説明

アルミニウム化合物、開環重合触媒、及びポリエステルの製造方法

【課題】ラクトン、ラクチド、及び環状酸無水物の開環重合触媒として使用できる新規なアルミニウム化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)


(式中、Arは、少なくとも1個のハロゲン置換基を有するフェニル基若しくはナフチル基、又は少なくとも2,6−位にt−ブチル基を有する2,4,6−トリ置換フェニル基を示す。)で表されるアルミニウム化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規アルミニウム化合物、この化合物を用いたラクトン、ラクチド、又は環状酸無水物の開環重合触媒、及びこの触媒を用いたポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸(PLA)やポリカプロラクトン(PCL)は、生分解性や生体適合性に優れる点で注目を集めており、自然環境中で使用される物品や、医療用物品などへの応用が期待されている。
これら生分解性ポリマーの製造方法の中では、金属触媒を用いた環状エステルの開環重合が非常に簡便な製造方法である。従来、環状エステルの開環重合反応用の金属触媒として、錫、亜鉛、鉄、アルミニウム、イットリウム、チタンを始めとする数多くの金属触媒が報告されている。(非特許文献1、2、3、4、5)
【0003】
中でもアルミニウム触媒については、構造の明確なアルミニウム錯体を用いた研究が進んでおり、精密な分子量と分子量分布の制御、および機械的強度や生分解性といったポリマー物性を決定するポリマーの立体化学制御が実現されるようになりつつある。(非特許文献6、特許文献1)。しかし、重合活性が低いため、開環重合触媒として実用的なレベルには到達していない。
ここで、非特許文献7には、フェノキシイミン配位子を2個有するアルミニム錯体を触媒として用いてラクトンの開環重合によりポリエステルを製造する方法が記載されている。
【特許文献1】特開2005−54010号公報
【非特許文献1】Macromolecules 1992,25,6419-6424
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.2001,123,339-340
【非特許文献3】Macromolecules 1998,31,2114-2122
【非特許文献4】Macromolecules 1999,32,2400-2402
【非特許文献5】Inorg.Chem.2003,42,1437-1447
【非特許文献6】J.Am.Chem.Soc.2004,126,2688-2689
【非特許文献7】Macromolecules 2005,38,5363-5366
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラクトン、ラクチド、及び環状酸無水物の開環重合触媒として使用できる新規なアルミニウム化合物、ラクトン、ラクチド、及び環状酸無水物の高活性な開環重合触媒、並びに効率の良いポリエステルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、フェノキシイミン配位子を有するアルミニウム錯体において、イミン部の置換基が重合活性に大きな影響を与えることを見出した。さらに、イミン部の置換基が、少なくとも1個のハロゲン置換基を有するフェニル基若しくはナフチル基、又は下記一般式(2)
【0006】
【化1】

(式中、R10は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。)で表される置換基であるときに、高い重合活性を示すことを見出した。
【0007】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下のアルミニウム化合物、開環重合触媒、及びポリエステルの製造方法を提供する。
項1. 下記一般式(1)
【化2】

(式中、Arは、少なくとも1個のハロゲン置換基を有するフェニル基若しくはナフチル基、又は下記一般式(2)
【化3】

(式中、R10は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。)
で表される置換基を示し、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基、又はハロゲン原子を示し、R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖状のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、又は置換基を有していてよい炭素数6〜18のフェニル基、ナフチル基、アントラニル基、若しくはビフェニル基を示す。)
で表されるアルミニウム化合物。
項2. 一般式(1)において、Arが、少なくとも1個のハロゲン置換基を有するフェニル基又はナフチル基である項1に記載のアルミニウム化合物。
項3. 一般式(1)において、Arが、上記一般式(2)で表される置換基である項1に記載のアルミニウム化合物。
項4. 項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム化合物を含む、ラクトン、ラクチド、及び環状酸無水物の開環重合触媒。
項5. 項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム化合物の存在下に、ラクトン、ラクチド、及び環状酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を開環重合する工程を含むことを特徴とするポリエステルの製造方法。
項6. 炭素数1〜10の1価アルコール、炭素数1〜10の多価アルコール、及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の存在下で開環重合を行う項5に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアルミニウム化合物は、ラクトン、ラクチド、及び環状酸無水物の開環重合触媒として、高い活性を示す。このため、穏やかな条件下で開環重合反応を行っても、短時間でポリエステルを製造することができる。また、一定量のモノマーを少ない触媒量で重合させることができる。さらに、本発明の化合物を触媒として用いることにより、高収率でポリエステルを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
(I)アルミニウム化合物
本発明の化合物は文献未記載の新規化合物であり、下記一般式(1)
【化4】

(式中、Arは、少なくとも1個のハロゲン置換基を有するフェニル基若しくはナフチル基、又は下記一般式(2)
【化5】

(式中、R10は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。)
で表される置換基を示し、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基、又はハロゲン原子を示し、R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖状のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、又は置換基を有していてよい炭素数6〜18のフェニル基、ナフチル基、アントラニル基、若しくはビフェニル基を示す。)
で表される化合物である。
少なくとも1個のハロゲン置換基を有するフェニル基又はナフチル基のうちでは、少なくとも1個のハロゲン置換基を有するフェニル基が好ましい。
【0010】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。2個以上のハロゲン置換基を有する場合、ハロゲン原子の種類は同一でもよく、異なっていてもよい。フェニル基上のハロゲン置換基の数は1〜5個であればよいが、特に2個、3個、又は5個であるのが好ましい。フェニル基が2個のハロゲン置換基を有する場合、ハロゲン置換基がイミノ基を基準としてオルト位に存在するのが好ましい。また、フェニル基が3個のハロゲン置換基を有する場合、ハロゲン置換基がイミノ基を基準として両オルト位、及びパラ位に存在するのが好ましい。特に好ましいArとして、2,6-ジフルオロフェニル基、2,4,6-トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0011】
また、Arのうち上記一般式(2)の置換基も好ましいものであるが、R10は、ブチル基であるのが好ましく、t-ブチル基であるのがより好ましい。
R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基、又はハロゲン原子を表すが、両者がアルキル基であるのが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であるのがより好ましい。炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などが挙げられる。また、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などの何れであってもよいが、中でも塩素原子が好ましい。
【0012】
上記のR3、R4、R5及びR6の中では、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖状のアルコキシ基が好ましい。
R3、R4、R5及びR6に関して、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などの何れであってもよい。
直鎖又は分岐鎖状のアルキル基の炭素数は1〜6であるが、炭素数1〜4が好ましく、炭素数1〜2がより好ましい。
直鎖若しくは分岐鎖状のアルコキシ基の炭素数は1〜6であるが、炭素数1〜4が好ましい。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−-ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基などが挙げられる。
置換基を有していてよい炭素数6〜18のフェニル基、ナフチル基、アントラニル基、若しくはビフェニル基の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アジ基等が挙げられる。フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、若しくはビフェニル基の中では、フェニル基が好ましい。
【0013】
R3、R4、R5及びR6の好ましい組み合わせとしては、R3がt-ブチル基であり、R4、R5及びR6が水素原子である組み合わせ、R3がメチル基であり、R4、R5及びR6が水素原子である組み合わせ、R3及びR5がメチル基であり、R4及びR6が水素原子である組み合わせ、R3及びR5がt-ブチル基であり、R4及びR6が水素原子である組み合わせ、R3がt-ブチル基であり、R4及びR6が水素原子であり、R5がメチル基である組み合わせ、R3がメチル基であり、R4及びR6が水素原子であり、R5がフッ素原子である組み合わせが挙げられる。中でも、R3がt-ブチル基であり、R4、R5及びR6が水素原子である組み合わせ、R3がメチル基であり、R4、R5及びR6が水素原子である組み合わせ、R3及びR5がメチル基であり、R4及びR6が水素原子である組み合わせ、R3及びR5がt-ブチル基であり、R4及びR6が水素原子である組み合わせが好ましい。
【0014】
一般式(1)の化合物は、例えば、図1に示す方法で合成することができる。図1中の、Ar、及びR1〜R6は一般式(1)におけるものと同じである。また、図1中のRは、メチル基などの低級アルキル基である。
図1の脱水縮合反応の条件は当業者であれば適宜設定することができるが、適当な有機溶媒中で、p-トルエンスルホン酸のような触媒の存在下に、温度80〜130℃程度で反応を行うことができる。また、このようにして得られた配位子を用いてアルミニウム錯体を得る反応の条件も当業者であれば適宜設定することができるが、配位子とアルキルアルミニウム化合物、又はハロゲン化アルキルアルミニウム化合物などとを、適当な有機溶媒中で、温度-30〜30℃程度で反応させればよい。
【0015】
(II)開環重合触媒
本発明の触媒は、ラクトン、ラクチド、及び環状酸無水物の開環重合触媒であって、上記説明した一般式(1)の化合物を含むものである。
【0016】
(III)ポリエステルの製造方法
本発明のポリエステルの製造方法は、一般式(1)のアルミニウム化合物の存在下に、ラクトン、ラクチド、及び環状酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を開環重合する工程を含む方法である。
【0017】
ラクトンは、以下の一般式(3)
【化6】

(式中、Rは炭素数2〜5のアルキレン基を示す。)
で表される化合物群である。一般式(3)で表されるラクトンとしては、例えばβ−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
【0018】
ラクチドは、以下の一般式(4)
【化7】

(式中、R8は炭素数1〜2のアルキレン基を示す。)
で表される化合物群である。一般式(4)で表されるラクチド類としては、例えばグリコリド、D−ラクチド、L−ラクチド、meso−ラクチドなどが挙げられる。
【0019】
環状酸無水物は、以下の一般式(5)
【化8】

(式中、R9は炭素数2〜3のアルキレン基を示す。)
で表される化合物群である。一般式(5)で表される環状酸無水物として、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸が挙げられる。
【0020】
触媒である一般式(1)の化合物の使用量は、一般式(1)の化合物の1モルに対して、原料モノマーが、通常約50〜5000モル、好ましくは約50〜2500モル、より好ましくは約50〜1000モルとなる量とすればよい。上記範囲であれば効率よく重合反応が進行する。
開環重合を進行させるために、反応系に、さらに炭素数1〜10の1価アルコール、炭素数1〜10の多価アルコール、及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を重合補助剤として存在させればよい。これらは、別途添加してもよいが、未精製の原料モノマーを使用することにより反応系に存在させてもよい。
【0021】
1価アルコールの炭素数は1〜7が好ましく、このような1価アルコールとして、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。中でも、立体障害により反応速度を低下させることがない点で、炭素数1〜3の直鎖、若しくは分岐鎖状のアルコール、又はn−ブタノールが好ましい。
【0022】
多価アルコールの炭素数は2〜6が好ましい。このような多価アルコールとして、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオールのような2価アルコール、グリセリンのような3価アルコール、ペンタエリスリトールのような4価アルコールなどが挙げられる。
1価アルコール、多価アルコール、及び水の中では、触媒の活性点が一つであり、重合がリビング的に進行しやすい点で、1価アルコールが好ましい。
これらの重合補助剤の使用量は、一般式(1)のアルミニウム化合物の1モルに対して、約0.25〜2モルが好ましく、約0.5〜1がより好ましい。上記範囲であれば、効率よく重合反応が進行する。
【0023】
開環重合反応は無溶媒で行ってもよく、反応溶媒を使用してもよい。反応溶媒は、例えば、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、ヘキサン、ペンタンなどの公知の有機溶媒を制限無く使用できる。溶媒は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。
各成分の混合順序は特に限定されず、例えば、溶媒、触媒、及び重合補助剤を混合した溶液中に原料モノマーを添加することができる。なお、触媒である一般式(1)の化合物は、別途合成したものを反応系に添加してもよいが、配位子とアルキルアルミニウム化合物、ハロゲン化アルキルアルミニウム化合物、又はハロゲン化アルミニウム化合物などとを重合反応系に添加して重合反応系中で錯体を形成してもよい。
反応温度は、特に制限されないが、通常は室温〜80℃程度の範囲とするのが好ましい。反応時間は、約5〜60分とすればよい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
<化合物の同定方法>
化合物同定のために行った試験の条件は以下の通りである。
1H、および 13C NMR の測定、および元素分析より化合物の同定を行った。NMR測定に使用した機器は、JEOL JNM-LA400 spectrometer (399.65 MHz for 1H, 100.40 MHz for 13C)であり、測定は全て重ベンゼン中25℃ で行った。ケミカルシフトのリファレンスには、SiMe4 (δ 0.00, 1H, 13C)を用いた。元素分析には、パーキンエルマー社製のPE2400II Seriesを使用した。
【0026】
<ポリエステルの分子量測定方法>
ポリマーの分子量、および分子量分布測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた。GPC は島津社製のSCL-10A(検出器には RID-10A)を使用した。溶媒は安定剤として0.03 wt.% 2,6-di-tert-butyl-p-cresolを含有したTHFを使用し, 流速1.0 mL/分、温度40℃とした。GPCカラムは 、ShimPAC GPC-806、804、802, カラム長30 cm × カラム径8.0 mmφを用いた。充填剤は、スチレンとジビニルベンゼンの共重合ポーラスゲル(分子量102〜2×107)を用いた。分子量はポリスチレン換算値である。
【0027】
実施例1
<配位子の合成>
回転子を入れたフラスコに市販品未精製のペンタフルオロフェニルアニリン1.38 g (7.5 mmol)、市販品未精製の3−t−ブチル-2-ヒドロキシベンズアルデヒド 1.11 g (6.2 mmol)、トルエン50 mL、触媒量のp−トルエンスルホン酸5 mgを加え、窒素気流下還流条件下で12時間攪拌を行った後、溶媒を減圧留去した。得られた固体をメタノールで再結晶し、目的の配位子(黄色結晶)を1.54 g (収率72 %)得た。
【0028】
<触媒の合成>
以下の操作は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れたフラスコに脱水へキサン10 mL、1.1Mトリメチルアルミニウム1.62 g (2.37 mmol)を加え、それを−30℃に冷却した。この溶液を攪拌した状態で脱水へキサン3 mLに配位子0.74 g (2.15 mmol)を溶解させた溶液を滴下した。滴下後、冷却を止めゆっくりと室温に戻し10時間攪拌を行い、適度に溶媒を留去し再結晶を行い、目的のアルミニウム錯体21(黄色結晶)を0.70 g (収率82 %)得た。得られた化合物の同定データを以下に示す。
【0029】
1H NMR (C6D6): δ -0.29 (s, 6H, AlMe2), 1.47 (s, 9H, tBu), 6.54 (t, J = 7.68, 1H, aromatic-H), 6.65 (d, J = 8.08, 1H, aromatic-H), 7.30 (s, 1H, CH=N), 7.40 (d, J = 7.3, 1H, aromatic-H). 13C NMR (C6D6): δ -10.0, 29.3, 35.3, 118.0, 119.3, 121.5, 134.7, 136.8, 137.2, 139.4, 140.6, 141.7, 142.4, 143.0, 166.4, 176.9. Anal. Calcd for C19H19AlF5NO: C, 57.15; H, 4.80; N, 3.51. Found: C, 57.14; H, 4.66; N, 3.45.
【0030】
1H NMR、13C NMR、および元素分析から、得られた化合物は下記の式で表される化合物であることが分かった。
【化9】

【0031】
<重合反応>
重合反応は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れた試験管に触媒8 mg (20μmol)、脱水トルエン50μL、n−ブタノール 1.8μL (20μmol) を加え、室温で10分間攪拌を行った。ここにε-カプロラクトン560 mg (5.0 mmol)を加え、所定の温度で所定の時間攪拌を行った。得られたポリマーをトルエン 5 mLに溶解させ、それをメタノール 300 mLに滴下し、析出したポリマーを減圧ろ過により回収した。その後、回収したポリマーを室温で減圧乾燥させ、ポリマー収量を求めた。得られたポリマーの回収方法ついては、以下に示す実施例、比較例においても同様の操作を行った。
【0032】
実施例2
実施例1と同様にして配位子を合成し、触媒を合成した。
<重合反応>
重合反応は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れた試験管に触媒4 mg (10μmol)、脱水トルエン50μL、n−ブタノール 0.9μL (10μmol) を加え、室温で10分間攪拌を行った。ここにε−カプロラクトン560 mg (5.0 mmol)を加え、60℃で所定の時間攪拌を行った。
【0033】
実施例3
<配位子の合成>
回転子を入れたフラスコに市販品未精製の2,4,6−トリ−t−ブチルアニリン1.96 g (7.5 mmol)、市販品未精製の3−t−ブチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド 2.67 g (15 mmol)、トルエン50 mL、触媒量のp−トルエンスルホン酸5 mgを加え、窒素気流下還流条件下で12時間攪拌を行った後、溶媒を減圧留去した。得られた固体をメタノールで再結晶し、目的の配位子(黄色結晶)を2.21g (収率70 %)得た。
【0034】
<触媒の合成>
以下の操作は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れたフラスコに脱水へキサン10 mL、1.1Mトリメチルアルミニウム1.62 g (2.37 mmol)を加え、それを−30℃に冷却した。この溶液を攪拌した状態で脱水へキサン3 mLに配位子0.91 g (2.15 mmol)を溶解させた溶液を滴下した。滴下後、冷却を止めゆっくりと室温に戻し3時間攪拌を行い、適度に溶媒を留去し再結晶を行い、目的のアルミニウム錯体22(白色粉体)を0.88 g (収率86 %)得た。得られた化合物の同定データを以下に示す。
【0035】
1H NMR (C6D6): δ -0.18 (s, 6H, AlMe2), 1.25 (s, 9H, tBu), 1.41 (s, 18H, tBu), 1.54 (s, 9H, tBu), 6.57 (t, J = 6.2, 1H, aromatic-H), 6.59 (d, J = 6.2, 1H, aromatic-H), 6.72 (d, J = 8.1, 1H, aromatic-H), 7.39 (d, J = 7.3, 1H, aromatic-H), 7.58 (s, 2H, aromatic-H), 7.89 (s, 1H, CH=N),.13C NMR (C6D6): δ -6.7, 29.6, 31.3, 34.4, 34.8, 35.8, 37.6, 117.8, 120.2, 125.1, 133.0, 134.8, 142.3, 143.5, 143.7, 148.5, 164.7, 177.1.
【0036】
1H NMR、および13C NMRから、得られた化合物は下記の式で表される化合物であることが分かった。
【化10】

【0037】
<重合反応>
重合反応は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れた試験管に触媒10 mg (20 μmol)、脱水トルエン50 μL、n−ブタノール 1.8 μL (20 μmol) を加え、室温で10分間攪拌を行った。ここにε-カプロラクトン560 mg (5.0 mmol)を加え、所定の温度で所定の時間攪拌を行った。
【0038】
実施例4
実施例3と同様にして配位子を合成し、触媒を合成した。
<重合反応>
重合反応は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れた試験管に触媒5 mg (10 μmol)、脱水トルエン50μL、n−ブタノール 0.9μL (10μmol) を加え、室温で10分間攪拌を行った。ここにε−カプロラクトン560 mg (5.0 mmol)を加え、60℃で所定の時間攪拌を行った。
【0039】
比較例1
<配位子の合成>
回転子を入れたフラスコに市販品を減圧蒸留により精製した2,6-ジイソプロピルアニリン2.66 g (15.0 mmol)、市販品未精製の3−t−ブチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド 2.23 g (12.5 mmol)、エタノール45 mL、モレキュラーシーブ3A 7.5 gを加え、窒素気流下還流条件下で24時間攪拌を行った後、モレキュラーシーブをろ過により取り除き、ろ液を減圧留去し、得られた油状物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の配位子(黄色オイル)を4.16 g (収率99 %)得た。
【0040】
<触媒の合成>
以下の操作は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れたフラスコに脱水へキサン15 mL、1.1Mトリメチルアルミニウム2.76 mL (3.04 mmol)を加え、それを−30℃に冷却した。この溶液を攪拌した状態で脱水へキサン3 mLに配位子1.03 g (3.04 mmol)を溶解させた溶液を滴下した。滴下後、冷却を止めゆっくりと室温に戻し3時間攪拌を行い、適度に溶媒を留去し再結晶を行い、目的のアルミニウム錯体22(黄色結晶)を0.93 g (収率77 %)得た。得られた化合物の同定データを以下に示す。
【0041】
1H NMR (C6D6): δ -0.30 (s, 6H, AlMe2), 0.80 (d, 6H, iPr), 1.18 (d, 6H, iPr), 1.52 (d, 9H, tBu), 3.13 (septet, 2H, iPr), 6.59 (t,1H, aromatic-H), 6.72 (dd,1H, aromatic-H), 7.01-7.03 (m,2H, aromatic-H), 7.08-7.11 (m,1H, aromatic-H), 7.40 (dd,1H, aromatic-H), 7.72 (s,1H, aromatic-H). 13C NMR (C6D6): δ -9.06, 22.6, 25.9, 28.4, 29.5, 35.4, 117.7, 119.4, 124.5, 128.5, 133.7, 135.3, 142.0, 142.5, 142.7, 164.9, 174.1. Anal. Calcd for C25H36AlNO: C, 76.30; H, 9.22; N, 3.56. Found: C, 76.33; H, 9.46; N, 3.37.
【0042】
1H NMR 、13C NMR、および元素分析から、得られた化合物は下記の式で表される化合物であることが分かった。
【化11】

【0043】
<重合反応>
重合反応は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れた試験管に触媒8 mg (20μmol)、脱水トルエン50μL、n−ブタノール 1.8μL (20μmol) を加え、室温で10分間攪拌を行った。ここにε−カプロラクトン560 mg (5.0 mmol)を加え、所定の温度で所定の時間攪拌を行った。
【0044】
比較例2
比較例1と同様にして、配位子を合成し、触媒を合成した。
<重合反応>
重合反応は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れた試験管に触媒4 mg (10μmol)、脱水トルエン50μL、n−ブタノール 0.9μL (10μmol) を加え、室温で10分間攪拌を行った。ここにε−カプロラクトン560 mg (5.0 mmol)を加え、60℃で所定の時間攪拌を行った。
【0045】
比較例3
<配位子の合成>
回転子を入れたフラスコに市販品未精製のt−ブチルアミン1.08 g (15.0 mmol)、市販品未精製の3−t−ブチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド 2.23 g (12.5 mmol)、エタノール45 mL、モレキュラーシーブ3A 7.5 gを加え、窒素気流下室温で24時間攪拌を行った後、モレキュラーシーブをろ過により取り除き、ろ液を減圧留去し、目的の配位子(黄色オイル)を2.90 g (収率99 %)得た。
【0046】
<触媒の合成>
以下の操作は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れたフラスコに脱水へキサン15 mL、1.1Mトリメチルアルミニウム3.91 mL (4.30 mmol)を加え、それを−30℃に冷却した。この溶液を攪拌した状態で脱水へキサン3 mLに配位子1.00 g (4.30 mmol)を溶解させた溶液を滴下した。滴下後、冷却を止めゆっくりと室温に戻し3時間攪拌を行い、適度に溶媒を留去し再結晶を行い、目的のアルミニウム錯体23(黄色結晶)を0.94 g (収率76 %)得た。得られた化合物の同定データを以下に示す。
【0047】
1H NMR (C6D6): δ -0.23 (s, 6H, AlMe2), 0.98 (s, 9H, tBu), 1.55 (s, 9H, tBu), 6.61 (t,1H, aromatic-H), 6.69 (dd,1H, aromatic-H), 7.39 (dd,1H, aromatic-H), 7.72 (s,1H, aromatic-H). 13C NMR (C6D6): δ -6.41, 29.5, 29.6, 35.2, 59.3, 116.9, 119.8, 133.6, 133.8, 141.1, 163.6, 168.7. Anal. Calcd for C17H28AlNO: C, 70.56; H, 9.75; N, 4.84. Found: C, 70.53; H, 10.08; N, 4.73.
【0048】
1H NMR 、13C NMR、および元素分析から、得られた化合物は下記の式で表される化合物であることが分かった。
【化12】

【0049】
<重合反応>
重合反応は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れた試験管に触媒6 mg (20μmol)、脱水トルエン50μL、n−ブタノール 1.8μL (20μmol) を加え、室温で10分間攪拌を行った。ここにε−カプロラクトン560 mg (5.0 mmol)を加え、所定の温度で所定の時間攪拌を行った。
【0050】
比較例4
<配位子の合成>
回転子を入れたフラスコに市販品を減圧蒸留により精製した2,6−ジイソプロピルアニリン2.66 g (15.0 mmol)、市販品未精製の3−メチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド 1.70 g (12.5 mmol)、エタノール45 mL、モレキュラーシーブ3A 7.5 gを加え、窒素気流下還流条件下で24時間攪拌を行った後、モレキュラーシーブをろ過により取り除き、ろ液を減圧留去し得られた固体をエタノールで再結晶し、目的の配位子(黄色結晶)を2.73 g (収率74 %)得た。
【0051】
<触媒の合成>
以下の操作は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れたフラスコに脱水へキサン10 mL、1.1Mトリメチルアルミニウム1.62 g (2.37 mmol)を加え、それを−30℃に冷却した。この溶液を攪拌した状態で脱水へキサン3 mLに配位子0.63 g (2.15 mmol)を溶解させた溶液を滴下した。滴下後、冷却を止めゆっくりと室温に戻し3時間攪拌を行い、適度に溶媒を留去し再結晶を行い、目的のアルミニウム錯体24(黄色結晶)を0.63 g (収率84 %)得た。得られた化合物の同定データを以下に示す。
【0052】
1H NMR (C6D6): δ -0.30 (s, 6H, AlMe2), 0.84 (d, J = 6.6, 6H, (CH3)2CH-)), 1.19 (d, J = 6.96, 6H, (CH3)2CH-)), 2.28 (s, 3H, Me), 3.14 (m, 2H, (CH3)2CH-), 6.51 (t, J = 7.72, 1H, aromatic-H), 6.68 (d, J = 7.72, 1H, aromatic-H), 7.02-7.11 (m, 4H, aromatic-H), 7.82 (s, 1H, CH=N),. 13C NMR (C6D6): δ -9.0, 16.4, 22.7, 25.8, 28.4, 117.8, 118.3, 124.5, 128.5, 131.3, 132.8, 138.6, 142.5, 142.6, 164.0, 173.7. Anal. Calcd for C22H30AlNO: C, 75.18; H, 8.60; N, 3.99. Found: C, 73.98; H, 8.88; N, 3.82.
【0053】
1H NMR 、13C NMR、および元素分析から、得られた化合物は下記の式で表される化合物であることが分かった。
【化13】

【0054】
<重合反応>
重合反応は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れた試験管に触媒7 mg (20μmol)、脱水トルエン50μL、n−ブタノール 1.8μL (20μmol) を加え、室温で10分間攪拌を行った。ここにε−カプロラクトン560mg (5.0mmol)を加え、所定の温度で所定の時間攪拌を行った。
【0055】
比較例5
比較例3と同様にして、配位子を合成し、触媒を合成した。
<重合反応>
重合反応は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れた試験管に触媒3.5 mg (10μmol)、脱水トルエン50μL、n−ブタノール 0.9μL (10μmol) を加え、室温で10分間攪拌を行った。ここにε−カプロラクトン560 mg (5.0 mmol)を加え、60℃で所定の時間攪拌を行った。
【0056】
比較例6
<配位子の合成>
回転子を入れたフラスコに市販品未精製のt−ブチルアミン1.08 g (15.0 mmol)、市販品未精製の3−メチル-2-ヒドロキシベンズアルデヒド 1.70 g (12.5 mmol)、エタノール45 mL、モレキュラーシーブ3A 7.5 gを加え、窒素気流下室温で24時間攪拌を行った後、モレキュラーシーブをろ過により取り除き、ろ液を減圧留去し、目的の配位子(黄色オイル)を2.17 g (収率91 %)得た。
【0057】
<触媒の合成>
以下の操作は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れたフラスコに脱水へキサン10 mL、1.1Mトリメチルアルミニウム1.62 g (2.37mmol)を加え、それを−30℃に冷却した。この溶液を攪拌した状態で脱水へキサン3 mLに配位子0.41 g (2.15 mmol)を溶解させた溶液を滴下した。滴下後、冷却を止めゆっくりと室温に戻し12時間攪拌を行い、適度に溶媒を留去し再結晶を行い、目的のアルミニウム錯体25(黄色結晶)を0.39 g (収率73 %)得た。得られた化合物の同定データを以下に示す。
【0058】
1H NMR (C6D6): δ -0.22 (s, 6H, AlMe2), 1.01 (s, 9H, tBu), 2.27 (s, 3H, Me), 6.55 (t, J = 7.72, 1H, aromatic-H), 6.68 (d, J = 7.72, 1H, aromatic-H), 7.11 (d, J = 6.6, 1H, aromatic-H), 7.74 (s, 1H, CH=N),. 13C NMR (C6D6): δ -6.1, 16.3, 29.6, 59.5, 116.9, 118.5, 130.3, 133.0, 137.4, 163.0, 168.2. Anal. Calcd for C14H22AlNO: C, 67.99; H, 8.97; N, 5.66. Found: C, 67.99; H, 9.40; N, 5.62.
【0059】
1H NMR、13C NMR、および元素分析から、得られた化合物は下記の式で表される化合物であることが分かった。
【化14】

【0060】
<重合反応>
重合反応は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れた試験管に触媒5 mg (20μmol)、脱水トルエン50μL、n−ブタノール 1.8μL (20μmol) を加え、室温で10分間攪拌を行った。ここにε−カプロラクトン560 mg (5.0 mmol)を加え、所定の温度で所定の時間攪拌を行った。
【0061】
比較例7
<配位子の合成>
回転子を入れたフラスコに市販品未精製の1−アダマンタンアミン1.13 g (7.5mmol)、市販品未精製の3−t−ブチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド 1.11g (6.2 mmol)、エタノール25 mL、モレキュラーシーブ3A 3.8 gを加え、窒素気流下室温で24時間攪拌を行った後、モレキュラーシーブをろ過により取り除き、ろ液を減圧留去し、目的の配位子(黄色粉末)を1.57 g (収率81 %)得た。
【0062】
<触媒の合成>
以下の操作は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れたフラスコに脱水へキサン10 mL、1.1Mトリメチルアルミニウム1.62 g (2.37 mmol)を加え、それを−30℃に冷却した。この溶液を攪拌した状態で脱水へキサン3 mLに配位子0.67 g (2.15 mmol)を溶解させた溶液を滴下した。滴下後、冷却を止めゆっくりと室温に戻し10時間攪拌を行い、適度に溶媒を留去し再結晶を行い、目的のアルミニウム錯体26(黄色結晶)を0.67 g (収率85 %)得た。得られた化合物の同定データを以下に示す。
【0063】
1H NMR (C6D6): δ 0.16 (s, 6H, AlMe2), 1.36 (dd, 6H, adamantyl), 1.57 (s, 9H, tBu), 1.66 (s or dd, 6H, adamantyl), 1.79 (s, 6H, adamantyl), 6.67 (t, 1H, aromatic-H), 6.82 (d, 1H, aromatic-H), 7.42 (d, 1H, aromatic-H), 7.79 (s, 1H, CH=N),. 13C NMR (C6D6): δ -6.1, 29.7, 35.3, 35.8, 60.3, 116.9, 120.0, 133.6, 133.8, 141.3, 163.8, 167.5. Anal. Calcd for C23H34AlNO: C, 75.17; H, 9.33; N, 3.81. Found: C, 75.10; H, 8.95; N, 3.84.
【0064】
1H NMR、13C NMR、および元素分析から、得られた化合物は下記の式で表される化合物であることが分かった。
【化15】

【0065】
<重合反応>
重合反応は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れた試験管に触媒7 mg (2μmol)、脱水トルエン50μL、n−ブタノール 1.8μL (20μmol) を加え、室温で10分間攪拌を行った。ここにε−カプロラクトン560 mg (5.0 mmol)を加え、所定の温度で所定の時間攪拌を行った。
【0066】
比較例8
<配位子の合成>
回転子を入れたフラスコに市販品未精製のシクロヘキシルアミン0.74 g (7.5 mmol)、市販品未精製の3−t−ブチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド 1.11 g (6.2 mmol)、トルエン50mL、触媒量のp−トルエンスルホン酸5 mgを加え、窒素気流下還流条件下で12時間攪拌を行った後、溶媒を減圧留去した粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の配位子(黄色オイル)を1.20 g (収率75 %)得た。
【0067】
<触媒の合成>
以下の操作は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れたフラスコに脱水へキサン10 mL、1.1Mトリメチルアルミニウム1.62 g (2.37 mmol)を加え、それを−30℃に冷却した。この溶液を攪拌した状態で脱水へキサン3 mLに配位子0.56 g (2.15 mmol)を溶解させた溶液を滴下した。滴下後、冷却を止めゆっくりと室温に戻し10時間攪拌を行い、適度に溶媒を留去し再結晶を行い、目的のアルミニウム錯体27(白色結晶)を0.61 g (収率90 %)得た。得られた化合物の同定データを以下に示す。
【0068】
1H NMR (C6D6): δ -0.22 (s, 6H, AlMe2), 0.90 (m, 3H, cyclohexyl), 0.90-1.51 (m, 10H, cyclohexyl), 1.56 (s, 9H, tBu), 2.65 (m, 1H, cyclohexyl), 6.66 (t, J = 7.68, 1H, aromatic-H), 6.76 (d, J = 7.72, 1H, aromatic-H), 7.42 (d, J = 7.32, 1H, aromatic-H), 7.40 (s, 1H, CH=N). 13C NMR (C6D6): δ -7.5, 14.3, 23.0, 25.1, 25.4, 29.5, 31.9, 33.7, 35.3, 68.5, 116.9, 119.8, 133.2, 133.8, 141.3, 164.0, 170.0. Anal. Calcd for C19H30AlNO: C, 72.35; H, 9.59; N, 4.44. Found: C, 72.28; H, 9.88; N, 4.38.
【0069】
1H NMR、13C NMR、および元素分析から、得られた化合物は下記の式で表される化合物であることが分かった。
【化16】

【0070】
<重合反応>
重合反応は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れた試験管に触媒6 mg (20μmol)、脱水トルエン50μL、n−ブタノール 1.8μL (20μmol) を加え、室温で10分間攪拌を行った。ここにε−カプロラクトン560mg(5.0 mmol)を加え、所定の温度で所定の時間攪拌を行った。
【0071】
比較例9
<配位子の合成>
回転子を入れたフラスコに市販品未精製のアニリン0.70 g (7.5 mmol)、市販品未精製の3−t−ブチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド 1.11 g (6.2 mmol)、トルエン50 mL、触媒量のp−トルエンスルホン酸5 mgを加え、窒素気流下還流条件下で12時間攪拌を行った後、溶媒を減圧留去した粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の配位子(黄色オイル)を1.18 g (収率75 %)得た。
【0072】
<触媒の合成>
以下の操作は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れたフラスコに脱水へキサン10 mL、1.1Mトリメチルアルミニウム1.62 g (2.37 mmol)を加え、それを−30℃に冷却した。この溶液を攪拌した状態で脱水へキサン3 mLに配位子0.54 g (2.15 mmol)を溶解させた溶液を滴下した。滴下後、冷却を止めゆっくりと室温に戻し10時間攪拌を行い、適度に溶媒を留去し再結晶を行い、目的のアルミニウム錯体28(黄色結晶)を0.57 g (収率86 %)得た。得られた化合物の同定データを以下に示す。
【0073】
1H NMR (C6D6): δ -0.21 (s, 6H, AlMe2), 1.55 (s, 9H, tBu), 6.59-6.67 (m, 2H, aromatic-H), 6.90-6.98 (m, 5H, aromatic-H), 7.41 (d, J = 7.32, 1H, aromatic-H), 7.47 (s, 1H, CH=N). 13C NMR (C6D6): δ -8.6, 29.7, 35.5, 117.6, 120.6, 122.6, 130.0, 134.3, 135.2, 141.9, 147.2, 165.0, 170.6. Anal. Calcd for C19H24AlNO: C, 73.76; H, 7.82; N, 4.53. Found: C, 73.68; H, 8.06; N, 4.51.
【0074】
1H NMR、13C NMR、および元素分析から、得られた化合物は下記の式で表される化合物であることが分かった。
【化17】

【0075】
<重合反応>
重合反応は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れた試験管に触媒6 mg (20μmol)、脱水トルエン50μL、n−ブタノール1.8μL (20μmol) を加え、室温で10分間攪拌を行った。ここにε−カプロラクトン560mg (5.0mmol)を加え、所定の温度で所定の時間攪拌を行った。
【0076】
比較例10
比較例9と同様にして、配位子を合成し、触媒を合成した。
<重合反応>
重合反応は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れた試験管に触媒3mg (10μmol)、脱水トルエン50μL、n−ブタノール 0.9μL (10μmol) を加え、室温で10分間攪拌を行った。ここにε−カプロラクトン560 mg (5.0mmol)を加え、60℃で所定の時間攪拌を行った。
【0077】
比較例11
<配位子の合成>
回転子を入れたフラスコに市販品未精製の2,6−ジメチルアニリン0.91 g (7.5 mmol)、市販品未精製の3−t−ブチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド 1.11 g (6.2 mmol)、トルエン50 mL、触媒量のp−トルエンスルホン酸5 mgを加え、窒素気流下還流条件下で12時間攪拌を行った後、溶媒を減圧留去し得られた固体をメタノールで再結晶し、目的の配位子(黄色結晶)を1.45 g (収率83 %)得た。
【0078】
<触媒の合成>
以下の操作は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れたフラスコに脱水へキサン10 mL、1.1Mトリメチルアルミニウム1.62 g (2.37 mmol)を加え、それを−30℃に冷却した。この溶液を攪拌した状態で脱水へキサン3 mLに配位子0.60 g (2.15 mmol)を溶解させた溶液を滴下した。滴下後、冷却を止めゆっくりと室温に戻し3時間攪拌を行い、適度に溶媒を留去し再結晶を行い、目的のアルミニウム錯体29(黄色結晶)を0.68 g (収率94 %)得た。得られた化合物の同定データを以下に示す。
【0079】
1H NMR (C6D6): δ -0.31 (s, 6H, AlMe2), 1.55 (s, 9H, tBu), 1.97 (s, 6H, Me), 6.61 (t, J = 7.72, 1H, aromatic-H), 6.65 (d, J = 7.68, 1H, aromatic-H), 6.82 (d, J = 7.72, 2H, aromatic-H), 6.89 (t, J = 8.4, 1H, aromatic-H), 7.22 (s, 1H, CH=N), 7.41 (d, J = 7.36, 1H, aromatic-H). 13C NMR (C6D6): δ -8.6, 18.4, 29.5, 35.3, 117.3, 119.8, 127.4, 129.0, 131.7, 133.8, 135.0, 141.8, 145.1, 164.8, 174.6. Anal. Calcd for C21H28AlNO: C, 74.75; H, 8.36; N, 4.15. Found: C, 74.60; H, 8.47; N, 4.02.
【0080】
1H NMR、13C NMR、および元素分析から、得られた化合物は下記の式で表される化合物であることが分かった。
【化18】

【0081】
<重合反応>
重合反応は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れた試験管に触媒7 mg (20μmol)、脱水トルエン50μL、n−ブタノール 1.8μL (20μmol) を加え、室温で10分間攪拌を行った。ここにε−カプロラクトン560mg (5.0mmol)を加え、所定の温度で所定の時間攪拌を行った。
【0082】
比較例12
比較例11と同様にして、配位子を合成し、触媒を合成した。
<重合反応>
重合反応は、グローブボックス、または真空窒素ラインを用いて窒素雰囲気下で行った。回転子を入れた試験管に触媒3.5 mg (10μmol)、脱水トルエン50 μL、n−ブタノール0.9μL (10μmol) を加え、室温で10分間攪拌を行った。ここにε−カプロラクトン560 mg (5.0 mmol)を加え、60℃で所定の時間攪拌を行った。
【0083】
上記各実施例及び比較例で行った重合反応の条件及び結果を以下の表1及び表2に示す。表1中の各例の触媒とモノマーとの使用比率は、モル比で、触媒/モノマー=1/250である。また、表2中の各例の触媒とモノマーとの使用比率は、モル比で、触媒/モノマー=1/500である。また、表1及び表2中のTOFは以下の式で表される値であり、触媒の効率を示す。
TOF=反応したε-カプロラクトンのモル数/触媒のモル数/反応時間
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

表1から明らかなように、本発明のアルミニウム化合物は、類縁の他のアルミニウム化合物に比べて非常に高い触媒活性を示した。このことは、触媒濃度を2分の1にした反応(表2)では顕著になった。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の化合物の製造方法の一例を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Arは、少なくとも1個のハロゲン置換基を有するフェニル基若しくはナフチル基、又は下記一般式(2)
【化2】

(式中、R10は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。)
で表される置換基を示し、R1及びR2は、同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基、又はハロゲン原子を示し、R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖状のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、又は置換基を有していてよい炭素数6〜18のフェニル基、ナフチル基、アントラニル基、若しくはビフェニル基を示す。)
で表されるアルミニウム化合物。
【請求項2】
一般式(1)において、Arが、少なくとも1個のハロゲン置換基を有するフェニル基又はナフチル基である請求項1に記載のアルミニウム化合物。
【請求項3】
一般式(1)において、Arが、上記一般式(2)で表される置換基である請求項1に記載のアルミニウム化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム化合物を含む、ラクトン、ラクチド、及び環状酸無水物の開環重合触媒。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム化合物の存在下に、ラクトン、ラクチド、及び環状酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を開環重合する工程を含むことを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項6】
炭素数1〜10の1価アルコール、炭素数1〜10の多価アルコール、及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の存在下で開環重合を行う請求項5に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−7305(P2009−7305A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171172(P2007−171172)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【Fターム(参考)】