アルブミン融合繊毛様神経栄養因子
【課題】哺乳類において肥満症を治療する方法、また、適度に高い濃度のCNTFを用いる哺乳類の治療に関連する副作用(例えば悪心、頭痛)を潜在的に最小化する方法を提供する。
【解決手段】アルブミン、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体と、繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体を活性化する少なくとも一個の生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体とを含んでなる融合タンパク質。
【解決手段】アルブミン、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体と、繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体を活性化する少なくとも一個の生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体とを含んでなる融合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、アルブミン、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体と、繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体を活性化する少なくとも一個の生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体とを含んでなる融合タンパク質に関する。
【発明の背景】
【0002】
一日のエネルギー恒常性の調節は、主に基底視床下部(腹内側核、背内側核、室傍核、および視床下部外側野)における少数の個々の核[1]の中枢制御下にあるが、その他の中枢神経構造(大脳皮質、辺縁域、脳幹、脳下垂体、自律神経節前細胞、迷走神経背側複合体)ならびに関連する末梢神経構造(交感神経節前細胞)もある[2]。
【0003】
中枢および末梢神経の調節の他に、エネルギー恒常性のバランスに関与する末梢器官は、消化管 (胃、腸)、膵臓、脂肪組織、筋組織、副腎および甲状腺である。
【0004】
調節のプロセスは複雑で、消化管などの末梢器官が食物摂取後に視床下部で食欲増進ホルモンを減少させるホルモン(例えばCCK(コレシストキニン))を放出する。さらに、食物摂取後に脂肪組織によって放出されるレプチンには、例えば中枢に作用する主な食欲増進ホルモンの一つであるNPY(ニューロペプチドY)にマイナスの調節効果がある。他方、中枢に放出されるホルモンは、同様に熱産生を増加させる末梢効果を有する可能性がある(例えばβ3アドレナリン作動性アゴニスト、脱共役タンパク質(UCP))。興味のある方は全範囲を網羅する実際の総説[1−6]を参照のこと。
【0005】
アクソカイン(AXOKINE(商標))(REGENERON, Terrytown, NY, USA)は、CNTFの変異型である。アクソカイン(商標)は 、C末端の最後の15のアミノ酸が取り去られたCNTFの末端切断型である。分子の安定性を向上させるため、63番のグルタミンがアルギニンに置換され、17番の遊離システインがアラニンに置換されている[7]。
【0006】
運動ニューロン疾患に苦しむ患者における臨床試験中、偶然にCNTFの体重減少作用が発見された[8]。さらなる研究によって、CNTFによってもたらされる体重減少誘発作用のメカニズムがレプチンに類似し、CNTFが食餌誘発性の肥満症にも有効である点が違うことが明らかとなった[7]。アクソカイン(商標)を用いる動物実験で、このCNTF変異体による体重減少誘発能力がCNTFのメカニズムに類似することが確認された。
【0007】
CNTFは、いずれも摂食を刺激することで知られる、NPY、アグーチ関連ペプチド(AGRP)およびγ−アミノ酪酸(GABA)の合成にマイナスの調節効果を有する。
【0008】
CNTFはそのままの形で血液脳関門(BBB)を通過することが示された[10]。最近になって、CNTFは、Kiの流入率が4.60(±0.78)×10−4mL/g分の、飽和可能な輸送系を経由して輸送されることが示された[11]。
【0009】
BBBは、血液から脳組織への分子の進入を防ぐ、高度に調節された関門(バリア)である[13]。それは脳の毛細血管内皮細胞で形成されている。
【0010】
Lambert et al.[7]から、アクソカイン(商標)がレプチン欠損(ob/ob)マウスおよび野生型(食餌誘発性肥満症、DIO)マウスに働くことが分かっている。最も有効な用量はアクソカイン(商標)が300μg/体重kgであったが、効果は100μg/体重kgでも見出された。達成した体重の減少は主に脂肪組織の減少によるものであり、除脂肪体重による減少は避けられている。
【0011】
さらに、アクソカイン(商標)で処置したマウスにはリバウンド効果がなかったが、アクソカイン(商標)で処置せずにアクソカイン(商標)で処置した動物の摂取したものと同じ食餌を与えたマウスは(食餌を与えた群)、直ちに元の体重を取り戻した。
【0012】
フェーズIのデータは、GulerらによりInternational Journal of Obesityに公表されている[14]。アクソカイン(商標)は十分に耐性を示し、脱落した被験体はなく、全ての有害事象(AE)の過半数が「軽度」とされた。用量を制限する毒性はパートAにおいて16μg/体重kgでの嘔吐および悪心であった。注射部位の反応は、薬剤で治療した被験体でAEが最も頻繁に報告され、続いて食欲低下、悪心、頭痛、および下痢であった。口にヘルペス状の病変が見られる被験体もあった。
【0013】
ある被験体は、アクソカイン(商標)を1μg/体重kg/日での処置の終了後10日に一過性のBell麻痺(顔の表情筋が麻痺する、第VII脳神経である顔面神経の麻痺)を被った。高用量では、C反応性タンパク質および赤血球沈降速度(ESR)の増加、および血清Fe+の減少が見られた。用量依存型では、心拍数が増加し、体温が高くなる傾向があった。
【0014】
170名の重症または病的肥満患者に関する多施設無作為化二重盲検プラシーボ対照用量比較フェーズII試験[15]を評価すると、12週間の治療期間に最適な量のアクソカイン(商標)(1.0μg/kg)を受けた患者は、プラシーボレシピエントよりも、平均して10ポンド多く[16]体重が減少した(p<0.001)。
【0015】
体重の減少は、8週間の治療群の患者へのアクソカイン(商標)の最後の投与から4ヶ月間維持された[17、18]。重大な有害事象は報告されなかった。最も頻繁に報告された有害事象は用量依存性、プラシーボ群を含む全ての患者に起こった軽い注射部位反応(部位の赤み)であった。アクソカイン(商標)の投与は咳および悪心と付随し、2.0μg/体重kg量の薬剤投与後に最も頻繁に起こった。プラシーボと比較してアクソカイン(商標)レシピエントに単純ヘルペスウイルス感染の増加は見出されなかった。比較できる比率のアクソカイン(商標)、および(58〜74%)、およびプラシーボ(61%)、レシピエントは全12週間の試験を完了した。
【0016】
フェーズIIIプラシーボ対照試験において1467名のアクソカイン(商標)治療患者および501名のプラシーボ治療患者により以下のことが実証された。
【0017】
アクソカイン(商標)治療は、プラシーボと比較すると、試験の双方の終末点に関して統計的優位性を達成した。
【0018】
プラシーボ治療患者と比較して初期体重の少なくとも5%減少した割合はアクソカイン(商標)治療患者のほうが多かった(25.1%対17.6%、p<0.001)。
【0019】
アクソカイン(商標)を受けた参加者はプラシーボを受けた参加者よりも平均の体重減少が大きかった(6.2ポンド対2.6ポンド、p<0.001)。
【0020】
アクソカイン(商標)治療は、初期体重の少なくとも10%減少した患者の割合(11.3%対4.2%、p<0.001)など、3つの二次終末点のうち2つに統計上有意な結果を達成した。
【0021】
アクソカイン(商標)治療は一般に十分な耐性を示した。有害事象は一般に軽度から中程度として特徴づけられ、重篤または重症な有害事象の傾向は現れなかった。プラシーボと比較して最も注目すべき有害作用は、注射部位反応、悪心および咳であったが、これらは主に軽度として特徴付けられた。
【0022】
アクソカイン(商標)に関連する体重の減少は、アクソカイン(商標)治療の約3ヶ月後に始まる抗体の産生によって制限された。しかし、アクソカイン(商標)で治療した全1467名のうち30%を超える患者が一年終了までに抗体を産生しなかった。
【発明の概要】
【0023】
本発明の一つの態様では、本発明は、アルブミン、特にヒト血清アルブミン、またはアルブミン活性を有するその断片もしくは変異体もしくは誘導体と、繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体を活性化させる少なくとも1つの生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体とを含んでなる融合タンパク質である。
【0024】
異なる態様では、CNTFまたはアルブミンは、断片または誘導体、あるいはアクソカイン(商標)の場合はその双方、または変異体であってよい。アルブミン融合タンパク質は治療剤であってよい。
【0025】
もう一つの態様では、本発明は、哺乳類においてCNTFの半減期を延長させる方法である。この方法は、CNTFをアルブミンと連結させてアルブミン融合CNTFを形成させ、かつ、アルブミン融合CNTFを哺乳類へ投与することを伴う。一般に、アルブミン融合CNTFの半減期は、連結型アルブミンを欠くCNTFの半減期の少なくとも2倍から少なくとも50倍延長される。
【0026】
CNTFの輸送系かまたは例えば経細胞輸送などの血液脳関門(BBB)を通過する非特異的輸送系を用いることによって、脳内のアルブミン融合アクソカイン(商標)の濃度は増加すると期待される。やがてBBBで、非融合アクソカイン(商標)と比較してアルブミン融合アクソカイン(商標)の血漿濃度が上昇することによって、より多くの経細胞輸送によるアルブミン融合アクソカイン(商標)の流入が起こる。
【0027】
さらに、本発明は、哺乳類において肥満症を治療する方法を伴う。この方法は、CNTFをアルブミンと連結させてアルブミン融合CNTFを形成させ、かつ、アルブミン融合CNTFを哺乳類へ投与することを含んでなる。本発明はまた、適度に高い濃度のCNTFを用いる哺乳類の治療に関連する副作用(例えば悪心、頭痛)を潜在的に最小化する方法を包含する。この方法は、前記CNTFをアルブミンと連結させてアルブミン融合CNTFを形成すること、および前記アルブミン融合CNTFを前記哺乳類へ投与することを含む。
【発明の具体的説明】
【0028】
定義
繊毛様神経栄養因子(CNTF)とは、天然に存在するCNTFの単一の生物活性を有する、天然に存在するCNTFの類似体、同族体、断片、または誘導体であるいずれの分子も意味する。好ましいCNTFはアクソカイン(AXOKINE(商標))である。もう一つのCNTF変異体(Ser166Asp/Gln167His)が欧州特許WO98/22128号に記載されており、それは159番から178番に以下のアミノ酸配列を有する: Leu Lys Val Leu Gln Glu Leu Asp His Trp Thr Val Arg Ser Ile His Asp Leu Arg Phe(159〜178;配列番号4)
【0029】
アクソカイン(商標)は、CNTFの変異型である。アクソカイン(商標)は、C末端の最後の15のアミノ酸が取り去られたCNTFの末端切断型である。分子の安定性を高めるため、63番のグルタミンがアルギニンに置換され、17番の位置で遊離システインがアラニンに置換されている[7]。
【0030】
N末端−アクソカイン(商標)は、実施例1に記載のように、アクソカイン(商標)のC末端とヒト血清アルブミンのN末端との融合体である。
【0031】
C末端−アクソカイン(商標)は、実施例1に記載のように、アクソカイン(商標)のN末端とヒト血清アルブミンのC末端との融合体である。
【0032】
実施例1に記載の切断可能なアクソカイン(商標)とは、CNTF部分とアルブミンとの間に、切断可能なまたは、N−およびC末端融合体の対照として用いられた非融合アクソカイン(商標)を生成するために用いられたエンテロキナーゼ切断部位を有するヒト血清アルブミンとのアクソカイン(商標)のC末端融合体である。
【0033】
アルブミン
ヒト血清アルブミン(HSA)およびヒトアルブミン(HA)という語は、本明細書中では同義的に用いられる。「アルブミン」および「血清アルブミン」という語はさらに広義であって、ヒト血清アルブミン(ならびにその断片および変異体)ならびにその他の種由来のアルブミン(ならびにその断片および変異体)を包含する。
【0034】
本明細書において「アルブミン」とは、集合的に、アルブミンタンパク質またはアミノ酸配列、またはアルブミンの1以上の機能活性(例えば、生物学的に活性な) を有するアルブミン断片または変異体をさす。特に、「アルブミン」とは、ヒトアルブミンまたはその断片(EP201239、EP322094、WO97/24445、WO95/23857参照)をさし、特に、引用することによりそのまま本明細書の一部とされるWO01/79480の図15(配列番号18)に示されるようにヒトアルブミンの成熟型、またはその他の植物由来のアルブミンもしくはその断片、またはこれらの分子の類似体もしくは変異体もしくはその断片をさす。
【0035】
本願中ではWO01/79480の図15のこの配列を「WO’480配列」と呼ぶ。
【0036】
本発明のアルブミン融合タンパク質に用いられるヒト血清アルブミンタンパク質は、WO‘480配列に関して以下の一連の点突然変異:407番のLeuがAlaへ、408番のLeuがValへ、409番のValがAlaへ、および410番のArgがAlaへ;または410番のArgがAlaへ、413番のLysがGlnへ、および414番のLysがGlnへ(例えば、引用することによりそのまま本明細書の一部とされる国際公開W095/23857号参照)の一方または両方を含む。別の態様では、上記の一連の点突然変異の一方または両方を含む本発明のアルブミン融合タンパク質は、酵母Yap3pタンパク質分解切断への安定性/抵抗性を改善したもので、酵母宿主細胞で発現する組み換えアルブミン融合タンパク質の産生を増加させるものである。
【0037】
本明細書で用いられるように、CNTFのin vivo半減期、治療活性、または保存寿命(shelf-life)を延ばす、または拡大するのに十分なアルブミンの部分とは、非融合状態のCNTFのin vivo半減期、治療活性、または保存寿命と比較して、アルブミン融合タンパク質のCNTF部分のin vivo半減期、治療活性、または保存寿命を安定化する、延ばす、または拡大するのに十分な長さまたは構造のアルブミンの部分をさす。アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、上記のように全長HA配列を含み得るか、または治療活性を安定化する、または引き延ばすことのできるその1以上の断片を含み得る。このような断片は、10以上のアミノ酸長であるか、またはHA配列由来の約15、20、25、30、50、またはそれ以上の隣接するアミノ酸を含むか、またはHAの特異的ドメインの一部または全部を含んでよい。
【0038】
本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、正常なHAの変異体であってよい。本発明のアルブミン融合タンパク質のCNTF部分もまた、本明細書に記載のように治療用タンパク質の変異体であってよい。「変異体」には、挿入、欠失および保存的または非保存的置換のいずれをも含み、その場合そのような変化は、治療用タンパク質の治療活性を与えるアルブミン、または活性部位または活性ドメインの1以上の腫脹の、有用なリガンド結合および非免疫原性を実質的に変更しない。
【0039】
特に、本発明のアルブミン融合タンパク質は、天然に存在するヒトアルブミンの多型変異体およびヒトアルブミンの断片、例えばEP322094に開示の断片など(つまり、nが369〜419であるHA(Pn))を含んでよい。アルブミンは、どのような脊椎動物、特に哺乳類、例えばヒト、ウシ、ヒツジ、またはブタに由来するものであってよい。非哺乳類由来のアルブミンとしては、限定されるものではないが、雌鳥および鮭が挙げられる。アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分はCNTF部分とは異なる動物由来であってよい。
【0040】
一般的に言えば、HA断片または変異体は少なくとも100アミノ酸長となり、所望により少なくとも150アミノ酸長となる。HA変異体は、少なくともHAの一つのドメイン全体から構成されるかまたはそれを含んでよい。例えばドメイン1(WO‘480配列のアミノ酸1〜194)、2(WO‘480配列のアミノ酸195〜387)、3(WO‘480配列のアミノ酸388〜585)、1+2(WO‘480配列の1〜387)、2+3(WO‘480配列の195〜585)または1+3(WO‘480配列のアミノ酸1〜194+WO‘480配列のアミノ酸388〜585)である。各ドメインはそれ自体2つの相同なサブドメイン、つまり1〜105、120〜194、195〜291、316〜387、388〜491および512〜585からなり、Lys106〜Glu119、Glu292〜Va1315およびGlu492〜Ala511残基を含んでなる柔軟なサブドメイン相互のリンカー領域を含む。
【0041】
本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、HAの少なくとも1つのサブドメインまたはドメインまたはその保存的変更形態を含んでよい。融合体がサブドメインに基づくならば、隣接するリンカーのいくつかまたは全てを所望によりCNTF部分との連結に用いてよい。
【0042】
アルブミン融合タンパク質
本発明は、一般的に、アルブミン融合タンパク質、ならびに疾病および疾患を治療、予防または改善する方法に関する。本明細書で用いられるように、「アルブミン融合タンパク質」とは、アルブミン(またはその断片または変異体)の少なくとも一つの分子とCNTF(またはその断片または変異体)の少なくとも一つの分子との融合によって形成されるタンパク質をさす。本発明のアルブミン融合タンパク質は、CNTFの少なくとも一つの断片または変異体およびヒト血清アルブミンの少なくとも一つの断片または変異体を含んでなり、それは互いの遺伝子の融合などによって互いに結合している(すなわち、アルブミン融合タンパク質は、CNTFの全てまたは一部をコードするポリヌクレオチドがアルブミンの全てまたは一部をコードするポリヌクレオチドとフレーム内に連結される核酸の翻訳によって生成される)。CNTFおよびアルブミンタンパク質は、いったんアルブミン融合タンパク質の部分となると、アルブミン融合タンパク質の「部分」、「領域」または「一部」と呼ばれ得る。
【0043】
一つの態様では、本発明はCNTFおよび血清アルブミンタンパク質を含んでなる、またはそれらからなるアルブミン 融合タンパク質を提供する。もう一つの態様では、本発明はCNTFおよび血清アルブミンタンパク質の生物学的に活性なおよび/または治療的に活性な断片を含んでなる、またはそれらからなるアルブミン融合タンパク質を提供する。もう一つの態様では、本発明はCNTFおよび血清アルブミンタンパク質の生物学的に活性なおよび/または治療的に活性な変異体を含んでなる、またはそれらからなるアルブミン融合タンパク質を提供する。さらなる態様では、アルブミン融合タンパク質の血清アルブミンタンパク質成分は血清アルブミンの成熟部分である。
【0044】
さらなる態様では、本発明は、CNTFならびに血清アルブミンの生物学的に活性なおよび/または治療的に活性な断片を含んでなる、またはそれらからなるアルブミン融合タンパク質を提供する。さらなる態様では、本発明はCNTFならびに血清アルブミンの生物学的に活性なおよび/または治療的に活性な変異体を含んでなる、またはそれらからなる、アルブミン融合タンパク質を提供する。いくつかの態様では、アルブミン融合タンパク質のCNTF部分は治療用タンパク質の成熟部分である。
【0045】
さらなる態様では、本発明はCNTFの生物学的に活性なおよび/または治療的に活性な断片または変異体、ならびに血清アルブミンの生物学的に活性なおよび/または治療的に活性な断片または変異体を含んでなる、またはそれらからなるアルブミン融合タンパク質を提供する。いくつかの態様では、本発明はCNTFの成熟部分および血清アルブミンの成熟部分を含んでなる、またはそれらからなるアルブミン融合タンパク質を提供する。
【0046】
一つの態様では、アルブミン融合タンパク質はN末端部分としてHA、およびC末端部分としてCNTFを含んでなる。あるいは、C末端部分としてHA、およびN末端部分としてCNTFを含んでなるアルブミン融合タンパク質も用いてよい。
【0047】
その他の態様では、アルブミン融合タンパク質はアルブミンのN末端およびC末端の双方と融合したCNTFを有する。一つの態様では、NおよびC末端で融合した複数のCNTFタンパク質は同じCNTFタンパク質である。もう一つの態様では、NおよびC末端で融合した複数のCNTFタンパク質は異なるCNTFタンパク質である。もう一つの態様では、NおよびC末端で融合した複数のCNTFタンパク質は、同じ疾病、疾患または症状の治療または予防に用いてよい異なるCNTFタンパク質である。もう一つの態様では、NおよびC末端で融合した複数のCNTFタンパク質は、当技術分野で一般に複数の患者に同時に発生することが知られている疾病または疾患の治療または予防に用いてよい、異なるCNTFタンパク質である。
【0048】
アルブミン部分がCNTF部分のN末端および/またはC末端と融合したアルブミン融合タンパク質に加えて、本発明のアルブミン融合タンパク質は目的のCNTFまたはペプチドをHAの内部領域へ挿入することによって製造してもよい。例えば、HA分子のタンパク質配列の中には、その末端からαへリックスの開始点の間に多数のループまたはターンが存在し、ジスルフィド結合によって安定化されている。これらのループは、HAの結晶構造(PDB識別番号1AO6、1BJ5、1BKE、1BM0、1E7E〜1E7lおよび1UOR)から決定されるように、大半は分子の本体から外へ伸び出している。このようなループは、本質的に特定の生物活性を有するアルブミン分子を生成するため、治療上有効なペプチド、特に機能的であるべき二次構造を必要とするものまたは治療用タンパク質の挿入または内部融合に有用である。
【0049】
本発明のアルブミン融合タンパク質を生成するためにペプチドまたはポリペプチドを挿入し得るヒトアルブミン構造中のループとしては、Val54−Asn61、Thr76−Asp89、Ala92−Glu100、Gln170−Ala176、His247−Glu252、Glu266−Glu277、Glu280−His288、Ala362−Glu368、Lys439−Pro447、Val462−Lys475、Thr478−Pro486、およびLys560−Thr566が挙げられる。その他の態様では、ペプチドまたはポリペプチドは成熟ヒトアルブミン(WO’480配列)のVal54−Asn61、Gln170−Ala176、および/またはLys560−Thr566ループに挿入される。
【0050】
挿入されるペプチドは、ファージディスプレイまたは特定の生物学的な活性についてスクリーニングされた合成ペプチドライブラリーから導かれたものであってもよく、また所望の機能を含む分子の活性部分から導かれたものであってもよい。さらに、ランダムペプチドライブラリーを、特定のループ内に作成してもよく、無作為化されたペプチドを全ての可能なアミノ酸の組み合わせが表されるようにHA分子の特定のループへ挿入して作成してもよい。
【0051】
このようなライブラリーは、以下の方法のうちの一つによってHAまたはHAのドメイン断片上に生成され得る。
(a)HAまたはHAドメイン断片の1以上のペプチドループ内の無作為化されたアミノ酸突然変異。どちらも、ループ内のより多くまたは全ての残基をこの方法で突然変異することもあり得る;
(b)長さXn(ここで、Xはアミノ酸であり、nは残基数である)の無作為化されたペプチドのHAまたはHAドメイン断片の1以上のループの置換、またはその1以上のループへの挿入(すなわち、内部融合);
(c)(a)および/または(b)に加えて、N−、C−またはN−およびC末端ペプチド/タンパク質融合体。
【0052】
HAまたはHAドメイン断片は、同一のHAまたはHAドメイン断片への異なる標的に対する異なるループの異なるスクリーニングからのペプチドを移植することによって、多機能にしてもよい。
【0053】
ヒト血清アルブミンのループに挿入されるペプチドはCNTFペプチドまたはそのペプチド断片またはペプチド変異体である。より具体的には、本発明は、ヒト血清アルブミンのループに挿入された少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、または少なくとも40アミノ酸長のペプチド断片またはペプチド変異体を含んでなるアルブミン融合タンパク質を包含する。本発明はまた、ヒト血清アルブミンのN末端と融合した少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、または少なくとも40アミノ酸のペプチド断片またはペプチド変異体を含んでなるアルブミン融合タンパク質を包含する。本発明はまた、ヒト血清アルブミンのC末端と融合した少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、または少なくとも40アミノ酸のペプチド断片またはペプチド変異体を含んでなるアルブミン融合タンパク質を包含する。
【0054】
一般に、本発明のアルブミン融合タンパク質は、1つのHA由来領域および1つのCNTFタンパク質由来領域を有してよい。しかし、各タンパク質の複数の領域を用いて本発明のアルブミン融合タンパク質を作成してもよい。同様に、1以上のCNTFを用いて本発明のアルブミン融合タンパク質を作成してもよい。例えば、CNTFをHAのNおよびC末端双方と融合させてもよい。そのような配置では、CNTF部分は同じまたは異なるCNTF分子であってよい。二機能性のアルブミン融合タンパク質の構造は、X−HA−YまたはY−HA−XまたはX−Y−HAまたはHA−X−YまたはHA−Y−X−HAまたはHA−X−X−HAまたはHA−Y−Y−HAまたはHA−X−HA−YまたはX−HA−Y−HAまたは複数の組み合わせおよび/またはHA配列内のどの位置へのXおよび/またはYの挿入として表され得る。
【0055】
二機能性または多機能性アルブミン融合タンパク質は、機能、半減期などに応じて種々の割合で製造してよい。
【0056】
二機能性または多機能性アルブミン融合タンパク質はまた、融合体のCNTF部分をHAの反対の末端でタンパク質またはペプチドを介して標的器官または細胞種へ標的化するよう製造してよい。
【0057】
公知の治療用分子の融合体の代わりとして、HAのN−、C−またはN−およびC末端、または一般的に6、8、12、20または25またはXn(ここで、Xはアミノ酸(aa)であり、nは残基数に等しい)無作為化アミノ酸のHAのドメイン断片との融合体として構築されたライブラリーのスクリーニングによって、全ての可能なアミノ酸の組み合わせが表されるようにペプチドを得ることもあり得る。このアプローチの特に有利な点は、ペプチドがHA分子上でin situ選択され得ること、従って、ペプチドの特性が、その後にHAと結合する、他のいずれかの方法によって誘導されたペプチドの場合など、むしろ可能性として修飾されるものに関して選択され得ることである。
【0058】
さらに、本発明のアルブミン融合タンパク質は、部分間の物理的分離をより大きくするために融合部分間にリンカーペプチドを含んでよく、従って例えば、その同族受容体との結合のため、CNTF部分の接近能を最大化することもあり得る。リンカーペプチドは、それが柔軟であるかより強固であるようにアミノ酸で構成してもよい。
【0059】
従って、上記のように、本発明のアルブミン融合タンパク質は、次式R2−R1;R1−R2;R2−R1−R2;R2−L−R1−L−R2;R1−L−R2−R2−L−R1;またはR1−L−R2−L−R1[式中R1は少なくとも1種類の治療用タンパク質、ペプチドまたはポリペプチド配列(その断片または変異体を含む)であり、必ずしも同一の治療用タンパク質である必要はなく、Lはリンカーであり、R2は血清アルブミン配列(その断片または変異体を含む)である]を有し得る。リンカーの例としては、(GGGGS)N(配列番号8)または(GGGS)N(配列番号9)または(GGS)N、式中、Nは1以上の整数であり、式中Gはグリシンを表し、Sはセリンを表す。R1が2以上の治療用タンパク質、ペプチドまたはポリペプチド配列である場合、これらの配列は所望によりリンカーによって接続してよい。
【0060】
さらなる態様では、CNTFタンパク質を含んでなる本発明のアルブミン融合タンパク質は、アルブミンと融合していない同じCNTFの保存寿命またはin vivo半減期または治療活性と比較して、保存寿命またはin vivo半減期または治療活性が延長されている。保存寿命とは、一般的に、CNTFタンパク質の治療活性が溶液またはその他の保存用の処方形態で治療活性を過度に失うことなく安定している期間をさす。多くのCNTFタンパク質はその非融合状態で極めて不安定である。下記のように、これらのCNTFタンパク質の一般的な保存寿命は、本発明のアルブミン融合タンパク質へ組み込むことによって著しく延長された。
【0061】
保存寿命の「延長された」(prolonged)または「拡大された」(extended)本発明のアルブミン融合タンパク質は、同じ保存および取り扱い条件に付された標準物質と比較して大きな治療活性を示す。標準物質は、非融合全長CNTFタンパク質であってよい。アルブミン融合タンパク質のCNTF部分が類似体、変異体、そうでなければ変更形態であるか、またはそのタンパク質の完全な配列を含まない場合、治療活性の延長は、またはその類似体、変異体、変更されたペプチド、または不完全配列の非融合同等物に匹敵する。例として、本発明のアルブミン融合タンパク質は、標準物質と同じ保存および取り扱い条件に付された場合に、所定の時点で比較すると、治療活性の約100%以上、または標準物質の治療活性の約105%、110%、120%、130%、150%または200%以上を保持する可能性がある。しかし、治療活性はCNTFタンパク質の安定性に依存し、100%以下である可能性もある。
【0062】
保存寿命はまた、保存開始時点の治療活性をノーマライズして保存後に残存する治療活性に関して評価してもよい。延長されたまたは拡大された治療活性によって示される保存寿命の延長されたまたは拡大された本発明のアルブミン融合タンパク質は、治療活性の約50%以上を保持する可能性があり、同じ条件に付された場合の同等な非融合CNTFの治療活性の約60%、70%、80%、または90%またはそれ以上を保持する可能性がある。
【実施例】
【0063】
実施例1
アルブミン融合アクソカイン(AXOKINE(商標))の製造
CNTFを、プライマー:
【化1】
をエクソン1に、そしてプライマー:
【化2】
をエクソン2に用い、それぞれ標準条件を用いて2つのエクソンを増幅してヒトゲノムDNAからクローン化した。両断片を標準条件下で連結した後、プライマー:
【化3】
を用いてPCRによって再増幅し、ベクターpCR4(Invitrogen)へクローニングした。Lambertら(PNAS 98: 4652-4657; 2001)に開示の通りアクソカイン(商標)を生成するため、位置指定突然変異誘発を用いてC17A(TGT->GCT)およびQ63R(CAG->AGA)突然変異を導入した。DNAシーケンシングも、サイレントT->C置換V85V(GTT->GTC)の存在を明らかにした。
【0064】
C末端rHA−GS−アクソカイン(商標)融合体を作成するため、アクソカイン(商標)cDNAを、単一の標準オリゴヌクレオチドプライマーMH32:
【化4】
およびMH35:
【化5】
を用いる突然変異誘発PCRによってヒトアルブミンをコードするcDNAと連結させ、14アミノ酸GS−(−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−)ペプチドスペーサーを導入した。成熟rHA−GS−アクソカイン(商標)融合体のアミノ酸配列を図8に示す。
【0065】
C末端rHA−3×FLAG−アクソカイン(商標)(切断可能なアクソカイン(商標))融合体を作成するため、一本鎖オリゴヌクレオチドプライマーMH32:
【化6】
およびCF83:
【化7】
を用いる突然変異誘発PCRによって、アクソカイン(商標)cDNAを、ヒトアルブミンをコードするcDNAと連結させ、22アミノ酸3×FLAG(−Asp−Tyr−Lys−Asp−His−Asp−Gly−Asp−Tyr−Lys−Asp−His−Asp−Ile−Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys−)ペプチドスペーサー(Sigma-Aldrich Company Ltd.)をアルブミンとアクソカイン(商標)との配列間へ導入した。成熟C末端rHA3×FLAG−アクソカイン(商標)融合体のアミノ酸配列を図9に示す。WO90/01063に開示のHSA/MF□−1融合体分泌リーダー配列を準備して確実に融合タンパク質を分泌するようにする。
【0066】
N末端アクソカイン(商標)−GS−rHA融合体を作成するため、一本鎖オリゴヌクレオチドプライマーMH33:
【化8】
およびMH36:
【化9】
を用いる突然変異誘発PCRによってアクソカイン(商標)cDNAを、ヒトアルブミンをコードするcDNAと連結させ、各14のアミノ酸GS(−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−)ペプチドスペーサーをアクソカイン(商標)とアルブミンとの配列間に導入した。成熟アクソカイン−GS−rHA融合体のアミノ酸配列を図10に示す。
【0067】
rHA−GS−アクソカイン(商標)配列、rHA−3×FLAG−アクソカイン(商標)配列およびアクソカイン(商標)−GS−rHA配列のマップを、それぞれ図11、12および13に示す。
【0068】
酵母PRB1プロモーターおよび酵母ADH1ターミネーターから、それぞれ既にWO00/44772に開示され、Sleep, D., et al. (1991)Bio/Technology 9,183-187に記載されている適当な転写プロモーターおよび転写ターミネーター配列がもたらされた。適当なベクター配列は、一般にEP−A−286424に開示され、Sleep, D., et al. (1991) Bio/Technology 9, 183-187に記載されている「分解」プラスミドpSAC35によりもたらされた。
rHA融合体が発現し、振盪フラスコ培養発現レベルが決定された。
【0069】
実施例2
精製
C末端アクソカイン(商標)は、高いレベルで切断された材料を含んでいた。それは標準のrHA SP−FF条件(米国特許第6,034,221号参照)を用いて精製されたが、ネガティブモードであり、これにより融合体は透過物中にあった。透過物をpH8および2.5mS・cm−1に調節し、15mM四ホウ酸カリウム中で平衡化した標準のrHA DE−FFにロードした。SP−FFについては、DEFFをネガティブモードで操作した。DE−FF透過物の伝導率は15mS・cm−1に増加し、次に、この材料を、過剰量の50mMオクタノエートでの溶出による標準的なrHA DBAクロマトグラフィーを用いて精製した。次に、溶出液を濃縮し、5mMリン酸pH8.3でダイアフィルトレーションした。
【0070】
N末端アクソカイン(商標)は、切断された材料をいくらか含んでいた。それは標準のrHA SP−FF条件を用いて精製されたが、ネガティブモードであり、それにより、融合体が透過物中にあった。この透過物をpH8および2.5mS・cm−1に調節し、15mM四ホウ酸カリウム中で平衡化した標準のrHA DE−FFに装填した。この場合は、融合体の比率を固定し、200mM NaClを含む標準の溶出液で溶出した。溶出液の伝導率は15mS・cm−1まで減少し、次に、この材料を、過剰量の50mMオクタノエートでの溶出による標準的なrHA DBAクロマトグラフィーを用いて精製した。次に、溶出液を濃縮し、5mMリン酸pH8.3でダイアフィルトレーションした。
【0071】
切断可能なアクソカイン(商標)は、高いレベルで切断された材料を含んでいた。それは標準のrHA SP−FF条件を用いて精製されたが、ネガティブモードであり、それにより融合体が透過物中にあった。透過物をpH8および2.5mS・cm−1に調節し、15mM四ホウ酸カリウム中で平衡化した標準のrHA DE−FFにロードした。SP−FFについては、これをネガティブモードで操作した。透過物の伝導率は15mS・cm−1に増加し、この材料を、過剰量の50mMオクタノエートでの溶出による標準的なrHA DBAクロマトグラフィーを用いて精製した。次に、この材料を濃縮し、切断バッファー中へダイアフィルトレーションした。室温で一晩切断を行い、Ekaptureゲルを用いてエンテロキナーゼを除去した。次に、この材料を濃縮し、5mMリン酸pH8.3でダイアフィルトレーションした。Wurde hier nicht erneut gereinigt?
【0072】
実施例3
薬物動態
非融合アクソカイン(商標)に対するN末端およびC末端アルブミン融合アクソカイン(商標)の半減期およびバイオアベイラビリティの評価、ならびに非融合アクソカイン(商標)に対するN末端およびC末端アルブミン融合アクソカイン(商標)の更なる薬物動態学的なパラメータの評価。
【0073】
投与プロトコール:
試験品1: 非融合アクソカイン(商標)
適用量: 0.33mL/kg
単回用量/経路: 10μg/kg 静脈内または皮下
回数: 1回(t=0)
試験品2: N末端アルブミン−融合アクソカイン(商標)
適用量: 0.33mL/kg
単回用量/経路: 40μg/kg 静脈内または皮下
回数: 1回(t=0)
試験品3: C末端 アルブミン-融合アクソカイン(商標)
適用量: 0.33mL/kg
単回用量/経路: 40μg/kg 静脈内または皮下
回数: 1回(t=0)
【0074】
試験計画
【表1】
試験動物
種/系統: ウサギ
性別/齢: 雄12匹、雌12匹;3〜4ヶ月
総数: 24
供給者: Fa. Bauer (Neuenstein-Lohe, Germany)
【0075】
動物モデル
0日に、グループあたり2匹の雄および2匹の雌のウサギに、切断可能なアクソカイン(商標)(1μg/kg)、C末端アルブミン融合アクソカイン(商標)(40μg/kg)、またはN末端アルブミン融合アクソカイン(商標)(40μg/kg)を一回の静脈内または皮下注射によって投与した。それぞれの被験物質の静脈内投与後、ベースライン、5分、10分、20分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間(1日)、48時間(2日)、72時間(3日)、7日、9日、11日、および14日に、ならびに皮下注射後、ベースライン、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間(1日)、48時間(2日)、72時間(3日)、5日、7日、9日、11日および14日に、それぞれの抗原レベルを測定するために血液サンプルを採取した。アクソカイン(商標)およびアルブミン融合アクソカイン(商標)の血漿レベルをELISAによって測定した。
【0076】
薬物動態学的(PK)変数:
消失半減期、14日までの血漿濃度曲線下面積(AUC0−14)、最大濃度(Cmax)。無限大までの推定濃度曲線下面積(AUC0−∞)、最大濃度時間(tmax)、平均滞留時間、吸収および分布の半減期(該当する場合)、分布のクリアランス量。
【0077】
分析方法
非融合アクソカイン(商標)血漿濃度のELISA測定を、モノクローナルマウス抗hu CNTF抗体(R & D Systems, クローン番号21809.111)とビオチニル化したポリクローナルヤギ抗hu CNTF抗体(R & D Systems, カタログ番号BAF257)とを組み合わせて用いて行った。ELISAキットの説明書に従ってヒトCNTFを標準物質として用いた。
【0078】
アルブミン融合アクソカイン(商標)血漿濃度のELISA測定を、モノクローナル抗huアルブミン抗体(Aventis Behring GmbH, Laboratory) とビオチニル化したポリクローナルヤギ抗hu CNTF抗体(R & D Systems, カタログ番号BAF257)と組み合わせて用いて行った。それぞれのアルブミン融合アクソカイン(商標)は標準曲線の生成に役立った。
【0079】
市販のヒトCNTF ELISA(R & D Systems)を用いると、アルブミン融合アクソカイン(商標)を検出するのは不可能であった。おそらく、アルブミンが抗CNTF抗体の結合に立体的に干渉するためであろう。
【0080】
解決法として、抗アルブミンモノクローナル抗体を捕獲用抗体として用い、内部抗アルブミンアッセイを確立し、この抗体はプレートに結合した。次の工程として、R & D Systemsより得た市販のCNTF抗体をアルブミン融合アクソカイン(商標)の検出用抗体として用いた。
【0081】
個々の血漿レベル分析
C末端およびN末端アルブミン融合アクソカイン(商標)および非融合アクソカイン(商標)の血漿濃度−時間プロフィールを、非線形回帰を用いて動物ごとに分析した。このデータを最小2乗法により指数関数モデルに当てはめた。静脈内投与の後のプロフィールには、オープン2コンパートメントモデルを用いた。皮下投与の後のプロフィールには、一次インプットとラグタイムを持つオープン1コンパートメントモデルを用いた。静脈内投与モデルには、1/(推定濃度)2のウエイト係数を適用した。
【0082】
AUCはa)最後の測定値(AUC0−14)まで線形台形公式を用いること、およびb)14日と無限大までの間の期間を推定することによって(AUC0−14)を満たすことで算出した。
【0083】
概要および比較分析
個々のPK結果を処置および適用経路ごとに記述的に要約した(最小値、中央値、最大値、平均値、標準偏差)。
【0084】
二元配置分散分析を、消失半減期、AUCおよびCmax(全て対数変換した)について行った。固定因子は性別および処置群であった。処置群間の適当な対比を評価した。不均等分散も考慮に含めた。
【0085】
この分析の上で、In(半減期)、In(AUC)およびIn(Cmax)は各々正規分布に従うことを前提とした。
【0086】
消失半減期を物質間で比較し、AUCおよびCmaxの点からバイオアベイラビリティを、両側90%信頼区間を用い、αレベル0.1でアルブミン融合アクソカイン(商標)の投与経路群間で比較した。
【0087】
結果
各時点でのアクソカイン(商標)濃度の平均値および標準偏差を、静脈内処置非融合アクソカイン(商標)群について図1に、静脈内処置アルブミン融合アクソカイン(商標)群について図2に、皮下処置アルブミン融合アクソカイン(商標)群について図3に示す。皮下処置非融合アクソカイン(商標)群に関しては、濃度測定はできなかった。
【0088】
静脈内から非融合アクソカイン(商標)で処置された動物では、注射後4時間にレベルは1pg/mLを下回った。アルブミン融合アクソカイン(商標)群では、このレベルは7日間1ng/mLを上回った。アルブミン融合アクソカイン(商標)産物で皮下処置した動物では、このレベルは約1日後にピークに達し、7日間1ng/mLを上回った。表2に静脈内処置群、表3に皮下処置群についての薬物動態学的な結果を示す。非融合アクソカイン(商標)の結果はアルブミン融合アクソカイン(商標)群の同じ単位へ変換されているが、半減期および平均滞留時間を除いては、検定法の違いからこれらとは比較できない。
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
表4は、消失半減期に関する分散分析の結果を示す。静脈内注射後の非融合およびアルブミン融合アクソカイン(商標)間の差は非常に有意であった。動物の性別は半減期に有意な影響を与えなかった。
【0092】
【表4】
【0093】
表5は、絶対的バイオアベイラビリティに関する分散分析の結果を示す。双方のアルブミン融合産物に対して、2つの投与経路間の差は、消失半減期に関して統計上有意ではなかった。AUCおよびCmaxに関する差は非常に有意であった。
【0094】
【表5】
【0095】
非融合アクソカイン(商標)の濃度曲線下面積および最大血漿レベルの値は、直接NおよびC末端アルブミン融合アクソカイン(商標)の値と比較はできない。これに対して、半減期の比較は妥当である。
【0096】
双方のアルブミン融合アクソカイン(商標)製剤は、非融合アクソカイン(商標)と比較して、静脈内投与後の血漿からの排出の延長を顕著に示した。C末端アルブミン融合アクソカイン(商標)は、非融合アクソカイン(商標)よりも72倍長い平均消失半減期を示した。N末端アルブミン融合アクソカイン(商標)は、非融合アクソカイン(商標)よりも48倍長い平均消失半減期を示した。
【0097】
AUCに関して、皮下注射後の絶対的バイオアベイラビリティは、C末端アルブミン融合アクソカイン(商標)に対して76%、N末端アルブミン融合アクソカイン(商標)に対して23%であった。非融合アクソカイン(商標)の血漿レベルは皮下適用後に検出限界以下であったので、静脈内適用との比較はできなかった。
【0098】
実施例4
薬力学
この実験の目的は、プラシーボまたは非融合アクソカイン(商標)と比較した、NおよびC末端アルブミン融合アクソカイン(商標)のレプチン欠損症または食餌誘発性肥満マウスでの体重の減少への有効性を評価することであった。
【0099】
薬力学動物試験の研究デザイン、パートI
この試験は、合計70匹の雌C57BL/6Jlepob(ob/ob)、および41匹の雄および41匹の雌C57BL/6Jマウスを含む、無作為化一部盲検平行13アーム試験(2つの実験設定での試験(レプチン欠損症誘発性肥満症対食餌誘発性肥満症)としてデザインされた。
【0100】
試験動物
C57BL/6Jlepob(ob/ob)マウスに約3ヶ月間標準餌を与えた。この間、C57BL/6Jlepob(ob/ob)マウスはレプチン欠損症に関連して食餌摂取が制御されないため体重が強く増加した。野生型C57BL/6マウスでは、脂肪分45%の高カロリー食を摂食することによって肥満症が誘発された。治療的処置に先行するこの肥満症誘発相の間、体重を週1回記録した。平均体重がベースラインの少なくとも130%まで増加したら、試験物質を用いる処置を開始した。試験物質(非融合アクソカイン(商標)、アルブミン融合アクソカイン(商標)、プラシーボ)を毎日皮下注射によって7日間にわたり投与した。治療相の間、体重を毎日測定した。ベースラインおよびプラシーボと比較した体重減少の平均を計算して試験物質の相対的効果を評価した。
【0101】
試験薬剤および用量
試験品1: プラシーボ(pH8.3の5mMリン酸緩衝液)
エンドトキシン含量: 0.007EU/mL
保存濃度: 適合せず
適用量: 250μla
一用量/経路: 適合せず/皮下
回数: 7日間連日注射
【0102】
試験品2: 非融合アクソカイン(商標)
エンドトキシン含量: 14.9EU/m2L
保存濃度: 0.1mg/mL
適用量: 250μla
一用量/経路: 表1および2に従う/皮下
回数: 7日間連日注射
【0103】
被験品3: N末端アルブミン融合アクソカイン(商標)
エンドトキシン含量: 1.8EU/mL
保存濃度: 5mg/mL
適用量: 250μla
一用量/経路: 表1および2に従う/皮下
回数: 7日間連日注射
【0104】
被験品4: C末端アルブミン融合アクソカイン(商標)
エンドトキシン含量: 64EU/mLおよび32EU/mL
保存濃度: 0.2mg/mL
適用量: 250μla
一用量/経路: 表1および2に従う/皮下
回数: 7日間連日注射
a処置日1日(83日)に全てのマウスに試験物質250μlを投与し、次に投与量を調節することによって投薬を体重の変化に適応させた。13群(1200μg/kg C末端アクソカイン(商標))のマウスには83日に約390μgを投与した。
【0105】
【表6】
【0106】
【表7】
【0107】
ob/obならびに野生型マウスの双方に対し、以下の用量減少が必要となった。
Delta製非融合アクソカイン(商標):1〜2日に300μg/kgから3〜7日に200μg/kg
N、C末端アルブミン融合アクソカイン(商標):1〜2日に280μg/kgから3〜7日に200μg/kg
N、C末端アルブミン融合アクソカイン(商標):1〜2日に1200μg/kgから3〜7日に800μg/kg
無作為化は、無作為化リストに従い、C57BL/6Jlepob(ob/ob)およびC57BL/6Jマウスに対して個別に行った。マウスを無作為化してケージに入れた後、ケージを無作為化して処置した。
有効性変数:体重(0日から7日まで毎日測定)
【0108】
分析方法
覚醒動物の体重を測定して体重を記録した。
【0109】
統計手法
一次有効性変数:7日と0日、および102日までの体重差。C57BL/6Jlepob(ob/ob)とC57BL/6Jとに分類したマウスの非融合アクソカイン(商標)、N末端アルブミン融合アクソカイン(商標)、およびC末端アルブミン融合アクソカイン(商標)への用量−反応関係を、分散モデルの一分析法の範囲内で分析した。
【0110】
最小有効量を確認するための、対比(例えば、ヘルマート対比または逆のヘルマート対比)を用いる、プラシーボを含む種々の用量の逐次比較。差異に対する両側t検定および両側95%信頼区間を用いる等モル用量ペアの比較。
【0111】
N末端アルブミン融合アクソカイン(商標)およびC末端アルブミン融合アクソカイン(商標)の非融合アクソカイン(商標)に関する全体的な評価を、対数変換した用量での平行線検定によって行った。導かれた有効性を95%信頼区間で補った。
【0112】
結果
一次エンドポイントの統計的分析
エンドポイント:82日から91、92、93、94、95、96、102日までの体重変化(g)
統計:順序仮説群(oederd hypotheses families)のANOVA内のF検定。92日に開始し、もし対応するF検定が有意であるとすれば、ある仮定は拒絶され、その前の仮定も拒絶される。
参照文献: Bauer P: Multiple tests in clinical trials. Statistics in Medicine, 10:871 890, 1991
【0113】
ob/obマウスの体重減少
図4、5、6および7は、レプチン欠損マウスでの等モル用量の非融合アクソカイン(商標)とアルブミン融合アクソカイン(商標)を比較している。
【0114】
要約すれば、薬力学的データは、レプチン欠損マウスにおいてアルブミン融合アクソカイン(商標)が、投与量群11、12、および13に対して非融合アクソカイン(商標)よりも一層統計上有意であることを示している。野生型マウスにおいては、アルブミン融合アクソカイン(商標)は、12群で非融合アクソカイン(商標)よりも一層統計上有意である。
【0115】
薬力学的動物試験の研究デザイン、パートII
本研究は本来、合計82匹の雌B6.V−Lepob(ob/ob)マウス、および41匹の雄および41匹の雌C57BL/6Jマウスを含む、2つの実験設定(レプチン欠損症誘発性肥満症対食餌誘発性肥満症)での無作為化一部盲検平行11アーム試験としてデザインされた。非融合アクソカイン(商標)のアベイラビリティの制限のため、選択されたレプチン欠損マウスの処置群のみが本研究の処置相に含められた(表8)。
【0116】
【表8】
【0117】
スケジュール
B6.V−Lepobマウスに80日まで標準餌を与え、体重は増加した。非融合アクソカイン(商標)またはC−アルブミン融合アクソカイン(商標)のいずれかでの連続7日間(81、82、83、84、85、86、87日)かまたは1、4、7日(81、84、87日)のみのいずれかでの処置は、81日に開始した。
【0118】
処置停止後21日(108日)まで体重を評価した。体重変化およびそれに関する分析は81日の体重に関連づけた。
対応する時点を次の表にまとめる。
【0119】
【表9】
【0120】
試験品の投与
試験品1: プラシーボ(pH8.3の5mMリン酸緩衝液)
製造者: Aventis Behring (Laboratory Dr. H. Metzner)
バッチ番号: −
エンドトキシン含量: 実施せず
保存濃度: 適合せず
適用量: 5μl/g
一用量/経路: 適合せず/皮下
回数: 7日間連日注射
【0121】
試験品2: 非融合アクソカイン(商標)(エンテロキナーゼ切断型
C末端アルブミン融合アクソカイン(登録商標))
製造者: Delta Biotechnology Ltd., Laboratory Dr. D. Sleep
バッチ番号: 1675#40
エンドトキシン含量: 18EU/mL
保存濃度: 約0.1mg/mL (標準物質としてCNTFと比較した、
クーマシー染色でのSDS PAGEに基づく仮定、別表B)
適用量: 5μl/g
一用量/経路: 表1に従う/皮下
回数: 1、4、7日に単回注射または7日間連日注射
【0122】
試験品3: C末端アルブミン融合アクソカイン(商標)
製造者: Delta Biotechnology Ltd., Laboratory Dr. D. Sleep/
Aventis Behring GmbH, Laboratory Dr. H. Metzner
バッチ番号: 091002
エンドトキシン含量: 16EU/mL
保存濃度: 約0.1mg/mL (標準物質としてHSAと比較した、
クーマシー染色でのSDS PAGEに基づく仮定、別表B)
適用量: 5μl/ga
一用量/経路: 表1に従う/皮下
回数: 1、4、7日に単回注射または7日間連日注射
【0123】
試験品4: 室温で14日保存したC末端アルブミン融合アクソカイン
(商標)
製造者: Delta Biotechnology Ltd., Laboratory Dr. D. Sleep/
Aventis Behring GmbH, Laboratory Dr. H. Metzner
バッチ番号: 091002
エンドトキシン含量: 16EU/mL
保存濃度: 約0.4mg/mL (標準物質としてHSAと比較した、
クーマシー染色でのSDS PAGEに基づく仮定、別表B)
適用量: 5μl/ga
一用量/経路: 表1に従う/皮下
回数: 1、4、7日に単回注射または7日間連日注射
a全てのマウスに試験物質5μlを投与した。但し、C末端アクソカイン(商標)3600μg/kgで処置したマウスには10μl/gを投与した。
【0124】
動物モデル
B6.V−Lepobマウスに12週間標準餌を与えた。この間、マウスはレプチン欠損症に関連して食餌摂取が制御されないため体重が強く増加した。治療的処置に先行するこの肥満症誘発相の間、動物の体重を測定しなかった49〜66日を除いて体重を週1回記録した。試験物質(アクソカイン(商標)、C末端アルブミン融合アクソカイン(商標)、プラシーボ)を、毎日皮下注射によって7日間にわたり投与するか、または1、4、7日の処置日に一回ずつ3回注射した。処置相の間、体重を毎日測定した。その後、14日間体重を一日おきに記録し(すなわち、1週間につき3回)、処置後21日(処置開始後28日=調査日108日)にもう一回記録した。ベースラインおよびプラシーボと比較した体重減少の平均を計算して試験物質の相対的効果を評価した。
【0125】
無作為化
無作為化リストに従って無作為化を行った。マウスを無作為化してケージに入れた後、ケージを無作為化して処置した。
【0126】
有効性変数
主変数:処置1日(調査日81日)から治療7日(調査日88、87、86、85、84、83、および82日)の体重変化(g)。
副変数:処置開始後28日の体重(調査日108日)。調査日81日から89、91、94、96、98、101、108までの体重変化(g)。
【0127】
分析方法
覚醒動物の体重を測定して体重を記録した。
【0128】
統計方法
順序仮説群のANOVA内のF検定。88日に開始し、その後下向きに進み、もし対応するF検定が有意(p≦0.05)であるとすれば、ある仮説は棄却され、その前の仮説も棄却される(p≦0.05)。同じ手順を89日から108日まで上向きに用いた。この手順は、日に関係する7つの仮説からなる一連の比較の中で複数のレベル0.05を制御した。
【0129】
4ブロックからなる分析を行った。表10および11にプラシーボと対照した試験の試験判定を集計した、すなわち、モデルの妥当性をチェックするため、有効な処置群(2〜11群)をプラシーボ(1群)と比較した。等モル用量の分析を表12および13に示す一方、処置スケジュールを表14および15で比較している。最終的に、反応基準の代わりとなる88日の体重変化での対数用量についての平行線検定を用いる効力評価を表16に要約している。検定アプローチの適合性に関する試験(すなわち、直線性、平行度)はなされていない。
【0130】
結果
体重への影響
研究処置は81日から87日まで投与された。
プラシーボとの比較
試験物質を投与した全ての群が82日〜101日の間にプラシーボに対して有意な差を示した(表10および11)。
【0131】
【表10】
【0132】
【表11】
【0133】
等モル用量の比較
【表12】
【0134】
【表13】
【0135】
処置スケジュールの比較
【表14】
【0136】
【表15】
【0137】
効力評価
【表16】
【0138】
融合タンパク質を皮下投与している間、ウサギで調査されたようにアルブミン融合アクソカインの血漿半減期の延長(非融合アクソカインよりも72倍長い)が見出されたことは極めて驚くべきことである。第一に、皮下投与は吸収を減じることが知られているがここでは事実と異なっている。第二に、ヒト血漿タンパク質の血漿半減期は動物では劇的に減少することがあるということも一般に知られているので、この延長はヒトにおいてはより一層明白となることを示している。これは、非融合アクソカインを毎日適用することに比べてほぼそれに見合う効果のある融合タンパク質の3日おきの投与が可能であるという、マウスにおける発明者らの薬力学的知見によって確認された。結果として、発明者らは融合タンパク質をおそらくヒトに週1回またはさらに長い間隔で投与することが可能ではないかと推測する。CNTFに対する抗体の産生率が減少することもあり得るため、さらなる効果および安全性は増加する可能性がある。
【0139】
臨床所見
動物の6匹が時期尚早に研究から離脱し、下記治療完了後全てが離脱した:
【0140】
84日に開始した8群、10群および11群全ての動物(毎日1200μg/kg C−AFPまたは3600μg/kg C−AFP 3回投与)は、動作が鈍く、毛並みが乱れ、皮膚が全身にわたり発赤し、全身症状が低下した。12匹の動物のうち10匹までが1200μgを投与され、3600μgで処置された全ての動物がその後2日にわたり出血性の下痢に罹り、水分摂取の減少も伴って、重い脱水症状となった。
【0141】
従って、89日に10群、11群から各一匹の動物、91日に8群の3匹の動物を死の直前に安楽死させた。さらに10群の動物1匹が96日に死亡した。
剖検で、重い肥満症、脱水症状、ならびに肝臓および腎臓の脂肪変性が、拡大した腸とともに試験した動物全てに見出された。
【0142】
結論
治療開始(81日)に先立って、合計70匹の動物が利用可能であり、プラシーボ群に10匹(1群)、そして10の有効な治療群の各々に6匹であった。合計6匹の動物が安楽死するか、研究途中に死亡し、全ては処置完了後に死亡した。つまり、89日に10、11群から各一匹の動物が、91日に8群の3匹の動物が、そして最後に10群でさらにもう一匹の動物が96日に死亡した。これらの事例ならびに見出された臨床症状は、最も用量の多い群に限定され、従って処置に関係があると考えられる。
【0143】
プラシーボで処置した動物の体重は、81日から88日の間ほぼ一定(88日の平均体重変化:−0.4%)であったが、さらなる試験の過程で108日までに体重の増加(108日の平均変化:7.2%)が認められた。
【0144】
有効な物質での処置(2〜11群)はプラシーボと比較して有意な用量依存性の体重減少をもたらした(表10)。処置完了後21日以内にも、有効成分で処置した動物はプラシーボ動物よりも有意に体重減少が高いことを示した(表11)。
【0145】
等モル用量で比較した場合、アルブミン融合アクソカイン(商標)は、たとえどちらの処置スケジュールを適用したとしても、体重減少に関して非融合アクソカイン(商標)よりも相当に優れていた(表12、図14)。治療終了後この効果は用量依存的に続き(表13)、7、11群はさらに108日まで続いた。
【0146】
7日にわたる毎日注射の結果、治療を受けている期間と21日の追跡調査期間の双方で1、4、7日の注射よりもより明白な効果が生じた(表7、8)。これは非融合アクソカイン(商標)内の比較およびC−アルブミン融合アクソカイン(商標)内の比較でも同じであった。
【0147】
効力評価は、88日の体重変化に限定された。アルブミン融合アクソカイン(商標)は、非融合アクソカイン(商標)よりも7日間の処置スケジュールおよび1、4、7日の処置スケジュールのそれぞれ1.9および2.3倍効力が高かった(表16)。1〜7日処置のほうが1、4、7日処置よりも効力が高かった。非融合アクソカイン(商標)に関して1.85倍の効力、およびアルブミン融合アクソカイン(商標)に関して9.13倍の効力が算出された。
【0148】
1、4、7日のアルブミン融合アクソカイン(商標)の注射は、非融合アクソカイン(商標)での7日間連続毎日注射とほぼ同じくらい効力があった。
【表17】
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】ウサギ(静脈内注射)における非融合アクソカイン(AXOKINE(商標))の薬物動態。
【図2】ウサギ(静脈内注射)におけるC末端およびN末端融合アクソカイン(AXOKINE(商標))の薬物動態。
【図3】ウサギ(皮下注射)におけるC末端およびN末端融合アクソカイン(AXOKINE(商標))の薬物動態。
【図4】非融合アクソカイン(AXOKINE(商標))で処置したレプチン欠損マウスの体重減少曲線。
【図5】C末端融合アクソカイン(AXOKINE(商標))で処置したレプチン欠損マウスの体重減少曲線。
【図6】非融合アクソカイン(AXOKINE(商標))で処置した野生型マウスの体重減少曲線。
【図7】C末端融合アクソカイン(AXOKINE(商標))で処置した野生型マウスの体重減少曲線。
【図8】成熟C末端アクソカイン(AXOKINE(商標))(配列番号1)のアミノ酸配列。
【図9】成熟C末端rHA−3xFLAG−(切断可能な)アクソカイン(AXOKINE(商標))(配列番号2)のアミノ酸配列。
【図10】成熟N末端アクソカイン(AXOKINE(商標))(配列番号3)のアミノ酸配列。
【図11】C末端融合アクソカイン(AXOKINE(商標))のマップ。
【図12】C末端rHA−3xFLAG−(切断可能な)アクソカイン(AXOKINE(商標))のマップ。
【図13】N末端融合アクソカイン(AXOKINE(商標))のマップ。
【図14】3日毎に非融合アクソカイン(AXOKINE(商標))およびC末端融合アクソカイン(商標)で処置したレプチン欠損マウスの体重減少曲線。
【図15】毎日非融合アクソカイン(AXOKINE(商標))およびC末端融合アクソカイン(商標)で処置したレプチン欠損マウスの体重減少曲線。
【発明の分野】
【0001】
本発明は、アルブミン、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体と、繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体を活性化する少なくとも一個の生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体とを含んでなる融合タンパク質に関する。
【発明の背景】
【0002】
一日のエネルギー恒常性の調節は、主に基底視床下部(腹内側核、背内側核、室傍核、および視床下部外側野)における少数の個々の核[1]の中枢制御下にあるが、その他の中枢神経構造(大脳皮質、辺縁域、脳幹、脳下垂体、自律神経節前細胞、迷走神経背側複合体)ならびに関連する末梢神経構造(交感神経節前細胞)もある[2]。
【0003】
中枢および末梢神経の調節の他に、エネルギー恒常性のバランスに関与する末梢器官は、消化管 (胃、腸)、膵臓、脂肪組織、筋組織、副腎および甲状腺である。
【0004】
調節のプロセスは複雑で、消化管などの末梢器官が食物摂取後に視床下部で食欲増進ホルモンを減少させるホルモン(例えばCCK(コレシストキニン))を放出する。さらに、食物摂取後に脂肪組織によって放出されるレプチンには、例えば中枢に作用する主な食欲増進ホルモンの一つであるNPY(ニューロペプチドY)にマイナスの調節効果がある。他方、中枢に放出されるホルモンは、同様に熱産生を増加させる末梢効果を有する可能性がある(例えばβ3アドレナリン作動性アゴニスト、脱共役タンパク質(UCP))。興味のある方は全範囲を網羅する実際の総説[1−6]を参照のこと。
【0005】
アクソカイン(AXOKINE(商標))(REGENERON, Terrytown, NY, USA)は、CNTFの変異型である。アクソカイン(商標)は 、C末端の最後の15のアミノ酸が取り去られたCNTFの末端切断型である。分子の安定性を向上させるため、63番のグルタミンがアルギニンに置換され、17番の遊離システインがアラニンに置換されている[7]。
【0006】
運動ニューロン疾患に苦しむ患者における臨床試験中、偶然にCNTFの体重減少作用が発見された[8]。さらなる研究によって、CNTFによってもたらされる体重減少誘発作用のメカニズムがレプチンに類似し、CNTFが食餌誘発性の肥満症にも有効である点が違うことが明らかとなった[7]。アクソカイン(商標)を用いる動物実験で、このCNTF変異体による体重減少誘発能力がCNTFのメカニズムに類似することが確認された。
【0007】
CNTFは、いずれも摂食を刺激することで知られる、NPY、アグーチ関連ペプチド(AGRP)およびγ−アミノ酪酸(GABA)の合成にマイナスの調節効果を有する。
【0008】
CNTFはそのままの形で血液脳関門(BBB)を通過することが示された[10]。最近になって、CNTFは、Kiの流入率が4.60(±0.78)×10−4mL/g分の、飽和可能な輸送系を経由して輸送されることが示された[11]。
【0009】
BBBは、血液から脳組織への分子の進入を防ぐ、高度に調節された関門(バリア)である[13]。それは脳の毛細血管内皮細胞で形成されている。
【0010】
Lambert et al.[7]から、アクソカイン(商標)がレプチン欠損(ob/ob)マウスおよび野生型(食餌誘発性肥満症、DIO)マウスに働くことが分かっている。最も有効な用量はアクソカイン(商標)が300μg/体重kgであったが、効果は100μg/体重kgでも見出された。達成した体重の減少は主に脂肪組織の減少によるものであり、除脂肪体重による減少は避けられている。
【0011】
さらに、アクソカイン(商標)で処置したマウスにはリバウンド効果がなかったが、アクソカイン(商標)で処置せずにアクソカイン(商標)で処置した動物の摂取したものと同じ食餌を与えたマウスは(食餌を与えた群)、直ちに元の体重を取り戻した。
【0012】
フェーズIのデータは、GulerらによりInternational Journal of Obesityに公表されている[14]。アクソカイン(商標)は十分に耐性を示し、脱落した被験体はなく、全ての有害事象(AE)の過半数が「軽度」とされた。用量を制限する毒性はパートAにおいて16μg/体重kgでの嘔吐および悪心であった。注射部位の反応は、薬剤で治療した被験体でAEが最も頻繁に報告され、続いて食欲低下、悪心、頭痛、および下痢であった。口にヘルペス状の病変が見られる被験体もあった。
【0013】
ある被験体は、アクソカイン(商標)を1μg/体重kg/日での処置の終了後10日に一過性のBell麻痺(顔の表情筋が麻痺する、第VII脳神経である顔面神経の麻痺)を被った。高用量では、C反応性タンパク質および赤血球沈降速度(ESR)の増加、および血清Fe+の減少が見られた。用量依存型では、心拍数が増加し、体温が高くなる傾向があった。
【0014】
170名の重症または病的肥満患者に関する多施設無作為化二重盲検プラシーボ対照用量比較フェーズII試験[15]を評価すると、12週間の治療期間に最適な量のアクソカイン(商標)(1.0μg/kg)を受けた患者は、プラシーボレシピエントよりも、平均して10ポンド多く[16]体重が減少した(p<0.001)。
【0015】
体重の減少は、8週間の治療群の患者へのアクソカイン(商標)の最後の投与から4ヶ月間維持された[17、18]。重大な有害事象は報告されなかった。最も頻繁に報告された有害事象は用量依存性、プラシーボ群を含む全ての患者に起こった軽い注射部位反応(部位の赤み)であった。アクソカイン(商標)の投与は咳および悪心と付随し、2.0μg/体重kg量の薬剤投与後に最も頻繁に起こった。プラシーボと比較してアクソカイン(商標)レシピエントに単純ヘルペスウイルス感染の増加は見出されなかった。比較できる比率のアクソカイン(商標)、および(58〜74%)、およびプラシーボ(61%)、レシピエントは全12週間の試験を完了した。
【0016】
フェーズIIIプラシーボ対照試験において1467名のアクソカイン(商標)治療患者および501名のプラシーボ治療患者により以下のことが実証された。
【0017】
アクソカイン(商標)治療は、プラシーボと比較すると、試験の双方の終末点に関して統計的優位性を達成した。
【0018】
プラシーボ治療患者と比較して初期体重の少なくとも5%減少した割合はアクソカイン(商標)治療患者のほうが多かった(25.1%対17.6%、p<0.001)。
【0019】
アクソカイン(商標)を受けた参加者はプラシーボを受けた参加者よりも平均の体重減少が大きかった(6.2ポンド対2.6ポンド、p<0.001)。
【0020】
アクソカイン(商標)治療は、初期体重の少なくとも10%減少した患者の割合(11.3%対4.2%、p<0.001)など、3つの二次終末点のうち2つに統計上有意な結果を達成した。
【0021】
アクソカイン(商標)治療は一般に十分な耐性を示した。有害事象は一般に軽度から中程度として特徴づけられ、重篤または重症な有害事象の傾向は現れなかった。プラシーボと比較して最も注目すべき有害作用は、注射部位反応、悪心および咳であったが、これらは主に軽度として特徴付けられた。
【0022】
アクソカイン(商標)に関連する体重の減少は、アクソカイン(商標)治療の約3ヶ月後に始まる抗体の産生によって制限された。しかし、アクソカイン(商標)で治療した全1467名のうち30%を超える患者が一年終了までに抗体を産生しなかった。
【発明の概要】
【0023】
本発明の一つの態様では、本発明は、アルブミン、特にヒト血清アルブミン、またはアルブミン活性を有するその断片もしくは変異体もしくは誘導体と、繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体を活性化させる少なくとも1つの生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体とを含んでなる融合タンパク質である。
【0024】
異なる態様では、CNTFまたはアルブミンは、断片または誘導体、あるいはアクソカイン(商標)の場合はその双方、または変異体であってよい。アルブミン融合タンパク質は治療剤であってよい。
【0025】
もう一つの態様では、本発明は、哺乳類においてCNTFの半減期を延長させる方法である。この方法は、CNTFをアルブミンと連結させてアルブミン融合CNTFを形成させ、かつ、アルブミン融合CNTFを哺乳類へ投与することを伴う。一般に、アルブミン融合CNTFの半減期は、連結型アルブミンを欠くCNTFの半減期の少なくとも2倍から少なくとも50倍延長される。
【0026】
CNTFの輸送系かまたは例えば経細胞輸送などの血液脳関門(BBB)を通過する非特異的輸送系を用いることによって、脳内のアルブミン融合アクソカイン(商標)の濃度は増加すると期待される。やがてBBBで、非融合アクソカイン(商標)と比較してアルブミン融合アクソカイン(商標)の血漿濃度が上昇することによって、より多くの経細胞輸送によるアルブミン融合アクソカイン(商標)の流入が起こる。
【0027】
さらに、本発明は、哺乳類において肥満症を治療する方法を伴う。この方法は、CNTFをアルブミンと連結させてアルブミン融合CNTFを形成させ、かつ、アルブミン融合CNTFを哺乳類へ投与することを含んでなる。本発明はまた、適度に高い濃度のCNTFを用いる哺乳類の治療に関連する副作用(例えば悪心、頭痛)を潜在的に最小化する方法を包含する。この方法は、前記CNTFをアルブミンと連結させてアルブミン融合CNTFを形成すること、および前記アルブミン融合CNTFを前記哺乳類へ投与することを含む。
【発明の具体的説明】
【0028】
定義
繊毛様神経栄養因子(CNTF)とは、天然に存在するCNTFの単一の生物活性を有する、天然に存在するCNTFの類似体、同族体、断片、または誘導体であるいずれの分子も意味する。好ましいCNTFはアクソカイン(AXOKINE(商標))である。もう一つのCNTF変異体(Ser166Asp/Gln167His)が欧州特許WO98/22128号に記載されており、それは159番から178番に以下のアミノ酸配列を有する: Leu Lys Val Leu Gln Glu Leu Asp His Trp Thr Val Arg Ser Ile His Asp Leu Arg Phe(159〜178;配列番号4)
【0029】
アクソカイン(商標)は、CNTFの変異型である。アクソカイン(商標)は、C末端の最後の15のアミノ酸が取り去られたCNTFの末端切断型である。分子の安定性を高めるため、63番のグルタミンがアルギニンに置換され、17番の位置で遊離システインがアラニンに置換されている[7]。
【0030】
N末端−アクソカイン(商標)は、実施例1に記載のように、アクソカイン(商標)のC末端とヒト血清アルブミンのN末端との融合体である。
【0031】
C末端−アクソカイン(商標)は、実施例1に記載のように、アクソカイン(商標)のN末端とヒト血清アルブミンのC末端との融合体である。
【0032】
実施例1に記載の切断可能なアクソカイン(商標)とは、CNTF部分とアルブミンとの間に、切断可能なまたは、N−およびC末端融合体の対照として用いられた非融合アクソカイン(商標)を生成するために用いられたエンテロキナーゼ切断部位を有するヒト血清アルブミンとのアクソカイン(商標)のC末端融合体である。
【0033】
アルブミン
ヒト血清アルブミン(HSA)およびヒトアルブミン(HA)という語は、本明細書中では同義的に用いられる。「アルブミン」および「血清アルブミン」という語はさらに広義であって、ヒト血清アルブミン(ならびにその断片および変異体)ならびにその他の種由来のアルブミン(ならびにその断片および変異体)を包含する。
【0034】
本明細書において「アルブミン」とは、集合的に、アルブミンタンパク質またはアミノ酸配列、またはアルブミンの1以上の機能活性(例えば、生物学的に活性な) を有するアルブミン断片または変異体をさす。特に、「アルブミン」とは、ヒトアルブミンまたはその断片(EP201239、EP322094、WO97/24445、WO95/23857参照)をさし、特に、引用することによりそのまま本明細書の一部とされるWO01/79480の図15(配列番号18)に示されるようにヒトアルブミンの成熟型、またはその他の植物由来のアルブミンもしくはその断片、またはこれらの分子の類似体もしくは変異体もしくはその断片をさす。
【0035】
本願中ではWO01/79480の図15のこの配列を「WO’480配列」と呼ぶ。
【0036】
本発明のアルブミン融合タンパク質に用いられるヒト血清アルブミンタンパク質は、WO‘480配列に関して以下の一連の点突然変異:407番のLeuがAlaへ、408番のLeuがValへ、409番のValがAlaへ、および410番のArgがAlaへ;または410番のArgがAlaへ、413番のLysがGlnへ、および414番のLysがGlnへ(例えば、引用することによりそのまま本明細書の一部とされる国際公開W095/23857号参照)の一方または両方を含む。別の態様では、上記の一連の点突然変異の一方または両方を含む本発明のアルブミン融合タンパク質は、酵母Yap3pタンパク質分解切断への安定性/抵抗性を改善したもので、酵母宿主細胞で発現する組み換えアルブミン融合タンパク質の産生を増加させるものである。
【0037】
本明細書で用いられるように、CNTFのin vivo半減期、治療活性、または保存寿命(shelf-life)を延ばす、または拡大するのに十分なアルブミンの部分とは、非融合状態のCNTFのin vivo半減期、治療活性、または保存寿命と比較して、アルブミン融合タンパク質のCNTF部分のin vivo半減期、治療活性、または保存寿命を安定化する、延ばす、または拡大するのに十分な長さまたは構造のアルブミンの部分をさす。アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、上記のように全長HA配列を含み得るか、または治療活性を安定化する、または引き延ばすことのできるその1以上の断片を含み得る。このような断片は、10以上のアミノ酸長であるか、またはHA配列由来の約15、20、25、30、50、またはそれ以上の隣接するアミノ酸を含むか、またはHAの特異的ドメインの一部または全部を含んでよい。
【0038】
本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、正常なHAの変異体であってよい。本発明のアルブミン融合タンパク質のCNTF部分もまた、本明細書に記載のように治療用タンパク質の変異体であってよい。「変異体」には、挿入、欠失および保存的または非保存的置換のいずれをも含み、その場合そのような変化は、治療用タンパク質の治療活性を与えるアルブミン、または活性部位または活性ドメインの1以上の腫脹の、有用なリガンド結合および非免疫原性を実質的に変更しない。
【0039】
特に、本発明のアルブミン融合タンパク質は、天然に存在するヒトアルブミンの多型変異体およびヒトアルブミンの断片、例えばEP322094に開示の断片など(つまり、nが369〜419であるHA(Pn))を含んでよい。アルブミンは、どのような脊椎動物、特に哺乳類、例えばヒト、ウシ、ヒツジ、またはブタに由来するものであってよい。非哺乳類由来のアルブミンとしては、限定されるものではないが、雌鳥および鮭が挙げられる。アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分はCNTF部分とは異なる動物由来であってよい。
【0040】
一般的に言えば、HA断片または変異体は少なくとも100アミノ酸長となり、所望により少なくとも150アミノ酸長となる。HA変異体は、少なくともHAの一つのドメイン全体から構成されるかまたはそれを含んでよい。例えばドメイン1(WO‘480配列のアミノ酸1〜194)、2(WO‘480配列のアミノ酸195〜387)、3(WO‘480配列のアミノ酸388〜585)、1+2(WO‘480配列の1〜387)、2+3(WO‘480配列の195〜585)または1+3(WO‘480配列のアミノ酸1〜194+WO‘480配列のアミノ酸388〜585)である。各ドメインはそれ自体2つの相同なサブドメイン、つまり1〜105、120〜194、195〜291、316〜387、388〜491および512〜585からなり、Lys106〜Glu119、Glu292〜Va1315およびGlu492〜Ala511残基を含んでなる柔軟なサブドメイン相互のリンカー領域を含む。
【0041】
本発明のアルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、HAの少なくとも1つのサブドメインまたはドメインまたはその保存的変更形態を含んでよい。融合体がサブドメインに基づくならば、隣接するリンカーのいくつかまたは全てを所望によりCNTF部分との連結に用いてよい。
【0042】
アルブミン融合タンパク質
本発明は、一般的に、アルブミン融合タンパク質、ならびに疾病および疾患を治療、予防または改善する方法に関する。本明細書で用いられるように、「アルブミン融合タンパク質」とは、アルブミン(またはその断片または変異体)の少なくとも一つの分子とCNTF(またはその断片または変異体)の少なくとも一つの分子との融合によって形成されるタンパク質をさす。本発明のアルブミン融合タンパク質は、CNTFの少なくとも一つの断片または変異体およびヒト血清アルブミンの少なくとも一つの断片または変異体を含んでなり、それは互いの遺伝子の融合などによって互いに結合している(すなわち、アルブミン融合タンパク質は、CNTFの全てまたは一部をコードするポリヌクレオチドがアルブミンの全てまたは一部をコードするポリヌクレオチドとフレーム内に連結される核酸の翻訳によって生成される)。CNTFおよびアルブミンタンパク質は、いったんアルブミン融合タンパク質の部分となると、アルブミン融合タンパク質の「部分」、「領域」または「一部」と呼ばれ得る。
【0043】
一つの態様では、本発明はCNTFおよび血清アルブミンタンパク質を含んでなる、またはそれらからなるアルブミン 融合タンパク質を提供する。もう一つの態様では、本発明はCNTFおよび血清アルブミンタンパク質の生物学的に活性なおよび/または治療的に活性な断片を含んでなる、またはそれらからなるアルブミン融合タンパク質を提供する。もう一つの態様では、本発明はCNTFおよび血清アルブミンタンパク質の生物学的に活性なおよび/または治療的に活性な変異体を含んでなる、またはそれらからなるアルブミン融合タンパク質を提供する。さらなる態様では、アルブミン融合タンパク質の血清アルブミンタンパク質成分は血清アルブミンの成熟部分である。
【0044】
さらなる態様では、本発明は、CNTFならびに血清アルブミンの生物学的に活性なおよび/または治療的に活性な断片を含んでなる、またはそれらからなるアルブミン融合タンパク質を提供する。さらなる態様では、本発明はCNTFならびに血清アルブミンの生物学的に活性なおよび/または治療的に活性な変異体を含んでなる、またはそれらからなる、アルブミン融合タンパク質を提供する。いくつかの態様では、アルブミン融合タンパク質のCNTF部分は治療用タンパク質の成熟部分である。
【0045】
さらなる態様では、本発明はCNTFの生物学的に活性なおよび/または治療的に活性な断片または変異体、ならびに血清アルブミンの生物学的に活性なおよび/または治療的に活性な断片または変異体を含んでなる、またはそれらからなるアルブミン融合タンパク質を提供する。いくつかの態様では、本発明はCNTFの成熟部分および血清アルブミンの成熟部分を含んでなる、またはそれらからなるアルブミン融合タンパク質を提供する。
【0046】
一つの態様では、アルブミン融合タンパク質はN末端部分としてHA、およびC末端部分としてCNTFを含んでなる。あるいは、C末端部分としてHA、およびN末端部分としてCNTFを含んでなるアルブミン融合タンパク質も用いてよい。
【0047】
その他の態様では、アルブミン融合タンパク質はアルブミンのN末端およびC末端の双方と融合したCNTFを有する。一つの態様では、NおよびC末端で融合した複数のCNTFタンパク質は同じCNTFタンパク質である。もう一つの態様では、NおよびC末端で融合した複数のCNTFタンパク質は異なるCNTFタンパク質である。もう一つの態様では、NおよびC末端で融合した複数のCNTFタンパク質は、同じ疾病、疾患または症状の治療または予防に用いてよい異なるCNTFタンパク質である。もう一つの態様では、NおよびC末端で融合した複数のCNTFタンパク質は、当技術分野で一般に複数の患者に同時に発生することが知られている疾病または疾患の治療または予防に用いてよい、異なるCNTFタンパク質である。
【0048】
アルブミン部分がCNTF部分のN末端および/またはC末端と融合したアルブミン融合タンパク質に加えて、本発明のアルブミン融合タンパク質は目的のCNTFまたはペプチドをHAの内部領域へ挿入することによって製造してもよい。例えば、HA分子のタンパク質配列の中には、その末端からαへリックスの開始点の間に多数のループまたはターンが存在し、ジスルフィド結合によって安定化されている。これらのループは、HAの結晶構造(PDB識別番号1AO6、1BJ5、1BKE、1BM0、1E7E〜1E7lおよび1UOR)から決定されるように、大半は分子の本体から外へ伸び出している。このようなループは、本質的に特定の生物活性を有するアルブミン分子を生成するため、治療上有効なペプチド、特に機能的であるべき二次構造を必要とするものまたは治療用タンパク質の挿入または内部融合に有用である。
【0049】
本発明のアルブミン融合タンパク質を生成するためにペプチドまたはポリペプチドを挿入し得るヒトアルブミン構造中のループとしては、Val54−Asn61、Thr76−Asp89、Ala92−Glu100、Gln170−Ala176、His247−Glu252、Glu266−Glu277、Glu280−His288、Ala362−Glu368、Lys439−Pro447、Val462−Lys475、Thr478−Pro486、およびLys560−Thr566が挙げられる。その他の態様では、ペプチドまたはポリペプチドは成熟ヒトアルブミン(WO’480配列)のVal54−Asn61、Gln170−Ala176、および/またはLys560−Thr566ループに挿入される。
【0050】
挿入されるペプチドは、ファージディスプレイまたは特定の生物学的な活性についてスクリーニングされた合成ペプチドライブラリーから導かれたものであってもよく、また所望の機能を含む分子の活性部分から導かれたものであってもよい。さらに、ランダムペプチドライブラリーを、特定のループ内に作成してもよく、無作為化されたペプチドを全ての可能なアミノ酸の組み合わせが表されるようにHA分子の特定のループへ挿入して作成してもよい。
【0051】
このようなライブラリーは、以下の方法のうちの一つによってHAまたはHAのドメイン断片上に生成され得る。
(a)HAまたはHAドメイン断片の1以上のペプチドループ内の無作為化されたアミノ酸突然変異。どちらも、ループ内のより多くまたは全ての残基をこの方法で突然変異することもあり得る;
(b)長さXn(ここで、Xはアミノ酸であり、nは残基数である)の無作為化されたペプチドのHAまたはHAドメイン断片の1以上のループの置換、またはその1以上のループへの挿入(すなわち、内部融合);
(c)(a)および/または(b)に加えて、N−、C−またはN−およびC末端ペプチド/タンパク質融合体。
【0052】
HAまたはHAドメイン断片は、同一のHAまたはHAドメイン断片への異なる標的に対する異なるループの異なるスクリーニングからのペプチドを移植することによって、多機能にしてもよい。
【0053】
ヒト血清アルブミンのループに挿入されるペプチドはCNTFペプチドまたはそのペプチド断片またはペプチド変異体である。より具体的には、本発明は、ヒト血清アルブミンのループに挿入された少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、または少なくとも40アミノ酸長のペプチド断片またはペプチド変異体を含んでなるアルブミン融合タンパク質を包含する。本発明はまた、ヒト血清アルブミンのN末端と融合した少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、または少なくとも40アミノ酸のペプチド断片またはペプチド変異体を含んでなるアルブミン融合タンパク質を包含する。本発明はまた、ヒト血清アルブミンのC末端と融合した少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、または少なくとも40アミノ酸のペプチド断片またはペプチド変異体を含んでなるアルブミン融合タンパク質を包含する。
【0054】
一般に、本発明のアルブミン融合タンパク質は、1つのHA由来領域および1つのCNTFタンパク質由来領域を有してよい。しかし、各タンパク質の複数の領域を用いて本発明のアルブミン融合タンパク質を作成してもよい。同様に、1以上のCNTFを用いて本発明のアルブミン融合タンパク質を作成してもよい。例えば、CNTFをHAのNおよびC末端双方と融合させてもよい。そのような配置では、CNTF部分は同じまたは異なるCNTF分子であってよい。二機能性のアルブミン融合タンパク質の構造は、X−HA−YまたはY−HA−XまたはX−Y−HAまたはHA−X−YまたはHA−Y−X−HAまたはHA−X−X−HAまたはHA−Y−Y−HAまたはHA−X−HA−YまたはX−HA−Y−HAまたは複数の組み合わせおよび/またはHA配列内のどの位置へのXおよび/またはYの挿入として表され得る。
【0055】
二機能性または多機能性アルブミン融合タンパク質は、機能、半減期などに応じて種々の割合で製造してよい。
【0056】
二機能性または多機能性アルブミン融合タンパク質はまた、融合体のCNTF部分をHAの反対の末端でタンパク質またはペプチドを介して標的器官または細胞種へ標的化するよう製造してよい。
【0057】
公知の治療用分子の融合体の代わりとして、HAのN−、C−またはN−およびC末端、または一般的に6、8、12、20または25またはXn(ここで、Xはアミノ酸(aa)であり、nは残基数に等しい)無作為化アミノ酸のHAのドメイン断片との融合体として構築されたライブラリーのスクリーニングによって、全ての可能なアミノ酸の組み合わせが表されるようにペプチドを得ることもあり得る。このアプローチの特に有利な点は、ペプチドがHA分子上でin situ選択され得ること、従って、ペプチドの特性が、その後にHAと結合する、他のいずれかの方法によって誘導されたペプチドの場合など、むしろ可能性として修飾されるものに関して選択され得ることである。
【0058】
さらに、本発明のアルブミン融合タンパク質は、部分間の物理的分離をより大きくするために融合部分間にリンカーペプチドを含んでよく、従って例えば、その同族受容体との結合のため、CNTF部分の接近能を最大化することもあり得る。リンカーペプチドは、それが柔軟であるかより強固であるようにアミノ酸で構成してもよい。
【0059】
従って、上記のように、本発明のアルブミン融合タンパク質は、次式R2−R1;R1−R2;R2−R1−R2;R2−L−R1−L−R2;R1−L−R2−R2−L−R1;またはR1−L−R2−L−R1[式中R1は少なくとも1種類の治療用タンパク質、ペプチドまたはポリペプチド配列(その断片または変異体を含む)であり、必ずしも同一の治療用タンパク質である必要はなく、Lはリンカーであり、R2は血清アルブミン配列(その断片または変異体を含む)である]を有し得る。リンカーの例としては、(GGGGS)N(配列番号8)または(GGGS)N(配列番号9)または(GGS)N、式中、Nは1以上の整数であり、式中Gはグリシンを表し、Sはセリンを表す。R1が2以上の治療用タンパク質、ペプチドまたはポリペプチド配列である場合、これらの配列は所望によりリンカーによって接続してよい。
【0060】
さらなる態様では、CNTFタンパク質を含んでなる本発明のアルブミン融合タンパク質は、アルブミンと融合していない同じCNTFの保存寿命またはin vivo半減期または治療活性と比較して、保存寿命またはin vivo半減期または治療活性が延長されている。保存寿命とは、一般的に、CNTFタンパク質の治療活性が溶液またはその他の保存用の処方形態で治療活性を過度に失うことなく安定している期間をさす。多くのCNTFタンパク質はその非融合状態で極めて不安定である。下記のように、これらのCNTFタンパク質の一般的な保存寿命は、本発明のアルブミン融合タンパク質へ組み込むことによって著しく延長された。
【0061】
保存寿命の「延長された」(prolonged)または「拡大された」(extended)本発明のアルブミン融合タンパク質は、同じ保存および取り扱い条件に付された標準物質と比較して大きな治療活性を示す。標準物質は、非融合全長CNTFタンパク質であってよい。アルブミン融合タンパク質のCNTF部分が類似体、変異体、そうでなければ変更形態であるか、またはそのタンパク質の完全な配列を含まない場合、治療活性の延長は、またはその類似体、変異体、変更されたペプチド、または不完全配列の非融合同等物に匹敵する。例として、本発明のアルブミン融合タンパク質は、標準物質と同じ保存および取り扱い条件に付された場合に、所定の時点で比較すると、治療活性の約100%以上、または標準物質の治療活性の約105%、110%、120%、130%、150%または200%以上を保持する可能性がある。しかし、治療活性はCNTFタンパク質の安定性に依存し、100%以下である可能性もある。
【0062】
保存寿命はまた、保存開始時点の治療活性をノーマライズして保存後に残存する治療活性に関して評価してもよい。延長されたまたは拡大された治療活性によって示される保存寿命の延長されたまたは拡大された本発明のアルブミン融合タンパク質は、治療活性の約50%以上を保持する可能性があり、同じ条件に付された場合の同等な非融合CNTFの治療活性の約60%、70%、80%、または90%またはそれ以上を保持する可能性がある。
【実施例】
【0063】
実施例1
アルブミン融合アクソカイン(AXOKINE(商標))の製造
CNTFを、プライマー:
【化1】
をエクソン1に、そしてプライマー:
【化2】
をエクソン2に用い、それぞれ標準条件を用いて2つのエクソンを増幅してヒトゲノムDNAからクローン化した。両断片を標準条件下で連結した後、プライマー:
【化3】
を用いてPCRによって再増幅し、ベクターpCR4(Invitrogen)へクローニングした。Lambertら(PNAS 98: 4652-4657; 2001)に開示の通りアクソカイン(商標)を生成するため、位置指定突然変異誘発を用いてC17A(TGT->GCT)およびQ63R(CAG->AGA)突然変異を導入した。DNAシーケンシングも、サイレントT->C置換V85V(GTT->GTC)の存在を明らかにした。
【0064】
C末端rHA−GS−アクソカイン(商標)融合体を作成するため、アクソカイン(商標)cDNAを、単一の標準オリゴヌクレオチドプライマーMH32:
【化4】
およびMH35:
【化5】
を用いる突然変異誘発PCRによってヒトアルブミンをコードするcDNAと連結させ、14アミノ酸GS−(−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−)ペプチドスペーサーを導入した。成熟rHA−GS−アクソカイン(商標)融合体のアミノ酸配列を図8に示す。
【0065】
C末端rHA−3×FLAG−アクソカイン(商標)(切断可能なアクソカイン(商標))融合体を作成するため、一本鎖オリゴヌクレオチドプライマーMH32:
【化6】
およびCF83:
【化7】
を用いる突然変異誘発PCRによって、アクソカイン(商標)cDNAを、ヒトアルブミンをコードするcDNAと連結させ、22アミノ酸3×FLAG(−Asp−Tyr−Lys−Asp−His−Asp−Gly−Asp−Tyr−Lys−Asp−His−Asp−Ile−Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys−)ペプチドスペーサー(Sigma-Aldrich Company Ltd.)をアルブミンとアクソカイン(商標)との配列間へ導入した。成熟C末端rHA3×FLAG−アクソカイン(商標)融合体のアミノ酸配列を図9に示す。WO90/01063に開示のHSA/MF□−1融合体分泌リーダー配列を準備して確実に融合タンパク質を分泌するようにする。
【0066】
N末端アクソカイン(商標)−GS−rHA融合体を作成するため、一本鎖オリゴヌクレオチドプライマーMH33:
【化8】
およびMH36:
【化9】
を用いる突然変異誘発PCRによってアクソカイン(商標)cDNAを、ヒトアルブミンをコードするcDNAと連結させ、各14のアミノ酸GS(−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−)ペプチドスペーサーをアクソカイン(商標)とアルブミンとの配列間に導入した。成熟アクソカイン−GS−rHA融合体のアミノ酸配列を図10に示す。
【0067】
rHA−GS−アクソカイン(商標)配列、rHA−3×FLAG−アクソカイン(商標)配列およびアクソカイン(商標)−GS−rHA配列のマップを、それぞれ図11、12および13に示す。
【0068】
酵母PRB1プロモーターおよび酵母ADH1ターミネーターから、それぞれ既にWO00/44772に開示され、Sleep, D., et al. (1991)Bio/Technology 9,183-187に記載されている適当な転写プロモーターおよび転写ターミネーター配列がもたらされた。適当なベクター配列は、一般にEP−A−286424に開示され、Sleep, D., et al. (1991) Bio/Technology 9, 183-187に記載されている「分解」プラスミドpSAC35によりもたらされた。
rHA融合体が発現し、振盪フラスコ培養発現レベルが決定された。
【0069】
実施例2
精製
C末端アクソカイン(商標)は、高いレベルで切断された材料を含んでいた。それは標準のrHA SP−FF条件(米国特許第6,034,221号参照)を用いて精製されたが、ネガティブモードであり、これにより融合体は透過物中にあった。透過物をpH8および2.5mS・cm−1に調節し、15mM四ホウ酸カリウム中で平衡化した標準のrHA DE−FFにロードした。SP−FFについては、DEFFをネガティブモードで操作した。DE−FF透過物の伝導率は15mS・cm−1に増加し、次に、この材料を、過剰量の50mMオクタノエートでの溶出による標準的なrHA DBAクロマトグラフィーを用いて精製した。次に、溶出液を濃縮し、5mMリン酸pH8.3でダイアフィルトレーションした。
【0070】
N末端アクソカイン(商標)は、切断された材料をいくらか含んでいた。それは標準のrHA SP−FF条件を用いて精製されたが、ネガティブモードであり、それにより、融合体が透過物中にあった。この透過物をpH8および2.5mS・cm−1に調節し、15mM四ホウ酸カリウム中で平衡化した標準のrHA DE−FFに装填した。この場合は、融合体の比率を固定し、200mM NaClを含む標準の溶出液で溶出した。溶出液の伝導率は15mS・cm−1まで減少し、次に、この材料を、過剰量の50mMオクタノエートでの溶出による標準的なrHA DBAクロマトグラフィーを用いて精製した。次に、溶出液を濃縮し、5mMリン酸pH8.3でダイアフィルトレーションした。
【0071】
切断可能なアクソカイン(商標)は、高いレベルで切断された材料を含んでいた。それは標準のrHA SP−FF条件を用いて精製されたが、ネガティブモードであり、それにより融合体が透過物中にあった。透過物をpH8および2.5mS・cm−1に調節し、15mM四ホウ酸カリウム中で平衡化した標準のrHA DE−FFにロードした。SP−FFについては、これをネガティブモードで操作した。透過物の伝導率は15mS・cm−1に増加し、この材料を、過剰量の50mMオクタノエートでの溶出による標準的なrHA DBAクロマトグラフィーを用いて精製した。次に、この材料を濃縮し、切断バッファー中へダイアフィルトレーションした。室温で一晩切断を行い、Ekaptureゲルを用いてエンテロキナーゼを除去した。次に、この材料を濃縮し、5mMリン酸pH8.3でダイアフィルトレーションした。Wurde hier nicht erneut gereinigt?
【0072】
実施例3
薬物動態
非融合アクソカイン(商標)に対するN末端およびC末端アルブミン融合アクソカイン(商標)の半減期およびバイオアベイラビリティの評価、ならびに非融合アクソカイン(商標)に対するN末端およびC末端アルブミン融合アクソカイン(商標)の更なる薬物動態学的なパラメータの評価。
【0073】
投与プロトコール:
試験品1: 非融合アクソカイン(商標)
適用量: 0.33mL/kg
単回用量/経路: 10μg/kg 静脈内または皮下
回数: 1回(t=0)
試験品2: N末端アルブミン−融合アクソカイン(商標)
適用量: 0.33mL/kg
単回用量/経路: 40μg/kg 静脈内または皮下
回数: 1回(t=0)
試験品3: C末端 アルブミン-融合アクソカイン(商標)
適用量: 0.33mL/kg
単回用量/経路: 40μg/kg 静脈内または皮下
回数: 1回(t=0)
【0074】
試験計画
【表1】
試験動物
種/系統: ウサギ
性別/齢: 雄12匹、雌12匹;3〜4ヶ月
総数: 24
供給者: Fa. Bauer (Neuenstein-Lohe, Germany)
【0075】
動物モデル
0日に、グループあたり2匹の雄および2匹の雌のウサギに、切断可能なアクソカイン(商標)(1μg/kg)、C末端アルブミン融合アクソカイン(商標)(40μg/kg)、またはN末端アルブミン融合アクソカイン(商標)(40μg/kg)を一回の静脈内または皮下注射によって投与した。それぞれの被験物質の静脈内投与後、ベースライン、5分、10分、20分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間(1日)、48時間(2日)、72時間(3日)、7日、9日、11日、および14日に、ならびに皮下注射後、ベースライン、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間(1日)、48時間(2日)、72時間(3日)、5日、7日、9日、11日および14日に、それぞれの抗原レベルを測定するために血液サンプルを採取した。アクソカイン(商標)およびアルブミン融合アクソカイン(商標)の血漿レベルをELISAによって測定した。
【0076】
薬物動態学的(PK)変数:
消失半減期、14日までの血漿濃度曲線下面積(AUC0−14)、最大濃度(Cmax)。無限大までの推定濃度曲線下面積(AUC0−∞)、最大濃度時間(tmax)、平均滞留時間、吸収および分布の半減期(該当する場合)、分布のクリアランス量。
【0077】
分析方法
非融合アクソカイン(商標)血漿濃度のELISA測定を、モノクローナルマウス抗hu CNTF抗体(R & D Systems, クローン番号21809.111)とビオチニル化したポリクローナルヤギ抗hu CNTF抗体(R & D Systems, カタログ番号BAF257)とを組み合わせて用いて行った。ELISAキットの説明書に従ってヒトCNTFを標準物質として用いた。
【0078】
アルブミン融合アクソカイン(商標)血漿濃度のELISA測定を、モノクローナル抗huアルブミン抗体(Aventis Behring GmbH, Laboratory) とビオチニル化したポリクローナルヤギ抗hu CNTF抗体(R & D Systems, カタログ番号BAF257)と組み合わせて用いて行った。それぞれのアルブミン融合アクソカイン(商標)は標準曲線の生成に役立った。
【0079】
市販のヒトCNTF ELISA(R & D Systems)を用いると、アルブミン融合アクソカイン(商標)を検出するのは不可能であった。おそらく、アルブミンが抗CNTF抗体の結合に立体的に干渉するためであろう。
【0080】
解決法として、抗アルブミンモノクローナル抗体を捕獲用抗体として用い、内部抗アルブミンアッセイを確立し、この抗体はプレートに結合した。次の工程として、R & D Systemsより得た市販のCNTF抗体をアルブミン融合アクソカイン(商標)の検出用抗体として用いた。
【0081】
個々の血漿レベル分析
C末端およびN末端アルブミン融合アクソカイン(商標)および非融合アクソカイン(商標)の血漿濃度−時間プロフィールを、非線形回帰を用いて動物ごとに分析した。このデータを最小2乗法により指数関数モデルに当てはめた。静脈内投与の後のプロフィールには、オープン2コンパートメントモデルを用いた。皮下投与の後のプロフィールには、一次インプットとラグタイムを持つオープン1コンパートメントモデルを用いた。静脈内投与モデルには、1/(推定濃度)2のウエイト係数を適用した。
【0082】
AUCはa)最後の測定値(AUC0−14)まで線形台形公式を用いること、およびb)14日と無限大までの間の期間を推定することによって(AUC0−14)を満たすことで算出した。
【0083】
概要および比較分析
個々のPK結果を処置および適用経路ごとに記述的に要約した(最小値、中央値、最大値、平均値、標準偏差)。
【0084】
二元配置分散分析を、消失半減期、AUCおよびCmax(全て対数変換した)について行った。固定因子は性別および処置群であった。処置群間の適当な対比を評価した。不均等分散も考慮に含めた。
【0085】
この分析の上で、In(半減期)、In(AUC)およびIn(Cmax)は各々正規分布に従うことを前提とした。
【0086】
消失半減期を物質間で比較し、AUCおよびCmaxの点からバイオアベイラビリティを、両側90%信頼区間を用い、αレベル0.1でアルブミン融合アクソカイン(商標)の投与経路群間で比較した。
【0087】
結果
各時点でのアクソカイン(商標)濃度の平均値および標準偏差を、静脈内処置非融合アクソカイン(商標)群について図1に、静脈内処置アルブミン融合アクソカイン(商標)群について図2に、皮下処置アルブミン融合アクソカイン(商標)群について図3に示す。皮下処置非融合アクソカイン(商標)群に関しては、濃度測定はできなかった。
【0088】
静脈内から非融合アクソカイン(商標)で処置された動物では、注射後4時間にレベルは1pg/mLを下回った。アルブミン融合アクソカイン(商標)群では、このレベルは7日間1ng/mLを上回った。アルブミン融合アクソカイン(商標)産物で皮下処置した動物では、このレベルは約1日後にピークに達し、7日間1ng/mLを上回った。表2に静脈内処置群、表3に皮下処置群についての薬物動態学的な結果を示す。非融合アクソカイン(商標)の結果はアルブミン融合アクソカイン(商標)群の同じ単位へ変換されているが、半減期および平均滞留時間を除いては、検定法の違いからこれらとは比較できない。
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
表4は、消失半減期に関する分散分析の結果を示す。静脈内注射後の非融合およびアルブミン融合アクソカイン(商標)間の差は非常に有意であった。動物の性別は半減期に有意な影響を与えなかった。
【0092】
【表4】
【0093】
表5は、絶対的バイオアベイラビリティに関する分散分析の結果を示す。双方のアルブミン融合産物に対して、2つの投与経路間の差は、消失半減期に関して統計上有意ではなかった。AUCおよびCmaxに関する差は非常に有意であった。
【0094】
【表5】
【0095】
非融合アクソカイン(商標)の濃度曲線下面積および最大血漿レベルの値は、直接NおよびC末端アルブミン融合アクソカイン(商標)の値と比較はできない。これに対して、半減期の比較は妥当である。
【0096】
双方のアルブミン融合アクソカイン(商標)製剤は、非融合アクソカイン(商標)と比較して、静脈内投与後の血漿からの排出の延長を顕著に示した。C末端アルブミン融合アクソカイン(商標)は、非融合アクソカイン(商標)よりも72倍長い平均消失半減期を示した。N末端アルブミン融合アクソカイン(商標)は、非融合アクソカイン(商標)よりも48倍長い平均消失半減期を示した。
【0097】
AUCに関して、皮下注射後の絶対的バイオアベイラビリティは、C末端アルブミン融合アクソカイン(商標)に対して76%、N末端アルブミン融合アクソカイン(商標)に対して23%であった。非融合アクソカイン(商標)の血漿レベルは皮下適用後に検出限界以下であったので、静脈内適用との比較はできなかった。
【0098】
実施例4
薬力学
この実験の目的は、プラシーボまたは非融合アクソカイン(商標)と比較した、NおよびC末端アルブミン融合アクソカイン(商標)のレプチン欠損症または食餌誘発性肥満マウスでの体重の減少への有効性を評価することであった。
【0099】
薬力学動物試験の研究デザイン、パートI
この試験は、合計70匹の雌C57BL/6Jlepob(ob/ob)、および41匹の雄および41匹の雌C57BL/6Jマウスを含む、無作為化一部盲検平行13アーム試験(2つの実験設定での試験(レプチン欠損症誘発性肥満症対食餌誘発性肥満症)としてデザインされた。
【0100】
試験動物
C57BL/6Jlepob(ob/ob)マウスに約3ヶ月間標準餌を与えた。この間、C57BL/6Jlepob(ob/ob)マウスはレプチン欠損症に関連して食餌摂取が制御されないため体重が強く増加した。野生型C57BL/6マウスでは、脂肪分45%の高カロリー食を摂食することによって肥満症が誘発された。治療的処置に先行するこの肥満症誘発相の間、体重を週1回記録した。平均体重がベースラインの少なくとも130%まで増加したら、試験物質を用いる処置を開始した。試験物質(非融合アクソカイン(商標)、アルブミン融合アクソカイン(商標)、プラシーボ)を毎日皮下注射によって7日間にわたり投与した。治療相の間、体重を毎日測定した。ベースラインおよびプラシーボと比較した体重減少の平均を計算して試験物質の相対的効果を評価した。
【0101】
試験薬剤および用量
試験品1: プラシーボ(pH8.3の5mMリン酸緩衝液)
エンドトキシン含量: 0.007EU/mL
保存濃度: 適合せず
適用量: 250μla
一用量/経路: 適合せず/皮下
回数: 7日間連日注射
【0102】
試験品2: 非融合アクソカイン(商標)
エンドトキシン含量: 14.9EU/m2L
保存濃度: 0.1mg/mL
適用量: 250μla
一用量/経路: 表1および2に従う/皮下
回数: 7日間連日注射
【0103】
被験品3: N末端アルブミン融合アクソカイン(商標)
エンドトキシン含量: 1.8EU/mL
保存濃度: 5mg/mL
適用量: 250μla
一用量/経路: 表1および2に従う/皮下
回数: 7日間連日注射
【0104】
被験品4: C末端アルブミン融合アクソカイン(商標)
エンドトキシン含量: 64EU/mLおよび32EU/mL
保存濃度: 0.2mg/mL
適用量: 250μla
一用量/経路: 表1および2に従う/皮下
回数: 7日間連日注射
a処置日1日(83日)に全てのマウスに試験物質250μlを投与し、次に投与量を調節することによって投薬を体重の変化に適応させた。13群(1200μg/kg C末端アクソカイン(商標))のマウスには83日に約390μgを投与した。
【0105】
【表6】
【0106】
【表7】
【0107】
ob/obならびに野生型マウスの双方に対し、以下の用量減少が必要となった。
Delta製非融合アクソカイン(商標):1〜2日に300μg/kgから3〜7日に200μg/kg
N、C末端アルブミン融合アクソカイン(商標):1〜2日に280μg/kgから3〜7日に200μg/kg
N、C末端アルブミン融合アクソカイン(商標):1〜2日に1200μg/kgから3〜7日に800μg/kg
無作為化は、無作為化リストに従い、C57BL/6Jlepob(ob/ob)およびC57BL/6Jマウスに対して個別に行った。マウスを無作為化してケージに入れた後、ケージを無作為化して処置した。
有効性変数:体重(0日から7日まで毎日測定)
【0108】
分析方法
覚醒動物の体重を測定して体重を記録した。
【0109】
統計手法
一次有効性変数:7日と0日、および102日までの体重差。C57BL/6Jlepob(ob/ob)とC57BL/6Jとに分類したマウスの非融合アクソカイン(商標)、N末端アルブミン融合アクソカイン(商標)、およびC末端アルブミン融合アクソカイン(商標)への用量−反応関係を、分散モデルの一分析法の範囲内で分析した。
【0110】
最小有効量を確認するための、対比(例えば、ヘルマート対比または逆のヘルマート対比)を用いる、プラシーボを含む種々の用量の逐次比較。差異に対する両側t検定および両側95%信頼区間を用いる等モル用量ペアの比較。
【0111】
N末端アルブミン融合アクソカイン(商標)およびC末端アルブミン融合アクソカイン(商標)の非融合アクソカイン(商標)に関する全体的な評価を、対数変換した用量での平行線検定によって行った。導かれた有効性を95%信頼区間で補った。
【0112】
結果
一次エンドポイントの統計的分析
エンドポイント:82日から91、92、93、94、95、96、102日までの体重変化(g)
統計:順序仮説群(oederd hypotheses families)のANOVA内のF検定。92日に開始し、もし対応するF検定が有意であるとすれば、ある仮定は拒絶され、その前の仮定も拒絶される。
参照文献: Bauer P: Multiple tests in clinical trials. Statistics in Medicine, 10:871 890, 1991
【0113】
ob/obマウスの体重減少
図4、5、6および7は、レプチン欠損マウスでの等モル用量の非融合アクソカイン(商標)とアルブミン融合アクソカイン(商標)を比較している。
【0114】
要約すれば、薬力学的データは、レプチン欠損マウスにおいてアルブミン融合アクソカイン(商標)が、投与量群11、12、および13に対して非融合アクソカイン(商標)よりも一層統計上有意であることを示している。野生型マウスにおいては、アルブミン融合アクソカイン(商標)は、12群で非融合アクソカイン(商標)よりも一層統計上有意である。
【0115】
薬力学的動物試験の研究デザイン、パートII
本研究は本来、合計82匹の雌B6.V−Lepob(ob/ob)マウス、および41匹の雄および41匹の雌C57BL/6Jマウスを含む、2つの実験設定(レプチン欠損症誘発性肥満症対食餌誘発性肥満症)での無作為化一部盲検平行11アーム試験としてデザインされた。非融合アクソカイン(商標)のアベイラビリティの制限のため、選択されたレプチン欠損マウスの処置群のみが本研究の処置相に含められた(表8)。
【0116】
【表8】
【0117】
スケジュール
B6.V−Lepobマウスに80日まで標準餌を与え、体重は増加した。非融合アクソカイン(商標)またはC−アルブミン融合アクソカイン(商標)のいずれかでの連続7日間(81、82、83、84、85、86、87日)かまたは1、4、7日(81、84、87日)のみのいずれかでの処置は、81日に開始した。
【0118】
処置停止後21日(108日)まで体重を評価した。体重変化およびそれに関する分析は81日の体重に関連づけた。
対応する時点を次の表にまとめる。
【0119】
【表9】
【0120】
試験品の投与
試験品1: プラシーボ(pH8.3の5mMリン酸緩衝液)
製造者: Aventis Behring (Laboratory Dr. H. Metzner)
バッチ番号: −
エンドトキシン含量: 実施せず
保存濃度: 適合せず
適用量: 5μl/g
一用量/経路: 適合せず/皮下
回数: 7日間連日注射
【0121】
試験品2: 非融合アクソカイン(商標)(エンテロキナーゼ切断型
C末端アルブミン融合アクソカイン(登録商標))
製造者: Delta Biotechnology Ltd., Laboratory Dr. D. Sleep
バッチ番号: 1675#40
エンドトキシン含量: 18EU/mL
保存濃度: 約0.1mg/mL (標準物質としてCNTFと比較した、
クーマシー染色でのSDS PAGEに基づく仮定、別表B)
適用量: 5μl/g
一用量/経路: 表1に従う/皮下
回数: 1、4、7日に単回注射または7日間連日注射
【0122】
試験品3: C末端アルブミン融合アクソカイン(商標)
製造者: Delta Biotechnology Ltd., Laboratory Dr. D. Sleep/
Aventis Behring GmbH, Laboratory Dr. H. Metzner
バッチ番号: 091002
エンドトキシン含量: 16EU/mL
保存濃度: 約0.1mg/mL (標準物質としてHSAと比較した、
クーマシー染色でのSDS PAGEに基づく仮定、別表B)
適用量: 5μl/ga
一用量/経路: 表1に従う/皮下
回数: 1、4、7日に単回注射または7日間連日注射
【0123】
試験品4: 室温で14日保存したC末端アルブミン融合アクソカイン
(商標)
製造者: Delta Biotechnology Ltd., Laboratory Dr. D. Sleep/
Aventis Behring GmbH, Laboratory Dr. H. Metzner
バッチ番号: 091002
エンドトキシン含量: 16EU/mL
保存濃度: 約0.4mg/mL (標準物質としてHSAと比較した、
クーマシー染色でのSDS PAGEに基づく仮定、別表B)
適用量: 5μl/ga
一用量/経路: 表1に従う/皮下
回数: 1、4、7日に単回注射または7日間連日注射
a全てのマウスに試験物質5μlを投与した。但し、C末端アクソカイン(商標)3600μg/kgで処置したマウスには10μl/gを投与した。
【0124】
動物モデル
B6.V−Lepobマウスに12週間標準餌を与えた。この間、マウスはレプチン欠損症に関連して食餌摂取が制御されないため体重が強く増加した。治療的処置に先行するこの肥満症誘発相の間、動物の体重を測定しなかった49〜66日を除いて体重を週1回記録した。試験物質(アクソカイン(商標)、C末端アルブミン融合アクソカイン(商標)、プラシーボ)を、毎日皮下注射によって7日間にわたり投与するか、または1、4、7日の処置日に一回ずつ3回注射した。処置相の間、体重を毎日測定した。その後、14日間体重を一日おきに記録し(すなわち、1週間につき3回)、処置後21日(処置開始後28日=調査日108日)にもう一回記録した。ベースラインおよびプラシーボと比較した体重減少の平均を計算して試験物質の相対的効果を評価した。
【0125】
無作為化
無作為化リストに従って無作為化を行った。マウスを無作為化してケージに入れた後、ケージを無作為化して処置した。
【0126】
有効性変数
主変数:処置1日(調査日81日)から治療7日(調査日88、87、86、85、84、83、および82日)の体重変化(g)。
副変数:処置開始後28日の体重(調査日108日)。調査日81日から89、91、94、96、98、101、108までの体重変化(g)。
【0127】
分析方法
覚醒動物の体重を測定して体重を記録した。
【0128】
統計方法
順序仮説群のANOVA内のF検定。88日に開始し、その後下向きに進み、もし対応するF検定が有意(p≦0.05)であるとすれば、ある仮説は棄却され、その前の仮説も棄却される(p≦0.05)。同じ手順を89日から108日まで上向きに用いた。この手順は、日に関係する7つの仮説からなる一連の比較の中で複数のレベル0.05を制御した。
【0129】
4ブロックからなる分析を行った。表10および11にプラシーボと対照した試験の試験判定を集計した、すなわち、モデルの妥当性をチェックするため、有効な処置群(2〜11群)をプラシーボ(1群)と比較した。等モル用量の分析を表12および13に示す一方、処置スケジュールを表14および15で比較している。最終的に、反応基準の代わりとなる88日の体重変化での対数用量についての平行線検定を用いる効力評価を表16に要約している。検定アプローチの適合性に関する試験(すなわち、直線性、平行度)はなされていない。
【0130】
結果
体重への影響
研究処置は81日から87日まで投与された。
プラシーボとの比較
試験物質を投与した全ての群が82日〜101日の間にプラシーボに対して有意な差を示した(表10および11)。
【0131】
【表10】
【0132】
【表11】
【0133】
等モル用量の比較
【表12】
【0134】
【表13】
【0135】
処置スケジュールの比較
【表14】
【0136】
【表15】
【0137】
効力評価
【表16】
【0138】
融合タンパク質を皮下投与している間、ウサギで調査されたようにアルブミン融合アクソカインの血漿半減期の延長(非融合アクソカインよりも72倍長い)が見出されたことは極めて驚くべきことである。第一に、皮下投与は吸収を減じることが知られているがここでは事実と異なっている。第二に、ヒト血漿タンパク質の血漿半減期は動物では劇的に減少することがあるということも一般に知られているので、この延長はヒトにおいてはより一層明白となることを示している。これは、非融合アクソカインを毎日適用することに比べてほぼそれに見合う効果のある融合タンパク質の3日おきの投与が可能であるという、マウスにおける発明者らの薬力学的知見によって確認された。結果として、発明者らは融合タンパク質をおそらくヒトに週1回またはさらに長い間隔で投与することが可能ではないかと推測する。CNTFに対する抗体の産生率が減少することもあり得るため、さらなる効果および安全性は増加する可能性がある。
【0139】
臨床所見
動物の6匹が時期尚早に研究から離脱し、下記治療完了後全てが離脱した:
【0140】
84日に開始した8群、10群および11群全ての動物(毎日1200μg/kg C−AFPまたは3600μg/kg C−AFP 3回投与)は、動作が鈍く、毛並みが乱れ、皮膚が全身にわたり発赤し、全身症状が低下した。12匹の動物のうち10匹までが1200μgを投与され、3600μgで処置された全ての動物がその後2日にわたり出血性の下痢に罹り、水分摂取の減少も伴って、重い脱水症状となった。
【0141】
従って、89日に10群、11群から各一匹の動物、91日に8群の3匹の動物を死の直前に安楽死させた。さらに10群の動物1匹が96日に死亡した。
剖検で、重い肥満症、脱水症状、ならびに肝臓および腎臓の脂肪変性が、拡大した腸とともに試験した動物全てに見出された。
【0142】
結論
治療開始(81日)に先立って、合計70匹の動物が利用可能であり、プラシーボ群に10匹(1群)、そして10の有効な治療群の各々に6匹であった。合計6匹の動物が安楽死するか、研究途中に死亡し、全ては処置完了後に死亡した。つまり、89日に10、11群から各一匹の動物が、91日に8群の3匹の動物が、そして最後に10群でさらにもう一匹の動物が96日に死亡した。これらの事例ならびに見出された臨床症状は、最も用量の多い群に限定され、従って処置に関係があると考えられる。
【0143】
プラシーボで処置した動物の体重は、81日から88日の間ほぼ一定(88日の平均体重変化:−0.4%)であったが、さらなる試験の過程で108日までに体重の増加(108日の平均変化:7.2%)が認められた。
【0144】
有効な物質での処置(2〜11群)はプラシーボと比較して有意な用量依存性の体重減少をもたらした(表10)。処置完了後21日以内にも、有効成分で処置した動物はプラシーボ動物よりも有意に体重減少が高いことを示した(表11)。
【0145】
等モル用量で比較した場合、アルブミン融合アクソカイン(商標)は、たとえどちらの処置スケジュールを適用したとしても、体重減少に関して非融合アクソカイン(商標)よりも相当に優れていた(表12、図14)。治療終了後この効果は用量依存的に続き(表13)、7、11群はさらに108日まで続いた。
【0146】
7日にわたる毎日注射の結果、治療を受けている期間と21日の追跡調査期間の双方で1、4、7日の注射よりもより明白な効果が生じた(表7、8)。これは非融合アクソカイン(商標)内の比較およびC−アルブミン融合アクソカイン(商標)内の比較でも同じであった。
【0147】
効力評価は、88日の体重変化に限定された。アルブミン融合アクソカイン(商標)は、非融合アクソカイン(商標)よりも7日間の処置スケジュールおよび1、4、7日の処置スケジュールのそれぞれ1.9および2.3倍効力が高かった(表16)。1〜7日処置のほうが1、4、7日処置よりも効力が高かった。非融合アクソカイン(商標)に関して1.85倍の効力、およびアルブミン融合アクソカイン(商標)に関して9.13倍の効力が算出された。
【0148】
1、4、7日のアルブミン融合アクソカイン(商標)の注射は、非融合アクソカイン(商標)での7日間連続毎日注射とほぼ同じくらい効力があった。
【表17】
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】ウサギ(静脈内注射)における非融合アクソカイン(AXOKINE(商標))の薬物動態。
【図2】ウサギ(静脈内注射)におけるC末端およびN末端融合アクソカイン(AXOKINE(商標))の薬物動態。
【図3】ウサギ(皮下注射)におけるC末端およびN末端融合アクソカイン(AXOKINE(商標))の薬物動態。
【図4】非融合アクソカイン(AXOKINE(商標))で処置したレプチン欠損マウスの体重減少曲線。
【図5】C末端融合アクソカイン(AXOKINE(商標))で処置したレプチン欠損マウスの体重減少曲線。
【図6】非融合アクソカイン(AXOKINE(商標))で処置した野生型マウスの体重減少曲線。
【図7】C末端融合アクソカイン(AXOKINE(商標))で処置した野生型マウスの体重減少曲線。
【図8】成熟C末端アクソカイン(AXOKINE(商標))(配列番号1)のアミノ酸配列。
【図9】成熟C末端rHA−3xFLAG−(切断可能な)アクソカイン(AXOKINE(商標))(配列番号2)のアミノ酸配列。
【図10】成熟N末端アクソカイン(AXOKINE(商標))(配列番号3)のアミノ酸配列。
【図11】C末端融合アクソカイン(AXOKINE(商標))のマップ。
【図12】C末端rHA−3xFLAG−(切断可能な)アクソカイン(AXOKINE(商標))のマップ。
【図13】N末端融合アクソカイン(AXOKINE(商標))のマップ。
【図14】3日毎に非融合アクソカイン(AXOKINE(商標))およびC末端融合アクソカイン(商標)で処置したレプチン欠損マウスの体重減少曲線。
【図15】毎日非融合アクソカイン(AXOKINE(商標))およびC末端融合アクソカイン(商標)で処置したレプチン欠損マウスの体重減少曲線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルブミン、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体と、
繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体を活性化する少なくとも1つの生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体とを含んでなる、融合タンパク質。
【請求項2】
繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体を活性化する少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が、CNTFまたはその断片もしくは変異体もしくは誘導体である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
CNTFがアクソカイン(AXOKINE)である、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
融合タンパク質のin-vivo半減期が、非融合型の生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質のin-vivo半減期よりも長い、請求項1〜3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
融合タンパク質の保存寿命が、非融合型の生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の保存寿命よりも長い、請求項1〜3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
酵母で発現する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
哺乳類細胞で発現する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
哺乳類細胞がヒト細胞である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の融合タンパク質の有効量と、医薬上許容される担体または賦形剤とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項10】
肥満症およびそれに関連する疾患を治療するための薬剤の製造のための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項11】
肥満症に関連する疾患が、糖尿病、高血糖または高インスリン血症である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
哺乳類において、繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体を活性化する生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体の半減期を長くする方法であって、
前記生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質とアルブミンとを連結させてアルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質を形成させ、かつ、前記アルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質を前記哺乳類へ投与して、それによって前記アルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質の半減期を、連結したアルブミンを欠く生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質の半減期の少なくとも2倍延長することを含んでなる、方法。
【請求項13】
生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質が、CNTFまたはその断片もしくは変異体もしくは誘導体である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の半減期を、連結したアルブミンを欠く生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の半減期の少なくとも5倍延長する、請求項12〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
アルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の半減期を、連結したアルブミンを欠く生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の半減期の少なくとも10倍延長する、請求項12〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
アルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の半減期を、連結したアルブミンを欠く生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の半減期の少なくとも50倍延長する、請求項12〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
血液脳関門を通過する生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の濃度を上昇させる方法であって、
前記生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質とアルブミンとを連結させてアルブミン融合生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質を形成させ、かつ、前記アルブミン融合生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質を前記哺乳類へ投与して、それによって血液脳関門を通過する前記アルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の濃度を、連結したアルブミンを欠く生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の濃度よりも上昇させることを含んでなる、方法。
【請求項18】
生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質が、繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体、またははその断片もしくは変異体もしくは誘導体を活性化させる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質が、CNTFまたはその断片もしくは変異体もしくは誘導体である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体を活性化させる生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体による哺乳類の治療に関連する副作用を最小化する方法であって、
前記生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質とアルブミンとを連結させてアルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質を形成させ、かつ、前記アルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質を前記哺乳類へ投与することを含んでなる、方法。
【請求項21】
生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質が、繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体、またははその断片もしくは変異体もしくは誘導体を活性化させる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質が、CNTFまたはその断片もしくは変異体もしくは誘導体である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
副作用が、悪心および/または頭痛である、請求項20〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含んでなる、核酸分子。
【請求項25】
請求項24に記載の核酸分子を含んでなる、ベクター。
【請求項26】
請求項24に記載の核酸分子を含んでなる、宿主細胞。
【請求項27】
細胞中でCNTF受容体を活性化させる方法であって、細胞を請求項1〜8のいずれか一項に記載の有効濃度の融合タンパク質と接触させる工程を含んでなる、方法。
【請求項28】
細胞が哺乳類細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
細胞がヒト細胞である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
細胞中でCNTF受容体を活性化させる方法であって、請求項24に記載の核酸分子を細胞内へ導入して、請求項1〜8のいずれか一項に記載の融合タンパク質の治療上有効な量を、細胞が産生可能とすることにより、細胞に請求項1〜8のいずれか一項に記載の有効濃度の融合タンパク質を与える工程を含んでなる、方法。
【請求項31】
細胞が哺乳類細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
細胞がヒト細胞である、請求項31に記載の方法。
【請求項1】
アルブミン、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体と、
繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体を活性化する少なくとも1つの生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体とを含んでなる、融合タンパク質。
【請求項2】
繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体を活性化する少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が、CNTFまたはその断片もしくは変異体もしくは誘導体である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
CNTFがアクソカイン(AXOKINE)である、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
融合タンパク質のin-vivo半減期が、非融合型の生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質のin-vivo半減期よりも長い、請求項1〜3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
融合タンパク質の保存寿命が、非融合型の生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の保存寿命よりも長い、請求項1〜3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
酵母で発現する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
哺乳類細胞で発現する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
哺乳類細胞がヒト細胞である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の融合タンパク質の有効量と、医薬上許容される担体または賦形剤とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項10】
肥満症およびそれに関連する疾患を治療するための薬剤の製造のための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項11】
肥満症に関連する疾患が、糖尿病、高血糖または高インスリン血症である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
哺乳類において、繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体を活性化する生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体の半減期を長くする方法であって、
前記生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質とアルブミンとを連結させてアルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質を形成させ、かつ、前記アルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質を前記哺乳類へ投与して、それによって前記アルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質の半減期を、連結したアルブミンを欠く生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質の半減期の少なくとも2倍延長することを含んでなる、方法。
【請求項13】
生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質が、CNTFまたはその断片もしくは変異体もしくは誘導体である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の半減期を、連結したアルブミンを欠く生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の半減期の少なくとも5倍延長する、請求項12〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
アルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の半減期を、連結したアルブミンを欠く生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の半減期の少なくとも10倍延長する、請求項12〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
アルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の半減期を、連結したアルブミンを欠く生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の半減期の少なくとも50倍延長する、請求項12〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
血液脳関門を通過する生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の濃度を上昇させる方法であって、
前記生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質とアルブミンとを連結させてアルブミン融合生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質を形成させ、かつ、前記アルブミン融合生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質を前記哺乳類へ投与して、それによって血液脳関門を通過する前記アルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の濃度を、連結したアルブミンを欠く生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質の濃度よりも上昇させることを含んでなる、方法。
【請求項18】
生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質が、繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体、またははその断片もしくは変異体もしくは誘導体を活性化させる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質が、CNTFまたはその断片もしくは変異体もしくは誘導体である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体を活性化させる生物学的に活性なペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくは変異体もしくは誘導体による哺乳類の治療に関連する副作用を最小化する方法であって、
前記生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質とアルブミンとを連結させてアルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質を形成させ、かつ、前記アルブミン融合型の生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質を前記哺乳類へ投与することを含んでなる、方法。
【請求項21】
生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質が、繊毛様神経栄養因子(CNTF)受容体、またははその断片もしくは変異体もしくは誘導体を活性化させる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
生物学的に活性なペプチドまたはタンパク質が、CNTFまたはその断片もしくは変異体もしくは誘導体である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
副作用が、悪心および/または頭痛である、請求項20〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含んでなる、核酸分子。
【請求項25】
請求項24に記載の核酸分子を含んでなる、ベクター。
【請求項26】
請求項24に記載の核酸分子を含んでなる、宿主細胞。
【請求項27】
細胞中でCNTF受容体を活性化させる方法であって、細胞を請求項1〜8のいずれか一項に記載の有効濃度の融合タンパク質と接触させる工程を含んでなる、方法。
【請求項28】
細胞が哺乳類細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
細胞がヒト細胞である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
細胞中でCNTF受容体を活性化させる方法であって、請求項24に記載の核酸分子を細胞内へ導入して、請求項1〜8のいずれか一項に記載の融合タンパク質の治療上有効な量を、細胞が産生可能とすることにより、細胞に請求項1〜8のいずれか一項に記載の有効濃度の融合タンパク質を与える工程を含んでなる、方法。
【請求項31】
細胞が哺乳類細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
細胞がヒト細胞である、請求項31に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−213707(P2010−213707A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89560(P2010−89560)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【分割の表示】特願2004−526896(P2004−526896)の分割
【原出願日】平成15年8月6日(2003.8.6)
【出願人】(591131523)ノボザイムス バイオファーマ ユーケー リミテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【分割の表示】特願2004−526896(P2004−526896)の分割
【原出願日】平成15年8月6日(2003.8.6)
【出願人】(591131523)ノボザイムス バイオファーマ ユーケー リミテッド (9)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]