説明

アルミナの炭素熱還元によるアルミニウムの製造方法及び反応装置

アルミニウムの製造に用いられる炭素熱還元炉のアンダーフローへ炭素材料を供給するために、中空の隔壁(4)が用いられる。隔壁(4)は、低温コンパートメント(2)と高温コンパートメント(3)に分割するようになし、低温コンパートメント(2)では、酸化アルミニウムが炭素と反応して炭化アルミニウムが生成され、高温コンパートメント(3)では、炭化アルミニウムと残りの酸化アルミニウムが反応して、アルミニウムと一酸化炭素が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<発明の分野>
本発明は、アルミナの炭素熱還元によるアルミニウムの製造方法、及びアルミナの炭素熱還元によるアルミニウム製造用反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナの直接炭素熱還元は、米国特許第2974032号(Grunert et al.)に開示され、総括反応は、
Al23+3C=2Al+3CO (1)
又は、2段階で
Al23+9C=Al43+6CO (2)
Al43+Al23=6Al+3CO (3)
の反応が行われていると長い間考えられてきた。
【0003】
反応(2)は、2000℃以下の温度で行われる。反応(3)はアルミニウムを製造する反応であり、2200℃以上の高温で行われる。反応速度は、温度が高くなるほど速い。反応(2)(3)では、式に記載された物質の他に、Alガスを含む揮発性物質、ガス状の亜酸化アルミニウム(Al2O)及びCOが生成され、これらはオフガスと共に取り除かれる。これらが回収されない場合、揮発分はアルミニウム収率の損失となる。反応(2)(3)は、両方とも、吸熱反応である。
【0004】
米国特許第6440193号は、炭素熱でアルミニウムを製造する方法に関し、炭化アルミニウムは、低温コンパートメントの中で溶融酸化アルミニウムと共に製造される。炭化アルミニウムと酸化アルミニウムの溶融浴は、低温コンパートメントから高温コンパートメントへ流れて、炭化アルミニウムAl43は、酸化アルミニウム(Al23)と反応し、アルミニウムが生成される。高温コンパートメントでは、アルミニウムは溶融スラグ層の上面に層を形成し、高温コンパートメントから取り出される。低温コンパートメント及び高温コンパートメントからのオフガスは、Al蒸気及び揮発性の亜酸化アルミニウム(Al2O)を含んでおり、前記オフガスは反応してAl43を生成する。低温コンパートメントと高温コンパートメントは、共通の反応容器の中に配備され、低温コンパートメントと高温コンパートメントは、アンダーフローを分ける隔壁によって分離されている。低温コンパートメントで生成した炭化アルミニウムと酸化アルミニウムを含む溶融浴は、前記隔壁の下を連続的に流れ、重力の流れによって高温コンパートメントへ流れる。この重力の流れは、高温コンパートメントからのアルミニウムの湯出し(tapping)によって調節される。低温コンパートメント及び高温コンパートメントの温度を維持するのに必要なエネルギーは、別個に設けられたエネルギー供給システムによって供給される。
【0005】
第2ステップの反応(3)において、アルミニウムの生成を促進するのに過剰のカーボンが必要である。高温コンパートメントの中で十分な炭素量を維持するために、高温コンパートメントに追加の炭素を供給する必要がある。米国特許第6440193号では、高温コンパートメントのルーフ部に配備された供給手段を通じて、追加の炭素が添加される。追加の炭素は、高温コンパートメントの溶融アルミニウムの上面層を通過させて、高温コンパートメントの溶融浴の中へ送られる必要がある。
【発明の開示】
【0006】
<発明の要旨>
溶融アルミニウムの表面に炭素材料を加えると、アルミニウムの逆反応が生じて、高温反応ゾーン内で炭素の分布不足が起こることがわかった。この問題を解消するために、追加の炭素材料は、スラグ層の中及び上部アルミニウム層の下へ直接加えることにより、高温コンパートメントでのアルミニウム生成中におけるスラグ層の組成をより均一に維持できることがわかった。また、追加の炭素材料は、高温コンパートメントのスラグ層の中に、できるだけ均等に分配されるべきであることがわかった。また、追加の炭素材料は、制御しながら加えられるべきであることがわかった。
【0007】
これらの知見を利用できるようにするための方法及び反応装置を考案した。具体的には、本発明の方法は、追加の炭素材料が、隔壁の下を、低温コンパートメントから高温コンパートメントへ流れるように、追加の炭素材料をスラグへ加えることを含んでいる。本発明の反応装置は、追加の炭素材料が、隔壁の下を、低温コンパートメントから高温コンパートメントへ流れるように、追加の炭素材料をスラグへ供給する手段を含んでいる。
【0008】
本発明の好ましい実施例において、追加の炭素材料をスラグ層へ供給する手段は、隔壁の下部にある開口である。より具体的に述べると、隔壁は中空であり、追加の炭素材料が反応器の低温コンパートメントから高温コンパートメントへ移動する際、追加の炭素材料は、底部にある開口を出て、隔壁の底部から、スラグのアンダーフロー(underflow)へ流れることができる。追加の炭素を隔壁を通して移動させるために、スクリュー又はラム、又はスクリューとラムの組合せの如き輸送手段が用いられる。好適には、スラグのアンダーフローの開口の高さを変えることができるように、垂直方向に移動可能な中空の隔壁が用いられる。
【0009】
追加の炭素材料を、隔壁にて、スラグのアンダーフローへ追加することにより、追加の炭素材料は、上部アルミニウム層の液面より下のスラグの中へ直接加えられ、追加された炭素材料は、高温コンパートメントのスラグの中へ均一に分配されることができる。隔壁は垂直方向に移動可能であるので、追加の炭素材料の追加位置を変えることができる。通常の場合、隔壁の垂直位置の調節ができるのは、炉が稼働していないときに限られる。さらに、スラグへ加えられる炭素の量は、輸送手段が隔壁を通じて追加の炭素材料を移動させる速度によって制御されることができる。
【0010】
隔壁の中空領域及び開口は、好適には、壁全体を延びている。或いはまた、中空領域は、一連のチャンネル又は垂直に延びる複数の導管に分割されることもできる。各導管は、壁の基部に開口があり、追加の炭素材料を下方に案内し、追加の炭素材料をスラグのアンダーフローの中へ供給する。
【0011】
広義において、本発明は、炭素熱(carbothermic)によってアルミニウムを製造するための反応装置へ、追加の炭素材料を供給するプロセスであり、反応装置は、アンダーフローを分ける中空隔壁により、低温コンパートメントと高温コンパートメントに分割される。炭化アルミニウム(aluminum carbide)及び酸化アルミニウム(aluminum oxide)を含む溶融浴又はスラグは、低温コンパートメントで作られる。炭化アルミニウムと酸化アルミニウムの溶融浴は、中空の隔壁の下を高温コンパートメントへ流れ、該高温コンパートメントにて、炭化アルミニウムはアルミナと反応してアルミニウムを生成し、これが溶融スラグの底部層の上面に層を形成し、また、アルミニウムは高温コンパートメントから排出される。追加の炭素材料は、中空隔壁の少なくとも1つの開口を通じて、炭化アルミニウム及び酸化アルミニウムの溶融浴へ供給される。なお、前記開口の位置は、高温コンパートメントの溶融アルミニウムの層よりも下にある。換言すれば、壁の中における開口の位置は、壁の下を流れるスラグの液面である。
【0012】
本発明の反応装置は、炭素熱によってアルミニウムを製造するためのものであり、低温反応コンパートメントと高温反応コンパートメントを有する反応容器(reaction vessel)を具えている。低温コンパートメントは、該コンパートメントへ材料を供給する手段と、動作電流を前記コンパートメントへ供給する1又は2以上の電極を具えており、前記電極は、低温コンパートメントの中で作られた溶融浴に浸漬されるように配置される。高温反応コンパートメントと低温コンパートメントは、中空の隔壁によって分離されている。中空の隔壁は、溶融浴のアンダーフローへ通じる少なくとも1つの開口を有しており、該開口によって、溶融浴は、低温反応コンパートメントから高温コンパートメントへアンダーフローが可能となる。反応容器の高温コンパートメントの側壁には、電流を該コンパートメントへ供給するために、複数対の電極がほぼ水平方向に配備されている。高温コンパートメントは、溶融アルミニウムを連続的に排出するための出口を有している。低温コンパートメントの中で作られた溶融浴は、上部アルミニウム層が高温コンパートメントへ送られるときの重力の流れによって、高温コンパートメントへ流れる。隔壁の少なくとも1つの開口の位置は、高温コンパートメントの溶融アルミニウムの層よりも下である。
【0013】
本発明にあっては、追加の炭素材料は、コーク、石炭、炭素粉末又は他の形態をとることができる。また、追加の炭素材料は、Al43の形態をとることができる。Al43は、高温コンパートメントで生成したCOガスの量を低減し、また、高温及び低温コンパートメントに接続されたオフガス反応器から再循環させることができるので好ましい。また、反応容器から排出された生成アルミニウムから濾過されたAl43は、追加の炭素材料の形態として用いられることもできる。
【0014】
<発明の詳細な説明>
図1は、略矩形の気密型反応容器(1)を示しており、該反応容器は、アンダーフローを分割する中空の隔壁(4)によって、低温コンパートメント(2)と高温コンパートメント(3)に分けられており、低温コンパートメント(2)から高温コンパートメント(3)への溶融浴(molten bath)の流れが可能となり、溶融浴が隔壁(4)の下を通過する際、追加の炭素材料が溶融浴に加えられる。高温コンパートメント(3)の低温コンパートメント(2)とは反対側の端部には、溶融アルミニウム(31)の層を取り出すための出口(5)が配備される。溶融浴は、低温コンパートメント(2)から高温コンパートメント(3)へ重力によって流れる。この流れは、出口(5)でアルミニウム(31)の取り出すことによって影響を受けて調節される。アルミニウムが高温コンパートメントから取り出されると、それに対応する量の溶融浴が隔壁の下を、低温コンパートメントから高温コンパートメントへ流れる。2つのコンパートメントは、別個の導管によって接続されていない。
【0015】
低温コンパートメント(2)には、複数(通常は2〜4個)の電極(6)が、反応容器(1)の天井部を貫いて配備される。電極(6)は、反応容器(1)の稼働中、抵抗加熱によってエネルギーを供給するために、溶融浴の中に通され、低温コンパートメント(2)の溶融浴の中に浸漬されている。電極(6)は、電流を供給する公知の手段(図示せず)及び電極(6)を調節するための公知の手段(図示せず)を有することもできる。電極(6)は、消耗性グラファイト電極が好ましいが、これら使用に適したものであれば他のどんな材料でも使用可能である。
【0016】
高温コンパートメント(3)には、反応容器(1)の側壁に沿って複数対の電極(7)が配備される。図1において、電極の側面図を丸印で示している。電極は一方の壁から貫通しており、各電極対のうち一方の電極のみを示している。電極(7)は、消耗性グラファイト電極又は非消耗性の不活性電極である。電極(7)の各対には、電流が個々に供給される。反応容器(1)の側壁に複数対の電極(7)を用いることにより、高温コンパートメント(3)の溶融浴は均一な温度に達することができる。図示の如く、電極(7)は溶融浴の上部を通るのではなく、アルミニウム層(31)のレベルよりも下方に配備されており、これが前述の如く利点をもたらす。低温コンパートメント(2)の天井部には、炭素質還元材料(36)と、ホッパー(34)からアルミナ(32)を低温コンパートメント(2)へ供給するための供給手段(8)が配備される。供給手段(8)は、反応器のオフガスが脱出することなく原材料を供給することができるように、気密構造が好ましい。
【0017】
低温コンパートメント(2)の天井部の上には、第1のガス出口(9)が配備される。ガス出口(9)は、Al43を回収するために、反応器(10)に繋がっている。
【0018】
高温コンパートメント(3)の天井部の上には、第2のガス出口(19)が配備される。この第2のガス出口は、低温コンパートメント(2)の天井部の上に配備されたガス出口(9)と同じである。高温コンパートメント(3)から出たオフガスは、Al43を回収するために、別の反応器(10)に繋がっている。ガス出口(9)(19)の中を流れるガスは、両方とも、同じ反応器(10)の中を通ることができる。
【0019】
中空の隔壁(4)の上には、追加の炭素材料を収容するホッパー(30)が配備され、追加の炭素材料は、前記ホッパーから中空隔壁(4)を通って、溶融浴のアンダーフローへ供給される。反応器(10)から回収されたAl43は、追加の炭素材料として使用するために、ホッパー(30)へ再循環させることが好ましい。ホッパー(30)及び中空の隔壁(4)は、反応器のオフガスが脱出することなく追加の原材料が供給されるように、気密構造であることが好ましい。
【0020】
図2は中空隔壁(4')の望ましい実施例の断面図であり、図3は、図2の3−3線に沿って切断した隔壁の平面図である。壁(4')は、側部(4'a)(4'b)及び空間(4'c)を有しており、ここに炭素材料が収容される。壁(4')の中には、スクリュー(4'd)が配備され、該スクリューによって、追加の炭素材料は空間(4'c)の下方へ進み、壁(4')の底部の開口(4'e)から出て行く。壁(4')の外側には、冷却システム(4'f)を設けることが好ましい。冷却システム(4'f)は、公知の要領にて動作する公知の冷却システムであってよい。壁(4')を垂直方向に移動させるために、ラック・ピニオンシステム(4'g)が用いられる。壁(4')を移動させることにより、開口(4'e)の高さは変化し、これによって、スラグのアンダーフローへ追加する炭素材料の追加高さの調節が可能となる。スクリュー(4'd)の動作速度を制御することにより、開口(4'e)を通って供給される追加の炭素材料の量が調節される。
【0021】
ラック・ピニオンシステム(4'g)は公知のシステムであり、公知の要領で動作して、壁(4')を移動させ、追加の炭素材料のスラグへの供給高さが調節される。
【0022】
冷却システム(4'f)はまた、壁(4')の移動の案内を補助する働きを有する。
【0023】
図4及び図5は、他の実施例を示しており、中空領域は複数の導管に分かれている。このような導管もまた、円形空間又は円形中空部として示されている。隔壁(4'')は、空間(4''c)を有しており、該空間の中にスクリュー(4''d)が配備され、該スクリューにより、炭素材料は空間(4''c)の下方へ進み、アンダーフローのスラグへ供給される。アンダーフローのスラグへ供給される追加の炭素材料の量は、空間(4''c)の中で回転するスクリュー(4''d)の速度によって調節される。速度が速いほど、より多くの追加の炭素材料がアンダーフローのスラグへ供給される。追加の炭素材料は、壁(4'')の開口(4''e)から出て行く。壁(4'')には、冷却/保護のための層(4''f)も配備される。
【0024】
スクリュー(4'c)(4''c)は、公知の装置であり、公知の要領で作動して、追加炭素材料の固体粒子を、夫々、空間(4'c)(4''c)を通って下方へ移動させ、前記炭素材料は、開口(4'e)(4''e)から出て行く。スクリュー(4'c)(4''c)を回転させるのに用いられるモータは、速度変化を行ない、アンダーフローのスラグへ加えられる追加の炭素材料の量を制御できるように、可変であることが好ましい。
【0025】
本発明に係るプロセスを実行するための好ましい実施例について、図1を参照して説明する。アルミナと炭素が供給手段(8)から低温コンパートメント(2)へ供給される。電極(6)を通じて電気エネルギーが供給され、アルミナとAl43の溶融スラグ浴が約2000℃の温度に維持される。電極(6)は、溶融スラグ浴の中に浸漬され、エネルギーは抵抗加熱によって溶融スラグへ移される。低温コンパートメント(2)からのオフガスは通常、CO、Al2O及び多少のAl蒸気を含んでおり、このオフガスは、オフガス用ダクトから引き出され、オフガス用出口(9)の下部に送られる。反応器(10)の中に回収されるAl43は、ホッパー(30)及び中空の隔壁(4)を通じて反応器へ再循環させることが好ましい。
【0026】
低温コンパートメント(2)で生成した炭化アルミニウムとアルミナからなる溶融スラグは、中空の隔壁(4)の下を連続的に流れ、高温コンパートメント(3)の中へ送られる。ホッパー(30)からの追加の炭素材料は、中空の隔壁(4)の中を通って下方へ流れ、壁(4)の下を流れる溶融スラグの中へ流れる。
【0027】
図2乃至図5に示されるように、スクリュー(4'd)(4''d)を回転させると、追加の炭素材料は、夫々、壁(4')(4'')の中を移動し、開口(4'e)(4''e)から出て行く。ラック・ピニオンシステム(4'g)を用いて、壁(4')を上下に移動させることにより、開口(4'e)のスラグ中での高さを変えることができる。スクリュー(4'd)(4''d)の速度を変えることにより、ホッパー(30)からアンダーフローのスラグへ流れる追加の炭素材料の量を調節することができる。
【0028】
高温コンパートメント(3)において、複数の側壁電極(7)へ電流を供給し、スラグ浴を抵抗加熱によって加熱することにより、溶融スラグの温度は2100℃まで上昇する。複数対の電極(7)を、高温コンパートメント(3)の側壁に沿って、溶融アルミニウム層(31)よりも下方に配備することが非常に重要であり、これにより、高温コンパートメント(3)の長さ方向のスラグ浴の温度の制御が可能となり、局部的な過熱は低減又は回避される。このプロセスでは、コンパートメント(2)の矢印(38)に示されるように、溶融スラグは、高温コンパートメント(3)の中へ略水平方向に流れるので、加熱ダクトを別個に設ける必要はなく、又は、スラグが流れるようにするためのガスを用いる必要はない。
【0029】
高温コンパートメント(3)における溶融スラグの温度を約2100℃を超える温度に維持することにより、炭化アルミニウムがアルミナと反応して、Al及びCOガスが生成される。追加の炭素は、Al生成反応中に消費した炭素と置換される。高温であるため、発生した相当量のAlがAl2Oと共に蒸発し、オフガスと共に炉から出て行く。高温コンパートメント(3)で生成した液体Alは、その低密度ゆえに、溶融スラグの底部層の上に溶融層(31)を生成し、オーバーフロー出口(5)を通って炉から排出される。残存スラグを低温コンパートメント(2)は再循環させるために、ダクトを別個に設ける必要はないので、費用の節約になり、プロセスを簡素化することができる。炭化アルミニウムとアルミナの反応が行われる間、高温コンパートメントの中の溶融スラグは炭素が消費される。それゆえ、高温コンパートメント(3)に対し、追加の炭素材料が中空壁(4)を通じて供給される。高温コンパートメント(3)へは、炭素材料に加えて、固体アルミナを中空壁(4)を通じて供給することもできる。
【0030】
高温コンパートメント(3)で生成したアルミニウムは、溶融炭化アルミニウムで飽和される。高温コンパートメント(3)で過熱されたアルミニウムは、オーバーフロー/アンダーフロー用出口(5)から連続的に排出され、下流の工程に送られる。アルミニウムは次に、好適には、アルミニウムスクラップ(42)を冷却容器(44)の中へ加えることにより、アルミニウムの融点を超える温度まで冷却され、流れ(stream)(40)が形成される。アルミニウムが冷却されると、アルミニウムに溶解した炭化アルミニウムの主要部は、固体の炭化アルミニウム(46)として析出し、浄化容器(48)の中で、冷却された溶融アルミニウムからスキミングして取り除かれる。容器(44)と容器(48)は組み合わせることができる。残りの炭化アルミニウム(50)は、例えば、流れ(49)をフィルター(52)の中を通過させることにより、公知の手段によって除去されることができる。排出後、アルミニウムから除去された炭化アルミニウムは、好適には、低温コンパートメント(2)及び/又は中空隔壁(4)へ再循環される。冷却容器、浄化容器及びフィルターは、その機能を実行するのに有効なものであれば、どんな種類のものを用いてもよい。
【0031】
清浄化されたアルミニウムの流れ(54)は、例えばH2を除去する脱ガス装置(56)、溶湯から酸化物を取り除くフラックス処理装置(58)等の幾つかの装置の後、最後に鋳造装置(60)に送られ、例えば約50ポンド(22.7kg)〜約750ポンド(341kg)のインゴット(62)等の一次地金が得られる。これらのインゴットは、保持炉又は混合炉の中で最終の合金化のために再溶融される。或いは又、フラックス処理装置から溶湯を直接に炉へ送り、最終的な合金化を行ない、所定形状のアルミニウム合金として鋳造することもできる。Cu、Fe、Si、Mg、Ni、Cr等の元素が、82%Al/18%Cu等のリッチ合金インゴットとして混合炉へ加えられることもあるが、それは、純粋形態での追加は実行できないからである。これらの作業は広く知られており、例えば、文献[Aluminum, Vol.III, Ed. Kent r. Van Horn, Amer. Soc. of Metals (1967), pp.18-36]に記載されており、この文献は引用を以て本願への記載加入とする。
【0032】
高温コンパートメント(3)のスラグ層の炭素の量及び位置は、センサー(70)によって測定されるか、又はスラグの電気抵抗を測定することによって求められる。これは、存在する炭素の量を判断し、炭素がスラグ層の中に均一に分配されているかどうかを知ることができる。センサー(70)は、公知の要領で作動する公知のセンサーである。
【0033】
センサー(70)は、スクリューのモータ(72)及びラック・ピニオンシステム(4'g)に連繋され、加えられた炭素量と、炭素材料が加えられるスラグ層の高さが調節される。各々のスクリューコンベヤー(4'd)(4''d)の個々のモータは、独立して制御され、第3次元での炭素材料の追加が制御される。特に、炉の側部に沿って追加の炭素材料が必要とされる場合、壁(4')(4'')の端部のスクリュー(4'd)(4''d)だけが作動し、壁(4')(4'')の中央部のスクリュー(4'd)(4''d)は停止する。ラック・ピニオンシステム(4'g)と共に、スクリュー(4'd)(4''d)の各々を独立して制御することにより、壁(4')(4'')を通って追加される炭素材料の3次元制御が可能となる。
【0034】
特許請求の範囲は、例示のために選択した発明の望ましい実施例について、発明の精神及び範囲から逸脱すことなく行われる全ての変化及び変更を包含するものである。
【0035】
本発明の望ましい実施例を記載したが、特許請求の範囲の記載の範囲内で、本発明の異なる実施例も可能であることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る反応容器の望ましい実施例の横断面図である。
【図2】中空隔壁の横断面図である。
【図3】図2の3−3線に沿って切断した中空隔壁の平面図である。
【図4】内部に複数の導管を有する隔壁の平面図である。
【図5】図4の5−5線に沿って切断した中空隔壁の側面図である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素熱によってアルミニウムを製造する方法であって、低温コンパートメントにて炭化アルミニウムを含む溶融浴が作られ、該溶融浴は高温コンパートメントへ流れ、該高温コンパートメントにて炭化アルミニウムがアルミナと反応してアルミニウムを生成し、前記アルミニウムが溶融スラグの上に層を形成するようになし、低温コンパートメントと高温コンパートメントは共通の反応容器の中に配備され、低温コンパートメントと高温コンパートメントは、アンダーフローを分ける中空の隔壁によって分離されており、前記隔壁は開口を有し、低温コンパートメントで生成した溶融浴は、隔壁の下を連続的に流れて、高温コンパートメントの中に入り、追加の炭素材料が、中空隔壁の開口を通じて、隔壁の下の流れへ供給される、方法。
【請求項2】
中空の隔壁は垂直方向に移動可能である請求項1の方法。
【請求項3】
スラグに加えられる追加の炭素材料の量は、隔壁の下の流れへ炭素材料を供給する輸送手段の移動速度を制御することによって調節可能である請求項1の方法。
【請求項4】
低温コンパートメントからのオフガスと高温コンパートメントからのオフガスが反応してAl43が生成され、Al43は隔壁の下の流れへ供給される請求項1の方法。
【請求項5】
高温コンパートメントにおけるスラグの炭素含有量が測定され、輸送手段へフィードバックされる請求項3の方法。
【請求項6】
高温コンパートメントのスラグ中の炭素量を検知し、隔壁を通して追加される炭素材料の量を変化させることをさらに含んでいる請求項1の方法。
【請求項7】
取り出されたアルミニウムは、炭化アルミニウムを含んでおり、炭化アルミニウムは析出し、浄化されたアルミニウムは合金化され、次に、合金化されたアルミニウム形状に鋳造され、前記炭化アルミニウムは、追加の炭素材料として、隔壁の下の流れへ供給される請求項1の方法。
【請求項8】
取り出されたアルミニウムは、炭化アルミニウムを含んでおり、取り出されたアルミニウムは冷却されて炭化アルミニウムを析出し、濾過され、脱ガスされた後、インゴット鋳造機械の中で鋳造して、アルミニウム形状が形成され、析出した炭化アルミニウムは、追加の炭素材料として、隔壁の下の流れへ供給される請求項1の方法。
【請求項9】
アルミニウムを炭素熱で製造するための反応容器を具える反応装置であって、前記反応容器には、低温コンパートメントと高温反応コンパートメントが配備され、
低温コンパートメントは、前記低温コンパートメントへ材料を供給する手段と、前記低温コンパートメントへ作動電流を供給する1又は2以上の電極を有し、前記電極は、低温コンパートメントの溶融浴の中へ浸漬されるように配置されており、
高温コンパートメントは、開口を有する中空の隔壁によって低温コンパートメントと分離され、低温コンパートメントから高温コンパートメントへ溶融浴のアンダーフローを可能となし、前記開口からアンダーフローへ追加の材料を供給する輸送手段を含んでおり、
電流を前記高温コンパートメントへ供給するために、反応容器の高温コンパートメントの側壁に配備された電極と、
高温コンパートメントへ材料を送り込む手段と、
高温コンパートメントから溶融アルミニウムを連続的に排出する出口と、
を具えている反応装置。
【請求項10】
反応容器は略矩形の形状であり、隔壁は垂直方向に移動可能である請求項9の反応装置。
【請求項11】
輸送手段は、追加の炭素材料をアンダーフローへ供給する供給速度を制御するために可変である請求項9の反応装置。
【請求項12】
高温コンパートメント内の炭素量を検出するためのセンサーをさらに具えている請求項9の反応装置。
【請求項13】
1又は2以上のオフガス反応器は、Al43を生成する反応器のコンパートメントに接続され、ホッパーは、炭素材料を中空の隔壁へ供給するために用いられる請求項9の反応装置。
【請求項14】
オフガス反応器で生成されたAl43をホッパーへ供給する手段をさらに具えている請求項13の反応装置。
【請求項15】
輸送手段は、少なくとも1つのスクリューを具えている請求項9の反応装置。
【請求項16】
中空の隔壁は複数の空間を有し、各空間には輸送手段が独立して配備される請求項9の反応装置。
【請求項17】
アルミナの炭素熱還元によってアルミニウムを製造するための反応装置において、高温反応コンパートメント及び低温反応コンパートメントの2つのコンパートメントを有する単一の反応容器と、前記2つのコンパートメントを分離してアンダーフローを分割する隔壁とを具え、スラグが、隔壁の下を、低温コンパートメントから高温コンパートメントへ流れることができるものにおいて、
低温コンパートメントから高温コンパートメントへ流れるスラグに対して、アンダーフローを分割する隔壁を通じて、追加の炭素材料を供給する手段を具えていることを特徴とする、反応装置。
【請求項18】
供給手段は、隔壁の中に中空領域と、1又は2以上の開口を有しており、前記1又は2以上の開口は、隔壁の下部に開設されて、前記中空領域を前記流れに連通している請求項17の反応装置。
【請求項19】
供給手段は、隔壁の中に配備された1又は2以上の導管を含んでおり、各導管は、隔壁の下部に、前記流れに連通する開口を有している請求項17の反応装置。
【請求項20】
ホッパーは、追加の炭素材料を供給する供給手段に連通している請求項17の反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−519921(P2006−519921A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501152(P2006−501152)
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/004243
【国際公開番号】WO2004/081246
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(500277629)アルコア インコーポレイテッド (49)
【出願人】(505334938)
【氏名又は名称原語表記】ELKEM AS
【Fターム(参考)】