説明

アルブミン結合蛋白質を標的として用いる治療法

本発明は、ヒトから単離した試料中のSPARC蛋白質の検出及び定量を含む、哺乳動物腫瘍の化学療法薬に対する応答を判定する方法を提供する。本発明はまた、SPARCを発現するヒト腫瘍に化学療法薬を送達する方法を提供し、該方法はSPARC蛋白質と結合する化合物に連結した化学療法薬を含有する医薬組成物の投与を含む。本発明はさらに、SPRAC蛋白質と結合可能な化合物に連結した化学療法薬、及び薬学的に許容される担体を含有する組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌、並びに組織及び臓器における異常増殖、過形成、再構成、炎症活性を含む他の疾患を治療する方法に関する。本発明はさらに、アルブミン結合蛋白質を認識する好適なリガンドを用いて、哺乳動物腫瘍の化学療法薬に対する応答を標的化し、画像化し、及び判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルブミンナノ粒子製剤は、難溶性治療薬の毒性を低減することが示された。例えば、U.S. Patent 6,537,579は、毒性な乳化剤を含有しない、アルブミンナノ粒子パクリタキセル製剤を開示する。
【0003】
Bristol Myers Squibbより商標Taxol(登録商標)で販売されている抗癌剤パクリタキセルは、現在、卵巣癌、肺癌及び乳癌を含むいくつかの癌の治療に承認されている。パクリタキセルの使用を主に制限するのは、その難溶性である。よって、Taxol(登録商標)製剤はCremophor(登録商標) ELを可溶化ビヒクルとして含有するが、この製剤中のCremophor(登録商標)の存在が、動物(Lorenz et al., Agents Actions 7, 63-67, 1987)及びヒト(Weiss et al., J. Clin. Oncol. 8, 1263-1268, 1990)における重度の過敏症反応と関連している。従って、Cremophor(登録商標)の存在に起因して生じる過敏症及びアナフィラキシーを減少するために、Taxol(登録商標)を投与される患者は、コルチコステロイド(デキサメタゾン)及び抗ヒスタミン剤での前投薬を必要とする。
【0004】
対照的に、ABI-007としても公知のAbraxane(登録商標)は、Abraxis Oncologyより販売される、Cremophor(登録商標)を含有しないパクリタキセルのアルブミンナノ粒子製剤である。アルブミンナノ粒子のビヒクルとしての使用が、生理食塩水での再構成の際にコロイド形成を引き起こす。臨床試験に基づき、Abraxane(登録商標)の使用は、Taxol(登録商標)と比較して低減された過敏症反応により特徴付けられることが示された。従って、前投薬はAbraxane(登録商標)を投与される患者には必要とされない。
【0005】
アルブミンナノ粒子製剤の他の利点は、毒性の乳化剤を除外することにより、現在Taxol(登録商標)で可能であるよりも、より高用量のパクリタキセルを、より頻繁な間隔で投与し得るということである。(i)耐容量の増加(300mg/m2)、(ii)半減期の延長、(iii)局所腫瘍への利用能の延長、及び/又は(iv)in vivoでの放出の持続の結果として、固形腫瘍において効力の増加が見られ得る見込みがある。Abraxane(登録商標)は、薬物の化学治療効果を保持又は向上しながら、過敏症反応を低減する。
【0006】
コロイド性ナノ粒子、又は粒径200nm未満の粒子は、漏れやすい脈管構造に起因して、腫瘍部位に集中する傾向にあることが知られている。この効果は、いくつかのリポソーム製剤について記載されている(Papahadjopoulos, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88, 11460, 1991)、(Gabizon, A., Cancer Res., 52, 891, 1992)、(Dvorak, et al., Am. J. Pathol. 133, 95, 1988)、(Dunn, et al., Pharm, Res., 11, 1016-1022, 1994)及び(Gref, et al., Science 263, 1600-1603, 1994)。腫瘍部位に局在化したパクリタキセルのナノ粒子は、腫瘍部位での薬物の徐放をもたらし、その可溶化(Cremophor(登録商標)含有)型での薬物の投与に比較してより優れた効力を引き起こす。
【0007】
そのようなナノ粒子製剤は、少なくとも約50%の活性剤をナノ粒子型で含有する。さらに、そのようなナノ粒子製剤は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%の活性剤を、ナノ粒子型で含有する。さらに、そのようなナノ粒子製剤は、少なくとも約95%又は少なくとも約98%の活性剤をナノ粒子型で含有する。
【0008】
オステオネクチンとしても公知のSecreted Protein, Acidic, Rich in Cysteines (SPARC)は、281アミノ酸の糖蛋白質である。SPARCは、カチオン(例えば、Ca2+、Cu2+、Fe2+)、増殖因子(例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)及び血管内皮増殖因子(VEGF))、細胞外基質(ECM)蛋白質(例えば、I〜V型コラーゲン及びIX型コラーゲン、ビトロネクチン並びにトロンボスポンジン-1)、内皮細胞、血小板、アルブミン及びヒドロキシアパタイトを含む多種多様のリガンドに対して親和性を持つ。SPARCの発現は発生的に調節されており、正常な発達の間に、又は損傷への応答において再構築を受けている組織中で主に発現される(例えば、Lane et al., FASEB J., 8, 163-173 (1994)を参照)。高レベルのSPARC蛋白質が、発達中の骨及び歯で発現される。
【0009】
SPARCはいくつかの侵襲性の強い癌において上方制御されるマトリクス細胞蛋白質であるが、正常組織中には存在しない(Porter et al., J. Histochem. Cytochem., 43, 791 (1995))。実際、SPARC発現は様々な腫瘍(例えば、膀胱、肝臓、卵巣、腎臓、腸及び乳房)中で誘発される。例えば膀胱癌において、SPARC発現は進行癌に関連する。T2期又はそれ以上の浸潤性膀胱癌は、T1期の膀胱癌(又はそれ以下の表在性腫瘍)よりも高レベルのSPARCを発現し、より予後が悪いことが示された(例えば、Yamanaka et al., J. Urology, 166, 2495-2499 (2001)を参照)。髄膜腫において、SPARC発現は浸潤性腫瘍のみと関連する(例えば、Rempel et al., Clincal Cancer Res., 5, 237-241 (1999)を参照)。SPARC発現はまた、生体位での浸潤性乳癌病巣の74.5%(例えば、Bellahcene, et al., Am. J. Pathol., 146, 95-100 (1995)を参照)及び浸潤性乳管癌の54.2%(例えば、Kim et al., J. Korean Med. Sci., 13, 652-657 (1998)を参照)で検出されている。SPARC発現はまた、乳癌によくみられる微小石灰化にも関連し(例えば、上記のBellahcene et al.を参照)、乳房転移が骨に親和性が高いことの原因がSPARC発現にあり得ることを示唆している。SPARCはまた、アルブミンと結合することが知られている(例えば、Schnitzer, J. Biol. Chem., 269, 6072 (1994)を参照)。
【0010】
抗体療法は、特異的な蛋白質マーカーが同定できる疾病を制御する効果的な方法である。例として、Avastin(抗VEGF抗体)、Rituxan(抗CD20抗体)及びRemicade(抗TNF抗体)が挙げられる。そのようなSPARCに対する抗体は、SPARC蛋白質を発現する他の増殖性、過形成性、再構築及び炎症性障害と同様に、ヒト及び他の哺乳動物腫瘍を治療する重要な治療薬を意味する。さらに、造影剤と接合されたSPARCに対する抗体は、そのような障害を検出及び診断する方法となろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
他の増殖性、過形成性、再構築及び炎症性障害と同様に、ヒト及び他の哺乳動物腫瘍を治療する方法が依然として必要である。さらに、化学療法薬の有効性を評価するために、ヒト又は他の哺乳動物腫瘍の応答を判定することが依然として必要である。加えて、そのような障害を検出及び診断するために、好適な方法が必要とされる。本発明の、これらの及び他の利点、並びにさらなる発明的特徴は、本明細書記載の本発明の説明から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、哺乳動物腫瘍の化学療法薬に対する応答を判定する方法を提供し、該方法は(a)哺乳動物から生体試料を単離する工程、(b)生体試料中のSPARC蛋白質の発現を検出する工程、及び(c)生体試料中のSPARC蛋白質の量を定量化する工程を含む。本発明はさらに、アルブミン結合蛋白質を治療剤として用いる方法、SPARC及びSPARCに対する抗体又はSPARC結合蛋白質を治療剤として用いる方法、化学療法薬を哺乳動物の疾患部位に送達する方法を提供し、該方法は治療上有効な量の医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含み、該医薬組成物は、アルブミン結合蛋白質と結合可能な化合物に連結した化学療法薬、及び薬学的に許容される担体を含有する。加えて本発明は、SPARC蛋白質と結合可能な化合物に連結した化学療法薬、及び薬学的に許容される担体を含有する組成物を提供する。さらに本発明は、SPARC認識基及び治療薬を含有する送達剤を提供し、該治療薬はSPARC認識基に連結している。さらに本発明は、化学療法薬を哺乳動物の腫瘍に送達する方法を提供し、該方法は治療上有効な量の医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含み、該医薬組成物は、アルブミンと結合可能なSPARC蛋白質に連結した化学療法薬、及び薬学的に許容される担体を含む。本発明の組成物は、低分子、高分子又は蛋白質であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
アルブミン結合蛋白質を含有する組成物において、局在化のさらなる機構が存在することが今回発見された。SPARC、キュビリン及びTGFβのようなアルブミン結合蛋白質は、アルブミン結合蛋白質の過剰発現により特徴付けられる疾患部位に対して治療薬を標的化するために用いられ得る。
【0014】
本発明は、薬物に連結した基の使用を提供し、該基はSPARC、キュビリン又はTGFβのようなアルブミン結合蛋白質と結合可能であり、該薬物は、アルブミン結合蛋白質が主要な役割を果たすとともに正常組織に比べて過剰発現される疾患の治療薬、造影剤又は送達剤である。アルブミン結合蛋白質は、SPARC、キュビリン又はTGFβから選択されることが好ましい。もっとも好ましくは、アルブミン結合蛋白質はSPARCであり、アルブミン結合蛋白質と結合する基はSPARC認識基である。好適なSPARC認識基としては、これらに限定されないが、リガンド、低分子、抗体が挙げられる。
【0015】
本発明はまた、ヒト又は他の哺乳動物腫瘍の化学療法薬に対する応答を判定する方法を提供する。該方法は、(a)ヒトから生体試料を単離する工程、(b)生体試料中のSPARC蛋白質の発現を検出する工程、及び(c)生体試料中のSPARC蛋白質の量を定量化する工程を含む。腫瘍により発現されたSPARCの量が決定されれば、例えばSPARC発現と投与された治療薬の用量とを相関させることにより、化学療法薬の有効性が確認され得る。本発明はまた、SPARCが主要な役割を果たすとともに正常組織と比較して過剰発現される疾患への治療薬又は造影剤としての、SPARCに対する抗体の使用を提供する。
【0016】
以下簡単にするために、SPARCを含む全てのアルブミン結合蛋白質を、SPARCと称する。SPARC蛋白質は、ある種のヒト腫瘍でのアルブミンの集積を担っている。アルブミンは化学療法薬の主要な担体であるので、SPARCの発現レベルは、浸透して腫瘍により保持される化学療法薬の量を示すものとなる。従って、SPARCの発現レベルは、腫瘍の化学療法への応答性の予測となる。
【0017】
任意の好適な生体試料が、本発明の方法において目的の哺乳動物から単離され得る。生体試料は、腫瘍生検などによって、腫瘍から単離されることが好ましい。あるいは生体試料は、例えば脳脊髄液、血液、血漿、血清又は尿を含む、哺乳動物の体液から単離され得る。生体試料の単離技術及び方法は当業者に公知である。
【0018】
該活性物質の輸送又は結合がアルブミンを必要とする限り、どんな好適な薬学的活性物質も本発明の方法に用いられ得る(例えば、SPARC認識基に連結した化学療法薬)。好適な活性物質としては、これらに限定されないが、チロシンキナーゼ阻害剤(ゲニステイン)、生体活性物質(TNF又はtTF)、放射性核種(例えば、131I、90Y、111In、211At、32P及び他の公知の治療用放射性核種)、アドリアマイシン、アンサマイシン抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトセシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポチロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン、メトトレキサート、ラパマイシン(シロリムス)及び誘導体、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソ尿素、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキサン、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、トランスプラチナ(transplatinum)、血管標的化剤、抗血管内皮細胞増殖因子化合物(「抗VEGF」)、抗上皮増殖因子受容体化合物(「抗EGFR」)、5-フルオロウラシル、並びにそれらの誘導体が挙げられる。
【0019】
加えて、薬学的活性物質は、リシンAのような毒素、放射性核種、抗体自体のFcフラグメント、単鎖抗体、Fabフラグメント、diabody等であり得る。選択された薬学的活性物質自体は、SPARCを認識して結合し得るか、あるいは、例えば蛋白質もしくは非蛋白質、抗体、抗体自体のFcフラグメント、単鎖抗体、Fabフラグメント、diabody、ペプチド又は他の非蛋白質低分子を含む、SPARCを認識するSPARC認識基に適切に連結している。
【0020】
本発明の方法に従い、1以上の化学療法薬が1以上の用量で投与され得る。本発明の方法で用いられる化学療法薬の型と数とは、特定の腫瘍型に対する標準的化学療法投薬計画に依存する。換言すると、単一の化学療法薬で通常治療される癌もあれば、化学療法薬の組み合わせにより通常治療される癌もある。好適な治療薬、化学療法薬、放射性核種等の、抗体又はそのフラグメントへの連結又は接合方法は、当該分野で十分記載されている。
【0021】
本発明が有用である疾患としては、軟組織、結合組織、骨、固形臓器、血管等を含めた任意の肉体組織中での、増殖の異常状態、組織再構築、過形成、過度の創傷治癒が挙げられる。本発明の組成物により治療可能な又は診断される疾患の例としては、癌、糖尿病性又は他の網膜症、炎症、関節炎、血管又は人工的血管移植片又は血管内装置における再狭窄等が挙げられる。
【0022】
本発明に従い検出及び治療される腫瘍型は、一般的にヒト及び他の哺乳動物中に見出されるものである。該腫瘍は、実験動物などでのように、接種からも生じ得る。ヒト及び他の動物の状態において直面する腫瘍には多くの型と種類とがあり、かつ、本発明の方法の適用をいかなる特定の腫瘍型又は種類にも限定する意図はない。公知のように、腫瘍は無制御かつ進行的な細胞分裂から生じる組織の異常な塊を含み、典型的に「新生物」としても知られている。本発明の方法は、腫瘍細胞及び関連間質細胞、固形腫瘍、並びに、例えばヒトの軟組織肉腫のような軟組織に関連した腫瘍に有用である。腫瘍又は癌は、口腔及び咽頭、消化器系、呼吸器系、骨及び関節(例えば骨転移)、軟組織、皮膚(例えばメラノーマ)、乳房、生殖系、泌尿器系、眼及び眼窩、脳及び中枢神経系(例えばグリオーマ)又は内分泌系(例えば甲状腺)中に位置し得、必ずしも原発腫瘍又は癌に限定されない。口腔に関連した組織としては、これらに限定されないが、舌及び口の組織が挙げられる。癌は、例えば食道、胃、小腸、結腸、直腸、肛門、肝臓、胆嚢及び膵臓を含む、消化器系の組織中で発生し得る。呼吸器系の癌は、喉頭、肺及び気管支を侵し得、例えば非小細胞肺癌が挙げられる。腫瘍は、男性及び女性の生殖器系を構成する、子宮頸部、子宮体部、卵巣外陰、膣、前立腺、精巣及び陰茎で、並びに、泌尿器系を構成する膀胱、腎臓、腎盂及び尿管で、発生し得る。腫瘍又は癌は、頭部及び/又は頸部に位置し得る(例えば、喉頭癌及び副甲状腺癌)。腫瘍又は癌はまた、造血系又はリンパ組織系に位置し得、例えばリンパ腫(例として、ホジキン病及び非ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫又は白血病(例として、急性リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病等)が挙げられる。腫瘍は、膀胱、肝臓、卵巣、腎臓、腸、脳又は乳房に位置することが好ましい。
【0023】
SPARC蛋白質は種々のリガンドに対して親和性を持つ。従って、治療薬を疾患部位に送達する本発明の方法は、アルブミンを含む、SPARCに対して親和性を持つ化合物又はリガンドが、治療薬を、正常組織への送達をほとんど又は全く伴うことなく、疾患部位に送達するために用いられ得る、という発見に基づいている。
【0024】
本発明はまた、内皮障壁を通して血管から腫瘍間質へと治療組成物を輸送する方法を提供する。抗体療法及び化学療法における主な障害は、内皮障壁を通した腫瘍間質への転位である。アルブミンは、内皮障壁を通過するために、アルブミン受容体輸送機構を利用する。この輸送機構は、文献により報告されたもの(gp60及びalbondin)又は他の未知の機構と同じであり得る。アルブミンに抱合されて運ばれる治療薬は、腫瘍内取り込みを促進することが以前に報告された(Desai, N. et al. Increased endothelial transcytosis of nanoparticle albumin-bound paclitaxel (ABI-007) by endothelial gp60 receptors: a pathway inhibited by Taxol(登録商標), 27th Annual San Antonio Breast Cancer Symposium (SABCS) (2004), abstract #1071)。さらに、内皮障壁を通した転位の促進は、生理学的なアルブミン輸送機構を用いて達成され得る(Schnitzer, J. E.; Oh, P. J. Biol. Chem. 269, 6072-6082 (1994))。
【0025】
低分子では、アルブミンに対する薬物親和性を向上するような修飾がなされ得る。低分子製剤では、薬物のアルブミンへの結合を妨げる溶媒が除去され得る。あるいは低分子は、アルブミン、アルブミンに対する抗体、そのフラグメント又は下記記載のアルブミン受容体に対するリガンドと結合し得る。
【0026】
蛋白質、抗体及びそのフラグメントのような生体分子では、生物製剤を、該生物製剤がアルブミンに対する親和性を示すようにアルブミン結合ペプチドで操作することが可能である。該ペプチドは、アルブミン結合配列、アルブミンに対する抗体もしくは抗体フラグメント、アルブミン担体(gp60/albondin/スカベンジャー受容体/又はTGF-β受容体のような)に対する抗体もしくは抗体フラグメント、又は、カベオラ中に見出される任意の蛋白質、アルブミンの輸送体に対する抗体、のいずれかであり得る。本発明はまた、SPARCに対する1つの結合価、及びgp60/albondin/スカベンジャー受容体/又はTGF-β受容体のような経内皮輸送のエフェクターに対するもう1つの結合価をもつキメラとして作成された、あるいは、内皮細胞のカベオラ中に見出される任意の蛋白質に対する、抗体もしくはその好適なフラグメントをも意図する。
【0027】
本発明はまた、SPARC抗体による補体結合及び/又は細胞性免疫反応の動員を介した、腫瘍及び再狭窄組織のようなSPARC発現組織の破壊方法を提供する。この場合、抗CD20抗体であるRituxanのもののように、エフェクター部分は、SPARC発現細胞の直接的破壊を伴う補体活性化、又は細胞性免疫反応を介した組織破壊を生じるSPARC発現組織への免疫細胞の動員のいずれかを媒介し得るFcフラグメントである。
【0028】
本発明はまた、SPARCに対する中和抗体を用いたSPARC活性の阻害方法を提供する。中和抗体は、in vivoでのSPARCとそのエフェクターとの相互作用を妨げる能力を持つ。例えば中和抗体は、SPARCと細胞表面成分との相互作用、又はアルブミン、増殖因子及びCa2+のようなその天然リガンドとのSPARCの結合を阻害し得る。
【0029】
本発明はまた、ヒト又は他の哺乳動物腫瘍の抗SPARC治療に対する応答を判定する方法を提供する。該方法は、(a)ヒトから生体試料を単離する工程、(b)生体試料中のSPARC蛋白質の発現を検出する工程、及び(c)生体試料中のSPARC蛋白質の量を定量化する工程を含む。抗SPARC治療は、SPARC抗体の疾患組織中のSPARCとの結合に依存するので、疾患組織中のSPARCの存在が活性に必須である。
【0030】
本発明はさらに、上記の抗体又はそのフラグメントのようなSPARC認識基に接合した、1以上の診断薬を用いる方法を提供する。診断薬としては、ラジオアイソトープ又は放射性核種、MRI造影剤、X線造影剤、超音波造影剤及びPET造影剤が挙げられる。接合に用いられる方法は、当該分野で公知である。
【0031】
試料中のSPARC蛋白質の発現は、当該分野で公知のあらゆる好適な方法により検出及び定量化され得る。蛋白質の検出及び定量化の好適な方法としては、ウエスタンブロット法、酵素免疫測定法(ELISA)、銀染色法、BCAアッセイ(Smith et al., Anal. Biochem., 150, 76-85 (1985))、蛋白質-銅複合体に基づく比色分析法であるローリー蛋白質アッセイ(例えばLowry et al., J. Biol. Chem., 193, 265-275 (1951)に記載)及び蛋白質結合の際のクマシーブルー G-250の吸光度変化に基づくブラッドフォードタンパク質分析(例えばBradford et al., Anal. Biochem., 72, 248 (1976)に記載)が挙げられる。腫瘍生検は、任意の先行法により分析され得るか、又は、適切な可視化システム(すなわち、HRP基質及びHRP接合二次抗体)と併せて抗SPARC抗体(モノクローナルもしくはポリクローナルのいずれか)を用いる免疫組織化学により分析され得る。
【0032】
抗体がSPARCへの特異的な結合を示す限り、SPARCに対するいかなる好適な抗体も本発明の方法に用いられ得る。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルのどちらかであり得、かつ、動物の免疫化を通して産生されるか、又は、ファージディスプレイ、並びに抗体重鎖及び軽鎖遺伝子の様々な領域のin vitroでの変異誘発もしくは合成のような組み替えDNA技術を通して産生されるかのいずれかであり得る。ポリクローナル抗体としてはこれらに限定されないが、ヒト抗体、及びトリ(例えばニワトリ)、齧歯動物(例えばラット、マウス、ハムスター、モルモット)、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ等のような動物由来のヒト化抗体が挙げられる。モノクローナル抗体としては、抗体産生細胞(ヒト細胞が含まれるが、これに限定されない)の単一クローン由来の抗体、及び、例えばニワトリ、ウサギ、ラット、マウス、ハムスター、モルモット、ウシ、ヤギ、ヒツジ等のような他の動物型の細胞由来の抗体が挙げられる。合成抗体としては、重鎖及び軽鎖遺伝子の様々な領域の遺伝子操作を通した組み換えDNA技術を用いて産生された抗体が挙げられる。合成抗体はまた、化学的に合成された、SPARC結合活性を持つ抗体フラグメント、又はファージディスプレイもしくは同様な技術から産生された抗体が挙げられる。
【0033】
ヒトでの使用では、免疫原性及び免疫反応を避けるため、ヒト化抗SPARC抗体、又はFab'、FabもしくはFab2のような好適なフラグメントを用いることが好ましい。ヒト化抗体又はそのフラグメントは、例えば以下の従来の方法の1つを用いて作製され得る:
1)ヒト化抗体は、ヒトIgG骨格を用い、可変なCDR領域をSPARCに対する抗体のCDR領域で置換して構築され得る。ここで、重鎖及び軽鎖は別々のプロモーターのもとで独立して発現されるか、又はIRES配列を持つ1つのプロモーターのもとで同時発現される; 2)ヒト化モノクローナル抗体は、ヒト免疫システムを持つように操作されたマウスを用いて、SPARCに対して作製され得る; 3)SPARCに対するヒト化抗体は、ファージミド(M13、ラムダ大腸菌ファージ又は表面提示可能な任意のファージシステム)を用いて作製され得る。完全長抗体を構築するために、可変領域が重鎖及び軽鎖両方のCDR上に移行され得る。CHO、293又はヒト骨髄細胞のような哺乳動物細胞中での重鎖及び軽鎖の同時発現が、完全長抗体をもたらす。同様に、Fab'、Fab又はFab2フラグメント、及び単鎖抗体が、よく確立された方法を用いて作製され得る。
【0034】
SPARCに対する抗体はまた、抗体全体又はSPARCへの結合部位を保持する抗体のフラグメント(例えばFab及びFab2)に限定されない。抗体はまた、例えばIgM、IgA、IgG、IgE、IgD及びIgYのような、どんな抗体クラスにも限定されない。抗体はまた、二価抗体、一価、又はSPARCに対する1つの結合価及びtTFもしくはリシンAのようなエフェクターに対するもう1つの結合価を持つキメラに限定されない。ヒト化抗体は、IgGに限定されない。それぞれが、特定の疾患標的に適した異なる抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性及び補体依存性細胞傷害(CDC)活性を持つ、IgE、IgA、IgD、IgMのような全ての他クラスの抗体を作製するために、同じ技術が用いられ得る。抗体の機能性フラグメントは、限定された蛋白質分解により作製され得る。これらのフラグメントは、Fab'のような一価、又はFab2のような二価であり得る。フラグメントはまた、大腸菌中で単鎖scfv又はdiabodyとして合成され得る。
【0035】
本発明はさらに、直接的にその薬理効果を発揮し得る薬学的活性物質、又はSPARCもしくは他のアルブミン結合部位と結合可能な化合物に連結した薬学的活性物質、及び薬学的に許容される担体を含有する組成物を提供する。SPARC認識基に連結した薬学的活性物質を含有する医薬組成物であり得る送達剤は、治療上有効な量の薬学的活性物質が哺乳動物に送達されるような量で、ヒトのような哺乳動物に投与される。
【0036】
本発明はまた、化学療法薬を哺乳動物の腫瘍に送達する方法を提供する。該方法は治療上有効な量の医薬組成物をヒト又は他の哺乳動物に投与する工程を含み、該医薬組成物はSPARC蛋白質と結合可能な化合物又はリガンドに連結した化学療法薬、及び薬学的に許容される担体を含有する。本発明の他の実施形態に関して本明細書中に記載の化学療法薬、腫瘍、哺乳動物及びそれらの構成要素についての説明は、化学療法薬を腫瘍に送達する上記の方法の同じ局面にも適用できる。
【0037】
医薬組成物は、50%より多い治療薬をナノ粒子型では含有しないことが好ましい。より好ましくは、医薬組成物は10%より多い治療薬をナノ粒子型では含有しない。さらに好ましくは、医薬組成物は5%より多い、又は4%より多い、又は3%より多い治療薬をナノ粒子型では含有しない。より好ましい実施形態において、医薬組成物は2%より多い又は1%より多い治療薬をナノ粒子型では含有しない。最も好ましくは、医薬組成物は治療薬をナノ粒子型では全く含有しない。
【0038】
本発明はまた、化学療法薬をヒト又は他の哺乳動物の腫瘍に送達する方法を提供する。該方法は治療上有効な量の医薬組成物のような送達剤を、ヒト又は他の哺乳動物に投与する工程を含み、該送達剤(例えば医薬組成物)はSPARC認識基に連結した化学療法薬を含有する。例えば化学療法薬は、SPARC蛋白質を認識する抗体のようなSPARC認識基又はSPARC抗体のみに連結し得る。医薬組成物は、好ましくは、SPARC認識基に連結した化学療法薬及び薬学的に許容される担体を含有する。本発明の他の実施形態に関して本明細書中に記載の化学療法薬、腫瘍、哺乳動物及びそれらの構成要素についての説明は、化学療法薬を腫瘍に送達する上記の方法の同じ局面にも適用できる。
【0039】
他の実施形態において本発明は、SPARC又は別のアルブミン結合蛋白質もしくはマーカーを発現するヒト又は他の動物中の、そのような蛋白質もしくはマーカーの過剰発現により特徴付けられる疾患部位に、SPARC認識基を介して薬学的活性物質を送達する方法を提供する。そのような疾患としては、肉体組織(例えば、軟組織、結合組織、骨、固形臓器、血管等)中の、増殖の異常状態、組織再構築、過形成及び過度の創傷治癒が挙げられる。SPARC蛋白質もしくは他のアルブミン結合蛋白質と結合可能な化合物もしくはリガンドに連結した治療薬を含有する医薬組成物の投与により、治療可能な又は診断され得る疾患の例としては、癌、糖尿病性もしくは他の網膜症、炎症、関節炎、血管、人工血管移植片もしくは血管内装置における再狭窄等が挙げられる。本発明の他の実施形態に関して本明細書中に記載の薬学的活性物質、腫瘍、哺乳動物及びそれらの構成要素についての説明は、薬学的活性物質を送達する上記の方法の同じ局面にも適用できる。
【0040】
さらに他の実施形態において、本発明は、薬学的活性物質(例えば、SPARC抗体単独、又はSPARC抗体、放射性標識SPARC抗体等のようなSPARC認識基に接合した化学療法薬)を、そのような蛋白質もしくはマーカーを発現するヒト又は他の動物中の、SPARCの過剰発現により特徴付けられる疾患部位に送達する方法を提供する。そのような疾患としては、肉体組織(例えば、軟組織、結合組織、骨、固形臓器、血管等)中の、増殖の異常状態、組織再構成、過形成及び過度の創傷治癒が挙げられる。抗SPARC治療薬を含有する医薬組成物の投与により治療可能な又は診断される疾患の例としては、癌、糖尿病性もしくは他の網膜症、炎症、関節炎、血管、人工血管移植片もしくは血管内装置における再狭窄等が挙げられる。本発明の他の実施形態に関して本明細書中に記載の薬学的活性物質、腫瘍、哺乳動物及びそれらの構成要素についての説明は、薬学的活性物質を送達する上記の方法の同じ局面にも適用できる。
【0041】
他の実施形態において、本発明の方法は、SPARC蛋白質と結合可能な化合物又はリガンドに連結した化学療法薬を含有する医薬組成物の、治療上有効な量を哺乳動物に投与する工程を含む。化学療法薬は、任意の好適な方法を用いて、SPARC蛋白質と結合可能な化合物又はリガンドに連結し得る。化学療法薬は、例えばジスルフィド結合を含む共有結合を介して化合物に化学的に連結するのが好ましい。
【0042】
本発明はまた、SPARC認識基に連結した化学療法薬又は放射性元素を含有する医薬組成物の、治療上有効な量を哺乳動物に投与する工程を含む方法を提供する。化学療法薬又は放射性薬剤は、任意の好適な方法を用いてSPARCを認識する抗体に連結し得る。化学療法薬は、例えばジスルフィド結合を含む共有結合を介して化合物に化学的に連結し得ることが好ましい。
【0043】
本発明の方法に有用な化合物又はリガンドは、SPARC蛋白質と結合可能であることが好ましい。本発明の好ましい実施形態において、化合物はSPARC蛋白質と結合するリガンドである。好適なリガンドの例としては、カルシウムカチオン(Ca2+)、銅カチオン(Cu2+)、鉄カチオン(Fe2+)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、コラーゲン(例えば、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン及びIX型コラーゲン)、ビトロネクチン、トロンボスポンジン-1、内皮細胞、血小板、アルブミン並びにヒドロキシアパタイトカチオンが挙げられる。本発明の他の好ましい実施形態において、化合物は低分子である。「低分子」という用語は、約600未満の分子量を持つ任意の分子をいう。好適な低分子の例としては、蛋白質、核酸、炭水化物、脂質、補酵素(例えばビタミン)、抗原、ホルモン及び神経伝達物質が挙げられる。好ましくは、低分子は化学物質(例えば、有機もしくは無機化合物)、ペプチドもしくはペプチド模倣薬、蛋白質又は炭水化物である。本発明のさらなる他の好ましい実施形態において、化合物はSPARC蛋白質に対する抗体である。SPARC蛋白質と結合するいかなる好適な抗体又はそのフラグメントも、本発明の方法に用いられ得る。
【0044】
ほとんど全ての癌型で、腫瘍組織でのSPARC発現が示されている。腫瘍組織でのSPARCの生成は、腫瘍でのSPARC発現、又は間質細胞により誘導されるかのいずれかであり得るという証拠が存在する。腫瘍のSPARC表現型は、外来性SPARCの投与によりSPARC陰性からSPARC陽性へと変換され得る。従って、SPARC陽性腫瘍はその後、化学療法薬に対して敏感になる。あるいは、SPARCは放射性標識され得るか、又は直接的もしくは間接的な腫瘍殺傷能をもたらす様々な毒素と接合され得る。
【0045】
SPARCは公知の技術を用いて、合成及び精製され得る。外来性SPARCを発現する細胞は、強力なプロモーター/翻訳開始の制御下に、SPARC構造遺伝子/cDNAを配置し、哺乳動物細胞中でのSPARCの発現を駆動するようにこれらの細胞中にベクターを導入することにより生成され得る。あるいはSPARCは、バキュロウイルス、又はアデノウイルスのような他のウイルスを用いて発現され得る。これらの細胞により発現されたSPARCは、イオン交換、サイズ排除又はC18クロマトグラフィーのような従来の精製方法により精製され得る。精製されたSPARCは、防腐剤を含む生理食塩水中に処方され得、静脈内、エアロゾル、皮下注射又は他の方法により投与され得る。
【0046】
本発明はまた、化学療法薬を哺乳動物の腫瘍に送達する方法を提供する。該方法は治療上有効な量の医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含み、該医薬組成物は、アルブミンと結合可能なSPARC蛋白質に連結した化学療法薬、及び薬学的に許容された担体を含有する。本発明の他の実施形態に関して本明細書中に記載の化学療法薬、腫瘍、哺乳動物及びそれらの構成要素についての説明は、化学療法薬を腫瘍に送達する上記の方法の同じ局面にも適用できる。
【0047】
in vivoでの使用において、SPARC蛋白質と結合可能な化合物又はリガンドに連結した化学療法薬は、生理的に許容される担体を含有する医薬組成物中に処方されることが望ましい。任意の好適な生理的に許容される担体が本発明において用いられ得、そのような担体は当該分野で周知である。
【0048】
in vivoでの使用において、抗SPARC治療薬は生理的に許容される担体を含有する医薬組成物中に処方されることが望ましい。任意の好適な生理的に許容される担体が本発明において用いられ得、そのような担体は当該分野で周知である。
【0049】
担体は典型的に液体であるが、固体でも、液体及び固体成分の組み合わせであってもよい。担体は、生理的に許容される(例えば、薬学的又は薬理的に許容される)担体(例えば、賦形剤又は希釈剤)であることが望ましい。生理的に許容される担体は周知であり、容易に利用可能である。担体の選択は、標的組織及び/又は細胞の位置、並びに組成物を投与するために用いられる特定の方法により、少なくともある程度は決められる。
【0050】
典型的に、このような組成物は、溶液又は懸濁液のいずれかとしての注射剤として調合され得る。注射に先立ち液体を加え、溶液又は懸濁液を調製するために使用するのに適した固形も調合され得る。製剤は乳化もされ得る。注射剤での使用に適した医薬製剤としては、滅菌水溶液又は水分散液、公知の蛋白質安定剤及び凍結保護剤を含有する製剤、ゴマ油、落花生油、もしくは水性プロピレングリコールを含有する製剤、及び滅菌注射剤又は分散液の即時調製用の無菌粉剤が挙げられる。全ての場合において、製剤は無菌でなければならず、かつ容易に注射針を通過する程度に流動的でなければならない。それは製造及び保存の条件下で安定でなければならず、かつバクテリア及び真菌類のような微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシセルロースのような界面活性物質と適切に混合された水で調合され得る。分散液もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれらの混合液で、並びに油で調合され得る。保存及び使用の通常条件下で、これらの製剤は微生物の増殖を妨げる防腐剤を含有する。
【0051】
SPARC蛋白質と結合する化合物又はリガンドに連結した化学療法薬(例えば抗SPARC治療薬)が、中性型又は塩型で組成物に処方され得る。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(蛋白質の遊離アミノ基で形成された)が挙げられ、例えば塩酸もしくはリン酸のような無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等のような有機酸で形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム又は第二鉄の水酸化物のような無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等のような有機塩基から誘導され得る。
【0052】
とりわけ該組成物及び/又はその最終使用の安定性を高めるために、組成物はさらに任意の他の好適な成分をも含有し得る。従って本発明の組成物には、多岐にわたる好適な剤型が存在する。下記の剤型及び方法は単なる例であって、限定するものではない。
【0053】
吸入による投与に好適な剤型としては、エアロゾル製剤が挙げられる。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等のような、加圧された許容可能な噴射剤中に置かれ得る。それらはまた、噴霧器又はアトマイザーからの送達のために、非加圧製剤としても処方され得る。
【0054】
非経口的投与に好適な剤型としては、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を対象服用者の血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の等張性無菌注射液、並びに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び防腐剤を含有し得る水性及び非水性の無菌懸濁液が挙げられる。製剤は、アンプル及びバイアルのような単位用量又は多用量の密閉容器に入れられ、フリーズドライ(凍結乾燥)条件で保存され得、使用直前に、例えば水のような無菌液体賦形剤を注射用に添加することのみを要する。即席の注射液及び懸濁液は、前述の種類の無菌粉剤、顆粒及び錠剤から調製され得る。本発明の好ましい実施形態において、SPARC蛋白質と結合する化合物に連結した化学療法薬(例えば抗SPARC治療薬)は、注射用に処方される(例えば非経口的投与)。この点について、製剤は望ましくは腫瘍内投与に適するが、静脈内注射、腹腔内注射、皮下注射等用にも処方され得る。
【0055】
経肛門投与に好適な剤型は、有効成分を乳化基剤又は水溶性基剤のような様々な基剤と混合することにより、坐薬として調合され得る。膣内投与に好適な剤型は、有効成分に加え、当該分野において好適であることが公知な担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又は噴霧製剤として与えられ得る。
【0056】
加えて、組成物はさらなる治療上又は生体活性物質を含有し得る。例えば、特定の適応症の治療に有用な治療因子が存在し得る。イブプロフェン又はステロイドのような炎症を制御する因子は、in vivoでの医薬組成物の投与に関する腫脹及び炎症、並びに生理的障害を減少させるために、組成物の一部となり得る。
【0057】
以下の実施例はさらに本発明を説明するが、本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。
【実施例1】
【0058】
本実施例は、MX-1腫瘍異種移植片におけるSPARCのアルブミンとの共局在化を説明する。
【0059】
フェーズ3転移性乳癌試験において、パクリタキセルアルブミンナノ粒子(Abraxane、ABX又はABI-007)は、Taxol(TAX)よりも向上した奏効率を持つことが示されている(33%対19%、p<0.0001)(例えばO'Shaughnessy, SABCSを参照)。パクリタキセル(P)のアルブミン媒介経内皮輸送、及びTAXと対比したABXにおけるパクリタキセルの腫瘍内集積の増加が近年示された(例えば、Desai, SABCS 2003を参照)。アルブミンはSPARCに結合する(例えば、Schnitzer, J. Biol. Chem., 269, 6072-82 (1994)を参照)。
【0060】
MX-1腫瘍細胞株はヒト乳癌に由来する。ヒトMX-1腫瘍異種移植片、ヒト原発乳房腫瘍組織(n=141)及び正常なヒト乳房組織(n=115)の連続凍結切片を、アルブミン、SPARC(抗SPARC抗体を用いて)及びカベオリン-1染色で免疫染色し、その後スコア付け(0〜4)した。培養MX-1細胞もまたSPARCについて免疫染色した。パクリタキセルアルブミンナノ粒子(Abraxane、ABX又はABI-007)及びTaxol(TAX)を放射性パクリタキセル(P)(20mg/kg IV)で調製し、無胸腺マウスの正常組織におけるパクリタキセルの生体内分布を測定するために用いた。
【0061】
MX-1腫瘍中のアルブミン染色は限局性であり、かつSPARCと共局在化していた(図1)。カベオリン-1染色により、アルブミン含有領域の血管密度がアルブミンのない領域と相違ないことが裏付けられた。MX-1培養細胞によるSPARC発現を、抗SPARC抗体での陽性染色により確認した。正常組織(SPARC陰性)におけるパクリタキセルの集積は、7/10の組織で、ABXではTAXに比較して、有意に(pが0.004以下)低かった。ヒト原発乳房腫瘍の46%が強いSPARC染色(スコア2以上)を示し、比較して正常組織では1%であった(p<0.0001)。50の腫瘍組織のサブセットにおいて、SPARC発現は病期、ER状態又はPgR状態とは相関しなかったが、p53陰性腫瘍では高いSPARC発現の傾向があった。
【0062】
アルブミンとSPARCとの共局在化は、そのアルブミン結合活性により、SPARCが乳房腫瘍でのアルブミン結合のための腫瘍内標的として働き得ることを示唆する。ABX中のパクリタキセルの輸送はアルブミンに依存するので(例えばDesai SABCS, 2003を参照)、このことが、TAXと比較したABXの腫瘍集積の向上を説明し得る。正常組織ではSPARC発現が無いことと一致して、正常組織でのABXの集積はTAXにおけるよりも低かった。SPARCについての患者のスクリーニングにより、ABXに対してより敏感な患者の同定が可能となる。これらの腫瘍中のSPARCの存在により、抗SPARC抗体を用いた標的化及び治療が可能となる。
【実施例2】
【0063】
本実施例は、MX-1腫瘍細胞中のSPARCの発現を説明する。
【0064】
MX-1細胞をカバースリップ上で培養し、当該分野で公知の方法を用いて、ヒトSPARCに対する抗体で染色した。抗体染色を観測したところ、MX-1がSPARCを発現していることが示された。これらの結果は、MX-1腫瘍細胞中で検出されたSPARC発現がMX-1腫瘍細胞によるSPARC分泌の結果であることを示唆する。HUVEC(ヒト臍静脈内皮細胞)、HLMVEC(ヒト肺微小血管内皮細胞)及びHMEC(ヒト乳房上皮細胞)のような正常初代細胞のよりも、MX-1腫瘍細胞において、染色がより強かった。SPARC染色の大部分は内部SPARCであったが、共焦点顕微鏡及び透過処理していない細胞の染色により示されたように、顕著なレベルの表面SPARKが検出された。
【実施例3】
【0065】
本実施例は、ヒト乳癌細胞でのSPARC蛋白質の過剰発現を説明する。
【0066】
ヒト乳癌細胞でのSPARC発現を、Cybrdi, Inc. (Gaithersburg, MD)の腫瘍アレイを用いて測定した。この分析の結果を表1に示す。染色の強度は、より大きな数がより強い過剰発現強度に相当するように、「陰性」から4+まででスコア付けした。乳癌の49%がSPARCについて陽性(2+以上)に染まり、比較して正常組織では1%であった(p<0.0001)。
【0067】
【表1】

【実施例4】
【0068】
本実施例は、パクリタキセルアルブミンナノ粒子(ABI-007)の、内皮受容体(gp60)媒介カベオラトランスサイトーシスを説明する。
【0069】
フェーズIII転移性乳癌試験において、パクリタキセル(P)アルブミンナノ粒子(Abraxane、ABX又はABI-007)は、Taxolよりも向上した奏効率を示した(33%対19%、p<0.0001)(SABCS, O'Shaughnessy et al, 2003)。Taxol(TAX)中のCremophorは血漿中でミセル中にPを捕らえ、細胞分配に利用可能なパクリタキセルを減少させる(例えば、Sparreboom et al., Cancer. Res., 59, 1454 (1999)を参照)。無胸腺マウスでの研究は、ABXにおいて、等用量のTAXに比較して30〜40%高い腫瘍内パクリタキセル濃度を示した(SABCS, Desai et al, 2003)。アルブミンは特異的受容体(gp60)媒介カベオラ輸送により、内皮細胞(EC)を通して輸送される(例えば、John et al., Am. J. Physiol., 284, L187 (2001)を参照)。ABX中のアルブミン結合パクリタキセルはgp60により腫瘍微細血管ECを通して輸送され得、かつこの機構はTAXに比較してABXに対して特に活性であり得る、との仮説を立てた。
【0070】
ABX及びTAXについて、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)及びヒト肺微小血管内皮細胞(HLMVEC)によるパクリタキセルの結合及び輸送を評価するため、一連の実験を行った。蛍光パクリタキセル(FP)をプローブとして用い、パクリタキセルの結合及びトランスウェル装置上で増殖したEC単層を通した輸送を調査するため、蛍光ABX及びTAXをFPで調製した。
【0071】
パクリタキセルの細胞(HUVEC)への結合は、TAXよりもABXにおいて10倍多かった。EC単層を通したABXからのパクリタキセルの輸送は、TAXに比較して、HUVEC及びHMVECについてそれぞれ、2〜3倍及び2〜4倍高められた。輸送はアルブミンに依存した。カベオラアルブミントランスサイトーシスに必要な受容体であるgp60に結合することが知られている抗SPARC抗体の存在により、ABXからのパクリタキセルの輸送が阻害された。公知のカベオラトランスサイトーシス阻害剤であるNEM及びβ-メチルシクロデキストリン(BMC)もまた、内皮単層を通したABXからのパクリタキセルの輸送を阻害した(図2)。カベオラ輸送の阻害は、ABXからのPの輸送をTAX輸送のレベルまで低下させた。
【0072】
これらの結果は、ABXからのパクリタキセルがgp60媒介カベオラトランスサイトーシスによりECを通して盛んに輸送される一方、TAXからのPは主として傍細胞(非カベオラ)機構により2〜4倍低い速度で輸送されるようであることを示す。この経路は、TAXに比較した、ABXにおいて見られるパクリタキセルの腫瘍内濃度増加の原因の一つであり得る。TAX中のCremophorは、内皮細胞を通したパクリタキセルのトランスサイトーシスを阻害する。
【実施例5】
【0073】
本実施例は、扁平上皮頭頸部癌におけるナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(ABI-007)を用いて、高い奏効率とのSPARC過剰発現の相関を示す。
【0074】
頭頸部(H&N)及び肛門管の扁平上皮癌(SCC)患者の、フェーズI及びフェーズII臨床研究において、動脈内送達されたナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(Abraxane、ABX又はABI-007)についてそれぞれ78%及び64%の奏効率が観察された(例えば、Damascelli et al., Cancer, 92 (10), 2592-2602 (2001)及びDamascelli et al., AJR, 181, 253-260 (2003)を参照)。ABX及びTaxol(TAX)のin vitroでの細胞毒性を比較すると、扁平上皮頸部(A431)系がTAX(0.012μg/ml)に対してABX(0.004μg/ml)で、IC50の向上を示すことが観察された。TAXに対してABXにおいて、パクリタキセル(P)のアルブミン媒介経内皮カベオラ輸送、及びPの腫瘍内集積の増加が近年示された(例えば、Desai, SABCS 2003を参照)。
【0075】
ヒトH&N腫瘍組織(n=119)及び正常ヒトH&N組織(n=15)を、腫瘍及び正常組織アレイを用いてSPARC染色で免疫染色し、スコア付け(0〜4)した。免疫染色はポリクローナルウサギ抗SPARC抗体を用いて行った。新しいフェーズI投与量増加研究(ABXは3週間毎に30分かけて静脈内投与)において、頭頸部癌患者のサブセット(n=3)をABXに対する応答について分析した。
【0076】
SPARCは60%(72/119)のH&N腫瘍で過剰発現(スコア2以上)され、これに対して正常組織では0%(0/15)であった(p<0.0001)。フェーズI研究において、135mg/m2(1pt)及び225mg/m2 (1pt)の投与量での2サイクルの治療後に、2/3のH&N患者が部分奏効(PR)を達成した。260mg/m2では1/3の患者が進行した。
【0077】
SPARCは60%の扁平上皮H&N腫瘍において過剰発現されることが分かった。このことは、これらの腫瘍で発現されたSPARCへのアルブミン結合パクリタキセルの結合に起因する、扁平上皮H&N癌で以前見られたABXの高い単剤活性を説明し得る。扁平上皮H&N腫瘍の患者の2/3が、新しいフェーズI研究においてPRを達成した。
【0078】
【表2】

【0079】
ヒトH&N腫瘍組織(n=119)及び正常ヒトH&N組織(n=15)を、腫瘍及び正常組織アレイを用いてSPARC染色で免疫染色し、スコア付け(0〜4)した。免疫染色はポリクローナルウサギ抗SPARC抗体を用いて行った。SPARCは60%(72/119)のH&N腫瘍で過剰発現(スコア2以上)され、これに対して正常組織では0%(0/15)であった(p<0.0001)。このことは、これらの腫瘍で発現されたSPARCへのアルブミン結合パクリタキセルの結合に起因する、扁平上皮H&N癌で以前見られたABXの高い単剤活性を説明し得る。
【0080】
新しいフェーズI投与量増加研究(ABXは3週間毎に30分かけて静脈内投与)において、頭頸部癌患者のサブセット(n=3)のABXに対する応答を分析した。フェーズI研究において、135mg/m2 (1pt)及び225mg/m2(1pt)の投与量での2サイクルの治療後に、2/3のH&N患者が部分反応(PR)を達成した。260mg/m2では1/3の患者が進行した。これらの患者由来の腫瘍組織をSPARC染色すると、1人の応答患者が強いSPARC過剰発現を示した。
【0081】
動脈内Abraxaneで治療された頭頸部(H&N)の扁平上皮癌(SCC)患者の、他のフェーズII臨床研究において、68%の全奏効率が確認された。その組織がSPARC染色について分析された10人の応答患者において、70%が強いSPARC過剰発現を示した。
【実施例6】
【0082】
本実施例は、標識アルブミンのMX-1腫瘍細胞への内在化、及びMX-1細胞内での細胞内SPARC発現との共局在化を示す。
【0083】
MX-1細胞をカバースリップ上で培養し、好適な薬剤で透過化した。細胞を蛍光アルブミンに曝露し、洗浄後、SPARC抗体に曝露した。その後、アルブミンとは異なる蛍光タグを持つ二次抗体に曝露した。意外にも標識アルブミンは細胞内でSPARCの存在と共局在化することが観察され、このことは、アルブミンが急速に内在化され、細胞内SPARCを標的化することを示す。
【実施例7】
【0084】
本実施例は、Taxolと比較したパクリタキセル及びアルブミン含有医薬組成物の、gp60(アルブミン受容体)を介した内皮トランスサイトーシスの増加を示す。
【0085】
ヒト肺微小血管内皮細胞(HLMVEC)をトランスウェル上でコンフルエンスに達するまで培養した。パクリタキセル及びアルブミンを含有する本発明の医薬組成物、又は20μg/mL濃度の蛍光パクリタキセル(Flutax)を含有するTaxolを、上部トランスウェルチャンバーに添加した。
【0086】
上部チャンバーから下部チャンバーへのトランスサイトーシスによるパクリタキセルの輸送を、蛍光光度計を用いて継続的にモニターした。アルブミンを含まずFlutaxのみを含有する対照も用いた。Flutax含有対照は輸送を示さず、そのことがコンフルエントなHLMVEC単層の完全性を証明した。アルブミン-パクリタキセル組成物からのパクリタキセルの輸送は、5% HSA(生理的濃度)の存在下でのTaxolからのパクリタキセルの輸送よりもずっと速かった。アルブミン-パクリタキセル組成物及びTaxolについての輸送速度定数(Kt)はそれぞれ1.396h-1及び0.03h-1であった。単層を通して輸送されるパクリタキセルの総量は、アルブミン-パクリタキセル組成物では、Taxolよりも3倍多かった。従って、アルブミンあるいは、gp60受容体もしくは他の内皮細胞受容体に対する抗体又はフラグメントを含有する他の好適な模倣剤の使用は、腫瘍間質への、内皮障壁を通した望ましい治療薬の輸送を助け得る。
【実施例8】
【0087】
本実施例は、抗SPARC抗体のSPARCへの特異的結合を示す。
【0088】
全細胞抽出物を、超音波処理によりHUVEC細胞から調製した。蛋白質をs5〜15% SDS-PAGE上で分離し、PVDF膜に転写し、SPARCに対するポリクローナル抗体及びSPARCに対するモノクローナル抗体で可視化した。両抗体が、SPARCの正しい分子量である38kDaのシングルバンドに反応した。MX-1を同方法により分析すると、清澄化した細胞溶解物又は膜に富んだ膜画分の両方においてSPARCが検出された。
【実施例9】
【0089】
本実施例は、正常組織におけるSPARC発現の欠如を示す。
【0090】
正常なヒト及びマウス組織を、腫瘍及び正常組織アレイを用いてSPARC染色で免疫染色し、スコア付け(0〜4)した。免疫染色は、ポリクローナルウサギ抗SPARC抗体を用いて行った。SPARCは、食道を例外とし、いずれの正常組織においても発現されなかった。同様にSPARCは、メスのマウスの腎臓を除き、いずれの正常マウス組織においても発現されなかった。しかし、この発現はSPARCと相同なホリスタチンに起因した可能性がある。
【0091】
【表3】

【0092】
本明細書で引用した出版物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献が、各参考文献が参照することにより本明細書中に組み込まれることが個々にかつ明確に示され、本明細書中にその全体が示された場合と同じ程度まで、参照することにより本明細書中に組み込まれるものとする。
【0093】
本発明を説明する上で(とりわけ添付した特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」及び同様な指示対象の使用は、別段本明細書中で示される場合又は内容により明らかに矛盾する場合を除き、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈されるものとする。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、別段注意書きされる場合を除き、制限のない単語(すなわち、「を含むがこれに限定されるものではない」を意味する)として解釈されるものとする。本明細書中の値の範囲の列挙は、別段本明細書中で示される場合を除き、単に、該範囲内に収まる各離れた値に個々に言及する簡便な方法として働くことを意図し、さらに、あたかもそれらが本明細書中に個々に列挙されるかのように、各離れた値が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、別段示される場合又は内容により明らかに矛盾する場合を除き、任意の好適な順序によりなされ得る。本明細書中に提供される、任意の及び全ての例、又は例示的な語(例えば「such as」)は、単に本発明をよりよく説明することを意図し、別段要求されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる語も、任意の請求されていない構成要素を本発明の実施に不可欠なものとして示すものと解釈されるべきではない。
【0094】
本発明の好ましい実施形態は、本発明者らが知りうる中で本発明を実施する最良の形態を含め、本明細書中に記載される。それら好ましい実施形態のバリエーションは、前述の説明を読むことにより当業者に明らかとなり得る。発明者らは当業者がそのようなバリエーションを必要に応じて用いることを予期し、かつ本発明者らは、本発明が本明細書記載の具体例とは別の態様で実施されることを意図する。従って、本発明は、準拠法の許す限り、本明細書添付の特許請求の範囲記載の対象の、全ての修飾物及び等価物を含む。さらに、本明細書中で別段示される場合又は内容により明らかに矛盾する場合を除き、その可能な全バリエーションにおける上記の構成要素の任意の組み合わせが、本発明に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、MX-1腫瘍異種移植片におけるアルブミン及びSPARCの染色を示す。
【図2】図2は、内皮細胞単層を通したパクリタキセルのトランスサイトーシスを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物腫瘍の化学療法薬に対する応答を判定する方法であって、該方法は、
(a) 哺乳動物から生体試料を単離する工程、
(b) 生体試料中のSPARC蛋白質の発現を検出する工程、及び、
(c) 生体試料中のSPARC蛋白質の量を定量化する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
生体試料が腫瘍から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生体試料が体液から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
体液が、脳脊髄液、血液、血漿、血清及び尿からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
腫瘍が、膀胱、肝臓、卵巣、腎臓、腸、脳又は乳房に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
治療薬を哺乳動物の疾患部位に送達する方法であって、治療上有効な量の医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含む方法であり、該医薬組成物が、アルブミン結合蛋白質と結合可能な化合物に連結した治療薬、及び薬学的に許容される担体を含有し、但し該医薬組成物が50%より多い治療薬をナノ粒子型では含有しない、方法。
【請求項8】
医薬組成物が、10%より多い治療薬をナノ粒子型では含有しない、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
医薬組成物が、5%より多い治療薬をナノ粒子型では含有しない、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
アルブミン結合蛋白質がSPARC蛋白質である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
疾患部位が腫瘍である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
治療薬が診断薬である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
診断薬が、放射性薬剤、MRI造影剤、X線造影剤、超音波造影剤及びPET造影剤からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
化合物がSPARC蛋白質に結合するリガンドである、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
リガンドが、カルシウムカチオン(Ca2+)、銅カチオン(Cu2+)、鉄カチオン(Fe2+)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、IX型コラーゲン、ビトロネクチン、トロンボスポンジン-1、内皮細胞、血小板、アルブミン及びヒドロキシアパタイトからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アルブミン結合蛋白質と結合可能な化合物が低分子である、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
低分子が、化学物質、蛋白質及び炭水化物からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
アルブミン結合蛋白質と結合可能な化合物が、SPARC蛋白質に対する抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項19】
腫瘍が、膀胱、肝臓、卵巣、腎臓、腸、脳又は乳房に位置する、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物がヒトである、請求項7に記載の方法。
【請求項21】
投与経路が、静脈内、腹腔内、腫瘍内及び吸入からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項22】
抗体がポリクローナル抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
抗体が、ニワトリ、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ハムスター、ヒツジ、ウシ及びヤギからなる群から選択された動物中で作製される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
抗体がヒト化である、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
抗体がモノクローナルである、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
抗体が、抗SPARC抗体を産生する単一細胞株の、骨髄腫株との融合により作製される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
抗体が、ペプチドシンセサイザー、ディスプレイファージの抗体への変換、並びに抗体の重鎖及び軽鎖遺伝子の様々な領域の変異誘発又は合成、からなる群から選択された方法によりin vitroで作製される、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
抗体が、一価、多価、単一特異性、二重特異性、単鎖及びFabフラグメントからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
抗体がキメラである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
治療薬が、チロシンキナーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、生体活性物質、生体分子、放射性核種、アドリアマイシン、アンサマイシン抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトセシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポチロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン、メトトレキサート、ラパマイシン(シロリムス)、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソ尿素、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソール、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、トランスプラチナ、抗血管内皮細胞増殖因子化合物(「抗VEGF」)、抗上皮増殖因子受容体化合物(「抗EGFR」)、5-フルオロウラシル、並びにそれらの誘導体及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
治療薬がキナーゼ阻害剤である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
キナーゼ阻害剤がゲニステインである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
治療薬が生体分子である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
生体分子が、tTF及びTNFからなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
治療薬が放射性核種である、請求項18に記載の方法。
【請求項36】
治療薬が、補体活性化及び腫瘍に対する細胞性細胞毒性を媒介する抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項37】
腫瘍が、膀胱、肝臓、卵巣、腎臓、腸、脳又は乳房に位置する、請求項18に記載の方法。
【請求項38】
哺乳動物がヒトである、請求項18に記載の方法。
【請求項39】
投与経路が、静脈内、腹腔内、腫瘍内又は吸入である、請求項18に記載の方法。
【請求項40】
SPARC蛋白質と結合可能な化合物に連結した治療薬、及び薬学的に許容される担体を含有する組成物であって、但し該組成物が50%より多い治療薬をナノ粒子型では含有しない、組成物。
【請求項41】
SPARC蛋白質と結合可能な化合物が、抗体又はそのフラグメントである、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
抗体又はそのフラグメントがヒト化であり、かつ一価、多価、単一特異性、二重特異性、単鎖、一価Fab’、二価Fab2、scfv、diabody及びキメラ、からなる群から選択される、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
治療薬が、化学療法薬、放射性核種又はペプチドである、請求項41に記載の組成物。
【請求項44】
抗体がポリクローナルである、請求項41に記載の組成物。
【請求項45】
抗体が、ニワトリ、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ハムスター、ヒツジ、ウシ及びヤギからなる群から選択された動物中で作製される、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
抗体がヒト化である、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
抗体がモノクローナルである、請求項41に記載の組成物。
【請求項48】
抗体が、抗SPARC抗体を産生する単一株の、骨髄腫株との融合により作製される、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
抗体が、ペプチドシンセサイザー、ディスプレイファージの抗体への変換、並びに抗体の重鎖及び軽鎖遺伝子の様々な領域の変異誘発又は合成、からなる群から選択された方法によりin vitroで作製される、請求項41に記載の組成物。
【請求項50】
治療薬が、チロシンキナーゼ阻害剤、生体活性物質、放射性核種、アドリアマイシン、アンサマイシン抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトセシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポチロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン、メトトレキサート、ラパマイシン(シロリムス)、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソ尿素、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソール、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、トランスプラチナ、抗血管内皮細胞増殖因子化合物(「抗VEGF」)、抗上皮増殖因子受容体化合物(「抗EGFR」)、5-フルオロウラシル、並びにそれらの誘導体及びそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項41に記載の組成物。
【請求項51】
治療薬がキナーゼ阻害剤である、請求項41に記載の組成物。
【請求項52】
治療薬が、tTF及びTNFからなる群から選択された生体分子である、請求項41に記載の組成物。
【請求項53】
治療薬が放射性核種である、請求項41に記載の方法。
【請求項54】
治療薬が、補体活性化及び腫瘍に対する細胞性細胞毒性を媒介する抗体である、請求項41に記載の組成物。
【請求項55】
投与経路が、静脈内、腹腔内、腫瘍内又は吸入からなる群から選択される、請求項41に記載の組成物。
【請求項56】
SPARC認識基及び治療薬を含有する送達剤であって、該治療薬がSPARC認識基に連結しており、但し該送達剤が50%より多い治療薬をナノ粒子型では含有しない、送達剤。
【請求項57】
SPARC認識基が一価Fab’、二価Fab2、scfv、diabody、キメラ抗体又はそれらのフラグメントからなる群から選択される抗体又はそのフラグメントを含有し、かつ治療薬が化学療法薬、放射性核種、ペプチド、細胞毒性薬、キナーゼ阻害剤、生体分子又は診断薬、及びそれらの組み合わせである、請求項56に記載の送達剤。
【請求項58】
SPARC認識基が、ヒト化抗体又はそのフラグメントである、請求項56に記載の送達剤。
【請求項59】
化学療法薬を哺乳動物の腫瘍に送達する方法であって、該方法は治療上有効な量の医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含む方法であり、該医薬組成物が、アルブミンと結合可能なSPARC蛋白質に連結した化学療法薬、及び薬学的に許容される担体を含有する、方法。
【請求項60】
SPARCが、バキュロウイルス又はアデノウイルスから選択されたウイルスから発現される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
SPARCがクロマトグラフィーを用いて精製される、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
クロマトグラフィーが、イオン、サイズ排除又はC-18クロマトグラフィーからなる群から選択される、請求項61に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−537460(P2007−537460A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513477(P2007−513477)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/017174
【国際公開番号】WO2005/117952
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(506381212)アブラクシス バイオサイエンス、インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】