説明

アルミニウム含有シリコンの精製方法

アルミニウム含有シリコンの精製方法が提供され、アルミニウム含有シリコンを加熱し、溶融アルミニウム含有シリコンを形成する工程、カルシウム、酸化カルシウム、及び炭酸カルシウムからなる群から選択されるカルシウムの供給源、及び任意でシリカを該アルミニウム含有シリコンに添加する工程と、該溶融アルミニウム含有シリコンを酸素に曝露し、精製シリコン及び副生スラグを製造する工程とを具え、該精製シリコンは前記アルミニウム含有シリコン中のアルミニウムの量より少ない量のアルミニウムを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリコン精製、及びより具体的には、アルミニウム含有シリコンを精製し、より高い純度を有するシリコンを製造することによる、こうしたシリコンの精製に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーラー用途のためのシリコンは、まず冶金グレードシリコンを溶融アルミニウムと合金し、初めは約25〜80重量%のシリコン、20〜75重量%のアルミニウム、並びにカルシウム及びホウ素のような他の不純物を含むシリコン−アルミニウム合金を製造することにより製造することができる。次にシリコン−アルミニウム合金を結晶化し、約90重量%のシリコン及び10重量%のアルミニウムを含むシリコン薄片を製造することができる。次に酸処理を用い、余分なアルミニウムをシリコン薄片から除去し、100万分の約1000〜3000重量部(ppmw)のアルミニウムを含有する精製シリコンを製造することができる。しかしながら、さらにより多くのアルミニウムをこうしたシリコンから除去し、こうしたシリコンを結晶化してソーラーグレード用途に適したシリコンを製造することができる純度を達成することが望ましくあり得る。一般的には、6N(すなわち、99.9999質量%)のシリコン純度がソーラー用途には望ましい。
【0003】
アルミニウム含有シリコンからのアルミニウムのさらなる除去の1つの選択肢は、方向性凝固である。しかしながら、こうしたプロセスは費用のかかる反復を要し、商業的に実行可能であるとは限らない場合があり得る。また、シリコンが微量のカルシウムのような他の不純物を含有する場合、精製中に除去することができるアルミニウムの量は、シリコン中のカルシウムのアルミニウムに対する比がさらなるアルミニウム除去に影響を及ぼすので、限定され得る。よって、少量のみのこれらの不純物が残る場合でも、シリコンをソーラーグレード用途に用いることができるように、余分な量のアルミニウムを除去するためのシリコンのさらなる精製をもたらす必要性が残る。
【発明の概要】
【0004】
1つの実施形態では、アルミニウム含有シリコンの精製方法は、Ca、CaO、及びCaCOからなる群から選択されるカルシウム供給源を任意でSiOとともにアルミニウム含有シリコンに添加する工程を具える。アルミニウム含有シリコンを加熱して溶融し、溶融アルミニウム含有シリコンを酸素に曝露して精製シリコン及び副生スラグを製造し、精製シリコンはアルミニウム含有シリコン中のアルミニウムの量より少ない量のアルミニウムを含有する。カルシウムの供給源、及び任意でシリカは、加熱を行う前、その間、又はその後にアルミニウム含有シリコンと組み合わせることができる。しかしながら、好適には、アルミニウム含有シリコンはカルシウムの供給源及び任意でシリカの添加前に溶融する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本明細書において示し、説明する1つ以上の実施形態による、アルミニウム含有シリコンの典型的な精製方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図面に示す実施形態は本来例示的及び典型的であり、その範囲が添付の特許請求の範囲により定義される本発明を限定することを意図しない。例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、同じ構造が同じ参照番号で表される以下の図面と併せて読むと理解することができる。
本開示の実施形態は、これに限定されないが、ソーラー用途を含む用途に用いることができる純度を有する精製シリコンを製造するためのアルミニウム含有シリコンの精製方法を提供する。具体的には、本開示の実施形態は、シリコンが微量のみの他の不純物を含有する場合でも、カルシウム、酸化カルシウム、又は炭酸カルシウムの形態のカルシウムの供給源及び酸素の添加によって、アルミニウム含有シリコンからアルミニウムを除去する方法を提供する。任意で、シリカを添加することもできる。本明細書において用いる「アルミニウム含有シリコン」の語は、100万分の約1,000〜約12,000重量部(ppmw)である初期量のアルミニウム、例えば最大10,000ppmwのアルミニウム、又は1,000ppmw〜3,000ppmwのアルミニウム、及び微量のみの他の不純物、例えば、As、B、Ca、Cr、Co、Cu、Fe、Pb、Mg、Mn、Mo、Ni、P、K、Na、Ti、V、Zn、及びZrを含むいずれかのシリコン製品を指す。本明細書において用いる「微量」とは、X線蛍光又はICP−MS(誘導結合質量分析)のような当技術分野において知られる方法により測定される、約30ppmw未満のいずれかの1つの不純物を意味する。「溶融シリコン」及び「溶融アルミニウム含有シリコン」の語は本明細書において置き換え可能に用いられ、溶融後のアルミニウム含有シリコン材料を指す。本明細書において用いる「精製シリコン」の語は、処理後の、初期アルミニウム含有シリコン中のアルミニウムの量より少ないアルミニウム含有量を有するシリコン指す。
【0007】
カルシウムの供給源、又はカルシウム供給源及びシリカの混合物を酸素とともにアルミニウム含有シリコンに添加することにより、初期アルミニウム不純物の少なくとも一部を含有する分離可能な副生スラグが製造される。本明細書において用いる「副生スラグ」の語は、以下により詳しく説明するように、精製中に溶融アルミニウム含有シリコンから分離される、不純物を含有する副産物を指す。本方法は、微量のみの他の不純物とともに、初期アルミニウム含有シリコン中のアルミニウムの量より少ない量のアルミニウムを有する精製シリコンの製造をもたらす。驚くべきことに、精製中のアルミニウム含有シリコンへのカルシウムの添加は、精製シリコン製品中のカルシウムの量のたいした増加はもたらさない。微量のカルシウムが精製シリコン製品中に見られるだけである。さらに、精製プロセスは、精製シリコン製品のホウ素(B)含有量の最大約12重量%、一般的には約5〜12重量%の低減をもたらす。一般的には、精製シリコン中に含有されるアルミニウムの量は約10〜約100ppmwを含み、好適には約50ppmw未満である。
【0008】
図1を参照すると、典型的な精製方法10はアルミニウム含有シリコンの精製シリコンへの精製をもたらす。精製方法10は一般的には、溶融アルミニウム含有シリコンを得る工程、例えば酸処理シリコンアルミニウム合金を溶融する工程を具える。アルミニウム含有シリコンは、当技術分野において知られる種々のプロセス又は方法によって製造又は供給することができる。例えば、シリコン及びアルミニウムは、上述ように合金、結晶化及び酸処理する、当業者が理解するその他の方法から製造する、又はあるいは市販の供給源から購入することができる。1つの具体的の実施形態では、アルミニウム含有シリコンは、最大12,000ppmwの初期量のアルミニウム及び微量のみの他の不純物からなるシリコン薄片を含む。代替の実施形態では、アルミニウム含有シリコンは、シリコン中のアルミニウムの初期量が12,000ppmw以下であり、シリコンが微量のみの他の不純物を含有する限り、これらに限定されないが、インゴット、ショット又はチップのような、他の形態を含むことができる。シリコン中のアルミニウムの初期量は、例えば、精製シリコン中のアルミニウムの量を低減するために精製方法10を繰り返し、複数回行うかどうかのように、精製方法10全体に影響を及ぼす。
【0009】
1つの実施形態では、アルミニウム含有シリコンは誘導炉に直接供給することができる。工程100において、アルミニウム含有シリコンを次に加熱し、溶融シリコンを形成する。工程100中、シリコンを溶融状態まで還元するのに十分ないずれかの温度までシリコンを加熱することができる。例えば、1つの実施形態では、シリコンは1400℃〜1700℃、1500℃〜1600℃、又は約1550℃の温度まで加熱することができる。当業者が理解するように、加熱温度は工程100を通して変化し得る。よって、アルミニウム含有シリコンを約1550℃の温度まで加熱するという場合、実際の温度は変動し得、上記温度で一定に保たれないことがあり得ると理解すべきである。さらに、アルミニウム含有シリコンを加熱する温度は、精製方法10におけるその後の工程中の所望の温度によって決まり得る。例えば、精製方法10のその後の工程において、高温ではなく低温(例えば、約1500℃未満の温度)を用いることが好ましくあり得る場合、工程100においてアルミニウム含有シリコンを加熱する温度は、その後の工程について予想される熱損失を考慮に入れることができる。よって、アルミニウム含有シリコンを溶融し、溶融シリコンとするのに用いられる実際の温度は、部分的には、精製方法10全体のその後の工程について予想される熱損失及び所望の温度の両方によって決まり得る。
【0010】
工程100におけるアルミニウム含有シリコンの加熱及び溶融は種々の方法で達成することができる。例えば、1つの実施形態では、シリコンは誘導炉、抵抗炉、又は当技術分野においてシリコンを加熱及び溶融するのに用いられるその他の技術を用いて溶融することができる。いくつかの実施形態では、シリコンの実質的にはすべてが溶融しながら分散するように、激しい撹拌を可能にする3000未満の回転数を有する誘導炉を用いることが望ましくあり得る。別の実施形態では、アルミニウム含有シリコンはガス燃焼炉において加熱することができる。また別の実施形態では、アルミニウム含有シリコンは電気炉において加熱することができる。アルミニウム含有シリコンを溶融する働きをするその他の加熱装置を代わりに用い、シリコンを溶融してもよい。
【0011】
工程100においてアルミニウム含有シリコンを溶融状態まで加熱した後、溶融シリコンを酸素に曝露する。例えば、1つの実施形態では、工程200において溶融アルミニウム含有シリコンを取鍋に移す。取鍋は、溶融シリコンからの熱損失を低減し、溶融材料への酸素の注入を可能にする働きをするいずれかの冶金取鍋を含むことができる。1つの実施形態では、取鍋は、溶融シリコンが取鍋に入っている間に溶融シリコン中への酸素の注入を促進する働きをする、精製取鍋の上部からの多孔性プラグ又はランスを備えることができる。別の実施形態では、カバーを取鍋の上に配置し、溶融シリコンからの熱損失をさらに低減することができる。また別の実施形態では、溶融シリコン中へのガス又はガスの混合物の注入を可能にすることができるその他のコンテナ、レセプタクル又は他の貯蔵デバイスに溶融シリコンを移すことができる。
【0012】
工程200において溶融アルミニウム含有シリコンを取鍋に移した後、工程300においてカルシウムの供給源を溶融アルミニウム含有シリコンに添加する。任意で、シリカ(SiO)の供給源を添加することもできる。あるいは、溶融物を取鍋に移す前に、カルシウムの供給源、及び任意でシリカの供給源を精製取鍋の底に配置することができる。
【0013】
いずれかの1つの特定の理論に縛られることを意図することなく、カルシウムの供給源、又はカルシウムの供給源及びシリカの混合物の添加は、例えば、酸素を溶融材料中に注入することにより、溶融材料を酸素に曝露すると、副生スラグの製造によってアルミニウムの除去をもたらすと考えられる。すなわち、すべて本明細書に記載したように、適量のカルシウム供給源を溶融シリコンに添加し、溶融シリコンを所望の温度まで加熱することにより、カルシウムは溶融シリコン中に溶解成分として及び副生スラグ中に酸化物として分布すると考えられる。カルシウムの供給源は、当業者にとって容易に利用できる手段により製造する、又は市販で購入することができる。溶融アルミニウム含有シリコンに添加するカルシウムの量は、シリコン中のアルミニウムの初期量及び精製するシリコンの総重量によって決まる。
【0014】
1)溶融シリコン中のアルミニウムの初期量、及び2)副生スラグ中のアルミニウムの目標量を知ることにより、溶融シリコン中のアルミニウムの量に所望の低減をもたらすために溶融シリコンに添加するカルシウムの適量は、熱力学原理を用いて導くことができる。例えば、精製シリコン製品中の約50ppmw未満のアルミニウム含有量を達成するため、初期シリコン含有アルミニウムを約1550℃まで加熱することができ、初期アルミニウム含有量に応じて、適量のカルシウムを添加する。
【0015】
カルシウムの供給源を酸化カルシウム又は炭酸カルシウムとして添加する場合、添加される重量はカルシウムに対して適切な重量を達成するように比例計算しなければならない。任意で、シリカ(SiO)をアルミニウム含有シリコンに添加し、精製物中のアルミニウム低減を補助することができる。一般的には、アルミニウム含有シリコン材料中の約0.05〜約0.3重量%のアルミニウム濃度について、カルシウムは、アルミニウム含有シリコン材料の総重量に対して約0.05〜約3.0重量%の範囲内の量で添加することができる。添加されるカルシウムの重量%のアルミニウム含有シリコン材料中に存在するアルミニウムの重量%に対する比は、約1〜約10、約2〜約7、約3〜約6.5、及び約4.5〜約5.5である。
【0016】
さらに、シリカの添加は、初期アルミニウム含有シリコン材料中に存在するアルミニウムの量によって決まる。アルミニウム含有シリコン材料中の約0.05〜約0.3重量%のアルミニウム濃度について、シリカは、アルミニウム含有シリコン材料の総重量に対して約1.0〜約10.0重量%の範囲内の量で添加することができる。一般的には、シリカの重量%のアルミニウムの重量%に対する比は、約0〜約50、約20〜約40、約25〜約30、及び約26〜約28の範囲内となるであろう。
【0017】
1つの実施形態では、カルシウムの供給源は沈降炭酸カルシウム(CaCO)の形態で添加することができる。こうした実施形態では、炭酸カルシウムは溶融シリコンの重量パーセントとして溶融シリコンに添加する。添加される炭酸カルシウムは、溶融シリコンの重量の0.1重量%より大きい〜10重量%、1重量%〜5重量%の範囲内、又は約2.5重量%までとすることができる。上述のように、溶融シリコンに添加される炭酸カルシウムの量は、シリコン中のアルミニウムの初期レベル、副生スラグ中のアルミニウムの目標量、並びに精製シリコン中のアルミニウム及びカルシウムの所望量によって決まり得る。炭酸カルシウムは、粉末炭酸カルシウム、又は、任意で、炭酸カルシウム及びシリカの混合物をランスによって酸素、窒素、又は窒素及び酸素の混合物とともに注入することにより、溶融シリコン中に導入することができる。炭酸カルシウムとともにシリカ(SiO)の任意の添加は、所望の最終副生スラグ組成物をもたらす働きをする。
【0018】
カルシウムの供給源は、その形態(例えばカルシウム、酸化カルシウム、又は炭酸カルシウム)のいずれかで、溶融シリコンに種々の方法で添加することができる。例えば、1つの実施形態では、炭酸カルシウムを溶融シリコンのバッチに直接添加することができる。別の実施形態では、酸化カルシウムを連続的に添加することができ、酸化カルシウムの第1投入分を、酸化カルシウムの第2投入分を添加する前に、溶融アルミニウム含有シリコンと混合する。また別の実施形態では、酸化カルシウムを、工程100において加熱する前に、アルミニウム含有シリコンに添加することもできる。カルシウムの供給源はそうでなければ、いずれかの代替的な方法で、単独で又は他のカルシウム供給源若しくは任意でシリカと組み合わせて添加することができ、カルシウムは加熱工程100中に溶融シリコン中に溶解成分として実質的に分散する。
【0019】
工程300においてカルシウムの供給源及び、任意でシリカを添加した後、工程400において溶融シリコンを酸素に曝露する。
【0020】
カルシウムの供給源を溶融アルミニウム含有シリコンに添加し、それを酸素に曝露する複合効果は、より低いアルミニウム含有量を有する精製シリコン及び副生スラグの製造をもたらす。副生スラグは酸化カルシウム、酸化アルミニウム、及びシリカを含むが、精製シリコンはシリコン及び初期アルミニウム含有シリコン材料中のアルミニウムの初期量より低い量のアルミニウムを含む。さらに、精製シリコンは、初期アルミニウム含有シリコン材料中のホウ素の初期量より低い量のホウ素も含むであろう。具体的には、初めにアルミニウム含有シリコン中に存在していたアルミニウム及び他の不純物(例えばホウ素)は、副生スラグ中に存在する各成分(例えば、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、及びシリカ)の量が溶融シリコンバッチから除去されるアルミニウム及び他の不純物の結果である副生スラグの製造によって、少なくとも部分的に除去される。なお、副生スラグと精製シリコンとの間に良好な混合が起こるには、望ましくは副生スラグの融点がシリコンのそれより低くなければならない。さらに、副生スラグの密度、粘度、及び融点は、製造プロセスにおける溶融シリコンの精製度(すなわち除去されたアルミニウムの量)を予測することを可能にする。
【0021】
溶融アルミニウム含有シリコンを酸素に曝露する工程は、いずれかの利用可能な方法を用い、溶融シリコン中のアルミニウム及びカルシウムを酸化して副生スラグとする働きをするいずれかの量で、酸素を溶融シリコンに添加する工程を具え、精製シリコンが上述のように製造される。例えば、溶融シリコンを収容する取鍋が多孔性プラグを含有する場合、酸素は多孔性プラグによって導入することができる。1つの実施形態では、酸素は酸素及び窒素を含むガス状混合物として添加することができる。例えば、こうした実施形態では、ガス状混合物は、(すべて重量パーセントで)約50〜約95%の酸素及び約5〜約50%の窒素、約60〜約90%の酸素及び約10〜約40%の窒素、又は約80%の酸素及び約20%の窒素の混合物を含む。
【0022】
さらに、酸素のガス流速は、溶融シリコンの総量及び溶融シリコンの具体的な組成に応じて変わり得る。例えば、1つの典型的な方法において、320kgの溶融アルミニウム含有シリコンについてのガス流速は約5〜14Nm/hである。溶融シリコンを副生スラグ及び精製シリコンを製造するのに十分な時間酸素に曝露する。一般的には、こうした曝露は、例えば、約10分〜約120分、約30分〜約60分、又は約45分間である。
【0023】
工程400においてカルシウムの供給源を含有する溶融シリコン材料を酸素に曝露すると、副生スラグ及び精製シリコンが製造され、工程500で副生スラグを精製シリコンから分離する。副生スラグは精製シリコンの相より高密度の相からなり、精製シリコンを取鍋から注ぐと、より高密度の副生スラグが残る。別の実施形態では、精製シリコンをスクリーン又はフィルターに通し、副生スラグから分離することができる。
【0024】
部分的に初期アルミニウム含有シリコン中に存在するアルミニウムの初期量に応じて、精製方法10を繰り返し、精製シリコンからのアルミニウムのさらなる除去を達成することができる。例えば、工程600では、初期アルミニウム含有シリコン中に存在するアルミニウムの初期量を測定し、所定の閾値と比較することができる。閾値は選択することができ、精製シリコンバッチ中のアルミニウムの残量がその閾値より高い場合、精製方法10を工程610において例示するように繰り返す。しかしながら、精製シリコンバッチ中のアルミニウムの残量が(工程620において例示するように)選択された閾値以下である場合、さらなる精製は必要なく、工程700における精製シリコンは、例えば、ソーラー用途に用いることができる。1つの典型的な実施形態では、精製シリコン中の残りのアルミニウム含有量の閾値は、約10ppmw〜約100ppmw、約20ppmw〜約75ppmwの範囲内、又は約50ppmwとなるように選択することができる。
【0025】
カルシウムの供給源及び、任意でシリカを、酸素又は酸素含有ガスとともにアルミニウム含有シリコンに添加することにより、約50ppmw未満のアルミニウム及び微量のみの他の不純物を有する精製シリコンを製造することができることを理解すべきである。以下の実施例は、アルミニウムの除去のため炭酸カルシウム及び酸素をアルミニウム含有シリコン材料に添加する測定効果を示す。比較例1は、カルシウムの供給源を添加することなく、アルミニウム含有シリコンを酸素及び窒素の混合物で精製する場合、シリコンのアルミニウム含有量がたいして低下しない(すなわち、シリコンから少量のアルミニウムが除去される、又はまったく除去されない)ことを示す。実施例2及び3は、アルミニウム含有シリコンを酸素及びカルシウムの供給源(例えば、炭酸カルシウム)で精製する場合、初期アルミニウム含有シリコン材料中のアルミニウムの初期量より低い量のアルミニウムを有する精製シリコンが製造されることを示す。
【実施例】
【0026】
[比較例1]
この比較例では、アルミニウム含有シリコンをカルシウムの添加なしに精製した。まず、310kgのアルミニウム含有シリコンを溶融し、冶金取鍋中に注いだ。シリコン中のアルミニウムの初期量(すなわち、精製前のアルミニウムの量)は1054ppmwであると測定された。70重量%の酸素及び30重量%の窒素を含むガス状混合物を取鍋の底の近くに設置したプラグによって冶金取鍋中に導入した。ガス状混合物を約65分間、約14Nmの流速で注入した。精製及び副生スラグからの分離後、精製シリコン中に残るアルミニウムの量は1040ppmwであると測定された。精製前の溶融シリコンの温度は1559℃だったが、ガスを含有する酸素に曝露後の溶融シリコンの温度は1409℃だった。
【0027】
[実施例2]
第1の実施例と同様に、アルミニウム含有シリコンを出発材料として用いた。炭酸カルシウムを酸素の導入前に溶融シリコンに添加した。まず、288kgのアルミニウム含有シリコンを溶融し、冶金取鍋中に注いだ。アルミニウム含有シリコン中のアルミニウムの初期量は1920ppmwであると測定された。7kgの沈降炭酸カルシウムを次に溶融シリコン材料に添加した。80重量%の酸素及び20重量%の窒素を含むガス状混合物を取鍋の底の近くに設置したプラグによって冶金取鍋中に導入した。ガス状混合物を約45分間、約14Nmの流速で注入した。精製及び副生スラグからの分離後、精製シリコン中に残るアルミニウムの量は、1876ppmwのアルミニウムの低減のため、44ppmwであると測定された。精製前の溶融シリコンの温度は1544℃だったが、精製後の溶融シリコンの温度は1410℃だった。
【0028】
[実施例3]
第1の実施例と同様に、アルミニウム含有シリコンを出発材料として用いた。炭酸カルシウムを酸素の導入前に溶融アルミニウム含有シリコンに添加した。まず、283kgのアルミニウム含有シリコンを溶融し、冶金取鍋中に注いだ。アルミニウム含有シリコン中のアルミニウムの初期量は1275ppmwであると測定された。7kgの沈降炭酸カルシウムを次に溶融シリコン材料に添加した。80重量%の酸素及び20重量%の窒素を含むガス状混合物を取鍋の底の近くに設置したプラグによって冶金取鍋中に導入した。ガス状混合物を約45分間、約14Nmの流速で注入した。精製後、精製シリコン中に残るアルミニウムの量は、1257ppmwの低減のため、18ppmwであると測定された。精製前の溶融シリコンの温度は1557℃だったが、精製後の溶融シリコンの温度は1408℃だった。
【0029】
「具体的には」、「好適には」、「普通は」、及び「一般的には」等の語は本明細書において、請求する本発明の範囲を限定するため、又は特定の特徴が請求する本発明の構造若しくは機能にとって決定的、必須、又はかなり重要であることを示すためには用いられていないことに留意すべきである。むしろ、これらの語はただ、本発明の特定の実施形態において用いてもよく、又は用いなくてもよい代替又は追加の特徴を強調することを意図するのみである。「実質的には」及び「約」のような語は本明細書において、いずれかの量的比較、値、測定、又は他の説明によって生じ得る固有の不確定度を表すために用いられることにも留意すべきである。
【0030】
本発明を詳細に及びその具体的な実施形態への参照により説明したが、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲から逸脱することなく、変更及び変形が可能であることは明らかであるであろう。より具体的には、本発明のいくつかの態様は本明細書において好適又はとくに有利であると示されるが、本発明はこれらの好適な態様に限定されるとは限らないと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム含有シリコンを加熱し、溶融アルミニウム含有シリコンを形成する工程と、
カルシウム、酸化カルシウム、及び炭酸カルシウムからなる群から選択されるカルシウムの供給源を該アルミニウム含有シリコンに添加する工程と、
前記溶融アルミニウム含有シリコンを酸素に曝露し、精製シリコン及び副生スラグを製造する工程と、を具え、
前記精製シリコンが、前記アルミニウム含有シリコン中のアルミニウムの量より少ない量のアルミニウムを含有する、アルミニウム含有シリコンの精製方法。
【請求項2】
シリカを前記溶融アルミニウム含有シリコンに添加する工程を具える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
約1.0〜約10.0重量%のシリカが添加される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
シリカの重量%のアルミニウムの重量%に対する比が約20〜約40の範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記カルシウムの供給源が溶融前に前記アルミニウム含有シリコンに添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記シリカが溶融前に前記アルミニウム含有シリコンに添加される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記アルミニウム含有シリコン中のアルミニウムの初期量が約1,000〜約12,000ppmwである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記精製シリコン中のアルミニウムの量が約100ppmw未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
添加されるカルシウムの重量%の前記アルミニウム含有シリコン材料中に存在するアルミニウムの重量%に対する比が約1〜約10である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記カルシウムの供給源が沈降炭酸カルシウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酸素が酸素及び窒素の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物が、約60重量%〜約90重量%の酸素及び約10重量%〜約40重量%の窒素を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶融アルミニウム含有シリコンが約30分〜約100分間酸素に曝露される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記アルミニウム含有シリコンが初期量のホウ素を含み、前記精製シリコンが初期量より低い量のホウ素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記副生スラグが、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、及びシリカを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記副生スラグの融点が前記精製シリコンの融点より低い、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−521214(P2013−521214A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556137(P2012−556137)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/026483
【国際公開番号】WO2011/109296
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(513038990)ダウ コーニング シリシオ ド ブラジル インドゥストリア イ コメルシオ リミターダ (1)
【出願人】(512221418)
【Fターム(参考)】