説明

アルデヒド及びケトンを水素化する装置

【課題】アルデヒド及び/又はケトンを水素化するための装置を提供する。
【解決手段】本装置はアルデヒド及び/又はケトン中における(例えばH2ガスなどの)水素含有ガスの分散及び溶解を促進させるために高せん断装置の新規の使用を導入している。高せん断装置は低い反応温度及び圧力で使用することができ、また、既存の触媒を用いて水素化時間を短縮させることも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府に支援された研究又は開発に関する記述
適用されない。
【0002】
本発明は概してアルデヒド及び/又はケトンを水素化するための装置及び方法に関し、より詳細には高せん断混合によってそれらの反応を加速させることに関する。
【背景技術】
【0003】
アルデヒド、ケトン及び対応する第一級アルコールは一般的な種類の有機化合物である。アルカリ又はアルカリ土類金属を有するホウ化水素又はアルミニウム水素化物を使用した化学的還元法及び金属触媒による水素化などのアルデヒドを対応する第一級アルコールに転換するための様々な方法があらゆる有機化学の教科書及び特許文献に記載されている。従って、アルデヒド及びケトンを触媒水素化により対応するアルコールに転換することはよく知られている。そのように、アルデヒド及び/又はケトンの水素化を最適化する努力は触媒技術に焦点が当てられてきた。ニッケル担体触媒又はラネーニッケルはアルデヒド及びケトンを水素化するための触媒として頻繁に使用される。触媒はH2とアルデヒド及び/又はケトンとを同時に結合させて、それらの結合を促進させる。白金族金属、特に白金、パラジウム、ロジウム及びルテニウムは高活性触媒の実例である。高活性触媒は低温及びH2ノ低い圧力下において作用する。また、卑金属(non-precious)触媒、特に(ラネーニッケル及びウルシバラニッケルなどの)ニッケルをベースとしたものは経済的な代替品として開発されてきたが、しかしそれらは多くの場合、反応速度が遅いか又は高温を必要とする。活性(反応速度)に対して、触媒の費用及び高圧を使用するために必要な装置の費用が交換条件とされている。
【0004】
アルデヒド及び/又はケトンの水素化を加速させるための非化学的な方法に関してはあまり注目されてこなかった。その結果、アルコールを製造するためにアルデヒド及び/又はケトンの水素化を加速させるためのその他の手段が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6441255号明細書
【発明の概要】
【0006】
アルデヒド及び/又はケトンを水素化するための方法及びシステムが本明細書に説明されている。方法及びシステムはアルデヒド及び/又はケトン中における(例えばH2ガスなどの)水素含有ガスの分散及び溶解を促進させるために高せん断装置の今までにない使用を取り入れている。高せん断装置は低い反応温度及び圧力で使用することができ、また、既存の触媒を用いる水素化時間を短縮させることも可能である。開示された方法及びシステムの更なる利点及び側面が以下に説明されている。
【0007】
ある実施形態において、アルデヒド又はケトンを水素化する方法は、気体−液体ストリームを形成するために水素含有ガスをアルデヒド又はケトンストリームに導入させることを含む。本方法は更に平均直径が約1μm未満の気泡を有する分散体を形成させるために、気体−液体ストリームを高せん断装置を通して流すことを含む。更に、本方法はアルデヒド又はケトンを水素化するために反応器内で気体−液体ストリームを触媒と接触させることを含む。
【0008】
ある実施形態において、アルデヒド又はケトンを水素化するためのシステムは、アルデヒド、ケトン、又はそれらの組み合わせを水素化するために構成される少なくとも1つの高せん断装置を備えている。高せん断装置は回転子及び固定子を備えている。回転子及び固定子は約0.02mmから約5mmの範囲のせん断ギャップによって離れている。せん断ギャップは回転子と固定子との間の最小距離である。高せん断装置は少なくとも1つの回転子が約23m/s(4,500ft/min)より大きい先端速度を生じることができる。更に、システムは液相を含む液体ストリームを高せん断装置に運ぶために構成されるポンプを備えている。
【0009】
以下の発明の詳細な説明をより良く理解するために、上記の記載は本発明の特徴及び技術的利点をやや広めに説明してきた。発明の特許請求の範囲の対象を形成する発明の更なる特徴及び利点は以下に説明される。開示された概念及び特定の実施形態は、本発明と同じ目的を実行するためにその他の構造を修正又は設計するための基礎として容易に利用することができると当業者において理解されるはずである。また、そのような等価な構造は添付の請求項に記載されるように発明の精神及び範囲から逸脱しないことが当業者に理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】発明のある実施形態に基づくアルデヒド又はケトンを水素化するための方法におけるプロセスフロー図である。
【図2】図1のシステムの実施形態において使用される複数段階高せん断装置の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
アルデヒド及び/又はケトンを水素化するための開示された方法及びシステムは、反応器/混合器装置内で制御された環境において水素含有ガスとアルデヒド及び/又はケトンとを迅速に接触及び混合させるために高せん断機械式装置を使用する。本明細書において使用される用語「水素含有ガス」はほぼ純粋な水素ガス及び水素を含むガスの混合物の両方を含む。特に、システム及び方法の実施形態は、アルデヒド及び/又はケトンを水素化することによってアルコールを製造することに使用可能である。好ましくは、方法は液体アルデヒド及び/又はケトンと水素含有ガスとの不均一相反応を含む。高せん断装置は反応における物質移動の制限を減少させるため、全体的な反応速度を上昇させる。
【0012】
液体、気体及び固体を含む化学反応は反応速度を規定するのに、時間、温度、及び圧力に依存する。2つ又はそれ以上の(例えば固体と液体;液体と気体;固体、液体及び気体などの)異なる相の原料を反応させることが望まれる場合、反応速度を制御することにおける律速因子の1つに反応物質の接触時間を含む。不均一触媒反応の場合において、触媒が更なる反応物に触媒作用を及ぼせるように触媒の表面から反応生成物を取り除くといった更なる速度律速因子がある。反応物質及び/又は触媒のための接触時間は多くの場合、化学反応に含まれる2つ又はそれ以上の反応物質間の接触をもたらす混合によって制御される。本明細書に説明される外部高せん断装置又は混合器を備える反応器アセンブリは、物質移動の制限を減少させるため、反応を動力学的限界により近づけることができる。反応速度が加速されるとき、滞留時間は短縮されるため、得られる処理能力は上昇する。生成物収量は高せん断システム及び方法を使用する結果、増加するであろう。或いは、既存の方法における生成物収量が許容範囲であれば、適切な高せん断を取り入れることによって要求される滞留時間を短縮させることで、従来の方法よりも低い温度及び/又は圧力を使用することができる。
【0013】
アルデヒド及びケトンを水素化するためのシステム
高せん断アルデヒド及び/又はケトン水素化システムは図1に関連して示されており、図1はアルデヒド及び/又はケトンの水素化を介してアルコールを製造するための高せん断装置100における実施形態のプロセスフロー図である。代表的なシステムの基礎的構成要素は外部の高せん断装置(HSD)140、容器110、及びポンプ105を含む。図1に示されるように、高せん断装置は容器/反応器110の外部に位置している。これらの構成要素のそれぞれは以下により詳細に説明されている。ライン121はアルデヒド及び/又はケトン反応物質それぞれを導入するためにポンプ105に接続されている。ライン113はポンプ105をHSD140に接続し、ライン118はHSD140を容器110に接続する。ライン122は水素含有ガスを導入するためにライン13に接続されている。ライン117は未反応のアルデヒド及び/又はケトン、及びその他の反応ガスを取り除くために容器110に接続されている。更なる構成要素又は工程段階は、もし必要であれば容器110とHSD140との間、又はポンプ105又はHSD140の前に組み込むことが可能である。高せん断装置、又は高せん断ミルなどの高せん断装置(HSD)は一般的にそれらの流体を混合させる能力に基づいて分類される。混合は流体中で不均一な種又は粒子のサイズを減少させる方法である。混合の程度又は完全さの1つの測定基準は、流体粒子を分散させるために混合装置が生み出す単位体積当たりのエネルギー密度である。分類は届けられるエネルギー密度を基にして区別される。粒子又は気泡のサイズが0から50μmの範囲の混合物又はエマルションを一貫して製造するために十分なエネルギー密度を有する3種類の工業用混合器がある。高せん断機械式装置はコロイドミルと同様にホモジナイザーを含む。
【0014】
均質化弁システムは一般的に高エネルギー装置として分類される。処理される流体は非常に高い圧力の下で狭い隙間の弁を通過して低圧環境に送り出される。弁を介した圧力勾配及び結果的に生じる乱流及びキャビテーションは、流体中のあらゆる粒子を分散するよう作用する。これらの弁システムは一般的に牛乳の均質化において最もよく使用されており、且つ得られる平均粒子サイズは約0.01μmから約1μmの範囲である。その反対側に位置するのは、低エネルギー装置として分類される高せん断混合器システムである。これらのシステムは通常、処理される流体の容器において高速で回転するパドル又は流体回転子を有しており、それのより一般的な利用の多くは食品においてなされている。これらのシステムは通常、処理された流体における平均粒子、又は気泡サイズが20μmより大きいことが許容されるときに使用される。
【0015】
流体に加えられる混合エネルギー密度に関して、低エネルギーである高せん断混合器と均質化弁システムとの間に位置するのはコロイドミルであり、それは中間エネルギー装置として分類される。典型的なコロイドミル構成は円錐又は円盤回転子を備えており、それは0.025mmから10.0mmの間で厳密に制御された回転子−固定子ギャップによって相補的な液冷式の固定子から離れている。回転子は通常、直接駆動又はベルト機構を介して電動機によって駆動される。適切な調節器を備えた多数のコロイドミルによって、処理される流体を約0.01μmから約25μmのサイズの平均粒子、又は気泡とすることができる。これらの能力により、コロイドミルは化粧品、マヨネーズ、又はシリコン/銀アマルガム形成、又は屋根用タールの混合などに必要なコロイド及び水中油エマルション処理を含む様々な応用に適している。
【0016】
流体へのエネルギー導入量(kW/L/min)の概算は、モーターエネルギー(kW)及び流体出力(L/min)を測定することによって見積もることができる。ある実施形態において、高せん断装置のエネルギー消費量は1000W/m3より多い。ある実施形態において、エネルギー消費量は約3000W/m3から約7500W/m3の範囲である。高せん断装置において発生するせん断速度は20,000s-1より大きくてもよい。ある実施形態において、発生するせん断速度は20,000s-1から100,000s-1の範囲である。
【0017】
先端速度はエネルギーを反応物質に伝達する1つ又は複数の回転要素の先端と関連する速度(m/sec)である。回転要素の先端速度は単位時間当たりの回転子の先端が移動する円周距離であり、一般的には方程式V(m/sec)=π・D・nによって定義され、そこでVは先端速度、Dはメートル単位の回転子の直径であり、nは1秒当たりの回転数である回転子の回転速度である。したがって先端速度は回転子の直径及び回転速度の関数である。また、先端速度は回転子の先端が移動する円周距離2πRに回転数(例えば分当たりの回転数、rpm)を乗じることによって算出可能であり、Rは回転子の半径(例えばメートル)である。
【0018】
コロイドミルに対して、一般的な先端速度は23m/sec(4500ft/min)より速く、且つ40m/sec(7900ft/min)より速くてもよい。本開示の目的のために、用語「高せん断」はミル又は混合器などの機械式の固定子−回転子装置を指し、それらは5m/sec(1000ft/min)より速い先端速度が実現可能であり、エネルギーを反応生産物のストリームに加えるために外部の機械的駆動発電装置を必要とする。高せん断装置は処理される材料に対するかなりの摩擦を発生させるために、高速の先端速度と非常に小さいせん断ギャップが組み合わされる。従って、操作の間に、約1000MPa(約145,000psi)から約1050MPa(152,300psi)の範囲の局所圧力を生じ、且つせん断混合器の先端における温度を上昇させる。ある実施形態において、局所圧力は少なくとも約1034MPa(約150,000psi)である。
【0019】
図2を参照すると、高せん断装置200の図が示されている。高せん断装置200は少なくとも1つの回転子−固定子の組み合わせを備えている。また、回転子−固定子の組み合わせは発生器220、230、240、又は制限のない段階として知られている。高せん断装置200は少なくとも2つの発生器を備えており、最も好ましくは高せん断装置は少なくとも3つの発生器を備える。
【0020】
第1発生器220は回転子222及び固定子227を備えている。第2発生器230は回転子223及び固定子228を備えている。第3発生器は回転子224及び固定子229を備えている。それぞれの発生器220、230、240において、回転子は動力250によって回転駆動される。発生器220、230、240は回転方向265において軸260周りに回転する。固定子227は高せん断装置の壁部255に固定するよう連結されている。
【0021】
発生器は回転子及び固定子との間に隙間を設けている。第1発生器220は第1ギャップ225を有し;第2発生器230は第2ギャップ235を有し;及び第3発生器240は第3ギャップ245を有している。ギャップ225、235、245は約0.025mm(0.01インチ)から10.0mm(0.4インチ)の間の幅である。或いは、方法には高せん断装置200の利用が含まれ、ギャップ225、235、245は約0.5mm(0.02インチ)から2.5mm(0.1インチ)の間である。ある実施例において、隙間は約1.5mm(0.06インチ)に維持されている。或いは、ギャップ225、235、245は発生器220、230、240の間で異なる。ある実施例において、第1発生器220のギャップ225は第2発生器230のギャップ235よりも大きく、ギャップ235は第3発生器240のギャップ245よりも大きい。
【0022】
更に、ギャップ225、235及び245の幅は粗い、中間、細かい、非常に細かいという特性を備えることができる。回転子222、223及び224、並びに固定子227、228及び229は歯状構造であってもよい。それぞれの発生器は当業者に周知のように2つ又はそれ以上の回転子−固定子歯のセットを備えている。回転子222、223及び224はそれぞれの回転子の外周近くに円周方向に離間した多数の回転子歯を備えることができる。固定子227、228及び229は、それぞれの固定子の外周近くに円周方向に離間した多数の固定子歯を備えることができる。回転子及び固定子は任意の適したサイズである。1つの実施形態において、回転子の内径は約64mmであり、固定子の外径は約60mmである。更なる実施形態において、回転子及び固定子は先端速度及びせん断圧力を変更するために、別の直径を有していてもよい。ある実施形態において、それぞれの3つの段階は、約0.025mmから約3mmの隙間を有する非常に細かい発生器を備えた状態で操作される。固形粒子を含む供給ストリーム205が高せん断装置200を通過して送られるとき、適切なギャップ幅は適切に粒子サイズを減少させて且つ粒子の表面積を増加させるために最初に選択される。ある実施形態において、このことは粒子をせん断及び分散することよって触媒の表面積を増加させるため有益である。
【0023】
高せん断装置200には供給ストリーム205を含む反応混合物が供給される。供給ストリーム205は分散相及び連続相のエマルションから成る。エマルションは互いが容易に混合及び溶解することのない2つの区別できる物質(又は相)を含む液体混合物を指す。大部分のエマルションは連続相(又はマトリックス)を有しており、それはその他の相又は物質の不連続な液滴、気泡、及び/又は粒子をそこへ保持する。エマルションはスラリー又はペーストなどのように高粘性であるか、又は液体中に細かい気泡を有する泡であろう。本明細書で使用されているように、用語「エマルション」は気泡を含む連続相、(例えば固形触媒などの)粒子を含む連続相、連続相にほぼ溶解しない流体の液滴を含む連続相、及びそれらの組み合わせを包含する。
【0024】
供給ストリーム205は粒子状の固体触媒成分を含んでいてもよい。供給ストリーム205は生成物分散体210が形成されるように発生器220、230、240を通して送り込まれる。それぞれの発生器において、回転子222、223、224は固定された固定子227、228、229に対して高速で回転する。回転子の回転は、回転子222の外側と固定子227の内側との間に供給ストリーム205などの流体を送り込み、局所的な高せん断条件を作り出す。ギャップ225、235、245は供給ストリーム205を処理する高せん断力を発生させる。回転子と固定子との間の高せん断力は生成物分散体210を形成するように供給ストリーム205を処理するよう作用する。高せん断装置200のそれぞれの発生器220、230、240は、供給ストリーム205が気体を含んでいる場合には所望の気泡サイズ、又は供給ストリーム205が液体を含んでいる場合には所望の小球サイズの狭い分散を生成物分散体210中に形成するために取替え可能な回転子−固定子の組み合わせを有する。
【0025】
液体中の気体粒子、又は気泡を有する生成物分散体210はエマルションを含む。ある実施形態において、生成物分散体210は従来は混ざらなかった又は溶解しなかった気体、液体又は固体の連続相への分散体を含んでいる。生成物分散体210は平均サイズが約1.5μm未満の気体粒子、又は気泡を有する;好ましくは気泡の直径はサブミクロンである。ある実施形態において、平均気泡サイズは約1.0μmから約0.1μmの範囲内である。或いは、平均気泡サイズは約400nm(0.4μm)未満であり、最も好ましくは約100nm(0.1μm)未満である。
【0026】
高せん断装置200は少なくとも約15分間大気圧において分散を維持できる気体エマルションを形成する。本開示の目的のために、生成物分散体210の分散相において直径が1.5μm未満の気体粒子又は気泡を有するエマルションは微細な泡(micro-form)を含む。特定の理論に制限されることなく、乳化化学において液体中に分散されるサブ−ミクロンの粒子、又は気泡は、主としてブラウン運動効果を通じて運動することが知られている。高せん断装置200によって作り出される生成物分散体210のエマルション中の気泡は、固体触媒粒子の境界層を通過する優れた運動性を有しているため、反応物質の高められた移動性によって触媒反応を促進及び加速させることができる。
【0027】
回転子は上述したように回転子の直径と所望の先端速度に見合う速度で回転するように設定される。輸送抵抗は反応速度が少なくとも約5%上昇するよう高せん断装置200を組み込むことによって減少される。或いは、高せん断装置200は加速速度反応器(ARR)として働く高せん断コロイドミルを備えることができる。加速速度反応器は一段階の分散チャンバを備える。加速速度反応器は少なくとも2つの段階を有する複数段階直列分散器を備えている。
【0028】
高せん断装置200の選択は必要な処理量及び排出分散体210における所望の粒子又は気泡のサイズに依存する。ある実施例において、高せん断装置200はノースカロライナ州ウィルミントン(Wilmington,NC)のIKA(登録商標)ワークス,インコーポレーテッド(IKA(R)Works Inc.)及びマサチューセッツ州ウィルミントン(Wilmington,MA)のAPV ノース アメリカ,インコーポレーテッド(APV North America,Inc.)のディスパックス リアクター(登録商標)(Dispax Reactor(R))を備えている。例えば、モデルDR2000/4はベルト駆動、4M発生器、PTFEシーリングリング、1インチの導入口フランジ用衛生クランプ、3/4インチの排出口フランジ用衛生クランプ、2馬力の出力、7900rpmの出力速度、(発生器に依存する)約300から約700l/hの(水の)流動能力、9.4から約41m/s(約1850ft/minから約8070ft/min)の先端速度を含む。様々な導入口/排出口接続、馬力、公称先端速度、出力rpm、及び公称流速を有するいくつかの代替モデルが利用可能である。
【0029】
特定の理論に制限されることは望まないが、高せん断混合のレベル又は程度は、物質移動の速度を増加させるのに十分であり、また、その他の場合ではギブスの自由エネルギー予測に基づいて起こる事が予測されない反応を起こすことが可能な局所的な非理想条件を作り出すことができると考えられている。局所的な非理想条件は高せん断装置内で起こり、その結果、最も大きな増加は局所的圧力において生じると想定される温度及び圧力の上昇をもたらす。高せん断装置内での圧力及び温度の上昇は、瞬時及び局所的であり、一旦高せん断装置を出ると即座に残り大部分の又は平均のシステム状態に戻る。いくつかの場合において、高せん断混合装置は1つ又は複数の反応物を遊離基に解離させるために十分な強度のキャビテーションを誘発させ、遊離基は化学反応を増大させるか又はその他の場合に必要とされるよりも緩和された条件で反応を起こすことを可能にする。また、キャビテーションは局所乱流及び液体マイクロ循環(音響ストリーム)を形成することによって輸送工程の速度を上昇できる。
【0030】
容器
容器又は反応器110は上記された転換反応を実行するために多相反応が伝播できる任意の種類の反応器である。例えば、連続又は半連続撹拌槽型反応器、又は1つ又は複数の回分反応器は、直列又は並列に使用される。いくつかの実施形態において、容器110は塔型反応器であり、及びその他の実施形態においては管状反応器又は複数管状反応器である。触媒入口ライン115はシステムの稼動中に触媒の溶液又はスラリーを受け取るために反応器110に接続可能である。
【0031】
容器110は、1つ又は複数の以下の要素を含むことが可能であり、撹拌システム、加熱及び/又は冷却機能、圧力測定器具、温度測定器具、1つ又は複数の注入部、及び水位制御装置(図示されない)などの反応容器設計の技術分野において知られているものを含む。例えば、撹拌システムはモーター駆動混合器を含む。加熱及び/又は冷却装置は、例えば熱交換器を含む。或いは、いくつかの実施形態において、多くの転換反応はHSD140内で起こるため、いくつかの場合において容器110は主として貯蔵容器として機能する。一般的にあまり望まれないが、いくつかの応用において更に以下に説明するように、特に複数の高せん断装置/反応器が直列で使用される場合、容器110は除くことができる。
【0032】
伝熱装置
上述した容器110の加熱/冷却機能に加えて、処理ストリームを加熱又は冷却するためのその他の外部又は内部伝熱装置も、図1に図示される実施形態の変形形態において考慮される。システム1が多重パスモードにおいて操作されるとき、1つ又は複数のそのような伝熱装置のために適した場所は、ポンプ105とHSD140との間、HSD140と容器110との間、及び容器110とポンプ105との間である。それらの伝熱装置のいくつかの制限されない実施例は、当業者に周知なように、シェル(shell)及び管(tube)、板(plate)及びコイル(coil)状の熱交換器である。
【0033】
ポンプ
ポンプ105は連続又は半連続稼働のいずれかのために構成されており、HSD140及びシステム1を通る制御された流れを可能にするように、2気圧より大きい圧力、好ましくは3気圧より大きい圧力を提供できる任意の適したポンプ装置である。例えば、ローパー ポンプ カンパニー(Roper Pump Company)(ジョージア州コマース(Commerce Georgia))のローパー タイプ 1 歯車ポンプ(Roper Type 1 gear pump)、デイトン エレクトリック カンパニー(Dayton Electric Co)(イリノイ州ナイルズ(Niles,IL))のデイトン圧力増圧ポンプモデル2P372E(Dayton Pressure Booster Pump Model 2P372E)は1つの適したポンプである。好ましくは、ポンプの全ての接触部分はステンレス鋼から成る。システムのいくつかの実施形態において、ポンプ105は約20気圧より大きい圧力を生じることが可能である。ポンプ105に加えて、1つ又は複数の付加的高圧力ポンプ(図示されない)が図1に図示されるシステムに含まれてもよい。例えば、ポンプ105と同様の増圧ポンプは、容器110内の圧力を増圧させるためにHSD140と容器110との間に備えられる。他の実施例として、ポンプ105と同様の補足的な供給ポンプは、追加の反応物又は触媒を容器110へ導入するために備えることができる。
【0034】
アルデヒド及びケトンの水素化
アルデヒド及び/又はケトンそれぞれの触媒水素化のための操作において、分散性水素化含有ガスストリームはライン122を介してシステム100内に導入されて、そして気体−液体ストリームを形成するためにライン113においてアルデヒド及び/又はケトンストリームと混合させる。水素含有ガスは、例えば水素、又は任意のその他の適した水素含有分子ガス、又はガスの混合物である。或いは、水素含有ガスはライン113において液体反応物(すなわちアルデヒド及び/又はケトン)と混合させることに代えて、直接HSD140に供給することができる。ポンプ105はライン121を通して液体反応物(アルデヒド及び/又はケトン)を送り込んで圧力を形成してHSD140に供給するように操作することで、高せん断装置(HSD)140及び高せん断システム100全体に制御されたフローをもたらすことができる。
【0035】
好ましい実施形態において、水素ガスはライン113において(例えば気体−液体ストリームなどの)高せん断層装置供給ストリームを形成するために、アルデヒド/ケトンストリーム112に連続して供給できる。高せん断装置140において、水素ガス及びアルデヒド及び/又はケトンは、溶液中への水素含有ガスの優れた分散のために水素含有ガスのナノ気泡及び/又はマイクロ気泡が形成されるように高度に分散される。一旦分散されると、分散体は高せん断装置出口ライン118から高せん断装置140を出る。ストリーム118はスラリー触媒工程に代えて流動又は固定層142に選択的に入ることが可能である。しかしながら、スラリー触媒の実施形態において、高せん断出口ストリーム118は水素化のために水素化反応器110に直接入ることができる。反応ストリームは反応温度を維持するために反応器110内で冷却コイルを使用して特定の反応温度に維持できる。水素化生成物(例えばアルコール)は生成物ストリーム116において回収される。
【0036】
例示的な実施形態において、高せん断装置は直列に配置されて固定子と組み合わされる3つの回転子を備えて構成される高せん断3段階分散装置であるIKA(登録商標)モデルDR2000/4などの市販の分散器を備えている。分散器はアルデヒド及び/又はケトン(すなわち「反応物」)を含む液状媒体中に水素含有ガスの分散体を作り出すために使用される。回転子/固定子のセットは、例えば図2に示されるように構成されている。混合された反応物はライン113を通して高せん断装置に入り、円周方向に間隔の空いた第1段階せん断開口部を有する第1段階の回転子/固定子の組み合わせに入る。第1段階を出て行く粗い分散体は第2段階せん断開口部を有する第2回転子/固定子段階に入る。第2段階で生じる気泡サイズの減少した分散体は、第3段階せん断開口部を有する第3段階の回転子/固定子の組み合わせに入る。分散体はライン118を介して高せん断装置を出る。いくつかの実施形態において、せん断速度は流れの方向に沿った長手方向において段階的に増加する。例えば、いくつかの実施形態において、第1回転子/固定子段階におけるせん断速度は、後の段階のせん断速度より大きい。その他の実施形態において、各段階は同一であり、せん断速度は流れの方向に沿ってほぼ一定である。高せん断装置がPTFEシールを有する場合、例えばシールは当業者に周知の任意の適した技術を用いて冷却することができる。例えば、ライン113を流れる反応物ストリームはシールを冷却するために使用され、その際、高せん断装置に入る前に望み通りに予熱される。
【0037】
HSD140の回転子は、回転子の直径と所望の先端速度に見合う速度で回転するように設定される。上述したように、高せん断装置(例えばコロイドミル)は固定子と回転子との間に固定された隙間を有するか又は調節可能な隙間を有している。HSD140は水素含有ガスと反応物液体(すなわち、アルデヒド及び/又はケトン)とが完全に混合するように機能する。方法のいくつかの実施形態において、反応物の輸送抵抗は、反応の速度が約5倍を超えて増加するように、高せん断装置を稼動することで減少される。いくつかの実施形態において、反応の速度は少なくとも10倍増加する。いくつかの実施形態において、速度は約10から約100倍の範囲で増加する。いくつかの実施形態において、HSD140は少なくとも4500ft/min、それは7900ft/min(140m/s)を超えてもよい公称先端速度で1.5kWの電力消費で少なくとも300L/h運ぶ。HSD140における回転せん断ユニット又は回転要素の先端における瞬間の温度及び圧力の測定は困難であるが、完全に混合された反応物に見られる局所的な温度は500℃を超えており、圧力は高せん断条件の下で500kg/cm2を超えることが見積もられる。高せん断混合は水素含有ガスがミクロン又はサブミクロンサイズの気泡で分散されるという結果になる。いくつかの実施形態において、結果的に生じる分散体は平均気泡サイズが約1.5μm未満である。それにより、ライン118を介してHSD140を出て行く分散体はミクロン及び/又はサブミクロンサイズの気泡を含む。いくつかの実施形態において、平均気泡サイズは約0.4μmから約1.5μmの範囲である。いくつかの実施形態において、平均気泡サイズは約400nm未満であり、いくつかの場合において約100nmである。多くの実施形態において、マイクロ気泡分散体は少なくとも15分間大気圧で分散を維持できる。
【0038】
一旦分散されると、結果的に生じる気体/アルデヒド、気体/ケトン、又は気体/ケトン/アルデヒドの分散体は、図1に示されているように、ライン118を介してHSD140を出て容器110に供給される。容器110に入る前の反応物の完全な混合の結果、大部分の化学反応は触媒の有無にかかわらずHSD140内で起こる。また、水素化はHSD内で起こり、その結果HSDからアルコールが排出される。これはHSD内の反応条件によって進行される。従って、いくつかの実施形態において、反応器/容器110は主として加熱及びアルコール生産物からの揮発性反応生成物の分離に使用される。或いは、又は更に、容器110は大部分のアルコールが生産される主要な反応容器として機能する。容器/反応器110は連続又は半連続フローモードで操作されるか、又はバッチモードで操作可能である。容器110の内容物は加熱及び/又は冷却機能(例えば冷却コイル)及び温度測定器具を用いて特定の反応温度に維持することができる。容器内の圧力は適切な圧力測定器具を用いて監視されて、容器内の反応物の水位は当業者に周知の技術を用いた水位制御装置(図示されない)を用いて制御可能である。内容物は連続的に又は半連続的に撹拌される。
【0039】
通常知られている水素化反応条件は、触媒を用いてアルデヒド及び/又はケトンを水素化することによってアルコールを製造する条件として、適切に用いることができる。反応条件に関する特別な制限はない。しかしながら、水素の圧力は通常、大気圧から100atm、より好ましくは10から60atmの範囲内から選択され、且つ反応温度は約15℃から約350℃、或いは約20℃から約220℃の範囲内である。
【0040】
システム100に供給される水素含有供給ガスは、好ましくは多量の水素、及び少量の1つ又は複数の窒素、メタン、例えばエタン、プロパン、n−ブタン及びイソ−ブタンであるその他の低分子量炭化水素、酸化炭素、ネオン、アルゴンなどの不活性ガスを含む。水素含有ガスは1つ又は複数のN2、CO、CO2、Ar、Ne、CH4及びその他の低分子量飽和炭化水素を含む残りと共に、少なくとも約50モル%から約95モル%又はそれ以上(例えば約99モル%)のH2を含み得る。ある場合において、例えば、ニッケル触媒を使用するとき、CO及びCO2の存在を許容することができず、且つ水素含有供給ガスにおける酸化炭素の合計濃度は約5ppmを超えるべきではない。そのような水素含有ガスは(例えばH2S、COS、CH3SH、CH3SCH3及びCH3SSCH3などの)硫黄不純物及び(例えばHCl及びCH3Clなどの)ハロゲン含有不純物などの不純物を取り除くために、適切な下処理がなされる合成ガス及びその他の通常の水素含有ガスの供給源から従来通り得ることができ、それらの不純物は触媒活性に対して有害な影響を与える、すなわち触媒阻害、触媒毒又は失活である。好ましい水素含有ガスは通常の製造技術に基づいて調製される。従って、水素含有供給ガスは例えば、天然ガスの水蒸気改質によって製造される94モル%の水素ストリームである。
【0041】
反応のためのアルデヒド及び/又はケトンは単独又は異なるタイプの混合物として組み合わせて使用される。水素化されるアルデヒド及びケトンは脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、脂肪族−芳香族又は脂肪族−ヘテロ芳香族などの任意の構造である。また、それらはその他の官能基を含み、これらの官能基が転換しないよう維持しなければならないか又はそれ自身を水素化しなければならないかどうかが前もって決定されなければならない。
【0042】
開示された方法の実施形態は直鎖又は分枝アルデヒドを水素化するために適しているであろう。説明された方法は2から22の炭素原子を含む様々な直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和アルデヒドを水素化するために使用することができる。これらのアルデヒドは、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソペンチルアルデヒド、n−ペンチルアルデヒド、2−メチルペンチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルヘキサアルデヒド、メチルペンチルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒドなどの飽和アルデヒド、及びアクロレイン、2−エチルプロピルアクロレインなどの不飽和C3−8アルデヒド、及びベンズアルデヒド、フルアルデヒド、ピリジニルアルデヒドなどを含み、これらに制限されない。アルデヒドはほぼ純粋な状態か又はアルデヒド以外の要素と混合されていてもよい。更に、アルデヒドの混合物も使用可能である。脂肪族炭化水素のためにアルコール、エステルは溶媒として使用可能であることが考えられる。
【0043】
ケトンは化学式R1(C=O)R2である任意の化合物である。R1−R2はアルキル基、環状基、芳香族、複素環基、アルケニル基、又はそれらの組み合わせを個別に含む。R1−R2は同じであっても互いに異なっていてもよい。
【0044】
触媒
触媒が水素化反応を促進させるために使用される場合、触媒は含水又は非水のスラリー又はストリームとしてライン115を介して容器内に導入される。或いは、又は更に、触媒はシステム100の他の場所に加えられてもよい。例えば、触媒スラリーはライン121に注入される。いくつかの実施形態において、ライン121は、アルデヒド及び/又はケトンストリーム及び/又は容器110からのアルデヒド/ケトン再循環ストリームの流れを含んでいてもよい。
【0045】
ある実施形態において、水素化反応を触媒することに適した任意の触媒が使用される。窒素などの不活性ガスは反応器110を満たしてあらゆる空気及び/又は酸素を除去するために使用される。また、当業者に周知の任意の触媒は水素化に使用することができる。適した触媒はアルデヒド及び/又はケトンを水素化するために通常使用される任意の触媒である。これらような触媒は水素化に適した形態の1つ又は複数の遷移金属、又は1つ又は複数の遷移金属の化合物を一般に含む。好ましくは周期表のVIII又はVIIIA族の1つ又は複数の金属及び/又は1つ又は複数のそれらの化合物を含む触媒が発明に基づく方法に使用される。鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム及び白金である金属並びにそれらの化合物は特に優れていることが立証されている。経済的理由、またそれの特定の効果によって、ニッケル又は1つ又は複数のその化合物は、開示された方法においてアルデヒド及び/又はケトンを水素化するために触媒として使用するのに特に便利である。これらは銅ベース及び白金ベースの水素化触媒を含む。適した触媒のその他の例は銅クロマイト;コバルト化合物;ニッケル;少量のクロム又はその他の促進剤を含むニッケル化合物;銅及びニッケル及び/又はクロムの混合物;及び還元された銅酸化−亜鉛酸化物の混合物を含み、これらに制限されない。方法の実施形態において、任意の説明された触媒を使用することができる。
【0046】
ある実施形態において、触媒はルテニウム触媒であってもよい。本発明のルテニウム触媒は、メタノール、ホルムアルデヒド及びギ酸から成る群より選択される還元剤でアルカリ金属ルテニウム酸塩を還元することによって得ることができる。それは担体に担持されることが好ましい。使用される担体に関する特別な制限はない。それは活性炭素、アルミナ又はシリカであろう。しかしながら、特に高活性触媒を製造するために活性炭素を担体として使用することが好ましい。担体に担持される触媒を調製するために、水溶液又はアルカリ金属ルテニウム酸塩のアルカリ水溶液を始めに担体中に含浸させる。
【0047】
実施形態において、触媒活性金属ルテニウムが、酸化アルミニウム、二酸化チタン、珪藻土、シリカゲル、分子篩、及び天然又は合成由来のゼオライトなどの適した担体材料に微細化された状態で保持されて触媒が使用される。触媒の担体材料が活性炭素から成る触媒が好ましい。発明によると、これらの担体触媒は前述したように微細なパウダーとして使用されるが、凝集した塊の多い形状である。触媒は触媒供給ストリーム115を通過して反応器110に供給される。
【0048】
反応物の大部分又は全体的な操作温度は望ましくはそれらの引火点未満に維持される。いくつかの実施形態において、システム100の操作条件は温度が約50℃から約300℃の範囲の温度を含む。ある実施形態において、容器110内の反応温度は、特に、約90℃から約220℃の範囲である。いくつかの実施形態において、容器110内の反応圧力は約5atmから約50atmの範囲である。
【0049】
必要であれば、分散体は(矢印18によって示されるように)容器110に入る前に更に処理される。容器110において、アルデヒド及び/又はケトンの水素化は触媒水素化によって起こる。容器の内容物は連続的に又は半連続的に撹拌されて、反応物の温度は(例えば、熱交換器を使用して)制御され、容器110内の流体の水位は一般的な技術を用いて制御される。アルデヒド及び/又はケトンの水素化は、特定の応用に対して望まれるように連続的に、半連続的に又はバッチ式で起こる。製造されるあらゆる反応ガスはガスライン117を介して反応器110を出る。このガスストリームは、例えば未反応のアルデヒド及び/又はケトン、及び水素含有ガスを含んでいてもよい。好ましくは、反応物はガスストリームが約6重量%未満の水素含有ガスを含むように選択される。いくつかの実施形態において、ライン117の反応ガスストリームは約1重量%から約4重量%の水素含有ガスを含む。ライン117を介して取り除かれる反応ガスは更に処理されて、成分は必要に応じて再利用可能である。
【0050】
未転換アルデヒド及び/又はケトン及び対応する副産物を含む反応生成物ストリームは、ライン116を通って容器110を出る。アルコール生成物は当業者に周知なように回収されて処理される。
【0051】
多重パス操作
図1に示される実施形態において、システムは単一パス稼働用に構成されており、容器110からの排出物はアルコール生成物を回収するために直接更なる処理に向かう。いくつかの実施形態において、第2パスの間に、容器110の内容物、又は未反応アルデヒド及び/又はケトンを含む液体分をHSD140を通過させることが望まれる。この場合において、ライン116は、点線ライン120を介してライン121に接続され、そして容器110からの再利用ストリームはポンプ105によってライン113に送り込まれてHSD140に入る。追加の水素含有ガスはライン122を介してライン113に注入されるか、又は高せん断装置に直接加えられる(図示されない)。
【0052】
多重高せん断混合装置
いくつかの実施形態において、HSD140のような、又は異なる構成である2つ又はそれ以上の高せん断装置は、直列に配置されて、反応を更に促進させるために使用される。それらの操作はバッチ又は連続モードのどちらかである。単一パス又は「貫流(once through)」方法が望まれるいくつかの実施例において、直列に配置された複数の高せん断装置の使用も有益である。複数の高せん断装置が直列に稼働されるいくつかの実施形態において、容器110は省略可能である。いくつかの実施形態において、複数の高せん断装置140は並列に稼働されて、そこからの排出口分散体は1つ又は複数の容器110に導入される。
【0053】
発明の実施形態が示されて説明される一方で、それらの修正は発明の精神及び教示を逸脱することなく当業者によって行うことができる。本明細書で説明された実施形態は単なる例示であり、制限されるものではない。本明細書に開示された発明の多数の変更及び修正は可能であり、発明の範囲内である。数値の範囲又は限定が明示的に定められているところでは、そのような明示された範囲又は限定は、明示的に定められた範囲又は限定の範囲内で同等の値の反復範囲又は限定を含むと解されるべきである。含む(comprises、includes)、有する(having)などの広い用語の使用は、から成る(consisting of)、基本的に・・から成る(consisting essentially of)、実質的に・・・を含む(comprised substantially of)及びそれと同等の狭い用語を支持すると解されるべきである。従って、保護の範囲は上述の説明によって制限されず、以下の請求項によってのみ制限され、範囲は請求項の主要な問題と同等なもの全てを含む。それぞれ及び全ての請求項は本発明の実施形態として明細書に組み込まれている。従って、請求項は更なる説明であり、本発明の好ましい実施形態への追加である。本明細書中に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物の開示内容は、それらが実施例、手順又はその他の詳細を補足的に本明細書において説明されたものに提供する範囲内で、参照することによって本明細書において援用される。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒド、ケトン、又はそれらの組み合わせを水素化するための装置であって、
アルデヒド、ケトン、又はそれらの組み合わせを水素化するために構成される少なくとも1つの高せん断装置;及び
液相を含む液体ストリームを高せん断装置へ運ぶために構成されたポンプ
を含み、前記高せん断装置は回転子及び固定子を備えており、前記回転子及び前記固定子は0.02mmから5mmの範囲のせん断ギャップによって離れており、前記せん断ギャップは前記回転子と前記固定子との間の最小距離であって、且つ前記高せん断装置は少なくとも1つの回転子が23m/s(4,500ft/min)より大きい先端速度を形成可能である装置。
【請求項2】
請求項1の装置であって、高せん断装置は2つ又はそれ以上の回転子及び2つ又はそれ以上の固定子を備えている装置。
【請求項3】
請求項1の装置であって、前記高せん断装置は回転先端を備え、前記装置は少なくとも23m/secの先端速度で少なくとも300L/hの流速で稼働するように構成される装置。
【請求項4】
請求項1の装置であって、前記高せん断装置は先端速度が少なくとも40m/secで作動するように構成される装置。
【請求項5】
請求項1の装置であって、少なくとも1つの高せん断装置はアルデヒド、ケトン又はそれらの組み合わせを含む液相中に水素含有気泡の分散体を形成するように構成されており、分散体の平均気泡直径は100nm未満である装置。
【請求項6】
請求項1の装置であって、少なくとも2つの高せん断装置を備える装置。
【請求項7】
請求項1の装置であって、固定層反応器を備え、反応器は水素化触媒を含む装置。
【請求項8】
請求項1の装置であって、高せん断装置は少なくとも2つの発生器を備える装置。
【請求項9】
請求項8の装置であって、1つの発生器によって発生するせん断速度は他の発生器によって発生するせん断速度よりも大きい装置。
【請求項10】
請求項1の装置であって、前記高せん断装置に連結されたアルデヒド、ケトン、又はそれらの組み合わせを水素化するための追加の反応器を含み、前記反応器は前記高せん断装置から前記分散体を受け取るように構成されている装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−14595(P2013−14595A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182919(P2012−182919)
【出願日】平成24年8月22日(2012.8.22)
【分割の表示】特願2010−510567(P2010−510567)の分割
【原出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(509218652)エイチ アール ディー コーポレーション (17)
【Fターム(参考)】