説明

アルファウイルス粒子及び調製方法

【課題】アルファウイルス・レプリコン粒子を高収量で生成する方法の提供。
【解決手段】レプリコンRNAは、許容状態細胞中に電気穿孔され、ここで該細胞は、比較的高密度であり、少なくとも1のヘルパー核酸であって、パッケージングに必須の機能を与える核酸を伴うことによる。適切な培地中の成長期間の後に、アルファウイルス・レプリコン粒子は、細胞表面から収集される。ここでアルファウイルス・レプリコン粒子は、塩濃度が約0.2〜約5Mの特に塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムである塩洗浄液を使用して生成される。必要であるならば希釈の後、粒子は適切なクロマトグラフィー技術により精製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えDNA技術、及び特に外来核酸を真核細胞中に導入すること、並びにより特異的に感染性のウイルス粒子又はウイルス様粒子、特に免疫治療及び/又は遺伝子治療適用に有用である粒子を高い収量で生成する方法に関する。特に、本発明は、ヒト及び獣医薬として使用することに適した高純度のアルファウイルス・レプリコン粒子(ARP)調製品を製造する方法であって、高収量で、GMP-適合性で、商業的に実行可能な方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
アルファウイルス属は、種々のウイルスを含み、それらの全ては、トガウイルス科のメンバーである。アルファウイルスは、東部ウマ脳炎ウイルス(EEE)、ベネズエラ・ウマ脳炎ウイルス、エバーグレード・ウイルス(Everglades Virus)、ムカンボ・ウイルス(Mucambo Virus)、ピクスナ・ウイルス(Pixuna Virus)、西部ウマ脳炎ウイルス(WEE)、シンドビス・ウイルス、セムリキ森林ウイルス、ミデルブルグ・ウイルス(Middleburg Virus)、チクングニア・ウイルス、オニョンニョン・ウイルス、ロスリバー・ウイルス、バーマ森林ウイルス(Barmah Forest Virus)、ゲタ・ウイルス、サギヤマ・ウイルス、ベバル・ウイルス(Bebaru Virus)、マヤロ・ウイルス、ウナ・ウイルス(Una Virus)、アウラ・ウイルス(Aura Virus)、ワタロア・ウイルス(Whataroa Virus)、ババンキー・ウイルス(Babanki Virus)、キジラガッチェ・ウイルス(Kyzylagach Virus)、ハイランドJウイルス(Highlands J virus)、フォート・モーガン・ウイルス(Fort Morgan Virus)、ヌヂュム・ウイルス(Ndumu Virus)、及びバギー・クラーク・ウイルス(Buggy Creek Virus)を含む。このウイルスゲノムは、一本鎖のメッセンジャーセンスRNAであって、5’末端においてメチル化キャップで修飾されており、そして3’末端において種々の長さのポリ(A)鎖で修飾されているRNAである。1のウイルスタンパク質、キャプシドを含む構造サブユニットは、20面体のヌクレオキャプシド中にRNAゲノムを伴う。ビリオン中では、キャプシドは、整然と多数並んだ膜貫通タンパク質スパイクで覆われる脂質外被により取り囲まれ、該膜貫通タンパク質スパイクの各々は、二種の糖タンパク質、E1及びE2のヘテロダイマー複合体からなった(Pedersen et al., J. Virol 14 : 40 (1974)を参照のこと)。シンドビス・ウイルスとセムリキ森林ウイルスは、原型のアルファウイルスと考えられており、そして広く研究された(Schlesinger, The Togaviridae and Flaviviridae, Plenum Publishing Corp. , New York (1986)を参照のこと)。VEEウイルスは、広く研究された(例えば米国特許5,185,440号を参照のこと)。
【0003】
これらのウイルスの研究は、アルファウイルス病に対するワクチン化技術の発展を導き、さらに外来遺伝子の導入用のアルファウイルス・ベクターの使用を介して別の疾患に対するワクチン化技術の発展を導いた。Davis et al.,に対する米国特許第5,185,440号及びPCT公開WO 92/10578を参照のこと。外来遺伝子を真核生物において発現させるために、アルファウイルス・ベクターを使用することは、高い関心の題目となった。生弱毒化ウイルスワクチンは、ウイルス疾患を制御する最も成功した方法の一つであるということがよく知られている。しかしながら、幾つかのウイルス病原体については、生ウイルスの株での免疫化は、実用的でないか又は安全ではないかのどちらかであることがある。代替の戦略の一つは、そうした病因の免疫抗原をコードする配列を、生きた増殖株である別のウイルスへと入れ込むことである。生VEEベクターを使用するこうしたシステムの一つは、Johnston et al.,に対する米国特許第5,505,947号及び第5,643,576号において開示される。別のこうしたシステムは、Hahn et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 2679-2683 (1992)において開示され、ここでシンドビス・ウイルス・コンストラクトは、インフルエンザ・ヘマグルチニン・タンパク質の切断された形を発現する。別のシステムは、アルファウイルス・レプリコン・システムであり、Garoff et al.,に対する米国特許第6,190,666号、Johnston et al.,に対する米国特許第5,792,462号及び第6,156,558号、Dubensky et al.,に対する米国特許第5,814,482号、第5,843,723号、第5,789,245号、第6,015,694号、第6,105,686号、及び第6,376,236号;米国出願公開第2002-0015945 A1(Polo et al.)、米国出願公開第2001-0016199(Johnston et al.)、Frolov et al.(1996) Proc. Natl. Acad.
Sci. USA 93: 11371-11377 、及びPushko et al. (1997) Virology 239: 389-401に開示される。
【0004】
従って、感染性があり、高い免疫原性のアルファウイルス粒子及びその誘導体であって、高純度及び高収量、特にワクチン製剤において使用される高純度なものを製造可能にする方法に対し、当該技術分野における必要性が残っている。
【発明の概要】
【0005】
発明の要約
本発明は、ヒト及び獣医薬における使用に適した高純度なアルファウイルス・レプリコン粒子(ARP)又はウイルスの調製品の製造方法であって、高収量、GMP互換性、商業的に実行可能な方法を提供する。本発明は、生弱毒化アルファウイルス・ワクチン及び同じ物を含む免疫原組成物の製造にも適用可能であり、ここで、米国特許第5,643,576号において記載されるように、弱毒化されたアルファウイルスは、ワクチンにおいて発現させるために、異種遺伝子を持つこともあるし又は持たないこともある。本発明の方法は、以下のステップ
(a) アルファウイルス・レプリコン核酸(又はアルファウイルス核酸)を宿主細胞へと導入し、ここで前記レプリコン核酸は、少なくともアルファウイルス・パーケージング・シグナル及び少なくとも1の関心の遺伝子のコード配列であって前記アルファウイルスレプリコン核酸において発現できる配列を含み、ここで該宿主細胞は、ARPsを作り出すために必要とされるアルファウイルス・構造タンパク質を発現でき、改変宿主細胞を作り出し;
(b) 構造タンパク質の発現及びアルファウイルス・レプリコン核酸の複製、そして次にアルファウイルス・レプリコン核酸のパーケージングを可能にする条件下の培地中で前記改変宿主細胞を培養して、ARPsを形成し;
(c) 場合により、培地から改変宿主細胞を分離し;そして
(d) ステップ(b)又は(c)の後に、改変宿主細胞を少なくとも約0.20M、又は約0.2M〜約5Mのイオン強度を有する水溶液(本明細書中で「放出培地」と呼ぶ)と接触して、ARPsを水溶液中に放出して、ARPを含む溶液を作り出すステップ
を含む。
放出培地のイオン強度は、ビリオン又はARPsと不活性化しない塩を使用して達成され、そして適切な塩は、非限定的に塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、及び炭酸水素アンモニウムを含む。都合よく、放出培地(塩洗浄液)は、約6〜約9、望ましくは約6.5〜8.5のpHを有する緩衝液を含む。該細胞が培地から分離されない場合、培地のイオン強度は、固体の塩を加えること又は濃縮緩衝液を加える事により増加されて、細胞からのARPs(又はビリオン)を放出するためのイオン強度の増大を与えた。特にARP表面上に特定の表面荷電が存在するとき、産生細胞を、放出培地で塩洗浄することはARPの回収率を改善するようである;VEEの場合、E2-209及び/又はE2-120のアミノ酸残基は、正荷電の導入に適した部位を提供するようである。特定の弱毒化ウイルス変異体における荷電の変化をもたらすアミノ酸置換は、ARPsの塩洗浄回収率を改良した。16mMのリン酸ナトリウム、0.5M・NaClは、塩洗浄において使用される典型的な放出培地である。
【0006】
ARPs又はウイルス粒子は、ウイルス又はレプリコンの核酸を感染性粒子内にパッケージングすることを可能にする細胞中、つまりアルファウイルス-許容状態細胞中で生成される。アルファウイルス・レプリコンRNAベクター(又は、レプリコン核酸)は、数ある中でVEE、シンドビス・ウイルス、特にTR339、南アフリカ・アルボウイルスNo.86、セムリキ森林ウイルス由来でありうる。レプリコン核酸が使用される場合、パッケージング機能が細胞において存在し、ここで粒子は、トランスにおいて細胞中に導入されるか又は既に細胞内に存在している核酸(単数又は複数)から作られる。ある異種性のコード配列を伴う幾つかのアルファウイルス・レプリコン・ベクターについて、発明者は、アルファウイルス糖タンパク質ヘルパー核酸の比率の増大は、パッケージング及び/又はARP収量を改良することを観測した。
【0007】
有利なことに、ARPsが生成される細胞は、培養哺乳動物細胞であるが;例えばベロ(Vero)細胞、ハムスター仔腎臓(BHK)細胞、トリ胚線維芽細胞(CEF)細胞、DF-1、293、293T、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞、並びに培養昆虫細胞は特に好ましい。適切であり利用可能である培養昆虫細胞は、非限定的にSF21、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda);C6/36、アエデス・アルボピクツス(Aedes albopictus);TRA-171、トキソリンチテス・アムボイネシス(Toxorhynchites amboinensis);RML-12、アエデス・アエギプチ(Aedes aegypti);AP-61、アエデス・シュードスキュテラリス(Aedes pseudoscutellaris);及びMOS-55、アノフレス・ガムビアエ(Anopheles gambiae)細胞を含む。
【0008】
有利なことに、ARPsが生成される細胞は、アルファウイルス・レプリコン・ベクター及びヘルパー核酸(単数又は複数)で電気穿孔される前に、細胞周期のG2/Mフェーズで同調される。いずれの特定の理論により束縛されることなく、電気穿孔された細胞の電気穿孔効率及び核酸の核への移動率の高さは(核の活性を含む本発明のこうした実施態様において)、こうしたG2/Mフェーズの細胞において達成される。
【0009】
アルファウイルスのレプリコン核酸は、宿主細胞において発現される関心のヌクレオチド配列を含みうる。該ヌクレオチド配列は、数ある中で免疫原性のポリペプチド、サイトカイン、又は治療用タンパク質をコードし、或いはヌクレオチド配列は、宿主細胞中で転写されて、機能性RNA、例えばリボザイム、干渉又はアンチセンス分子を作り出す。アルファウイルスの核酸が使用される場合、アルファウイルスは、野生型のウイルス又は上記関心のヌクレオチド配列を含む組換えウイルスでありうるし、或いはアルファウイルスは、宿主細胞において免疫応答を作り出すために有用である弱毒化ウイルスでありうる。
【0010】
ウイルス・レプリコン核酸及び/又はヘルパー核酸(単数又は複数)が、電気穿孔により導入される場合、十分なレプリコン及び効果的なパッケージングを可能にするヘルパー核酸(単数又は複数)が存在する電気穿孔培地中で、1mlあたり約107〜約109、望ましくは約5×107〜約1.5×108個の細胞の濃度で、細胞を電気穿孔することは特に効果的である。ヘルパーRNA分子(単数又は複数)は、キャップ付加される必要はない。
【0011】
ARPsが作られる細胞中に、核酸が導入された後に、細胞は、成長培地を含む培養容器中に配置される。これらの細胞は、接着細胞として最も成長するので、該容器は、成長、レプリコンRNAの複製、発現タンパク質のパーケージング、及びウイルス・レプリコン粒子の生成を許容するために十分な成長培地、並びに細胞が接着しそして成長するために十分な表面積を含む。表面は、容器、フラスコ又はプレート壁であることもあり、或いはホロー・ファイバー(hollow fiber)、ビーズ若しくは付着細胞成長に適した物質の別の微小担体は、容器の中に配置されうる。微小担体(ビーズ又はディスク)上で成長したベロ細胞又は別の細胞は、担体上で首尾よく電気穿孔され、そして培養されて、未付着細胞で達成された電気穿孔と比較できるレベルでARPsを作り出すことができる。ホロー・ファイバー成長チャンバー又は”細胞キューブ”もまた有用である。細胞が成長しそして粒子を生成した後に、典型的には約12〜48時間で、粒子は収集される。細胞は、成長培地から分離され、好ましくは、細胞片及び外来の物質を取り除くために前洗浄され、そして次に少量の放出培地で洗浄され、結果として、ARPsは、細胞及び/又は細胞片から遊離され、そして精製され濃縮された溶液中に回収される。粒子は、当該技術分野に周知である多くの技術のいずれかを使用してさらに精製され、ここで該技術は、非限定的に免疫親和性クロマトグラフィー、ヘパリン・アフィニティー・クロマトグラフィー、又はイオン交換クロマトグラフィーなどを含んだ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、異なる培養細胞型におけるキャップありヘルパーRNAs(各ペアの左の棒)及びキャップなしRNAs(各ペアの右の棒)を使用したARPsの生成を示す。細胞をキャップありレプリコンRNA及びキャップなしヘルパーRNA分子で電気穿孔した。ARPsを電気穿孔後24時間の培養上清から収集し、そして新鮮なベロ細胞上でタイターを調べた。
【図2】図2は、ARP生成についての電気穿孔後の成長培地の効果を示す。結果を、培養培地におけるタイター、ペレットにされた細胞を1M・NaCl洗浄した際のタイター、及び全タイター(培地+洗浄)を示した。
【図3】図3は、ARP生成についての成長培地の効果を示す。ベロ細胞をペトリ皿電極を使用して電気穿孔し、そして特定のpH値に調節された完全成長培地で、フラスコ中へ接種した。
【図4】図4は、ARPsを放出培地で溶出する直前に使用される異なる細胞洗浄溶液の効果を示し;詳細は、本明細書中の実施例7において記載する。
【図5】図5は、ARP生成についての、放出培地における異なる塩組成を使用する効果を示す。種々の放出培地の濃度及びpH値が示される。
【図6】図6は、放出培地におけるNaClの濃度の範囲を使用するARPsの生成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な記載
以下の議論及び定義は、当業者への本開示の明確さを改良するために提供される。
【0014】
本出願の文脈では、nmはナノメートルを意味し、mlはミリメートルを意味し、VEEはベネズエラ・ウマ脳炎ウイルスを意味し、EMCは脳心筋炎ウイルスを意味し、BHKはハムスター仔腎臓細胞を意味し、HAはヘマググルチニン遺伝子を意味し、GFPはグリーン蛍光タンパク質遺伝子を意味し、Nはヌクレオキャプシドを意味し、FACSは蛍光活性化セルソーターを意味し、IRESは内部リボソーム侵入部位を意味し、pfuはプラーク形成単位を意味し、iuは感染単位を意味し、そしてFBSはウシ胎児血清を意味する。「E2アミノ酸(例えばLys、Thrなど)数字」という表現は、E2タンパク質の指示された残基での指示されたアミノ酸のことを指し、そしてE3又はE1タンパク質における特定の残基におけるアミノ酸のことを指すためにも使用される。
【0015】
本明細書中で使用されるとき、「アルファウイルス」という用語は、当該技術分野における慣用的な意味を有し、そしてVEEウイルス、セムリキ森林ウイルス(SFV)、シンドビス、ロス・リバー・ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、チクングニア・ウイルス、S.A.AR86、エバーグレード・ウイルス、ムカンボ・ウイルス、バルマ森林ウイルス、ミデルブルグ・ウイルス、ピクスナ・ウイルス、オニョンニョン・ウイルス、ゲタ・ウイルス、サギヤマ・ウイルス、ベバル・ウイルス、マヤロ・ウイルス、ウナ・ウイルス、アウラ・ウイルス、ワタロア・ウイルス、ババンキー・ウイルス、キジラガッチェ・ウイルス、ハイランドJウイルス、フォート・モーガン・ウイルス、ヌジュム・ウイルス、及びバギー・クラーク・ウイルスなどの種々のウイルス種を含む。特許請求される発明のコンストラクト及び方法において使用される好ましいアルファウイルスは、VEE、S.A.AR86、シンドビス(例えばTR339、米国特許第6,008,035号を参照のこと)、及びSFVである。
【0016】
「5’アルファウイルス複製認識配列」及び「3’アルファウイルス複製認識配列」という用語は、アルファウイルスにおいて見られる配列、又はそれらに由来する配列のことを指し、それらは非構造的なアルファウイルス・レプリカーゼタンパク質により認識され、そしてウイルスRNAの複製を導く。これらはしばしば5’及び3’末端、又はアルファウイルス5’及び3’配列と呼ばれる。本発明のコンストラクトにおいては、これらの5’及び3’末端の使用は、この2個の末端の間でコードされるRNA配列の複製をもたらす。アルファウイルスにおいて見つかる3’アルファウイルス複製認識配列は、典型的に300ヌクレオチド長であり、これは、さらに詳しく確定されている最小3’複製認識配列を含む。最小3’複製認識配列は、アルファウイルスの間で保存されており、19のヌクレオチド配列である(Hill et al., J. Virology, 2693-2704, 1997)。これらの配列は、さらに組換えの可能性を最小限にし又はクローニング部位を導入するように標準分子生物学的技術により改変されるが、但し、該配列は、アルファウイルス複製機構により認識されなければならない。
【0017】
「最小5’アルファウイルス複製認識配列」は、アルファウイルスの非構造タンパク質により認識をされるが、該配列を含むRNA分子の有意なパッケージング/組換えをもたらさない最小配列のことを指す。好ましい実施態様では、最小5'アルファウイルス複製認識配列は、その配列を含むRNAのパッケージング/組換えの観測される頻度の50〜100倍の減少をもたらす。ヘルパーのパッケージング/組換えは、幾つかの方法、例えばLu及びSilver(J. Virol. Methods 2001, 91 (1) : 59-65)により記載された方法により評価される。
【0018】
「アルファウイルスRNAレプリコン」、「アルファウイルス・レプリコンRNA」、「アルファウイルスRNAベクター・レプリコン」、及び「ベクター・レプリコンRNA」は、互いに置き換えることができ、RNA分子がそれ自身を複製(増幅)させることができ、そして少なくとも、5’及び3’アルファウイルス複製認識配列(該配列は、上で定義されるように最小配列でありうるが、代わりにアルファウイルス由来の領域全体でありうる)、アルファウイルス非構造タンパク質のコード配列、及びポリアデニル化鎖を含むように非構造タンパク質遺伝子を発現するRNA分子を指す。該RNA分子は、さらにプロモーター又はIRESを含むこともある。該RNA分子はまた、アルファウイルス構造タンパク質を発現するように設計される。Johnston et al.,及びPolo et al.,(背景技術で援用済み)は、そうしたアルファウイルスRNAレプリコンの多くのコンストラクトを記載し、そしてそうしたコンストラクトは、本明細書中に援用される。特許請求される発明において使用されるアルファウイルスRNAレプリコンの特定の実施態様は、1以上の弱毒化突然変異であって、ここで弱毒化突然変異がヌクレオチド欠失、付加、又は1以上のヌクレオチドの置換である変異、或いは適切な野生型アルファウイルスと比較して突然変異を含む生ウイルスにおける病原性の欠失をもたらす再配列又はキメラ構成を含む突然変異を含みうる。(レプリコンにおけるアミノ酸変化をもたらす)弱毒化ヌクレオチド置換の例は、アルファウイルスS.A.AR86におけるnsP1アミノ酸位538、nsP2アミノ酸位96、又はnsP2アミノ酸位372での突然変異を含み、そしてレプリコン核酸の非コード領域における弱毒化突然変異の例は、VEEにおけるヌクレオチド3でのA又はCの置換である。
【0019】
「アルファウイルス構造タンパク質/タンパク質(単数又は複数)」という用語は、アルファウイルスによりコードされる構造タンパク質の1つ又は組合せを指す。これらはウイルスにより、ポリタンパク質として生成され、そして一般的に文献においてC-E3-E2-6k-E1として表される。E3及び6kは、2個の糖タンパク質、E2とE1の膜貫通/輸送シグナルとしての役目を果たす。こうして、本明細書中のE1という用語の使用は、E1、E3-E1、6k-E1、又はE3-6k-E1の事を指し、そして本明細書中でE2という用語の使用は、E2、E3-E2、6k-E2、又はE3-6k-E2のことを指すこともある。弱毒化突然変異は、1以上のアルファウイルス構造タンパク質のいずれかに導入されうる。
【0020】
「ヘルパー(単数又は複数)」という用語は、1以上のアルファウイルス構造タンパク質を発現することができる核酸分子を指す。
【0021】
「ヘルパー細胞」及び「パッケージング細胞」という用語は、本明細書中で互いに置き換え可能なように使用され、そしてアルファウイルス・レプリコン粒子が生成される細胞のことを指す。ヘルパー細胞は、1以上のアルファウイルス構造タンパク質をコードするヘルパーのセットを含む。本明細書中に開示されるとき、ヘルパーは、RNA又はDNAでありうる。細胞は、アルファウイルス-許容状態である細胞のいずれかであり、つまりウイルスRNA転写産物を導入した際にアルファウイルス粒子を生成することができる細胞でありうる。アルファウイルス許容状態である細胞は、非限定的にベロ、ハムスター仔腎臓(BHK)、293、293T、トリ胚線維芽細胞(CEF)、及びチャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞を含む。特許請求される発明の特定の実施態様では、ヘルパー又はパッケージング細胞は、さらに異種性のRNA依存性RNAポリメラーゼ及び/又は配列特異的プロテアーゼを含む。
【0022】
「アルファウイルス・レプリコン粒子」、「ウイルス・レプリコン粒子」、又は「組換えアルファウイルス粒子」という用語は、本明細書中に互いに置き換え可能なように使用され、異種性のRNA配列を発現するアルファウイルス・レプリコンRNAを取り込むビリオン様構造複合体を意味する。典型的に、ウイルス様構造複合体は、脂質外被中に埋めこまれる1以上のアルファウイルス構造タンパク質を含み、ここで該脂質外皮はヌクレオキャプシドを封入し、次に該ヌクレオキャプシドはRNAを封入する。脂質外被は、典型的に該粒子が生成される細胞の原形質膜由来である。好ましくは、アルファウイルス・レプリコンRNAは、アルファウイルス・キャプシドタンパク質から構成されるヌクレオキャプシド構造によりとり囲まれ、そしてアルファウイルス糖タンパク質は、細胞由来の脂質外皮中に埋め込まれる。構造タンパク質及びレプリコンRNAは、同じ又は異なるアルファウイルス由来でありうる。特異的な実施態様では、レプリコンRNAは、VEE由来であり、そして構造タンパク質は、シンドビス・ウイルス(例えばDubensky et al.,米国特許第6,376,236号を参照のこと)由来である。アルファウイルス・レプリコン粒子は、感染性であるが、伝播性が欠損しており、つまり、レプリコンRNAは、アルファウイルス構造タンパク質をコードするヘルパー核酸(単数又は複数)が存在しない場合、粒子が最初に感染した宿主細胞を超えて伝播することができない。
【0023】
「ヘルパー・コンストラクト」、つまりアルファウイルス構造タンパク質を発現する組換えDNA分子は、in vivoにおいて2個の分離した分子へと分解するシングル・ヘルパーから作られうる。こうして、製造の容易さ及び生成効率の点で、シングル・ヘルパーを使用する利点が維持される一方で、2連のヘルパーシステムの利点が、2連の発現システムを使用することなく獲得される。DNAヘルパー・コンストラクトは使用され、一方第二セットではRNAヘルパーベクターは使用される。複製及び転写についてのアルファウイルス認識シグナルを使用しないDNAヘルパー・コンストラクトの場合では、組換えの理論的な頻度は、そうしたシグナルを使用する2連のRNAヘルパー・システムより低い。
【0024】
DNAからRNAの、つまりDNA依存性RNAポリメラーゼ転写を指図するプロモーターは、本発明のヘルパー核酸及びアルファウイルス・レプリコンを生成するために使用される。本明細書中の文脈では、プロモーターは、ポリメラーゼにより認識される核酸配列であり、そして(下流側に)付随している配列の転写を引き起こすために十分である。特許請求される発明の幾つかの実施態様では、プロモーターは恒常的である(以下を参照のこと)。或いは、プロモーターは、制御を受ける場合もあり、つまりプロモーターは、付随する配列の転写を引き起こすように恒常的に作用しない。誘導性であるなら、発現の制御を調節する配列が存在し、その結果付随された配列が、(i) インデューサー分子が、細胞を培養する培地中に存在するとき、又は(ii) 細胞が晒される条件が、誘導条件へと変化されるときにのみ転写される。本文脈では、転写制御配列は、プロモーター配列を含み、そして周囲のシグナルに応答して、付随する配列の発現を制御するためのシス-活性化配列をさらに含みうる。
【0025】
RNAヘルパーの実施態様において及びレプリコンRNAを生成ために、プロモーターは、in vitro転写反応においてRNAを合成するために使用され、そしてこの使用に適した特異的なプロモーターは、SP6、T7、及びT3RNAポリメラーゼ・プロモーターを含む。DNAヘルパーの実施態様では、プロモーターは、細胞内で、RNAを転写させるように機能する。コンストラクトのin vivo転写の潜在的なプロモーターは、真核生物のプロモーター、例えば、RNAポリメラーゼIIプロモーター、RNAポリメラーゼIIIプロモーター、又はウイルスのプロモーター、例えばMMTV及びMoSV LTR、SV40アーリーリージョン(early reagion)、RSV、又はCMVを含む。本発明の多くの別の適切な哺乳動物及びウイルスプロモーターは、当該技術分野で利用可能である。或いは、細菌又はバクテリオファージ由来のDNA依存性RNAポリメラーゼ・プロモーター、例えば、SP6、T7、及びT3は、in vivoでの使用に用いられる。ここで、適合したRNAポリメラーゼは、分離プラスミド、RNAベクター、又はウイルスベクターを介して細胞中へと提供される。特異的実施態様では、適合したRNAポリメラーゼは、誘導性プロモーターの制御の下でヘルパー細胞系列中に安定して形質導入される。
【0026】
細胞内で機能するDNAコンストラクトは、細胞内にトランスフェクションされた自律性プラスミドとして機能しうるか、又はそれらは、安定してゲノム中に取り込まれうる。これらの実施態様では、プロモーターは恒常的プロモーター、つまり細胞に導入され、そして発現可能なように下流配列に結合されるとき、インデューサー分子の添加誘導条件の変化を必要とせず、細胞内に導入された際に下流配列を直接的に転写をさせるプロモーターである。或いは、プロモーターは誘導性であることもあり、その結果、細胞は、細胞が適切な刺激(インデューサー)に晒されたときのみ、コンストラクトによりコードされる機能的なメッセンジャーRNAを作り出す。誘導性プロモーターを使用するとき、ヘルパー・コンストラクトは、インデューサーへ晒されると同時に、前に、又は後で、パッケージング細胞中へと導入され、そしてコンストラクト及びインデューサーの両方が存在するとき、アルファウイルス構造タンパク質の発現が起こる。或いは、細胞中で機能するように設計されたコンストラクトは、ウイルスベクター、例えばアデノウイルス、ポックスウイルス、アデノ-随伴ウイルス、SV40、レトロウイルス、ノダウイルス(nodavirus)、ピコルナウイルス、水疱性口内炎ウイルス、及び哺乳動物polIIプロモーターを有するバキュロウイルスを介して、細胞中へと導入される。
【0027】
いったん、ヘルパーをコードするRNA転写物(mRNA)又は本発明のRNAレプリコン・ベクターが、(上記のin vitro又はin vivo手法を介して)ヘルパー細胞中に存在すると、そのうちコードされたポリペプチド又はタンパク質を作るようになる。特定の実施態様では、RNAベクター・レプリコンは、DNAプラスミドからin vitroで転写され、そして次に電気穿孔によりヘルパー細胞中へと導入される。別の実施態様では、本発明のRNAベクター・レプリコンは、ヘルパー細胞へとトランスフェクションされたDNAベクター・プラスミドからin vivoで転写される(例えば、米国特許第5,814,482号を参照のこと)か或いは、ウイルス又はウイルス様粒子を介してヘルパー細胞へとデリバリーされる。
【0028】
アルファウイルスRNAベクターレプリコンは、1以上の異種性コード配列(単数又は複数)又は関心の機能性RNA(単数又は複数)を発現するために設計され、ここでこれらは、本明細書中で異種性RNA又は異種性配列と呼ばれ、ウイルス、原核生物、真核生物由来の広範な配列から選ばれる。異種性配列のカテゴリーの例は、非限定的に、免疫原(例えば、未変性、改変又は合成抗原性タンパク質、ペプチド、エピトープ、又は免疫原性断片)、サイトカイン、トキシン、治療用タンパク質、酵素、アンチセンス配列、及び免疫応答調節因子を含む。
【0029】
明細書中に記載されるアミノ酸配列中のアミノ酸の全ては、当該技術分野においてルーチンに使用される通常の3文字及び1文字表記を有する:A、Ala、アラニン;C、Cys、システイン;D、Asp、アスパラギン酸;E、Glu、グルタミン酸;F、Phe、フェニルアラニン;G、Gly、グリシン;H、His、ヒスチジン;I、Ile、イソロイシン;K、Lys、リジン;L、Leu、ロイシン;M、Met、メチオニン;N、Asn、アスパラギン;P、Pro、プロリン;Q、Gln、グルタミン;R、Arg、アルギニン;S、Ser、セリン;T、Thr、スレオニン;V、Val、Vaバリン;W、Try、トリプトファン;Y、Tyr、チロシン。
【0030】
本明細書中に使用されるとき、特定の配列により起こる発現は、付随する下流配列の転写である。適切なでありかつ付随される配列が所望されるなら、発現という用語はまた、転写され又は導入されたRNAの翻訳(タンパク質合成)も包含する。或いは、異なる配列は、転写及び翻訳させるために使用されうる。
【0031】
本発明の方法において使用されるアルファウイルス-許容状態細胞は、完全なウイルスRNA転写物をトランスフェクションされた際に、ウイルス粒子を作り出すことができる細胞である。アルファウイルスは、広い宿主範囲を有する。適切なパッケージング細胞の例は、非限定的に、ベロ細胞、ハムスター仔腎臓(BHK)細胞、トリ胚線維芽細胞、DF-1、293、293T、チャイニーズ・ハムスター・卵巣(CHO)細胞、及び昆虫細胞を含む。
【0032】
本明細書中に使用される「構造タンパク質」又は「アルファウイルス構造タンパク質」というフレーズは、RNAレプリコンをパッケージングするために必要とされる1以上のアルファウイルス-コードタンパク質を指し、そして典型的には、成熟アルファウイルスにおけるキャプシド・タンパク質、E1糖タンパク質、及びE2糖タンパク質を含む(特定のアルファウイルス、例えばセムリキ森林ウイルスは、更なるタンパク質であるE3を、成熟コート中に含む)。「アルファウイルス構造タンパク質(単数又は複数)」という用語は、アルファウイルスによりコードされる構造タンパク質の1つ又は組み合わせを指す。これらは、ポリタンパク質としてウイルスゲノムから合成され、そして文献において一般的にC-E3-E2-6k-E1として表される。E3及び6kは、2個の糖タンパク質E2及びE1の膜貫通/輸送シグナルとしての役目を果たす。こうして、本明細書中での用語E1の使用は、E1、E3-E1、6k-E1、又はE3-6k-E1を指し、そして本明細書中での用語E2の使用は、E2、E3-E2、6k-E2、又はE3-6k-E2を指す。
【0033】
本明細書中で記載されるとき、アルファウイルスの構造的なタンパク質は、1以上のヘルパー・核酸分子の間に分配される(例えば、第一ヘルパーRNA(又はDNA)及び第二ヘルパーRNA(又はDNA))。付け加えて、少なくとも1の構造タンパク質が、レプリコンRNAから欠失し、その結果、レプリコンが及び得られたアルファウイルス粒子が複製できないようになるならば、1以上の構造タンパク質は、レプリコン核酸として、同じ分子上に存在しうる。本明細書中に使用されるとき、「欠失された」又は「欠失」は、特定の断片の完全な欠失か、又は特定の断片の一部の欠失であって、標準の仕様に従って断片を動作不能又は機能がなくなるようにするために十分な欠失を意味する。例えばTermin
et al.,に対する米国特許第4,650,764号を参照のこと。本明細書中に使用される「複製欠損」という用語は、「伝播欠損」と同意義であり、そして規定の宿主細胞中で作られた粒子が、ヘルパー機能の欠失、つまりレプリコン核酸のパッケージングするために必要とされるアルファウイルス構造タンパク質がないことから、宿主細胞中に子孫粒子(progeny
particle)を作り出すことができないことを意味する。しかしながら、レプリコン核酸は、それ自身を複製することができ、そして導入された宿主細胞中に発現されることができる。
【0034】
ヘルパー細胞はまた、パッケージング細胞とも呼ばれ、感染性複製欠損アルファウイルス粒子を作り出すために使用され、レプリコン核酸をパッケージングするために十分なアルファウイルス構造タンパク質を発現しなければならないか又は発現できなければならない。構造タンパク質は、セットのRNA、典型的には、ヘルパー細胞にレプリコンベクターの導入と同時に、又は導入前に導入される2つのRNAから作られうる。第一ヘルパーRNAは、少なくとも1のアルファウイルス構造タンパク質をコードするが、全てのアルファウイルス構造タンパク質をコードしないRNAを含む。第一ヘルパーRNAは、アルファウイルスE1糖タンパク質をコードするが、アルファウイルス・キャプシド・タンパク質及びアルファウイルスE2糖タンパク質をコードしないRNAを含みうる。或いは、第一ヘルパーRNAは、アルファウイルスE2糖タンパク質をコードするが、アルファウイルス・キャプシド・タンパク質及びアルファウイルスE1糖タンパク質をコードしないRNAを含みうる。更なる実施態様では、第一ヘルパーRNAは、アルファウイルスE1糖タンパク質及びアルファウイルスE2糖タンパク質をコードするが、アルファウイルス・キャプシド・タンパク質をコードしないRNAを含みうる。第四の態様では、第一ヘルパーRNAは、アルファウイルスキャプシドをコードするが、アルファウイルス糖タンパク質をコードのどれもコードしないRNAを含みうる。第5の実施態様では、第一ヘルパーRNAは、キャプシド及び糖タンパク質の1つ、つまりE1又はE2のいずれかをコードするが、両方をコードしないRNAを含みうる。
【0035】
これらのヘルパーRNAのいずれか1つと組み合わせて、第二ヘルパーRNAは、少なくとも1のアルファウイルス構造タンパク質であって、第一ヘルパーRNAによりコードされていないものをコードする。 たとえば、第一ヘルパーRNAが、アルファウイルスE1糖タンパク質のみをコードする場合、第二ヘルパーRNAは、アルファウイルスキャプシドタンパク質とアルファウイルスE2糖タンパク質のうちの1つ又は両方をコードしうる。第一ヘルパーRNAが、アルファウイルス・キャプシドタンパク質のみをコードする場合、第二ヘルパーRNAは、アルファウイルス糖タンパク質のうちの1つ又は両方をコードするRNAを含みうる。第一ヘルパーRNAが、アルファウイルスE2糖タンパク質のみをコードする場合、第二ヘルパーRNAは、アルファウイルス・キャプシド・タンパク質とアルファウイルスE1糖タンパク質のうちの1つ又は両方をコードしうる。第一ヘルパーRNAが、キャプシドとアルファウイルスE1糖タンパク質の両方をコードする場合、第二ヘルパーRNAは、アルファウイルス・キャプシド・タンパク質とアルファウイルスE2糖タンパク質の1つ又は両方をコードするRNAを含みうる。
【0036】
全てのヘルパー核酸において、これらの分子は、コードされた構造タンパク質配列がヘルパー細胞中において発現(翻訳及び適切である場合転写又は複製シグナルを含む)されるために必要とされる配列をさらに含むということは理解される。そうした配列は、例えば、(ウイルス、原核生物、又は真核生物の誘導性又は恒常性の)プロモーター、及び5’及び3’ウイルスのレプリカーゼ認識配列を含む。1以上の糖タンパク質を発現するヘルパー核酸の場合、これらの配列は、核酸コンストラクト中の構造タンパク質のコード領域のN末端でのリーダー又はシグナル配列を伴って有利に発現されるということが理解される。リーダー又はシグナル配列は、アルファウイルス由来、例えばE3又は6kでありうるし、或いは組織プラスミノーゲン・アクティベーターシグナルペプチドなどの異種性配列又は合成配列でありうる。こうして、一の例として、第一ヘルパー核酸は、キャプシド-E3-E1をコードするRNA分子であり、かつ第二ヘルパー核酸は、キャプシド-E3-E2をコードするRNA分子であることもある。或いは、第一ヘルパーRNAは、キャプシドのみをコードし、そして第二ヘルパーRNAは、E3-E2-6k-E1をコードしうる。さらに、パッケージングシグナル、つまりウイルスゲノム中に存在する「キャプシド化(encapsidation)配列」は、全てのヘルパー核酸において存在しない。好ましくは、パッケージング・シグナルは、全てのヘルパー核酸から欠失される。
【0037】
これらのRNAヘルパーは、多くの方法で細胞中へ導入されうる。該RNAヘルパーは、細胞内に安定的に形質導入された1以上の発現カセットから発現されて、それによりパッケージング細胞系列を確立する(例えば、米国特許第6,242,259号を参照のこと)。或いは、RNAは、ヘルパー細胞内で、細胞のゲノム中に組み込まれることなく発現されるRNA又はDNA分子として導入されうる。導入方法は、電気穿孔、ウイルスベクター(例えば、SV40、アデノウイルス、ノダウイルス、アストロウイルス)、及び脂質媒介トランスフェクションを含む。
【0038】
複数のヘルパーRNAの代替は、ウイルス・レプリコンRNAを感染性アルファウイルス・レプリコン粒子中へパッケージングするために必要なポリペプチドの全てをコードするシングルDNA分子を使用することである。シングルDNAヘルパーは、非限定的に電気穿孔、脂質-媒介性トランスフェクション(リポフェクション)、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス又はSV-40)、又はリン酸カルシウム-媒介性トランスフェクションを含む当該技術分野に既知の方法のいずれかによりパッケージング細胞中に導入される。好ましくは、DNAは、本発明の電気穿孔に基く方法を介して導入される。DNAは典型的に、RNAの取り込みに必要とされる電圧及び電気容量と比べて減少された電圧及び増加した電気容量で細胞中へと電気穿孔で入れられる。全ての電気穿孔において、電圧及び電気容量の値は、感染性アルファウイルス粒子を作り出すパッケージング(宿主)細胞の能力を破壊することを避けるようにセットされなければならない。或いは、このフォーマットにおいて及び誘導性のプロモーターの下でのヘルパー機能は、RNAベクター・レプリコンの導入/発現の前に、パッケージング細胞のゲノム中へと取り込まれ、そしてRNAベクター・レプリコンの導入の前に、同時に、又は後に適切な刺激で導入される。
【0039】
有利なことに、アルファウイルス構造タンパク質、つまりキャプシド、E1糖タンパク質及びE2糖タンパク質、又はレプリコン・コンストラクトをコードする核酸の1以上は、1以上の弱毒化突然変異を含む。本明細書中で使用される「弱毒化突然変異」及び「弱毒化アミノ酸」というフレーズは、(ポリペプチドをコードするウイルスゲノムの領域中に存在するか又は存在しない)ヌクレオチド突然変異、又はヌクレオチド突然変異によりコードされるアミノ酸を意味し、該ヌクレオチド突然変異は、該突然変異が置換突然変異であろうと、イン-フレーム欠失若しくは突然変異の添加であろうと、当該技術分野の専門用語に従って(例えば、B. Davis, et al., Microbiology 156-158(4th ed. 1990)を参照のこと)、アルファウイルスが、その宿主において疾患を引き起こす可能性の低下(つまり病原性の低下)をもたらす。「弱毒化突然変異」という用語は、そうした突然変異が、弱毒化されたにもかかわらずウイルスの生存を可能にする「修復」突然変異と組み合わせて使用されない限り、ウイルスにとって致命的である突然変異を除外する。アルファウイルス・ゲノムにおいて適切な弱毒化突然変異を同定する方法は、当該技術分野に既知である。Olmsted et al.,(1984; Science 225: 424)は、細胞培養において成長の早さについて選別することにより、シンドビス・ウイルスにおいて弱毒化突然変異を同定する方法を記載する。Johnston及びSmith(1988; Virology 162: 437)は、BHK細胞の浸透を促進するために選択的な圧力を直接適用することにより、VEEにおける弱毒化突然変異を同定することを記載する。アルファウイルスにおける弱毒化突然変異は、当該技術分野に記載される。例えば、White et al. 2001 J. Virology 75: 3706; Kinney et al. 1989 Virology 70: 19; Heise et al. 2000 J. Virology 74: 4207; Bernard et al 2000 Virology 276: 93; Smith et al 2001 J Virology 75: 11196; Heidner and Johnston 1994 J.Virology 68: 8064; Klimstra et al. 1999 J. Virology 73: 10387; Glasgow et al. 1991 Virology 185: 741; Polo and Johnston 1990 J. Virology 64: 4438; and Smerdou and Liljestrom 1999 J. Virology 73 : 1092 である。
【0040】
特定の実施態様では、レプリコンRNAは、少なくとも1の弱毒化突然変異を含む。別の特異的実施態様では、ヘルパー核酸(単数又は複数)は、少なくとも1の弱毒化突然変異を含む。2個のヘルパー核酸分子を含む実施態様では、少なくとも1の分子は、少なくとも1の弱毒化突然変異を含むか、又は両方とも少なくとも1の弱毒化突然変異をコードしうる。或いは、ヘルパー核酸又は第一若しくは第二ヘルパー核酸のうちの少なくとも1は、少なくとも2個の又は複数の弱毒化突然変異を含む。適切な弱毒化突然変異は、使用されるアルファウイルスに左右される。例えば、アルファウイルスがVEEである場合、適切な弱毒化突然変異は、E2アミノ酸位76でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはリジン、アルギニン、又はヒスチジンをE2アミノ酸76として指定するコドン;E2アミノ酸位120でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはリジンをE2アミノ酸120として指定するコドン;E2アミノ酸位209でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはリジン、アルギニン、又はヒスチジンをE2アミノ酸209として指定するコドン;E1アミノ酸位272でのコドンであって、弱毒化突然変異、好ましくはスレオニン又はセリンをE1アミノ酸272として指定するコドン;E1アミノ酸位81でのコドンであって、弱毒化突然変異、好ましくはイソロイシン又はロイシンをE1アミノ酸81として指定するコドン、並びにE1アミノ酸位253でのコドンであって、弱毒化突然変異、好ましくはセリン又はスレオニンをE1アミノ酸253として指定するコドンからなる群から選ばれうる。E3/E2のポリタンパク質が切断されないように、更なる弱毒化突然変異がE3とE2との間の切断ドメインにおける欠失又は置換突然変異を含む;E1-253での突然変異と組み合わせた突然変異は、本発明中で使用される好ましい弱毒化株である。同様に、現存の生ワクチン株中、例えばTC83株(Kinney et al., 1989, Virology 170: 19-30、特にヌクレオチド3での突然変異)中に存在する突然変異はまた、本発明の方法により精製された粒子中に有利に使用された。
【0041】
アルファウイルスが、南アフリカ・アルボウイルスNo.86(S.A.AR86)である場合、適切な弱毒化突然変異は、
nsP1アミノ酸位538でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはイソロイシンをnsP1アミノ酸538として指定するコドン;
E2アミノ酸位304でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはスレオニンをE2アミノ酸304として指定するコドン;
E2アミノ酸位314でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはリジンをE2アミノ酸314として指定するコドン;
E2アミノ酸位376でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはアラニンをE2アミノ酸376として指定するコドン;
E2アミノ酸位372でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはロイシンをE2アミノ酸372として指定するコドン;
nsP2アミノ酸位96でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはグリシンをnsP2アミノ酸96として指定するコドン;
nsP2アミノ酸位372でのコドンであって、弱毒化アミノ酸、好ましくはバリンをnsP2アミノ酸372として指定するコドン;
からなる群から選ばれうる。別のアルファウイルスが使用される実施態様に有用な適切な弱毒化突然変異は、当業者に周知である。
【0042】
弱毒化突然変異は、既知の方法に従って、RNAをコードするcDNA上での特定部位突然変異誘導によりRNA中に導入されうる。Kunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:
488 (1985)を参照のこと、該開示は、その全てを本明細書中に援用される。或いは、既知の方法に従って、RNAをコードするcDNA中における相同制限酵素断片を置き換えることにより、又は変異誘発性ポリメラーゼ・チェーン反応を使用して突然変異はRNAへと導入されうる。
【0043】
本発明は、感染性、伝播欠損性、高免疫原性のアルファウイルス・レプリコン粒子を、高収量で製造する改良された方法を提供する。アルファウイルス・レプリコン粒子(ARPs)において、本明細書中でレプリコンと呼ばれるアルファウイルス・ベクターは、関心の1以上の遺伝子を含み及び発現するように遺伝子工学により操作され、ここで該関心の遺伝子は、例えば、抗原、ケモカイン、サイトカイン、リボザイム、又は酵素をコードしうる。アルファウイルス・レプリコン・ベクターは、アルファウイルスのいずれか、例えば、ベネズエラ・ウマ・脳炎(VEE)ウイルス、シンドビス・ウイルス、例えば、TR339株、南アフリカ・アルボウイルスNo.86、及びセムリキ森林ウイルス由来でありうる。ベクターは、培養中の細胞へと導入され、これは、アルファウイルスの複製を可能にし、ここでアルファウイルスの構造タンパク質は発現され、その結果、該ベクターは、構造タンパク質によって、細胞から即座に放出されるARPs中へとパッケージされる。本発明はまた、生きた、米国特許第5,643,576号に記載される粒子を含む弱毒化されたアルファウイルス粒子、並びにアルファウイルスに対するワクチンとして使用される弱毒化アルファウイルス株の調製及び収集にも適用できる。
【0044】
ARPを生成及び収集する従来の方法は高価であり、非効率的であり、そして労力がかかったので、本発明者は、方法を単純化し、そしてARPあたりの値段を低減する一方、改良されたARP収量を達成するために、種々のパラメーターを試験した。新規の方法は、核酸調製、細胞培養、ARPsを生成するための細胞操作、ARP収集、及びARP形成のステップにおける革新を含み、そして該方法は、ARPsの収量の増加及びARPあたりかなりのコスト低下の利益を有する。
【0045】
全ての以前の報告では、ARPsは、ARPsを生成する細胞が成長する培地又は培養上清から精製された。驚くべきことに、本発明者が、通常の成長培地に典型的に使用される塩濃度より高い水溶液でARPs生成細胞を洗浄したとき、かなりの数の感染性ARPsが、細胞及び/又は細胞片から放出された。塩洗浄の後に集められたARPsの免疫原性は、既知の方法に従って作られたARPsの免疫原性と比較され、そして塩洗浄で集められたARPsに対する強度は、塩洗浄の前に培地中に最初に放出されたARP粒子と同等であるか、又はそれより良かった。
【0046】
多くの用途において、本明細書中に記載されるように、ARPsを収集するための塩洗浄処理の使用は、塩洗浄の前に細胞により保持される多数の粒子のため、細胞培養培地からARPsを集める必要性を避けうる。塩洗浄の前の培地中に存在するARPsと細胞により保持されそして塩洗浄により放出されるARPsとの比は、細胞型、細胞成長条件、及び塩洗浄条件に左右されて、1:1〜1:400でありうる。ベロ細胞では、この比率は、典型的には少なくとも1:3であり、通常1:10、1:100;又は1:400であり(図4を参照のこと)、特許請求される発明の別のパラメーターの最適化度合いに左右される。
【0047】
それゆえ、以下のステップ:
(a) アルファウイルス・レプリコン核酸を宿主細胞中に導入し、ここで該レプリコン核酸が、少なくともアルファウイルス・パッケージング・シグナル及び少なくとも1の前記アルファウイルス・レプリコン核酸中に発現される関心の遺伝子(単数又は複数)のコード配列の少なくとも1を含み、ここで前記宿主細胞が、ARPsを生成するために必要とされるアルファウイルス構造タンパク質を発現することができて、改変宿主を作り出し、
(b) 構造タンパク質の発現及びアルファウイルス・レプリコン核酸の複製を可能にし、そして次にアルファウイルス・レプリコン核酸をパッケージングする条件下の培地中で前記改変宿主を培養して、ARPsを形成し;
(c) 改変宿主細胞を培地から分離し;そして
(d) ステップ(c)の後に、改変された宿主細胞を、少なくとも約0.20Mのイオン強度を有する緩衝溶液(本明細書中で「放出培地」と呼ばれる)と接触して、ARPsを放出し、そしてARPを含む溶液を生成するステップ
を含むARPsの調製方法(単数又は複数)が本明細書中に開示される。
【0048】
ステップ(d)は、多数の異なる放出培地のいずれか1つで行われ、そしてARP「塩-洗浄」収量(つまり、放出培地中に集められたARPs)は、一部については細胞が放出培地に晒される時間の長さの関数のである。この時間は、1分〜数時間であることもあり;5〜20分が典型的である。好ましい実施態様では、0.5M塩溶液が使用され、そして細胞は、この溶液中で約5分間インキュベーションされた。放出培地の塩濃度とインキュベーション時間との最適な組合せは、当業者により直接的に決定され、そしてさらに細胞型と細胞支持装置の更なる関数となりうる。
【0049】
多くのARPsが細胞により保持されるという驚くべき観測により、塩を含む溶液中でARPsが細胞から放出される前に、細胞を完全に洗浄する機会が提供され、こうしてARPsの下流における精製の必要性をかなり減らした。細胞単層は、こうしてARPsについてのアフィニティ・マトリックスとして効果的に使用された。
【0050】
こうして、好ましい実施態様では、細胞は、上記ステップ(b)において記載されるように容器中、例えば細胞培養フラスコ、ローラー・ボトル、細胞-立方体装置、付着細胞成長用のビーズを備える培養容器(バイオリアクター及びスピナー・フラスを含む)、又はホロー・ファイバー中で培養され、ここで該細胞は、約12〜48時間、好ましくは16〜24時間インキュベーションされて、ARPsを生成する。哺乳動物が使用される場合では、該細胞は典型的に容器の内部表面に付着されるか、又は、非限定的にビーズ、ポリスチレン粒子、ホロー・ファイバーなどを含む別の固体支持体へと結合され、そして必須のインキュベーション期間の後、培地は、細胞から望ましくは(デカンタにより又は吸引により)取り出されて、そして保存されるか又は捨てられ、それにより改変宿主細胞を、細胞培養培地からから分離する。或いは、懸濁培養中で成長する細胞は、遠心分離をして成長培地から細胞を取り出すことができる。細胞は次に「細胞洗浄」溶液で過度に洗浄される。該溶液は、低濃度の塩を含むか、又は塩を含まない培地であって、外部の物質、例えばDNase調製品又は残りの細胞性DNA又はプロテイナーゼを取り除く別の化学物質を取り除くことを手助けする培地である。市販のDNaseは、ベンゾアーゼであり、セラチア・マルセシェンス(Serratia marcescens)デオキシリボヌクレアーゼは、Novagen/EMD Bioscience, Madison, WIから得られる(米国特許第5,173,318号を参照のこと)。DNaseは、電気穿孔後の培地中に約10〜1000ユニット/mlの濃度で取り込まれうる。DNase、例えばベンゾナーゼがARP粒子中に取り込まれる場合、DNaseは、100〜5000ユニット/ml、望ましくは約500ユニット/mlの濃度で使用され、30〜37℃で10〜90分間、望ましくは約30分間インキュベーションされた。有用な放出培地(結合されたARPsの放出するための細胞洗浄液)の例は、図4において示される。細胞基質によりARPs(又はアルファウイルス粒子)の保持を最大限にし、そして放出培地の添加の前に倍地中への放出を最小限にするために、細胞洗浄溶液は、各細胞-アルファウイルス種の組合せについて最適化されうるということを、これらの結果は示す。細胞によるARP保持を最大化することにより、細胞培養培地中に存在する粒子のずっと少ない数を収集することは、効率的ではないこともあるし又は経済的ではないこともある。
【0051】
この過度の洗浄の後に、細胞は次に放出培地に晒され、そしてARPsは、宿主細胞から倍地中へと放出される。好ましい実施態様では、放出培地は、少なくとも約0.20M塩、好ましくは0.25M〜5M塩を含む水溶液であり、そして細胞が成長する培地の体積より典型的にずっと少ない体積であり、例えば、体積で10〜50倍少ない。放出培地は、更なる構成要素、例えば(特に、細胞洗浄液中に使用されないなら)DNase及び安定化剤、例えばHSA及びスクロースを含みうる。放出ステップの温度は決定的ではなく、4℃、室温、及び37℃で同様の結果を得た。同様の結果は、10〜30分の(放出培地中の)塩洗浄で得られる。
【0052】
放出培地は、非限定的に以下:NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2、NH4Cl、NH4SO4、NH4CH3COO、及びNH4HCO3を含む所望のイオン強度に作られうる。望ましくは、放出培地のpHは、細胞の完全性を維持するpH、例えば約6〜約9.0又は約6.5〜約8.5に合わせられる。特定の実施態様では、放出培地中の揮発性塩、例えば揮発性のアンモニウム塩、特に酢酸アンモニウム又は重炭酸アンモニウムの使用は、濃縮されたARP調製液から塩を取り除く結果として、ARPを含む溶液が凍結乾燥されることを可能にする。
【0053】
幾つかの塩は、電気穿孔後16及び24時間でのベロ細胞からARPsの収集及び回収を増進するための能力について試験された。1M・NaClpH7.2、1M酢酸アンモニウムpH7.35、1M炭酸アンモニウムpH7.4、1M塩化マグネシウムpH7.2、1M酢酸ナトリウムpH7.35、及び1M硫酸アンモニウムpH7.35の全ては、同等かつ良好な結果を与えた。放出培地の塩濃度0.5Mから5Mに増加することは、ARPsの収量に影響しなかった。低い有効量に対する濃度を使用することは、クロマトグラフィー媒体上にロードされる物質の多量の希釈体積の必要性を妨げる。20mMリン酸ナトリウムpH7.2、20mMリン酸ナトリウムpH6.5、50mMリン酸ナトリウムpH7.2、及び0.1%トウィーン80を伴う20mMリン酸ナトリウムpH7.2は、生成細胞からのARPsの放出するように効果的に働かなかった。放出培地中での洗浄は、4℃、室温、37℃で行われ、洗浄温度は収量に影響を与えなかった。
【0054】
細胞が電気穿孔後即座に配置される培地、つまり電気穿孔後培地の効果も研究された。実施例3を参照のこと。驚くべきことに、無血清培地の使用により良好な収量が得られ、しばしば血清を含む培地と同程度であり、使用される生成物の潜在的な安全性に関して、並びにアルファウイルス-許容状態細胞及びウイルス粒子若しくはウイルス様粒子と結びつくタンパク質の量を低減するという点で利点を与える。
【0055】
特定の実施態様では、上記のステップ(c)で、細胞から分離された培養培地は、本明細書上記のARPを含む溶液と混合され、そしてARPsは、前で分離された2の分画から同時に生成されうる。或いは、ARPsは、培養培地から別々に精製され、そして次に塩洗浄により取り出された粒子と混合される。
【0056】
一般的に、特許請求される発明の全てのステップは、ARP生成前の細胞の成長を含み、無血清培地中で行われうる。
【0057】
核酸分子を宿主細胞中に導入するための多くの方法が知られているが、特に有用な方法は電気穿孔法である。電気穿孔混合液中の細胞及び導入核酸の両方が以前に推奨されるか又は使用された濃度よりも高い濃度で存在した場合に、改良されたARP収量が得られると本発明者により測定された。
【0058】
一般的に、電気穿孔の機能は、核酸の浸入を可能にするために十分な、細胞膜における孔又は開口部を作り出すための電場を使用することである。現在、細胞を電気穿孔するための多くの装置が市販され、(典型的には0.8〜4mlの培地を保つ)使い捨てのキュベット、ペトリ皿電極、及びフロー・スルー・アパラッチ(flow-through apparati)又は別の電気穿孔チャンバーを含む。遺伝子形質転換するための細胞の電気穿孔用装置を最適化する際、電圧、パルス期間、装置配置、必要とされる電界強度(これは、各細胞型の関数であり、そして細胞の半径及び破壊電圧に左右される)、並びに電極間の距離などのパラメーターを変化する際に、当該技術分野におけるさらなる教示が存在する。さらに、細胞の密度もまた、因子であり、そして製品の推薦は、ベロ及びNIH-3T3細胞について1〜5×106細胞/mlであり、そしてBHK及びCHO細胞について少し高かった。BHK及びCHO細胞は両方ともベロ細胞より小さかった(例えば、Multiporator(商標)のキュベットマニュアル, Brinkmann, Westbury, NY; Genetronics, San Diego, CA 、the ElectroCell Manipulator (ECM(商標)) 又はElectroSquarePoratorm(商標)についての(BTX Division)プロトコル; Parham, J. et al.1999 CytoTechnology 28: 1-9)を参照のこと。)。これらの推薦された細胞密度より高い細胞密度は、電気穿孔環境における不均一な電場状況であって、細胞融合を導きうる状況をもたらしうるということを当該技術分野は示す。Liljestrom及びGaroff, J. Virology 65: 4107- 4113,1991は、5×106細胞/mlの濃度のBHK細胞中へ、1のキャップされたRNAヘルパー及びセムリキ森林ウイルス・レプリコンRNAを導入するために電気穿孔を使用した。
【0059】
同様に、当該技術分野で使用される核酸濃度は、実験的に決定され、そして一般的に1mlの電気穿孔緩衝液あたり5〜20μgのDNAが推薦され;さらに多い量は、大きい核酸について有効であると考えられる。Lijestrom及びGaroff(1991)は、電気穿孔におけるRNA濃度の効果を研究し、そして取り込み効率は、RNA濃度に直線的に関連せず、そして2μgは、キュベット電気穿孔における100%のトランスフェクション効率を得るために十分であった。
【0060】
本発明では、1mlの電気穿孔培地あたり約1×107〜約1×109の細胞密度で宿主細胞を使用して電気穿孔を行うとき、改良された結果(宿主細胞あたりのARP生成)が得られた。より好ましくは、電気穿孔環境における細胞密度は、1mlあたり約5×107〜5×108細胞である。本明細書中に特異的に例示されるように、電気穿孔は、電気穿孔キュベット中で行われるが、ペトリ皿又は流水式電気穿孔装置もまた使用されうる。これらの両方とも市販されている。電気穿孔チャンバーの別の型は使用されうる。改良された結果は、1mlあたり約1×107〜5×108のベロ細胞濃度で得られた。例えば、0.4cmギャップ・キュベットにおける108細胞において、1010〜1011ARPsが1回の電気穿孔から得られた。細胞及び容積基準に基く同等の収量は、別の電気穿孔装置におけるパラメーターを適切に変化することにより得られる。或いは、CHO、BHK、CEF、293T、及びトリ胚線維芽細胞は、使用されうる。本明細書の上部で議論された培養昆虫細胞も使用されうる。
【0061】
レプリコン-ヘルパー電気穿孔についての、最適化された細胞濃度範囲では、各インプット・ヘルパーRNAは、約10〜50、望ましくは約35μg/mlで存在し、そしてレプリコンRNAは、約10〜150μg/ml、望ましくは約35μg/mlで存在する。別の実施態様では、1以上のDNAヘルパーが使用される。電気穿孔において使用されるDNAヘルパー(単数又は複数)の濃度は、RNAヘルパーに使われる濃度より高く、例えば100〜200μg/mlである。RNA又はDNAヘルパーを使用し、電気穿孔前に細胞に加えられるアルファウイルスRNAレプリコンの量は、少なくとも約35μg/mlである。
【0062】
電気穿孔を介して、アルファウイルス-許容状態細胞培養へとアルファウイルス・レプリコン・ベクターを導入することを含む、ARPs製造方法であって、電気穿孔の間培養培地中の細胞濃度が、少なくとも107細胞/ml培地、好ましくは5×107〜5×108細胞/ml培地である方法が本明細書中に開示される。特許請求される発明の好ましい方法は、細胞中に導入されるレプリコンRNAを使用することを含む一方で、別のアプローチは、レプリコンRNAをコードするcDNA分子を介してレプリコンRNAを導入することである。このアプローチは、ときおり真核細胞レイヤード・ベクター・イニシエーション・システム(eukaryotic layered vector initiation system)(ELVIS)と呼ばれ、米国特許第5,814,482号及び第6,015,686号に記載される。
【0063】
宿主細胞中に生成されるアルファウイルス構造タンパク質は、該宿主細胞のゲノム中に安定して組み込まれた1以上の核酸配列(単数又は複数)によってコードされるか、又はそれ/それらは、アルファウイルスレプリコン核酸の導入と同時に又はその前において、一過性の形態で宿主細胞に導入されうる。望ましくは、宿主細胞中に提供されるアルファウイルス構造タンパク質は、アルファウイルス・レプリコン核酸を結合できるアルファウイルスキャプシドタンパク質及び少なくとも1のアルファウイルス・糖タンパク質をコードする1又は2個の核酸分子(RNA又はDNA)から発現される。ここで当該アルファウイルス糖タンパク質は、アルファウイルスレプリコン核酸及びキャプシド・タンパク質と一緒に行動する。電気穿孔を介して核酸として加えたとき、1以上のヘルパー核酸は、レプリコンRNAと共に電気穿孔されうる。シングル・ヘルパー核酸で、本発明の方法を実行する際、レプリコンRNA:ヘルパー核酸のモル比の有効な範囲は、1:2〜1:8であり、そしてレプリコンRNA:第一ヘルパー:第二ヘルパーのモル比の有効な範囲は1:2:2〜1:5:5である。一般的に、各ヘルパーの濃度は、ルーチンな実験により最適化され、そして特に1のヘルパーがRNA分子でありかつもう一方がDNA分子であるなら、両方のヘルパーが等量で使用されるということは必要でなくまた予期もされない。ARPsの最高濃度を作り出すヘルパーの濃度を決定するために、ヘルパー分子(単数又は複数)の量は、レプリコン核酸の量と関連するが、2個のヘルパーの場合互いに独立して増大されうる。全てのアルファウイルス構造タンパク質を発現するシングルDNAヘルパー(例えば、VEE構造タンパク質の全てを発現するヘルパーは、約8.7kbの長さである)の特異的な実施態様において、レプリコンRNA:DNAヘルパーの有効なモル比は、約1:6である。同様に、HIVgagタンパク質をコードする30μgのVEEレプリコン・ベクター及び100〜150μgのDNAヘルパー(CMVプロモーター)は、ARP生成のためベロ細胞中に電気穿孔された。DNAは、毒性汚染物質を取り除くためにかなり精製され、そして電気穿孔前に約5mg/mlへと濃縮された。一般的に、DNAを1〜8mg/mlへと、好ましくは5〜8mg/mlへと濃縮することが好ましい。DNAヘルパーは、0.8mlの電気穿孔混合液あたり約20〜500、望ましくは約50〜300、例えば約150μgで、電気穿孔混合液中に存在し、望ましくは約5×107〜約2×108細胞、例えば約1.2×108細胞を含む。
【0064】
レプリコン及び/又はヘルパーを使用するこれらの実施態様では、本発明の効果的な方法の一の態様は、制限酵素切断により直線にされた後のDNAを精製することなく、レプリコン及びヘルパー核酸をコードする直線化DNAから転写を行うことである。同じRNA転写緩衝液中での制限酵素切断及びRNA転写についてプロトコル(共役反応)は開発された。RNAの収量は、インプットDNAの重さに対して計算するなら、直線化の後でかつRNA転写の前にDNAが精製される従来の方法に比べて、当該共役反応では2〜3倍高かった。
【0065】
本発明における値段、試薬、及び労力のさらなる節約は、キャップなしヘルパーRNA(単数又は複数)が電気穿孔反応において使用されうるという発見から生じる。実施例1は、レプリコンRNAと共に電気穿孔において使用されるキャップなしRNA(単数又は複数)の効率を測定するために行われた実験を記載する。
【0066】
ヘルパーRNAが複製されるため、及びレプリコンRNAをパッケージする構造タンパク質を提供するために、キャップ構造がヘルパーRNA上に必要とされるかどうかを我々は試験した(実施例1)。キャップ・ヘルパーRNAに対する理論的な必要性はないにも関わらず、本発明者の研究室並びに別の研究室からの現存するデーターにより、キャップなしヘルパーは、ARPsを作り出すとき、効率的に(或いは、全く)働かないということが示された。それにもかかわらず、ヘルパーRNAにキャップをつけることに付随する値段の高さのため、並びにもしキャップアナログを使用しない場合、転写反応からRNA収量をかなり増やせる可能性のため、ARPsを生成するためのキャップなしヘルパーの使用についての研究が開始された。ベロ細胞は、キャップ有り又はキャップなしヘルパーRNAと共にレプリコンRNAで電気穿孔された。驚くべきことに、同等のタイターのARPsは、キャップなし又はキャップ有りRNAヘルパーで作り出された(図1)。但し、RNAヘルパーは、電気穿孔前に十分に精製された。キャップなしヘルパーでのARPsの生成は、別の細胞型(CHO、293T、及びDF-1細胞)において試みられて、この結果はベロ細胞に限られないことを確かめた。キャップなしヘルパーRNAは、ベロ、CHO、DF-1、及び293T細胞においてARPsを作り出すために使用された。キャップなしRNAヘルパーで生成されたARPsは、試験された細胞型の全てにおいて、キャップ有りRNAヘルパーで生成されたARPsとタイターの点で同等である(図1)。キャップなしヘルパーRNA分子を使用する能力は、試薬とRNA収量との観点でかなりのコストの節約を可能にする。対照的に、収量は、キャップなしレプリコンRNAについてより、キャップ有りレプリコンRNAについてのほうが高かった。キャップは、Gキャップ、Cキャップ、Aキャップ、メチル化G(m7G(5’ppp(5’)pppG(5)A)、非メチル化G(G(5’ppp(5’)A);ARCA(抗-リバース・キャップ・アナログ、3-O-Me-m7G(5’)pppG(5)を含む。キャップ化試薬は、当該技術分野に周知であり、そして例えばPromega, Madison, WI及びAmbion, Austin, TXから市販される。RNA生成のコストは、かなり削減される。なぜなら、キャップアナログ試薬は、当該方法の高価な要素であるからであり、そして各転写反応は、より多くのRNAを産生するからである。
【0067】
電気穿孔における精製及び未精製RNAの結果を比較する際、(非限定的にサイズ排除クロマトグラフィー、シリカ・カラム・クロマトグラフィー、又はLiClを含む市販のキット及び方法を使用する)少なくとも部分的なRNA精製は、良好なARP収量に必要であった。精製は、電気穿孔から得られるトランスフェクション効率についての有害な効果を引き起こすこと(例えばBrinkmannの装置取り扱い説明書を参照のこと)が知られているEDTA、HEPES、及びTRISなどの分子(核酸操作における通常の構成物)、並びにRNAを作り出すために使用される転写緩衝液(図2を参照のこと)の構成要素を取り除く。電気穿孔において使用される核酸調製品は、好ましくは、A260/A280比で約1.7〜1.9であり、そして電気穿孔前に蒸留水中に懸濁される。RNA精製は、RNA溶液の濃度に達するという付加的な利点を有する。電気穿孔培地において細胞に加えられるRNA溶液の体積が小さほど、より多くの細胞は、電気穿孔において使用されうる。いずれの特定の論理により束縛されることなく、電気穿孔の前に二価Mgカチオンを取り除くこと又はMg二価カチオンを5mM未満の濃度に低減することは、最終的なARP収量を改良する。
【0068】
関心の配列を運搬するアルファウイルス・レプリコンRNAと共に電気穿孔されるとき、1のDNAヘルパーは、ARPsを生成するために使用される。方形波及び指数波の電気穿孔は、類似の結果を与える一方、DNAヘルパーの純度が大きくなるほど、ARP収量はより良くなった。(高電気容量)低電圧は、RNA分子のみを細胞に導入する場合と比較して、DNA分子を細胞に効率的に導入するために好ましいということが発見された。
【0069】
ARPsが、塩洗浄により細胞から集められた後に、そして場合により細胞を含まない上清から集められた後に、ARPsは、非限定的にイオン交換クロマトグラフィー及びヘパリン・アフィニティー・クロマトグラフィーを含む1以上のステップにより精製されうる。ヘパリンクロマトグラフィーは、ARPS中に取り込まれる弱毒化突然変異アルファウイルス構造タンパク質のいくつかに作用するが、VEE3000ウイルス構造タンパク質には作用しない。
【0070】
本発明中で使用される好ましいアルファウイルスは、ベネズエラ・ウマ脳炎ウイルスである。好ましくは、ARPsを生成する際に使用されるVEE株は、少なくとも1の弱毒化突然変異を含む。そうした弱毒化突然変異の代表的なクラスでは、最初に「迅速-貫通(rapid-penetration)」ミュータント(Johnston and Smith, Virology 162: 437-443,1988)として名付けられ、それらの多くは、後に全体として正荷電をもたらすE2糖タンパク質における突然変異を有することが示され(Davis et al., Virology 183: 20-31,1991)、そして、グリコサミノグリカン、例えばヘパラン硫酸に結合する能力を亢進させた(Klimstra, WB et al. 1998 72: 7357-7366; Bernard et al., Virology 276: 93-103,2000を参照のこと)。類似の突然変異は、別のアルファウイルス、例えばシンドビス(Olmsted et al., Virology 148: 245, 1986; Davis et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 6771,1986)において知られており、特に典型的なヘパリン結合性弱毒化VEE突然変異体は、3014株である。ウイルス又はそれらから由来されるARPsであって、グリコサミノグリカン結合能力を与える突然変異を有するものは、塩洗浄ステップを使用する精製に特によく適しており、そしてそれらはヘパリン・アフィニティー・クロマトグラフィーを使用してさらに精製されうる。
【0071】
本発明の文脈では、ヘルパー細胞は、その中にヘルパー及びレプリコン核酸が存在するとき、アルファウイルス・レプリコン粒子を作り出す細胞である。ヘルパー機能が1以上の安定に組み込まれた配列上にコードされる細胞は、ARPsをパッケージするために使用されうる。DNA又はRNAは、特定の細胞型に適した方法であって、当該技術分野に知られたいずれかの方法、例えば、非限定的に形質転換、リポフェクション、又は電気穿孔により誘導される。或いは、レプリコン核酸をウイルス粒子へとパッケージするために必要とされる構造遺伝子がゲノム中に組み込まれた安定形質転換細胞は、本明細書中に開示される方法を使用してARPsを調製するために使用されうる。
【0072】
遺伝コードの縮重及びコドン使用頻度のため、コード配列が変わりうるということは、当業者により認識される。関心の抗原又は別のポリペプチド又はタンパク質をコードする全ての同義配列は、本発明の範囲内に含まれる。
【0073】
これらの配列がコードするペプチドのアミノ酸配列の活性を有意に変化させないコード配列中に、対立遺伝子変異が生じうるということは、当業者により認識される。そうした同等のDNA配列の全ては、本発明の範囲内及びプロモーターの定義内に含まれる。
【0074】
クローニング、DNA単離、増幅、及び精製について、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼなどを含む酵素反応についての標準技術、並びに種々の分離技術は、当業者に知られ、そして通常に使用される。標準技術の多くは、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Plainview, New York; Maniatis et al.(1982) Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory, Plainview, New York; Wu (ed. ) (1993) Meth. Enzymol. 218, Part I ; Wu (ed. ) (1979) Meth. Enzymol. 68; Wu et al. (eds.) (1983) Meth. Enzymol. 100 and 101; Grossman and Moldave (eds. ) Meth. Enzymol. 65; Miller (ed.) (1972) Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor,
New York; Old and Primrose (1981) Principles of Gene Manipulation, University of California Press, Berkeley; Schleif and Wensink (1982) Practical Methods in Molecular Biology ; Glover (ed. ) (1985) DNA Cloning Vol.I and 11, IRL Press, Oxford, UK; Hames and Higgins (eds.) (1985) Nucleic Acid Hybridization, IRL Press, Oxford, UK; Setlow and Hollaender (1979) Genetic Engineering : Principles and Methods, Vols. 1-4, Plenum Press, New York; and Ausubel et al. (1992) Current Protocols in Molecular Biology, Greene/Wiley, New York, NY.において記載される。使用される略記及び命名法は、当該技術分野に標準なものとみなされ、そして本明細書中で引用する専門論文において通常使用される。
【0075】
ワクチン、又は別の免疫原性組成物などの本発明の医薬製剤は、免疫原性の量の感染性伝播欠損性アルファウイルス・レプリコン粒子又は生きた弱毒化粒子を、医薬として許容される担体と組み合わせて含む。「免疫原性の量」は、医薬製剤が投与される対象に免疫応答を誘発するために十分な感染性アルファウイルス粒子の量である。約104〜109、特に106〜108の量の感染ユニット、又は投与量あたりのARPsは、治療される対象の年齢及び種に依存して適していると信じられている。医薬として許容される担体の例は、非限定的に滅菌、パイロジェンフリーの水、及び滅菌パイロジェン生理食塩水を含む。免疫原性の量の本発明の感染性、複製欠損アルファウイルス粒子を投与された対象は、ヒト及び動物(例えば、犬、ネコ、ウシ、ウマ、ロバ、マウス、ハムスター、サル、ギニアブタ、トリ、卵)対象を含む。投与は、腹腔内、筋肉内、皮内、鼻腔内、経膣、経直腸、皮下、又は静脈内いずれかの適切な方法により行われうる。
【0076】
1以上の免疫増強分子、例えばケモカイン及び/又はサイトカインは、本明細書中に記載されるように調製されたアルファウイルス・レプリコン粒子を含む免疫原性組成物中に取り込まれうる。或いは、免疫原性組成物は、アルファウイルスレプリコン粒子であって、組成物が投与される患者又は動物中に1以上のケモカイン及び/又はサイトカインを発現させる粒子を含みうる。ケモカイン及びサイトカインのれイは、非限定的に、インターロイキン-4、インターロイキン12、γインターフェロン、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子、及びFLT-3リガンドを含む。サイトカイン及び/又はケモカインの選択は、免疫応答に標的とされる腫瘍症、寄生生物、又は病原菌に左右されて変わりうるということは理解される。
【0077】
本発明の方法を使用して生成されたARPs(であって、該組成物がヒト又は動物へと投与されるとき、関心の配列(単数又は複数)を発現させるARPs)を含む免疫原性組成物は、当該技術分野に周知の方法のいずれかにより剤形される。そうした組成物、特にワクチンは、典型的に注射液、液体溶液又は懸濁液として製造されうる。注射前に液体中の適切な溶液又は懸濁液を形成する固体もまた、製造されうる。凍結乾燥された製剤も適している。
【0078】
活性免疫原性成分(ARPs)は、医薬として許容されかつ活性成分と適合性のある賦形剤又は担体と混合される。適切な賦形剤は、非限定的に滅菌水、塩類溶液、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、及びそれらの組合せ、並びに安定化剤、例えばHSA又は別の適切なタンパク質及び還元糖を含む。
【0079】
付け加えて、所望されるならば、ワクチンは、少量の補助物質、例えば湿潤又は乳濁剤、pH緩衝剤、及び/又はワクチンの有効性を高めるアジュバントを含むこともある。有効である賦形剤の例は、非限定的に、水酸化アルミニウム;N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP);N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP11637、nor-MDPと呼ばれる);N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1’-2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CGP19835A、MTP-PEと呼ばれる);及びバクテリアから抽出される3種の構成要素、モノホスホリル・リピドA、トレハロース・ジミコレート、及び細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を、2%スクアレン/Tween80中に含むRIBIを含む。アジュバントの有効性は、種々のアジュバントを含むワクチン中の免疫原の投与から得られるARP免疫原性生成物に対する抗体量を計測することにより測定されうる。当該技術分野に既知である投与のさらなる製剤及びモードも使用されうる。
【0080】
免疫原性(又はそうでなければ生理的に活性である)ARPを含む組成物は、投与製剤と適合性のある方式で、及び予防的及び/又は治療的に効果的である量で投与される。投与される量は、一般的に投与量1mlあたり約104〜109感染ユニットの範囲であり、治療される対象、ARPsが投与される経路、発現産物の免疫原性、所望されるエフェクター免疫応答の類型、そして所望される保護の程度に左右される。投与されるために必要とされる活性成分の正確な量は、医師、獣医師、又は他の保健従事者の判断に依存し、各個人について固有であるが、そうした決定はそうした従事者の技術の範囲内である。
【0081】
ワクチン又は別の免疫原性組成物は、1回投与又は複数回投与スケジュールにおいて与えられうる。複数回投与スケジュールは、ワクチンの初回治療単位が1〜10又はそれ以上の分けられた投与、続いて免疫応答を維持及び/又は増強するために必要とされる時間期間、例えば毎週又は2回目の投与として1〜4ヶ月目で投与される投与、そして所望されるなら、さらに数ヶ月/数年後の次の投与(単数又は複数)を含みうるスケジュールである。
【0082】
本出願中に引用される全ての参考文献は、本開示と矛盾がない程度に本明細書中に援用される。
【0083】
以下の実施例は、例示の目的に提供され、そして本明細書中に特許請求される発明の範囲を制限することを意図しない。例示的な物品及び方法のいずれの変動であって、当業者が思いつくものは、本発明の範囲内に含まれる。
【実施例】
【0084】
実施例1 ARP収量に影響するRNAパラメーター
A. 種々の細胞型におけるキャップなしヘルパーRNAの使用
293T細胞
293T細胞を10%FBSを伴うDMEM培地中で成長させた。電気穿孔を、PBS中の4.8×107細胞と以下の3種のRNA(各30μg)(RNeasy Midi KIT#75142、Qiagen Corp., Valencia, CAを使って精製済み):VEEキャプシドヘルパー、VEE糖タンパク質ヘルパー、及びVEE・GFPレプリコンとを使用してBTX方形波電気穿孔器(Model 830; Genetronics, Inc., San Diego, CA)で、0.4cmのギャップ・キュベット中で行った。ヘルパーRNAを、転写反応液中のキャップ付き-Gヌクレオチドを加えて(キャップ有り)、又は加えることなく(キャップなし)in vitro転写により調製した。キャップアナログを含む反応において、rGTPの濃度は、比例して減少した。450μ秒のパルス長での360Vでの4回のパルスが使用された。電気穿孔の後、細胞を25ml培地を含むT75フラスコ中へと蒔いた。ARPsを該培地から収集し、そしてベロ細胞上でタイターを調べた。
【0085】
CHO細胞
CHO細胞を10%FBSを伴うF-12培地上で成長させた。電気穿孔を、PBS中の1.2×107細胞及び各々30μgの以下の3種のRNA:VEEキャプシド・ヘルパー、VEE糖タンパク質ヘルパー、及びVEE・GFPレプリコンを使用して、BTX方形波電気穿孔装置上で行った。450μ秒のパルス長での580Vでの4回のパルスが使用された。電気穿孔の後、細胞を25ml培地を含むT75フラスコ中へと蒔いた。ARPsを該培地から収集し、そしてベロ細胞上でタイターを調べた。
【0086】
DF-1(ニワトリ)
DF-1細胞を10%FBSを伴うDMEM培地上で成長させた。条件はCHO細胞について記載したとおりである。
【0087】
ベロ
ベロ細胞を10%FBSを伴うEMEM培地中で成長させた。条件は、CHO細胞について記載したとおりである。
結果を図1に載せ、指示された細胞型においてキャップなし対キャップありヘルパーRNAを使用したときに得られたIFU/mlを示した。
【0088】
B. ARP収量に関するRNA精製とキャップの効果
HIV-gagをコードするレプリコン・ベクターRNA及びVEEキャプシド及び糖タンパク質遺伝子をコードする2個のヘルパーRNAを使用する実験において、in vitro転写反応を、プロメガ・コーポレーションから市販されるキット(Madison, WI; カタログ番号P1300)を使用して行った。調製されたキャップ有りヘルパー及びレプリコンRNAに対して、キャップ付き-Gを転写反応に加え、そしてrGTP濃度を、別のrNTPに比較して1.4mM分低減した。キャップなしヘルパーRNAを調製するために、4個のrNTPを等モル濃度で使用した。RNA精製は、プロメガSVトータルRNAアイソレーション・システム(Promega SV total RNA isolation System)(Promega Corp., Madison, WI;カタログ番号Z3100、シリカ・レジン)を使用し、そしてRNAをRNAse-フリー水中に溶出することにより達成した。例えばサイズ排除クロマトグラフィーなどのRNA精製の別の方法もまた適切であるが、キーパラメーターは、かなり純粋で、濃縮されたRNA溶液、つまり少なくとも0.5μg/μl、好ましくは少なくとも2〜3μg/μlを作り出す方法を使用することである。分光光度計を使用して精製RNAの濃度を測定し、一方、既知のRNA量の一定量とともに1μlの量をホルムアルデヒドゲル中で泳動することにより、未精製RNAの濃度を見積もった。
【0089】
キャップあり又はキャップなしの各ヘルパーRNAの等量、5又は30μgを、30μgのレプリコン・ベクターRNAをコードするHIV-gagとともに、0.4cmギャップ電気泳動キュベットを使用して(580V、25μFで4回のパルス)、800μlの終体積中の1.2×107VERO細胞中へ電気穿孔した。電気穿孔の後に、細胞を25mlHyQMEM+10%FBSで満たしたT75フラスコ中へ蒔き、そして一晩37℃かつ5%CO2でインキュベーションした。ARPsを24時間で収集し、ろ過し、そしてベロ細胞上でタイターを調べた。結果を表1に載せる。
【0090】
【表1】

【0091】
細胞への電気穿孔の前にRNA(ヘルパー及びベクター・レプリコンRNAの両方とも)を精製することにより、ARPsの収量が劇的に改良される(行1及び2と行3及び4とを、並びに行5及び6と行7及び8とを比較のこと)。さらに、精製RNAを使用すると、ヘルパーRNAのキャップ付加は、高いRNA濃度では必要とれなかった(行1と行2、行3と行4、行5と行6、及び行7と8を比較のこと)。
【0092】
PSMA(前立腺癌抗原)をコードする配列が挿入されるアルファウイルス・レプリコン・ベクターとともにキャップなしヘルパーRNAを使用して、同様の結果を得た。
【0093】
実施例2. RNA精製におけるキー・パラメーター
レプリコン及びヘルパーRNAを、実施例1に記載するように調製した。電気穿孔では、30μgの各レプリコン及びヘルパーRNAを、RNaseフリーのマイクロ遠心チューブ中で混合した。コントロールのチューブは、精製済み又は未精製のRNAのみを有し、一方残りのチューブは、5×転写反応緩衝液[400mM・HEPES-KOH(pH7.5);120mM・MgCl2;10mMスペルミジン;200mM・DTT]、NotI制限酵素、T7酵素混合液(T7・RNA依存性RNAポリメラーゼ、RNase阻害剤、ピロホスファターゼ)、またはこれら3種の組み合わせをさらに入れられた。各転写反応要素の終濃度は、未精製RNAの等体積における終濃度とおおよそ同じであった。1.2×107ベロ細胞を各マイクロ遠心チューブに加え、そして混合液を0.4cmギャップ電気穿孔キュベット中に移した。細胞を580Vかつ25μFde4回パルスをかけ、そして室温で10分間回復させた。電気穿孔された細胞を10%ウシ胎児血清及び抗体を伴う25ml・HyQMEMを含むT75フラスコ中に蒔いた。電気穿孔効率の分析のため、一定量を96ウェル・プレート中に蒔いた。
【0094】
96ウェルプレート中のベロ細胞を、MeOHで固定し、そして免疫蛍光アッセイ(IFA)によりレプリコン又はヘルパータンパク質の発現について分析した。精製済RNAからの効率は、三種のRNA全てについて90%超であったが、一方、未精製RNAコントロールからの効率は50%以下であった。精製RNAにNotI又はT7酵素混合液のみを加えることは、電気穿孔効率にほとんど影響を与えないか、全く影響を与えない。転写緩衝液のみ又は他の転写反応構成要素とあわせて添加することにより、電気穿孔効率は10%以下に低減された。
【0095】
培養培地を、T7フラスコから回収し、そしてろ過して細胞片を取り除いた。各電気穿孔からのARP収量を、96ウェル・プレート中のベロ細胞上でタイターを調べることにより測定した。表2に示されるように、未精製RNAを使用した際のARP収量は、精製RNAを使用する際の収量と比較して2ログ分減少した。NotI又はT7酵素混合液は、精製RNAのみに加えられるとき、ARP収量に有意な影響を与えなかった。しかしながら、いずれかの組み合わせにおけるT7転写反応緩衝液を加えることにより、精製RNAと比較してARP収量の4ログ以上の減少をもたらした。
【0096】
これらの結果により、転写反応緩衝液の1以上の構成要素が、電気穿孔効率にそして最終的にARP収量にマイナスの影響を持ちうるということが示された。T7転写緩衝液が、精製RNAに加えられるとき、T7転写緩衝液を含む未精製RNAに比較したARP収量のかなりの低下により、効果が定量的であるということが示された。何故なら、緩衝液構成要素の濃度が、精製RNAサンプル中より高いからである。
【0097】
【表2】

【0098】
実施例3 ARP収量に関する電気穿孔条件の効果
電気穿孔するためのある細胞系列、例えば293T及びCEF細胞を電気穿孔する最初の実験において、電気穿孔混合液中の細胞濃度を増加し、一方入力核酸を同じ量に維持することにより、高いARP収量が得られるということが観測された。
A. 実験1
30μgレプリコンRNA(癌腫瘍抗原をコードする)、26.8μgVEEキャプシドRNAヘルパー、及び55.6μgVEE糖タンパク質RNAヘルパーを伴うPBS中で、0.4cmギャップ・キュベット中に、ベロ細胞を指示された濃度に再懸濁した。電気穿孔に続いて、1.4×105細胞/cm2の成長領域の密度で、1cm2あたり約0.3mlの成長培地で、必要に応じ細胞を1以上のフラスコ中に蒔いた。電気穿孔後24時間において、培地を各フラスコから回収し、そして細胞単層を約10mlの無血清培地で洗浄した。この洗浄溶液を各フラスコから回収された培地中に加えた。各フラスコにおいて、10分間0.5M・NaClを使用することにより塩洗浄を行った。塩洗浄液を回収し、そして別々に分析した。指示された場合、2回目の塩洗浄を行い、そして別々に分析した。ARP収量を一回のキュベット電気穿孔から得られた粒子の全数として、表3中に載せた。
【0099】
【表3】

【0100】
こうして、細胞濃度の5倍の増加は、電気穿孔において使用されるRNA量を増やすことなくARP収量の10倍近い増加をもたらす。
【0101】
B. ARPsのシングルDNAヘルパーでのパッケージング
ベロ細胞を指示された細胞密度でInVitrus無血清培地中で懸濁した。30μgのVEE・HIV−gagレプリコンRNA、及びCMVプロモーターの下でVEE構造タンパク質の全てを発現する100〜150μgのVEE・DNAヘルパーを使用して、細胞を電気穿孔した。DNAヘルパーを精製し、そして電気穿孔での使用前に少なくとも5mg/mlに濃縮した。
【0102】
電気穿孔後、細胞を室温で10分間インキュベーションし、そして次に細胞を4mlオプティプロ(OptiPro)へと移し、次にそれを各々100mlのオプティプロを含む2個のT300フラスコへと分けた。該細胞を37℃かつ5%CO2で一晩インキュベーションした。まず細胞から培地を吸引し、そして培地を0.2ミクロンのフィルターを通して滅菌容器に移すことにより、ARPsを収集した。フラスコ中の細胞を、20mM・NaPi中の10mlの1M・NaCl溶液、pH7.2〜7.4で室温で5分間洗浄した。塩洗浄液を使用されたフィルターへと移し、そして室温で5分間インキュベーションした。この塩洗浄液をフィルターに通して、きれいかつ培地から分離された容器に入れた。培地及び塩洗浄液を保存し、そして別々にタイターを調べた。表4において報告されるように全IFUは、塩洗浄液及び培地の合計を表し、一般的に、培地は、塩洗浄液に比較して取るに足らない数のARPを含んだ。同様の結果は、0.5M・NaClの塩洗浄液を使用することにより得られた。
【0103】
C. 実験3
コーニング・セル・キューブ(Corning Cell Cube)(Corning, Inc., Acton, MA)を使用して、大量の細胞を育てた。1cmのギャップ電気穿孔キュベットにおいて5×108ベロ細胞を使用して、一回の電気穿孔を行った。バイオ-ラド電気穿孔器(Gene Pulser II, BioRad Laboratories, Inc., Hercules, CA; カタログ番号165-2105)上で1150V、25μFで4回のパルスを使用して、各150μgのVEEレプリコン(HIV-gapをコードする)、VEEキャプシド・ヘルパー、及びVEE糖タンパク質ヘルパーを細胞中へと電気穿孔した。電気穿孔後、細胞を100mlのオプティプロSFM(Invitrogen, Carlsbad, CA; カタログ番号12309019)を含む5T-300フラスコ中へと蒔いた。電気穿孔後24時間に、培地を核フラスコから回収し、そしてタイターを調べるために混合した。各フラスコにおいて20mlの1.0M・NaClを使用して塩洗浄を各フラスコにおいて行い、そして塩洗浄液をタイターを調べるために混合した。培地中のARPの全収量は1×108i.u.であり;塩洗浄液中のARPの全収量は、2.2×1011i.u.であった。
【0104】
実施例4.電気穿孔後の培養パラメーター
A. 電気穿孔後の成長培地
ARP生成の以前のレポートにおいて、電気穿孔後に10%FBSを含む培地中に細胞を蒔いた。ARP収量に関する血清の効果を試験するため、種々の濃度の血清を含む異なる培地中に細胞を蒔いた。電気穿孔後の最適な培地は、血清の使用を必要とせず、かつ低タンパク質濃度を有する。低濃度血清を有する培地並びに3種の無血清培地は、高い細胞密度における電気穿孔での使用を試験された。オプティプロ無血清培地(Gibco Cell Culture/Invitrogen, San Diego, CA); VP-SFM, VP無血清培地(Gibco Cell Culture/Invitrogen, San Diego, CA); Ex-Cell 505(JRH Biosciences, Lenexa, KS); 及びInVitrus化学的に規定された細胞培養培地(InVitrus chemically defined cell culture medium)(Cell Culture Technologies GmbH, Zurich, CH; カタログ番号IVT)。これらの培地の全てはpH7.0〜7.4に緩衝されたpHを有する。ベロ細胞をヘルパー及びレプリコンRNAで電気穿孔した。電気穿孔混合液を異なる培地を含む8個のT−75フラスコに分配した。細胞を37℃で18〜24時間培養した。ARP収量の分析により、EMEM中の血清レベルが、ARP収量の有意な低下をもたらさずに10%から1%へと減少されうるということが明らかにされた。また、オプティプロ培地は、EMEM+10%FBSと同等のARP収量を与えた。オプティプロは、ヒト及び/又は動物タンパク質を含まず、いくつかの異なるARPsについて、EMEM+10%FBSを使用して得られる収量と同等のARP収量を与える。電気穿孔後の成長及びARP生成に有用である無血清培地は、いくつかの市販の培地を含む。
【0105】
B. 電気穿孔後の成長培地pHの効果
ARP収量に関する電気穿孔後の培地のpHの効果を試験した。ベロ細胞をペトリ皿電極装置中で電気穿孔し、そして一定分量を関心のpHに調節された完全成長培地中に蒔かれた。結果を図4に示した。
【0106】
C. 電気穿孔後の細胞成長のためのホロー・ファイバー・カートリッジ(Hollow Fiber
Cartridge)
電気穿孔された細胞は、ポリスルホン・ファイバー、例えばファイバーセルHFカートリッジ(Fibercell Systems, Inc.; Frederick, MO;カタログ番号:4300-C2011)に素早く接着することが発見された。電気穿孔された細胞をホローファイバーに配置することにより、ホロー・ファイバーにおける細胞により生成されるARPsを回収する利点を与える。ARPsが溶出される終体積は、最低40ml(109細胞まで保持することができる小さいカートリッジの使用)〜100ml(5×1010細胞まで保持することができる大きなカートリッジの使用)でありうる。
【0107】
【表4】

【0108】
実施例5 ARP収量に関するヘルパーRNA濃度の効果
1×108ベロ細胞を使用して、0.4cmギャップ・キュベット中で電気穿孔を行った。各電気穿孔は、各30μgのHIV-gag・VEEレプリコンRNA及びVEE糖タンパク質ヘルパーを含んだ。VEEキャプシド・ヘルパーの濃度は、指示されるように変化させた。以下の条件:580V、25μFで4回のパルス(パルスの長さ:約0.8ms)を使用してバイオ-ラド装置上で電気穿孔を行った。指示したように、細胞をT175フラスコ中の50ml・EMEM+FBS又はオプティプロに蒔いた。電気穿孔後24時間において、各フラスコからの培地を収集し、そしてろ過した。5mlの1M・NaClを各フラスコに加え、そして接着細胞と5分間インキュベーションさせた。塩洗浄溶液を次に取り出し、そして以前に回収された培地に使用されたのと同じフィルターを通してろ過された。
【0109】
【表5】

【0110】
実施例6 DNAヘルパー及び電気穿孔条件
典型的に、RNAヘルパーに使用される量及び条件に比較して、多くのDNA及びいくらか異なる電気穿孔条件は、DNAヘルパーをベロ細胞中へ効率的に電気穿孔をするために必要とされる。例えば、DNAヘルパーは、250V、950μF又は250V800μFで2〜3回のパルス(30m秒)を使用して電気穿孔される一方、RNAヘルパーは、580V25μF(4回のパルス)を使用して電気穿孔される。
【0111】
RNAと同様に、DNAヘルパー(又はヘルパー(複数))は、電気穿孔前に望ましくは精製される。1×108ベロ細胞及び全てのVEE構造タンパク質をコードするシングルDNAヘルパーを含む0.4cmギャップ電気穿孔キュベット中において、異なる2個の電気穿孔装置を使用して電気穿孔を行った。第一機械は、指数関数的に減少する初期電圧パルスを提供する。100又は150μgのDNA(少なくとも5mg/mlの濃度での精製された溶液由来)を使用し、有用な条件のセットは、250V、950μFで一回のパルスであり、これは約20〜30μ秒のパルスを供給した。電気容量は、例えば800μFへと低減されうるし、そして250Vでの2〜3回のパルスは、おおよそ同じARP収量を提供した。方形波の形態の電圧を供給する第二機械上では、300Vでの20〜50m秒のパルスが、第一機械と同様の結果を与える。この方法は、パルスの長さ、形、電圧、電気容量、及び数を変化することにより、全ての細胞型について最適化されうる。ベロ細胞は、典型的に400V以上の25m秒のパルスを生き残ることができない。これらの条件は、ベクター・レプリコンを導入するために必要な条件より強い条件であるので、DNAヘルパーを使用して調製された粒子は、DNAについて最適化された条件で電気穿孔され、そしてベクターレプリコンRNAは、これらの条件において効率的に細胞に入る。
【0112】
0.8ml中の108細胞は、30μgのVEE・HIV-gagレプリコンRNAとCMVプロモーターの制御調節下でVEE構造タンパク質の全てを発現する150μgのVEE・DNAヘルパーを使用して電気穿孔された。電気穿孔後、細胞を取り扱い、そしてARPsを回収し、そして上で記載されたようにタイターを調べ、そして結果を以下の表に示した。
【0113】
【表6】

【0114】
データーが上に載せられる実験において、DNAヘルパー調製品の不十分な純度は、比較的低い総収量の原因となると信じられているが、これらのデーターは、電気穿孔パラメーターの相対的な効果を記録するということが留意される。
【0115】
実施例7 ARP生成のための細胞の同期化
電気穿孔効率に関する細胞周期G2/M期へ細胞を同期化する効果が試験された。細胞を植え付けた2時間後に、DMSO中の1μg/mlのアフィジコリン(Sigma Chemical Co., St. Louis MO)で20時間処理し、4時間回復させ、そして電気穿孔用に収集した(Golzio et al., (2002) Biochem. Biophys. Acta 1563:23-28)。(レプリコンRNAと共に)ヘルパーDNA電気穿孔を本明細書中に記載されるように行った。処理過程を通して、細胞を成長及び細胞形態学について観察した。細胞の各群において、DMSO処理のコントロールを含むフラスコは、アフィジコリン/DMSO処理フラスコと共に行われた。試験又はコントロール・フラスコにおける処理の間、細胞の一般的な健康に関して、マイナスの効果は無かった。同期化プロトコルを開始する前の2時間のインキュベーションのうちにコンフルエントな状態を得ることは有利であるということが測定された。アフィジコリン処理の開始前に、90〜100%で細胞を敷き詰めることが最良である。何故なら更なる細胞分裂は、この処理により妨げられるからである。ベロ細胞を使用するとき、4.0×105細胞/cm2の密度は高すぎるということが分かり;細胞密度1.1×104細胞/cm2は、90%の密集度を二時間のうちにもたらす。
【0116】
実施例8 前洗浄とARP収量
電気穿孔された細胞によりARPが生成されたのち、細胞を細胞洗浄溶液で過度に洗浄して、ARPsを収集する前に余分な物質を取り除いた。細胞洗浄液の選択は、この前洗浄ステップの間に放出されるARPsの数に影響する。
【0117】
1×108ベロ細胞並びに各30μgづつのVEE・HIV-gagレプリコンRNA、VEEキャプシド・ヘルパーRNA、及びVEE糖タンパク質ヘルパーRNAを使用して、1回の電気穿孔を、0.4cmギャップ・キュベット中で行った。細胞を8個のT-75フラスコに等しく蒔き、各々のフラスコは、25ml・オプティプロ培地を含んだ。24時間後、培地を取り除き、細胞単層を6mlの指示された細胞洗浄溶液で洗浄し、そして細胞を最終的に6mlの(リン酸でpH7.2に緩衝化された)1M・NaClで洗浄した。培地、細胞洗浄液、塩洗浄液を、VERO細胞上でタイターを調べることにより、ARP収量について別々に分析した。結果は、図4において表される。
【0118】
実施例9 塩洗浄パラメーター
A. 塩組成
5×108ベロ細胞、150μgづつのHIV-gag・VEEレプリコンRNA、VEEキャプシド・ヘルパーRNA、及びVEE糖タンパク質ヘルパーRNAを使用して、10mmギャップ・キュベット中で電気穿孔を行った。1150V、25μFで4回のパルスを使用して電気穿孔を行った。電気穿孔された細胞を40個のT-75フラスコに均等に蒔いた。1のフラスコを16時間で収集し、新たな培地で再び栄養を与え、そして電気穿孔後24時間で収集した。他のフラスコを24時間で収集した。培地を各フラスコから取り除き、そして5mlの指示された塩溶液を各フラスコに加え、そして5分間インキュベーションした。塩洗浄溶液を次に取り出し、そしてタイターを調べた。これらの異なる洗浄溶液を使用して得られた結果を図5に示した。細胞から成長培地へと放出されたARPsの量(タイターにより計測されるとき)は、pH7.0〜8.0の範囲内で穏やかに影響をうけた(図3を参照のこと)。
【0119】
B. 放出培地中の塩濃度
【表7】

【0120】
実施例10. ARP精製
ARPは、種々のレジンを使用してアフィニティークロマトグラフィーにより精製されうる。一般的に、溶出条件の範囲は、選んだレジンに左右され、ARPを約6以下のpHにかけないように気をつけながら使用されうる。レプリコンRNAによりコードされる抗原は、通常ARPs中に含まれ;該抗原の性質は、精製の間のARPsの行動に影響しうるということが知られている。当業者は、そうした影響の認識の仕方、そしてそれによるARP精製方法の改変の仕方を知っている。
【0121】
A. ヘパリン・アフィニティー・クロマトグラフィー
塩洗浄溶液中のARPを、5mMリン酸ナトリウム、pH7.4で、塩化ナトリウムの含有量が0.12M以下になるまで希釈した。溶液を次に、ヘパリン・セファロース・ファスト・フロー・レジン(Amersham, Pharmacia Biotech, Inc, Piscataway, NJ; カタログ番号17-0998-01)又はヘパリン・ハイパーD・M(Biosepra, Mariboro, MA)レジンを含むカラム上に、線速度100cm/hr以下でロードした。例えば、VEE3014ARPsは、約0.3M、pH7.4の塩化ナトリウム濃度で溶出した。VEE3014ARPsを回収し、そして直接希釈又はダイアフィルトレーションにより処方した。該方法により精製されるARPの典型的収量は、70%である。ステップ又は直線的塩勾配は、ARPsを溶出するために使用されうる。
【0122】
血清及びベロ細胞からの多くの汚染は、ヘパリン・クロマトグラフィーステップにより低減され;そうした汚染の多くはレジンに結合しない。
【0123】
B. 硫酸セルフィン(Cellufine Sulfate)アフィニティー・クロマトグラフィー
塩洗浄溶液中のARPsを、5mMリン酸ナトリウム、pH7.4で、塩化ナトリウム含有量が0.25M以下になるまで希釈した。この溶液を次に、塩化ナトリウム含有量増加勾配における硫酸セルフィン・レジン(Millipore)を含むカラム中へとロードした。pH7.4、約0.7M塩化ナトリウム濃度で、ARPsは溶出した。ARPsを回収し、そして直接希釈又はダイアフィルトレーションにより処方した。この方法により精製されるARPsの典型的な収量は、85%である。
【0124】
C. 疎水性相互作用クロマトグラフィー
塩洗浄溶液中のARPsを、5M・NaCl/20mMリン酸ナトリウムpH7.4で、終NaCl濃度3Mまで希釈する。ARPsを、線速度100cm/hrでトヨピール・フェニル(Toyopearl phenyl 650-Mレジンを含むカラム上にロードし、そして3M〜0M塩化ナトリウムの線勾配で溶出する。この方法によるARPs回収率は、約77%である。
【0125】
D. アニオン交換クロマトグラフィー
ARPsを直接、又は適切な希釈の後に、アニオン交換レジン、例えばトヨピール・スーパーQ(Toyopearl super Q)またはアマシャムQセファロース(Amersham Q Sepharose)、又はアニオン交換膜、例えばムスタングQ(Mustang Q)(Pall Trincor, Exton, PA)上にロードした。Qクロマトグラフィー物質は、該物質を通過する物質上の酸性基に結合する4級アミンに頼る。ロード条件は、ARPsの多くの型への結合又は流出をもたらすように操作される。ここで結合性質は、アルファウイルス・レプリコン・ベクターによりコードされ、そしてARPsが生成される細胞内で発現される関心のタンパク質の発現により影響される。特定の場合では、アニオン交換レジンは、一回の生成ステップで十分であり、血清タンパク質、宿主細胞タンパク質、及びDNAの低減をもたらす。規定のレジン領域機能上のARP結合性質は、選ばれたレジン、ARP種、及びARP標本を含む溶液のpH及び塩濃度の関数である。
【0126】
例えば、マルバーグ・ムソーク(Marburg Musoke)タンパク質(糖タンパク質)が、関心の抗原をコードし、そしてARPコート・タンパク質がVEE3014コートタンパク質である場合、ARPsは、塩洗浄方法を使用して収集される。塩洗浄物質(ARP標本)を、ムスタングQ膜上に直接ロードした。塩洗浄物質からのタンパク質は、膜を通過し、そして膜を0.5M・NaCl、10mMリン酸ナトリウムで洗浄して全てのDNAを溶出した。次に段階的勾配を使用して、1.5M・NaCl、10mMリン酸ナトリウムでARPsを溶出した。
【0127】
実施例11 異なるキャプシド・ヘルパーの効果
アルファバックス(AlphaVax)WCBp146細胞を、PBS中に1.6×108細胞/mlへと再懸濁した。電気穿孔1〜4用に、レプリコンRNA(ヘルペスウイルスgDコード配列を有する)をG-キャップ付加し、そしてサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。電気穿孔1〜3用に、ヘルパーRNAのキャップを外し、そしてLiCl沈殿により精製した。電気穿孔4用に、ヘルパーRNAのキャップを外し、そしてサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。700μlの細胞(1.1×108細胞)を、RNAと混合し、そして0.4cmキュベット中で電気穿孔した(BioRad電気穿孔器、580V、25μFd、4回のパルス)。細胞を、各々100mlオプティプロ培地を含む2個のT300cm2フラスコ中に蒔いた。電気穿孔後約18時間で、ARPsを30mlの0.5M・NaCl/10mM・NaPO4中において収集し、そして0.2μmフィルターを通してろ過した。
【0128】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルファウイルス・レプリコン粒子(ARPs)の製造方法であって、該方法が以下のステップ:
(a) アルファウイルス・レプリコン核酸を宿主細胞中に導入し、該レプリコン核酸は少なくともウイルス・パッケージング・シグナル及び該アルファウイルス・レプリコン核酸中で発現できる少なくとも1の異種性コード配列を含み、ここで改変宿主細胞を作り出すために該宿主細胞が少なくとも1のヘルパー機能を含み;
(b) 上記少なくとも1のヘルパー機能の発現を許容し、上記アルファウイルス・レプリコン核酸の複製及び該アルファウイルス・レプリコン核酸のパッケージングを許容する条件下で上記改変宿主細胞を培養して、ARPsを形成し;
(c) ステップ(b)の後に上記改変宿主細胞を、0.2M〜5Mのイオン強度を有する水溶液と接触して、上記ARPsを該水溶液中に放出させて、ARPを含む溶液を作り出し;
(d) ステップ(c)のARPを含む溶液からARPsを回収するステップ
を含む前記方法。
【請求項2】
1mlあたり5×107〜5×108のステップ(a)に記載の宿主細胞における前記少なくとも1のヘルパー機能が、該宿主細胞のゲノム中に安定して組み込まれた核酸配列によりコードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記宿主細胞中の前記少なくとも1のヘルパー機能が、前記アルファウイルス・レプリコン核酸を結合できるキャプシドタンパク質をコードする少なくとも1のヘルパー核酸、及び少なくとも1のアルファウイルス糖タンパク質に基いて導入され、ここで該アルファウイルス糖タンパク質が、該アルファウイルス・レプリコン核酸及び該キャプシドタンパク質と会合し、ここで該少なくとも1のヘルパー核酸分子が該アルファウイルス・レプリコン核酸と共に該宿主細胞中へと導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1のヘルパー機能が、少なくとも2個のヘルパー核酸分子によりコードされ、ここで該2個のヘルパー核酸分子の各々が、少なくとも1のウイルス・ヘルパー機能をコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン強度が0.5M〜5Mである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1のヘルパー機能が、DNA分子中にコードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アルファウイルス・レプリコン核酸が、電気穿孔により前記宿主細胞中に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記宿主細胞が、1mlあたり5×107〜5×108の濃度で電気穿孔混合液中に存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項9】
前記宿主細胞が、1mlあたり5×107〜1.5×108の濃度で電気穿孔混合液中に存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載のステップ(c)の前に、細胞洗浄ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アルファウイルスが、ベネズエラ・ウマ脳炎ウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞洗浄溶液が塩を含まず、かつデオキシリボヌクレアーゼをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ヘルパー核酸が、キャップなしRNA分子である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項14】
アルファウイルス・レプリコンRNA及び第一ヘルパーRNA分子及び第二RNAヘルパー分子は、1:0.3:0:0.3〜1:20:20の比で電気穿孔混合液に存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記比が、1:0.5:0.5である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記比が、1:5:5である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
アルファウイルス・レプリコン粒子の製造方法であって、アルファウイルス・レプリコン・ベクター及び1以上のヘルパー核酸分子を、電気穿孔を介してアルファウイルス-許容状態細胞へと導入することを含み、ここで、電気穿孔の間の培養培地中の該アルファウイルス許容状態細胞の濃度が、5×107〜5×108細胞/mlであり、かつ電気穿孔前に該細胞に加えられた該アルファウイルスRNAレプリコン・ベクターの濃度が、約35μg/mlである、前記方法。
【請求項18】
前記電気穿孔が、電気穿孔チャンバー内で行われ、ここで電極間のギャップが0.4〜1.0cmである、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記ヘルパー機能が、全てのアルファウイルス構造タンパク質をコードするシングルDNAヘルパー分子内にコードされる、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記DNAヘルパー分子の濃度が、少なくとも100μg/mlである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記アルファウイルス-許容状態細胞が、ベロ細胞である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(d)の後に、イオン交換、ヘパリン・アフィニティー・クロマトグラフィー、アフィニティー又は疎水性クロマトグラフィーステップが行われる、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記アルファウイルスが、弱毒化アルファウイルスである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記アルファウイルスが、ベネズエラ・ウマ脳炎ウイルス(VEE)である、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記塩洗浄ステップにおいて前記塩が、NaCl、KCl、MgCl2、CaCl2、NH4Cl、(NH4)2SO4、酢酸アンモニウム、及び炭酸水素アンモニウムである、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
アルファウイルス・レプリコン粒子(ARPs)の製造方法であって、該方法が以下のステップ:
(a) アルファウイルス・レプリコン核酸を宿主細胞中へ導入し、該レプリコン核酸が、少なくともウイルス・パッケージング・シグナルと該アルファウイルス・レプリコン核酸中に発現する少なくとも1の異種性コード配列を含み、ここで改変宿主細胞を作り出すために該宿主細胞が少なくとも1のヘルパー機能を含み、ここで上記レプリコン核酸が、1mlあたり5×107〜5×108細胞濃度で、宿主細胞を電気穿孔することにより該宿主細胞中に導入され;
(b) 上記少なくとも1のヘルパー機能の発現を許容し、上記アルファウイルス・レプリコン核酸の複製及び該アルファウイルス・レプリコン核酸のパッケージングを許容する条件下で上記改変宿主細胞を培養して、ARPsを形成し;
(c) ステップ(b)の後に上記改変宿主細胞を、0.2M〜5Mのイオン強度を有する水溶液と接触して、上記ARPsを該水溶液中に放出させて、ARPを含む溶液を作り出し;
(d) ステップ(c)のARPを含む溶液からARPsを回収するステップ
を含む前記方法。
【請求項27】
前記宿主細胞が、1mlあたり5×107〜1.5×108の濃度で、電気穿孔混合液中に存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項28】
前記アルファウイルスが、ベネズエラ・ウマ脳炎ウイルス(VEE)である、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記ヘルパー核酸が、キャップなしRNA分子である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法により製造されるアルファウイルス・レプリコン粒子調製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−210224(P2012−210224A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−152561(P2012−152561)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【分割の表示】特願2004−560855(P2004−560855)の分割
【原出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【出願人】(505222750)アルファバックス,インコーポレイティド (4)
【Fターム(参考)】