説明

アルテミシニンベースの薬剤と他の化学療法薬の抗癌用組合せ

本発明は、ART、DHAおよびARMからなる群から選択されるアルテミシニンベースの強力な抗マラリア薬と、カンプトテシン誘導体またはPARP−1阻害薬またはDNA挿入剤またはアルキル化剤からなる群から選択されるさらなる化学療法薬との間の組合せに関する。このような組合せは、癌、特にNSCLの種々のモデルにおいて、中程度〜強力な相乗作用を示した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルテミシニン、ジヒドロアルテミシニンおよびアルテメーテルからなる群から選択されるアルテミシニンベースの薬剤と化学療法薬との新規の組合せ、それらを含有する薬学的組成物、ならびに細胞傷害性組成物としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
それらの周知の抗マラリア活性のほかに、アルテミシニンベースの薬剤、例えばアルテミシニン(ART)、ジヒドロアルテミシニン(DHA)、アルテメーテル(ARM)およびアルテスネート(ARS)は、アポトーシスの誘導を介した細胞傷害特性も付与されることが近年報告されている(Singh N.P., et al., Anticancer Res., 2004, 24, 2277; Nam W., et al., Head Neck, 2007, 29, 335)。
【0003】
DHAが何らかの細胞傷害特性を保有する場合でも、細胞傷害性は通常は、相対的に高い薬剤濃度で観察可能である。過去数年に亘って、広範囲の癌細胞に対してDHAそれ自体より強い細胞傷害特性を有するART誘導体が出現したが、これは、種々の癌、例えばヒト肝細胞癌(Hou J., et al., Clin. Cancer Res., 2008, 14, 17, 5519)、白血病(Lu J.J., et al., Canc. Biol. Ther., 2008, 7, 7, 1017)、前立腺癌、非小細胞肺癌(Lu Y.Y., et al., J. Biomed. Sci., 2009, Feb 2, 16:16)、膵臓癌(Chen H., et al., Anti−Cancer Drugs, 2009, 20, 2, 131)および子宮頸癌(Disbrow G.L., et al., Cancer Res., 2005, 65, 23, 10854)の処置のための何らかの可能性を示唆している。
【0004】
いくつかの既知の抗マラリア薬および種々の化学療法薬の組成物は細胞傷害性組合せの改善をもたらし得る、ということが示されている。例えば、ARSおよびチロシンキナーゼ阻害薬 OSI−774は、神経膠芽細胞腫多形細胞系統に及ぼす付加的作用を主に生じ(Efferth T., et al., Biochem. Pharmacol., 2004, 67, 9, 1689);ARSおよびアントラサイクリン系挿入剤ドキソルビシンは、白血病T細胞に及ぼす相乗活性を示し(Efferth T., et al., PLoS One, 2007, 2, 1, e693)、抗CD20抗体リツキシマブは高濃度でARSの細胞傷害作用を高める(Sieber S., et al., Int. J. Oncol., 2009, 35, 1, 149)。最近、ビノレルビンおよびシスプラチンを含有するカクテルの効力を、ARSと組合せた上記パクテルの効力と比較することを目的とした臨床試験が報告された。組合せ療法は、短期間生存率において、あるいは平均生存時間または1年生存率においても如何なる改善も提供せず、したがって、これらの重要な終点に関して単一カクテルレジメンを上回る如何なる利益も実証できなかった(Zhang Z.Y., et al., J. Integrative Med., 2008, 6, , 134)。
【0005】
WO2004/071506は、発癌性ウイルスにより誘導される腫瘍を処置するために、そしてウイルス感染を処置するために、ARTが用いられ得る、と報告した。本発明人等は、ARTとさらなる抗癌薬との組合せが好都合に用いられ得る、ということも報告した。しかしながら、このような組合せ処置に関する生物学的データは、主張された相乗活性を支持すると報告されていない。
【0006】
別の局面では、DHAおよびゲムシタビンは、HepG2およびHep3B肝癌細胞の増殖の抑制に際して、控えめな1.2倍増大を示した(Hou J., et al., Clin. Cancer Res., 2008, 14, 17, 5519)。
【0007】
それらの開示のほかに、いくつかの相反するデータも文献中に存在した。DHAと周知のHDAC阻害薬酪酸ナトリウムとの間の相乗作用が報告されている(Singh N.P., et al., Anticancer Res., 2005, 25, 6B, 4325)。鉄輸送タンパク質として、細胞中への鉄透過を増強するよう作用する、12μMのホロトランスフェリンの存在下で、これらの実験すべてが実行された、ということは注目に値する。この現象は、ペルオキシ部分からのラジカル生成を増強することによりDHA反応性を改善することが知られている(Disbrow G.L., et al., Cancer Res., 2005, 65, 23, 10854)。しかしながら、DHAおよびホロトランスフェリン単独が、MOLT−4リンパ芽球腫細胞に及ぼすならびにイヌ肥満細胞癌における細胞傷害活性増強をもたらすことを立証したということも、特許出願(WO199634602)において、同じ著者が以前に開示している。不思議なことに、12μMのホロトランスフェリンの存在下での10μMのDHAはMolt−4細胞に全く影響を及ぼさなかった、という事実を2005年からの論文が強調するとしても、当該特許出願に用いられた同一実験条件は、8時間で細胞数の75%低減をもたらすと報告された。US5578637も、エンドペルオキシド含有化合物を包含する組合せを報告したが、この場合、鉄増強剤の存在は必須であった。
【0008】
EP1658844は、共存鉄療法(これは、ARSの効力増大を目的とする)の存在下または非存在下での、ダカルバジンと組合せたARSの使用を包含する、ブドウ膜黒色腫に罹患した2名の患者の治療的療法の結果を報告している。その間に、補足的鉄投薬を受けなかった第一の患者は、AJCC(Balch C.M., et al., J. Clin. Oncol., 2001, 19, 16, 3635)による段階IVへの登録の23ヵ月後に死亡し、補足的鉄投薬を受けた第二の患者は、本特許出願が出願された時点で、依然として生存していた。
【0009】
WO200213826は、抗マラリア薬 クロロキニン、ヒドロキシクロロキニンおよびプリマキンと、抗癌薬 シスプラチンおよびドキソルビシンとの組合せを開示した。このような組合せは、とりわけ、抗マラリア薬剤が高濃度で用いられた場合、少数の細胞株に及ぼすより良好な抗癌効力を生じた。キニン誘導体、そして特にヒドロキシクロロキンが自食作用(これは、ストレス条件下で癌細胞を生存させる腫瘍耐性機序であると認識されている)を遮断すると、近年報告されている(Rubinsztein D.C., et al., Nature Rev. Drug Disc., 2007, 6, 304)。さらに、キニン様薬剤とアルテミシニン様薬剤の作用機序の差が報告されている(Jung M., et al., Curr. Med. Chem., 2004, 11, 10, 1265;Meshinick S.R., et al., Microbiol. Rev., 1996, 60, 301;Wu W.M., et al., Chem. Soc. Chem. Commun., 1996, 2213;Wu W.M., et al., J. Am. Chem. Soc., 1998, 120, 3316)。本明細書中の上記で引用されたJung M等は、新規のC−12非アセタル型デオキシアルテミシニンが例外的に高いin vitro抗腫瘍活性を保有することが見出された、ということも報告した。このような誘導体は、本発明の化合物と構造的に無関係である。
【0010】
それにもかかわらず、ART、DHAまたはARM、ならびにカンプトテシン誘導体、またはPARP−1阻害薬またはDNA挿入剤またはアルキル化剤からなる群から選択される第二の化学療法薬を包含する他の薬学的組合せは、癌疾患の処置に対して相乗的作用を生じると報告されていない。
【0011】
カンプトテシン誘導体は、アルカロイドカンプトテシン(さらにCPTとも呼ばれる)の40年以上も前の発見から始まった。CPTは、強力な且つ広範囲の抗癌活性を付与されると評されている。多数の医学化学集団からの多くの努力が、CPTそれ自体の物理化学的特性を改善することに向けられてきた。強力なCPT誘導体は、例えばEP1044977(本出願人等の名前で出願)に見出され得る。Zunimo F.等も、CPT誘導体の分野における最新の進捗を申し分なく再検討した(Zunino F., et al., Curr. Pharm. Des., 2002, 8, 2505)。
【0012】
腫瘍学におけるPARP−1抑制の有望な役割は、BRCA1およびBCRA2ノックアウト細胞株がPARP−1阻害薬に高度に感受性であることが判明しているということに基づいて確立された。BRCA1およびBCRA2タンパク質突然変異は、乳癌、卵巣癌、前立腺癌および膵臓癌の大きな危険をもたらし得る(例えば、MK−4827, Jones P., et al., J. Med. Chem., 2009, 52, 22, 7170)。WO2006110816は、PARP阻害薬を報告したが、その中で、ABT−888は、抗増殖特性を保有する上に、抗炎症特性を付与した。
【0013】
PARP−1阻害薬は、抗癌薬、例えばトポイソメラーゼ−I阻害薬(Delaney C.A., et al., Clin. Cancer Res., 2000, 6, 2860-2867)およびシスプラチン(Miknyoczki S.J., et al., Mol. Cancer Ther., 2003, 2, 371)の細胞傷害活性を増強することも報告されている。PARP−1阻害薬AZD2281(Menear K.A., et al., J. Med. Chem., 2008, 51, 6581)をカルボプラチンと一緒に用いることを包含する、乳房腫瘍を発症するBRCA2/p53欠乏マウスにおける組合せ療法が、最近報告された。このような試験は、カルボプラチン単独療法を上回る利点を示さなかった。PARP−1抑制が延長された場合、腫瘍再発までの時間だけが増大された(Hay T., et al., Cancer Res., 2009, 69, 9, 3850)。特許出願WO2008063644(Cephalon)は、PARP−1阻害薬としてのいくつかのカルバゾール誘導体がヒト神経膠芽細胞腫関連異種移植モデルにおいて放射線増感作用を引き起こす、ということを報告する。臨床試験(NCT00920595)は、一般に、PARP阻害薬およびメチル化剤テモゾロミドを包含する固形腫瘍に対する組合せ療法に関する試験のために患者を動員することである。
【0014】
DNA挿入剤、例えばアントラサイクリンまたはアクリジン誘導体は既知であり、種々の形態の癌の処置に長年用いられてきた;最も良く知られた誘導体は、ドキソルビシン、ダウノルビシンおよびダクチノマイシンである。
【0015】
癌の処置は、薬剤耐性現象または用量制限細胞傷害性のため、依然として非常に不満足なままである。したがって、癌疾患に対する適切な治療を見出す機会をさらに増大するために、強力な且つより安全な薬剤を包含する新規の処置が大いに所望される。
【発明の概要】
【0016】
未知の作用機序と結び付けられて、細胞傷害剤としてのDHAおよび/またはその類似体を多少仮説的にさせるDHA含有組成物の主張された活性についての不確実性にもかかわらず、カンプトテシン誘導体、またはPARP−1阻害薬、またはDNA挿入剤、またはアルキル化剤と組合せられた場合、ART、DHAおよびARMからなる群から選択されるアルテミシニンベースの強力な抗マラリア薬は、癌の種々のモデルにおいて、特にNSCLにおいて、中等度〜強い相乗作用を引き起こす、ということをわれわれは意外にも見出した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態は、ART、DHAおよびARMからなる群から選択される薬学的作用物質(a);ならびにカンプトテシン誘導体、PARP−1阻害薬、DNA挿入剤およびアルキル化剤からなる群から選択される化学療法薬(b)からなる化学療法組合せであって、上記組合せ内で、各成分(a)および(b)が互いと別々に処方されるか、あるいは単一剤形で処方される化学療法組合せに関する。
【0018】
本発明のさらなる実施形態は、ART、DHAおよびARMからなる群から選択される薬学的作用物質(a);ならびにカンプトテシン誘導体、PARP−1阻害薬、DNA挿入剤およびアルキル化剤からなる群から選択される化学療法薬(b)からなる化学療法組合せであって、上記組合せ内で、薬学的作用物質(a)および化学療法薬(b)が両作用物質の同時使用に適した単一剤形で処方される化学療法組合せに関する。
【0019】
本発明のさらなる実施形態は、ART、DHAおよびARMからなる群から選択される薬学的作用物質(a);ならびにカンプトテシン誘導体、PARP−1阻害薬、DNA挿入剤およびアルキル化剤からなる群から選択される化学療法薬(b)からなる化学療法組合せであって、上記組合せ内で、薬学的作用物質(a)および化学療法薬(b)が別々に処方される化学療法組合せに関するが、これは、別個の、同時的または逐次的使用に適している。
【0020】
好ましい一実施形態では、上記組合せ内で、薬学的作用物質(a)はDHAである。
【0021】
さらに好ましい一実施形態では、上記組合せ内で、化学療法薬(b)はカンプトテシン誘導体である。
【0022】
さらに好ましい一実施形態では、カンプトテシン誘導体は、米国特許第6242457号に開示されたもののうちの1つであるか、あるいはイリノテカンまたはその活性代謝産物SN−38である。好ましいカンプトテシン誘導体は、7−メトキシイミノメチルカンプトテシン、7−メトキシイミノメチル−10−ヒドロキシ−カンプトテシン、7−(ter−ブトキシカルボニル−2−プロポキシ)−イミノメチルカンプトテシン、7−エトキシイミノメチルカンプトテシン、7−イソプロポキシ−イミノメチルカンプトテシン、7−(2−メチルブトキシ)−イミノメチルカンプトテシン、7−t−ブトキシイミノメチルカンプトテシン、7−t−ブトキシイミノメチル−10−ヒドロキシカンプトテシン、7−t−ブトキシイミノメチル−10−メトキシカンプトテシン、7−(4−ヒドロキシブトキシ)−イミノメチルカンプトテシン、7−トリフェニル−メトキシイミノメチルカンプトテシン、7−カルボキシメトキシイミノメチルカンプトテシン、7−(2−アミノ)−エトキシイミノメチルカンプトテシン、7−(2−N,N−ジメチルアミノ)−エトキシイミノメチルカンプトテシン、7−アリルオキシイミノメチルカンプトテシン、7−シクロヘキシル−オキシイミノメチルカンプトテシン、7−シクロヘキシルメトキシ−イミノメチルカンプトテシン、7−シクロオクチルオキシイミノメチルカンプトテシン、7−シクロオクチルメトキシイミノメチルカンプトテシン、7−ベンジルオキシ−イミノメチルカンプトテシン、7−[(1−ベンジルオキシイミノ)−2−フェニルエチル]カンプトテシン、7−(1−ベンジルオキシイミノ)−エチルカンプトテシン、7−フェノキシ−イミノメチルカンプトテシン、7−(1−t−ブトキシイミノ)−エチルカンプトテシン、7−p−ニトロベンジル−オキシイミノメチルカンプトテシン、7−p−メチルベンジルオキシイミノメチルカンプトテシン、7−ペンタフルオロ−ベンジルオキシイミノメチルカンプトテシン、7−p−フェニルベンジルオキシイミノメチルカンプトテシン、7−[2−(2,4−ジフルオロフェニル)−エトキシ]イミノメチルカンプトテシン、7−(4−t−ブチルベンジルオキシ)−イミノメチルカンプトテシン、7−(1−アダマンチルオキシ)−イミノメチルカンプトテシン、7−(1−アダマンチルメトキシ)−イミノメチルカンプトテシン、7−(2−ナフチルオキシ)−イミノメチルカンプトテシン、7−(9−アントリルメトキシ)−イミノメチルカンプトテシン、7−オキシラニルメトキシイミノメチルカンプトテシン、7−(6−ウラシル)−メトキシ−イミノメチルカンプトテシン、7−[2−(1−ウラシル)−エトキシ]−イミノメチルカンプトテシン、7−(4−ピリジル)−メトキシイミノメチルカンプトテシン、7−(2−チエニル)−メトキシイミノメチルカンプトテシン、7−[(N−メチル)−4−ピペリジニル]−メトキシイミノメチルカンプトテシン、7−[2−(4−モルホリニニル]−エトキシ]−イミノメチルカンプトテシン、7−(ベンゾイルオキシイミノメチル)−カンプトテシン、7−[(1−ヒドロキシイミノ)−2−フェニルエチル)−カンプトテシン、7−ter−ブチルオキシ−イミノメチルカンプトテシン N−オキシド、7−メトキシイミノメチルカンプトテシン N−オキシド、イリノテカンおよびその活性代謝産物 SN−38からなる群から選択される。
【0023】
さらに好ましい一実施形態では、カンプトテシン誘導体は、7−t−ブトキシイミノメチルカンプトテシン、7−ベンジルオキシイミノメチルカンプトテシン、7−(2−アミノ)−エトキシイミノメチル−カンプトテシン、イリノテカンおよびその活性代謝産物SN−38からなる群から選択される。
【0024】
別の好ましい実施形態では、上記組合せ内で、化学療法薬(b)はPARP−1阻害薬である。
【0025】
さらに好ましい一実施形態では、PARP−1阻害薬は、AZD2281、ABT−888およびMK−4827からなる群から選択される。
【0026】
別のさらに好ましい実施形態では、上記組合せ内で、化学療法薬(b)は、ドキソルビシン、ダクチノマイシンおよびダウノルビシン間で選択されるDNA挿入剤である。
【0027】
別のさらに好ましい実施形態では、上記組合せ内で、化学療法薬(b)は、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチンおよびサトラプラチンからなる群から選択されるアルキル化剤である。
【0028】
さらに好ましい実施形態は、ART、DHAおよびARMからなる群から選択される少なくとも1つのアルテミシニンベースの化合物を含む薬学的作用物質(a)を、カンプトテシン誘導体、PARP−1阻害薬、DNA挿入剤およびアルキル化剤からなる群から選択される化学療法薬(b)と組合せた使用からなり、この場合、このような使用は、薬学的作用物質としての、別々の、同時的または逐次的使用である。
【0029】
さらなる好ましい実施形態は、ART、DHAおよびARMからなる群から選択される少なくとも1つのアルテミシニンベースの化合物を含む薬学的作用物質(a)を、カンプトテシン誘導体、PARP−1阻害薬、DNA挿入剤およびアルキル化剤からなる群から選択される化学療法薬(b)と組合せた使用からなり、この場合、このような使用は、新生物の防止および/または処置のための、別々の、同時的または逐次的使用である。
【0030】
別のさらに好ましい実施形態は、DHAである薬学的作用物質(a)を、7−(2−アミノ)−エトキシイミノメチル−カンプトテシン、7−t−ブトキシイミノメチルカンプトテシン、イリノテカンまたはその活性代謝産物SN−38である薬学的作用物質(b)と組合せた使用からなり、この場合、このような使用は、新生物の防止および/または処置のための、別々の、同時的または逐次的使用である。
【0031】
別のさらに好ましい実施形態は、DHAである薬学的作用物質(a)を、ドキソルビシンである薬学的作用物質(b)と組合せた使用からなり、この場合、このような使用は、新生物の防止および/または処置のための、別々の、同時的または逐次的使用である。
【0032】
さらなる好ましい実施形態は、ART、DHAおよびARMからなる群から選択される少なくとも1つのアルテミシニンベースの化合物を含む薬学的作用物質(a)を、PARP−1阻害薬からなる群から選択される化学療法薬(b)と組合せた使用からなり、この場合、このような使用は、新生物の防止および/または処置のための、別々の、同時的または逐次的使用である。
【0033】
さらなる好ましい実施形態は、ART、DHAおよびARMからなる群から選択される少なくとも1つのアルテミシニンベースの化合物を含む薬学的作用物質(a)を、アルキル化剤である薬学的作用物質(b)と組合せた使用からなり、この場合、このような使用は、新生物の防止および/または処置のための、別々の、同時的または逐次的使用である。
【0034】
さらなる好ましい実施形態は、DHAである薬学的作用物質(a)を、シスプラチンまたはカルボプラチンである薬学的作用物質(b)と組合せた使用からなり、この場合、このような使用は、新生物の防止および/または処置のための、別々の、同時的または逐次的使用である。
【0035】
「別々の使用」または「別々に用いる」という表現は、各作用物質(a)および(b)が他の作用物質のものとは異なり得る適正な投与スケジュールに従い得る、ということを示す。
【0036】
「同時的使用」または「同時に用いる」という表現は、各作用物質が同時に投与され、上記作用物質は、それらの具体的投与量が何であれ、ある単一剤形でまたは別々に処方される、ということを示す。
【0037】
「逐次的使用」または「逐次的に用いる」という表現は、各作用物質投与スケジュールが、任意のある時点で、1つの作用物質(a)または(b)のみを包含して、定期的に施される、ということを示す。
【0038】
「新生物」という用語は、新形成の結果としての組織の異常塊を示す。新形成は、細胞の異常増殖からなる。細胞のこのクローンの増殖は超過し、その周囲の正常組織のクローンと同等でない。それは、通常は、腫瘍を生じる。新生物は、良性、前悪性または悪性であり得る。良性新生物としては、例えば類繊維腫およびメラニン細胞性母斑が挙げられ、癌に転換しない。潜在的悪性新生物としては、in situの癌腫が挙げられる。それらは周囲組織に侵入せず、それを破壊しないが、しかし十分な時間を仮定すると、癌に転換する。悪性新生物は、一般に癌と呼ばれる。それらは周囲組織に侵入し、破壊して、転移を形成し得るし、最後に宿主を殺害し得る。転移は、ある器官または部分から別の非隣接器官または部分への疾患の拡散からなる。悪性湯用細胞および感染のみが、転移する確立された能力を有する。
【0039】
癌細胞は、原発性腫瘍から離れ、漏出し、または散らばって、リンパ管および血管に入り、血流を通して循環し、身体の他の場所で正常組織内に届けられる。転移は、悪性腫瘍の3つの特質のうちの1つである。ほとんどの腫瘍は転移し得るが、しかし種々の程度である(例えば、神経膠腫および基底細胞癌腫はめったに転移しない)。腫瘍細胞が転移する場合、新規の腫瘍は続発性または転移性腫瘍と呼ばれ、その細胞は元の腫瘍の細胞と似ている。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、処置されるべき新生物は、肉腫、癌腫、黒色腫、骨腫瘍、神経内分泌腫瘍、リンパ性白血病、骨髄性白血病、単球性白血病、巨核球性白血病またはホジキン病からなる群から選択される原発性腫瘍である。
【0041】
上記肉腫および癌腫は、以下の:乳癌;肺癌、例えば非小細胞肺癌(NSCLC)および小細胞肺癌(SCLC);消化器癌、例えば食道、胃、小腸、大腸、直腸および結腸癌;神経膠腫、例えば神経芽細胞種;卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、中皮腫;直腸癌;前立腺癌および皮膚癌を含む群からなる。
【0042】
新生物は、小児癌も指し得る。例えば、処置され得る、または症状の進行が本発明により遅延され得る小児癌は、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、星状細胞腫、膀胱癌、脳幹神経膠腫、中枢神経系非定型奇形/棒状癌、脳癌、中枢神経系胎児性癌、脳癌、星状細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳質上衣芽細胞腫、脳質上衣腫、小児期髄芽細胞腫、髄上皮腫、中分化型の松果体実質癌、テント上原始神経外胚葉性癌および松果体芽腫、乳癌、気管支癌、カルチノイド、子宮頸癌、脊索腫、結腸直腸癌、食道癌、頭蓋外胚細胞癌、胃癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、腎臓癌、喉頭癌、白血病、急性リンパ芽球性/骨髄性白血病、肝臓癌、非ホジキンリンパ腫、髄芽細胞腫、中皮腫、多内分泌腺新生物症候群、鼻咽頭癌、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、乳頭腫症、腎細胞癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺癌および膣癌からなる群から選択される。
【0043】
「新生物の防止」という表現は、前悪性(潜在的悪性とも呼ばれる)新生物が検出される場合はいつでも、悪性腫瘍の発症を防止するための本発明の組合せの使用に関する。
【0044】
本発明のさらなる実施形態によれば、処置されるべき新生物は、悪性新生物(癌とも呼ばれる)または潜在的悪性新生物である。
【0045】
本発明のさらなる実施形態は、新生物の防止および/または処置のために有用な医薬剤の調製のための、ART、DHAおよびARMからなる群から選択される少なくとも1つのアルテミシニンベースの化合物を含む薬学的作用物質(a)と、カンプトテシン誘導体、PARP−1阻害薬、DNA挿入剤およびアルキル化剤からなる群から選択される化学療法薬(b)と組合せたものからなる化学療法組合せの使用に関するが、この場合、抗腫瘍活性は、化学療法組合せの細胞傷害特性および/またはアポトーシス特性に由来する。
【0046】
本発明のさらなる実施形態は、上記化学療法組成物の使用に関するが、この場合、腫瘍は、肉腫、癌腫、黒色腫、骨腫瘍、神経内分泌腫瘍、リンパ性白血病、骨髄性白血病、単球性白血病、巨核球性白血病またはホジキン病からなる群から選択される。
【0047】
さらなる実施形態は、ART、DHAおよびARMからなる群から選択される薬学的作用物質(a)と、カンプトテシン誘導体、PARP−1阻害薬、DNA挿入剤およびアルキル化剤からなる群から選択される化学療法薬(b)を含む薬学的組成物からなり、これはさらに、製薬上許容可能な担体および/または賦形剤および/または希釈剤を含む。
【0048】
本発明のさらなる対象は、上記の薬学的作用物質(a)および上記の少なくとも1つの化学療法薬(b)を、少なくとも1つの適切な製薬上許容可能な担体および/または賦形剤および/または希釈剤と混合することを特徴とする上記の薬学的組成物の製造方法である。
【0049】
さらに好ましい一実施形態では、作用物質(a)および(b)は、それぞれ、1つの組合せ単位剤形で、または2つの別個の単位剤形で、一緒に、あるいは一方が他方の後に、投与され得る。
【0050】
さらに好ましい一実施形態では、化学療法薬(b)は、薬学的作用物質(a)の投与直後に投与される。
【0051】
本発明の別のさらなる好ましい実施形態は、別々の、同時的または逐次的使用のための、薬学的作用物質(a)の薬学的処方物および化学療法薬(b)の薬学的処方物を含む商品または製品に関する。
【0052】
本発明のさらに好ましい実施形態は、薬学的作用物質(a)が化学療法薬(b)と一緒に処方される商品または製品に関する。
【0053】
本発明のさらに最も好ましい一実施形態では、作用物質(a)および(b)は、付加的なまたは好ましくは相乗的作用を実証する。
【0054】
本発明の別の実施形態は、新生物の防止および/または処置のための方法であって、ART、DHAおよびARMからなる群から選択される少なくとも1つのアルテミシニンベースの化合物(a)と、カンプトテシン誘導体、PARP−1阻害薬、DNA挿入剤およびアルキル化剤からなる群から選択される少なくとも1つの化学療法薬(b)の組合せで、同時的にまたは逐次的に患者を処置することを包含する方法に関する。
【0055】
「薬学的作用物質(単数または複数)」または「化合物」という用語は、本明細書中で用いる場合、単一の作用物質(a)および(b)、それらの製薬上許容可能な塩を含むよう意図され、そして状況により、2つの組合せにも言及され得る。
【0056】
「単位剤形」という用語は、ヒト被験者およびその他の哺乳動物のための単位投与量として適している物理的に別個の単位を指し、各単位は、適切な薬学的賦形剤と関連して、同時的にまたは逐次的に投与される場合に所望の治療効果を生じるよう算定された予定量の活性成分(a)または(b)を含有する。典型的単位剤形としては、液体組成物の詰め替え式の、予め測定されたアンプルまたは注射器;あるは固体組成物の場合のピル、錠剤、カプセル等が挙げられる。このような組成物において、本発明の化合物(a)および化合物(b)は、普通は、小構成成分(約0.1〜約50重量%、好ましくは約1〜約40重量%)であり、残りは、所望の用量投与形態を形成するために役立つ種々のビヒクルまたは担体、ならびに加工処理助剤である。投与処置は、単回投与スケジュールまたは多数回投与スケジュールであり得る。
【0057】
「組合せ単位剤形」という用語は、ヒト被験者およびその他の哺乳動物のための単位投与量として適している物理的に別個の単位を指し、各単位は、適切な薬学的賦形剤と関連して、所望の治療効果を生じるよう算定される予定量の活性成分(a)または(b)を含有する。
【0058】
上記のように、本発明の活性成分(a)および(b)の組合せは、癌疾患の処置のための医薬剤として有用であって、この場合、癌疾患は、乳房、膵臓、肺、肋膜、腹膜、顔および首、膀胱、脳、前立腺、卵巣、眼の癌、または転移癌である。
【0059】
「商品」または「製品」という用語は、本明細書中で用いる場合、同時的またはその後の使用のための薬学的作用物質(a)および(b)の別個の適切な投与を可能にする部品のキットを定義する。
【0060】
本発明に包含される組成物は、専ら慣用的であり、製薬産業における常識である方法、例えばRemington‘s Pharmaceutical Science Handbook, Mack Pub. N.Y.(最新版)で例証された方法により得られる。選択される投与経路によって、組成物は、経口、非経口または局所投与に適した固体または液体形態である。本発明による組成物は、活性成分とともに、少なくとも1つの製薬上許容可能なビヒクルまたは賦形剤を含有する。これらは、特に有用な処方物コアジュバント、例えば可溶化剤、分散剤、懸濁剤および乳化剤であり得る。
【0061】
実際に投与される薬学的作用物質の量は、典型的には、関連環境、例えば処置されるべき症状、選定投与経路、投与される実際の化合物、薬剤組合せ、個々の患者の年齢、体重および応答、患者の症候の重症度等にかんがみて、医者により決定される。任意の化合物に関して、治療的有効量は、最初に、細胞培養検定で、または動物モデル、通常はマウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌまたはブタで概算され得る。動物モデルは、適切な濃度範囲および投与経路を決定するためにも用いられ得る。次に、このような情報を用いて、ヒトにおける投与のための有用な用量および経路を決定し得る。ヒト等価用量(HED)を決定するに際しては、産業界および審査官のためのガイダンス文書(Guidance for Industry and Reviewers document) (2002, U.S. Food and Drug Administration, Rockville, Maryland, USA)で提供される変換表を用いることが推奨される。
【0062】
一般的に、有効用量は、0.01mg/kg〜2000mg/kgの薬学的作用物質、好ましくは0.05mg/kg〜500mg/kgの薬学的作用物質である。ヒト被験者のための精確な有効量は、疾患状態の重症度、被験者の全身健康状態、被験者の年齢、体重および性別、食餌、投与の時間および頻度、薬剤組合せ(単数または複数)、反応感受性、ならびに治療に対する耐容性/応答によって決まる。この量は、通例の実験により決定され得るし、臨床医の判断内である。
【0063】
この発明の医薬剤は、任意数の経路、例えば、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、脳室内、経皮適用、皮下、腹腔内、鼻内、経腸、局所、舌下、膣内または直腸的手段(これらに限定されない)により投与され得る。
【0064】
経口投与のための組成物は、バルク液体溶液または懸濁液、あるいはバルク粉末の形態をとり得る。しかしながら、さらに一般的には、組成物は、正確な用量投与を促すために、単位剤形で提示される。「単位剤形」という用語は、ヒト被験者および他の哺乳動物のための単位投与量として適している物理的に別個の単位を指し、各単位は、適切な薬学的賦形剤と関連して、所望の治療効果を生じるよう算定された予定量の活性物質を含有する。
【0065】
医薬剤は、治療薬の投与のために、製薬上許容可能な担体も含有し得る。このような担体としては、抗体およびその他のポリペプチド、遺伝子ならびにその他の治療薬、例えばリポソームが挙げられるが、但し、担体は、組成物を摂取している個体に有害な抗体の産生を誘導せず、組成物は、過度の毒性を伴わずに投与され得る。適切な担体は、大型の、ゆっくり代謝される高分子、例えばタンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子であり得る。製薬上許容可能な担体についての徹底的な考察は、Remington‘s Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)でなされている。
【0066】
治療用組成物中の製薬上許容可能な担体は、液体、例えば水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールを付加的に含有し得る。
【0067】
さらに、補助物質、例えば湿潤または乳化剤、pH緩衝物質等が、このような組成物中に存在し得る。このような担体は、薬学的組成物を、患者による摂取のために、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として処方させ得る。
【0068】
「治療的有効用量」という用語は、具体的には、薬学的作用物質(a)および(b)を含む組合せの累積用量を指す。
【0069】
本発明のさらなる対象は、少なくとも1つの薬学的作用物質(a)および薬学的作用物質(b)を、適切な賦形剤、安定化剤、および/または製薬上許容可能な希釈剤と混合することを特徴とする薬学的組成物の製造方法である。
【実施例】
【0070】
生物学的実験
実施例1
異なる腫瘍細胞に及ぼすDHAおよびARTの抗増殖活性
腫瘍細胞生存に及ぼすDHAおよびARTの生物学的活性を評価した。腫瘍細胞を、約10%集密度で96ウェル組織培養プレート中に植えつけて、少なくとも24時間付着、回復させた後、37℃で24時間、DHAまたはARTに曝露した。次に、それらを洗浄してDHAおよびARTを除去し、培地中で48時間、放置し、回復させた。次いで、培地を取り出して、細胞をPBSで3回洗浄した。次に、プレートを、氷上で1時間、200μlのPBSおよび50μlの冷80%TCAとともにインキュベートした後、蒸留水で洗浄して、紙上で乾燥し、最後に、40℃で5分間乾燥した。1%酢酸中の0.4%スルホローダミンB 200μlを付加し、インキュベーションを30分間延長した。スルホローダミンBを除去し、プレートを1%酢酸で3回洗浄した。最後に、それらを紙上で乾燥し、その後、40℃で5分間放置した。次いで、200μlのトリス10mMを付加し、プレートを撹拌しながら20分間保持した。Multiskan分光蛍光計により540nmでの光学密度として、細胞生存率を確定した。殺害された細胞の量を、対照培養と比較した場合のスルホローダミンBの低減パーセンテージとして表わした。ALLFITプログラムによるそれらの標準偏差を用いて、IC50を得た。
【0071】
結果
ARTは、腫瘍細胞に及ぼす非常に弱い抗増殖作用を示した。NSCLC株(すなわち、NCI−H460)を除いて、DHAは、マイクロモル未満の範囲で、あるいは低濃度でも、非耐性腫瘍細胞株を抑制し得ることを示した。DHAは、実際、耐性乳房腫瘍細胞株MCF−7/Dx MDRに関して、ならびに非耐性株(MCF−7)に関して、予期せず等しく有効であった。同一分析は、結腸癌細胞株(すなわち、LoVo)に関して、入念に実施した。耐性LoVo/Dx MDR細胞株は、その非耐性細胞株に比して、ドキソルビシンに対する感受性が63分の1であることを立証した。興味深いことに、その耐性細胞株は、DHAに対して耐性でないことを示した(耐性指数値は1より低い)。詳細な結果を、以下の表1に示す。
【表1】

【0072】
実施例2
腫瘍細胞に及ぼすDHAおよび種々の化学療法薬間の相乗作用
腫瘍細胞を、10%ウシ胎仔血清を含有するRPMI 1640中で増殖させて、実施例1に記載したとおりに処置したが、但し、ARTまたはDHAのみに曝露する代わりに、細胞株を、DHAと組合せて表2に報告した薬剤で処置した(1.0μM〜20μM、表2)。腫瘍細胞をDHAで2時間処置した後、さらに化学療法薬に72時間曝露した。次いで、細胞生存を、スルホローダミンB検定により評価した。種々の組合せ実験から集めたデータを、アイソボログラムを入念に検証することにより、Calcusynソフトウェア(Biosoft, Ferguson, MO)を用いて分析して、DNAと種々の化学療法薬との組合せが、付加的であるか、相乗的であるか、または拮抗的であるかを確定した。生存度検定結果(SRB)を、非処置細胞に関連した、単一薬剤に、または薬剤組合せに曝露した場合に殺害される細胞の比として表した。Chou−Talalay半有効法(T−C Chou, et al., Trends Pharmacol. Sci., 1983, 4, 450)により、組合せ指数値(CI)を決定したが、この場合、CI<1である場合に相乗作用が限定され、CIパラメーター値が低いほど、相乗作用は強い(CalcuSyn 2.0分析器により限定される)。
【0073】
結果
表2に示すように、種々の組織型を有するいくつかの腫瘍細胞株(すなわち、非小細胞肺癌、卵巣、結腸、乳房、類表皮、膵臓癌、ならびに神経膠芽細胞腫)に関して、DHAと異なる化学療法薬(PARP−1阻害薬、カンプトテシン誘導体、アントラサイクリンおよび白金化合物)との間に、良好〜非常に良好な相乗的相互作用が見出された。
【0074】
細胞型によって、特に興味深い相乗的組合せが見出された。
【表2】

【0075】
実施例3
DHAおよびPARP−1阻害薬(AZD2281)を含む組合せのin vivo抗腫瘍活性
NCI−H460非小細胞肺癌細胞を、CDIヌードマウスの右脇腹に皮下接種(s.c.)した(3×10/0.1mlの培地199)。腫瘍注射の3日後に、処置を開始した。マウスを、以下の実験群に細分した(10匹/群):
a)ビヒクル(DMSO 10%) 10ml/kg、腹腔内;
b)DHA 200mg/kg、経口、1日1回を連続5日/週で3週間;
c)AZD2281 100mg/kg、腹腔内、1日1回を連続5日/週で3週間;
d)AZD2281+DHA(上記と同じ用量およびスケジュール)。
【0076】
実験d)に関しては、DHAをAZD2281の直前に投与した。
【0077】
抗腫瘍活性を評価するために、次式に従って、Venierカリパスで腫瘍直径を測定した:
【数1】

【0078】
腫瘍の容積が約1500mmに達したら、頚椎脱臼によりマウスを屠殺した。次式に従って、腫瘍容積抑制として、薬剤の効力を査定した:
【数2】

【0079】
体重記録を実行して、以下の方程式で算定した体重損失を評価した:
【数3】

【0080】
結果
マウスは処置中に如何なる体重損失も示さなかったため、両化合物(すなわち、DHAおよびAZD2281)は良好に耐容された。1日1回を連続5日/週で3週間のスケジュールに従って、DHAを200mg/kgで経口投与した後、同一スケジュールによりAZD2281(すなわち、100mg/kgで)を投与した場合、その組合せは、NCI−H460非小細胞は胃癌異種移植片に対して31%の実質的腫瘍増殖抑制を生じたが、一方、当該分子を単独で投与した場合、抗腫瘍作用は観察されなかった(表3)。
【表3】

【0081】
実施例4
DHAおよびPARP−1阻害薬 AZD2281およびABT−888を含む組合せのin vivo抗腫瘍活性
HCT116結腸癌細胞を、CDIヌードマウスの右脇腹に皮下接種(s.c.)した(5×10/0.1mlの培地199)。腫瘍注射の3日後に、処置を開始した。マウスを、以下の実験群に細分した(8匹/群):
a)ビヒクル(DMSO 10%) 10ml/kg、腹腔内;
b)DHA 200mg/kg、経口、1日1回を連続5日/週で4週間;
c)AZD2281 100mg/kg、腹腔内、1日1回を連続5日/週で4週間;
d)AZD2281+DHA(上記と同じ用量およびスケジュール);
e)ABT−888 50mg/kg、腹腔内、1日1回を連続5日/週で4週間;
f)ABT−888+DHA(上記と同じ用量およびスケジュール)。
【0082】
DHAは、AZD2281またはABT−888の直前に投与した。
【0083】
腫瘍容積が500mmに達したら、実施例3に上記したプロトコールに従って、抗腫瘍活性を評価した。
【0084】
体重記録を実行して、実施例3に上記したプロトコールに従って体重損失を評価した。
【0085】
結果
マウスは処置中に如何なる体重損失も示さなかったため、全化合物(すなわち、DHA、AZD2281およびABT−888)は良好に耐容された。それらは何れも、単独で投与した場合、この腫瘍組織型に及ぼす如何なる抗腫瘍作用も示さなかった。1日1回を連続5日/週で4週間のスケジュールに従って、DHAを200mg/kgで経口投与した後、同一スケジュールによりAZD2281(すなわち、100mg/kgで)を投与した場合、その組合せは、37%の実質的腫瘍増殖抑制を生じた。このような相乗作用は、DHAを別のPARP−1阻害薬 ABT−888(50mg/kgで経口投与)と組合せた場合にさらに顕著であることが見出されたが、これは、49%の腫瘍容積抑制を示す(表4)。
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ART、DHAおよびARMからなる群から選択される薬学的作用物質(a);ならびに、それ自体、7−メトキシイミノメチルカンプトテシン、7−メトキシイミノメチル−10−ヒドロキシ−カンプトテシン、7−(ter−ブトキシカルボニル−2−プロポキシ)−イミノメチルカンプトテシン、7−エトキシイミノメチルカンプトテシン、7−イソプロポキシ−イミノメチルカンプトテシン、7−(2−メチルブトキシ)−イミノメチルカンプトテシン、7−t−ブトキシイミノメチルカンプトテシン、7−t−ブトキシイミノメチル−10−ヒドロキシカンプトテシン、7−t−ブトキシイミノメチル−10−メトキシカンプトテシン、7−(4−ヒドロキシブトキシ)−イミノメチルカンプトテシン、7−トリフェニル−メトキシイミノメチルカンプトテシン、7−カルボキシメトキシイミノメチルカンプトテシン、7−(2−アミノ)−エトキシイミノメチルカンプトテシン、7−(2−N,N−ジメチルアミノ)−エトキシイミノメチルカンプトテシン、7−アリルオキシイミノメチルカンプトテシン、7−シクロヘキシル−オキシイミノメチルカンプトテシン、7−シクロヘキシルメトキシ−イミノメチルカンプトテシン、7−シクロオクチルオキシイミノメチルカンプトテシン、7−シクロオクチルメトキシイミノメチルカンプトテシン、7−ベンジルオキシ−イミノメチルカンプトテシン、7−[(1−ベンジルオキシイミノ)−2−フェニルエチル]カンプトテシン、7−(1−ベンジルオキシイミノ)−エチルカンプトテシン、7−フェノキシ−イミノメチルカンプトテシン、7−(1−t−ブトキシイミノ)−エチルカンプトテシン、7−p−ニトロベンジル−オキシイミノメチルカンプトテシン、7−p−メチルベンジルオキシイミノメチルカンプトテシン、7−ペンタフルオロ−ベンジルオキシイミノメチルカンプトテシン、7−p−フェニルベンジルオキシイミノメチルカンプトテシン、7−[2−(2,4−ジフルオロフェニル)−エトキシ]イミノメチルカンプトテシン、7−(4−t−ブチルベンジルオキシ)−イミノメチルカンプトテシン、7−(1−アダマンチルオキシ)−イミノメチルカンプトテシン、7−(1−アダマンチルメトキシ)−イミノメチルカンプトテシン、7−(2−ナフチルオキシ)−イミノメチルカンプトテシン、7−(9−アントリルメトキシ)−イミノメチルカンプトテシン、7−オキシラニルメトキシイミノメチルカンプトテシン、7−(6−ウラシル)−メトキシ−イミノメチルカンプトテシン、7−[2−(1−ウラシル)−エトキシ]−イミノメチルカンプトテシン、7−(4−ピリジル)−メトキシイミノメチルカンプトテシン、7−(2−チエニル)−メトキシイミノメチルカンプトテシン、7−[(N−メチル)−4−ピペリジニル]−メトキシイミノメチルカンプトテシン、7−[2−(4−モルホリニニル]−エトキシ]−イミノメチルカンプトテシン、7−(ベンゾイルオキシイミノメチル)−カンプトテシン、7−[(1−ヒドロキシイミノ)−2−フェニルエチル)−カンプトテシン、7−ter−ブチルオキシ−イミノメチルカンプトテシン N−オキシド、7−メトキシイミノメチルカンプトテシン N−オキシド、イリノテカンおよびその活性代謝産物SN−38からなる群から選択されるカンプトテシン誘導体;PARP−1阻害薬、DNA挿入剤およびアルキル化剤からなる群から選択される化学療法薬(b)からなる化学療法組合せであって、該組合せ内において、各成分(a)および(b)が互いに別々に処方されるかまたは単一剤形で処方される、化学療法組合せ。
【請求項2】
前記薬学的作用物質(a)および化学療法薬(b)が単一剤形で処方される請求項1記載の化学療法組合せ。
【請求項3】
前記薬学的作用物質(a)および化学療法薬(b)が別々に処方される請求項1記載の化学療法組合せ。
【請求項4】
前記薬学的作用物質(a)がDHAである請求項1〜3のいずれかに記載の化学療法組合せ。
【請求項5】
前記化学療法薬(b)が請求項1記載のカンプトテシン誘導体である請求項1〜4のいずれかに記載の化学療法組合せ。
【請求項6】
前記カンプトテシン誘導体が7−t−ブトキシイミノメチルカンプトテシン、7−ベンジルオキシイミノメチルカンプトテシン、7−(2−アミノ)−エトキシイミノメチルカンプトテシン、イリノテカンおよびその活性代謝産物SN−38からなる群から選択される請求項5記載の化学療法組合せ。
【請求項7】
前記化学療法薬(b)がPARP−1阻害薬である請求項1〜4のいずれかに記載の化学療法組合せ。
【請求項8】
前記PARP−1阻害薬がフェナントリジノン、AZD2281またはABT−888である請求項7記載の化学療法組合せ。
【請求項9】
前記化学療法薬(b)がDNA挿入剤またはアルキル化剤である請求項1〜4のいずれかに記載の化学療法組合せ。
【請求項10】
ART、DHAおよびARMからなる群から選択される薬学的作用物質(a);ならびに請求項1記載のカンプトテシン誘導体、PARP−1阻害薬、DNA挿入剤およびアルキル化剤からなる群から選択される化学療法薬(b)からなる化学療法組合せの医薬剤としての使用。
【請求項11】
新生物の防止および/または処置のための医薬剤の調製のための請求項10記載の使用。
【請求項12】
作用物質(a)および(b)が別々に、同時に、または逐次的に投与される請求項11記載の使用。
【請求項13】
前記新生物が、肉腫、癌腫、骨腫瘍、神経内分泌腫瘍、リンパ性白血病、骨髄性白血病、単球性白血病、巨核球性白血病またはホジキン病からなる群から選択される請求項12記載の使用であって、肉腫および癌腫が乳癌;肺癌、例えば非小細胞肺癌(NSCLC)および小細胞肺癌(SCLC);消化器癌、例えば食道、胃、小腸、大腸、直腸および結腸癌;神経膠腫、例えば神経芽細胞種;卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、中皮腫;直腸癌;前立腺癌および皮膚癌からなる群から選択され;あるいは腫瘍が急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、星状細胞腫、膀胱癌、脳幹神経膠腫、中枢神経系非定型奇形/棒状癌、脳癌、中枢神経系胎児性癌、脳癌、星状細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳質上衣芽細胞腫、脳質上衣腫、小児期髄芽細胞腫、髄上皮腫、中分化型の松果体実質癌、テント上原始神経外胚葉性癌および松果体芽腫、乳癌、気管支癌、カルチノイド、子宮頸癌、脊索腫、結腸直腸癌、食道癌、頭蓋外胚細胞癌、胃癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、腎臓癌、喉頭癌、白血病、急性リンパ芽球性/骨髄性白血病、肝臓癌、非ホジキンリンパ腫、髄芽細胞腫、中皮腫、多内分泌腺新生物症候群、鼻咽頭癌、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、乳頭腫症、腎細胞癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺癌および膣癌からなる群から選択される小児癌に関連する使用。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれかに記載の化学療法組合せ、ならびに少なくとも1つの製薬上許容可能な担体および/または賦形剤および/または希釈剤を含む薬学的組成物であって、薬学的作用物質(a)および化学療法薬(b)が単一剤形で、または2つの別個の剤形で存在する薬学的組成物。
【請求項15】
請求項14記載の薬学的組成物の製造方法であって、請求項1記載の少なくとも1つの薬学的作用物質(a)を製薬上許容可能な担体および/または賦形剤および/または希釈剤と、ならびに請求項1記載の科学療法薬(b)を製薬上許容可能な担体および/または賦形剤および/または希釈剤と混合することを包含する方法であって、薬学的作用物質(a)および化学療法薬(b)が単一剤形で、または2つの別個の剤形で存在する方法。
【請求項16】
作用物質(a)および(b)が別々に、同時に、または逐次的に投与される請求項14記載の薬学的組成物の使用。
【請求項17】
請求項16記載の薬学的組成物を投与することからなる新生物の防止および/または処置のための方法。

【公表番号】特表2013−515690(P2013−515690A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545201(P2012−545201)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068924
【国際公開番号】WO2011/076547
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(591043248)シグマ−タウ・インドゥストリエ・ファルマチェウチケ・リウニテ・ソシエタ・ペル・アチオニ (92)
【氏名又は名称原語表記】SIGMA−TAU INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】