説明

アルトカルピン誘導体ならびにアルトカルピン類似化合物、およびこれを含有する育毛・養毛用組成物、美白化粧料用組成物、ならびに抗癌剤、消炎鎮痛剤、解熱剤または抗アレルギー剤としての医薬および色素性皮膚病変治療用医薬

【課題】テストステロン−5α−リダクターゼ活性阻害能、癌細胞増殖阻害並びに抑制作用、シクロオキシゲナーゼ阻害能および5−リポキシゲナーゼ阻害能、正常メラノサイト増殖抑制能、及び正常ファイブロブラスト増殖抑制能を有する物質を提供する。
【解決手段】アルトカルピン分子内の一部分が変化して生じた化合物、や、アルトカルピンの水素付加体、脱メチル体、メトキシ付加体、メチル化体、アセチル化体、ジヒドロキシル化体、ジメチルエーテル付加体、エポキシ化体、ヒドロキシル化体などのアルトカルピン類似化合物は、優れたテストステロン−5α−リダクターゼ活性阻害能、癌細胞増殖阻害並びに抑制作用、シクロオキシゲナーゼ阻害能および5−リポキシゲナーゼ阻害能、正常メラノサイト増殖抑制能、及び正常ファイブロブラスト増殖抑制能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルトカルピン誘導体ならびにアルトカルピン類似化合物、およびこれを含有する育毛・養毛用組成物、美白化粧料用組成物、ならびに抗癌剤、消炎鎮痛剤、解熱剤または抗アレルギー剤としての医薬および色素性皮膚病変治療用医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
クワ科植物であるアルトカルパス属植物から公知の方法で抽出精製することができるアルトカルピンは、テストステロン−5α−リダクターゼ活性阻害能を有し、育毛・養毛作用、皮脂分泌抑制作用、美白作用に効果があることや(特許文献1、参照。)、癌細胞の増殖阻害並びに抑制作用があること(特許文献2、参照。)が知られている。
【0003】
また、アルトカルピンにはさらに、シクロオキシゲナーゼ阻害活性および5−リポキシゲナーゼ阻害活性を示し、消炎鎮痛剤、解熱剤または抗アレルギー剤として有用であることも知られている(特許文献3、参照)。
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/45782号パンフレット
【特許文献2】特開2003−192590号公報
【特許文献3】特開2004−231587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明もまた、テストステロン−5α−リダクターゼ活性阻害能、癌細胞増殖阻害並びに抑制作用、シクロオキシゲナーゼ阻害能、5−リポキシゲナーゼ阻害能、正常メラノサイト増殖抑制能、及び正常ファイブロブラスト増殖抑制能を有する物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究の結果、新規化合物であるアルトカルピン誘導体ならびにアルトカルピンを合成する際に合成されるアルトカルピン類似化合物においても、優れたテストステロン−5α−リダクターゼ活性阻害能、癌細胞増殖阻害並びに抑制作用、シクロオキシゲナーゼ阻害能、5−リポキシゲナーゼ阻害能、ならびに正常メラノサイト増殖抑制能、及び正常ファイブロブラスト増殖抑制能を有することを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、テストステロン−5α−リダクターゼ活性阻害能、癌細胞増殖阻害並びに抑制作用、シクロオキシゲナーゼ阻害能、5−リポキシゲナーゼ阻害能、正常メラノサイト増殖抑制能、及び正常ファイブロブラスト増殖抑制能を有するアルトカルピン誘導体である。
【0008】
また、本発明は、テストステロン−5α−リダクターゼ活性阻害能、細胞増殖阻害並びに抑制作用、シクロオキシゲナーゼ阻害能、5−リポキシゲナーゼ阻害能、正常メラノサイト増殖抑制、及び正常ファイブロブラスト増殖抑制能を有するアルトカルピン類似化合物である。
【0009】
ここで、本発明において、アルトカルピン誘導体とは、アルトカルピン分子内の一部分が変化して生じた化合物、すなわち、アルトカルピンにプレニル基や3−メチル−1−ブテニル基などの側鎖が付加された化合物や、糖が配合された配糖体のことを示す。また、アルトカルピン類似化合物とは、アルトカルピンやアルトカルピン誘導体を合成する際に合成される化合物であり、具体的には、アルトカルピンの水素付加体、脱メチル体、メトキシ付加体、メチル化体、アセチル化体、ジヒドロキシル化体、ジメチルエーテル付加体、エポキシ化体、ヒドロキシル化体などが挙げられる。
【0010】
また、本発明は、前記アルトカルピン誘導体、またはアルトカルピン類似化合物のどちらか一方を少なくとも含有する育毛・養毛用組成物、美白化粧料用組成物、抗癌剤、消炎鎮痛剤、解熱剤、抗アレルギー剤としての医薬および色素性皮膚病変治療用医薬である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、テストステロン−5α−リダクターゼ活性阻害能、癌細胞増殖阻害並びに抑制作用、シクロオキシゲナーゼ阻害能、5−リポキシゲナーゼ阻害能、正常メラサノイト増殖抑制能、及び正常ファイブロブラスト増殖抑制能を有する育毛・養毛用組成物、美白化粧料用組成物ならびに抗癌剤、消炎鎮痛剤、解熱剤または抗アレルギー剤としての医薬および色素性皮膚病変治療用医薬を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
アルトカルピン誘導体としては、下記構造式で表される化合物AのR1、R2、R3の一つ以上がプレニル基または/及び3−メチル−1−ブテニル基である化合物(下記構造式1〜6)、3個の水酸基(OH基)のうちの一つ以上にグルコース等の糖が導入された化合物(下記構造式7〜9)、およびR1、R2、R3の一つ以上がプレニル基または/及び3−メチル−1−ブテニル基でありかつ3個の水酸基(OH基)のうちの一つ以上にグルコース等の糖が導入された化合物(下記構造式10,11)が挙げられる。
【0013】
【化1】

Me:メチル基
【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

【0019】
【化7】

【0020】
【化8】

Glu:グルコース残基
【0021】
【化9】

【0022】
【化10】

【0023】
ここで、構造式7〜9に付加される糖は上記グルコースに限定するものではなく、たとえば、セドヘプツロース、フルクトース、ガラクトース、リブロース、タロース、アロース、リボース、アピオース等の単糖類や、マルトース、ラクトース、スクロース等の二糖類や、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖などのオリゴ糖、デンプンなどの多糖類を付加することができる。
【0024】
【化11】

【0025】
【化12】

【0026】
また、アルトカルピン類似化合物としては、下記構造式12〜24で表される化合物が挙げられる。
【0027】
【化13】

【0028】
【化14】

【0029】
【化15】

【0030】
【化16】

【0031】
【化17】

【0032】
【化18】

【0033】
【化19】

【0034】
【化20】

【0035】
【化21】

【0036】
【化22】

【0037】
【化23】

【0038】
【化24】

【0039】
【化25】

【0040】
本発明の実施の形態におけるアルトカルピン誘導体またはアルトカルピン類似化合物は、後述する実施例で明らかなようにテストステロン−5α−リダクターゼ(以下、「TSR」と称す。)活性阻害能を有していることから、育毛・養毛作用、美白作用、皮脂分泌抑制作用等が期待できるので、例えば、ヘアーローション、ヘアーパック、ヘアートニック、シャンプー、リンス、コンディショナー、スカルプトリートメント等の育毛・養毛剤、化粧水、乳液、パック剤、ハップ剤、プラスター剤、ファンデーション、浴用剤、ボディ洗浄剤、ローション、洗顔洗浄剤、石けん、栄養クリーム、スキンオイル等の美白剤など、各種化粧料や医薬品に配合することにより所望の効果を発揮させることができる。化粧料とする際のアルトカルピン誘導体またはアルトカルピン類似化合物の配合割合や形態は、上述した化粧料の種類等により適宜選択することができる。
【0041】
また、上記育毛・養毛剤には、従来公知の育毛・養毛促進物質や抗菌剤、清涼剤、保湿剤をさらに含有させてもよい。育毛・養毛促進物質としては、たとえば、ビタミンB6、ビタミンEおよびその誘導体、グリチルリチン酸およびその誘導体、ニコチン酸ベンジル等のニコチン酸エステル類、サイクロスポリン類、塩化カルプロニウム、セファランチン、オキセンドロン、ジアゾキシド、ミノキシジル、エチニルエストラジオール、エストラジオール又はこれらを含有する動植物抽出物等が挙げられる。
【0042】
また、抗菌剤としては、たとえば、ヒノキチオール、ピロクトオラミン、ピロチオン亜鉛、ヘキサクロロフェン、フェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、ウンデシレン酸、トリクロロカルバニリド等が挙げられる。
【0043】
清涼剤としては、たとえば、メントール等が挙げられる。また、保湿剤としては、たとえば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類、アミン酸、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等のNMF成分、ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチン、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、セラミド類、ヘパリン類似様物質、キトサン等の水溶性高分子物質等が挙げられる。
【0044】
また、上記育毛・養毛剤に各種添加物を配合することもできる。添加物としては、油脂類、界面活性剤、アルコール類、脂肪酸類、防腐剤、酸化防止剤、色素、香料、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、緩衝剤、精製水等が挙げられ、その配合量は適宜選択することができる。
【0045】
また、本発明の実施の形態におけるアルトカルピン誘導体またはアルトカルピン類似化合物は、後述する実施例で明らかなように癌細胞増殖阻害並びに抑制作用を有することから、薬理学的、製剤学的に許容される製造助剤等を用いて常法に従った製造方法により抗癌剤とすることができる。
【0046】
本発明の実施の形態における抗癌剤の投与方法は、たとえば、癌細胞や粘膜への注射、外用剤としての塗布等が好ましく挙げられる。注射剤とするには、たとえば、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の溶解剤や溶解補助剤、pH調整剤、安定剤等の製剤用成分を用いて製造することができる。また、外用剤とするには、たとえば、アルコール、脂肪酸エステル等の溶解剤や溶解助剤、カルボキシビニルポリマー、多糖類等の粘着剤、乳化剤、安定剤等の製剤用成分を用いて製造することができる。
【0047】
また、本発明の実施の形態における抗癌剤の投与量は、投与方法、癌細胞の種類や大きさ、患者の年齢、性別、態様等に応じて適宜選択することができる。
【0048】
また、本発明の実施の形態におけるアルトカルピン誘導体またはアルトカルピン類似化合物は、後述する実施例で明らかなようにシクロオキシゲナーゼ阻害能および5−リポキシゲナーゼ阻害能を有することから、薬理学的、製剤学的に許容される製造助剤等を用いて常法に従った製造方法により、消炎鎮痛剤、解熱剤、抗アレルギー剤とすることができる。
【0049】
上記消炎鎮痛剤、解熱剤、抗アレルギー剤の薬剤は、たとえば、錠剤やカプセル剤等による内服、坐薬、皮下への注射、外用剤としての塗布等によって投与することができる。
【0050】
錠剤とするには、たとえば、乳糖、白糖、リン酸カルシウム等の賦形剤、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース等の結合剤、デンプン、カンテン、ゼラチン粉末などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の滑択剤等の製剤用成分を用いて製造することができる。また、カプセル剤とするには、たとえば、ゼラチン、精製水、単シロップ、アラビアゴム等の製剤用成分を用いて製造することができる。また、坐薬とするには、たとえば、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン、ポリエチレングリコール等の製剤用成分を用いて製造することができる。また、注射剤とするには、たとえば、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の溶解剤や溶解補助剤、pH調整剤、安定剤等の製剤用成分を用いて製造することができる。また、外用剤とするには、たとえば、アルコール、脂肪酸エステル等の溶解剤や溶解助剤、カルボキシビニルポリマー、多糖類等の粘着剤、乳化剤、安定剤等の製剤用成分を用いて製造することができる。
【0051】
また、本発明の実施の形態における消炎鎮痛剤、解熱剤、抗アレルギー剤の投与量は、投与方法、治療対象、患者の年齢、性別、態様等に応じて適宜選択することができる。
【0052】
また、本発明の実施の形態におけるアルトカルピン誘導体またはアルトカルピン類似化合物は、後述する実施例で明らかなように正常メラノサイト増殖抑制能、及び正常ファイブロブラスト増殖抑制能を有していることから、レックリングハウゼン病カフェオレ斑や小レックリングハウゼン斑、神経線維腫に加え、基本的には表皮の加齢変化による過形成により生じるが臨床的には皮膚の色素性病変とみられる脂漏性角化症や老人性色素斑や、扁平母斑、色素性母斑、太田母斑、青色母斑、異所性蒙古斑などの母斑性色素異常症、炎症後色素沈着症等の色素性皮膚病変治療用の薬剤とすることができる。
【0053】
上記色素性皮膚病変治療用の薬剤は、たとえば、経口剤による内服、坐薬、皮下への注射、外用剤としての塗布等によって投与することができる。これらの色素性皮膚病変治療用の薬剤は、薬理学的、製剤学的に許容される製造助剤等を用いて常法に従って製造することができる。
【0054】
ここで、外用剤としては、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、テープ剤等の各種形態が挙げられる。なお、前記外用剤とするには、例えば、アルコール、脂肪酸エステル等の溶解剤や溶解助剤、カルボキシビニルポリマー、多糖類等の粘着剤、乳化剤、安定剤等の製剤用成分を用いて製造することができる。経口剤としては、たとえば錠剤やカプセル剤等の各種形態が挙げられる。錠剤とするには、たとえば、乳糖、白糖、リン酸カルシウム等の賦形剤、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース等の結合剤、デンプン、カンテン、ゼラチン粉末などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の滑択剤等の製剤用成分を用いて製造することができる。また、カプセル剤とするには、たとえば、ゼラチン、精製水、単シロップ、アラビアゴム等の製剤用成分を用いて製造することができる。また、注射剤とするには、たとえば、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の溶解剤や溶解補助剤、pH調整剤、安定剤等の製剤用成分を用いて製造することができる。また、坐剤とするには、たとえば、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン、ポリエチレングリコール等の製剤用成分を用いて製造することができる。
【0055】
また、本発明の実施の形態における色素性皮膚病変治療剤の投与量は、投与方法、病変部分の大きさ、患者の年齢、性別、態様等に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0056】
(実施例1:TSR活性阻害能の測定)
構造式1〜24の化合物について、雌ラットの肝臓由来のミクロソーム(TSR)を用いた酵素活性を測定し、各化合物のTSR活性阻害能を測定した。酵素活性は、100mmol/L濃度のリン酸ナトリウム系バッファ(pH6.5)中に、酵素反応開始時の濃度が150μmol/Lテストステロン、1mmol/Lジチオトレイトールになるようそれぞれを添加し、37℃でプレインキュベートした。10分後、酵素反応開始時の濃度が167μmol/LになるようにNADPHを添加し、さらに、添加タンパク質が0.25mgになるようにミクロソーム溶液を添加して反応を開始した。37℃で10分間反応させた後、3mol/LのNaOH溶液を反応系の1/30容量添加し、反応を終了させた。この反応系より、ジヒドロテストステロンを抽出し、マススペクトル(GC−mass spectrometry)にて反応生成量を測定し、酵素反応速度とした。
【0057】
TSR活性阻害能の測定は、上記酵素活性の測定において、構造式1〜24で表される上記化合物を、それぞれ反応開始時の濃度が10ppmになるようプレインキュベートする前に添加し、他の条件は同様に行って酵素反応速度を測定し、構造式1〜24で表される上記化合物を含まない際の上記で測定した酵素反応速度との割合から阻害率を計算により求めた。結果を表1に示す。
【0058】
表1の結果より、構造式1〜24で示されるアルトカルピン誘導体ならびにアルトカルピン類似化合物は、TSR活性阻害能を有していることがわかり、これらをTSR活性阻害剤の有効成分、すなわち、育毛・養毛用組成物、美白化粧料用組成物の有効成分として用いることが有用であることがわかる。
【0059】
【表1】

【0060】
(比較例1)
下記構造式25〜29で示される化合物について、実施例1と同様にTSR活性阻害能を測定した。結果を表2に示す。
【0061】
【化26】

【0062】
【化27】

【0063】
【化28】

【0064】
【化29】

【0065】
【化30】

【0066】
【表2】

【0067】
(実施例2:癌細胞増殖阻害能の測定)
10%FBS含有のイーグルMEM培地(Eagle's minimal essential media)に懸濁させた、B16メラノーマ細胞を96穴マイクロプレートに1×105cell/well播種し、24時間経過後、上記構造式1〜24で示される化合物を最終濃度0.01〜500μg/mlとなるように添加した。次いで、24時間培養後、コントロールウェルのB16メラノーマ細胞増殖に対して50%増殖阻害されるアルトカルピン濃度(IC50)をMTT法により求めた。結果を表3に示す。また、対照として、アルトカルピンの代わりに、抗腫瘍性化合物として知られた、ビンブラスチン、カルムスチン又は5―フルオロウラシルを用い、同様にIC50を測定した。結果を表4に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
表3に示すように、上記構造式1〜24で示されるアルトカルピン誘導体ならびにアルトカルピン類似化合物は、従来、抗腫瘍性化合物として知られた表4に示す各化合物よりB16メラノーマ細胞に対し優れた抗腫瘍作用を示すことがわかり、これらを抗癌剤の有効成分として用いることが有用であることがわかる。
【0071】
(実施例3:シクロオキシゲナーゼおよび5−リポキシゲナーゼ阻害能の測定)
3−1:シクロオキシゲナーゼ阻害能の測定
50mMのトリプトファン5μl、100μMのヘマチン2.5μl、及び0.1N水酸化ナトリウムに溶解した5mMのフェニル水銀水酸化物2.5μlを混合し溶液(A)を調製した。エタノールに溶解した[14C]アラキドン酸2μl及び所定の濃度でエタノールに溶解した上記構造式1〜24で示される化合物10μlをガラスチューブに入れ、窒素でエタノールを留去させた後、Tris−HClバッファ35μlと前記溶液(A)10μlとを加え、ボルテックスで撹拌した。
【0072】
続いて、シクロオキシゲナーゼ溶液5μlを前記ガラスチューブに入れ、ボルテックスで撹拌した後、直ちに37℃インキュベーターに斜めに入れた。1分間反応させた後、ジエチルエーテル:メタノール:1Mのクエン酸(30:4:1)からなる混合溶液250μlを加え、ボルテックスで撹拌して反応を停止させ、生成物を抽出した。次いで、得られた生成物にNa2SO4を添加して脱水した後、有機層のうちの50μlを薄層クロマトグラフィー(TLC)にチャージし、更に、ヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸(30:20:1)で展開した。
【0073】
得られたTLC板をラップに包み、BAS imaging plate(富士フィルム社製)にカセット中で当て、2時間暗所で放置した。次いで、BASで放射活性を測定し、アラキドン酸の生成物への変換量から活性を算出し、シクロオキシゲナーゼIC50を求めた。結果を表5に示す。また、対照として、上記構造式1〜24で示される化合物の代わりに市販のインドメタシン及びノルジヒドログアイアレチン酸についても同様な試験を行った。結果を表6に示す。
【0074】
3−2:5−リポキシゲナーゼ阻害能の測定
約4.0×107cellのRBL細胞を直径15cmのシャーレ4枚で培養し、トリプシン処理後、PBS、pH6.8の10mM BES、10mM PIPES、及び1mM EDTAからなる抽出バッファ5mlをそれぞれ添加した。次いで、10分間超音波処理を行い、15000gで10分間遠心処理し、上清1mlずつをチューブに取り−80℃で保存した。エタノールに溶解した[14C]アラキドン酸2μl及び所定の濃度でエタノールに溶解した上記構造式1〜24で示される化合物10μlをガラスチューブに入れ、窒素でエタノールを留去させた後、反応バッファ(10mM BES、10mM PIPES、1mM EDTA、0.7mMCaCl2、pH6.8)100μlと、前記上清10μlとを加え、ボルテックスで撹拌した。
【0075】
続いて、5−リポキシゲナーゼ溶液50μlを前記ガラスチューブに入れ、ボルテックスで撹拌した後、直ちに37℃インキュベーターに斜めに入れた。正確に2分間反応させた後、ジエチルエーテル:メタノール:1Mのクエン酸(30:4:1)からなる混合溶液250μlを加え、ボルテックスで撹拌して反応を停止させ、生成物を抽出した。次いで、得られた生成物を含む有機層のうちの50μlをTLCにチャージし、更に、ヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸(30:20:1)で展開した。続いて、プロスタグランジンB2、プロスタグランジンE2、プロスタグランジンD2を入れてRf値を確認した。
【0076】
次に、得られたTLC板をラップに包み、BAS imaging plate(富士フィルム社製)にカセット中で当て、2時間暗所で放置した。次いで、BASで放射活性を測定し、アラキドン酸の生成物への変換量から活性を算出し、5−リポキシゲナーゼIC50を求めた。結果を表5に示す。また、対照として、上記構造式1〜24で示される化合物の代わりに市販のインドメタシン及びノルジヒドログアイアレチン酸についても同様な試験を行った。結果を表7に示す。
【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【0079】
【表7】

【0080】
表5から表7の結果より、構造式1〜24で示されるアルトカルピン誘導体ならびにアルトカルピン類似化合物は、優れたシクロオキシゲナーゼ阻害能および5−リポキシゲナーゼ阻害能を有していることがわかり、これらをシクロオキシゲナーゼ活性阻害剤および5−リポキシゲナーゼ活性阻害剤の有効成分、すなわち、消炎鎮痛剤、解熱剤または抗アレルギー剤の有効成分として用いることが有用であることがわかる。
【0081】
(実施例4:正常メラノサイトおよび正常ファイブロブラスト増殖抑制能の測定)
正常ヒト皮膚メラノ細胞(セルシステム社製)および正常ヒト皮膚ファイブロセル(セルシステム社製)を用いてアルトカルピンの増殖抑制効果を下記の方法で検討した。12ウエルプレート(BECTON DICKINSON)の各ウエルに上記のヒトメラノサイトおよびファイブロブラストをそれぞれ5×104個/mlで播種し、それぞれ増殖因子を含む合成培養液で培養した。ここで、各ウエルには、DMSO(ジメチルスルホキシド)を溶媒として溶解させたアルトカルピン誘導体および類似化合物を最終濃度2.5μg/mlで添加した。5日間培養後、ニュートラルレッド法で各ウエル中の細胞数を測定した。なお、培地は培養開始3日目に交換した。表8に、上記各細胞を用いた実験結果を示す。
【0082】
【表8】

コントロールに対する細胞増殖抑制率(%)
【0083】
表8に示すように、構造式1〜24で示されるアルトカルピン誘導体ならびにアルトカルピン類似化合物は、優れた正常メラノサイト増殖抑制能、及び正常ファイブロブラスト増殖抑制能を有していることがわかり、これらをレックリングハウゼン病カフェオレ斑や小レックリングハウゼン斑、神経線維腫、脂漏性角化症、老人性色素斑、扁平母斑、色素性母斑、太田母斑、青色母斑、異所性蒙古斑などの母斑性色素異常症、炎症後色素沈着症等の色素性皮膚病変の治療剤の有効成分として用いることが有用であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、アルトカルピン誘導体ならびにアルトカルピン類似化合物は優れた、テストステロン−5α−リダクターゼ活性阻害能、細胞増殖阻害並びに抑制作用、シクロオキシゲナーゼ阻害能および5−リポキシゲナーゼ阻害能、および正常メラノサイト増殖抑制能、及び正常ファイブロブラスト増殖抑制能を有するので、育毛・養毛用組成物や美白化粧料用組成物、抗癌剤、消炎鎮痛剤、解熱剤または抗アレルギー剤としての医薬の有効成分、および色素性皮膚病変治療用医薬として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テストステロン−5α−リダクターゼ活性阻害能、癌細胞増殖阻害並びに抑制作用、シクロオキシゲナーゼ阻害能および5−リポキシゲナーゼ阻害能、正常メラノサイト増殖抑制能、及び正常ファイブロブラスト増殖抑制能を有するアルトカルピン誘導体。
【請求項2】
テストステロン−5α−リダクターゼ活性阻害能、癌細胞増殖阻害並びに抑制作用、シクロオキシゲナーゼ阻害能および5−リポキシゲナーゼ阻害能、正常メラノサイト増殖抑制能、及び正常ファイブロブラスト増殖抑制能を有するアルトカルピン類似化合物。
【請求項3】
請求項1に記載のアルトカルピン誘導体、または請求項2に記載のアルトカルピン類似化合物のどちらか一方を少なくとも含有する育毛・養毛用組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のアルトカルピン誘導体、または請求項2に記載のアルトカルピン類似化合物のどちらか一方を少なくとも含有する美白化粧料用組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のアルトカルピン誘導体、または請求項2に記載のアルトカルピン類似化合物のどちらか一方を少なくとも含有する抗癌剤、消炎鎮痛剤、解熱剤または抗アレルギー剤としての医薬。
【請求項6】
請求項1に記載のアルトカルピン誘導体、または請求項2に記載のアルトカルピン類似化合物のどちらか一方を少なくとも含有する色素性皮膚病変治療用医薬。

【公開番号】特開2008−44897(P2008−44897A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222752(P2006−222752)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(591267785)関西酵素株式会社 (5)
【Fターム(参考)】