説明

アルファ5ベータ1アンタゴニストを含むコンビナトリアル療法

本発明は疾患における異常な血管新生を抑制することを包含する、癌の治療及び血管新生及び/又は血管透過性の抑制のためのVEGFアンタゴニスト及びアルファ5ベータ1アンタゴニストの使用に関する。本発明は又、血管新生および血管透過性を促進するためのVEGFアゴニスト及びアルファ5ベータ1アゴニストの使用に関する。本発明は又新しい抗アルファ5ベータ1抗体、それらを含む組成物及びキット、及びそれらを製造および使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は疾患における異常な血管新生を抑制することを包含する、癌の治療及び血管新生及び/又は抑制された血管透過性の抑制のためのVEGFアンタゴニスト及びアルファ5ベータ1アンタゴニストの使用に関する。本発明は又、血管新生および血管透過性を促進するためのVEGFRアゴニスト及びアルファ5ベータ1アゴニストの使用に関する。本発明は又抗アルファ5ベータ1抗体、それらを含む組成物及びキット、及びそれらを製造および使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
病理学的及び非病理学的な血管新生におけるVEGF−Aの重要な役割は、十分解明されている。インビボモデルにおけるVEGFの投与は強力な血管新生応答を誘導している(非特許文献1;非特許文献2)。単一のVEGF−A対立遺伝子の損失はマウスにおいて胚性致死を生じさせている(非特許文献3;非特許文献4)。VEGFは又、血管漏出性を誘導するその能力により血管透過性因子としても知られている(非特許文献5;非特許文献6)。即ち、VEGF−Aは発生、生殖及び骨の血管新生についても、他の非病理学的血管新生に加えて関与している。
【0003】
VEGF−Aは2種の受容体チロシンキナーゼ(RTK)、VEGFR−1(Flt−1)及びVEGFR−2(KDR、Flk−1)に結合する。VEGFR−2は一般的にVEGF−Aの有糸分裂誘発、血管新生及び透過性増強作用の主要なメディエーターであると考えられている。2004年2月において、米国の食品医薬品局(FDA)はベバシツマブ(bevacizumab)、即ちヒト化抗VEGF(血管内皮成長因子)−Aモノクローナル抗体を、5−フルオロウラシル(FU)系の化学療法レジメンとの組み合わせにおいて転移性結腸直腸癌の治療に関して認可している。その後、FDAはペガプチニブ(pegaptinib)、即ちVEGF−Aの165アミノ酸アイソフォームをブロックするアプタマーを、加齢関連黄斑変性(AMD)の湿性(血管新生)形態の治療に関して認可している。
【非特許文献1】Plouet,J等、EMBO J.(1989)8:3801−3808
【非特許文献2】Leung,D.W.等、Science(1989)246:1306−1309
【非特許文献3】Carmeliet,P.等、Nature(1996)380:435−439
【非特許文献4】Ferrara,N等、Nature(1996)380:439−442
【非特許文献5】Senger,D.R.等、Science(1995)219:983−985
【非特許文献6】Dvorak,H.F.等、Am.J.Pathol.(1995)146:1029−1039
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの進歩にもかかわらず、VEGFアンタゴニストで治療されている多くの患者は最終的にはその疾患の犠牲となっている。その結果、VEGFアンタゴニスト療法に対してもはや応答しないか、または部分的にしか応答しない疾患を治療するための新しい医薬及び治療法の開発が必要である。更に又、癌及び異常な血管新生により悪化、誘発又は作用される疾患を治療するための代替及び/又はより良好な療法の開発が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
本発明は低減された血管新生により利益を被る、異常な血管新生に罹患している、及び/又は新生物形成に罹患している患者を治療する医薬及び方法に関する。1つの実施形態によれば、本発明は治療有効量のVEGFアンタゴニスト及びアルファ5ベータ1アンタゴニストを同時又は逐次的に対象に投与する工程を含む、対象における血管新生及び/又は血管透過性を抑制するための方法を提供する。他の実施形態によれば、本発明は、治療有効量のアルファ5ベータ1アンタゴニストを疾患に罹患した対象に投与する工程を含む、対象がVEGFアンタゴニストを用いた疾患に対する治療には応答性であったが、VEGFアンタゴニストに対して部分的に応答するか、またはもはや応答しない場合の、該対象を治療するための方法を提供する。別の実施形態によれば、本発明は治療有効量のVEGFアンタゴニストを疾患に罹患した対象に投与する工程を含む、疾患がアルファ5ベータ1アンタゴニスト療法に対し、単独又は化学療法との組み合わせにおいて、抵抗性又は難治性となっている場合の、該対象を治療するための方法を提供する。
【0006】
本発明は又、新しい抗アルファ5ベータ1抗体、それを含むキット及び組成物、及びそれらを製造又は使用する方法に関する。1つの実施形態によれば、新しいアルファ5ベータ1抗体は本明細書に記載した7H5抗体又は7H12抗体、又はそのヒト化又はキメラ形態である。別の特定の実施形態によれば、7H5抗体又は7H12抗体、又はそのヒト化又はキメラ形態は、Fab、Fab’、F(ab’)、単鎖Fv(scFv)及びFvフラグメント;ダイアボディー、多重特異性抗体及び線状抗体の形態であることができる。別の実施形態によれば、新しい抗アルファ5ベータ1抗体は別の実体、例えば限定しないが、治療薬又は蛍光染料又は患者中または患者試料中のアルファ5ベータ1を検出するための他のマーカーに結合体化できる。そのような新しいアルファ5ベータ1抗体は種々の治療及び診断の方法において使用できる。例えば、そのような抗アルファ5ベータ1抗体は異常な血管新生、新生物形成、眼の疾患及び自己免疫疾患を治療する場合に使用できる。そのような抗体は、患者中または患者試料中のアルファ5ベータ1蛋白にそのような抗体を接触させること、及び、アルファ5ベータ1蛋白に結合した抗アルファ5ベータ1抗体を定性的又は定量的に測定することにより、患者中または患者試料中のアルファ5ベータ1蛋白を検出するために使用できる。
【0007】
更に別の実施形態によれば、本発明はVEGFアンタゴニスト及びアルファ5ベータ1アンタゴニストを同時又は逐次的に投与する工程を含む、対象における癌を治療する方法を提供する。1つの好ましい実施形態によれば、癌はVEGFアンタゴニスト療法に応答性である。別の実施形態においては、治療有効量のVEGFアンタゴニスト及びアルファ5ベータ1アンタゴニストを同時又は逐次的に投与する工程を含む、加齢関連黄斑変性(AMD)、例えば湿性加齢関連黄斑変性をAMDに罹患した対象において治療する方法を提供する。更に別の実施形態においては、治療有効量のVEGFアンタゴニスト及びアルファ5ベータ1アンタゴニストを同時又は逐次的に投与する工程を含む、対象における自己免疫疾患を治療する方法を提供する。
【0008】
1つの実施形態において、治療すべき対象はまずVEGFアンタゴニストを投与され、そしてその後、アルファ5ベータ1アンタゴニストで治療される。別の実施形態においては、対象はVEGFアンタゴニスト及びアルファ5ベータ1アンタゴニストで同時に治療される。別の実施形態においては、対象はVEGFアンタゴニスト治療に非応答性となるまで対象をVEGFアンタゴニストで治療し、そして次に対象をアルファ5ベータ1アンタゴニストで治療する。1つの特定の実施形態においては、癌が非侵襲性又は初期の段階である場合には対象をVEGFアンタゴニストで治療し、癌が侵襲性である場合にはアルファ5ベータ1アンタゴニストで治療する。別の実施形態においては、アルファ5ベータ1アンタゴニストで治療される対象は、前記疾患に罹患していない対象由来の組織と比較して罹患組織において上昇したアルファ5ベータ1レベルを有する。この場合、方法は更に、VEGFアンタゴニストを用いた治療の後に、対象において、例えば罹患組織において、アルファ5ベータ1を検出する工程を包含できる。1つの実施形態によれば、侵襲性の癌は転移癌である。別の実施形態においては、早期の癌はアジュバント療法(例えば化学療法又は外科的摘出)により治療される癌である。
【0009】
1つの好ましい実施形態においては、対象は異常な血管新生を有する疾患に罹患している。別の実施形態によれば、疾患は癌、免疫疾患又は眼の疾患からなる群より選択される。1つの好ましい実施形態によれば、疾患は固形腫瘍、転移性腫瘍、軟組織腫瘍、眼の新生血管形成を有する疾患、異常な血管新生を有する炎症性疾患、対象への移植後に生じる疾患、及び線維血管組織の異常な増殖を有する疾患からなる群より選択される。別の好ましい実施形態によれば、癌は乳癌(転移性乳癌を包含する)、子宮頚癌、結腸直腸癌(転移性結腸直腸癌を包含する)、肺癌(非小細胞肺癌を包含する)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ性白血病、腎細胞癌、前立腺癌、例えばホルモン難治性前立腺癌、肝癌、頭部頚部癌、メラノーマ、卵巣癌、中皮腫、軟組織癌、消化管間質腫瘍、多形性神経膠芽腫、及び多発性骨髄腫からなる群より選択される。別の好ましい実施形態によれば、疾患は網膜症、加齢誘発性黄斑変性(例えば湿性AMD)、糖尿病性黄斑浮腫、皮膚紅潮、乾癬、炎症性腎疾患、溶血性尿毒症症候群、糖尿病性腎症(増殖性糖尿病性腎症)、関節炎(例えば乾癬性関節炎、変形性関節症、慢性関節リューマチ)、炎症性腸疾患、慢性炎症、慢性網膜剥離、慢性ブドウ膜炎、慢性硝子体炎、角膜移植片拒絶、角膜新生血管形成、角膜移植片新生血管形成、クローン病、近視、眼の血管新生性疾患、パジェット病、類天疱瘡、多発性動脈炎、レーザー後の放射状角膜切開、網膜の新生血管形成、シェーグレン症候群、潰瘍性結腸炎、移植片拒絶、肺の炎症、ネフローゼ症候群、浮腫、悪性疾患に関連する腹水、卒中、血管線維腫、及び血管新生緑内障からなる群より選択される。1つの実施形態において、対象は更に抗腫瘍剤、化学療法剤、及び細胞毒性剤からなる群より選択される治療薬を投与される。
【0010】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、アルファ5ベータ1アンタゴニストで治療されるべき対象は、VEGFアンタゴニスト治療後の回帰に罹患しているか、又はVEGFアンタゴニスト治療に対して難治性となっている。別の実施形態によれば、アルファ5ベータ1アンタゴニストおよびVEGFアンタゴニストで治療されるべき対象は、転移癌に罹患しているか、又はアジュバント療法で以前に治療されている。1つの実施形態において、候補患者は、イリノテカンのような化学療法剤に対して回帰性、難治性又は耐性である。そのような疾患の例は、限定しないが、転移性結腸直腸癌、回帰した転移性結腸直腸癌、転移性乳癌、回帰した転移性乳癌、転移性HER2+乳癌、アジュバント乳癌(adjuvant breast cancer)、アジュバントHER2+乳癌、転移膵臓癌、アジュバント結腸癌、アジュバント非小細胞肺癌、アジュバント直腸癌、アジュバント非小細胞肺癌、転移性非小細胞肺癌、転移性卵巣癌、転移性腎細胞癌、及びアジュバント腎細胞癌を包含する。
【0011】
1つの実施形態によれば、本明細書に記載した疾患に罹患した患者はVEGFアンタゴニストによる疾患の治療の後の維持療法を受けており、その場合、維持療法はアルファ5ベータ1アンタゴニスト単独、または、VEGFアンタゴニストと逐次的又は同時に行われる。
【0012】
1つの好ましい実施形態によれば、VEGFアンタゴニストは抗体、イムノアドヘシン、ペプチボディー、小分子及びストリンジェントな条件下でVEGFをコードする核酸分子にハイブリダイズする核酸(例えばリボザイム、siRNA及びアプタマー)からなる群より選択できる。1つの好ましい実施形態によれば、VEGFアンタゴニストは抗体である。別の実施形態によれば、抗体はモノクローナル抗体である。1つの好ましい実施形態によれば、抗VEGF抗体はAvastin(登録商標)抗体によりヒトVEGFへの結合を競合的に抑制され得る。別の実施形態によれば、抗VEGF抗体はヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体である。1つの特定の実施形態によれば、抗VEGF抗体はAvastin(登録商標)抗体である。別の実施形態によれば抗VEGF抗体はFab、Fab’、F(ab’)、単鎖Fv(scFv)、Fvフラグメント;ダイアボディー及び線状抗体からなる群より選択される。別の実施形態によればVEGFアンタゴニストはVEGF及びアルファ5ベータ1に結合する二重特異性抗体であり、そしてアルファ5ベータ1アンタゴニストである。
【0013】
1つの好ましい実施形態によれば、アルファ5ベータ1アンタゴニストは抗体、イムノアドヘシン、ペプチボディー、小分子及びストリンジェントな条件下でアルファ5ベータ1をコードする核酸分子にハイブリダイズする核酸からなる群より選択される。1つの好ましい実施形態によれば、アルファ5ベータ1抗体は抗体である。別の実施形態によれば、抗体はモノクローナル抗体である。別の実施形態によれば、モノクローナル抗体は,キメラ抗体、例えばM200又はF200として知られている抗ヒトアルファ5ベータ1抗体である。1つの実施形態によれば、抗アルファ5ベータ1抗体は配列番号1のVH配列及び配列番号2のVL配列を含む。別の実施形態によれば、抗アルファ5ベータ1抗体は配列番号3の配列及び配列番号4の配列を含む。別の実施形態によれば、抗アルファ5ベータ1抗体は配列番号4の配列及び配列番号5の配列を含む。1つの好ましい実施形態によれば、抗アルファ5ベータ1抗体は7H5及び7H12抗体によりヒトアルファ5ベータ1への結合を競合的に抑制され得る。1つの好ましい実施形態によれば、抗アルファ5ベータ1抗体はヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体である。1つの特定の実施形態によれば、抗アルファ5ベータ1抗体は7H5抗体、7H12抗体、又はそのキメラ又はヒト化抗体である。別の実施形態によれば、抗アルファ5ベータ1抗体はFab、Fab’、F(ab’)、単鎖Fv(scFv)、Fvフラグメント;ダイアボディー及び線状抗体からなる群より選択される。別の実施形態によればアルファ5ベータ1アンタゴニストはVEGF及びアルファ5ベータ1に結合する二重特異性抗体であり、そしてVEGFアンタゴニストである。更に別の実施形態によれば、抗アルファ5ベータ1アンタゴニストは改変されたエフェクター機能を有する。1つの実施形態によれば抗アルファ5ベータ1抗体を改変することにより抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)または補体依存性細胞毒性(CDC)を低減又は防止する(例えば抗体のFc部分をコードする核酸配列を改変することによる)。更に別の実施形態によれば、抗アルファ5ベータ1抗体はヒトにおけるその半減期を向上させるために改変されている(例えば抗体のFc部分をコードする核酸配列を改変することによる)。
【0014】
1つの実施形態によれば、VEGFアンタゴニスト又はアルファ5ベータ1アンタゴニストは細胞毒性剤又は化学療法剤に結合体化される。別の実施形態によれば、細胞毒性剤は放射性同位体又は毒素である。
【0015】
本発明はVEGFアンタゴニスト、アルファ5ベータ1アンタゴニスト及び製薬上許容しうる担体を含む組成物を提供する。本発明はまたVEGFアンタゴニストで治療された対象においてアルファ5ベータ1を検出するための説明書を含む製造物品を提供する。
【0016】
本発明は又、血管新生及び血管透過性を増進するためのVEGFRアゴニスト及びアルファ5ベータ1アゴニストの使用及びVEGFアゴニスト及びアルファ5ベータ1アゴニスト及び製薬上許容しうる担体を含む組成物に関する。VEGFRアゴニスト及びアルファ5ベータ1アゴニストのコンビナトリアル療法は増大した血管新生及び血管透過性から利益を被る種々の疾患の治療、例えば創傷治癒において、例えば慢性創傷、急性創傷及び通常の創傷の治療において使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
理論に制約されないが、本発明者等は、増大した間質細胞のリクルートメントは、VEGFアンタゴニスト療法により治療された患者においてVEGFの活性の損失を補うことができる他の血管成長因子を運ぶことができることを提案する。抗a5b1抗体によるa5b1発現間質細胞のターゲティングは間質細胞の低減をもたらし、これにより潜在的に補償性の血管成長因子の生産を低減すると考えられる。或いは、又は追加的に、内皮−細胞外マトリックスの相互作用を抑制すること、特にアルファ5ベータ1の結合相互作用を抑制することが、VEGFアンタゴニスト療法による血管後退による細胞外マトリックストラック(extracellular matrix track)に沿った血管新生の復帰を抑制することによりVEGFアンタゴニスト療法を強化することを本発明者等は提案する。従って、何れかのVEGFアンタゴニスト治療と同時か、その後のアルファ5ベータ1アンタゴニストを用いた治療はVEGFアンタゴニスト治療からの血管の回復及びその結果としての新生血管成長の復帰を抑制すると考えられる。
【0018】
「アルファ5ベータ1」又は「α5β1」又は「a5b1」とは、2つの異なる蛋白(すなわちサブユニットであるアルファ5及びベータ1)を含むインテグリンである。アルファ5ベータ1はフィブロネクチン、L1−CAM及びフィブリノーゲンに結合することが分かっている。アルファ5ベータ1インテグリンは又、最晩期活性化−5、VLA−5 、アルファ5ベータ1、CD49e/CD29、フィブロネクチン受容体、FNR及びGPIc−IIaとも称されている。好ましい実施形態によれば、アルファ5ベータ1はヒトアルファ5ベータ1である。
【0019】
「アルファ5」は又、CD49e、アルファ5、インテグリンアルファ5サブユニット、VLA−5アルファサブユニット、GPIc−IIaのICサブユニット及びFNRアルファとしても知られており、鎖はオルタナティブスプライシングにより形成された4つのアイソフォームを有する(A−D)。それらはそれらの細胞質ドメイン内で変動する。アルファ5のヒトアイソフォームに関するアミノ酸配列は例えばそれぞれGenbankアクセッション番号X07979、U33879、U33882及びU33880に見出され得る。
【0020】
「ベータ1」はCD29、ベータ1、血小板GPIIa;VLA−ベータ鎖;ベータ−1インテグリン鎖、CD29;FNRB;MDF2;VLAB;GPIIA;MSK12及びVLA5Bとも称される。ヒトベータ1のアミノ酸配列は例えばGenbankアクセッション番号X06256で知ることができる。
【0021】
「VEGF」又は「VEGF」という用語は本明細書においては、Leung等、Science,246:1306(1989)およびHouck等、Mol.Endocrin.,5:1806(1991)に記載の通り、165アミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子、及び関連の121−、189−及び206−アミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子、並びにその天然に存在する対立遺伝子及びプロセシングされた形態を指す。「VEGF」という用語はまた非ヒトの種、例えばマウス、ラット又は霊長類に由来するVEGFも指す。場合により特定の種に由来するVEGFを例えばヒトVEGFについてはhVEGF、マウスVEGFについてはmVEGF等という用語により示す。「VEGF」という用語はまた165アミノ酸ヒト血管内皮細胞成長因子のアミノ酸8〜109又は1〜109を含むポリペプチドのトランケーションされた形態をさすためにも使用する。VEGFの何れかのそのような形態に言及する場合は、本出願においては、例えば「VEGF(8−109)」、「VEGF(1−109)」又は「VEGF165」により識別する場合がある。「トランケーションされた」ネイティブのVEGFに関するアミノ酸の位置はネイティブのVEGF配列において示される数とする。例えばトランケーションされたネイティブのVEGFにおけるアミノ酸位17(メチオニン)はまたネイティブのVEGFにおける17位(メチオニン)となる。トランケーションされたネイティブのVEGFはネイティブのVEGFに匹敵するKDR及びFlt−1受容体に対する結合特性を有する。好ましい実施形態によれば、VEGFはヒトVEGFである。
【0022】
「VEGFアンタゴニスト」とはVEGF又はVEGF受容体1つ以上又はそれらをコードする核酸への自身の結合を包含する、VEGF活性を中和、ブロック、抑制、消失、低減又は干渉することができる分子を指す。好ましくは、VEGFアンタゴニストはVEGF又はVEGF受容体に結合する。VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体及びその抗原結合フラグメント、VEGF及びVEGF受容体に結合してリガンド−受容体相互作用をブロックするポリペプチド(例えばイムノアドヘシン、ペプチボディー)、抗VEGF受容体抗体及びVEGF受容体アンタゴニスト、例えば、VEGFRチロシンキナーゼの小分子阻害剤、VEGFに結合するアプタマー、及びVEGF又はVEGF受容体をコードする核酸配列にストリンジェントな条件下にハイブリダイズする核酸(例えばRNAi)を包含する。1つの好ましい実施形態によれば、VEGFアンタゴニストはVEGFに結合し、インビトロのVEGF誘導内皮細胞増殖を抑制する。1つの好ましい実施形態によれば、VEGFアンタゴニストはVEGF又はVEGF受容体に対し非VEGF又は非VEGF受容体よりも高い親和性で結合する。1つの好ましい実施形態によれば、VEGFアンタゴニストは1uM〜1pMのKdでVEGF又はVEGF受容体に結合する。別の好ましい実施形態によれば、VEGFアンタゴニストは500nM〜1pMのVEGF又はVEGF受容体に結合する。
【0023】
好ましい実施形態によれば、VEGFアンタゴニストは抗体、ペプチボディー、イムノアドヘシン、小分子またはアプタマーからなる群より選択される。好ましい実施形態においては、抗体は抗VEGF抗体、例えばAVASTIN(登録商標)抗体又は抗VEGF受容体抗体、例えば抗VEGFR2又は抗VEGFR3抗体である。VEGFアンタゴニストの他の例は、VEGF−Trap、Mucagen、PTK787、SU11248、AG−013736、Bay439006(ソラフェニブ)、ZD−6474、CP632、CP−547632、AZD−2171、CDP−171、SU−14813、CHIR−258、AEE−788、SB786034、BAY579352、CDP−791、EG−3306、GW−786034、RWJ−417975/CT6758及びKRN−633を包含する。
【0024】
「抗VEGF抗体」は十分な親和性及び特異性でVEGFに結合する抗体である。好ましくは、本発明の抗VEGF抗体はVEGF活性が関与している疾患又は状態をターゲティング又は干渉する場合の治療薬として使用できる。抗VEGF抗体は通常は他のVEGF相同体、例えばVEGF−B又はVEGF−C、又は他の成長因子、例えばPIGF、PDGF又はbFGFには結合しない。好ましい抗VEGF抗体はハイブリドーマATCCHB10709により生産されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である。より好ましくは、抗VEGF抗体はPresta等、(1997)Cancer Res.57:4593−4599により形成される組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体、例えば限定しないが、ベバシツマブ(BV;Avastin(登録商標))として知られる抗体である。別の実施形態によれば、使用できる抗VEGF抗体はWO2005/012359に開示されている抗体を含むが、それに限定されない。1つの実施形態によれば、抗VEGF抗体はWO2005/012359の図24、25、26、27及び29に開示されている抗体(例えばG6、G6−23、G6−31、G6−23.1、G6−23.2、B20、B20−4及びB20.4.1)の何れか1つの可変重鎖及び可変軽鎖領域を成す。別の好ましい実施形態においては、ラニビツマブとして知られる抗VEGF抗体は糖尿病性神経障害及びAMDのような眼の疾患に対して投与されるVEGFアンタゴニストである。
【0025】
抗VEGF抗体「ベバシツマブ(BV)」、別名「rhuMAbVEGF」又は「Avastin(登録商標)」はPresta等、(1997)Cancer Res.57:4593−4599により形成される組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。これは突然変異したヒトIgG1フレームワーク領域及びヒトVEGFのその受容体への結合をブロックするマウス抗h−VEGFモノクローナル抗体A4.6.1に由来する抗原結合相補性決定領域を含む。フレームワーク領域の大部分を包含するベバシツマブのアミノ酸配列の約93%はヒトIgG1から誘導されており、そして配列の約7%はマウス抗体A4.6.1から誘導されている。ベバシツマブは約149,000の分子質量を有し、そしてグリコシル化されている。他の抗VEGF抗体は米国特許6884879及びWO2005/044853に記載されている抗体を包含する。
【0026】
抗VEGF抗体ラニビツマブ、即ちLUCENTIS(登録商標)抗体又はrhuFabV2はヒト化親和性成熟抗ヒトVEGFFabフラグメントである。ラニビツマブはEscherichia coli発現ベクターにおける標準的な組み換え手法及び細菌発酵により製造される。ラニビツマブ(Ranibizumab)はグリコシル化されておらず、そして分子質量約48,000を有している。WO98/45331及び米国特許出願US20030190317を参照できる。
【0027】
「アルファ5ベータ1アンタゴニスト」とは、アルファ5ベータ1の生物学的活性を抑制する何れかの分子を指す。1つの好ましい実施形態によれば、アンタゴニスト分子はアルファ5ベータ1に特異的に結合する。1つの好ましい実施形態によれば、アンタゴニスト分子はアルファ5に結合する。1つの好ましい実施形態によれば、アルファ5ベータ1アンタゴニストは非アルファ5ベータ1インテグリンに比較して高い親和性でアルファ5ベータ1に優先的に結合する。1つの好ましい実施形態によれば、アンタゴニストは例えばアルファ5ベータ1のそのリガンド(特にフィブロネクチン)への結合を抑制するポリペプチド、抗体、ペプチボディー又はイムノアドヘシン、小分子又はアプタマー、又はアルファ5ベータ1をコードする核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸(例えばアルファ5発現を妨害するRNAi)からなる群より選択される。アルファ5ベータ1の生物学的活性は(1)フィブロネクチンへの結合、(2)フィブロネクチン上の細胞移動の増強、(3)フィブロネクチン存在下におけるアルファ5ベータ1を含む細胞の生存の増大、(4)フィブロネクチン存在下におけるアルファ5ベータ1を含む細胞の増殖の増大、及び(5)フィブロネクチン存在下におけるアルファ5ベータ1を含む細胞の管形成の増大、からなる群より選択される作用の何れか1つ、組み合わせ又は全てであることができる。
【0028】
抗アルファ5ベータ1アンタゴニスト抗体の例は、M200及びF200(WO2004/089988A2)、本明細書に記載する7H5抗体及び7H12抗体、及びそのキメラ、完全ヒト型、及びヒト化抗体を包含する。例えばM200及びF200抗体はマウス抗ヒトアルファ5ベータ1抗体、IIA1(Pharmingen,San Diego,Ca)の可変重鎖及び可変軽鎖から誘導できる。アルファ5ベータ1小分子阻害剤の例はAc−PHSCN−NH2(WO−9822617A1)及び(S)−2−[(2,4,6−トリメチルフェニル)スルホニル]アミノ−3−[7−ベンジルオキシカルボニル−8−(2−ピリジニルアミノメチル)−1−オキサ−2,7−ジアザスピロ−(4,4)−ノナ−2−エン−3−イル]カルボニルアミノ]プロパン酸を包含する。1つの好ましい実施形態によれば、アルファ5ベータ1アンタゴニストはアルファ5ベータ1に結合するが、アルファVベータ3、アルファVベータ5、アルファVベータ1には結合しない。1つの好ましい実施形態によれば、アルファ5ベータ1アンタゴニストは1uM〜1pMのKdでアルファ5ベータ1に結合する。別の好ましい実施形態によれば、アルファ5ベータ1アンタゴニストは500nM〜1pMのKdでアルファ5に結合する。1つの好ましい実施形態によれば、アルファ5ベータ1抗体は競合的結合試験においてアルファ5ベータ1への結合に関し、7H5抗体又は7H12抗体と競合できる抗体である。別の好ましい実施形態によれば、抗体は2006年3月7日にアルファ5/ベータ1 7H5.4.2.8(ATCC No.PTA−7421)として寄託されたハイブリドーマ及びアルファ5/ベータ17H12.5.1.4(ATCC No.PTA−7420)として寄託されたハイブリドーマから生産される抗体により、アルファ5ベータ1に対する結合を競合的に抑制され得る抗体である。
【0029】
「VEGFRアゴニスト」とはVEGF受容体を活性化できるか、又はその発現を増大できる分子を指す。VEGFRアゴニストは限定しないが、VEGFR、VEGFの変異体、抗体及び活性フラグメントのリガンドアゴニストを包含する。
【0030】
「アルファ5ベータ1アゴニスト」とはアルファ5ベータ1を活性化又はその発現を増大させることができる分子を指す。アルファ5ベータ1アゴニストは限定しないが、例えばアルファ5ベータ1のリガンドアゴニストを包含する。
【0031】
標的上の重複又は同様の区域に結合することを特徴とする抗体のような分子は競合的抑制/結合試験により識別することができる。
【0032】
1つの実施形態において、HUVEC又は他のアルファ5ベータ1発現細胞を競合的抑制試験において使用し、そしてFACSを用いて相互に比較した場合の2つの抗アルファ5ベータ1抗体の結合の局所性を評価する。例えばHUVEC細胞を三角試験管中で洗浄し、5分間1000rpmで遠心分離する。ペレットは典型的には2回洗浄する。次に細胞を再懸濁し、計数し、使用時まで氷上に保存する。最初の抗アルファ5ベータ1抗体100ul(例えば1ug/ml濃度以下の濃度で開始)をウェルに添加することができる。次に100μl(例えば細胞20×10個)の細胞をウェル当たり添加し、30分間氷上でインキュベートする。次に100μlのビオチン化抗アルファ5ベータ1抗体(5μg/ml保存液)を各ウェルに添加し、30分間氷上でインキュベートする。次に細胞を洗浄し、5分間1000rpmでペレット化する。上澄みを吸引する。2回目の抗体R−フィコエリスリン結合体ストレプトアビジン(Jackson 016−110−048)をウェルに添加する(1:1000で100μl)。次にプレートをホイルで包装し、30分間氷上でインキュベートする。インキュベーションの後、ペレットを洗浄し、5分間1000rpmでペレット化する。ペレットを再懸濁し、マイクロ力価測定試験管に移し、FACS分析に付す。
【0033】
「血管新生因子または薬剤」とは血管の発生を刺激する、例えば血管新生、内皮細胞飼育、血管の安定性及び/又は脈管形成等を増進する成長因子である。例えば血管新生因子は限定しないが、VEGF及びVEGFファミリーのメンバー、PIGF、PDGFファミリー、線維芽細胞成長因子ファミリー(FGF)、TIEリガンド(アンジオポエチン)、エフリン、Del−1、線維芽細胞成長因子:酸性(aFGF)及び塩基性(bFGF)、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、肝細胞成長因子(HGF)/散乱因子(SF)、インターロイキン−8(IL−8)、レプチン、ミドカイン、胎盤成長因子、血小板誘導内皮細胞成長因子(PD−ECGF)、血小板誘導成長因子、特にPDGF−BB又はPDGFR−ベータ、プレイオトロピン(PTN)、プログラヌリン、プロリフェリン、形質転換成長因子−アルファ(TGF−アルファ)、形質転換成長因子−ベータ(TGF−ベータ)、腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−アルファ)、血管内皮成長因子(VEGF)/血管透過性因子(VPF)等を包含する。更に又、創傷治癒を加速させる因子、例えば成長ホルモン、インスリン様成長因子−I(IGF−I)、VIGF、表皮成長因子(EGF)、CTCG及びそのファミリーメンバー、及びTGF−アルファ及びTGF−ベータを包含する。例えばKlagsbrun and D’Amore,Annu.Rev.Physiol.,53:217−39(1991);Streit and Detmar,Oncogene,22:3172−3179(2003);Ferrara & Alitalo,Nature Medicine 5(12):1359−1364(1999);Tonini等、Oncogene,22:6549−6556(2003)(例えば既知の血管新生因子を列挙した表1);及びSato Int.J.Clin.Oncol.,8:200−206(2003)を参照できる。
【0034】
本発明の抗VEGF抗体に関する「Kd」又は「Kd値」とは、1つの好ましい実施形態においては、一連の力価の未標識VEGFの存在下(125I)標識VEGF(109)の最小濃度でFabを平衡化させ、次に、抗Fab抗体コーティングプレートを用いて結合VEGFをキャプチャーすることによるVEGFに対するFabの溶液結合親和性を測定する後述の試験により説明される通り、抗体のFab型とVEGF分子を用いて行われる放射標識VEGF結合試験(RIA)により測定される(Chen,等、(1999)J.Mol.Biol.293:865−881)。試験の条件を確立するために、マイクロプレート(Dynex)を50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)中キャプチャー用抗Fab抗体(Cappel Labs)5ug/mlで一晩コーティングし、そしてその後、室温で2〜5時間(約23℃)PBS中2%(w/v)ウシ血清アルブミンでブロッキングする。非吸着プレート(Nunc#269620)中、100pM又は26pM[125I]−VEGF(109)を目的のFab、例えばFab−12の連続希釈物と混合する(Presta等、(1997)Cancer Res.57:4593−4599)。次に目的のFabを一晩インキュベートするが、インキュベートは確実に平衡が達成されるようにより65時間継続してよい。その後、混合物を1時間室温インキュベーションのためにキャプチャープレートに移す。次に溶液を取り出し、プレートをPBS中0.1%Tween−20で8回洗浄する。プレートが乾燥した時点で、シンチラント(MicroScint−20;Packard)150ul/ウェルを添加し、プレートをTopcountガンマカウンター(Packard)で10分間計数する。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を競合的結合試験で使用するために選択する。別の実施形態によれば、Kd又はKd値は〜10応答単位(RU)において固定化されたhVEGF(8−109)CM5チップを用いて25℃においてBIAcoreTM−2000又はBIAcoreTM−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いた表面プラズモン共鳴試験により測定する。簡潔にはカルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore,Inc.)を入手元の取扱説明書に従って塩酸N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。ヒトVEGFを5ug/ml(〜0.2uM)まで10mM酢酸ナトリウムpH4.8で希釈した後に5ul/分の流量で注入し、約10応答単位(RU)のカップリング蛋白を達成する。ヒトVEGF注入後、1Mエタノールアミンを注入して未反応の基をブロッキングする。動態の測定のために、Fabの2倍連続希釈物(0.78nM〜500nM)を0.05%Tween20含有PBS(PBST)中で25℃流量約25ug/分で注入する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)は会合及び解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることにより単純な1対1のラングミュア結合モデル(BIAcore Evaluation Softwareバージョン3.2)を用いて計算する。平衡解離定数(Kd)は比koff/konとして計算する。例えばChen,Y.,等、(1999)J.Mol Biol 293:865−881を参照できる。上記した表面プラズモン共鳴試験によるonの速度が10−1−1を超過する場合は、on速度は、攪拌キュベットを有するストップフロー装着分光光度計(Aviv Instrument)又は8000シリーズSLM−Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)のような分光計において測定した場合のヒトVEGF短鎖型(8−109)又はマウスVEGFの漸増濃度の存在下PBSpH7.2中20nM抗VEGF抗体(Fab型)の25℃における蛍光発光強度の増大又は低減を測定する蛍光クエンチングの手法(励起=295nm、発光=340nm、16nmバンドパス)により測定することができる。同様の結合試験は、標的としてアルファ5ベータ1を使用しながら抗アルファ5ベータ1Fab又は抗体のKdを測定するために使用することができる。
【0035】
本明細書においては、治療すべき対象は哺乳類(例えばヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ等)である。対象は臨床患者、臨床治験ボランティア、実験動物などであってよい。対象は癌、免疫疾患又は異常な血管新生を有する何れかの他の疾患を有することが疑われるか、有する危険性があるか、癌、免疫疾患又は異常な血管新生を有する何れかの他の疾患と診断されてよい。癌、免疫疾患又は異常な血管新生を有する何れかの他の疾患に関する多くの診断方法及びそれらの疾患の臨床的概要は当業者の知る通りである。1つの好ましい実施形態によれば、本発明により治療すべき対象はヒトである。
【0036】
用語である異常な血管新生は、新しい血管の過剰または不適切(例えば血管新生の位置、時期又は発生が医学的見地から望ましくない)な成長が疾患状態において生じるか、それが疾患状態を誘発する場合に起こる。過剰、不適切又は制御不能な血管新生は、癌、特に血管新生した固形腫瘍及び転移性腫瘍(例えば結腸、肺の癌(特に小細胞肺癌)又は前立腺癌)の場合のような疾患状態又は疾患状態の原因、眼の血管新生により生じた疾患、特に糖尿病性失明、網膜症、原発性糖尿病性網膜症又は加齢誘発性黄斑変性、脈絡膜の血管新生(CNV)、糖尿病性の黄斑浮腫、病的近視、フォン・ヒッペル−リンダウ病、眼のヒストプラズマ症、網膜中心静脈閉塞(CRVO)、角膜の血管新生、網膜の新生血管形成及び紅潮;乾癬、乾癬性関節炎、血管芽腫、例えば血管腫;炎症性腎疾患、例えば糸球体腎炎、特に糸球体間質増殖性糸球体腎炎、溶血性尿毒症症候群、糖尿病性腎症又は高血圧性腎硬化症;種々の炎症性疾患、例えば関節炎、特に慢性関節リューマチ、炎症性腸疾患、乾癬、サルコイドーシス、動脈硬化症及び移植後に起こる疾患、子宮内膜症又は慢性喘息及び70超の他の状態の悪化に寄与する新しい血管の形成がある場合に生じる。新しい血管は疾患組織に補給し、正常組織を破壊し、そして癌の場合は、新しい血管は腫瘍細胞の循環系内への逃避及び多臓器内への定着(転移)を可能にする。本発明は上記した疾患を発症する危険性のある患者を治療することを意図している。
【0037】
本発明の抗体又はポリペプチドを投与する候補となる他の患者は、線維血管組織の異常な増殖、しゅさ性挫創、後天性免疫不全症候群、動脈閉塞、アトピー性角膜炎、細菌性潰瘍、ベーチェット病、血液媒介性の腫瘍、頸動脈閉塞性疾患、脈絡膜血管新生、慢性炎症、慢性網膜剥離、慢性ブドウ膜炎、慢性硝子体炎、コンタクトレンズ過剰着用、角膜移植片拒絶、角膜新生血管形成、角膜移植片新生血管形成、クローン病、イールズ病、流行性角結膜炎、真菌性潰瘍、単純疱疹感染、帯状疱疹感染、過粘稠度症候群、カポジ肉腫、白血病、脂質編成、ライム病、辺縁角質溶解、モーレン潰瘍、らい病以外のマイコバクテリア感染、近視、眼の血管新生性疾患、視神経乳頭先天的構造欠損、オースラー・ウエーバー症候群(オースラー・ウエーバー・ランデュ変形性関節症)、パジェット病、毛様体輪炎、類天疱瘡、フリクテン症、多発性動脈炎、レーザー後の合併症、原虫感染症、弾性線維仮性黄色腫、翼状片乾性角結膜炎、放射状角膜切開、網膜血管新生、未熟児網膜症、水晶体後線維増殖症、類肉腫、強膜炎、鎌状赤血球貧血、シェーグレン症候群、固形腫瘍、シュタルガルト病、ステーブンスジョンソン病、上輪郭角膜炎、全身性狼瘡、テリエン辺縁変性、トキソプラスマ症、外傷、ユーイング肉腫の腫瘍、神経芽腫の腫瘍、骨肉腫の腫瘍、網膜芽腫の腫瘍、横紋筋肉腫の腫瘍、潰瘍性結腸炎、静脈閉塞、ビタミンA欠乏症及びウェーゲナーのサルコイドーシス、糖尿病に関連する望ましくない血管新生、寄生虫疾患、異常な創傷治癒、手術、傷害又は外傷後の過形成、毛髪生育の抑制、排卵及び黄体形成の抑制、着床の抑制及び子宮内の胚の発生の抑制を有するか、発症する危険性がある。
【0038】
抗血管新生療法は、移植片拒絶、肺の炎症、ネフローゼ症候群、子癇前症、心内膜液浸出、例えば心内膜炎に関連するもの、及び胸水、望ましくない血管の透過性を特徴とする疾患及び障害、例えば脳腫瘍に関連する浮腫、悪性疾患に関連する腹水、メイグズ症候群、心筋梗塞及び卒中等の後の状態のような心臓血管疾患に関連する肺の炎症、ネフローゼ症候群、心内膜液浸出、胸水、透過性の全般的治療において有用である。
【0039】
本発明の他の血管新生依存性疾患は血管線維腫(出血し易い異常な血管)、血管新生緑内障(眼の血管の成長)、動静脈奇形(動脈と静脈の間の異常な連絡)、偽関節骨折(治癒しない骨折)アテローム性動脈硬化症性のプラーク(動脈の硬化)、化膿性肉芽腫(血管を含む一般的な皮膚の罹患部)、硬皮症(結合組織疾患の1形態)、血管腫(血管を含む腫瘍)、トラコーマ(第3世界における失明の最大原因)、血友病性関節、血管癒着及び過形成性の瘢痕(異常な瘢痕形成)を包含する。
【0040】
「治療」とは施療的な治療及び予防的又は防止的な手段の両方を指す。治療が必要なものはすでに障害を有する者並びに障害を防止すべき者を包含する。
【0041】
「再発」、「回帰」又は「回帰した」という用語は癌又は疾患が、疾患消失を臨床的に評価した後に復帰することをさす。遠位の転移または局所的な再発の診断は回帰とみなすことができる。
【0042】
「難治性」又は「抵抗性」という用語は治療に応答していない癌又は疾患を指す。
【0043】
「アジュバント療法」という用語は通常は手術である主要な療法の後に行われる治療を指す。癌又は疾患のアジュバント療法は免疫療法、化学療法、放射線療法又はホルモン療法を包含する。
【0044】
「維持療法」という用語は以前の治療効果を維持する際の補助となる予定された再治療を指す。維持療法は疾患の進行に関わりなく癌を後退させ続けるか、又は特定の療法に対する応答を延長する際の補助とするために行われる場合が多い。
【0045】
「侵襲性の癌」という用語は癌が正常な周囲組織内への侵入を開始する組織の層を越えて広がったものを指す。
【0046】
「非侵襲性の癌」という用語は極めて早期の癌であるか、又は起源の組織を越えて広がっていない癌を指す。
【0047】
「無進行生存」という用語は、癌医学においては、癌が成長しない治療中及び治療後の時間の長さを指す。無進行生存は完全な応答又は部分的な応答を患者が経験している時間の量、並びに、安定した疾患を患者が経験している時間の量を包含する。
【0048】
「進行性の疾患」という用語は、癌医学においては、腫瘍の質量の増大又は拡散のいずれかにより、治療開始時から20パーセントを超えて腫瘍の成長があることを指す。
【0049】
「障害」とは抗体による治療から利益を被る何れかの状態である。例えば異常な血管新生(過剰、不適切又は制御不能の血管新生)又は血管の透過性に罹患しているかそれに対する予防が必要な哺乳類である。これには慢性及び急性の障害又は疾患、例えば問題となる障害に哺乳類を罹患し易くする病理学的状態を包含する。本明細書において治療すべき障害の非限定的な例は、悪性及び良性の腫瘍;非白血病及びリンパ性悪性疾患;ニューロン、グリア、星状細胞、視床下部及び他の腺性、マクロファージ性、上皮性、基質性及び胞胚腔性の障害;及び炎症性、血管新生性及び免疫学的な障害を包含する。
【0050】
「癌」及び「癌性の」という用語は調節不可能な細胞の成長を典型的な特徴とする哺乳類における生理学的状態を指すか、それを説明するものである。癌の例は限定しないが、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫及び白血病を包含する。このような癌のより特定的な例は、扁平上皮細胞癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓癌、腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝臓癌腫、頭部頚部の癌、直腸癌、結腸直腸癌、肺癌、例えば小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌、扁平上皮細胞癌(例えば上皮の扁平上皮細胞癌)、前立腺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌又は腹部の癌、例えば胃腸の癌、膵臓癌、神経膠芽腫、網膜芽腫、星状細胞腫、莢膜細胞腫、男化腫瘍、ヘパトーマ、血液学的悪性疾患、例えば非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫及び急性の血液学的な悪性疾患、子宮内膜又は子宮の癌腫、子宮内膜症、腺維肉腫、絨毛癌、唾液腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、食道癌、肝臓の癌腫、肛門癌、陰茎癌、鼻咽頭癌腫、喉頭癌、カポジ肉腫、黒色腫、皮膚の癌腫、神経鞘腫、乏突起神経膠細胞腫、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、平滑筋肉腫、尿道癌腫、甲状腺癌腫、ウイルムス腫瘍、並びにB−細胞リンパ腫(例えば低等級
/小胞状非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ性(SL)NHL;中間等級/小胞状NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小非分割細胞性NHL;バルキー疾患NHL;被膜細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;及びウォルデンストロムマクログロブリン血症);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後のリンパ増殖性障害(PTLD)、並びに母斑症に伴う異常な血管の増殖、及びメイグズ症候群を包含する。
【0051】
「腫瘍」とは、本明細書においては、悪性又は良性に関わらず全ての新生物性の細胞の成育及び全ての前癌性及び癌性の細胞及び組織を指す。
【0052】
「抗腫瘍組成物」又は「抗腫瘍剤」という用語は少なくとも1つの活性な治療薬、例えば「抗癌剤」を含む癌を治療する場合に有用な組成物を指す。治療薬(抗癌剤)の例は、限定しないが、例えば化学療法剤、増殖抑制剤、細胞毒性剤、放射線療法において使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤及び他の癌を治療するための薬剤、例えば抗HER−2抗体、抗CD20抗体、表皮成長因子受容体(EGFR)アンタゴニスト(例えばチロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤(例えばエルロチニブ(TarcevaTM)、血小板誘導成長因子阻害剤(例えばGleevecTM(イマチニブメシレート))、COX−2阻害剤(例えばセレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的、即ちErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR−ベータ、BAFF、BR3、APRIL、BCMA又はVEGF受容体、TRAIL/Apo2の1つ以上に結合するアンタゴニスト(例えば中和抗体)及び他の生物学的に活性な、そして有機性の化学物質等を包含する。これらの組み合わせもまた本発明において意図される。
【0053】
本明細書において使用する場合の「増殖抑制剤」とは、インビトロ及び/又はインビボで細胞の成長を抑制する化合物又は組成物を指す。即ち増殖抑制剤はS期の細胞のパーセントを顕著に低減するものであってよい。増殖抑制剤の例は細胞周期の進行を(S期以外の時点において)ブロックする薬剤、例えばG1停止及びM期停止を誘導する薬剤を包含する。古典的なM期ブロッカーはビンカ類(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、TAXOL(登録商標)及びトポII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド及びブレオマイシンを包含する。G1を停止させるこれらの薬剤はまたS期停止にまで作用を派生させるものがあり、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニソン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル及びara−Cが挙げられる。更に詳細な説明はThe Molecular Basis of Cancer,Mendelsohn and Israel編、Chapter1の表題「Cell cycle regulation,oncogenes and antineoplastic drugs」、Murakami等(WB Saunders:Philadelphia 1995)、特にp.13に記載されている。
【0054】
「細胞毒性剤」という用語は本明細書においては、細胞の機能を抑制又は防止、及び/又は細胞の破壊を誘発する物質を指す。用語は放射性同位体(例えばI131、I125、Y90及びRe186)、化学療法剤、及び毒素、例えば細菌、カビ、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素並びにそのフラグメントを包含する。
【0055】
「化学療法剤」とは癌の治療において有用な化学物質である。化学療法剤の例は癌の治療において有用な化学物質である。化学療法剤の例はアルキル化剤類、例えばチオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミド;アルキルスルホネート類、例えばブスルファン、イムプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン類、例えばベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ及びウレドパ;エチレンイミン類及びメチラメラミン類、例えばアルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホアミド、トリエチレンチオホスホアミド及びトリメチロールオメラミン;アセトゲニン類(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(例えば合成類縁体トポテカン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(例えばアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類縁体);クリプトフィシン(cryptophycin)類(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(例えば合成類縁体、KW−2189及びCB1−TM1);エリュテロビン;パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード類、例えばクロランブシル、クロマファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、塩酸酸化メクロレタミン、メルファラン、ノべンビチン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素類、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムヌスチン;抗生物質、例えばエネジン抗生物質(例えばカリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマII及びカリケアマイシンオメガII(例えばAgnew,Chem Intl.Ed.Engl.,33:183−186(1994)参照);ジネマイシン、例えばジネマイシンA;ビスホスホネート、例えばクロドロネート;エスペラマイシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連の色素蛋白エネジン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オーソラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(例えばモルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン類、例えばマイトマイシンC、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝アンタゴニスト、例えばメトトレキセート及び5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸類縁体、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類縁体、例えばフルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類縁体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、デキシフルリジン、エノシタビン、フロクスリジン;アンドロゲン類、例えばカルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗アドレナル類(anti−adrenal)、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補給剤、例えばフロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキセート;デホファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルホミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシノイド類、例えばマイタンシン及びアンサミトシン類;マイトグアゾン;マイトキサトロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラクリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメト;ピアルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT−2毒素、べラクリンA、ロリジンA及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;マイトブロニトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(Ara−C);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド類、例えばTAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol−Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、ABRAXANETM Cremophor−非含有、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Illinois)及びTAXOTERE(登録商標)ドキセタキセル(Rhone−Poulenc Rorer,Antony,France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金類縁体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イソフォスファミド;マイトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノヴァントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ;イバンドロネート;イリノテカン(Camptosar,CPT−11)(イリノテカンと5−FU及びロウコボリンの治療レジメンを包含);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロルニチン(DMFO);レチノイド類、例えばレチノイン酸;カペシタラビン;コンブレスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン、例えばオキサリプラチン治療レジメン(FOLFOX);細胞増殖を低減するPKC−アルファ、Raf、H−Ras及びEGFRの阻害剤(例えばエルロチニブ(TarcavaTM))及び上記いずれかの製薬上許容しうる塩、酸又は誘導体を包含する。
【0056】
この定義に同様に包含されるものは腫瘍に対するホルモンの作用を調節又はブロックする作用を有する抗ホルモン剤、例えば抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、例えばタモキシフェン(例えばNOLVADEX(登録商標)タモキシフェン)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びFARESTONトレミフェン;副腎におけるエストロゲン生産を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)−イミダゾール類、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲステロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタニー、ファドゾロール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール及びARIMIDEX(登録商標)アラストロゾール;および抗アンドロゲン剤、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類縁体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えばPKC−アルファ、Raf及びH−Rasのような異常な細胞増殖に関与するとされるシグナリング経路内の遺伝子の発現を抑制するもの;リボザイム、例えばVEGF発現抑制剤(例えばANGIOZYME(登録商標)リボザイム)及びHER2発現抑制剤;ワクチン類、例えば遺伝子療法ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL−2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ビノレルビン及びエスペラマイシン(米国特許4,675,187参照)及び上記何れかの製薬上許容しうる塩、酸又は誘導体である。
【0057】
「プロドラッグ」という用語は本出願においては親薬剤と比較して疾患細胞に対して低い細胞毒性を有し、そして酵素的に活性化又は変換されてより活性の高い親形態になることができる薬学的に活性の物質(例えば小分子)の前駆体又は誘導体の形態を指す。例えばWilman,“Prodrugs in Cancer Chemotherapy”Biochemical Society Transactions,14,pp.375−382,615th Meeting Belfast(1986)及びStella等、“Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,”Directed Drug Delivery,Borchardt等、(ed.),pp.247−267,Humana Press(1985)を参照できる。本発明のプロドラッグは限定しないが、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、スルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β−ラクタム含有プロドラッグ、場合により置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ、又は場合により置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5−フルオロシトシン及びより活性な細胞毒性の遊離の薬剤に変換されることができる他の5−フルオロウリジンプロドラッグを包含する。本発明において使用するためのプロドラッグ形態に誘導体化できる細胞毒性剤の例は、限定しないが、上記した化学療法剤を包含する。
【0058】
「単離された」とは、本明細書に開示する種々のポリペプチドを説明するために使用する場合、それが発現された細胞又は細胞培養物から同定及び分離及び/又は回収されているポリペプチドを意味する。その天然の環境の混入成分はポリペプチドの診断又は治療上の使用を典型的には妨害する物質であり、そして、酵素、ホルモン及び他の蛋白性又は非蛋白性の溶質を包含する。好ましい実施形態においては、ポリペプチドは(1)スピニングカップシーケンサーの使用によりN末端又は内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な程度まで、又は(2)クーマシーブルー又は好ましくは銀染色を用いた還元又は非還元条件下のSDS−PAGEで均質となるまで精製される。単離されたポリペプチドはポリペプチドの天然の環境の少なくとも1つの成分も存在しなくなるため、組み換え細胞内のインサイチュのポリペプチドを包含する。しかしながら通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程により製造する。
【0059】
「単離された」ポリペプチドコード核酸分子又は他のポリペプチドコード核酸はポリペプチドコード核酸の天然の原料中で通常は会合している混入核酸分子少なくとも1つから識別され、分離されている核酸分子である。単離されたポリペプチドコード核酸分子は自身が天然に存在する形態または周囲状況にはないものである。従って単離されたポリペプチドコード核酸分子はそれが天然の細胞中に存在する状態の特定のポリペプチドコード核酸分子からは区別される。しかしながら、単離されたポリペプチドコード核酸分子は、例えばポリペプチドコード核酸分子が天然の細胞とは異なる染色体位置にあるポリペプチドを通常発現する細胞内に含有されるポリペプチドコード核酸分子を包含する。
【0060】
「制御配列」という用語は特定の宿主生物における作動可能に連結したコーディング配列の発現のために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に適する制御配列はプロモーター、場合によりオペレーター配列、及びリボソーム結合部位を包含する。真核生物はプロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用していることが知られている。
【0061】
核酸はそれが他の核酸配列と機能的関係となるように位置する場合、「作動可能に連結された」という。例えばプレ配列または分泌リーダーに関するDNAはそれがポリペプチドの分泌に関与するプレ蛋白として発現されれば、ポリペプチドに関するDNAに作動可能に連結されており;プロモーター又はエンハンサーはそれが配列の転写に影響すればコーディング配列に作動可能に連結されており;或いは、リボソーム結合部位はそれが翻訳を促進するように位置していればコーディング配列に作動可能に連結している。一般的に「作動可能に連結」とは連結されるDNA配列が隣接している場合、そして分泌リーダーの場合は隣接し、且つ読み枠が合う場合を意味する。しかしながら、エンハンサーは隣接する必要はない。連結は好都合な制限部位におけるライゲーションにより行う。そのような部位が存在しない場合は、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーを従来の慣行に従って使用する。
【0062】
「ストリンジェントな条件」又は「高ストリンジェンシー条件」とは、本明細書において定義する場合は、(1)低いイオン強度及び高い洗浄温度、例えば0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを50℃において使用するか;(2)ハイブリダイゼーションの間は変性剤、例えばホルムアミド、例えば50%(v/v)ホルムアミド+0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.5+750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを42℃で用いるか;又は(3)一晩ハイブリダイゼーションを溶液中、50%ホルミアミド、5xSSC(0.75MNaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5xDenhardt溶液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS及び10%デキストランスルフェートを42℃で使用し、その後、洗浄を42℃において10分間0.2xSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)次に10分間、55℃におけるEDTA含有0.1xSSCよりなる高ストリンジェンシー洗浄条件を用いるものとして認識される。
【0063】
本明細書に記載するポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」とは、最大のパーセント配列同一性を達成できるように配列をアラインし、必要に応じてギャップを導入し、そして如何なる保存的置換も配列同一性の部分とみなさない場合の比較すべきポリペプチドにおけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアライメントは当業者の知る種々の方法において、例えば市販のコンピューターソフトウエア、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアを用いて達成できる。当業者はアライメントを測定するための適切なパラメーター、例えば比較すべき配列の完全長に渡って最大のアライメントを達成するために必要ないずれかのアルゴリズムを決定できる。しかしながら本発明の目的のためには、%アミノ酸配列同一性の値は配列比較コンピュータープログラムALIGN−2を用いて発生させる。ALIGN−2配列比較コンピュータープログラムはGenentech,Inc.により著作されており、そしてソースコード(表1)は米国著作権局Washington D.C.20559にユーザードキュメンテーションとともにファイルされており、そこで米国著作権登録番号TXU510087の下に登録されている。ALIGN−2プログラムはGenentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから入手可能である。ALIGN−2プログラムはUNIX(登録商標)のOS、好ましくはデジタルUNIX(登録商標)のV4.0D上での使用のためにコンパイルしなければならない。全ての配列比較パラメーターはALIGN−2プログラムにより設定され、変化しない。
【0064】
本明細書に記載したアミノ酸配列は特段の記載が無い限り隣接アミノ酸配列である。
【0065】
本明細書においては、「イムノアドヘシン」とは異種蛋白(「アドヘシン」)の結合特異性を免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能と組み合わせた抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは抗体の抗原認識及び結合の部位とは異なる所望の結合特異性を有するアミノ酸配列(異種)及び免疫グロブリン定常ドメイン配列の融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドヘシン部分は典型的にはVEGFR又はフィブロネクチンリガンドのような受容体又はリガンドの結合部位を少なくとも含む隣接アミノ酸配列である。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列はいずれかの免疫グロブリン、例えばIgG−1、IgG−2、IgG−3、又はIgG−4サブタイプ、IgA(例えばIgA−1及びIgA−2)、IgE、IgD、又はIgMから得ることができる。免疫グロブリンのFc部分に融合された標的に特異的に結合する配列のファージディスプレイセレクションから誘導された配列を含むことが多いペプチボディーは本明細書においてはイムノアドヘシンとみなすことができる。
【0066】
「抗体」という用語はもっとも広範な意味において使用され、そしてとくに、例えば単一のモノクローナル抗体(例えばアゴニスト、アンタゴニスト及び中和抗体)、多エピトープ特異性を有する抗体組成物、ポリクローナル抗体、単鎖抗抗体、及び、ネイティブのポリペプチドに特異的に結合し、及び/又は本明細書の生物学的活性又は免疫学的活性を呈する限りにおいて、抗体のフラグメント(下記)を包含する。1つの実施形態によれば、抗体は標的蛋白のオリゴマー型、例えば3量体型に結合する。別の実施形態によれば、抗体は蛋白に特異的に結合し、その結合は本明細書のモノクローナル抗体により抑制できる(例えば本発明の寄託抗体など)。抗体の「機能的フラグメント又は類縁体」という表現は言及している抗体と共通した定性的生物学的活性を有する化合物である。例えば本明細書の抗体の機能的フラグメント又は類縁体は、VEGF又はアルファ5ベータ1に特異的に結合できるものであることができる。1つの実施形態において抗体は細胞増殖を誘導するVEGFの能力を防止、又は実質的に低減することができる。
【0067】
「単離された抗体」は、その天然の環境の成分から識別され、そして分離及び/又は回収されたものである。その天然の環境の混入物成分は抗体の診断又は治療上の使用を妨害する可能性があり、そして、酵素、ホルモン及び他の蛋白性又は非蛋白性の溶質を包含する。好ましい実施形態においては抗体の精製は(1)Lowry法で測定した場合に抗体の95重量%超、最も好ましくは99重量%超まで、(2)スピニングカップシーケンサーの使用によりN末端又は内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な程度まで、又は(3)クーマシーブルー又は好ましくは銀染色を用いた還元又は非還元条件下のSDS−PAGEで均質となるまで行う。単離された抗体は、抗体の天然の環境の少なくとも1つの成分も存在しなくなるため、組み換え細胞内のインサイチュの抗体を包含する。しかしながら通常は単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により製造する。
【0068】
基本4鎖抗体単位は2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖を含むヘテロ4量体の糖蛋白である(IgM抗体はJ鎖と呼ばれる別のポリペプチドとともに基本ヘテロ4量体単位5つより成り、従って、10抗原結合部位を含有するのに対し、分泌されたIgA抗体は重合体化することによりJ鎖に沿って基本4鎖単位2〜5つを含む多価の組立体を形成することができる)。IgG類の場合は、4鎖単位は一般的に約150,000ダルトンである。各L鎖は1つの共有ジスルフィド結合によりH鎖と連結されており、2つのH鎖はH鎖のアイソタイプに応じてジスルフィド結合1つ以上により相互に連結されている。各H及びL鎖は又規則的に間隔をおいた鎖内のジスルフィド架橋部を有する。各H鎖はN末端、可変ドメイン(V)とそれに後続する3つの定常ドメイン(C)をα及びγ鎖の各々について、そして4つのCドメインμ及びイプシロンのアイソタイプについて有している。各L鎖はN末端、可変ドメイン(V)とそれに後続する定常ドメイン(C)をその他方の端部に有する。VはVとアラインし、そしてCは重鎖の第1の定常ドメイン(C1)とアラインしている。特定のアミノ酸残基が軽鎖と重鎖の可変ドメインの間の界面を形成していると考えられている。VとVの対形成は単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性については例えばBasic and Clinical Immunology,8th edition,Daniel P.Stites,Abba I.Terr and Tristram G.Parslow(eds.),Appleton & Lange,Norwalk,CT,1994,page71及び Chapter 6を参照できる。
【0069】
何れの脊椎動物由来のL鎖もその定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ及びラムダと称される2つの明確に異なった型の1つに割りあてることができる。その重鎖の定常ドメイン(C)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラス又はアイソタイプに割りあてることができる。免疫グロブリンには5つのクラス、即ち、それぞれがα、δ、γ、ε及びμと表記される重鎖を有するIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが存在する。γ及びαのクラスは更にC配列及び機能における比較的小さい相違に基づいてサブクラスに分割され、例えばヒトは以下のサブクラス、即ちIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2を発現する。
【0070】
「可変」という用語は可変ドメインの特定のセグメントは抗体間で広範に配列が異なっているという事実を指す。Vドメインは抗原結合を媒介し、そして特定の抗体のその特定の抗原に対する特異性を定義している。しかしながら可変性は可変ドメインの110アミノ酸のスパンに渡って均一に分布していない。むしろ、V領域は各々が9〜12アミノ酸長の「超可変領域」と称される究極的な可変性のより短い領域により分離された15〜30アミノ酸の比較的不変性のストレッチよりなる。ネイティブの重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、ベータシート構造を連結する、そして一部の場合はその部分を形成するループを形成する3つの超可変領域により連結されたベータシート配置を大部分が採用しているFR4つを含む。各鎖の超可変領域はFRにより近接して保持されており、そして他の鎖の超可変領域と一緒になって、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)参照)。定常ドメインは抗体から抗原への結合には直接関与しないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)における抗体の関与を示す。
【0071】
「超可変領域」という用語は本明細書においては、抗原結合を担っている抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は一般的に「相補性決定領域」即ち「CDR」に由来するアミノ酸残基(例えばVにおいては概ね残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)そしてVにおいては概ね31−35B(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3)(1つの実施形態においてはH1は概ね31〜35である);Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))及び/又は「超可変ループ」に由来する残基(例えばVにおいてはば残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)、そしてVにおいては26−32(H1)、53−55(H2)and 96−101(H3);Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987))を含む。
【0072】
「モノクローナル抗体」という用語は本明細書においては、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、即ち集団に含まれる個々の抗体はわずかな量において存在する場合がある可能な天然に生じた突然変異を除き、同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して指向される。更に又、異なる決定基(エピトープ)に指向された異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に指向される。その特異性のほかに、モノクローナル抗体は他の抗体に混入されることなく合成できるという点において好都合である。「モノクローナル」という修飾語は何れかの特定の方法による抗体の生産を必要とするとはみなされるべきではない。例えば、本発明において有用なモノクローナル抗体はKohler等、Nature,256:495(1975))により初めて報告されたハイブリドーマ方法により製造でき、又は、細菌、真核生物の動物又は植物細胞中の組み換えDNA法を用いて作成できる(例えば米国特許4,816,567参照)。「モノクローナル抗体」とはまたClackson等、Nature,352:624−628(1991),Marks等、J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)及び例えば後述する実施例に記載する通りの手法を用いてファージ抗体ライブラリから単離することもできる。
【0073】
本明細書に記載するモノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の種から誘導されるか、又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体における相当する配列と同一又は相同であるが、鎖の残余は別の種から誘導されるか、又は別の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体における相当する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体、並びに本発明の生物学的活性を呈する限りそのような抗体のフラグメントを包含する(例えば米国特許4,816,567;及びMorrison等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984)参照)。本明細書における目的のキメラ抗体は非ヒト霊長類(例えば旧世界サル、類人猿等)から誘導された可変ドメイン抗原結合配列及びヒト定常領域配列を含む「霊長類化された」抗体を包含する。
【0074】
「未損傷の」抗体とは抗原結合部位並びにC及び少なくとも重鎖定常ドメイン、C1、C2及びC3を含むものである。定常ドメインはネイティブの配列の定常ドメイン(例えばヒトのネイティブの配列の定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体であることができる。好ましくは未損傷の抗体は1つ以上のエフェクター機能を有する。
【0075】
「抗体フラグメント」とは、未損傷の抗体の一部分、好ましくは未損傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体フラグメントの例はFab、Fab’、F(ab’)及びFvフラグメント、ダイアボディー;線状抗体(米国特許5,641,870,実施例2;Zapata等、Protein Eng.8(10):1057−1062[1995]参照);単鎖抗体分子;及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体を包含する。
【0076】
「線状抗体」という表現は一般的にZapata等、Protein Eng.,8(10):1057−1062(1995)に記載されている。簡潔にはこれらの抗体は直列のFdセグメントの対(VH−CH1−VH−CH1)を有し、これらは相補な軽鎖ポリペプチドと一緒になって抗体結合領域の対を形成する。線状抗体は二重特異性又は単一特異性である。
【0077】
抗体のパパイン消化により「Fab」と称する2つの同一の抗原結合フラグメント、及び残余の「Fc」フラグメント、即ち容易に結晶化する能力を反映した標記のものが生じる。Fabフラグメントは完全なL鎖と共にH鎖の可変領域ドメイン(V)及び1つの重鎖の第1の定常ドメイン(C1)より成る。各Fabフラグメントは抗原結合に関して1価であり、即ちこれらは単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理により2価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合したFabフラグメントに概ね相当し、そしてなお抗原と交差結合できる単一の大型のF(ab’)が生じる。Fab’フラグメントは抗体ヒンジ領域に由来するシステイン1つ以上を含むC1ドメインのカルボキシ末端において追加的な数個の残基を有することによりFabフラグメントとは異なる。Fab’−SHは定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を担持しているFab’に関する本明細書における標記である。F(ab’)抗体フラグメントは当初は間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として作成された。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも知られている。
【0078】
Fcフラグメントはジスルフィドによりともに担持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能はFc領域における配列により決定され、この領域もまた特定の型の細胞上に存在するFc受容体(FcR)により認識される部分である。
【0079】
「Fv」は完全な抗原認識及び結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。このフラグメントは堅固な非共有結合の会合における1つの重鎖及び1つの軽鎖の可変領域ドメインの2量体より成る。これらの2つのドメインの折り畳みにより、抗原結合のためのアミノ酸残基を与え、そして抗体への抗原結合特異を付与する超可変ループ6つ(H及びL鎖から各々3ループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的なCDR僅か3つのみを含むFvの半分)であっても、完全な結合部位より低親和性ではあるが、抗原を認識して結合する。
【0080】
「単鎖Fv」は又「sFv」又は「scFv」とも略記され、単一のポリペプチド鎖内に連結されたV及びVの抗体ドメインを含む抗体フラグメントである。好ましくはsFvポリペプチドは更にsFvが抗原結合のための望ましい構造を形成できるようにするV及びVドメインの間のポリペプチドリンカーを含む。sFvに関する考察は、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore編、Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994);Borrebaeck 1995後記)を参照できる。
【0081】
「ダイアボディー」という用語はVドメインの鎖内対形成ではなく鎖間対形成が達成されることにより2価のフラグメント、即ち2つの抗原結合部位を有するフラグメントが生じるように、V及びVドメインの間に短いリンカー(約5〜10残基)を用いてsFvフラグメントを構築すること(上記の段落を参照のこと)により製造される小型の抗体フラグメントを指す。二重特異性ダイアボディーは2つの「クロスオーバー」したsFvフラグメントのヘテロ2量体であり、それにおいては2つの抗体のV及びVドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在している。ダイアボディーは例えばEP404,097;WO93/11161;及びHollinger等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)により詳細に説明されている。
【0082】
非ヒト(例えばげっ歯類)抗体の「ヒト化」型は非ヒト抗体から誘導された最小配列を含有するキメラ抗体である。大部分についてはヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、その場合レシピエントの超可変領域に由来する残基は所望の抗体特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域に由来する残基により置き換えられている。一部の例においては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が相当する非ヒト残基により置き換えられている。更に又、ヒト化抗体はレシピエントの抗体中、又はドナーの抗体中には存在しない残基を含むことができる。これらの修飾は抗体の性能を更に向上させるために行われる。一般的に、ヒト化抗体は実質的に全ての、少なくとも1つ、そして典型的には2つの可変ドメインを含み、その場合、超可変ループの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、そしてFRの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は場合により更に免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部分を含む。更に詳細な説明はJones等、Nature 321:522−525(1986);Riechmann等、Nature 332:323−329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)に記載されている。
【0083】
「種依存性抗体」とは、第1の哺乳類主に由来する抗原に対して、第2の哺乳類種に由来する抗原の相同体に対してそれが有するよりも、より強力な結合親和性を有する抗体である。通常は種依存性抗体はヒト抗原に対して「特異的に結合」する(即ち約1×10−7M以下、好ましくは約1×10−8M以下、そして最も好ましくは約1×10−9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)が、第2の非ヒト哺乳類種由来の抗原の相同体に対する結合親和性は、ヒト抗原に対するその結合親和性の少なくとも約1/50、又は少なくとも約1/500、又は少なくとも約1/1000である。種依存性抗体は上記した抗体の種々の型の何れかであることができるが、好ましくはヒト化抗体又はヒト抗体である。
【0084】
そのような実施形態において、「非標的」蛋白に対するポリペプチド、抗体、アンタゴニスト又は組成物の結合の程度は、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析又は放射性免疫沈降(RIA)により測定されるその特定の標的蛋白に対するポリペプチド、抗体、アンタゴニスト又は組成物の結合の約10%未満となる。標的分子に対するポリペプチド、抗体、アンタゴニスト又は組成物の結合に関しては、「特異的結合」又は特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープ「に特異的に結合する」又は「に対して特異的な」とは、非特異的相互作用とは測定可能に異なっている結合を意味する。特異的結合は例えば一般的に結合活性を有さない同様な構造の分子である対照分子の結合と比較しながら分子の結合を測定することにより求められる。例えば、特異的結合は標的と同様の対照分子、例えば未標識の標的の過剰量との競合により測定できる。この場合、標識された標的のプローブへの結合が過剰の未標識標的により競合的に抑制されれば、特異的結合が示される。「特異的結合」又は特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープ「に特異的に結合する」又は「に対して特異的な」とは、本明細書においては、少なくとも約10−4M、或いは少なくとも約10−5M、或いは少なくとも約10−6M、或いは少なくとも約10−7M、或いは少なくとも約10−8M、或いは少なくとも約10−9M、或いは少なくとも約10−10M、或いは少なくとも約10−11M、或いは少なくとも約10−12M又はそれ以上の標的に対するKdを有する分子により示されることができる。1つの実施形態において、「特異的結合」という用語は何れかの他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープには実質的に結合することなく特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープに分子が結合する場合の結合を指す。
【0085】
抗体の「エフェクター機能」とは抗体のFc領域(ネイティブ配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体のFc領域)に起因する生物学的活性を指し、そして抗体アイソタイプにより変動する。抗体エフェクターの例は、C1q結合及び補体依存性細胞毒性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC);貪食作用;細胞表面受容体のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化を包含する。「ネイティブ配列Fc領域」は天然に存在するFc領域のアミノ酸配列に同一であるアミノ酸配列を含む。Fc配列の例は例えば限定しないが、Kabat等、Sequences of Immunological Interest.第5版、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)に記載されている。
【0086】
「変異体Fc領域」は本明細書に記載した少なくとも1つの「アミノ酸修飾」のためにネイティブの配列のFc領域のものとは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは変異体Fc領域はネイティブの配列のFc領域と、又は親ポリペプチドのFc領域と比較した場合に少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば約1〜約10のアミノ酸置換、そして好ましくは約1〜約5つのアミノ酸置換を、ネイティブ配列のFc領域中、又は親ポリペプチドのFc領域中に有する。1つの実施形態において、本発明の変異体Fc領域はネイティブ配列のFc領域と少なくとも約80%の相同性、少なくとも約85%の相同性、少なくとも約90%の相同性、少なくとも約95%の相同性、又は少なくとも約99%の相同性を有することになる。別の実施形態によれば、本発明の変異体Fc領域は親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、少なくとも約85%の相同性、少なくとも約90%の相同性、少なくとも約95%の相同性、又は少なくとも約99%の相同性を有することになる。
【0087】
本明細書に記載するポリペプチド及び抗体に関して「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」又は「相同性」とは、如何なる保存的置換も配列同一性の部分とみなしながら配列をアラインした後に、比較すべきポリペプチドにおけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアライメントは当業者の知る種々の方法において、例えば市販のコンピューターソフトウエア、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアを用いて達成できる。当業者はアライメントを測定するための適切なパラメーター、例えば比較すべき配列の完全長に渡って最大のアライメントを達成するために必要ないずれかのアルゴリズムを決定できる。しかしながら本発明の目的のためには、%アミノ酸配列同一性の値は配列比較コンピュータープログラムALIGN−2を用いて発生させる。ALIGN−2配列比較コンピュータープログラムはGenentech,Inc.により著作されており、そしてソースコードは米国著作権局Washington D.C.20559にユーザードキュメンテーションとともにファイルされており、そこで米国著作権登録番号TXU510087の下に登録されている。ALIGN−2プログラムはGenentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから入手可能である。ALIGN−2プログラムはUNIX(登録商標)のOS、好ましくはデジタルUNIX(登録商標)のV4.0D上での使用のためにコンパイルしなければならない。全ての配列比較パラメーターはALIGN−2プログラムにより設定され、変化しない。
【0088】
「Fc領域含有ポリペプチド」という用語はFc領域を含む抗体又はイムノアドヘシン(後に定義)のようなポリペプチドを指す。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムによれば残基447)は例えばポリペプチドの精製の間、又はポリペプチドをコードする核酸の組み換え操作により、除去してよい。従って、本発明のFc領域を有する抗体を包含するポリペプチドを含む組成物は、全てのK447残基が除去されたポリペプチド集団、K447残基が除去されていないポリペプチド集団、又はK447残基含有及び非含有のポリペプチドの混合物を有するポリペプチドの集団を含むことができる。
【0089】
本明細書及び請求項全体を通じて、可変ドメイン内の残基(概ね、軽鎖の残基1〜107及び重鎖の残基1〜113)に言及する場合は一般的にKabatのナンバリングシステムを使用する(例えばKabat等、Sequences of Immunological Interest.第5版、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。免疫グロブリン重鎖定常領域における残基に言及する場合は一般的に「EUナンバリングシステム」又は「EUインデックス」を使用する(例えば参照により本明細書に組み込まれるKabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)において報告されているEUインデックス)。特段の記載が無い限り、抗体の可変ドメインにおける残基数に言及する場合は、Kabatのナンバリングシステムによる残基のナンバリングを意味する。特段の記載が無い限り、抗体の定常ドメインにおける残基数に言及する場合は、EUのナンバリングシステムによる残基のナンバリングを意味する。
【0090】
「Fc受容体」又は「FcR」という用語は抗体のFc領域に結合する受容体を説明するために使用する。1つの実施形態において、本発明のFcRはIgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、そしてFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIのサブクラスの受容体を包含し、そしてこれらの受容体の対立遺伝子変異体及びオルタナティブスプライシング形態も包含する。FcγRII受容体はFcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「抑制受容体」)を包含し、これらはその細胞質ドメインにおいて主に異なる同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAはその細胞質ドメイン内に免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を含有する。抑制受容体FcγRIIBはその細胞質ドメイン内に免疫受容体チロシン系抑制モチーフ(ITIM)を含有する(M.in Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203−234(1997)参照)。用語はアロタイプ、例えばFcγRIIIAアロタイプ:FcγRIIIA−Phe158、FcγRIIIA−Val158、FcγRIIA−R131及び/又はFcγRIIA−H131を包含する。FcR類はRavetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991);Capel等、Immunomethods 4:25−34(1994);及びde Haas等、J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)において検討されている。将来発見されるものを含めて他のFcRは本明細書における「FcR」という用語に包含される。用語は又、母IgGの胎仔への転移を担っている新生仔受容体FcRnも包含する(Guyer等、J.Immunol.117:587(1976)及びKim等、J.Immunol.24:249(1994))。
【0091】
「FcRn」という用語は新生仔Fc受容体(FcRn)を指す。FcRnは主要組織適合性複合体(MHC)と構造的に同様であり、そして、2−ミクログロブリンに非共有結合的に結合している鎖よりなる。新生仔Fc受容体FcRnの多数の機能はGhetie and Ward(2000)Annu.Rev.Immunol.18,739−766において検討されている。FcRnは母動物から仔への免疫グロブリンIgGの受動送達及び血清中IgGレベルの調節において役割を果たしている。FcRnは細胞内及び細胞間を渡る双方において未損傷の形態のピノサイトーシスに付されたIgGに結合して運搬し、そしてそれらをデフォルトの分解経路から救済するサルベージ受容体として機能する。
【0092】
WO00/42072(Presta)及びShields等、J.Biol.Chem.9(2):6591−6604(2001)はFcR類への向上又は減衰した結合を有する抗体変異体を記載している。これらの公開物の内容は特に参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
ヒトIgGのFc領域の「CH1ドメイン」(「H1」ドメインの「C1」とも称される)は通常は約アミノ酸118〜約アミノ酸215(EUナンバリングシステム)に伸長している。
【0094】
「ヒンジ領域」は通常はヒトIgGのGlu216からPro230までのストレッチとして定義される(Burton,Molec.Immunol.22:161−206(1985))。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は同じ位置において重鎖内S−S結合を形成する最初と最後のシステイン残基を入れることによりIgG1配列とアラインしてよい。
【0095】
Fc領域の「低ヒンジ領域(lower hinge region)」は通常はヒンジ領域に対して直ぐC末端の残基、即ちFc領域の残基233〜239のストレッチとして定義される。以前の報告においては、FcR結合は一般的にIgGFc領域の低ヒンジ領域中のアミノ酸残基に起因するとされていた。
【0096】
ヒトIgGのFc領域の「CH2ドメイン」(「H2」ドメインの「C2」とも称される)は通常は約アミノ酸231〜約アミノ酸340に伸長している。CH2ドメインはそれらが他のドメインと緊密に対形成しない点において独特である。むしろ、2つのN連結分枝炭水化物鎖が未損傷のネイティブのIgG分子の2つのCH2ドメインの間に挿入されている。炭水化物はドメイン−ドメインの対形成の代替を与え、そしてCH2ドメインの安定化を支援していると推定されている。Burton,Molec.Immunol.22:161−206(1985)。
【0097】
「CH3ドメイン」(「H3」ドメインの「C2」とも称される)はFc領域のCH2ドメインに対してC末端に残基のストレッチを含む(即ち抗体配列の約アミノ酸残基341からC末端、典型的にはIgGのアミノ酸残基446又は447において)。
【0098】
「機能的Fc領域」はネイティブ配列のFc領域の「エフェクター機能」を保有している。例示される「エフェクター機能」は、C1q結合;補体依存性細胞毒性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC);貪食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体、BCR)のダウンレギュレーション等を包含する。そのようなエフェクター機能は一般的に結合ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と組み合わせられるためにはFc領域を必要とし、そして例えば本明細書に開示する通り種々の試験を用いて評価できる。
【0099】
「C1q」が免疫グロブリンのFc領域に対する結合部位を包含するポリペプチドである。C1qは2つのセリンプロテアーゼ、C1r及びC1sと一緒になって複合体C1、即ち補体依存性細胞毒性(CDC)の経路の第1の要素を形成する。ヒトC1qは例えばQuidel,San Diego,CAから販売されている。
【0100】
「結合ドメイン」という用語は別の分子に結合するポリペプチドの領域を指す。FcRの場合は結合ドメインはFc領域への結合を担っているそのポリペプチド鎖(例えばそのアルファ鎖)の1部分を含むことができる。1つの有用な結合ドメインはFcRアルファ鎖の細胞外ドメインである。
【0101】
「改変された」FcR結合親和性、又はADCC活性を有する変異体IgGFcを有する抗体又はペプチボディーは、親ポリペプチド又はネイティブ配列のFc領域を含むポリペプチドと比較して、増強又は減衰したFcR結合活性(例えばFcγR又はFcRn)及び/又はADCC活性の何れかを有するものである。FcRに対して「増大した結合を示す」変異体Fcは親ポリペプチド又はネイティブ配列IgGFcよりも高値の親和性(例えば低値の見かけのKd又はIC50値)で少なくとも1つのFcRに結合する。一部の実施形態によれば、親ポリペプチドと比較した場合の結合の向上は約3倍、好ましくは約5、10、25、50、60、100、150、200、〜500倍、又は約25%〜1000%の結合の向上となる。FcRへの「低下した結合を示す」ポリペプチド変異体は、親ポリペプチドよりも低値の親和性(例えば高値の見かけのKd又は高値のIC50値)で少なくとも1つのFcRに結合する。親ポリペプチドと比較した場合の結合の低下は約40%以上の結合低下であってよい。
【0102】
「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」即ち「ADCC」とは特定の細胞毒性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(RcR類)に結合した分泌Igがこれらの細胞毒性エフェクター細胞を抗原担持標的細胞に特異的に結合し、その後細胞毒により標的細胞を殺傷することを可能とする細胞毒性の形態を指す。抗体は細胞毒性細胞を「武装」させ、そしてそのような殺傷のためには絶対的に必要である。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcRの発現はRavetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991)の464ページの表3中に総括されている。目的の分子のADCC活性を測定するためには、米国特許5,500,362又は5,821,337又は後述する実施例に記載されたもののようなインビトロのADCC試験を実施してよい。そのような試験のための有用なエフェクター細胞は末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を包含する。或いは、又は追加的に、目的の分子のADCC活性は例えばClynes等、PNAS(USA)95:652−656(1998)に開示されているもののような動物モデルにおいてインビボで試験してよい。
【0103】
「増大したADCCを示す」又は野生型IgGFcを有するポリペプチド又は親ポリペプチドよりもより効果的にヒトエフェクター細胞の存在下に抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を媒介する変異体Fc領域は、試験において変異体Fc領域を有するポリペプチド及び野生型Fc領域を有するポリペプチドの量が本質的に同じである場合は、インビトロ又はインビボでADCCの媒介において実質的により効果的であるものである。一般的に、そのような変異体は本明細書に開示する通りインビトロのADCC試験を用いて識別されるが、例えば動物モデル等、ADCC活性を測定するための別の試験又は方法も意図される。1つの実施形態において、好ましい変異体は野生型Fc(又は親ポリペプチド)よりもADCC媒介において約5倍〜約100倍、例えば約25〜約50倍、より効果的である。
【0104】
「補体依存性細胞毒性」即ち「CDC」とは、補体の存在下における標的細胞の溶解を指す。古典的な補体経路の活性化は自身の同族体抗原に結合した抗体(適切なサブクラス)への補体系の第1の成分(C1q)の結合により開始される。補体活性化を試験するためには、CDC試験、例えばGazzano−Santoro等、J.Immunol.Methods 202:163(1996)において記載されるものを実施してよい。
【0105】
改変されたFc領域のアミノ酸配列及び増大又は低下したC1q結合能力を有するポリペプチド変異体は、米国特許6,194,551B1及びWO99/51642に記載されている。これらの特許出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。更にまたIdusogie等、J.Immunol.164:4178−4184(2000)も参照できる。
【0106】
「ヒトエフェクター細胞」は1つ以上のFcRを発現し、そしてエフェクター機能を実施する白血球である。1つの実施形態によれば、細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、そしてADCCエフェクター機能を実施する。ADCCを媒介するヒト白血球の例は末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞及び好中球を包含し;PBMC及びNK細胞が好ましい。エフェクター細胞はそのネイティブの原料から、例えば本明細書に記載する通り血液又はPBMCから単離してよい。
【0107】
FcRnへの結合を測定する方法は知られており(例えばGhetie 1997,Hinton 2004参照)、そして後述する実施例にも記載されている。インビボにおけるヒトFcRnへの結合及びヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清中半減期は、例えばヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウス又はトランスフェクトされたヒト細胞株において、又は、Fc変異体ポリペプチドを投与された霊長類において試験できる。1つの実施形態において、特に、変異体IgGFcを有する本発明の抗アルファ5ベータ1抗体は野生型IgGFcを有するポリペプチドよりも少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも100倍、少なくとも125倍、少なくとも150倍高値のヒトFcRnに対する増大した結合親和性を示す。特定の実施形態においては、ヒトFcRnに対する結合親和性は約170倍高い。
【0108】
FcRnへの結合親和性に関しては、1つの実施形態において、ポリペプチドのEC50又は見かけのKd(pH6.0において)は1uM未満、より好ましくは100nM以下、より好ましくは10nM以下である。1つの実施形態においては、FcγRIII(F158;即ち低親和性アイソタイプ)に対する増大した結合親和性のためには、EC50又は見かけのKdは10nM以下であり、そしてFcγRIII(V158;高親和性アイソタイプ)に対しては、EC50又は見かけのKdは3nM以下である。別の実施形態によれば対照抗体(例えばHerceptin(登録商標)抗体)と比較した場合のFc受容体に対する抗体の結合の減少は、被験抗体及び対照抗体の結合曲線の中点における吸光度値の比が(例えばA450nm(抗体)/A450nm(対照Ab))が40%以下であれば対照抗体と比較して有意とみなしてよい。別の実施形態によれば対照抗体(例えばHerceptin(登録商標)抗体)と比較した場合のFc受容体に対する抗体の結合の増大は、被験抗体及び対照抗体の結合曲線の中点における吸光度値の比が(例えばA450nm(抗体)/A450nm(対照Ab))が125%以上であれば対照抗体と比較して有意とみなしてよい。例えば実施例16を参照できる。
【0109】
「親ポリペプチド」又は「親抗体」とは、変異体ポリペプチド又は抗体の作成元であり、そして変異体ポリペプチド又は抗体を比較する相手であるアミノ酸配列を含むポリペプチド又は抗体である。典型的には、親ポリペプチド又は親抗体は本明細書に開示したFc領域修飾1つ以上を欠いており、そして本明細書に開示したポリペプチド変異体と比較してエフェクター機能が異なる。親ポリペプチドはネイティブ配列のFc領域または既存のアミノ酸配列修飾(例えば付加、欠失及び/又は置換)を有するFc領域を含んでよい。
【0110】
本発明の抗体はファージディスプレイから誘導できる。本明細書においては、「ライブラリ」とは、複数の抗体又は抗体フラグメント配列、又はそのような配列をコードする核酸を指し、配列は本発明の方法によりこれらの配列に導入された変異体アミノ酸の組み合わせにおいて異なっている。
【0111】
「ファージディスプレイ」とは、変異体ポリペプチドを、ファージ、例えば繊維状ファージ、の粒子の表面上のコート蛋白の少なくとも一部分に対する融合蛋白としてディスプレイする手法である。ファージディスプレイの利用性はランダム化された蛋白変異体の大型のライブラリは、高い親和性で標的抗原に結合する配列を得るために迅速かつ効率的にソートできるという事実にある。ファージ上のペプチド及び蛋白のライブラリのディスプレイは特定の結合特性を有するものを求めて数100万のポリペプチドをスクリーニングするために使用されている。多価ファージディスプレイ法は繊維状ファージの遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIの何れかへの融合を介して小型のランダムペプチド及び小型の蛋白をディスプレイするために使用されている。Wells and Lowman,Curr.Opin.Struct.Biol.,3:355−362(1992)及びその引用文献。一価のファージディスプレイにおいては、蛋白又はペプチドのライブラリを遺伝子III又はその一部分に融合させ、ファージ粒子が融合蛋白を1コピーディスプレイするか全くディスプレイしないように、野生型遺伝子III蛋白の存在下に低レベルで発現させる。アビディティの作用は、ソーティングが内因性リガンド親和性に基づき、高ファージと比較して低減されており、そしてファージミドベクターを使用することによりDNA操作を簡素化している。Lowman and Wells,Methods:A companion to Methods in Enzymology,3:205−0216(1991)。
【0112】
「ファージミド」は最近の複製起点、例えばCo1E1及びバクテリオファージの遺伝子間領域のコピーを有するプラスミドベクターである。ファージミドは何れかの知られたバクテリオファージ上、例えば繊維状バクテリオファージ及びラムダ字状(lambdoid)のバクテリオファージ上で使用してよい。ファージミドは又一般的に抗生物質耐性に関して選択可能なマーカーを含有する。これらのベクターにクローニングされたDNAのセグメントはプラスミドとして増殖させることができる。これらのベクターを保有している細胞にファージ粒子製造のために必要なすべての遺伝子を提供すれば、プラスミドの複製の様式はローリングサークル複製に変化し、プラスミドDNAの1つの鎖のコピーが形成され、そしてファージ粒子がパッケージされる。プラスミドは感染性又は非感染性のファージ粒子を形成してよい。この用語は、異種ポリペプチドがファージ粒子の表面上にディスプレイされるように遺伝子融合物としての異種ポリペプチド遺伝子に連結されたファージコート蛋白遺伝子又はそのフラグメントを含有するファージミドを包含する。
【0113】
「ファージベクター」という用語は異種遺伝子を含有し、複製が可能であるバクテリオファージの2本鎖複製性形態を意味する。ファージベクターはファージの複製およびファージ粒子の形成を可能にするファージ複製起点を有する。ファージは好ましくは、繊維状バクテリオファージ、例えばM13、f1、fd、Pf3ファージ又はその誘導体、又はラムダ状ファージ、例えばラムダ、21、phi80、phi81、82、424、434等又はその誘導体である。
【0114】
ペプチボディー、イムノアドヘシン、抗体及び短鎖ポリペプチドのようなポリペプチドの共有結合修飾体は本発明の範囲に包含される。共有結合修飾の1つの型はポリペプチドのターゲティングされたアミノ酸残基をポリペプチドの選択された側鎖又はN又はC末端の残基と反応することができる有機性の誘導体化剤と反応させることを包含する。2官能性の薬剤で誘導体化することは、例えば、抗体を精製するための方法において使用するための水不溶性指示体又は表面にポリペプチドを交差結合させるために有用であり、またその逆もあり得る。一般的に使用されている交差結合剤は例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4−アジドサリチル酸とのエステル、ホモ2官能性イミドエステル、例えばジスクシンイミジル エステル、例えば3,3’−ジチオビス−(スクシンイミジル−プロピオネート)、2官能性マレイミド、例えばビス−N−マレイミド−1,8−オクタン及びメチル−3−[(p−アジドフェニル)−ジチオ]プロピオイミデートのような薬剤を包含する。
【0115】
その他の修飾は、グルタミニル及びアスパラギニル残基を脱アミド化してそれぞれ相当するグルタミル及びアスパルチル残基とすること、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル又はスレオニル残基のヒドロキシル基のホスホリル化、リジン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化[T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman&Co.,San Francisco,pp.79−86(1983)]、N末端アミンのアセチル化、及び何れかのC末端カルボキシル基のアミド化を包含する。
【0116】
その他の修飾は、毒素のアンタゴニストへのコンジュゲーション、例えばマイタンシン及びマイタンシノイド、カリケアマイシン及び他の細胞毒性剤が包含される。
【0117】
ポリペプチドの共有結合修飾の他の型は、米国特許4,640,835;4,496,689;4,301,144;4,670,417;4,791,192又は4,179,337に記載の態様において、ポリペプチドを種々の非蛋白性の重合体の1つ、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール又はポリオキシアルキレンに連結することを包含する。
【0118】
本発明のポリペプチドは又、別の異種のポリペプチド又はアミノ酸配列(例えばイムノアドヘシン又はペプチボディー)に融合したポリペプチドを含むキメラ分子を形成するための方法においても、好都合であれば修飾できる。
【0119】
1つの実施形態において、そのようなキメラ分子は、例えばヒト免疫不全ウィルスTAT蛋白の蛋白トランスダクションドメインを用いて、種々の組織への、そしてより特定すれば血液脳関門を通過する送達のためにポリペプチドをターゲティングする蛋白トランスダクションドメインとのポリペプチドの融合を含む(Schwarze等、1999,Science 285:1569−72)。
【0120】
別の実施形態においては、そのようなキメラ分子は抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを与えるタグポリペプチドとのポリペプチドの融合を含む。エピトープタグは一般的にポリペプチドのアミノ又はカルボキシル末端に位置する。そのようなポリペプチドのエピトープタグ型の存在はタグポリペプチドに対する抗体を用いて検出できる。更に又エピトープタグを与えることは、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合するアフィニティーマトリックスの別の型を用いたアフィニティー精製により、ポリペプチドを容易に精製可能とする。種々のタグポリペプチド及びその対応する抗体は当業者の知る通りである。例としてはポリ−ヒスチジン(poly−His)又はポリ−ヒスチジン−グリシン(poly−His−gly)タグ;flu HAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Field等、Mol.Cell.Biol.,8:2159−2165(1988)];c−mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evan等、Molecular and Cellular Biology,5:3610−3616(1985)];及び単純疱疹ウィルス糖蛋白D(gD)タグ及びその抗体[Paborsky等、Protein Engineering,3(6):547−553(1990)]が包含される。他のタグポリペプチドはFlag−ペプチド[Hopp等、BioTechnology,6:1204−1210(1988)];KT3エピトープペプチド[Martin等、Science,255:192−194(1992)];α−チューブリンエピトープペプチド[Skinner等、J.Biol.Chem.266:15163−15166(1991)];及びT7遺伝子10蛋白ペプチドタグ[Lutz−Freyermuth等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6393−6397(1990)]を包含する。
【0121】
別の実施形態においては、キメラ分子は免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定の領域とのポリペプチドの融合を含むことができる。キメラ分子の2価の形態(例えばイムノアドヘシン)については、そのような融合はIgG分子のFc領域に対するものとなる。本発明のIg融合はIg分子内の可変領域少なくとも1つの代わりに、概ね、又は僅かヒトの残基94〜243m残基33〜53、又は残基33〜52を含むポリペプチドを包含する。特に好ましい実施形態においては、免疫グロブリン融合はIgG1分子のヒンジ、CH2及びCH3、又はヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を包含する。免疫グロブリン融合物の製造に関しては、1995年6月27日に発行された米国特許5,428,130を参照できる。
【0122】
本発明は回帰性の腫瘍成長又は回帰性の癌細胞の成長を抑制または防止するための方法及び組成物を提供する。種々の実施形態において、癌は回帰性の腫瘍成長又は回帰性の癌細胞の成長であり、その場合、癌細胞の数は有意には低減していないか、又は増大しているか、又は腫瘍のサイズが有意には低減していないか、又は増大しているか、又は癌細胞の大きさ又は数におけるそれ以上の低減が不可能である。癌細胞が回帰性の腫瘍成長又は回帰性の癌細胞の成長であるかどうかの決定は、癌細胞に対する治療の有効性を評価するための当該分野で知られた何れかの方法によりインビボ又はインビトロの何れかで行うことができる。抗VEGF治療に対する腫瘍の抵抗性は回帰性腫瘍成長の1例である。
【0123】
本明細書に開示するポリペプチド、抗体、アンタゴニスト又は組成物の「有効量」とは、特に記載された目的を実施するために十分な量である。「有効量」は実験的に、そして記載された目的に関する知られた方法により決定することができる。
【0124】
「治療有効量」という用語は哺乳類(別称患者)における疾患又は障害を「治療する」ために有効な本発明の抗体、ポリペプチド又はアンタゴニストの量を指す。癌の場合は薬剤の治療有効量は癌細胞の数を低減;腫瘍のサイズ又は重量を低減;周辺臓器へのがん細胞の浸潤を抑制(即ち、ある程度緩徐化及び好ましくは停止);腫瘍転移を抑制(即ち、ある程度緩徐化及び好ましくは停止);腫瘍成長をある程度まで抑制;及び/又は癌に関連する症状の1つ以上をある程度まで緩和することができる。薬剤が既存の癌細胞に対して成長防止及び/又は殺傷できる限り、それは細胞増殖抑制性及び/又は細胞毒性であることができる。1つの実施形態において、治療有効量は成長抑制量である。別の実施形態においては、治療有効量は患者の生存を延長する量である。別の実施形態においては、治療有効量は患者の無進行生存を向上させる量である。
【0125】
創傷治癒の場合、「有効量」又は「治療有効量」という用語は対象における創傷治癒を加速又は向上させるために有効な薬剤の量を指す。治療的用量は患者に対して治療効果を示す用量であり、そして、治療未満用量とは治療される患者に対して治療効果を呈さない用量である。
【0126】
「慢性創傷」とは治癒しない創傷を指す。例えばLazarus等、Definitions and guidelines for assessment of wounds and evaluation of healing,Arch.Dermatol.130:489−93(1994)を参照できる。慢性創傷は、限定しないが、例えば動脈の潰瘍、糖尿病性潰瘍、圧力潰瘍、静脈潰瘍等を包含する。急性の創傷は慢性の創傷に発展する場合がある。急性の創傷は、限定しないが、例えば熱的傷害により生じた創傷、外傷、手術、広範な皮膚癌の切除、深部のカビ又は細菌感染、血管炎、硬皮症、天疱瘡、毒性表皮壊死疾患等を包含する。例えばBuford,Wound Healing and Pressure Sores,HealingWell.com,published on:October 24,2001参照できる。「正常な創傷」とは通常の創傷治癒修復が起こる創傷を指す。
【0127】
本発明のポリペプチド、抗体、アンタゴニスト及び組成物の「成長抑制量」とは細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞の成長をインビトロ又はインビボの何れかで抑制することができる量である。新生物性の細胞の成長を抑制する目的のための本発明のポリペプチド、抗体、アンタゴニスト及び組成物の「成長抑制量」は実験的に、そして知られた方法により、又は本明細書に記載する例により決定することができる。
【0128】
本発明のポリペプチド、抗体、アンタゴニスト及び組成物の「細胞毒性量」とは細胞、特に腫瘍、例えば癌細胞の破壊をインビトロ又はインビボの何れかで誘発することができる量である。新生物性の細胞の成長を抑制する目的のための本発明のポリペプチド、抗体、アンタゴニスト及び組成物の「細胞毒性量」は実験的に、そして当該分野で知られた方法により決定することができる。
【0129】
「自己免疫疾患」とは、本明細書においては、個体自身の組織から生じ、そしてそれに対して指向される障害又は疾患、又はその同時派生又は顕在化又はそれから生じる状態である。自己免疫疾患又は障害の例は限定しないが、関節炎(慢性関節リューマチ、例えば急性関節炎、慢性の慢性関節リューマチ、痛風性関節炎、急性痛風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変性関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、脊椎関節炎及び若年発生性慢性関節リューマチ、変形性関節症、進行性慢性関節炎、変形性関節炎、慢性多発性一次関節炎、反応性関節炎、及び強直性脊椎炎)、炎症性増殖亢進性皮膚疾患、乾癬、例えばプラーク乾癬、滴状乾癬(gutatte psoriasis)、膿疱性乾癬及び爪乾癬、皮膚炎、例えば接触性皮膚炎、慢性接触性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、疱疹状皮膚炎、及びアトピー性皮膚炎、x連鎖高IgM症候群、蕁麻疹、例えば慢性特発性蕁麻疹、例えば慢性自己免疫性蕁麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、毒性表皮壊死、硬皮症(例えば全身性硬皮症)、硬化症、例えば多発性硬化症(MS)、例えば脊髄視神経MS、一次進行性MS及び回帰性弛張性MS、進行性全身硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、播種性硬化症及び失調性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病、結腸炎、例えば潰瘍性結腸炎、結腸潰瘍、顕微鏡的結腸炎、コラーゲン性結腸炎、結腸ポリポーシス、壊死性腸炎、及び経壁性結腸炎、及び自己免疫性の炎症性腸疾患)、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、一次硬化性胆管炎、上強膜炎)、呼吸促進症候群、例えば成人性又は急性の呼吸促進症候群(ARDS)、髄膜炎、ブドウ膜の全部又は部分の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液学的生涯、リューマチ様脊椎炎、突然聴力損失、IgE媒介疾患、例えばアナフィラキシー及びアレルギー性及びアトピー性の鼻炎、脳炎、例えばラスムッセン脳炎及び辺縁系及び/又は脳幹の脳炎、ブドウ膜炎、急性前部ブドウ膜炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、又は自己免疫性ブドウ膜炎、糸球体腎炎(GN)で腎症候群を伴うか伴わないもの、例えば慢性又は急性の糸球体腎炎、例えば一次性GN、免疫媒介GN、膜性GN(膜性腎症)、特発性膜性GN、膜性増殖性GN(MPGN)、例えばI型及びII型、及び急速進行性GN、アレルギー性状態、アレルギー性反応、湿疹、例えばアレルギー性又はアトピー性湿疹、喘息、例えば気管支の喘息、気管支喘息、及び自己免疫性喘息、T細胞の浸潤及び慢性の炎症性応答の関与する状態、慢性の肺の炎症性疾患、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全、全身性エリテマトーデス(SLE)又は全身エリテマトーデス、例えば皮膚SLE、亜急性皮膚エリテマトーデス、新生児性エリテマトーデス(NLE)、播種性エリテマトーデス、狼瘡(例えば腎炎、脳炎、小児性、非腎性、円板状脱毛)、若年発症性(I型)の真性糖尿病、例えば小児インスリン依存性真性糖尿病(IDDM)、成人発症性真性糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性尿崩症(idiopathic diabetes insipidus)、サイトカイン及びTリンパ球により媒介される急性及び遅発性の高血圧に関連する免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症、例えばリンパ腫様肉芽腫症、ウェーゲナー肉芽腫症、顆粒球減少症、血管腫類、例えば血管腫(例えば大型血管の血管炎(例えばリューマチ性多発性筋痛及び巨細胞性(高安)動脈炎)、中型血管の血管炎(例えば川崎病及び結節性多発性動脈炎)、顕微鏡性多発性動脈炎、CNS血管炎、壊死性、皮膚性又は高血圧性の血管炎、全身性壊死性血管炎、及びANCA−関連性血管炎、例えばチャーグ−ストラウス血管炎又は症候群(CSS))、側頭動脈炎、再生不良性貧血、自己免疫性再生不良性貧血、クームス陽性貧血、ダイアモンドブラックファン貧血、溶血性貧血又は免疫性溶血性貧血、例えば自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血(悪性の貧血)、アジソン病、赤芽球性貧血又は再生不良(PRCA)、第VIII因子不全、A型血友病、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出の関連する疾患、CNS炎症性障害、多臓器傷害症候群、例えば敗血症、外傷又は出血に二次的なもの、抗原−抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス−ジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば類天疱瘡性水疱及び皮膚類天疱瘡、天疱瘡(例えば尋常天疱瘡、落葉状天疱瘡、粘膜天疱瘡、及び紅斑性天疱瘡)、自己免疫性多発性内分泌腺症、ライター病又は症候群、免疫複合体性腎炎、抗体媒介腎炎、慢性神経障害、例えばIgM多発性神経障害又はIgM媒介神経障害、血小板減少症(例えば心筋梗塞患者が発症する者)、例えば血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)及び自己免疫性又は免疫媒介性の血小板減少症、例えば特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、例えば慢性又は急性のITP、精巣及び卵巣の自己免疫疾患、例えば自己免疫性精巣炎及び卵巣炎、一次性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫性内分泌症、例えば甲状腺炎、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、又は亜急性の甲状腺炎、自己免疫性甲状腺症、特発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、多腺性症候群、例えば自己免疫性多腺性症候群(又は多腺性内分泌病症候群)、腫瘍随伴性症候群、例えば神経学的腫瘍随伴性症候群、例えばランバート−イートン筋無力症症候群又はイートン−ランバート症候群、スティッフマン又はスティッフパーソン症候群、脳脊髄炎、例えばアレルギー性脳脊髄炎又はアレルギー性の脳脊髄炎、及び実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、脳変性、神経筋緊張症、眼球クローヌス又は眼球クローヌス筋クローヌス症候群(OMS)、及び二次性神経障害、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、慢性肝炎、ルポイド肝炎、巨細胞肝炎、慢性活動性肝炎又は自己免疫性慢性活動性肝炎、リンパ様間質性肺炎、閉塞性細気管支炎(非移植)vs NSIP、ギヤン−バレー症候群、ベルガー病(IgA腎症)、特発性IgA腎症、線状IgA皮膚病、一次胆汁性肝硬変、肺硬変、自己免疫性腸症症候群、セリアック病、セリアック症、セリアックスプルー(グルテン腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルーゲーリック病)、冠動脈疾患、自己免疫性内耳疾患(AIED)、又は自己免疫性聴覚損失、眼球クローヌス筋クローヌス症候群(OMS)、多発性軟骨炎、例えば難治性又は回帰性の多発性軟骨炎、肺胞蛋白症、アミロイド症、強膜炎、非癌性リンパ球増加症、一次リンパ球増加症、例えばモノクローナルB細胞リンパ球増加症(例えば良性の単一クローン高ガンマグロブリン血症及び意義不明の単一クローン高ガンマグロブリン血症、MGUS)、末梢神経障害、新生物随伴症候群、チャンネル病、例えば癲癇、片頭痛、不整脈、筋肉障害、聾唖、盲目、周期的麻痺、及びCNSのチャンネル病、自閉症、炎症性筋障害、巣状分節状糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼症、ブドウ膜網膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝臓障害、線維性筋痛症、多発性内分泌障害、シュミット症候群、副腎炎、胃の萎縮、初老性痴呆症、脱髄性疾患、例えば自己免疫性脱髄性疾患、糖尿病性腎症、ドレスラー症候群、円形脱毛症、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道運動不全、手指硬化症及び毛細管拡張症)、雌雄の自己免疫性不妊、混合型結合組織病、シャーガス病、リューマチ熱、再発性流産、農夫肺、多形性紅斑、心臓切開後症候群、クッシング症候群、鳥飼育者肺、アレルギー性肉芽腫性血管炎、良性リンパ性血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎及び繊維性肺胞炎、間質性肺疾患、輸液反応、らい病、マラリア、リューシュマニア症、キパノソミアシス(kypanosomiasis)、住血吸虫症、回虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維症、びまん性間質性肺線維症、間質性肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、眼内炎、持続性隆起性紅斑、胎児性赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シャルマン症候群、フェルティ症候群、フィラリア症、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、異虹彩色性毛様体炎、又はフックス毛様体炎、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)感染症、エコーウィルス感染症、心筋症、アルツハイマー病、パルボウィルス感染症、風疹ウィルス感染症、ワクチン後症候群、先天性風疹感染症、エプスタイン−バーウィルス感染症、おたふくかぜ、エバンス症候群、自己免疫性生殖腺不全、シドナム舞踏病、連鎖球菌感染後の腎炎、血栓性血管炎、甲状腺中毒症、脊髄ろう、絨毛炎、巨細胞多発性筋痛、内分泌性眼症、慢性高血圧性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎臓症候群、微小変化腎症、良性の家族性及び虚血再灌流性の傷害、網膜の自己免疫、関節の炎症、気管支炎、慢性閉塞性気道病、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化性障害、無精液症、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュプュイトラン拘縮、眼内水晶体アナフィラキシー、アレルギー性腸炎、らい性結節性紅斑、特発性顔面麻痺、慢性疲労症候群、リューマチ熱、ハンマン−リッチ病、感覚神経聴覚消失、ヘモグロビン尿症性発作、性機能低下症、地域性回腸炎、白血球減少症、感染性単核細胞症、横断脊髄炎、一次特発性粘液水腫、腎症、交感神経性眼症、肉芽腫性精巣炎、膵臓炎、急性多発性神経根炎、壊疽性膿皮症、ケルバイン甲状腺炎、後天性脾臓形成不全、抗精子抗体による不妊、非悪性胸腺腫、白斑、SCID及びエプスタイン−バーウィルス関連の疾患、後天性免疫不全症候群(AIDS)、寄生虫病、例えばリューシマニア症、毒性ショック症候群、食物中毒、T細胞浸潤の関与する状態、白血球接着不全、サイトカイン及びTリンパ球により媒介される急性及び遅発性の高血圧に関連する免疫応答、白血球漏出の関連する疾患、多臓器傷害症候群、抗原−抗体複合体媒介疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫性多発性内分泌腺症、卵巣炎、一次粘液水腫、自己免疫性萎縮性胃炎、交感神経性眼症、リューマチ症、混合型結合組織病、腎症候群、インスリン炎、多発性内分泌障害、末梢神経障害、I型自己免疫性多内分泌腺症候群、特発性副甲状腺機能亢進症の成人発症(AOIH)、完全脱毛症、拡張性心筋症、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、腎症候群、一次硬化性胆管炎、化膿性又は非可能性の副鼻腔炎、急性又は慢性の副鼻腔炎、篩骨、前頭、上顎又は蝶形骨副鼻腔炎、好酸球関連の障害、例えば好酸球増加症、肺浸潤好酸球、好酸球増加症−筋痛症候群、レフラー症候群慢性好酸球性肺炎、局所的肺好酸球症、気管支肺アスペルギルス症、アスペルギルス腫、又は好酸球を含有する肉芽腫、アナフィラキシー、セロネガティブ脊椎関節炎、多発性内分泌性自己免疫疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性の粘膜皮膚カンジダ症、ブルトン症候群、幼児における一過性低ガンマグロブリン血症、ビスコット−オールドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調、コラーゲン病に関連する自己免疫性障害、リューマチ、神経学的障害、虚血再灌流障害、血圧応答の低減、血管機能不全、血管拡張症、組織傷害、心臓血管虚血、痛覚過敏、脳虚血、及び脈管形成を伴う疾患、アレルギー性過敏症障害、糸球体腎炎、再灌流傷害、心筋又は他の組織の再灌流傷害、急性炎症性要素を伴った皮膚症、急性化膿性髄膜炎又は他の中枢神経系の炎症性障害、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘導毒性、急性重症炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、肺硬化症、糖尿病性網膜症、糖尿病性大型動脈障害、動脈内膜過形成、消化性潰瘍、心弁膜炎及び子宮内膜炎を包含する。
【0130】
癌の治療は例えば限定しないが、腫瘍の後退、腫瘍の重量またはサイズの縮小、進行までの時間、生存期間、無進行生存、全体的応答率、応答期間、クオリティーオブライフ、蛋白発現及び/又は活性により評価できる。本明細書に記載した抗血管新生剤は腫瘍の脈管形成をターゲティングし、必ずしも新生物細胞自体をターゲティングしないため、それらは抗癌剤の独特のクラスとなり、そしてそのため、薬剤への臨床応答の独特の尺度及び定義を必要とする場合がある。例えば2次元分析において50%超の腫瘍縮小は応答を宣言するための標準的なカットオフである。しかしながら、本明細書のアルファ5ベータ1アンタゴニスト及びVEGFアンタゴニストは原発腫瘍の縮小を伴うことなく転移拡張の抑制をもたらす場合があり、或いは単に腫瘍増殖抑制作用を示す場合がある。従って、治療の効果を測定する方策、例えば血漿中又は尿中の血管新生剤マーカーの測定及び放射線撮影を介した応答の測定を使用することができる。
【0131】
治療すべき適応症及び当該分野の医師がよく知る投薬に関連する因子に応じて、本発明の抗体は毒性及び副作用を最小限としつつその適応症の治療のために有効である用量において投与される。癌、自己免疫疾患又は免疫不全疾患の治療のためには、治療有効用量は、例えば50mg/投薬〜2.5g/m2の範囲であることができる。1つの実施形態において、投与される用量は約250mg/m2〜約400mg/m2又は500mg/m2である。別の実施形態によれば、用量は約250〜375mg/m2である。更に別の実施形態において、用量範囲は275〜375mg/m2である。
【0132】
加齢関連黄斑変性(AMD)の治療は限定しないが、視野の損失の速度の低減又は更なる進行の防止により評価できる。AMD治療のためにはインビボの薬効は例えば以下の1つ、即ち、所望の時期までのベースラインからの最高補正視力(BCVA)における平均の変化を測定すること、ベースラインと比較した場合の所望の時期における視力において15文字より少ない損失の対象の比率を測定すること、ベースラインと比較した場合の所望の時期における視力において15文字より多い獲得の対象の比率を測定すること、所望の時期における20/2000又はこれより悪い視力スネレン等量を有する対象の比率を測定すること、NEI視覚機能アンケートを測定すること、フルオレセインアンジオグラフィーで測定した場合の所望の時期におけるCNVのサイズ及びCNVの漏出量を測定すること等により測定できる。
【0133】
「検出する」という用語は物質の存在又は非存在を測定すること、又は物質の量を定量することを包含する。即ち用語は定性的及び定量的測定のための本発明の物質、組成物及び型法の使用を指す。一般的に、検出のために使用される特定の手法は本発明の実施のためには厳密ではない。
【0134】
例えば、本発明により「検出する」とは、アルファ5遺伝子産物、mRNA分子、又はアルファ5ポリペプチドの存在又は非存在;アルファ5ポリペプチドのレベル又は標的に結合した量の変化;アルファ5ポリペプチドの生物学的機能/活性の変化を観察することを包含する。一部の実施形態においては、「検出する」とは野生型のアルファ5のレベルを検出することを包含する(例えばmRNA又はポリペプチドのレベル)。検出は10%と90%の間の何れかの値の、又は30%と60%の間の何れかの値の、又は100%を超える変化(増大又は低下)を定量することを包含してよい。検出は2倍〜10倍以上の何れかの値、例えば100倍の変化を定量することを包含する。
【0135】
本明細書において使用する場合の単語である「標識」とは、抗体に直接又は間接的に結合体化される検出可能な化合物又は組成物を指す。標識はそれ自体検出可能(例えば放射性同位体標識又は蛍光標識)であるか、又は、酵素標識の場合は、検出可能な物質の化合物又は組成物の化学的改変を触媒してよい。
【0136】
新しい抗アルファ5ベータ1抗体
ヒトアルファ5ベータ1に結合し、そしてヒトアルファ5ベータ1への抗アルファ5ベータ1抗体の結合を競合的に抑制することができる新しい抗体を本明細書において提供する。1つの実施形態によれば、抗アルファ5ベータ1抗体は2006年3月7日にATCCにおいてアルファ5/ベータ1 7H5.4.2.8(ATCC No.PTA−7421)として寄託されたハイブリドーマ及びアルファ5/ベータ17H12.5.1.4(ATCC No.PTA−7420)として寄託されたハイブリドーマからなる群より選択されるハイブリドーマにより生産される。別の実施形態によれば、抗体は2006年3月7日にATCCにおいてアルファ5/ベータ1 7H5.4.2.8(ATCC No.PTA−7421)として寄託されたハイブリドーマ及びアルファ5/ベータ17H12.5.1.4(ATCC No.PTA−7420)として寄託されたハイブリドーマからなる群より選択されるハイブリドーマにより生産される。更に別の実施形態によれば、抗体は請求項1記載の抗体であって、抗体が2006年3月7日にATCCにおいてアルファ5/ベータ1 7H5.4.2.8(ATCC No.PTA−7421)として寄託されたハイブリドーマにより生産される抗体の可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)ドメイン配列を含む。別の実施形態においては、抗体は、2006年3月7日にATCCにおいてアルファ5/ベータ17H12.5.1.4(ATCC No.PTA−7420)として寄託されたハイブリドーマにより生産される抗体の可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)ドメイン配列を含む。寄託したハイブリドーマの抗体のヒト及びキメラ型も意図される。
【0137】
1つの実施形態によれば、抗体は500nM〜1pMのKdでヒトアルファ5ベータ1に結合する。別の実施形態によれば、抗体がアルファVベータ3にもアルファVベータ5にもアルファVベータ1にも結合しない。別の実施形態によれば、抗体はヒトIgG、例えばヒトIgG1又はヒトIgG4のFc配列を含む。別の実施形態においては、Fc配列は、そのFc受容体(FcR類)への結合に関係している場合が多い抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)エフェクター機能を欠いているように、改変又は別様に変更されている。エフェクター機能を改変することができるFc配列に対する変更または突然変異には多くの例が存在する。例えば、WO00/42072(Presta)and Shields等、J.Biol.Chem.9(2):6591−6604(2001)はFcR類への向上した、又は減衰した結合を有する抗体変異体を記載している。これらの刊行物の内容は、具体的に参考として本明細書に援用される。抗体はFab、Fab’、F(ab’)、単鎖Fv(scFv、Fvフラグメント;ダイアボディー及び線状抗体の形態であることができる。更に又、抗体はアルファ5ベータ1に結合し、そしてアルファ5ベータ1アンタゴニストであるが、他の標的1つ以上にも結合してそれらの機能(例えばVEGF)を抑制する多重特異性の抗体であることもできる。抗体は治療薬(例えばサイトカイン剤、放射性同位体及び化学療法剤)又は画像化により患者試料中、又はインビボのアルファ5ベータ1を検出するための標識(例えば放射性同位体、蛍光染料及び酵素)に結合体化することができる。
【0138】
抗アルファ5ベータ1抗体をコードする核酸分子、可変ドメインの一方又は両方をコードする核酸分子を含む発現ベクター、及び核酸分子を含む細胞も意図される。これらの抗体は本明細書に記載した治療において、そして患者試料中(例えばFACS、免疫組織化学(IHC)、ELISAアッセイ)又は患者中のアルファ5ベータ1蛋白を検出するために使用できる。
【0139】
新しい組み合わせ
疾患に罹患した対象における血管新生及び/又は血管透過性を抑制するための新しい組み合わせであり、その組み合わせはVEGFアンタゴニスト及びアルファ5ベータ1アンタゴニストを含む。VEGFアンタゴニスト及びアルファ5ベータ1アンタゴニストは同時又は逐次的な治療サイクルにおいて投与できる。そのような複合療法は異常な血管新生及び/又は血管透過性を有し、そして抗血管新生療法から利益を被る疾患を包含する疾患を治療するために有用である。そのような疾患は、限定しないが、癌、眼の疾患及び自己免疫疾患を包含する。或いは、対象はVEGFアンタゴニストで治療され、そして後にアルファ5ベータ1アンタゴニストを投与されることができ、例えば対象がVEGFアンタゴニスト治療に非応答性となるまでVEGFアンタゴニストで治療し、そして次に対象をアルファ5ベータ1アンタゴニストで治療する。1つの実施形態によれば、対象は癌が非侵襲性である場合にはVEGFアンタゴニストで治療し、癌が侵襲性である場合にはアルファ5ベータ1アンタゴニストで治療される。非疾患患者又は対照と比較して、天然に、又はVEGFアンタゴニスト療法に応答して、上昇したアルファ5ベータ1レベルを経験する一部の患者は、この複合治療に特に応答性となる場合がある。治療薬(例えば抗腫瘍剤、化学療法剤、増殖抑制剤及び細胞毒性剤)を更に含む組み合わせが意図される。例えば化学療法剤(例えばイリノテカン)及びアルファ5ベータ1アンタゴニストで治療される予定の、又は、化学療法及びアルファ5ベータ1アンタゴニストで治療されている患者は、VEGFアンタゴニスト療法から利益を被ることができる。或いは、化学療法及びVEGFアンタゴニストで治療されている患者は、アルファ5ベータ1アンタゴニスト療法から利益を被ることができる。1つの好ましい実施形態においては、抗VEGF抗体はAvastin(登録商標)抗体である。別の好ましい実施形態においては抗アルファ5ベータ1抗体は本明細書に記載した抗アルファ5ベータ1抗体である。VEGFアンタゴニスト、アルファ5ベータ1アンタゴニスト及び場合により化学療法剤を含むキットが意図される。
【0140】
医薬品製剤
本発明により使用される抗体の治療用製剤は、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態において、任意の生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))に所望の程度の純度を有する抗体を混合することにより保存用に製造される。許容される担体、賦形剤又は安定化剤は使用される用量及び濃度においてレシピエントに非毒性であり、そして、緩衝物質、例えばリン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸及びメチオニン;保存料(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン;セタノール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;蛋白、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;単糖類、2糖類及び他の炭水化物、例えばグルコース、マンノース又はデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えばZn−蛋白複合体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)を包含する。例示される抗体製剤は参照により本明細書に組み込まれるWO98/56418に記載されている。皮下投与に適する凍結乾燥製剤はWO97/04801に記載されている。そのような凍結乾燥された製剤は適当な希釈剤で再構成して高蛋白濃度とし、そして再構成製剤を本明細書における治療すべき哺乳類に皮下投与してよい。
【0141】
本発明の製剤は又、治療すべき特定の適応症のために必要に応じて1種より多い活性化合物、好ましくは相互に悪影響を与えない補完的活性を有するものを含有してよい。例えば、更に細胞毒性剤、化学療法剤、サイトカイン又は免疫抑制剤(例えばT細胞に作用するもの、例えばシクロスポリン又はT細胞に結合する抗体、例えばLFA−1に結合するもの)を与えることが望ましい。そのような他の薬剤の有効量は製剤中に存在する抗体の量、疾患又は障害又は治療の型、及び上記した他の要因に応じたものとなる。それらは一般的に本明細書に記載した用量及び投与経路と同様に、又は、これまで使用された用量の約1〜99%で使用される。
【0142】
活性成分はまた例えばコアセルベーション法によるか、又は、界面重合により製造されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマクロエマルジョン中に捕獲させてもよい。このような手法はRemington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に記載されている。
【0143】
持続放出製剤を製造してよい。持続放出製剤の適当な例はアンタゴニストを含有する固体疎水性重合体の半透過性マトリックスを包含し、そのようなマトリックスは形状付与された物品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許3,773,919)、L−グルタミン酸及びエチル−L−グルタメートの共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸共重合体、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸共重合体及び酢酸ロイプロリドよりなる注射可能なマイクロスフェア)及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を包含する。
【0144】
インビボ投与のために使用されるべき製剤は滅菌されていなければならない。これは滅菌濾過メンブレンを通過する濾過により容易に達成される。
【0145】
製造物品及びキット
本発明の別の実施形態は腫瘍、眼の疾患又は自己免疫疾患及び関連の状態の治療のために有用な材料物質を含有する製造物品が提供される。製造物品は容器及び容器上又はそれに伴ったラベル又はパッケージインサートを含む。適当な容器は例えばビン、バイアル、シリンジ等を包含する。容器は種々の材料、例えばガラス又はプラスチックから形成してよい。一般的に容器は状態の治療に有効となる組成物を保持しており、そして滅菌された接触口を有してよい(例えば容器は静脈内投与用の溶液バッグ又は皮下注射針により穿刺可能な蓋つきのバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は本発明のVEGFアンタゴニスト又はアルファ5ベータ1アンタゴニスト又はVEGFアゴニスト又はアルファ5ベータ1アゴニストである。ラベル又はパッケージインサートは、組成物が特定の状態を扱うために使用されることを示している。ラベル又はパッケージインサートは更に患者への抗体組成物の投与に関する説明書を含むことになる。本明細書に記載したコンビナトリアル療法を含む製造物品及びキットもまた意図される。
【0146】
パッケージインサートとは治療用製品の市販用パッケージ内に寛容的に包含される説明書を指し、それはそのような治療用製品の使用に関する、適応症、レジメン、用量、投与、禁忌及び/又は警告に関する情報を含んでいる。1つの実施形態において、パッケージインサートは非ホジキンリンパ腫を治療するために組成物が使用されることを示している。
【0147】
更に又、製造物品は製薬上許容しうる緩衝物質、例えば殺菌増殖抑制性の注射用水(BWFI)、ホスフェート緩衝食塩水、リンゲル溶液及びデキストロース溶液を含む第2の容器を更に含んでよい。それは更に商業的、及びユーザーの見地から望ましい他の物質、例えば他の緩衝物質、希釈剤、充填剤、針及びシリンジを包含してよい。
【0148】
種々の目的のため、例えば患者におけるアルファ5ベータ1及び/又はVEGFの単離又は検出のために有用なキットもまた、場合により製造物品と組み合わせて提供される。アルファ5ベータ1の単離及び精製のためには、キットはビーズ(例えばセファロースビーズ)にカップリングさせた抗アルファ5ベータ1抗体を含有できる。例えばELISA
又はウエスタンブロットにおけるインビトロのアルファ5ベータ1及び/又はVEGFの検出及び定量のための抗体を含有するキットを提供できる。製造物品の場合と同様に、キットは容器及び容器上又はそれに付随したラベル又はパッケージインサートを含む。例えば、容器は本発明の抗アルファ5ベータ1抗体少なくとも1つを含む組成物を保持している。例えば希釈剤及び緩衝剤、対照抗体を含有する別の容器を包含させてよい。ラベル又はパッケージインサートは組成物の説明並びに意図されるインビトロ又は診断上の使用のための説明書を提示してよい。
【0149】
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は例えばKohler and Milstein,Nature,256:495(1975)により記載されたもののようなハイブリドーマ法を用いて製造することができ、あるいは、組み換えDNA法(米国特許4,816,567)により作成することができ、あるいは実施例のセクションにおいて本明細書に記載した方法により製造することができる。ハイブリドーマ法においては、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤で免疫化することにより免疫化剤に特異的に結合することになる抗体を生産するか生産することができるリンパ球を生じさせる。或いは、リンパ球をインビトロで免疫化できる。
【0150】
免疫化剤は典型的にはポリペプチド又は目的の蛋白の融合蛋白又は蛋白を含む組成物を包含する。一般的には、ヒト起源の細胞が望まれる場合は末梢血リンパ球(PBL)を使用し、或いは非ヒト哺乳類原料が望まれる場合は脾細胞又はリンパ節細胞を使用する。次にリンパ球をポリエチレングリコールのような適当な融合剤を用いて不朽化された細胞に融合させることにより、ハイブリドーマ細胞を形成する。Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(New York:Academic Press,1986),pp.59−103。不朽化された細胞株は通常は形質転換された哺乳類細胞、特にげっ歯類、ウシ及びヒト起源の骨髄腫細胞である。通常は、ラット又はマウスの骨髄腫細胞株を使用する。ハイブリドーマ細胞は未融合の不朽化細胞の成長又は生存を抑制する物質1つ以上を好ましくは含有する適当な培地中で培養できる。例えば親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いている場合は、ハイブリドーマ用の培地は典型的にはヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含むことになり(「HAT培地」)、これらの物質はHGPRT欠損細胞の成長を防止する。
【0151】
好ましい不朽化細胞株は効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定で高レベルの発現を支援し、そしてHAT培地のような培地に感受性のものである。より好ましい不朽化細胞株はマウス骨髄腫系統であり、これは例えばSalk Institute Cell Distribution Center,San Diego,California及びAmerican Type Culture Collection,Manassas,Virginiaから入手できる。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も又ヒトモノクローナル抗体の製造のために報告されている。Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur等、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications(Marcel Dekker,Inc.:New York,1987)pp.51−63。
【0152】
次にハイブリドーマ細胞を培養する培地をポリペプチドに対して指向されたモノクローナル抗体の存在に関して試験することができる。ハイブリドーマ細胞により製造されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降により、又はインビトロの結合試験、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着試験(ELISA)により測定できる。そのような手法及び試験は当業者の知る通りである。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson and Pollard,Anal.Biochem.,107:220(1980)のスカッチャード分析により測定できる。
【0153】
所望のハイブリドーマ細胞が発見された後、限界希釈操作法によりクローンをサブクローニングし、そして標準的な方法により生育させることができる。Goding、上出。この目的のための適当な培地は、例えばダルベッコの変性イーグル培地及びRPMI−1640培地を包含する。或いは、ハイブリドーマ細胞は哺乳類中の腹水としてインビボで生育させることができる。
【0154】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は従来の免疫グロブリン精製の操作法、例えばプロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーにより培地又は腹水から単離又は精製することができる。
【0155】
モノクローナル抗体は又組み換えDNA法、例えば米国特許4,816,567に記載のものにより製造できる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは従来の方法(例えばマウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによる)を用いて容易に単離及び配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい原料として機能する。単離された後、DNAは発現ベクター内に入れることができ、次にそれを宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は免疫グロブリン蛋白を別様に生産しない骨髄腫細胞にトランスフェクトすることにより、組み換え宿主細胞中のモノクローナル抗体の合成を達成することができる。DNAは又例えば相同のマウス配列の代わりにヒトの重鎖及び軽鎖の定常ドメインに関するコーディング配列を置換することにより(米国特許4,816,567;Morrison等、上出)又は、非免疫グロブリンポリペプチドに関する定常ドメイン配列の全て又は部分を免疫グロブリンコーディング配列に共有結合することにより、修飾することができる。そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代替となることができ、又は、本発明の抗体の1つの抗原複合化部位の可変ドメインの代替となることができる。
【0156】
抗体は1価の抗体であることができる。1価の抗体を製造するための方法は当該分野で知られている。例えば1つの方法は免疫グロブリン軽鎖及び修飾された重鎖の組み換え発現を包含する。重鎖は一般的にFc領域の何れかの位置においてトランケーションされることにより重鎖の交差結合を防止する。或いは、該当するシステイン残基を別のアミノ酸残基と置換するか、欠失させることにより交差結合を防止する。
【0157】
インビトロの方法も又1価の抗体を製造するために適している。抗体を消化してそのフラグメント、特にFabフラグメントを製造することは、限定しないが、当業者の知る方法により行える。
【0158】
ヒト及びヒト化抗体
抗体はヒト化抗体又はヒト抗体であることができる。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化型は典型的には非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小配列を含有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はそのフラグメント(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)又は抗体の他の抗原結合サブ配列)である。ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を包含し、その場合レシピエントのCDR由来の残基は所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット又はウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基により置き換えられている。一部の場合においては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は相当する非ヒト残基により置き換えられている。ヒト化抗体は又レシピエント抗体中、又はインポートされたCDR又はフレームワーク配列中の何れにも存在しない残基を含むことができる。一般的にヒト化抗体は少なくとも1つ、そして典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことができ、その場合、CDR領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、そしてFR領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものとなる。ヒト化抗体は好ましくは又、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含むことになる。Jones等、Nature,321:522−525(1986);Riechmann等、Nature,332:323−329(1988);Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596(1992)。
【0159】
非ヒト抗体をヒト化するための一部の方法は当該分野及び後述する実施例に記載されている。一般的に、ヒト化抗体は非ヒトの原料由来のそれに導入されたアミノ酸残基1つ以上を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は「インポート」残基と称される場合が多く、これは典型的には「インポート」可変ドメインから取り出される。1つの実施形態によれば、ヒト化は本質的には、Winter等の方法(Jones等、Nature,321:522−525(1986);Riechmann等、Nature,332:323−327(1988);Verhoeyen等、Science,239:1534−1536(1988))に従って、げっ歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の相当する配列の代替とすることにより行うことができる。従って、このような「ヒト化」抗体は未損傷のヒト可変ドメインには実質的に満たないものが非ヒト種の相当配列により置換されている抗体(米国特許4,816,567)である。実際はヒト化抗体は典型的には一部のCDR残基及び恐らくは一部のFR残基がげっ歯類抗体の類縁の部位に由来する残基により置換されている。
【0160】
ヒト化の代替として、ヒト抗体を作成できる。例えば、内因性免疫グロブリン生産の非存在下においてヒト抗体の完全なレパートリーを生産することが免疫化により可能になるトランスジェニック動物(例えばマウス)を作成することが現在は可能である。例えばキメラ及び生殖細胞株の突然変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)のホモ接合欠失は内因性抗体生産の完全な抑制をもたらすことが報告されている。ヒト生殖細胞株免疫グロブリン遺伝子アレイのそのような生殖細胞株突然変異体マウス内への転移は、抗原攻撃時のヒト抗体の生産をもたらす。例えばJakobovits等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993);Jakobovits等、Nature,362:255−258(1993);Bruggemann等、Year in Immuno.,7:33(1993);米国特許5,545,806,5,569,825,5,591,669(all of GenPharm);5,545,807;及びWO97/17852を参照できる。或いはヒト抗体はヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されているトランスジェニック動物、例えばマウスに導入することにより、作成することができる。攻撃時に、ヒト抗体の生産が観察され、それは遺伝子の再配列、組み立て及び抗体レパートリーを包含する全ての点において、ヒトにおいて観察されるものと酷似している。このアプローチは例えば米国特許5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;及び5,661,016、そして以下の科学文献、即ち、Marks等、Bio/Technology,10:779−783(1992);Lonberg等、Nature,368:856−859(1994);Morrison,Nature,368:812−813(1994);Fishwild等、Nature Biotechnology,14:845−851(1996);Neuberger,Nature Biotechnology,14:826(1996);Lonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.,13:65−93(1995)に記載されている。
【0161】
或いは、ファージディスプレイ手法(McCafferty等、Nature 348:552−553 [1990])を使用することにより、未免疫化ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからインビトロでヒト抗体及び抗体フラグメントを製造できる。この手法の1つの実施形態によれば、抗体のVドメイン配列をM13又はfdのような繊維状バクテリオファージのメジャー又はマイナーコート蛋白遺伝子の何れかにインフレームにクローニングする。ファージディスプレイは後述する実施例のセクションにおいて、或いは例えば(Johnson,Kevin S.and Chiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology 3:564−571(1993))において考察されているとおり、種々のフォーマットにおいて実施できる。V遺伝子セグメントの数種の原料をファージディスプレイのために使用できる。Clackson等、Nature,352:624−628(1991)は免疫化されたマウスの秘蔵から誘導されたV遺伝子の小さいランダムな組み合わせのライブラリから抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離している。未免疫化ヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーを構築することができ、そして、抗原(自己抗原を包含する)の多様なアレイに対する抗体を本質的にMarks等、J.Mol.Biol.222:581−597(1991),or Griffith等、EMBO J.12:725−734(1993)により記載された手法に従って単離することができる。また米国特許5,565,332及び5,573,905を参照できる。
【0162】
上記した通り、ヒト抗体は又インビトロの活性化B細胞により形成することもできる(米国特許5,567,610及び5,229,275参照)。
【0163】
ヒト抗体は又ファージディスプレイライブラリを包含する当該分野で知られた種々の手法を用いて製造できる。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks等、J.Mol.Biol.,222:581(1991)。Cole等、and Boerner等、の方法も又、ヒトモノクローナル抗体の作成のために使用される。Cole等、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)及びBoerner等、J.Immunol.,147(1):86−95(1991)。
【0164】
多重特異性抗体
多重特異性抗体は2つ以上の異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナルの、好ましくはヒト又はヒト化抗体(例えば少なくとも2つの抗原に対して結合特異性を有する二重特異性抗体)である。例えば、結合特異性の1つはアルファ5ベータ1抗体に対するものであることができ、そして他方は何れかの他の抗原に対するものであることができる。1つの好ましい実施形態によれば、他の抗原は細胞表面蛋白又は受容体又は受容体サブユニットである。例えば、細胞表面蛋白はナチュラルキラー(NK)細胞受容体であることができる。即ち、1つの実施形態によれば、本発明の二重特異性抗体はアルファ5ベータ1に結合でき、そしてVEGFに結合できる。
【0165】
二重特異性抗体を作成するための方法は報告されている。伝統的には、二重特異性抗体の組み換え製造は2つの重鎖が異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく。Milstein and Cuello,Nature,305:537−539(1983)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな取り合わせが原因となり、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は潜在的に10種の異なる抗体分子の混合物を生産し、その内僅か1つのみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は通常はアフィニティークロマトグラフィー工程により行う。同様の操作法は1993年5月13日に公開されたWO93/08829及びTraunecker等、EMBO J.,10:3655−3659(1991)に記載されている。
【0166】
所望の結合特異性を有する抗体の可変ドメイン(抗体−抗原複合体化部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合することができる。融合は好ましくは少なくとも部分的にヒンジ、CH2及びCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインと行う。融合物の少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物及び所望により免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを別個の発現ベクター内に挿入し、そして適当な宿主生物に同時トランスフェクトする。二重特異性抗体を作成は更に詳細には例えばSuresh等、Methods in Enzymology,121:210(1986)に記載されている。
【0167】
組み換え体の細胞培養物から直接二重特異性抗体フラグメントを作成して単離するための種々の手法が報告されている。例えば二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用しながら製造されている。Kostelny等、J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992)。Fos及びJun蛋白に由来するロイシンジッパー蛋白を遺伝子融合により2つの異なる抗体のFab’部分に連結している。抗体ホモ2量体をヒンジ領域において還元することにより単量体とし、次に再酸化することにより抗体ヘテロ2量体を形成する。この方法は又、抗体ホモ2量体の製造のためにも利用できる。Hollinger等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)により記載された「ダイアボディー」技術は二重特異性抗体フラグメントを作成するための代替となる機序を提供している。フラグメントは同じ鎖上の2つのドメインの間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーによりVLに連結されたVHを含む。従って1つのフラグメントのVH及びVLドメインを強制的に、別のフラグメントの相補VH及びVLドメインと対形成させることにより2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)2量体の使用による二重特異性抗体フラグメントを作成するための他の方策もまた報告されている。Gruber等、J.Immunol.,152:5368(1994)を参照できる。
【0168】
2価より高い抗体も意図される。例えば3重特異性抗体を作成できる。Tutt等、J.Immunol.147:60(1991)。
【0169】
ヘテロ結合体抗体
ヘテロ結合体抗体は2つの共有結合により連結された抗体を含む。そのような抗体は例えば望ましくない細胞に免疫系細胞をターゲティングするため(米国特許4,676,980)、及びHIV感染症を治療するために提案されている。WO91/00360;WO92/200373;EP 03089。抗体は合成蛋白化学における知られた方法、例えば交差結合剤を使用するものを用いてインビトロで製造できる。例えば免疫毒素をジスルフィド交換反応を用いて、又はチオエステル結合を形成することにより、構築することができる。この目的のための適当な試薬の例はイミノチオレート及びメチル−4−メルカプトブチルイミデート及び例えば米国特許4,676,980に開示されているものを包含する。
【0170】
エフェクター機能の操作
例えば癌の治療における抗体の有効性が増強されるようにエフェクター機能に関して本発明の抗体を修飾することが望ましい場合がある。例えばシステイン残基をFc領域に導入することにより、この領域における鎖間ジスルフィド結合形成を可能にすることができる。このようにして形成されたホモ2量体抗体は向上した内在化能力及び/又は増大した補体媒介細胞殺傷及び抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)を有することができる。Caron等、J.Exp.Med.,176:1191−1195(1992)and Shopes,J.Immunol.,148:2918−2922(1992)を参照できる。増強され抗腫瘍活性を有するホモ2量体抗体はまた、Wolff等、Cancer Research,53:2560−2565(1993)に記載される通りヘテロ2官能性交差結合剤を用いて製造できる。或いは、二重のFc領域を有し、そしてこれにより増強された補体溶解及びADCC能力を有する抗体を操作することができる。Stevenson等、Anti−Cancer Drug Design,3:219−230(1989)を参照できる。
【0171】
Fc領域配列における突然変異又は改変をFcR結合(例えばFcガンマR、FcRn)を向上させるために行うことができる。1つの実施形態によれば、本発明の抗体はADCC、CDC及びネイティブIgG又は親抗体と比較した場合の向上したFcRn結合からなる群より選択される改変されたエフェクター機能少なくとも1つを有する。数種の有用な特定の突然変異の例は、例えばShields,RL等、(2001)JBC 276(6)6591−6604;Presta,L.G.,(2002)Biochemical Society Transactions 30(4):487−490;及び、WOpublication WO00/42072に記載されている。
【0172】
1つの実施形態によれば、Fc受容体突然変異はFc領域の238、239、246、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、332、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438又は439からなる群より選択される位置少なくとも1つにおける置換であり、その場合Fc領域における残基のナンバリングはEUナンバリングシステムに従う。
【0173】
免疫結合体
本発明は又細胞毒性剤、例えば化学療法剤、毒素(例えば細菌、カビ、植物又は動物期限の酵素的に活性な毒素又はそのフラグメント)又は放射性同位体(すなわちラジオコンジュゲート)に結合体化された抗体を含む免疫結合体に関する。
【0174】
そのような免疫結合体の形成に有用な化学療法剤は上記した通りである。使用できる酵素的に活性な毒素及びそのフラグメントはジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、エキソトキシンA鎖(シュードモナス・アエルギノーサ由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファサルシン、アレウリテス・フォルジ蛋白、ジアンシン蛋白、フィトラカ・アメリカナ蛋白(PAPI、PAPII及びPAP−S)、モモルジカ・チャランチア阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィシナリス阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセン類を包含する。種々の放射性核種がラジオコンジュゲート抗体の製造のために使用される。例としては212Bi、131I、131In、90Y及び186Reが包含される。
【0175】
抗体と細胞毒性剤の結合体は種々の2官能性の蛋白カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの2官能性誘導体(例えば塩酸ジメチルアジピミデート)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド類(例えばグルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えばビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えばビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトリエン2,6−ジイソシアネート)及びビス−活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて作成される。例えばリシン免疫毒はVitetta等、Science,238:1098(1987)に記載の通り製造できる。14C標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン5酢酸(MX−DTPA)は抗体への放射性核種のコンジュゲーションのための例示されるキレート形成剤である。WO94/11026を参照できる。
【0176】
別の実施形態においては抗体は腫瘍を予備ターゲティングする場合に利用するための「受容体」(例えばストレプトアビジン)に結合体化することができ、その場合、抗体−受容体結合体を患者に投与し、その後キレート形成剤を用いて循環系から未結合の結合体を除去し、そして次に細胞毒性剤(例えば放射性核種)に結合体化した「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0177】
イムノリポソーム(immunoliposome)
本明細書に開示した抗体は又イムノリポソームとして製剤できる。抗体を含有するリポソームは当該分野で知られた方法、例えばEpstein等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688(1985);Hwang等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4030(1980);及び米国特許4,485,045及び4,544,545に記載される通り製造される。増強された循環時間を有するリポソームは米国特許5,013,556に記載されている。
【0178】
とくに有用なリポソームはホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG−誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いる逆相蒸発法により形成できる。リポソームを所定の後継のフィルターを通して押し出すことにより所望の直径を有するリポソームを得る。本発明の抗体のFab’フラグメントは、ジスルフィド交換反応を介してMartin等、J.Biol.Chem.,257:286−288(1982)に記載の通りリポソームに結合体化できる。化学療法剤(例えばドキソルビシン)を場合によりリポソーム内に含有させる。Gabizon等、J.National Cancer Inst.,81(19):1484(1989)を参照できる。
【0179】
抗体及びポリペプチドの医薬組成物
本明細書に記載したポリペプチド並びに上記開示したスクリーニング試験により発見される他の分子に特異的に結合する抗体は医薬組成物の形態において上記及び後記する通り種々の疾患の治療のために投与できる。
【0180】
リポフェクチン又はリポソームを使用することにより細胞内に本明細書のポリペプチド及び抗体又は組成物を送達できる。抗体フラグメントを使用する場合、標的蛋白の結合ドメインに特異的に結合する最も小さい抑制性のフラグメントが好ましい。例えば抗体の可変領域配列に基づいて、標的蛋白配列に結合する能力を保持しているペプチド分子を設計することができる。そのようなペプチドは化学合成及び/又は組み換えDNA技術により製造することができる。例えばMarasco等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7889−7893(1993)を参照できる。
【0181】
本明細書に記載した製剤は治療すべき特定の適応症に対して必要に応じて活性化合物1つ以上、好ましくは相互に悪影響しない補完的活性を有する者も含有できる。或いは、又は追加的に、組成物はその機能を増強させる薬剤、例えば、細胞毒性剤、化学療法剤又は増殖抑制剤を含むことができる。そのような分子は適宜、意図される目的のために有効な量において複合化物中に存在する。
【0182】
活性成分は又例えばコアセルベーションの手法により、又は界面重合により製造されたマイクロカプセル、例えばそれぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中、コロイド性薬剤送達系(例えばリポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)中、又は、マクロエマルジョン中に捕獲させることができる。そのような手法は上出のRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0183】
インビボ投与のために使用されることになる製剤は滅菌されていなければならない。これは滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
【0184】
除放性製剤を製造できる。除放性製剤の適当な例は抗体を含有する固体疎水性重合体の半透過性マトリックスを包含し、そのようなマトリックスは形状付与された物品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。除放性マトリックスの例はポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド類(米国特許3,773,919)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタメートの共重合体、非分解性エチレンビニルアセテート、分解性乳酸−グリコール酸共重合体、例えばLUPRON DEPOT TM(乳酸−グリコール酸共重合体及び酢酸ロイプロリドよりなる注射可能なマイクロスフェア)及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を包含する。エチレンビニルアセテート及び乳酸−グリコール酸のような重合体は100日間に渡って分子の放出を可能とするが、特定のヒドロゲルはより短い期間蛋白を放出する。カプセル化された抗体が長時間身体内に残存する場合、それらは37℃における水分への曝露の結果として変性又は凝集する場合があり、その結果、生物学的活性の損失及び免疫原性の変化の可能性が生じる。関与する機序に応じて安定化のための合理的な方策を考案することができる。例えば、凝集機序がチオ−ジスルフィド交換を介した分子間S−S結合の形成である場合は、安定化は、スルフィドリル基を修飾すること、酸性の溶液から凍結乾燥すること、水分含有量を制御すること、適切な添加剤を使用すること、及び、特定の重合体マトリックス組成物を開発することにより達成することができる。
【0185】
診断上の使用及び画像化
ポリペプチドに特異的に結合する標識された抗体、及びその誘導体及び類縁体は、本発明のポリペプチドの発現、異常な発現及び/又は活性に関連する疾患及び/又は障害を検出、診断又はモニタリングするために使用できる。1つの好ましい実施形態によれば、本発明の抗体は対象内への抗体の注射を行う診断試験又は画像化試験において使用できる。本発明は(a)本発明の抗体1つ以上を用いて個体の細胞(例えば組織)又は体液中のポリペプチドの発現を試験すること、及び(b)遺伝子発現のレベルを標準的な遺伝子発現のレベルと比較することにより、標準的な発現レベルと比較した場合の試験した遺伝子発現のレベルの増大又は低下が異常発現を示すようにすること、を含むVEGF又はアルファ5ベータ1ポリペプチドの異常な発現の検出を可能とする。
【0186】
本発明の抗体は当該分野で知られた古典的な免疫組織学的な方法を用いて生物学的試料中の蛋白レベルを試験するために使用できる(例えばJalkanen,等、J.Cell.Biol.101:976−985(1985);Jalkanen,等、J.Cell.Biol.105:3087−3096(1987)参照)。蛋白遺伝子発現を検出するために有用な他の抗体系の方法はイムノアッセイ、例えば酵素連結免疫吸着試験(ELISA)及びラジオイムノアッセイ(RIA)を包含する。適当な抗体試験標識は当該分野で知られており、そして酵素標識、例えばグルコースオキシダーゼ;放射性同位体、例えばヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、イオウ(35S)、トリチウム(H)、インジウム(115mIn、113mIn、112In、111In)、及びテクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru;ルミノール;及び蛍光標識、例えばフルオレセイン及びローダミン、及びビオチンを包含する。
【0187】
当該分野で知られた手法を本発明の標識抗体に適用してよい。そのような手法は限定しないが、2官能性の結合体形成剤の使用を包含する(例えば米国特許5,756,065;5,714,631;5,696,239;5,652,361;5,505,931;5,489,425;5,435,990;5,428,139;5,342,604;5,274,119;4,994,560;及び5,808,003を参照でき;その各々の内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる)。
【0188】
動物、好ましくは哺乳類そして最も好ましくはヒトにおけるVEGF及び/又はアルファ5ベータ1の発現又は異常な発現に関連する疾患又は障害の診断は、哺乳類におけるアルファ5ベータ1及び/又はVEGFを検出する工程を含むことができる。1つの実施形態において、VEGFアンタゴニストを投与した後、診断は(a)標識されたアルファ5ベータ1抗体の有効量を哺乳類に投与(例えば非経腸、皮下又は腹腔内)すること、(b)アルファ5ベータ1分子が発現されている対象における部位において標識された分子が優先的に濃縮されるための(そして未結合の標識された分子についてはバックグラウンドレベルまで浄化されるための)投与後の時間間隔を置くこと;(C)バックグラウンドレベルを測定すること;及び(d)バックグラウンドレベルを超えた標識された分子の検出は、アルファ5ベータ1の発現又は異常な発現に関連する特定の疾患又は障害を対象が有することを示すように、対象における標識された分子を検出すること、を含む。バックグラウンドレベルは種々の方法、例えば特定の系に関して予め測定された標準値に検出標識分子量を比較することにより測定できる。
【0189】
1つの特定の実施形態によれば、アルファ5ベータ1ポリペプチドの発現又は過剰発現は細胞表面上に存在するアルファ5ベータ1のレベルを評価する(例えば抗アルファ5ベータ1抗体を用いた免疫組織化学試験による)ことによりVEGFアンタゴニスト治療薬の投与の後に診断又は予後の試験において測定する。或いは、又は追加的に例えばアルファ5ベータ1コード核酸又はその相補体に相当する核酸系プローブを用いた蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH;1998年10月に公開されたWO98/45479参照)、サザンブロッティング、ノーザンブロッテイング、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)手法、例えばリアルタイム定量的PCR(RT−PCR)により細胞内のアルファ5ベータ1ポリペプチドコード核酸又はmRNAのレベルを測定することができる。また更に、例えば抗体系試験を用いて血清のような生物学的液体中の脱離した抗原を測定することによりアルファ5ベータ1の過剰発現を調べることができる(例えば1990年6月12日発行の米国特許4,933,294;1991年4月18日公開のWO91/05264;1995年3月28日発行の米国特許5,401,638;及びSias等、J.Immunol.Methods 132:73−80(1990)参照)。上記した試験以外に種々のインビボの試験を専門家は使用できる。例えば哺乳類の身体内部の細胞を場合により検出可能な標識、例えば放射性同位体で標識した抗体に曝露させ、そして哺乳類中の細胞への抗体の結合を例えば放射能の外部からのスキャニングにより、又は抗体に予め曝露した哺乳類から得られた生検試料を分析することにより、評価できる。
【0190】
本明細書において引用した全ての公開物(特許及び特許出願を包含)は、特に2006年3月21日出願の米国暫定出願60/784,704、2006年3月22日出願の米国暫定出願60/785,330;及び2006年12月22日出願の米国暫定出願60/871,743を含めて参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0191】
以下のDNA配列はブダペスト条約下に以下の通りAmerican Type Culture Collection(ATCC)10801 University Blvd.,Manassas,VA 20110−2209,USAに寄託されている。
【0192】
【化1】

この寄託は特許手続き及びその下の規制の目的のための微生物の寄託の国際的認識に関するブダペスト条約(ブダペスト条約)の条項下に行われている。これにより寄託日から30年間寄託物の生存培養物の維持が確保される。寄託物はブダペスト条約下にATCCにより使用可能とされ、そしてGenentech,Inc.及びATCCの間の合意に付され、これは該当する合衆国の特許の発行時、又は何れかの合衆国特許又は外国特許の出願の公開時の何れか早い時点において寄託物の培養物の子孫の永久的及び無制限の入手可能性を確保するものであり、そして、合衆国特許庁長官が米国特許法122及びそれに従った長官の規則(特に866OG638を参照する37CFR1.14)に従って資格有りと判断された者への子孫の入手可能性を確保するものである。
【0193】
本出願の譲渡人は寄託されている物質の培養物が安定な条件下で培養されている状態において死滅または損失または破壊された場合、物質は告知の元に迅速に同物質の別品と置き換えられることに合意している。寄託された物質の入手可能性は何れかの当局の権威下にその特許法に従って認めた権利に違反して本発明を実施するための免許とみなしてはならない。
【0194】
実施例において言及する市販の試薬は特段の記載が無い限り製造元の説明書に従って使用した。以下の実施例および明細書全体に渡ってATCCアクセッション番号により識別される細胞の入手元はAmerican Type Culture Collection,Manassas,VAである。特段の記載が無い限り、本発明は上記及び以下の参考文献:Sambrook等、上出;Ausubel等、Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.,1989);Innis等、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Academic Press,Inc.:N.Y.,1990);Harlow等、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press:Cold Spring Harbor,1988);Gait,Oligonucleotide Synthesis(IRL Press:Oxford,1984);Freshney,Animal Cell Culture,1987;Coligan等、Current Protocols in Immunology,1991に記載されるもののような、組み換えDNA手法の標準的な操作法を使用している。
【0195】
本明細書及び請求項全体を通して、「含む」という単語及びその変化形は記載された整数又は整数の群を包含することを意図するものであるが、いずれかの他の整数又は整数の群を排除するものではない。
【0196】
上記文書は当業者が本発明を実施できるようにするために十分なものとみなされる。以下の実施例は説明目的のみであり、如何なる態様においても本発明の範囲を制限するものではない。実際、本明細書に記載したもの以外にも本発明の種々の変形例が上記から当業者には明らかであり、そして添付請求項の範囲に属するものである。
【実施例】
【0197】
(実施例1)抗VEGF療法後のアルファ5ベータ1発現間質細胞のリクルートメント
無胸腺マウスにおいて抗VEGF抗体B20−4.1単独療法で治療されていたHT−29ヒト結腸直腸癌腫異種移植片の切片を抗アルファ5ベータ1発現に関して染色した。本試験において対照抗体(抗ブタクサ抗体)で治療されていた対照群と比較して、B20−4.1単独療法は活性が殆どないか、皆無であることに相当する終点までのメジアンの時間(TTE)を示した。腫瘍は58日の期間、週2回測定した。動物はその腫瘍が1000mmの終点体積に到達した時点、又は第58日の何れか早い時点で安楽死させ、そして各マウスにつき(TTE)を計算した。治療の結果は対照マウスと比較した場合の治療マウスのメジアンTTEにおける増大のパーセントとして定義されるパーセント腫瘍成長遅延(%TGD)から求め、差はLogrank分析を用いて0.01≦P≦0.05で有意とみなし、そしてP<0.01で高度に有意とみなした。対照群のメジアンTTE値は20.6日であった。B20−4.1単独療法による治療は無活性に相当する20.1日のメジアンTTEを示した。
【0198】
図1は抗アルファ5ベータ1抗体で染色された腫瘍切片を示す。増大した間質細胞リクルートメントが抗VEGF治療後に観察された。これらの間質細胞はインテグリンa5b1に対して陽性であった(明緑色染色)。
【0199】
(実施例2)抗アルファ5ベータ1抗体
マウスに精製ヒトアルファ5ベータ1(Chemicon CC1027)を注射した。抗アルファ5ベータ1抗体を発現しているプラズマ細胞腫細胞を単離し、ハイブリドーマ細胞株に形質転換した。7H5.4.2.8及び7H12.5.1.4と命名された2つのハイブリドーマ細胞株をATCCに寄託した。上記参照。7H5.4.2.8ハイブリドーマから生産された抗体はmIgG2a Kappa抗体(本明細書においては「7H5抗体」とも称する)である。7H12.5.1.4ハイブリドーマから生産された抗体はmIgG2b Kappa抗体(本明細書においては「7H12抗体」とも称する)である。
【0200】
(実施例3)HUVEC直接結合試験
成長中の人臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を含有する組織培養物をPBSで2回洗浄した。細胞を5mMEDTA/PBS溶液3〜4mlを用いて培養フラスコから脱離させた。新しい培地を細胞に添加して混合した。混合物中の細胞のアリコートを計数した。細胞を遠心分離し、洗浄緩衝液(50mM Tris、150mM NaCl、pH7.5)で1回洗浄した。細胞濃度は、細胞が384ウェルプレート上で25,000個/ウェル又は4,000個/ウェルとなるように96穴MSD高結合プレート(それぞれCat#L11XB−1又は#L11XB−2、Meso Scale Diagnostics、LLC)上にウェル当たり25uLで細胞が播種されるように調節した。細胞をプレート上室温で1時間インキュベートすることによりキャプチャーさせた。ウェルをブロックするために、25uLの保存緩衝液(TBS(50mM Tris,150mM NaCl)中30%ウシ胎児血清(FBS)+1mMCaCl2/1mM MgCl2,pH7.5)をウェルに添加し、30〜1時間室温でインキュベートした。
【0201】
抗アルファ5ベータ1抗体を試験緩衝液(TBS+1mM CaCl2/1mM MgCl2,pH7.2+2〜4% FBS)中連続希釈することにより種々の抗体濃度とした。ウェルを洗浄緩衝液で2回洗浄し、次にブロッティングして乾燥した。抗体希釈物25uLをウェルに添加し、次に1時間氷上でインキュベートした。ウェルをTBSで3回洗浄した。
【0202】
25ulの0.5ug/ml xmuFc−スルホ−タグ溶液を各ウェルに添加し、45分〜1時間氷上でインキュベートした。xmuFc−スルホ−タグはヤギ抗マウスIgG:R23−AC−5、MSD−SA−タグ:R32−21−AD−5であり、45〜1時間氷上においた。ウェルを3回TBSで洗浄した。150uLの2×読み取り緩衝液を各ウェルに添加した(4×MSD読み取り緩衝液、dH2Oで2×に希釈、cat#R92TD−1(界面活性剤非含有))。結果として生じる電気化学発光(ECL)シグナルを光ダイオードで測定し、MSDリーダー(デフォルト6000プロトコル)を用いて相対的光単位として定量する。図2はHUVEC直接結合試験の結果を示す。7H5抗体のEC50は0.22nMであった。7H12抗体のEC50は0.38nMであった。
【0203】
(実施例4)抗アルファ5ベータ1抗体FACS試験
7H12又は7H5抗体を100uLにおいてRAJI細胞(アルファ5ベータ1mRNAを発現しない細胞株)又はHUVEC細胞(高レベルのアルファ5ベータ1mRNAを発現する細胞株)と共にインキュベートした。結合細胞を蛍光結合体二次抗体を用いて検出した。図3は7H12及び7H5がHUVEC細胞には結合するがRAJI細胞には結合しないことをFACS分析によって示している。同様の手法をウサギ滑膜細胞(HIG−82)及びアカゲザル細胞(CL−160アカゲザル線維芽細胞又はCRL−1780網膜内皮細胞)と共に使用した場合、本発明者等は7H12及び7H5がウサギ及びサルの細胞に結合することを観察した。
【0204】
(実施例5)抗アルファ5ベータ1抗体存在下のフィブロネクチンへの細胞接着
フィブロネクチン(Sigma F1141(ウシ)又はRoche 1080938(ヒト))を炭酸ナトリウム緩衝液で1ug/mlに希釈した。フィブロネクチン溶液100μlをNUNCマキシソープ96穴プレートのウェル当たりに添加し、4℃で一晩放置して結合させた(NUNC96穴平底イムノプレート、MaxiSorpN/Ster 439454(VWR62409−002))。次にウェルをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、少なくとも30分間1%BSA(Sigma A9418)でブロックした。次にプレートをPBSで3回洗浄した。20,000HUVEC細胞を各ウェルに添加し、1.4mM MgCl2及び1.4mM CaCl2を含有する生育培地中、7H5及び7H12の種々の濃度でインキュベートした。次にインキュベーション混合物をフィブロネクチンコーティングプレートに添加した。同じ生育培地中の約20,000個の細胞を、抑制性抗体を添加していない対照ウェル各々に添加した。
【0205】
プレートを140gで5分間遠心分離することにより、細胞の基材との接触を同期させた。細胞を種々の長さの時間(0〜120分)COインキュベーター中でインキュベートした。インキュベーション時間の長さは細胞株ごとに変えた。次にプレートをPBS中で3回洗浄した。全液体をウェルから除去し、ウェルを−80℃で凍結した。次にプレートを室温で解凍した。CyQuant緩衝液(Molecular Probes CyQuant C7026)をウェルに添加し、プレートを10分間室温でインキュベートした。OD読み取り値を測定した。図4は7H5抗体のIC50が0.85ug/ml(3.44nM)であり、7H12抗体のIC50が0.7ug/ml(4.38nM)であることを示している。
【0206】
(実施例6)HUVEC細胞を用いた増殖試験
96穴プレートを一晩フィブロネクチン(1μg/kg)でコーティングした。次にプレートをPBSで洗浄した。3000〜5000個の内皮細胞(EC)を96穴当たり添加し、ウェルに完全に結合させた。抗アルファ5抗体を添加した(アイソタイプ対照を包含する)。各条件につき3ウェルを使用した。次に細胞を1〜24時間抗体と共にインキュベートした。抗インテグリンアルファ5ベータ1抗体を数種の濃度において試験した(例えば0μg/ml、4μg/ml、16μg/ml、60μg/ml、120μg/ml)。
【0207】
次に細胞を1ml組織培養培地(EGM2+全補充物、Cloneticsより入手(Cat#CC−4176))中にBrdU保存溶液2μl(PBS中25mg/ml)と共にインキュベートすることによりそれらをBrdUで標識した。このインキュベーションの後、細胞を4%PFAで固定し、1NのHClで20分間処理し、PBSで数回洗浄し、次に10%ヤギ血清(0.2%Triton添加PBS)で1〜2時間ブロックした。次に細胞をBrdU(BD Cat#347580 1:40)PBS+0.2%Triton及び5%ヤギ血清)に対するモノクローナル抗体で染色し、4℃で一晩インキュベートした。翌日、細胞をPBSで3回洗浄し、Alexa−594結合体抗ウサギ(1:800)二次抗体と共に暗所室温で4時間インキュベートした。ウェルを再度洗浄し、DAPI(PBS中1:10,000)と共に10分間インキュベートした。PBSでの最後の洗浄の後、ウェル当たりの総細胞数を5XでDAPI染色の写真を撮ることにより計数した。同じ視野においてBrdUに関して陽性であった細胞を赤色フィルターを用いて撮影した。視野においてBrdUに関して陽性の細胞のパーセントとして増殖を評価する。次に結果をExcelを用いて分析した。図5aは5000の開始細胞数の後32時間におけるHUVEC総細胞数を示す。図5bは抗体濃度20μg/ml中での24時間後におけるHUVEC総細胞数を示す。
【0208】
(実施例7)移動試験プロトコル
HUVEC細胞をコンフルエントとなるまで5μg/mlフィブロネクチンコーティング24穴プレート上でEGM2+全補充物(Cloneticsより入手、Cat#CC−4176)中で生育させた。次に各ウェルの中央の細胞を2μlピペットの先端で剥離させ、剥離により除去された細胞を洗浄除去した。対照抗体、7H5又は7H12のいずれかを含有する細胞培養培地を異なるウェルに添加した。全被験抗体は20μg/mlで使用した。次に細胞を1〜2日間生育させた。創傷の生じた領域をモニタリングした。図6は0時間及び30時間におけるECM−2中20μg/ml抗アルファ5抗体(7H5)を含有する5μg/mlフィブロネクチン上のHUVEC移動の写真を示す。図7は7H5及び7H12抗体で処理した細胞に関する30時間における%移動のグラフである。
【0209】
(実施例8)HUVEC活性化カスパーゼ−3免疫染色アポトーシス試験
96穴プレートを一晩フィブロネクチン(1μg/ml)上でコーティングした。プレートをPBSで洗浄した。次に3000〜5000のHUVEC細胞を96穴当たりにプレーティングし、完全培地中で一晩生育させた(EBM−2培地(Cambrex CC−3156)+EGM−2、SingleQuots(Cambrex CC−4176))。2H−11マウスの内皮細胞をアポトーシス試験に使用する場合は、培地を10%FBSとの50/50培地とする。
【0210】
翌日、ウェルの1セットを血清非含有培地に交換し、4〜6時間インキュベートすることにより細胞を飢餓させ、それらを非増殖状態とした。他のセットの細胞は完全培地中に維持し、活動的に増殖している細胞とした。4〜6時間後、抗体を添加した(アイソタイプ対照を包含)。一般的に、各条件につき3ウェルを使用する。次に細胞を1〜48時間抗体と共にインキュベートした。抗インテグリンアルファ5ベータ1抗体は一般的に以下の濃度、即ち0μg/ml、4μg/ml、16μg/ml、60μg/ml及び120μg/mlで試験した。
【0211】
このインキュベーションの後、細胞を4%PFAで固定し、10%ヤギ血清(PBS+0.2%Triton)で1〜2時間ブロックし、そして次にカスパーゼ3の活性化形態が他を特異的に認識するモノクローナル抗体で染色した(例えばBioVisionより入手可能なウサギ抗活性カスパーゼ−3抗体、PBS+0.2%Triton及び5%ヤギ血清中に1:50希釈)。抗カスパーゼ3抗体及び固定された細胞を4℃で一晩インキュベートした。翌日、細胞をPBSで3回洗浄し、Alexa−594結合体抗ウサギ(1:800)二次抗体と共に暗所室温で4時間インキュベートした。ウェルを再度洗浄し、DAPI(PBS中1:10,000)と共に10分間インキュベートした。PBS中最終洗浄の後、ウェル当たりの総細胞数を5XでDAPI染色の写真を撮ることにより計数した。同じ視野において活性化カスパーゼ3に関して陽性であった細胞を赤色フィルターを用いて撮影した。活性化カスパーゼ−3に関して陽性であった細胞のパーセントとしてアポトーシスを評価した。次に結果をExcelを用いて分析した。図8は7H5及び7H12がアポトーシスを活動的に誘導しないことを示す。
【0212】
(実施例9)HUVECカスパーゼ−3/7活性比色試験
カスパーゼ3/7活性試験を7H5及び7H12抗体を用いて実施した(Promegaより入手したApo−Oneカスパーゼ−3/7試験、標準的な96穴試験の説明書についてはTechnical Bulletin No.295参照)。
【0213】
一般的に、96穴プレートを一晩フィブロネクチン(1μg/ml)上でコーティングした。プレートをPBSで洗浄した。次に3000〜5000のHUVEC細胞を96穴当たりにプレーティングし、完全培地中で一晩生育させた(EBM−2培地(Cambrex CC−3156)+EGM−2、SingleQuots(Cambrex CC−4176))。2H−11マウスの内皮細胞をアポトーシス試験に使用する場合は、培地を10%FBSとの50/50培地とする。
【0214】
翌日、ウェルの1セットを血清非含有培地に交換し、4〜6時間インキュベートすることにより細胞を飢餓させ、それらを非増殖状態とした。他のセットの細胞は完全培地中に維持し、活動的に増殖している細胞とした。4〜6時間後、抗体を添加した(アイソタイプ対照を包含)。一般的に、各条件につき3ウェルを使用する。次に細胞を24〜48時間抗体と共にインキュベートした。抗インテグリンアルファ5ベータ1抗体は一般的に以下の濃度、即ち0μg/ml、4μg/ml、16μg/ml、60μg/ml及び120μg/mlで試験した。
【0215】
このインキュベーションの後、Apo−Oneカスパーゼ−3/7試薬100μlを各ウェルに添加し、プレートを30秒間300rpmでプレート振とう機を用いて穏やかに混合した。次にプレートを1〜8時間室温でインキュベートし、そして次にプレートリーダーを用いた。励起波長485nm、発光波長530nmにおいて各ウェルの蛍光を測定した。
【0216】
カスパーゼ3/7基質の切断から生じる蛍光シグナル(RLU)はアポトーシスを示していた。図9は7H5及び7H12がアポトーシスを活動的に誘導しないことを示している。
【0217】
(実施例10)管形成試験
抗アルファ5ベータ1抗体が管形成を抑制する能力について試験できる。以下はNakatsu等、(2003)Microvascular Research 66(2003)102-112において記載されたHUVEC発芽及び管形成試験に基づいた管形成試験の例である。
【0218】
一般的に、HUVEC細胞を、EGF−2培地1ml中ビーズあたり400HUVECの濃度において、デキストランコーティングCytodex 3微小担体(Amersham Pharmacia Biogech,Piscataway,NJ)と混合し得る。細胞を伴ったビーズを37℃及び5%CO2において4時間、20分毎に穏やかに振とうし得る。インキュベーションの後、細胞を伴ったビーズを25cm2の組織培養用フラスコ(BD Biosciences,Bedford,MA)に移し、37℃及び5%CO2において5mlのEGM−2中12〜16時間放置し得る。翌日、細胞を伴ったビーズを1mlのEGM−2で3回洗浄し、フィブリノーゲン(Sigma,St.Louis,MO)2.5mg/ml中の200細胞コーティングビーズ/mlの濃度において再懸濁し得る。500マイクロリットルのフィブリノーゲン/ビーズ溶液を24穴組織培養プレートの1ウェル中トロンビン(Sigma)0.625単位に添加し得る。フィブリノーゲン/ビーズ溶液を室温で5分間、そして次に37℃5%CO2で20分間凝固させ得る。1ミリリットルのEGM−2(2%FBS含有)を各ウェルに添加し、30分間37℃及び5%CO2においてフィブリン凝固と平衡化させ得る。培地をウェルから除去し、1mlの新しい培地と交換する。概ね、20,000個の皮膚線維芽細胞(Detroit 551,ATCC,Rockville,MD)を凝固部の上面にプレートし得る。培地は1日おきに交換する。ビーズ試験は7日間モニタリングする。
【0219】
HUVECコーティングビーズはフィブリンゲル中、抗アルファ5ベータ1抗体(7H5及び7H12)500uLの存在下又は非存在下に、ゲルの上面において2〜3日間培養し、次に多次元軸を有するNicon Eclipse TE300のステージに移し、そして37℃及び5%CO2において72時間維持した。使用すべき最終抗体濃度はフィブリンゲルの容量を考慮することにより、即ち、最終抗体濃度=総抗体重量/培地容量+フィブリンゲル容量として、計算できる。画像はMetamorphソフトウエアを用いて20分毎に多数のビーズからキャプチャーできる。インビトロの管の定量はビーズの高分解能の画像を用いて行える(例えば4x対物のIX70 Olympus顕微鏡)。ビーズ当たりの発芽数は対照(未投与)と比較しながら測定し、その場合、発芽はビーズの直径に等しい長さの管として定義し得る。発芽長は任意の単位により測定し得る。
【0220】
(実施例11)異種移植片/自家移植片腫瘍モデルの組み合わせ研究
アルファ5ベータ1アンタゴニスト療法及びVEGFアンタゴニスト療法の同時及び逐次的投与を異種移植片/自家移植片腫瘍モデルにいて評価することができる。好ましくは、モデルはVEGFアンタゴニスト単独療法に対しては殆ど又は全く応答しない。使用できるモデルの例は以下の通り、即ち(a)無胸腺ヌードマウスにおけるFo5自家移植片(mmtv−Her2トランスジェニックマウスから誘導した乳房腫瘍)(Finkle,D.等、(2004) Clin.Cancer Res.10:2499−2511);(b)無胸腺ヌードマウスにおけるHT29異種移植片(ヒト結腸直腸系統);及び(c)RIP−TbAg(Tgモデルにおける膵臓腫瘍)である。治療は典型的には腹腔内、皮下又は静脈内に投与し得る。例えば、抗VEGF抗体は10mg/kgにおいて週1回又は5mg/kgにおいて週2回投与してよい。投与すべき抗体のようなアルファ5ベータ1アンタゴニストの量はその親和性及び活性に基づいて推定できる。1つの実施形態において、VEGFアンタゴニスト及びアルファ5ベータ1アンタゴニストを同日程において5〜6週間投与できる。或いは、又は追加的に、VEGFアンタゴニスト及びアルファ5ベータ1アンタゴニストを逐次的に投与できる(例えば抗VEGF抗体を3週間、その後、抗アルファ5ベータ1抗体を3週間投与)。
【0221】
治療の効果は特に腫瘍の進行、腫瘍の灌流、腫瘍の血管密度、形態及び/又は生存に基づいて評価できる。腫瘍の進行は例えば腫瘍体積及び/又は腫瘍重量により計測できる。FITCレクチン灌流、並びに血管マーカー染色を用いて新生物の進行と同時におこる血管の変化を評価できる。
【0222】
(実施例12)MDA−MB231ヒト乳房腫瘍モデル
HRLN雌性ヌードマウスの側腹部に5×10MDA−MB231ヒト乳癌細胞を皮下注射した(HRLNは株の名称)。腫瘍を平均80〜120mmとなるまで生育させた。次に腫瘍担持マウスを4群に分割し、群当たりの平均腫瘍体積が〜100mmとなった時点で治療を開始した。
【0223】
腫瘍体積を、試験期間中週2回計測した。腫瘍体積の計測は標準的なカリパス測定法を用いて実施した。ハムスター抗マウスインテグリンアルファ5mab、即ち10E7として知られるものはGenentechにおいて作成されている。実験の終点は腫瘍が1.5グラムになるか60日が経過するかの何れか早い方とした。応答個体は場合により更に長期間追跡観察している。動物は終点に達した時点で安楽死させた。
【0224】
治療の詳細を以下に記載する。
(1)対照群:抗ブタクサ対照mab注射(10mg/kg、腹腔内(ip)、週1回)
(2)抗VEGF単剤群:抗VEGF mab B20.4.1注射(10mg/kg、ip、週1回)
(3)組み合わせ群:B20.41(10mg/kg、ip、週1回)+ハムスター抗マウスインテグリンアルファ5 mab 10E7(10mg/kg、ip、週2回)
(4)抗インテグリンアルファ5単剤群:ハムスター抗マウスインテグリンアルファ5 mab 10E7注射(10mg/kg、ip、週2回)
【0225】
【表1】

【0226】
【表2】

【0227】
【表3】

【0228】
【表4】

この予備的データは抗アルファ5+抗VEGFの組み合わせの活性の早期の兆候を示している。
【0229】
試験の終点の後、各群の平均腫瘍体積を計算した(図11A)。Kaplan−Meierプロットも作成することにより、時間の関数として試験に残存している動物のパーセントを示した(図11B)。データは抗インテグリンα5β1抗体が乳癌モデルにおいて抗VEGFの薬効を増強させることを示している。
【0230】
(実施例13)ウサギ耳創傷治癒モデルにおける7H12及びベバシツマブ
ニュージーランド白ウサギを計量し、イソフルオランで麻酔した。各ウサギにおいて、両方の耳介の内面から、そして辺縁に沿って剃毛した。脱毛ローションを用いて全ての残存する体毛を外科処置部位から除去した。外科処置部位はベタジンスクラブで浄化し、その後アルコールですすいだ。無菌的手法を用いて、環状8mmパンチ生検器具を用いて各耳介の耳軟骨の深さまで1つの創傷を作成した。根底にある軟骨膜を骨膜起子(periosteal elevator)及び精密鋏を用いて除去した。Opsite(登録商標)接着包帯を各創傷上に設置し、ウサギを麻酔から回復させた。
【0231】
Opsite(登録商標)包帯は毎日除去し、創傷を観察し、局所治療を行い、そして新しい包帯を適用した。創傷幅は第0(外科処置直後)、7、10、14及び18日に創傷の直径を計測することにより計算した。
投与群は以下の通りである。
ベバシツマブ(抗VEGF抗体)100ug/30uLを各創傷に毎日(n=4)
7H12(抗アルファ5ベータ1抗体)100ug/30uLを各創傷に毎日(n=4)
ベバシツマブを100ug/15uL+7H12を100ug/15uL、各創傷に毎日(n=4)
トラスツズマブ(抗HER2抗体)100ug/30uLを各創傷に毎日(n=3)。
【0232】
データはこの血管新生モデルvs単剤単独において、抗VEGF及び抗アルファ5ベータ1のコンビナトリアル療法が明確な作用を有することを示している(図10)。
【0233】
(実施例14)結腸癌における抗アルファ5ベータ1及び抗VEGF複合療法
HRLN雌性nu/nuマウスの側腹部に1mmのHT29腫瘍フラグメント(結腸腫瘍)を皮下注射した。腫瘍は治療薬投与前に80〜120mmの平均の大きさに到達するまで生育させた。次に腫瘍担持マウスを4群に分割した。
【0234】
【表5】

腫瘍体積測定は週2回、標準的なカリパス測定法を用いて実施した。ハムスター抗マウスインテグリンアルファ5 mab、即ち10E7として知られるものはGenentechにおいて作成されている。対照IgGは抗ブタクサモノクローナル抗体とした。体重は2日間にわたり5回、その後は週あたり2回(biwk)試験終了時まで計測した。実験の終点は腫瘍が1グラムになるか90日が経過するかの何れか早い方とした。一部の応答個体は更に長期間追跡観察している。動物は終点に達した時点で安楽死させた。投薬容量は10mL/kg(o.200ml/20gマウス)とし、この容量は体重に対して調節した。完全な後退(CR)を示した動物については腫瘍移植部位の組織を終点において採取し、ホルマリン、その後70%EtOH中に保存し、後の試験に付した。凍結すべき全試料はクリオモールド中に入れ、ホイルで包装し、液体窒素中に急速凍結した。
【0235】
試験の終点の後、各群に関する平均腫瘍体積を計算した(図12A)。Kaplan−Meierプロットも作成することにより、時間の関数として試験に残存している動物のパーセントを示した(図12B)。データは抗インテグリンα5β1抗体が結腸癌モデルにおいて抗VEGFの薬効を増強させることを示している。
【0236】
(実施例15)結腸癌における抗アルファ5ベータ1+化学療法
HRLN雌性nu/nuマウスの側腹部に5×10HTC116腫瘍細胞(結腸腫瘍細胞)を皮下注射した。腫瘍は治療薬投与前に80〜120mmの平均の大きさに到達するまで生育させた。次に腫瘍担持マウスを4群に分割した。
【0237】
【表6】

腫瘍体積測定は週2回、標準的なカリパス測定法を用いて実施した。ハムスター抗マウスインテグリンアルファ5 mab、即ち10E7として知られるものはGenentechにおいて作成されている。体重は2日間にわたり5回、その後は週あたり2回(biwk)試験終了時まで計測した。実験の終点は腫瘍が1.5グラムになるか60日が経過するかの何れか早い方とした。一部の応答個体は更に長期間追跡観察している。動物は終点に達した時点で安楽死させた。投薬容量は10mL/kg(o.200ml/20gマウス)とし、この容量は体重に対して調節した。10E7はイリノテカン投与の前30分に投与した。完全な後退(CR)を示した動物については腫瘍移植部位の組織を終点において採取し、ホルマリン、その後70%EtOH中に保存し、後の試験に付した。凍結すべき全試料はクリオモールド中に入れ、ホイルで包装し、液体窒素中に急速凍結した。
【0238】
試験の終点の後、各群に関する平均腫瘍体積を計算した(図13A)。Kaplan−Meierプロットも作成することにより、時間の関数として試験に残存している動物のパーセントを示した(図13B)。データは抗インテグリンアルファ5ベータ1抗体は結腸癌モデルにおいて化学療法剤(イリノテカン)の薬効活性を増強しないが、化学療法剤の活性を妨害することもないことを示している。この観察結果は血管損傷は抗アルファ5ベータ1療法が一般的に抗血管新生、そして特に腫瘍学的セッティングにおける抗血管新生において有意に有用となり得る前に生じるはずであるという本発明者等の考えと合致している。そのような血管の損傷はAVASTIN(登録商標)抗体のようなVEGFアンタゴニストにより誘発されえる。それ自体では、本モデルにおける化学療法剤は有意な血管損傷を誘発しなかった。VEGFアンタゴニストが存在することにより血管の損傷を誘発するように、これらの薬剤の全て(VEGFアンタゴニスト/アルファ5ベータ1アンタゴニスト/化学療法剤)の同時又は逐次的使用が想定できる。
【0239】
(実施例16)アルファ5ベータ1スカッチャードプロット
抗アルファ5ベータ1抗体を、Iodogen法を用いてヨウ素化し、放射標識した抗体を遊離の125I−NaからPD−10カラムを用いたゲル濾過により精製した。R9ab細胞、即ちウサギ線維芽細胞株(ATCCより購入、CCL−193)を24穴プレート中ウェル当たり〜50,000で播種し、48時間5%CO2中37℃でインキュベートした。細胞を結合緩衝液(50:50DMEM/F12培地、2%FBS及び50mMHEPES含有、pH7.2)で3回洗浄し、次に15分間氷上でインキュベートした。洗浄した細胞を4時間氷上において、3連で試験する13濃度について結合緩衝液中0.5uMから連続希釈した未標識抗アルファ5ベータ1モノクローナル抗体の漸減濃度を含有する125I−抗アルファ5ベータ1モノクローナル抗体約50pMでインキュベートした。細胞を結合緩衝液で3回洗浄し、次に200uLのSDS溶解緩衝液(1%SDS、8M尿素、100mMグリシン、pH 3.0)で可溶化した。細胞をWallac Wizard 1470ガンマカウンターで計数した。結合データは、抗体の結合親和性及び結合部位の濃度を測定するためにMunson and Robard(Munson,P.and Robard,D.(1980)Anal.Biochem.107:220−239)の曲線フィッティングアルゴリズムを使用しているGenentechのプログラムNewLigandを用いて評価した。図14及び15はこれらの結合試験においてそれぞれ、7H5抗体が0.10nMのKdを有し、そして7H12抗体が0.30nMのKdを有することを示している。
【0240】
(実施例17)抗インテグリンアルファ5ベータ1IgGエピトープマッピング/競合結合試験
抗インテグリンα5β1IgGの3倍連続希釈物を室温で1〜2時間、PBST緩衝液(PBS及び0.5%(w/v)BSA及び0.05%(v/v)Tween20)中、ヒトインテグリンα5β1抗原(1ug/ml;R&D)でコーティングした96穴Nunc Maxisorpプレートと共にまずインキュベートし、その後、0.3nMビオチン化h7H5.v1 hIgG1(Genentech,Inc.の作成した7H5の抗体変異体)を添加し、これをまず15分間最大未満の結合シグナル(50〜70%)により測定した。次にプレートをPBT緩衝液(PBS及び0.05%(v/v)Tween20)で5回洗浄した。結合したビオチン化h7H5.v1 hIgG1をPBST緩衝液中1:2500希釈したストレプトアビジンセイヨウワサビパーオキシダーゼ結合体(Pierce)で検出し、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB,Kirkegaard & Perry Labs,Gaithersburg,MD)基質で約5分間発色させ、1.0MのHPOでクエンチングし、そして450nmにおいて分光光度的に読み取った。曲線を4パラメーター非線形回帰曲線フィッティングプログラム(Kaleidagraph,Synergy Software)によりフィットさせた。
【0241】
図16は結合h7H5.vlが漸増量のコールドm7H5に競合されたことを示している。実際、m7H5競合曲線はh7H5.vl競合曲線とほぼ同一であった(データ示さず)。コールドm7H12も又アルファ5ベータ1への結合についてビオチンh7H5.vlと競合し、アルファ5ベータ1上のh7H5.vlとm7H12の結合エピトープが重複していることを示していた。一方、対照抗体は結合h7H5.vlと競合しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1】図1は抗VEGF抗体B20−4.1を用いたHT29異種移植片腫瘍の治療の後のアルファ5ベータ1発現間質細胞のリクルートメントの増大を示す。
【図2】図2は直接結合試験においてHUVEC細胞に結合している7H5及び7H12抗体を示すグラフである。
【図3】図3はFACS分析によるHUVECには結合するがRAJI細胞には結合しない7H5及び7H12抗体を示す。
【図4】図4は精製された7H5及び7H12モノクローナル抗体の存在下におけるフィブロネクチンへのHUVEC接着を示すグラフである。
【図5】図5は(A)総細胞数によるHUVEC細胞増殖に対する7H5及び7H12の作用を示すグラフであり、そして(B)別の試験におけるアラマーブルー染色によるHUVEC細胞増殖に対する7H5及び7H12の作用を示す棒グラフである。
【図6】図6は陰性対照(IgG)と比較した場合の0時間及び30時間における7H5による治療の後のHUVEC細胞移動の写真である。
【図7】図7は7H5及び7H12による治療の後のHUVEC細胞移動を定量的に示す棒グラフである。
【図8】図8は7H5及び7H12による治療の後のアポトーシス試験における活性化カスパーゼ−3を発現するHUVEC細胞のパーセンテージを示す棒グラフである。
【図9】図9は7H5及び7H12による治療の後のHUVECカスパーゼ3/7の活性を示す棒グラフである。
【図10】図10はウサギ耳介創傷治癒モデルにおける7H12及び/又はベバシツマブ活性を示すグラフである。
【図11】(A)投与マウスの群メジアン腫瘍体積を示すグラフ、又は(B)時間の関数としての試験における残存動物のパーセントを示すKaplan−Meierプロットとして、乳癌モデルにおける抗VEGF抗体+/−抗アルファ5ベータ1抗体で治療したマウスの結果を示す。動物はその腫瘍が1500mmに到達または超過した時点で試験から除外した。
【図12】(A)投与マウスの群メジアン腫瘍体積を示すグラフ、又は(B)時間の関数としての試験における残存動物のパーセントを示すKaplan−Meierプロットとして、結腸癌モデルにおける抗VEGF抗体+/−抗アルファ5ベータ1抗体で治療したマウスの結果を示す。動物はその腫瘍が1500mmに到達または超過した時点で試験から除外した。
【図13】(A)投与マウスの群メジアン腫瘍体積を示すグラフ、又は(B)時間の関数としての試験における残存動物のパーセントを示すKaplan−Meierプロットとして、結腸癌モデルにおける抗アルファ5ベータ1抗体又は化学療法剤で治療したマウスの結果を示す。動物はその腫瘍が1500mmに到達または超過した時点で試験から除外した。
【図14】図14はウサギ線維芽細胞の細胞株であるR9ab上のアルファ5ベータ1への125I−7H5の結合のスカッチャードプロットを示す。
【図15】図15はウサギ線維芽細胞の細胞株であるR9ab上のアルファ5ベータ1への125I−7H12の結合のスカッチャードプロットを示す。
【図16】図16は種々の抗アルファ5ベータ1抗体を用いた抗インテグリンアルファ5ベータ1IgGエピトープマッピング/競合的結合試験の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトアルファ5ベータ1に結合し、そしてヒトアルファ5ベータ1への抗アルファ5ベータ1抗体の結合を競合的に抑制することができる抗体であって、該抗アルファ5ベータ1抗体が2006年3月7日にATCCにおいてアルファ5/ベータ1 7H5.4.2.8(ATCC No.PTA−7421)として寄託されたハイブリドーマ及びアルファ5/ベータ17H12.5.1.4(ATCC No.PTA−7420)として寄託されたハイブリドーマからなる群より選択されるハイブリドーマにより生産される、抗体。
【請求項2】
請求項1記載の抗体であって、該抗体が2006年3月7日にATCCにおいてアルファ5/ベータ1 7H5.4.2.8(ATCC No.PTA−7421)として寄託されたハイブリドーマ及びアルファ5/ベータ17H12.5.1.4(ATCC No.PTA−7420)として寄託されたハイブリドーマからなる群より選択されるハイブリドーマにより生産される、抗体。
【請求項3】
請求項1記載の抗体であって、該抗体が2006年3月7日にATCCにおいてアルファ5/ベータ1 7H5.4.2.8(ATCC No.PTA−7421)として寄託されたハイブリドーマにより生産される抗体の可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)ドメイン配列を含む、抗体。
【請求項4】
請求項1記載の抗体であって、該抗体が2006年3月7日にATCCにおいてアルファ5/ベータ17H12.5.1.4(ATCC No.PTA−7420)として寄託されたハイブリドーマにより生産される抗体の可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)ドメイン配列を含む、抗体。
【請求項5】
請求項1記載の抗体であって、該抗体が2006年3月7日にATCCにおいてアルファ5/ベータ1 7H5.4.2.8(ATCC No.PTA−7421)として寄託されたハイブリドーマ及びアルファ5/ベータ17H12.5.1.4(ATCC No.PTA−7420)として寄託されたハイブリドーマからなる群より選択されるハイブリドーマにより生産される抗アルファ5ベータ1抗体のヒト化抗体又はキメラ抗体である、抗体。
【請求項6】
前記抗体が500nM〜1pMのKdでアルファ5への結合の間のKdでヒトアルファ5ベータ1に結合する請求項1〜5の何れか1項に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体がアルファVベータ3にもアルファVベータ5にもアルファVベータ1にも結合しない請求項1記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体がヒトIgGのFc配列を含む請求項1及び3〜5の何れか1項に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体がヒトIgG1又はヒトIgG4のFc配列を含む請求項1及び3〜5の何れか1項に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体が抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)エフェクター機能を欠いたFc配列を含む請求項8記載の抗体。
【請求項11】
抗体がFab、Fab’、F(ab’)、単鎖Fv(scFv)及びFvフラグメント;ダイアボディー及び線状抗体からなる群より選択される請求項1及び3〜5の何れか1項に記載の抗体。
【請求項12】
前記抗体が多重特異性抗体である請求項1及び3〜5の何れか1項に記載の抗体。
【請求項13】
治療薬に結合体化された請求項1及び3〜5の何れか1項に記載の抗体。
【請求項14】
前記治療薬が細胞毒性剤、放射性同位体及び化学療法剤からなる群より選択される請求項13記載の抗体。
【請求項15】
標識に結合体化された請求項1及び3〜5の何れか1項に記載の抗体。
【請求項16】
前記標識が放射性同位体、蛍光染料及び酵素からなる群より選択される請求項15記載の抗体。
【請求項17】
請求項1〜5に記載の抗体の何れか1つの可変重鎖ドメイン(VH)又は可変軽鎖ドメイン(VL)又はVH及びVLドメインの両方をコードする単離された核酸分子。
【請求項18】
請求項17記載の核酸分子をコードする発現ベクター。
【請求項19】
請求項17記載の核酸分子を含む細胞。
【請求項20】
前記細胞が2006年3月7日にATCCにおいてアルファ5/ベータ1 7H5.4.2.8(ATCC No.PTA−7421)として寄託されたハイブリドーマ又はアルファ5/ベータ17H12.5.1.4(ATCC No.PTA−7420)として寄託されたハイブリドーマである請求項19記載の細胞。
【請求項21】
請求項19又は請求項20記載の細胞を培養すること、及び、細胞培養物から抗体を回収することを含む抗体の製造方法。
【請求項22】
請求項1及び3〜5の何れか1項に記載の抗体および製薬上許容しうる担体を含む組成物。
【請求項23】
患者に由来する試料に請求項1〜5の何れか1項に記載の抗体を接触させること、及び該アルファ5ベータ1蛋白に結合した該抗アルファ5ベータ1抗体を検出することによる、該試料中の該アルファ5ベータ1蛋白を検出する方法。
【請求項24】
前記抗体が免疫組織化学アッセイ(IHC)又はELISAアッセイにおいて使用される請求項23記載の方法。
【請求項25】
対象における血管新生及び/又は血管透過性を抑制するための医薬の製造における請求項1及び3〜5の何れか1項に記載の抗体の使用。
【請求項26】
対象における疾患を治療するための医薬の製造における請求項1及び3〜5の何れか1項に記載の抗体の使用であって、該疾患が異常な血管新生又は血管透過性である、使用。
【請求項27】
VEGFアンタゴニスト及びアルファ5ベータ1アンタゴニストを投与することを含む疾患に罹患した対象における血管新生及び/又は血管透過性を抑制するための方法。
【請求項28】
VEGFアンタゴニスト及びアルファ5ベータ1アンタゴニストを投与することを含むVEGFアンタゴニスト及びアルファ5ベータ1アンタゴニストを含む対象における癌を治療するための方法。
【請求項29】
VEGFアンタゴニスト及びアルファ5ベータ1アンタゴニストを投与することを含む対象における眼疾患を治療するための方法。
【請求項30】
VEGFアンタゴニスト及びアルファ5ベータ1アンタゴニストを投与することを含む対象における自己免疫疾患を治療するための方法。
【請求項31】
前記対象が前記VEGFアンタゴニストを投与され、その後、前記アルファ5ベータ1アンタゴニストを投与される、請求項27〜30の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記対象が前記VEGFアンタゴニスト及び前記アルファ5ベータ1アンタゴニストを同時に投与される請求項27〜30の何れか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が異常な血管新生又は血管透過性を有する疾患に罹患している請求項27記載の方法。
【請求項34】
前記疾患が腫瘍、免疫疾患又は眼の疾患からなる群より選択される請求項27記載の方法。
【請求項35】
前記対象がVEGFアンタゴニスト治療に非応答性となるまで該対象を前記VEGFアンタゴニストで治療し、そして次に該対象をアルファ5ベータ1アンタゴニストで治療する請求項27〜30の何れか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記癌が非侵襲性である場合には前記対象を前記VEGFアンタゴニストで治療し、前記癌が侵襲性である場合には前記アルファ5ベータ1アンタゴニストで治療する請求項28記載の方法。
【請求項37】
前記対象が前記疾患に罹患していない対象由来の組織と比較して罹患組織において上昇したアルファ5ベータ1レベルを有する、請求項27記載の方法。
【請求項38】
前記対象が、更に抗腫瘍剤、化学療法剤、増殖抑制剤および細胞毒性剤からなる群より選択される治療薬を投与される請求項27〜30の何れか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記抗VEGF抗体がAvastin(登録商標)抗体によりヒトVEGFへの結合を競合的に抑制され得る、請求項27〜30の何れか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記抗VEGF抗体がAvastin(登録商標)抗体である請求項42記載の方法。
【請求項41】
前記アルファ5ベータ1アンタゴニストが細胞毒性剤の結合体化される請求項27〜30の何れか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞毒性剤が放射性同位体、化学療法剤又は毒素である請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記VEGFアンタゴニストが抗体である請求項27〜30の何れか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記アルファ5ベータ1アンタゴニストが抗体である請求項27〜30の何れか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記抗VEGF抗体がヒト化抗体又はヒト抗体である請求項43記載の方法。
【請求項46】
前記抗アルファ5ベータ1抗体がヒト化抗体又はヒト抗体である請求項44記載の方法。
【請求項47】
VEGFアンタゴニスト、アルファ5ベータ1アンタゴニスト、及び製薬上許容しうる阻害剤を含む組成物。
【請求項48】
VEGFアンタゴニストで治療された対象においてアルファ5ベータ1を検出するための説明書を含むキット。
【請求項49】
疾患に罹患した対象において血管新生及び/又は血管透過性を抑制するための医薬の製造における請求項47記載の組成物の使用。
【請求項50】
前記疾患が対象における癌、眼の疾患、自己免疫疾患からなる群より選択される請求項49記載の使用。
【請求項51】
前記疾患が固形腫瘍、転移性腫瘍、軟組織腫瘍、眼の新生血管形成を有する疾患、異常な血管新生を有する炎症性疾患、前記対象への移植後に生じる疾患、及び線維血管組織の異常な増殖を有する疾患からなる群より選択される請求項49記載の使用。
【請求項52】
前記癌が乳癌、子宮頚癌、結腸直腸癌、肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝癌、頭部頚部癌、メラノーマ、卵巣癌、中皮腫、軟組織癌、及び多発性骨髄腫からなる群より選択される請求項50記載の使用。
【請求項53】
前記疾患が網膜症、加齢誘発性黄斑変性、皮膚紅潮、乾癬、乾癬性関節炎、炎症性腎疾患、溶血性尿毒症症候群、糖尿病性腎症、関節炎、炎症性腸疾患、慢性炎症、慢性網膜剥離、慢性ブドウ膜炎、慢性硝子体炎、角膜移植片拒絶、角膜新生血管形成、角膜移植片新生血管形成、クローン病、近視、眼の血管新生性疾患、変形性関節症、パジェット病、類天疱瘡、多発性動脈炎、レーザー後の放射状角膜切開、網膜の新生血管形成、シェーグレン症候群、潰瘍性結腸炎、移植片拒絶、肺の炎症、ネフローゼ症候群、浮腫、悪性疾患に関連する腹水、卒中、血管線維腫、及び血管新生緑内障からなる群より選択される請求項49記載の使用。
【請求項54】
疾患に罹患した対象を治療するための医薬の製造におけるアルファ5ベータアンタゴニストの使用であって、該対象がVEGFアンタゴニストを用いた該疾患に対する治療には応答性であったが、該VEGFアンタゴニストに対して部分的に応答するか、またはもはや応答しない、使用。
【請求項55】
前記対象が前記疾患に罹患していない対象由来の組織と比較して罹患組織において上昇したアルファ5ベータ1レベルを有する、請求項54記載の使用。
【請求項56】
前記対象が更に抗腫瘍剤、化学療法剤、増殖抑制剤および細胞毒性剤からなる群より選択される治療薬を投与される請求項54記載の使用。
【請求項57】
疾患に罹患した対象を治療するための医薬の製造におけるVEGFアンタゴニストの使用であって、該対象がアルファ5ベータ1アンタゴニストを用いた該疾患に対する治療には応答性であったが、該アルファ5ベータ1アンタゴニストに対して部分的に応答するか、またはもはや応答しない、使用。
【請求項58】
VEGFアゴニスト及びアルファ5ベータ1アゴニストを含む組成物。
【請求項59】
医薬の製造における請求項58記載の組成物の使用。
【請求項60】
前記医薬が創傷治癒を促進する請求項59記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−536921(P2009−536921A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501728(P2009−501728)
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/064572
【国際公開番号】WO2008/060645
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】