説明

アルミニウム合金及びアルミニウム合金押出材の製造方法

【課題】高平滑な表面を形成することができるアルミニウム合金、アルミニウム合金押出材の製造方法、感光ドラム基体の製造方法、アルミニウム合金押出材、及び、感光ドラム基体を提供する。
【解決手段】アルミニウム合金は、Si:0.03〜0.6質量%、Fe:0.1〜0.7質量%、Cu:0.05〜0.20質量%、Mn:1.0〜1.5質量%、Mg:0.01〜0.1質量%、Zn:0〜0.1質量%、Ti:0〜0.1質量%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなる組成を有し、該組成を有するアルミニウム合金製ビレットを押出加工して押出材を製造する。さらに、得られた感光ドラム基体用アルミニウム合金押出管を引抜加工或いはしごき加工して感光ドラム基体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金、アルミニウム合金押出材の製造方法、感光ドラム基体の製造方法、アルミニウム合金押出材、及び、感光ドラム基体に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、レーザビームプリンタ、ファクシミリ装置等の電子写真装置の感光ドラム基体は、その外表面にOPC層等の感光層がその厚さが均一になるように薄く塗工される。
【0003】
この基体に用いられるアルミニウム合金管の外表面は、厚さが均一な感光層を塗工しうるようにするため、高い表面平滑性を有することが要求される。
【0004】
従来は、アルミニウム合金管の外表面を切削加工することによって高い表面平滑性を得ていたが、この方法では、切削刃具の調整や管理が容易ではない上に切削作業に熟練を要することから、大量生産には適さないという難点があった。なお、このように外表面を切削加工して得られた管は「切削管」と呼ばれている。
【0005】
そこで近年では、アルミニウム合金押出管を引抜加工して得られる引抜管や、アルミニウム合金押出管をしごき加工して得られるしごき管などの無切削管が用いられるようになってきている。
【0006】
このような無切削管においては、その外表面の表面品質は、最終加工である引抜加工やしごき加工による加工精度だけではなく押出管の外表面の表面品質にも大きく左右される。したがって、無切削管の外表面を確実に高平滑面にするためには、押出管の外表面の表面品質を向上させる必要がある。
【0007】
押出管の外表面の表面品質を向上させる技術としては、特開平7−284840号公報(特許文献1)に記載のように、ベアリング部がCo含有量16%未満のWC−Co系超硬合金によって形成されている押出金型を用いてアルミニウム製ビレットを押出加工することや、特開2004−358555号公報(特許文献2)に記載のように、外周面の凝固シェル層の厚さの最大値が13mm以下であるアルミニウム製ビレットを押出加工することが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−284840号公報
【特許文献2】特開2004−358555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の従来技術では、押出管の外表面を十分に高平滑面に形成することが困難であった。
【0010】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、高平滑な表面を形成することができるアルミニウム合金、該アルミニウム合金を用いたアルミニウム合金押出材の製造方法、該押出材を用いた感光ドラム基体の製造方法、アルミニウム合金押出材、及び、感光ドラム基体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の手段を提供する。
【0012】
[1] Si:0.03〜0.6質量%、Fe:0.1〜0.7質量%、Cu:0.05〜0.20質量%、Mn:1.0〜1.5質量%、Mg:0.01〜0.1質量%、Zn:0〜0.1質量%、Ti:0〜0.1質量%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなる組成を有することを特徴とするアルミニウム合金。
【0013】
[2] 前項1記載の組成を有するアルミニウム合金製ビレットを押出加工することを特徴とするアルミニウム合金押出材の製造方法。
【0014】
[3] 前記押出材は、感光ドラム基体用アルミニウム合金押出管である前項2記載のアルミニウム合金押出材の製造方法。
【0015】
[4] 前項3記載のアルミニウム合金押出材の製造方法により得られた感光ドラム基体用アルミニウム合金押出管を引抜加工することを特徴とする感光ドラム基体の製造方法。
【0016】
[5] 前項3記載のアルミニウム合金押出材の製造方法により得られた感光ドラム基体用アルミニウム合金押出管をしごき加工することを特徴とする感光ドラム基体の製造方法。
【0017】
[6] Si:0.03〜0.6質量%、Fe:0.1〜0.7質量%、Cu:0.05〜0.20質量%、Mn:1.0〜1.5質量%、Mg:0.01〜0.1質量%、Zn:0〜0.1質量%、Ti:0〜0.1質量%、を含有し、残部Al及び不可避不純物からなる組成を有する特徴とするアルミニウム合金押出材。
【0018】
[7] 押出材は、感光ドラム基体用アルミニウム合金押出管である前項6記載のアルミニウム合金押出材。
【0019】
[8] Si:0.03〜0.6質量%、Fe:0.1〜0.7質量%、Cu:0.05〜0.20質量%、Mn:1.0〜1.5質量%、Mg:0.01〜0.1質量%、Zn:0〜0.1質量%、Ti:0〜0.1質量%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金製であることを特徴とする感光ドラム基体。
【発明の効果】
【0020】
本発明は以下の効果を奏する。
【0021】
前項[1]の発明では、アルミニウム合金の組成を構成する各元素の含有量が所定の範囲内に設定されることにより、例えば、当該アルミニウム合金製ビレットを押出加工すると、得られる押出材の表面を高平滑面に形成することができる。特に、このアルミニウム合金ではMg含有量が0.01〜0.1質量%の範囲に設定されていることにより、押出材の表面を高平滑面に確実に形成することができる。すなわち、Mg含有量が0.01質量%以上であることにより、押出ダイスのベアリング部に形成されたダイスマーク起点部が押出加工時にMg薄膜でコーティングされる。その結果、押出材の表面にダイスマークが形成されるのが防止される。また、Mg含有量が0.1質量%以下であることにより、押出加工時にアルミニウム合金中に粗大晶出物が形成されるのが防止される。したがって、Mg含有量を0.01〜0.1質量%の範囲内に設定することにより、押出材の表面を高平滑面に確実に形成することができる。
【0022】
前項[2]の発明では、前項[1]記載の組成を有するアルミニウム合金製ビレットを押出加工することにより、押出材の表面を高平滑面に確実に形成することができる。
【0023】
前項[3]の発明では、押出材として、感光ドラム基体用アルミニウム合金押出管の外表面を高平滑面に確実に形成することができる。
【0024】
前項[4]及び[5]の発明では、高平滑な外表面を有する感光ドラム基体を得ることができる。
【0025】
前項[6]の発明では、高平滑な外表面を有するアルミニウム合金押出材を提供できる。
【0026】
前項[7]の発明では、押出材として、高平滑な外表面を有する感光ドラム基体用アルミニウム合金押出管を提供できる。
【0027】
前項[8]の発明では、高平滑な外表面を有する感光ドラム基体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るアルミニウム合金押出材の製造方法に用いられる押出加工装置を押出加工途中の状態で示す概略断面図である。
【図2】図2は、アルミニウム合金押出材としてのアルミニウム合金押出管を引抜加工するのに用いられる引抜加工装置を引抜加工途中の状態で示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0030】
本発明の一実施形態に係るアルミニウム合金は、Si:0.03〜0.6質量%、Fe:0.1〜0.7質量%、Cu:0.05〜0.20質量%、Mn:1.0〜1.5質量%、Mg:0.01〜0.1質量%、Zn:0〜0.1質量%、Ti:0〜0.1質量%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなる組成を有している。このアルミニウム合金は、基本的にはJIS(日本工業規格)に規定されたアルミニウム合金番号A3003に近い組成を有するとともに、Mgを必須含有元素として0.01〜0.1質量%含有している。
【0031】
本実施形態では、このアルミニウム合金は押出加工用材料として特に好適に用いられるものである。詳述すると、このアルミニウム合金製のビレットを押出加工することにより、アルミニウム合金押出材が特に好適に製造される。この押出材は、感光ドラム基体に用いられる断面円形状のアルミニウム合金押出管(押出素管)である。そして、この押出管は、引抜加工又はしごき加工されることにより、無切削管としての引抜管又はしごき管が製造され、次いで引抜管又はしごき管に対して所定の加工を施すことにより、感光ドラム基体が製造される。
【0032】
図1に示すように、アルミニウム合金製ビレットを押出加工するのに用いられる押出加工装置10は、特に限定されるものではなく、公知のものである。すなわち、この押出加工装置10は、コンテナ11、押出ダイス12、ステム17などを具備する。押出ダイス12は、例えば、雄型13と雌型14との組合せからなるポートホールダイスであり、互いに対向して配置された雄型ベアリング部13aと雌型ベアリング部14aとの間に形成された断面円環状の成形間隙15を有している。雄型ベアリング部13a及び雌型ベアリング部14aは、それぞれ押出管2の内表面及び外表面を成形するものである。
【0033】
この押出加工装置10を用いてアルミニウム合金製ビレット1を押出加工する方法は、特に限定されるものでななく、公知の方法に従って押出加工が行われる。すなわち例えば、押出加工装置10のコンテナ11内に装填された加熱状態のアルミニウム合金製ビレット1をステム17によって押出方向Eに加圧することにより、ビレット1の材料を押出ダイス12の成形間隙15内に通過させる。これにより、断面円形状のアルミニウム合金押出管2が得られる。押出管2の外径は例えば20〜50mmであり、押出管2の肉厚は例えば1.0〜2.0mmである。また、この押出加工の際に適用される特に望ましい押出加工条件は、ビレット温度:400〜550℃、押出速度:15〜60m/minである。
【0034】
図2に示すように、この押出管2を引抜加工するのに用いられる引抜加工装置20は、特に限定されるものではなく、公知のものである。すなわち、この引抜加工装置20は、引抜ダイス21、牽引部23などを有している。引抜ダイス21は押出管2を縮径加工するダイス孔22を有している。牽引部23はチャック部23aを有する。
【0035】
この引抜加工装置20を用いて押出管2を引抜加工する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法に従って冷間又は温間で引抜加工が行われる。すなわち例えば、引抜加工装置20の引抜ダイス21のダイス孔22に通された押出管2の先端部を牽引部23のチャック部23aでチャックし、次いで牽引部23によって押出管2を引抜方向Dに牽引することにより、押出管2をダイス孔22から引き抜く。これにより、無切削管として引抜管3が得られる。引抜管3の肉厚は例えば0.5〜1.5mmである。また、この引抜加工の際に適用される特に望ましい引抜加工条件は、引抜速度:10〜70m/min、押出管2の外径の縮径率:20〜50%である。なお、この引抜加工では、押出管2の中空部内に配置されて押出管2の内表面を加工する引抜プラグ(図示せず)を用いて引抜加工を行っても良い。
【0036】
次いで、この引抜管3を感光ドラム基体の長さに切断し、その端部を面取り加工し、洗浄をし、更に、寸法及び外観の検査を行うことにより、所望する感光ドラム基体が得られる。
【0037】
また、押出管2をしごき加工することによりしごき管を得る場合には、図示していないが公知のしごき加工装置を用いて通常の加工条件で押出管をしごき加工する。これにより、しごき管が得られる。
【0038】
次いで、このしごき管を感光ドラム基体の長さに切断し、その端部を面取り加工し、洗浄をし、更に、寸法及び外観の検査を行うことにより、所望する感光ドラム基体が得られる。
【0039】
なお図1及び2では、ビレット1、押出管2及び引抜管3は、他の部材と区別し易くするため、ドットハッチングで図示している。
【0040】
次に、本実施形態のアルミニウム合金の組成を構成する各元素の作用について、以下に説明する。
【0041】
<Si(ケイ素)>
Siは、鋳造性を良くし、更に強度の向上に寄与する。Si含有量が0.03質量%以上であることにより、このような作用を確実に奏する。一方、Si含有量が0.6質量%を超えると、アルミニウム合金中に粗大晶出物が形成されて押出管の外表面の表面粗さが低下する。したがって、Si含有量は0.03〜0.6質量%の範囲内に設定されるのが望ましい。Si含有量の特に望ましい範囲は0.03〜0.3質量%である。
【0042】
<Fe(鉄)>
Feは、結晶粒を微細化し、更に強度の向上に寄与する。Fe含有量が0.1質量%以上であることにより、このような作用を確実に奏する。一方、Fe含有量が0.7質量%を超えると、アルミニウム合金中に粗大晶出物が形成されて押出管の外表面の表面粗さが低下する。したがって、Fe含有量は0.1〜0.7質量%の範囲内に設定されるのが望ましい。Fe含有量の特に望ましい範囲は0.1〜0.5質量%である。
【0043】
<Cu(銅)>
Cuは、固溶強化作用により強度の向上に寄与する。Cu含有量が0.05質量%以上であることにより、このような作用を確実に奏する。一方、Cu含有量が0.20質量%を超えると、耐食性が低下する。したがって、Cu含有量は0.05〜0.20質量%の範囲内に設定されるのが望ましい。Cu含有量の特に望ましい範囲は0.1〜0.20質量%である。
【0044】
<Mn(マンガン)>
Mnは、アルミニウム合金中に含有しているFe等と微細な金属間化合物を形成することで再結晶温度を高め、更に強度の向上に寄与する。Mn含有量が1.0質量%以上であることにより、このような作用を確実に奏する。一方、Mn含有量が1.5質量%を超えると、耐食性が低下する虞がある。したがって、Mn含有量は1.0〜1.5質量%の範囲内に設定されることが望ましい。Mn含有量の特に望ましい範囲は1.0〜1.3質量%である。
【0045】
<Mg(マグネシウム)>
Mgは、押出加工時に押出ダイス12のベアリング部13a、14a上にMg薄膜を形成し、当該Mg薄膜でベアリング部13a、14aに形成されたダイスマーク起点部がコーティングされることで、押出管2の外表面にダイスマークが形成されるのを防止するのに寄与する。Mg含有量が0.01質量%以上であることにより、このような作用を確実に奏する。一方、Mg含有量が0.1質量%を超えると、アルミニウム合金中に粗大晶出物が形成されて押出管2の外表面の表面粗さが低下する。したがって、Mg含有量は0.01〜0.1質量%の範囲内に設定されるのが望ましい。Mg含有量の特に望ましい範囲の上限は0.05質量%である。
【0046】
なお、本明細書において「ダイスマーク起点部」とは、押出管2の表面(外表面及び内表面)にダイスマークを発生させる原因となる部分のことであり、これは押出ダイス12のベアリング部13a、14aに形成されており、具体的にはベアリング部13a、14aに発生したキズやベアリング部に付着した付着物からなるのが通常である。
【0047】
<Zn(亜鉛)>
Znは、必要に応じて含有される任意含有元素であり、若干の強度の向上に寄与する。Zn含有量が0.1質量%を超えると、耐食性が低下する虞がある。したがって、Zn含有量は0〜0.1質量%の範囲内であることが望ましい。Zn含有量の特に望ましい範囲は0〜0.05質量%である。
【0048】
<Ti(チタン)>
Tiは、必要に応じて含有される任意含有元素であり、ビレットの結晶粒を微細化し、鋳造時における鋳塊割れの防止に寄与する。Ti含有量が0.1質量%を超えると、押出加工性が低下し、且つ、成形性に悪影響を与える巨大金属間化合物を生じる虞がある。したがって、Ti含有量は0〜0.1質量%の範囲内に設定されるのが望ましい。Ti含有量の特に望ましい範囲は0.01〜0.05質量%である。
【0049】
さらに、本実施形態のアルミニウム合金は、必要に応じて含有される任意含有元素としてCrを含有するとともに、そのCr含有量が0〜0.05質量%の範囲内に設定されることが望ましい。その理由は次のとおりである。
【0050】
Crは、結晶粒の微細化に効果があるが、Cr含有量が0.05質量%を超えると、成形性に悪影響を与える巨大金属間化合物を生じる虞がある。したがって、Cr含有量は0〜0.05質量%の範囲内であることが望ましい。Cr含有量の特に望ましい範囲の上限は0.03質量%である。
【0051】
本実施形態のアルミニウム合金は、その組成を構成する各元素の含有量が所定の範囲内に設定されることにより、当該アルミニウム合金製ビレット1を押出加工すると、押出管2の外表面を高平滑面に形成することができる。特に、このアルミニウム合金ではMg含有量が0.01〜0.1質量%の範囲に設定されていることにより、押出管2の外表面を高平滑面に確実に形成することができる。すなわち、Mg含有量が0.01質量%以上であることにより、押出ダイス12のベアリング部13a、14aに形成されたダイスマーク起点部が押出加工時にMg薄膜でコーティングされる。その結果、押出管2の外表面にダイスマークが形成されるのが防止される。また、Mg含有量が0.1質量%以下であることにより、押出加工時にアルミニウム合金中に粗大晶出物が形成されるのが防止される。したがって、Mg含有量を0.01〜0.1質量%の範囲内に設定することにより、押出管2の外表面を高平滑面に確実に形成することができる。
【0052】
そして、この押出管2を引抜加工又はしごき加工することにより、引抜管3又はしごき管の外表面を高平滑面に確実に形成することができる。したがって、この引抜管3又はしごき管から感光ドラム基体を製造することにより、高平滑な外表面を有する感光ドラム基体を得ることがきる。
【0053】
以上で本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々に変更可能である。
【0054】
また、本発明では、アルミニウム合金製ビレットを押出加工して得られる押出材は、感光ドラム基体に用いられるものであることが特に望ましいが、その他の用途に用いられるものを排除するものではない。また、押出材は、上記実施形態に示したように管(即ち中空材)であっても良いし、中実な押出材であっても良い。
【実施例】
【0055】
次に、本発明の具体的な実施例を以下に示す。ただし本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示した組成を有するアルミニウム合金製のビレットを押出加工し、これにより感光ドラム基体用押出管を製造した。押出管の外径は32mm、押出管の肉厚は1.5mmである。また、この押出加工の際に適用した押出加工条件は、ビレット温度:500℃、押出速度:30m/minである。
【0058】
そして、押出管の外表面の表面粗さRyをJIS B0601−1994に準拠して測定し、当該外表面の表面性状を評価した。その結果を表1中に記載した。表1中の「表面性状」欄において、各符号の意味は次のとおりである。なお、表面粗さRyとは最大高さである。
【0059】
◎:Ryが0μm以上5μm以下
○:Ryが5μm超え6μm以下
×:Ryが6μm超え。
【0060】
表1から分かるように、実施例1〜11では、高平滑な外表面を有する押出管を得ることができた。
【0061】
したがって、実施例1〜11で得られた押出管を引抜加工又はしごき加工することにより、高平滑な外表面を有する引抜管又はしごき管を得ることができ、ひいては高平滑な外表面を有する感光ドラム基体を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、アルミニウム合金、アルミニウム合金押出材の製造方法、感光ドラム基体の製造方法、アルミニウム合金押出材、及び、感光ドラム基体に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1:アルミニウム合金製ビレット
2:アルミニウム合金押出管(アルミニウム合金押出材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si:0.03〜0.6質量%、Fe:0.1〜0.7質量%、Cu:0.05〜0.20質量%、Mn:1.0〜1.5質量%、Mg:0.01〜0.1質量%、Zn:0〜0.1質量%、Ti:0〜0.1質量%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなる組成を有することを特徴とするアルミニウム合金。
【請求項2】
請求項1記載の組成を有するアルミニウム合金製ビレットを押出加工することを特徴とするアルミニウム合金押出材の製造方法。
【請求項3】
前記押出材は、感光ドラム基体用アルミニウム合金押出管である請求項2記載のアルミニウム合金押出材の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のアルミニウム合金押出材の製造方法により得られた感光ドラム基体用アルミニウム合金押出管を引抜加工することを特徴とする感光ドラム基体の製造方法。
【請求項5】
請求項3記載のアルミニウム合金押出材の製造方法により得られた感光ドラム基体用アルミニウム合金押出管をしごき加工することを特徴とする感光ドラム基体の製造方法。
【請求項6】
Si:0.03〜0.6質量%、Fe:0.1〜0.7質量%、Cu:0.05〜0.20質量%、Mn:1.0〜1.5質量%、Mg:0.01〜0.1質量%、Zn:0〜0.1質量%、Ti:0〜0.1質量%、を含有し、残部Al及び不可避不純物からなる組成を有する特徴とするアルミニウム合金押出材。
【請求項7】
押出材は、感光ドラム基体用アルミニウム合金押出管である請求項6記載のアルミニウム合金押出材。
【請求項8】
Si:0.03〜0.6質量%、Fe:0.1〜0.7質量%、Cu:0.05〜0.20質量%、Mn:1.0〜1.5質量%、Mg:0.01〜0.1質量%、Zn:0〜0.1質量%、Ti:0〜0.1質量%を含有し、残部Al及び不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム合金製であることを特徴とする感光ドラム基体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−14797(P2013−14797A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147331(P2011−147331)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】