説明

アルミニウム含有モレキュラーシーブSSZ−26の調製方法

シス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオン又はシス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオン及びトランス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンの混合物を含む構造規定剤を使用して、アルミニウム含有モレキュラーシーブSSZ−26を直接調製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年10月13日出願の仮出願第60/829,390号の利益を主張する。
【0002】
アルミニウム含有モレキュラーシーブSSZ−26の調製方法。
【背景技術】
【0003】
ゾーン(Zones)に対して1990年10月16日に発行された米国特許第4,963,337号は、ゼオライト指定されたSSZ−33を開示している。SSZ−33はホウケイ酸塩材料であり、トリシクロデカン第四級アンモニウムイオン構造規定剤(「SDA」)を使用して合成される。Zonesらに対して1990年3月20日に発行された米国特許第4,910,006号は、ゼオライト指定されたSSZ−26を開示している。SSZ−26は、その結晶骨格中にホウ素の存在を必要とせず、アルミノシリケートであることができる。それは、ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン−8,11−ジアンモニウムカチオンSDAを使用して作製される。
【0004】
SSZ−33及びSSZ−26は、同じ一連の連晶構造の仲間であり、これらは、連晶系列を含む2つの多型エンドメンバーの連晶の程度で異なる。したがって、全てのものが等しく(即ち、へテロ原子含有量及び同一性、結晶サイズ及び形態学)、2つの材料は同様の吸着及び触媒挙動を示すはずである。
【0005】
SSZ−26は、ホウケイ酸塩SSZ−33を最初に合成することにより作製することができる。しかしながら、これは、合成するために有機化学のいくつかの工程を必要とする比較的高価なSDAを必要とする。SSZ−33ホウケイ酸塩が調製され、SDAがか焼により除去されると、骨格のホウ素は、アルミニウム含有材料を必要とする場合はアルミニウムで置き換えられねばならない。これを行うために、ホウケイ酸塩はアルミニウム塩の濃縮溶液で処理される。この余分な工程は、時間、化学物質、廃棄物処理(アルミニウム溶液の)及び熱処理に関して更にコストをかけることとなる。したがって、比較的安価なSDAが使用できるのであればアルミニウム含有SSZ−26の直接合成(即ち、ホウケイ酸塩SSZ−33前駆体を必要としないもの)が好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここに、アルミニウム含有モレキュラーシーブSSZ−26は、シス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンSDAを使用して直接に(即ち、ホウ素含有モレキュラーシーブを最初に調製し、次いで、ホウ素をアルミニウムで置き換える必要なく)調製することができることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(a)(1)アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物又はこれらの混合物源、(2)アルミニウムの酸化物、又はアルミニウム並びに鉄、ガリウム、インジウム、及び/又はチタンの酸化物の混合物から選択される酸化物源、(3)ケイ素、ゲルマニウム又はこれらの混合物の酸化物から選択される酸化物源、並びに(4)シス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンSDAから水性懸濁液を調製すること、
(b)前記水性懸濁液を、モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な条件下で維持すること
を含む、アルミニウム含有モレキュラーシーブSSZ−26の調製方法が提供される。
【0008】
本発明は、また、組成が、モル比で、次の通り、
YO/X 15超
Q/YO 0.02〜0.10
2/n/YO 0.005〜0.10
(ここで、Yは、ケイ素、ゲルマニウム又はこれらの混合物であり、Xは、アルミニウム又はアルミニウム並びに鉄、ガリウム、インジウム、及び/又はチタンの混合物であり、cは1又は2であり、dはcが1である場合は2であり、又はbはcが2である場合は3若しくは5であり、Qはシス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンSDAであり、Mはアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン又はこれらの混合物であり、nはMの原子価である)である、合成された無水状態のアルミニウム含有モレキュラーシーブSSZ−26組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】か焼アルミニウム含有SSZ−26の粉末X線回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
アルミニウム含有モレキュラーシーブSSZ−26の調製方法は、
(a)アルミニウム含有モレキュラーシーブSSZ−26を形成することのできる酸化物源及びシス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンSDAから水性懸濁液を調製すること、
(b)前記水性懸濁液を、アルミニウム含有モレキュラーシーブSSZ−26の結晶を形成するのに十分な条件下で維持すること
を含む。
【0011】
本明細書で使用される「アルミニウム含有」という用語は、SSZ−26が、その結晶の表面上に単に存在しているのではなくその結晶骨格中にアルミニウム原子を有することを意味する。
【0012】
この方法は、nの原子価(即ち、1又は2)を持つアルカリ及び/又はアルカリ土類金属カチオン源(M);アルミニウムの酸化物又は鉄、ガリウム、インジウム及び/若しくはチタンの酸化物の混合物源(X);ケイ素、ゲルマニウム又はこれらの混合物の酸化物源(Y);シス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンSDA(Q);及び水から反応混合物を形成することを含み、前記反応混合物は、モル比で次の範囲:
表A
【表1】


(ここで、Yは、ケイ素、ゲルマニウム又はこれらの混合物であり、Xは、アルミニウム又はアルミニウム並びに鉄、ガリウム、インジウム、及び/又はチタンの混合物であり、aは1又は2であり、bはaが1である場合は2であり、bはaが2である場合は3であり、Qはシス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンSDAであり、Mはアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン又はこれらの混合物であり、nはMの原子価である)内の組成物を有する。
【0013】
反応混合物のためのアルミニウム酸化物の一般的な源としては、アルミネート、アルミナ、水和した水酸化アルミニウム並びにAlCl及びAl(SO等のアルミニウム化合物が挙げられる。ケイ素酸化物の一般的な源としては、シリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイドシリカ、テトラアルキルオルトシリケート、シリカ水酸化物及びヒュームドシリカが挙げられる。鉄、ガリウム、インジウム、チタン及びゲリマニウムは、これらのアルミニウム及びケイ素対応物に相当する形態で添加することができる。シリカコロイド上で安定化される3価元素も有用な試薬である。
【0014】
ゼオライト試薬源、例えば、Yゼオライト等は、アルミニウム酸化物源を与え得る。殆どの場合、ゼオライト源は、また、シリカ源を与える。ゼオライト源は、また、例えば、上で列挙された通常の源を使用して添加される追加のケイ素と一緒に、ケイ素源として使用され得る。本発明方法のためのゼオライト試薬源の使用は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、名称が「モレキュラーシーブの作製方法(Method of Making Molecular Sieves)」の、Nakagawaに対して1993年7月6日発行された米国特許第5,225,179号に更に完全に記載されている。
【0015】
アルミニウム含有SSZ−26を直接調製するために使用されるSDAは、シス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンである。このカチオンは、アルミニウム含有SSZ−26の合成に有害ではないアニオンと一体化される。そのようなアニオンの例としては、ハロゲン(例えば、塩素、臭素又はヨウ素等)、水酸化物、アセテート、スルフェート及びカルボキシレートが挙げられる。一般的に、アニオンは水酸化物である。アニオンが水酸化物である場合は、反応混合物中の水酸化物源としてのアルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物を減少又は削除することが可能であり得る。
【0016】
SDAは、また、シス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオン及びトランス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンの混合物であり得る。混合物は、30〜90重量%のシス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンと、トランス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンの残余を含み得る。何らの理論にも拘束されることなく、SSZ−26を形成するためにSDA中に存在しなければならない最少量のシス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンが存在するものと考える。シス対トランス異性体の比が低すぎると、SSZ−26は形成しない場合がある。しかしながら、幾らかの量のトランス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンは混合物中に存在することができ、その場合、トランス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンは希釈剤として単に役に立つものと考えられる。
【0017】
シス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオン及びトランス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンは次の構造を有する:
【化1】

【0018】
SDAを合成するための一般的な仕組みは、シス異性体のかなりの量(少なくとも約40%)を有するデカヒドロキノリン源を使用することである。このアミンは、次いで、ハロゲン化エチルでアルキル化されて第四級アンモニウム塩を与える。デカヒドロキノリンは、金属又は金属酸化物触媒でのキノリンの水素化により一般的に調製される。触媒の性質は最終生成物のシス/トランス比に影響を及ぼす。
【0019】
アルミニウム含有モレキュラーシーブSSZ−26を調製する際に、反応体及びSDAは水中に懸濁され又は溶解され、得られた反応混合物(一般的にゲル)は、結晶が形成されるまで高温に維持される。水熱結晶化工程中の温度は、一般的に、約100℃〜約250℃、好ましくは、約140℃〜約200℃に維持される。
【0020】
結晶化期間は、通常は約4日、一般的には約1日から約7日である。1つの実施形態では、結晶化期間は約72時間以下、例えば、約24〜約72時間である。
【0021】
水熱結晶化は、通常、加圧下で、通常、オートクレーブ中で実施され、したがって反応混合物は自己圧力に掛けられる。反応混合物は結晶化中撹拌され得る。
【0022】
結晶が形成されたら、固体生成物は標準機械的分離方法、例えば濾過等で反応混合物から分離される。結晶は水洗され、次いで、合成結晶を得るために、例えば、90℃〜150℃で、8〜24時間乾燥される。乾燥工程は大気圧又は減圧で実施することができる。
【0023】
水熱結晶化工程中、結晶は反応混合物から自然発生的に核化することができる。反応混合物は、また、結晶化を導き、促進し、同時にいずれかの望ましくない結晶相の形成をも最小化するためにSSZ−26の結晶で播種することができる。種結晶が使用される場合、一般的に、所望のゼオライトの種結晶の約0.5%〜約5.0%(反応混合物で使用されるシリカの重量を基準にして)が添加される。
【0024】
結晶性酸化物合成の分野での核化及び結晶化を制御する要因が予測不可能なことから、試薬、反応体比及び反応条件のあらゆる組合せが結晶性生成物をもたらすものではない。結晶を生成するのに有効な結晶化条件を選択することは、反応混合物に対して又は反応条件、例えば、温度及び/又は結晶化時間等に対してルーチン変更を必要とし得る。これらの変更を為すことは十分に当業者の能力内である。
【0025】
本発明方法により作製された合成ゼオライト生成物は、表IIのX線回折線を有し、合成組成物は、無水状態でのモル比で、次のもの、
YO/X 15超
Q/YO 0.02〜0.10
2/n/YO 0.005〜0.10
(ここで、Yは、ケイ素、ゲルマニウム又はこれらの混合物であり、Xは、アルミニウム又はアルミニウム並びに鉄、ガリウム、インジウム、及び/又はチタンの混合物であり、QはSDAであり、cは1又は2であり、dはcが1である場合は2であり(即ち、Xは4価である)、又はbはcが2である場合は3若しくは5であり(即ち、Xは3価又は5価である)、Mはアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン又はこれらの混合物であり、nはMの原子価(即ち、1又は2)である)を含む。好ましくは、Yはケイ素であり、Xはアルミニウムであり、Mはナトリウムである。
【0026】
一般的に、モレキュラーシーブは使用前に熱処理(か焼)される。通常、イオン交換によりアルカリ又はアルカリ土類金属(もしあれば)を除去し、それを水素、アンモニウム又はいずれかの所望の金属イオンで置き換えることが望ましい。
【0027】
通常、イオン交換によりアルカリ金属カチオンを除去し、それを水素、アンモニウム又はいずれかの所望の金属イオンで置き換えることが望ましい。モレキュラーシーブは、キレート剤、例えば、EDTA又は希酸溶液で浸出させて、シリカ/アルミナモル比を増加させることができる。モレキュラーシーブは、また、蒸気処理することができ、蒸気処理は酸からの攻撃に対して結晶格子を安定化させるのを助ける。ゼオライトは、水素化−脱水素化機能が必要とされるそれらの用途のために、水素化成分、例えば、タングステン、バナジウム、モリブデン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン等又は貴金属、例えば、パラジウム又は白金等と緊密な組合せで使用することができる。一般的な置き換えるカチオンとしては、水素及び水素前駆体、希土類金属及び元素の周期律表のIIA族、IIIA族、IVA族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VIB族及びVIII族からの金属を挙げることができる。置き換えるカチオンの中では、水素並びに希土類、Mn、Ca、Mg、Zn、Cd、Pt、Pd、Ni、Co、Ti、Al、Sn、Ga、In及びFe等の金属のカチオンが特に好ましい。
【0028】
X線粉末回折パターンは標準方法で決定された。放射線はCuKαであった。2θ(θはブラッグ角である)の関数としてのピーク面積I及び位置は相対強度から決定された。100×I/I(Iは最強線又はピークの累積強度である)及びd、即ち記録された線に相当するオングストロームでの面間隔は計算することができる。
【0029】
表IのX線回折パターンは、この開示によって作製され合成されたアルミニウム含有モレキュラーシーブSSZ−26(即ち、SDAがモレキュラーシーブから未だ除去されていない)の代表である。回折パターンでの小さな変動は、格子定数での変化による特定サンプルのシリカ対アルミナのモル比の変動に起因し得る。更に、十分に小さな結晶はピークの形及び強度に影響を及ぼし、顕著なピークの広がりにつながる。器械誤差及び個々のサンプル間の差による散乱角(2θ)測定での変動は+/−0.10度と推定される。
表I 合成されたアルミニウム含有SSZ−26
【表2】

【0030】
表IIのX線回折パターンは、この開示により作製された、無水状態でのか焼アルミニウム含有モレキュラーシーブSSZ−26の主たるピークを示す。
表II か焼アルミニウム含有SSZ−26
【表3】

【0031】
か焼は、また、回折パターンでのピークの強度並びに小さなシフトの変化をもたらし得る。種々のその他のカチオン(例えば、H又はNH等)でゼオライト中に存在する金属又はその他のカチオンを交換することにより生成されるモレキュラーシーブは、再度、面間隔での小さなシフト及びピークの相対的強度での変動が存在し得るが、本質的に同じ回折パターンを生成する。これらの小さな混乱にも拘らず、基本的な結晶格子はこれらの処理により変化しないままで残る。
【0032】
本発明方法により調製されたアルミニウム含有モレキュラーシーブSSZ−26は、炭化水素転換反応において有用である。炭化水素転換反応は化学的且つ触媒的方法であり、炭素含有化合物が、別の炭素含有化合物へ変えられる。炭化水素転換反応の例としては、接触分解、水素化分解、脱蝋、アルキル化、異性化、オレフィン及び芳香族形成反応並びに芳香族異性化及び不均化が挙げられる。
【0033】
アルミニウム含有SSZ−26は、エンジンが最初に始動した場合に、その内燃機関の排気流からのコールドスタート排気を減少させるための吸着床で使用することもできる。吸着床は、排気流中に存在する条件下で水で炭化水素を優先的に吸着する。ある時間量が経過した後、吸着床は、床が排気流から炭化水素を最早除去できなくなる温度(一般的には約150℃)に達した。即ち、炭化水素は、吸着に代わって吸着床から実際に脱着される。これは吸着床を再生して、その後のコールドスタート中に炭化水素を吸着することが出来るようにする。コールドスタート排気の減少は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Dunneに対して1992年1月7日に発行された米国特許第5,078,979号に開示されている。
【0034】
アルミニウム含有SSZ−26は、ガス流中の窒素酸化物の接触還元のために使用することができる。一般的に、ガス流は、また、酸素を、しばしばその化学量論的過剰で含有する。また、モレキュラーシーブは、窒素酸化物の還元を触媒することのできる、その中に若しくはその上に金属若しくは金属イオンを含み得る。そのような金属又は金属イオンの例としては、コバルト、銅、白金、鉄、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、ランタン、パラジウム、ロジウム及びこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
ゼオライトの存在で窒素酸化物の接触還元を行うための方法の一例は、参照により本明細書に組み込まれる、Ritscherらに対して、1981年10月27日に発行された米国特許第4,297,328号に開示されている。そこでの触媒方法は、一酸化炭素及び炭化水素の燃焼並びにガス流、例えば、内燃機関からの排気ガス中に含まれる窒素酸化物の接触還元である。使用されるゼオライトは、ゼオライト内に又はその上に触媒銅金属若しくは銅イオンの有効量を与えるために金属イオン交換され、ドープされ又は十分に負荷される。更に、この方法は、過剰の酸化剤、例えば、酸素中で実施される。
【0036】
以下の実施例は本発明を実証するものであるが限定するものではない。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
デカヒドロキノリンの合成
200mLの氷酢酸、15mLの濃硫酸及び152gのキノリン(1.18モル)を、水素流を備えた大きなステンレススチール製反応器へ添加した。次に、15gの酸化白金触媒を混合物へ添加した。次いで、反応容器を密封し、乾燥窒素で3回加圧及び減圧を行った。各減圧工程の最後で、反応容器中の圧力を大気圧より上に維持した。次いで、反応器を水素ガスで1500psiまで加圧し、次いで、2回、大気圧より少しだけ上まで減圧した。次いで、容器を1500psi水素まで加圧した。2〜3時間後に圧力は400psiまで下がったので、反応容器を水素で再度1500psiまで加圧した。更に2時間後に、圧力は約400psiまで再度下がった。容器を水素で1500psiまで再度加圧し、反応を一晩中続けた。反応の最後で圧力は約1400psiで一定であった。
【0038】
この時点で、反応器の内容物を取り出し、酸化白金触媒を濾過により除去した。次いで、約300mLの水を濾液に添加し、次いで、NaOHペレットを添加し、pH>12まで溶液に溶解した。pHの増加により水性溶液より上に有機層が観察された。次いで、有機生成物を、エチルエーテルを使用して混合物から抽出した。次いで、エーテル溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、エーテルを回転蒸発で除去して、所望のデカヒドロキノリンを得た。H及び13C液体NMRは、デカヒドロキノリン生成物が実験限界内で純粋であり、約60/40トランス/シス比の異性体を有していたことを示した。
【0039】
次に、デカヒドロキノリン生成物の画分を丸底フラスコに入れ、次いで、フラスコを、アミンが完全に凍結するまでドライアイスで冷却した。この時点で、フラスコをドライアイスから除去し、次いで、その側面を僅かに傾けた。次いで、固体の部分が解け始めた。混合物が温まった後に、2つの分離画分、即ち、フラスコの底部に集まった液体画分及びフラスコの側面上の大部分が固体の画分が形成された。固体画分は未だ僅かに湿っていた。2つの画分のNMRは、液体画分が約45/55トランス/シスであり、固体画分が約75/25トランス/シスであったことを示した。
【0040】
(実施例2)
N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムの合成
500mLの丸底フラスコ中で、33.2g(0.24モル)の液体デカヒドロキノリン画分を、228mLのメタノールと混合した。次いで、34.8gの重炭酸カリウム(0.35モル)を添加し、磁気撹拌機を、その後の工程で混合を可能とするために混合物に加えた。次に、90.2gのヨードエタン(0.58モル)を滴状添加した。混合物を室温で2時間撹拌した後、混合物を一晩中還流した。次いで、混合物を室温まで冷却し、カリウム塩を濾過により除去した。次いで、濾液を回転蒸発させてメタノール溶剤を除去した。次いで、得られた固体をクロロホルムで抽出し、クロロホルムの回転蒸発により生成物を回収した。
【0041】
次いで、残渣をイソプロパノールに溶解し、過剰のエチルエーテルの添加で生成物が固体として沈殿した。次いで、固体を濾過して集め、エチルエーテルで洗浄した。次いで、固体をアセトン中でスラリー化し、アセトンを濾過により除去した。次いで、濾液中のアセトンを回転蒸発で除去して油を得た。50mLのアセトン及び過剰のエーテルの添加で固体生成物の沈殿が起きた。固体を最少の熱メタノールに溶解し、幾らかの酢酸エチルを添加し、微量の固体が沈殿するのが観察されるまで少量のメタノールを除去するために回転蒸発させることにより生成物を再結晶化した。次いで、再結晶化を0℃で2日間行った。分離された固体画分のNMRは、アセトンに溶解しなかった固体が約100%トランスであり、アセトンから回収された成分が約80/20シス/トランスであったことを示した。これは、シス異性体がアセトンに容易に溶解し、一方、トランス異性体はアセトンでは限定された溶解度を有することを示す。
【0042】
(比較例A)
N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムの純粋トランス異性体での合成
1.1gの脱イオン水、3gの1N NaOH及び5.65gのトランスN,N−ジエチルデカヒドロキノリニウム(0.60ミリモル/g)の水酸化物溶液を、23mLのTeflonライナー中で一緒に混合した。これに、0.8gのCabosil M−5フュームドシリカ及び0.25gのゼオライトY(LZY−62)を添加した。得られたゲルを混合して均一な懸濁液を得た。次いで、Teflonライナーに蓋をして、Parrオートクレーブ内で密封した。次いで、オートクレーブを、160℃のオーブン内の回転(43rpm)スピット(spit)に取り付けた。オーブン中で7日後に、Parrボンベを取り出し、室温まで冷却した。次いで、固体を濾過により除去し、少なくとも500mLの脱イオン水で洗浄した。得られた粉末を一晩中乾燥した後、サンプルについて粉末XRD分析を行った。XRD分析は、サンプルが主にゼオライトY及びクリストバライトであったことを示した。
【0043】
(実施例3)
純粋な3:1比のシス/トランスN,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムでのSSZ−26の合成
8.96gのシス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウム(0.28ミリモル/g)の水酸化物溶液、1.39gのトランス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウム(0.60ミリモル/g)の水酸化物溶液、3gの1N NaOHを、23mLのTeflonライナーへ添加した。次いで、混合物を、幾らかの水分を蒸発させるために通気式煙フードに置いた。次いで、混合物の全量を、脱イオン水を追加して10.8gに調整した。次いで、0.80gのCabosil M−5及び0.25gのゼオライトY(LZY−62)を十分に混合して均一な懸濁液を創り出した。次いで、混合物を、比較例Aと同様に加熱した。7日後に、結晶化した固体を濾過により回収した(0.86gの生成物)。XRD分析は、生成物が純粋なSSZ−26であったことを示した。
【0044】
(実施例4)
純粋な1:1比のシス/トランスN,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムでの合成
5.98gのシス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウム(0.28ミリモル/g)及び2.80gのトランス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムが使用された以外は、実施例3の手順を繰り返した。7日後に、粉末サンプル(0.87g)を回収し、XRD分析は、生成物が純粋なSSZ−26であったことを示した。
【0045】
(比較例B)
純粋な1:3比のシス/トランスN,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムでの合成
2.99gのシス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウム(0.28ミリモル/g)及び4.19gのトランス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムが使用された以外は、実施例3の手順を繰り返した。7日後に、生成物を回収した。XRD分析は、生成物がゼオライトY及びクリストバライトであったことを示した。
【0046】
(実施例5)
純粋な38:62比のシス/トランスN,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムでのSSZ−26の合成
1リットルのTeflonライナー中に、52.7gの脱イオン水、156.4gのN,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムの80/20シス/トランス混合物(0.49ミリモル/g)の水酸化物溶液、102.5gの純粋なトランスN,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムの水酸化物溶液及び138.6gの1N NaOHを入れた。次に、36.96gのCabosil M−5を溶液と混合して均一な懸濁液を創り出した。11.8gのゼオライトY(LZY−62)を、得られたゲル中へ十分に混合し、0.82gのSSZ−26の種((4)で調製したもの)を添加した。次いで、ライナーを、パドル撹拌機を備えた1リットルのステンレススチール製反応容器内に入れ密封した。次いで、容器を、8時間の傾斜順序で室温〜170℃まで加熱した。4日後に、反応を停止し、結晶化した固体を濾過により除去し、2リットルの脱イオン水で洗浄した。粉末XRDは、サンプルが純粋なSSZ−26であったことを示した。
【0047】
(実施例6)
高SAR(SAR=46)で、純粋な38:62比のシス/トランスN,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムでのSSZ−26の合成
1リットルのTeflonライナー中に、40.4gの脱イオン水、120.0gのN,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムの80/20シス/トランス混合物(0.49ミリモル/g)の水酸化物溶液、78.6gの純粋なトランスN,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムの水酸化物溶液及び106.3gの1N NaOHを入れた。次に、30.1gのCabosil M−5を溶液と混合して均一な懸濁液を創り出した。6.8gのゼオライトY(LZY−62)を、得られたゲル中へ十分に混合し、0.63gのSSZ−26の種(実施例3で調製したもの)を添加した。次いで、ゲルを実施例5と同様に加熱した。170℃で3日後に、XRD分析は、サンプルが、石英不純物を伴うSSZ−26であったことを示した。
【0048】
本明細書の目的及び添付の特許請求の範囲に対しては、別途指示されない限り、量、パーセンテージ又は割合を表す全ての数字並びに本明細書及び特許請求の範囲で使用されるその他の数値は、「約」という用語によって全ての場合において変更されるものと理解されるべきである。更に、本明細書で開示された全ての範囲は端点を含めるもので、独立に組合せができるものである。
【0049】
本出願で引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物、特許出願又は特許の開示が、その全体が参照により組み込まれることが特別に、そして個々に示されているかのような範囲までその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
本明細書は、最善の方式を含めて本発明を開示するため、そしてまた、本発明を作製し且つ使用することをいずれの当業者にも可能とするために実施例を使用する。上で開示された本発明の例示的実施形態の多数の変更は当業者には容易に思い浮かぶであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入る全ての構造及び方法を含むものと解釈されるべきである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(1)アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物又はこれらの混合物源、(2)アルミニウムの酸化物、又はアルミニウム並びに鉄、ガリウム、インジウム、及び/又はチタンの酸化物の混合物から選択される酸化物源、(3)ケイ素、ゲルマニウム又はこれらの混合物の酸化物から選択される酸化物源、並びに(4)シス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンを含む構造規定剤から水性懸濁液を調製すること、
(b)前記水性懸濁液を、モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な条件下で維持すること
を含む、アルミニウム含有モレキュラーシーブSSZ−26の調製方法。
【請求項2】
前記水性懸濁液が、モル比で、次のもの、
YO/X 15〜100
OH/YO 0.10〜1.0
Q/YO 0.05〜0.50
2/n/YO 0.05〜0.40
O/YO 10〜70
(ここで、Yは、ケイ素、ゲルマニウム又はこれらの混合物であり、Xは、アルミニウム又はアルミニウム並びに鉄、ガリウム、インジウム、及び/又はチタンの混合物であり、aは1又は2であり、bはaが1である場合は2であり、bはaが2である場合は3であり、Qはシス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンを含み、Mはアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン又はこれらの混合物であり、nはMの原子価である)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性懸濁液が、モル比で、次のもの、
YO/X 20〜50
OH/YO 0.30〜0.80
Q/YO 0.10〜0.30
2/n/YO 0.075〜0.30
O/YO 25〜50
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記構造規定剤が、シス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオン及びトランス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物が、約30〜約90モル%のシス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Qが、シス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオン及びトランス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンの混合物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物が、約30〜約90モル%のシス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
Qが、シス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオン及びトランス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンの混合物を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物が、約30〜約90モル%のシス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
Yがケイ素であり、Xがアルミニウムである、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記モレキュラーシーブのアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、又は両方を、少なくとも一部分、イオン交換により、水素及び水素前駆体、希土類金属、並びに元素の周期律表のIIA族、IIIA族、IVA族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VIB族及びVIII族からの金属から成る群から選択されるカチオン又はカチオンの混合物で置き換えることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記置き換えるカチオンが水素又は水素前駆体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
組成が、モル比で、次の通り、
YO/X 15超
Q/YO 0.02〜0.10
2/n/YO 0.005〜0.10
(ここで、Yは、ケイ素、ゲルマニウム又はこれらの混合物であり、Xは、アルミニウム又はアルミニウム並びに鉄、ガリウム、インジウム、及び/又はチタンの混合物であり、cは1又は2であり、dはcが1である場合は2であり、又はbはcが2である場合は3若しくは5であり、Qはシス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンを含み、Mはアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン又はこれらの混合物であり、nはMの原子価である)である、合成された無水状態のアルミニウム含有モレキュラーシーブSSZ−26組成物。
【請求項14】
Yがケイ素であり、Xがアルミニウムである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
Qが、シス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオン及びトランス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンの混合物を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記混合物が、約30〜約90モル%のシス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムカチオンを含む、請求項15に記載の組成物。


【図1】
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【公表番号】特表2010−506812(P2010−506812A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532579(P2009−532579)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/081114
【国際公開番号】WO2008/046007
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】