説明

アルミナまたはオキシ水酸化アルミニウム基材上にランタンペロブスカイトを含む組成物、調製方法および触媒における使用

本発明に従う組成物は、式LaMOのペロブスカイトを含み、式中Mは、アルミナまたはオキシ水酸化アルミニウム基板上に分散された粒子の形態で、鉄、アルミニウムまたはマンガンから選択される少なくとも1つの元素であり、700℃で4時間の焼成後に、ペロブスカイトが純粋な結晶学的相の形態であること、およびペロブスカイト粒子のサイズが15nmを超えないことを特徴とする。本発明に従う組成物は、触媒作用の分野に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナまたはオキシ水酸化アルミニウムで構成された担体上にランタン系ペロブスカイトを含む組成物、この調製方法および触媒におけるこの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般式ABOのペロブスカイトは、触媒作用の分野において有利な特性を示すことが知られている。この分野において、これらは好ましくは、ペロブスカイトと、処理されるべきストリーム、例えばガスとの接触に関わる表面積を増大させるために、担持された形態で使用される。担体は、特にアルミナ、シリカまたはセリアであることができる。
【0003】
担持されたペロブスカイトの場合、担体上に可能な限り細かく分散させること、即ち担体上でナノメートルサイズの微粒子の形態で提供されることが、ペロブスカイトには重要である。さらに、触媒は高温に曝されることが多いので、ペロブスカイトの細かく分割された状態が、これらの温度においてさえも維持されることが望ましい。言い換えれば、ペロブスカイト粒子の焼結は生じるべきではない。
【0004】
さらに、高温では、純粋なペロブスカイト相以外の干渉結晶学的相の出現も認められる場合がある。これらの相の形成は、担持されたペロブスカイトの触媒活性を低下させる結果となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
故に、高温であっても相の純度を保持することができる生成物が探求され続けている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主題は、これらの条件を満たす組成物の開発である。
【0007】
この目的を達成するために、本発明の組成物は、式LaMOのペロブスカイトを含み、式中Mは、アルミナまたはオキシ水酸化アルミニウムに基づく担体上に分散された粒子の形態での、鉄、アルミニウムまたはマンガンから選択される少なくとも1つの元素を表し、700℃で4時間の焼成後に、ペロブスカイトが純粋な結晶学的相の形態で存在すること、およびペロブスカイト粒子が最大15nmのサイズを有することを特徴とする。
【0008】
故に、本発明の組成物は、細かく分散した形態および純粋な結晶学的形態の両方であるペロブスカイトを示すという利点を有する。
【0009】
さらに、本発明の組成物は、有利な還元特性を示すことができる。
【0010】
本発明の他の特徴、詳細および利点は、本明細書を読み、添付の図面を調べる際にさらにより完全に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従う生成物のXRD回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「レアアース金属」という用語は、イットリウムおよび原子番号57から71(両端を含む。)の周期表の元素からなる群からの元素を意味すると理解される。
【0013】
説明を継続するため、「比表面」という用語は、定期刊行物「The Journal of the American Chemical Society,60,309(1938)」に記載されるブルナウア−エミット−テラー方法から作成された標準ASTM D 3663−78に従う窒素吸着によって決定されるBET比表面を意味すると理解される。
【0014】
さらに、所与の温度および所与の時間にわたる焼成は、特に指示のない限り、空気下、固定温度レベルにおいて、示された時間にわたる焼成に対応する。
【0015】
また、説明を継続するため、特に指示のない限り、与えられる値の範囲または限度のすべてにおいて限度の値を含み、故にこのように定義された値の範囲または限度は、少なくとも下限以上の任意の値および/または最大で上限以下の任意の値を包含することを規定する。
【0016】
故に本発明の組成物は、ナノメートルサイズの粒子の形態において担持されたペロブスカイトを含み、これらの粒子はアルミナで構成された担体に堆積されている。
【0017】
ペロブスカイトは、式LaMOに対応し、式中Mは、鉄、アルミニウムまたはマンガンから選択される少なくとも1つの元素を表す。故に、本発明は、Mが上述の元素の2つまたは3つの組み合わせを表し得る場合を明確に包含する。
【0018】
ペロブスカイトの構造的安定性により、同一または異なる価数を有するカチオンによって、カチオンAおよびBを部分置換できることが知られている。こうした理由から、本発明は、ペロブスカイトの元素LaおよびMの少なくとも1つが、少なくとも1つの置換基元素によって部分的に置換される場合を包含する。
【0019】
単なる例として、置換基元素は、カルシウムおよびレアアース金属から選択できる。このレアアース金属は、より詳細には、セリウム、イットリウム、プラセオジムまたはネオジムであることができる。
【0020】
置換基元素はまたコバルトおよびストロンチウムから選択できる。
【0021】
一般に、カルシウムおよびレアアース金属は元素Laの置換基として存在し、コバルトおよびストロンチウムは元素Mの置換基として存在するが、置換基分類のこうした属性は、例としてのみ与えられ、絶対的なものではなく、1つの元素のために与えられる置換基は、別の元素を置換できることを排除しないことを理解する。
【0022】
上述した元素Mの組み合わせは、第1の元素Mの第2の元素Mによる部分置換として理解できることに留意できる。
【0023】
置換基元素の量は、約1%から20%、より詳細には5%から15%の範囲において既知の方法にて変動でき、この量は、置換基元素/(置換基元素+置換された元素)原子比によって表現される。
【0024】
組成物中のペロブスカイトの量は、広い限度内で変動し得る。この量は、組成物の総重量に関して、約40重量%、より詳細には約35重量%、およびさらにより詳細には約30重量%までのペロブスカイトの範囲であることができる。
【0025】
担持されたペロブスカイトの最小含有量は、当業者が、満足のいく触媒活性を得ることができると判別する量であり、これは組成物に関して所望される性能に従って設定される。単なる例として、ペロブスカイトのこの量は、少なくとも約1重量%、より詳細には少なくとも5重量%、およびさらにより詳細には少なくとも10重量%であることができる。故にペロブスカイトのこの量は、先行する段落にて上記の最小値のいずれか1つと、上記の最大値のいずれか1つとの間で含まれることができる。故により具体的には、この量は、5重量%から30重量%の間、およびより詳細には10重量%から20重量%の間であることができる。所与の担持されたペロブスカイトに関して、組成物中のペロブスカイトの量が低下するにつれて結晶子のサイズは一般に低下することに留意できる。
【0026】
既知の方法において、ペロブスカイトは、元素LaまたはMの1つの欠乏または不足を示し得る。この欠乏は、ペロブスカイトの触媒活性を増大させることができる。この欠乏は、この不足のないペロブスカイトにおける元素LaまたはMnの化学量論量に関して、5%から30%、より詳細には10%から20%にわたる範囲にあることができる。
【0027】
本発明の第1の特徴に従って、ペロブスカイトは、700℃において4時間の組成物の焼成後であっても純粋な結晶学的相の形態で存在する。
【0028】
結晶学的意味における純度は、X−線回折(XRD)図によって示される。組成物の回折図は、示された条件の下での焼成後に、担体のアルミナまたはオキシ水酸化アルミニウムの結晶学的相に加えて、ペロブスカイト相のピークのみを示す。例えば酸化物Laまたは元素Mの酸化物に対応するピークの出現は見られない。
【0029】
上記で示されたように、本発明の組成物において、ペロブスカイト粒子は、担体上に堆積されるまたは担体にわたって分散される。これは、ペロブスカイト粒子が主であることを意味すると理解され、好ましくはこの担体の表面に完全に存在し、粒子は、担体の孔内に存在することができるが、しかしながらこれらの孔の表面に留まることが理解される。
【0030】
本発明の別の特徴に従って、これらの粒子は、組成物が700℃で4時間焼成された場合に、最大15nmであるサイズを示す。
【0031】
本明細書にて示されるサイズの値は、XRD技術によって決定される平均サイズである。XRDによって測定される値は、デバイ−シェラーモデルを用いることによって、x、y、z空間群における3つの最強回折線の幅から計算される同位相ドメインのサイズに対応する。
【0032】
さらに、ペロブスカイト粒子は、分離して、ひいては単結晶を構成し得るか、または場合により同位相ドメインを形成する幾つかの結晶の粒塊形態であり得るかのいずれかであることに留意すべきである。
【0033】
好ましい実施形態によれば、粒子は、最大10nmのサイズを示す。Mがマンガンまたはアルミニウムであるペロブスカイトである特定の場合に、これら2つの元素は場合により置換されることができ、最大5nmのサイズを得ることができる。ここで示されるサイズ値は、常に700℃で4時間焼成された組成物に関するものであると理解されるべきである。
【0034】
最後に、粒子は、XRD技術による測定の可能性限度において非常に小さい最小サイズを示す場合があり、例えば700℃で4時間の焼成後に2から3nmのオーダーであり得ることに留意すべきである。
【0035】
本発明の組成物の担体は、まずアルミナに基づくものであることができる。好ましくはこの担体は、安定で高い比表面を示すべきであり、即ち高温に曝された後であっても満足のいく値を維持する比表面を示すべきである。
【0036】
本明細書では、触媒に適用するのに満足のいく比表面を示すことができるいずれかのタイプのアルミナを使用できる。故に、特に少なくとも80m/g、好ましくは少なくとも100m/g、および例えば80m/gから400m/gの間を含む比表面を示すアルミナを使用できる。
【0037】
少なくとも1つの水酸化アルミニウム、例えばバイヤライト、水礬土またはギブサイト、またはノルドストランドの急速脱水、および/または少なくとも1つのオキシ水酸化アルミニウム、例えばベーマイト、擬ベーマイトおよびダイアスポアの急速脱水により得られるアルミナを挙げることができる。
【0038】
担体はまた、同様に適切な比表面を示す上述のタイプの、即ちアルミナに関して上述のようなオキシ水酸化アルミニウムに基づくことができる。
【0039】
本発明の特定の実施形態によれば、安定化されたおよび/またはドープされたアルミナまたはオキシ水酸化アルミニウムが使用される。安定化するおよび/またはドープする元素として、レアアース金属、チタン、ジルコニウムおよびケイ素を挙げることができる。特にとりわけレアアース金属のうち、セリウム、プラセオジミウム、ネオジム、ランタンまたはランタン/ネオジム混合物を挙げることができる。この例では、ランタンが好ましいレアアース金属である。これらの元素は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0040】
説明を継続するために、「安定化された」、「ドープされた」、「安定化する」または「ドープする」という用語は、非限定的に解釈されるべきであり、故にドープする元素は安定化する元素として理解でき、またその逆も同様であることに留意すべきである。
【0041】
安定化されたおよび/またはドープされたアルミナまたはオキシ水酸化アルミニウムは、本質的に既知の方法、特にアルミナまたはオキシ水酸化アルミニウムを、上述の安定化するおよび/またはドープする元素の塩、例えば硝酸塩の溶液で含浸することによって、またはアルミナもしくはオキシ水酸化アルミニウム前駆体およびこれらの元素の塩を同時乾燥し、続いて焼成することによって調製される。
【0042】
さらに、水酸化アルミニウムまたはオキシ水酸化アルミニウムの急速脱水から得られたアルミナ粉末を、より詳細には塩であることができるランタン化合物および場合によりネオジム化合物で構成された安定化剤の存在下で熟成操作に供する安定化されたアルミナの別の調製を挙げることができる。熟成は、アルミナを水中に懸濁させ、次いで例えば70から110℃の間の温度に加熱することによって行うことができる。熟成の後、アルミナを熱処理に供する。
【0043】
安定化するおよび/またはドープする元素の含有量は、安定化されたおよび/またはドープされたアルミナまたはオキシ水酸化アルミニウムに関して安定化する酸化物の重量として表され、一般には約1%から10%の間である。
【0044】
本発明の組成物は、700℃を超える温度であっても依然として低いままであるペロブスカイト粒径を示すことができる。故に、900℃で4時間の焼成後、ペロブスカイト粒子は、最大18nm、より詳細には最大15nmのサイズを示す。この場合、粒子は、少なくとも約5nmであることができる最小サイズを示し得る。
【0045】
1000℃で4時間の焼成後、ペロブスカイト粒子は、最大22nm、より詳細には最大15nmのサイズを示す。この場合、粒子は少なくとも約8nmであることができる最小サイズを示し得る。
【0046】
好ましい実施形態によれば、より詳細には安定化されたおよび/またはドープされたアルミナまたはオキシ水酸化アルミニウム担体を用いることにより、特にランタンにより安定化されるおよび/またはドープされることにより、ペロブスカイトが、900℃またはさらには1000℃で4時間の焼成後であっても純粋な結晶学的相の形態で存在する組成物を得ることができる。
【0047】
本発明の組成物が細かく分散されたペロブスカイトを含むという事実に加えて、この一部は有利な還元特性を示す。これらは、ペロブスカイトの元素Mが鉄および/またはマンガンであるような組成物であり、これらの元素は置換されることができ、ペロブスカイトは不足になり得る。この場合、担持されたペロブスカイトは、同じバルクのペロブスカイトよりも多量、例えば少なくとも2倍以上の、実際さらには5倍以上の不安定な酸素を示し、これが生成物のより高い還元性に反映される。
【0048】
本発明の組成物の調製方法をここで説明する。
【0049】
この方法は、次の段階を含むことを特徴とする:
−アルミナまたはオキシ水酸化アルミニウム、および元素LaおよびMの塩、ならびに適切な場合には置換基元素の塩を含む液体媒体が形成される工程であって、前記塩が酢酸塩、塩化物および硝酸塩から選択される工程;
−こうして形成された媒体に、少なくともpH9が得られるまで塩基が添加され、それによって沈殿が得られる工程;
−この沈殿が、反応媒体から分離され、第1の段階において上述元素の塩として塩化物または硝酸塩が使用される場合には、沈殿を洗浄する工程;
−沈殿を焼成する工程。
【0050】
このように、方法の第1の段階は、液体媒体、一般には水性媒体を形成することからなり、この媒体は、分散液の形態で、調製が所望される組成物中の担体として作用するアルミナまたはオキシ水酸化アルミニウムを含む。
【0051】
好ましい代替形態によれば、アルミナまたはオキシ水酸化アルミニウムは、調製方法の継続に際して結晶学的特性に過度に大きな変動が生じないように、例えば500℃から700℃の間であることができる温度にて、予備焼成されてもよい。
【0052】
この液体出発媒体は、さらに、元素LaおよびMの塩を含み、ペロブスカイトの元素LaおよびMが置換される組成物の調製の場合には、置換基元素の塩を含む。
【0053】
塩は、酢酸塩、塩化物および硝酸塩から選択される。酢酸塩は、好ましくは最小の可能な結晶サイズを得ることが所望される場合に使用される。塩化物は、ペロブスカイトが900℃または1000℃で純粋な結晶学的相の形態に保持される組成物をさらにより容易に得るという利点を示し得る。
【0054】
本発明の方法の第2段階において、塩基は、先行する段階で形成された媒体に添加される。
【0055】
塩基としては、例えば水酸化物、炭酸塩または塩基性炭酸塩のタイプの生成物を使用できる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物、または二級、三級もしくは四級アミンを挙げることができる。しかし、アミンおよびアンモニアは、これらがアルカリ金属またはアルカリ土類金属カチオンによる汚染の危険性を低減する限りにおいて、好ましいものであり得る。尿素を挙げることもできる。
【0056】
塩基は、少なくとも9、より詳細には少なくとも9.5の反応媒体のpHが得られるまで添加される。
【0057】
塩基と接触させる操作は、結果として液体反応媒体中の懸濁液において沈殿を形成する。
【0058】
塩基は、好ましくは撹拌しながら添加される。撹拌は、この添加の後も維持されることができ、例えば少なくとも1時間維持され得る。
【0059】
この第2段階の結果として、沈殿は、いずれかの既知の手段によって液体媒体から分離される。
【0060】
こうして得られた沈殿は、特に純水またはアンモニア水溶液を用いて洗浄できる。洗浄は、出発塩として酢酸塩を使用する場合には必要ではないことに留意すべきである;一方で、塩化物または硝酸塩を使用する場合には必要であり、この場合に洗浄を行わないと、ペロブスカイト相が純粋でない組成物が得られる可能性がある。
【0061】
方法の最終段階は焼成段階である。
【0062】
この焼成は、担持されたペロブスカイトの結晶性を顕在化させることができ、本発明に従う組成物を対象とした後続の操作温度に応じて、調節および/または選択もでき、これは、生成物の比表面が使用される焼成温度が上昇するにつれて低下するという事実を考慮して行われる。こうした焼成は、一般に空気下で行われるが、例えば不活性ガス下または制御された雰囲気(酸化または還元)下で行われる焼成も明らかに排除されない。
【0063】
実際、焼成温度は、一般に500℃から800℃の値の範囲、好ましくは600℃から700℃の値の範囲に限定される。焼成時間は、既知の方法にて調節される;例えばこれは30分から4時間の間で変動させることができ、この時間は、一般に温度が上昇するにつれて短縮される。
【0064】
上述のような、または上述の方法によって得られるような本発明の組成物は、粉末の形態で与えられるが、これらは場合により、様々な寸法を有する、顆粒、ビーズ、円筒状またはハニカム構造の形態で与えられるために、成形できる。
【0065】
上述のまたは上述の方法によって得られた本発明の組成物は、触媒として使用できる。故に、本発明はまた、これらの組成物を含む触媒系に関する。これらのシステムは、これらの組成物、および場合により既知のタイプのバインダーに基づき、例えば金属またはセラミックモノリスタイプの基材上にて触媒特性を有するコーティング(洗浄コート)を含む。このコーティングは、組成物をバインダーと混合し、懸濁液を形成するようにして、この懸濁液を基材上に続けて堆積し得ることによって得られる。
【0066】
これらの触媒系およびより詳細には本発明の組成物は、相当多くの用途を有することができる。故に、これらは、種々の反応、例えば脱水、水素硫化、水素化脱窒、脱硫、水素化脱硫、脱ハロゲン化水素、改質、水蒸気改質、クラッキング、水素クラッキング、水素化、脱水素化、異性化、不均化、オキシ塩素化、炭化水素または他の有機化合物の脱水素環化、酸化および/または還元反応、クラウス反応、内燃エンジンからの排ガス処理、特に自動車の後燃えにおける処理、および特に三元触媒作用、脱金属、メタン化、内燃エンジン、例えばディーゼルエンジンまたは鉛燃焼条件下で操作するガソリンエンジンによって放出される煤煙のシフト変換または触媒酸化の触媒作用に特によく適合しており、ひいては有用である。最後に、本発明の触媒系および組成物は、炭化水素タイプのいずれかの還元剤または同様にアンモニアまたは尿素によるNOの還元反応によってこれらNOを選択的に還元するための触媒、この場合は尿素の加水分解または分解反応によりアンモニアを与える(SCR方法)ための触媒として使用できる。
【0067】
最後に、本発明の組成物はまた、一酸化炭素、エチレン、アルデヒド、アミン、メルカプタンまたはオゾンタイプ、および一般に揮発性有機化合物または大気汚染物質、例えば脂肪酸、炭化水素、特に芳香族炭化水素、および酸化窒素(NOからNOへの酸化のため)、および悪臭化合物タイプの少なくとも1つの化合物を含む空気の場合に空気の浄化処理に使用できる。より詳細には、この種類の化合物として、エタンジオール、吉草酸およびトリメチルアミンの化合物を挙げることができる。
【0068】
触媒作用においてこれらを使用する場合、本発明の組成物は、酸化物、硫化物またはその他の形態において貴金属または同様に遷移金属と組み合わせて使用されることができ、故に本発明の組成物は、これら金属の担体として作用する。これらの金属の性質および担体組成物中にこれらを組み込むための技術は、当業者に周知である。例えば、金属は、金、銀、白金、ロジウム、パラジウム、またはイリジウム、モリブデン、タングステン、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、チタンまたはバナジウムであることができる;これらは、単独でまたは組み合わせて使用でき、これらは特に含浸により組成物中に組み込むことができる。
【0069】
排ガスの処理のために、上述のシステムが、自動車の排気マフラにおいて既知の方法で適合される。
【0070】
ここで実施例を示す。
【0071】
(比較例1)
この比較例は、ランタンおよび鉄に基づく担持されていないバルクペロブスカイト(LaFeO)の調製に関する。
【0072】
このために、20.32gの硝酸鉄、30.24gの2.785mol.l−1硝酸ランタン溶液および63.69gのクエン酸を混合する。20mlの水を即座に添加し、混合を室温で20分間行う。ゲルが得られるまで加熱し、このゲルを続けて120℃で12時間オーブン中に置く。
【0073】
得られた固体を粉砕し、次いで空気下で700℃で2時間焼成する。
【実施例1】
【0074】
この実施例は、ペロブスカイトおよび担体のそれぞれの割合が酸化物の重量として10%および90%であり、ランタン6%を含むドープされたアルミナ担体にわたって分散したランタン鉄ペロブスカイト(LaFeO)に基づく組成物の本発明の方法に従う調製に関する。
【0075】
ランタンドープされたアルミナならびに酢酸鉄および酢酸ランタン塩を含む溶液を予め調製する。このために、2.26gの酢酸鉄を75mlの水に希釈し、4.46gの酢酸ランタンを75mlの水に希釈する。これらの溶液を混合し、こうして得られた混合物は5.4のpHを示す。さらに、空気下にて700℃で2時間予備焼成し、180m/gの比表面を有し、150mlの水中に分散した27gのドープされたアルミナを含む分散液を調製する。酢酸鉄および酢酸ランタンの溶液を、ランタンドープされたアルミナおよび酢酸鉄および酢酸ランタン塩を含む液体混合物を得るために、アルミナ分散液に添加する。11.3gの28%NHOH溶液をこの混合物に添加し、その結果として最終pHを10に到達させる;沈殿の形成が認められる。得られた沈殿は、室温において1時間30分撹拌を続ける。この沈殿をブフナ−漏斗上でろ別する。
【0076】
得られた粉末を空気下で700℃において4時間焼成する。
【0077】
図1は、こうして得られた粉末から生じたXRD回折図である。この図は、純粋なペロブスカイト相を示す。
【実施例2】
【0078】
この実施例は、ペロブスカイトおよび担体のそれぞれの割合が酸化物の重量として10%および90%であり、実施例1の場合と同じアルミナ担体にわたって分散した、ランタンにて半化学量論的なランタン鉄ペロブスカイト(La0.9FeO)に基づく組成物の本発明の方法に従う調製に関する。
【0079】
2.4gの酢酸鉄を75mlの水に希釈し、4.25gの酢酸ランタンを75mlの水に希釈する。これらの溶液を混合し、こうして得られた混合物は5.5のpHを示す。さらに、実施例1と同じ量のアルミナを含む分散液を調製する。酢酸鉄および酢酸ランタンの溶液をアルミナ分散液に添加する。続いて10gの水酸化ナトリウムを、こうして得られた混合物に添加し、その結果として最終pHを10に到達させると、沈殿の形成が認められる。得られた沈殿は、1時間30分撹拌を続ける。この沈殿をブフナ−漏斗上でろ別する。
【0080】
得られた粉末を空気下で700℃において4時間焼成する。
【0081】
こうして得られた粉末から生じたXRD図は、純粋なペロブスカイト相を表す。
【実施例3】
【0082】
この実施例は、ペロブスカイトおよび担体のそれぞれの割合が酸化物の重量として10%および90%であり、実施例1の場合と同じアルミナ担体上に分散した、セリウムおよびカルシウムでドープされたランタン鉄ペロブスカイト(La0.9Ce0.05Ca0.05FeO)に基づく組成物の本発明の方法に従う調製に関する。
【0083】
一方で、4.09gの酢酸ランタン、0.22gの酢酸セリウムおよび0.11gの酢酸カルシウムを75mlの水に希釈し、他方で、2.31gの酢酸鉄を75mlの水に希釈する。5.5のpHにて酢酸塩混合物を得るために、これらの溶液を混合する。さらに、実施例1と同じ量のアルミナを含む分散液を調製する。酢酸鉄、酢酸セリウム、酢酸カルシウムおよび酢酸ランタンの溶液をアルミナ分散液に添加する。続いて14gの水酸化ナトリウムを、こうして得られた混合物に添加し、その結果として最終pHを10に到達させると、沈殿の形成が認められる。得られた沈殿を1時間30分撹拌し続ける。この沈殿をブフナ−漏斗上でろ別する。
【0084】
得られた粉末を空気下で700℃において4時間焼成する。
【0085】
こうして得られた粉末から生じたXRD図は、純粋なペロブスカイト相を表す。
【実施例4】
【0086】
この実施例は、ペロブスカイトおよび担体のそれぞれの割合が酸化物の重量として10%および90%であり、アルミナ担体にわたって分散した、ランタン鉄ペロブスカイト(LaFeO)に基づく組成物の本発明の方法に従う調製に関する。
【0087】
1.36gの塩化鉄を50mlの水に希釈し、6.17gの塩化ランタンを50mlの水に希釈する。これらの溶液を混合し、こうして得られた混合物はpH2を示す。さらに、100mlの水中に分散した18gのアルミナ(700℃で2時間焼成されたベーマイトから得られた。)を含む分散液を調製する。塩化鉄および塩化ランタンの溶液を、アルミナ分散液に添加する。9.9gの28%NHOH溶液を、こうして得られた混合物に添加し、その結果として最終pHを10に到達させる;沈殿の形成が認められる。得られた沈殿を1時間30分撹拌し続ける。この沈殿をブフナ−漏斗上でろ別し、同じ体積にて8回洗浄する。
【0088】
得られた粉末を空気下で700℃において4時間焼成する。
【0089】
こうして得られた粉末から生じたXRD図は、純粋なペロブスカイト相を表す。
【0090】
この同じ粉末からではあるが、900℃にて4時間焼成された、または1000℃で4時間にて焼成された粉末から生じたXRD図は、両方の場合に純粋なペロブスカイト相を表す。
【実施例5】
【0091】
この実施例は、実施例4の場合と同じ組成物の調製に関するが、硝酸塩を用いる方法による。
【0092】
3.35gの硝酸鉄を50mlの水に希釈し、4.98gの硝酸ランタンを50mlの水に希釈する。9.7gの28%NHOH溶液を、実施例4の場合と同じアルミナ分散液に添加し、その結果として最終pHを10に到達させる;沈殿の形成が認められる。得られた沈殿を1時間30分撹拌し続ける。この沈殿をブフナ−漏斗上でろ別し、同じ体積にて7回洗浄する。
【0093】
得られた粉末を空気下で700℃において4時間焼成する。
【0094】
こうして得られた粉末から生じたXRD図は、純粋なペロブスカイト相を表す。
【実施例6】
【0095】
この実施例は、ペロブスカイトおよび担体のそれぞれの割合が酸化物の重量として10%および90%であり、アルミナ担体にわたって分散した、ランタンマンガンペロブスカイト(LaMnO)に基づく組成物の本発明の方法に従う調製に関する。
【0096】
3.04gの酢酸マンガンを75mlの水に希釈し、4.47gの酢酸ランタンを75mlの水に希釈する。これらの溶液を混合し、こうして得られた混合物は7.2のpHを示す。さらに、700℃で2時間予備焼成された27gのアルミナを含み、150mlの水中に分散された分散液を調製する。酢酸マンガンおよび酢酸ランタンの混合物を、アルミナ分散液に添加する。続いて9.5gの28%NHOH溶液を、こうして得られた媒体に添加し、その結果として最終pHを10に到達させる;沈殿の形成が認められる。得られた沈殿を室温で30分間撹拌し続ける。この沈殿をブフナ−漏斗上でろ別する。
【0097】
得られた粉末を空気下で700℃において4時間焼成する。
【0098】
こうして得られた粉末から生じたXRD図は、純粋なペロブスカイト相を表す。
【実施例7】
【0099】
この実施例は、ペロブスカイトおよび担体のそれぞれの割合が酸化物の重量として20%および80%であるが、実施例6の場合と同じペロブスカイトおよび同じ担体に基づく組成物の本発明の方法に従う調製に関する。
【0100】
6.08gの酢酸マンガンを75mlの水に希釈し、8.94gの酢酸ランタンを75mlの水に希釈する。これらの溶液を混合し、こうして得られた混合物はpH7.2を示す。この混合物を実施例6の場合と同じアルミナ分散液に添加する。続いて9.5gの28%NHOH溶液を、こうして得られた媒体に添加し、その結果として最終pHを10に到達させる;沈殿の形成が認められる。得られた沈殿を室温で60分間撹拌し続ける。この沈殿をブフナ−漏斗上でろ別する。
【0101】
得られた粉末を空気下で700℃において4時間焼成する。
【0102】
こうして得られた粉末から生じたXRD図は、純粋なペロブスカイト相を表す。
【0103】
示された温度での4時間の組成物の焼成後、本発明に従う各実施例の組成物におけるペロブスカイト粒子のサイズを以下の表1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
比較例に従う組成物および本発明に従う組成物の還元性の測定結果を以下の表2に示す。
【0106】
還元性は、次のように温度プログラムされた還元によって測定される。
【0107】
石英反応器、および空気下700℃にて6時間予備焼成された生成物サンプル200mgを有するMicromeritics Autochem2920デバイスを使用する。
【0108】
ガスは、アルゴン中10体積%にて、流速20ml/分の水素である。温度上昇は、室温から20℃/分の速度で900℃まで生じる。シグナルは、熱伝導性検出器を用いて検出される。温度は、熱電対を用いてサンプル中で測定される。
【0109】
水素消費は、30℃におけるベースラインから900℃におけるベースラインまでの水素シグナルの消失面積から計算される。この水素消費は、ペロブスカイト相の重量に関して、試験される生成物の還元特性を特徴付けるものであり、表2に示す。
【0110】
【表2】

【0111】
本発明の組成物の担持されたペロブスカイトは、実際、顕著に改善された還元特性を示すことは明らかであり、こうした還元性は、同じ組成を有するペロブスカイトについて、比較例1と比べて実施例1の場合には5倍大きくなることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式LaMOのペロブスカイトを含む組成物であって、式中Mは、アルミナまたはオキシ水酸化アルミニウムに基づく担体上に分散された粒子の形態で、鉄、アルミニウムまたはマンガンから選択される少なくとも1つの元素を表し、700℃で4時間の焼成後に、ペロブスカイトが純粋な結晶学的相の形態で存在すること、およびペロブスカイト粒子は最大15nmのサイズを有することを特徴とする、組成物。
【請求項2】
粒子が、最大10nmのサイズを示すことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物中のペロブスカイトの量が、5重量%から30重量%の間、より詳細には10重量%から20重量%の間であることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ペロブスカイトの元素LaおよびMの少なくとも1つは、少なくとも1つの置換基元素によって部分的に置換されることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の組成物。
【請求項5】
Laのための置換基元素は、レアアース金属およびカルシウムから選択され、Mのための置換基元素がコバルトまたはストロンチウムから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ペロブスカイトが、元素LaまたはMの1つの欠乏を示すことを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の組成物。
【請求項7】
900℃にて4時間の焼成後に、ペロブスカイトの粒子は、最大18nm、より詳細には最大15nmのサイズを示すことを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の組成物。
【請求項8】
1000℃で4時間の焼成後、ペロブスカイト粒子が、最大22nmのサイズを示すことを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の組成物。
【請求項9】
ペロブスカイトが、純粋な結晶学的相の形態で存在することを特徴とする、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
担体のアルミナまたはオキシ水酸化アルミニウムが、レアアース金属、チタン、ジルコニウムおよびケイ素から選択される少なくとも1つの安定化する元素によって、安定化されるおよび/またはドープされることを特徴とする、請求項1から9の一項に記載の組成物。
【請求項11】
次の段階を含むことを特徴とする、請求項1から10の一項に記載の組成物の調製方法:
−アルミナまたはオキシ水酸化アルミニウム、および元素LaおよびMの塩、ならびに適切な場合には置換基元素の塩を含む液体媒体が形成される工程であって、前記塩が酢酸塩、塩化物および硝酸塩から選択される工程;
−こうして形成された媒体に、少なくともpH9が得られるまで塩基が添加され、それによって沈殿が得られる工程;
−この沈殿が、反応媒体から分離され、第1の段階において上述元素の塩として塩化物または硝酸塩が使用される場合には、沈殿を洗浄する工程;
−沈殿を焼成する工程。
【請求項12】
請求項1から10の一項に記載の組成物、または請求項11に記載の方法によって得られるような組成物を含むことを特徴とする、触媒系。

【図1】
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【公表番号】特表2012−519071(P2012−519071A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552392(P2011−552392)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052381
【国際公開番号】WO2010/100067
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(508183151)ロデイア・オペラシヨン (70)
【Fターム(参考)】