベータ−セクレターゼが関与する疾患の治療におけるこれらの化合物および組成物の使用に向けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベータ−セクレターゼ酵素の阻害剤として有用でありアルツハイマー病のようなベータ−セクレターゼ酵素が関与する疾患の治療に有用な二環式スピロピペリジン化合物に向けられている。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病は、記憶力減退および認識機能不全を特徴とする進行性の神経変性疾患である。アルツハイマー病においては、細胞外プラークの形態および細胞内神経原線維のもつれの形態のアミロイドの脳内沈着が病理学的特徴として認められる。
【0003】
アミロイドの蓄積速度は、脳におけるアミロイドの形成、凝集および排出のそれぞれの速度の組合せである。アミロイドプラークの主要構成成分が、より大きいサイズの前駆タンパク質のタンパク質分解産物である4kDのアミロイドタンパク質(Aβとも呼ばれるβA4とβ−タンパク質およびβAP)であることは異論なく認められている。アミロイド前駆タンパク質(APPまたはAβPP)は、大きい外側ドメインと膜貫通領域と短い細胞質テールとを備えた受容体様構造を有している。Aβドメインは、APPの細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインという2つの部分を内包しており、従ってその遊離には、そのNH−末端およびCOOH−末端を生成する2つの異なるタンパク質分解イベントの存在が関与する。少なくとも2つの分泌メカニズム、すなわち、膜からAPPを遊離するメカニズムおよびAPPの可溶性COOH−欠失形(APP)を生成するメカニズムが存在する。APPおよびそのフラグメントを膜から遊離するプロテアーゼは“セクレターゼ”と命名されている。たいていのAPPは、Aβタンパク質内部を開裂してα−APPを遊離し、完全形Aβの遊離を阻む推定α−セクレターゼによって遊離される。少数のAPPは、APPのNH−末端の近傍を開裂し、全Aβドメインを含有するCOOH−末端フラグメント(CTF類)を産生するβ−セクレターゼ(“β−セクレターゼ”)によって遊離される。
【0004】
従って、β−セクレターゼまたはβ−部位アミロイド前駆タンパク質開裂酵素(“BACE”)の活性はAPPの開裂、Aβの産生、および、アルツハイマー病の特徴であるβアミロイドプラークの脳内蓄積に導く(参照:R.N.Rosenberg,Arch.Neurol.,vol.59,Sep 2002,pp.1367−1368;H.Fukumotoら,Arch.Neurol.,vol.59,Sep 2002,pp.1381−1389;J.T.Huseら,J.Biol.Chem.,vol 277,No.18,May 3,2002,pp.16278−16284;K.C.Chen & W.J.Howe,Biochem.Biophys.Res.Comm,vol.292,pp.702−708,2002)。従って、β−セクレターゼまたはBACEを阻害できる治療薬はアルツハイマー病の治療に有用であろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
(a)R.N.Rosenberg,Arch.Neurol.,vol.59,2002年9月,pp.1367−1368
(b)H.Fukumotoら,Arch.Neurol.,vol.59,2002年9月,pp.1381−1389
(c)J.T.Huseら,J.Biol.Chem.,vol 277,No.18,2002年5月3日,pp.16278−16284
(d)K.C.Chen & W.J.Howe,Biochem.Biophys.Res.Comm,vol.292,2002年,pp.702−708。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の化合物は、β−セクレターゼまたはBACEの活性を阻害しこれにより不溶性Aβの形成を防止しAβの産生を阻止することによってアルツハイマー病の治療に役立つ。
【0007】
本発明は、ベータセクレターゼ酵素の阻害剤として有用であり、アルツハイマー病のようなベータセクレターゼ酵素が関与する疾患の治療に有用なピペリジンおよびピロリジン化合物に向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
本発明は、β−セクレターゼ酵素の阻害剤として有用な一般式(I)
【0009】
【化1】

の二環式スピロピペリジン化合物および医薬的に許容されるこれらの塩に向けられている。
【0010】
本発明はまた、式(I)の化合物または医薬的に許容されるこれの塩を治療有効量で医薬的に許容される担体と共に含む医薬組成物に向けられている。本発明はまた、アルツハイマー病のようなβ−セクレターゼが関与する哺乳類疾患の治療方法、このような疾患の治療における本発明の化合物および医薬組成物の使用に向けられている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
1つの実施態様において、本発明は、一般式(I)
【0012】
【化2】

(式中の、
Wは、XおよびX’原子でスピロ環基に融合した5または6員環の芳香環式または非芳香環式の環を表し、W環炭素原子の1つまたは2つが場合により窒素環原子で置換され、W環炭素原子の1つまたは2つが場合により−C1−10アルキル基で置換されており、
Xは、
(1)N、
(2)C、または、
(3)CH
から成るグループから選択されており、
X’は、
(1)C、または、
(2)CH
から成るグループから選択されており、
は、
(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C2−10アルケニル、
(4)−C2−10アルキニル、
(5)−C3−12シクロアルルキル、
(6)4から8個の環原子を有しており1つの環原子が窒素および酸素から成るグループから選択されたヘテロ原子である非芳香族複素環基、
(7)アリール、および、
(8)ヘテロアリール
から成るグループから選択され、
上記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環基、アリールまたはヘテロアリールであるR部分は場合により1つ以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)C1−10アルキル、
(e)−C3−12シクロアルキル、
(f)−O−C1−10アルキル、
(g)−C0−6アルキル−アリール、
(h)−C0−6アルキル−ヘテロアリール、
(i)−NC(=O)−NR6A6B
(j)−NC(O)−C1−3アルキル−NR6A6B
(k)−NC(=O)R6A
(l)−NR6A6B、および、
(m)4から8個の環原子を有しており1つの環原子が窒素および酸素から成るグループから選択されたヘテロ原子である非芳香族複素環基
で置換されており、
上記アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環部分は場合により1つ以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)場合により1つ以上のハロで置換された−C1−6アルキル、
(v)−OC1−6アルキル、
(vi)−C2−6アルケニル、
(vii)−SO1−3アルキル、
(viii)−SONR6C6D
(ix)−NR6CSO1−3アルキル、
(x)−CO6C、および、
(xi)−CONR6C6D
で置換されており、
Qは結合またはC1−6アルキルであり、
上記アルキルは場合により1つ以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル、
(e)−C3−12シクロアルキル、
(f)−O−C1−10アルキル、
(g)アリール、および、
(h)ヘテロアリール
で置換されており、
は、
(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C2−10アルケニル、
(4)−C2−10アルキニル、
(5)−C3−12シクロアルキル、
(6)−C3−12シクロアルケニル、
(7)アリール、および、
(8)ヘテロアリール
から成るグループから選択され、
上記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリールまたはヘテロアリールであるR部分は場合により1つ以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル、
(e)−C2−10アルケニル
(f)−C3−12シクロアルキル、
(g)−O−C3−12シクロアルキル、
(h)−O−C1−10アルキル、
(i)4から8個の環原子を有しており1つの環原子が窒素および酸素から成るグループから選択されたヘテロ原子である−O−C3−12非芳香族複素環基、
(j)アリール、
(k)ヘテロアリール、
(l)−NR6A6B
で置換され、
上記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリール部分は場合により1つ以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)場合により1つ以上のハロで置換された−C1−6アルキル、
(v)−OC1−6アルキル、
(vi)−NR6C6D
(vii)−C2−6アルケニル、
(viii)−SO1−3アルキル、
(ix)−SONR6C6D、または、
(x)−CONR6C6D
で置換されており、Qが結合ならばRは水素でなければならないという条件付きであり、
は、
(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C3−4アルケニル、および、
(4)アリール
から成るグループから選択され、
上記アルキル、アルケニルまたはアリールであるR基は場合により1つ以上の以下の(a)から(h)
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−C1−6アルキル、
(d)−CN、
(e)−O−C1−10アルキル、
(f)−NR
ここにRおよびRは、
(i)水素、および、
(ii)−C1−6アルキル
から成るグループから選択され、
(g)−S(O)−C1−6アルキル、ここにmは0、1または2であり、
(h)−C(=O)−R
ここにRは、
(i)水素、
(ii)OH、
(iii)−C1−6アルキル、
(iv)−OC1−6アルキル、および、
(v)アリール
から成るグループから選択され;
で置換されており、
6A、R6B、R6CおよびR6Dは、
(1)水素、
(2)−C1−6アルキル、
(3)−C3−7シクロアルキル、
(4)−C0−6アルキル−アリール、
(5)−C0−6アルキル−ヘテロアル、
(6)ハロ、および、
(7)4から8個の環原子を有しており1つの環原子が窒素および酸素から成るグループから選択されたヘテロ原子である非芳香族複素環基
から成るグループから選択され、
上記アルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであるR6AまたはR6B部分は場合により1つ以上の
(a)ハロ、
(b)−C1−6アルキル、
(c)−O−C1−6アルキル、および、
(d)−NO
で置換されている。)
によって示される二環式スピロピペリジン化合物および医薬的に許容されるこれらの塩に向けられている。
【0013】
式(I)の化合物の1つの実施態様において、Wは5または6−員環の芳香環を表す。
【0014】
式(IA)の化合物の別の実施態様において、Wは5または6−員環の非芳香環を表す。
【0015】
式(I)の化合物の1つの実施態様において、QはCHであり、Rは場合により置換されたフェニルである。フェニル基の適当な置換基はハロ、−OH、−CN、−C1−10アルキルまたは−O−C1−10アルキルである。
【0016】
式(I)の化合物の1つの実施態様において、Rは場合により置換されたフェニルである。フェニル基の適当な置換基はハロ、−OH、−CN、−C1−10アルキルまたは−O−C1−10アルキルである。
【0017】
式(I)の化合物の1つの実施態様において、化合物は式(IA)の化合物および医薬的に許容されるそれらの塩である。
【0018】
【化3】

式中の、
結合a、bおよびcのおのおのは単結合または二重結合であり、bおよびcの双方が二重結合であることはできないという条件付きであり、
Zは、
(1)−CH−、
(2)−CH−、
(3)−CH=CH−、
(4)−CHCH−、または、
(5)−CHCH
から成るグループから選択され、aが二重結合のときZは−CH−または−CHCHであり、aが単結合のときZは−CH−、−CH=CH−または−CHCH−であるという条件付きであり、
Yは、
(1)N、
(2)NH、
(3)CR5A、および、
(4)CR5A5B
から成るグループから選択され、cが二重結合のときYはCR5AまたはNであり、cが単結合のときYはNHまたはCR5A5Bであるという条件付きであり、
これらのR5AおよびR5Bは、
(a)水素、
(b)−C1−10アルキル、
(c)−C2−10アルケニル、
(d)−C3−12シクロアルキル、
(e)−C0−6アルキル−アリール、および、
(f)−C0−6アルキル−ヘテロアリール
から成るグループから選択され、さらに、XまたはYの少なくとも一方がNまたはNHであるという条件付きであり、
は、
(1)水素、および、
(2)−C1−10アルキル
から成るグループから選択され、
Q、R、RおよびRは式(I)の定義と同義である。
【0019】
式(IA)の化合物の1つの実施態様において、aおよびcは単結合であり、bは二重結合である。1つの実施態様において、aおよびcは単結合であり、bは二重結合であり、XはCであり、YはNHであり、ZはCHCHである。
【0020】
式(IA)の化合物の別の実施態様において、aおよびbは二重結合であり、cは単結合である。別の実施態様において、aおよびbは二重結合であり、cは単結合であり、XはCであり、YはNHであり、ZはCHである。
【0021】
式(IA)の化合物の別の実施態様において、aおよびcは二重結合であり、bは単結合である。別の実施態様において、aおよびcは二重結合であり、bは単結合であり、XおよびYはNであり、ZはCHである。
【0022】
式(IA)の化合物の別の実施態様において、Rは水素またはC1−4アルキル(たとえばRはメチル)である。
【0023】
式(IA)の化合物の別の実施態様において、QはCHであり、Rは場合により置換されたフェニルである。フェニル基の適当な置換基は、ハロ、−OH、−CN、−C1−10アルキルまたは−O−C1−10アルキルである。
【0024】
式(IA)の化合物の別の実施態様において、Rは場合により置換されたフェニルである。フェニル基の適当な置換基は、ハロ、−OH、−CN、−C1−10アルキルまたは−O−C1−10アルキルである。
【0025】
具体的実施態様において、本発明は以下のような実施例1から10の本発明の化合物を目的とする。
1−ベンジル−6’−(3−フルオロフェニル)−1’,2’,3’,4’−テトラヒドロスピロ[ピペリジン−4,7’−ピロロ[3,4−b]ピリジン]−5’(6’H)−オン、
トランス−5R,7S−1−ベンジル−6’−(3−フルオロフェニル)−2−メチル−1’,2’,3’,4’−テトラヒドロスピロ[ピペリジン−4,7’−ピロロ[3,4−b]ピリジン]−5’(6’H)−オン、
1−ベンジル−5’−(3−フルオロフェニル)−1’H−スピロ[ピペリジン−4,6’−ピロロ[3,4−b]ピロール]−4’(5’H)−オン、
トランス−5R,7S−6−(3−フルオロフェニル)−1’−(3−イソプロポキシベンジル)−2−イソプロピル−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オン、
1’−ベンジル−6−[4−フルオロ−4’−(メチルスルホニル)ビフェニル]−2−イル]−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オン、
トランス−(5R,7S)−1’−ベンジル−6−(3−フルオロフェニル)−2−イソプロピル−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オン、
トランス−(5R,7S)−6−(3−フルオロフェニル)−1’−(3−イソプロポキシベンジル)−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オン、
トランス−(5R,7S)−2−エチル−6−(3−フルオロフェニル)−1’−(3−イソプロポキシベンジル−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オン、
トランス−(5R,7S)−2−tert−ブチル−6−(3−フルオロフェニル)−1’−(3−イソプロポキシベンジル)−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オン、および、
1’−(シクロブチルメチル)−6−[4−フルオロ−4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−2−イル]スピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オン、ならびに、医薬的に許容されるこれらの塩。
【0026】
本発明はまた、式(I)および(IA)の実施態様のいずれかの化合物を治療有効量で投与することによってアルツハイマー病のようなβ−セクレターゼ酵素が関与する哺乳類の疾患を治療する方法を目的とする。
【0027】
本発明はまた、式(I)および(IA)の実施態様の化合物または医薬的に許容されるこれらの塩のいずれかを治療有効量で医薬的に許容される担体と共に含む医薬組成物を目的とする。
【0028】
本発明はさらに、式(I)および(IA)の化合物または医薬的に許容されるこれの塩のいずれかを医薬的に許容される担体に組合せる段階を含むヒトおよび動物のβ−セクレターゼ酵素活性を阻害する医薬または組成物の製造方法を目的とする。
【0029】
1つの実施態様において、本発明は、式(I)および(IA)の実施態様のいずれかの化合物を治療有効量で投与することによってBACE1酵素活性を阻害する方法を目的とする。
【0030】
別の実施態様において、本発明は、式(I)および(IA)の実施態様のいずれかの化合物を治療有効量で投与することによってBACE2酵素活性を阻害する方法を目的とする。
【0031】
単独でまたは別の置換基の一部としてこの文中に使用した“アルキル”という用語は、指定した数の炭素原子を有している直鎖状または分枝状の飽和炭化水素ラジカルを意味する(たとえば、C1−10アルキルは、1から10個の炭素原子を有しているアルキル基を意味する)。本発明に使用するための適当なアルキル基は1から6個の炭素原子を有しているC1−6アルキル基である。代表的なアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどを含む。
【0032】
たとえば、“−Cアルキル−C6−12アリール”という用語中の“Cアルキル”という用語は、結合を表す。
【0033】
単独でまたは別の置換基の一部としてこの文中に使用した“アルケニル”という用語は、単一の炭素−炭素二重結合を有しており指定した数の炭素原子を有している直鎖状または分枝状の炭化水素ラジカルを意味する(たとえば、C2−10アルケニルは、2から10個の炭素原子を有しているアルケニル基を意味する)。本発明に使用するための適当なアルケニル基は2から6個の炭素原子を有しているC2−6アルケニル基である。代表的なアルケニル基はエテニルおよびプロペニルを含む。
【0034】
単独でまたは別の置換基の一部としてこの文中に使用した“アルキニル”という用語は、単一の炭素−炭素三重結合を有しており指定した数の炭素原子を有している直鎖状または分枝状の炭化水素ラジカルを意味する(たとえば、C2−10アルキニルは、2から10個の炭素原子を有しているアルキニル基を意味する)。本発明に使用するための適当なアルキニル基は2から6個の炭素原子を有しているC2−6アルキニル基である。代表的なアルケニル基はエチニルおよびプロピニルを含む。
【0035】
単独でまたは別の置換基の一部としてこの文中に使用した“シクロアルキル”という用語は、指定した数の炭素原子を有している飽和環状炭化水素ラジカルを意味する(たとえば、C3−12シクロアルキルは3から12個の炭素原子を有しているシクルアルキル基を意味する)。この文中に使用したシクロアルキルという用語は、単環式、二環式および三環式の飽和炭素環ならびにスピロ融合環系のような架橋および融合した環形態の炭素環を含む。
【0036】
本発明に使用するための適当なシクロアルキル基は、3から8個の炭素原子を有している単環式C3−8シクロアルキル基である。代表的な単環式シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。代表的な架橋シクロアルキル基はアダマンチルおよびノルボルニルを含む。代表的な融合シクロアルキル基はデカヒドロナフタレンを含む。
【0037】
単独でまたは別の置換基の一部としてこの文中に使用した“シクロアルケニル”という用語は、単一のC−C二重結合を有しており指定した数の炭素原子を有している環状炭化水素ラジカルを意味する(たとえば、C3−12シクロアルケニルは3から12個の炭素原子を有しているシクロアルケニル基を意味する)。この文中に使用したシクロアルケニルという用語は、単環式、二環式および三環式の飽和炭素環ならびにスピロ融合環系のような架橋および融合した環形態の炭素環を含む。本発明に使用するための適当なシクロアルケニル基は、3から8個の炭素原子を有している単環式C3−8シクロアルケニル基である。代表的な単環式シクロアルケニル基は、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニルなどを含む。
【0038】
単独でまたは別の置換基の一部としてこの文中に使用した“複素環式”という用語は、1つ以上の環炭素原子がヘテロ原子(NまたはOのような)で置換された上記に定義のシクロアルキル基を意味する。本発明に使用するための適当な非芳香族複素環基はピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピラゾリジニルおよびイミダゾリジニルを含む。いくつかの実施態様において、本発明に使用するための複素環基は4から8個の環原子および単一の窒素もしくは酸素ヘテロ原子を有している。
【0039】
この文中に定義した複素環基が置換されているとき、置換基は、置換を許容する原子価を有している複素環基の環炭素原子または環ヘテロ原子(すなわち、窒素、酸素またはイオウ)に結合し得る。同様に、複素環基が置換基としてこの文中に定義されているとき、付着点は付着を許容する原子価を有している複素環基の環炭素原子または環ヘテロ原子(すなわち、窒素、酸素またはイオウ)に存在し得る。
【0040】
単独でまたは別の置換基の一部としてこの文中に使用した“アリール”という用語は、指定した数の炭素原子を有している芳香族または環状ラジカルを意味する(たとえば、C6−10アリールは6から10個の炭素原子を有しているアリール基を意味する)。“アリール”という用語は多環系(融合環系のような)および単環系を含み、分子の一部が芳香族で一部が非芳香族である多環系を含む。本発明に使用するための適当な単環式アリール基はフェニルである。適当な融合環アリール基は、ナフチル、テトラヒドロナフチルおよびインダニルを含む。
【0041】
“ハロ”または“ハロゲン”という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを含む。
【0042】
単独でまたは別の置換基の一部としてこの文中に使用した“ヘテロアリール”という用語は、少なくとも1個の環ヘテロ原子(O、NまたはS)を有している芳香族環状基を意味する。“ヘテロアリール”という用語は多環系および単環系を含む。代表的なヘテロアリール基は5から12個の環原子を有している。具体的な実施態様では本発明に有用なヘテロアリール基は、5または6個の環原子を有している。代表的なヘテロアリール基は、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、テトラゾリル、フラニル、イミダゾリル、インダゾリル、トリアジニル、ピラニル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、インジニルおよびベンズオキサゾリルを含む。
【0043】
この文中に定義したヘテロアリール基が置換されているとき、置換基は、置換を許容する原子価を有しているヘテロアリール基の環炭素原子または環ヘテロ原子(すなわち、窒素、酸素またはイオウ)に結合し得る。同様に、ヘテロアリール基が置換基としてこの文中に定義されているとき、付着点は付着を許容する原子価を有しているヘテロアリール基の環炭素原子または環ヘテロ原子(すなわち、窒素、酸素またはイオウ)に存在し得る。
【0044】
この文中に使用した“ベータ−セクレターゼ”または“β−セクレターゼ”という用語は、文献でときどき“BACE”、“BACE1”(参照:たとえばVassarら,1999,Science 286:735−741)または“BACE2”(参照:たとえばFarzanら,2000,PNAS 97:9712−9717)として知られる酵素を表す。BACE1は501アミノ酸の膜結合アスパラギン酸プロテアーゼである。BACE1はβ−セクレターゼの既知の機能的特性および特徴をすべて有している。Asp−1またはメマプシン−1とも呼ばれるBACE2は膜結合アスパラギン酸プロテアーゼのBACEファミリーの第二の構成員である。BACE1とBACE2の違いのより詳細な検討については、Roggo,Current Topics in Medicinal Chemistry,2002,2:359−370を参照するとよい。
【0045】
本発明の化合物はBACE1およびBACE2の双方の酵素の阻害剤である。
【0046】
本発明の化合物は少なくとも1つの非対称中心を有している。分子上の様々な置換基の種類次第では追加の非対称中心が存在し得る。
【0047】
非対称中心をもつ化合物は鏡像異性体(光学異性体)、ジアステレオマー(立体配置異性体)または双方を生成し、混合物形態および精製もしくは部分精製化合物の形態の可能な鏡像異性体およびジアステレオマーのすべてが本発明の範囲内に含まれることとする。本発明は式(I)および(IA)の化合物のこのような異性形態をすべて含意する。
【0048】
この文中に記載した化合物は1つ以上の二重結合を含有でき、従ってシス/トランス異性体ならびに他の立体配置異性体を生成し得る。本発明はこのような可能な異性体およびこのような異性体の混合物をすべて含む。
【0049】
上記の式(I)および(IA)はいくつかの位置の確定立体化学を伴うことなく示されている。本発明は式(I)および(IA)のすべての立体異性体および医薬的に許容されるそれらの塩を含む。
【0050】
鏡像異性的またはジアステレオ異性的に富化された化合物の別々の合成またはそれらのクロマトグラフィー分離はこの文中に開示した方法を適宜修正して当業界で公知の手順で行うことができる。それらの絶対的立体化学は結晶質生成物または必要ならば既知の絶対的立体配置の非対称中心を含有している試薬で誘導体化される結晶質中間体のx線結晶学によって決定できる。
【0051】
所望の場合、化合物のラセミ混合物を分離し、個々の鏡像異性体またはジアステレオマーとして単離してもよい。分離は、化合物のラセミ混合物を鏡像異性的に純粋な化合物にカップリングさせてジアステレオマー混合物を形成し、次いで分別結晶化またはクロマトグラフィーのような標準方法で個々のジアステレオマーに分離するような当業界で公知の方法によって行うことができる。カップリング反応はしばしば、鏡像異性的に純粋な酸または塩基を使用する塩の形成である。次に付加されたキラル残基の開裂によってジアステレオマー誘導体を純粋鏡像異性体に変換し得る。化合物のラセミ混合物はまた、キラル固定相を使用するクロマトグラフィー方法によって直接的に分離できる。この方法は当業界で公知である。
【0052】
あるいは、光学的に純粋な出発材料または既知の立体配置の試薬を使用する立体選択的合成によって当業界で公知の方法で化合物のいずれか一方の鏡像異性体またはジアステレオマーを合成してもよい。
【0053】
本発明の化合物は以下の反応スキームに従って製造できる。スキーム中の可変要素は上記の定義通りであるかまたは入手容易な出発材料および試薬を使用し慣用の合成手順から誘導される。また、詳細には言及しないが有機合成分野の平均的な業者に自明の変種を使用することも可能である。
【0054】
本発明はまた、本発明の化合物の製造中間体として有用な化合物の合成方法を提供する。
【0055】
【化4】

【0056】
1A.5から1A.10型の実施例をスキーム1Aに示す。適当なN−保護ピペリジノンを出発材料とし、様々なアミンとのストレッカー反応で1A.1型のアダクトが得られる。マロニルクロリドと反応させ、次いで塩基媒介環化を行って1A.3型とし、HClで脱カルボキシルして1A.4型の基幹中間体を得る。1A.4型の中間体をさらに適当なブロモアミノプロパンと反応させると1A.5型(P=Bn)の実施例(P=Bn)または中間体が得られる。1A.5を脱保護して1A.6型(R’=H)の中間体にできる。あるいは、1A.6をアルキル化して実施例1A.7を得ることができる。あるいは、1A.4をアミノアセタールと反応させ次いでトシル酸で処理して1A.8型の実施例(P=Bn)または中間体にできる。1A.8を脱保護して中間体1A.9とし次いで選択的RQ基でアルキル化すると1A.10型の実施例が得られる。
【0057】
【化5】

【0058】
スキーム1Bは1B.6型の実施例を製造するために使用される一般方法を図示する。中間体1B.3(国際特許出願WO 2007/11833に記載されている)を出発材料として3つの方法の1つを使用し得る。方法Aは1,2−アミノアルコールによる処理次いで酸化および環化による1B.4−Aの合成を含む。1B.4−Aを脱保護して中間体1B.5とし、アルキル化して1B.6型の実施例を得る。方法BはAと同様であるが、置換段階でアミノアセタールの使用を含み、これは環化を促進して、1B.4−Aに構造的に同様の1B.4−Bを生成させる。上記同様の処理によって最後の1B.6型の実施例が得られる。方法Cは1B.3を使用し様々なアルファ−ブロモケトンを用いるアルキル化反応によって中間体1B.4−Cを得る。これも構造的には1B.4−Aによって表される。同様の処理によって1B.4−Cから実施例1B.5および1B.6が得られる。
【0059】
【化6】

【0060】
スキーム1Cは1C.3型の実施例の合成を図示する。1A.5型の中間体(スキーム1A)を出発材料とし、DDQまたは同等の酸化剤で酸化してIC.1型の中間体二環式ピリジンとする。1C.2を脱保護し、最後に上記のようにアルキル化してIC.3を得る。
【0061】
スキーム2Aは2A.3、2A.4および2A.5型のオルトビフェニル実施例の合成を示す。所望のビフェニルの導入点が異なる3つの方法の1つを使用してこの構造型に含まれる類似体を製造できる。1−ベンジル−2−メチルピペリジン−4−オン(製造方法はM.−J.Blanco−Piladoらによって国際特許出願WO2004/094380に記載されている)を出発材料とする方法Aは、最初にo−ハロアニリンと共にストレッカー反応させて2A.1−Aとし次いでSuzukiカップリングおよび閉環によって2A.3とする。ベンジルをPd/CおよびHで除去すると2A.4が得られる。アルキル化によってさらに精製すると2A.5型の実施例が得られる。方法Bは、最初にo−ビフェニルアニリンを使用するストレッカー反応で2A.2−Bを生成し、次いで上記同様に閉環し官能基処理する。方法Cは、2A.1−Aを出発材料とし、最初に閉環し、次いで所望どおりにピペリジン修飾し、最後にSuzukiカップリングを行って2A.5型の別の実施例を与える。
【0062】
【化7】

【0063】
“実質的に純粋な”という用語は、単離された材料が当業界で公知の分析技術によって検定したときに少なくとも90%純粋であることを意味する。1つの実施態様では単離材料が少なくとも95%純粋である。別の実施態様では単離材料が少なくとも99%純粋である。
【0064】
“医薬的に許容される塩”という用語は、無機または有機の塩基および無機または有機の酸を含む医薬的に許容される無毒性塩基または酸から製造された塩を表す。本発明の化合物は、化合物の遊離塩基形に存在する酸官能基の個数次第で一塩、二塩または三塩であり得る。無機塩基から誘導された遊離塩基および酸は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などを含む。固体形態の塩は2つ以上の結晶構造で存在でき、また水和物形態でもよい。医薬的に許容される無毒性有機塩基から誘導された塩は、第一級、第二級および第三級アミンの塩、天然産生置換アミンを含む置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレン−ジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどを含む。本発明の化合物が塩基性であるとき、塩は無機および有機の酸を含む医薬的に許容される無毒性酸から製造され得る。このような酸は、酢酸、トリフルオロ酢酸、ベンゼスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコ酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などを含む。
【0065】
本発明は、この文中に開示した式(I)または(IA)の化合物をβ−セクレターゼ酵素活性の阻害剤またはβ−部位アミロイド前駆タンパク質開裂酵素(“BACE”)の阻害剤として使用することを目的としており、このような阻害を要する哺乳動物などの患者または対象に化合物を治療有効量で投与することを含む。この明細書において“β−セクレターゼ酵素”、“β−部位アミロイド前駆タンパク質開裂酵素”および“BACE”という用語は互換的に使用されている。ヒト以外にも、様々な他の哺乳類を本発明の方法に従って治療できる。
【0066】
本発明の化合物は、アルツハイマー病の治療、軽減、管理または危険低下に効用を有している。例えば、化合物は、アルツハイマー型の認知症の予防、ならびに、アルツハイマー型の認知症の初期、中期または後期の治療に有用であろう。化合物はまた、アミロイド前駆タンパク質(APPとも呼ばれる)の異常開裂によって媒介される疾患、ならびに、β−セクレターゼの阻害によって治療または予防し得る他の状態の治療、軽減、管理または危険低下に有用であろう。このような状態は、軽度の認識減退、トリソミー21(ダウン症候群)、脳アミロイド血管障害、退行性認知症、オランダ型アミロイド症を伴う遺伝性脳出血(HCHWA−D)、クロイツフェルト・ヤコブ病、プリオン異常症、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺、頭部外傷、卒中、膵炎、封入体性筋炎、他の末梢アミロイド症、糖尿病およびアテローム性動脈硬化症を含む。
【0067】
本発明の化合物の投与対象または患者は、一般にはβ−セクレターゼ酵素活性を阻害することが必要なヒトの男性または女性であるが、β−セクレターゼ酵素活性の阻害または上記に揚げた障害の治療が望まれるイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、サル、チンパンジーや他の類人猿または霊長類のような他の哺乳類を包含する。
【0068】
本発明の化合物は、本発明の化合物が効用を有している疾患または状態を治療するために、薬剤の併用が一方の薬剤の単独使用よりも安全で効果的である場合には1種以上の他の薬剤と併用され得る。さらに、本発明の化合物は、本発明の化合物の副作用または毒性を治療、予防、管理、軽減または危険低下する1種以上の他の薬剤と併用され得る。このような他の薬剤はそれらの常用の経路および量で本発明の化合物と同時または順次に投与され得る。従って本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて1種以上の他の有効成分を含有する医薬組成物を含む。組合せは単位剤形の組合せ製品の一部もしくはキットとして投与されてもよく、または、1種以上の追加薬剤を治療計画の一部として別個の剤形で投与する治療プロトコルで投与されてもよい。
【0069】
単位用量またはキット形態の本発明化合物と他の薬剤との組合せの例は、抗アルツハイマー薬、例えば他のベータ−セクレターゼ阻害剤またはガンマ−セクレターゼ阻害剤;グリシン輸送体阻害剤、タウリン酸化阻害剤;Aβオリゴマー形成のブロッカー;p25/CDK5阻害剤;HMG−CoAレダクターゼ阻害剤;ピオグリタゾンおよびロシグリタゾンのようなPPARガンマアゴニスト;NK1/NK3受容体アンタゴニスト;イブプロフェンのようなNSAID類;ビタミンE;抗アミロイドヒト化モノクローナル抗体のような抗アミロイド抗体;COX−2阻害剤;(R)−フルルビプロフェンのような抗炎症化合物;CB−1受容体アンタゴニストまたはCB−1受容体逆アゴニスト;ドキシサイクリンおよびリファンピシンのような抗生物質;メマンチンおよびネラメキサンのようなN−メチル−D−アスパルテート(NMDA)受容体アンタゴニスト;NR2Bアンタゴニスト;アンドロゲン受容体モジュレーター;ガランタミン、リバスチグミン、ドネペジルおよびタクリンのようなアセチルコリンエステラーゼ阻害剤;mGluR5モジュレーター;イブタモレン、メシル酸イブタモレンおよびカプロモレリンのような成長ホルモン分泌促進物質;ヒスタミンH3アンタゴニスト;AMPAアゴニスト;PDE IV阻害剤;GABA逆アゴニスト;GABAα5受容体リガンド;GABA受容体リガンド;カリウムチャンネルブロッカー;ニューロン性ニコチンアゴニスト;リトナビルのようなP−450阻害剤;または、受容体または酵素に作用し本発明の化合物の有効性、安全性、利便性を向上させるかまたは望まれない副作用もしくは毒性を低下させる他の薬剤との組合せを含む。上記に列挙した組合せは単なる代表例であり限定的なものではない。
【0070】
この文中に使用した“組成物”という用語は、特定した成分を所定の量または割合で含む製品、ならびに、特定した量の特定した成分の組合せから直接または間接に得られる製品を含むこととする。医薬組成物に関するこの用語は、1種以上の有効成分と不活性成分を含む任意担体とを含む製品、ならびに、いずれか2種以上の成分の組合せ、錯化もしくは凝集または1種以上の成分の解離または1種以上の成分の他のタイプの反応もしくは相互作用の結果として直接または間接に得られる製品を含むこととする。
【0071】
本発明の化合物から成る有効化合物は、疾患の進行または状態に所望の効果を生じるために十分な量で医薬組成物中に含まれる。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と医薬的に許容される担体とを混合することによって調製されたいかなる組成物をも包含する。
【0072】
担体は、投与に望ましい製剤の形態次第で多様な形態、例えば、経口または非経口(静脈内を含む)形態を有し得る。従って本発明の医薬組成物は、カプセル、カシェ剤または錠剤のようなおのおのが所定量の有効成分を含有する経口投与に適した個別単位として提供できる。さらに本発明の組成物は、粉末、顆粒、溶液、水性液体中の懸濁液、非水性液体、水中油型エマルションまたは油中水型液体エマルションとして提供できる。上記に示した常用の剤形に加えて本発明の化合物はまた、調節放出手段および/またはデリバリーデバイスによって投与され得る。
【0073】
経口使用予定の医薬組成物は医薬組成物の製造業界で公知のいずれかの方法に従って調製でき、このような組成物は、医薬的にエレガントで服用し易い製剤を提供するために甘味料、着香料、着色料および保存料から成るグループから選択された1種以上の補助剤を含有し得る。錠剤は、錠剤製造に適した医薬的に許容される無毒性賦形剤と混合された本発明の化合物を含有し得る。これらの賦形剤の例は、不活性希釈剤例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム、造粒および崩壊剤例えばトウモロコシデンプンまたはアルギン酸、結合剤例えばデンプン、ゼラチンまたはアラビアガム、滑沢剤例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクを含む。錠剤は剤皮なしでもよく、または、胃腸管での崩壊および吸収を遅らせて長期間持続作用を与えるために公知技術によって剤皮をかけてもよい。
【0074】
本発明の組成物を含有する錠剤は、場合により1種以上の補助成分またはアジュバントと共に圧縮または成形によって調製され得る。圧縮錠剤は、場合により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性剤または分散剤と混合した粉末または顆粒のような自由流動形態の本発明の化合物を適当な機械で圧縮することによって製造され得る。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末状化合物の混合物を適当な機械で成形することによって製造され得る。いくつかの実施態様において、各錠剤は約0.1mgから約500mgの有効成分を含有しており、カシェ剤またはカプセルのおのおのは約0.1mgから約500mgの本発明の化合物を含有している。
【0075】
経口使用するための組成物はまた、本発明の化合物を例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンのような不活性固体希釈剤と混合した硬質ゼラチンカプセル、または、本発明の化合物を水または油性媒体例えば落花生油、液体パラフィンもしくはオリーブ油と混合した軟質ゼラチンカプセルとして提供され得る。
【0076】
他の医薬組成物は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤に混合された有効成分を含有する水性懸濁液を含む。さらに、落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココヤシ油のような植物油または液体パラフィンのような鉱油に本発明の化合物を懸濁させることによって油性懸濁液を配合してもよい。油性懸濁液はまた様々な賦形剤を含有し得る。本発明の医薬組成物はまた、水中油型エマルションの形態でもよく、これらはさらに甘味料および着香料のような賦形剤を含有し得る。
【0077】
医薬組成物は、水性または油性の注射用無菌懸濁液の形態でもよく、または、このような注射用無菌溶液または分散液を用時調製する無菌粉末の形態でもよい。どの場合にも、最終注射用形態が無菌であること、および、実際的に注射容易な流体であることが必要である。医薬組成物は製造および保管の条件下で安定でなければならないし、また、細菌類および真菌類のような微生物の汚染作用から防御されなければならない。
【0078】
本発明の医薬組成物は、例えばエアゾール、クリーム、軟膏、ローション、散布用粉末などのような表在使用に適した形態にもできる。さらに組成物は経皮デバイスの使用に適した形態にもできる。これらの配合物は慣用の処理方法によって調製され得る。一例として、クリームまたは軟膏は、約5重量%から約10重量%の本発明の化合物を親水性材料および水に混合し所望の稠度をもつクリームまたは軟膏とすることによって調製される。
【0079】
本発明の医薬組成物はまた直腸投与に適した形態にもでき、この場合には担体が固体である。適当な担体はカカオ脂および当業界で常用の他の材料を含む。
【0080】
“医薬的に許容される”という用語は、担体、希釈剤または賦形剤が配合物の他の成分に適合性でなければならないこと、および、そのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0081】
化合物“の投与”または“を投与する”という用語は、本発明の化合物を治療に有効な形態および治療に有効な量で治療を要する個体の体内に導入できる形態で提供することを意味すると理解されたい。治療に有効な形態は非限定的に、錠剤、カプセル、シロップ、懸濁液などの経口剤形、IV、IMまたはIPなどの注射用剤形、クリーム、ゼリー、粉末または貼付薬などの経皮剤形、バッカル剤形、吸入粉末、スプレー、懸濁液など、および、直腸座薬剤を含む。
【0082】
“有効量”または“治療有効量”という用語は、組織、系、動物またはヒト体内で研究者、獣医、内科医または他の臨床医が求める生物応答または医薬応答を誘発する主題化合物の量を意味する。
【0083】
この文中に使用した“治療”または“治療する”という用語は、本発明の化合物の投与を意味しており、(1)疾患の病状または総体症状を経験または発現している動物の疾患の阻害(すなわち、病状および/または総体症状の以後の進行の停止)、または、(2)疾患の病状または総体症状を経験または発現している動物の疾患の軽減(すなわち、病状および/または総体症状の退行)を含む。“管理する”という用語は、管理されている状態の予防、治療、根治、軽減またはその他の重篤度の低下を意味する。
【0084】
本発明の化合物を含有する組成物は、単位剤形で提供されるのが便利であり、製薬業界で公知のいずれかの方法によって調製され得る。“単位剤形”という用語は、有効成分および不活性成分のすべてが1つの適当な系に統合された単一用量を意味しており、患者または患者への薬剤投与者は、全用量を収容した単一の容器または包装を開くことができ、2つ以上の容器または包装から取出した成分を混ぜ合せる必要がない。単位剤形の典型例は経口投与用の錠剤もしくはカプセル、注射用の単一用量バイアル、または直腸投与用の座薬剤である。ここに挙げた単位剤形は限定的なものではなく、単位剤形の典型例の単なる代表である。
【0085】
本発明の化合物を含有する組成物が、有効成分または不活性成分、担体、希釈剤などの2種以上の成分を患者または患者への薬剤投与者に実際の剤形の調製方法を指示する使用説明書と共に内包するキットとして提供されるのも便利である。このようなキットは、必要なすべての材料および成分を内包しているか、または、患者もしくは患者への薬剤投与者が独自に入手しなければならない材料または成分を使用もしくは製造するための説明書を含み得る。
【0086】
アルツハイマー病または本発明の化合物が処方される他の疾患を治療、軽減、管理または危険低下するとき、一般には本発明の化合物を動物体重1kgあたり約0.1mgから約100mgの1日用量で投与すると十分な結果が得られる。例えば化合物の1日用量を一回で投与してもよくもしくは分割用量で1日2回から6回投与してもよくまたは持続放出形態で投与してもよい。合計1日用量は約1.0mgから約2000mg(例えば、体重に対して約0.1mgから約20mg/kg)である。70kgの成人の場合、合計1日用量は一般に約7mgから約1,400mgであろう。この用量・用法は最適な治療応答が得られるように調整し得る。化合物は1日あたり1から4回、例えば1日あたり1回または2回の用法で投与され得る。
【0087】
単一剤形を調製するために担体材料と組合せる本発明の化合物の量は、治療される宿主および個々の投与モードに従って変更されるであろう。例えば、ヒトに経口投与する予定の配合物は、適正かつ好都合な量の担体材料に配合された約0.005mgから約2.5gの本発明の化合物を含有するのが便利であろう。単位剤形は一般には約0.005mgから約1000mg、典型的には0.005mg、0.01mg、0.05mg、0.25mg、1mg、5mg、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mgまたは1000mgの本発明の化合物を含有し、1日あたり1回、2回または3回投与される。
【0088】
しかしながら、個々の患者に対する特定の用量レベルおよび投薬頻度は変更でき、使用される特定化合物の活性、該化合物の代謝安定性および作用期間、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与モードおよび投与時間、排泄速度、併用薬剤、個々の状態の重篤度、治療される宿主を含む様々な要因に左右されるであろう。
【0089】
本発明による化合物のβ−セクレターゼ酵素活性阻害剤としての効用は、当業界で公知の方法によって証明され得る。酵素阻害は以下のようにして測定する。
【0090】
ECLアッセイ:均質エンドポイント電気化学発光(ECL)アッセイは、ビオチニル化BACE基質を使用して行う。基質のKmは100μMよりも大きく、基質の溶解限度が理由で測定できない。典型的な反応は、約0.1nMの酵素、0.25μMの基質およびバッファ(50mMのNaOAc,pH4.5、0.1mg/mlのBSA、0.2%のCHAPS、15mMのEDTAおよび1mMのデフェロキサミン)を合計100μlの反応容量中に含有する。反応を30分間進行させ次いで25μLの1Mのトリス−HCl,pH8.0を加えて停止させる。得られた酵素産物は、産物のC−末端残基を特異的に認識するルテニル化抗体の添加によって検定する。ストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズを溶液に添加し、サンプルをM−384(Igen Inc.,Gaithersburg,MD)分析にかける。これらの条件下で、BACE1によってプロセスされた基質は10%未満である。これらの試験に使用した酵素はバキュロウイルス発現系で産生された可溶性の(膜貫通ドメインおよび細胞質伸長が除去された)ヒトタンパク質である。化合物の阻害力価を測定するために、100μMを初期値として3倍系列希釈で12の阻害剤濃度を調製する。DMSO中の阻害剤溶液を反応混合物に含有させる(DMSO最終濃度は10%)。全部の実験は室温で上述の標準反応条件を使用して行う。化合物のIC50を決定するために4パラメーター等式を曲線適合に使用する。解離定数の再現誤差は典型的には2倍未満である。
【0091】
特に以下の実施例の化合物は上記アッセイにおいて一般的に約1nMから200μMのIC50でベータ−セクレターゼ酵素の阻害活性を有していた。このような結果は、ベータ−セクレターゼ酵素活性の阻害剤として使用したときの化合物の比活性の指標となる。
【0092】
本発明の化合物を製造するためのいくつかの方法をこの文中のスキームおよび実施例に示す。出発材料は当業界で公知の手順に従ってまたはこの文中に説明したようにして製造する。以下の実施例は本発明をより十分に理解するために与えたものである。これらの実施例は単なる例示であり、本発明を制限すると解釈されてはならない。
【0093】
中間体1A.1−1:1−ベンジル−4−[(3−フルオロフェニル)アミノ]ピペリジン−4−カルボニトリル
【0094】
【化8】

【0095】
酢酸(132ml)中の1−ベンジル−4−ピペリジノン(25.0g,132mmol)の0℃溶液に、3−フルオロアニリン(12.7ml,132mmol)およびトリメチルシリルシアニド(17.6ml,132mmol)を滴下した。反応混合物を室温に加温し、18時間撹拌した。反応混合物を氷(200g)と水酸化アンモニウム(200ml)との混合物に注ぎ、生成物をジクロロメタン(4×500ml)で抽出した。集めた有機抽出物をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮すると、褐色固体が得られた。粗材料をジエチルエーテルから再結晶させると、1−ベンジル−4−[(3−フルオロフェニル)アミノ]ピペリジン−4−カルボニトリルが淡褐色固体として得られた(67%)。LCMS(M+H)310.1。H NMR(400MHz,DMSO)δ7.33(m,4H),7.25(m,1H),7.19(q,J=7.8Hz,1H),6.66(dd,J=8.2,2.0Hz,1H),6.59(dt,J=12.2,2.2Hz,1H),6.50(td,J=8.5,2.2Hz,1H),6.42(s,1H),3.52(s,2H),2.76(d,J=11.2Hz,2H),2.30(t,J=10.9Hz,4H),1.82(t,J=10.5Hz,2H)。
【0096】
中間体1A.2−1:エチル 3−[(1−ベンジル−4−シアノピペリジン−4−イル)(3−フルオロフェニル)アミノ]−3−オキソプロパノエート
【0097】
【化9】

【0098】
ジクロロメタン(150ml)中の1−ベンジル−4−[(3−フルオロフェニル)アミノ]ピペリジン−4−カルボニトリル(中間体1A.1−1、9.0g,29.1mmol)の溶液に、エチニルマロニルクロリド(4.9ml,37.8mmol)および2,6−ルチジン(5.1ml,43.6mmol)を添加した。反応混合物を室温で2.5時間撹拌した。追加量のエチニルマロニルクロリド(1.1ml,8.7mmol)を添加し、反応混合物を30分間撹拌した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、水およびブラインで洗浄した。有機部分を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮すると、所望のエステルであるエチル 3−[(1−ベンジル−4−シアノピペリジン−4−イル)(3−フルオロフェニル)アミノ]−3−オキソプロパノエートとその酸である3−[(1−ベンジル−4−シアノピペリジン−4−イル)(3−フルオロフェニル)アミノ]−3−オキソプロパン酸との1:1混合物が得られた(定量分析)。
【0099】
中間体1A.3−1:エチル 4−アミノ−8−ベンジル−1−(3−フルオロフェニル)−2−オキソ−1,8−ジアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−3−カルボキシレート
【0100】
【化10】

【0101】
メタノール(20ml)中のエステル エチル 3−[(1−ベンジル−4−シアノピペリジン−4−イル)(3−フルオロフェニル)アミノ]−3−オキソプロパノエート(およびその酸3−[(1−ベンジル−4−シアノピペリジン−4−イル)(3−フルオロフェニル)アミノ]−3−オキソプロパン酸)(中間体1A.2−1、14.9g,35.2mmol)の溶液に、ナトリウムメトキシド(2.3g,42.2mmol)を添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を濃縮すると、エチルおよびメチル 4−アミノ−8−ベンジル−1−(3−フルオロフェニル)−2−オキソ−1,8−ジアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−3−カルボキシレート(96%)の混合物(2.5:1)が得られた。LCMS(M+H)424.1。
【0102】
中間体1A.4−1:8−ベンジル−1−(3−フルオロフェニル)−1,8−ジアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン
【0103】
【化11】

【0104】
6NのHCl中のエチルおよびメチル 4−アミノ−8−ベンジル−1−(3−フルオロフェニル)−2−オキソ−1,8−ジアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−3−カルボキシレート(中間体1A.3−1、14.3g,33.7mmol)の混合物に還流コンデンサーを配備し、80℃で18時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、濃NaOH水溶液を添加してpH10に調整した。水溶液をEtOAcで繰り返し抽出した。集めた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮すると、粗生成物が赤色フォームとして得られた。材料をジクロロメタンから再結晶させると、8−ベンジル−1−(3−フルオロフェニル)−1,8−ジアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオンが淡紅色固体として得られた(49%)。LCMS(M+H)353.1。H NMR(400MHz,CDOD)δ7.40(s,5H),7.26(s,2H),7.10(m,1H),6.97(m,2H),4.09(s,2H),3.72(s,2H),3.10(s,2H),2.70(m,1.5H),2.05(m,4.5H)。
【0105】
中間体1A.1−2:トランス−1−ベンジル−4−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−メチルピペリジン−4−カルボニトリル
【0106】
【化12】

【0107】
酢酸(200ml)中の1−ベンジル−2−メチルピペリジン−4−オン(アミンとしてベンジルアミン,40.0g,197mmolを使用しM.−J.Blanco−Piladoらによって国際特許出願WO2004/094380に記載された製造方法と同様にして製造)の0℃溶液に、3−フルオロアニリン(18.9ml,197mmol)およびトリメチルシリルシアニド(26.2ml,197mmol)を滴下した。反応混合物を室温に加温し、18時間撹拌した。次に反応混合物を70℃で24時間加熱してシス異性体をエピマー化して所望のトランス異性体とした。反応混合物を氷と水酸化アンモニウムとの混合物で中和し、生成物をジクロロメタン(2×)で抽出した。集めた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮すると、粗生成物が有意な純度の粘性赤色油として得られた。粗材料の一部分を冷エタノールから再結晶させ、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ,20%EtOAc/ヘキサン、1%のジイソプロピルエチルアミン含有)によって精製すると、トランス−1−ベンジル−4−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−メチルピペリジン−4−カルボニトリル(13%)が得られた。LCMS(M+H)324.1。H NMR(400MHz,CDOD)δ7.34−7.21(m,5H),7.15(q,J=7.8Hz,1H),6.65(dd,J=8.2,2.2Hz,1H),6.56(dt,J=11.8,2.2Hz,1H),6.47(td,J=8.5,2.3Hz,1H),4.11(d,J=13.2Hz,1H),3.16(d,J=13.2Hz,1H),2.65(m,2H),2.33(m,3H),1.98(m,2H),1.25(d,J=6.2Hz,3H)。
【0108】
中間体1A.2−2:エチル 3−[トランス−1−ベンジル−4−シアノ−2−メチルピペリジン−4−イル)(3−フルオロフェニル)アミノ]−3−オキソプロパノエート
【0109】
【化13】

【0110】
エチル 3−[(トランス−1−ベンジル−4−シアノ−2−メチルピペリジン−4−イル)(3−フルオロフェニル)アミノ]−3−オキソプロパノエートは、トランス−1−ベンジル−4−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−メチルピペリジン−4−カルボニトリル(中間体1A.1−2、1.6g,4.9mmol)およびエチルマロニルクロリド(0.8ml,5.9mmol)から中間体1A.2−1と同様にして製造した。LCMS(M+H)438.3。
【0111】
中間体1A.3−2:エチル トランス−4−アミノ−8−ベンジル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,8−ジアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−3−カルボキシレート
【0112】
【化14】

【0113】
エチル トランス−4−アミノ−8−ベンジル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,8−ジアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−3−カルボキシレートは、エチル 3−[(トランス−1−ベンジル−4−シアノ−2−メチルピペリジン−4−イル)(3−フルオロフェニル)アミノ]−3−オキソプロパノエート(中間体1A.2−2、1.8g,4.1mmol)から中間体1A.3−1と同様にして製造した。LCMS(M+H)438.1。
【0114】
中間体1A.4−2:トランス−8−ベンジル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,8−ジアザジアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン
【0115】
【化15】

【0116】
トランス−8−ベンジル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,8−ジアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオンは、エチル トランス−4−アミノ−8−ベンジル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,8−ジアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−3−カルボキシレート(中間体1A.3−2、1.8g,4.1mmol)から中間体1A.4−1と同様にして製造した。LCMS(M+H)467.0。
【0117】
中間体1B.4−A:ベンジル トランス−6−(3−フルオロフェニル)−2−イソプロピル−2’−メチル−5−オキソ−5,6−ジヒドロ−1’H−スピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−1’−カルボキシレート
【0118】
【化16】

【0119】
段階A:アミノアルコールによるアミノ化
DL−2−アミノ−3−メチル−1−ブタノール(3.8g,36.5mmol)中にベンジル トランス−4−アミノ−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−8−カルボキシレート(国際特許出願WO2007/11833に既に記載されている中間体1B.3、1.0g,2.4mmol)を含む非希釈(neat)溶液を115℃で18時間撹拌した。撹拌を促進するためにトルエン(2ml)を添加し、反応混合物を115℃でさらに24時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、EtOAc/ヘキサンで希釈した。得られた沈殿物を濾過によって単離すると、ベンジル トランス−1−(3−フルオロフェニル)−4−{[1−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピル]アミノ}−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−8−カルボキシレート(83%)が得られた。
【0120】
段階B:アルデヒドへの酸化
1:1のジクロロメタン/DMSO(10ml)中のベンジル トランス−1−(3−フルオロフェニル)−4−{[1−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピル]アミノ}−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−8−カルボキシレート(0.90mg,1.8mmol)およびトリエチルアミン(1.3ml,9.1mmol)の0℃溶液に、三酸化イオウ−ピリジンのDMSO溶液(1.4g,9.1mmol)を滴下した。反応混合物を0℃で1時間撹拌した。反応混合物にブラインを添加し、生成物をEtOAc(2×)で抽出した。集めた有機抽出物を1Nのチオ硫酸ナトリウム(2×)およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。油状の粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,0−100%のEtOAc/ヘキサン)によって精製すると、双方ともが閉環生成物であるベンジル トランス−6−(3−フルオロフェニル)−2−イソプロピル−2’−メチル−5−オキソ−5,6−ジヒドロ−1’H−スピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−1’−カルボキシレート(38%)およびアルデヒド ベンジル トランス−1(3−フルオロフェニル)−4−[(1−ホルミル−2−メチルプロピル)アミノ]−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−8−カルボキシレート(19%)が得られた。
【0121】
段階C:閉環
トルエン中にベンジル トランス−1−(3−フルオロフェニル)−4−[(1−ホルミル−2−メチルプロピル)アミノ]−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−8−カルボキシレート(167mg,0.35mmol)を5Aのモレキュラーシーブと共に含む溶液を70℃で数時間撹拌したが反応は生じなかった。反応混合物にp−トルエンスルホン酸一水和物(3.3mg,0.02mmol)を添加した。反応混合物を50℃で18時間撹拌した。反応温度を65℃に上げて8時間維持し、55℃に下げて18時間維持し、次いで70℃に上げてさらに2時間維持した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウムを添加し、生成物をジクロロメタン(2×)で抽出した。集めた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮すると、ベンジル トランス−6−(3−フルオロフェニル)−2−イソプロピル−2’−メチル−5−オキソ−5,6−ジヒドロ−1’H−スピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−1’−カルボキシレート(100%)が得られた。LCMS(M+H)477.2。
【0122】
中間体1B.4−C:ベンジル トランス−2−エチル−6−(3−フルオロフェニル)−2’−メチル−5−オキソ−5,6−ジヒドロ−1’H−スピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン1−1’−カルボキシレート
【0123】
【化17】

【0124】
DMF(1.5ml)中のベンジル トランス−4−アミノ−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−2−オキソ−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−8−カルボキシレート(国際特許出願WO 2007/11833に既に記載されている中間体1B.3、100mg,0.24mmol)の溶液に、1−ブロモ−2−ブタノン(25μl,0.24mmol)を添加した。反応混合物を90℃で18時間撹拌した。反応混合物を逆相クロマトグラフィーによって精製すると、ベンジル トランス−2−エチル−6−(3−フルオロフェニル)−2’−メチル−5−オキソ−5,6−ジヒドロ−1’H−スピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−1’−カルボキシレートが得られた。LCMS(M+H)463.2。
【0125】
中間体2A.1−A:トランス−1−ベンジル−4−(4’−ブロモ−4−フルオロ−1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−メチルピペリジン−4−カルボニトリル
【0126】
【化18】

【0127】
酢酸(20ml)中の1−ベンジル−2−メチルピペリジン−4−オン(ベンジルアミンをアミンとして使用しM.−J.Blanco−Piladoらによって国際特許出願WO2004/094380に記載された製造方法と同様にして製造、4.30g,21.2mmol)の0℃溶液に、2−ブロモ−4−フルオロアニリン(4.02g,21.2mmol)およびトリメチルシリルシアニド(2.82ml,21.2mmol)を添加した。反応混合物を室温に加温し、次いで70℃に加熱した。48時間後、追加量のトリメチルシリルシアニド(2.82ml,21.2mmol)を反応混合物に添加した。反応混合物を70℃に加熱し、7日間撹拌した。反応混合物を低温水酸化アンモニウムおよび砕氷に注ぎ、pH10に調整した。生成物をジクロロメタン(3×50ml)で抽出し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。油状の粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,0−20%のEtOAc/ヘキサン)によって精製すると、シス−およびトランス−1−ベンジル−4−(4’−ブロモ−4−フルオロ−1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−メチルピペリジン−4−カルボニトリルが双方とも得られた(トランス異性体の収率16%)。LCMS(M+H)401.9。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.39(dd,J=8.8,6.0Hz,1H),7.26(m,5H),6.84(dd,J=10.8,2.8Hz,1H),6.44(td,J=8.2,2.4Hz,1H),4.48(s,1H),4.09(d,J=14.4Hz,1H),3.08(d,J=13.6Hz,1H),2.64(m,1H),2.55(m,1H),2.32(dt,J=14.0,2.8Hz,1H),2.27(dt,J=11.5,2.9Hz,1H),2.08(m,3H),1.22(d,J=6.4Hz,3H)。
【0128】
中間体2A.2−A:トランス−1−ベンジル−4−[4−フルオロ−4’−(メチルスルホニル−1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−メチルピペリジン−4−カルボニトリル
【0129】
【化19】

【0130】
DMF/水(80/20 v/v,0.6ml)中のトランス−1−ベンジル−4−(4’−ブロモ−4−フルオロ−1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−メチルピペリジン−4−カルボニトリル(中間体2A.1−A、100mg,0.25mmol)の溶液に、窒素雰囲気下で4−(メタンスルホニル)フェニルホウ酸(74.7mg,0.37mmol)、トリス(4,6−ジメチル−3−スルファナトフェニル)ホスフィン三ナトリウム塩水和物(24.4mg,0.04mmol)、酢酸パラジウム(II)(2.8mg,0.01mmol)およびジイソプロピルアミン(0.1ml,0.75mmol)を添加した。反応混合物を短時間渦流させて触媒を溶解し、40℃で18時間撹拌した。反応混合物を逆相クロマトグラフィーによって精製すると、トランス−1−ベンジル−4−[4−フルオロ−4’−(メチルスルホニルl)−1,1’−ビフェニル−2−イル]−2−メチルピペリジン−4−カルボニトリルが得られた。LCMS(M+H)478.0。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.96(d,J=8.0Hz,2H),7.47(d,J=8.0Hz,2H),7.32(m,3H),7.25(m,2H),7.04(dd,J=8.4,6.4Hz,1H),6.85(dd,J=11.2,2.4Hz,1H),6.62(td,J=8.2,2.3Hz,1H),3.97(d,J=13.6Hz,1H),3.68(s,1H),3.23(d,J=13.2Hz,1H),3.11(s,3H),2.62(dt,J=12.3,3.1Hz,1H),2.24(m,3H),2.10(dt,J=12.9,3.7Hz,1H),1.99(m,2H),1.20(d,J=5.6Hz,3H)。
【0131】
中間体2A.1−B:4−フルオロ−4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−2−アミン
【0132】
【化20】

【0133】
DMF/水(80/20 v/v,65.8ml)中の2−ブロモ−4−フルオロアニリン(5.0g,26.3mmol)の溶液に、窒素雰囲気下で4−(メタンスルホニル)フェニルホウ酸(7.9g,39.5mmol)、トリス(4,6−ジメチル−3−スルファナトフェニル)ホスフィン三ナトリウム塩水和物(2.6g,4.0mmol)、酢酸パラジウム(II)(0.3g,1.3mmol)およびジイソプロピルアミン(11.3ml,79.0mmol)を添加した。反応混合物を50℃で2.5時間撹拌した。反応混合物をEtOAcで希釈し、3MのLiCl(3×)、水およびブラインで洗浄した。有機部分を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮すると、4−フルオロ−4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−2−アミンが黄色固体として得られた(95%)。LCMS(M+H)266.1。H NMR(400MHz,CDOD)δ8.02(m,2H),7.65(m,2H),7.05(dd,J=8.6,6.2Hz,1H),6.57−6.47(m,2H),3.86(s,2H),3.11(s,3H)。
【0134】
中間体2A.2−B:トランス−1−ベンジル−4−[4−フルオロ−4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−2−イル]−2−メチルピペリジン−4−カルボニトリル
【0135】
【化21】

【0136】
1,2−ジクロロエタン(15.4ml)中の1−ベンジル−2−メチルピペリジン−4−オン(ベンジルアミンをアミンとして使用しM.−J.Blanco−Piladoらによって国際特許出願WO2004/094380に記載された製造方法と同様にして製造、625mg,3.1mmol)および4−フルオロ−4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−2−アミン(中間体2A.1−B、1.14g,4.3mmol)の0℃溶液に、四塩化チタン(0.1mlの1,2−ジクロロエタン中に0.2ml)を滴下した。反応混合物を室温に加温し、10分間撹拌し、次いで60℃に加熱した。5分後、トリメチルシリルシアニド(0.5ml,3.7mmol)を反応混合物に添加した。反応混合物を60℃にして撹拌を1.5時間継続し、次いで水酸化アンモニウム水溶液および氷に注いで反応停止させた。生成物をEtOAcで抽出し、抽出物を飽和炭酸水素ナトリウムおよびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。粗材料をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,0−70%のEtOAc/ヘキサン)によって精製すると、トランス−1−ベンジル−4−[4−フルオロ−4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−2−イル]−2−メチルピペリジン−4−カルボニトリル(13%)が得られた。LCMS(M+H)478.0。H NMR(400MHz,CDOD)δ7.90(dd,J=6.6,1.8Hz,2H),7.49(dd,J=6.6,1.8Hz,2H),7.40−7.30(m,5H),7.13(dd,J=8.4,6.4Hz,1H),6.90(dd,J=12.0,2.4Hz,1H),6.67(td,J=8.3,1.9Hz,1H),4.65(s,1H),3.96(d,J=13.6Hz,1H),3.49(d,J=13.6Hz,1H),3.16(s,3H),2.64(dt,J=12.3,3.1Hz,1H),2.41(m,3H),2.20(td,J=12.5,1.9Hz,1H),1.87(dd,J=14.0,11.6Hz,1H),1.24(m,3H)。
【実施例1】
【0137】
1−ベンジル−6’−(3−フルオロフェニル)−1’,2’,3’,4’−テトラヒドロスピロ[ピペリジン−4,7’−ピロロ[3,4−b]ピリジン]−5’(6’H)−オン
【0138】
【化22】

【0139】
イソプロパノール(4.3ml)中の8−ベンジル−1−(3−フルオロフェニル)−1,8−ジアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン(中間体1A.4−1、300mg,0.85mmol)の溶液に、3−ブロモプロピルアミン臭化水素酸塩(205mg,0.94mmol)および2,6−ルチジン(0.22ml,1.87mmol)を添加した。反応容器を密閉し、80℃で3日間加熱した。反応混合物を真空下で濃縮し、ジクロロメタンと1NのNaOHとに分配した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。粗材料をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,0−5%のメタノール(10%のNHOH/ジクロロメタン)によって精製すると、1−ベンジル−6’−(3−フルオロフェニル)−1’,2’,3’,4’−テトラヒドロスピロ[ピペリジン−4,7’−ピロロ[3,4−b]ピリジン]−5’(6’H)−オンが得られた。LCMS(M+H)392.1。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.28(m,6H),7.03(td,J=8.2,2.0Hz,1H),6.97(d,J=7.9Hz,1H),6.92(dt,J=9.9,2.1Hz,1H),3.46(s,2H),3.33(m,2H),2.52(t,J=6.1Hz,4H),2.33(t,J=6.2Hz,2H),2.06(quint,J=6.9Hz,2H),1.84(m,4H)。
【実施例2】
【0140】
トランス−5R,7S−1−ベンジル−6’−(3−フルオロフェニル)−2−メチル−1’,2’,3’,4’−テトラヒドロスピロ[ピペリジン−4,7’−ピロロ[3,4−b]ピリジン]−5’(6’H)−オン
【0141】
【化23】

【0142】
段階A:アミン縮合
無水エタノール(2.75ml)中にトランス−8−ベンジル−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,8−ジアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン(中間体1A.4−2、300mg,0.82mmol)をモレキュラーシーブと共に含む溶液に、窒素雰囲気下で3−クロロプロピルアミン塩酸塩(138mg,1.1mmol)を添加した。反応混合物を短時間渦流させ、115℃で20分間撹拌した。反応温度を80℃に下げ、18時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、閉環に影響を与えるために2,6−ルチジン(238μl,2.0mmol)を添加した。反応混合物を室温で8時間撹拌したが、反応は全く生じなかった。反応混合物を炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、生成物をEtOAc(3×)で抽出した。集めた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,0−100%のEtOAc/ヘキサン)によって精製し、EtOAcから再結晶させると、トランス−8−ベンジル−4−[(3−クロロプロピル)アミノ]−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,8−ジアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−2−オン(19%)が得られた。LCMS(M+H)442.1。
【0143】
段階B:閉環
トランス−8−ベンジル−4−[(3−クロロプロピル)アミノ]−1−(3−フルオロフェニル)−7−メチル−1,8−ジアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−2−オン(65mg,0.15mmol)のアセトン溶液に、ヨウ化カリウム(73mg,0.44mmol)および炭酸カリウム(41mg,0.29mmol)を添加した。反応混合物を65℃で2日間撹拌し、次いでマイクロ波反応装置で75℃で20分間加熱して反応を完了させた。反応混合物を水で希釈し、生成物をジクロロメタン(2×)で抽出した。集めた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮した。粗材料を逆相クロマトグラフィーによって精製すると、トランス−5R,7S−1−ベンジル−6’−(3−フルオロフェニル)−2−メチル−1’,2’,3’,4’−テトラヒドロスピロ[ピペリジン−4,7’−ピロロ[3,4−b]ピリジン]−5’(6’H)−オンが得られた。LCMS(M+H)406.1。H NMR(400MHz,CDOD)δ7.48(t,J=8.5Hz,1.5H),7.38(t,J=8.5Hz,1.5H),7.21(m,3H),6.97(m,3H),4.29(s,2H),3.37(s,2H),2.90(m,1H),2.46(m,2H),2.33(d,J=7.6Hz,3H),2.20(m,3H),1.81(m,2H),1.53(d,J=5.6Hz,3H)。
【実施例3】
【0144】
1−ベンジル−5’−(3−フルオロフェニル)−1’H−スピロ[ピペリジン−4,6’−ピロロ[3,4−b]ピロール]−4(5’H)−オン
【0145】
【化24】

【0146】
メタノール(0.1ml)中の8−ベンジル−1−(3−フルオロフェニル)−1,8−ジアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン(中間体1A.4−1、100mg,0.29mmol)の溶液に、2,2−ジメトキシエチルアミン(2ml)を添加した。反応混合物を100℃で出発材料が消耗するまで撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、残渣をトルエンに溶解した。反応混合物を触媒量のp−トルエンスルホン酸で処理し、110℃で18時間撹拌した。粗反応混合物を逆相クロマトグラフィーによって精製すると、1−ベンジル−5’−(3−フルオロフェニル)−1’H−スピロ[ピペリジン−4,6’−ピロロ[3,4−b]ピロール]−4’(5’H)−オンが得られた。LCMS(M+H)376.1。H NMR(400MHz,CDOD)δ7.50(m,7H),7.23(td,J=8.4,2.1Hz,2H),7.07(m,3H),6.43(d,J=2.8Hz,1H),4.41(s,2H),3.64(d,J=13.6Hz,2H),3.43(t,J=12.6Hz,3H),2.28(td,J=14.1,4.0Hz,2H),2.02(d,J=15.6Hz,2H)。
【実施例4】
【0147】
トランス−5R,7S−6−(3−フルオロフェニル)−1’−(3−イソプロポキシベンジル)−2−イソプロピル−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オン
【0148】
【化25】

【0149】
脱保護段階:ベンジル トランス−6−(3−フルオロフェニル)−2−イソプロピル−2’−メチル−5−オキソ−5,6−ジヒドロ−1’H−スピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−1’−カルボキシレート(中間体1B.4−A,485mg、1.02mmol)のエタノール溶液に、水酸化パラジウムを添加した。反応混合物に水素ガス(1気圧)を充填し、50℃で30分間撹拌した。反応混合物をセライトで濾過し、濾液を真空下で濃縮すると、トランス−6−(3−フルオロフェニル)−2−イソプロピル−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]5(6H)−オン(99%)が得られた。LCMS(M+H)343.1。
【0150】
アルキル化段階:DMSO(1ml)中のトランス−6−(3−フルオロフェニル)−2−イソプロピル−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]5(6H)−オン(60mg,0.18mmol)、炭酸カリウム(121mg,0.88mmol)およびヨウ化ナトリウム(1.3mg,0.0088mmol)を充填したフラスコを65℃に加熱した。反応混合物に1−(クロロメチル)−3−イソプロポキシベンゼン(31mg,0.17mmol)を添加し、溶液を65℃で18時間撹拌した。反応混合物を逆相クロマトグラフィーによって精製すると、トランス−5R,7S−6−(3−フルオロフェニル)−1’−(3−イソプロポキシベンジル)−2−イソプロピル−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オンが得られた。LCMS(M+H)491.1。H NMR(400MHz,CDOD)δ7.55(s,0.5H),7.32−7.15(m,5.5H),7.02(s,2.5H),6.75(s,1.5H),4.61(sept,J=6.0Hz,1H),4.33(m,2H),3.82(m,1H),3.51(s,0.5H),2.94(quint,J=6.8Hz,2H),2.72−2.29(m,5H),1.82(s,1.5H),1.59(s,1.5H),1.29(d,J=6.8Hz,12H)。
【実施例5】
【0151】
1’−ベンジル−6−[4−フルオロ−4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−2−イル]−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オン
【0152】
【化26】

【0153】
段階A:イミノヒダントインの形成
1,2−ジクロロエタン(4ml)中の1−ベンジル−4−[4−フルオロ−4’−(メチルスルホニル)−1,1’−ビフェニル−2−イル]−2−メチルピペリジン−4−カルボニトリル(中間体2A.2−B、200mg,0.42mmol)の0℃溶液に、窒素雰囲気下でクロロスルホニルイソシアナート(37μl,0.42mmol)を滴下した。反応混合物を室温に加温して8時間撹拌した。反応混合物を再度0℃に冷却し、追加量のクロロスルホニルイソシアナート(37μl,0.42mmol)を滴下した。反応混合物を室温に加温し、18時間撹拌した。反応混合物に、メタノール(100μl)、水(40μl)およびジイソプロピルエチルアミン(75μl,0.42mmol)を添加した。反応混合物を65℃で2時間撹拌し、次いで真空下で濃縮した。残渣をEtOAcに溶解し、水およびブラインで洗浄した。有機部分を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮し、逆相クロマトグラフィーによって精製すると、4−アミノ−8−ベンジル−1−[4−フルオロ−4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−2−イル]−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−2−オンが得られた。LCMS(M+H)521.0。
【0154】
段階B:アミノ化
2,2−ジメトキシエチルアミン(2.0ml)中の4−アミノ−8−ベンジル−1−[4−フルオロ−4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−2−イル]−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−2−オン(50mg,0.10mmol)の溶液を密封し、85℃で18時間撹拌した。温度を110℃に上げ、反応混合物をさらに16時間撹拌した。反応混合物をEtOAcで希釈し、ブラインで洗浄した。有機部分を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮すると、8−ベンジル−4−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]−1−[4−フルオロ−4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−2−イル]−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−2−オンが得られた。LCMS(M+H)609.0。
【0155】
段階C:閉環
トルエン(2.0ml)中の8−ベンジル−4−[(2,2−ジメトキシエチル)アミノ]−1−[4−フルオロ−4’−(メチルスルホニルl)ビフェニル−2−イル]−7−メチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デセ−3−エン−2−オン(50mg,0.08mmol)の溶液に、p−トルエンスルホン酸(20mg,0.01mmol)を添加した。反応混合物を密封し、110℃で撹拌した。反応混合物を逆相クロマトグラフィーによって精製し、炭酸水素ナトリウムで中和した。生成物をEtOAcで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空下で濃縮すると、標題化合物がシスおよびトランスの1’−ベンジル−6−[4−フルオロ−4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−2−イル]−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オンの混合物として得られた。LCMS(M+H)544.9。H NMR(400MHz,CDOD)δ7.98(m,1H),7.89(m,1H),7.66(m,3H),7.55(m,1H),7.46(m,1H),7.40(dt,J=8.8,2.8Hz,0.5H),7.32(dt,J=9.2,2.8Hz,0.5H),7.22(m,5H),6.91(m,0.5H),6.79(m,0.5H),4.10(m,1H),3.12(s,1.5H),3.06(s,1.5H),3.02(s,1H),2.81(m,1H),2.71−2.40(m,2H),2.04−1.85(m,1H),1.78−1.57(m,3H),1.32(s,3H)。
【0156】
表1の以下の実施例は、中間体の欄に指定した中間体を使用し上記方法のひとつによって製造した。
【0157】
【表1】


【0158】
塩基性基または酸性基を有している表1の化合物は遊離塩基として図示および命名した。反応条件および精製条件次第では塩基性基を有している表1の様々な化合物は遊離塩基形態でまたは塩として(HCl塩のような)または遊離塩基および塩の双方の形態で単離された。
【0159】
本文中では以下の略号を使用する:
Me:メチル
Et:エチル
Bu:ブチル
t−Bu:tert−ブチル
i−Bu:イソ−ブチル
Pr:プロピル
i−Pr:イソプロピル
Ar:アリール
Ph:フェニル
Bn:ベンジル
TMS:トリメチルシリル
DMSO:ジメチルスルホキシド
DMF:N,N’−ジメチルホルムアミド
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
Ts:トシル
Ac:アセチル
aq:水性
rt:室温
h:時
min:分。
【0160】
本発明をいくつかの特定実施態様に基づいて記載および図示したが、本発明の要旨および範囲を逸脱することなく手順およびプロトコルの様々な応用、変更、修正、置換、削除または追加が可能であることは当業者に理解されよう。従って、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって定義されるものであり、このような特許請求の範囲は妥当な限り広義に解釈されることとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化27】

[式中、
Wは、XおよびX’原子でスピロ環基に融合した5または6員環の芳香環式または非芳香環式の環を表し、W環炭素原子の1つまたは2つが場合により窒素環原子で置換され、W環炭素原子の1つまたは2つが場合により−C1−10アルキル基で置換されており、
Xは、
(1)N、
(2)C、または、
(3)CH
から成るグループから選択されており、
X’は、
(1)C、または、
(2)CH
から成るグループから選択されており、
は、
(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C2−10アルケニル、
(4)−C2−10アルキニル、
(5)−C3−12シクロアルルキル、
(6)4から8個の環原子を有しており1つの環原子が窒素および酸素から成るグループから選択されたヘテロ原子である非芳香族複素環基、
(7)アリール、および、
(8)ヘテロアリール
から成るグループから選択され、
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環基、アリールまたはヘテロアリールであるR部分は場合により1つ以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)C1−10アルキル、
(e)−C3−12シクロアルキル、
(f)−O−C1−10アルキル、
(g)−C0−6アルキル−アリール、
(h)−C0−6アルキル−ヘテロアリール、
(i)−NC(=O)−NR6A6B
(j)−NC(O)−C1−3アルキル−NR6A6B
(k)−NC(=O)R6A
(l)−NR6A6B、および、
(m)4から8個の環原子を有しており1つの環原子が窒素および酸素から成るグループから選択されたヘテロ原子である非芳香族複素環基、
で置換され、
前記アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環部分は場合により1つ以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)場合により1つ以上のハロで置換された−C1−6アルキル、
(v)−OC1−6アルキル、
(vi)−C2−6アルケニル、
(vii)−SO1−3アルキル、
(viii)−SONR6C6D
(ix)−NR6CSO1−3アルキル、
(x)−CO6C、および、
(xi)−CONR6C6D
で置換されており、
Qは結合またはC1−6アルキルであり、
前記アルキルは場合により1つ以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル、
(e)−C3−12シクロアルキル、
(f)−O−C1−10アルキル、
(g)アリール、および、
(h)ヘテロアリール
で置換されており、
は、
(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C2−10アルケニル、
(4)−C2−10アルキニル、
(5)−C3−12シクロアルキル、
(6)−C3−12シクロアルケニル、
(7)アリール、および、
(8)ヘテロアリール
から成るグループから選択され、
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリールまたはヘテロアリールであるR部分は場合により1つ以上の
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−CN、
(d)−C1−10アルキル、
(e)−C2−10アルケニル
(f)−C3−12シクロアルキル、
(g)−O−C3−12シクロアルキル、
(h)−O−C1−10アルキル、
(i)4から8個の環原子を有しており1つの環原子が窒素および酸素から成るグループから選択されたヘテロ原子である−O−C3−12非芳香族複素環基、
(j)アリール、
(k)ヘテロアリール、
(l)−NR6A6B
で置換され、
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリール部分は場合により1つ以上の
(i)ハロ、
(ii)−OH、
(iii)−CN、
(iv)場合により1つ以上のハロで置換された−C1−6アルキル、
(v)−OC1−6アルキル、
(vi)−NR6C6D
(vii)−C2−6アルケニル、
(viii)−SO1−3アルキル、
(ix)−SONR6C6D、または、
(x)−CONR6C6D
で置換されており、Qが結合ならばRは水素でなければならないという条件付きであり、
は、
(1)水素、
(2)−C1−10アルキル、
(3)−C3−4アルケニル、および、
(4)アリール
から成るグループから選択され、
前記アルキル、アルケニルまたはアリールであるR基は場合により1つ以上の以下の(a)から(h)
(a)ハロ、
(b)−OH、
(c)−C1−6アルキル、
(d)−CN、
(e)−O−C1−10アルキル、
(f)−NR、ここにRおよびRは、
(i)水素、および、
(ii)−C1−6アルキル
から成るグループから選択され、
(g)−S(O)−C1−6アルキル、ここにmは0、1または2であり、
(h)−C(=O)−R
ここにRは、
(i)水素、
(ii)OH、
(iii)−C1−6アルキル、
(iv)−OC1−6アルキル、および、
(v)アリール
から成るグループから選択され;
で置換されており、
6A、R6B、R6CおよびR6Dは、
(1)水素、
(2)−C1−6アルキル、
(3)−C3−7シクロアルキル、
(4)−C0−6アルキル−アリール、
(5)−C0−6アルキル−ヘテロアル、
(6)ハロ、および、
(7)4から8個の環原子を有しており1つの環原子が窒素および酸素から成るグループから選択されたヘテロ原子である非芳香族複素環基
から成るグループから選択され、
前記アルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであるR6AまたはR6B部分は場合により1つ以上の
(a)ハロ、
(b)−C1−6アルキル、
(c)−O−C1−6アルキル、および、
(d)−NO
で置換されている]の化合物および医薬的に許容されるその塩。
【請求項2】
QがCHであり、Rが場合により置換されたフェニルである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が場合により置換されたフェニルである請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式(I)の化合物が式(IA)
【化28】

[式中、
結合a、bおよびcのおのおのは単結合または二重結合であり、bおよびcの双方が二重結合であることはできないという条件付きであり、
Zは、
(1)−CH−、
(2)−CH−、
(3)−CH=CH−、
(4)−CHCH−、または、
(5)−CHCH
から成るグループから選択され、aが二重結合のときZは−CH−または−CHCHであり、aが単結合のときZは−CH−、−CH=CH−または−CHCH−であるという条件付きであり、
Yは、
(1)N、
(2)NH、
(3)CR5A、および、
(4)CR5A5B
から成るグループから選択され、cが二重結合のときYはCR5AまたはNであり、cが単結合のときYはNHまたはCR5A5Bであるという条件付きであり、
これらのR5AおよびR5Bは、
(a)水素、
(b)−C1−10アルキル、
(c)−C2−10アルケニル、
(d)−C3−12シクロアルキル、
(e)−C0−6アルキル−アリール、および、
(f)−C0−6アルキル−ヘテロアリール
から成るグループから選択され、さらに、XまたはYの少なくとも一方がNまたはNHであるという条件付きであり、
は、
(1)水素、および、
(2)−C1−10アルキル
から成るグループから選択される]の化合物である請求項1に記載の化合物および医薬的に許容されるその塩。
【請求項5】
が水素またはC1−4アルキルである請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
がメチルである請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
QがCHであり、Rが場合により置換されたフェニルである請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
が場合により置換されたフェニルである請求項4に記載の化合物。
【請求項9】
aおよびcは単結合であり、bは二重結合である請求項4から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
XはCであり、YはNHであり、ZはCHCHである請求項4から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
aおよびbは二重結合であり、cは単結合である請求項4から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
XはCであり、YはNHであり、ZはCHである請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
aおよびcは二重結合であり、bは単結合である請求項4から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
XおよびYはNであり、ZはCHである請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
1−ベンジル−6’−(3−フルオロフェニル)−1’,2’,3’,4’−テトラヒドロスピロ[ピペリジン−4,7’−ピロロ[3,4−b]ピリジン]−5’(6’H)−オン、
トランス−5R,7S−1−ベンジル−6’−(3−フルオロフェニル)−2−メチル−1’,2’,3’,4’−テトラヒドロスピロ[ピペリジン−4,7’−ピロロ[3,4−b]ピリジン]−5’(6’H)−オン、
1−ベンジル−5’−(3−フルオロフェニル)−1’H−スピロ[ピペリジン−4,6’−ピロロ[3,4−b]ピロール]−4’(5’H)−オン、
トランス−5R,7S−6−(3−フルオロフェニル)−1’−(3−イソプロポキシベンジル)−2−イソプロピル−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オン、
1’−ベンジル−6−[4−フルオロ−4’−(メチルスルホニル)ビフェニル]−2−イル]−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オン、
トランス−(5R,7S)−1’−ベンジル−6−(3−フルオロフェニル)−2−イソプロピル−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オン、
トランス−(5R,7S)−6−(3−フルオロフェニル)−1’−(3−イソプロポキシベンジル)−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オン、
トランス−(5R,7S)−2−エチル−6−(3−フルオロフェニル)−1’−(3−イソプロポキシベンジル−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オン、
トランス−(5R,7S)−2−tert−ブチル−6−(3−フルオロフェニル)−1’−(3−イソプロポキシベンジル)−2’−メチルスピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オン、および、
1’−(シクロブチルメチル)−6−[4−フルオロ−4’−(メチルスルホニル)ビフェニル−2−イル]スピロ[イミダゾ[1,5−a]イミダゾール−7,4’−ピペリジン]−5(6H)−オンから成るグループから選択される請求項1に記載の化合物および医薬的に許容されるこれらの塩。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物または医薬的に許容されるこれの塩と医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物または医薬的に許容されるこれの塩と医薬的に許容される担体とを含むアルツハイマー病治療用の医薬組成物。
【請求項18】
アルツハイマー病治療用の医薬を製造するための請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物または医薬的に許容されるこれの塩と医薬的に許容される担体との使用。
【請求項19】
請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物または医薬的に許容されるこれの塩を治療有効量で医薬的に許容される担体と共に患者に投与する段階を含む、要治療患者のアルツハイマー病の治療方法。

【公表番号】特表2010−515681(P2010−515681A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544861(P2009−544861)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/026469
【国際公開番号】WO2008/085509
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】