説明

アルツハイマー病用のトランスジェニック動物モデル

【課題】神経変性疾患、特にアルツハイマー病(AD)の処置用の潜在的治療剤を試験するのに有用なアミロイド前駆体タンパク質の遺伝子導入(トランスジェニック)操作に関する動物モデルを提供すること。
【解決手段】Thy−1プロモーターエレメントに機能的に連結したスウェーデン変異を含むヒトAPPポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる組換えDNA構築物を使用して動物モデルを作成することにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性疾患、特にアルツハイマー病(AD)の処置用の潜在的治療剤を試験するのに有用な動物モデルに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の遺伝子導入(トランスジェニック)操作に関する動物モデルに関する。
【背景技術】
【0003】
ADの病理学的機構を表す実験動物モデルの不足は、基礎研究と薬剤開発の両方にとって大きな障害である。このようなモデルに対する1つのアプローチとして、老人性斑などの特徴的な病変、神経原繊維性病理および海馬および皮質のある領域における細胞損失の再現を試みることができる。しかしながら、今のところ、これらの病変がこの病気の原因なのか結果なのかは不明である。モデル作製のための別のアプローチは、この病気を導くことが知られている要因の使用である。近年、遺伝子研究により、50または60代の初期発症家族型ADとは共分離(cosegregate)し、および常染色体優性遺伝パターンに従う、APPの突然変異が明らかになった。3つの別個のミスセンス変異は、APPのコドン717(ポリペプチド中、V717→I{以降、ロンドン変異と呼ぶ}、V717→GおよびV717→Fという変化)に影響を及ぼし、一方、スウェーデンAD系統のAPP遺伝子では、コドン670/671(ポリペプチド中、K670→NおよびM671→Lという変化、以降、スウェーデン変異と呼ぶ)が変化している(APP770に準ずる数字)。これらの変異は、AD患者の脳の斑に沈積したフィラメントの主要成分であるβA4を生むAPPの一部にフランクしている。インビトロの研究では、スウェーデン変異は溶性形態βA4の形成増加を導くのに対し、APP717変異はフィラメント形成を助長する長いβA4変種を高い割合で生じることが示されている。このことは、フィラメント状βA4がインビトロにおいて有毒であるという事実と共に、APP変異がβA4に関する機構を介してADを導き得ることを示唆しているが、その他の機構も排除できない。
【0004】
最近、ヒトAPP cDNAの発現を制御する数種のニューロン特異的プロモーターを用いて、コドン717および670/671に変異のあるAPPを発現するトランスジェニックマウスが作られた。内生APPの量に近い、あるいはその量を超えるタンパク質レベルが得られているが、このトランスジェニックマウスではADの特徴である組織学的変化の全パターンが観察されていない。
【0005】
予想外にも、APP発現構築物を適切に選択することにより、内生APPメッセージの10倍を上回る高レベルのトランスジーンmRNAが得られ、その結果、相対じて高いタンパク質レベルを生むことが分かった。更に、組織学的分析では、かなりのヒトβA4ペプチド沈積物が観察される。また更にもっと重要なことに、ADに関連する病理学的表現型である微小管関連タンパク質tauの過リン酸化も達成している。そのうえ、この沈積物は、コリンエステラーゼに集積的に染まり、これはADにおいて典型的に観察されるコリン作用性繊維の局所歪曲に関連するものである。両方の特徴は、これまでのところ、類似のトランスジェニック動物では報告されていない。この病理は、脳の別の領域での選択的ニューロン損失を伴う。
【発明の開示】
【0006】
従って、本発明の第一の態様では、Thy−1プロモーターエレメントに機能的に連結したスウェーデン変異を含むヒトAPPポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる組換えDNA構築物、ただし、スウェーデン変異がAPPポリペプチドに存在する唯一の変異であるとき、Thy−1プロモーターエレメントは、齧歯類、例えばマウスのThy−1プロモーターエレメントである、を提供する。
【0007】
該プロモーターの制御下で該変異ヒトAPPを発現するトランスジェニックマウスは、AD病理のAPPおよびtau関連特性を合わせることによってGames et al. [Nature 373, 523-527 (1995)]に既に記載されている以外の病理学的表現型を発生することが分かった。更に、このマウスは、ADの特徴である行動変化を表すことが分かり、これも従来のトランスジェニックマウスでは今まで報告されていないことである。
【0008】
AD病理を緊密に反映するこのようなマウス並びにそのトランスジェニック細胞が特に有用な疾病モデルであることは評価される。
【0009】
従って、本発明の別の態様では、AD病理のAPPとtauの両方に関連する特徴、例えば、組織学的特徴や、好ましくはADの特徴である行動変化も示す、ヒト以外のトランスジェニック動物を提供する。
【0010】
好適には、このヒト以外のトランスジェニック動物は、スウェーデン変異または1以上の別の変異、特にロンドン変異と共にスウェーデン変異を含むヒトAPPを発現する。好適には、このトランスジェニック動物はまた、12ヶ月齢前に、好ましくは約6ヶ月齢までにAD病理の特徴を示す。このトランスジェニック動物は、齧歯類、例えば、マウスまたはラットであるのが都合よく、好ましくはマウスである。本発明のこの態様は、ヒト以外のトランスジェニック動物から得られるトランスジェニック細胞を含む。
【0011】
本発明の一般性に対する偏見なしに、トランスジーンがトランスジェニック動物内で発現されるレベル、例えば、トランスジーンmRNAのレベルは、その動物においてAD病理を獲得するのに重要な要因であると思われる。
【0012】
よって、本発明の更なる態様では、1つだけ変異を持つヒトAPPをコードするDNAが、トランスジーンmRNAの量が内生APPメッセージの5倍を上回る、例えば、3から6倍、更には約5から約10倍であるようなレベルで発現される、ヒト以外のトランスジェニック動物細胞、並びに、細胞中で、1つだけ変異を持つヒトAPPをコードするDNAが、トランスジーンmRNAの量が内生メッセージの5倍以上を上回るようなレベルで発現される、ヒト以外のトランスジェニック動物、例えば、マウスまたはラット、好ましくはマウスを提供する。
【0013】
APPポリペプチド中に存在する唯一の変異は、スウェーデン変異またはロンドン変異またはアミノ酸717位でのその他の変異を含むあらゆるAPP変異であってよい。好ましくは、唯一の変異は、スウェーデン変異である。
【0014】
更に、トランスジェニック動物において導入されるβA4の産生に影響する遺伝的病変の数は、その動物においてAD病理を獲得するための別の重要な要因であると思われる。
【0015】
本発明はまた、変異を2つ持つヒトAPPをコードするDNAが、トランスジーンmRNAの量が内生APPメッセージの約2倍を上回る、例えば1.5から3倍であるようなレベルで発現される、ヒト以外のトランスジェニック動物細胞、並びに、細胞中で、ヒトAPPをコードするDNAが、トランスジーンmRNAの量が内生メッセージの約2倍を上回るようなレベルで発現される、ヒト以外のトランスジェニック動物、例えば、マウスまたはラット、好ましくはマウスを提供する。
【0016】
更に本発明は、変異を3つ以上持つヒトAPPをコードするDNAが、トランスジーンmRNAの量が内生APPメッセージの約2倍弱を上回る、例えば約1から2倍であるようなレベルで発現される、ヒト以外のトランスジェニック動物細胞、並びに、細胞中で、ヒトAPPをコードするDNAが、トランスジーンmRNAの量が内生メッセージの2倍弱を上回るようなレベルで発現される、ヒト以外のトランスジェニック動物、例えば、マウスまたはラット、好ましくはマウスを提供する。
【0017】
2つの変異または3つ以上の変異は、2つまたは3つ以上のAPP変異のいかなる組み合わせであってもよい。しかしながら、好ましくは、このような多重変異は、スウェーデン変異およびロンドン変異の組み合わせからなる。
【0018】
ヒトAPPをコードするDNAは、cDNAおよび/またはゲノムDNAからなることもでき、都合のよいのは、cDNAである。
【0019】
より具体的には、本発明は、スウェーデン変異を含むヒトAPPポリペプチドをコードするDNAが、Thy−1プロモーターエレメントの転写制御下で発現される、ヒト以外のトランスジェニック動物細胞、並びに、細胞中で、スウェーデン変異を含むヒトAPPポリペプチドをコードするDNAが、Thy−1プロモーターエレメントの転写制御下で発現される、ヒト以外のトランスジェニック動物、例えば、マウスまたはラット、好ましくはマウス、ただし、スウェーデン変異がAPPポリペプチドに存在する唯一の変異であるとき、Thy−1プロモーターエレメントは、齧歯類、例えばマウスのThy−1プロモーターエレメントである、を提供する。
【0020】
本発明のトランスジェニック動物は、構築物が直接導入されている動物、並びに、その構築物を発現する能力を保持する当該動物の後代を含む。
【0021】
本発明に従い操作した細胞は、既知のトランスフェクション技術によって調製できる。そのDNA配列は、直接遺伝子操作により、またはその細胞の初期発生期に導入することができる。このようにして、トランスジェニック動物から細胞を入手でき、これをインビトロで培養できる。
【0022】
トランスジェニック動物はまた、胚操作などの十分に確立された方法、例えば、胚性幹細胞への遺伝子導入、初期胚のレトロウイルス感染、または前核マイクロインジェクションによっても作製できる。
【0023】
前核マイクロインジェクション技術は好ましい。本発明の組換えDNA構築物から得られる転写単位を動物胚の前核に注入し、得られた初代トランスジェニック体を繁殖させる。
【0024】
子孫で得られた結果は、当分野でよく知られた様々な技術を用いて分析できる。例えば、トランスジーンAPPmRNA発現はRNAブロッティングによって分析し、脳におけるトランスジーンの発現パターンはイン・シツ ハイブリダイゼーションによって測定し、脳におけるAPPの検出はイムノブロッティング技術(ウェスタンブロット分析)を用いて実施でき、その発現効果は組織学および免疫組織学によって研究される。
【0025】
本発明の細胞および動物に基づくモデルは、例えば、神経変性疾患、特にβA4ペプチドが沈積され、および/または微小管関連タンパク質tauが過リン酸化される疾患、より具体的にはADにおける潜在的治療剤としての効果を同定および評価するのに使用できる。特に、このようなモデルは、βA4沈積および/またはtauの過リン酸化を阻止できるような作用物質を検出するためのスクリーニングまたは特性化アッセイに使用することもできる。
【0026】
従って、本発明の更なる態様では、本発明の細胞を標的細胞として用いる、特定症状、特に神経変性疾患、好ましくはADに対する治療剤としての可能性を試験する方法を含む。より具体的には、本発明のヒト以外のトランスジェニック動物にその薬剤を投与するような試験法を含む。更に、本発明は、かかる方法からなる、またはかかる方法を含むスクリーニングまたは特性化アッセイ、並びに、本発明の細胞を含むスクリーニングアッセイキットを含む。
【0027】
細胞系列または動物を用いて潜在的治療剤をスクリーニングする方法は、当分野でよく知られている。本発明の細胞および動物も、同様の方法に使用できる。
【0028】
例えば、組換え細胞を、潜在的治療剤と、また典型的な老人性斑および広汎性斑中のβA4アミロイドを認識する抗体および/またはアルツハイマー脳の神経原繊維錯綜を染色するtau抗体と共にインキュベーションできる。トランスジェニック動物自身を使用する方法では、潜在的治療剤の効果は、動物を屠殺後に様々な検査を実施して測定できる。また、潜在的治療剤の投与後、トランスジェニック動物に行動試験を施して、認識機能を監視することができる。
【0029】
ウェスタンブロット分析を含むβA4およびタンパク質tauの検出技術やそのために使用される抗体もまた十分に報告されている。
【0030】
上記のようなアッセイまたはアッセイキットを用いて同定されている神経変性疾患の処置に使用する化合物もまた、本発明の一部である。
【実施例】
【0031】
下記の実施例により本発明を例示説明する。
【0032】
発現構築
スウェーデン二重変異を持つヒトAPP751cDNAを5'末端で修飾して、最適翻訳開始配列(GCC GCC ATG G)を再構築する。
【0033】
上記配列から始まりヌクレオチド3026(HindIII部位)まで伸びるこのcDNAを、マウスThy−1.2遺伝子を含む8.1kb EcoRIフラグメントを含有するpUC18ベースのベクターのXhoIクローニング部位へ挿入する[Vidal et al. (1990) EMBO J. 9, 833-840]。このベクターを、エクソン3とフランキング介在配列を持つ1.5kb BanI−XhoIフラグメントがユニークXhoI認識部位をコードするリンカー配列と置き換わるように修飾する[Moechars et al. (1996) EMBO J. 15, 1265-1274]。転写単位は、NotI/PvuI消化により解離させる。
【0034】
K. Andrea et al., Neurobiology of Aging, Vol. 17, No. 2, 183-190 (1996)に記載の発現構築物APP14は、600bp BglII/SpeIフラグメントをロンドン変異V717→Iを持つヒトAPP751cDNAの対応するフラグメントと置換することにより、修飾する。転写単位は、NotI消化により解離させる。
【0035】
トランスジェニックマウスの作製
単離した転写単位をB6D2F1×B6D2F1胚の前核に注入して、初代トランスジェニック動物を作製する。
【0036】
ノーザンブロット分析、イン・シツハイブリダイゼーション、ウェスタンブロット分析、組織学および免疫組織学
K. Andrea et al., Neurobiology of Aging, Vol. 17, No. 2, 183-190 (1996)に記載の方法に従い実施する。
【0037】
結果
初代トランスジェニック動物の子は、イン・シツハイブリダイゼーションにより示されているように、脳構造全体においてヒトAPPmRNAを高い量で発現する。測定したトランスジーン誘導タンパク質の量は、内生APP量の5倍ないし10倍を上回る。6ヶ月齢で、これらのマウスは、大脳皮質におけるヒトβA4ペプチドの細胞外沈積と海馬状隆起形成を示す。これらの沈積物は、メテナミン銀透浸、チオフラビンS染色およびコンゴ・レッド複屈折に陽性である。これらは、反応性星状細胞およびジストロフィー性神経突起に囲まれている。更に、斑は、AD患者の脳に見られるような過リン酸化した微小管関連タンパク質tauに特異的な抗血清と免疫反応性であり、このことは、類似のトランスジェニック動物についてはこれまで報告されていなかった。従って、これらのマウスの脳における上記沈積は、AD患者で見られる老人性斑に非常によく似ている。アセチルコリンエステラーゼで染色すると、斑の強力な標識化とコリン作用性繊維網の局所歪曲が観察される。斑は、増大したジストロフィー性神経突起に似た構造においてアセチルコリンエステラーゼ活性を含有する。このコリン作用性神経突起の変性は、ADに関連してよく知られた別の特徴である。更に、斑付近のニューロンの局所変性が海馬CA1などのADにおいて典型的に影響を受ける領域にて観察される。ここで、ニューロン損失は斑負担に反比例して、20%程度に及んだ。
【0038】
本発明のAPPトランスジェニックマウスにおけるtau過リン酸化、コリンエステラーゼ染色およびニューロン損失は、図1に例示する。トランスジェニックマウス脳の矢状遊走切片に対する、tauのリン酸化Ser202およびThr205を認識するtau抗体AT8での斑の染色は、Aおよび高倍率のDに示す。6ヶ月齢(2)および15ヶ月齢(4)および同腹子対照(1、3)のトランスジェニックマウスの脳抽出物のウェスタンブロットは、BおよびCに示す。各ブロットは、リン酸化従属法および非従属法にてそれぞれtauを認識する抗体AT8(B)およびN−tau7(C)で染色した。数字は、マーカータンパク質の分子量kDaを示す。Eは、トランスジェニックマウスにおけるアセチルコリンエステラーゼ染色を示す。斑付近におけるコリン作用性繊維の局所歪曲は、注目できる。CA3領域のAβ沈積物付近における尖塔状ニューロンの損失は、トルイジン・ブルー染色によりFに示す。
【0039】
行動試験
上記のようにして得られたトランスジェニックマウスは、Mega et al. (1996) Neurology 46, 130-135に報告されたようなAD罹病患者で観察される変化に対応する顕著な非認知性行動変化を示す。
【0040】
例えば、Kaesermann (1986) Psychopharmacol. 89, 31-37の修飾法による半囲い昇降台試験(Half-Enclosed Platform test)では、非トランスジェニック同腹子と比べて、半分の開いている部分を避ける動物や、AD患者について報告されている心的動揺、脱抑制および興奮性の指標である診査行動的運動や姿勢の増大、例えば、移動や頭上げが観察された。
【0041】
認知試験
更に、マウスは、顕著な認知障害を示す。
例えば、Morris et al. (1982) Nature 297, 681-683の水迷路では、非トランスジェニック同腹子と比べて、昇降台の前の位置にある環形を横断した動物は顕著に少なく(2.5±0.5対4.4±0.7;p<0.05、2−テイル マン−ホイットニーU試験)、またこれらのマウスが環形を含む四分円の中で過ごした時間の割合も顕著に低かった(20.8±3.8対33.1±3.2;p<0.05、2−テイル マン−ホイットニーU試験)。
【0042】
配列表
(1)一般的情報:
(i)出願人:
(A)名称:ノバルティス・アクチエンゲゼルシャフト
(B)通り:シュバルツバルトアレー215
(C)都市:バーゼル
(E)国:スイス
(F)郵便番号(ZIP): CH-4058
(ii)発明の名称:トランスジェニック動物
(iii)配列の数:1
(iv)コンピューター読解可能形式:
(A)媒介タイプ:フロッピーディスク
(B)コンピューター:IBM PC互換性
(C)オペレーティングシステム: PC-DOS/MS-DOS
(D)ソフトウェア:PatentIn Release #1.0, Version #1.30 (EPO)
(2)配列番号1の情報:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:10塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:二本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:cDNA
(xi)配列の記載:配列番号1:
gccgccatgg 10

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スウェーデン変異がAPPポリペプチドに存在する唯一の変異であるとき、Thy−1プロモーターエレメントは、齧歯類、例えばマウスのThy−1プロモーターエレメントであるという条件で、Thy−1プロモーターエレメントに機能的に連結した、スウェーデン変異を含むヒトAPPポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなる組換えDNA構築物。
【請求項2】
APPポリペプチドが更にロンドン変異を含む、請求の範囲第1項に記載の組換えDNA構築物。
【請求項3】
Thy−1プロモーターエレメントがヒトThy−1プロモーターエレメントである、請求の範囲第1項または第2項に記載の組換えDNA構築物。
【請求項4】
AD病状のAPPとtauの両方に関連する特徴や、好ましくは、ADの行動変化も示す、ヒト以外のトランスジェニック動物およびそれらのトランスジェニック細胞。
【請求項5】
スウェーデン変異のみを含む変異ヒトAPPをコードするDNAが、トランスジーンmRNAの量が内生メッセージの約5倍以上を上回るようなレベルで発現される、ヒト以外のトランスジェニック動物細胞。
【請求項6】
変異を2つ含む変異ヒトAPPをコードするDNAが、トランスジーンmRNAの量が内生メッセージの約2倍を上回るようなレベルで発現される、ヒト以外のトランスジェニック動物細胞。
【請求項7】
2つの変異が、スウェーデン変異およびロンドン変異である、請求の範囲第6項に記載のヒト以外のトランスジェニック動物細胞。
【請求項8】
変異を3つ以上含む変異ヒトAPPをコードするDNAが、トランスジーンmRNAの量が内生メッセージの約2倍以上を上回るようなレベルで発現される、ヒト以外のトランスジェニック動物細胞。
【請求項9】
スウェーデン変異がAPPポリペプチドに存在する唯一の変異であるとき、Thy−1プロモーターエレメントは、齧歯類、例えばマウスのThy−1プロモーターエレメントであるという条件で、スウェーデン変異を含む変異ヒトAPPポリペプチドをコードするDNAが、Thy−1プロモーターエレメントの転写制御下で発現される、ヒト以外のトランスジェニック動物細胞。
【請求項10】
ヒトAPPポリペプチドが更にロンドン変異を含む、請求の範囲第9項に記載のヒト以外のトランスジェニック動物細胞。
【請求項11】
Thy−1プロモーターエレメントがヒトThy−1プロモーターエレメントである、請求の範囲第10項に記載のヒト以外のトランスジェニック動物細胞。
【請求項12】
細胞中で、スウェーデン変異のみを持つヒトAPPをコードするDNAが、トランスジーンmRNAの量が内生メッセージの5倍以上を上回るようなレベルで発現される、ヒト以外のトランスジェニック動物。
【請求項13】
細胞中で、変異を2つ持つヒトAPPをコードするDNAが、トランスジーンmRNAの量が内生メッセージの約2倍を上回るようなレベルで発現される、ヒト以外のトランスジェニック動物。
【請求項14】
2つの変異が、スウェーデン変異およびロンドン変異である、請求の範囲第13項に記載のヒト以外のトランスジェニック動物細胞。
【請求項15】
細胞中で、スウェーデン変異がAPPポリペプチドに存在する唯一の変異であるとき、Thy−1プロモーターエレメントは、齧歯類、例えばマウスのThy−1プロモーターエレメントであるという条件で、スウェーデン変異を含むヒトAPPポリペプチドをコードするDNAが、Thy−1プロモーターエレメントの転写制御下で発現される、ヒト以外のトランスジェニック動物。
【請求項16】
APPポリペプチドが更にロンドン変異を含む、請求の範囲第15項に記載のヒト以外のトランスジェニック動物。
【請求項17】
マウスである、請求の範囲第12項ないし16項に記載のヒト以外のトランスジェニック動物。
【請求項18】
該動物が、請求の範囲第1項に記載の組換えDNA構築物をそのゲノムに組込むことにより作られる、ヒト以外のトランスジェニック動物の製法。
【請求項19】
請求の範囲第1項に記載の組換えDNA構築物から得られた転写単位をヒト以外の動物胚の前核に注入し、そうして得られた初代トランスジェニック動物を繁殖させることを含む、神経変性疾患病状を発症できるヒト以外のトランスジェニック動物の製法。
【請求項20】
請求の範囲第12項ないし17項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物を使用する、または請求の範囲第5項ないし11項に記載の細胞を標的細胞として使用する、特定症状に対する潜在的治療剤の試験法。
【請求項21】
該治療剤を請求の範囲第18項または19項に従い製造したヒト以外のトランスジェニック動物に投与する、請求の範囲第20項に記載の方法。
【請求項22】
該症状が神経変性疾患である、請求の範囲第20項に記載の方法。
【請求項23】
該症状がアルツハイマー病である、請求の範囲第20項に記載の方法。
【請求項24】
薬剤を請求の範囲第12項ないし17項のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物に投与するか、または請求の範囲第5項ないし11項に記載の細胞と接触させ、そして、βA4沈積および/またはtauの過リン酸化を測定する、特定症状に対する潜在的治療剤の試験法。
【請求項25】
請求の範囲第21項ないし24項のいずれか1項に記載の方法からなる、または含む、スクリーニングまたは特性化アッセイ。
【請求項26】
請求の範囲第5項ないし11項のいずれか1項に記載の細胞を含む、スクリーニングアッセイキット。
【請求項27】
請求の範囲第25項または26項に記載のアッセイまたはアッセイキットを用いて同定された、神経変性疾患の処置に使用する化合物。

【公開番号】特開2008−54678(P2008−54678A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219852(P2007−219852)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【分割の表示】特願平10−506589の分割
【原出願日】平成9年7月23日(1997.7.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】