説明

アルミニウム基材、ロール金型、複数の突起を表面に有する部材および反射防止機能を有する物品

【課題】軸方向の長さが800mm以上であっても、外周面におけるウェルドラインが目立たず、かつ陽極酸化アルミナの複数の細孔を転写した部材にウェルドライン由来の痕を発生させにくいロール金型;該ロール金型を得ることができるアルミニウム基材;ロール金型の表面の複数の細孔を転写して製造された、複数の突起を表面に有する部材であって、ロール金型の外周面のウェルドライン由来する外観不良が抑えられた部材;および、該部材からなる反射防止フィルムを用いた、反射防止機能を有する物品を提供する。
【解決手段】軸方向の長さLが800mm以上であり、外径Dが280〜550mmであり、肉厚Tが20〜50mmである中空円柱状のアルミニウム基材10を用いて、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナがアルミニウム基材10の外周面に形成された中空円柱状のロール金型を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナがアルミニウム基材の外周面に形成された中空円筒状のロール金型の製造に用いられる中空円筒状のアルミニウム基材;該アルミニウム基材を用いて製造されたロール金型;該ロール金型を用いて製造された、複数の突起を表面に有する部材;該部材からなる反射防止フィルムを用いた、反射防止機能を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
規則的に配置された微細な凸部(突起等)およびまたは凹部(細孔等)からなる微細凹凸構造(例えば、モスアイ構造)を表面に有する部材は、微細凹凸構造において連続的に屈折率が変化することによって、反射防止性能を発現することが知られている。微細凹凸構造を表面に有する部材が良好な反射防止性能を発現するためには、微細凹凸構造において隣り合う凸部または凹部の間隔が可視光の波長以下である必要がある。また、微細凹凸構造を表面に有する部材は、ロータス効果によって超撥水性能を発現することも可能である。
【0003】
微細凹凸構造を形成する方法としては、例えば、下記の方法等が提案されている。
(i)微細凹凸構造の反転構造が表面に形成された金型を用いて射出成形やプレス成形を行う方法。
(ii)微細凹凸構造の反転構造が表面に形成された金型と透明基材との間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を配し、活性エネルギー線の照射によって活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させることによって金型の反転構造が転写された表層を形成した後、微細凹凸構造を有する表層から金型を剥離する方法。
(iii)微細凹凸構造の反転構造が表面に形成された金型を活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に押し付けて、金型の反転構造を活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に転写した後、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から金型を剥離し、活性エネルギー線の照射によって活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させことによって微細凹凸構造を有する表層を形成する方法。
【0004】
(i)〜(iii)の方法のうち、微細凹凸構造の転写性、表面組成の自由度を考慮すると、(ii)の方法が好ましい。(ii)の方法は、連続生産が可能なベルト状やロール状の金型を用いる場合に特に好適であり、生産性に優れた方法である。生産性に優れた方法として、ロール・トゥ・ロール方式は公知である。ロール・トゥ・ロール方式によれば、プリズムシートのようなミクロンオーダーの微細凹凸構造や、回折格子、モスアイ構造等のようなサブミクロンオーダーの微細凹凸構造の転写が可能である。また、ロール・トゥ・ロール方式によれば、シームレスで微細凹凸構造の転写が可能である。
【0005】
ロール・トゥ・ロール方式の金型としては、例えば、下記の金型が挙げられる。
(1)レンズ部転写パターンが外周面に形成された、レンズシート製造用のロール金型(特許文献1)。
(2)押出成形によって製造された中空円柱状のアルミニウム基材の外周面に、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが形成された中空円柱状のロール金型(特許文献2)。
(3)鍛造、切削によって製造された中空円柱状のアルミニウム基材の外周面に、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが形成された中空円柱状のロール金型(特許文献3)。
【0006】
ところで、微細凹凸構造を表面に有する部材の1種である、反射防止フィルムが適用される用途としては、各種ディスプレイが挙げられる。各種ディスプレイの中でも、民生用テレビは近年大型化傾向にあり、定番サイズは32インチ型になりつつある。テレビの大型化に伴い、金型にも長尺のものが望まれている。金型のサイズはテレビのサイズによって適宜設計されるべきものであるが、軸方向の長さが800mm以上のロール金型が必要となるであろう。
【0007】
しかしながら、(3)のロール金型の場合、鍛造によって軸方向の長さが800mm以上のアルミニウム基材を得ることが難しく、また、中空円柱状への加工も難しい、という問題がある。よって、軸方向の長さが800mm以上の中空円柱状のアルミニウム基材を製造する場合は、(2)のロール金型のように、押出成形による製造が適している。
【0008】
押出成形の方法としては、ポートホールダイスを用いた押出成形が一般的である。押し出される金属は、ポート部において分離され、チャンバー部で再度結合してウェルド部を形成することによって、中空円柱状に成形される。その際、金属の組成や押出条件によってウェルドラインが外周面に残る場合がある。
【0009】
ウェルドラインを目立たなくするための技術も検討されており、例えば、ダイス形状を工夫する方法(特許文献4)等が知られている。また、中空円柱状のアルミニウム基材の外径が小さいほど、ウェルドラインは残りにくい。しかしながら、外径が小さくなれば、外周は短くなる。サブミクロンオーダーの微細凹凸構造(モスアイ構造等)を連続転写する場合、ロール金型の磨耗は避けられないため、外周を長くして、生産効率を向上させる必要がある。ただし、外径が大きくなるほど、ウェルドラインは残りやすい。
【0010】
アルミニウム基材の組成や押出条件の最適化によって、一見、ウェルドラインのない中空円柱状のアルミニウム基材を得ることは可能である。しかしながら、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナを形成するために、アルミニウム基材の外周面を陽極酸化した場合、ウェルドラインが顕著になったり、ロール金型ではウェルドラインが判別できなくても、ロール金型の微細凹凸構造を転写した部材(反射防止フィルム等)にウェルドライン由来の痕が残ったりすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−250237号公報
【特許文献2】特開2010−188731号公報
【特許文献3】特開2010−222629号公報
【特許文献4】特開平9−271834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、軸方向の長さが800mm以上であっても、外周面におけるウェルドラインが目立たず、かつ陽極酸化アルミナの複数の細孔を転写した部材にウェルドライン由来の痕を発生させにくいロール金型;該ロール金型を得ることができるアルミニウム基材;ロール金型の表面の複数の細孔を転写して製造された、複数の突起を表面に有する部材であって、シームレスであり、大面積であり、かつロール金型の外周面のウェルドライン由来する外観不良が抑えられた部材;および、該部材からなる反射防止フィルムを用いた、反射防止機能を有する物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のアルミニウム基材は、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナがアルミニウム基材の外周面に形成された中空円柱状のロール金型の製造に用いられる中空円柱状のアルミニウム基材であって、軸方向の長さが800mm以上であり、外径が280〜550mmであり、肉厚が20〜50mmであることを特徴とする。
【0014】
アルミニウム基材のアルミニウム純度は、94.5〜99.5質量%であることが好ましい。
アルミニウム基材のマグネシウムの含有量は、0.1〜3質量%であることが好ましい。
【0015】
本発明のロール金型は、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが、本発明のアルミニウム基材の外周面の少なくとも一部に形成されたものであることを特徴とする。
本発明の、複数の突起を表面に有する部材は、本発明のロール金型の表面の複数の細孔を転写して製造されたものであることを特徴とする。
本発明の、複数の突起を表面に有する部材は、反射防止フィルムであることが好ましい。
本発明の、反射防止機能を有する物品は、本発明の部材からなる反射防止フィルムを用いたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアルミニウム基材によれば、軸方向の長さが800mm以上であっても、外周面におけるウェルドラインが目立たず、かつ陽極酸化アルミナの複数の細孔を転写した部材にウェルドライン由来の痕を発生させにくいロール金型を得ることができる。
本発明のロール金型は、軸方向の長さが800mm以上であっても、外周面におけるウェルドラインが目立たず、かつ陽極酸化アルミナの複数の細孔を転写した部材にウェルドライン由来の痕を発生させにくい。
本発明の、複数の突起を表面に有する部材は、シームレスであり、大面積であり、かつロール金型の外周面のウェルドライン由来する外観不良が抑えられたものとなる。
本発明の、反射防止機能を有する物品は、ロール金型の外周面のウェルドライン由来する外観不良が抑えられたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のアルミニウム基材の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明のロール金型の製造工程を示す断面図である。
【図3】本発明の、複数の突起を表面に有する部材の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の、複数の突起を表面に有する部材の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明の、複数の突起を表面に有する部材の製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】本発明のロール金型が固定されるマンドレルの一例を示す斜視図である。
【図7】図6におけるVII−VII断面図である。
【図8】本発明のロール金型にマンドレルが挿入された様子を示す断面図である。
【図9】マンドレルを拡径して本発明のロール金型を固定した様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<アルミニウム基材>
図1は、本発明のアルミニウム基材の一例を示す斜視図である。
アルミニウム基材10は、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナがアルミニウム基材10の外周面に形成された中空円柱状のロール金型の製造に用いられる中空円柱状のものであって、陽極酸化アルミナが形成される被加工面を有する。
被加工面とは、ロール金型の外周面を透明基材の表面に転写する際に透明基材に接触する面であり、アルミニウム基材の外周面の一部または全面に形成される。
【0019】
(形状)
アルミニウム基材10には、ロール金型とした際に、外周面におけるウェルドラインが目立たず、かつ陽極酸化アルミナの複数の細孔を転写した部材にウェルドライン由来の痕を発生させないことが求められる。軸方向の長さLが800mm以上のアルミニウム基材10を製造する場合、ウェルドライン由来の痕が残りやすくなるが、アルミニウム基材10を特定の形状とすることで、ウェルドラインを目立たなくすることが可能となる。すなわち、外径Dを280〜550mm、肉厚Tを20〜50mmにすることが重要である。
【0020】
アルミニウム基材10の軸方向の長さLは、800mm以上である。アルミニウム基材10の軸方向の長さが800mm以上であれば、最終的に、シームレスであり(継ぎ目がなく)、かつ大面積である複数の突起を表面に有する部材(反射防止フィルム等)が得られる。
【0021】
アルミニウム基材10の外径Dは、被加工面における外径である。例えば、アルミニウム基材10の端部に外径が小さくされた部分(被加工面ではない部分)がある場合、この部分の外形は280mm未満であってもよい。
【0022】
アルミニウム基材10の外径Dが280mm以上であれば、軸方向の長さLが800mm以上の中空円柱状にした場合に、自重によるたわみを小さく抑えることができる。また、アルミニウム基材10の外周も十分長くなり、複数の突起を表面に有する部材(反射防止フィルム等)を数万m単位で製造する場合に、ロール金型の磨耗を抑えることができる。アルミニウム基材10の外径Dが550mm以下であれば、ハンドリング性も良好であり、また、アルミニウム基材10の外周の全面に陽極酸化アルミナを均一に形成できる。また、ウェルドラインが出にくくなる。アルミニウム基材10の外径Dは、300〜500mmが好ましく、350〜450mmがより好ましい。
【0023】
アルミニウム基材10の肉厚Tは、被加工面におけるロール金型の外径と内径との差である。例えば、アルミニウム基材10の端部に外径および肉厚が小さくされた部分(被加工面ではない部分)がある場合、この部分の肉厚は20mm未満であってもよい。
【0024】
アルミニウム基材10の肉厚Tが20mm以上であれば、複数の突起を表面に有する部材(反射防止フィルム等)を製造する際や、ロール金型の外周面を切削して、ロール金型を再利用する場合にも、十分な機械的強度を確保することができる。アルミニウム基材10の肉厚Tが50mm以下であれば、重くなりすぎず、ハンドリング性も維持でき、また、自重によるたわみも小さく抑えられる。アルミニウム基材10の肉厚Tは、30〜50mmが好ましく、30〜40mmがより好ましい。肉厚Tが30mmよりも薄いと、溶融押出後の冷却が速く、ウェルドラインが残りやすくなる場合がある。また、肉厚Tが50mmよりも厚すぎると、接合部の組成が変わりやすく、陽極酸化した場合に周辺部と外観に差が出やすくなる場合がある。
【0025】
アルミニウム基材10をこのような形状にすることによって、アルミニウム基材10の外周面に陽極酸化しても、ウェルドラインに由来する筋は出にくくなり、最終的に得られる複数の突起を表面に有する部材(反射防止フィルム等)にもウェルドライン由来の痕を残すことが回避できる。
【0026】
(組成)
アルミニウム基材10のアルミニウム純度は、94.5〜99.5質量%が好ましい。アルミニウム純度が94.5質量%以上であれば、アルミニウム以外の元素が少なくなるため、陽極酸化の制御が容易となり、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナを被加工面の全面に形成しやすい。アルミニウム純度が99.5質量%以下であれば、金属間化合物が適度に存在するようになり、粗い凹凸構造を十分に形成でき、また、最終的に得られる複数の突起を表面に有する部材(反射防止フィルム等)に防眩性を付与できる。
【0027】
アルミニウム基材10のマグネシウムの含有量は、0.1〜3質量%が好ましい。 マグネシウムの含有量が0.1〜3質量%であれば、押出成形によってアルミニウム基材10を製造しても、ウェルドラインが発生しにくくなる。
【0028】
アルミニウム基材10(100質量%)中に含まれる、製造上不可避的微量成分の含有量としては、ケイ素の含有量が0.4質量%以下であり、鉄の含有量が1.0質量%以下であり、銅の含有量が0.2質量%以下であることが好ましい。製造上不可避的微量成分の含有量が多すぎると、陽極酸化によって細孔が形成されない部分ができ、最終的に得られる複数の突起を表面に有する部材(反射防止フィルム等)の反射率が十分に低くならない等、性能上の問題が発生する場合がある。
【0029】
(製造方法)
アルミニウム基材10の製造方法としては、ポートホールダイスを用いた押出成形、アルミニウム板を加熱・湾曲させ、摩擦撹拌接合法で円筒状に溶接する方法等、溶融押出成形によって中空円柱状に成形する方法が挙げられる。成形後、研磨等によって外周面を鏡面化することが好ましい。外周面を鏡面化する方法としては、機械研磨、羽布研磨、化学的研磨、電気化学的研磨(電解研磨等)等の方法が挙げられる。
【0030】
(作用効果)
以上説明した本発明のアルミニウム基材にあっては、外径Dが280〜550mmであり、肉厚Tが20〜50mmであるため、軸方向の長さLが800mm以上であるにも関わらず、外周面におけるウェルドラインが目立たず、かつ陽極酸化アルミナの複数の細孔を転写した部材にウェルドライン由来の痕を発生させにくいロール金型を得ることができる。
【0031】
<ロール金型>
本発明のロール金型は、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが、本発明のアルミニウム基材の外周面の少なくとも一部(好ましくは被加工面の全面)に形成されたものである。
【0032】
(形状)
ロール金型の軸方向の長さは、800mm以上である。ロール金型の軸方向の長さが800mm以上であれば、シームレスであり(継ぎ目がなく)、かつ大面積である複数の突起を表面に有する部材(反射防止フィルム等)が得られる。
【0033】
ロール金型の外径は、280〜550mmである。ロール金型の外径が280mm以上であれば、自重によるたわみを小さく抑えることができる。また、ロール金型の外周も十分長くなり、複数の突起を表面に有する部材(反射防止フィルム等)を数万m単位で製造する場合に、ロール金型の磨耗を抑えることができる。ロール金型の外径が550mm以下であれば、ハンドリング性も良好である。また、ウェルドラインが目立たない。ロール金型の外径は、300〜500mmが好ましく、350〜450mmがより好ましい。
【0034】
ロール金型の肉厚は、20〜50mmである。ロール金型の肉厚が20mm以上であれば、複数の突起を表面に有する部材(反射防止フィルム等)を製造する際や、ロール金型の外周面を切削して、ロール金型を再利用する場合にも、十分な機械的強度を確保することができる。ロール金型の肉厚が50mm以下であれば、重くなりすぎず、ハンドリング性も維持でき、また、自重によるたわみも小さく抑えられる。ロール金型の肉厚は、30〜50mmが好ましく、30〜40mmがより好ましい。
【0035】
(製造方法)
本発明のロール金型は、本発明のアルミニウム基材の外周面を陽極酸化して、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナを形成することによって製造される。
【0036】
陽極酸化の前のアルミニウム基材の表面に、結晶粒界の凹凸、金属間化合物の欠落、エッチング等による粗い凹凸構造をあらかじめ形成してもよい。この場合、粗い凹凸構造を含めたアルミニウム基材の表面に複数の細孔からなる微細凹凸構造を有する陽極酸化アルミナが形成されて、粗い凹凸構造と微細凹凸構造とからなるマルチ凹凸構造を表面に有するロール金型となる。エッチングと陽極酸化とを交互に繰り返してもよい。ロール金型のマルチ凹凸構造が転写された部材は、防眩性が付与された反射防止機能を有するものとなる。
【0037】
陽極酸化の方法としては、下記の工程を順に行う方法が好ましい。
第1の酸化皮膜形成工程(a);
鏡面化されたアルミニウム基材の被加工面を電解液中、定電圧下で陽極酸化して、被加工面に酸化皮膜を形成する(以下、工程(a)とも記す。)。
酸化皮膜除去工程(b);
酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を被加工面に形成する(以下、工程(b)とも記す。)。
第2の酸化皮膜形成工程(c);
細孔発生点が形成されたアルミニウム基材の被加工面を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化して、細孔発生点に対応した細孔を有する酸化皮膜を被加工面に形成する(以下、工程(c)とも記す。)。
孔径拡大処理工程(d);
細孔の径を拡大させる(以下、工程(d)とも記す。)。
酸化皮膜成長工程(e);
細孔の径が拡大された酸化皮膜を有するアルミニウム基材の被加工面を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化する(以下、工程(e)とも記す。)。
繰り返し工程(f);
必要に応じて、孔径拡大処理工程(d)と酸化皮膜成長工程(e)とを繰り返し行う(以下、工程(f)とも記す。)。
【0038】
工程(a)〜(f)を有する方法によれば、鏡面化されたアルミニウム基材の被加工面に、開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパ形状の細孔が周期的に形成され、その結果、複数の細孔からなる微細凹凸構造を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロール金型を得ることができる。
【0039】
工程(a)の前に、アルミニウム基材の被加工面の酸化皮膜を除去する前処理を行ってもよい。酸化皮膜を除去する方法としてはクロム酸/リン酸混合液に浸漬する方法等が挙げられる。
また、細孔の配列の規則性はやや低下するが、ロール金型の表面を転写した材料の用途によっては工程(a)、(b)を行わず、工程(c)から行ってもよい。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0040】
工程(a):
第1の酸化皮膜形成工程(a)では、鏡面化されたアルミニウム基材の被加工面を電解液中、定電圧下で陽極酸化し、図2に示すように、アルミニウム基材10の被加工面に、細孔12を有する酸化皮膜14を形成する。
電解液としては、酸性電解液、アルカリ性電解液が挙げられ、酸性電解液が好ましい。
酸性電解液としては、シュウ酸、硫酸、これらの混合物等が挙げられる。
【0041】
シュウ酸を電解液として用いる場合、シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、陽極酸化時の電流値が高くなりすぎて酸化皮膜14の表面が粗くなることがある。
また、陽極酸化時の電圧を30〜60Vとすることによって、間隔が100nm程度の規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロール金型を得ることができる。陽極酸化時の電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にあり、間隔が可視光の波長より大きくなることがある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象が起こる傾向にあり、細孔12が壊れたり、表面が溶けて細孔12の規則性が乱れたりすることがある。
【0042】
硫酸を電解液として用いる場合、硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、陽極酸化時の電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
また、陽極酸化時の電圧を25〜30Vとすることにより、間隔が63nm程度の規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロール金型を得ることができる。陽極酸化時の電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向があり、間隔が可視光の波長より大きくなることがある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象が起こる傾向にあり、細孔12が壊れたり、表面が溶けて細孔12の規則性が乱れたりすることがある。
【0043】
工程(a)では、陽極酸化を長時間施すことで形成される酸化皮膜14が厚くなり、細孔12の配列の規則性を向上させることができるが、その際の酸化皮膜14の厚さは2.5〜30μmが好ましい。厚さが2.5μm未満では、前処理を行わずに陽極酸化した場合、金属間化合物の脱落が十分に行われない場合がある。厚さが30μm以上では、生産性が低下する。
【0044】
工程(b):
工程(a)の後、工程(a)により形成された酸化皮膜14を除去することによって、図2に示すように、除去された酸化皮膜14の底部(バリア層と呼ばれる。)に対応する周期的な窪み、すなわち細孔発生点16を形成する。
形成された酸化皮膜14を一旦除去し、陽極酸化の細孔発生点16を形成することによって、最終的に形成される細孔12の規則性を向上させることができる(例えば、益田、「応用物理」、2000年、第69巻、第5号、p.558参照。)。
【0045】
酸化皮膜14を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、アルミナを選択的に溶解する溶液によって除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
【0046】
工程(a)、(b)によって規則性を向上できる反面、アルミニウム基材10の内部に残っているウェルドラインや、金属接合部に特有の組成の偏りが外周面に出てしまう場合がある。特に、陽極酸化の電圧が高いほど、酸化皮膜14の成長は速くなるため、酸化皮膜14の除去によって、内部構造が表面に出やすくなる。工程(a)において50V以上、特に80V以上の電圧で陽極酸化を行う場合には、酸化時間を10分以下、特に3分以下にすることによって、酸化皮膜14の成長が抑えられ、工程(b)で酸化皮膜14を除去しても、上記の不具合が表面に現れないようにすることが可能である。
【0047】
工程(c):
細孔発生点16が形成されたアルミニウム基材10を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化し、再び酸化皮膜14を形成する。
工程(c)では、工程(a)と同様の条件(電解液濃度、電解液温度、化成電圧等)下で陽極酸化すればよい。
これにより、図2に示すように、円柱状の細孔12が形成された酸化皮膜14を形成できる。工程(c)においても、陽極酸化を長時間施すほど、深い細孔12を得ることができるが、例えば反射防止フィルム等の光学用の部材を製造するためのロール金型を製造する場合には、工程(c)においては0.01〜0.5μm程度の酸化皮膜14を形成すればよく、工程(a)で形成するほどの厚さの酸化皮膜14を形成する必要はない。
【0048】
工程(d):
工程(c)の後、工程(c)で形成された細孔12の径を拡大させる孔径拡大処理を行って、図2に示すように、細孔12の径を拡径する。
孔径拡大処理の具体的方法としては、アルミナを溶解する溶液に浸漬して、工程(c)で形成された細孔12の径をエッチングにより拡大させる方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。工程(d)の時間を長くするほど、細孔12の径は大きくなる。
【0049】
工程(e):
図2に示すように、再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔12の底部から下に延びる、直径の小さい円柱状の細孔12がさらに形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔12を得ることができる。
【0050】
工程(f):
工程(d)と工程(e)を繰り返す、繰り返し工程(f)によって、図2に示すように、細孔12の形状を開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパ形状にでき、その結果、周期的な複数の細孔12を有する酸化皮膜14(陽極酸化アルミナ)が表面に形成されたロール金型18を得ることができる。最後は工程(d)で終わることが好ましい。
【0051】
工程(d)と工程(e)の条件、例えば、陽極酸化の時間および孔径拡大処理の時間を適宜設定することによって、様々な形状の細孔を形成することができる。よって、ロール金型から製造しようとする部材の用途等に応じて、これら条件を適宜設定すればよい。また、このロール金型が反射防止フィルム等の反射防止部材を製造するものである場合には、このように条件を適宜設定することにより、細孔の間隔や深さを任意に変更できるため、最適な屈折率変化を設計することも可能となる。
【0052】
具体的には、同じ条件で工程(d)と工程(e)とを繰り返せば、略円錐形状の細孔が形成され、工程(d)と工程(e)の処理時間を適宜変化させることで、逆釣鐘形状の細孔や、先鋭形状の細孔等を適宜形成できる。
【0053】
工程(f)における繰り返し回数が多いほど、より滑らかなテーパ形状の細孔を形成できることから、工程(d)と工程(e)との合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の径が減少する傾向にあり、このようなロール金型から反射防止フィルム等の反射防止部材を製造した場合、その反射率低減効果が劣る可能性がある。
【0054】
このようにして製造されたロール金型は、多数の周期的な細孔が形成された結果、表面に微細凹凸構造を有するものとなる。そして、この微細凹凸構造における細孔の間隔が可視光の波長以下、すなわち400nm以下であると、ロール金型の表面の複数の細孔を転写して製造される部材における微細凹凸構造は、いわゆるモスアイ構造となり、有効な反射防止機能を発現する。
【0055】
細孔の間隔が400nmより大きいと可視光の散乱が起こるため、十分な反射防止機能は発現せず、反射防止フィルム等の反射防止部材の製造には適さない。
細孔の間隔は、細孔の中心からこれに隣接する細孔の中心までの距離である。
【0056】
ロール金型が反射防止フィルム等の反射防止部材を製造するものである場合には、細孔の間隔が可視光の波長以下であるとともに、細孔の深さは、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましく、150nm以上が特に好ましく、180nm以上が最も好ましい。
細孔の深さが50nm以上であれば、ロール金型の外周面の転写により形成された光学用途の部材の表面、すなわち転写面の反射率が低下する。
細孔の深さは、細孔の開口部から最深部までの距離である。
【0057】
また、細孔のアスペクト比(深さ/周期)は、1.0〜4.0が好ましく、1.3〜3.5がより好ましく、1.8〜3.5がさらに好ましく、2.0〜3が最も好ましい。アスペクト比が1.0以上であれば、反射率が低い転写面を形成でき、その入射角依存性や波長依存性も十分に小さくなる。アスペクト比が高いと転写面の反射率の波長依存性が小さくなり結晶粒界による色ムラも低減される傾向にある。アスペクト比が2.0以上の時にその傾向は顕著である。アスペクト比が4.0より大きいと転写面の機械的強度が低下する傾向がある。
【0058】
ロール金型の外周面には、離型が容易になるように、離型処理が施されていてもよい。離型処理の方法としては、例えば、シリコーン系ポリマーやフッ素ポリマーをコーティングする方法、フッ素化合物を蒸着する方法、フッ素系またはフッ素シリコーン系のシラン化合物をコーティングする方法等が挙げられる。
【0059】
また、以上の説明では、第2の酸化皮膜形成工程(c)の後に孔径拡大処理工程(d)および酸化皮膜成長工程(e)を実施することで、開口部から深さ方向に径が縮小する細孔を形成する場合について例示したが、工程(c)の後に必ずしも工程(d)、(e)を行わなくてもよい。その場合には、形成される細孔は円柱状となるが、このようなロール金型により製造された、複数の円柱状の突起からなる微細凹凸構造を有する部材であっても、この構造からなる層が低屈折率層として作用し、反射を低減する効果は期待できる。
【0060】
また、本発明のロール金型を原型として、ロール金型の表面の複数の細孔が転写されたレプリカを作製し、このレプリカの表面の複数の突起を転写することによって、複数の細孔を表面に有する部材を製造してもよい。また、このレプリカを原型として、レプリカの表面の複数の突起が転写されたレプリカを再度作製し、このレプリカの表面の複数の細孔を転写することによって、複数の突起を表面に有する部材を製造してもよい。レプリカの作製方法としては、例えば、原型の上にニッケル、銀等による薄膜を無電界めっき、スパッタ法等により形成し、ついでこの薄膜を電極として電気めっきを行って、例えばニッケルを堆積させた後、このニッケル層を原型から剥離して、レプリカとする方法(電鋳法)等が挙げられる。
【0061】
(作用効果)
以上説明した本発明のロール金型にあっては、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが、特定の形状を有する本発明のアルミニウム基材の外周面に形成されたものであるため、軸方向の長さが800mm以上であるにも関わらず、外周面におけるウェルドラインが目立たず、かつ陽極酸化アルミナの複数の細孔を転写した部材にウェルドライン由来の痕を発生させにくい。
【0062】
<複数の突起を表面に有する部材>
本発明の、複数の突起を表面に有する部材は、本発明のロール金型の表面の複数の細孔を転写して製造されたものである。
【0063】
複数の突起からなる微細凹凸構造としては、モスアイ構造が挙げられる。モスアイ構造とは、蛾の目の特徴を模倣することで、表面での反射を著しく低くできる構造である。基材の表面に、可視光の波長以下の複数の突起を形成することによって、基材に入射した可視光に対する屈折率を連続的に変化させ、屈折率の不連続界面を消失させ、可視光の反射を抑えるものである。モスアイ構造に用いられる突起の形状としては、円錐形、四角錐形等の錐形体が一般的であるが、それに限定されるものではない。
【0064】
図3は、本発明の、複数の突起を表面に有する部材(以下、単に部材とも記す。)の一例を示す断面図である。
部材1は、基材2と、複数の突起3からなる微細凹凸構造を表面に有する表層4と、必要に応じて基材2と表層4の間に設けられた中間層5とを有する。
【0065】
(基材)
基材2としては、表層4を支持可能なものであればよく、部材1をディスプレイ等の反射防止フィルムに適用する場合は、光を透過する透明基材が好ましい。
透明基材の材料としては、例えば、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタラート、ポリ乳酸等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、シクロオレフィンポリマー、これら高分子の複合物(ポリメチルメタクリレートとポリ乳酸の複合物、ポリメチルメタクリレートとポリ塩化ビニルの複合物等)、ガラス、石英、水晶等が挙げられる。
【0066】
基材の形状としては、シート状、フィルム状等が挙げられる
基材の製造方法としては、例えば、射出成形、押出成形、キャスト成形等の公知の成形法が挙げられる。
透明基材の表面には、密着性、帯電防止性、耐擦傷性、耐候性等の特性の改良を目的として、コーティング処理やコロナ処理が施されていてもよい。
【0067】
(表層)
表層4は、後述する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化して形成された層であり、複数の突起3からなる微細凹凸構造を表面に有する。
微細凹凸構造は、間隔iで形成された円錐状の突起3と、突起3間の凹部6とからなる。突起3の形状は、垂直方向に直交する断面積が、頂点7側から基材2側に、連続的に増大する形状であることが、屈折率を連続的に増大させることができ、波長による反射率の変動(波長依存性)を抑制し、可視光の散乱を抑制して低反射率にできることから好ましい。
【0068】
突起3の間隔i、すなわち突起3の頂点7とこれに隣接する突起3の頂点7との距離は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下とする。凸部の間隔iが400nm以下であれば、可視光の散乱を抑制でき、反射防止フィルムとして光学用途に好適に用いることができる。
【0069】
突起3の高さh、すなわち凹部6の底点8と突起3の頂点7との垂直距離は、波長により反射率が変動するのを抑制できる深さとすることが好ましい。具体的には、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましく、150nm以上が特に好ましく、180nm以上が最も好ましい。突起3の高さhが150nm近傍では、人が一番認識し易い550nmの波長の光の反射率を最も低くすることができる。突起3の高さhが150nm以上になると、突起3の高さhが高いほど、可視光領域における最高反射率と最低反射率の差が小さくなる。このため、突起3の高さhが150nm以上になれば、反射光の波長依存性が小さくなり、目視での色味の相違は認識されなくなる。
【0070】
突起3の間隔iおよび高さhは、電界放出形走査電子顕微鏡(例えば、日本電子社製、JSM−7400F)によって加速電圧:3.00kVの画像における測定により得られる測定値の算術平均値を採用する。
【0071】
突起3は、図4に示すような、突起3の頂部が曲面である釣鐘状であってもよく、その他、垂直方向に直交する断面積が、頂点側から基材側に連続的に増大する形状を採用することができる。
微細凹凸構造は、図3および図4に示すものに限定されず、基材の片面または全面、もしくは全体または一部に形成してもよい。また、撥水性能を効果的に発現させるためには、突起の先端が細いことが好ましく、微細凹凸構造と水滴とが接触する面積ができるだけ少ないことが好ましい。
【0072】
(中間層)
中間層5は、耐擦傷性、接着性等の諸物性を向上させるための層である。
【0073】
(用途)
複数の突起を表面に有する部材の用途としては、反射防止部材(反射防止フィルム等)、防曇性部材、防汚性部材、撥水性部材、太陽電池用部材、発光素子(有機EL素子、無機EL素子、LED素子等)の光取り出し効率向上部材、光導波路、レリーフホログラム、レンズ、偏光分離素子、細胞培養シート、建材(壁、屋根等)、窓材(自動車、電車、船舶等)等が挙げられる。これらのうち、大面積化が要求される反射防止フィルムとして特に有用である。
上述した微細凹凸構造を表面に有する反射防止フィルムは、高い耐擦傷性と優れた指紋除去性等の汚染物の除去効果とを有する。
【0074】
(製造方法)
複数の突起を表面に有する部材は、複数の突起からなる微細凹凸構造を反転させた、複数の細孔からなる微細凹凸構造を有するロール金型を用いて、ロール金型の表面の複数の細孔を基材の表面に転写して製造される。ロール金型を用いる方法によって複数の突起を表面に有する部材を製造する方法によれば、簡易な方法で、かつ高い製造効率で反射防止フィルムを連続的に製造することができる。
ロール金型を用いる方法によって複数の突起を表面に有する部材を製造する場合、例えば、所望の反射防止機能を有する反射防止フィルムを製造する場合には、所望の微細凹凸構造を表面に有するロール金型を用いることが必須となる。
【0075】
複数の突起を表面に有する部材の製造方法としては、例えば、下記の方法(α)、(β)が挙げられる。
(α)ロール金型と透明基材との間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を配し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物がロール金型に接触した状態で、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させることによってロール金型の微細凹凸構造が転写された表層を形成した後、微細凹凸構造を有する表層からロール金型を剥離する方法。
(β)ロール金型と透明基材との間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を配し、ロール金型の表面の微細構造を活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に転写した後、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からロール金型を剥離し、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させることによって微細凹凸構造を有する表層を形成する方法。
【0076】
以下、(α)の方法について詳細に説明する。
図5に示すように、マンドレル20に固定されたロール金型18と、ロール金型18の回転に同期してロール金型18の外周面に沿って移動する帯状の基材2との間に、タンク24から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22を供給する。
【0077】
ロール金型18と、空気圧シリンダ26によってニップ圧が調整されたニップロール28との間で、基材2および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22をニップし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22を、基材2とロール金型18との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール金型18の微細凹凸構造の細孔内に充填する。
【0078】
ロール金型18の下方に設置された活性エネルギー線照射装置30から、基材2を通して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物22を硬化させることによって、ロール金型18の表面の微細凹凸構造が転写された表層4を形成する。
剥離ロール32により、表層4が形成された基材2をロール金型18から剥離することによって、図3または図4に示すような部材1を得る。必要に応じて、ロール金型18からの剥離後に活性エネルギー線を再度照射してもよい。
【0079】
活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)が挙げられる。
活性エネルギー線照射装置30における光源としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
活性エネルギー線の照射量は、硬化が進行するエネルギー量であればよく、通常、100〜10000mJ/cmである。
【0080】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマーを適宜含むものであり、非反応性のポリマーを含むものでもよい。また、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物であってもよい。
【0081】
また、上述のようなロール・トゥ・ロール方式を採用する場合、スリーブであるロール金型18を内側から固定し、ロール金型18を回転させるためのマンドレル20が必要となる。
マンドレル20としては、図6および図7に示すような、周方向に均等に8分割されたマンドレル本体34と、マンドレル本体34の両端から延びる回転軸36とを有するものが挙げられる。
【0082】
マンドレル20にスリーブ(ロール金型18)を装着させる手順は、まず、図8に示すように、マンドレル20をロール金型18の中空部に挿入し、その後、図9に示すように、マンドレル本体34を拡径してロール金型18の内周面に密着させる。
マンドレル本体34を膨らませる方法としては、マンドレル本体34の内部に配置された弾性袋に流体を入れ、膨らんだ弾性袋によってマンドレル本体34も膨らませる方法;マンドレル本体34を分割したラグから構成し、ラグの張出しによってマンドレル本体34を膨らませる方法等が挙げられる。
【0083】
(作用効果)
以上説明した本発明の、複数の突起を表面に有する部材にあっては、本発明のロール金型の表面の複数の細孔を転写して製造されたものであるため、ロール金型の外周面のウェルドライン由来する外観不良が抑えられたものとなる。
【0084】
<反射防止機能を有する物品>
本発明の、反射防止機能を有する物品は、本発明の部材からなる反射防止フィルムを用いたものである
反射防止機能を有する物品は、例えば、各種ディスプレイ(コンピュータ用液晶ディスプレイ、液晶テレビ、携帯電話用液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、陰極管表示装置等)、各種ディスプレイの前面板の表面および/または裏面、3D表示装置に用いられるレンチキュラーレンズシートや前面板の表面および/または裏面、タッチパネル装置の表面および/または裏面、反射防止の性能が求められる各種計器類の前面板、ミラーの表面、窓、時計文字板、太陽電池用カバーガラス、レンズ、ショーウィンドウ、眼鏡レンズ等の対象物の表面に反射防止フィルムを貼り付けたものである。
【0085】
対象物における反射防止フィルムを貼り付ける部分が立体形状である場合は、あらかじめそれに応じた形状の反射防止フィルムを作製し、これを対象物の所定部分に貼り付ければよい。また、対象物がディスプレイである場合は、その表面に反射防止フィルムを直接貼り付けてもよく、その前面板に反射防止フィルムを貼り付けてもよく、前面板そのものを本発明の複数の突起を表面に有する部材から構成してもよい。
【0086】
(作用効果)
以上説明した本発明の、反射防止機能を有する物品にあっては、本発明の部材からなる反射防止フィルムを用いたものであるため、ロール金型の外周面のウェルドライン由来する外観不良が抑えられたものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のロール金型を用いて製造された複数の突起を表面に有する部材は、シームレスであり、大面積化が可能であり、かつロール金型の外周面のウェルドライン由来する外観不良が抑えられたものであるため、近年大型化傾向にある民生用テレビ用の反射防止フィルムとして極めて有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 部材(複数の突起を表面に有する部材)
3 突起
10 アルミニウム基材
12 細孔
14 酸化皮膜(陽極酸化アルミナ)
18 ロール金型
D 外径
L 長さ
T 肉厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細孔を有する陽極酸化アルミナがアルミニウム基材の外周面に形成された中空円柱状のロール金型の製造に用いられる中空円柱状のアルミニウム基材であって、
軸方向の長さが800mm以上であり、外径が280〜550mmであり、肉厚が20〜50mmである、アルミニウム基材。
【請求項2】
アルミニウム純度が、94.5〜99.5質量%である、請求項1記載のアルミニウム基材。
【請求項3】
マグネシウムの含有量が、0.1〜3質量%である、請求項1または2に記載のアルミニウム基材。
【請求項4】
複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルミニウム基材の外周面の少なくとも一部に形成された、ロール金型。
【請求項5】
請求項4に記載のロール金型の表面の複数の細孔を転写して製造された、複数の突起を表面に有する部材。
【請求項6】
反射防止フィルムである、請求項5に記載の部材。
【請求項7】
請求項6に記載の部材からなる反射防止フィルムを用いた、反射防止機能を有する物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−7078(P2013−7078A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139361(P2011−139361)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】