説明

アルデヒド吸着材及び消臭繊維シート

【課題】
人体に有害なVOCガスならびに生活臭に含まれるアルデヒド類ならびに芳香族類の吸着性能を有する消臭繊維シートを安価に提供すること。
【解決手段】
A型およびX型から選ばれる少なくとも1種のゼオライトおよびヒドラジド化合物からなるアルデヒド吸着材を用いる。
ゼオライトとヒドラジド化合物の重量比は50:1〜2:1の範囲が好適である。
繊維シートに上記アルデヒド吸着材を担持させ、消臭繊維シートとする。
吸着材がバインダーを含む場合は、ゼオライトとバインダーの重量比は20:1〜2:1の範囲が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライトおよびヒドラジン誘導体から構成される吸着材および該吸着材を担持させた消臭繊維シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年建設される住宅は、気密性が著しく高く、冷暖房にかかるエネルギーの削減効果は著しく向上しているが、自然な空気の流れによる換気は期待できない状況である。これは自動車内でも同様であり、内装材や製造に不可欠な接着剤やプラスチック成型物などから発生するVOC(揮発性有機化合物)ガスについて、製造各社が削減の努力を進めている。VOCガスは、現代人の生活環境に欠かせない自動車、家電製品、家具、住宅建材等、あらゆる物質から発生する可能性がある。
【0003】
一方、我々を取巻く生活環境において発生する生活臭についても様々な対応が考えられている。例えばアンモニア、硫化水素、メルカプタン、アルデヒド、酢酸、等が挙げられるが、中でもタバコ臭の原因になる成分としては、アンモニア、アルデヒド、ピリジン等が代表的な悪臭として取り上げられる。
VOCガスならびに生活臭において、アルデヒド類はとりわけ除去することが困難でその発生量も大きいため、大きな問題である。
【0004】
このような背景から、近年、高度な消臭機能を有する製品に対する要望が益々高まっている。繊維製品を例にとると、難水溶性ヒドラジド化合物を繊維原料に練りこんだ消臭繊維(特許文献1)や、無機多孔質粒子、酸化亜鉛、ヒドラジド化合物をバインダーとともにポリエステル織物に塗付熱処理した消臭生地(特許文献2)等が提案されている。また細孔サイズを緻密に制御された活性炭素材やゼオライトなども盛んに開発されている。とくにゼオライトは、その合成条件により単分散かつ様々なサイズの細孔を実現でき、さらに後処理により細孔内の性質を変化できるなど、活性炭とは異なる方向性で開発が進められている。
【0005】
ゼオライトは、三次元骨格構造を有する結晶性アルミノケイ酸塩である。ゼオライトの種類としては、A型、X型、Y型、L型やβ型、ZSM−5等がある。これらの中で特にY型やβ型、ZSM−5等のゼオライトがアルデヒド類等のガスの吸着能力に優れることからガス吸着材として用いられることが多い。
【0006】
しかしながら、Y型やβ型、ZSM−5等はゼオライトの合成温度が高いなどの問題があり、且つ高価である。比較的安価なA型、X型のゼオライトを用いた場合は、アルデヒド類のガスの吸着能力が十分ではないという問題があった。
合成温度も低くかつ工業的生産量も多い、比較的安価なA型、X型のゼオライトを利用した消臭製品は経済的なメリットが高く、開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2818929号公報
【特許文献2】特許第3605985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、人体に有害なVOCガスならびに生活臭に含まれるアルデヒド類ならびに芳香族類の吸着性能を有する消臭繊維シートを安価に提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、A型およびX型から選ばれる少なくとも1種のゼオライトにヒドラジド化合物を併用することにより、ゼオライト元来の芳香族類吸着能力を損なうことなく、アルデヒド類化合物の吸着性能を飛躍的に向上させた吸着材が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の技術を基礎とする。
【0010】
[1]A型およびX型から選ばれる少なくとも1種のゼオライトおよびヒドラジド化合物からなるアルデヒド吸着材。
[2]前記ゼオライトとヒドラジド化合物の重量比が50:1〜2:1の範囲であることを特徴とする[1]記載のアルデヒド吸着材。
[3]上記[1]記載のアルデヒド吸着材を担持させたことを特徴とする繊維シート。
[4]吸着材がバインダーを含み、前記ゼオライトとバインダーの重量比が20:1〜2:1の範囲であることを特徴とする[3]記載の繊維シート。
【発明の効果】
【0011】
従来、アルデヒド類の吸着能力はほとんど無いと考えられていたA型およびX型のゼオライトを組み合わせて使用することにより、単にヒドラジド化合物がアルデヒド類と反応してアルデヒド類のガスを除去する量以上のガスを除去する性能を発揮することを見出し、本発明を完成したものである。本発明のアルデヒド吸着材は、十分なアルデヒド類の吸着性能を有するとともに、Y型やβ型、ZSM−5等のゼオライトよりなる吸着材より、工業的に有利に得ることができ、且つ安価に提供することが可能となる。
【0012】
前記[1]および[2]の発明によれば、アルデヒド類に対して吸着効果が低いと評価されてきたAおよびX型など、比較的な安価なゼオライトを利用して、飛躍的に高い吸着性能を有する吸着材を製造することができる。
【0013】
前記[3]および[4]の発明によれば、耐久性の優れた消臭繊維シートが製造でき、さらに適宜の大きさに切断、成形、接着、縫製することで多様な消臭製品が提供できる。また、プリーツおよび波板加工を施せば、ハニカムフィルターを製造することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、A型およびX型から選ばれる少なくとも1種のゼオライトおよびヒドラジド化合物よりなるアルデヒド吸着材、および該吸着材を担持させたことを特徴とする消臭繊維シートである。
【0015】
[1.ゼオライト]
本発明におけるゼオライトは、結晶性アルミノケイ酸塩である三次元骨格構造を有する、A型およびX型のゼオライトである。A型およびX型のゼオライトの製造は、例えば、ケイ酸ナトリウム等のシリカ源、アルミン酸ナトリウム等のアルミナ源、水酸化ナトリウム等の鉱化剤及び水を含む原料を用いた水熱合成法により製造することができる。A型およびX型のゼオライトはY型やβ型、ZSM−5等はゼオライトに比べ、製造時の合成温度が低い。
本発明に使用するゼオライトの平均粒子径は10μ以下が望ましい。
【0016】
[2.ヒドラジド化合物]
本発明で用いるヒドラジド化合物としては、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、ラウリン酸ヒドラジド、ステアリン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、メチルカルバゼート、エチルカルバゼート、セミカルバジド塩酸塩などのモノヒドラジド、カルボヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、ヘキサデカンジオヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4´−ビスベンゼンジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、N,N´−ヘキサメチレンビスセミカルバジドなどのジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、ピロメリット酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジドなどのトリヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジドなどのテトラヒドラジドなどを用いることができる。特に、ヒドラジノ基を2つ以上有するヒドラジド化合物が好適である。
一般に、ヒドラジン化合物とアセトアルデヒドガスは、以下の化学式で吸着反応が進行する。
-NH2 + CH3CHO →-NH(OH)CHCH3
【0017】
[3.基材]
本発明の繊維シートを構成する基材は特に限定されず、たとえば、天然繊維や合成繊維よりなる基材を用いることができる。
【0018】
天然繊維としては、たとえば、綿、麻、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン等のセルロース繊維;羊毛、絹等のタンパク質系繊維;アルギン繊維、キチン繊維、マンナン繊維等の天然高分子系繊維;これらの2種以上の天然繊維からなる混紡天然繊維等が挙げられる。
【0019】
合成繊維としては、たとえば、ポリアミド系繊維、ナイロン、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリ尿素系繊維等を挙げることができる。また、これら合成繊維に吸水性を付与した吸水性合成繊維や、親水性を付与した親水性合成繊維を用いることもできる。
【0020】
吸水性合成繊維としては、上記合成繊維に親水性化合物を練り込んで共重合する方法で吸水性を付与する方法(化学的方法)や、形状を異形断面または微多孔構造とすることにより吸水性能を付与することにより得ることができる。
親水性合成繊維としては、上記合成繊維の表面をレーザー、プラズマ、電子線などの処理により親水性に改質することにより得ることができる。
【0021】
また、生地の形状としては、織物、編物、不織布、タフテッドカーペットやモケットのような立体布帛等、特に限定されない。これらの生地は、上記繊維を1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
<吸着材>
吸着材はゼオライトおよびヒドラジド化合物よりなる。該吸着材はたとえば、ゼオライトとバインダー樹脂を溶媒に分散させた処理液を乾燥することによって製造することができる。また、後述するように、該処理液を基材上で乾燥させることにより、直接基材上に吸着材を形成させてもよい。
ヒドラジド化合物はゼオライトに担持・存在していればよく、たとえばゼオライトの表面に付着していても良く、あるいはゼオライトに存在する孔の中にあってもよい。
【0023】
<繊維シートの製造方法>
ゼオライトおよびヒドラジド化合物を、基材表面および/または内部に存在させる方法としては、特に限定されないが、たとえば、ゼオライトを溶媒に分散させた処理液を、生地の少なくとも一部に付着せしめた後、乾燥することによって製造できる。また、ゼオライトとバインダーを溶媒に分散させた処理液としてもよい。この時、処理液は前記ゼオライトおよびバインダー樹脂を用いる場合はバインダー樹脂を可能な限り分散させることが好ましい。
【0024】
ゼオライトとヒドラジド化合物の重量比は50:1〜2:1が好ましく、より好ましくは25:1〜4:1である。
ゼオライトとヒドラジド化合物の重量比が50:1を超える場合は特にアセトアルデヒドガスの吸着能力が不足する場合があり、2:1より小さい場合は他のガス、たとえばトルエンガスの吸着能力が不足する場合がある。
【0025】
バインダー樹脂としては特に限定は無く、どのような種類の樹脂でも使用することができる。たとえばアクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、シリコン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂を二種類以上混合しても良い。ゼオライトとバインダーの重量比は20:1〜3:1の範囲であることがゼオライトやヒドラジド化合物の固着性ならびにガス吸着性能の点で好ましい。
調合の際、予め先にヒドラジド処理ゼオライトを溶媒に分散させておいてから、バインダー樹脂を分散させる方が、より均一に分散させるのに好ましい。
【0026】
前記処理液を生地に担持させる方法としては、たとえば、浸漬法とコーティング法が挙げられる。浸漬法は、前記処理液に、生地を浸漬した後マングルで絞り、これを乾燥させる方法がある。この浸漬法で製造すれば、ヒドラジド処理ゼオライトとバインダー樹脂を生地に均一に固着することができる。
【0027】
前記コーティング法は、生地に前記処理液を生地の少なくとも一部に塗布コーティングした後乾燥させる方法が挙げられる。コーティング法で製造すれば、生産性を顕著に向上でき、固着量も精度高く制御できる利点がある。
【0028】
前記コーティング方法の具体的手法としては、特に限定されるものではないが、例えばグラビアロール加工、スプレー加工、ロールコーター加工、転写プリント加工、スクリーンプリント加工等が挙げられる。
【0029】
また、上記の方法以外でも、前記消臭生地を熱成型、もしくは前述の塗工技術を用いてプラスチックフイルムや成型体表面および内部にヒドラジド処理ゼオライトを付加することも可能である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0031】
〔実施例1〕
A型ゼオライト(ユニオン昭和製モレキュラーシーブ4A、粒子径10ミクロン以下)23.72gを蒸留水51.38gに分散し、カルボジヒドラジド(日本ファインケム製、品名CDH)1.19gを溶解させ、20℃、5分間スターラーで撹拌した。PVAバインダー(電気化学工業製 デンカポバールK-17EF)の10%水溶液を調合し、上記水溶液に23.72g加え、30分間撹拌した。
上記処理液に幅20cm、長さ60cmのコットン不織布(日清紡製 綿100%メッシュ不織布、目付42.58g/m2、AM2040)を浸漬し、マングルで絞り、120℃にてピンテンター乾燥機で乾燥・固着し、ヒドラジド処理ゼオライト添着不織布を得た。
【0032】
〔実施例2〕
A型ゼオライト(同上)23.44gを蒸留水50.78gに分散し、カルボジヒドラジド(同上)2.34gを溶解させ、20℃、5分間スターラーで撹拌した。PVAバインダー(同上)の10%水溶液を調合し、上記水溶液に23.44g加え、30分間撹拌した。
上記処理液に幅20cm、長さ60cmのコットン不織布(同上)を浸漬し、マングルで絞り、120℃のピンテンター乾燥機で乾燥・固着し、ヒドラジド処理ゼオライト添着不織布を得た。
【0033】
〔実施例3〕
A型ゼオライト(同上)22.06gを蒸留水51.47gに分散し、カルボジヒドラジド(同上)4.40gを溶解させ、20℃、5分間スターラーで撹拌した。PVAバインダー(同上)の10%水溶液を調合し、上記水溶液に22.06g加え、30分間撹拌した。
上記処理液に幅20cm、長さ60cmのコットン不織布(同上)を浸漬し、マングルで絞り、120℃のピンテンター乾燥機で乾燥・固着し、ヒドラジド処理ゼオライト添着不織布を得た。
【0034】
〔実施例4〕
A型ゼオライト(同上)20.83gを蒸留水52.08gに分散し、カルボジヒドラジド(同上)6.25gを溶解させ、20℃、5分間スターラーで撹拌した。PVAバインダー(同上)の10%水溶液を調合し、上記水溶液に20.83g加え、30分間撹拌した。
上記処理液に幅20cm、長さ60cmのコットン不織布(同上)を浸漬し、マングルで絞り、120℃のピンテンター乾燥機で乾燥・固着し、ヒドラジド処理ゼオライト添着不織布を得た。
【0035】
〔実施例5〕
X型ゼオライト(ユニオン昭和製モレキュラーシーブ13X、粒子径10ミクロン以下)23.72gを蒸留水51.38gに分散し、カルボジヒドラジド(同上)1.19gを溶解させ、20℃、5分間スターラーで撹拌した。PVAバインダー(同上)の10%水溶液を調合し、上記水溶液に23.72g加え、30分間撹拌した。
上記処理液に幅20cm、長さ60cmのコットン不織布(同上)を浸漬し、マングルで絞り、120℃のピンテンター乾燥機で乾燥・固着し、ヒドラジド処理ゼオライト添着不織布を得た。
【0036】
〔実施例6〕
X型ゼオライト(同上)23.44gを蒸留水50.78gに分散し、カルボジヒドラジド(同上)2.34gを溶解させ、20℃、5分間スターラーで撹拌した。PVAバインダー(同上)の10%水溶液を調合し、上記水溶液に23.44g加え、30分間撹拌した。
上記処理液に幅20cm、長さ60cmのコットン不織布(同上)を浸漬し、マングルで絞り、120℃のピンテンター乾燥機で乾燥・固着し、ヒドラジド処理ゼオライト添着不織布を得た。
【0037】
〔実施例7〕
X型ゼオライト(同上)22.90gを蒸留水49.61gに分散し、カルボジヒドラジド(同上)4.58gを溶解させ、20℃、5分間スターラーで撹拌した。PVAバインダー(同上)の10%水溶液を調合し、上記水溶液に22.90g加え、30分間撹拌した。
上記処理液に幅20cm、長さ60cmのコットン不織布(同上)を浸漬し、マングルで絞り、120℃のピンテンター乾燥機で乾燥・固着し、ヒドラジド処理ゼオライト添着不織布を得た。
【0038】
〔実施例8〕
X型ゼオライト(同上)22.39gを蒸留水48.51gに分散し、カルボジヒドラジド(同上)6.72gを溶解させ、20℃、5分間スターラーで撹拌した。PVAバインダー(同上)の10%水溶液を調合し、上記水溶液に22.39g加え、30分間撹拌した。
上記処理液に幅20cm、長さ60cmのコットン不織布(同上)を浸漬し、マングルで絞り、120℃のピンテンター乾燥機で乾燥・固着し、ヒドラジド処理ゼオライト添着不織布を得た。
【0039】
〔参考例1〕
Y型ゼオライト(ユニオン昭和製モレキュラーシーブUSKY-700、粒子径10ミクロン以下)22.81gを蒸留水53.23gに分散し、カルボジヒドラジド(同上)1.14gを溶解させ、20℃、5分間スターラーで撹拌した。PVAバインダー(同上)の10%水溶液を調合し、上記水溶液に22.81g加え、30分間撹拌した。
上記処理液に幅20cm、長さ60cmのコットン不織布(同上)を浸漬し、マングルで絞り、120℃のピンテンター乾燥機で乾燥・固着し、ヒドラジド処理ゼオライト添着不織布を得た。
【0040】
〔参考例2〕
Y型ゼオライト(同上)22.56gを蒸留水52.63gに分散し、カルボジヒドラジド(同上)2.26gを溶解させ、20℃、5分間スターラーで撹拌した。PVAバインダー(同上)の10%水溶液を調合し、上記水溶液に22.56g加え、30分間撹拌した。
上記処理液に幅20cm、長さ60cmのコットン不織布(同上)を浸漬し、マングルで絞り、120℃のピンテンター乾燥機で乾燥・固着し、ヒドラジド処理ゼオライト添着不織布を得た。
【0041】
〔比較例1〕
A型ゼオライト(同上)22.27gを蒸留水55.46gに分散し、20℃、5分間スターラーで撹拌した。PVAバインダー(同上)の10%水溶液を調合し、上記水溶液に22.27g加え、30分間撹拌した。
上記処理液に幅20cm、長さ60cmのコットン不織布(同上)を浸漬し、マングルで絞り、120℃のピンテンター乾燥機で乾燥・固着し、ゼオライト添着不織布を得た。
【0042】
〔比較例2〕
X型ゼオライト(同上)23.00gを蒸留水54.0gに分散し、20℃、5分間スターラーで撹拌した。PVAバインダー(同上)の10%水溶液を調合し、上記水溶液に23.00g加え、30分間撹拌した。
上記処理液に幅20cm、長さ60cmのコットン不織布(同上)を浸漬し、マングルで絞り、120℃のピンテンター乾燥機で乾燥・固着し、ゼオライト添着不織布を得た。
【0043】
〔比較例3〕
Y型ゼオライト(同上)20.00gを蒸留水60.00gに分散し、20℃、5分間スターラーで撹拌した。PVAバインダー(同上)の10%水溶液を調合し、上記水溶液に20.00g加え、30分間撹拌した。
上記処理液に幅20cm、長さ60cmのコットン不織布(同上)を浸漬し、マングルで絞り、120℃のピンテンター乾燥機で乾燥・固着し、ゼオライト添着不織布を得た。
【0044】
〔比較例4〕
蒸留水43.47gにPVAバインダー(同上)の10%水溶液を39.13g加え、30分間撹拌した。上記処理液にカルボジヒドラジド(同上)17.39gを溶解し、撹拌した。上記処理液に幅20cm、長さ60cmのコットン不織布(同上)を浸漬し、マングルで絞り、120℃のピンテンター乾燥機で乾燥・固着し、ヒドラジド添着不織布を得た。
【0045】
〔比較例5〕
蒸留水46.51gにPVAバインダー(同上)の10%水溶液を41.86g加え、30分間撹拌した。上記処理液にカルボジヒドラジド(同上)11.62gを溶解し、撹拌した。
上記処理液に幅20cm、長さ60cmのコットン不織布(同上)を浸漬し、マングルで絞り、120℃のピンテンター乾燥機で乾燥・固着し、ヒドラジド添着不織布を得た。
【0046】
〔比較例6〕
蒸留水49.5gにPVAバインダー(同上)の10%水溶液を44.55g加え、30分間撹拌した。上記処理液にカルボジヒドラジド(同上)5.94gを溶解し、撹拌した。上記処理液に幅20cm、長さ60cmのコットン不織布(同上)を浸漬し、マングルで絞り、120℃のピンテンター乾燥機で乾燥・固着し、ヒドラジド添着不織布を得た。
【0047】
<性能評価>
[消臭試験]
実施例1〜8および比較例1〜6記載の吸着材を2.5cm x 1.25cmのサイズ(約0.03g)に切り、40ppmホルムアルデヒドガス3Lと共に5Lテドラーパックに封入し、消臭試験を行った。
残存ホルムアルデヒドガス濃度はガステックおよび光明理化学工業製ガス検知管、および島津製HPLCクロマトグラフィーFRC-10Aを用いて測定した。
70ppmアセトアルデヒドガスについても、同様に消臭試験を行った。
【0048】
表1及び図1に、実施例1〜8、参考例1〜3および比較例1〜6の処理液を示す。また、ホルムアルデヒド(FA)およびアセトアルデヒド(AA)の消臭試験結果を表2および図2、3に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
実施例1〜8の吸着材は、ゼオライトのみの比較例1〜3、ヒドラジドのみの比較例4〜6の繊維シートと比較して、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドガスに関して、格段に高い吸着能力を有することが確認できる。
また、アルデヒド類の吸着能力が優れるとされるY型のゼオライトを用いた場合と比較しても遜色ない効果が得られている(参考例1、2)。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の吸着材および繊維シートは、用途が特に限定されるものではないが、例えばカーテン、カーペット、壁紙、椅子張り地等のインテリア用布帛の他、自動車、車両、船舶、航空機などの内装用生地、また、ハニカムフィルター等の工業用フィルター素材他の消臭材として広く有用に使用することができる。
また、他の吸着物質、例えば光触媒、活性炭、シリカゲルと組み合わせれば、さらに高性能の悪臭除去機能を有する消臭生地とすることができる。また、市販の難燃剤を添加して、消臭生地に難燃性を持たせることも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A型およびX型から選ばれる少なくとも1種のゼオライトおよびヒドラジド化合物からなるアルデヒド吸着材。
【請求項2】
前記ゼオライトとヒドラジド化合物の重量比が50:1〜2:1の範囲であることを特徴とする請求項1記載のアルデヒド吸着材。
【請求項3】
請求項1記載のアルデヒド吸着材を担持させたことを特徴とする消臭繊維シート。
【請求項4】
吸着材がバインダーを含み、前記ゼオライトとバインダーの重量比が20:1〜2:1の範囲であることを特徴とする請求項3記載の消臭繊維シート。

【公開番号】特開2011−83756(P2011−83756A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240818(P2009−240818)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】