説明

アルミニウム塗装材及びその製造方法

【課題】耐食性、親水性、耐汚染性、塗膜密着性及び成形性に優れたアルミニウム塗装材、ならびに、その製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム基材と、一方の面上の下地皮膜と、その上の親水性皮膜を含み、下地皮膜が、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂の少なくとも1種を含み、その付着量が0.5〜20g/mであり、親水性皮膜が、水溶性セルロース系樹脂10〜50重量%、メラミン3〜30重量%、所定の平均粒径を有するシリカ10〜50重量%、ジアルキルスルホコハク酸の塩0.05〜10重量%及びリン酸エステルの塩0.05〜10重量%を含みその付着量が0.05〜2.0g/mであり、ジアルキルスルホコハク酸の塩及びリン酸エステルの塩の存在量が、それぞれ0.001〜0.1g/mであるアルミニウム塗装材、ならびに、その製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金の基材の表面に耐食性、親水性、耐汚染性、塗膜密着性及び成形性に優れたアルミニウム塗装材、ならびに、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料の表面は親水性に乏しいため、熱交換器のフィン材や印刷の平板印刷版材には、表面に親水性皮膜が被覆されたものが使用されている。以下、空調機を例に挙げてその熱交換器のフィン材について述べる。
【0003】
最近の空調機用熱交換器は、軽量化のために熱効率の向上とコンパクト化が要求され、フィン間隔をでき得る限り狭くする設計が取り入れられている。冬季に外気温度が低い場合、長時間に渡って暖房運転を実施すると、室外機のアルミニウムフィン材の表面に空気中の水分が氷結し霜を形成しフィン材間の空気の流れが妨げられることがある。このように着霜した状態が続くと、通風抵抗が増加して暖房能力が低下するため、暖房運転を中止してフィン表面に付着した霜を取り除く必要がある。除霜運転では、室外熱交換器に高温の冷媒を流通し、霜を融解させることによりフィン間の霜をとり除いている。この間、室内機の冷媒温度が低下してしまい暖房運転ができない状態となるため、室内を暖める空気を得られなくなる。このように、本来の暖房運転ができなくなり、エネルギー効率も悪くなってしまう。このようなことから、フィン表面に付着した霜を迅速に除去する必要がある。
【0004】
フィン材表面の霜を迅速に排除するための方法として、(1)アルミニウムフィン材表面に高親水性皮膜を形成し、融解した霜を流下せしめる方法、(2)アルミニウムフィン材表面に撥水性皮膜を形成し、霜を表面に付着させないようにする方法、が挙げられる。(2)の方法では、現在のところ撥水性を維持することが困難であること、成形時に用いられる油をはじいてしまうことなど、実際に使用するには極めて困難である。一方、(1)の方法は、親水性を得るために表面に皮膜を形成するものであり、このような高親水性塗膜によって、アルミニウムフィン材表面における霜の排除が迅速に行われる。
【0005】
従来から、親水性塗膜の形成方法が種々提案され、実用化されている。例えば、接着剤とセルロース粉末との混合層を形成する方法(下記特許文献1)、ポリビニルアルコールと、重合度が異なる2種類のポリビニルピロリドンと、水可溶性ナイロンと、水可溶性フェノール樹脂と、非イオン系界面活性剤と、特定の抗菌剤とを含む親水化処理剤を用いる方法(下記特許文献2)等が挙げられている。
【0006】
しかしながら、セルロース系樹脂やポリビニルアルコール系樹脂等によって構成される有機系親水性皮膜では、大気中に漂っている汚染物が皮膜表面に付着することによって親水持続性を維持することや耐汚染性を付与することができなかった。
【0007】
また、より過酷な環境である塩害地等で使用されると、更に耐食性を向上する必要がある。そこで、高度な耐食性を付与するには、耐食性皮膜の膜厚を厚くする必要がある。従来のクロメート皮膜等の化成皮膜は薄膜であるため、化成皮膜の一部に微小な欠陥部が発生し、長期に亘る試験では欠陥部を起点に腐食が発生していた。また、成形時には化成皮膜の欠陥部が更に増大し、更に腐食を発生することになる。そこで、高度の耐食性を得るためには化成皮膜の欠陥部をなくすことが必要となるため、下地塗膜の厚膜化は必然となる。しかしながら、クロメート皮膜等の化成皮膜では、厚膜化は不可能となるため、高度の耐食性を付与することができなかった。
【0008】
そこで、耐食性皮膜として有機樹脂を適用すると、厚膜化が容易となり、十分な耐食性を保持することが可能となる。アルミニウム材の表面に、アクリル樹脂、アクリルエポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂群から選択された1種又は2種以上の組み合わせよりなる層を設け、その表面に親水性を有する層を設けた方法(下記特許文献3)等が挙げられるが、間に亘る使用環境下で用いられると耐食性皮膜に用いた有機樹脂成分の一部が親水性皮膜に溶出してしまい、親水性を阻害し親水持続性を確保できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−173632号公報
【特許文献2】特開平5−302042号公報
【特許文献3】特開2003−231977号公報
【0010】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであって、高度な耐食性を保持するための厚膜化された有機樹脂からなる下地皮膜上に親水性皮膜を形成しても親水持続性を低下せず、長期に亘る耐汚染性が確保でき、且つ、成形性を確保できるアルミニウム塗装材の開発が望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、プレコートフィン材等の熱交換器用アルミニウム材であって、耐食性、親水性、耐汚染性、塗膜密着性、成形性に優れた皮膜を設けたアルミニウム塗装材の開発について鋭意検討してきた。
【0012】
その結果、アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成した下地皮膜と、当該下地皮膜上に形成した親水性皮膜とを含み、下地皮膜が、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂の少なくとも1種を含み、親水性皮膜が、水溶性セルロース系樹脂、メラミン、シリカ、ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩、リン酸エステル及び/又はその塩、ならびに、好ましくは酸化チタン微粒子を含むアルミニウム塗装材が、耐食性、親水性、耐汚染性、塗膜密着性及び成形性のいずれにおいても優れた性能を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明は、例えば熱交換器用のプレコートアルミニウムフィン材に用いられる、耐食性、親水性、耐汚染性、塗膜密着性及び成形性に優れたアルミニウム塗装材、ならびに、その製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明は請求項1において、アルミニウム基材と、当該アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成した下地皮膜と、当該下地皮膜上に形成した親水性皮膜とを含むアルミニウム塗装材であって、前記下地皮膜が、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂の少なくとも1種を含み、当該下地皮膜の付着量が0.5〜20g/mであり、前記親水性皮膜が、水溶性セルロース系樹脂10〜50重量%、メラミン3〜30重量%、5〜100nmの平均粒径を有するシリカ10〜50重量%、ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩0.05〜10重量%及びリン酸エステル及び/又はその塩0.05〜10重量%を含み、当該親水性皮膜の付着量が0.05〜2.0g/mであり、前記親水性皮膜中に含有されるジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩の存在量が0.001〜0.1g/mであり、前記親水性皮膜中に含有されるリン酸エステル及び/又はその塩の存在量が0.001〜0.1g/mであることを特徴とするアルミニウム塗装材とした。
【0015】
本発明は請求項2において、前記ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩をジイソオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩とし、請求項3において、前記リン酸エステル及び/又はその塩をリン酸エステルモノエタノールアミン中和物とした。また請求項4において、前記メラミンをヘキサメチルメトキシメラミンとした。
【0016】
本発明は請求項5において、前記ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩と、リン酸エステル及び/又はその塩との重量比を、(ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩)/(リン酸エステル及び/又はその塩)として0.5〜2.0とした。本発明は請求項6において、前記ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩と、リン酸エステル及び/又はその塩との重量比を、(ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩)/(リン酸エステル及び/又はその塩)として0.5〜2.0とし、前記メラミンをヘキサメチルメトキシメラミンとした。
【0017】
本発明は請求項7において、前記親水性皮膜が酸化チタン微粒子1〜20重量%を更に含むものとした。また、請求項8では、前記酸化チタン微粒子が、チタン塩を含有する水溶液にアルカリ成分を加えて中和、加水分解された分散液中に分散した酸化チタン微粒子であり、かつ、0.001〜0.050μmの平均粒径を有するものとした。更に、請求項9では、前記親水性皮膜の表面から1/4までの厚さ中に存在する酸化チタン微粒子が、当該親水性皮膜全体に存在する酸化チタン微粒子の50重量%以上とした。
【0018】
本発明は請求項10において、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアルミニウム塗装材の製造方法であって、アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂の少なくとも1種を含む塗料組成物を塗布し、180〜400℃で1〜60秒間焼付けて、付着量0.5〜20g/mの下地皮膜を形成する工程と、当該下地皮膜上に、水溶性セルロース系樹脂10〜50重量部、メラミン3〜30重量部、5〜100nmの平均粒径を有するシリカ10〜50重量部、ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩0.05〜10重量部及びリン酸エステル及び/又はその塩0.05〜10重量部を含む塗料組成物を塗布し、180〜300℃で1〜60秒間焼付けて、付着量0.05〜2.0g/mの親水性皮膜を形成する工程とを含み、当該親水性皮膜中に含有されるジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩の存在量が0.001〜0.1g/mであり、当該親水性皮膜中に含有されるリン酸エステル及び/又はその塩の存在量が0.001〜0.1g/mであることを特徴とするアルミニウム塗装材の製造方法とした。
【0019】
本発明は請求項11において、前記親水性皮膜用の塗料組成物が酸化チタン微粒子1〜20重量部を更に含むものとした。また、請求項12では、前記酸化チタン微粒子が、チタン塩を含有する水溶液にアルカリ成分を加えて中和、加水分解され分散液中に分散した酸化チタン微粒子であり、かつ、0.001〜0.050μmの平均粒径を有するものとした。更に、請求項13では、前記親水性皮膜の形成工程において、親水性皮膜の表面から1/4までの厚さ中に存在する酸化チタン微粒子が、当該親水性皮膜全体に存在する酸化チタン微粒子の50重量%以上となるようにした。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るアルミニウム塗装材は、耐食性、親水性、耐汚染性、塗膜密着性及び成形性に優れ、例えば、これを用いて製造したプレコートアルミニウムフィン材を備える熱交換器は、長期に亘って優れた熱交換効率を発揮できる。また、本発明に係るアルミニウム塗装材の製造方法は、前記アルミニウム塗装材を効率良く確実に製造することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のアルミニウム塗装材の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示すように、本発明に係るアルミニウム塗装材1は、アルミニウム基材2と、当該アルミニウム基材2の少なくとも一方の表面に形成した下地皮膜3と、当該下地皮膜3上に形成した親水性皮膜4とを備える。
【0023】
A.アルミニウム基材
本発明で用いるアルミニウム基材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材である。以下において、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材を、単に「アルミニウム基材」と記す。なお、アルミニウム以外の金属を基材に用いることもできる。なお、下地皮膜を形成する前に、アルミニウム基材をアルカリ脱脂液等による脱脂処理及び/又は酸洗浄処理を行ない、次いで水洗しておくのが好ましい。
【0024】
B.下地皮膜
本発明のアルミニウム塗装材は、アルミニウム基材の少なくとも一方の面に下地皮膜を有する。下地皮膜としては、アルミニウム基材と親水性皮膜との密着性、高度な耐食性、加工時における皮膜追従性等をバランスよく取る上で、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂のうちの少なくとも1種以上から選択される樹脂を用いる。このような下地皮膜は、有機樹脂で構成されているため厚膜化が可能であり、下地皮膜の表面に親水性皮膜を形成して下地皮膜を覆うことにより、高度の耐食性を保持することができる。
【0025】
エポキシ系樹脂としては、ビスフェノール型、ノボラック型、グリシジルエーテル型などの環状脂肪族型、或いは、非環状脂肪族型などが用いられる。これらの中でも、工業的汎用性及び耐食性が良好である点から、ビスフェノール類を反応させて得られるエポキシ樹脂が好ましい。ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA等が挙げられ、1種のみを単独で使用しても、2種以上の混合物として使用してもよい。ビスフェノール類の中でも、工業的汎用性から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に制限されるものではないが、エマルジョン化が容易で、かつ、これを塗料として用いた際の防食性に優れている点から、150〜3000g/eq.であるのが好ましく、160〜1800g/eq.であるのが更に好ましい。上記エポキシ樹脂を1種用いても、又は、異なる種類のエポキシ樹脂を2種以上用いてもよい。
【0026】
溶剤型エポキシ樹脂塗料にはキシレン、トルエン等の溶剤が溶媒として用いられるが、環境負荷の増加、ならびに、溶剤残留に伴う親水性皮膜における親水性低下等の性能低下の観点から、本発明では水溶性のエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
【0027】
一般に、樹脂の水溶性化としては、低分子量樹脂を水に溶解させる完全水溶性型、界面活性剤等の乳化剤を用いるエマルジョン型等が挙げられる。エポキシ樹脂の場合にはこれらの水溶性化の他に、アクリル基等に含有されるカルボキシル基をエポキシ樹脂に付加することによっても水溶性化が達成される。
【0028】
ポリエステル系樹脂としては、公知の多塩基酸と多価アルコールの重縮合反応であるエステル化反応から製造されるポリエステル系樹脂を用いることができる。
【0029】
前記の多塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸等の芳香族二塩基酸類、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族二塩基酸類、また(無水)コハク酸、フマール酸、(無水)マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ハイミック酸等の脂肪族二塩基酸類が挙げられる。
【0030】
前記の多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、キシレングリコール等の脂肪族二価アルコール、バーサチック酸グリシジルエステル等の二価アルコール相当化合物が挙げられる。また、三価以上の多価アルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これら多価アルコールは、塗膜の硬度と可撓性とを勘案して単独又は二種以上を適宜選択すれば良い。
【0031】
ポリエステル系樹脂は、5000〜25000、好ましくは6000〜20000の数平均分子量を有するものが好適に用いられる。数平均分子量が5000未満の場合には、加工性を塗膜に付与することができない場合があり、数平均分子量が25000を超えると、塗膜形成が困難となる場合がある。また、ポリエステル系樹脂は、5〜30mgKOH/gの水酸基価を有するものが好適に用いられる。水酸基価が5mgKOH/g未満では、耐食性の低下を招く場合があり、水酸基価が30mgKOH/gを超えると、硬化密度は向上するものの、塗膜が硬くなり加工性が低下する場合がある。更に、ポリエステル系樹脂は、40〜120℃、好ましくは50〜110℃のガラス転移温度(Tg)を有するものが好適に用いられる。Tgが40℃未満では、加工性は優れるものの塗膜硬度の低下を招く場合があり、Tgが120℃を超えると、塗膜の伸びが不足することで加工性が低下する場合がある。
【0032】
溶剤型ポリエステル樹脂塗料にもキシレン、トルエン等の溶剤が溶媒として用いられるが、環境負荷の増加、ならびに、溶剤残留に伴う親水性皮膜における親水性低下等の性能低下の観点から、本発明では水性塗料を用いるのが好ましい。ポリエステル系樹脂を用いて水性塗料を調製するには、ポリエステル樹脂や硬化剤を水混和性有機溶剤に溶解させてから、水と混合して水混和性有機溶剤を含有する水性媒体中に分散させる方法等が用いられる。
【0033】
アクリル系樹脂としては、α、βモノエチレン系不飽和単量体と、これに共重合可能な単量体から形成される樹脂が用いられる。α、βモノエチレン系不飽和単量体としては、例えばアクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸2エチルへキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2エチルブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸3エトキシプロピル等)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nへキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸デシルオクチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2メチルへキシル、メタクリル酸3メトキシブチルなど)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルケトン、ビニルトルエン及びスチレンが挙げられる。
【0034】
α、βモノエチレン系不飽和単量体と共重合し得る単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、エチレン、トルエン、プロピレン、アクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸2ヒドリキシエチル、メタクリル酸2ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、Nメチロールアクリルアミドが挙げられ、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等を用いることもできる。上記アクリル系樹脂を1種用いても、又は、異なる種類のアクリル樹脂を2種以上用いてもよい。
溶剤型アクリル系樹脂塗料にはキシレン、トルエン等の溶剤が溶媒として用いられるが、環境負荷の増加、ならびに、溶剤残留に伴う親水性皮膜における親水性低下等の性能低下の観点から、本発明では水溶性のアクリル系樹脂を用いるのが好ましい。
【0035】
ウレタン系樹脂としては、分子中にウレタン結合を有するものであれば良く、主にイソシアネート化合物とポリオール類又はポリエーテルとの反応により形成されるものである。具体的には、イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4‘ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルプロパン1−メチル2−イソシアノ4−カルバメート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネートなどであり、ポリオール類、ポリエーテルの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエーテルトリオールなどが用いられる。上記ウレタン系樹脂を1種用いても、又は、異なる種類のウレタン系樹脂を2種以上用いてもよい。
溶剤型ウレタン系樹脂塗料にはキシレン、トルエン等の溶剤が溶媒として用いられるが、環境負荷の増加、ならびに、溶剤残留に伴う親水性皮膜における親水性低下等の性能低下の観点から、本発明では水溶性のウレタン系樹脂を用いるのが好ましい。
【0036】
下地皮膜の塗料には、顔料成分及び染料成分の少なくともいずれか一方を含有させることにより、高級感、色抜け防止性等を付与することができる。下地皮膜の表面に親水性皮膜を形成することによって、長期的に色調が付与される。顔料成分及び染料成分は、塗料分野で汎用に使用されているものであれば特に限定されない。顔料成分としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化クロム、硫化カドミウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、黄鉛、酸化鉄、カーボンブラック等の無機顔料;アゾ系、ジアゾ系、縮合アゾ系、チオインジゴ系、インダンスロン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ベンゾイミダゾール系、ペリレン系、ペリノン系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラピリジン系、ジオキサジン系等の有機顔料;が挙げられる。また、染料成分としては、直接染料や反応染料、酸性染料、カチオン染料、バット染料、媒染染料等が挙げられる。上記の顔料成分又は染料成分は、単独、顔料成分の2種類以上、染料成分の2種類以上、顔料成分及び染料成分のそれぞれ2種以上が含有されていてもよい。また、必要に応じて、硬化触媒、レベリング剤等の通常塗料に用いられる各種添加剤を配合することができる。
【0037】
C.親水性皮膜
本発明に用いる親水性皮膜は、親水性樹脂成分として有機物と無機物の混合系によって構成される。アルミニウム基材面に親水性皮膜は、アルミニウム基材表面又はその表面に形成した下地皮膜の表面に形成される。親水性皮膜の成分について下記に詳述する。
【0038】
C−1.水溶性セルロース系樹脂
本発明に用いる親水性皮膜は、樹脂成分として水溶性セルロース系樹脂を含有する。親水性皮膜における樹脂成分として水溶性セルロース系樹脂を用いることにより、親水持続性を確保できる。有機樹脂からなる下地皮膜上にアクリル系樹脂やポリビニルアルコール系樹脂からなる他の親水性樹脂を用いたのでは、下地皮膜からの残留した溶剤等の溶出によって親水持続性の確保が困難となる。水溶性セルロース系樹脂を用いることによって、高耐食性を保持する下地皮膜を阻害することなく、親水持続性を維持することが可能となる。
【0039】
本発明に用いる水溶性セルロース系樹脂は特に限定されるものではないが、優れた親水性を発揮するためにアルキル基を含有しないものが好ましい。このような水溶性セルロース系樹脂としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が好適に用いられる。
【0040】
本発明に用いる水溶性セルロース系樹脂の分子量は特に限定されるものではないが、5000〜700000の範囲の重量平均分子量を有しているものが好ましい。10000〜500000の範囲の重量平均分子量を有しているものが特に好ましい。重量平均分子量が5000未満では耐食性が不足し、700000を超えると成形後の密着性に悪影響を及ぼす。
【0041】
親水性皮膜中における水溶性セルロース系樹脂の含有量は、10〜50重量%である。10重量%未満では塗膜密着性を確保することができず、長期間使用すると塗膜剥離等によって親水持続性、耐汚染性を確保できなくなる。一方、50重量%を超えると、水溶性セルロース系樹脂の親水性寄与の割合が多くなり、親水持続性、耐汚染性を十分に満足することができない。
【0042】
C−2.メラミン
親水性皮膜には、水溶性セルロース系樹脂の他にメラミンも添加される。水溶性セルロース系樹脂だけでは塗膜強度が不十分となり、親水性皮膜が剥離してしまう。そこで、メラミンを更に配合することにより、親水性皮膜の強度を向上させることができる。また、塗膜密着性の低下や結露等による親水性皮膜の溶出を抑制できるので、親水持続性、耐汚染性等の向上も図られる。
【0043】
本発明に用いるメラミンとしては、モノマーメラミン、ポリマーメラミンであるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂(メラミン樹脂)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。モノマーメラミンとしては、メチル化メラミン、ブチル化メラミン、イソブチル化メラミン及びこれらの混合物などのアルキル化メラミンが挙げられる。その中でもヘキサメチルメトキシメラミンは、親水性皮膜形成時の塗膜安定性に優れ、親水持続性等にも優れることから好適に用いられる。モノマーメラミンには、トリアジン核当たり平均で3個以上のメチロール基(CHOH)を含み、約2まで、好ましくは約1.1〜約1.8の範囲内の平均縮合度を有するとともに、約50重量%以上の単核化学種の割合を有する低分子量メラミンも含まれる。ここで、メチロール基は、メタノール、n−ブタノール又はイソブタノールなどのC〜C一価アルコールでエーテル化されたものである。ポリマーメラミンは、1.9を上回る平均縮合度を有するものが、好適に用いられる。
【0044】
親水性皮膜中におけるメラミン含有量は、3〜30重量%である。3重量%未満では塗膜密着性を確保することができず、親水持続性、耐汚染性も得られない。一方、30重量%を超えると、水溶性セルロース系樹脂の親水性官能基であるカルボキシル基、ヒドロキシ基等と結合してしまい、水溶性セルロース系樹脂が本来保持する親水性を低下させるので、親水持続性、耐汚染性を十分に確保することができない。
【0045】
C−3.シリカ
本発明においては、前述の水溶性セルロース系樹脂とメラミンのみからなる親水性皮膜では十分な親水性を得ることはできない。そこで、本発明では、水溶性セルロース系樹脂とメラミンの他にシリカを配合することにより、親水持続性や耐汚染性を付与することができる。シリカを親水性皮膜に添加することにより、水接触角を効果的に低下させ親水持続性や耐汚染性を付与することができる。
【0046】
本発明に用いるシリカとしては、いわゆるシリカゾル又は微粉状シリカのいずれかの粒子が挙げられる。シリカの粒子径は、5〜100nmが好ましく、10〜50nmが更に好ましい。粒子径が5nm未満であると、親水性が飽和する上に工業上の生産が困難となり不経済である。一方、100nmを超えると、親水持続性を低下させ、成形時に金型を傷付け、親水性皮膜を損傷させることがある。
【0047】
塗料を用いて、親水性皮膜を形成する場合は、通常、水分散液として供給されているものをそのまま使用するか、或いは、微粉状シリカを水に分散させて使用することができる。これらのうち、コロイダルシリカのような水分散液を塗料に分散するのが好ましい。
【0048】
親水性皮膜中のシリカ含有量は、10〜50重量%である。10重量%未満では親水持続性や耐汚染性を十分満足することができない。一方、50重量%を超えると、塗膜密着性、成形性の低下を招く。
【0049】
C−4.ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩
親水性皮膜には前記のセルロース系樹脂、メラミン、シリカだけでは十分な親水性を達できないので、これらの他にジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩を添加する。親水性皮膜にジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩を含有させることにより、組成物の分散が安定し、微小な皮膜欠陥やはじきを抑制することができ、親水性皮膜を均一に形成することができる。しかも、ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩は造膜過程における加熱による影響も受け難く、親水性皮膜中にジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩がそのまま残存することができる。また、ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩は、優れた界面活性作用を発揮して親水性を付与することが可能となる。ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩を含有すると、大気中に漂っている有機物等が皮膜表面に付着しても、耐汚染性を大幅に向上できる効果もある。
【0050】
ジアルキルスルホコハク酸としては、特に限定されるものではないが、他の成分との相溶性、親水性皮膜外への溶出性、親水性や耐汚染性が低下しないことから、ジイソオクチルスルホコハク酸が好ましい。ジアルキルスルホコハク酸の塩としては、ジイソオクチルスルホコハク酸のリチウム、ナトリウム、カリウムのアルカリ金属の塩、アンモニウム基やアミン等の塩が好適に用いられる。ジイソオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩が特に好ましい。これらジアルキルスルホコハク酸とその塩は、単独で又は両方を用いることができる。
【0051】
親水性皮膜中のジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩の含有量は、0.05〜10重量%である。0.05重量%未満では下地皮膜上に親水性皮膜を形成する際に微小な皮膜欠陥やはじきが発生する。また、親水性への寄与が不十分で、親水持続性や耐汚染性の低下を招く。一方、10重量%を超えると、下地皮膜と親水性皮膜との密着性の低下を招く上、親水性皮膜形成時に泡等が生じ、皮膜が均一に形成されない。
【0052】
また、親水性皮膜におけるジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩の存在量は、0.001〜0.1g/mとするのが好ましい。0.001g/m未満では親水性や耐汚染性を十分に発揮できない場合がある。一方、0.1g/mを超えると、下地皮膜と親水性皮膜との密着性の低下を招く上、ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩が凝縮水に溶出等する場合がある。なお、ここでいう存在量とは、乾燥状態のものである。
【0053】
C−5.リン酸エステル及び/又はその塩
親水性皮膜には、前記のセルロース系樹脂、メラミン、シリカ、ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩以外に、リン酸エステル及び/又はその塩を含有させる。このリン酸エステル及び/又はその塩とは、リン酸エステル、リン酸エステルの金属塩の少なくともいずれか一方である。親水性皮膜にリン酸エステル及び/又はその塩を含有させると、造膜時にリン酸エステル及び/又はその塩が親水性皮膜の表面にブリードアウトし、皮膜表面にリン酸エステル及び/又はその塩が濃縮された状態になる。この親水性皮膜表面に濃縮したリン酸エステル及び/又はその塩が成形時に潤滑作用を示し、割れ等の成形の不具合を抑制する。また、親水性皮膜表面に濃縮されたリン酸エステル及び/又はその塩も優れた界面活性作用を示し、親水性皮膜における親水性と耐汚染性を向上させることができる。
【0054】
リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、リン酸トリエステル、或いはその誘導体等が好適に用いられる。リン酸エステルの塩としては、ラウリルリン酸ナトリウム等の金属塩やリン酸エステルモノエタノールアミンが好適に用いられる。これらのリン酸エステルとその塩は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。これらの中でもリン酸エステルモノエタノールアミン中和物が最表面への濃縮、親水性・成形性への効果を発揮することから特に好ましい。
【0055】
親水性皮膜中におけるリン酸エステル及び/又はその塩の含有量は、0.05〜10重量%である。0.05重量%未満では親水性、成形性への効果が不十分となる。一方、10重量%を超えると、親水性皮膜と下地皮膜との密着性の低下を招く上、親水性への効果が飽和してしまう。更に、親水性皮膜形成時に泡等が生じ、皮膜が均一に形成されない。
【0056】
親水性皮膜におけるリン酸エステル及び/又はその塩の存在量は、0.001〜0.1g/mとするのが好ましい。0.001g/m未満では親水性、成形性を十分に発揮することができない場合がある。一方、0.1g/mを超えると、下地皮膜と親水性皮膜との密着性の低下を招く上、親水性の効果が飽和する場合がある。なお、ここでいう存在量とは、乾燥状態のものである。
【0057】
C−6.(ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩)/(リン酸エステル及び/又はその塩)の比
本発明に用いる親水性皮膜には、ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩とリン酸エステル及び/又はその塩を共に用いる。ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩は親水性皮膜を均一に形成するため、はじきを抑制し、均一な水濡れ性を確保し、また皮膜中に存在することにより耐汚染性を大幅に向上することができる。一方、リン酸エステル及び/又はその塩は表面に濃縮し、親水性や成形性を付与することができる。これらの成分を含有することにより、親水性や成形性に寄与する成分を表面側に、親水性皮膜自体の親水性を向上させる成分を皮膜内部に含ませることができる。その結果、初期の親水性はもちろんのこと、長期に渡る親水持続性や耐汚染性の維持も可能となる。
【0058】
親水性皮膜におけるジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩とリン酸エステル及び/又はその塩との重量比が(ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩)/(リン酸エステル及び/又はその塩)で、0.5〜2.0とすることが好ましい。0.5未満では親水性皮膜に存在するジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩の比率が少なく、十分な親水性が得られない場合がある。一方、2.0を超えると、表面に濃縮したジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩の比率が多くなり、凝縮水への溶出等が生じる。
【0059】
C−7.酸化チタン微粒子
本発明においては、更に親水性を向上させるために、親水性皮膜に酸化チタン微粒子を含有させるのが好ましい。親水性皮膜中の酸化チタン微粒子の含有量は、1〜20重量%である。1重量%未満では親水性向上の効果が少なく、20重量%を超えると成形性が低下する。酸化チタンとしては、アモルファス酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、過酸化チタンなどの一種又は任意の二種以上を組み合わせたものが用いられる。
【0060】
このような酸化チタン微粒子の製造方法としては特に制限はなく、従来の微粒子の製造法を用いることができる。例えば、塩化チタン等のハロゲン化物を焼成により高温で酸化させる方法、硫酸チタン等のチタン塩を加水分解した後、焼成する方法等が挙げられる。しかしながら、これらの製造方法では焼成工程を必要とするため、生成した酸化チタン微粒子が焼成により凝集してしまい、極微小の微粒子を得ることは困難である。
【0061】
このような焼成工程を必要とする製造方法とは異なり、塩化チタンなどのチタン塩にアルカリ成分を加えて、中和、加水分解して水溶液中にてチタンの水和酸化物を析出させ、分散液中に分散した状態のチタン水和酸化物を製造する方法を採用するのが好ましい。このような分散状態のチタン水和酸化物は、非常に微細な微粒子状である。したがって、この方法を用いることにより、予め微粒子自体を非常に細かく分散させることができ、セルロース系樹脂、メラミン、シリカ、ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩、リン酸エステル及び/又はその塩等の親水性塗料組成物の各成分と混合した際に、塗料組成物中における酸化チタン微粒子を非常に細かな分散微粒子として用いることができる。分散液中の酸化チタン微粒子の含有量は、50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。この含有量が50重量%未満では、酸化チタン微粒子の効果が少なくなってしまう。
【0062】
更に、酸化チタン微粒子には、酸化チタンのほかに皮膜中への分散性等を向上させるために他の成分を組み合わせることもできる。他の成分としては、Mg、Si、Ba、Al、Zn、Ba等の酸化物が挙げられる。これらの元素を含有させるには、チタン塩の他にこれらの元素を含有する塩を混合し、前述したのと同様にアルカリ成分を加えて、中和、加水分解して水溶液中にて水和酸化物を得る方法や、前述の方法によって予め酸化チタン微粒子を析出させておき、その後に酸化チタン微粒子表面を他の酸化物で被覆する方法が用いられる。
【0063】
上述のチタン水和酸化物、或いは、これとMg酸化物等を組み合わせたものを、水熱処理することによって高結晶性の酸化チタン粒子分散液を得ることができる。水熱処理は、酸化チタンを含有した分散液に酸、アミン又は過酸化物等を添加し耐圧容器中で80〜200℃で加熱処理するものである。耐圧容器は、オートクレーブ等を使用できる。加圧は、大気圧よりも高い圧力となれば特に制限されるものではない。好ましくは1〜16kgf/cmである。また、水熱合成処理中は撹拌を行なっても、静置状態のままでも構わない。水熱処理温度が低過ぎると結晶化が不十分となることがあり、水熱処理温度が高過ぎると効果が飽和して不経済となる。水熱処理時間を24時間以内で実施することが、工業上望ましい。
【0064】
本発明で用いる分散液に分散した酸化チタン微粒子は、平均粒径が0.001〜0.050μmとすることが好ましい。酸化チタン微粒子をこの範囲内とすることにより、親水性皮膜を形成する際に、酸化チタン微粒子が親水性皮膜の表面側に濃縮され易くなり、この表面側に酸化チタン微粒子を多く存在させることができる。具体的には、親水性皮膜の表面から1/4までの厚さ中に存在する酸化チタン微粒子が、親水性皮膜全体に存在する酸化チタン微粒子の50重量%以上とするのが好ましい。平均粒径が0.001μm未満の酸化チタン微粒子は、工業上製造することが困難である。一方、平均粒径が0.050μmを超える酸化チタン微粒子では、親水性塗料組成物を塗布、焼付けする際において、酸化チタン微粒子が親水性皮膜の表面側に移動し難く、表面側に多くの酸化チタン微粒子を含有させることができない。
【0065】
C−8.その他の添加物
本発明の親水性皮膜には、必要に応じて、タンニン酸、没食子酸、フィチン酸、ホスフィン酸等の防錆剤;ポリアルコールのアルキルエステル類、ポリエチレンオキサイド縮合物等のレベリング剤;相溶性を損なわない範囲で添加されるポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミド等の充填剤を含有することができる。
【0066】
D.下地皮膜の形成
下地皮膜をアルミニウム基材の表面に形成するには、アルミニウム材表面に下地皮膜用の液状の組成物(塗料)を塗布しこれを焼付ける。このような塗料は、上記下地皮膜成分の他に、必要に応じた上記添加剤を溶媒に溶解、分散させて調製される。このような溶媒には、各成分を溶解又は分散できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水等の水性溶媒、アセトン等のケトン系溶剤、エタノール等のアルコール系溶剤が挙げられ、その中でも水性溶媒が好ましく、水が特に好ましい。
【0067】
塗料の塗布方法としては、ロールコーター法、ロールスクイズ法、ケミコーター法、エアナイフ法、浸漬法、スプレー法、静電塗装法等の方法が用いられ、皮膜の均一性に優れ、生産性が良好なロールコーター法が好ましい。ロールコーター法としては、塗布量管理が容易なグラビアロール方式や、厚塗りに適したナチュラルコート方式や、塗布面に美的外観を付与するのに適したリバースコート方式等を採用することができる。また、皮膜の乾燥には一般的な加熱法、誘電加熱法等が用いられる。
【0068】
下地皮膜の焼付温度(到達表面温度)は在炉時間との兼ね合いもあるものの、下地皮膜の形成が開始する180℃以上で、かつ、下地皮膜の分解が顕著となる400℃以下であれば良く、好ましくは180〜300℃である。また、焼付時間は1〜60秒の条件で行うのが好ましい。下地皮膜形成開始温度である180℃未満であったり、焼付時間が1秒未満であったりする場合には皮膜が高分子化しないので耐食性が劣る場合がある。一方、焼付温度400℃を超えたり、焼付時間が60秒を超えたりする場合には皮膜成分中の熱分解成分が変性して緻密な皮膜が得られなくなる。
【0069】
なお、下地皮膜はアルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成される。下地皮膜の付着量は、0.5〜20g/mとする。0.5g/m未満では皮膜が薄過ぎるために皮膜欠陥が発生し易く、また水分が透過し易いので耐食性が劣る。一方、20g/mを超えても耐食性は飽和し、不経済となる。なお、ここでいう付着量とは、乾燥状態におけるものである。
【0070】
E.親水性皮膜の形成
親水性皮膜は、アルミニウム基材表面又はアルミニウム基材表面に形成した下地皮膜表面に親水性皮膜用の液状の組成物(塗料)を塗布し、これを焼付けることによって形成される。このような塗料は、上記の親水性皮膜成分及び必要に応じた上記添加剤を、溶媒に溶解、分散して調製される。このような溶媒には、下地皮膜に用いられる溶媒と同様のものが用いられる。
【0071】
塗料の塗布方法としても、下地皮膜を形成する際に用いる方法と同様の方法が用いられる。親水性皮膜を形成する際の焼付温度(到達表面温度)は、下地皮膜と同様に在炉時間との兼ね合いもあるものの、180〜300℃で、焼付時間が1〜60秒の条件で行うのが好ましい。皮膜形成における焼付け温度が180℃未満であったり、焼付時間が1秒未満であったりする場合には、皮膜が十分に形成されず密着性が低下する。焼付け温度が300℃を超えたり、焼付け温度が60秒を超えたりする場合には、皮膜成分の熱によって皮膜成分が変性し、親水性を著しく低下させることになる。
【0072】
親水性皮膜の付着量は、0.05〜2.0g/mとする。0.05g/m未満では所望の親水性が得られない。一方、2.0g/mを超えると、これら各特性が飽和して不経済となる。なお、ここでいう付着量とは、乾燥状態におけるものである。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0074】
実施例1〜45及び比較例1〜24
アルミニウム基材として、アルミニウム合金板(1100−H24材、0.100mm厚さ)を用いた。このアルミニウム合金板を市販のアルカリ性脱脂剤でスプレー洗浄し、水洗した後に乾燥した。アルカリ脱脂処理は、日本ペイント社製サーフクリーナーEC370の1%水溶液(液温度70℃で)、又は、日本パーカライジング社製ファインクリーナーFC4498−SK3の1.5%水溶液(液温度60℃で)を用いて、スプレー圧1.0kgf/cmで5秒間処理した。なお、両脱脂剤による差異は認められなかった。水洗は工業用水を用いて、60℃でスプレー圧1.5kgf/cmで10秒間処理した。乾燥は80℃の熱風を当てることにより行なった。
【0075】
次いで、下地皮膜用の塗料をバーコーターを用いてアルミニウム合金板に塗布し、これを焼付炉中において240℃で20秒間焼付けて、下地皮膜を形成した。焼付けは電気ヒーターで空気を加熱する熱風循環式焼付炉を使用し、風速15m/秒で行なった。
【0076】
次に、下地皮膜上に親水性皮膜を以下のようにして形成した。親水性皮膜用の塗料を、バーコーターを用いて下地皮膜上に塗布し、これを熱風炉中において240℃で20秒間焼付けた。塗膜の焼付けは電気ヒーターで空気を加熱する熱風循環式焼付炉を使用し、風速15m/秒で行なった。このような焼付けによって、下地皮膜上に親水性皮膜を形成した。
【0077】
下地皮膜と親水性皮膜の成分、親水性皮膜の含有量、ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩、ならびに、リン酸エステル及び/又はその塩については存在量、これらの重量比率、各皮膜の付着量を表1〜8に示す。なお、親水性皮膜の成分含有量は、水溶性セルロース樹脂、シリカ、メラミン、ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩、リン酸エステル及び/又はその塩、酸化チタン微粒子の総重量に対する各成分の重量%とした。ここで、酸化チタン微粒子が含有されるのは、実施例31〜45のみである。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
【表6】

【0084】
【表7】

【0085】
【表8】

【0086】
表4、5に示す酸化チタン微粒子において、酸化チタン微粒子Aには、分散液に分散した微粒子を用いた。酸化チタン微粒子Aを分散させた分散液は、四塩化チタン水溶液にアンモニア水を攪拌下で添加してチタンゲルを生成させ、これに過酸化水素水を加えて80℃で5時間加熱することによって調製した。この分散液中に分散させた酸化チタン微粒子の平均粒径は、0.010μmであった。他の酸化チタン微粒子B、Cは、焼成した酸化チタン粉末である。
【0087】
また、下地皮膜用の塗料は、樹脂100gを溶媒である水1000gに溶解又は分散して調製した。親水性皮膜用塗料は、前記成分の全重量100gを溶媒である水1000gに溶解又は分散して調製した。
【0088】
表4、5に示す親水性皮膜表面から1/4の厚さまでに存在する酸化チタン微粒子の含有量は、GDSによって親水性皮膜中のチタン(Ti)のスペクトル強度を分析することによって測定した。
【0089】
このようにして作製したアルミニウム塗装板の試料について耐食性、親水性(初期及び持続性)、耐汚染性、塗膜密着性及び成形性を後述の方法で測定した。その結果を合わせて表1〜7に示す。
【0090】
耐食性
上記試料について、JIS Z2371に基づきSST1000時間行い、レイティングナンバー(R.N.)により耐食性を評価した。
◎:R.Nが9.5以上であり、非常に良好であることを示す。
○:R.Nが9.0以上9.5未満であり、良好であることを示す。
×:R.Nが9.0未満であり、不良であることを示す。
◎と○を合格とし、×を不合格とした。
【0091】
親水性
まず、上記試料を以下のようにして前処理した。各試料を揮発性プレス油(出光興産社製ダフニAF−2A)に1分間浸漬し、これを取り出した後に室温で試料を垂直に30秒間保持して油を切った。次いで、180℃の熱風炉中(大気雰囲気)に2分間投入した後に室温まで冷却した。
【0092】
このようにして調製した試料の純水接触角を、ゴニオメーターで測定した。アルミニウム塗装板を調製した直後の親水性と、乾湿サイクル後の親水性を評価した。乾湿サイクルは、作製したアルミニウム塗装板を流量が1リットル/分の水道水に8時間浸漬した後、80℃で16時間乾燥する工程を1サイクルとしてこれを20サイクル行なった。調製直後の親水性評価を初期評価とし、乾湿サイクル後の親水性評価を持続性評価とした。いずれの評価も、下記の基準で評価した。
◎◎:接触角が10°以下であり、極めて良好であることを示す。
◎:接触角が10°を越え15°以下であり非常に良好であることを示す。
○:接触角が15°を越え25°以下であり、良好であることを示す。
△:接触角が25°を越え40°以下であり、不良であることを示す。
×:接触角が40°を越え非常に不良であることを示す。
◎◎と◎と○を合格とし、△と×を不合格とした。
【0093】
耐汚染性
まず、上記試料を親水性評価と同様にして前処理した。次いで、前処理した試料について汚染サイクル処理を実施した。汚染サイクル処理は、50℃のパルミチン酸蒸気を含む空気に試料を1時間暴露することにより気相中でパルミチン酸を試料に吸着させ、次いで、試料を水道水中に6時間浸漬後、ドライヤーで乾燥する処理を1サイクルとして10サイクル繰り返した。10サイクル後の試料表面の接触角を上記「親水性」評価と同様の方法で測定した。下記の基準で評価した。
◎:接触角が20°以下であり非常に良好であることを示す。
○:接触角が20°を越え40°以下であり、良好であることを示す。
△:接触角が40°を越え60°以下であり、不良であることを示す。
×:接触角が60°を越え非常に不良であることを示す。
◎と○を合格とし、△と×を不合格とした。
【0094】
塗膜密着性
上記試料について、JIS H4001に従った付着性試験を行い、碁盤目におけるテープ剥離後の残存個数を測定した。下記の基準で評価した。
○:皮膜残存率 100%
×:皮膜残存率 100%未満
○を合格とし、×を不合格とした。
【0095】
成形性
上記試料について、実機フィンプレスにてドローレス成形を実施した状況で評価した。成形条件は以下の通りである。揮発性プレスオイル:AF−2C(出光興産)を使用し、しごき率は58%、成形スピードは250spmで実施した。下記の基準で評価した。
◎:キズ、座屈、カラー飛びが全く発生せず、非常に良好であることを示す。
○:キズ、座屈、カラー飛びがほとんど発生せず、良好であることを示す。
△:カラー部内面にキズが発生して不良であることを示す。
×:座屈、カラー飛びが発生して非常に不良であることを示す。
◎と○を合格とし、△と×を不合格とした。
【0096】
表1〜4に示すように、実施例1〜45ではいずれも、耐食性、親水性(初期及び持続性)、耐汚染性、塗膜密着性、成形性が良好であった。その中でも実施例31〜37、40、41、43〜45は親水性皮膜中に所定の製造方法にて製造した酸化チタン分散液を用いたので、親水性(初期及び持続性)が際立って優れていた。
【0097】
一方、表6〜8に示す比較例では、以下のような評価結果となった。
比較例1では、下地皮膜がクロメート皮膜であったため、耐食性が不合格であった。
比較例2では、下地皮膜の付着量が少な過ぎたため、耐食性が不合格であった。
比較例3では、親水性皮膜における樹脂にアクリル系樹脂を用いたため、親水性(初期及び持続性)及び耐汚染性が不合格であった。
比較例4では、親水性皮膜における樹脂に水溶性でないアルキル基含有セルロース樹脂を用いたため、親水性(初期及び持続性)及び耐汚染性が不合格であった。
比較例5では、親水性皮膜における水溶性セルロース系樹脂の含有量が少な過ぎたため、親水持続性、耐汚染性、塗膜密着性及び成形性が不合格であった。
比較例6では、親水性皮膜における水溶性セルロース系樹脂の含有量が多過ぎたため、親水性(初期及び持続性)及び耐汚染性が不合格であった。
比較例7では、親水性皮膜がシリカを含有しなかったため、親水性(初期及び持続性)及び耐汚染性が不合格であった。
比較例8では、親水性皮膜がシリカに代えてアルミナを含有したため、親水性(初期及び持続性)及び耐汚染性が不合格であった。
比較例9では、親水性皮膜のシリカ含有量が少な過ぎたため、親水性(初期及び持続性)及び耐汚染性が不合格であった。
比較例10では、親水性皮膜のシリカ含有量が多過ぎたため、塗膜密着性及び成形性が不合格であった。
比較例11では、親水性皮膜のシリカ平均粒径が大き過ぎたため、親水持続性、耐汚染性及び成形性が不合格であった。
比較例12では、親水性皮膜がメラミンを含有していなかったため、親水持続性、耐汚染性及び塗膜密着性が不合格であった。
比較例13では、親水性皮膜がメラミンに代えてポリイソシアネートを含有したため、親水性(初期及び持続性)、耐汚染性及び塗膜密着性が不合格であった。
比較例14では、親水性皮膜のメラミン含有量が少な過ぎたため、親水持続性、耐汚染性及び塗膜密着性が不合格であった。
比較例15では、親水性皮膜のメラミン含有量が多過ぎたため、親水持続性及び耐汚染性が不合格であった。
比較例16では、親水性皮膜がリン酸エステル及び/又はその塩を含有していなかったため、親水性(初期及び持続性)、耐汚染性及び成形性が不合格であった。
比較例17では、親水性皮膜がリン酸エステル及び/又はその塩に代えてステアリン酸ナトリウムを含有したため、親水性(初期及び持続性)、耐汚染性及び成形性が不合格であった。
比較例18では、親水性皮膜におけるリン酸エステル及び/又はその塩の含有量が少な過ぎたため、親水性(初期及び持続性)、耐汚染性及び成形性が不合格であった。
比較例19では、親水性皮膜におけるリン酸エステル及び/又はその塩の存在量が、0.1g/mを超えたため、親水持続性、耐汚染性及び塗膜密着性が不合格であった。
比較例20では、親水性皮膜がジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩を含有していなかったため、親水性(初期及び持続性)及び耐汚染性が不合格であった。
比較例21では、親水性皮膜がジアルキルスルホコハク酸塩に代えてステアリン酸ナトリウムを含有したため、親水性(初期及び持続性)及び耐汚染性が不合格であった。
比較例22では、親水性皮膜におけるジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩の含有量が少な過ぎたため、親水性(初期及び持続性)及び耐汚染性が不合格であった。
比較例23では、親水性皮膜におけるジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩の存在量が、0.1g/mを超えたため、親水持続性、耐汚染性及び塗膜密着性が不合格であった。
比較例24では、親水性皮膜の付着量が少な過ぎたため、親水性(初期及び持続性)、耐汚染性及び成形性を満足することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係るアルミニウム塗装材は、耐食性、親水性、耐汚染性、塗膜密着性及び成形性に優れるので、例えば、熱交換器用のプレコートアルミニウムフィン材に用いることによって、長期に亘った優れた熱交換効率を発揮できる点で有用である。更に、本発明に係るアルミニウム塗装材の製造方法によって、前記アルミニウム塗装材を効率良く確実に製造することができる。
【符号の説明】
【0099】
1……アルミニウム塗装材
2……アルミニウム基材
3……下地皮膜
4……親水性皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム基材と、当該アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成した下地皮膜と、当該下地皮膜上に形成した親水性皮膜とを含むアルミニウム塗装材であって、前記下地皮膜が、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂の少なくとも1種を含み、当該下地皮膜の付着量が0.5〜20g/mであり、前記親水性皮膜が、水溶性セルロース系樹脂10〜50重量%、メラミン3〜30重量%、5〜100nmの平均粒径を有するシリカ10〜50重量%、ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩0.05〜10重量%及びリン酸エステル及び/又はその塩0.05〜10重量%を含み、当該親水性皮膜の付着量が0.05〜2.0g/mであり、前記親水性皮膜中に含有されるジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩の存在量が0.001〜0.1g/mであり、前記親水性皮膜中に含有されるリン酸エステル及び/又はその塩の存在量が0.001〜0.1g/mであることを特徴とするアルミニウム塗装材。
【請求項2】
前記ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩がジイソオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩である、請求項1に記載のアルミニウム塗装材。
【請求項3】
前記リン酸エステル及び/又はその塩がリン酸エステルモノエタノールアミン中和物である、請求項1又は2に記載のアルミニウム塗装材。
【請求項4】
前記メラミンがヘキサメチルメトキシメラミンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルミニウム塗装材。
【請求項5】
前記ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩と、リン酸エステル及び/又はその塩との重量比が、(ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩)/(リン酸エステル及び/又はその塩)として0.5〜2.0である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルミニウム塗装材。
【請求項6】
前記ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩と、リン酸エステル及び/又はその塩との重量比が、(ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩)/(リン酸エステル及び/又はその塩)として0.5〜2.0であり、前記メラミンがヘキサメチルメトキシメラミンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルミニウム塗装材。
【請求項7】
前記親水性皮膜が酸化チタン微粒子1〜20重量%を更に含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアルミニウム塗装材。
【請求項8】
前記酸化チタン微粒子が、チタン塩を含有する水溶液にアルカリ成分を加えて中和、加水分解された分散液中に分散した酸化チタン微粒子であり、かつ、0.001〜0.050μmの平均粒径を有する、請求項7に記載のアルミニウム塗装材。
【請求項9】
前記親水性皮膜の表面から1/4までの厚さ中に存在する酸化チタン微粒子が、当該親水性皮膜全体に存在する酸化チタン微粒子の50重量%以上である、請求項7又は8に記載のアルミニウム塗装材。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のアルミニウム塗装材の製造方法であって、アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂の少なくとも1種を含む塗料組成物を塗布し、180〜400℃で1〜60秒間焼付けて、付着量0.5〜20g/mの下地皮膜を形成する工程と、当該下地皮膜上に、水溶性セルロース系樹脂10〜50重量部、メラミン3〜30重量部、5〜100nmの平均粒径を有するシリカ10〜50重量部、ジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩0.05〜10重量部及びリン酸エステル及び/又はその塩0.05〜10重量部を含む塗料組成物を塗布し、180〜300℃で1〜60秒間焼付けて、付着量0.05〜2.0g/mの親水性皮膜を形成する工程とを含み、当該親水性皮膜中に含有されるジアルキルスルホコハク酸及び/又はその塩の存在量が0.001〜0.1g/mであり、当該親水性皮膜中に含有されるリン酸エステル及び/又はその塩の存在量が0.001〜0.1g/mであることを特徴とするアルミニウム塗装材の製造方法。
【請求項11】
前記親水性皮膜用の塗料組成物が酸化チタン微粒子1〜20重量部を更に含む、請求項10に記載のアルミニウム塗装材の製造方法。
【請求項12】
前記酸化チタン微粒子が、チタン塩を含有する水溶液にアルカリ成分を加えて中和、加水分解された分散液中に分散した酸化チタン微粒子であり、かつ、0.001〜0.050μmの平均粒径を有する、請求項11に記載のアルミニウム塗装材の製造方法。
【請求項13】
前記親水性皮膜の形成工程において、親水性皮膜の表面から1/4までの厚さ中に存在する酸化チタン微粒子が、当該親水性皮膜全体に存在する酸化チタン微粒子の50重量%以上となる、請求項11又は12に記載のアルミニウム塗装材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−245477(P2011−245477A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79936(P2011−79936)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】