説明

アルファ−MSHの拮抗複合ジペプチド

本発明は、鏡像異性体またはジアステレオ異性体ならびに、ラセミ混合物を含むそれらの混合物の形での、下記の一般式(I)A−AA2−AA1−NH2の複合ジペプチドに関するものであり、この式においてAは下記の一般式(II)HOOC−Rのモノカルボン酸に対応する基を示し、この式においてRは、一つまたは複数の不飽和を、有利には1から6の不飽和を含むことができ、ヒドロキシル基によって場合によっては置換された、および/またはフェニル基を含むことができるC1−C24の線形または分岐脂肪族基、あるいはリポ酸またはその還元形、ジヒドロリポ酸またはN−リポイル−リシンを表し、AA1とAA2は、Ala、Asn、Cys、Gln、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val、Asp、Glu、Arg、His、Lys、Orn、Dap、Dab、対応するホモアミノ酸と対応するベータアミノ酸からなる群から選ばれた同一または異なるアミノ酸を表している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なアルファ−MSHの拮抗複合ジペプチドおよび医薬品として、あるいは色素除去剤としてのそれらの使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メラノコルチン受容体はG蛋白質に結合した7回膜貫通型受容体のスーパーファミリーに属し、cAMP信号の形質導入経路を刺激する(Cone et al., Recent Prog. Horm. Res. 1996, 51, pp.287−317)。メラノコルチン系は多数の生理学的な経路内に組み込まれ、それには色素沈着、炎症、勃起機能、栄養吸収挙動、エネルギー恒常性、体重恒常性および外分泌腺機能が含まれる。これらのメラノコルチン受容体の内因性アゴニストのリガンドはプロオピオメラノコルチン遺伝子の転写体の形質導入後修飾によって誘導され、示差処理の際にメラニン細胞を刺激するα、βおよびγホルモン(MSH)およびコルチコトロピン(ACTH)を発生する。メラノコルチン受容体のサブタイプは内因性メラノコルチンの全てのペプチドによって活性化されるが、コルチコトロピンによって刺激されるだけのメラノコルチンMC2の受容体は除外される。メラノコルチン受容体族は、今日までに発見されたG蛋白質に結合したこれらの受容体の自然状態に存在することが知られているただ二つの拮抗体であるアグーチとアグーチ関連蛋白質(AGRP)の内因性拮抗体も有する(Lu et al. Nature 1994, 371, pp.799−802, Ollmann et al., Science 1997, pp.135−138, Shulter et al., Genes Dev. 1997, 11, pp.593−602)。それらは、それぞれ、アミノ酸の132および49残基のポリペプチドである。もっとも研究されているメラノコルチン受容体リガンドは動物の毛の色素沈着と着色に関与する皮膚メラノコルチン受容体MC1のものである(Hruby et al. Ann. N.Y. Acad. Sci. 1993, 680, pp.51−63; Lerner et al. Nature 1961, pp.189, 176; Mountjoy, et al. Science 1992, 257, pp.1248−1251)。
【0003】
ノナペプチド153 N−6(Jayawickreme et al., J. Biol. Chem. 1994, 269, pp.29846−29854)(H−Met−Pro−D−Phe−Arg−d−Trp−Phe−Lys−Pro−Val−NH2: Ki=11nM)は受容体MC1の合成拮抗体である。しかしながら、この化合物は高分子であり、したがって、その治療活性または美容活性はきわめて制限されている。実際、そのサイズのために、それを至適化することは困難であり、その生物利用可能性が制限される。くわえて、該化合物は高価であり、調製が困難である。
【0004】
トリペプチドD−Trp−Arg−Leu−NH2(Proc. Natl. Acad. Sci.(1995), 92, pp.2894−2898)も拮抗活性を有する。しかしながら、それには不安定なアミノ酸であるトリプトファンが含まれ、したがって、貯蔵安定性の問題が起きることがある。
【特許文献1】欧州特許第1174437号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
欧州特許第1174437号明細書はナフチル基またとくにナフチルアラニル基を含むジペプチドまたはトリペプチドを記載している。しかしながら、ナフチル基の存在は製品の製造価格を増加させる。他方で、日本をはじめとするいくつかの国では、非天然アミノ酸を主成分とするペプチドは化粧品用途に販売することができない。さらに、ジペプチドのどんな活性も示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らはカルボキシル酸とC−末端部位で結合したジペプチドがアルファMSHの拮抗活性を有することを意外にも発見した。これらの拮抗体は分子量がきわめて小さく、したがって、至適化が容易であり、生物利用可能性に優れ、調製がきわめて容易である。
【0007】
本発明はしたがって、鏡像異性体またはジアステレオ異性体ならびに、ラセミ混合物を含むそれらの混合物の形での、下記の一般式Iの複合ジペプチドに関するものである:
A−AA2−AA1−NH2 (I)
この式において、
Aは下記の一般式IIのモノカルボン酸に対応する基を示している:
HOOC−R (II)
この式においてRは、
・一つまたは複数の不飽和を、有利には1から6の不飽和を含むことができる、および/またはフェニル基を含むことができる、ヒドロキシル基によって場合によっては置換されたC1−C24の線形または分岐脂肪族基、
・あるいはリポ酸またはその還元形、ジヒドロリポ酸またはN−リポイル−リシン、
を表している。
AA1とAA2は、Ala、Asn、Cys、Gln、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val、Asp、Glu、Arg、His、Lys、Orn、Dap、Dab、対応するホモアミノ酸と対応するベータアミノ酸からなる群から選ばれた同一または異なるアミノ酸を表している。
【0008】
式(I)の複合ジペプチド内のアミノ酸は、特記事項なき限り、立体配置D、LまたはDLを有することができる。
【0009】
このように、式(I)の複合ジペプチドは一つまたは複数の非対称炭素原子を有することができる。したがって、鏡像異性体またはジアステレオ異性体の形で存在することができる。これらの鏡像異性体、ジアステレオ異性体、ならびにラセミ混合物を含むそれらの混合物は本発明に属する。
【0010】
本発明の枠内において、略語の意味は次の通りである。
・Ala:アラニン
・Asn:アスパラギン
・Cys:システイン
・Gln:グルタミン
・Gly:グリシン
・Ile:イソロイシン
・Leu:ロイシン
・Met:メチオニン
・Phe:フェニルアラニン、またはその類似物、とくにハロゲン化誘導体、とくにパラフルオロ−Phe、ホモ−Phe、パラ−ニトロ−Pheあるいはフェニルグリシン、
・Pro:プロリン
・Ser:セリン
・Thr:トレオニン
・Trp:トリプトファン
・Tyr:チロシン
・Val:バリン
・Asp:アスパラギン酸
・Glu:グルタミン酸
・Arg:アルギニン
・His:ヒスチジン
・Lys:リシン
・Orn:オルニチン
・Dap:ジアミノプロピオン酸
・Dab:ジアミノブチル酸
【0011】
なお、上述の、本発明の対象である複合ジペプチドはNH2末端の形で(言い換えればアミド基を有して)得られる。
【0012】
本発明による複合ジペプチドは式IIの酸に塩またはエステルの形で結合している。本発明による結合はアミノ酸の酸基と式IIの酸の酸基を反応させて実施することができる、あるいは式IIの酸の上のヒドロキシ基の存在を利用することさえ可能である。
【0013】
本発明はこれらの結合全体ならびに非機能結合にも関するものである。結合は物理的または化学的である。
【0014】
有利には、アミノ酸AA2またはAA1の少なくとも一つ、有利には両者は、Arg、His、Dap、Dab、OrnまたはLysから成る群から有利には選択された、塩基性アミノ酸を表し、有利にはArgである。
【0015】
有利にはAA2は、Arg、His、Lys、Orn、DapまたはDabから成る群から有利には選択された、塩基性アミノ酸を表し、有利にはArgである。
【0016】
有利にはAA1および/またはAA2はTrpを表さない。
【0017】
有利にはAA1および/またはAA2はCysを表さない。
【0018】
有利にはアミノ酸AA1またはAA2の少なくとも一つはSerとProとから成る群から選択される。
【0019】
有利にはAA1はProを表す。
【0020】
有利にはAA2はSerを表す。
【0021】
有利には式(II)の酸は多不飽和、すなわち1から6の不飽和を含む脂肪酸である。さらに有利には、オメガ−3酸である。
【0022】
これらのオメガ−3酸の中で、α−リノレン酸、セルボン酸、チムノドン酸およびピノレン酸をとくに挙げることができる。セルボン酸、チムノドン酸およびピノレン酸はそれぞれ4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸(DHA)、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸(EPA)および5,9,12−オクトデカトリエン酸という名前でも知られている。
【0023】
Aが一般式(II)のモノカルボン酸基を表しているとき、それは有利には酢酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ヒドロキシデセン酸およびデセン酸またとりわけトランス−10−ヒドロキシ−Δ2−デセン酸およびトランス−オクソ−9−デセン−2−オイク酸の中から選択することができる。
【0024】
有利には、式(II)の酸はリポ酸(Lip)またはその還元形ジヒドロリポ酸、N−リポイル−リシンまたはフェニルブチル酸(Pbu)の中から選択した酸である。
【0025】
有利には、Aはパルミチン酸(Palm)に対応する基である。
【0026】
本発明の複合ジペプチドの中で、下記からなる群の中で選択された複合ジペプチドを挙げることができる。
a)A−Arg−His−NH2
b)A−Arg−Arg−NH2
c)A−Arg−Pro−NH2
d)A−Arg−Lys−NH2
e)A−Ser−Pro−NH2
f)A−DPhe−Arg−NH2
これらの式の中でAは上述の定義を有する。
【0027】
本発明の複合ジペプチドの中で、下記からなる群の中で選択された複合ジペプチドを挙げることができる。
39)Palm−Arg−His−NH2
41)Palm−Arg−Arg−NH2
49)Palm−Arg−Pro−NH2
50)Palm−Arg−Lys−NH2
125)Palm−Ser−Pro−NH2
269)Palm−DPhe−Arg−NH2
362)Pbu−DPhe−Arg−NH2
363)Lip−DPhe−Arg−NH2
【0028】
本発明の対象である複合ジペプチドは、当業者に周知の任意の方法に従って、有利には従来の化学合成によって、あるいは酵素合成によって得ることができる。
【0029】
本発明はさらに、本発明による複合ジペプチドと、場合によっては、許容の化粧品賦形剤または医薬品賦形剤とを含有する化粧品組成物、皮膚科組成物もしくは医薬品組成物または栄養補助剤に関するものである。
【0030】
複合ジペプチドは局所的にそれらの化粧品または医薬品としての使用のために投与することができる。それらはまた栄養補助剤に、言い換えれば経口での栄養治療分野で使用することもできる。
【0031】
本発明による複合ジペプチドは好適には局所的に投与される。
【0032】
局所的に投与されるための本発明による化粧品組成物、医薬品組成物または皮膚科組成物は、このタイプの投与のために通常知られている形状で、すなわち、作用成分の特性と接近容易性を向上させるためにとりわけ皮膚浸透を可能にする賦形剤とともに、例えば、とりわけローション、発泡フォーム、ゲル、分散剤、噴霧剤、血清、パック、ボディミルク、軟膏、溶液、乳化液、ジェル、あるいはクリームの形を取ることができる。これらの組成物は一般的に本発明による複合ジペプチドの他に、一般的に水または溶剤を主成分にした生理学的に許容できる媒質、例えば、アルコール、エーテルまたはグリコールを含んでいる。これらの組成物は表面活性剤、保存剤、安定剤、乳化剤、粘稠剤、相補的あるいは場合によっては相乗的効果をもたらすその他の作用成分、オリゴ元素、精油、香料、着色剤、コラーゲン、化学的または無機フィルタ、保湿剤または温泉水も含有することができる。
【0033】
本発明による組成物において、本発明による複合ジペプチドは10-8Mと10-3Mの間に含まれる、有利には10-7Mと10-5Mの間に含まれる濃度で存在する。
【0034】
さらに本発明は、有利には免疫異常、免疫欠陥を予防、改善または治療する、食欲を抑えて体重を調節する、中枢神経系不全を治療する、飽満を調節する、無食欲または一部の皮膚ガンを治療するための医薬品として使用するための本発明による複合ジペプチドまたは本発明による医薬品組成物にも関するものである。
【0035】
本発明はさらに、皮膚を明るくあるいは白くする、皮膚のシミとくに老化やそばかすのシミを除去する、または皮膚の色素沈着を予防するための色素除去剤としての本発明による化粧品組成物の使用にも関するものである。
【0036】
最後に、本発明は、本発明による化粧品組成物を皮膚に塗布することを含む、皮膚を明るくする、色素除去させるあるいは白くする、皮膚のシミとくに老化やそばかすのシミを除去する、または皮膚の色素沈着を予防するための化粧処置法に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下の実施例は非制限的な例として挙げられるものである。
【実施例】
【0038】
実施例1:本発明による361のジペプチドの調製
【0039】
361の構成要素のアシル化ジペプチドのバンクはFeliuらの論文(J. Comb. Chem., 2003, 5, pp.256−361)に記載のごとくLanternes SynPhase(登録商標)とカラーマーキングの「split and pool」(分離とグループ化)戦略を用いて合成した。
【0040】
したがって、これらの361の化合物は、配列方式Multipin96を用いる固体相において、合成標準戦略Fmoc(9−フルオレニル−メトキシカルボニル)を用いてRinkアミドPS樹脂とともにD系列のLanternes SynPhase(登録商標)上で合成された。構成ブロックAA1とAA2は19×19=361の組み合わせを生み出すためにいくつものタイプの側鎖(アルキル、芳香族、酸、大きなもの、塩基性)を含む19のアミノ酸DとLの化学的集合の中から選択した。
【0041】
使用した化学物質は次の通りである:α−Fmoc基によってN−末端が保護されたアミノ酸である、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−D−Ala−OH、Fmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−D−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−His(Trt)−OH、Fmoc−D−His(Trt)−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Phe−OH、Fmoc−D−Phe−OH、Fmoc−Trp(Boc)−OH、Fmoc−D−Trp(Boc)−OH、Fmoc−Met−OH、Fmoc−Glu(OtBu)−OH、Fmoc−Ser(tBu)−OH、Fmoc−Leu−OH、Fmoc−Tyr(tBu)−OH、Fmoc−Gly−OH、Fmoc−Pro−OH、Fmoc−Asn(trt)−OHは、SENN chemicals社とAdvanced Chemtech社で購入した。
【0042】
カップリング剤、HBTU(2−(1−H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチル−ウロニウムのヘキサフルオロホスフェート)はSENN chemicals社で購入した。
【0043】
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン、メタノール、アセトニトリル、エチルエーテル、トリフルオロ酢酸(TFA)、ピペリジンは、Riedel−de Haen、Carlo ErbaまたはAcros organics社から購入し精製せずに使用した。
【0044】
N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、トリイソプロピルシラン、パルミチン酸はAldrich社またはAvocado社で購入した。全ての試薬と化学物質は分析品質のもので、別段精製せずに使用した。
【0045】
D系列のLanternes Polystyrene RinkアミドSynphaseはMimotopes,Ptyから提供された。
【0046】
これらのジペプチドの標準製造法には次の過程が含まれる。
【0047】
1−Fmoc脱保護標準手順
【0048】
Fmoc脱保護過程は96軸の支えの上に固定したランタンをジメチルスルホキシド(DMF)/ピペリジン(80/20、v/v)の混合物内に30分間浸漬して実現した。96ウェル標準プレートと同じ大きさのポリプロピレン製の長方形の容器を使用した。余った脱保護溶液は軸の支えを激しく揺すって単純に除去した。
【0049】
2−洗浄標準手順
【0050】
カップリングまたは脱保護過程の後、連続して、洗浄過程を、Multipin方式に従って配置されたランタンをDMF(3×5min)、メタノール(2×5min)とジクロロメタン(DCM)(1×5min)を含むポリプロピレン製容器内に連続して沈めて実現した。ランタンはDCMで最後に洗浄した後に、蒸気フードの下で5分間空気乾燥した。
【0051】
3−カップリング標準手順
【0052】
それぞれのアミノ酸Fmoc、HBTUとDIEAの0.4M溶液をDMF内で調製し、合成の間を通じて4℃に維持した。アミノ酸溶液200μlを96ディープウェルプレート内に分配した。DIEA溶液200μlとHBTU溶液200μlをつぎに添加し、最後に、ランタンを担持している軸の支えを2時間の間ディープウェルプレートに適合させた。
【0053】
4−分割
【0054】
TFA/水/トリイソプロピルシラン(95/2.5/2.5、v/v/v)を96ウェルMicronicプレート内に配置されたポリプロピレン製の個別管内に分配した。分割は3時間実現した。分割カクテルはJouan RC1010真空遠心分離器を用いてプレートから直接濃縮した。化合物は乾燥ジエチルエーテルで沈殿させ、遠心分離し、一つずつ傾瀉した。沈殿、遠心分離と傾瀉作業は二回反復した。0.1%のTFAを含有する500μlのアセトニトリル/水(50/50、v/v)をそれぞれの管内に分配して、標本を可溶化した。つぎに標本を−80℃で冷凍し、凍結乾燥した。この作業は二回反復して精製用のトリイソプロピルシラン基を完全に除去した。
【0055】
5−標本の調製と分析
【0056】
完全なバンクと再合成した単純ペプチドを逆相HPLCおよびLC/MSによって分析した。0.1%のTFAを含有するアセトニトリル/水(50/50、v/v)500μlを凍結乾燥した化合物上に分配した。それぞれの管から10μlをとってHPLCおよびLC/ESI+MS分析にかけた。
【0057】
HPLC分析は、HPLC Waters Alliance 2690システムおよび光ダイオードバー検出器996と50×4.6mmのC18 Merck Chromolith Speed RODカラム上で実現した。流量は5ml/分、勾配は3分間でBの100%からCの100%を使用した(Eluant B、水/0.1%のTFA;Eluant C、アセトニトリル/0.1%のTFA)。純度の推定は214nmで検出されたピークの表面の百分率に基づいている。
【0058】
LC/MSシステムは分光器Micromass Platform II(電気噴霧によるイオン化モード、ESI+)に接続したHPLC Waters Alliance 2690で構成した。全ての分析はWaters Symmetryカラム C18、3.5μm、2.1×30mmを用いて実現した。流量は600μl/分、勾配は3分間でBの100%からCの100%を使用した(Eluant B、水/0.1%のTFA;Eluant C、アセトニトリル/0.1%のTFA)。
【0059】
正イオン電気噴霧による質量スペクトルは溶剤流量100ml/分で得た。噴霧化気体および乾燥気体の両方に窒素を用いた。データは0.1-Sの間隔で400から1400m/zの読取モードで獲得した;最終スペクトルを得るために10回の読取を加算した。
【0060】
全ての化合物の分子量は単一同位体質量を用いて計算した(C=12.000、H=1.007,N=14.003、O=15.994、S=31.972)。
【0061】
分析結果は下の表1に示した。
【0062】
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【表1D】

【表1E】

【表1F】

【表1G】

【表1H】

【表1I】

【0063】
バンクの35の要素(網掛け)をのぞいて、全ての化合物はES+LC/MS分析で検出した。クロマトグラム上の214nmで検出された所期のピークの表面の百分率を元にして決定した平均純度は83%を超えた。
【0064】
実施例2:本発明による5つの複合ジペプチドの生物特性
【0065】
cAMP生成阻害実験はα−MSHの濃度5・10-8Mでヒト細胞系列M4Be上で実現した。本発明による5つのPalm−ジペプチドをさまざまな濃度で導入し、それぞれの測定を三回行った。二または三系列の実験を実現した。
【0066】
試験は次のように実現した。
【0067】
ヒト細胞系列M4Be(Jacubovich et al. Cancer Immunol. Immunother. 1979, 7, 59−64)、メラニン生成が可能なメラニン細胞系列をIC50の値を決定するためにこの研究に使用した。
【0068】
細胞は、ウシ胎児血清(FCS)10%、グルタミン1mM、ペニシリン100U/ml、ストレプトマイシン10-4g/mlでDulbeccoの修飾Eagle媒質内に維持した。
【0069】
全ての細胞系列はCO2が5%の雰囲気内で37℃に維持し、細胞培地は二日ごとに更新した。細胞は、本発明によるジペプチドと接触させる24時間前に96ウェルプレート(Nunc、Roskilde)に押しつけた。
【0070】
cAMPは次のように測定した。
【0071】
前日に押しつけたウェルあたり8・104の細胞はα−MSHが5・10-8Mで37℃、10分間の間さまざまな濃度で本発明による5つの複合ジペプチドのうちの一つと接触させた。この後、細胞溶解を実施し、cAMP含有率は競争による連結テストボックス(RPN225、Amersham Pharmacia Biotech)を用いて測定した。それぞれの独立した実験は三回で少なくとも二セット実施した。
【0072】
ペプチド活性は未処理細胞による合成cAMPの率とα−MSH単独で誘導されたcAMP生成とを参照して決定した。グラフを調節し、IC50の値はGraphPad Prism(ソフトウェアGraphPad, San Diego, CA, 米国)内の非線形後退によって決定した。
【0073】
結果は下の表2に示した。
【0074】
【表2】

【0075】
このように、意外なことに、試験したPalm−ジペプチドはメラーノーマ細胞系列M4Beを用いてメラノコルチンのヒトMC1受容体の拮抗体であることがわかった。これらの複合ジペプチドはミクロモル段にIC50を有する。これらのジペプチドはMC1受容体に結合する短合成拮抗化合物の最初の例であり、α−MSHの非ペプチド小分子拮抗体の分野を開くものである。
【0076】
とくに、これらの化合物はAA2位置にアルギニン残基を含んでいる。興味深いことに、配列の中に塩基性残基を一切持たない化合物125(Palm−Ser−Pro−NH2)はIC50の値17μMを示す。この結果はMC1受容体への結合が必ずしも正の電荷の基を必要としないことを示した。
【0077】
アミノ酸の二つの残基だけで、これらのパルミトイル化化合物はα−MSHの非ペプチド拮抗体設計のために有効な筆頭化合物であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡像異性体またはジアステレオ異性体ならびに、ラセミ混合物を含むそれらの混合物の形での、下記の一般式Iの複合ジペプチド:
A−AA2−AA1−NH2 (I)
この式において
Aは下記の一般式IIのモノカルボン酸に対応する基を示している:
HOOC−R (II)
この式においてRは、
・一つまたは複数の不飽和を、有利には1から6の不飽和を含むことができる、および/またはフェニル基を含むことができる、ヒドロキシル基によって場合によっては置換されたC1−C24の線形または分岐脂肪族基
・あるいはリポ酸またはその還元形、ジヒドロリポ酸またはN−リポイル−リシン、
を表し、
AA1とAA2は、Ala、Asn、Cys、Gln、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val、Asp、Glu、Arg、His、Lys、Orn、Dap、Dab、対応するホモアミノ酸と対応するベータアミノ酸からなる群から選ばれた同一または異なるアミノ酸を表している。
【請求項2】
アミノ酸AA2またはAA1の少なくとも一つが、Arg、His、Orn、Dap、DabまたはLysから成る群から有利には選択された、塩基性アミノ酸を表すことを特徴とする、請求項1に記載の複合ジペプチド。
【請求項3】
AA2が、Arg、His、Lys、Orn、DapまたはDabから成る群から有利には選択された、塩基性アミノ酸を表し、有利にはArgであることを特徴とする、請求項2に記載の複合ジペプチド。
【請求項4】
Aがパルミチン酸に対応する基を表すことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の複合ジペプチド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の複合ジペプチドにおいて、下記からなる群の中で選択された複合ジペプチド:
a)A−Arg−His−NH2
b)A−Arg−Arg−NH2
c)A−Arg−Pro−NH2
d)A−Arg−Lys−NH2
e)A−Ser−Pro−NH2
f)A−DPhe−Arg−NH2
これらの式の中でAは請求項1または4に記載の定義を有する。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の複合ジペプチドにおいて、下記からなる群の中で選択された複合ジペプチド。
39)Palm−Arg−His−NH2
41)Palm−Arg−Arg−NH2
49)Palm−Arg−Pro−NH2
50)Palm−Arg−Lys−NH2
125)Palm−Ser−Pro−NH2
269)Palm−DPhe−Arg−NH2
362)Pbu−DPhe−Arg−NH2
363)Lip−DPhe−Arg−NH2
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の複合ジペプチドと、場合によっては、許容の化粧品賦形剤または医薬品賦形剤を含有する化粧品組成物または医薬品組成物。
【請求項8】
有利には免疫異常、免疫欠陥を予防、改善または治療する、食欲を抑えて体重を調節する、中枢神経系不全を治療する、飽満を調節する、無食欲を治療する、または一部の皮膚ガンを治療するための医薬品としての請求項1から6のいずれか一つに記載の複合ジペプチドまたは請求項7に記載の医薬品組成物。
【請求項9】
皮膚を明るくあるいは白くする、皮膚のシミとくに老化やそばかすのシミを除去する、または皮膚の色素沈着を予防するための色素除去剤としての請求項7に記載の化粧品組成物の使用。
【請求項10】
請求項7に記載の化粧品組成物を皮膚に塗布することを含む、皮膚を明るくする、色素除去させるあるいは白くする、皮膚のシミとくに老化やそばかすのシミを除去する、または皮膚の色素沈着を予防するための化粧処置法。

【公表番号】特表2007−537213(P2007−537213A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512280(P2007−512280)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001164
【国際公開番号】WO2005/115174
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(500470482)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック(セーエヌエールエス) (25)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE (CNRS)
【出願人】(506376997)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT EUROPEEN DE BIOLOGIE CELLULAIRE
【出願人】(504462319)ユニヴェルシテ ドゥ モンぺリエ アン (9)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE MONTPELLIER 1
【出願人】(506075252)ユニベルシテ モンペリエ ドゥー (7)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE MONTPELLIER II
【Fターム(参考)】