説明

アルミニウム体を備えた基体の製造方法

【課題】基体上に成膜特性(反射率、及び密着性)に優れた膜状のアルミニウム体を形成することができるアルミニウム体を備えた基体の製造方法を提供する。
【解決手段】基体をプラズマ処理するプラズマ処理工程と、プラズマ処理された基体上に、アミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体及び有機溶媒を含有するアルミニウム体形成用組成物を塗布して、上記基体上に上記組成物からなる塗布層を形成させる塗布工程と、上記塗布層に加熱および光照射の少なくともいずれか一方を行うことにより、膜状のアルミニウム体を形成させるアルミニウム膜形成工程と、を含むアルミニウム体を備えた基体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム体形成用組成物を用いた、アルミニウム体を備えた基体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムは、その高い導電性と高い光学特性から、DRAM(Dynamic Random Access Memory)に代表される半導体デバイスの電極配線用途や光学装置の反射膜用途等に広く用いられてきた。
アルミニウム膜を形成するには、スパッタ法、蒸着法、化学気相成長法等の方法を用いることがこれまでの主流であった(特許文献1、及び特許文献2参照)。しかし、これらの方法は、高真空設備や高出力電源等を必要とするため、基体の大型化への対応が困難であり、プロセスコストが高いといった問題もあった。
また、近年、DRAM等の電子デバイスにおいて、更なる高性能化を目的として配線や電極の構造の微細化、複雑化が進んでおり、これらの形状に関する精度の向上が要求されるようになってきている。
電子デバイスにおいて配線、電極を形成するには、基体上の配線又は電極となるべき部位にトレンチを形成し、当該トレンチ内に配線又は電極となるべき金属材料を埋め込み、余剰の部分を化学機械研磨等により除去する方法によるのが一般的である。
さらに、電子デバイスにおいて、高集積化を目的として配線や電極を有する構造を多層化することが行われている(非特許文献1参照)。この場合、各層間は、層間絶縁膜で電気的に絶縁されるが、層間絶縁膜の一部にホールを形成し、当該ホール内に配線となるべき金属材料を埋め込むことによって、コンタクトホール、スルーホール、またはビアホール等と呼ばれる接続孔を形成し、上層と下層との間の導通をとることが行われている。
【0003】
トレンチまたはホールの埋め込みに用いられる配線材料、電極材料としても、アルミニウムは広く用いられている。しかし、トレンチまたはホールにアルミニウムを埋め込む際、上述した蒸着法やスパッタ法によると、トレンチまたはホールの表面開口部の最小距離が300nm程度以下であり、かつトレンチまたはホールのアスペクト比(トレンチまたはホールの深さをトレンチまたはホールの表面開口部の最小距離で除した値)が3程度以上であると、トレンチまたはホール内部にアルミニウムが詰まっていない空洞部が生じることがあり、配線や電極の構造の微細化、複雑化の要請を満たすには限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−349833号公報
【特許文献2】特開平11−195652号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日経マイクロデバイス、2004年10月号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みなされたものであり、その目的は成膜特性(反射率、及び密着性)に優れ、大きな基体への適用も容易であり、しかも低コストで実施できるアルミニウム体を備えた基体の製造方法を提供することにある。
また、微細で複雑なパターンの細孔(例えばトレンチ、ホール等)にアルミニウムを埋め込む場合においても、埋め込み性が良好であるアルミニウム体を備えた基体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、基体をプラズマ処理するプラズマ処理工程と、プラズマ処理された基体上に、特定のアルミニウム体形成用組成物を塗布して、上記基体上に上記組成物からなる塗布層を形成させる塗布工程と、上記塗布層を加熱および光照射の少なくともいずれか一方を行うことにより、アルミニウム膜を形成させるアルミニウム膜形成工程と、を含むアルミニウム体を備えた基体の製造方法によって、本発明の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[8]を提供するものである。
[1] 基体をプラズマ処理するプラズマ処理工程と、プラズマ処理された基体上に、アミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体及び有機溶媒を含有するアルミニウム体形成用組成物を塗布して、上記基体上に上記組成物からなる塗布層を形成させる塗布工程と、上記塗布層に加熱および光照射の少なくともいずれか一方を行うことにより、膜状のアルミニウム体を形成させるアルミニウム膜形成工程と、を含むアルミニウム体を備えた基体の製造方法。
[2] 前記基体が細孔を有し、前記塗布工程において、上記細孔内に前記アルミニウム体形成用組成物が埋め込まれた状態となるように、上記細孔を有する基体上に前記組成物からなる塗布層を形成させる、前記[1]に記載のアルミニウム体を備えた基体の製造方法。
[3] 前記アルミニウム膜形成工程の後に、上記細孔内に埋め込まれたアルミニウム体形成用組成物以外のアルミニウム体形成用組成物から形成された膜状のアルミニウム体の一部又は全部を除去する、膜状のアルミニウム体除去工程をさらに含む、前記[2]に記載のアルミニウム体を備えた基体の製造方法。
[4] 前記組成物が、チタン化合物をさらに含有する前記[1]〜[3]のいずれかに記載のアルミニウム体を備えた基体の製造方法。
[5] 前記プラズマ処理工程と塗布工程との間に、チタン、パラジウム及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属原子を含有する有機金属化合物(ただしアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体を除く)を含有する下地膜形成用組成物を塗布して加熱する下地膜形成工程を含む、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のアルミニウム体を備えた基体の製造方法。
[6] 前記プラズマ処理に用いられるガスがヘリウム、またはアルゴンである前記[1]〜[5]のいずれかに記載のアルミニウム体を備えた基体の製造方法。
[7] 前記プラズマ処理の出力量が10〜500Wであり、かつ、照射時間が1秒間〜1分間である前記[1]〜[6]のいずれかに記載のアルミニウム体を備えた基体の製造方法。
[8] 前記基体はその表面に窒化チタンまたは窒化タンタルからなる膜を有する[1]〜[7]のいずれかに記載のアルミニウム体を備えた基体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアルミニウム体を備えた基体の製造方法によれば、成膜特性(反射率、及び密着性)に優れた膜状のアルミニウム体を形成することができる。
また、微細で複雑なパターンの細孔(例えば、トレンチ、ホール等)を有する基体に、細孔内にアルミニウムが良好に埋め込まれた状態で、反射率及び密着性に優れた膜状のアルミニウム体を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の方法に使用されるアルミニウム体形成用組成物は、アミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体及び有機溶媒を含有する。
上記アミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体に含まれる水素化アルミニウム(しばしば慣用的に「アラン」と呼ばれる。)は、アルミニウムと水素原子からなる化合物であり、一般的にはAlHで表される。
【0010】
本発明の方法に使用されるアルミニウム体形成用組成物に含有されるアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体は、例えばJ.K.Ruffら、J.Amer.Chem.Soc.、82巻,2141ページ,1960年、G.W.Fraserら、J.Chem.Soc.、3742ページ,1963年およびJ.L.Atwoodら、J.Amer.Chem.Soc.、113巻,8133ページ,1991年等に記載された方法に準じて合成することができる。
【0011】
本発明の方法に使用されるアルミニウム体形成用組成物に含有されるアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体は、例えば水素化リチウムアルミニウムのジエチルエーテル懸濁液にアミン化合物の塩化水素酸塩を添加し、例えばNガス中において室温で撹拌しながら反応させて合成することができる。反応温度、反応溶媒等は、所望するアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体の種類に応じて適宜に選択されるべきである。
【0012】
本発明において用いられるアミン化合物は、モノアミン化合物又はポリアミン化合物である。上記ポリアミン化合物としては、例えばジアミン化合物、トリアミン化合物、テトラアミン化合物等を挙げることができる。
上記モノアミン化合物としては、例えば下記一般式(1)
N・・・(1)
(上記一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはアラルキル基である。)
で表されるモノアミン化合物、それ以外のモノアミン化合物を挙げることができる。上記一般式(1)中のR、R及びRのアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基は直鎖状であっても環状であってもよく、また分岐していてもよい。
上記アルキル基としては、例えば炭素数1〜12のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、シクロヘキシル基、2−メチルブチル基、2−エチルヘキシル基等を挙げることができる。
上記アルケニル基としては、例えば不飽和基を有するアルケニル基を挙げることができ、その具体例としては例えばビニル基、アリル基、クロチル基、エチニル基等を挙げることができる。
上記アルキニル基としては、例えばフェニルエチニル基等を挙げることができる。
上記アリール基としては、例えばフェニル基等を挙げることができる。
上記アラルキル基としては、例えばベンジル基等を挙げることができる。
【0013】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えばアンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリシクロプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、トリ−2−メチルブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、ジメチルフェニルアミン、ジエチルフェニルアミン、ジイソブチルフェニルアミン、メチルジフェニルアミン、エチルジフェニルアミン、イソブチルジフェニルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、メチルエチルアミン、メチルブチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジオクチルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、メチルフェニルアミン、エチルフェニルアミン、イソブチルフェニルアミン、メチルアリルアミン、メチルビニルアミン、メチル(フェニルエチニル)アミン、フェニル(フェニルエチニル)アミン、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、シクロプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、2−メチルブチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、フェニルアミン、ベンジルアミン等を挙げることができる。
上記一般式(1)で表されるモノアミン化合物以外のモノアミン化合物の具体例としては、例えば1−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(キヌクリジン)、1−アザ−シクロヘキサン、1−アザ−シクロヘキサン−3−エン、N−メチル−1−アザ−シクロヘキサン−3−エン等を挙げることができる。
【0014】
上記ジアミン化合物としては、例えばエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジフェニルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、フェニレンジアミン等を挙げることができる。
上記トリアミン化合物としては、例えばジエチレントリアミン、1,7−ジメチル−1,4,7−トリアザヘプタン、1,7−ジエチル−1,4,7−トリアザヘプタン、N,N’,N’’−トリメチル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン等を挙げることができる。
上記テトラアミン化合物としては、例えばトリメチレンテトラアミン、トリエチレンテトラアミン等を挙げることができる。
【0015】
これらアミン化合物の中でも、上記一般式(1)で表されるモノアミン化合物を使用することが好ましい。中でもトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、メチルエチルアミン、メチルブチルアミン、メチルフェニルアミン、エチルフェニルアミン、イソブチルフェニルアミン、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、シクロプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、2−メチルブチルアミン、n−ヘキシルアミン又はフェニルアミンを使用することがより好ましく、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリイソブチルアミン又はトリ−t−ブチルアミンを使用することが特に好ましい。
これらのアミン化合物は、一種単独で、あるいは2種以上の化合物を組み合わせて使用することができる。
【0016】
本発明の方法に使用されるアルミニウム体形成用組成物に含有される有機溶媒は、上記のアミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体及び後述する任意的添加成分を溶解し、かつこれらと反応しないものであれば特に限定されない。例えば、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、その他の極性溶媒等を用いることができる。
上記炭化水素溶媒としては、例えばn−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、シクロオクタン、デカン、シクロデカン、ジシクロペンタジエンの水素化物、ベンゼン、トルエン、キシレン、デュレン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、スクワラン等を挙げることができる。
上記エーテル溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、フェントール、2−メチルフェントール、3−メチルフェントール、4−メチルフェントール、ベラトロール、2−エトキシアニソール、1,4−ジメトキシベンゼン等を挙げることができる。
上記極性溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム等を挙げることができる。
これらの有機溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
中でも、溶解性と形成される溶液の安定性の観点から炭化水素溶媒又は炭化水素溶媒とエーテル溶媒との混合溶媒を用いるのが好ましい。その際、炭化水素溶媒としては、例えばn−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、ベンゼン、トルエン又はキシレンを使用することが好ましく、エーテル溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、フェントール、ベラトロール、2−エトキシアニソール、1,4−ジメトキシベンゼンを使用することが好ましい。
【0017】
本発明の方法に使用されるアルミニウム体形成用組成物は、上記のアミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体及び有機溶媒を必須成分として含有し、その他に必要に応じてチタン化合物(以下、本明細書において「チタン触媒」ともいう。)を含有することもできる。
上記チタン化合物としては、例えば、下記一般式(2)〜(6)で表される化合物を挙げることができる。
【0018】
Ti(OR・・・(2)
(上記一般式(2)中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン化フェニル基である。)
【0019】
Ti(OR4−x・・・(3)
(上記一般式(3)中、Rは上記一般式(2)のRと同様である。Lは下記一般式(7)で表わされる基であり、RおよびR10は同一もしくは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、またはハロゲン化フェニル基である。xは0〜3の整数である。)
【化1】

【0020】
Ti(OR(X)4−y・・・(4)
(上記一般式(4)中、Rはアルキル基又はフェニル基である。Xはハロゲン原子である。yは0〜3の整数である。)
【0021】
Ti(NR・・・(5)
(上記一般式(5)中、Rはアルキル基又はフェニル基である。)
【0022】
Ti(Cp)(Y)4−n・・・(6)
(上記一般式(6)中、Cpはシクロペンタジエニル基である。Yはハロゲン原子又はアルキル基である。nは1〜4の整数である。)
【0023】
上記一般式(2)、(3)中、Rは、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、トリフルオロメチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基である。
また、上記一般式(3)中、RないしR10は好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、トルフルオロメチル基である。より好ましくは、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、トルフルオロメチル基である。
【0024】
上記一般式(2)で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばチタニウムメトキシド、チタニウムエトキシド、チタニウム−n−プロポキシド、チタニウム−n−ノニルオキシド、チタニウムステアリルオキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウム−n−ブトキシド、チタニウムイソブトキシド、チタニウム−t−ブトキシド、チタニウムトリメチルシロキシド、チタニウム−2−エチルヘキソオキシド、チタニウムメトキシプロポキシド、チタニウムフェノキシド、チタニウムメチルフェノキシド、チタニウムフルオロメトキシドおよびチタニウムクロロフェノキシド等を挙げることができる。
【0025】
上記一般式(3)で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばテトラキス(ペンタ−2,4−ジケト)チタニウム、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタ−3,5−ジケト)チタニウム、テトラキス(1−エトキシブタン−1,3−ジケト)チタニウム、テトラキス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタ−2,4−ジケト)チタニウム、(2,2−ジメチルヘキサ−3,5−ジケト)チタニウム、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)チタニウムジメトキシド、ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタ−3,5−ジケト)チタニウムジメトキシド、ビス(1−エトキシブタン−1,3−ジケト)チタニウムジメトキシド、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタ−2,4−ジケト)チタニウムジメトキシド、(2,2−ジメチルヘキサ−3,5−ジケト)チタニウムジメトキシド、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)チタニウムジi−プロポキシド、ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタ−3,5−ジケト)チタニウムジi−プロポキシド、ビス(1−エトキシブタン−1,3−ジケト)チタニウムジi−プロポキシド、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタ−2,4−ジケト)チタニウムジi−プロポキシド、(2,2−ジメチルヘキサ−3,5−ジケト)チタニウムジi−プロポキシド等を挙げることができる。
【0026】
上記一般式(4)で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばトリメトキシチタニウムクロライド、トリエトキシチタニウムクロライド、トリ−n−プロポキシチタニウムクロライド、トリ−i−プロポキシチタニウムクロライド、トリ−n−ブトキシチタニウムクロライド、トリ−t−ブトキシチタニウムクロライド、トリイソステアロイルチタニウムクロライド、ジメトキシチタニウムジクロライド、ジエトキシチタニウムジクロライド、ジ−n−プロポキシチタニウムジクロライド、ジ−i−プロポキシチタニウムジクロライド、ジ−n−ブトキシチタニウムジクロライド、ジ−t−ブトキシチタニウムジクロライド、ジイソステアロイルチタニウムジクロライド、メトキシチタニウムトリクロライド、エトキシチタニウムトリクロライド、n−プロポキシチタニウムトリクロライド、i−プロポキシチタニウムトリクロライド、n−ブトキシチタニウムトリクロライド、t−ブトキシチタニウムトリクロライド、イソステアロイルチタニウムトリクロライド、チタニウムテトラクロライド等を挙げることができる。
【0027】
上記一般式(5)で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばテトラキス(ジメチルアミノ)チタニウム、テトラキス(ジエチルアミノ)チタニウム、テトラキス(ジ−t−ブトキシアミノ)チタニウム、テトラキス(ジ−i−プロポキシアミノ)チタニウム、テトラキス(ジフェニルアミノ)チタニウムを挙げることができる。
上記一般式(6)で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルチタニウムジブロマイド、シクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド、シクロペンタジエニルチタニウムトリブロマイド、ジシクロペンタジエニルジメチルチタニウム、ジシクロペンタジエニルジエチルチタニウム、ジシクロペンタジエニルジ−t−ブチルチタニウム、ジシクロペンタジエニルフェニルチタニウムクロライド、ジシクロペンタジエニルメチルチタニウムクロライド等を挙げることができる。
【0028】
本発明の方法に使用されるアルミニウム体形成用組成物は、その他に必要に応じてアルミニウム化合物(ただし、アミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体を除く。)をさらに含有することもできる。
具体的には、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリシクロプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジメチルフェニルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジイソブチルフェニルアルミニウム、メチルジフェニルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、イソブチルジフェニルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジメチルメタクリルアルミニウム、ジメチル(フェニルエチニル)アルミニウム、ジフェニル(フェニルエチニル)アルミニウム、ジメチルアミン・ジメチルアルミニウム錯体、ジエチルアミン・ジエチルアルミニウム錯体、ジメチルアミン・ジエチルアルミニウム錯体、ジエチルアミン・ジメチルアルミニウム錯体、ジフェニルアミン・ジメチルアルミニウム錯体、ジフェニルアミン・ジエチルアルミニウム錯体等を挙げることができる。
【0029】
本発明の方法に使用されるアルミニウム体形成用組成物に含有されるアミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体の濃度は、組成物の全体に対して好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは8〜50質量%である。アルミニウム体形成用組成物を塗布する基板が後述する細孔を有する場合、この値は、埋め込まれるべき細孔の開口幅によって変動させるのが好ましい。例えば、細孔の開口幅が100nm未満である場合には、アルミニウム体形成用組成物に含有されるアミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体の濃度は、好ましくは8質量%以上20質量%未満であり、より好ましくは8〜15質量%である。また、細孔の開口幅が100〜300nmである場合には、アルミニウム体形成用組成物に含有されるアミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体の濃度は、好ましくは20〜50質量%であり、より好ましくは20〜40質量%である。
【0030】
本発明の方法に使用されるアルミニウム体形成用組成物がチタン化合物を含有する場合、チタン化合物の濃度は、アミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体、及びチタン化合物の合計に対して、好ましくは1モル%以下であり、より好ましくは0.00001〜1モル%であり、更に好ましくは0.00005〜0.01モル%である。チタン化合物をこの範囲の含有量とすることにより、良好な埋め込み性と、組成物の安定性を両立することができる。
【0031】
本発明の方法に使用されるアルミニウム体形成用組成物がアルミニウム化合物(ただし、アミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体を除く。)を含有する場合、その濃度は、組成物の全体に対して好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。この範囲の含有量とすることにより、後述する細孔内に高密度のアルミニウムを埋め込むことが可能になる。
【0032】
アルミニウム体形成用組成物中の溶媒を除いた質量が組成物の全質量中に占める割合(以下、「非揮発成分含有率」という。)は、アルミニウム体形成用組成物を塗布する基板が後述する細孔を有する場合、埋め込まれるべき細孔の開口幅によって、変動させるのが望ましい。例えば、細孔の開口幅が100nm未満である場合には、アルミニウム体形成用組成物の非揮発成分含有率は、好ましくは8質量%以上20質量%未満であり、より好ましくは8〜15質量%である。また、細孔の開口幅が100〜300nmである場合には、アルミニウム体形成用組成物の非揮発成分含有率は、好ましくは20〜50質量%であり、より好ましくは20〜40質量%である。
【0033】
本発明の方法に使用されるアルミニウム体形成用組成物は、その製造方法が特に限定されるものではない。例えば、上記の如くアミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体を溶媒の存在下で合成した後、副生した不溶物等をフィルター等で除去した溶液をそのままアルミニウム体形成用組成物として用いることができる。あるいはまた、この溶液に所望の溶媒を添加した後、反応に用いた溶媒、例えばジエチルエーテルを減圧下で除去することによって、アルミニウム体形成用組成物としてもよい。
【0034】
本発明の方法に使用されるアルミニウム体形成用組成物がチタン化合物及び/又はアルミニウム化合物(ただし、アミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体を除く。)を含有するものである場合、その製造にあたっては、例えば上記のようにして製造したアミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体を含有する溶液に、攪拌しながら所定量のチタン含有化合物及び/又はアルミニウム化合物(ただし、アミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体を除く。)の溶液を添加して調製することができる。添加するときの温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは5〜100℃である。攪拌する時間は、好ましくは0.1〜120分、より好ましくは0.2〜60分である。このような条件で混合することにより、埋め込み性が良好であり、かつ安定な組成物を得ることができる。
【0035】
本発明のアルミニウム体を備えた基体の製造方法は、基体をプラズマ処理するプラズマ処理工程と、プラズマ処理された基体上に、アミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体及び有機溶媒を含有するアルミニウム体形成用組成物を塗布して、上記基体上に上記組成物からなる塗布層を形成させる塗布工程と、上記塗布層に加熱および光照射の少なくともいずれか一方を行うことにより膜状のアルミニウム体を形成させるアルミニウム膜形成工程を含むものである。
上記基体を構成する材料は、特に限定されるものではないが、例えばガラス、金属、シリコン、樹脂、絶縁膜等を挙げることができ、好ましくは絶縁膜である。
上記絶縁膜としては、例えば熱酸化膜、PETEOS膜(Plasma Enhanced−TEOS膜)、HDP膜(High Density Plasma Enhanced−TEOS膜)、熱CVD法により得られる酸化シリコン膜、ホウ素リンシリケート膜(BPSG膜)、FSGと呼ばれる絶縁膜、誘電率の低い絶縁膜等が挙げられる。
上記熱酸化膜は、高温にしたシリコンを酸化性雰囲気に晒し、シリコンと酸素あるいはシリコンと水分を化学反応させることにより形成されたものである。
上記PETEOS膜は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を原料として、促進条件としてプラズマを利用して化学気相成長で形成されたものである。
上記HDP膜はテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を原料として、促進条件として高密度プラズマを利用して化学気相成長で形成されたものである。
上記熱CVD法により得られる酸化シリコン膜は、常圧CVD法(AP−CVD法)又は減圧CVD法(LP−CVD法)により形成されたものである。
上記ホウ素リンシリケート膜(BPSG膜)は、常圧CVD法(AP−CVD法)又は減圧CVD法(LP−CVD法)により得ることができる。
また、上記FSGと呼ばれる絶縁膜は、促進条件として高密度プラズマを利用して化学気相成長で成膜することができる。
上記誘電率の低い絶縁膜としては、例えば有機SOG、水素含有SOG、有機高分子からなる低誘電率材料、SiOF系低誘電率材料、SiOC系低誘電率材料等を挙げることができる。ここで、「SOG」とは“Spin On Glass”の略であり、基体上に前駆体を塗布し、次いで熱処理等により成膜した絶縁膜材料の意味である。
上記有機SOGとしては、例えばメチル基等の有機基を含有するケイ素酸化物から構成されるものであり、基体上に例えばテトラエトキシシランとメチルトリメトキシシランの混合物等を含有する前駆体を塗布し、次いで熱処理等をすることにより得ることができる。
上記水素含有SOGとしては、ケイ素−水素結合を含有するケイ素酸化物から構成されるものであり、基体上に例えばトリエトキシシラン等を含有する前駆体を塗布し、次いで熱処理等をすることにより得ることができる。
上記有機高分子からなる低誘電率材料としては、例えばポリアリーレン、ポリイミド、ポリベンゾシクロブテン、ポリフッ化エチレン等を主成分とする低誘電率材料を挙げることができる。
上記SiOF系低誘電率材料は、フッ素原子を含有するケイ素酸化物から構成されるものであり、例えば化学気相蒸着法により得た酸化ケイ素にフッ素を添加(ドープ)することにより得ることができる。
上記SiOC系低誘電率材料は、炭素原子を含有するケイ素酸化物から構成されるものであり、例えば四塩化ケイ素と一酸化炭素との混合物を原料とする化学気相蒸着法により得ることができる。
上記したもののうち、有機SOG、水素含有SOG及び有機高分子からなる低誘電率材料は、形成された膜中に微細な空孔(ポア)を有するものであってもよい。
【0036】
また、上記基体は、その表面にバリア膜が形成されたものであってもよい。ここで、バリア膜を構成する材料としては、例えばチタン、タンタル、窒化チタン、窒化タンタル等を挙げることができ、このうち、窒化チタンまたは窒化タンタルが好ましい。バリア膜を形成することで、基体とアルミニウム体形成用組成物との接着性を向上させることができる。
【0037】
本発明に用いられる基体は細孔を有していてもよい。本発明のアルミニウム体を備えた基体の製造方法は、特に基体が細孔を有する場合に、細孔にアルミニウムを良好に埋め込むことができ、好適である。
なお、本明細書中において「細孔」とは、基体上に形成された配線溝・電極溝(トレンチ)と、配線接続孔(ホール)の両方を含むものである。
本発明の方法によってアルミニウムを埋め込む細孔(トレンチ、ホール等)は、上述した基体上に公知の方法、例えばフォトリソグラフィーやエッジング等によって形成される。
上記細孔は、どのような形状、大きさのものであってもよいが、細孔の開口幅すなわち表面開口部の最小距離が好ましくは300nm以下、より好ましくは3〜100nm、特に好ましくは5〜50nmであり、かつ、細孔のアスペクト比すなわち細孔の深さを細孔の表面開口部の最小距離で除した値が好ましくは1〜50、より好ましくは3〜40、特に好ましくは5〜25の場合に、本発明の有利な効果が最大限に発揮される。
なお、本発明のアルミニウム体を備えた基体の製造方法は、例えば、細孔の開口幅の最小距離が1000nm以上、かつ、細孔のアスペクト比が0.01〜1の幅の広い細孔であっても良好な埋め込み性を有する。
【0038】
以下、本発明のアルミニウム体を備えた基体の製造方法の各工程について詳しく説明する。
[プラズマ処理工程]
本発明で用いられる前記基体はプラズマ処理工程でプラズマ処理される。
プラズマ処理に用いられるガスとしては、特に限定されるものではないが、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン、ラドン等の不活性ガス、エチレン、プロピレンなどの重合性不飽和化合物ガス、窒素、酸素、二酸化炭素、空気等が挙げられる。さらに、必要に応じて、水素ガスやアンモニアガス等の還元雰囲気ガス、酸素等の酸化性ガス、シランガス等と混合して用いてもよい。
中でも、ヘリウム、アルゴンのガスを単独で用いることが好ましく、基体へのダメージを少なくする観点から、低原子量のヘリウムがより好ましい。また、プラズマ処理の出力量は基体へのダメージを少なくする観点から、好ましくは10〜500W、より好ましくは50〜400W、特に好ましくは100〜300Wで行われる。また、照射時間は好ましくは1秒間〜1分間、より好ましくは5〜40秒間、特に好ましくは10〜30秒間である。さらに、基体温度は室温(20℃)〜100℃で行われることが好ましい。
基体をプラズマ処理することで、基体上に形成される膜状のアルミニウム体の成膜特性(反射率、及び密着性等)を向上することができる。また、基体が細孔を有する場合、アルミニウムの埋め込み性を向上することができる。
【0039】
[下地膜形成工程]
本発明のアルミニウム体を備えた基体の製造方法は前記プラズマ処理工程と後述する塗布工程との間に、下地膜形成工程を含んでもよい。
下地膜形成工程において、前記基体に、チタン、パラジウム及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属原子を含有する有機金属化合物(ただしアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体を除く)を含有する溶液(以下、「下地膜形成用組成物」ともいう。)を塗布して加熱することで下地膜が形成される。このようにして下地膜が基体上に形成されることによって、基体上への膜状のアルミニウム体の成膜性をより良好にすることができる。また、基体が細孔を有する場合、細孔へのアルミニウム埋め込み性が良好になる。
上記チタン原子を含む有機金属化合物としては、例えばチタニウムアルコキシド、アミノ基を有するチタニウム化合物、β−ジケトンとのチタニウム化合物、シクロペンタジエニル基を有するチタニウム化合物、ハロゲン基を有するチタニウム化合物等を挙げることができる。
上記パラジウム原子を含む有機金属化合物としては、例えばハロゲン原子を有するパラジウム錯体、パラジウムのアセテート化合物、パラジウムのβ−ジケトン錯体、パラジウムと共役カルボニル基を有する化合物との錯体、ホスフィン系パラジウム錯体等を挙げることができる。
上記アルミニウム原子を含む有機金属化合物は、アミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体を除くものであり、例えばアルミニウムアルコキシド、アルミニウムアルキレート、アルミニウムのβ−ジケトン錯体等を挙げることができる。
【0040】
かかる有機金属化合物の具体例としては、上記チタン原子を含む有機金属化合物として、例えば前述したアルミニウム体形成用組成物が含有することができるチタン化合物として例示したものと同じチタン化合物を挙げることができる。
上記パラジウム原子を含む有機金属化合物のうち、ハロゲン原子を有するパラジウム錯体として、例えばアリルパラジウムクロライド、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム等;
パラジウムのアセテート化合物として、例えばパラジウムアセテート等;
パラジウムのβ−ジケトン錯体として、例えばペンタン−2,4−ジオナトパラジウム、ヘキサフルオロペンタンジオナトパラジウム等;
パラジウムと共役カルボニル基を有する化合物との錯体として、例えばビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム等;
ホスフィン系パラジウム錯体として、例えばビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムクロライド、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムアセテート、ジアセテートビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィン)エタン]パラジウム、トランス−ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、トランス−ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トランス−ジクロロビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等を挙げることができる。
上記アルミニウム原子を含む有機金属化合物のうち、アルミニウムアルコキシドとして、例えばアルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム−n−ブトキシド、アルミニウム−s−ブトキシド、アルミニウム−t−ブトキシド、アルミニウムエトキシエトキシエトキシド、アルミニウムフェノキシド等;
アルミニウムアルキレートとして、例えばアルミニウムアセテート、アルミニウムアクリレート、アルミウムメタクリレート、アルミニウムシクロヘキサンブチレート等;
アルミニウムのβ−ジケトン錯体として、例えぱペンタン−2,4−ジケトアルミニウム、ヘキサフルオロペンタン−2,4−ジケトアルミニウム、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジケトアルミニウム、ビス(エトキシブタン−1,3−ジケト)アルミニウムs−ブトキシド、(エトキシブタン−1,3−ジケト)アルミニウムジ−s−ブトキシド、(エトキシブタン−1,3−ジケト)アルミニウムジイソプロポキシド等を挙げることができる。
これらの中でも、チタニウムイソプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、ビス(エトキシブタン−1,3−ジケト)チタニウムジイソプロポキシド、テトラ(ペンタン−2,4−ジケト)チタニウム、ペンタン−2,4−ジケトパラジウム、ヘキサフルオロペンタン−2,4−ジケトパラジウム、ペンタン−2,4−ジケトアルミニウム又はヘキサフルオロペンタン−2,4−ジケトアルミニウムを用いるのが好ましい。
【0041】
これらチタン、パラジウム及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属原子を含有する有機金属化合物を含有する溶液に用いる溶媒としては、該有機金属化合物を溶解できればいずれの溶媒も使用することができる。これら溶媒としては、例えばエーテル類、エーテル基を有するエステル類、炭化水素類、アルコール類、非プロトン性極性溶媒等及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
上記エーテル類として、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等;
上記エーテル基を有するエステル類として例えばエチレングリコルモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン等;
上記炭化水素類として、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカリン、テトラリン、デュレン等;
上記アルコール類として、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等;
上記非プロトン性極性溶媒として、例えばN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホアミド、γ−ブチロラクトン等を、それぞれ挙げることができる。下地膜形成用組成物中の有機金属化合物の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0042】
下地膜形成用組成物の基体への塗布は、例えばスピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スプレー法、液滴吐出法等の適宜の方法により行うことができる。また、基体が細孔を有する場合、その開口幅が300nm以下であり、かつ細孔のアスペクト比が5以上の場合には、下地膜形成用組成物を基体へ塗布した後に、基体をしばらくの間、減圧下に置くことで細孔内部により均一に下地膜形成用組成物を塗布することができる。具体的手法としては、該下地膜形成用組成物を、細孔を有する基体上に塗布時の圧力(以下、「第一圧力」という。)よりも小さい圧力下(以下、「第二圧力」という。)に基体を保持する。第二圧力は、第一圧力に対して、好ましくは1〜70%であり、より好ましくは10〜40%である。例えば、塗布時の圧力が1.01×10Pa(常圧)であった場合の第二圧力としては、好ましくは1.01×10〜7.09×10Paであり、より好ましくは1.01×10〜4.05×10Paである。基体を第二圧力下に保持する時間としては、好ましくは10秒間〜10分間であり、より好ましくは10秒間〜1分間である。基体を第二圧力に保持した後、好ましくは不活性気体を用いて圧力を戻した後、次の加熱工程に供されることとなるが、この圧力を減少させ、同圧力で保持した後圧力を戻す一連の操作は、数回繰り返してもよい。第一圧力まで戻す時間としては、好ましくは3秒間〜5分間であり、より好ましくは5秒間〜1分間である。また、繰り返し回数としては、膜の均一性と作業性の双方の観点から10回以下が好ましく、作業性を優先させて5回以下がさらに好ましい。こうして形成された下地塗膜は、さらに加熱される。加熱温度は好ましくは30〜350℃であり、より好ましくは40〜300℃である。加熱時間は、好ましくは5〜90分間であり、より好ましくは10〜60分間である。この塗布工程及び加熱工程中の雰囲気は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスからなるのが好ましい。さらに必要に応じて水素などの還元性ガスや、酸素などの酸化性ガスを混入した雰囲気で実施してもよい。これら下地膜の厚さは、溶媒除去後の膜厚として0.001〜5μmであることが好ましく、0.005〜0.5μmであることがより好ましい。
【0043】
こうして形成された有機金属化合物の塗膜は、次いで加熱される。加熱温度は好ましくは30〜350℃であり、より好ましくは40〜300℃である。加熱時間は、好ましくは5〜90分間であり、より好ましくは10〜60分間である。
この塗布工程及び加熱工程中の雰囲気は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスからなるのが好ましい。さらに必要に応じて水素などの還元性ガスを混入した雰囲気が好ましい。また、溶媒や添加物として水や酸素を取り除いたものを用いることが望ましい。
【0044】
[塗布工程]
塗布工程において、前記プラズマ処理された基体上に、上述のアルミニウム体形成用組成物を塗布して、上記基体上に上記組成物からなる塗布層を形成させる。
基体が細孔を有する場合には、上記細孔内に上記組成物が埋め込まれた状態となるように、上記基体上に上記組成物からなる塗布層を形成させる。
アルミニウム体形成用組成物を塗布するに際しては、例えばスピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スプレー法、液滴吐出法等の適宜の方法を用いることができる。
基体が細孔を有する場合には、基体上の細孔の形状、大きさ等により、細孔内部の隅々にまでアルミニウム体形成用組成物が行き亘るような塗布条件が採用される。例えば塗布法としてスピンコート法を採用する場合において、細孔の開口幅が100nm未満である場合には、スピナーの回転数を、500〜2,500rpm、更に800〜2,000rpmとすることができる。また、細孔の開口幅が100nm〜300nmである場合には、スピナーの回転数を、500〜2,000rpm、更に800〜1,500rpmとすることができる。
上記塗布工程の後、塗布したアルミニウム体形成用組成物中に含有される溶媒等の低沸点成分を除去するために、加熱処理を行ってもよい。加熱する温度及び時間は、使用する溶媒の種類、沸点(蒸気圧)により異なるが、例えば100〜350℃において、5〜90分間とすることができる。このとき、系全体を減圧にすることで、溶媒の除去をより低温で行うこともできる。
【0045】
[アルミニウム膜形成工程]
アルミニウム膜形成工程において、前記塗布工程で形成された塗布層を加熱および光照射の少なくともいずれか一方を行うことにより、上記塗布層が膜状のアルミニウム体(以下、「アルミニウム膜」ともいう。)に形成される。
上記加熱温度は、60℃以上とするのが好ましく、70℃〜400℃とするのがより好ましい。加熱時間は、好ましくは30秒間〜120分間であり、より好ましくは1〜90分間である。
上記光照射に用いる光源としては、例えば水銀ランプ、重水素ランプ、希ガスの放電光、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、希ガスハロゲンエキシマレーザー等を挙げることができる。上記水銀ランプとしては、例えば低圧水銀ランプ又は高圧水銀ランプを挙げることができる。上記希ガスの放電光に用いる希ガスとしては、例えばアルゴン、クリプトン、キセノン等を挙げることができる。上記希ガスハロゲンエキシマレーザーに使用する希ガスハロゲンとしては、例えばXeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArCl等を挙げることができる。
これらの光源の出力としては、好ましくは10〜5,000Wであり、より好ましくは100〜1,000Wである。これらの光源の波長は特に限定されないが、好ましくは170nm〜600nmである。また、アルミニウムの膜質の点で、レーザー光の使用が特に好ましい。
上記加熱及び光照射は、どちらか一方のみを行ってもよく、加熱及び光照射の双方を行ってもよい。加熱及び光照射の双方を行う場合には、その順番の前後は問わず、加熱と光照射を同時に行ってもよい。これらのうち、加熱のみを行うか、加熱と光照射の双方を行うことが好ましい。
【0046】
上記アルミニウム体形成用組成物を塗布工程、任意的に実施される溶媒除去工程並びに加熱および光照射の少なくともいずれか一方を実施する際の雰囲気としては、できる限り酸素のない不活性条件又は還元性条件とすることが好ましい。上記不活性雰囲気は、不活性気体、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン等により実現することができる。上記還元性雰囲気は、これら不活性気体と、還元性気体を混合することにより実現することができる。ここで還元性気体としては、例えば水素、アンモニア等が挙げられる。工程の雰囲気として、還元性雰囲気を採用する場合、不活性気体と還元性気体の合計に占める還元性気体の割合は、好ましくは1〜70モル%であり、より好ましくは3〜40モル%である。
上述した本発明のアルミニウム体を備えた基体の製造方法により、成膜特性(反射率、及び密着性)に優れたアルミニウム膜を形成することができる。
基体が細孔を有する場合には、開口幅が小さく、アスペクト比の大きい細孔内部に良好にアルミニウムが埋め込まれた状態のアルミニウム膜を簡便に形成することができる。また、アルミニウム膜形成工程の後に、膜状のアルミニウム体の余剰の部分(例えば、細孔内に埋め込まれたアルミニウム体形成用組成物以外のアルミニウム体形成用組成物から形成された膜状のアルミニウム体の一部又は全部)を化学機械研磨法等によって除去する、膜状のアルミニウム体除去工程を更に含んでもよい。除去することで、アルミニウムが埋め込まれた細孔(トレンチ、ホール等)を得ることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、以下の操作は、特に記した場合
を除き、すべて乾燥窒素雰囲気下で実施した。また、用いた溶媒は、すべて事前にモレキ
ュラーシーブス4A(ユニオン昭和(株)製)で脱水し、かつ窒素ガスをバブリングする
ことにより脱気、さらに蒸留操作にて精製した。
また、得られたアルミニウム膜についての各種測定方法を以下に示す。
[アルミニウム膜組成同定]:KRATOS ANALYTICAL社製のESCA分析装置(型式「AXIS−UltraDLD」)によって同定した。
[反射率(%)]:日立ハイテク社製の分光光度計(型式「U−4100」)によって700nm波長領域での反射率を測定した。
[膜厚(nm)]:フィリップス社製の斜入射X線分析装置(形式「X’Pert MRD」)によって測定した。
[抵抗率(μΩcm)]:ナプソン社製の探針抵抗率測定器(形式「RT−80/RG−80」)によって測定した。
【0048】
[合成例1]:チタン化合物(チタン触媒)を含有する溶液の調製
シクロペンタジエニルチタニウムトリクロリド0.11gを30mLガラス容器に仕込
み、ここへt−ブチルベンゼンを加えて全量を25.00gとした。十分に攪拌した後、室温で4時間静置し、次いでこれをポリテトラフロロエチレン製の孔径0.1μmのメンブランフィルタ(Whatman Inc.製)を用いて濾過することにより、シクロペンタジエニルチタニウムトリクロリドを20μmol/g含有する溶液を得た。
[合成例2]:下地膜形成用組成物の調製
ポリ(ジブチルチタナート)0.19gを20mLガラス容器にとり、ここへプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて全量を19.00gとした。混合物を充分に攪拌した後、室温で2時間静置した。次いでこれをポリテトラフロロエチレン製の孔径0.1μmのメンブランフィルタ(Whatman Inc.製)を用いて濾過することにより、下地膜形成用組成物を得た。
[合成例3]:アミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体(1)の調製
磁気攪拌子を入れた200mLの三口フラスコ中に水素化リチウムアルミニウム3.80gを仕込んだ。三口フラスコの3つの接続口にはそれぞれ100mLの粉体添加用漏斗、窒素気流に接続した吸引栓三方コック及びガラス栓を接続した。トリエチルアミンの塩化水素酸塩17.80gを粉体添加用漏斗に仕込んだ後に、三口フラスコを吸引栓三方コックを介して窒素シール下においた。
上記の三口フラスコにガラス製シリンジを用いてヘキサン100mLを加えた。マグネチックスターラにより回転数1,000rpmで攪拌しながら、トリエチルアミンの塩化水素酸塩を10分間かけて三口フラスコ中に徐々に落とした後、更に2時間攪拌を継続した。
その後、ポリテトラフロロエチレン製のチューブの先端に脱脂綿(日本薬局方脱脂綿)を詰めたものを用いて、反応混合物を圧送により別容器に取り出し、次いでポリテトラフロロエチレン製の孔径0.1μmのメンブランフィルタ(Whatman Inc.製)により濾過した。濾液は300mLなす型フラスコで受け、濾過終了後に磁気攪拌子を入れ、吸引栓三方コックを装着した。
この吸引栓三方コックを、トラップを介して真空ポンプに接続し、マグネチックスターラによって回転数300rpmで攪拌しながら減圧にて溶媒を除去した。溶媒除去後、残存物をポリテトラフロロエチレン製の孔径0.1μmのメンブランフィルタ(Whatman Inc.製)を用いて濾過することにより、トリエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体10.25gを、無色透明の液体として得た(収率55%)。
[合成例4]:アミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体(2)の調製
トリエチルアミンの塩化水素酸塩17.80gの代わりに、ジメチルエチルアミンの塩化水素酸塩17.80gを用いた以外は、合成例3と同様にして、ジメチルエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体9.40gを、無色透明の液体として得た(収率60%)。
【0049】
[実施例1]
(1−1)アルミニウム体形成用組成物(1)の調製
合成例3で調製したトリエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体(アミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体(1))5.00gにt−ブチルベンゼンを加えて全量を10.00gとすることにより、トリエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体とt−ブチルベンゼンとの混合物(1)を50質量%含有する溶液を調製した。さらに上記溶液2.00mLに、合成例1で調製したシクロペンタジエニルチタニウムトリクロリドを20μmol/g含有する溶液40μLを、室温にて攪拌下に加え、次いで1分間攪拌を継続することにより、アルミニウム体形成用組成物(1)を調製した。
(1−2)プラズマ処理の実施
以下の操作は、Applied Material社製プラズマCVD成膜装置、型式「Producer SE3 Twin」 BLOkチャンバーユニットを用いてプラズマ処理を実施した。
アルミニウム膜が形成される基体として片方の表面に厚さ10nmの窒化チタン膜を有する直径4インチのシリコン基板を用意した。これを上記プラズマ処理装置チャンバーに導入し、高純度アルゴンガス400sccmの流速で流しながら、チャンバー圧=400Pa減圧下、電極温度=335℃、電極出力=100W、20秒間プラズマ処理を実施した。
(1−3)アルミニウム膜の形成
上記1−2にてプラズマ処理した基板上に金属アルミニウム膜を形成した。上記1−2にてプラズマ処理した基板を直ちにスピンコーターに装着し、窒素ガス雰囲気下にて、窒化チタン膜を有する面に合成例2で調製した下地膜形成用組成物1mLを滴下して、回転数2,000rpmで10秒間スピンさせた。この基板を150℃に設定したホットプレートに乗せ、10分間加熱した。下地膜の厚さは2nmであった。
次いでこの基板を窒素雰囲気下でスピンコーターに再び装着し、上記1−1で調製したアルミニウム体形成用組成物(1)の全量を滴下し、回転数800rpmで10秒間スピンさせた。この基板を直ちに窒素ガス雰囲気下、150℃のホットプレートで10分間加熱した。さらに窒素ガス雰囲気下、更に350℃で30分間加熱したところ、基板表面は銀白色金属光沢を持った膜で覆われた。得られた膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。また波長=700nmでの反射率は58%であった。また斜入射X線分析によりこの膜が膜厚170nmであることがわかった。このアルミニウム膜の抵抗率を四端子法で測定した所、抵抗率は4.0μΩcmであった。このアルミニウム膜につき、JIS−5400に準拠して碁盤目剥離試験を行ったところ、碁盤目100個のうち剥離した目はなく、密着性は極めて良好であった。結果を表1に示す。
(1−4)トレンチ基板へのアルミニウムの埋め込み性の評価
片面に幅40nm、深さ280nmの直線状のトレンチ(アスペクト比7)を有する面に、トレンチ内部も含めて厚さ10nmの窒化チタン膜が形成された直径4インチのシリコン基板を用意した。
上記基板を上記1−2および1−3と同様の手法でそれぞれプラズマ処理、アルミニウム膜の形成を実施した。アルミニウム膜形成後の基体を、トレンチの長さ方向に直交する方向で切断し、その断面を走査型顕微鏡により観察したところ、トレンチ内部にまで均一にアルミニウムが埋め込まれていた。
【0050】
[実施例2]
(2−1)アルミニウム体形成用組成物(1)の調製
実施例1の1−1と同様にして、アルミニウム体形成用組成物(1)を調製した。
(2−2)プラズマ処理の実施
以下の操作は、Applied Material社製プラズマCVD成膜装置、型式「Producer SE3 Twin」 BLOkチャンバーユニットを用いてプラズマ処理を実施した。
アルミニウム膜が形成される基体として片方の表面に厚さ10nmの窒化チタン膜を有する直径4インチのシリコン基板を用意した。これを上記プラズマ処理装置チャンバーに導入し、高純度ヘリウムガス2800sccmの流速で流しながら、チャンバー圧=800Pa減圧下、電極温度=335℃、電極出力=100W、20秒間プラズマ処理を実施した。
(2−3)アルミニウム膜の形成
上記2−2にてプラズマ処理した基板上に金属アルミニウム膜を形成した。上記2−2にてプラズマ処理した基板を直ちにスピンコーターに装着し、窒素ガス雰囲気下にて、窒化チタン膜を有する面に合成例2で調製した下地膜形成用組成物1mLを滴下して、回転数2,000rpmで10秒間スピンさせた。この基板を150℃に設定したホットプレートに乗せ、10分間加熱した。下地膜の厚さは2nmであった。
次いでこの基板を窒素雰囲気下でスピンコーターに再び装着し、上記2−1で調製したアルミニウム体形成用組成物(1)の全量を滴下し、回転数800rpmで10秒間スピンさせた。この基板を直ちに窒素ガス雰囲気下、150℃のホットプレートで10分間加熱した。さらに窒素ガス雰囲気下、更に350℃で30分間加熱したところ、基板表面は銀白色金属光沢を持った膜で覆われた。得られた膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。得られたアルミニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(2−4)トレンチ基板へのアルミニウムの埋め込み性の評価
実施例1の1−4で用いたものと同様のトレンチ基板に対し、上記2−2および2−3と同様の手法でそれぞれプラズマ処理、アルミニウム膜の形成を実施した。アルミニウム膜形成後の基体を、トレンチの長さ方向に直交する方向で切断し、その断面を走査型顕微鏡により観察したところ、トレンチ内部にまで均一にアルミニウムが埋め込まれていた。
【0051】
[実施例3]
(3−1)アルミニウム体形成用組成物(1)の調製
実施例1の1−1と同様にして、アルミニウム体形成用組成物(1)を調製した。
(3−2)プラズマ処理の実施
以下の操作は、芝浦メカトロニクス社製プラズマ照射装置、型式「ICE CDE−300」を用いてプラズマ処理を実施した。
アルミニウム膜が形成される基体として片方の表面に厚さ10nmの窒化チタン膜を有する直径4インチのシリコン基板を用意した。これを上記プラズマ処理装置チャンバーに導入し、高純度酸素ガス200sccmの流速で流しながら、チャンバー圧=3.5Pa減圧下、基板温度=25℃、電極出力=4000W、20秒間プラズマ処理を実施した。
(3−3)アルミニウム膜の形成
上記3−2にてプラズマ処理した基板上に金属アルミニウム膜を形成した。上記3−2にてプラズマ処理した基板を直ちにスピンコーターに装着し、窒素ガス雰囲気下にて、窒化チタン膜を有する面に合成例2で調製した下地膜形成用組成物1mLを滴下して、回転数2,000rpmで10秒間スピンさせた。この基板を150℃に設定したホットプレートに乗せ、10分間加熱した。下地膜の厚さは2nmであった。
次いでこの基板を窒素雰囲気下でスピンコーターに再び装着し、上記3−1で調製したアルミニウム体形成用組成物(1)の全量を滴下し、回転数800rpmで10秒間スピンさせた。この基板を直ちに窒素ガス雰囲気下、150℃のホットプレートで10分間加熱した。さらに窒素ガス雰囲気下、更に350℃で30分間加熱したところ、基板表面は銀白色金属光沢を持った膜で覆われた。得られた膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。得られたアルミニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(3−4)トレンチ基板へのアルミニウムの埋め込み性の評価
実施例1の1−4で用いたものと同様のトレンチ基板に対し、上記3−2および3−3と同様の手法でそれぞれプラズマ処理、アルミニウム膜の形成を実施した。アルミニウム膜形成後の基体を、トレンチの長さ方向に直交する方向で切断し、その断面を走査型顕微鏡により観察したところ、トレンチ内部にまで均一にアルミニウムが埋め込まれていた。
【0052】
[実施例4]
(4−1)アルミニウム体形成用組成物(2)の調製
合成例4で調製したジメチルエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体(アミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体(2))5.00gにt−ブチルベンゼンを加えて全量を10.00gとすることにより、ジメチルエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体とt−ブチルベンゼンとの混合物(2)を50質量%含有する溶液を調製した。さらに上記溶液2.00mLに、合成例1で調製したシクロペンタジエニルチタニウムトリクロリドを20μmol/g含有する溶液40μLを、室温にて攪拌下に加え、次いで1分間攪拌を継続することにより、アルミニウム体形成用組成物(2)を調製した。
(4−2)プラズマ処理の実施
実施例1と同種の基板に対し、実施例1の1−2と同様にしてプラズマ処理を実施した。
(4−3)アルミニウム膜の形成
上記4−2にてプラズマ処理した基板上に金属アルミニウム膜を形成した。上記4−2にてプラズマ処理した基板を直ちにスピンコーターに装着し、窒素ガス雰囲気下にて、窒化チタン膜を有する面に合成例2で調製した下地膜形成用組成物1mLを滴下して、回転数2,000rpmで10秒間スピンさせた。この基板を150℃に設定したホットプレートに乗せ、10分間加熱した。下地膜の厚さは2nmであった。
次いでこの基板を窒素雰囲気下でスピンコーターに再び装着し、上記4−1で調製したアルミニウム体形成用組成物(2)の全量を滴下し、回転数800rpmで10秒間スピンさせた。この基板を直ちに窒素ガス雰囲気下、150℃のホットプレートで10分間加熱した。さらに窒素ガス雰囲気下、更に350℃で30分間加熱したところ、基板表面は銀白色金属光沢を持った膜で覆われた。得られた膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。得られたアルミニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(4−4)トレンチ基板へのアルミニウムの埋め込み性の評価
実施例1の1−4で用いたものと同様のトレンチ基板に対し、上記4−2および4−3と同様の手法でそれぞれプラズマ処理、アルミニウム膜の形成を実施した。アルミニウム膜形成後の基体を、トレンチの長さ方向に直交する方向で切断し、その断面を走査型顕微鏡により観察したところ、トレンチ内部にまで均一にアルミニウムが埋め込まれていた。
【0053】
[実施例5]
(5−1)アルミニウム体形成用組成物(2)の調製
実施例4の4−1と同様にしてアルミニウム体形成用組成物(2)を調製した。
(5−2)プラズマ処理の実施
実施例2と同種の基板に対し、実施例2の2−2と同様にしてプラズマ処理を実施した。
(5−3)アルミニウム膜の形成
上記5−2にてプラズマ処理した基板を用いた以外は実施例4の4−3と同様にしたところ、基板表面は銀白色金属光沢を持った膜で覆われた。得られた膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。得られたアルミニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(5−4)トレンチ基板へのアルミニウムの埋め込み性の評価
実施例1の1−4で用いたものと同様のトレンチ基板に対し、上記5−2および5−3と同様の手法でそれぞれプラズマ処理、アルミニウム膜の形成を実施した。アルミニウム膜形成後の基体を、トレンチの長さ方向に直交する方向で切断し、その断面を走査型顕微鏡により観察したところ、トレンチ内部にまで均一にアルミニウムが埋め込まれていた。
【0054】
[実施例6]
(6−1)アルミニウム体形成用組成物(3)の調製
合成例4で調製したジメチルエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体(アミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体(2))5.00gにt−ブチルベンゼンを加えて全量を10.00gとすることにより、ジメチルエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体とt−ブチルベンゼンとの混合物(2)を50質量%含有する溶液を調製した。該溶液を2mL取り分ける事によりアルミニウム体形成用組成物(3)を調製した。
(6−2)プラズマ処理の実施
実施例1と同種の基板に対し、実施例1の1−2と同様にしてプラズマ処理を実施した。
(6−3)アルミニウム膜の形成
上記6−2にてプラズマ処理した基板上に金属アルミニウム膜を形成した。上記6−2にてプラズマ処理した基板を直ちにスピンコーターに装着し、窒素ガス雰囲気下にて、上記6−1で調製したアルミニウム体形成用組成物(3)の全量を滴下し、回転数800rpmで10秒間スピンさせた。この基板を直ちに窒素ガス雰囲気下、150℃のホットプレートで10分間加熱した。さらに窒素ガス雰囲気下、更に350℃で30分間加熱したところ、基板表面は銀白色金属光沢を持った膜で覆われた。得られた膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。得られたアルミニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(6−4)トレンチ基板へのアルミニウムの埋め込み性の評価
実施例1の1−4で用いたものと同様のトレンチ基板に対し、上記6−2および6−3と同様の手法でそれぞれプラズマ処理、アルミニウム膜の形成を実施した。アルミニウム膜形成後の基体を、トレンチの長さ方向に直交する方向で切断し、その断面を走査型顕微鏡により観察したところ、トレンチ内部にまで均一にアルミニウムが埋め込まれていた。
【0055】
[実施例7]
(7−1)アルミニウム体形成用組成物(3)の調製
実施例6の6−1と同様にして、アルミニウム体形成用組成物(3)を調製した。
(7−2)プラズマ処理の実施
実施例2と同種の基板に対し、実施例2の2−2と同様にして、プラズマ処理を実施した。
(7−3)アルミニウム膜の形成
上記7−2にてプラズマ処理した基板を用いた以外は実施例6の6−3と同様にしたところ、基板表面は銀白色金属光沢を持った膜で覆われた。得られた膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。得られたアルミニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(7−4)トレンチ基板へのアルミニウムの埋め込み性の評価
実施例1の1−4で用いたものと同様のトレンチ基板に対し、上記7−2および7−3と同様の手法でそれぞれプラズマ処理、アルミニウム膜の形成を実施した。アルミニウム膜形成後の基体を、トレンチの長さ方向に直交する方向で切断し、その断面を走査型顕微鏡により観察したところ、トレンチ内部にまで均一にアルミニウムが埋め込まれていた。
[実施例8]
(8−1)アルミニウム体形成用組成物(2)の調製
実施例5の5−1と同様にして、アルミニウム体形成用組成物(2)を調製した。
(8−2)プラズマ処理の実施
アルミニウム膜が形成される基体として片方の表面に厚さ10nmの窒化タンタル膜を有する直径4インチのシリコン基板を用いたほかは実施例2の2−2と同様にして、プラズマ処理を実施した。
(8−3)アルミニウム膜の形成
上記8−2にてプラズマ処理した基板を用いた以外は実施例5の5−3と同様にしたところ、基板表面は銀白色金属光沢を持った膜で覆われた。得られた膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。得られたアルミニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(8−4)トレンチ基板へのアルミニウムの埋め込み性の評価
実施例1の1−4にて、窒化チタン膜に代わって窒化タンタル膜を有する基板を用いたほかは全て同じ手法を用いて同様のトレンチ基板を準備し、上記8−2および8−3と同様の手法でそれぞれプラズマ処理、アルミニウム膜の形成を実施した。アルミニウム膜形成後の基体を、トレンチの長さ方向に直交する方向で切断し、その断面を走査型顕微鏡により観察したところ、トレンチ内部にまで均一にアルミニウムが埋め込まれていた。
[実施例9]
(9−1)アルミニウム体形成用組成物(3)の調製
実施例6の6−1と同様にして、アルミニウム体形成用組成物(3)を調製した。
(9−2)プラズマ処理の実施
実施例8と同種の基板に対し、実施例2の2−2と同様にしてプラズマ処理を実施した。
(9−3)アルミニウム膜の形成
上記9−2にてプラズマ処理した基板を用いた以外は実施例6の6−3と同様にしたところ、基板表面は銀白色金属光沢を持った膜で覆われた。得られた膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。得られたアルミニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(9−4)トレンチ基板へのアルミニウムの埋め込み性の評価
実施例1の1−4にて、窒化チタン膜に代わって窒化タンタル膜を有する基板を用いたほかは全て同じ手法を用いて同様のトレンチ基板を準備し、上記9−2および9−3と同様の手法でそれぞれプラズマ処理、アルミニウム膜の形成を実施した。アルミニウム膜形成後の基体を、トレンチの長さ方向に直交する方向で切断し、その断面を走査型顕微鏡により観察したところ、トレンチ内部にまで均一にアルミニウムが埋め込まれていた。
[実施例10]
(10−1)アルミニウム体形成用組成物(1)の調製
実施例1の1−1と同様にして、アルミニウム体形成用組成物(1)を調製した。
(10−2)プラズマ処理の実施
実施例2と同種の基板をプラズマ処理装置チャンバーに導入し、高純度ヘリウムガス2800sccmの流速で流しながら、チャンバー圧=800Pa減圧下、電極温度=335℃、電極出力=100W、10秒間プラズマ処理を実施した。
(10−3)アルミニウム膜の形成
上記10−2にてプラズマ処理した基板上に金属アルミニウム膜を形成した。上記10−2にてプラズマ処理した基板を直ちにスピンコーターに装着し、窒素ガス雰囲気下にて、窒化チタン膜を有する面に合成例2で調製した下地膜形成用組成物1mLを滴下して、回転数2,000rpmで10秒間スピンさせた。この基板を150℃に設定したホットプレートに乗せ、10分間加熱した。下地膜の厚さは2nmであった。
次いでこの基板を窒素雰囲気下でスピンコーターに再び装着し、上記10−1で調製したアルミニウム体形成用組成物(1)の全量を滴下し、回転数800rpmで10秒間スピンさせた。この基板を直ちに窒素ガス雰囲気下、150℃のホットプレートで10分間加熱した。さらに窒素ガス雰囲気下、更に350℃で30分間加熱したところ、基板表面は銀白色金属光沢を持った膜で覆われた。得られた膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。得られたアルミニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(10−4)トレンチ基板へのアルミニウムの埋め込み性の評価
実施例1の1−4で用いたものと同様のトレンチ基板に対し、上記10−2および10−3と同様の手法でそれぞれプラズマ処理、アルミニウム膜の形成を実施した。アルミニウム膜形成後の基体を、トレンチの長さ方向に直交する方向で切断し、その断面を走査型顕微鏡により観察したところ、トレンチ内部にまで均一にアルミニウムが埋め込まれていた。
[実施例11]
(11−1)アルミニウム体形成用組成物(1)の調製
実施例1の1−1と同様にして、アルミニウム体形成用組成物(1)を調製した。
(11−2)プラズマ処理の実施
実施例2と同種の基板をプラズマ処理装置チャンバーに導入し、高純度ヘリウムガス2800sccmの流速で流しながら、チャンバー圧=800Pa減圧下、電極温度=335℃、電極出力=300W、20秒間プラズマ処理を実施した。
(11−3)アルミニウム膜の形成
上記11−2にてプラズマ処理した基板上に金属アルミニウム膜を形成した。上記11−2にてプラズマ処理した基板を直ちにスピンコーターに装着し、窒素ガス雰囲気下にて、窒化チタン膜を有する面に合成例2で調製した下地膜形成用組成物1mLを滴下して、回転数2,000rpmで10秒間スピンさせた。この基板を150℃に設定したホットプレートに乗せ、10分間加熱した。下地膜の厚さは2nmであった。
次いでこの基板を窒素雰囲気下でスピンコーターに再び装着し、上記11−1で調製したアルミニウム体形成用組成物(1)の全量を滴下し、回転数800rpmで10秒間スピンさせた。この基板を直ちに窒素ガス雰囲気下、150℃のホットプレートで10分間加熱した。さらに窒素ガス雰囲気下、更に350℃で30分間加熱したところ、基板表面は銀白色金属光沢を持った膜で覆われた。得られた膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。得られたアルミニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(11−4)トレンチ基板へのアルミニウムの埋め込み性の評価
実施例1の1−4で用いたものと同様のトレンチ基板に対し、上記11−2および11−3と同様の手法でそれぞれプラズマ処理、アルミニウム膜の形成を実施した。アルミニウム膜形成後の基体を、トレンチの長さ方向に直交する方向で切断し、その断面を走査型顕微鏡により観察したところ、トレンチ内部にまで均一にアルミニウムが埋め込まれていた。
【0056】
[比較例1]
(12−1)アルミニウム体形成用組成物(2)の調製
実施例4の4−1と同様にして、アルミニウム体形成用組成物(2)を調製した。
(12−2)プラズマ処理の実施
比較例1では、基体に対してプラズマ処理の実施は行わなかった。
(12−3)アルミニウム膜の形成
基板にプラズマ処理を行わず、かつ、アルミニウム組成物(1)の代わりに上記12−1で調製したアルミニウム体形成用組成物(2)を用いた以外は実施例1の1−3と同様にしたところ、基板表面は銀白色金属光沢を持った膜で覆われた。得られた膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。得られたアルミニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。なお、このアルミニウム膜につき、JIS−5400に準拠して碁盤目剥離試験を行った結果、碁盤目100個のうち10個の碁盤目が剥離した。
(12−4)トレンチ基板へのアルミニウムの埋め込み性の評価
実施例1の1−4で用いたものと同様のトレンチ基板を上記12−3と同様の手法でアルミニウム膜の形成を実施した。アルミニウム膜形成後の基体を、トレンチの長さ方向に直交する方向で切断し、その断面を走査型顕微鏡により観察したところ、トレンチ内部に欠陥(ボイドの発生)が観察された。
【0057】
[比較例2]
(13−1)アルミニウム膜の形成
基板にプラズマ処理を行わない以外は、実施例6の6−3と同様にしたところ、基板表面は銀白色金属光沢を持った膜で覆われた。得られた膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。得られたアルミニウム膜の各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。なお、このアルミニウム膜につき、JIS−5400に準拠して碁盤目剥離試験を行った結果、碁盤目100個のうち15個の碁盤目が剥離した。
(13−2)トレンチ基板へのアルミニウムの埋め込み性の評価
実施例1の1−4で用いたものと同様のトレンチ基板を上記13−1と同様の手法でアルミニウム膜の形成を実施した。アルミニウム膜形成後の基体を、トレンチの長さ方向に直交する方向で切断し、その断面を走査型顕微鏡により観察したところ、トレンチ内部に欠陥(ボイドの発生)が観察された。
【0058】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体をプラズマ処理するプラズマ処理工程と、
プラズマ処理された基体上に、アミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体及び有機溶媒を含有するアルミニウム体形成用組成物を塗布して、上記基体上に上記組成物からなる塗布層を形成させる塗布工程と、
上記塗布層に加熱および光照射の少なくともいずれか一方を行うことにより、膜状のアルミニウム体を形成させるアルミニウム膜形成工程と、を含むアルミニウム体を備えた基体の製造方法。
【請求項2】
前記基体が細孔を有し、前記塗布工程において、上記細孔内に前記アルミニウム体形成用組成物が埋め込まれた状態となるように、上記細孔を有する基体上に前記組成物からなる塗布層を形成させる、請求項1に記載のアルミニウム体を備えた基体の製造方法。
【請求項3】
前記アルミニウム膜形成工程の後に、上記細孔内に埋め込まれたアルミニウム体形成用組成物以外のアルミニウム体形成用組成物から形成された膜状のアルミニウム体の一部又は全部を除去する、膜状のアルミニウム体除去工程をさらに含む、請求項2に記載のアルミニウム体を備えた基体の製造方法。
【請求項4】
前記組成物が、チタン化合物をさらに含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム体を備えた基体の製造方法。
【請求項5】
前記プラズマ処理工程と塗布工程との間に、チタン、パラジウム及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属原子を含有する有機金属化合物(ただしアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体を除く)を含有する下地膜形成用組成物を塗布して加熱する下地膜形成工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム体を備えた基体の製造方法。
【請求項6】
前記プラズマ処理に用いられるガスがヘリウム、またはアルゴンである請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム体を備えた基体の製造方法。
【請求項7】
前記プラズマ処理の出力量が10〜500Wであり、かつ、照射時間が1秒間〜1分間である請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミニウム体を備えた基体の製造方法。
【請求項8】
前記基体はその表面に窒化チタンまたは窒化タンタルからなる膜を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルミニウム体を備えた基体の製造方法。

【公開番号】特開2013−21068(P2013−21068A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152005(P2011−152005)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】