説明

アルドラーゼを阻害する新しい芳香族化合物、合成方法および諸応用法

本発明はアルドラーゼを阻害する新しい化合物に関するものであり、該化合物はその阻害効果によって、医薬品として(治療用の用量で)、とりわけある種のガンの治療に好適に用いることができるものである。本発明による化合物は以下の一般式に対応しており、該式において、アルデヒド基(−CHO)およびフェノール基(−OH)は、第一の芳香族結合体と呼ばれる同一の芳香族結合体の隣接する二つの炭素原子に固定されており、Rは、リン酸基またはリン酸基のミミックであり、第二の芳香族結合体と呼ばれる二番目の芳香族結合体の炭素原子に固定されている。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解糖を阻害する新しい化合物に関するものであり、該化合物の作用はアルドラーゼの阻害として現れる。本発明はまた、それらの合成方法および諸応用法、とりわけガン治療のための医薬品の製造における応用法にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
解糖は複雑なメカニズムを示すもので、該メカニズムは、異なった十種の酵素のカスケードを生じさせることで、ATP(アデノシン−5’−三リン酸)の形で蓄積されたエネルギーの放出を伴うグルコースの嫌気性分解を確実に行うものである。
【0003】
解糖に関与する十種の酵素の中でも、ホモ四量体酵素であるアルドラーゼ(フルクトース−1,6−ビスリン酸塩アルドラーゼ)は重要な過程、つまり、フルクトース−1,6−ビスリン酸(Fru(1,6)P2)をジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)とグリセルアルデヒド−3−リン酸(GAP)という二つのトリオースリン酸に分解する過程に関与する。アルドラーゼによるFru(1,6)P2の分解は、複数の反応中間体を規定する複数の過程からなる機構に従って起こるもので、該反応中間体は十分に同定されている。
【0004】
アルドラーゼは解糖経路において不可欠であり、従ってピルビン酸とATPの合成にとって重要である。
【0005】
アルドラーゼは二つのクラスに分かれている(Ruther et al.,1964,Fed.Proc.Fed.Am.Soc.Exp.Biol.,23:1248−1257)。一方のクラスのアルドラーゼは、とりわけその起源、またその作用様態によって、他方のクラスのアルドラーゼと区別される。クラスIのアルドラーゼは、動物、高等植物およびある種の寄生生物の中に存在するものであり、活性部位のリジン残基(lys−229)と基質との間にプロトン化したイミン(すなわちシッフ塩基)を形成することで、Fru(1,6)P2を固定する。クラスIIのアルドラーゼに関しては、これは原核生物に固有である。該アルドラーゼは、分解前にエノラートの形で基質を固定し、安定させるために、二価の金属イオンが触媒部位のところに存在することを必要とする。
【0006】
今日知られているクラスIのアルドラーゼの阻害剤の中では、拮抗阻害剤、とりわけBlonski C.et al.,1997(Biochem.J.,323:71−77)に記載されている拮抗阻害剤を挙げることができ、該阻害剤とはつまり、ヒドロキノンのリン酸誘導体(HQN−P2)、レゾルシノールのリン酸誘導体(RSN−P2)およびベンズアルデヒド−4−リン酸(HBA−P)である。ウサギ筋肉のアルドラーゼについてテストしたところ、これらの阻害剤は、それぞれ、およそ135μM、40μMおよび500μMの解離定数Ki(すなわち阻害定数)を示す。また、阻害定数Kiがおよそ30〜40μMのリン酸化合物も知られている(Hartman et al.,1965,Biochemistry,4:1068−1075)。
【0007】
また、時間に依存する可逆的阻害剤である2−ヒドロキシベンズアルデヒド−4−リン酸(Blonski C.et al,1997,Biochem.J.,323:71−77)も挙げることができ、その全体の阻害定数Ki*は35±5μMであり、およそ200μMの阻害剤の濃度ではアルドラーゼ活性を80%減少させることができる。
【0008】
これらの化合物のように、今日知られている他のアルドラーゼ阻害剤(Gefflaut T. et al.,1995,Prog.Biophys.Mol.Biol.,63(3):301−340)、および一般的な解糖の阻害剤は、非常に高い濃度で用いられない限り、弱い阻害活性を示すものであり、このことはそれらの適用範囲を著しく限定している。また、たとえば治療上の用量に適合する濃度のような低い濃度でそれらを適用することはほとんど考えられない。
【0009】
ところが、多くの適用において、また特に医療分野において、解糖の効果的な阻害が求められており、そしてそれは、患者に対するあらゆる有害作用を避けるために十分に低い阻害剤の濃度で行う必要がある。このために、ある種のガンおよびある種の固形腫瘍の治療のためのものとして考えられている、GRH(“Glycerol rescued hypoxia”)アプローチと呼ばれるアプローチが知られている(Mc Carty M.F.,2001,Med.Hypotheses,56:286−289)。その基盤は特に、二つの報告に基づいている。
【0010】
一つ目には、酸素濃度が低い組織内(低酸素条件)で発現する固形腫瘍および致死ガンが、エネルギー生産の唯一の経路として解糖を用いる表現型を有していることが示されている。同様に、このタイプの細胞がまた、健康な細胞がグルコースの代わりにグリセロールを用いることを可能にする特殊な酵素である、グリセロールキナーゼの活性を有さないことにも特徴があるということが示されている。
【0011】
従って、GRHアプローチは、唯一のエネルギー源として十分な用量のグリセロールを患者に投与することで、該患者のあらゆる細胞における解糖経路を阻害することを提案している。こうして、解糖がATP合成の主要な経路であるガン細胞は、グルコースを用いることも、グルコースの代わりのエネルギー源としてグリセロールを用いることもできず、「飢える」ことになる。健康な細胞については、グリセロールキナーゼ活性と、解糖の後半部分(トリオース部分)における他の酵素によって、ピルビン酸の合成のためにグリセロールを用いることができる。従って、健康な組織には適切なエネルギー供給を確保しながら、ガン細胞を飢えさせるのである。
【非特許文献1】Ruther他、1964年、『Federation Proceedings/Federation of American Societies for Experimental Biology』23、1248−1257。
【非特許文献2】Blonski C.他、1997年、『Biochemical Journal』323、71−77。
【非特許文献3】Hartman他、1965年、『Biochemistry』4、1068−1075。
【非特許文献4】Gefflaut T.他、1995年、『Progress in Biophysics and Molecular Biology』、63(3)、301−340。
【非特許文献5】Mc Carty M.F.、2001年、『Medical Hypotheses』、56、286−289。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、これまでに、GRHアプローチを利用するいかなる抗腫瘍治療も実行することができなかったのであり、それは、解糖に対する十分に効果的な阻害剤がないこと、より詳細には解糖の前半部分(ヘキソース部分)の酵素のに対する阻害剤がないという理由のためである。
【0013】
また、解糖が多くの寄生生物にとってエネルギー合成の唯一の経路に相当するため、解糖を阻止することは、寄生生物に由来する多くの病変の治療に対して非常に期待のもてるアプローチともなる。
【0014】
従って現状では、とりわけガンならびにある種の寄生虫症を克服する目的で、あるいは、解糖が主要な、ひいては不可欠なエネルギー合成の経路となっているすべての生物を死滅させるという枠組みにおいて、解糖の効果的な阻害剤を少なくとも一つ利用できるようにするという、現実的な必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、解糖を阻害する能力、特にクラスIのアルドラーゼの活性を阻害する能力を有する新しい化合物を提案することで、先述した不備を補うことを目指すものである。
【0016】
より詳細には、本発明は、アルドラーゼ阻害効果によって医薬品として利用することができる化合物、つまり治療上の用量、とりわけガン治療の枠内での用量で効果的に利用することができる化合物を提案することを目指すものである。
【0017】
本発明はまた、治療のための適用を除く、解糖に対する阻害剤としての、これらの化合物の応用を提案することも目的としている。拡張として、本発明は新しい医薬品、とりわけガン治療および/または寄生虫症の治療のための医薬品を提案することを目標とする。
【0018】
そして最後に、本発明は、本発明による化合物の合成方法を提案することを目的としており、該合成は、実施が単純であると同時に、大量かつコストの低いものであり、これは換言すれば、産業レベルの製造における経済的制約と両立可能な方法ということである。
【0019】
明細書全体にわたり、以下の用語を採用するものとする。
−芳香族結合体:芳香核の共役環であり、該環において、自由電子は、ある炭素原子から他の炭素原子へ、それらのいずれにも結合することなく移動することができ(共鳴効果による電子の非局在化)、また、ある結合の炭素原子から他の結合の炭素原子へと移動することができる。従って、本発明において実施されるナフタレン型の芳香核は、単結合(σ結合)と二重結合(π結合)を交互に有しており、強く非局在化したπ電子系を、これらの核を形成する二つの芳香族結合体の間に生じさせる。
−リン酸基のミミック:リン酸基以外の化合物の置換基であり、本発明の範囲におけるタンパク質標的(アルドラーゼ)のところで化合物の生物学的利用能を向上させるのに適している。リン酸基のミミックは、酵素分解される保護基またはリン酸の安定な類似物という、二つのタイプからなると考えられる。
−酵素分解される保護基:リン酸基のミミックであり、電荷をマスキングする方法によって、細胞膜または寄生生物の膜系を通過しての化合物の受動拡散を可能にするのに適しており、そして、細胞あるいは寄生生物の内部において酵素変換(すなわち脱保護)を受けてリン酸基またはリン酸の安定な類似物を生じさせるのに適している。
−リン酸の安定な類似物:リン酸基のミミックであり、リン酸基と比較して、生理学的条件、とりわけpHおよび/または酵素環境に対してより良い安定性を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は芳香族化合物に関するものであり、該芳香族化合物はアルデヒド基、フェノール基、およびリン酸基、または酵素分解される保護基もしくはリン酸基の安定な類似物のようなリン酸基のミミックを含んでいるものであり、以下のことを特徴としている。
【0021】
−芳香核がベンゼン型の二つの芳香族結合体の縮合によって形成されること。
【0022】
−そして、該芳香核が以下の一般式に対応していること。
【0023】
【化1】

【0024】
該一般式において、
−アルデヒド基(−CHO)およびフェノール基(−OH)は、第一の芳香族結合体である同一の芳香族結合体の隣接する二つの炭素原子に固定されており、
−そして、Rはリン酸基またはリン酸基のミミックであり、第二の芳香族結合体である、二番目の芳香族結合の炭素原子に固定されている。
【0025】
クラスIのアルドラーゼによる実際の阻害の機構が、本発明の化合物のそれぞれに対して特定的に確実に明らかにされているわけではないが、該化合物のいくつかに対する発明者らの研究、並びに、クラスIの様々なアルドラーゼの活性部位をモデル化する研究によって、前述した定義に対応する化合物がこれらのアルドラーゼを効果的に阻害すると考えることが可能である。
【0026】
このように、本発明によって、ナフタレン型の芳香核のような平面幾何学的な化学構造に結合したリン酸基、ヒドロキシル基およびアルデヒド基が同時に存在することが、良好な認識およびアルドラーゼの活性部位との非常に高い親和性を生み出すために必要であることを示すことが可能である。
【0027】
リン酸基は、アルドラーゼによる阻害剤の認識には不可欠である。リン酸基は酵素の認識ポケットの内部に入り、また該リン酸基によって、芳香族化合物が活性部位の内部において良好な配向をとることができる。このとき芳香族化合物は、活性部位の三つのリジン残基(Lys−107、Lys−146、Lys−229)の少なくとも一つから良好な距離にアルデヒド基およびフェノール基を置いて、該リジン残基と、生理学的pH条件下で、プロトン化したイミン型の安定な結合、すなわちシッフ塩基を形成する。従って、リン酸基を、アルデヒド基およびヒドロキシル基が結合した芳香族結合体ではない芳香族結合体に配置する必要があるということには大きな意味がある。実際、ナフタレン型の芳香核によって、アルドラーゼに対して化合物が良好な親和性を有するのに特に適した、リン酸基からの距離に、ヒドロキシル基およびアルデヒド基を配置することが可能になるのだが、リン酸基とアルデヒド基およびヒドロキシル基との距離を隔てることで、化合物にかかる制約を非常に少なくして、従って少ないエネルギー消費で、アルドラーゼによるリン酸基の認識と、三つのリジン残基の一つによる活性部位での化合物の安定化がもたらされる。
【0028】
他方では、リン酸基に対するアルデヒド基およびヒドロキシル基のそれぞれの位置は、アルドラーゼの、本発明によって定義された化合物に対して特異的な選択性において、重要な役割を果たすものである。
【0029】
そして最後に、同一の芳香族結合体の隣接する二つの炭素原子にヒドロキシル基とアルデヒド基があることは基幹的であり、クラスIのアルドラーゼの活性部位のところでこの特徴的な結合を形成することを決定している。ヒドロキシル基は、中間体のカルビノールアミンの脱水時におそらく酸性触媒の役割を果たし、そして、プロトン化したシッフ塩基の安定化におそらく関わるものであり、そしてほぼ不可逆的で効果的な阻害、ひいては不可逆的な阻害を生じさせる。
【0030】
また、そして有利には、特定の位置にリン酸基、アルデヒド基およびフェノール基が結合しているナフタレン型の芳香核は、アルドラーゼの活性部位への化合物の接近可能性の制約およびこの部位における立体障害の制約に反することなく、アルドラーゼの基質(Fru(1,6)P2、GAP、DHAP)よりも立体構造的に制約の多い平面幾何学的形状であり、適当な寸法をしている化合物を規定することも可能である。
【0031】
従って、このような芳香族化合物はクラスIのアルドラーゼの活性部位を塞ぐことができ、その結果、フルクトース−1,6−ビスリン酸の固定および分解を妨げることができ、結局それにより解糖を阻止することができるようになっている。このような芳香族化合物は、真核細胞および/または寄生生物の細胞のアルドラーゼを効果的に阻害し、従って、真核細胞および/または寄生生物の細胞の解糖を阻止することができる。
【0032】
しかし、細胞内での阻害および/または寄生生物内での阻害が望まれる際、アルドラーゼの活性部位における本発明による化合物の認識および固定に必要なリン酸基の電離状態では、これらの阻害剤に細胞膜を通過させるための問題が生じ、該問題は、これらの化合物の生物学的利用能の低下として現れ、ひいては全体的に活性が弱まることになる。
【0033】
リン酸化合物の生物学的利用能を向上させることを可能にする第一のアプローチは、とりわけ酵素分解される保護基を用いてリン酸基を保護することで、一時的にこれらの電荷をマスキングし、そして該電荷による細胞膜の受動的な通過を可能にすることからなる。
【0034】
また、pH、とりわけ生体組織、細胞および寄生生物におけるpHは、リン酸基の自然な切断の原因となる可能性がある。同様に、多くの酵素、とりわけホスファターゼは、芳香環−リン酸の結合を切断する能力がある。また、生体組織、生体細胞、生きた寄生生物への応用については、これらのリン酸基をミミック、とりわけリン酸の安定な類似物で置換することが好ましい。
【0035】
好適には、リン酸基のミミックは、
−酵素分解される保護基であり、前記芳香族化合物が細胞および/または寄生生物の膜系を受動的に通過できるようにするのに適しており、また、細胞の内部または寄生生物の内部で一度、リン酸基またはリン酸基の安定な類似物を形成させるのに適した、酵素分解される保護基と、
−リン酸の安定な類似物であり、自然な脱リン酸化、ならびに/または酵素による脱リン酸化、とりわけ細胞および/または寄生生物のホスファターゼによる脱リン酸化から、芳香族化合物を保護するのに適したリン酸の安定な類似物、
から選択される。
【0036】
本発明による、アルドラーゼを阻害することができる化合物の非限定的例示として、公式の呼称に従って、5−ホルミル−6−ヒドロキシ−2−ナフチルリン酸、6−ホルミル−5−ヒドロキシ−2−ナフチルリン酸、4−ホルミル−5−ヒドロキシ−1−ナフチルリン酸、5−ホルミル−4−ヒドロキシ−1−ナフチルリン酸、4−ホルミル−3−ヒドロキシ−2−ナフチルリン酸、3−ホルミル−4−ヒドロキシ−2−ナフチルリン酸、3−ホルミル−2−ヒドロキシ−1−ナフチルリン酸、2−ホルミル−3−ヒドロキシ−1−ナフチルリン酸として指定することのできる化合物、あるいは、リン酸基を本発明によるリン酸基のミミックで置換することで得られるこれらの化合物の誘導体、を挙げることができる。
【0037】
好適には、本発明による芳香族化合物は以下の一般式を有している。
【0038】
【化2】

【0039】
該式において、R1はリン酸基またはリン酸基のミミックである。
【0040】
1がリン酸基であるとき、一般式(II)による芳香族化合物は、公式の呼称に従って、5−ホルミル−6−ヒドロキシ−2−ナフチルリン酸(以下、FHN−Pで表す)として指定される。また、本発明にしたがった一般式(II)による化合物は、5−ホルミル−6−ヒドロキシ−2−ナフチルリン酸またはその誘導体であってよく、該誘導体は、リン酸基を本発明によるミミックで置換することで得ることができる。
【0041】
FHN−PとクラスIのアルドラーゼ、より詳細にはウサギの筋肉のアルドラーゼとの相互作用の研究は、UV/可視光差分光法によって、またエレクトロスプレー質量分析によって行った。これらの研究は、酵素反応速度の分析と、変異アルドラーゼを用いる実験とによって同時に補完した。
【0042】
ウサギの筋肉のアルドラーゼについて、本発明によって、本発明による芳香族化合物のアルデヒド基と酵素との間にシッフ塩基が形成されることを明らかにすることができた。本発明によって、また、このシッフ塩基の形成に残基Lys−107が関わっていることを示すこともできた。さらに、FHN−Pによるウサギの筋肉のアルドラーゼの阻害は、時間に依存する可逆的な阻害(「slow−binding阻害」)として定義されている。このタイプの阻害は、高いレベルの選択性を有すること以外に、酵素に対する阻害剤の固定が遅いことを特徴としており、このことにより、化学的に活性な不可逆的なタイプの阻害剤(Morrison et Walsch、1988,Adv.Enzymol.Relat.Aeras Mol.Biol.,61:201−301)によって実現される阻害と同程度の効果を示すことができる。FHN−Pによるウサギ筋肉のアルドラーゼの阻害は、およそ25nMの全体の阻害定数Ki*を特徴としている。従って、この化合物は今日では、クラスIのアルドラーゼに対する最も強力な、時間に依存する可逆的な阻害剤に相当するものとなっている。その上、あらゆる阻害が、阻害剤とリジン残基の間におけるシッフ塩基の形成を伴うため、この阻害は、阻害剤−酵素複合体を水素化ホウ素ナトリウムで処理することによって不可逆的とすることもできる。
【0043】
2−(4−ホルミル−3−ヒドロキシフェニル)−1−リン酸二水素エチレンのような化合物が、アルドラーゼの阻害においてはFHN−Pの等価物として考えることができることに留意すべきである。実際、この化合物は、非常にFHN−Pに類似した様式で、先に記述したアルドラーゼの阻害に必要な条件に応えるものである。この化合物のリン酸基があることによって、まず、アルドラーゼによる認識が可能になる。この化合物はFHN−Pのように、活性部位の内部に向き、該化合物は、FHN−Pにおける基の距離とほとんど一致している、アルデヒド基とフェノール基からリン酸基を隔てている距離を踏まえて、一つのリジン残基の近傍にアルデヒド基とフェノール基を置く。
【0044】
好適には、本発明による酵素分解される保護基は、一つまたは複数の細胞内エステラーゼによって脱保護される性質の基である。
【0045】
好適には、また本発明によれば、この酵素分解される保護基は以下の一般式を有するものである。
【0046】
【化3】

【0047】
該化学式において、R’は以下の基から選択することができる。
【0048】
【化4】

【0049】
【化5】

【0050】
このように、本発明による芳香族化合物は、オキシメチルエステル型である、酵素分解される保護基を有している。このような酵素分解性される保護基の脱保護の機構は、とりわけFarquhar et al.,1983(J.Pharm.Sci.,72:324−325)およびSrivastva et al.,1984(Bioorg.Chem.,12:118−124)によって説明されている。
【0051】
好適には、またもう一つの変形例によると、本発明による酵素分解される保護基は、細胞内エステラーゼによって脱保護される性質をしており、以下の一般式を有するものである。
【0052】
【化6】

【0053】
該化学式において、R’’は以下の基から選択することができる。
【0054】
【化7】

【0055】
【化8】

【0056】
【化9】

【0057】
【化10】

【0058】
チオエステル型の酵素分解される保護基が、脱保護するために、オキシメチルエステル型の酵素分解される保護基と同じ酵素を用いるのに対し、反応メカニズムは大きく異なっており、該メカニズムはとりわけLefebvre et al.,1995(J.Med.Chem.,38:3941−3950)によって説明されている。
【0059】
電荷の一時的なマスキングに関する変形実施例によると、本発明による酵素分解される保護基は、一つまたは複数の細胞内レダクターゼによって脱保護することができる。
【0060】
好適には、この変形実施例によると、酵素分解される保護基は以下の一般式に対応している。
【0061】
【化11】

【0062】
該化学式において、R’’’は以下の基から選択することができる。
【0063】
【化12】

【0064】
このような酵素分解される保護基の脱保護の機構は、Puech et al.,1993(Antiviral Res.,22:155−174)によって説明されている。
【0065】
当然のことだが、本発明による特定の芳香族化合物のリン酸基の電離状態を、酵素分解される保護基によって電荷をマスキングする以外の技術によってなくすこともできる。目標としている応用(細胞から抽出されたアルドラーゼまたは抽出されていないアルドラーゼに対する応用)によると、酵素分解される保護基、特に前述したものの補足あるいは代替として、特定のカプセル化(生薬状)または特定の投与技術(注入法)を用いることが好ましい。
【0066】
好適には、本発明によるリン酸の安定な類似物は、
−メチレンホスホン酸、
−ジフルオロメチレンホスホン酸、
−モノフルオロメチレンホスホン酸、
という基から選択することができ、これらの基はとりわけ、Nieschalk J. et al.,1996(Tetrahedron Lett.,52(1):165−176)に記載されている。
【0067】
好適には、また本発明によると、少なくとも一つの芳香族結合体の少なくとも一つの炭素原子上の水素原子を、化合物の全体的な疎水性を向上させるのに適した、疎水性置換基である置換基で置換する。このような基があることによって、本発明による芳香族化合物が、比較的疎水性であるアルドラーゼの活性部位に接近することが容易になる。さらに、本発明による化合物の合成と両立可能な基を選択し、アルドラーゼの活性部位のところにおける立体障害による制約を考慮することが望ましい。
【0068】
好適には、本発明による各疎水性置換基は、主鎖が最大で三つの炭素原子を含むアルキル基である。
【0069】
本発明はさらに、本発明による芳香族化合物を、真核生物において、クラスIのアルドラーゼの活性に対する阻害剤として、また外挿によって、解糖の阻害剤として用いることにも関するものである。好適には、芳香族化合物の使用は非治療的枠組みにおいてなされる。
【0070】
好適には、また本発明によると、この目的に用いられる芳香族化合物は、25μM未満、とりわけ50nM未満、典型的にはおよそ25nMのアルドラーゼの阻害定数Kiを有することができる。
【0071】
好適には、また本発明によると、この目的に用いられる芳香族化合物は、不可逆的に、あるいはほぼ不可逆的に、少なくとも一つのアルドラーゼを阻害することができる。
【0072】
本発明は細胞外または細胞内のアルドラーゼの阻害方法も範囲に含んでおり、好適には、人体もしくは動物の体またはヒトの胚から単離されていない生体細胞の細胞内アルドラーゼは除くものであり、該方法において、これらのアルドラーゼを、アルドラーゼ活性に対して少なくとも有意な効果を生じさせるのに十分な量の本発明による少なくとも一つの芳香族化合物と接触させる。
【0073】
好適には、本発明による方法は、細胞の解糖の阻害に応用される。
【0074】
好適には、本発明による方法は、ガン細胞の進行を止めるために応用することができる。
【0075】
本発明はまた、本発明による芳香族化合物を含む医薬品も範囲としている。
【0076】
ガンとの闘いにおいて、様々な治療アプローチが考えられてきており(化学療法、放射線療法、外科的治療など)、多くの治療法が今日では用いられている。しかし、これまでには、ガンに対して全体的に有効ないかなる治療法も存在していない。一般的に、現状における治療法の選択は、組織のタイプおよび冒された器官、並びに浸潤の度合いと悪性度に応じて行われる。しかし、多くの治療法は、多少とも長期間の間、患者にとって耐え難いものとなっている。そのため、一般的には複数の治療によるアプローチが採用されているために、結果として、一人の患者に代わる代わる処方することができるような、同一のタイプのガンを治療することができる様々な治療法を使用できるようにすることが必要となる。GRHアプローチを実行できるようにすることには、新たな治療法を生み出し、従ってガンとの戦いに大きな進歩をもたらす可能性がある。本発明による芳香族化合物によって、非常に望ましい形でGRHアプローチを実行することが可能になる。
【0077】
本発明はまた、ガン治療のための医薬品の製造に、とりわけGRHアプローチに従って実施されるガン治療のための医薬品の製造に、本発明による芳香族化合物を用いることも範囲に含むものである。
【0078】
本発明はまた、本発明による芳香族化合物の合成方法も範囲としている。
【0079】
本発明の第一の特徴によると、該方法によって、二番目の芳香族結合体の炭素原子がリン酸化した、1−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒドを合成することが可能である。
【0080】
好適には、本発明による合成方法は、第一の芳香族結合体の1位の炭素原子および第二の芳香族結合体の炭素原子の一つがヒドロキシル化した、ジヒドロキシル化した2−ナフトアルデヒド化合物をリン酸化する過程を含んでおり、前記リン酸化は、第二の芳香族結合体のヒドロキシル基をリン酸基で置換することに対応している。
【0081】
好適には、また本発明によると、リン酸化過程は、CH2Cl2/THF溶液中の亜リン酸トリエチル、ピリジンおよびヨウ素の技術によって開始される(Stowel J.K. et al.,1995,Tetrahedron Lett.,36:182−185;Ladame S. et al.,2001,Phosphorus,Sulfur and Silicon,174:37−47)。
【0082】
好適には、また本発明によると、脱保護(Page P.et al.,1999,Bioor.Med.Chem.,7:1403−1412)を行った後に5−ホルミル−6−ヒドロキシ−2−ナフチルリン酸(FHN−P)が得られるように、1,6−ジヒドロキシ−2−ナフトアルデヒドに対してリン酸化を行う。
【0083】
本発明はまた、アルドラーゼを阻害する芳香族化合物、アルドラーゼおよび解糖の阻害方法、並びに医薬品にも関するものであり、以上で言及した特徴の、または以下で述べる特徴の全てまたは一部の組み合わせを特徴としている。
【0084】
本発明のその他の目的、特徴および利点は、以下の実施例を読むことで明らかになる。図1〜図5はこれらの実施例で得られた結果を示している。
【0085】
合成方法および物理化学的分析方法
湿気に敏感なすべての反応は、無水条件でアルゴン雰囲気下で行った。
【0086】
テトラヒドロフラン(THF)およびエチルエーテルを、ナトリウム/ベンゾフェノンで蒸留する。ジクロロメタンはP25で蒸留する。ピリジンおよびトリエチルアミンはカリで蒸留する。メタノールは少量のナトリウムの存在下で蒸留する。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)のための溶媒は、他の精製をせずに用いる。
【0087】
反応の進行は、適切な溶出システムを用いての、シリカプレートの上(Merck 60−F254)での薄層クロマトグラフィー(TLC)によって検証する。生成物を、UV照射(λ=254nmおよび366nm)によって、または、ヨウ素蒸気、リン酸化物に対するZinzade(モリブデン酸アンモニウム)のような特定の顕色剤、もしくは、6%および8%のモリブデン酸アンモニウムを含む硫酸水溶液である5%の硫酸セリウム(IV)を含有するPancaldi顕色剤を用いることによって、可視化した。
【0088】
生成物は、適切な溶出システムを用いての、シリカゲル(Merck−60、230−400メッシュ)におけるフラッシュクロマトグラフィー、または逆相カラムC18(Macherey−Nagel polygoprep C18、12−25μm、60A)における分取用高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製した。
【0089】
1HNMRスペクトル、13Cスペクトルおよび31Pスペクトルを、Bruker AC200分光計あるいはAC250分光計で記録した。化学シフト(δ)は、1H核および13C核についてはテトラメチルシランに基づいて、そして31P核についてはリン酸に基づいて、ppm単位で表されている。結合定数の値はHzで表されている。以下の省略記号を用いた:sは一重項、seは励起一重項、dは二重項、tは三重項、qは四重項、そしてmは多重項である。
【0090】
質量スペクトル(DCI)を、四重極型Nermag R10−10分光計で行った。
【0091】
元素分析はEager200という機器で実施した。
【実施例1】
【0092】
実施例1:5−ホルミル−6−ヒドロキシ−2−ナフチルリン酸(FHN−P)の合成:
あらかじめ合成された1,6−ジヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド(0.21g;1.1mmol(Jonhson W.S.J. et Shelberg W.E.,1945,J.Am.Chem.Soc.,67:1745−1753;Jonhson W.S.J. et al.,1944,J.Am.Chem.Soc.,66:218−222;Bilger C. et al.,1987,Eur.J.Med.Chem.,22:363−365)をCH2Cl2(34ml)に溶解した。0℃に維持した無水ピリジン(0.1ml;1.24mmol)を加えた。次にCH2Cl2(10ml)に溶解しているヨウ素(0.1g;1.2mmol)と亜リン酸トリエチル(0.23ml;1.32mmol)の混合物を加えた。全体を1時間にわたって0℃で撹拌しながら維持し、次いで、室温で放置した。水(20ml)を加えた。有機相を食塩水(NaClの飽和水溶液)で洗浄し、次いで、MgSO4で乾燥した。溶媒を減圧下で取り除いた。フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2)の後、黄色の油が得られた(0.11g;31%)。つまり、1−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド−6−リン酸ジエチルである。
【0093】
ブロモトリメチルシラン(0.15ml;1.1mmol)を、撹拌しながら、先に得られた1−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド−6−リン酸ジエチル溶液(0.054g;0.17mmol)にゆっくりと加え、窒素雰囲気下で無水CH2Cl2(200μl)に溶解した。得られた混合物を、室温において3時間にわたって撹拌した。このときEt2O/H2O(10:1)を加え、得られた有機相を水で洗浄した。水相のpHを、1Mの炭酸ナトリウムで7.6に調整した。溶液を凍結乾燥して、ナトリウム塩の形態をした5−ホルミル−6−ヒドロキシ−2−ナフチルリン酸(FHN−P)の白い粉末(0.050g;96%)とした。
【0094】
1HNMR(250MHz、D2O):δ7.11(d、3H3-H4=8.50Hz、1H、H3);7.34(d、3H7-H8=8.00Hz、1H、H7);7.41(se、1H、H5);8.24(d、3H4-H3=8.50Hz、1H、H4);9.84(d、3H8-H7=8.00Hz、1H、H8);9.91(s、1H、CHO)。
【0095】
13CNMR(50MHz、D2O):δ114.73(C2);116.93(C10):118.32(d、3C-P=3.57Hz、C5);120.13(C8);123.36(d、3C-P=5.00Hz、C7);123.42(C9):126.72(C3);128.31(C4);142.35(C1);158.49(d、2C-P=6.00Hz、C6);198.32(CHO)。31P NMR(81MHz、D2O):δ0.56。
【0096】
質量分析(FAB):267、λmaxH2O(pH7.6):392nm(ε5100M-1・cm-1)、277nm(ε4650M-1・cm-1)。
【実施例2】
【0097】
実施例2:FHN−Pによるウサギ筋肉のアルドラーゼ(RM)の阻害活性
【0098】
分析方法:
アルドラーゼ活性は、連動した酵素試験系を用いて測定した。つまり、340nmでの、25℃で温度を一定にしたSAFAS分光光度計を用いての、トリオースリン酸イソメラーゼと、NADH(Boehringer−Mannheim社、フランス)の酸化に応じたグリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼとの系(TIM/GDH)である。試験は基質(Fru(1,6)P2;最終濃度1mM)を添加することによって開始し、トリエタノールアミン緩衝液(TEA緩衝液)(100mMのTEA/HCI;50mMのNaCl;1mMのEDTA、pH7.6;0.15のイオン強度)の中で作成された、1mlの最終的な容積に対して0.42mMのNADHの、二つの酵素系(10μg/mlのGDHと1μg/mlのTIM)を含有するアルドラーゼ溶液を完成させる。組換えアルドラーゼの作成、過剰発現および精製は、Morris A.J.et al.,1993,(J.Biol.Chem.,265:1095−1100)およびBerthiaume L. et al.,1993(J.Biol.Chem.,268:10826−10835)に従って行った。
【0099】
基質の分解率は340nmでの吸収/分の減少を測定することで判定した。アルドラーゼは、使用前にTEA緩衝液で4℃で一晩にわたって透析した。タンパク質濃度は、吸光係数としてε280=0.91ml.mg-1・cm-1を用いて、分光光度計によって判定した。サブユニットの濃度は、アルドラーゼの四量体の159000の分子量に基づいて判定した。
【0100】
−反応速度論的方法:
この場合、時間に依存する可逆的な阻害(「Slow binding阻害」)は、酵素Eと阻害剤Iの間での平衡が急速に形成されることに関与し、該平衡の形成の後、図1に示されている反応の概要および反応式に表されているように、最初のEI複合体が形成され、それが、反応速度論的により安定したEI*複合体への遅い可逆的な異性化を受けるが、該反応式において、Ki*は全体の阻害定数を示し、Kiは急速に形成されるミカエリス複合体EIの解離係数を、そしてKdはEI*複合体の解離定数を示している。
【0101】
−時間に依存する可逆的な阻害の解析:
基質の不在の下では、EI*複合体の形成を示す、一次反応の見かけの速度定数(kapp)は、式(1)(図1)によって定義されている(Morrison et Walsh,1988,Adv.Enzymol.Relat.Aeras Mol.Biol,61:201−300)。
【0102】
appの値は、阻害剤の濃度[I]が高まるときの飽和速度を反映しており、該値は、それぞれk-2とk2+k-2である下限と上限の間で変動するものである。
【0103】
平衡しており、[EI*]>[EI]であるとき、式(2)(図1)が用いられるのだが、該式において、[E]tおよび[I]tは、それぞれ酵素と阻害剤の初期濃度を表しており、KdはEI*複合体の解離定数である(Segal I.H.,1975,Enzyme kinetics:Behavior and Analysis of Steady−State and Rapid Equilibrium Enzyme Systems,Willey−Interscience、New−York)。
【0104】
-2がゼロに近づく極端な状況では、時間に依存する可逆的阻害剤は、活性部位に対する不可逆的阻害剤に類似することがある。この状況では、式(3)がこのタイプの阻害に用いられる(Meloche H.P.,1967,Biochemistry,6:2273−2280)。酵素活性の半減期(t1/2)は、阻害剤の濃度の逆数の関数として定義され、縦軸をln(2/k2)で通り横軸を−1/Kiで通る直線によってグラフで表される。
【0105】
実験手順:
天然アルドラーゼ(5μMのサブユニット)を、TEA緩衝液の中で、FHN−P(0.05〜1mM)の存在下でインキュベートした。酵素活性を、10μlのアリコートで時間に応じて分析した。
【0106】
不活性化速度は擬一次反応速度に従い、反応速度のパラメーターKiおよびk2を、式(3)を用いて求めた。再活性化率を求めるために、アルドラーゼ(TEA緩衝液中の25μMのサブユニット)を、500μMのFHN−Pと、90%の不活性を得るまでインキュベートした。余剰の阻害剤を、PM−30膜(Millipore)を用いて、限外濾過によって取り除いた。酵素−阻害剤の複合体を、ヘキシトール−P2(10mM)を含むTEA緩衝液(最終濃度で15μMのサブユニット)の中でインキュベートした。アリコート(10μl)を、アルドラーゼ活性を測定するために、様々な時間に回収した。
【0107】
対照はFHN−Pを用いないで手順を行うことからなる。再活性化のプロセスは、一次反応であるものとして分析した。
【0108】
−UV/可視光差分光法による検証
吸収スペクトルを、25℃で温度を一定にした分光光度計Cary 1E Varianを用いて測定した。同様のTEA緩衝液を、滴定と活性の分析に用いた。吸収スペクトルは異なった二つの方法によって測定し、該方法はとりわけ、Gefflaut T. et al.,1986(Bioorg.Med.Chem.,4:2043−2054)およびBlonski C. et al.,1997(Biochem.J.,323:71−77)に記載されている。
【0109】
方法Aでは、250nmと500nmの間の波長、あるいは最大吸収または最小吸収に対応する波長で、吸収スペクトルを時間に応じて記録する。測定は、様々な最終濃度のFHN−P(0.1〜1mM)を、一定濃度のアルドラーゼ(10μMのサブユニット)を含むTEA緩衝液に加えることで開始した。測定した酵素複合体の吸収スペクトルは、緩衝液による吸収、FHN−Pによる吸収、および酵素による吸収(個別に測定されている)によって補正した。このようにして得られた様々な吸収スペクトルを、アルドラーゼ−阻害剤の複合体の形成を規定する定数の値を求めるために用いた。
【0110】
方法Bはアミノカプロン酸によってFHN−Pを滴定するために用いた。一定濃度のFHN−P(10μM)を含むTEA緩衝液での各分析ごとに、アミノカプロン酸を加え、様々な最終濃度(0.01〜0.2M)を得た。様々な吸収スペクトルは、シッフ塩基の形成に対応しているのだが、様々な時間間隔で記録し、それから、緩衝液による吸収、アミノカプロン酸による吸収、そしてFHN−Pによる吸収(個別に測定されている)によって補正した。
【0111】
時間ごとの吸収データを一次反応速度式に(あるいは二つの一次反応速度機構の組み合わせに)適用して、各試験について、一次反応の見かけの速度定数(kapp)と最大吸収の変化(ΔAmax)を得た。FHN−Pとアミノカプロン酸の間に形成されたシッフ塩基の解離定数(Kd)は、式(2)を用いて平衡時に求めた吸収の差に基づいて得た。急速に形成されたEI複合体の解離定数(Ki)の値と、EI*複合体の遅い形成に対応する定数k2の値は、式(1)あるいは式(3)による一次反応速度定数の値の分析に由来するものである。
【0112】
変異アルドラーゼ(10μMのサブユニット)を用いるUV/可視光差分光法によるすべての試験は、方法Aを用いて行う。
【0113】
−エレクトロスプレー質量分析(ESI/MS)による検証
エレクトロスプレー質量スペクトルは、四重極型Finnigan Mat TSQ 700でポジティブモードで得た。アルドラーゼ(TEA緩衝液中の50μMのサブユニット)を、60±5%の不活性に達するまで、50μMのFHN−Pとインキュベートした。余剰の阻害剤は、酢酸アンモニウム緩衝液(10mM、pH5.5)での限外濾過によって除去した。サンプルを、最終濃度が1mMの酢酸アンモニウムと0.5%の酢酸を含むH2O/メタノール(1:1、v/v)中で、約10pmol/μlとなるように調製した。サンプルは、分光計のサンプルセルの内部に4μl/分の連続流でロードした。
【0114】
結果
−FHN−Pによる、アルドラーゼの、時間に依存する可逆的な阻害。
【0115】
ウサギ筋肉のアルドラーゼをFHN−Pとインキュベートすると、一次反応速度に従って、酵素活性が低下した。
【0116】
アルドラーゼの強力な拮抗阻害剤である、基質Fru(1,6)P2、および基質の類似物であるヘキシトール−P2は、FHN−Pによる不活性化から酵素を保護しており(表1)、該保護は、酵素の活性部位のところにおいて生じる阻害に対応している。
【0117】
実験条件および行った測定は以下の表1にまとめられており、以下の通りである。すなわち、ウサギ筋肉の天然アルドラーゼ(RM)(0.2mg/ml)を、TEA緩衝液(最終体積1ml;pH7.6)中で、一定濃度のFHN−P(250μM)の存在下で、Fru(1,6)P2またはヘキシトール−P2(1mM)がある状態とない状態でインキュベートし、アリコートの酵素活性を80分のインキュベートの後に分析した。
【0118】
比較として、同一の実験条件(表1に記載)において、FHN−Pのリン酸化されていない類似物(250μMの1,6−ジヒドロキシ−2−ナフトアルデヒドすなわちDHNA)は完全に不活性であり、このことは、酵素の活性部位へのFHN−Pの固定におけるリン酸基の機能的関与を強く示唆している。速度パラメーターは、式(3)に従って様々な濃度の阻害剤(0.01〜1.5mM)について測定される、一次反応の見かけの速度定数(kapp)を導き出すものであり、該パラメータは表2にまとめられている。
【0119】
【表1】

【0120】
【表2】

【0121】
FHN−Pが存在せず飽和濃度のヘキシトール−P2(10mM)を含む溶液中において、不活性化した酵素をインキュベートすると、酵素活性は部分的に回復した。酵素活性の回復を反映する、一次反応速度定数の値(k-2=1.3±7・10-5min-1)は、不活性化定数k2の10-4倍である。
【0122】
従って、FHN−Pは時間に依存する可逆的な阻害剤として振る舞う。表2に示された値によると、全体の解離定数Ki*は40±20nMと概算することができる。また、酵素活性は、水素化ホウ素ナトリウムによって酵素−阻害剤複合体を処理した後では、回復することができず、このことは、FHN−Pによる阻害メカニズムが、活性部位のリジン残基とのシッフ塩基の形成を引き起こすことを示唆している。
【0123】
−FHN−Pとアミノカプロン酸の相互作用
FHN−Pおよびアルドラーゼのリジン残基のε−アミノ基をシッフ塩基の形成に対するモデルと考え、参照としてFHN−P(10μM)とアミノカプロン酸(0.1〜1mM)とを反応させ、続いてUV/可視光差分光法を行った。図3(上方部分)に示されている反応モデルは、425nm(Δε 3730±200M-1・cm-1)と291nm(Δε 13080±700M-1・cm-1)での二つの極大に対応する、UV/可視光差分光法での吸収の変化を特徴としているが、これはシッフ塩基の形成によるものである。この反応モデルはまた、共有結合複合体の内部におけるFHN−Pの減少により生じる、367nm(Δε −740±50M-1・cm-1)と267nm(Δε −5650±300M-1・cm-1)での二つの極小も特徴としている。388nm、343nmおよび276nmに等吸収点があるということは、中間物が生じておらず、副反応もないことを示している。平衡での差吸収の変化は、アミノカプロン酸の濃度が高まると飽和し(図2)、これらの各濃度についての反応速度は、擬一次反応機構の反応速度に類似し、二次反応の定数、25℃で0.12±0.01M-1・min-1であるk2ndに対応している。FHN−P−アミノカプロン酸複合体の解離定数Kdの値は、16±3mM(図2)である。
【0124】
FHN−Pとウサギ筋肉のアルドラーゼの間の相互作用
FHN−P(最終濃度0.1〜1mM)を天然アルドラーゼ(10μMのサブユニット)を含む溶液に加えると、得られたUV/可視光差スペクトルは、431nmと293nmでの極大、376nmと268nmでの極小、そして401nmと279nmでの等吸収点を有している(図3、下方部分)。反応モデルでのバンドの位置のわずかな差の原因は、モデルの系ごとのFHN−Pのタンパク質環境の差によるものと言える。差吸収スペクトルの発達は、別個の一次反応の二つの機構に合わせて生じる。早い反応速度の相は、吸収の変化がより大きくなり、そして酵素活性の全体的な低下に相関して、阻害剤の濃度が高くなると飽和する。遅い反応速度の相もまた、分析をヘキシトール−P2の飽和濃度(10mM)で行った際に見られた。この遅い反応速度の相は、三十倍小さな定数に対応し、吸収の最終的な変化の四分の一に寄与するものだが、見られた阻害に関連するものではない。これらの飽和濃度では、結合したFHN−Pについてのモル吸光係数は、アルドラーゼの四つの活性部位が塞がっていると仮定して計算した。すなわち、Δε431=3600±200M-1・cm-1;Δε376=−2140±110M-1・cm-1;Δε293=12480±650M-1・cm-1およびΔε268=5080±250M-1・cm-1である。
【0125】
最大の阻害についての、FHN−Pがアルドラーゼに結合する化学量論は、アミノカプロン酸−FHN−P複合体による様々な分子吸光と一致しており、該化学量論により、四量体アルドラーゼ1モルに3.9〜4.2モルのFHN−Pが結合したEI*複合体が予測される。
【0126】
EI*複合体の形成を特徴づける反応速度パラメーターKiおよびk2を、図4に示されたデータに基づいて、式(1)または式(3)によって求め、Ki=125±25μM、k2=0.067±0.004min-1およびt1/2〜6minという値を得る。
【0127】
これらの結果に基づいて計算された全体の阻害定数Ki*は25±15nMである。
【0128】
−エレクトロスプレー質量分析によるアルドラーゼ−FHN−P複合体の分析。
アルドラーゼ−FHN−P複合体のエレクトロスプレー質量分析による分析により、アルドラーゼのモノマー(39212Da)に対応する分子量、シッフ塩基の形態のアルドラーゼのサブユニットとFHN−Pとの間の二元複合体(39460Da)に対応する分子量、および、アルドラーゼのサブユニットと2分子のFHN−Pとの間における微量の三元複合体(39712Da)に対応する分子量が得られた(図5)。
【0129】
−変異RMアルドラーゼとFHN−Pの間における相互作用
107、146および229リジン残基はアルドラーゼの活性部位のところに位置しており、従って、FHN−Pとのシッフ塩基の形成を介した不活性化を実現するための候補である。FHN−Pの存在下での差吸収に関与するリジンを同定するために、K107M(Research Collaboratory for Structural Bioinformatics Protein Databank)、K146M(Blonski C. et al.、1997、Biochem.J.323:71−77)およびK229M(Research Collaboratory for Structural Bioinformatics Protein Databank)と命名されている、これらのリジン残基の一時的な変異体を作成する。K107M、K229Mおよび天然酵素の原子位置の比較は、これらの構造変異体が、野生型酵素に対して同型であることを示している(天然アルドラーゼに対する原子位置の標準偏差(「RMS偏差」)は、構造体K107MおよびK229Mについて、それぞれ0.41Åおよび0.48Åである)。UV/可視光差分光法(方法A)を、一定濃度のFHN−P(300μM)の存在下で、一時的な変異体のそれぞれについて酵素複合体の形成を調べるために用いた。431nmで得られたデータの分析が表3に示されている。
【0130】
【表3】

【0131】
変異体K229Mについて見られた差スペクトルは、野生型アルドラーゼで見られたスペクトルと同一である。反応の進行は、別個の一次反応の二つの機構によって立証することができる。反応速度パラメーターおよび形成されたEI*複合体のレベルは、野生型酵素で得られたパラメーターおよびレベルと同一であり、このことから、Lys−229は、シッフ塩基の形成を直接的に担うリジン残基ではない。
【0132】
比較として、変異体K107MとFHN−Pの差スペクトルは遅い反応速度の相を示しており、該相の定数と最大吸収は、野生型酵素で見られた遅い相の値と同一である。酵素阻害がないことに加えて急速な相がないことは、時間に依存する可逆的な阻害現象にLys−107が関与することを証明している。
【0133】
変異体K146MのFHN−Pとの反応は、結果として平衡における吸収の全体的な変化を有しており、該変化は、野生型アルドラーゼで見られるものに匹敵する(表3)。酵素阻害に関連する反応速度の相は、一次反応の機構に対応はしているが、シッフ塩基の非常に遅い形成による、野生型アルドラーゼの場合に見られるものとは異なっている。従って、Lys−147をメチオニンで置換すると、形成されるEI*複合体の割合が顕著に減少するのだが、複合体を形成する変異体の能力は変化しない。このように、Lys−146はシッフ塩基の形成には必要ではないが、該形成を著しく助長する。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】反応の概要および反応式を示した図。
【図2】アミノカプロン酸の濃度と差吸収の関係を示したグラフ。
【図3】UV/可視光差スペクトルを示したグラフ。
【図4】見かけの速度定数を示したグラフ。
【図5】エレクトロスプレー質量分析の結果を示したグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒド基、フェノール基およびリン酸基またはミミックを有し、
−芳香核がベンゼン型の二つの芳香族結合体を有すること、および
−以下の一般式に対応すること、
を特徴とする芳香族化合物であり、
【化1】

該化学式において、
・アルデヒド基(−CHO)とフェノール基(−OH)が、第一の芳香族結合体である同一の芳香族結合体の隣接する二つの炭素原子に固定されていること、
・第二の芳香族結合体である二番目の芳香族結合体の炭素原子に固定されているRが、リン酸基であるか、または、
−酵素分解される保護基であって、前記芳香族化合物が細胞および/または寄生生物の膜系を受動的に通過できるようにするのに適しており、また、一度細胞の内部または寄生生物の内部において、リン酸基あるいはリン酸基の安定な類似物を形成させるのに適した、酵素分解される保護基、
−リン酸基の安定な類似物であって、自然な脱リン酸化および/または酵素による脱リン酸化から芳香族化合物を保護するのに適したリン酸基の安定な類似物、
から選ばれるリン酸基のミミックであること、
を特徴とする、芳香族化合物。
【請求項2】
以下の一般式を有し、
【化2】

該式においてR1がリン酸基またはリン酸基のミミックであることを特徴とする、請求項1に記載の芳香族化合物。
【請求項3】
酵素分解される保護基が、一つまたは複数の細胞内エステラーゼによって脱保護される性質の基であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の芳香族化合物。
【請求項4】
酵素分解される保護基が以下の一般式を有し、
【化3】

該式において、R’が、
【化4】

【化5】

という基から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の芳香族化合物。
【請求項5】
酵素分解される保護基が以下の一般式を有し、
【化6】

該式において、R’’が、
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

という基から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の芳香族化合物。
【請求項6】
酵素分解される保護基が、一つまたは複数の細胞内レダクターゼによって脱保護される性質の基であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の芳香族化合物。
【請求項7】
酵素分解される保護基が以下の一般式を有し、
【化11】

該式において、R’’’が、
【化12】

という基から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の芳香族化合物。
【請求項8】
リン酸の安定な類似物が、
−メチレンホスホン酸、
−ジフルオロメチレンホスホン酸、
−モノフルオロメチレンホスホン酸、
という基から選択されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の芳香族化合物。
【請求項9】
少なくとも一つの芳香族化合物の少なくとも一つの炭素原子の水素原子が、芳香族化合物の全体的な疎水性を向上させるのに適した、疎水性置換基である置換基で置換されていることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか一つに記載の芳香族化合物。
【請求項10】
一つまたは複数の疎水性置換基が、主鎖が最大で三つの炭素原子を含む一つまたは複数のアルキル基であることを特徴とする、請求項9に記載の芳香族化合物。
【請求項11】
クラスIのアルドラーゼの活性阻害剤として非治療的な利用をするのための、請求項1〜請求項10のいずれか一つに記載の芳香族化合物。
【請求項12】
25μM未満、とりわけ50nM未満、典型的にはおよそ25nMである阻害定数Kiを有することを特徴とする、請求項11に記載の芳香族化合物。
【請求項13】
不可逆的またはほぼ不可逆的に少なくとも一つのアルドラーゼを阻害することができることを特徴とする、請求項11に記載の芳香族化合物。
【請求項14】
人体もしくは動物の体、またはヒトの胚から単離されていない生体細胞の細胞内アルドラーゼを除く、細胞外または細胞内アルドラーゼの阻害方法であり、前記アルドラーゼを、少なくとも有意な効果を生じさせるために十分な量の、請求項1〜請求項13のいずれか一つに記載の少なくとも一つの芳香族化合物に、接触させることを特徴とする阻害方法。
【請求項15】
細胞の解糖の阻害に適用される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ガン細胞の進行を止めるために適用される、請求項14または請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜請求項13のいずれか一つに記載の芳香族化合物を含む医薬品。
【請求項18】
ガン治療のための医薬品を製造するための、請求項1〜請求項13のいずれか一つに記載の芳香族化合物の利用法。
【請求項19】
GRHアプローチに従って実施されるガン治療のための医薬品を製造するための、請求項18に記載の利用法。
【請求項20】
請求項1に記載の、二番目の芳香族結合体の炭素原子がリン酸化された1−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド化合物を合成する方法であり、第一の芳香族結合体の1位の炭素原子および第二の芳香族結合体の炭素原子の一つがヒドロキシル化した、ジヒドロキシル化した2−ナフトアルデヒド化合物をリン酸化する過程が行われ、前記リン酸化が、リン酸基による第二の芳香族結合体のヒドロキシル基の置換に対応するものである、合成方法。
【請求項21】
リン酸化が、CH2Cl2/THFの溶液中の亜リン酸トリエチル、ピリジンおよびヨウ素の技術によって開始されることを特徴とする、請求項20に記載の合成方法。
【請求項22】
5−ホルミル−6−ヒドロキシ−2−ナフチルリン酸を導くために、1,6−ジヒドロキシ−2−ナフトアルデヒドをリン酸化することを特徴とする、請求項20または請求項21に記載の合成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−516184(P2007−516184A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518266(P2006−518266)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001664
【国際公開番号】WO2005/012313
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(506002731)ユニヴェルシテ ポール サバティエ トゥールーズ トロワ (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PAUL SABATIER TOULOUSE III
【出願人】(500470482)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック(セーエヌエールエス) (25)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE (CNRS)
【出願人】(506002708)ヴァロリザシオン−ルシェルシュ,ソシエテ アン コマンディテ  (1)
【氏名又は名称原語表記】VALORISATION−RECHERCHE,SOCIETE EN COMMANDITE
【Fターム(参考)】