アルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造
【課題】低コストで製造可能な構成により、運転席側部分と助手席側部分とで異なるという自動車用インパネ補強材構造特有の構造上の要求を満たすことができる、アルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造を提供すること。
【解決手段】アルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、車体幅方向に延びてその軸方向両端部が直接又はブラケットを介して車体フレームに取り付けられるメインメンバ10を備え、前記メインメンバ10が、アルミニウム合金製中空押出形材で形成され、運転席側部分を構成する運転席側中空断面部11と、前記アルミニウム合金製中空押出形材の一部を切除して前記運転席側中空断面部10に一体に連なって形成され、助手席側部分を構成する助手席側開断面部12とを有している。
【解決手段】アルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、車体幅方向に延びてその軸方向両端部が直接又はブラケットを介して車体フレームに取り付けられるメインメンバ10を備え、前記メインメンバ10が、アルミニウム合金製中空押出形材で形成され、運転席側部分を構成する運転席側中空断面部11と、前記アルミニウム合金製中空押出形材の一部を切除して前記運転席側中空断面部10に一体に連なって形成され、助手席側部分を構成する助手席側開断面部12とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車体では、車室内前方にステアリングコラムを支持するためのインパネ補強材構造が車体幅方向に設けられている。このインパネ補強材構造は、周知の通り、インパネ補強材本体であるメインメンバ(インパネリーンフォース、ステアリングサポートビーム、ステアリングハンバービーム、クロスカービームなどともいう)と連結ステイとから構成される。
【0003】
そして、車体幅方向に延びる前記メインメンバは、その軸方向両端部が、それぞれ、直接あるいはブラケットを介して車体の側部フレームに取り付けられるとともに、車体中央付近に設置されて車体下方向あるいは前方向に延在する連結ステイにより、車体フロアあるいはダッシュパネル(カウル)と連結される。このようなメインメンバは、種々の断面形状が選択される。また、他部品(他部材)との干渉を回避するために長手方向(軸方向)に曲げ、スェージングなどが施される場合もある。さらに、コスト、性能面から、その素材についても鋼板、アルミニウム、マグネシウムなど様々な素材が選択される。
【0004】
前記メインメンバは、走行時のステアリングの振動を防止するために高い剛性が要求される。また、前面衝突において車体前方からステアリングを介して伝わる車体後方への荷重、乗員の前方移動による車体前方への荷重、加えて、側面衝突におけるメインメンバ軸方向荷重に対しても、高い強度が要求される。近年では、自動車軽量化の観点から、これらの強度、剛性を確保した上でさらに軽量化することが望まれている。
【0005】
アルミニウム合金材料は、従来から使われている鋼板に比べて軽量であることから、このようなメインメンバなどのフレーム部品(骨格部品)への適用も期待されている。これまでに、プレス成形あるいはロール成形で形成したアルミニウム合金板材、アルミニウム合金鋳造品、あるいは、アルミニウム合金押出形材を用いたアルミニウム合金製のメインメンバが検討、あるいは実用化されている。しかし、アルミニウム合金製のメインメンバは、鋼板製のものに比べて素材コストが高いことから、加工、あるいは接合コストをできるだけ抑えることが課題となる。
【0006】
メインメンバのようなフレーム部品(フレーム部材)では、剛性、強度の要件を満足した上でより軽量化するためには、中空閉断面部を有する構造を採用することが望ましい。このため、アルミニウム合金板材を用いてアルミニウム合金製のメインメンバを製造する場合、プレスあるいはロール加工後に部材同士の接合を行い、中空閉断面部を有する断面構造を形成することが多い。しかし、このような構造のメインメンバは、溶接線長が長くなるために、接合コストが高いことが問題になる。
【0007】
また、アルミニウム合金製のメインメンバを鋳造により製造する場合については、他部品との取り付け部などを一体的に形成可能という利点はあるものの、中空閉断面部を形成することが難しいという問題がある。このため、コの字型の断面形状を採用し、強度、剛性確保のために補強リブを設けることが一般的であるが、このようなメインメンバは、前記中空閉断面部を有するものに比べて重量が重いという問題がある。
【0008】
一方、アルミニウム合金の押出形材によると、溶接を伴わず、予め中空閉断面部を持った直線的に延びる長尺部材を形成可能という大きな利点がある。そして、メインメンバは、重量軽減と車体幅方向荷重を受け持つために、車幅方向略全長にわたって直線的に設けることが望まれるため、アルミニウム合金押出形材を適用しやすい部品(部材)といえる。そこで、特許文献1などに代表されるように、長手方向に同一断面を持つアルミニウム合金押出形材を用いたメインメンバ(特許文献1ではステアリングサポートビーム)がいくつか提案されている。
【0009】
しかし、アルミニウム合金押出形材を用いるメインメンバでは、アルミニウム合金押出形材が長手方向(軸方向)に略一様の断面であるために形状制約が問題になる場合も多い。このため、アルミニウム合金押出形材の一部をプレス加工するなど変断面部を設けるようにした構造のメインメンバも提案されている(特許文献2)。また、長手方向において複雑に断面形状を変化させる方法として、液圧成形なども提案されてきたが、これらの提案のものでは、加工に要する時間が長いなどコストアップが問題になることが多い。
【0010】
また、メインメンバの助手席側部分(助手席側領域)では、ステアリングコラムが連結される運転席側部分(運転席側領域)に比べて、剛性、強度の要求値自体が比較的低い。逆に収納ボックスの配置などの関係もあって、形状制約については厳しくなっており、運転席側部分に比べて小径薄肉管が望まれる。このため、従来から用いられていた鋼管製のメインメンバでは、スェージングにより、助手席側部分を小径薄肉化することも一般的に行われている。しかし、鋼板に比べて成形性に劣るアルミニウム合金材料を用いる場合は、スェージングなどで同様の形状を得ることは非常に難しい。
【0011】
そこで、運転席側部分と助手席側部分とで異なる断面を有する複数の部材を用い、これらを溶接接合、あるいは縮管など塑性変形を利用したかしめ接合、また、ボルト、ピンなどを用いた機械的接合を行なうようにしたアルミニウム合金製のメインメンバが数多く提案されている(特許文献3〜6)。しかし、これらのメインメンバでは、部品点数が増加することによるコストアップが問題になることも多い。また、製造に際し、溶融溶接を用いる場合、アルミニウム合金材料では接合コスト自体が鋼板製のものに比べて高くなるという問題がある。さらには、熱膨張率が高いために、溶接時の熱変形の抑制など生産上の課題も解決する必要があり、製品立ち上げに時間がかかることも問題となる。
【0012】
以上整理すると、メインメンバ(インパネ補強材本体)では、ステアリングコラムが接合される運転席側部分は、高強度、高剛性への要求が強く、高強度材大径断面フレームが必要であり、一方、助手席側部分では形状制約を満足し、かつ、軽量化するために小径薄肉フレームが必要であり、これらを低コストで製造可能な構造(構成)が求められているといえる。特に鋼材に比べて接合コストの高いアルミニウム合金材料では、コスト低減のために接合長をできるだけ短くするような構造も必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−34266号公報
【特許文献2】特開2010−52487号公報
【特許文献3】特許第3734651号公報
【特許文献4】特開2004−189040号公報
【特許文献5】特許第4496592号公報
【特許文献6】特許第4487366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本願発明の課題は、低コストで製造可能な構成により、運転席側部分と助手席側部分とで異なるという自動車用インパネ補強材構造特有の構造上の要求を満たすことができるようにした、アルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0016】
請求項1の発明は、アルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、車体幅方向に延びてその軸方向両端部が直接又はブラケットを介して車体フレームに取り付けられるメインメンバを備え、前記メインメンバが、アルミニウム合金製中空押出形材で形成され、運転席側部分を構成する運転席側中空断面部と、前記アルミニウム合金製中空押出形材の一部を切除して前記運転席側中空断面部に一体に連なって形成され、助手席側部分を構成する助手席側開断面部とを有してなることを特徴とするアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造である。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、一方の端部が前記運転席側中空断面部と前記助手席側開断面部との段差部に接合され、他方の端部が車体フロアに連結されるアルミニウム合金製の連結ステイを備えたことを特徴とするものである。
【0018】
請求項3の発明は、請求項2記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、前記連結ステイは、その前記一方の端部が前記運転席側中空断面部と前記助手席側開断面部との段差部において、該段差部の中空開口部を塞ぐように接合されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、前記メインメンバは、その前記助手席側開断面部が車体高さ方向において上向きに凸な姿勢となるように前記車体フレームに取り付けられることを特徴とするものである。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、前記メインメンバの断面形状は、軸心を中心とする点対称断面形状であることを特徴とするものである。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、前記メインメンバの前記運転席側中空断面部の断面形状が略円形状であり、前記助手席側開断面部の断面形状が略半円形状であることを特徴とするものである。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、前記アルミニウム合金製中空押出形材は、軸心を中心とする外周を2等分した2箇所に溝状の凹部が軸方向に所定長さにわたって形成されたものであり、前記メインメンバの前記助手席側開断面部の軸方向に延びる周壁両端部が前記2つの凹部を所定長さ軸方向に沿ってプレスせん断して形成されたものであることを特徴とするものである。
【0023】
請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、前記メインメンバの前記助手席側開断面部には、その軸方向に延びる周壁両端部に軸心側へ向う折り返し部が形成されていることを特徴とするものである。
【0024】
請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、使用アルミニウム合金材が、5000系アルミニウム合金材、6000系アルミニウム合金材又は7000系アルミニウム合金材であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
請求項1のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造(以下、単に「アルミ合金製インパネ補強材構造」ともいう。)は、運転席側部分が中空断面形状をなす運転席側中空断面部によって構成されているので、メインメンバの運転席側部分に要求される高い変形強度、剛性、振動特性を確保することができる。また、運転席側部分に比べて剛性、変形強度に対する要求が低く、形状制約の要求が厳しい助手席側部分が、その断面が運転席側断面に比べて小径の開断面形状をなす開断面部によって構成されているので、メインメンバの助手席側部分に要求される小径化(小スペース化)と軽量化とを満たすことができる。また、このアルミ合金製インパネ補強材構造は、そのメインメンバの運転席側中空断面部がアルミニウム合金製中空押出形材の軸方向所定長さ部分で形成され、この運転席側中空断面部に一体に連なる助手席側開断面部が前記アルミニウム合金製中空押出形材の一部を切除して形成されているので、構成部品点数の削減が可能となり、溶接接合を行なわずにメインメンバを製造できることによるコストダウン、また、形状精度の向上が可能である。よって、請求項1のアルミ合金製インパネ補強材構造によると、低コストで製造可能な構成により、運転席側部分と助手席側部分とで異なるという自動車用インパネ補強材構造特有の構造上の要求を満たすことができる。
【0026】
また、請求項2のアルミ合金製インパネ補強材構造によると、一方の端部が運転席側中空断面部と助手席側開断面部との段差部(境界部)に接合され、他方の端部が車体フロアに連結されるアルミニウム合金製の連結ステイを備えているので、当該ステイによって荷重を車体フロア側に伝達することで、開断面構造のため運転席側に比べて剛性が低くなっている助手席側への荷重伝達を抑えることができる。また、メインメンバが運転席側中空断面部と助手席側開断面部とを一体に有する部材(一体化部材)とされているので、前記段差部に連結ステイを容易に位置決めすることができるとともに、溶接接合での溶接長も短くできる(断面周長の半分)という利点がある。
【0027】
また、請求項3のアルミ合金製インパネ補強材構造によると、一方の端部がメインメンバの運転席側中空断面部と助手席側開断面部との段差部に接合され、他方の端部が車体フロアに連結されるアルミニウム合金製の連結ステイが、その前記一方の端部が運転席側中空断面部と助手席側開断面部との段差部において、該段差部の開口(中空開口部)を塞ぐように接合されているので、運転席側中空断面部の変形をより効率的に抑制することができる。また、助手席側開断面部への荷重伝達を抑えて車体フロア側に荷重が伝達されることで、メインメンバの変形強度、剛性を高めることができる。
【0028】
また、請求項4のアルミ合金製インパネ補強材構造によると、車体前後方向への衝突荷重に対して高い変形強度が要求されるメインメンバに関し、メインメンバが、車体フレームに取り付けられた際に助手席側開断面部が車体高さ方向において上向きに凸な姿勢(車体高さ方向において下向きに開口した姿勢)となるように構成されているので、助手席側開断面部が車体の前方向又は後方向に凸な姿勢(車体の後方向側又は前方向側が開口した姿勢)となるようにしたものに比べて、メインメンバの曲げ荷重に対する断面二次モーメントが大きくなり、これに応じてメインメンバ10の強度、剛性も高めることができる。また、ステアリングコラムを介して伝わる荷重に対するメインメンバの剛性も高めることができる。さらに、請求項2,3のように、連結ステイを介して車体フロアと連結される構造の場合、この連結ステイが車体上下方向への変形に対する抵抗になることで、車体上下方向曲げ荷重に対する剛性低下も抑制することができる。
【0029】
また、請求項5のアルミ合金製インパネ補強材構造によると、メインメンバの断面形状(メインメンバを形成するアルミニウム合金製中空押出形材の断面形状)が、軸心を中心とする点対称断面形状であることにより、助手席側部分の開断面形状の切断加工による部品2個取りが可能になり、歩留まりの低減によるコストダウンが可能である。このメインメンバの断面形状については、形状制約や部品に対する要求性能、また、他部品との接合面の形成などの必要性に応じて便宜選択される。
【0030】
また、請求項6のアルミ合金製インパネ補強材構造によれば、メインメンバの運転席側中空断面部の断面形状を略円形状とし、これに応じて助手席側開断面部の断面形状を略半円形状とし、このように断面形状として異方性の少ない円形状断面形状を適用したことにより、運転席側部分においていずれの方向への変形に対しても高い剛性を備えることで、インパネ補強材構造における要求性能のひとつである固有振動数について良好な振動特性を確保することができる。なお、断面形状は完全に円形である必要性はなく、一部に他部品と接合するための平坦座面などをあらかじめ形成した略円形断面形状であってもよい。
【0031】
また、請求項7のアルミ合金製インパネ補強材構造によると、メインメンバを形成するアルミニウム合金製中空押出形材が、軸心を中心とする外周を2等分した2箇所に溝状の凹部が軸方向所定長さにわたって形成されたものであるので、前記2つの凹部を所定長さ軸方向に沿ってプレスせん断してスリット状に切除し、このプレスせん断部分が運転席側中空断面部と一体に連なる助手席側開断面部の軸方向に延びる周壁両端部となるように当該アルミニウム合金製中空押出形材をノコ切断することにより、運転席側中空断面部と助手席側開断面部とを有するメインメンバを、溶接接合を行うことなく容易に製造することができる。また、助手席側開断面部の周壁両端部が前記凹部をプレスせん断して形成されたものであるから、メインメンバの取り付け作業時などにおいて作業員が凹部となる当該周壁両端部に触れにくく、接触による切り傷を負うことを防止することができる。また、前記凹部が補強リブとして作用することで、メインメンバにおいて軸方向荷重に対する耐荷重を高め、また、曲げ荷重に対する断面変形を生じにくくすることができる。
【0032】
また、請求項8のアルミ合金製インパネ補強材構造によると、メインメンバの助手席側開断面部には、その軸方向に延びる周壁両端部に軸心側へ向う折り返し部が形成されているので、前記メインメンバの取り付け作業時などにおいて作業員が前記折り返し部の先端に触れにくくなっており、接触による切り傷を負うことを防止することができる。
【0033】
また、請求項9のアルミ合金製インパネ補強材構造によると、使用アルミニウム合金材が、5000系アルミニウム合金材、6000系アルミニウム合金材又は7000系アルミニウム合金材であり、素材として好適なアルミニウム合金材によるアルミ合金製インパネ補強材構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態によるアルミ合金製インパネ補強材構造を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1におけるメインメンバの構造を概略的に示す斜視図である。
【図3】図1における車体フロア用の連結ステイの構造を概略的に示す斜視図である。
【図4】本発明の別の実施形態によるアルミ合金製インパネ補強材構造を概略的に示す斜視図である。
【図5】本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバを形成するアルミニウム合金製中空押出形材の一例である凹部付きのアルミニウム合金製円管状押出形材の断面を示す断面図である。
【図6】図5に示す凹部付きのアルミニウム合金製円管状押出形材で形成されたメインメンバの要部を概略的に示す斜視図である。
【図7】図7は本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバを製造する方法の一例を概略的に示す説明図であって、その(a)はプレスせん断工程を示す図、その(b)はノコ切断工程を示す図、その(c)は得られた2個の部品(メインメンバ)を示す図である。
【図8】図7の(a)におけるA−A線断面図である。
【図9】本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバを製造する方法の別の例を概略的に示す説明図であって、その(a)はプレスせん断工程を示す図、その(b)はノコ切断工程を示す図、その(c)はノコ切断工程で得られた2個の部品を示す図、その(d)は折り返し工程による折り返し部が形成された2個の部品(メインメンバ)を示す図である。
【図10】図9の(a)におけるB−B線断面図である。
【図11】メインメンバの助手席側開断面部の周壁端部に形成された折り返し部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態によるアルミ合金製インパネ補強材構造を概略的に示す斜視図、図2は図1におけるメインメンバの構造を概略的に示す斜視図、図3は図1における車体フロア用の連結ステイの構造を概略的に示す斜視図である。
【0036】
この実施形態によるアルミ合金製インパネ補強材構造1は、図1に示すように、車体幅方向に延びるメインメンバ10と、このメインメンバ10に一方の端部が溶接接合され、メインメンバ10を図示しない車体フロアと連結するための連結ステイ20と、同じく、メインメンバ10に一方の端部が溶接接合され、メインメンバ10を図示しない車体前側のカウル(COWL)と連結するためのカウル用の連結ステイ30とを備えている。
【0037】
前記メインメンバ10は、アルミニウム合金製中空押出形材で形成され、運転席側部分を構成する運転席側中空断面部11と、前記アルミニウム合金製中空押出形材の一部を切除して前記運転席側中空断面部11に一体に連なって形成され、助手席側部分を構成する助手席側開断面部12とを有している(図2参照)。そして、この実施形態では、前記アルミニウム合金製中空押出形材としてアルミニウム合金製円管状押出形材が用いられており、前記運転席側中空断面部11は略円筒状をなし、前記助手席側開断面部12は略半円筒状をなしている。なお、この実施形態では、例として、運転席側中空断面部11の断面形状を略円形状、助手席側開断面部12の断面形状を略半円形状としているが、運転席側中空断面部11の断面形状については、矩形断面や平坦部のある円形断面など、形状制約、製品要求仕様、また、他部品との接合の観点などから便宜選択される。
【0038】
このメインメンバ10の前記助手席側開断面部(助手席側半円筒状部)12側の端部には、アルミニウム合金製の板状のブラケット40aが溶接接合されている。また、メインメンバ10の前記運転席側中空断面部(運転席側円筒状部)11側の端部には、拡管加工による円環状のブラケット40bが形成されている。前記ブラケット40aにはメインメンバ10を車体の一方側の側部フレームにボルトで連結するためのボルト孔が形成されている。また、前記ブラケット40bにはメインメンバ10を車体の他方側の側部フレームにボルトで連結するためのボルト孔が形成されている。なお、メインメンバ10の端部における車体との連結用の加工方法については、必要に応じて便宜選択すればよく、前記の端部拡管する場合の加工方法についてもプレス拡管、あるいは電磁成形などを適用してもよい。
【0039】
メインメンバ10を図示しない車体フロアと連結するためのアルミニウム合金製の前記連結ステイ20(図3参照)は、その上端部(一方の端部)20aが運転席側中空断面部11と助手席側開断面部12との段差部(境界部)に溶接接合され、下端部(他方の端部)20bが車体フロアに溶接接合によって連結されるようになっている。
【0040】
そして、この連結ステイ20は、車体フロアと連結されたときにメインメンバ10の助手席側開断面部12が車体高さ方向において上向きに凸な姿勢(車体高さ方向において下向きに開口した姿勢)となるように該助手席側開断面部12に対して位置して、その上端部20aが前記段差部に溶接接合されている。この場合、連結ステイ20は、その上端部20aが運転席側中空断面部11の助手席側端部の内周面に該端部の略円形開口を塞ぐように溶接接合されている。
【0041】
また、メインメンバ10をカウルと連結するためのアルミニウム合金製の前記連結ステイ30は、カウルと連結されたときにメインメンバ10の助手席側開断面部12が車体高さ方向において上向きに凸な姿勢となるように該助手席側開断面部12に対して位置して、その一方の端部が助手席側開断面部12に溶接接合され、他方の端部が前記カウルに連結されるようになっている。
【0042】
なお、メインメンバ10は、車体フレームに取り付けられた際にその助手席側開断面部12が車体高さ方向において上向きに凸な姿勢となるように構成されているが、この場合、図1に示すように鉛直上向きに凸な姿勢であることが好ましいものの、前記連結ステイ20がメインメンバ10と溶接接合しやすいように、メインメンバ10は、上下方向に延びる鉛直線に対して開断面部12が車体前後方向に±30°程度の範囲で傾く姿勢となるように構成されていてもよい。
【0043】
そして、このアルミ合金製インパネ補強材構造1を構成する部材(部品)の材質としては、5000系、6000系又は7000系のアルミニウム合金材であることがよい。このようなアルミニウム合金材は、素材として自動車用インパネ補強材構造に必要な強度、剛性を確保し得る。そして、腐食環境ではない室内空間で、かつ高強度が要求されることを考慮すると、押出形材で形成されるメインメンバ10には7000系アルミニウム合金材、連結ステイ20,30などの板材ブラケットには、溶接部の強度を確保しやすい5000系アルミニウム合金材の適用が最適である。
【0044】
なお、メインメンバ10と連結ステイ20,30、あるいはブラケット40aとの溶接接合の方法は、MIG溶接、レーザー溶接など必要に応じて便宜選択すればよい。
【0045】
このように、この実施形態によるアルミ合金製インパネ補強材構造1は、前記運転席側中空断面部11によって運転席側部分が構成されているので、メインメンバ10の運転席側部分に要求される高い変形強度、剛性、振動特性を確保することができる。また、運転席側部分に比べて剛性、変形強度に対する要求が低く、形状制約の要求が厳しい助手席側部分が、前記助手席側開断面部12によって構成されているので、メインメンバ10の助手席側部分に要求される小径化(小スペース化)と軽量化とを満たすことができる。
【0046】
また、このアルミ合金製インパネ補強材構造1は、そのメインメンバ10の運転席側中空断面部11がアルミニウム合金製中空押出形材の軸方向所定長さ部分で形成され、この運転席側中空断面部11に一体に連なる助手席側開断面部12が前記アルミニウム合金製中空押出形材の一部を切除して形成されているので、従来とは違って、構成部品点数の削減が可能となり、溶接接合を行なわずにメインメンバ10を製造できることによるコストダウン、また、形状精度の向上が可能である。
【0047】
よって、このアルミ合金製インパネ補強材構造1によると、低コストで製造可能な構成により、運転席側部分と助手席側部分とで異なるという自動車用インパネ補強材構造特有の構造上の要求を満たすことができる。
【0048】
また、このアルミ合金製インパネ補強材構造1によると、一方の端部20aが運転席側中空断面部11と助手席側開断面部12との段差部(境界部)に接合され、他方の端部20bが車体フロアに連結されるアルミニウム合金製の連結ステイ20を備えているので、この連結ステイ20によって荷重を車体フロア側に伝達することで、開断面構造のため運転席側に比べて剛性が低くなっている助手席側への荷重伝達を抑えることができる。また、メインメンバ10が運転席側中空断面部11と助手席側開断面部12とを一体に有する部材(一体化部材)とされているので、前記段差部に連結ステイ20を容易に位置決めすることができるとともに、溶接接合での溶接長も短くできる(断面周長さの半分)という利点がある。
【0049】
また、このアルミ合金製インパネ補強材構造1によると、前記連結ステイ20が、その一方の端部が運転席側中空断面部11の助手席側開断面部12との段差部において、該段差部の開口(中空開口部)を塞ぐように接合されているので、運転席側円筒状部11の変形をより効率的に抑制することができる。また、助手席側開断面部12への荷重伝達を抑えて車体フロア側に荷重が伝達されることで、メインメンバ10の変形強度、剛性を高めることができる。
【0050】
また、このアルミ合金製インパネ補強材構造1によると、車体前後方向への衝突荷重に対して高い変形強度が要求されるメインメンバ10に関し、メインメンバ10が、車体フレームに取り付けられた際に助手席側開断面部12が車体高さ方向において上向きに凸な姿勢となるように構成されているので、助手席側開断面部12が車体の前方向又は後方向に凸な姿勢となるようにしたもの(図4参照)に比べて、メインメンバ10の曲げ荷重に対する断面二次モーメントが大きくなり、これに応じてメインメンバ10の強度、剛性も高めることができる。また、ステアリングコラムを介して伝わる荷重に対するメインメンバ10の剛性も高めることができる。
【0051】
図4は本発明の別の実施形態によるアルミ合金製インパネ補強材構造を概略的に示す斜視図である。
【0052】
図4に示すように、前述した図1に示すアルミ合金製インパネ補強材構造1との相違点は、このアルミ合金製インパネ補強材構造1’のメインメンバ10が、その助手席側開断面部12が車体前方へ凸な姿勢となるように構成されている点にある。すなわち、連結ステイ20’は、車体フロアと連結されたときにメインメンバ10の助手席側開断面部12が車体前方へ凸な姿勢(車体後方へ開口した姿勢)となるように該助手席側半円筒状部12に対して位置して、その上端部20a'が運転席側中空断面部11と助手席側開断面部12との段差部における運転席側中空断面部11の端部の外周部分に溶接接合されている。また、カウル用の連結ステイ30’は、カウルと連結されたときに助手席側開断面部12が車体前方へ凸な姿勢となるように該助手席側開断面部12に対して位置して、その一方の端部が当該助手席側開断面部12に溶接接合されている。
【0053】
このように構成されるアルミ合金製インパネ補強材構造1’においても、前記図1のものと同様に、低コストで製造可能な構成により、運転席側部分と助手席側部分とで異なるという自動車用インパネ補強材構造特有の構造上の要求を満たすことができる。
【0054】
図5は本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバを形成するアルミニウム合金製円管状押出形材の一例である凹部付きのアルミニウム合金製円管状押出形材の断面を示す断面図である。
【0055】
本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバ10を形成するアルミニウム合金製中空押出形材として、凹部付きのアルミニウム合金製円管状押出形材(以下、単に「凹部付き円管状押出形材」ともいう。)100が挙げられる。この凹部付き円管状押出形材100は、図5に示すように、軸心を中心とする外周を2等分した2箇所に溝状の凹部100a,100aが軸方向に略全長にわたって形成されている。以下では、断面の軸心に対して点対称となる位置に2箇所の溝状凹部を設けた構造を例として製造方法を示すが、点対称断面形状部品であれば、以下に示すような切断加工を施した場合、部品2個取りが可能になり、歩留まり低減によるコスト低減に有利であるため好ましい。
【0056】
図6は図5に示す凹部付きのアルミニウム合金製円管状押出形材で形成されたメインメンバの要部を概略的に示す斜視図である。
【0057】
このように、凹部付き円管状押出形材100によってメインメンバ10を形成するようにしたものでは、前記2つの凹部100a,100aを所定長さ軸方向に沿ってプレスせん断してスリット状に切除し、このプレスせん断部分が運転席側中空断面部11と一体に連なる助手席側開断面部12の軸方向に延びる周壁端部12a,12aとなるように当該凹部付き円管状押出形材100をノコ切断することにより、運転席側中空断面部11と助手席側開断面部12とを有するメインメンバ10を、溶接接合を行うことなく容易に製造することができる。
【0058】
また、単に軸心に対して点対称としただけでなく、例示するように前記凹部100a,100aを設けたことによる効果を以下に示す。本構造の場合、助手席側開断面部の周壁端部12a,12aが前記凹部100a,100aをプレスせん断して形成されたものであるから、メインメンバ10の取り付け作業時などにおいて作業員が凹部となる当該周壁端部12a,12aに触れにくく、接触による切り傷を負うことを防止することができる。また、前記凹部100a,100aが補強リブとして作用することで、メインメンバ10において軸方向荷重に対する耐荷重を高め、また、曲げ荷重に対する断面変形を生じにくくすることができる。
【0059】
次に、本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバを製造する方法について説明する。図7は本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバを製造する方法の一例を概略的に示す説明図であって、その(a)はプレスせん断工程を示す図、その(b)はノコ切断工程を示す図、その(c)は得られた2個の部品(メインメンバ)を示す図である。図8は図7の(a)におけるA−A線断面図である。
【0060】
このメインメンバの製造方法では、凹部付き円管状押出形材100が用いられている。まず、図7の(a)に示すプレスせん断工程(トリム加工工程)について説明すると、凹部付き円管状押出形材100の軸方向(長手方向)における中央部分において凹部100a,100aを所定長さ軸方向に沿ってプレスせん断してスリット状に切除する(図8参照)。W1はスリット状に切除されたプレスせん断部を示す。
【0061】
次に、図7の(b)に示すノコ切断工程について説明すると、前記プレスせん断部(トリム部)W1の両端部を、それぞれ、凹部付き円管状押出形材100の半周にわってノコ切断する。W2はノコ切断部を示す。
【0062】
これにより、図7の(c)に示すように、運転席側中空断面部11と助手席側開断面部12とを有するメインメンバ10を、同時に2個得るといういわゆる2個取りを行うことができ、製品歩留りの向上を図ることができる。
【0063】
次に、本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバを製造する別の方法について説明する。図9は本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバを製造する方法の別の例を概略的に示す説明図であって、その(a)はプレスせん断工程を示す図、その(b)はノコ切断工程を示す図、その(c)はノコ切断工程で得られた2個の部品を示す図、その(d)は折り返し工程による折り返し部が形成された2個の部品(メインメンバ)を示す図である。図10は図9の(a)におけるB−B線断面図、図11はメインメンバの助手席側開断面部の周壁端部に形成された折り返し部を示す断面図である。
【0064】
このメインメンバの製造方法では、メインメンバを形成するアルミニウム合金製円管状押出形材として、前記凹部100aが形成されていない通常の断面円形をなすアルミニウム合金製の円管状押出形材100’が用いられる。まず、図9の(a)に示すプレスせん断工程について説明すると、円管状押出形材100’の軸方向における中央部分を所定長さ軸方向に沿ってプレスせん断してスリット状に切除する(図10参照)。この場合、後述する折り返し部の加工を容易にするための縁切り用切除部が両端に形成されるようにプレスせん断を行なう。W1’は切除されたプレスせん断部を示す。
【0065】
次に、図9の(b)に示すノコ切断工程について説明すると、前記プレスせん断部(トリム部)W1’の両端部を、それぞれ、円管状押出形材100’の半周にわってノコ切断する。W2はノコ切断部を示す。そして、このノコ切断工程により、図9の(c)に示すように、同時に2個の部品(部材)が得られる
【0066】
次に、前記プレスせん断部W’の箇所を内側に折り曲げる折り返し加工を行うことにより、図9の(d)に示すように、運転席側中空断面部11と、軸方向に延びる周壁端部に折り返し部12bが形成された助手席側開断面部12(図11参照)とを有するメインメンバ10が得られる。このように、メインメンバ10の助手席側開断面部12には、その軸方向に延びる周壁端部に軸心側へ向う折り返し部12bが形成されているので、前記メインメンバ10の取り付け作業時などにおいて作業員が前記折り返し部12bの先端に触れにくくなっており、接触による切り傷を負うことを防止することができる。なお、前記凹部付き円管状押出形材100で形成されるメインメンバの助手席側開断面部にも、その周壁端部に折り返し部を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1,1’…アルミ合金製インパネ補強材構造
10…メインメンバ
11…運転席側中空断面部
12…助手席側開断面部 12a…周壁端部 12b…折り返し部
20,20’…連結ステイ
20a,20a’…上端部 20b,20b’…下端部
30,30’…連結ステイ
40a,40b…ブラケット
100,100’…アルミニウム合金製円管状押出形材 100a…凹部
W1,W1’…プレスせん断部
W2…ノコ切断部
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車体では、車室内前方にステアリングコラムを支持するためのインパネ補強材構造が車体幅方向に設けられている。このインパネ補強材構造は、周知の通り、インパネ補強材本体であるメインメンバ(インパネリーンフォース、ステアリングサポートビーム、ステアリングハンバービーム、クロスカービームなどともいう)と連結ステイとから構成される。
【0003】
そして、車体幅方向に延びる前記メインメンバは、その軸方向両端部が、それぞれ、直接あるいはブラケットを介して車体の側部フレームに取り付けられるとともに、車体中央付近に設置されて車体下方向あるいは前方向に延在する連結ステイにより、車体フロアあるいはダッシュパネル(カウル)と連結される。このようなメインメンバは、種々の断面形状が選択される。また、他部品(他部材)との干渉を回避するために長手方向(軸方向)に曲げ、スェージングなどが施される場合もある。さらに、コスト、性能面から、その素材についても鋼板、アルミニウム、マグネシウムなど様々な素材が選択される。
【0004】
前記メインメンバは、走行時のステアリングの振動を防止するために高い剛性が要求される。また、前面衝突において車体前方からステアリングを介して伝わる車体後方への荷重、乗員の前方移動による車体前方への荷重、加えて、側面衝突におけるメインメンバ軸方向荷重に対しても、高い強度が要求される。近年では、自動車軽量化の観点から、これらの強度、剛性を確保した上でさらに軽量化することが望まれている。
【0005】
アルミニウム合金材料は、従来から使われている鋼板に比べて軽量であることから、このようなメインメンバなどのフレーム部品(骨格部品)への適用も期待されている。これまでに、プレス成形あるいはロール成形で形成したアルミニウム合金板材、アルミニウム合金鋳造品、あるいは、アルミニウム合金押出形材を用いたアルミニウム合金製のメインメンバが検討、あるいは実用化されている。しかし、アルミニウム合金製のメインメンバは、鋼板製のものに比べて素材コストが高いことから、加工、あるいは接合コストをできるだけ抑えることが課題となる。
【0006】
メインメンバのようなフレーム部品(フレーム部材)では、剛性、強度の要件を満足した上でより軽量化するためには、中空閉断面部を有する構造を採用することが望ましい。このため、アルミニウム合金板材を用いてアルミニウム合金製のメインメンバを製造する場合、プレスあるいはロール加工後に部材同士の接合を行い、中空閉断面部を有する断面構造を形成することが多い。しかし、このような構造のメインメンバは、溶接線長が長くなるために、接合コストが高いことが問題になる。
【0007】
また、アルミニウム合金製のメインメンバを鋳造により製造する場合については、他部品との取り付け部などを一体的に形成可能という利点はあるものの、中空閉断面部を形成することが難しいという問題がある。このため、コの字型の断面形状を採用し、強度、剛性確保のために補強リブを設けることが一般的であるが、このようなメインメンバは、前記中空閉断面部を有するものに比べて重量が重いという問題がある。
【0008】
一方、アルミニウム合金の押出形材によると、溶接を伴わず、予め中空閉断面部を持った直線的に延びる長尺部材を形成可能という大きな利点がある。そして、メインメンバは、重量軽減と車体幅方向荷重を受け持つために、車幅方向略全長にわたって直線的に設けることが望まれるため、アルミニウム合金押出形材を適用しやすい部品(部材)といえる。そこで、特許文献1などに代表されるように、長手方向に同一断面を持つアルミニウム合金押出形材を用いたメインメンバ(特許文献1ではステアリングサポートビーム)がいくつか提案されている。
【0009】
しかし、アルミニウム合金押出形材を用いるメインメンバでは、アルミニウム合金押出形材が長手方向(軸方向)に略一様の断面であるために形状制約が問題になる場合も多い。このため、アルミニウム合金押出形材の一部をプレス加工するなど変断面部を設けるようにした構造のメインメンバも提案されている(特許文献2)。また、長手方向において複雑に断面形状を変化させる方法として、液圧成形なども提案されてきたが、これらの提案のものでは、加工に要する時間が長いなどコストアップが問題になることが多い。
【0010】
また、メインメンバの助手席側部分(助手席側領域)では、ステアリングコラムが連結される運転席側部分(運転席側領域)に比べて、剛性、強度の要求値自体が比較的低い。逆に収納ボックスの配置などの関係もあって、形状制約については厳しくなっており、運転席側部分に比べて小径薄肉管が望まれる。このため、従来から用いられていた鋼管製のメインメンバでは、スェージングにより、助手席側部分を小径薄肉化することも一般的に行われている。しかし、鋼板に比べて成形性に劣るアルミニウム合金材料を用いる場合は、スェージングなどで同様の形状を得ることは非常に難しい。
【0011】
そこで、運転席側部分と助手席側部分とで異なる断面を有する複数の部材を用い、これらを溶接接合、あるいは縮管など塑性変形を利用したかしめ接合、また、ボルト、ピンなどを用いた機械的接合を行なうようにしたアルミニウム合金製のメインメンバが数多く提案されている(特許文献3〜6)。しかし、これらのメインメンバでは、部品点数が増加することによるコストアップが問題になることも多い。また、製造に際し、溶融溶接を用いる場合、アルミニウム合金材料では接合コスト自体が鋼板製のものに比べて高くなるという問題がある。さらには、熱膨張率が高いために、溶接時の熱変形の抑制など生産上の課題も解決する必要があり、製品立ち上げに時間がかかることも問題となる。
【0012】
以上整理すると、メインメンバ(インパネ補強材本体)では、ステアリングコラムが接合される運転席側部分は、高強度、高剛性への要求が強く、高強度材大径断面フレームが必要であり、一方、助手席側部分では形状制約を満足し、かつ、軽量化するために小径薄肉フレームが必要であり、これらを低コストで製造可能な構造(構成)が求められているといえる。特に鋼材に比べて接合コストの高いアルミニウム合金材料では、コスト低減のために接合長をできるだけ短くするような構造も必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−34266号公報
【特許文献2】特開2010−52487号公報
【特許文献3】特許第3734651号公報
【特許文献4】特開2004−189040号公報
【特許文献5】特許第4496592号公報
【特許文献6】特許第4487366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本願発明の課題は、低コストで製造可能な構成により、運転席側部分と助手席側部分とで異なるという自動車用インパネ補強材構造特有の構造上の要求を満たすことができるようにした、アルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0016】
請求項1の発明は、アルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、車体幅方向に延びてその軸方向両端部が直接又はブラケットを介して車体フレームに取り付けられるメインメンバを備え、前記メインメンバが、アルミニウム合金製中空押出形材で形成され、運転席側部分を構成する運転席側中空断面部と、前記アルミニウム合金製中空押出形材の一部を切除して前記運転席側中空断面部に一体に連なって形成され、助手席側部分を構成する助手席側開断面部とを有してなることを特徴とするアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造である。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、一方の端部が前記運転席側中空断面部と前記助手席側開断面部との段差部に接合され、他方の端部が車体フロアに連結されるアルミニウム合金製の連結ステイを備えたことを特徴とするものである。
【0018】
請求項3の発明は、請求項2記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、前記連結ステイは、その前記一方の端部が前記運転席側中空断面部と前記助手席側開断面部との段差部において、該段差部の中空開口部を塞ぐように接合されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、前記メインメンバは、その前記助手席側開断面部が車体高さ方向において上向きに凸な姿勢となるように前記車体フレームに取り付けられることを特徴とするものである。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、前記メインメンバの断面形状は、軸心を中心とする点対称断面形状であることを特徴とするものである。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、前記メインメンバの前記運転席側中空断面部の断面形状が略円形状であり、前記助手席側開断面部の断面形状が略半円形状であることを特徴とするものである。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、前記アルミニウム合金製中空押出形材は、軸心を中心とする外周を2等分した2箇所に溝状の凹部が軸方向に所定長さにわたって形成されたものであり、前記メインメンバの前記助手席側開断面部の軸方向に延びる周壁両端部が前記2つの凹部を所定長さ軸方向に沿ってプレスせん断して形成されたものであることを特徴とするものである。
【0023】
請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、前記メインメンバの前記助手席側開断面部には、その軸方向に延びる周壁両端部に軸心側へ向う折り返し部が形成されていることを特徴とするものである。
【0024】
請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、使用アルミニウム合金材が、5000系アルミニウム合金材、6000系アルミニウム合金材又は7000系アルミニウム合金材であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
請求項1のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造(以下、単に「アルミ合金製インパネ補強材構造」ともいう。)は、運転席側部分が中空断面形状をなす運転席側中空断面部によって構成されているので、メインメンバの運転席側部分に要求される高い変形強度、剛性、振動特性を確保することができる。また、運転席側部分に比べて剛性、変形強度に対する要求が低く、形状制約の要求が厳しい助手席側部分が、その断面が運転席側断面に比べて小径の開断面形状をなす開断面部によって構成されているので、メインメンバの助手席側部分に要求される小径化(小スペース化)と軽量化とを満たすことができる。また、このアルミ合金製インパネ補強材構造は、そのメインメンバの運転席側中空断面部がアルミニウム合金製中空押出形材の軸方向所定長さ部分で形成され、この運転席側中空断面部に一体に連なる助手席側開断面部が前記アルミニウム合金製中空押出形材の一部を切除して形成されているので、構成部品点数の削減が可能となり、溶接接合を行なわずにメインメンバを製造できることによるコストダウン、また、形状精度の向上が可能である。よって、請求項1のアルミ合金製インパネ補強材構造によると、低コストで製造可能な構成により、運転席側部分と助手席側部分とで異なるという自動車用インパネ補強材構造特有の構造上の要求を満たすことができる。
【0026】
また、請求項2のアルミ合金製インパネ補強材構造によると、一方の端部が運転席側中空断面部と助手席側開断面部との段差部(境界部)に接合され、他方の端部が車体フロアに連結されるアルミニウム合金製の連結ステイを備えているので、当該ステイによって荷重を車体フロア側に伝達することで、開断面構造のため運転席側に比べて剛性が低くなっている助手席側への荷重伝達を抑えることができる。また、メインメンバが運転席側中空断面部と助手席側開断面部とを一体に有する部材(一体化部材)とされているので、前記段差部に連結ステイを容易に位置決めすることができるとともに、溶接接合での溶接長も短くできる(断面周長の半分)という利点がある。
【0027】
また、請求項3のアルミ合金製インパネ補強材構造によると、一方の端部がメインメンバの運転席側中空断面部と助手席側開断面部との段差部に接合され、他方の端部が車体フロアに連結されるアルミニウム合金製の連結ステイが、その前記一方の端部が運転席側中空断面部と助手席側開断面部との段差部において、該段差部の開口(中空開口部)を塞ぐように接合されているので、運転席側中空断面部の変形をより効率的に抑制することができる。また、助手席側開断面部への荷重伝達を抑えて車体フロア側に荷重が伝達されることで、メインメンバの変形強度、剛性を高めることができる。
【0028】
また、請求項4のアルミ合金製インパネ補強材構造によると、車体前後方向への衝突荷重に対して高い変形強度が要求されるメインメンバに関し、メインメンバが、車体フレームに取り付けられた際に助手席側開断面部が車体高さ方向において上向きに凸な姿勢(車体高さ方向において下向きに開口した姿勢)となるように構成されているので、助手席側開断面部が車体の前方向又は後方向に凸な姿勢(車体の後方向側又は前方向側が開口した姿勢)となるようにしたものに比べて、メインメンバの曲げ荷重に対する断面二次モーメントが大きくなり、これに応じてメインメンバ10の強度、剛性も高めることができる。また、ステアリングコラムを介して伝わる荷重に対するメインメンバの剛性も高めることができる。さらに、請求項2,3のように、連結ステイを介して車体フロアと連結される構造の場合、この連結ステイが車体上下方向への変形に対する抵抗になることで、車体上下方向曲げ荷重に対する剛性低下も抑制することができる。
【0029】
また、請求項5のアルミ合金製インパネ補強材構造によると、メインメンバの断面形状(メインメンバを形成するアルミニウム合金製中空押出形材の断面形状)が、軸心を中心とする点対称断面形状であることにより、助手席側部分の開断面形状の切断加工による部品2個取りが可能になり、歩留まりの低減によるコストダウンが可能である。このメインメンバの断面形状については、形状制約や部品に対する要求性能、また、他部品との接合面の形成などの必要性に応じて便宜選択される。
【0030】
また、請求項6のアルミ合金製インパネ補強材構造によれば、メインメンバの運転席側中空断面部の断面形状を略円形状とし、これに応じて助手席側開断面部の断面形状を略半円形状とし、このように断面形状として異方性の少ない円形状断面形状を適用したことにより、運転席側部分においていずれの方向への変形に対しても高い剛性を備えることで、インパネ補強材構造における要求性能のひとつである固有振動数について良好な振動特性を確保することができる。なお、断面形状は完全に円形である必要性はなく、一部に他部品と接合するための平坦座面などをあらかじめ形成した略円形断面形状であってもよい。
【0031】
また、請求項7のアルミ合金製インパネ補強材構造によると、メインメンバを形成するアルミニウム合金製中空押出形材が、軸心を中心とする外周を2等分した2箇所に溝状の凹部が軸方向所定長さにわたって形成されたものであるので、前記2つの凹部を所定長さ軸方向に沿ってプレスせん断してスリット状に切除し、このプレスせん断部分が運転席側中空断面部と一体に連なる助手席側開断面部の軸方向に延びる周壁両端部となるように当該アルミニウム合金製中空押出形材をノコ切断することにより、運転席側中空断面部と助手席側開断面部とを有するメインメンバを、溶接接合を行うことなく容易に製造することができる。また、助手席側開断面部の周壁両端部が前記凹部をプレスせん断して形成されたものであるから、メインメンバの取り付け作業時などにおいて作業員が凹部となる当該周壁両端部に触れにくく、接触による切り傷を負うことを防止することができる。また、前記凹部が補強リブとして作用することで、メインメンバにおいて軸方向荷重に対する耐荷重を高め、また、曲げ荷重に対する断面変形を生じにくくすることができる。
【0032】
また、請求項8のアルミ合金製インパネ補強材構造によると、メインメンバの助手席側開断面部には、その軸方向に延びる周壁両端部に軸心側へ向う折り返し部が形成されているので、前記メインメンバの取り付け作業時などにおいて作業員が前記折り返し部の先端に触れにくくなっており、接触による切り傷を負うことを防止することができる。
【0033】
また、請求項9のアルミ合金製インパネ補強材構造によると、使用アルミニウム合金材が、5000系アルミニウム合金材、6000系アルミニウム合金材又は7000系アルミニウム合金材であり、素材として好適なアルミニウム合金材によるアルミ合金製インパネ補強材構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態によるアルミ合金製インパネ補強材構造を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1におけるメインメンバの構造を概略的に示す斜視図である。
【図3】図1における車体フロア用の連結ステイの構造を概略的に示す斜視図である。
【図4】本発明の別の実施形態によるアルミ合金製インパネ補強材構造を概略的に示す斜視図である。
【図5】本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバを形成するアルミニウム合金製中空押出形材の一例である凹部付きのアルミニウム合金製円管状押出形材の断面を示す断面図である。
【図6】図5に示す凹部付きのアルミニウム合金製円管状押出形材で形成されたメインメンバの要部を概略的に示す斜視図である。
【図7】図7は本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバを製造する方法の一例を概略的に示す説明図であって、その(a)はプレスせん断工程を示す図、その(b)はノコ切断工程を示す図、その(c)は得られた2個の部品(メインメンバ)を示す図である。
【図8】図7の(a)におけるA−A線断面図である。
【図9】本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバを製造する方法の別の例を概略的に示す説明図であって、その(a)はプレスせん断工程を示す図、その(b)はノコ切断工程を示す図、その(c)はノコ切断工程で得られた2個の部品を示す図、その(d)は折り返し工程による折り返し部が形成された2個の部品(メインメンバ)を示す図である。
【図10】図9の(a)におけるB−B線断面図である。
【図11】メインメンバの助手席側開断面部の周壁端部に形成された折り返し部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態によるアルミ合金製インパネ補強材構造を概略的に示す斜視図、図2は図1におけるメインメンバの構造を概略的に示す斜視図、図3は図1における車体フロア用の連結ステイの構造を概略的に示す斜視図である。
【0036】
この実施形態によるアルミ合金製インパネ補強材構造1は、図1に示すように、車体幅方向に延びるメインメンバ10と、このメインメンバ10に一方の端部が溶接接合され、メインメンバ10を図示しない車体フロアと連結するための連結ステイ20と、同じく、メインメンバ10に一方の端部が溶接接合され、メインメンバ10を図示しない車体前側のカウル(COWL)と連結するためのカウル用の連結ステイ30とを備えている。
【0037】
前記メインメンバ10は、アルミニウム合金製中空押出形材で形成され、運転席側部分を構成する運転席側中空断面部11と、前記アルミニウム合金製中空押出形材の一部を切除して前記運転席側中空断面部11に一体に連なって形成され、助手席側部分を構成する助手席側開断面部12とを有している(図2参照)。そして、この実施形態では、前記アルミニウム合金製中空押出形材としてアルミニウム合金製円管状押出形材が用いられており、前記運転席側中空断面部11は略円筒状をなし、前記助手席側開断面部12は略半円筒状をなしている。なお、この実施形態では、例として、運転席側中空断面部11の断面形状を略円形状、助手席側開断面部12の断面形状を略半円形状としているが、運転席側中空断面部11の断面形状については、矩形断面や平坦部のある円形断面など、形状制約、製品要求仕様、また、他部品との接合の観点などから便宜選択される。
【0038】
このメインメンバ10の前記助手席側開断面部(助手席側半円筒状部)12側の端部には、アルミニウム合金製の板状のブラケット40aが溶接接合されている。また、メインメンバ10の前記運転席側中空断面部(運転席側円筒状部)11側の端部には、拡管加工による円環状のブラケット40bが形成されている。前記ブラケット40aにはメインメンバ10を車体の一方側の側部フレームにボルトで連結するためのボルト孔が形成されている。また、前記ブラケット40bにはメインメンバ10を車体の他方側の側部フレームにボルトで連結するためのボルト孔が形成されている。なお、メインメンバ10の端部における車体との連結用の加工方法については、必要に応じて便宜選択すればよく、前記の端部拡管する場合の加工方法についてもプレス拡管、あるいは電磁成形などを適用してもよい。
【0039】
メインメンバ10を図示しない車体フロアと連結するためのアルミニウム合金製の前記連結ステイ20(図3参照)は、その上端部(一方の端部)20aが運転席側中空断面部11と助手席側開断面部12との段差部(境界部)に溶接接合され、下端部(他方の端部)20bが車体フロアに溶接接合によって連結されるようになっている。
【0040】
そして、この連結ステイ20は、車体フロアと連結されたときにメインメンバ10の助手席側開断面部12が車体高さ方向において上向きに凸な姿勢(車体高さ方向において下向きに開口した姿勢)となるように該助手席側開断面部12に対して位置して、その上端部20aが前記段差部に溶接接合されている。この場合、連結ステイ20は、その上端部20aが運転席側中空断面部11の助手席側端部の内周面に該端部の略円形開口を塞ぐように溶接接合されている。
【0041】
また、メインメンバ10をカウルと連結するためのアルミニウム合金製の前記連結ステイ30は、カウルと連結されたときにメインメンバ10の助手席側開断面部12が車体高さ方向において上向きに凸な姿勢となるように該助手席側開断面部12に対して位置して、その一方の端部が助手席側開断面部12に溶接接合され、他方の端部が前記カウルに連結されるようになっている。
【0042】
なお、メインメンバ10は、車体フレームに取り付けられた際にその助手席側開断面部12が車体高さ方向において上向きに凸な姿勢となるように構成されているが、この場合、図1に示すように鉛直上向きに凸な姿勢であることが好ましいものの、前記連結ステイ20がメインメンバ10と溶接接合しやすいように、メインメンバ10は、上下方向に延びる鉛直線に対して開断面部12が車体前後方向に±30°程度の範囲で傾く姿勢となるように構成されていてもよい。
【0043】
そして、このアルミ合金製インパネ補強材構造1を構成する部材(部品)の材質としては、5000系、6000系又は7000系のアルミニウム合金材であることがよい。このようなアルミニウム合金材は、素材として自動車用インパネ補強材構造に必要な強度、剛性を確保し得る。そして、腐食環境ではない室内空間で、かつ高強度が要求されることを考慮すると、押出形材で形成されるメインメンバ10には7000系アルミニウム合金材、連結ステイ20,30などの板材ブラケットには、溶接部の強度を確保しやすい5000系アルミニウム合金材の適用が最適である。
【0044】
なお、メインメンバ10と連結ステイ20,30、あるいはブラケット40aとの溶接接合の方法は、MIG溶接、レーザー溶接など必要に応じて便宜選択すればよい。
【0045】
このように、この実施形態によるアルミ合金製インパネ補強材構造1は、前記運転席側中空断面部11によって運転席側部分が構成されているので、メインメンバ10の運転席側部分に要求される高い変形強度、剛性、振動特性を確保することができる。また、運転席側部分に比べて剛性、変形強度に対する要求が低く、形状制約の要求が厳しい助手席側部分が、前記助手席側開断面部12によって構成されているので、メインメンバ10の助手席側部分に要求される小径化(小スペース化)と軽量化とを満たすことができる。
【0046】
また、このアルミ合金製インパネ補強材構造1は、そのメインメンバ10の運転席側中空断面部11がアルミニウム合金製中空押出形材の軸方向所定長さ部分で形成され、この運転席側中空断面部11に一体に連なる助手席側開断面部12が前記アルミニウム合金製中空押出形材の一部を切除して形成されているので、従来とは違って、構成部品点数の削減が可能となり、溶接接合を行なわずにメインメンバ10を製造できることによるコストダウン、また、形状精度の向上が可能である。
【0047】
よって、このアルミ合金製インパネ補強材構造1によると、低コストで製造可能な構成により、運転席側部分と助手席側部分とで異なるという自動車用インパネ補強材構造特有の構造上の要求を満たすことができる。
【0048】
また、このアルミ合金製インパネ補強材構造1によると、一方の端部20aが運転席側中空断面部11と助手席側開断面部12との段差部(境界部)に接合され、他方の端部20bが車体フロアに連結されるアルミニウム合金製の連結ステイ20を備えているので、この連結ステイ20によって荷重を車体フロア側に伝達することで、開断面構造のため運転席側に比べて剛性が低くなっている助手席側への荷重伝達を抑えることができる。また、メインメンバ10が運転席側中空断面部11と助手席側開断面部12とを一体に有する部材(一体化部材)とされているので、前記段差部に連結ステイ20を容易に位置決めすることができるとともに、溶接接合での溶接長も短くできる(断面周長さの半分)という利点がある。
【0049】
また、このアルミ合金製インパネ補強材構造1によると、前記連結ステイ20が、その一方の端部が運転席側中空断面部11の助手席側開断面部12との段差部において、該段差部の開口(中空開口部)を塞ぐように接合されているので、運転席側円筒状部11の変形をより効率的に抑制することができる。また、助手席側開断面部12への荷重伝達を抑えて車体フロア側に荷重が伝達されることで、メインメンバ10の変形強度、剛性を高めることができる。
【0050】
また、このアルミ合金製インパネ補強材構造1によると、車体前後方向への衝突荷重に対して高い変形強度が要求されるメインメンバ10に関し、メインメンバ10が、車体フレームに取り付けられた際に助手席側開断面部12が車体高さ方向において上向きに凸な姿勢となるように構成されているので、助手席側開断面部12が車体の前方向又は後方向に凸な姿勢となるようにしたもの(図4参照)に比べて、メインメンバ10の曲げ荷重に対する断面二次モーメントが大きくなり、これに応じてメインメンバ10の強度、剛性も高めることができる。また、ステアリングコラムを介して伝わる荷重に対するメインメンバ10の剛性も高めることができる。
【0051】
図4は本発明の別の実施形態によるアルミ合金製インパネ補強材構造を概略的に示す斜視図である。
【0052】
図4に示すように、前述した図1に示すアルミ合金製インパネ補強材構造1との相違点は、このアルミ合金製インパネ補強材構造1’のメインメンバ10が、その助手席側開断面部12が車体前方へ凸な姿勢となるように構成されている点にある。すなわち、連結ステイ20’は、車体フロアと連結されたときにメインメンバ10の助手席側開断面部12が車体前方へ凸な姿勢(車体後方へ開口した姿勢)となるように該助手席側半円筒状部12に対して位置して、その上端部20a'が運転席側中空断面部11と助手席側開断面部12との段差部における運転席側中空断面部11の端部の外周部分に溶接接合されている。また、カウル用の連結ステイ30’は、カウルと連結されたときに助手席側開断面部12が車体前方へ凸な姿勢となるように該助手席側開断面部12に対して位置して、その一方の端部が当該助手席側開断面部12に溶接接合されている。
【0053】
このように構成されるアルミ合金製インパネ補強材構造1’においても、前記図1のものと同様に、低コストで製造可能な構成により、運転席側部分と助手席側部分とで異なるという自動車用インパネ補強材構造特有の構造上の要求を満たすことができる。
【0054】
図5は本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバを形成するアルミニウム合金製円管状押出形材の一例である凹部付きのアルミニウム合金製円管状押出形材の断面を示す断面図である。
【0055】
本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバ10を形成するアルミニウム合金製中空押出形材として、凹部付きのアルミニウム合金製円管状押出形材(以下、単に「凹部付き円管状押出形材」ともいう。)100が挙げられる。この凹部付き円管状押出形材100は、図5に示すように、軸心を中心とする外周を2等分した2箇所に溝状の凹部100a,100aが軸方向に略全長にわたって形成されている。以下では、断面の軸心に対して点対称となる位置に2箇所の溝状凹部を設けた構造を例として製造方法を示すが、点対称断面形状部品であれば、以下に示すような切断加工を施した場合、部品2個取りが可能になり、歩留まり低減によるコスト低減に有利であるため好ましい。
【0056】
図6は図5に示す凹部付きのアルミニウム合金製円管状押出形材で形成されたメインメンバの要部を概略的に示す斜視図である。
【0057】
このように、凹部付き円管状押出形材100によってメインメンバ10を形成するようにしたものでは、前記2つの凹部100a,100aを所定長さ軸方向に沿ってプレスせん断してスリット状に切除し、このプレスせん断部分が運転席側中空断面部11と一体に連なる助手席側開断面部12の軸方向に延びる周壁端部12a,12aとなるように当該凹部付き円管状押出形材100をノコ切断することにより、運転席側中空断面部11と助手席側開断面部12とを有するメインメンバ10を、溶接接合を行うことなく容易に製造することができる。
【0058】
また、単に軸心に対して点対称としただけでなく、例示するように前記凹部100a,100aを設けたことによる効果を以下に示す。本構造の場合、助手席側開断面部の周壁端部12a,12aが前記凹部100a,100aをプレスせん断して形成されたものであるから、メインメンバ10の取り付け作業時などにおいて作業員が凹部となる当該周壁端部12a,12aに触れにくく、接触による切り傷を負うことを防止することができる。また、前記凹部100a,100aが補強リブとして作用することで、メインメンバ10において軸方向荷重に対する耐荷重を高め、また、曲げ荷重に対する断面変形を生じにくくすることができる。
【0059】
次に、本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバを製造する方法について説明する。図7は本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバを製造する方法の一例を概略的に示す説明図であって、その(a)はプレスせん断工程を示す図、その(b)はノコ切断工程を示す図、その(c)は得られた2個の部品(メインメンバ)を示す図である。図8は図7の(a)におけるA−A線断面図である。
【0060】
このメインメンバの製造方法では、凹部付き円管状押出形材100が用いられている。まず、図7の(a)に示すプレスせん断工程(トリム加工工程)について説明すると、凹部付き円管状押出形材100の軸方向(長手方向)における中央部分において凹部100a,100aを所定長さ軸方向に沿ってプレスせん断してスリット状に切除する(図8参照)。W1はスリット状に切除されたプレスせん断部を示す。
【0061】
次に、図7の(b)に示すノコ切断工程について説明すると、前記プレスせん断部(トリム部)W1の両端部を、それぞれ、凹部付き円管状押出形材100の半周にわってノコ切断する。W2はノコ切断部を示す。
【0062】
これにより、図7の(c)に示すように、運転席側中空断面部11と助手席側開断面部12とを有するメインメンバ10を、同時に2個得るといういわゆる2個取りを行うことができ、製品歩留りの向上を図ることができる。
【0063】
次に、本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバを製造する別の方法について説明する。図9は本発明のアルミ合金製インパネ補強材構造に係るメインメンバを製造する方法の別の例を概略的に示す説明図であって、その(a)はプレスせん断工程を示す図、その(b)はノコ切断工程を示す図、その(c)はノコ切断工程で得られた2個の部品を示す図、その(d)は折り返し工程による折り返し部が形成された2個の部品(メインメンバ)を示す図である。図10は図9の(a)におけるB−B線断面図、図11はメインメンバの助手席側開断面部の周壁端部に形成された折り返し部を示す断面図である。
【0064】
このメインメンバの製造方法では、メインメンバを形成するアルミニウム合金製円管状押出形材として、前記凹部100aが形成されていない通常の断面円形をなすアルミニウム合金製の円管状押出形材100’が用いられる。まず、図9の(a)に示すプレスせん断工程について説明すると、円管状押出形材100’の軸方向における中央部分を所定長さ軸方向に沿ってプレスせん断してスリット状に切除する(図10参照)。この場合、後述する折り返し部の加工を容易にするための縁切り用切除部が両端に形成されるようにプレスせん断を行なう。W1’は切除されたプレスせん断部を示す。
【0065】
次に、図9の(b)に示すノコ切断工程について説明すると、前記プレスせん断部(トリム部)W1’の両端部を、それぞれ、円管状押出形材100’の半周にわってノコ切断する。W2はノコ切断部を示す。そして、このノコ切断工程により、図9の(c)に示すように、同時に2個の部品(部材)が得られる
【0066】
次に、前記プレスせん断部W’の箇所を内側に折り曲げる折り返し加工を行うことにより、図9の(d)に示すように、運転席側中空断面部11と、軸方向に延びる周壁端部に折り返し部12bが形成された助手席側開断面部12(図11参照)とを有するメインメンバ10が得られる。このように、メインメンバ10の助手席側開断面部12には、その軸方向に延びる周壁端部に軸心側へ向う折り返し部12bが形成されているので、前記メインメンバ10の取り付け作業時などにおいて作業員が前記折り返し部12bの先端に触れにくくなっており、接触による切り傷を負うことを防止することができる。なお、前記凹部付き円管状押出形材100で形成されるメインメンバの助手席側開断面部にも、その周壁端部に折り返し部を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1,1’…アルミ合金製インパネ補強材構造
10…メインメンバ
11…運転席側中空断面部
12…助手席側開断面部 12a…周壁端部 12b…折り返し部
20,20’…連結ステイ
20a,20a’…上端部 20b,20b’…下端部
30,30’…連結ステイ
40a,40b…ブラケット
100,100’…アルミニウム合金製円管状押出形材 100a…凹部
W1,W1’…プレスせん断部
W2…ノコ切断部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、車体幅方向に延びてその軸方向両端部が直接又はブラケットを介して車体フレームに取り付けられるメインメンバを備え、前記メインメンバが、アルミニウム合金製中空押出形材で形成され、運転席側部分を構成する運転席側中空断面部と、前記アルミニウム合金製中空押出形材の一部を切除して前記運転席側中空断面部に一体に連なって形成され、助手席側部分を構成する助手席側開断面部とを有してなることを特徴とするアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項2】
一方の端部が前記運転席側中空断面部と前記助手席側開断面部との段差部に接合され、他方の端部が車体フロアに連結されるアルミニウム合金製の連結ステイを備えたことを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項3】
前記連結ステイは、その前記一方の端部が前記運転席側中空断面部と前記助手席側開断面部との段差部において、該段差部の中空開口部を塞ぐように接合されていることを特徴とする請求項2記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項4】
前記メインメンバは、その前記助手席側開断面部が車体高さ方向において上向きに凸な姿勢となるように前記車体フレームに取り付けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項5】
前記メインメンバの断面形状は、軸心を中心とする点対称断面形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項6】
前記メインメンバの前記運転席側中空断面部の断面形状が略円形状であり、前記助手席側開断面部の断面形状が略半円形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項7】
前記アルミニウム合金製中空押出形材は、軸心を中心とする外周を2等分した2箇所に溝状の凹部が軸方向に所定長さにわたって形成されたものであり、前記メインメンバの前記助手席側開断面部の軸方向に延びる周壁両端部が前記2つの凹部を所定長さ軸方向に沿ってプレスせん断して形成されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項8】
前記メインメンバの前記助手席側開断面部には、その軸方向に延びる周壁両端部に軸心側へ向う折り返し部が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項9】
使用アルミニウム合金材が、5000系アルミニウム合金材、6000系アルミニウム合金材又は7000系アルミニウム合金材であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項1】
アルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造において、車体幅方向に延びてその軸方向両端部が直接又はブラケットを介して車体フレームに取り付けられるメインメンバを備え、前記メインメンバが、アルミニウム合金製中空押出形材で形成され、運転席側部分を構成する運転席側中空断面部と、前記アルミニウム合金製中空押出形材の一部を切除して前記運転席側中空断面部に一体に連なって形成され、助手席側部分を構成する助手席側開断面部とを有してなることを特徴とするアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項2】
一方の端部が前記運転席側中空断面部と前記助手席側開断面部との段差部に接合され、他方の端部が車体フロアに連結されるアルミニウム合金製の連結ステイを備えたことを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項3】
前記連結ステイは、その前記一方の端部が前記運転席側中空断面部と前記助手席側開断面部との段差部において、該段差部の中空開口部を塞ぐように接合されていることを特徴とする請求項2記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項4】
前記メインメンバは、その前記助手席側開断面部が車体高さ方向において上向きに凸な姿勢となるように前記車体フレームに取り付けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項5】
前記メインメンバの断面形状は、軸心を中心とする点対称断面形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項6】
前記メインメンバの前記運転席側中空断面部の断面形状が略円形状であり、前記助手席側開断面部の断面形状が略半円形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項7】
前記アルミニウム合金製中空押出形材は、軸心を中心とする外周を2等分した2箇所に溝状の凹部が軸方向に所定長さにわたって形成されたものであり、前記メインメンバの前記助手席側開断面部の軸方向に延びる周壁両端部が前記2つの凹部を所定長さ軸方向に沿ってプレスせん断して形成されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項8】
前記メインメンバの前記助手席側開断面部には、その軸方向に延びる周壁両端部に軸心側へ向う折り返し部が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【請求項9】
使用アルミニウム合金材が、5000系アルミニウム合金材、6000系アルミニウム合金材又は7000系アルミニウム合金材であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製の自動車用インパネ補強材構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−254663(P2012−254663A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127509(P2011−127509)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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