説明

アルブミンと治療薬との前もって形成された抱合体の産生のための方法

本発明は、前もって形成されたアルブミン抱合体の製造のための方法を提供する。特に、本発明は、組換えアルブミンに対する治療的化合物のインビトロでの抱合のための方法であって、反応基を含む治療的化合物を溶液中で組換えアルブミンに接触させて抱合体を形成する、前記方法を提供する。本方法は、均質性を増加してアルブミン種に対する抱合を提供する。生じる抱合体は、クロマトグラフィー、特にフェニルセファロース及びブチルセファロースクロマトグラフィーを含む疎水性相互作用クロマトグラフィーによって精製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年12月22日に出願された米国仮出願第60/753,680号の優先権の利益を主張する。この内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。
(1. 技術分野)
本発明は、前もって形成されたアルブミン抱合体の産生のための方法を提供する。特に、本発明は、組換えアルブミンに対する治療的化合物のインビトロでの抱合のための方法であって、反応基を含む治療的化合物を溶液中で組換えアルブミンに接触させて抱合体を形成する、前記方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(2. 発明の背景)
治療的分子は、ヒトに使用されるためには、厳密な基準を満たさなければならない。安全かつ有効であることに加えて、これらは、人体において十分な時間有効であるために、十分な量で利用できなければならない。残念なことに、多くの提唱された治療的分子は、人体から、除去され、若しくは分解されるかのいずれか、又は両方により、治療のためのこれらの有効性が制限されている。多くの提唱されたペプチド治療薬は、このような薬物動態の欠陥が欠点となる。
【0003】
いくつかの提唱された治療薬の薬物動態においては、これらをアルブミンなどのキャリア分子に共有結合で連結することによって、ブレークスルーが達成された。実際に、いくつかのアルブミン抱合体が、ヒトにおける臨床試験中である。
従って、このようなアルブミン抱合体の産生及び精製のための効率的かつ有効な方法が必要とされる。
【発明の開示】
【0004】
(3. 発明の要旨)
本発明は、前もって形成されたアルブミンの抱合体の製造のための方法を提供する。特定の態様において、本発明は、宿主細胞におけるアルブミンを産生するための方法であって、反応基とアルブミンのシステイン34との間で共有結合を形成することができる条件下で、アルブミンを治療基と反応基とを含む化合物と接触させること、及びこれにより形成された生じる抱合体を精製することを含む、前記方法を提供する。
【0005】
一つの態様において、本発明は、前もって形成されたアルブミンの抱合体の製造のための方法であって、宿主細胞においてアルブミンを産生する工程;アルブミン産物を部分的に精製して、宿主タンパク質、抗原、内毒素などを減少させる工程;アルブミンのシステイン34と化合物の反応基との間に抱合を促進する条件下でアルブミンを化合物と接触させる工程;及び生じる抱合体を1つ以上の疎水性相互作用クロマトグラフィー工程、任意に続いて限外濾過及び製剤によって精製する工程を含む、前記方法を提供する。
【0006】
従って、本発明の一つの実施態様は、前もって形成されたアルブミンの抱合体を製造するための方法であって:
(a)宿主細胞において組換えアルブミンを産生する工程;
(b)宿主細胞から組換えアルブミンを精製する工程;
(c)反応基が組換えアルブミンのCys34チオールを共有結合で結合して抱合体を形成することができる反応条件下で、精製した組換えアルブミンを化合物と接触させる工程であって、前記化合物は、反応基を含む前記工程;及び、
(d)疎水性相互作用クロマトグラフィー、任意に続いて限外濾過及び製剤によって抱合体を精製する工程、
を含む、前記方法を提供する。
【0007】
特定の実施態様において、本方法は、工程(c)の抱合反応の前に、メルカプトアルブミン、すなわち遊離及び反応性のシステイン34で構成されるアルブミンの濃縮を更に含む。任意の特定の作用理論によって拘束されることは意図しないが、システイン、グルタチオン、金属イオン又はその他の付加物によるアルブミンのシステイン34チオールの酸化又は「キャッピング」により、化合物の反応基に対する抱合の特異性を減少させることができると考えられる。従って、メルカプトアルブミンは、キャップされたアルブミン-Cys34をアルブミン-Cys34-SHに変換することができることが当該技術分野において公知の薬剤と接触させることにより、還元型及び酸化型アルブミンの不均一なプールから濃縮することができる。特定の実施態様において、メルカプトアルブミンは、アルブミンをチオグリコール酸(FGA)と接触させることによって濃縮することができる。特定の実施態様において、メルカプトアルブミンは、アルブミンをジチオスレイトール(DTT)と接触させることによって濃縮することができる。一部の実施態様において、メルカプトアルブミンは、フェニル若しくはブチルセファロース又はこれらの組み合わせを使用して、疎水性相互作用クロマトグラフィーにアルブミンを供することによって濃縮される。その他の実施態様において、メルカプトアルブミンは、TGA又はDTTとアルブミンを接触させること、続いてフェニル若しくはブチルセファロース樹脂又は両方を使用して、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって精製することによって濃縮される。
【0008】
特定の実施態様において、本方法は、工程(c)の抱合反応の前に、糖化されたアルブミンの減少を更に含む。アルブミンの非酵素的に糖化された形態の減少は、糖化されたアルブミンを減少させるための当業者に公知の任意の技術によって実施してもよい。一部の実施態様において、非酵素的に糖化されたアルブミンは、例えばアミノフェニルホウ酸アガロース樹脂若しくはコンカナバリンAセファロース又はこれらの組み合わせを使用して、アフィニティークロマトグラフィーに溶液を供することによって、アルブミン溶液から減少させてもよい。
【0009】
本発明の第二の実施態様は、前もって形成されたアルブミンの抱合体の製造のための方法であって、組換えアルブミンが、培養液からの組換えアルブミンの精製を邪魔することなく、液体培地中で宿主細胞によって産生された組換えアルブミンを化合物と接触させて抱合体を形成することによって製造される、前記方法を提供する。従って、本発明の実施態様は、前もって形成されたアルブミンの抱合体を製造するための方法であって、該方法は:
(a)宿主細胞において組換えアルブミンを産生する工程であって、宿主細胞が液体培地中で培養される、前記工程;
(b)反応基がその中に含まれる組換えアルブミンのCys34チオールに共有結合で結合して抱合体を形成することができる反応条件下で、液体培地を化合物と接触させる工程であって、前記化合物は反応基を含む、前記工程;及び、
(c)疎水性相互作用クロマトグラフィー、任意に続いて限外濾過及び製剤によって抱合体を精製する工程を含む、前記方法を提供する。
【0010】
特定の実施態様において、本方法は、工程(b)の抱合反応の前に、宿主細胞を溶解して細胞内に貯蔵されたアルブミンの放出を促進する工程を更に含む。特定の実施態様において、本方法は、液体培地から、無処置又は溶解されたかにかかわらず、宿主細胞を分離し、こうして工程(b)の抱合反応のための粗製上清を提供する工程を更に含む。
【0011】
当業者に公知の任意の組換えアルブミンを本発明の方法に従って抱合体を形成するために使用してもよい。一部の実施態様において、組換えアルブミンは、例えばマウス、ラット、ウシ、ヒツジ又はヒトアルブミンなどの哺乳動物アルブミンである。好ましい実施態様において、アルブミンは、ヒト組換えアルブミンである。一部の実施態様において、アルブミンは、ヒト組換えアルブミンの断片、変異体又は誘導体である。一部の実施態様において、アルブミンは、治療的ペプチドに対して遺伝的に融合された組換えアルブミンを含むアルブミン誘導体である。
【0012】
更に、当業者に公知の任意の治療的化合物を、本発明の方法に従って、抱合体を形成するために使用してもよい。一部の実施態様において、化合物の治療的部分は、ペプチド、タンパク質、有機分子、RNA、DNA及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施態様において、化合物は、30kDa未満の分子量を有する治療的ペプチド又はその誘導体を含む。例示的な治療的ペプチドには、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、エキセンディン-3及びエキセンディン-4などのインスリン分泌性ペプチド;並びに成長ホルモン放出因子(GRF)を含む。特定の実施態様において、治療的部分は、グルカゴン様ペプチド1又はその誘導体である。特定の実施態様において、化合物の治療的部分は、エキセンディン-3又はその誘導体である。特定の実施態様において、化合物の治療的部分は、エキセンディン-4又はその誘導体である。特定の実施態様において、治療的部分は、ヒトGRF又はその誘導体である。
【0013】
特定の実施態様において、化合物は、治療的部分に対して、直接又は連結基を介しての、いずれかで付着された反応基を含む。一部の実施態様において、反応基は、マイケルアクセプター、スクシンイミジル含有基、マレイミド含有基又は求電子性アクセプターである。一部の実施態様において、反応基は、ジスルフィド交換ができる化学部分である。一部の実施態様において、反応基は、遊離チオールを含む。特定の実施態様において、反応基は、システイン残基である。反応基の間接的な付着のための連結基には、(2-アミノ)エトキシ酢酸(AEA)、エチレンジアミン(EDA)及び2-[2-(2-アミノ)エトキシ)]エトキシ酢酸(AEEA)を含むが、限定されない。治療的部分がペプチドである場合、反応基は、ペプチドの任意の残基に付着されていてもよい。有用な付着の部位には、アミノ末端、カルボキシ末端及びアミノ酸側鎖を含む。
【0014】
特定の本発明の方法によれば、組換えアルブミンは、宿主細胞において産生される。外来組換えタンパク質を産生することができる任意の宿主細胞が、本明細書に記述された方法のために有用であろう。一部の実施態様において、宿主細胞は、組換えアルブミンを産生するように形質転換された酵母、細菌、植物、昆虫、動物又はヒト細胞であることができる。一部の実施態様において、宿主は、液体培地中で培養される。特定の実施態様において、宿主は、細菌株、例えば大腸菌(Escherichia coli)及び枯草菌(Bacillus subtilis)であることができる。その他の実施態様において、宿主は、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、アークスラ・アデニニボランス(Arxula adeninivorans)及びハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)などの酵母株であることができる。特定の実施態様において、宿主は、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)である。
【0015】
さらなる本発明の方法によれば、粗製又は部分的に精製した組換えアルブミン溶液を、反応基が組換えアルブミンに共有結合で結合して抱合体を形成するができる反応条件下で、反応基を含む化合物と接触させる。一部の実施態様において、反応条件は、1〜37℃の間又はより好ましくは20〜25℃の間の反応温度を含む。特定の実施態様において、組換えアルブミンを低から中性pHを含む溶液中で化合物と接触させる。一部の実施態様において、pHは、約4.0〜7.0の間である。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、少なくとも30分の期間にわたって、化合物の滴下によって化合物と接触させる。一部の実施態様において、化合物対組換えアルブミンの最終モル比は、0.1:1〜1:1の間にある。一部の実施態様において、化合物対組換えアルブミンの最終モル比は、0.5:1〜0.9:1の間である。特定の実施態様において、化合物対組換えアルブミンの最終モル比は、約0.7:1である。
【0016】
更に本発明の方法によれば、抱合体は、精製した疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって精製される。一つの実施態様において、第1の精製工程は、抱合反応をフェニルセファロースクロマトグラフィーに供することを含む。特定の実施態様において、この工程は、遊離又は抱合型であるかにかかわらず、非抱合化合物をアルブミン種から分離する。特定の実施態様において、フェニルセファロースカラムは、比較的低い塩分及び中性のpHを有する緩衝液、例えば5mMオクタン酸ナトリウム及び5mM硫酸アンモニウムを含むpH 7.0のリン酸緩衝液において平衡化される。これらの条件下で、非抱合型化合物は、樹脂に結合することができるが、一方で抱合体は、カラムを通って流れることができる。
【0017】
特定の実施態様において、抱合体の精製には、非Cys34アルブミン抱合体を含む任意の副反応物を減少させ、又は不安定にするために、フェニルセファロースクロマトグラフィーに続いて穏和な分解工程を更に含む。分解は、更に精製を進行する前に、7日までの間、室温にてフェニルセファロースフロースルーをインキュベートすることによって達成してもよい。特定の実施態様において、穏和な分解工程は、抱合体から分解生成物、すなわち非抱合化合物を更に分離するために、フェニルセファロースに対する第2の適用を伴う。
【0018】
特定の実施態様において、抱合体の精製は、フェニルセファロースフロースルーをブチルセファロースクロマトグラフィーに供して非抱合アルブミン、二量体の非抱合アルブミン及び残留する非抱合化合物から抱合体を更に単離する第2のHIC工程を更に含む。特定の実施態様において、ブチルセファロースカラムは、5mMオクタン酸ナトリウム及び750mM硫酸アンモニウムを含む中性のpHで、又はその近くで、緩衝液中で平衡化される。特定の実施態様において、化合物の分子量が比較的低い、例えば2kDa以下の場合、塩条件及び勾配を変化させてもよい。例えば、1.5 Mの開始硫酸アンモニウム濃度が選択される。特定の実施態様において、溶出は、直線的若しくは段階的に塩濃度を減少させる勾配又はこれらの組み合わせを使用して達成してもよく、非抱合アルブミンは、750mM硫酸アンモニウムで溶出させ、二量体非抱合アルブミンは、550mM硫酸アンモニウムで溶出させ、化合物-アルブミン抱合体は、100mM硫酸アンモニウムで溶出させ、並びに非抱合化合物及びその他の種は、水で溶出させる。これらの種には、例えば二量体、三量体若しくは重合体のアルブミン抱合体又は1:1を越える化合物対組換えアルブミンの化学量論を含むアルブミン抱合体産物を含むであろう。
【0019】
特定の実施態様において、抱合体の精製は、HICに続く限外濾過によって抱合体を洗浄して、濃縮することを更に含む。一部の実施態様において、滅菌水、生理食塩水又は緩衝液を使用して、精製された抱合体から硫酸アンモニウム及び緩衝液成分を除去してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(5. 本発明の詳細な説明)
(5.1 定義)
本明細書に使用される、「アルブミン」は、当業者に公知の任意の血清アルブミンをいう。アルブミンは、起源の種に応じて、その単量体の形態でおよそ65〜67キロダルトンの間の分子量を有する血漿中で最も豊富なタンパク質である。「アルブミン」という用語は、「血清アルブミン」と同義的に使用され、また本発明の方法に従った抱合体を形成するアルブミンの供与源を定義することは意味しない。
【0021】
本明細書に使用される「治療的ペプチド」は、下記に定義したように、治療的活性をもつ2〜50アミノ酸の間のアミノ酸鎖である。それぞれの治療的ペプチドは、アミノ末端(N-末端又はアミノ末端アミノ酸ともいわれる)、カルボキシル末端(C末端、カルボキシル末端アミノ酸ともいわれる)及びアミノ末端とカルボキシ末端との間に位置する内部アミノ酸を有する。アミノ末端は、遊離αアミノ基をもつ治療的ペプチド鎖のアミノ酸のみによって定義される。カルボキシル末端は、遊離αカルボキシル基をもつ治療的ペプチド鎖のアミノ酸のみによって定義される。いくつかの形態において、カルボキシル末端は、アミド化されていてもよい。
【0022】
(5.2 本発明の実施態様)
本発明は、前もって形成されたアルブミン抱合体の製造のための方法を提供する。特に、本発明は、組換えアルブミンに対する治療的化合物のインビトロでの抱合のための方法であって、反応基を含む治療的化合物を溶液中で組換えアルブミンに接触させて抱合体を形成する、前記方法を提供する。
【0023】
本方法は、多様な不均一性の程度を有するアルブミン溶液においてアルブミンに対するインビトロでの抱合を提供する。一部の実施態様において、アルブミン溶液は、宿主生物に由来する液体培地である。一部の実施態様において、アルブミン溶液は、液体培養である。一部の実施態様において、アルブミン溶液は、粗製可溶化液である。一部の実施態様において、アルブミン溶液は、澄んだ可溶化液である。一部の実施態様において、アルブミン溶液は、精製されたアルブミン溶液である。一部の実施態様において、アルブミン溶液は、メルカプトアルブミンが濃縮された精製されたアルブミン溶液である。一部の実施態様において、アルブミン溶液は、精製された脱糖化されたアルブミン溶液である。
生じる抱合体は、クロマトグラフィー、例えばフェニルセファロース及びブチルセファロースクロマトグラフィーを含む疎水性相互作用クロマトグラフィー、任意に続く限外濾過によって精製される。
【0024】
(5.3 治療的化合物)
(5.3.1 治療的基)
本明細書に記述した方法によって形成される抱合体は、治療的基及び反応性部分を含む化合物に共有結合で結合された組換えアルブミンを含む。一部の実施態様において、当業者に公知の任意の治療的分子には、化合物の治療的基を含み得る。一部の実施態様において、治療的分子は、ペプチド、タンパク質、有機分子、RNA DNA及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施態様において、治療的分子は、ビノレルビン、ゲムシタビン、ドキソルビシン又はパクリタキセルなどの小分子である。
【0025】
本発明の詳細な実施態様において、治療的分子は、治療的ペプチド又はタンパク質である。一部の実施態様において、治療的ペプチドは、30kDa未満の分子量を有するペプチドを含む。例示的な治療的ペプチドは、抗肥満症ペプチド、例えば米国特許出願番号第11/067,556号(公開番号US2005/176643)に記述されたペプチドYYを含み、その内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。一部の実施態様において、治療的ペプチドは、ナトリウム利尿のペプチド、例えば心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)又は脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)であり、これらの両方ともが米国特許出願番号第10/989,397号(公開番号US2005/089514)に記述されており、その内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。一部の実施態様において、治療的ペプチドは、米国特許出願番号第10/203,809号(公開番号US 2003/073630)に記述された成長ホルモン放出因子(GRF)であり、その内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。一部の実施態様において、治療的ペプチドは、抗融合性ペプチド、例えばT-20、C34又はT-1249である。その他の有用なペプチドには、インスリン、ダイノルフィン、Kringle 5、TPO、T-118及びウロコルチンを含む。
【0026】
詳細な実施態様において、治療的ペプチドは、インスリン分泌性ペプチドである。インスリン分泌性ペプチドには、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、エキセンディン-3及びエキセンディン-4、並びにこれらの前駆体、誘導体及び断片を含む。このようなインスリン分泌性ペプチドは、米国特許第6.514,500号;第6,821,949号;第6,887,849号;第6,849,714号;第6,329,336号;第6,924.264号及び第6,593,295号、並びに国際公開公報番号WO03/103572に開示されたものを含み、これらの内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。一部の実施態様において、治療的ペプチドは、GLP-1である。一部の実施態様において、治療的ペプチドは、GLP-1誘導体である。一部の実施態様において、治療的ペプチドは、エキセンディン-3である。一部の実施態様において、治療的ペプチドは、エキセンディン-3誘導体である。一部の実施態様において、治療的ペプチドは、エキセンディン-4である。一部の実施態様において、治療的ペプチドは、エキセンディン-4誘導体である。一部の実施態様において、治療的ペプチドは、エキセンディン-4(1-39)である。一部の実施態様において、治療的ペプチドは、エキセンディン-4(1-39)Lys40である。一部の実施態様において、治療的ペプチドは、GRFである。一部の実施態様において、治療的ペプチドは、GRF誘導体である。一部の実施態様において、治療的ペプチドは独立して、又は組み合わせて以下の突然変異を含む、天然のGRFペプチド配列(1-29)又は(1-44)である:位置2にてD-アラニン;位置8にてグルタミン;位置11にてD-アルギニン;位置12にて(N-Me)Lys;位置15にてアラニン;及び位置27にてロイシン。一部の実施態様において、治療的ペプチドは、GRF(D-ala2 gly8 ala15 leu27)Lys30である。
【0027】
特定の実施態様において、治療的ペプチドの誘導体は、天然型ペプチドに存在しない1つ以上のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加を含む。好ましくは、置換される、欠失され、又は付加されるアミノ酸の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10アミノ酸である。一つの実施態様において、このような誘導体は、ペプチドのアミノ末端及び/又はカルボキシ末端にて1つ以上のアミノ酸欠失、置換又は付加を含む。別の実施態様において、このような誘導体は、ペプチドの長さの範囲内の任意の残基に1つ以上のアミノ酸欠失、置換又は付加を含む。
【0028】
特定の実施態様において、アミノ酸置換は、保存的又は非保存的アミノ酸置換であってもよい。保存的アミノ酸置換は、含有アミノ酸残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/又は両親媒性の性質の類似性に基づいて行われる。例えば、無極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンを含み;極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンを含み;正に荷電した(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン及びヒスチジンを含み;並びに負に荷電した(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。加えて、グリシン及びプロリンは、鎖の配向に影響を及ぼし得る残基である。非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスのものに交換することを伴うであろう。
【0029】
特定の実施態様において、アミノ酸置換は、非古典的アミノ酸又は化学的アミノ酸類似体での置換であってもよい。非古典的アミノ酸には、共通のアミノ酸のD-異性体、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロアミノ酸、β-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Nα-メチルアミノ酸などのデザイナーアミノ酸(designer amino acid)、及び一般のアミノ酸類似体を含むが、限定されない。
【0030】
特定の実施態様において、治療的ペプチドの誘導体は、少なくとも75%、少なくとも85%又は少なくとも95%のペプチドと全体的配列相同性を共有する。この文脈におけるパーセント相同性は、配列を整列させ、必要に応じて、最大パーセント配列相同性を達成するためにギャップを導入した後に、ペプチドの対応するアミノ酸残基に対して同一(すなわち、整列における特定の位置にてアミノ酸残基が、同じ残基である)又は同様(すなわち、上で議論したように、整列における特定の位置にてアミノ酸置換は、保存的置換である)である候補配列におけるアミノ酸残基の割合を意味する。特定の実施態様において、治療的ペプチドの誘導体は、ペプチドとのそのパーセント配列同一性又はパーセント配列類似性によって特徴づけられる。配列同一性及び類似性の割合を含む配列相同性は、当該技術分野において周知の配列整列技術を、好ましくは本目的のためにデザインされたコンピュータアルゴリズムを使用して、前記コンピュータアルゴリズムのデフォルトパラメーター又はこれらを含むソフトウェアパッケージを使用して決定される。
【0031】
コンピュータアルゴリズム及びこのようなアルゴリズムを組み込んでいるソフトウェアパッケージの非限定の例には、以下を含む。BLASTファミリーのプログラムは、2つの配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの好ましい、非限定的な例を例証する(例えば、Karlin & Altschulの論文、1990, Proc. Nail. Acad. Sci. USA 87:2264-2268 (Karlin & Altschulの論文、1993. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873- 5877において改正)、Altschulらの論文、1990, J. Mol. Biol. 215:403-410,(NBLAST及びXBLASTを記述)、Altschulらの論文、1997. Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (Gapped BLAST及びPSI- Blastを記述)。別の好ましい例は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれ、かつGCG配列整列ソフトウェアパッケージの一部として利用できるMyers及びMiller(1988 CABlOS 4:11-17)のアルゴリズムである。また、好ましくは、Wisconsin Sequence Analysis Packageの一部として利用できるFASTAプログラム(Pearson W.R.及びLipman D.J.の論文、Proc. Nat Acad. Sci. USA、85:2444-2448(1988))である。さらなる例には、BFSTFITと、これは、使用する2つの配列間の類似性の最適な単一領域を見いだすために、Smith及びWaterman (Advances in Applied Mathematics, 2:482-489, 1981)の「局部的相同性」アルゴリズムを使用し、また比較される2つの配列が長さの異なる場合に好ましく;GAPとを含み、これは、Neddleman及びWunsch(J. Mol. Biol. 48:443-354, 1970)のアルゴリズムに従って「最大類似性」を見いだすことによって2つの配列を整列させ、また2つの配列がおおよそ同じ長さで、かつ整列が全長にわたって予想される場合に好ましい。
【0032】
特定の実施態様において、治療的ペプチドの誘導体は、ギャップなしで、ペプチドと少なくとも55%、少なくとも65%、少なくとも75%又は少なくとも85%の配列の全長にわたって一次アミノ酸配列相同性を共有する。好ましい実施態様において、治療的ペプチドの誘導体は、ギャップなしで、ペプチドと、少なくとも90%又は少なくとも95%の配列の全長にわたって一次アミノ酸配列相同性を共有する。
【0033】
好ましい実施態様において、パーセント同一性又は類似性は、アミノ酸の領域にわたる同一(パーセント同一性について)又は保存された(パーセント類似性について)アミノ酸の数を決定することによって決定され、該領域は、比較される2つのペプチドの最も短いものの全長(又は両方の配列の大きさが同一である場合、両方の全長)と同じである。別の実施態様において、パーセント同一性又は類似性は、BLASTアルゴリズムを使用して、デフォルトパラメーターで、決定される。
【0034】
(5.3.1.1 GLP-1及びGLP-1誘導体)
ホルモングルカゴンは、当業者に公知の任意の方法に従って合成することができる。一部の実施態様において、これは、高分子量の前駆体分子として合成され、これをその後に3つのペプチド:グルカゴン、GLP-1及びグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)にタンパク質分解で切断する。GLP-1は、配列番号:1(HDEFERH AEG TFTSD VSSYL EGQAAKEFIA WLVKGRG)に示すように、そのプロセスされていない形態で37アミノ酸を有する。プロセスされていないGLP-1は、本質的にインスリン生合成の誘導を媒介することができない。しかし、プロセスされていないGLP-1ペプチドは、GLP-1のアミノ酸7-37(「GLP-l(7-37)」)配列番号:2(HAEG TFTSDVSSYL EGQAAKEFIA WLVKGRG)を有する31アミノ酸長のペプチド(7-37ペプチド)に自然に変換される。また、GLP-1(7-37)は、C末端のグリシンのタンパク分解性除去によってさらなるプロセシングを受けてGLP-l(7-36)を生じることができ、これもまた、主にアルギニンアミド(GLP-1(7-36)アミド)としてアミド化された形態でC末端残基アルギニンを伴って存在する。このプロセシングは、小腸において、及びより少ない程度であるが、膵臓において生じて、GLP-l(7-37)のインスリン分泌活性をもつポリペプチドを生じる。
【0035】
化合物は、それがホルモンインスリンの合成又は発現を刺激し、又は刺激を生じさせることができる場合、「インスリン分泌活性」を有するといわれる。GLP-1(7-37)及びGLP-1(7-36)のホルモン活性は、それがインスリンの生合成を誘導するように見える場合に、膵臓β細胞に対して特異的であるようである。グルカゴン様ペプチドホルモンは、インスリン分泌の動態が異常である高血糖によって特徴づけられる状態である成人発症真性糖尿病の病原の研究に有用である。更に、グルカゴン様ペプチドは、本症の療法及び治療に、並びに高血糖の療法及び治療に有用である。
【0036】
ペプチド部分(断片)は、ヒトGLP-Lの決定されたアミノ酸配列から選択することができる。「ペプチド断片」及び「ペプチド部分」という同義的用語は、合成の、及び天然に存在するアミノ酸配列に由来するか、又は組換え平均を使用して産生される天然に存在するアミノ酸配列の両方を含むことが意味される。
【0037】
GLP-1のためのアミノ酸配列は、数人の研究者によって報告されている。Lopez, L. C.らの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:5485-89 (1983); Bell, G. I.らの論文、Nature 302:716-718 (1983); Heinrich, G.らの論文、Endocrinol. 115:21 76-81 (1984)を参照されたい。これらの内容は、引用により組み込まれている。プレプログルカゴンmRNA及びその対応するアミノ酸配列の構造は、周知である。前駆体遺伝子産物であるプログルカゴンのグルカゴン及び2つのインスリン分泌性ペプチドへのタンパク分解性プロセシングが特徴づけられている。本明細書に使用されるGLP-1(1-37)の表示法は、1(N末端)から37(C末端)までの全てのアミノ酸を有するGLP-1ポリペプチドをいう。同様に、 GLP-1(7-37)は、7(N末端)から37(C末端)までの全てのアミノ酸を有するGLP-1ポリペプチドをいう。同様に、GLP-1(7-36)は、番号7(N末端)から番号36(C末端)までの全てのアミノ酸を有するGLP-1ポリペプチドをいう。
【0038】
一つの実施態様において、GLP-1(7-36)及びそのペプチド断片は、下記の詳述したように、従来の手段によって、Merrifieldの論文、Chem. Soc. 85:21491962 (1962)、並びにStewart及びYoungの論文、Solid Phase Peptide Synthesis, Freeman, San Francisco, 1969. pp. 27-66によって記述された周知の固相ペプチド合成などによって合成される。これらの内容は、引用により本明細書に組み込まれている。しかし、例えばタンパク質分解酵素を使用して、天然に存在するアミノ酸配列を断片化することによって、プログルカゴンポリペプチドの、又はGLP-1の断片を得ることもできる。更に、Maniatis, T.らの論文、Molecular Biology: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor. N.Y. (1982)によって開示されたような組換えDNA技術を用いることにより、プログルカゴンペプチドの、又はGLP-1の所望の断片を得ることができる。これらの内容は、引用により本明細書に組み込まれている。
【0039】
本明細書に記述した方法のための有用なペプチドは、GLP-1(1-37)及びGLP-1(7-36))などのGLP-1に由来するものを含む。ペプチドは、それが天然に存在する配列を分解することによって得ることができる場合、又はそれが天然に存在するアミノ酸配列の、又はこの配列をコードする遺伝物質(DNA又はRNA)の配列の知識に基づいて合成することができる場合、「天然に存在するアミノ酸配列に由来する」といわれる。
【0040】
また、GLP-1(1-37)及び特にGLP-1(7-36)などのGLP-1の「誘導体」であるといわれる分子も有用である。このような「誘導体」は、以下の特徴を有する:(1)それがGLP-1又はGLP-1の同じような大きさの断片と実質的相同性を共有する:(2)それがインスリン分泌性ホルモンとして機能することができる;及び(3)誘導体がGLP-1のインスリン分泌活性の少なくとも0.1%、1%、5%、10%、15%、25%、50%、75%、100%又は100%を超えるインスリン分泌活性を有する。
GLP-1の誘導体は、誘導体のアミノ酸配列が少なくとも75%、少なくとも80%及びより好ましくは少なくとも90%及び最も好ましくは少なくとも95%、GLP-l(l-37)のものと同じである場合、GLP-1と「実質的相同性」を共有するといわれる。
【0041】
また、有用な誘導体には、天然に存在するGLP-1のものと実質的に相同的である配列を含むことに加えて、ペプチドがこれらのアミノ末端及び/若しくはこれらのカルボキシル末端にて、又は前記配列の内部にて1つ以上の追加のアミノ酸を含んでいてもよいGLP-1誘導体を含む。従って、有用な誘導体には、天然に存在するGLP-1配列に存在しなくてもよい1つ以上のアミノ酸を含んでいてもよいGLP-1のポリペプチド断片を含むが、ただしこのようなポリペプチドは、GLP-1のインスリン分泌活性の少なくとも0.1%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、100%又は100%を超えるインスリン分泌活性を有することを条件とする。追加の付加アミノ酸は、D-アミノ酸若しくはL-アミノ酸又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0042】
また、有用なGLP-1断片には、天然に存在するGLP-1ペプチドのものと実質的に相同的である配列を含むが、GLP-1ペプチドで天然に見いだされるこれらのアミノ末端及び/又はこれらのカルボキシ末端にて、1つ以上のアミノ酸を欠いているものを含む。従って、GLP-1の有用なポリペプチド断片は、通常天然に存在するGLP-1配列に存在する1つ以上のアミノ酸を欠いていてもよいが、ただしこのようなポリペプチドは、GLP-1のインスリン分泌活性の少なくとも0.1%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、100%又は100%を超えるインスリン分泌活性を有することを条件とする。特定の実施態様において、ポリペプチド断片は、天然に存在するGLP-1配列に通常存在する1つのアミノ酸を欠いている。一部の実施態様において、ポリペプチド断片は、天然に存在するGLP-1配列に通常存在する2つのアミノ酸を欠いている。一部の実施態様において、ポリペプチド断片は、天然に存在するGLP-1配列に通常存在する3つのアミノ酸を欠いている。一部の実施態様において、ポリペプチド断片は、天然に存在するGLP-1配列に通常存在する4つのアミノ酸を欠いている。
【0043】
また、重要でないアミノ酸置換を有する(及び、従って天然の配列のものとは異なるアミノ酸配列を有する)上記の断片の明らかな、又は自明の変異体が、有用であるが、ただしこのような変異体が上記のGLP-1誘導体のものと実質的に同一であるインスリン分泌活性を有することを条件とする。
【0044】
インスリン分泌活性をもつこれらのGLP-1誘導体に加えて、細胞によるグルコース摂取を刺激するが、インスリン発現又は分泌を刺激しないGLP-1誘導体も、本明細書に記述した方法に有用である。このようなGLP-1誘導体は、米国特許第5,574,008号に記述されており、これは、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。
【0045】
本明細書に記述した方法における使用を見いだす、細胞によるグルコース摂取を刺激するが、インスリン発現又は分泌を刺激しないGLP-1誘導体には:
R1-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-Lys-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Xaa-Gly-Arg-R2(配列番号:3)
式中、R1は、以下から選択される:
a)H2N;b)H2N-Ser;c)H2N-Val-Ser;d)H2N-Asp-Val-Ser:e)H2N-Ser-Asp-Val-Ser(配列番号:4);f)H2N-Thr-Ser-Asp-Val-Ser(配列番号:5);g)H2N-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser(配列番号:6);h)H2N-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser(配列番号:7);i)H2N-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser(配列番号:8);j)H2N-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser(配列番号:9);及びk)H2N-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser(配列番号:10);l)H2N-His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser(配列番号:11):m)H2N-His-D-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser(配列番号:12)。ペプチドにおいて、Xaaは、Lys及びArgから選択され、かつR2は、NH2、OH、Gly-NH2及びGly-OHから選択される。
これらのペプチドは、インスリン分泌活性を有さないが、それにもかかわらず、米国特許第5,574,008号(これは、その全体が引用により本明細書に組み込まれている)に記載されているように糖尿病及び高血糖性状態を治療するために有用であるC末端のGLP-1断片である。
【0046】
(5.3.1.2 エキセンディン-3及びエキセンディン-4ペプチド並びにこれらの誘導体)
エキセンディン-3及びエキセンディン-4ペプチドは、当業者に公知の任意のエキセンディン-3又はエキセンディン-4ペプチドであることができる。エキセンディン-3及びエセンディン-4は、GLP-1に対しておよそ53%相同である39アミノ酸ペプチド(残基2及び3が異なる)であり、かつインスリン分泌薬としての使用を見いだす。
天然のエキセンディン-3配列は、HSDGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS(配列番号:13)であり、及びエキセンディン-4配列は、HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS(配列番号:14)である。
【0047】
また、アミノ酸配列を含むエキセンディン-4:エキセンディン-4(1-31)(配列番号:15)HGEGTFTSDLSKQMEEAVRLFIEWLKNGGPY及びエキセンディン-4(1-31)(配列番号:16)HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGYのインスリン分泌性断片も、本明細書に記述した方法に有用である。
また、アミノ酸配列:エキセンディン-4(9-39)(配列番号:17)DLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPSを含む天然のエキセンディン-4の阻害断片も、有用である。
【0048】
その他の例示的なインスリン分泌性ペプチドを、配列番号:18〜24に示してある。
【表1】

【0049】
また、本明細書に記述した方法に有用なペプチドは、天然に存在するエキセンディン-3及びエキセンディン-4ペプチドに由来するペプチドを含む。ペプチドは、それが天然に存在する配列を断片化することによって得ることができる場合、又はそれが天然に存在するアミノ酸配列の、又はこの配列をコードする遺伝物質(DNA又はRNA)の配列の知識に基づいて合成することができる場合、「天然に存在するアミノ酸配列に由来する」といわれる。
【0050】
また、本明細書に記述した方法に有用な分子には、エキセンディン-3及びエキセンディン-4の「誘導体」であるといわれるものを含む。このような「誘導体」は、以下の特徴を有する:(1)それがエキセンディン-3若しくはエキセンディン-4、又はエキセンディン-3若しくはエキセンディン-4の同じような大きさの断片と実質的相同性を共有する:(2)それがインスリン分泌性ホルモンとして機能することができる;及び(3)誘導体がエキセンディン-3又はエキセンディン-4のインスリン分泌活性の少なくとも0.1%、1%、5%、10%、15%、25%、50%、75%、100%又は100%を超えるインスリン分泌活性を有する。
【0051】
エキセンディン-3又はエキセンディン-4の誘導体は、誘導体のアミノ酸配列が少なくとも75%、少なくとも80%及びより好ましくは少なくとも90%及び最も好ましくは少なくとも95%、エキセンディン-3又はエキセンディン-4のいずれかのものと同じであるである場合、エキセンディン-3又はエキセンディン-4と「実質的相同性」を共有するといわれる。
【0052】
また、有用な誘導体には、天然に存在するエキセンディン-3又はエキセンディン-4のものと実質的に相同的である配列を含むことに加えて、ペプチドがこれらのアミノ末端及び/若しくはこれらのカルボキシル末端にて、又は前記配列の内部にて1つ以上の追加のアミノ酸を含んでいてもよいエキセンディン-3又はエキセンディン-4断片を含む。従って、有用な誘導体には、天然に存在するエキセンディン-3又はエキセンディン-4配列に存在しなくてもよい1つ以上のアミノ酸を含み得るエキセンディン-3又はエキセンディン-4のポリペプチド断片を含むが、ただしこのようなポリペプチドは、エキセンディン-3又はエキセンディン-4のいずれかのインスリン分泌活性の少なくとも0.1%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、100%又は100%を超えるインスリン分泌活性を有することを条件とする。
【0053】
同様に、有用な誘導体には、天然に存在するエキセンディン-3又はエキセンディン-4ペプチドのものと実質的に相同的である配列を含むが、エキセンディン-3又はエキセンディン-4ペプチドで天然に見いだされるこれらのアミノ末端及び/又はこれらのカルボキシ末端にて1つ以上のアミノ酸を欠いているエキセンディン-3又はエキセンディン-4断片を含む。従って、有用な誘導体には、通常天然に存在するエキセンディン-3又はエキセンディン-4配列に存在する1つ以上のアミノ酸を欠いていてもよいが、ただしこのようなポリペプチドは、エキセンディン-3又はエキセンディン-4のいずれかのインスリン分泌活性の少なくとも0.1%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、100%又は100%を超えるインスリン分泌活性を有することを条件とするエキセンディン-3又はエキセンディン-4のポリペプチド断片を含む。
【0054】
また、有用な誘導体には、重要でないアミノ酸置換を有する(及び、従って天然の配列のものとは異なるアミノ酸配列を有する)上記の断片の明らかな、又は自明の変異体を含むが、ただしこのような変異体が上記のエキセンディン-3又はエキセンディン-4誘導体のものと実質的に同一であるインスリン分泌活性を有することを条件とする。
【0055】
(5.3.1.3 GRF及びGRF誘導体)
成長ホルモン(GH)は、ソマトトロピンとしても知られ、下垂体前葉において成長ホルモン分泌細胞と呼ばれる細胞によって合成され、かつ分泌される約190アミノ酸のタンパク質ホルモンである。これは、成長及び代謝の制御の主要な関係物である。また、これは、ヒト及び動物の両方に使用するための医薬製品としてかなりの関心が持たれている。GHの産生は、ストレス、栄養、睡眠及びGH自体を含む多くの因子によって調整される。しかし、その主な制御因子は、2つの視床下部ホルモン:GHの合成及び分泌を刺激する44アミノ酸配列である成長ホルモン放出因子(GRF又はGHRH);及び、GRFに応答してGH放出を阻害するソマトスタチン(SS)である。
【0056】
GRF(1-44)の生物活性は、ペプチドのN-終末部にあることが示された。また、完全な固有の活性及び能力は、インビトロ及びインビボの両方においてGRF(1-29)で証明された。更にまた、GRFの持続的投与により、通常の生理学的条件下と同じ脳下垂体からのGHの脈状分泌パターンを誘導する。従って、GRFは、成長ホルモンが示される例において優れた治療的有用性を有する。例えば、これは、GH産生異常のための低下垂体萎縮症、糖尿病の治療及び加齢過程の遅延に使用されるであろう。GRFの内因性産生若しくは放出からの利益を得ている多くのその他の疾患又は状態を下記に列挙してある。更に、GRFは、農業分野において有用である。農業使用の例には、より早期の出荷を可能にするための、ブタ、ウシ又はその他の肉産生の増強を含む。また、GRFは、乳牛における乳産生を刺激することが公知である。その他の例示的な適用は、米国特許出願番号第10/203,809号(公開番号US2003/073630)に記述されている。これらの内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。
【0057】
従って、特定の実施態様において、治療的ペプチドとしてGRFを含む抱合体は、本発明の方法によって形成してもよい。また、有用なペプチドには、天然に存在するGRFペプチドのものと実質的に相同的である配列を含むが、GRF天然のペプチドで天然に見いだされるこれらのアミノ末端及び/又はこれらのカルボキシル末端にて1つ以上の更なるアミノ酸を欠いていてもよいGRF誘導体を含む。従って、有用なペプチドには、通常天然に存在するGRF配列に存在する1つ以上のアミノ酸を欠いていてもよいGRFのポリペプチド断片を含むが、ただしこのようなポリペプチドは、GRFの成長ホルモン放出活性の少なくとも0.1%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、100%又は100%を超える成長ホルモン放出活性を有することを条件とする。
【0058】
GRFの誘導体は、誘導体のアミノ酸配列が少なくとも75%、少なくとも80%及びより好ましくは少なくとも90%及び最も好ましくは少なくとも95%、GRFのものと同じであるである場合、GRFと「実質的相同性」を共有するといわれる。
また、本明細書に記述した方法に有用なペプチドは、重要でないアミノ酸置換を有する(及び、従って天然の配列のものとは異なるアミノ酸配列を有する)上記の類似体又は断片の明らかな、又は自明の変異体を含むが、ただしこのような変異体がGRFの成長ホルモン放出活性の少なくとも0.1%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、100%又は100%を超える成長ホルモン放出活性を有することを条件とする。
【0059】
特定の実施態様において、本明細書に記述した方法に有用なGRFペプチド配列は、以下の配列である:
A1-A2-Asp-A4-Ile-Phe-A7-A8-A9-Tyr-A11-A12-A13-Leu-A15-Gln-Leu-A18-Ala-A20-A21-A22-Leu-A24-A25-A26-A27-A28-A29-A30
式中、
A1は、Tyr、N-Ac-Tyr、His、3-MeHis、desNH2His、desNH2Tyr、Lys-Tyr、Lys-His又はLys-3-MeHisであり;
A2は、Val、Leu、He、Ala、D-Ala、N-メチル-D-Ala、(N-メチル)-Ala、Gly、Nle又はNvalであり:
A4は、Ala又はGlyであり;
A5は、Met又はIleであり:
A7は、Asn、Ser又はThrであり;
A8は、Asn、Gln、Lys又はSerであり、:
A9は、Ala又はSerであり;
A11は、Arg、D-Arg、Lys又はD-Lysであり:
A12は、Lys、(N-Me)Lys又はD-Lysであり;
A13は、Val又はLeuであり;
A15は、Ala、Leu又はGlyであり;
A18は、Ser又はThrであり;
A20は、Arg、D-Arg、Lys又はD-Lysであり;
A21は、Lys、(N-Me)Lys又はAsnであり:
A22は、Tyr又はLeuであり;
A24は、Gln又はHisであり;
A25は、Ser又はAspであり;
A26は、Leu又はIleであり;
A27は、Met、Ile、Leu又はNleであり;
A28は、Ser、Asn、Ala又はAspであり;
A29は、Lys又はArgであり;かつ
A30は、なし、X又はX-Lysであり、式中Xは、なしか、又は配列Gln-Gln-Gly-Glu-Ser-Asn-Gln-Glu-Arg-Gly-Ala-Arg-Ala-Arg-Leu若しくはこれらの断片であり、式中断片は、C末端のから1〜15アミノ酸まで減少され;及び断片からの1つのアミノ酸残基は、リジン残基と任意に置換することができ;及びC末端は、遊離カルボン酸又は対応するアミドであることができる、
ただし、A2がAlaである場合、断片は、5〜8アミノ酸まで減少された断片ではないことを条件とする。
【0060】
成長ホルモンの内因性産生又は放出を促進することに加えて、本GRF誘導体は、GRFペプチド「バックボーン」の1つ以上の部位にアミノ酸置換を組み込んでいてもよく、又はC末端及び/又はN末端が1つ以上の塩基性残基の付加によって変化されているか、又はインビボにおける望まれない生物化学的攻撃及び分解からペプチド末端を保護するためのペプチド化学の技術分野において従来法で使用される種類のブロック基を組み込むように修飾されているGRF種の変異体である。従って、本GRF誘導体は、その配列が多くの著者によって報告されているヒトGRF、ウシGRF、ラットGRF、ブタGRFなど含むが、限定されない任意のGRF種の状況におけるアミノ酸置換を組み込む。より好ましい実施態様では、リジン残基が、GRFペプチド配列のC末端又はN末端に付加される。
【0061】
(5.4 反応基)
好ましい実施態様において、本明細書に記述した方法によって形成される抱合体には、反応基を介して組換えアルブミンに共有結合で連結された治療的分子を含む。反応基は、例えばアルブミン上の1つ以上のアミノ基、ヒドロキシル基又はチオール基と反応することにより、アルブミンと安定な共有結合を形成するその能力について選択する。好ましくは、反応基は、アルブミン上の1つのアミノ基、ヒドロキシル基又はチオール基のみと反応する。好ましくは、反応基は、アルブミンの特定のアミノ基、ヒドロキシル基又はチオール基と反応する。一部の実施態様において、本明細書に記述した方法によって形成される抱合体には、アルブミン上のアミノ基、ヒドロキシル基又はチオール基と反応基の反応を介してアルブミンに共有結合で結合された治療的ペプチド又はその修飾された誘導体を含む。従って、本発明の方法によって形成される抱合体には、反応基がアルブミンに対する共有結合を形成した治療的ペプチド又はその修飾された誘導体を含んでもよい。更により好ましくは、反応基は、アルブミンのCys34チオールと共有結合を形成する。
【0062】
タンパク質上の官能基と共有結合を形態するためには、化学的反応基として、多種多様な活性カルボキシル基、特にエステルを使用してもよい。カルボキシル基は、通常、タンパク質上のアミン、チオール及びヒドロキシル官能性による攻撃に対して感受性のN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)又はマレイミドなどの反応中間体に変換される。ペプチドへのNHS及びマレイミド反応基の導入は、マレイミド-ベンゾイル-スクシンイミド(MBS)、γ-マレイミド-ブチリルオキシスクシンイミドエステル(GMBS)、ジチオビス-N-ヒドロヒスクシンイミドプロプロピオナート(DTSP)、スクシンイミジル3(2-ピリジルジチオプロピオナート)(SPDP)、スクシンイミジルtrans-4-(マレイミジルメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、スクシンイミジルアセチルチオアセテート(SATA)、ベンゾフェノン4-マレイミド、N-((2-ピリジルジチオ)エチル)-4-アジドサリチルアミド(PEAS;AET)などの二官能性の連結剤を使用して行うことができる。このような二官能性リンカーは、保護基の選択に基づいて、ペプチド上のカルボキシ基又はアミノ基を活性化するだろう。
【0063】
或いは、ペプチドに対するマレイミドの付加は、マレイミドプロピオン酸、[2-[2-[2-マレイミドプロピオンアミド(エトキシ)エトキシ]酢酸のような誘導体を活性化するためにN,N,ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-{3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ヒドロクロリド(EDAC)などのカップリング剤を使用し、その後にペプチド上のアミンと反応することによって行うことができる。DCC及びEDACのような同様の薬剤を使用して、ペプチド上のカルボキシ部分にマレイミドアルキルアミンのような誘導体を付加することができるであろう。
【0064】
一級アミンは、NHSエステルに対する主要な標的である。タンパク質のN末端上に存在する利用可能なε-アミン基は、NHSエステルと反応する。しかし、タンパク質上のε-アミノ基は、NHSカップリングには望ましくなく、又は利用できないであろう。5つのアミノ酸が、これらの側鎖に窒素を有するが、リジンのε-アミンのみがNHSエステルと有意に反応する。NHSエステル抱合反応により、一級アミンと反応し、放出するN-ヒドロキシスクシンイミドを放出するときに、アミド結合を形成することができる。これらのスクシンイミジル含有反応基は、本明細書においてスクシンイミジル基という。
【0065】
詳細な実施態様において、アルブミン上の官能基は、アミノ酸残基34(Cys34)に位置する単一の遊離チオール基であり、化学的に反応基は、MPAなどのマレイミド含有基である。MPAは、マレイミドプロピオン酸又はマレイミドプロピオナートを表す。このようなマレイミド含有基は、本明細書において、マレイミド基という。
【0066】
一部の実施態様において、本明細書に記述した方法によって形成される抱合体は、治療的ペプチド上のスクシンイミジル又はマレイミド基に共有結合で連結されたアルブミンを含む。一部の実施態様において、アルブミンアミノ、ヒドロキシル又はチオール基は、治療的ペプチド上のスクシンイミジル又はマレイミド基に共有結合で連結される。一部の実施態様において、アルブミンシステイン34チオールは、治療的ペプチドのリジンのイプシロンアミノ上の[2-[2-[2-マレイミドプロピオンアミド(エトキシ)エトキシ]アセトアミドリンカーに共有結合で連結される。
【0067】
特定の実施態様において、反応基は、単一の定義されたアミノ酸にて、任意に連結基を介して、ペプチドに付着された単一のMPA反応基であり、かつMPAは、アルブミンの単一のアミノ酸残基、好ましくはシステイン34にてアルブミンに共有結合で付着される。好ましい実施態様において、アルブミンは、組換えヒトアルブミンである。
【0068】
特定の実施態様において、反応基、好ましくはMPAは、1つ以上の連結基、好ましくはAEEA、AEA又はオクタン酸を介してペプチドに付着される。反応基、好ましくはMPAが、2以上の連結基を介してペプチドに付着される特定の実施態様の例において、それぞれの連結基は、好ましくはAEA((2-アミノ)エトキシ酢酸)、AEEA([2-(2-アミノ)エトキシ)]エトキシ酢酸)及びオクタン酸からなる群から独立して選択することができる。一つの実施態様において、反応基、好ましくはMPAは、0、1、2、3、4、5又は6個の直列に配置されたAEEA連結基を介してペプチドに付着される。別の実施態様において、反応基、好ましくはMPAは、0、1、2、3、4、5又は6個の直列に配置されたオクタン酸連結基を介してペプチドに付着される。特定の実施態様において、連結基は、例えば、0〜30原子又は0〜20原子又は0〜10原子の鎖を含むことができる。特定の実施態様において、連結基には、例えば0〜30原子又は0〜20原子又は0〜10原子の鎖からなることができる。これらの原子は例えば、C、N、O、S、Pからなる群から選択することができる。
【0069】
特定の実施態様において、反応基は、このような反応基の付着のために適した治療的ペプチドの任意の残基に付着することができる。残基は、ペプチドの末端残基又は内部残基であることができる。特定の実施態様において、反応基は、ペプチドのカルボキシ末端又はアミノ末端に付着することができる。有利な実施態様において、反応基は、ペプチドの単一の部位に付着される。これは、当業者に公知の保護基を使用して達成することができる。特定の実施態様において、治療的ペプチドの誘導体には、反応基の付着のために組み込まれた残基を含むことができる。付着のための有用な残基には、リジン残基、アスパラギン酸残基及びグルタミン酸残基を含むが、限定されない。残基は、ペプチドの内部又は末端に、例えば遊離α-アミノ末端を経てN末端のアミノ酸残基に組み込むことができる。特定の実施態様において、反応基は、内部リジン残基に付着される。特定の実施態様において、反応基は、末端リジン残基に付着される。特定の実施態様において、反応基は、アミノ末端リジン残基に付着される。特定の実施態様において、反応基は、カルボキシ末端リジン残基、例えばGLP-1、GLP-l(7-37)又はエキセンディン-4のカルボキシ末端のリジン残基に付着される。
【0070】
その他の実施態様において、活性化されたジスルフィド結合基は、選択的チオール活性化スキームに基づいた分子間ジスルフィド結合の優先的形成のための方法を介して、治療的ペプチドシステイン又はシステイン類似体に結合してもよい。タンパク質又はペプチド間で選択的に非対称ジスルフィド結合を形成するための、1つのチオールの活性基での選択的活性化、続く第2の遊離チオールとの反応に基づいた方法は、対称ジスルフィド結合形成による収率の減少の問題を軽減することが記述されている。D. Andreuらの論文、「分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)」(M. W. Pennington 及び B. M. Dunn編). Vol.35, p. 91. Humana Press. Totowa. N .J., (1994)を参照されたい。この内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。好ましくは、このような活性基は、ピリジンスルフェニル基に基づいたものである(M. S. Bernatowiczらの論文、Int. J. Pept. Protein Res. 28: 107(1986))。好ましくは、2,2'-ジチオジピリジン(DTDP)(Carlssonらの論文、Diυchem. J. 173: 723(1978); L. H. Kondejewskiらの論文、Bioconjugate Chem. 5:602(1994) 又は2.2'-ジチオビス(5-Nitropyridine)(NPYS)(J. Org. Chem. 56: 6477(1991))が使用される。加えて、5,5'ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(エルマン試薬)又は6,6'-ジチオジニコチン酸を活性基として使用してもよい。
【0071】
これらの方法によれば、ジスルフィド結合活性化基は、最初に過剰の活性化基の条件下でシステイン又はシステイン類似体を含む治療的ペプチドと反応させる。これらの条件では、本質的にジスルフィド結合するペプチドホモ二量体を産生することなく、活性化されたジスルフィド基とカップリングした治療的ペプチドを含む治療的化合物の形成を高度に促進する。カップリング反応後に生じるペプチド化合物は、逆相-HPLCなどによって精製される。第2の遊離チオールとの反応は、ペプチド化合物が血液成分、好ましくは血清アルブミンと反応して治療的化合物と血清アルブミンとの間の抱合体を形成するときに生じる。
【0072】
治療的ペプチドシステイン又はシステイン類似体は、亜硫酸分解反応スキームを介してS-スルホナートを有するように変換される。このスキームでは、最初に治療的ペプチドを合成的に、又は組換えで合成する。次いで、亜硫酸分解反応を使用して、S-スルホナートをそのシステインを介して治療的ペプチド又はシステイン類似体チオールに対して付着させる。亜硫酸分解反応に続いて、治療的ペプチド化合物を勾配カラムクロマトグラフィーなどによって精製する。次いで、S-スルホナート化合物を使用して、治療的ペプチド化合物と血液成分、好ましくは血清アルブミンとの間の抱合体を形成する。
【0073】
治療的ペプチドをアルブミンに対する抱合のための反応基で修飾する様式は、治療的ペプチドを含む種々のエレメントの性質に応じて、広く変化するであろう。合成手順は、単純であり、高収率をもたらし、かつ産物を高度に精製することができるように選択されるであろう。通常、化学的に反応性の基、例えばカルボキシル基では、活性エステルを形成するためのエステル化は、ペプチド合成の最後の段階にて行われるであろう。修飾されたインスリン分泌性ペプチドの産生のための具体的方法は、米国特許第6,329,336号、第6,849,714号又は第6,887,849号に記述されている。これらの内容は、これらの全体が引用により本明細書に組み込まれている。
【0074】
(5.5 アルブミン)
当業者に公知の任意のアルブミンを使用して、本発明の方法に従った抱合体を形成してもよい。一部の実施態様において、アルブミンは、宿主種から単離され、抱合体の形成に使用するために精製された血清アルブミンである。血清アルブミンは、。マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヒツジ、ウマ又はヒトアルブミン含むが、限定されない当業者に公知の任意の哺乳動物血清アルブミンでもよい。一部の実施態様において、アルブミンは、ヒト血清アルブミンである。
【0075】
本発明の方法を利用して、血清又はゲノムの供与源などの多数の供与源由来のアルブミンを含むアルブミン抱合体を形成することができるが、本方法は、特に組換えアルブミンとの抱合体を形成するために適用できる。組換えアルブミンは、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヒツジ、ウマ又はヒトアルブミンを含むが、限定されない当業者に公知の任意の哺乳動物アルブミンであってもよい。好ましい実施態様において、組換えアルブミンは、組換えヒトアルブミン、特に組換えヒト血清アルブミン(rHSA)である。
【0076】
ヒト血清アルブミン(HSA)は、血清の浸透圧のかなりの比率を担い、更には内因性及び外来性リガンドの担体として機能する。その成熟形態において、HSAは、約66kDの分子量に対応する585アミノ酸の非グリコシル化単量体タンパク質である。その球状構造は、連続した一連の9個の二重ループを生じる17個のジスルフィド架橋によって維持される。
Brown. J. R.の文献、アルブミン構造、機能及び使用(Albumin Structure, Function and Uses)、Rosenoer, V.M.らの (編集)、Pergamon Press. Oxford (1977)を参照されたい。これらの内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。従って、アルブミンの成熟形態と共に形成された抱合体は、本明細書に記述した方法の範囲内である。
【0077】
一部の実施態様において、本発明の方法によって形成された抱合体には、アルブミン前駆体を含む。ヒトアルブミンは、肝臓肝細胞において合成去れ、次いで血流に分泌される。この合成では、第一に、新生ポリペプチドを分泌経路に向ける18アミノ酸のシグナル配列を含む前駆体のプレプロ-HSAを生じる。従って、アルブミン前駆体と共に形成された抱合体も、本明細書に記述した方法の範囲内である。
【0078】
特定の実施態様において、本発明の方法によって形成された抱合体には、アルブミンの分子変異体を含む。アルブミンの変異体には、ヒト集団におけるアルブミンの多型から生じる天然の変異体を含んでいてもよい。ヒト血清アルブミンの30を超える明らかに異なる遺伝的変異体が、種々の条件下での電気泳動的解析によって同定されてきた。例えば、Weitkampらの論文、Ann. Hum. Genet, 36(4):381-92 (1973); Weitkampの論文、Isr. J. Med. Sci, 9(9): 1238-48 (1973);. Fineらの論文、Biomedicine, 25(8):291-4 (1976); Fineらの論文、Rev. Fr. Transfus. Immunohematol, 25(2): 149- 63. (1982); Rochuらの論文、Rev. Fr. Transfus. Immunohematol. 31(5):725-33 (1988); Araiらの論文、Proc. Natl Acad. Sci. U.S.A 86(2): 434-8 (1989)を参照されたい。これらの内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。従って、アルブミンの分子変異体と共に形成された抱合体も、本明細書に記述した方法の範囲内である。
【0079】
一部の実施態様において、本発明の方法によって形成された抱合体には、アルブミンと実質的相同性を共有するアルブミンの誘導体を含む。例えば、抱合体は、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%及び最も好ましくは少なくとも95%アルブミンのものと同じアミノ酸配列を有するアルブミン相同体と共に形成されていてもよい。特定の実施態様において、アルブミン相同体は、遊離システインを含む。特定の実施態様において、アルブミン相同体は、単一の遊離システインを含む。一部の実施態様において、アルブミン相同体は、遊離システイン34を含む。
【0080】
一部の実施態様において、本発明の方法によって形成された抱合体には、アルブミンの構造誘導体を含む。アルブミンの構造誘導体は、アルブミンタイプの活性を有するタンパク質又はペプチド、例えばアルブミンの機能的断片を含んでいてもよい。一部の実施態様において、誘導体は、アルブミンの抗原決定基、すなわち抗アルブミン抗体によって認識され得るポリペプチドの一部である。一部の実施態様において、組換えアルブミンは、ヒト血清アルブミンをコードする遺伝子の修飾によって得ることができるであろう高い血漿半減期をもつ任意のタンパク質であってもよい。例えば、及び限定されないが、組換えアルブミンは、米国特許第6,787,636号(その内容は、その全体が引用により組み込まれている)に記載されているように、微量金属、例えばニッケル及び/又は銅の結合が減少され、又は除去されるように、アルブミンの微量金属結合領域に挿入又は欠失を含んでいてもよい。アルブミンの微量金属結合の減少は、アルブミン組成物で治療される対象における微量金属に対するアレルギー反応の可能性を減少させるために有利であろう。
【0081】
アルブミンの構造誘導体は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニン走査及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)突然変異誘発を含むが、限定されない当業者に公知の任意の方法を使用して産生してもよい。部位特異的変異誘発(Carterの論文、Biochem. J. 237: 1-7 (1986); Zoller及びSmithの論文、Methods Enzymol. 154:329-50 (1987)を参照されたい)、カセット突然変異誘発、制限選択突然変異誘発(Wellsらの論文、Gene 34:3 15-323 (1985))又はその他の公知の技術をクローン化されたアルブミンをコードするDNAに対して行って、アルブミン変異体DNA又はアルブミンの構造誘導体をコードする配列を産生することができる(Ausubelらの文献、分子生成物学の現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、John Wiley and Sons、New York(現在の版); Sambrookらの文献、分子クローニング。実験室マニュアル(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor、New York(2001)。これらの内容は、これらの全体が引用により本明細書に組み込まれている。
【0082】
特定の実施態様において、アルブミン誘導体には、アルブミンタンパク質のインビトロでの修飾によって得られる高血漿半減期をもつ任意の巨大分子を含む。一部の実施態様において、アルブミンは、脂肪酸で修飾される。一部の実施態様において、アルブミンは、金属イオンで修飾される。一部の実施態様において、アルブミンは、アルブミンに対して高親和性を有する小分子で修飾される。一部の実施態様において、アルブミンは、グルコース、ラクトース、マンノース及びガラクトースを含むが、限定されない糖で修飾される。
【0083】
一部の実施態様において、本明細書に記述した方法によって形成された抱合体は、治療的タンパク質又はその断片若しくは変異体に融合されたアルブミン融合タンパク質、すなわちアルブミン分子又はその断片若しくは変異体を含むことができる。アルブミン融合タンパク質は、アルブミンの全て又は一部をコードするポリヌクレオチドに連結された治療的タンパク質の全て又は一部をコードするポリヌクレオチドを含む核酸の翻訳によって産生してもよい。当業者に公知の任意のアルブミン融合タンパク質を使用して本発明の方法に従った抱合体を形成してもよい。例示的なアルブミン融合タンパク質は、米国特許番号6,548,653号、第6,686,179号、第6,905,688号、第6,994,857号、第7,045,318号、第7,056,701号及び第7,141,547号に記述されている。これらの内容は、これらの全体が引用により本明細書に組み込まれている。一部の実施態様において、アルブミン融合タンパク質は、米国特許第7,141,547号に記載されているように、グルカゴン様ペプチド1に融合されたアルブミン又はその断片若しくは変異体で構成される。一部の実施態様において、アルブミン融合タンパク質は、エキセンディン-3又はその断片若しくは変異体に融合されたアルブミン又はその断片若しくは変異体で構成される。一部の実施態様において、アルブミン融合タンパク質は、エキセンディン-4又はその断片もしくは変異体に融合されたアルブミン又はその断片若しくは変異体で構成される。
【0084】
本発明に従った抱合体を形成するために使用されるアルブミンは、当業者に公知の方法又は材料を使用して得てもよい。例えば、アルブミンは、市販の供与源、例えばNovozymes 社(Davis、CA;サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)に由来する組換えヒトアルブミン);Cortex-Biochem(San Leandro, Calif:血清アルブミン)、Talecris Biotherapeutics(Research Triangle Park、North Carolina;血清アルブミン)、ZLB Behring(King of Prussia. PA)又はNew Century Pharmaceuticals(Hunstsville,Ala.:ピチア・パストリス(Pichia pastoris)に由来する組換えヒトアルブミン)から得ることができる。
【0085】
(5.6 宿主細胞における組換えアルブミンの産生)
特定の実施態様において、抱合のための組換えアルブミンを産生するために、アルブミン又はその変異体若しくは誘導体をコードするDNAを適切な宿主細胞に発現させることができる。従って、アルブミンをコードする発現ベクターは、発現ベクターを構築するための当業者に公知の任意の技術に従って構築してもよい。次いで、本明細書に記述した方法によって抱合体を形成するために使用されるアルブミンの発現及び産生のために、ベクターを使用して適切な宿主細胞を形質転換してもよい。
【0086】
(5.6.1 発現ベクター)
一般に、発現ベクターは、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチド分子である。発現ベクターは、mRNAの安定な転写及び翻訳を生じるために、適切なプロモーター、複製配列、選択可能なマーカーなどの包含によって原核生物又は真核生物において機能するように容易に適応させることができる。発現ベクターの構築及び発現ベクターを含む細胞における遺伝子の発現のための技術は、当該技術分野において周知である。例えば、Sambrookらの文献、2001、分子クローニング--実験室マニュアル(Molecular Cloning A Laboratory Manual)第3版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY及びAusubelらの文献、編集、現在の版、分子生物学の現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、Greene Publishing Associates and Wiley Interscience. NYを参照されたい。
【0087】
多様な宿主-ベクター系を利用して、アルブミンをコードする配列を発現させてもよい。これらには、ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、その他)に感染させた哺乳動物細胞系:ウイルス(例えば、バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系:酵母ベクターを含む酵母などの微生物:バクテリオファージ、DNA、プラスミドDNA又はコスミドDNAで形質転換された細菌;又はプラスミドDNAをトランスフェクトしたヒト株化細胞を含むが、限定されない。ベクターの発現エレメントにより、これらの強度及び特異性が変化する。利用される宿主-ベクター系に応じて、多数の適切な転写及び翻訳エレメントの任意のものを使用してもよい。一部の実施態様において、ヒトアルブミンcDNAが発現される。一部の実施態様において、アルブミンの分子変異体が発現される。一部の実施態様において、アルブミン前駆体が発現される。一部の実施態様において、アルブミンの構造誘導体が発現される。一部の実施態様において、アルブミン融合タンパク質が発現される。
【0088】
アルブミンの発現は、当該技術分野において公知の任意のプロモーター/エンハンサーエレメントによって制御されていてもよい。特定の実施態様において、プロモーターは、特異的なアルブミンをコードする遺伝子又は核酸配列に異種である(すなわち、天然のプロモーターではない)。哺乳動物細胞におけるアルブミンをコードする遺伝子又は核酸配列の発現を制御するために使用してもよいプロモーターは、SV40前期プロモーター領域(Bernoist及びChambon(Nature 290):304-3 10(1981))、ラウス肉腫ウイルスの3'末端反復配列に含まれるプロモーター(Yamamotoらの論文、Cell 22:787-797(1980))、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445 (1981))及びメタロチオネイン遺伝子の制御配列(Brinsterらの論文、Nature 296:39-42(1982))を含むが、限定されない。
【0089】
原核生物の発現ベクターに有用であろうプロモーターには、β-ラクタマーゼプロモーター(Villa-Kamaroffらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75:3727-3731(1978))又はtatプロモーター(DeBoerらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci.:S.A. 80:2 1-25(1983))を含むが、限定されない。また、Scientific American 242:74-94 (1980)の「組換え細菌由来の有用なタンパク質(Useful Proteins From Recombinant Bacteria)」を参照されたい。これらの内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。
【0090】
植物発現ベクターに有用であろうプロモーターには、ノパリンシンセターゼプロモーター領域(Herrera-Estrellaらの論文、Nature 303:209-213(1983))、カリフラワーモザイクウィルス35S RNAプロモーター(Gardnerらの論文、Nucleic Acids Res. 9:2871(1981))及び光合成酵素リブロースビホスフェートカルボキシラーゼのプロモーター(Herrera-Estrellaらの論文、Nature 310:115-120(1984))を含むが、限定されない。
酵母又はその他の真菌におけるアルブミンの発現のために有用なプロモーターエレメントは、Gal4プロモーター、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター又はAOX1(アルコールオキシダーゼ1)プロモーター(Ellisらの論文、Mol. Cell. Biol. 5:1111-1121(1985))を含む。
【0091】
宿主細胞の培養液への組換えアルブミンの分泌が要求される本発明の実施態様において、発現ベクターには、アルブミンをコードする配列の上流に、又は適切な場合、転写及び翻訳の開始のための領域とコード配列との間に位置する、新生ポリペプチドを選択された宿主の分泌経路に向ける「リーダー」配列を更に含んでいてもよい。一部の実施態様において、リーダー配列は、ヒト血清アルブミンの天然のリーダー配列であってもよい。その他の実施態様において、リーダー配列は、異種配列である。使用されるリーダー配列の選択は、主に選択される宿主生物によって導かれる。例えば宿主が酵母である場合、異種リーダー配列として、フェロモン因子α、インベルターゼ又は酸性ホスファターゼのものを使用することができる。詳細な実施態様において、リーダー配列は、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)α因子プレプロペプチドのものであってもよい。Creggらの論文、Biotechnology 11:905-910(1993):Scorerらの論文、Gene 136:111-119(1993)を参照されたい。その他の実施態様において、宿主が細菌である場合、リーダー配列は、α-アミラーゼamyBamp又は中性プロテアーゼnprBamPであってもよい。枯草菌(Bacillus sublilis)における組換えヒト血清アルブミンの分泌のためのこれらのリーダー配列の使用は、Saundersらの論文、J. Bacteriol 169(7):29 17-25(1987)によって記述されている。これらの内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。或いは、細胞膜周辺腔への組換えアルブミンの輸送のためのSec経路を利用してもよい。Sec転位酵素は、細菌において細胞質膜を横切ってサイトゾルからのタンパク質転位置の主要な経路を提供する。例えば、Pugsley APの論文、Microbiol. Rev., 57(l):50-108 (1993)を参照されたい。SecA ATPaseは、新たに合成されたプレタンパク質の膜横断移動を駆動するためのSecYEG統合膜成分と動的に相互作用する。成熟前タンパク質は、大腸菌(E.coli.)における組換えタンパク質の効率的な分泌生産のための、pelB、ompA及びpho.4などのこれらを細胞質の外側に輸送することができる短いシグナル配列を含む。
【0092】
(5.6.2 組換えアルブミンを産生するための宿主細胞)
アルブミンをコードする配列を含む発現ベクターを、組換えアルブミンの産生のために宿主細胞に導入してもよい。一部の実施態様において、外来性組換えタンパク質を産生することができる任意の細胞が、本明細書に記述した方法のために有用であろう。
【0093】
一部の実施態様において、宿主生物は、細菌株、例えば大腸菌(Escherichia coli)及び枯草菌(Bacillus subtilis)であることができる。一部の実施態様において、宿主生物は、酵母株、例えばサッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、アークスラ・アデニニボランス(Arxula adeninivorans)及びハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)であることができる。特定の実施態様において、宿主生物は、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)である。
【0094】
一部の実施態様において、組換えアルブミンは、ウイルス、例えばバキュロウイルスに感染させた昆虫細胞において産生される。一部の実施態様において、組換えアルブミンは、動物細胞において産生される。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、アルブミン又はその変異体若しくは誘導体をコードするベクターで形質転換され、又はウイルスに感染させた哺乳動物細胞によって産生される。特定の実施態様において、哺乳動物細胞は、COS、CHO又はC127細胞である。特定の実施態様において、哺乳動物細胞は、ヒト網膜株化細胞PKR.C6*である
【0095】
一部の実施態様において、組換えアルブミンは、トランスジェニック非ヒト動物において産生される。動物は、哺乳類、例えば有蹄類(例えば、ウシ、ヤギ又はヒツジ)ブタ、マウス又はウサギであってもよい。一部の実施態様において、組換えアルブミンは、米国特許第5,648,243号(その内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている)に記載されているように動物の乳に分泌した。その他の実施態様において、組換えアルブミンは、米国特許第6,949,691号(その内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている)に記載されているように、動物の血液に分泌される。その他の実施態様において、組換えアルブミンは、米国特許出願第11/401,390号(その内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている)に記載されているように、動物の尿に分泌される。胚操作及び微量注入を介してトランスジェニック動物、特にマウスなどの動物を産生するための方法は、当該技術分野において従来法である。例えば、米国特許第4,870,009号、第4,736,866号及び第4,873,191号を参照されたい。これらの内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。組換えアルブミンを発現するその他の非マウストランスジェニック動物を同様の方法によって作製してもよい。
【0096】
一部の実施態様において、宿主生物は、組換えアルブミンを発現するために形質転換された植物細胞である。植物細胞においてヒト血清アルブミンを発現するための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Sijmonsらの論文、Biotechnology 8(3):217-21(1990);Farranらの論文、Transgenic Res. 11(4):337-46(2002);Fernandez-San Millanらの論文、Plant Biotechnol. J. 1(2):71-9(2003);Baurらの論文、Plant Biotechnol. J. 3(3):331-40(2005);及び米国特許出願第11/406,522号を参照されたい;これらの内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。
【0097】
(5.6.3 宿主細胞の形質転換)
発現ベクターは、限定されないが、当業者に公知の任意の方法によって、発現のための宿主細胞に導入することができる。このような方法は、例えば溶液からの細胞による分子の直接の取り込み;又は例えば、リポソーム又は免疫リポソームを使用するリポフェクションを介した促進された取り込み;粒子を媒介したトランスフェクション;などを含むが、限定されない。例えば、米国特許第5,272,065号;Goeddelらの文献、編集、1990、酵素学の方法(Methods in Enzymology)、185巻、Academic Press社、CA; Kriegerの文献、1990.遺伝子導入及び発現-実験室マニュアル(Gene Transfer and Expression-A Laboratory Manual)、Stockton Press, NY; Sambrookらの文献、1989. 分子クローニング-実験室マニュアル(Molecular Cloning-A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory. NY;及びAusubelらの文献、編集、現在の版、分子生物学の現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、Greene Publishing Associates and Wiley Interscience. NYを参照されたい。
【0098】
本発明の特定の実施態様において、組換えアルブミンは、酵母細胞において、特にピチア・パストリス(Pichia pastoris)において産生される。ピチア(Pichia)を形質転換するための方法は、当該技術分野において周知である。Hinnenらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:1292-3(1978);Creggらの論文、Mol. Cell. Biol. 5:3376-3385(1985)を参照されたい。例示的な技術には、スフェロプラスト化(spheroplasting)、電気穿孔法、PEG 1000を媒介した形質転換又は塩化リチウムを媒介した形質転換を含むが、限定されない。
【0099】
(5.6.4 組換えアルブミンの発現)
組換えタンパク質を発現する宿主生物の増幅、誘導及び発酵のための方法は、当該技術分野において周知である。例えばAusubelらの文献、編集、現在の版、分子生物学の現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、Greene Publishing Associates and Wiley Interscience. NYを参照されたい。例えば、及び限定されないが、酵母、例えばピチア・パストリス(Pichia pastoris)における組換えタンパク質の発現のための一般的な手順は、以下の通りである:250mlのバッフルフラスコ内の25mlの適切な培養液に単一の組換えコロニーを使用して播種する。細胞が対数増殖期であるOD600=2〜6(およそ16〜18時間)に達するまで、細胞を28〜30℃において振盪培養器(250-300rpm)にて培養する。次いで、細胞を室温で1500〜3000×gにて5分間遠心分離することによって収集してもよい。上清をデカントして、細胞ペレットを、発現を誘導するために適した培養液(およそ100-200ml)中で1.0のOD600に再懸濁する。次いで、培養液を、2層の滅菌ガーゼ又はチーズクロスを備えた1リットルのバッフルフラスコ内に置いて、連続培養のためにインキュベーターに戻してもよい。誘導を維持するために、適切な誘導薬を24時間毎に培養に添加してもよい。培養試料を周期的に採取して(時点(時間):0、 6、12、24(1日)、36、48(2日)、60、72(3日)、84及び96(4日)、収集のための導入後の最適時間を決定するための発現レベルを解析るために使用した。次いで、細胞を卓上マイクロ遠心機において最大速度にて室温で2〜3分間遠心分離してもよい。組換えタンパク質が分泌される場合、上清を分離したチューブへ移してもよい。上清及び細胞ペレットは、アッセイのための準備まで-80℃に貯蔵してもよい。細胞内発現のためには、上清をデカントして、細胞ペレットをアッセイのための準備まで-80℃に貯蔵してもよい。次いで、上清及び細胞ペレットを、例えばクマシー染色SDS-PAGE及びウェスタンブロット又は機能的アッセイ法によって、タンパク質発現についてアッセイしてもよい。
【0100】
(5.7 宿主細胞からの組換えアルブミンの精製)
本発明の一つの態様において、抱合体を産生するための方法には、任意に抱合反応の前に宿主生物から組換えアルブミンを精製することを含む。以下の工程は、連続した順序で示してあるが、当業者であれば、本発明の範囲を越えることなく、いくつかの工程の順序、例えばメルカプトアルブミンの濃縮の工程とアルブミンの脱糖化工程の順序を交換することができることを認識するであろう。特定の実施態様において、分泌された組換えアルブミンに対する抱合は、培養液中で直接生じることが望ましく、以下の精製工程を省略してもよく、また抱合は、下記の節に記載されているように行ってもよいことが理解される。
【0101】
(5.7.1 培養液からの宿主細胞の分離)
特定の実施態様において、本発明の方法は、宿主細胞が液体培地において培養され、かつ組換えアルブミンがその中に分泌される場合、抱合反応より前の培養液からの宿主細胞の分離を提供する。宿主細胞をその培養液から分離するための当該技術分野において公知の任意の方法を使用してもよい。一部の実施態様において、宿主細胞は、濾過によって培養液から除去してもよい。好ましい実施態様において、宿主細胞は、遠心分離によって培養液から分離してもよい。分離に続いて、生じる上清を更にその中に含まれる組換えアルブミンの精製のために使用してもよい。任意に、抱合が培養上清中で直接生じることが望まれる場合、以下の工程を省略してもよく、かつ抱合を下記の節に記載されているように行ってもよい。
【0102】
(5.7.2 宿主細胞の溶解)
特定の実施態様において、本発明の方法は、任意に、宿主細胞が液体培地において培養され、かつ組換えアルブミンが主に細胞内に貯蔵される場合、抱合反応より前の宿主細胞の溶解を提供する。当業者に公知の細胞を溶解する任意の方法を使用してもよい。一部の実施態様において、宿主細胞は、機械的方法によって、例えば高速ブレンダー,ボルテックス、ホモジナイザー、フレンチプレス、マントンゴウリン(Menton Gaulin)プレス又は超音波処理器を使用することによって溶解してもよい。
【0103】
宿主生物が酵母である詳細な実施態様において、細胞溶解は、酵母細胞を溶解するための当業者に公知の任意の方法によって達成してもよい。一部の実施態様において、細胞は、最初にリティカーゼ(lyticase)又はザイモラーゼ(zymolase)を含む溶液と接触させることによって、細胞をスフェロプラストに変換し、次いで浸透圧ショック若しくは加圧型細胞破砕装置又はこれらの組み合わせにスフェロプラストを供することによって溶解してもよい。浸透圧ショックは、当業者に公知の任意の低浸透ポテンシャル溶液との接触によって達成してもよい。特定の実施態様において、浸透圧ショックは、スフェロプラストを脱イオン水と接触させることによって達成してもよい。その他の実施態様において、酵母細胞の細胞溶解は、ガラスビーズの存在下においてボルテックスすることによって、細胞の機械的切断によって達成してもよい。
【0104】
宿主生物が細菌である詳細な実施態様において、細胞溶解は、細菌細胞を溶解するために当業者に公知の任意の方法によって達成してもよい。一部の実施態様において、細胞溶解は、EDTAなどのキレート薬の存在下において細胞をリゾチーム溶液と接触させることによって達成してもよい。
【0105】
アルブミンが細菌細胞に発現される詳細な実施態様において、抱合のために適切に折り畳まれた組換えアルブミンを得るために、さらなる工程を行うことが必要であってもよい。細菌、特に大腸菌(E. Coli)に大量に発現される真核生物タンパク質は、「封入体」と呼ばれる不溶性凝集体内に沈殿することが多い。Braunらの論文、Proc. Natl Acad. Sci. USA 99:2654-59 (2002)を参照されたい。封入体は、単離して、精製して、変性剤で可溶化し、続いてその後に組成タンパク質の再生を行わなければならない。単純な希釈、マトリックス支援法及び再生緩衝液への溶質の添加を利用するタンパク質再折り畳みの方法論は、当該技術分野において周知である。例えば、Cabritaらの論文、Biotechnol. Annu Rev. 10:31-50 (2004): Mayerらの論文、Methods Mol. Med. 94:239-254 (2004); Middelbergの論文、Trends Biolechnol. 20:437-443 (2002); Clark, Curr. Opin. Biotechnol. 9:157-163 (1998);及びClarkの論文、Curr. Opin. Biotechnol. 12:202-207 (2001)を参照されたい。これらの内容は、これらの全体が引用により本明細書に組み込まれている。従って、細菌に発現された真核生物タンパク質を回収して、再生するための当業者に公知の任意の方法を使用して、細菌に発現される組換えアルブミンを回収して、再生してもよい。
【0106】
宿主細胞の溶解後、細胞片及び粒子状物質を粗製可溶化液から分離してもよい。粗製可溶化液から細胞片を分離するための当該技術分野において公知の任意の方法を使用してもよい。一部の実施態様において、細胞片及び粒子状物質は、微量濾過によって除去してもよい。好ましい実施態様において、細片及び粒子の除去は、遠心分離によって達成される。生じる透明な可溶化液を、その中に含まれる組換えアルブミンの精製のために更に使用してもよい。任意に、抱合が透明溶解液において直接生じることが望まれる場合、以下の工程を省略してもよく、抱合を下記の第5.8節に記載されているように行ってもよい。
【0107】
(5.7.3 クロマトグラフィーによる組換えアルブミンの精製)
特定の実施態様において、本発明の方法は、任意に、抱合反応の前に、宿主タンパク質及び抗原を除去するための、クロマトグラフィーによる組換えアルブミン、粒子状物質、内毒素などの精製を提供する。特定の実施態様において、クロマトグラフィーは、タンパク質の精製のために有用な当業者に公知の任意のクロマトグラフィー法であることができる。例えば、及び限定されないが、クロマトグラフィーは、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー又は疎水性相互作用クロマトグラフィーであることができる。
【0108】
一部の実施態様において、組換えアルブミンは、イオン交換クロマトグラフィーによって精製される。当業者の判断に従って、アルブミンに結合することができる任意のイオン交換樹脂を使用してもよい。一部の実施態様において、イオン交換体は、ジエチルアミノエチル(DEAE)-セルロースなどの弱い塩基性の陰イオン交換体である。特定の実施態様において、DEAEセルロース樹脂は、10mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0において平衡化される。充填及び樹脂への結合に続いて、アルブミンは、直線的若しくは段階的にいずれかで塩濃度を増加させる勾配又はこれらの組み合わせを適用することによって溶出させてもよい。例えば、アルブミンは、20〜200mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.0を含む溶液と樹脂を接触させることによって溶出させてもよい。一部の実施態様において、アルブミンは、樹脂を30〜150mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.0を含む溶液と接触させることによって溶出される。一部の実施態様において、アルブミンは、樹脂を40〜125mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.0と接触させることによって溶出される。一部の実施態様において、アルブミンは、樹脂を50〜100mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.0と接触させることによって溶出される。一部の実施態様において、アルブミンは、樹脂を約60mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.0と接触させることによって溶出される。これらの条件下における組換えアルブミンの例示的な精製を以下の実施例1に提供してある。
【0109】
その他の実施態様において、イオン交換体は、Qセファロースなどの強塩基性の陰イオン交換体である。特定の実施態様において、Qセファロース樹脂は、20mM Tris-HCl緩衝液、pH 8.0において平衡化される。充填及び樹脂への結合に続いて、アルブミンは、直線的若しくは段階的にいずれかで塩濃度を増加させる勾配又はこれらの組み合わせを適用することによって溶出させてもよい。例えば、アルブミンは、樹脂を0〜2M NaCl pH 8.0を含む溶液と接触させることによって溶出させてもよい。一部の実施態様において、アルブミンは、樹脂を0.1〜1M NaCl、pH 8.0を含む溶液と接触させることによって溶出される。一部の実施態様において、アルブミンは、樹脂を200〜900mM NaCl、pH 8.0と接触させることによって溶出される。一部の実施態様において、アルブミンは、樹脂を300〜800mM NaCl pH 8.0と接触させることによって溶出される。一部の実施態様において、アルブミンは、樹脂を約500mMリン酸ナトリウム緩衝液pH 8.0と接触させることによって溶出される。これらの条件下における組換えアルブミンの例示的精製を下記の実施例2に提供してある。
【0110】
一部の実施態様において、組換えアルブミンは、アフィニティークロマトグラフィーによって精製される。当業者の判断に従って、アルブミンに結合することができるアフィニティークロマトグラフィーリガンドを使用してもよい。一部の実施態様において、リガンドは、例えばHiTrap(商標)Blue HPカラム(GE Healthcare. Piscataway. NJ)に含まれるシバクロンブルーF3G-Aである。特定の実施態様において、リガンドは、20mM Tris-HCl pH 8.0緩衝液において平衡化される。シバクロンブルーF3G-Aは、芳香族陰イオン配位子との静電気的及び/又は疎水性相互作用によってアルブミンに結合するので、溶出は、直線的若しくは段階的にいずれかで塩濃度を増加させて、又はこれらの組み合わせて適用することによって達成してもよい。従って、充填及びリガンドへの結合に続いて、アルブミンの溶出は、例えばリガンドを0〜2M NaCl pH 8.0を含む溶液と接触させることによって達成してもよい。一部の実施態様において、アルブミンは、樹脂を0.2〜1.5mM NaCl、pH 8.0と接触させることによって溶出される。一部の実施態様において、アルブミンは、樹脂を0.5〜1.0mM NaCl pH 8.0と接触させることによって溶出される。一部の実施態様において、アルブミンは、樹脂を約750mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 8.0と接触させることによって溶出される。これらの条件下における組換えアルブミンの例示的精製を下記の実施例3に提供してある。
【0111】
一部の実施態様において、組換えアルブミンは、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって精製される。当業者の判断に従って、アルブミンに結合することができる任意の疎水性の樹脂を使用してもよい。例示的疎水性樹脂には、オクチルセファロース、フェニルセファロース及びブチルセファロースを含むが、限定されない。特定の実施態様において、疎水性樹脂は、フェニルセファロースである。特定の実施態様において、例えば、フェニルセファロース樹脂は、20mMリン酸ナトリウム、5mMカプリル酸ナトリウム及び750mM(NH42SO4、pH 7.0を含む緩衝液中で平衡化される。充填及び樹脂への結合に続いて、アルブミンは、直線的若しくは段階的にいずれかで塩濃度を減少させる勾配又はこれらの組み合わせを適用することによって溶出させてもよい。例えば、アルブミンは、0〜750mM(NH42SO4を含む溶液との接触によって溶出さてもよい。一部の実施態様において、アルブミンは、約300〜500mM(NH42SO4を含む溶液との接触によって溶出される。一部の実施態様において、アルブミンは、約350〜450mM(NH42SO4を含む溶液との接触によって溶出される。一部の実施態様において、アルブミンは、約375〜425mM(NH42SO4を含む溶液との接触によって溶出される。特定の実施態様において、アルブミンは、約400mM(NH42SO4を含む溶液との接触によって溶出される。これらの条件下における組換えアルブミンの例示的精製は、下記の実施例4に提供してある。
【0112】
特定の実施態様において、組換えアルブミンを含む溶出液は、低分子量フィルターで濾過して、試料を濃縮し、残留する内毒素などを洗浄してもよい。一部の実施態様において、限外濾過は、Amicon(登録商標)10kDaミリポアフィルター(Millipore Corporation.Bedford, Mass.)で行ってもよい。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、滅菌水で洗浄してもよい。その他の実施態様において、組換えアルブミンは、0.9%の生理食塩水(154mM NaCl)で洗浄してもよい。その他の実施態様において、組換えアルブミンは、無菌の緩衝液で洗浄してもよい。
【0113】
特定の実施態様において、アルブミン溶液は、約0.5〜25%のアルブミンに対応する約5〜250mg/mlの総タンパク質に濃縮してもよい。一部の実施態様において、アルブミン溶液の終濃度は、約5mg/ml、約10mg/ml、約20mg/ml、約40mg/ml、約80mg/ml、約120mg/ml、約150mg/ml、約175mg/ml、約200mg/ml、約225mg/ml又は約250mg/mlの総タンパク質を含む。一部の実施態様において、アルブミン溶液は、約0.5%、約1%。約2%、約4%。約8%、約12%、約15%、約17.5%、約20%又は約25%のアルブミンを含む。次いで、アルブミン試料は、所望の製剤組成物に再び製剤化してもよい。
【0114】
次いで、生じる組換えアルブミン溶液を組換えアルブミンのさらなる精製、例えばメルカプトアルブミンの濃縮若しくは脱糖化又は両方のために使用する。任意に、抱合が部分的に精製されたアルブミン溶液中で直接生じることが望まれる場合、以下の工程を省略してもよく、抱合を下記の第5.8節に記載されているように行ってもよい。
【0115】
(5.7.4 メルカプトアルブミンのための濃縮)
ヒト血清アルブミンの調製は、血清が引き出され、又は組換えで産生されるかにかかわらず、非メルカプトアルブミン、すなわち「キャップされた」アルブミンとメルカプトアルブミン、すなわち「キャップされていない」アルブミンとの不均質混合物を含んでいてもよい。ヒトアルブミンポリペプチドは、35個のシステイニル残基を含み、そのうちの34個は、17個の安定化するジスルフィド架橋を形成する。メルカプトアルブミンの位置34のシステイン残基には、遊離のSH基を含むが、非メルカプトアルブミンにおける同じ残基には、例えばシステイン又はグルタチオンとの混合ジスルフィドを含むか、又は金属イオン又はその他の添加物による酸化受けており、従って、チオールをより反応性でないか、又は利用できなくさせる。任意の特定の作用の理論によって拘束されることを意図しないが、メルカプトアルブミンについての濃縮により、治療的化合物に対する抱合のために有利な特性を有するアルブミンをもたらすであろうことが考えられる。特に、抱合の特異性は、治療的化合物の反応基に共有結合で結合するためのCys34のチオール基の利用能により、増強される。従って、本発明の好ましい実施例において、精製された組換えアルブミンは、抱合反応を進行する前に、メルカプトアルブミンを濃縮させる。
【0116】
一般に、メルカプトアルブミンの濃縮は、酸化型又は「キャップされた」アルブミンをメルカプトアルブミンに変換するための当業者に公知の任意の技術使用することにより、及び任意の条件下で行ってもよい。一部の実施態様において、濃縮は、組換えアルブミンを酸化型のアルブミン-Cys34を還元型アルブミン-Cys34に変換することができる任意の薬剤と接触させることによって達成される。特定の実施態様において、薬剤は、ジチオスレイトール(DTT)である。好ましい実施態様において、薬剤は、チオグリコール酸(TGA)である。一部の実施態様において、薬剤は、β-メルカプトエタノール(BME)である。一般に、薬剤は、キャップされたアルブミン-Cys34をメルカプトアルブミンに変換するために適した当業者に公知の条件下で組換えアルブミンと接触される。このような条件は、例えば、適切なpHにて、適切な濃度の薬剤にて、適切な温度にて、及び適切な時間、薬剤と組換えアルブミンを接触させることを含む。一般に、当業者であれば、酸化型状態からアルブミン-Cys34を還元させると共に、アルブミンの内鎖ジスルフィド架橋を保存するための要求を考慮するであろう。
【0117】
特定の実施態様において、組換えアルブミンは、当業者の判断に従って、キャップされたアルブミンをメルカプトアルブミンに変換するために適下pHにてTGAと接触される。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、約5〜6又は約5.2〜5.8又は約5.3〜5.7のpHにてTGAと接触される。詳細な実施態様において、組換えアルブミンは、約pH 5.6にてTGAと接触される。
【0118】
特定の実施態様において、組換えアルブミンは、当業者の判断に従って、キャップされたアルブミンをメルカプトアルブミンに変換するために適した濃度にてTGAと接触される。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、適切な緩衝液中で約1mM、約5mM、約10mM、約20mM、約40mM、約60mM、約80mM、約100mM、約150mM、約200mM、約250mM又は約300mMの濃度にてTGAと接触される。特定の実施態様において、TGAの濃度は、適切な緩衝液中で約1〜300mM、約5〜250mM、約10〜200mM、約20〜150mM、約40〜100mM又は約60〜80mMである。詳細な実施態様において、組換えアルブミンは、250mM Tris酢酸緩衝液中で75mM TGAと接触される。
【0119】
特定の実施態様において、組換えアルブミンは、当業者の判断に従って、キャップされたアルブミンをメルカプトアルブミンに変換するために適した温度にてTGAと接触される。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、約0〜8℃、約1〜7℃、約2〜6℃又は約3〜5℃にてTGAと接触される。詳細な実施態様において、組換えアルブミンは、約4℃約にて、キャップされたアルブミンをメルカプトアルブミンに変換するために十分な時間TGAと接触される。
【0120】
特定の実施態様において、組換えアルブミンは、当業者の判断に従って、キャップされたアルブミンをメルカプトアルブミンに変換するために適した延べ時間、TGAと接触される。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、少なくとも0.1、1、5、10、15、20、25又は30時間TGAと接触される。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、約5〜30時間、約10〜25時間又は約20〜25時間TGAと接触される。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、約8、16、24又は32時間TGAと接触される。詳細な実施態様において、組換えアルブミンは、250mM Tris-アセテート緩衝液、pH 5.6中で約4℃にて約20時間75mM TGAと接触される。
【0121】
その他の実施態様において、メルカプトアルブミンの濃縮は、組換えアルブミンDTTとを接触させることによって達成される。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、当業者の判断に従って、キャップされたアルブミンをメルカプトアルブミンに変換するために適したpHにてDTTと接触される。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、約7〜8又は約7.2〜7.8又は約7.3〜7.7のpHにて、DTTと接触される。詳細な実施態様において、組換えアルブミンは、約pH 7.6にてDTTと接触される。
【0122】
特定の実施態様において、組換えアルブミンは、当業者の判断に従って、キャップされたアルブミンをメルカプトアルブミンに変換するために適した濃度にてDTTと接触される。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、適切な緩衝液中で約0.1mM、約0.25mM、約0.5mM、約0.75mM、約1.0mM、約1.5mM、約2.0mM、約2.5mM、約3.0mM、約3.5mM、約4.0mM又は約5.0mMの濃度にてDTTと接触される。特定の実施態様において、DTTの濃度は、適切な緩衝液中で約0.1〜5.0mM、約0.25〜4mM。約0.5〜3.5mM、約0.75〜3.0mM、約1.0〜2.5mM又は約1.5〜2mMである。詳細な実施態様において、組換えアルブミンは、1mMリン酸カリウム緩衝液中で約2mM DTTと接触される。
【0123】
特定の実施態様において、組換えアルブミンは、当業者の判断に従って、キャップされたアルブミンをメルカプトアルブミンに変換するために適した温度にてDTTと接触される。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、約15〜40℃、約20〜35℃、約20〜30℃又は約23〜27℃にてDTTと接触される。詳細な実施態様において、組換えアルブミンは、キャップされたアルブミンをメルカプトアルブミンに変換するために十分時間、約23〜27℃にてDTTと接触される。
【0124】
特定の実施態様において、組換えアルブミンは、当業者の判断に従って、キャップされたアルブミンをメルカプトアルブミンに変換するための適切な延べ時間、DTTと接触される。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25又は30分間DTTと接触される。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、約1〜30分、約2〜25分又は約5〜10分間DTTと接触される。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、約1、5、10又は30分間DTTと接触される。詳細な実施態様において、組換えアルブミンは、1mMリン酸カリウム緩衝液中で約23-27℃にて約5分間 2mM DTTと接触される。
【0125】
別の実施態様において、メルカプトアルブミンは、クロマトグラフィーによってアルブミンから濃縮してもよい。特定の実施態様において、クロマトグラフィーは、タンパク質を精製するために有用であることが当該技術分野において公知の任意のクロマトグラフィー法であることができる。クロマトグラフィーは、独立した濃縮工程として、又は組み合わせて、すなわちTGA若しくはDTT又はこれらの組み合わせとアルブミンの接触直後に使用してもよい。一部の実施態様において、クロマトグラフィー法によるメルカプトアルブミンの濃縮には、イオン交換、親和性、ゲル濾過又は疎水性相互作用クロマトグラフィーを含むが、限定されないアルブミンの精製のための上記の任意のクロマトグラフィー法を含んでいてもよい。
【0126】
好ましい実施態様において、メルカプトアルブミンは、TGA又はDTT又はこれらの組み合わせとの接触後に、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって、更に濃縮され、及び精製される。例示的な疎水性樹脂には、オクチルセファロース、フェニルセファロース又はブチルセファロースを含むが、限定されない。好ましい実施態様において、樹脂は、フェニルセファロースである。特定の実施態様において、フェニルセファロース樹脂は、例えば20mMリン酸ナトリウム、5mMカプリル酸ナトリウム及び750mM(NH42SO4、pH 7.0を含む緩衝液中で平衡化されている。充填及び樹脂に対する結合後、メルカプトアルブミンは、直線的若しくは段階的にいずれかで塩濃度を減少させる勾配又はこれらの組み合わせを適用することによって、キャップされたアルブミン並びにTGA又はDTTから分離してもよい。例えば、メルカプトアルブミンは、0〜750mM(NH42SO4を含む溶液との接触によって溶出される。一部の実施態様において、アルブミンは、約400〜600mM(NH42SO4を含む溶液との接触によって溶出される。一部の実施態様において、アルブミンは、約450〜550mM(NH42SO4を含む溶液との接触によって溶出される。一部の実施態様において、アルブミンは、約475〜525mM(NH42SO4を含む溶液との接触によって溶出される。特定の実施態様において、アルブミンは、約500mM(NH42SO4を含む溶液との接触によって溶出される。これらの条件下で、メルカプトアルブミンは、キャップされたアルブミンの前に溶出してもよい。これらの条件下におけるメルカプトアルブミンの例示的精製は、下記の例5に提供してある。
【0127】
特定の実施態様において、組換えアルブミンを含む溶出液は、低分子量フィルターで濾過して、試料を濃縮し、残留する内毒素などを洗浄してもよい。一部の実施態様において、限外濾過は、Amicon(登録商標)10kDaミリポアフィルター(Millipore Corporation.Bedford, Mass.)で行ってもよい。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、滅菌水で洗浄してもよい。その他の実施態様において、組換えアルブミンは、0.9%の生理食塩水(154mM NaCl)で洗浄してもよい。
【0128】
特定の実施態様において、アルブミン溶液は、約0.5〜25%のアルブミンに対応する約5-250mg/mlの総タンパク質に濃縮してもよい。一部の実施態様において、アルブミン溶液の終濃度は、約5mg/ml、、約10mg/ml、約20mg/ml、約40mg/ml、約80mg/ml、約120mg/ml、約150mg/ml、約175mg/ml、約200mg/ml、約225mg/ml又は約250mg/mlの総タンパク質を含む。一部の実施態様において、アルブミン溶液は、約0.5%、約1%。約2%、約4%。約8%、約12%、約15%、約17.5%、約20%又は約25%のアルブミンを含む。次いで、アルブミン試料は、所望の製剤組成物に再び製剤化してもよい。
【0129】
溶液中のキャップされたアルブミンに対するメルカプトアルブミンの比の特徴付けは、液体クロマトグラフィー/質量分析によって、例えばKleinovaらの論文、Rapid Connmm. Mass Spectrom. 19:2965-73 (2005)に記述された方法によって行われる。その内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。
【0130】
次いで、生じるメルカプトアルブミンが濃縮されたアルブミン溶液を、抱合反応の前に、さらなる精製、例えばアルブミンの非酵素的糖化種の還元のために、使用してもよい。任意に、抱合が部分的に精製されたアルブミン溶液中で直接生じることが望まれ流場合、以下の工程を省略してもよく、抱合を下記の第5.8節に記載されているように行ってもよい。
【0131】
(5.7.5 アルブミンの脱糖化)
宿主生物、特にサッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)及びピチア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母株における組換えアルブミンの産生に関する本発明の特定の実施態様において、さらなる工程により、組換えアルブミン産物に付随する不純物のレベルを制限してもよい。特に、血清に由来するヒトアルブミンと比較した組換えヒトアルブミンのグリコシル化プロフィールの潜在的な相違は、アルブミン組成物で治療される対象におけるアレルギー及び/又は免疫応答の可能性を上昇させる。例えば、Bosseらの論文、J. Clin. Pharmacol. 45:57-67 (2005)を参照されたい。更に、アルブミンの非酵素的糖化、例えばLys525及びLys548におけるグルコース結合、並びにこれらの残基におけるアマドリ生成物の形成は、局部的タンパク質二次構造における高次構造変化を誘導することができ、これによりアルブミンのリガンド結合及び機能的活性に影響を及ぼす。例えば、Shaklaiらの論文、J. Biol. Chem. 259(6):3812-17 (1984); Wada, J. Mass. Spectrom. 3 1:263-266 (1996); Howardらの論文、J. Biol. Chem. 280(24):22582-89 (2005)を参照されたい。従って、任意の特定の作用の理論によって拘束されることを意図しないが、アルブミン、特に酵母において産生される組換えアルブミンの脱糖化により、それとともに形成された抱合体に関して、有利な耐容性及び安定性を有するアルブミンを生じるであろうと考えられる。従って、本発明の詳細な実施態様において、組換えアルブミンは、抱合反応を進行する前に、脱糖化させてもよい。
【0132】
一般に、アルブミンの脱糖化は、非酵素的に糖化されたタンパク質の減少のために有用な当業者に公知の任意の技術を使用することにより、及び任意の条件下で行ってもよい。例示的方法は、Miksik J.らの論文、Chromatogr. B . Biomed. Sci. Appl. 699(1 -2):3 11-45 (1997)に記述されており、その内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれている。一部の実施態様において、非酵素的に糖化されたアルブミンは、クロマトグラフィー法によって減少させられてもよい。特定の実施態様において、クロマトグラフィーは、非糖化タンパク質から糖化タンパク質の分離のために有用な当業者に公知の任意のクロマトグラフィーであることができる。例として、及び限定ではなく、クロマトグラフィーは、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー又はアフィニティークロマトグラフィーであることができる。
【0133】
一部の実施態様において、糖化アルブミンと非糖化アルブミンとの分離は、サイズ排除クロマトグラフィーによって行われる。特定の実施態様において、糖化アルブミンを非糖化アルブミンから分離することができる任意のサイズ排除ゲルを、当業者の判断に従って使用してもよい。例えば、サイズ排除クロマトグラフィーは、例えば0.05M リン酸塩、0.15M 塩化ナトリウム、pH 6.8中で平衡化したSuperose(登録商標)6HR(GE Healthcare、Piscataway、NJ)で行ってもよい。一部の実施態様において、溶出が、約0.5ml/分の流速で、平衡緩衝液中で行ってもよい。
【0134】
特定の実施態様において、サイズ排除クロマトグラフィーは、例えば0.01Mリン酸緩衝液pH 7.2中で平衡化したセファロース(Sepharose)(登録商標)CL-4B(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)で行ってもよい。一部の実施態様において、溶出は、約20ml/時間の流速で、平衡緩衝液中で行われる。特定の実施態様において、個々の画分は、例えば飽和硫酸アンモニウムに対して透析して、沈殿物を0.01M リン酸緩衝液pH 7.2に再融解させる。
【0135】
別の実施態様において、糖化アルブミンと非糖化アルブミンとの分離は、イオン交換クロマトグラフィーによって行われる。特定の実施態様において、当業者の判断に従って、糖化アルブミンを非糖化アルブミンから分離することができる任意のイオン交換樹脂を使用してもよい。例えば、イオン交換体は、例えば10mMリン酸緩衝液、pH 7.1中で平衡化されたHydropore AX(Rainin、Woburn、MA)などの強塩基性陰イオン交換体であってもよい。一部の実施態様において充填及び樹脂に対する結合後、アルブミンの溶出は、直線的若しくは段階的にいずれかで塩濃度を増加させる勾配又はこれらの組み合わせを適用することによって行われる。例えば、糖化アルブミン及び非糖化アルブミン種は、0〜1M NaClを含む、pH 7.1の溶液との接触によって分離し、かつ溶出してもよい。その他の実施態様において、イオン交換体は、例えば0.01M リン酸塩、pH 7.2中で平衡化したDEAE Sephacel(GE Healthcare、Piscataway、NJ)などのわずかに塩基性の陰イオン交換体であってもよい。一部の実施態様において、溶出は、0〜0.5M NaClの直線的に増加させる勾配によって、4℃にて行われる。
【0136】
好ましい実施態様において、脱糖化は、アフィニティークロマトグラフィーによって行われる。当業者の判断に従って、糖化アルブミンを非糖化アルブミンから分離することができる任意のアフィニティーリガンドを使用してもよい。任意の特定の理論によって拘束されることを意図しないが、酵母からグルコースリッチな培養液に分泌される組換えアルブミンは、アルブミンのリジン残基にてグルコースの共有結合を引き起こすと考えられる。従って、糖化アルブミンが共有結合で結合したグルコースで構成される非糖化アルブミンからの糖化アルブミンの分離は、ボロナートアフィニティークロマトグラフィーを使用することにより実施される。特定の実施態様において、アミノフェニルボロナート化されたアガロースは、アフィニティーリガンドとして役立つ。特定の実施態様において、樹脂は、0.25M 酢酸アンモニウム、0.05 M塩化マグネシウム、pH 8.5を含む緩衝液で平衡化される。アルブミン試料の充填及び樹脂に対する糖化種の結合に続いて、非糖化種の溶出を平衡緩衝液で行ってもよい。結合した糖化タンパク質は、アミノフェニルボロナート化されたアガロース樹脂を0.2M ソルビトールを含む0.1MのTris-HCl緩衝液、pH 8.5と接触させることによって溶出させらてもよい。大部分の結合したタンパク質を溶出させた後、0.5% 酢酸を使用してカラムを再生し、及びよりしっかりと結合したタンパク質種をを溶出させる。これらの条件下における糖化アルブミンの非糖化アルブミンからの例示的な分離を下記の実施例6に提供してある。
【0137】
別の好ましい実施態様において、アフィニティークロマトグラフィーによるアルブミンの脱糖化は、アフィニティーリガンドとしてコンカナバリンA(ConA)を使用することにより行われる。コンカナバリンAは、種々の糖のα-マンノシル基を内部及び非還元末端に特異的に結合する。特定の条件下において、ConAは、問題の糖がグルコース以外のもの、例えばマンノース、ガラクトース、乳糖などである場合、糖化されたアルブミン種に選択的に結合し得る。更にまた、ConAは、より多くの複雑な、すなわちセリン及び/又はスレオニンなどのアミノ酸残基において見いだされる側鎖酸素原子に対する共有結合を介して組換えアルブミンにO連結される高次糖で構成されるアルブミン種に対して首尾よく結合し得る。一部の実施態様において、ConA樹脂は、1M NaCl、1mM MgCl2、1mM MnCl2、1mM CaCl2を含む0.1Mの酢酸緩衝液、pH 6溶液で平衡化される。アルブミン試料の充填及び樹脂に対する脱糖化種の結合後、非糖化種は、直ちに平衡緩衝液に溶出するが、脱糖化されたアルブミン種の溶出は、平衡緩衝液中の0.1M グルコース、0.1Mマンノースでおこなってもよい。これらの条件下における非糖化アルブミンから糖化アルブミンの例示的な分離は、下記の実施例7に提供してある。
【0138】
特定の実施態様において、脱糖化されたアルブミンを含む溶出液は、低分子量フィルターで濾過して、試料を濃縮し、残留する内毒素などを洗浄してもよい。一部の実施態様において、限外濾過は、Amicon(登録商標)10kDaミリポアフィルター(Millipore Corporation.Bedford, Mass.)で行ってもよい。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、滅菌水で洗浄してもよい。その他の実施態様において、組換えアルブミンは、0.9%の生理食塩水(154mM NaCl)で洗浄してもよい。その他の実施態様において、組換えアルブミンは、無菌の緩衝液で洗浄してもよい。
【0139】
特定の実施態様において、アルブミン溶液は、約0.5〜25%のアルブミンに対応する約5〜250mg/mlの総タンパク質に濃縮してもよい。一部の実施態様において、アルブミン溶液の終濃度は、約5mg/ml、、約10mg/ml、約20mg/ml、約40mg/ml、約80mg/ml、約120mg/ml、約150mg/ml、約175mg/ml、約200mg/ml、約225mg/ml又は約250mg/mlの総タンパク質を含む。一部の実施態様において、アルブミン溶液は、約0.5%、約1%。約2%、約4%。約8%、約12%、約15%、約17.5%、約20%又は約25%のアルブミンを含む。次いで、アルブミン試料は、所望の製剤組成物に再び製剤化してもよい。
【0140】
脱糖化の効率の決定は、糖化されたタンパク質の測定のための当該技術分野において公知の任意の方法に従って行ってもよい。一部の実施態様において、脱糖化効率は、糖化されたアルブミンを測定するために有用な技術において公知の任意のアッセイ法によって決定してもよい。一部の実施態様において、糖化されたアルブミンの測定は、米国特許第5,866,352号(その内容はその全体が引用により本明細書に組み込まれている)に記載されているようなフルクトサミンアッセイ法によって行われる。フルクトサミンは、タンパク質のグルコースとアミノ酸残基との間の非酵素的メイラード反応により形成される。一部の実施態様において、糖化されたアルブミンの測定は、Mashibaらの論文、Clin. Chim. Ada 212:3-15 (1992)によって記述されているように、ニトロブルーテトラゾリウムELBIA)比色法によって行われる。この方法は、アルカリ性溶液における糖化されたタンパク質のケトアミン部分によるNBT還元の原理に基づく。一部の実施態様において、糖化されたアルブミンの測定は、Ikedaらの論文、Clin. Chem. 44(2):256-63 (1998)によって記述されているように、酵素結合のボロナート免疫アッセイ(HLBIA)によって行われる。この方法は、ボロン酸とマイクロタイタープレートウェル上に被覆された抗アルブミン抗体によってトラップされた糖化されたアルブミンのシスジオールとの相互作用に依存する。
【0141】
(5.7.6 アルブミンの脱グリコシル化)
別の実施態様において、アルブミンの脱グリコシル化は、酵素法によって行ってもよい。酵素は、タンパク質から糖を除去することができる当業者に公知の任意の酵素であることができる。一部の実施態様において、酵素は、エンドグリコシダーゼである。一部の実施態様において、酵素は、エンドグリコシダーゼDである。一部の実施態様において、酵素は、エンドグリコシダーゼHである。一部の実施態様において、酵素は、エンドグリコシダーゼFである。一部の実施態様において、アルブミンの脱糖化は、アルブミンを複数のエンドグリコシダーゼと接触させることによって行われる。一般に、糖化されたアルブミンを当業者に公知の任意の糖の除去のために適した条件下で脱糖化された酵素と接触させる。このような条件は、例えば、適切なpHにおいて、適切な酵素濃度にて、適切な温度にて、及び適切な時間、糖化されたアルブミンを酵素と接触させることを含む。特定の実施態様において、酵素の脱グリコシル化は、上記されたようなクロマトグラフィーの脱糖化工程と組み合わせて、すなわち行ってもよい。
【0142】
(5.7.7 アルブミンの非Cys34反応部位の遮断)
所望の場合、組換えアルブミンは、抱合の好ましい特異性のために、すなわち非Cys34抱合体の形成の可能性を減少させるために、更に処理してもよい。好ましい実施態様において、治療的基及び反応基、好ましくはマレイミド基を含む単一化合物を、アルブミン、又はその断片、変異体若しくは誘導体の単一の定義された部位に共有結合で結合する。特に好ましい実施態様において、アルブミンに対する結合の単一の部位は、Cys34のチオール基である。従って、特定の実施態様において、非Cys34アルブミン抱合体の形成は、アルブミン上のその他の潜在的反応部位を遮断することによって減少させてもよい。
【0143】
一部の実施態様において、組換えアルブミンは、共有結合性付加体形成をヒト血清アルブミンに対して生じることが公知である残基を化学的に遮断する薬剤と接触されてもよい。Cys34以外のアルブミン上の反応部位を遮断することができる技術分野において公知の任意の薬剤を使用してもよい。一部の実施態様において、薬剤は、リジン残基を遮断する。アルブミンは、52個のリジン残基を含み、そのうちの25〜30個は、アルブミンの表面上に位置して、抱合のために利用可能であろう。従って、一部の実施態様において、薬剤は、共有結合性付加物を形成する可能性を有することが当業者に公知のアルブミンの任意のリジン残基を遮断する。一部の実施態様において、化合物を、アルブミンのLys71を遮断する。一部の実施態様において、化合物は、アルブミンのLysl99を遮断する。一部の実施態様において、薬剤は、アルブミンのLys351を遮断する。一部の実施態様において、薬剤は、アルブミンのLys525を遮断する。一部の実施態様において、薬剤は、アルブミンのLys541を遮断する。
【0144】
特定の実施態様において、アルブミン上の非Cys34反応部位は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)との接触によって遮断される。一部の実施態様において、アルブミン上の非Cys34反応部位は、アセチルサリチル酸との接触によって遮断される。一部の実施態様において、組換えアルブミンは、アルブミンのLys71をアセチル化するために十分な条件下でアセチルサリチル酸と接触される。例えば、Gambhirらの論文、J. Bio. Chem. 250(17):6711-19 (1975)を参照されたい。一部の実施態様において、組換えアルブミンは、アルブミンのLysl99をアセチル化するために十分な条件下でアセチルサリチル酸と接触させる。例えば、Walkerの論文、FEBS Lett. 66(2): 173-5 (1976)を参照されたい。
【0145】
一部の実施態様において、アルブミン上の非Cys34反応部位は、ナプロキセンアシル補酵素A(ナプロキセン-CoA)との接触によって遮断される。一部の実施態様において、組換えアルブミンは、アルブミンLys199、Lys351若しくはLys541又はこれらの組み合わせをアシル化するために十分な条件下で、ナプロキセン-CoAと接触される。例えば、Olsenらの論文、Anal. Biochem. 312(2): 148-56 (2003)を参照されたい。
【0146】
より好ましい実施態様において、アルブミン上の非Cys34反応部位は、アルブミンの表面上の特定の部位に対して高親和性を有するが、アルブミンの表面上に共有結合性付加物を形態しない分子との接触によって遮断される。一部の実施態様において、非Cys34反応部位は、非Cys34反応性を限定するのを助ける緩衝液中で、例えば中性pHよりも低いpH、すなわち3<pH<7の緩衝液を使用することにより、血清アルブミン又は組換えアルブミンのいずれかを製剤化することにより、反応性を少なくさせ、すなわち求核性を少なくさせる。
【0147】
(5.8 治療的化合物に対するアルブミンの抱合)
本発明の別の態様において、抱合体を形成する方法には、アルブミンを治療的基及び反応基を含む化合物と、反応基がアルブミンのCys34チオールに共有結合で結合して抱合体を形成することができる反応条件下で接触することを含む。一部の実施態様において、抱合反応は、アルブミンを含む任意の液体培地において進行させてもよい。
【0148】
一部の実施態様において、アルブミンは、組換えアルブミンを発現するトランスジェニック非ヒト動物の血液、乳又は尿中の化合物によって、抱合体を形成するのに十分な条件下で接触される。一部の実施態様において、アルブミンは、組換えアルブミンを産生するように、形質転換された任意の宿主細胞、例えば動物細胞、植物細胞、細菌細胞又は酵母細胞の粗製可溶化液又は透明にした可溶化液中の化合物によって、抱合体を形成するのに十分な条件下で接触される。一部の実施態様において、アルブミンは、組換えアルブミンがその中に分泌される、組換えアルブミンを産生する宿主生物の培養液中の化合物によって、抱合体を形成するのに十分な条件下で接触される。一部の実施態様において、アルブミンは、精製されたアルブミン溶液、例えば上記の任意のクロマトグラフィー法又はこれらの組み合わせによる精製によって生じる溶液中の化合物によって、抱合体を形成するのに十分な条件下で接触される。一部の実施態様において、アルブミンは、血清アルブミン溶液中の化合物によって接触される。
【0149】
一部の実施態様において、アルブミンは、アルブミンがメルカプトアルブミンについて濃縮される、精製されたアルブミン溶液中の化合物によって、抱合体を形成するのに十分な条件下で接触される。一部の実施態様において、アルブミンは、アルブミンが脱糖化されている、精製したアルブミン溶液中の化合物によって、抱合体を形成するのに十分な条件下で接触される。一部の実施態様において、アルブミンは、アルブミンの非Cys34反応部位が共有結合又は非共有結合で遮断された、精製されたアルブミン溶液中の化合物によって、抱合体を形成するのに十分な条件下で接触される。一部の実施態様において、アルブミンは、アルブミンがメルカプトアルブミンについて濃縮されて、かつ脱糖分されている、精製したアルブミン溶液中の化合物によって、抱合体を形成するのに十分な条件下で接触される。一部の実施態様において、アルブミンは、アルブミンがメルカプトアルブミンについて濃縮されており、かつ非Cys34反応部位が共有結合又は非共有結合で遮断されている、精製されたアルブミン溶液中の化合物によって、抱合体を形成するのに十分な条件下で接触される。一部の実施態様において、アルブミンは、アルブミンが脱糖化されており、かつ非Cys34反応部位が共有結合又は非共有結合で遮断されている、精製されたアルブミン溶液中の化合物によって、抱合体を形成するのに十分な条件下で接触される。一部の実施態様において、アルブミンは、アルブミンがメルカプトアルブミンについて濃縮されており、かつ非Cys34反応部位が共有結合又は非共有結合で遮断されている、精製されたアルブミン溶液中の化合物によって、抱合体を形成するのに十分な条件下で接触される。
【0150】
一般に、化合物の反応基に対する組換えアルブミンのCys34チオールの共有結合を好む反応条件には、適切なpHを含むであろう。任意の特定の理論によって拘束されることを意図しないが、ヒト血清アルブミンは、3.0を下回るpHにてアンフォールドして、細長いランダムコイルに変性されると考えられる。従って、特定の実施態様において、組換えアルブミンは、少なくとも3.0のpHにて、化合物と接触される。一部の実施態様において、組換えアルブミンは、低から中性のpHにて化合物と接触される。詳細な実施態様において、pHは、約4.0〜7.0の間である。一部の実施態様において、pHは、4.0〜5.0の間である。一部の実施態様において、pHは、約5.0〜6.0の間である。一部の実施態様において、pHは、約6.0〜7.0の間である。一部の実施態様において、pHは、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5又は7.0である。
【0151】
また、抱合体の形成を引き起こす好ましい反応条件には、適切な温度を含むであろう。抱合のための適切な温度は、組換えアルブミン製剤の相対的純度に応じて変化するであろう。詳細な実施態様において、組換えアルブミンが、培養液中の化合物によって、宿主生物の有無において、又は宿主生物の粗製若しくは透明にした可溶化液中で、接触させる場合、反応は、約34〜40℃、約35〜39℃又は約36〜38℃にて行われる。詳細な実施態様において、組換えアルブミンは、約37℃にて化合物によって接触される。その他の実施態様において、抱合反応が精製した組換えアルブミン溶液、例えば上記の任意のクロマトグラフィー法又はこれらの組み合わせによる精製によって生じる組換えアルブミン溶液中で進行する場合、反応は、約17〜25℃、約18〜24℃又は約19〜23℃にて行ってもよい。一部の実施態様において、反応は、約20〜25℃にて行われる。詳細な実施態様において、抱合反応が精製されたアルブミン溶液中で進行する場合、反応は、約20〜25℃以下で行われる。別の実施態様において、反応は、低温条件、例えば+1℃から+8℃にて行ってもよい。反応は、高温ほど遅くなるであろうし、それでも、Cys34により特異的なアルブミン抱合体生成物を生じるであろう。
【0152】
また、抱合体の形成を引き起こす好ましい反応条件には、適切な反応時間を含むであろう。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55又は60分間化合物と接触される。特定の実施態様において、組換えアルブミンは、少なくとも30分間化合物と接触される。一部の実施態様において、組換えアルブミンは、約1〜60分、約5〜55分、約10〜50分、約20〜40分又は約25〜35分間化合物と接触される。
その他の実施態様において、組換えアルブミンは、少なくとも0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24時間化合物と接触される。一部の実施態様において、組換えアルブミンは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15又は20日間化合物と接触される。
【0153】
また、抱合体の形成を引き起こす好ましい反応条件には、溶液中の反応物の適切な化学量論を含むであろう。溶液中のアルブミンの力価は、当該技術分野において公知の任意の方法、例えばSDS-PAGE;アルブミン特異的酵素結合免疫測定法(ELISA);吸光度に基づいたアッセイ法(280nm、205nm);ローリー(Lowry)アッセイ法、ブラッドフォード(Bradford)アッセイ法、ビシンコニンアッセイ法などの比色アッセイ法;ケルダール法などに従って決定してもよい。一般に、化合物対アルブミンの最終モル比は、化合物がアルブミンと接触する溶液の相対的純度、並びに接触がなされるアルブミンの純度に応じて、変化するであろう。例えば、化合物が無処理又は溶解した宿主細胞を含む溶液に添加される場合、宿主タンパク質及び抗原は、化合物の反応基に対する結合に対して、組換えアルブミンと競合し、従ってアルブミンと比較してより大モル量の化合物が必要となるであろう。その他の実施態様において、化合物が精製されたアルブミンの標品、例えばキャップされず、脱糖化され、かつ/又は非Cys34反応部位にて遮断されたアルブミンに添加される場合、アルブミンと比較してより小モル量の化合物が必要とされるであろう。従って、一部の実施態様において、抱合反応には、アルブミンと比較してより高いモル濃度の化合物を含む溶液を含んでいてもよい。一部の実施態様において、抱合反応は、アルブミンに対する等モル濃度の化合物を含む溶液を含む。詳細な実施態様において、抱合反応は、アルブミンに対してより低モル濃度の化合物を含む溶液を含む。
【0154】
一部の実施態様において、アルブミンは、約0.1:1〜約10,000:1の化合物対組換えアルブミンの最終モル比を含む溶液中で化合物と接触される。 一部の実施態様において、最終モル比は、約7500:1, 5000:1、約2500:1、約1000:1、約750:1、約500:1、約250:1、約100:1、約75:1、約50:1、約25:1、約10:1、約7.5:1、約5:1、約2.5:1又は約1:1である。
【0155】
一部の実施態様において、最終モル比は、約0.1:1〜1:1の間である。一部の実施態様において、最終モル比は、約0.1:1、0.2:1、0.3:1、 0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1である。特定の実施態様において、化合物対組換えアルブミンの最終モル比は、約0.7:1である。
詳細な実施態様において、化合物が粉末形態に製剤化される場合、化合物は、抱合反応に添加する前に、滅菌水を使用して可溶化してもよい。その他の実施態様において、化合物は、好ましくは9.0よりも高くないpHにてセットされた水性緩衝液に可溶化してもよい。好ましい実施態様において、可溶化された化合物は、アルブミン溶液に対する化合物の滴下添加によって、抱合体を形成するのに十分な条件下で、アルブミンと接触される。
【0156】
(5.9抱合体の精製)
本明細書に記述した方法に従って形成された抱合体を含む溶液は、下記の記述した工程に従って、宿主タンパク質、抗原、内毒素、粒子状物質、還元剤、加工酵素、塩、結合していない化合物、キャップされ、若しくはキャップのない、又は単量体若しくは二量体結合していないアルブミン、及び/又は抱合体の凝集体形態から抱合体の単量体の形態を分離するために精製してもよい。
【0157】
従って、一部の実施態様において、宿主生物を含む培養液中で形成された抱合体を含む溶液は、組換えアルブミンが宿主生物によって分泌された場合に、下記の工程に従って精製してもよい。一部の実施態様において、組換えアルブミンが宿主生物によって分泌され、かつ宿主生物が抱合の前に培養液から分離された、培養液上清中に形成された抱合体を含む溶液は、下記の工程に従って精製してもよい。一部の実施態様において、組換えアルブミンが細胞内に産生され、かつ宿主生物が抱合の前に溶解されて、培養液から分離された、透明にした可溶化液中に形成された抱合体を含む溶液は、下記の工程に従って精製してもよい。
【0158】
一部の実施態様において、宿主細胞から産生される組換えアルブミンの精製された溶液中に形成された抱合体を含む溶液は、下記の工程に従って精製してもよい。一部の実施態様においてアルブミンがメルカプトアルブミンについて濃縮された、宿主細胞から産生される組換えアルブミンの精製された溶液中に形成された抱合体は、下記の工程に従って精製してもよい。一部の実施態様において、アルブミンが脱糖化されている、宿主細胞から産生される組換えアルブミンの精製された溶液中に形成された抱合体は、下記の工程に従って精製してもよい。一部の実施態様において、アルブミンが非Cys34反応部位にて遮断されている、宿主細胞から産生される組換えアルブミンの精製された溶液中に形成された抱合体は、下記の工程に従って精製してもよい。
【0159】
一部の実施態様において、アルブミンがメルカプトアルブミンについて濃縮され、かつ脱糖化されている、宿主細胞から産生される組換えアルブミンの精製された溶液中に形成された抱合体は、下記の工程に従って精製してもよい。一部の実施態様において、アルブミンが脱糖化され、かつ非Cys34反応部位にて遮断されている、宿主細胞から産生される組換えアルブミンの精製された溶液中に形成された抱合体は、下記の工程に従って精製してもよい。一部の実施態様において、アルブミンがメルカプトアルブミンについて濃縮され、かつ非Cys34反応部位にて遮断されている、宿主細胞から産生される組換えアルブミンの精製された溶液中に形成された抱合体は、下記の工程に従って精製してもよい。一部の実施態様において、アルブミンがメルカプトアルブミンについて濃縮され、脱糖化され、かつ非Cys34反応部位にて遮断されている、宿主細胞から産生される組換えアルブミンの精製された溶液中に形成された抱合体は、下記の工程に従って精製してもよい。
【0160】
好ましい実施態様において、抱合生成物は、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって精製してもよい。一部の実施態様において、当業者の判断に従って、アルブミンに結合することができる任意の疎水性樹脂を使用してもよい。一部の実施態様において、疎水性樹脂は、オクチルセファロース、ブチルセファロース若しくはフェニルセファロース又はこれらの組み合わせであることができる。好ましい実施態様において、精製は、2工程精製、任意に続いて限外濾過を含む。
【0161】
一部の実施態様において、抱合体のHIC精製には、溶液から結合していない化合物を除去するためのフェニルセファロースでの第1のフロースルー工程を含む。詳細な実施態様において、このフロースルー工程は、非Cys34アルブミン抱合体の形成を制限するために、抱合反応の直後に行われる。フェニルセファロース樹脂は、中性pH(例えばリン酸緩衝液pH 7.0)にてセットした、低塩、例えば5mM硫酸アンモニウム又は5mM硫酸マグネシウム又は5mM硫酸アンモニウム又は5mMオクタン酸ナトリウム中で平衡化してもよい。一部の実施態様において、平衡緩衝液の伝導率は、5.8mS/cmにセットされる。これらの条件下で、非抱合化合物は、樹脂に結合するが、大部分の化合物-アルブミン抱合体は、流れて通過し、5〜6カラム体積以内に溶出されるであろう。
【0162】
フェニルセファロースカラムからの溶出後、フロースルーを任意に穏和な分解工程に供して、更に非Cys34アルブミン抱合産物の量を減少さてもよい。分解は、更に精製を進行する前に、室温及び中性のpHにて、7日までの間、フロースルーをインキュベートすることによって達成してもよい。一部の実施態様において、フェニルセファロースフロースルーを第2の疎水性相互作用クロマトグラフィー工程を進行する前に、室温にて1、2、3、4、5、6又は7日間インキュベートしてもよい。一部の実施態様において、フェニルセファロースフロースルーは、室温にて1日間インキュベートされる。一部の実施態様において、フェニルセファロースフロースルーは、室温にて2日間インキュベートされる。一部の実施態様において、フェニルセファロースフロースルーは、室温にて3日間インキュベートされる。一部の実施態様において、フェニルセファロースフロースルーは、室温にて4日間インキュベートされる。一部の実施態様において、フェニルセファロースフロースルーは、室温にて5日間インキュベートされる。一部の実施態様において、フェニルセファロースフロースルーは、室温にて6日間インキュベートされる。一部の実施態様において、フェニルセファロースフロースルーは、中性のpHにて7日間室温インキュベートされる。
【0163】
詳細な実施態様において、穏和な分解工程に続いて、フェニルセファロースフロースルーは、第一と同一の条件下、例えば5mM硫酸アンモニウム又は5mM硫酸マグネシウム又は5mM硫酸アンモニウ又は5mMオクタン酸ナトリウム、pH 7.0;5.8mS/cmの伝導率で、第2のフェニルセファロースフロースルー工程に供して、分解工程により生じる非抱合化合物分子を除去してもよい。
【0164】
フェニルセファロースクロマトグラフィー後、次いでフロースルーを、ブチルセファロース樹脂との接触を含む第2の疎水性相互作用クロマトグラフィーに適用する。ブチルセファロース疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用するアルブミン抱合体の精製のための方法は、米国特許出願第11/112,277号に記述されており、その内容は、その全体が引用により組み込まれている。この精製工程により、単量体の化合物-アルブミン抱合体を遊離の結合していないアルブミン、二量体アルブミン、さらなる結合していない化合物及び抱合体の凝集体形態から分離する。一部の実施態様において、ブチルセファロース樹脂は、中性pH(例えば、リン酸緩衝液pH 7.0)にセットした、750mM硫酸アンモニウム、5mMオクタン酸ナトリウム中で平衡化してもよい。充填及び樹脂に対する結合後、単量体化合物-アルブミン抱合体の分離は、直線的若しくは段階的にいずれかで塩濃度を減少させる勾配又はこれらの組み合わせを適用することによって達成してもよい。例えば、単量体化合物-アルブミン抱合体は、0-750mM(NH42SO4を含む溶液との接触によって溶出させてもよい。一部の実施態様において、非抱合アルブミンは、118mS/cmの伝導率において、約750mM(NH42SO4を含む溶液との接触によって溶出させてもよい。
一部の実施態様において、二量体非抱合アルブミンは、89mS/cmの伝導率にて、約550mM(NH42SO4を含む溶液との接触によって溶出させてもよい。
【0165】
一部の実施態様において、単量体の抱合されたアルブミンは、約50〜150mM(NH42SO4を含む溶液との接触によって溶出させてもよい。一部の実施態様において、単量体の抱合されたアルブミンは、約75〜125mM(NH42SO4を含む溶液との接触によって溶出させてもよい。一部の実施態様において、単量体の抱合されたアルブミンは、21mS/cmの伝導率にて、約100mM(NH42SO4を含む溶液との接触によって溶出させてもよい。
【0166】
一部の実施態様において、抱合体は、HIC精製後に限外濾過により、例えばAmicon(登録商標)超遠心(30kDa)濾過装置(Millipore Corporation, Bedford, Mass.)を使用することにより、脱塩し、かつ濃縮してもよい。一部の実施態様において、抱合体は、所望の製剤組成物に再処方してもよい。その他の実施態様において、抱合体は、液体窒素に抱合体溶液を浸漬すること、及び抱合体を凍結乾燥させること、及び-20℃にて抱合体を貯蔵することによって長期保存のために製造される。
【実施例】
【0167】
(6.実施例)
本発明は、いかなる形であれ限定することは意図されない以下の実施例によって例証される。以下の実施例のクロマトグラフィー法は、AKTA清浄器(Amersham Biosciences、Uppsala、Sweden)を使用して行った。
【0168】
(6.1 実施例1.:ピチア・パストリス(Pichia pastoris)に発現された組換えアルブミンの精製)
本実施例は、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)に発現された組換えアルブミンの種々のクロマトグラフィー法による精製を証明する。組換えアルブミンは、製造業者のプロトコルに従って、ピチア発現キット(Invitrogen、Carlsbad, CA)を使用して発現させた。
【0169】
(6.1.1 DEAEセファロース:弱い陰イオン交換クロマトグラフィー)
ピチア・パストリス(Pichia pastoris)に発現された組換えヒトアルブミンの精製を10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)中で平衡化したDEAEセファロースのカラムで行った。塩を増加する勾配を以下の通りに適用した(50mlのカラム体積、2ml/分の流速):5カラム体積にわたって66mMリン酸ナトリウム;2カラム体積にわたって66mMリン酸ナトリウム;0カラム体積にわたって200mMリン酸ナトリウム;1カラム体積にわたって200mMリン酸ナトリウム;20mM Tris-HCl緩衝液及び2M NaCl、pH 8.0における再生。図1では、精製されたアルブミン画分を、画分としてリン酸ナトリウムを増加する勾配の間に溶出する。
【0170】
(6.1.2 Qセファロース:強力な陰イオン交換クロマトグラフィー)
ピチア・パストリス(Pichia pastoris)に発現された組換えヒトアルブミンの精製を20mM Tris HCl緩衝液、pH 8.0中で平衡化したQセファロースのカラムで行った。塩を増加する勾配を以下の通りに適用した(50mlのカラム体積、2.5ml/分の流速): 8カラム体積にわたって1M NaCl;0体積にわたって2M NaCl;2カラム体積にわたって2M NaCl。図2では、精製したアルブミン画分は、0〜1M NaClに増加するNaCl勾配の間に溶出する。
【0171】
(6.1.3 Hitrap Blue:アフィニティークロマトグラフィー)
ピチア・パストリス(Pichia pastoris)に発現された組換えヒトアルブミンの精製を20mM Tris HCl緩衝液、pH 8.0中で平衡化したHiTrap(登録商標)Blue HP(GE Healthcare、Piscataway、NJ)カラムで行った。塩を増加する勾配を以下の通りに適用した(50mlのカラム体積、2.5ml/分の流速): 2カラム体積にわたって1M NaCl;0カラム体積にわたって2M NaCl;1カラム体積にわたって2M NaCl。図3では、精製したアルブミン画分は、0〜2M NaClに増加するNaCl勾配の間に溶出する。
【0172】
(6.1.4 フェニルセファロース:疎水性相互作用クロマトグラフィー)
ピチア・パストリス(Pichia pastoris)に発現された組換えヒトアルブミンの精製を20mMリン酸ナトリウム、5mMカプリル酸ナトリウム及び750mM(NH42SO4、pH 7.0中で平衡化したフェニルセファロースを含むカラムで行った。塩濃度を減少する勾配を以下の通りに適用した(50mlのカラム体積、5ml/分の流速): 20mMリン酸ナトリウム、2カラム体積にわたって5mMカプリル酸ナトリウム;1カラム体積にわたって水で行う洗浄液;1カラム体積にわたって20% エタノール;及び1カラム体積にわたって水。図4では、精製されたアルブミン画分は、750〜0M(NH42SO4に減少する勾配の間に溶出する。
【0173】
(6.2 実施例2:メルカプトアルブミンの濃縮に後の組換えアルブミンの精製)
本実施例は、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)に発現され、かつメルカプトアルブミンについて濃縮した組換えアルブミンのフェニルセファロース疎水性相互作用クロマトグラフィーによる精製を証明する。組換えアルブミン(0.2%の最終)を74mM トリグリコール酸の250mM Tris-酢酸緩衝液溶液で、4℃にて20時間処理した。精製は、20mMリン酸ナトリウム、5mMカプリル酸ナトリウム及び750mM(NH42SO4、pH 7.0中で平衡化したフェニルセファロースを含むカラムで行った。塩濃度を減少する勾配を以下の通りに適用した(50mlのカラム体積、5ml/分の流速): 20mMリン酸ナトリウム、2カラム体積にわたって5mMカプリル酸ナトリウム;1カラム体積にわたって水で行う洗浄液;1カラム体積にわたって20% エタノール;及び1カラム体積にわたって水。図5では、精製されたアルブミン画分は、750〜0M(NH42SO4に減少する勾配の間に溶出する。F2は、Amicon 10kDaミリポアフィルターで収集、濃縮して、注射用蒸留水(WFI)で4回洗浄した。
【0174】
(6.3 実施例3:脱糖化後の組換えアルブミンの精製)
本実施例は、リガンドとしてアミノフェニルボロン酸及びコンカナバリンAを使用するアフィニティークロマトグラフィーによるヒト血清アルブミンの脱糖化を証明する。クロマトグラフィーは、AKTA清浄器(Amersham biosciences、Uppsala、Sweden)で行った。
【0175】
(6.3.1 アガロースでアミノフェニルボロン酸クロマトグラフィー)
アガロース(Sigma, St. Louis, MO)を伴うアミノフェニルボロン酸樹脂は、4カラム体積の0.25M酢酸アンモニウム、pH 8.5、0.05 MgCl2(0.5ml/分の流速)で洗浄して、平衡化した。25% ヒト血清アルブミン溶液(Cortex Biochem, San Leandro, CA)を平衡化緩衝液に1:2に希釈して、カラムに充填した。フロースルーを収集し(F3)、カラムを4カラム体積の平衡化緩衝液で洗浄した。溶出は、3カラム体積の0.2M ソルビトールを含む0.1M Tris、pH 8.5で行い、F2に収集した。F3及びF2は、10kDa、Amicon Milliporeフィルターで濃縮して、注射用蒸留水(WFI、Abbott Laboratories、Abbott Park、IL)で4回洗浄した。カラムは、5カラム体積の0.1M ホウ酸緩衝液、pH 9.8、1M NaCl;5カラム体積の0.1M ホウ酸緩衝液、pH 9.8、5カラム体積の水及び5カラム体積の2M NaClで再生した。代表的なクロマトグラムを図6に示してある。
【0176】
(6.3.2 コンカナバリンA(ConA)クロマトグラフィー)
ConA樹脂(Amersham、Piscataway、NJ)を、4カラム体積の0.1Mの酢酸緩衝液、pH 6.0、1M NaCl 1mM MgCK、1mM MgCl2、1mM CaCl2(2ml/分の流速)で洗浄し、平衡化した。20% 組換えヒト血清アルブミン溶液(North China Pharmaceutical Co., Shijiazhuang, China )を平衡化緩衝液に1:2に希釈して、カラムに充填した。フロースルーを収集して(F3)、カラムを4カラム体積の平衡化緩衝液で洗浄した。溶出は、3カラム体積の平衡緩衝液プラス0.1Mのグルコース及び0.1Mのマンノースで行い、F2に収集した。F3及びF2は、10kDa、Amicon Milliporeフィルターで濃縮して、注射用蒸留水(WFI、Abbott Laboratories、Abbott Park、IL)で4回洗浄した。カラムは、5カラム体積の0.1M ホウ酸緩衝液、pH 9.8、1M NaCl;5カラム体積の水;5カラム体積の0.1Mのホウ酸緩衝液、pH 8.5;及び5カラム体積の0.1M ホウ酸緩衝液、pH 4.5で再生した。代表的なクロマトグラムを図7に示してある。
【0177】
(6.4 実施例4:単量体化合物-アルブミン抱合体の精製)
ピチア・パストリス(Pichia pastoris)に発現された組換えアルブミンを精製して、上記実施例2に記載したようにチオグリコール酸で処理して、CJC-1134(反応基MPAを含むエキセンディン-4)との抱合の前に、フェニルセファロースHICによって精製した。抱合反応は、0.7:1の最終モル比にて、175μlのメルカプトアルブミンが濃縮されたアルブミンと組み合わせた、35μlの10mM CJC-1134を含んだ。反応は、37℃にて30分間進行させ、次いで液体クロマトグラフィー/質量スペクトル分析及びブチルセファロースHICによる精製のために4℃にて貯蔵した。
【0178】
図8は、最初にフェニルセファロースフロースルーカラムに充填する前のCJC-1134と組換えアルブミンとの間の抱合後に見いだされる結合していないCJC-1134のHPLCクロマトグラムを示す。結合していないCJC-1134の保持時間は、8.2分であり、CJC-1134-アルブミン抱合体のものは、12分後である。
【0179】
第1のHICについては、フェニルセファロースを5mMオクタン酸ナトリウム及び5mM硫酸アンモニウムで構成された20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)中でプレ平衡化した。樹脂に対する抱合反応の直接の充填により、結合していないCJC-1134からのフロースルーにおいて観察されるタンパク質(アルブミン及び抱合されたアルブミン)の物理的分離が可能になった。従って、この樹脂の能力は、主に反応性部分を含む結合していない化合物に対して確保されている。代表的なクロマトグラムを図9に示してある。
【0180】
図10は、最初にフェニルセファロースフロースルーカラムに充填した後のCJC-1134と組換えアルブミンとの間の抱合後に見いだされる結合していないCJC-1134のHPLCクロマトグラムを示す。結合していないCJC-1134の保持時間は8.2分であり、CJC-1134-アルブミン抱合体のものは、12分後である。従って、結合していないCJC-1134は、抱合反応生成物のプールから効率的に除去された。
【0181】
第2のHICについては、ブチルセファロース樹脂を20mMリン酸ナトリウム緩衝液、5mMカプリル酸ナトリウム、750mM(NH42SO4、pH 7.0中で平衡化した。塩濃度を減少する勾配を以下の通りに適用した(50mlのカラム体積、2.5ml/分の流速):4カラム体積にわたって、20mMリン酸ナトリウム、5mMカプリル酸ナトリウム、pH 7.0;1カラム体積の間、水で洗浄させた;1カラム体積にわたって20% エタノール;及び1カラム体積にわたって水。F2を10kDa Amiconミリポアフィルターで収集、濃縮して、WFIで4回洗浄した。図11は、勾配に沿って異なる位置に溶出する3つの異なる集団を示す:約750mM(NH42SO4は、非抱合アルブミンに対応し、550mM(NH42SO4は、二量体非抱合アルブミンに対応し、及び約100m(NH42SO4は、単量体の抱合されたアルブミンに対応する。
【0182】
また、抱合の成功は、組換えアルブミンとGLP-1及び反応基MPAを含む化合物との間で観察された。図12は、フェニルセファロースフロースルーカラムに対する充填前の、DAC-GLP-(CJC-1131)とrHAとの間の抱合後に見いだされる結合していないDAC-GLP-1(CJC-1131)のHPLCクロマトグラムを示す。結合していないCJC-1131の保持時間は、27.5分であり、アルブミン抱合体のものは、50分後である。
【0183】
第1のHICについては、フェニルセファロースを5mMオクタン酸ナトリウム及び5mM硫酸アンモニウムで構成される20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)中でプレ平衡化した。樹脂に対する抱合反応の直接の充填により、図13に示すように、結合していないDAC-GLP-1(CJC-1131)からのフロースルーにおいて観察されるタンパク質(アルブミン及び抱合されたアルブミン)の物理的分離が可能になった。図14は、フェニルセファロースフロースルーカラムに対する抱合体の反応の充填後の、DAC-GLP-1(CJC-1131)及び組換えヒトアルブミンとの間の抱合後に見いだされる結合していないDAC-GLP-1のHPLCクロマトグラムを示す。結合していないCJC-1131の保持時間は、27.5分であり、アルブミン抱合体のものは、46分後である。従って、結合していないCJC-1131は、効率的に全てのタンパク質種から除去された。20.5分の保持時間を有するピークは、オクタン酸塩に対応する。

また、GLP-1-アルブミン抱合体を、SDS-PAGE及びウェスタンブロット解析のために調製した。簡潔には、上記の抱合反応後、約20μgの材料をLaemmli 3×緩衝液に希釈し、3分間煮沸して、8%のポリアクリルアミド-ビスアクリルアミドゲルに充填した。タンパク質を非還元条件下で移動した。ニトロセルロース膜への転写後(定電流;1OOmA/ゲル、1時間(2mA/cm2))、膜染色をPonceauレッドで行い、TBSで完全に脱染させ;膜を0.05% Tween20、5% 乳のTween20溶液で4℃にて一晩飽和させ、続いてTween20中で10分、0.05%のTween20で3回洗浄し、続いて赤いクマシーブルーで染色して、30% MeOH、10% 酢酸で完全に脱染した。アルブミンの免疫検出は、HRP標識されたヤギ抗体抗ヒトアルブミン(GAHu/Alb/PO, Nordic immunology, batch#5457)と共に、室温にて1時間のインキュベーションによって行った。GLP-1の免疫検出は、ウサギ抗GLP-1抗体との1時間のインキュベーションによって、続いてHRP標識されたヤギ抗ウサギ抗体との1時間のインキュベーションによって行った。次いで、膜をTBS-0.05% Tween20洗浄液で10分間3回洗浄した。シグナルの検出は、ECL(Amersham Pharmacia Biotech、RPN 2209)で行った。
【0184】
図15及び図16は、それぞれ非抱合組換えアルブミン(レーン3)及びGLP-1アルブミン抱合反応(レーン4)の反応生成物のクマシー染色及び抗アルブミンウエスタンブロットを示す。単量体及び重合体GLP-1-アルブミン抱合体種を反映して、非抱合アルブミンと比較して、より高分子量種が抱合後に観察される。
【0185】
図17及び図18は、それぞれGLP-1及び組換えヒトアルブミンとの間の抱合反応後の精製の種々の段階からの画分の、上記の通りの、クマシー染色及び抗アルブミンウエスタンブロットを示す。試料は、以下の通りに充填した:
(l)rHA
(2)プレ精製
(3)フェニルF8
(4)ブチルF3 75OmM(NH42SO4
(5)ブチルF5 55OmM(NH42SO4
(6)PC 200-200OmAU前のブチルF6A 100mM(NH42SO4
(7)ブチルF6A 100mM(NH42SO4 PC WFI
(8)ブチルF6A 100mM(NH42SO4 PCアセテート
(9)標準。
【0186】
(6.5実施例4:培養液中のアルブミンに対する抱合)
組換えヒトアルブミンは、製造業者プロトコルに従ってピチア発現キット(Invitrogen、Carlsbad, CA)を使用して発現した。28-30℃における培養液上清への3日のアルブミン発現及び分泌後、100mlのブロスを遠心分離して物理的に宿主細胞を粗製上清から分離した。次いで、粗製上清は、Amicon(登録商標)遠心チューブ(MWカットオフ=10kDa)を使用して20〜100 mg/mlの最終タンパク質濃度に濃縮し(標準化されたBCA方法を使用して見積もられるとおり)、液体クロマトグラフィー-エレクトロスプレー質量分析(LC-EMS)分析を行った。3日にて、抱合反応は、宿主細胞で構成される培養液に直接添加することによってアルブミンに対して1000x-倍のDAC-GLP-1(CJC-1131)の最終モル比で行った。
【0187】
抱合反応前後のLC-EMSデータは、メルカプトアルブミンのMW範囲に対応する種が検出可能でないことを示した。1000x-倍のCJC-1131(DAC-GLP-1;Mw = 3,721 Da)を培養液(宿主細胞で構成される)に直接添加して、25℃にて60分間反応させた。反応後、宿主細胞を、遠心分離を使用して粗製上清から物理的に分離した。次いで、上清をAmicon(登録商標)遠心チューブ(Mwカットオフ=10kDa)を使用して20〜100 mg/mlの最終タンパク質濃度に更に濃縮し、LC-EMS解析を行った。70,160〜70,170の総質量をもつタンパク質種がGLP-1-アルブミン抱合体の生成に対応するであろう。しかし、このサイズの検出可能な質量は、抱合反応後に観察されなかった。
【0188】
組換えアルブミンの発現及び分泌が、L-システインなどの還元剤が除去され、又は消耗された条件下である場合、培養液における抱合が成功するであろう。更に、アルブミンのCys34残基が酸化に感受性であり得るため、組換えアルブミンの分泌を、より通気のストリンジェントな条件下で試みてもよい。例として、及び限定ではなく、このような発酵条件は、培養液における抱合体形成のために有利であろう。
【0189】
本明細書において引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも個々の刊行物又は特許出願が引用により組み込まれていることが具体的かつ個々に示されているかのように、本明細書に引用により組み込まれている。前述の本発明は、理解を明瞭にするために、図と例とをあげていくらか詳細に記述してあるが、当業者には、本発明の教示を考慮して、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく、特定の変更及び修正をそれに対して行ってもよいことが直ちに明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】ピチア・パストリス(Pichia pastoris)から発現された組換えヒトアルブミンのDEAEセファロース陰イオン交換精製を示す。
【図2】ピチア・パストリス(Pichia pastoris)から発現された組換えヒトアルブミンのQセファロース陰イオン交換精製を示す。
【図3】ピチア・パストリス(Pichia pastoris)から発現された組換えヒトアルブミンのHiTrap(商標)Blueアフィニティー精製を示す。
【図4】ピチア・パストリス(Pichia pastoris)から発現された組換えヒトアルブミンのフェニルセファロース疎水性相互作用精製を示す。
【図5】ピチア・パストリス(Pichia pastoris)から発現され、かつメルカプトアルブミンの濃縮のためにチオグリコラートで処理した組換えヒトアルブミンのフェニルセファロース疎水性相互作用精製を示す。
【図6】非酵素的に糖化されたアルブミン種の減少のためのヒト血清アルブミンのアミノフェニルボロン酸アフィニティークロマトグラフィーを示す。
【0191】
【図7】非酵素的に糖化されたアルブミン種の減少のためのヒト血清アルブミンのコンカナバリンA(ConA)アフィニティークロマトグラフィーを示す。
【図8】フェニルセファロースフロースルーカラムに充填する前の、DAC-エキセンディン-4(CJC-1134)と組換えヒトアルブミンとの間の抱合反応からの結合していないエキセンディン-4のHPLCクロマトグラムを示す。
【図9】DAC-エキセンディン-4(CJC-1134)と組換えヒトアルブミンとの間の抱合反応のフェニルセファロース疎水性相互作用クロマトグラフィーを示す。
【図10】フェニルセファロースフロースルーカラムへの反応混合物の充填後の、DAC-エキセンディン-4(CJC-1134)と組換えヒトアルブミンとの間の抱合からの結合していないエキセンディン-4のHPLCクロマトグラムを示す。
【図11】第1のフェニルセファロースフロースルー精製後のDAC-エキセンディン-4(CJC-1134)と組換えヒトアルブミンとの間の抱合反応のフェニルセファロース疎水性相互作用クロマトグラフィーを示す。
【図12】フェニルセファロースフロースルーカラムに充填する前の、DAC-GLP-1(CJC-1131)と組換えヒトアルブミンとの間の抱合反応からの結合していないDAC-GLP-1(CJC-1131)のHPLCクロマトグラムを示す。
【0192】
【図13】DAC-GLP-1(CJC-1131)と組換えヒトアルブミンとの間の抱合反応のフェニルセファロース疎水性相互作用クロマトグラフィーを示す。
【図14】フェニルセファロースフロースルーカラムへの反応混合物の充填後の、DAC-GLP-1(CJC-1131)と組換えヒトアルブミンとの間の抱合反応からの結合していないDAC-GLP-1のHPLCクロマトグラムを示す。
【図15】組換えヒトアルブミン(レーン3)及びGLP-アルブミン抱合体(レーン4)のクマシー染色されたゲルを示す。
【図16】組換えヒトアルブミン(レーン3)及びGLP-アルブミン抱合体(レーン4)の試料におけるアルブミンの免疫検出を示す
【図17】DAC-GLP-1と組換えヒトアルブミンとの間の抱合反応の精製からのフェニル及びブチルセファロース画分のクマシー染色を示す。
【図18】DAC-GLP-1と組換えヒトアルブミンとの間の抱合反応の精製からのフェニル及びブチルセファロース画分のGLP-1免疫検出を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抱合体の製造のための方法であって、前記抱合体は、化合物に共有結合で連結されたアルブミンを含み、該方法は、第1の疎水性相互作用クロマトグラフィー、続いて第2の疎水性相互作用クロマトグラフィーによって抱合体を精製することを含む、前記方法。
【請求項2】
第1の疎水性相互作用クロマトグラフィーが、フェニルセファロースクロマトグラフィーである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第2の疎水性相互作用クロマトグラフィーが、ブチルセファロースクロマトグラフィーである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記ブチルセファロースクロマトグラフィーが:
a. ブチルセファロース樹脂を750mM硫酸アンモニウム中で平衡化すること;
b. ブチルセファロース樹脂を抱合体を含む溶液と接触させること;及び、
c. 750〜0mM硫酸アンモニウムに、減少する塩濃度勾配を適用して、単量体の抱合されたアルブミン種を非単量体アルブミン種から分離すること、
を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
第1の疎水性相互作用クロマトグラフィーが第2の疎水性相互作用クロマトグラフィーとは異なる、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
限外濾過によって抱合体を更に精製する工程を更に含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーから選択される方法によって抱合体を更に精製する工程を更に含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
反応基がアルブミンのシステイン34チオールに共有結合で結合して抱合体を形成することができる反応条件下で、抱合体が、溶液に含まれるアルブミンを化合物と接触させることによって溶液中で形成され、前記化合物が反応基を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記溶液がその中に組換えアルブミンを分泌する宿主生物の培養液を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記培養液がアルブミンを化合物と接触させる前に宿主生物から分離される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記溶液が組換えアルブミンを産生する宿主生物の可溶化液である、請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記溶液が疎水性相互作用クロマトグラフィーによって精製された組換えアルブミンを含む、請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記アルブミンがメルカプトアルブミンの濃縮されたアルブミンである、請求項8記載の方法。
【請求項14】
メルカプトアルブミンがアルブミンをチオグリコール酸と接触させることによって濃縮される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
メルカプトアルブミンがアルブミンをジチオスレイトールと接触させることによって濃縮される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記アルブミンが脱糖化されたアルブミンである、請求項8記載の方法。
【請求項17】
前記アルブミンがメルカプトアルブミンについて濃縮された脱糖化されたアルブミンである、請求項8記載の方法。
【請求項18】
前記アルブミンがアミノフェニルホウ酸アガロースアフィニティークロマトグラフィーによって脱糖化される、請求項16又は17記載の方法。
【請求項19】
前記アルブミンがコンカナバリンAセファロースアフィニティークロマトグラフィーによって脱糖化される、請求項16又は17記載の方法。
【請求項20】
前記反応条件が20℃〜25℃の反応温度を含む、請求項8〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記反応条件が少なくとも30分の反応時間を含む、請求項8〜20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記反応条件が0.1:1〜1:1の化合物対組換えアルブミンの最終モル比を含む、請求項8〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記反応条件が0.5:1〜0.9:1の化合物対アルブミンの最終モル比を含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記反応条件が0.7:1の化合物対アルブミンの最終モル比を含む、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記化合物がアミノ酸、ペプチド、タンパク質、有機分子、RNA又はDNAを含む、請求項1〜24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記化合物が30kDa未満である、請求項1〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記化合物がインスリン、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、ペプチドYY(PYY)、成長ホルモン放出因子(GRF)、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、エキセンディン-3又はエキセンディン-4である、請求項1〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
前記化合物がGLP-1である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記化合物がエキセンディン-3である、請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記化合物がエキセンディン-4である、請求項27記載の方法。
【請求項31】
前記化合物が反応基を含む、請求項1〜30のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
前記反応基がマイケルアクセプター、スクシンイミジル含有基、マレイミド含有基又は求電子性チオールアクセプターである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記反応基がマレイミド含有基である、請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記反応基がマレイミド-プロピオン酸(MPA)である、請求項31記載の方法。
【請求項35】
前記反応基がシステイン残基である、請求項31記載の方法。
【請求項36】
前記アルブミンが組換え血清アルブミンである、請求項8〜35のいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
前記アルブミンが組換えヒト血清アルブミンである、請求項8〜35のいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
前記アルブミンがペプチドに融合されている、請求項8記載の方法。
【請求項39】
前記ペプチドがグルカゴン様ペプチド1、エキセンディン3又はエキセンディン-4である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記抱合体が以下に従う、請求項1記載の方法:
【化1】

(式中、タンパク質は、アルブミンであり、かつXは、システイン34のSである)。
【請求項41】
前記抱合体が以下に従う、請求項1記載の方法:
【化2】

(式中、タンパク質は、アルブミンであり、かつXは、システイン34のSである)。
【請求項42】
前記アルブミンが宿主生物によって産生される、請求項8記載の方法。
【請求項43】
前記宿主が組換えアルブミンを発現するように形質転換された酵母株である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記酵母がサッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、アークスラ・アデニニボランス(Arxula adeninivorans)及びハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)を含む群から選択される、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記宿主が組換えアルブミンを発現するように形質転換された細菌である、請求項42記載の方法。
【請求項46】
前記細菌が大腸菌(Escherichia coli)である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記宿主が組換えアルブミンを発現するトランスジェニック植物である、請求項42のいずれか1項記載の方法。
【請求項48】
前記宿主が組換えアルブミンを発現するトランスジェニック動物である、請求項42記載の方法。
【請求項49】
前記組換えアルブミンがアルブミン又はその変異体若しくは誘導体をコードするベクターで形質転換された哺乳動物細胞によって産生される、請求項8記載の方法。
【請求項50】
抱合体の製造のための方法であって、該抱合体は、組換えアルブミンとアミノ酸、ペプチド、タンパク質、有機分子、RNA及びDNAからなる群から選択される30kDa未満を有する化合物とを含み、該化合物は、それに対して反応基を結合することによって修飾されており、かつ該抱合体は、修飾された化合物と組換えアルブミンとの反応によって形成され:
a. 組換えアルブミンが培養液に分泌されるように、培養液中で宿主生物を培養することによって組換えアルブミンを産生する工程;
b. 工程(a)と同時に、修飾された化合物を培養液に添加して、修飾された化合物を培養液に分泌される組換えアルブミンと反応させる工程;及び、
c. 工程(b)の反応から生じる抱合体を精製する工程、
を含む、前記方法。
【請求項51】
抱合体の製造のための方法であって、該抱合体は、組換えアルブミンとアミノ酸、ペプチド、タンパク質、有機分子、RNA及びDNAからなる群から選択される30kDa未満を有する化合物とを含み、該化合物は、それに対して反応基を結合することによって修飾されており、かつ該抱合体は、修飾された化合物と組換えアルブミンとの反応によって形成され:
a. 組換えアルブミンが培養液に分泌されるように、培養液中で宿主生物を培養することによって組換えアルブミンを産生する工程;
b. 組換えアルブミンを含む培養液を収集する工程;
c. 修飾された化合物を工程(b)にて得られる収集された培養液に添加して、修飾された化合物を組換えアルブミンと反応させる工程;及び、
d. 工程(b)の反応から生じる抱合体を精製する工程、
を含む、前記方法。
【請求項52】
抱合体の製造のための方法であって、該抱合体は、組換えアルブミンとアミノ酸、ペプチド、タンパク質、有機分子、RNA及びDNAからなる群から選択される30kDa未満を有する化合物とを含み、該化合物は、それに対して反応基を結合することによって修飾されており、かつ該抱合体は、修飾された化合物と組換えアルブミンとの反応によって形成され:
a. 組換えアルブミンが培養液に分泌されるように、培養液中で宿主生物を培養することによって組換えアルブミンを産生する工程;
b. 分泌された組換えアルブミンを精製する工程;
c.修飾された化合物を工程(b)にて精製した組換えアルブミンに添加して、修飾された化合物を組換えアルブミンと反応させる工程;及び、
d. 工程(c)の反応から生じる抱合体を精製する工程、
を含む、前記方法。
【請求項53】
前記工程(b)の精製された組換えアルブミンが、キャップされたアルブミン及びメルカプトアルブミンを含み、かつ前記方法が工程(c)の修飾された化合物との反応より前にメルカプトアルブミンの濃縮の工程を更に含む、請求項52記載の方法。
【請求項54】
宿主生物が酵母である、請求項50、51又は52記載の方法。
【請求項55】
抱合体の製造のための方法であって、該抱合体は、組換えアルブミンとアミノ酸、ペプチド、タンパク質、有機分子、RNA及びDNAからなる群から選択される30kDa未満を有する化合物とを含み、該化合物は、それに対して反応基を結合することによって修飾されており、かつ該抱合体は、修飾された化合物と組換えアルブミンとの反応によって形成され:
a. 組換えアルブミンが細胞内に貯蔵されるように、培養液中で宿主生物を培養することによって組換えアルブミンを産生する工程;
b. 宿主生物の細胞から物理的に組換えアルブミンを分離する工程;
c. 修飾された化合物を工程(b)で得られた組換えアルブミンに添加して、修飾された化合物を組換えアルブミンと反応させる工程:及び、
d. 工程(b)の反応から生じる抱合体を精製する工程、
を含む、前記方法。
【請求項56】
工程(b)で得られた組換えアルブミンの精製のさらなる工程(b-1)を、それを工程(c)の修飾された化合物と反応させる前に有する、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
精製工程(b-1)によって得られた組換えアルブミンが、キャップされたアルブミン及びメルカプトアルブミンを含み、かつ前記方法が、メルカプトアルブミンの濃縮の工程(b-2)を更に含み、かつ前記方法が工程(c)の修飾された化合物との反応より前に、メルカプトアルブミンの濃縮の工程(b-2)を更に含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
宿主生物が細菌である、請求項55、56又は57に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2009−520469(P2009−520469A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546063(P2008−546063)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/CA2006/002124
【国際公開番号】WO2007/071068
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(508186819)コンジュクヘム ビオテクフノロギエス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】