説明

アルミニウム合金製の部品を被覆する方法及び前記方法からえられる部品

アルミニウム合金製、特にダイカスト・アルミニウム合金製の部品(1)を被覆する方法が記載され、前記方法は前記- washing the pre-treated parts (1) ; and部品(1)を前処理する工程;- washing the pre-treated parts (1) ; and前処理した前記部品(1)を洗浄する工程;及び前記部品上に少なくとも1つの第1層(3)及び少なくとも1つの第2層(5)を蒸着する工程を含み、前記第1及び第2層(3,5)の各層は可変相対的モル分率を有する2つの構成成分:1)金属材料、及び2)周期律表のIVA族の元素の酸化物に基づく材料の混合物から成る。前記方法によって製造された、アルミニウム合金製の部品(1)が更に記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミニウム合金製、特にダイカスト・アルミニウム合金製の部品を被覆するための方法に関する。本発明は更に当該方法により製造されたこのタイプの部品に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも二重層を有するこのような被覆物は、保護機能を有し、即ち処理部品の硬度及び摩耗耐性を改良する、と同時に前記部品に干渉色を生じる装飾特徴を提供する。このような積層は、原則的には、いかなる金属及び非金属材料にも適用できるが、前記積層方法の操作温度に耐えられる材料に限定される。しかしながら、本発明者等は特に、これに限定されないが、ダイカスト・アルミニウム合金製部品への積層の応用について研究し特徴付けを行ってきた。
【0003】
この主題に関して、当該技術分野において以下の先行文献が知られている:
1)2004年6月23日に出願された、発明の名称が「モザイク用テッセラ及びその製造方法(Tessera per mosaico e metodo di fabbricazione della medesima)」であるイタリア特許出願PD2004A000161;及び
2)2007年4月12日に出願された、発明の名称が「モザイク組成物用タイル(Piastrella per la composizione mosaici」」であるイタリア特許出願PD2007A000134。
これらの特許は、スラブを切断しその後にガラス化エナメルで表面をエナメル状にすることでえられる、塑性歪みによるアルミニウム合金製の平面形状のタイルの製造を包含している。
【0004】
3)2月9日に出願された、発明の名称が「最終物質の保護/選択的着色方法(Method for the protection/selective colouring of an end product)」である国際特許WO2006/013115A1。
この特許は着色されたチタン(又は同様の元素、Nb、Zr等)に基づく被覆物及びそれらの関連酸化物の製造を扱っている。当該被覆物はPVD技術を用いてチタンのフィルムを蒸着させ、次いで陽極酸化して酸化物の厚みを増大させることによって、又はTi、Nb又はZr酸化物の直接的PVD層形成で厚みを増大させその後干渉色を生じることによってえることができる。
【0005】
4)1974年9月3日に出願された、発明の名称が「アルミニウム圧力ダイカストでの一体着色陽極酸化物の製造方法(Method of forming an integral coloured anodic oxide on aluminium pressure die casting)」である米国特許3833484及び対応するイタリア特許948709。
この方法のポイントは0.1〜1.3%のクロム及び0.2〜3.4%のマグネシウムを含有するアルミニウム合金の圧力ダイカストによってえられる、対象表面を陽極酸化処理に供して均一な陽極層を作製することにある。
【0006】
5)2001年2月8日に出願された、発明の名称が「装飾的被覆物(Decorative coating)」である、国際特許WO010951。
この特許はマグネトロンスパッタリング技術を用いる装飾的被覆物の作製を扱っている。この技術を用いているので、透明な保護被覆物が形成され、この被覆物の厚みにより層形成された表面の最終的な色が決定される。
【0007】
6)2006年2月9日に出願された、発明の名称が「最終物質の保護/選択的着色方法(Method for the protection/selective colouring of an end product)」である、国際特許WO2006013115。
7)2002年12月6日に出願された、発明の名称が「多層干渉フィルム」である、韓国特許KR20020091535;半透明層、透明層、反射層及び半透明層を交互に配置することでえられる、多層システムが記載されている。
【0008】
8)1998年9月2日に出願された、発明の名称が「干渉色物品及びその製造方法」である、日本特許JP10230563;この特許には干渉色を生じるために、ポリマー樹脂に基づくフィルムを使用することが含まれる。
【0009】
9)1995年4月25日に出願された、発明の名称が「複合材料フィルム(Composite film)」である、米国特許US5409782;干渉効果を生じるのに有機物質を使用している。
前記特許5〜9では多層被覆物を適用して干渉色効果をえるための異なる方法が開示されている。
【0010】
10)2002-09-25;発明の名称が「アルミニウム合金ホイールの表面処理方法」である、日本特許JP2002274101;この特許はTi又はCrから成る金属反射層及び例えばTi酸化物などの、酸化物から成るその上の層を形成させることを提供する。
【0011】
11)国際特許WO-A-9613625は酸化物の陽極で成長させた層、及びインジウム、スズ又はガリウムのような金属の層から成る二重層形成物で被覆されたアルミニウム合金製の部品に関する。前記特許の目的は摩耗耐性及び耐食性、非装飾性被覆を作製することである。前記層形成物を成長させるための技術は本発明で用いられる技術とは完全に異なる。被覆構造物は本発明の意図するもの:金属の第1層及び第2の酸化型層とは全く正反対のものである。干渉色効果が認められない。
【0012】
12)英国特許GB-A-710096は電着技術を採用することによりアルミニウム又はアルミニウム合金上に成長した層の接着効果を改良する方法に関する。作製した層形成物は金属又は金属合金である。本発明は電着技術を用いることは断じてなく、反対に、その他の中で、主な特徴として、環境への影響がより小さく人間の健康に対する影響もより小さい、PVD又PECVD等の代替え技術を使用する。
【0013】
13)米国特許US-A-6333103は窒化物、窒化炭素、酸化物、酸化窒化物、酸化炭窒化物又はその他に基づく硬い被覆物及び指向性酸化アルミニウムから成る第2層から成る二重層被覆物に関する。このように作製された酸化物は道具類に適用され最適な摩耗耐性を有する。装飾的機能に関する言及はなく第1層及び第2層のために適用する材料は本発明で用いる材料とは異なる。
【0014】
14)英国特許GB-A-2162864はPVD技術を用いて成長させた二層から成る装飾的被覆物の作製に関する。第1層は非常に硬く窒化炭素、酸化窒化物、及び他の可能な複合材料又は複合材料の混合物から成り;第2層は金又は金含有複合材料から成る。前記被覆物は装飾的であるが、摩耗耐性も有する。本発明に対して、前記二層に用いる材料は全く異なり干渉色効果が認められない。
【0015】
15)欧州特許EP-A-1226030はアルミニウム合金用の形成道具(ダイ)上に蒸着した機能的PVD層形成物に関する。前記層形成物は窒化クロム製の基本被覆物に対する修正物であり、その操作環境におけるその耐性が改良されている。その(機能的)応用及び材料が本発明で用いるものとは完全に異なっている。
【0016】
16)英国特許GB-A-1525868はホット−プレーティング法によるアルミニウム合金製部品上への金属層の形成に関する。層形成方法及び層形成材料は本発明で意図されるものとは完全に異なる。
【0017】
17)日本特許JP-A-5224262「非線形光学材料」(03/09/1993)は透明マトリックス(Al2O3、SiO2、等)及び強磁性金属酸化物の微細分散物から成る単一層被覆物の取得を開示し;その目的は高度な非線形光感度である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明の目的は、装飾機能及び保護機能の両方を有する、二重層蒸着物(double-layer deposit)の、処理変形として、かつ種々の表面調整技術を適用することによって仕上げられるアルミニウム合金製の部品を被覆するための方法を提供することによって、及び当該方法によって製造されたアルミニウム合金製の部品を提供することによって、前記した従来の課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の前記目的及び他の目的並びに利点は、以下の説明から明らかになるように、それぞれの独立請求項に記載した、方法を用いて及びアルミニウム合金製部品を用いてえられる。
本発明の好ましい実施態様及び非自明な変形は従属請求項の主題である。
【0020】
添付の請求の範囲から明らかな本発明の範囲から逸脱することなく、記載されているものに対して多数の変形及び変更(例えば、等価な機能性を伴う部品及び形状、大きさ、配置に関連する)を行うことができることは一目瞭然である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
添付の図面を参照して、非限定的な実施例として示した、本発明のいくつかの好ましい実施態様によってより詳細に本発明を説明する。
【図1】本発明による方法で製造された発明部品の概略的な側断面図を示す。
【図2】本発明の方法を調整するために実施した試験の結果を示す図である。
【図3】本発明の方法を調整するために実施した試験の結果を示す図である。
【図4】本発明の方法を調整するために実施した試験の結果を示す図である。
【図5】本発明の方法を調整するために実施した試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
With reference to Figure 1, it schematically shows an embodiment of a part 1 made of an aluminium alloy, in particular made of a die-cast aluminium alloy, according to the present invention.図1を参照して、図1は本発明に従った、アルミニウム合金製、特にダイカスト・アルミニウム合金製の部品1の実施態様を図式的に示す。Such part 1 is coated with at least one first layer 3 and at least one second layer 5; the first layer 3 is composed of at least one metallic element or element made of a metallic alloy and optionally of at least one oxide of an element of Group IVA of the Periodic Table of Elements; and the second layer 5 is composed of at least one component chosen from an oxide of an element of Group IVA of the Periodic Table of Elements, and optionally a metal.当該部品1は、少なくとも1つの第1層3及び少なくとも1つの第2層5で被覆され;前記第1層3は少なくとも1つの金属要素又は金属合金製要素及び任意に元素の周期律表のIVA族の元素の少なくとも1つの酸化物から成り;かつ前記第2層5は元素の周期律表のIVA族の元素の酸化物から選択される少なくとも1つの成分及び任意に金属から成る。
【0023】
適切に調整された金属合金上に、装飾的被覆物をえるために、気相蒸着技術により、以下に詳細に記載される、少なくとも2つの層の被覆物を蒸着させる。
基材として用いられる、ダイカスト・アルミニウム合金はサンディング、手磨き若しくは機械研磨、ブラッシング、タンブリング又はバフ研磨等の種々の技術を用いて調整することができる。
【0024】
前記した前処理を行った後に、前記部品は、
1.圧縮空気を吹き付けること(表面に付着した粉体としての汚染物質の存在を除くために適した操作);
2.アセトン又はエチルアルコール等の、溶媒によって脱脂すること(次の作業及び取り扱い前に金属の表面に未だ付着しうる油性又は油脂性汚染物質を除去するために適した操作);
3.(10−2mbar以上の)真空条件下で20〜200℃の間に含まれる温度で、密閉チャンバー中で保持すること(設定真空レベル及び温度により脱気された結果として表面孔中に取り込まれた揮発性種が除去され;前記真空レベルが大きくなるほど前記温度が高くなるほど脱気効率は良くなり;前記温度については、部品湾曲が生じる危険性を招かないように過度に上昇しないように注意を払う必要がある);
4.更に、アセトン又はエチルアルコール等の、溶媒によって脱脂すること(次の作業及び取り扱い前に金属の表面に未だ付着しうる油性又は油脂性汚染物質を除去するのに適した操作)
を含む洗浄手順に供さなければならない。
この洗浄工程の後、前記部品を布製手袋で扱い、前記被覆物の製造を行なう、蒸着チャンバー内に移さなければならない。
【0025】
当該表面上に少なくとも二重層蒸着物の蒸着を行う。両層は可変の相対的モル分率を伴う2つの構成成分:1)少なくとも1つの金属要素、例えば鉄、又はNi若しくはTi等の別の金属又は当該元素の合金(本明細書において以下に簡単に「金属」とも呼ぶ)、及び2)シリコン酸化物に基づく材料、又は元素の周期律表のIVA族の別の元素の酸化物(本明細書において以下に簡単に「酸化物」とも呼ぶ)、の混合物から成る。
前記金属は金属の形及びイオンの形の両方で前記層に導入することができる。当該成分を、以下に記載する種々の技術を用いて、同一の方法工程で、蒸着させ、場合により酸化物と共に蒸着させる。
【0026】
前記2つの構成成分の相対的モル分率は、前記第1層3において、前記金属に関して0.1〜1の範囲及び前記酸化物に関して0.9〜0の範囲の値で変更できるのに対し、前記第2層5においては、前記金属に関して0〜0.9の範囲及び前記酸化物に関して対応して1〜0.1の範囲の値で変更できる。前記相対的モル分率の当該変更を導入するのは屈折率及び、結果的に色効果を調節するためである。
【0027】
特に、内部層(前記基材と直接接触する)は優勢な金属を有するのに対して、最外部層は優勢な酸化物を有する。従って、この二重層に由来する前記被覆物は、金属要素が非常に豊富であるので、実質的に反射する内部層から成り、かつ前記酸化物相が非常に豊富な、透明層から成る。前記反射層は入射光の反射を生じ、前記透明層は、その厚みが変わると、干渉性の異なる色を生じる。前記金属は二重の機能を有する前記二層中の前記酸化物に添加される。前記機能は前記酸化物の屈折率(特に、金属要素の含有量が増すと前記屈折率は大きくなる)を調節し、かつ当該要素の特徴を示す、吸収による着色成分を導入する機能である。このような理由によって、製造された被覆物は干渉効果と吸収効果の両方の組合せにより呈色する。完全な酸化物層(前記金属の相対的モル分率=0)又は完全な金属層(前記酸化物の相対的モル分率=0)という、限定された条件下で、実際に、完全に透明な単一層又は完全に反射する単一層がそれぞれえられる。酸化物及び金属の前記相対的モル分率の全ての中間的な調節においては、前記屈折率が強力に調節されるので、色効果は色調と明度の両方の観点から調節される。
【0028】
前記第1内部層の厚さは数百ナノメートル〜1マイクロメートルの範囲内にあることが可能で、その化学組成を固定してしまうと、同一層の厚さによる色の変化は生じない。
代わりに、透明層と共に導入された干渉成分のために、より低い屈折率を有する、前記外部層の厚さによって色が決まる。当該層の厚さは最大で数マイクロメートルに達する。
【0029】
既に前記で強調したように、本明細書に記載した蒸着構造物によって生じる色は干渉性と吸収性の両方を有する。前記干渉性のために、前記外部透明層の厚さが変わると、構造効果のために連続して順次それら自信を繰り返す色が生じ、それらの色は光波長、光の入射角及びそれらが観察される角度が全て変わるときそれらの色調を変化させる。前記酸化物層中への金属の添加によって導入される、吸収性のために、代わりに、光明度を更に調節することが可能となる。このような理由で、前記外部層中に組み込まれた金属のモル分率が低いために、パステル・タイプの、明るい色がえられるが、前記外部層中に組み込まれた金属のモル分率が高くなると、次第に暗い色がえらえる。
前記被覆構造(二重層)の全厚さはいかなるばあいも2マイクロメートルまでに制限されなければならない。実際、厚さの値が大きくなると、過剰に明度が低下し、結果として暗すぎる色がえられる。
【0030】
優勢な金属画分を伴う、前記第1層は物理蒸着法、PVD技術(例えば、スパッタリング、電子ビーム、陰極アーク、熱蒸着、イオンビーム、等)を用いる蒸着を用いてえることができる。優勢な酸化物画分を伴う、前記第2層はPVD蒸着技術又はプラズマ改良化学蒸着(PECVD)技術又はその他のCVD技術によりえることができる。既に記載した色効果に加えて、PECVDに関して主にシリコン酸化物に基づく層の蒸着により、同一の方法工程において、例えば親水性、疎水性又は耐指紋性を生じる、表面機能化もえることが可能となり、これにより前記被覆物の表面を生じる。前記PECVD技術の当該利点は公知であり産業レベルで既に応用されているが、前記した全ての蒸着技術、及びPECVDを用いる前記の全ての技術を用いると、被覆される全表面は横方向に延び回転固体ではないとき、全ての上、被覆される全表面上に、フィルムの厚さ(及びこの場合の干渉色)に関して、高度な均一性をえることは困難である。この結果をえるために、前記チャンバー内の位置決めが研究されてきており;加えて、反応器の内側の電場及びプラズマの分布を調節するために適切に検討された形状、材料及び厚さを伴うマスク及び枠組みも作製されている。
【0031】
市場に既に存在する干渉色を有する被覆物については(例えば、Ti/TiO2)、より安価な材料(シリコン及び鉄はTiよりも大量に広く世界中に行き渡りより安価である)から出発して色効果をえている。その上、本発明者らが行った文献調査及び特許調査の結果、本明細書に既に記載した構造と類似の構造を有するシリコン酸化物(又は他の酸化物の混合物を伴うシリコン酸化物)に基づく干渉被覆物の商業用途は存在していない。
【0032】
最終的に、装飾特性に加えて、蒸着した被覆物は硬さ及び耐摩耗性を増大させる。このような理由で、チタン酸化物と比較を続けると、シリコン酸化物の方が硬い:研磨剤に関する、モース硬度計において、異なる可能な既存形態に従い、実際にチタン酸化物は5.5〜6.5の間に分類されるのに対し、シリコン酸化物は6〜7の間に分類される。
【0033】
従って、非常に安価な出発材料(例えば、Si及びFe)から出発して本明細書に記載する製造方法を用いると、高度な硬さと研磨耐性を有し、明るい彩色効果と強い彩色効果の両方を伴う、光り輝く心地よい色を提供する被覆物の構造を作り出すことが可能となる。
【0034】
その上、多くの他の市販の被覆物に対して、本明細書でえられた着色被覆物は陽極酸化処理(このような技術は環境影響問題、特に処分液の流れに関する問題を有している)では製造されず、環境影響問題がないか非常に少ないことで特徴付けられかつ未加工な材料とエネルギーを有効に使用することによって特徴付けられる、気相からの蒸着技術により製造される。前記製品被覆物は更にダイカスト合金製の部品の表面硬度を増大させることができ、結果として耐摩耗性を増大させることができる。前述したように、気相蒸着方法は溶媒の使用を必要とせず、前記被覆物を製造するために少量の材料しか使用しないことを意味するので、環境への影響が非常に低いと考えられ、このように製造される製品は高い熱機械及び化学安定によって特徴付けられる。前記被覆物は前記部品の耐用年数の終わりに、単純な研磨により除去することができ、これにより、この処理の後で、ダイカスト・アルミニウム合金用に開発された通常の手順に従ってリサイクルできる前記合金製の被覆部品が製造される。他方、前記成分から除去すべき被覆物は反射層(例えば、Ni)用に選択された金属要素の可能な固有の不快性又はアレルギー性特性は別として、環境影響問題を生じることはないであろう。しかしながら、この場合においてさえも、アレルギー性金属の添加は、前記被覆物構造の内側の、単一の反射層に限定することができるか、最小量に限って、前記透明層に拡大することができることに注意する必要がある。両層はナノメートル・オーダーと、いずれにせよ極めて薄いので、このような金属の存在は非常に限定される。純粋な金属形態で前記第1層が蒸着される場合、このような金属は前記外部酸化物層内に組み込まれ、前記層は不活性である(ので、前記金属が放出される可能性はない)。前記被覆物の除去及び前記部品のリサイクルの間も、前記金属は最少画分の除去された粉末残渣となるであろう。
【0035】
要約すると、本発明の方法により以下の革新的技術特徴の取得が可能となる:
1.蒸着物の装飾効果とそれらの硬度の両方を摩耗条件下で、より優れたものにするために、異なる材料製の基材に適用することができる気相蒸着技術によってえられる、干渉彩色効果(公知で従来の特許の対象である、Ti+TiO2システムに基づく蒸着物よりも安価で硬い)及び保護効果を有する、少なくとも二重層を有する蒸着物。
【0036】
2.当該蒸着物は反射金属層(Fe、Ni、Cr、Ti等又は当該元素の合金)又は金属−シリコン酸化物の混合物から成り、かつシリコン酸化物又は周期律表のIVA族の他の元素に基づく、制御された厚さを有する透明な酸化物層又は金属(例えば、鉄)と若しくは前記金属の合金と当該酸化物との混合物から成る。前記反射金属層は入射光の反射を生じ;前記透明な酸化物層は、厚さが変化すると、干渉現象のために異なる色を生じる。
【0037】
3.シリコン酸化物の最も外側の層に金属酸化物を導入することによって、その屈折率が大きくなり、色収量及び干渉効果が改善される。
4.前記第1金属層は物理蒸着法、PVD技術(例えば、スパッタリング、電子ビーム、陰極アーク、熱蒸着、イオンビーム等)を用いる蒸着によってえられ、前記第2層はPVD蒸着技術によって又はプラズマ改良化学蒸着(PECVD)技術又は別のCVD技術によってえることができる。
【0038】
5.PECVDによるシリコン酸化物に基づく層の蒸着によっても、同一の方法工程において、例えば親水性、疎水性又は耐指紋性を生じる、表面機能化をえることが可能となり、これにより生じる干渉被覆物の表面をえることができる。前記Ti/TiO2システムにおいて同一効果をえるには、更なる処理及び更なる層を提供することが必要となり、製造コストが高くなる。
【0039】
当該被覆物を開発する際に解決してきた主な技術課題は種々の色の定義に関する課題と複雑な形状(例えば、曲線がありかつ多数のエッジを伴う)の上にでも蒸着均一性をえることに関する課題である。この場合、被覆均一性が色均一性も保証するので、厚さに関する被覆均一性は基本となる。
【0040】
当該方法の主要な産業上の利用領域に関しては、これらに限定されないが、以下のものを挙げることができる:部品の装飾、全体の装飾、消耗品の装飾、設計要素の装飾、表面装飾及び摩耗耐性の改善を必要とする概して全ての要素の装飾。
【0041】
以下の実施例によって本発明の方法の説明が完結する。当該実施例は本発明の方法を用いてえられる改良点をよりよく示すために用いるのであって、添付の請求の範囲によってのみ定義される、本発明の範囲を限定することを意図するものでは断じてない。
【実施例1】
【0042】
アルミニウム合金、AlSi11Cu2Zn1,4-UNI ENAB46100省略(又はAlSi8Cu3Fe)製で、ダイカストし、研磨紙及びダイヤモンド布を用いて表面を研磨することにより製造した、いくつかのサンプルを準備した。次いで、前記サンプルを脱油し洗浄した後、本発明に記載された方法に従って被覆蒸着処理に供した。前記二層を蒸着させるために、アルゴン雰囲気下マグネトロンスパッタリングRFを使用した。
【0043】
第1層は鉄−シリカ領域比=0.2、40sccmの流速のアルゴン及び140Wの蒸着電力を用いて、混合鉄−シリカ標的のスパッタリングにより蒸着させた。全ての準備したサンプル上のこの第1層のために採用した蒸着時間は4hであった。第2層は110Wの電力及びアルゴンの流速=40sccmを適用して、シリカ標的のスパッタリングにより蒸着させた。
【0044】
3つの増加する蒸着時間を異なるサンプル上に前記第2層を蒸着させるために採用した:15、45及び90分。15分間のシリカ蒸着に供したサンプルはライフル・バレルの灰色(CIELab法を用いて測定した座標:44.50;1.26;6.78)及び1.9GPaの平均硬さを示した。当該硬さは「押し込み(indentation work)」と呼ばれるモデルに従い、負荷を増やしながらビッカース微少硬さ技法を適用しこれによってえられたデータを推定することによって測定した(図2)。45分間のシリカ蒸着に供した前記サンプルは群青色(CIELab法を用いて測定した座標:27.63;-2.96;-22.68)及び5.7GPaの推定平均硬さを示した(図3)。最終的に、90分間のシリカ蒸着に供した前記サンプルはライトブルー色(CIELab法を用いて測定した座標:47.50;-6.79;-2.03)及び5.5GPaの推定平均硬さを示した(図4)。アルミニウム合金の基材の硬さは1.4GPaと評価された。
従って、前記被覆物を用いると、前記基材に関して大きな硬度増加がえられた。
【実施例2】
【0045】
アルミニウム合金、AlSi11Cu2Zn1,4-UNI ENAB46100省略(又はAlSi8Cu3Fe)製の、いくつかのサンプルを調製し、ダイカストして製造し微細研磨に供した。これらのサンプル上に以下の蒸着段階を、異なる組成を有する2つの層を蒸着することにより行った。第1の蒸着はチタン又はニッケルの約100nmの層を蒸着することによって、電子ビーム技術を用いて行った。第2の蒸着はプラズマ改良化学蒸着(PECVD)技術を用いて行った。当該蒸着を用いて、シリコン酸化物、SiOxの層を生じた。前記層の化学量は蒸着パラメーターを調節することによって変更できる。異なるサンプルを各サンプル上にチタン、又はニッケルの同一で均一な層を蒸着させ、PECVD段階の蒸着パラメーターを変更することによって調製した。特に、以下について調べた:1)100、200及び300WのPECVDプラズマに移送するRF電力のレベル;2)2つの処理ガス、酸素及びアルゴンの使用;3)蒸着時間の増加。表1はアルゴン雰囲気下300Wで蒸着時間を増大させて、蒸着させることによってえらえた一連のサンプルを含む。えられた関連色特性も含まれる。
【0046】
【表1】

【0047】
負荷を増やしながら前記押し込みモデルを適用してビッカース微少硬さの値を推定することによって評価した、前記被覆物の平均硬さは4.4Gpaであった。
【0048】
次に、前記サンプルを「三次元混合機(turbula)」試験と呼ばれる、低い適用負荷を用いるアブレシブ摩耗試験に供した。前記三次元混合機は三次元に沿って軌道運動を行う混合機である。当該装置で行われた試験において、懸濁研磨剤を伴う石鹸水を含有しこの中に前記サンプルが浸漬された、1l容量の容器を組み立てた。
使用した前記石鹸水は、
30容量%の既知の大きさを有するコランダム及び研磨剤粉末、
70容量%の10%石鹸水
から成る。
【0049】
コランダムの存在により摩耗作用が起こると同時に、前記石鹸水の存在により最終製品表面で起こりうる洗浄作用が刺激される。
摩耗耐性は試験の15分毎に、定期評価を行い前記サンプルの重量減少を測定することによって評価する。
【0050】
図5のグラフは種々の被覆サンプルに対する試験長さを長くして検出されアルミニウム合金製の非被覆サンプルの動向と比較した、関連する重量減少の動向を示す。前記グラフから、被覆されたサンプルは優れた摩耗耐性を示すことと、蒸着するフィルム厚さが厚くなると、当該耐性は増大することが明確に示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金製、特にダイカスト・アルミニウム合金製の部品(1)を被覆する方法であって、
−前記- washing the pre-treated parts (1) ; and部品(1)を前処理する工程;
−- washing the pre-treated parts (1) ; and前処理した前記部品(1)を洗浄する工程;及び
−前記部品(1)上に少なくとも1つの第1層(3)及び少なくとも1つの第2層(5)を蒸着する工程
を含み;
該第1層(3)は相互に比例させて変化する相対的モル分率を有する2つの成分:1)金属材料、及び任意に2)周期律表のIVA族の元素の酸化物に基づく材料の混合物から成り;該第2層(5)は相互に比例させて変化する相対的モル分率を有する2つの成分:1)周期律表のIVA族の元素の酸化物に基づく材料、及び任意に2)金属材料の混合物から成る、
前記方法。
【請求項2】
前記金属材料は鉄、ニッケル、チタン又は前記元素の合金から成るのに対して、前記Process according to claim 1, wherein the metallic material is composed of iron, nickel, titanium or an alloy of the above elements, while the material based on an oxide of an element of the Group IVA of the Periodic Table is composed of a silicon oxide.周期律表のIVA族の元素の酸化物に基づく材料はシリコン酸化物から成る、請求項1に記載の前記方法。
【請求項3】
前記2つの成分の相対的モル分率は、個々の層(3,5)の屈折率を調節するために、前記第1層(3)において、前記金属材料に関して0.1〜1の範囲の値で及び前記酸化物に基づく材料に関して対応して比例的に0.9〜0の値で変化するのに対して、前記第2層(5)において、前記金属材料に関して0〜0.9の範囲の値で及び前記酸化物に基づく材料に関して対応して比例的に1〜0.1の値で変化する、請求項1又は2に記載の前記方法。
【請求項4】
前記部品(1)に関して内部の前記第1層(3)は金属材料の優位性を示すのに対して、外部の前記第2層(5)は酸化物に基づく材料の優位性を示し、これにより、前記二層に由来する前記被覆物は実質的に反射する内部層(3)、及び透明な外部層(5)から成り、前記反射する層(3)は入射光の反射を生じ、前記透明な層(5)はその厚さが変化するとき、干渉性の異なる色を生じる、請求項3に記載の前記方法。
【請求項5】
5.前記部品を前処理する工程は、サンディング、手磨き若しくは機械研磨、ブラッシング、タンブリング又はバフ研磨によって選択的に行われる、請求項1に記載の前記方法。
【請求項6】
前記洗浄する工程は、以下の下位工程:
−表面に付着した粉塵としての汚染物質の存在を除くために、圧縮空気を吹き付ける工程;
−金属表面に未だ付着しうる油性又は油脂性汚染物質を除くために、溶媒により脱脂する工程;
−真空条件下、20〜200℃の間に含まれる温度で、密閉チャンバー中で保持する工程;
−更に、アセトン又はエチルアルコール等の、溶媒によって脱脂する工程、該工程は次の作業及び取り扱い前に金属表面に未だ付着しうる油性又は油脂性汚染物質を除去するために採用される、
を含む、請求項1に記載の前記方法。
【請求項7】
前記第1内部層(3)の厚さは、数百ナノメートル〜最大1マイクロメートルの範囲にあり、前記第1及び第2層(3,5)の全体の厚さは2ミクロン未満又は2ミクロンと等しい、請求項1に記載の前記方法。
【請求項8】
優勢な金属モル分率を有する前記第1層(3)はスパッタリング、電子ビーム、陰極アーク、熱蒸着、イオンビーム等の物理蒸着技術、PVD技術を用いる蒸着を用いてえられるのに対して、優勢な酸化物モル分率を有する前記第2層(5)はPVD蒸着技術又はプラズマ改良化学蒸着(PECVD)技術又はその他のCVD技術を用いてえられる、請求項1に記載の前記方法。
【請求項9】
アルミニウム合金製、特にダイカスト・アルミニウム合金製の部品(1)で、前記9.部品(1)は少なくとも1つの第1層(3)及び少なくとも1つの第2層(5)で被覆されており、
該第1層(3)は金属材料製の少なくとも1つの成分及び任意に周期元素表のIVA族の元素の酸化物に基づく材料製の少なくとも1つの成分から成り、該第2層(5)は周期元素表のIVA族の元素の酸化物に基づく材料製の少なくとも1つの成分及び任意に金属材料製の少なくとも1つの成分から成ることを特徴とする、前記部品(1)。
【請求項10】
前記第1層(3)において、前記金属材料の前記モル分率は0.1〜1の範囲にあり前記酸化物に基づく材料の前記モル分率は対応して比例的に0.9〜0の範囲にあるのに対して、前記第2層(5)において、前記金属材料の前記モル分率は0〜0.9の範囲にあり前記酸化物に基づく材料の前記モル分率は対応して比例的に1〜0.1の範囲にあることを特徴とする、請求項9記載の部品(1)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−522128(P2012−522128A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501511(P2012−501511)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【国際出願番号】PCT/IT2010/000073
【国際公開番号】WO2010/109505
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(506075182)ポリテクニコ ディ トリノ (5)
【出願人】(511233625)
【氏名又は名称原語表記】FONDERIE A. DOGLIONE & C. S.P.A.
【住所又は居所原語表記】VIA MARIA BRICCA 7 I‐10093 COLLEGNO (TO) (IT)
【Fターム(参考)】