説明

アルミニウム多孔体を集電体として用いた電極及びその製造方法

【課題】二次電池、キャパシタ等に用いられる電極であって巻回型の電極を作製する場合に小さな曲率半径で電極を巻回することができる造方法を提供すること。
【解決手段】厚み1.0〜5.0mm、気孔率80〜98%、アルミニウム目付量90〜450g/m、気孔径50〜1000μmの三次元網目状アルミニウム多孔体に、活物質を含むスラリーを充填して乾燥し、次いで厚みを0.1〜0.9mmに調厚し、活物質の充填率を40〜65%とすることを特徴とする電極の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元網目構造を有するアルミニウム多孔体を集電体として用いた電極に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートブック型パソコン、パームトップ型パソコン、一体型ビデオカメラ、ポータブルCDプレーヤー等の電子機器の小型化、軽量化を図る上で、これらの電子機器の電源としての二次電池の高出力化、高容量化が求められている。また、電子機器の電源としてのキャパシタについても同様に高出力化、高容量化が求められている。
以下では、二次電池を例にとって説明する。
高出力、高容量を達成する二次電池の1つとして、非水電解液を用い、リチウムイオンを正極と負極との間で移動させて充放電を行うようにしたリチウム二次電池が実用化されているが、電子機器の更なる小型化、高機能化により、電源であるリチウム二次電池への負荷が大きくなっており、リチウム二次電池の高エネルギー密度化への要求は非常に高いものとなっている。
【0003】
電池の高エネルギー密度化には、活物質に大きなエネルギー密度を有する材料を用いることが有効な手段であり、高エネルギー密度を有する負極活物質として、従来用いられている黒鉛に代えて、リチウムとの合金化反応によってリチウムを吸蔵するAl、Sn、Siなどの元素の合金材料についての提案が多くなされている。
一方、上記のエネルギー密度の大きい負極活物質を電池内に多量に保持できるようにすることも高エネルギー密度化のためには必要である。
【0004】
特許文献1には集電体として銅、ニッケル、ステンレススチール等の金属箔を用い、この金属箔の表面に活物質としてのLiCoSn0.022 に対して炭素系導電助剤を加えてなるコンパウンドに、フッ素ゴムの酢酸エチル・エチルセルローズ溶液を加えて分散液とし、これをアルミニウム箔の両面に塗工して電極とすることが記載されている。
しかしながら、金属箔はその表面でのみ活物質を保持するものであり、活物質を多く保持するには表面積を大きくするか活物質の層厚を増す必要があり、表面積を大きくすることは小型化の目的を満たさないものであり、活物質の層厚を増やすと活物質の剥落等の問題がある。
【0005】
集電体を三次元網目状構造を有する多孔質体から構成することにより活物質の保持量を高めることが提案されている(特許文献2、特許文献3)。
【0006】
三次元網目構造を有する金属多孔体としては、従来、例えばニッケルからなるセルメット(住友電気工業(株)製:登録商標)がニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等の電池の電極材料として使用されている。セルメットは連通気孔を有する金属多孔体であり、金属不織布など他の多孔体に比べて気孔率が高い(90%以上)という特徴がある。これは発泡ウレタン等の連通気孔を有する多孔体樹脂の骨格表面にニッケル層を形成した後、熱処理して発泡樹脂成形体を分解し、さらにニッケルを還元処理することで得られる。ニッケル層の形成は、発泡樹脂成形体の骨格表面にカーボン粉末等を塗布して導電化処理した後、電気めっきによってニッケルを析出させることで行われる。
【0007】
一方、ニッケルと同様にアルミニウムも導電性、耐腐食性、軽量などの優れた特徴があり、電池用途では例えば、リチウムイオン電池の正極として、アルミニウム箔の表面にコバルト酸リチウム等の活物質を塗布したものが使用されている。正極の容量を向上するためには、アルミニウムを多孔体にして表面積を大きくし、アルミニウム内部にも活物質を充填することが考えられる。このようにすると電極を厚くしても活物質を利用でき、単位面積当たりの活物質利用率が向上するからである。
【0008】
アルミニウム多孔体の製造方法として、特許文献4には、内部連通空間を有する三次元網目状のプラスチック基体にアークイオンプレーティング法によりアルミニウムの蒸着処理を施して、2〜20μmの金属アルミニウム層を形成する方法が記載されている。
この方法によれば、2〜20μmの厚さのアルミニウム多孔体が得られるとされているが、気相法によるため大面積での製造は困難であり、基体の厚さや気孔率によっては内部まで均一な層の形成が難しい。またアルミニウム層の形成速度が遅い、設備が高価などにより製造コストが増大するなどの問題点がある。さらに、厚膜を形成する場合には、膜に亀裂が生じたりアルミニウムの脱落が生じるおそれがある。
【0009】
また、特許文献5には、三次元網目状構造を有する発泡樹脂成形体の骨格にアルミニウムの融点以下で共晶合金を形成する金属(銅等)による皮膜を形成した後、アルミニウムペーストを塗布し、非酸化性雰囲気下で550℃以上750℃以下の温度で熱処理をすることで有機成分(発泡樹脂)の消失及びアルミニウム粉末の焼結を行い、金属多孔体を得る方法が記載されている。
この方法によればアルミニウムと共晶合金を形成する層が出来てしまい、純度の高いアルミニウム層が形成できない。
【0010】
他の方法としては、アルミニウムめっきを三次元網目状構造を有する発泡樹脂成形体に施すことが考えられる。アルミニウムの電気めっき方法自体は知られているが、アルミニウムのめっきは、アルミニウムの酸素に対する親和力が大きく、電位が水素より低いために水溶液系のめっき浴で電気めっきを行うことが困難である。このため、従来よりアルミニウムの電気めっきは非水溶液系のめっき浴で検討が行われている。例えば、金属表面の酸化防止などの目的でアルミニウムをめっきする技術として、特許文献6にはオニウムハロゲン化物とアルミニウムハロゲン化物とを混合溶融した低融点組成物をめっき浴として用い、浴中の水分量を2wt%以下に維持しながら陰極にアルミニウムを析出させることを特徴とする電気アルミニウムめっき方法が開示されている。
【0011】
しかしながら、アルミニウムの電気めっきについては金属表面へのめっきが可能であるのみで、樹脂成形体表面への電気めっき、とりわけ三次元網目構造を有する多孔質樹脂成形体の表面に電気めっきする方法は知られていなかった。
【0012】
そこで、本発明者等は三次元網目構造を有する多孔質樹脂成形体の表面に電気めっきを施す方法について鋭意検討し少なくとも表面が導電化された樹脂成形体に、アルミニウムを溶融塩浴中でめっきすることによりめっきが可能であることを見出した。これにより、集電体用の三次元網目構造を有するアルミニウム多孔質体を量産することが可能となった。
【0013】
前記の三次元網目構造を有するアルミニウム多孔質体の空間部分に活物質を充填することにより電極が形成されるが、本発明者らが作製した三次元網目状アルミニウム多孔体に活物質を充填して得られた電極を用いて試験をしたところ、この電極は曲げ性が良くなく巻回型の電極を作製する場合に小さな曲率半径で電極を巻き取ることができないという課題があることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平5−62713号公報
【特許文献2】特開平8―321310号公報
【特許文献3】特開2011−9608号公報
【特許文献4】特許第3413662号公報
【特許文献5】特許第3568052公報
【特許文献6】特許第3202072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、巻回型の電極を作製する場合に小さな曲率半径で電極を巻回することができる電極及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題解決のため、本発明者らは鋭意検討を進めた結果、三次元網目状アルミニウム多孔体を集電体として使用する電極において、アルミニウム多孔体への活物質の充填量を制御することにより、電極を小さな曲率半径で巻取ることができることを見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下に記載する通りのものである。
【0017】
(1)厚み1.0〜5.0mm、気孔率80〜98%、アルミニウム目付量90〜450g/m、気孔径50〜1000μmの三次元網目状アルミニウム多孔体に、活物質を含むスラリーを充填して乾燥し、次いで厚みを0.1〜0.9mmに調厚し、活物質の充填率を40〜65%とすることを特徴とする電極の製造方法。
(2)前記活物質の充填率を50〜60%とすることを特徴とする(1)に記載の電極の製造方法。
(3)前記三次元網目状アルミニウム多孔体が、導電処理をした多孔質基材の表面にアルミニウムの被膜を設け、次いで、該多孔体基材を除去することによって得られたものであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電極の製造方法。
(4)前記アルミニウムの被膜が溶融塩めっきによって行われたことを特徴とする(3)に記載の電極の製造方法。
(5)(1)〜(4)のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたことを特徴とする電極。
(6)(5)に記載の電極とセパレータとを積層して巻回したことを特徴とする円筒状の電極積層体。
(7)(5)に記載の電極をセパレータと積層して巻回したことを特徴とする偏平状の電極積層体。
(8)(6)又は(7)に記載の電極積層体を用いたことを特徴とする非水電解質電池。
(9)(6)6又は(7)に記載の電極積層体を用いたことを特徴とする非水電解液を用いたキャパシタ。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、小さな曲率半径で電極を巻回することができる電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】二次電池の基本的構成を示す図である。
【図2】積層型の二次電池の構成例を示す図である。
【図3】円筒状の二次電池の構成例を示す図である。
【図4】偏平状の二次電池の構成例を示す図である。
【図5】本発明によるアルミニウム構造体の製造工程を示すフロー図である。
【図6】本発明によるアルミニウム構造体の製造工程を説明する断面模式図である。
【図7】多孔質樹脂成形体の一例としての発泡ウレタン樹脂の構造を示す表面拡大写真である。
【図8】導電性塗料による樹脂成形体表面の連続導電化工程の一例を説明する図である。
【図9】溶融塩めっきによるアルミニウム連続めっき工程の一例を説明する図である。
【図10】アルミニウム多孔体をキャパシタに適用した構造例を示す断面模
【図11】アルミニウム多孔体を溶融塩電池に適用した構造例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明について以下詳述する。
まず、本発明で用いる三次元網目状アルミニウム多孔体(以下「アルミニウム多孔体」という)の製造方法について述べる。
【0021】
(アルミニウム構造体の製造工程)
図5は、アルミニウム構造体の製造工程を示すフロー図である。また図6は、フロー図に対応して樹脂成形体を芯材としてアルミニウムめっき膜を形成する様子を模式的に示したものである。両図を参照して製造工程全体の流れを説明する。まず基体樹脂成形体の準備101を行う。図6(a)は、基体樹脂成形体の例として、連通気孔を有する発泡樹脂成形体の表面を拡大視した拡大模式図である。発泡樹脂成形体1を骨格として気孔が形成されている。次に樹脂成形体表面の導電化102を行う。この工程により、図6(b)に示すように樹脂成形体1の表面には薄く導電体による導電層2が形成される。
続いて溶融塩中でのアルミニウムめっき103を行い、導電層が形成された樹脂成形体の表面にアルミニウムめっき層3を形成する(図6(c))。これで、基体樹脂成形体を基材として表面にアルミニウムめっき層3が形成されたアルミニウム構造体が得られる。基体樹脂成形体はそのまま残してもよいが、用途に応じて、基体樹脂成形体の除去104を行っても良い。発泡樹脂成形体1を分解等して消失させることにより金属層のみが残ったアルミニウム構造体(多孔体)を得ることができる(図6(d))。以下各工程について順を追って説明する。
以下では樹脂成形体として多孔質樹脂成形体を用いた場合について述べる。
【0022】
(多孔質樹脂成形体の準備)
三次元網目構造を有し連通気孔を有する多孔質樹脂成形体を準備する。多孔質樹脂成形体の素材は任意の樹脂を選択できる。ポリウレタン、メラミン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の発泡樹脂成形体が素材として例示できる。発泡樹脂成形体と表記したが、連続した気孔(連通気孔)を有するものであれば任意の形状の樹脂成形体を選択できる。例えば繊維状の樹脂を絡めて不織布のような形状を有するものも発泡樹脂成形体に代えて使用可能である。発泡樹脂成形体の気孔率は80%〜98%、気孔径は50μm〜500μmとするのが好ましい。発泡ウレタン及び発泡メラミンは気孔率が高く、また気孔の連通性があるとともに分解性にも優れているため発泡樹脂成形体として好ましく使用できる。
発泡ウレタンは気孔の均一性や入手の容易さ等の点で好ましく、発泡ウレタンは気孔径の小さなものが得られる点で好ましい。
【0023】
多孔質樹脂成形体には発泡体製造過程での製泡剤や未反応モノマーなどの残留物があることが多く、洗浄処理を行うことが後の工程のために好ましい。多孔質樹脂成形体の例として、発泡ウレタンを前処理として洗浄処理したものを図7に示す。樹脂成形体が骨格として三次元的に網目を構成することで、全体として連続した気孔を構成している。発泡ウレタンの骨格はその延在方向に垂直な断面において略三角形状をなしている。ここで気孔率は、次式で定義される。
気孔率=(1−(多孔質材の重量[g]/(多孔質材の体積[cm]×素材密度)))×100[%]
また、気孔径は、樹脂成形体表面を顕微鏡写真等で拡大し、1インチ(25.4mm)あたりの気孔数をセル数として計数して、平均孔径=25.4mm/セル数として平均的な値を求める。
【0024】
(樹脂成形体表面の導電化)
電解めっきを行うために、発泡樹脂の表面をあらかじめ導電化処理する。発泡状樹脂の表面に導電性を有する層を設けることができる処理である限り特に制限はなく、ニッケル等の導電性金属の無電解めっき、アルミニウム等の蒸着及びスパッタ、又はカーボン等の 導電性粒子を含有した導電性塗料の塗布等任意の方法を選択できる。
導電化処理の例として、アルミニウムのスパッタリング処理によって導電化処理する方法、及び導電性粒子としてカーボンを用いて発泡樹脂の表面を導電化処理する方法について以下述べる。
【0025】
−アルミニウムのスパッタリング−
アルミニウムを用いたスパッタリング処理としては、アルミニウムをターゲットとする限り限定的でなく、常法に従って行えばよい。例えば、基板ホルダーに発泡状樹脂を取り付けた後、不活性ガスを導入しながら、ホルダーとターゲット(アルミニウム)との間に直流電圧を印加することにより、イオン化した不活性ガスをアルミニウムに衝突させて、はじき飛ばされたアルミニウム粒子を発泡状樹脂表面に堆積することによってアルミニウムのスパッタ膜を形成する。なお、スバッタリング処理は発泡状樹脂が溶解しない温度下で行うことが好ましく、具体的には、100〜200℃程度、好ましくは120〜180℃程度で行えばよい。
【0026】
−カーボン塗布−
導電性塗料としてのカーボン塗料を準備する。導電性塗料としての懸濁液は、好ましくは、カーボン粒子、粘結剤、分散剤および分散媒を含む。導電性粒子の塗布を均一に行うには、懸濁液が均一な懸濁状態を維持している必要がある。このため、懸濁液は、20℃〜40℃に維持されていることが好ましい。その理由は、懸濁液の温度が20℃未満になった場合、均一な懸濁状態が崩れ、合成樹脂成形体の網目状構造をなす骨格の表面に粘結剤のみが集中して層を形成するからである。この場合、塗布されたカーボン粒子の層は剥離し易く、強固に密着した金属めっきを形成し難い。一方、懸濁液の温度が40℃を越えた場合は、分散剤の蒸発量が大きく、塗布処理時間の経過とともに懸濁液が濃縮されてカーボンの塗布量が変動しやすい。また、カーボン粒子の粒径は、0.01〜5μmで、好ましくは0.01〜0.5μmである。粒径が大きいと多孔質樹脂成形体の空孔を詰まらせたり、平滑なめっきを阻害する要因となり、小さすぎると十分な導電性を確保することが難しくなる。
【0027】
多孔質樹脂成形体へのカーボン粒子の塗布は、上記懸濁液に対象となる樹脂成形体を浸漬し、絞りと乾燥を行うことで可能である。図8は実用上の製造工程の一例として、骨格となる帯状の多孔質合成樹脂成形体を導電化する処理装置の構成例を模式的に示す図である。図示の如くこの装置は、帯状樹脂11を供給するサプライボビン12と、導電性塗料の懸濁液14を収容した槽15と、槽15の上方に配置された1対の絞りロール17と、走行する帯状樹脂11の側方に対向して設けられた複数の熱風ノズル16と、処理後の帯状樹脂11を巻き取る巻取りボビン18とを備えている。また、帯状樹脂11を案内するためのデフレクタロール13が適宜配置されている。以上のように構成された装置において、三次元網目状構造を有する帯状樹脂1は、サプライボビン12から巻き戻され、デフレクタロール13により案内されて、槽15内の懸濁液内に浸漬される。槽15内で懸濁液14に浸漬された帯状樹脂11は、上方に向きを変え、懸濁液14の液面上方の絞りロール17の間を走行する。このとき、絞りロール17の間隔は、帯状樹脂11の厚さよりも小さくなっており、帯状樹脂11は圧縮される。従って、帯状樹脂11に含浸された過剰な懸濁液は、絞り出されて槽15内に戻る。
【0028】
続いて、帯状樹脂11は、再び走行方向を変える。ここで、複数のノズルから構成された熱風ノズル16が噴射する熱風により懸濁液の分散媒等が除去され、充分に乾燥された上で帯状樹脂11は巻取りボビン18に巻き取られる。尚、熱風ノズル16の噴出する熱風の温度は40℃から80℃の範囲であることが好ましい。以上のような装置を用いると、自動的かつ連続的に導電化処理を実施することができ、目詰まりのない網目構造を有し、且つ、均一な導電層を具備した骨格が形成されるので、次工程の金属めっきを円滑に行うことができる。
【0029】
(アルミニウム層の形成:溶融塩めっき)
次に溶融塩中で電解めっきを行い、樹脂成形体表面にアルミニウムめっき層を形成する。
溶融塩浴中でアルミニウムのめっきを行うことにより特に三次元網目構造を有する樹脂多孔体のように複雑な骨格構造の表面に均一に厚いアルミニウム層を形成することができる。
表面が導電化された樹脂成形体を陰極、純度99.0%のアルミニウムを陽極として溶融塩中で直流電流を印加する。溶融塩としては、有機系ハロゲン化物とアルミニウムハロゲン化物の共晶塩である有機溶融塩、アルカリ金属のハロゲン化物とアルミニウムハロゲン化物の共晶塩である無機溶融塩を使用することができる。比較的低温で溶融する有機溶融塩浴を使用すると、基材である樹脂成形体を分解することなくめっきができ好ましい。有機系ハロゲン化物としてはイミダゾリウム塩、ピリジニウム塩等が使用でき、具体的には1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(EMIC)、ブチルピリジニウムクロライド(BPC)が好ましい。
溶融塩中に水分や酸素が混入すると溶融塩が劣化するため、めっきは窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、かつ密閉した環境下で行うことが好ましい。
【0030】
溶融塩浴としては窒素を含有した溶融塩浴が好ましく、中でもイミダゾリウム塩浴が好ましく用いられる。溶融塩として高温で溶融する塩を使用した場合は、めっき層の成長よりも樹脂が溶融塩中に溶解や分解する方が早くなり、樹脂成形体表面にめっき層を形成することができない。イミダゾリウム塩浴は、比較的低温であっても樹脂に影響を与えず使用可能である。イミダゾリウム塩として、1,3位にアルキル基を持つイミダゾリウムカチオンを含む塩が好ましく用いられ、特に塩化アルミニウム+1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AlCl+EMIC)系溶融塩が、安定性が高く分解し難いことから最も好ましく用いられる。発泡ウレタン樹脂や発泡メラミン樹脂などへのめっきが可能であり、溶融塩浴の温度は10℃から60℃、好ましくは25℃から45℃である。低温になる程めっき可能な電流密度範囲が狭くなり、多孔体表面全体へのめっきが難しくなる。60℃以上の高温では基材樹脂の形状が損なわれる不具合が生じやすい。
【0031】
金属表面への溶融塩アルミニウムめっきにおいて、めっき表面の平滑性向上の目的でAlCl−EMICにキシレン、ベンゼン、トルエン、1,10−フェナントロリンなどの添加剤を加えることが報告されている。本発明者らは特に三次元網目構造を備えた樹脂多孔体上にアルミニウムめっきを施す場合に、1,10−フェナントロリンの添加によりアルミニウム構造体の形成に特有の効果が得られることを見出した。すなわち、多孔体を形成するアルミニウム骨格が折れにくいという第1の特徴と、多孔体の表面部と内部とのめっき厚さの差が小さい均一なめっきが可能であるという第2の特徴が得られるのである。
【0032】
以上の、折れにくい、めっき厚が内外で均一という2つの特徴により、完成したアルミニウム多孔体をプレスする場合などに、骨格全体が折れにくく均等にプレスされた多孔体を得ることができる。アルミニウム多孔体を電池等の電極材料として用いる場合に、電極に電極活物質を充填してプレスにより密度を上げることが行われ、活物質の充填工程やプレス時に骨格が折れやすいため、このような用途では極めて有効である。
【0033】
上記のことから、溶融塩浴に有機溶媒を添加することが好ましく、特に1,10−フェナントロリンが好ましく用いられる。めっき浴への添加量は、0.25〜7g/Lが好ましい。0.25g/L以下では平滑性に乏しいめっきで脆く、また表層と内部の厚み差を小さくする効果が得られ難い。また7g/L以上ではめっき効率が低下し所定のめっき厚を得ることが困難になる。
【0034】
図9は前述の帯状樹脂に対してアルミニウムメッキ処理を連続的に行うための装置の構成を模式的に示す図である。表面が導電化された帯状樹脂22が、図の左から右に送られる構成を示す。第1のめっき槽21aは、円筒状電極24と容器内壁に設けられたアルミニウムからなる陽極25およびめっき浴23から構成される。帯状樹脂22は円筒状電極24に沿ってめっき浴23の中を通過することにより、樹脂成形体全体に均一に電流が流れやすく、均一なめっきを得ることが出来る。めっき槽21bは、さらにめっきを厚く均一に付けるための槽であり複数の槽で繰り返しめっきされるように構成されている。表面が導電化された帯状樹脂22を送りローラと槽外給電陰極を兼ねた電極ローラ26により順次送りながら、めっき浴28に通過させることでめっきを行う。複数の槽内には樹脂成形体の両面にめっき浴28を介して設けられたアルミニウムからなる陽極27があり、樹脂成形体の両面により均一なめっきを付けることができる。めっきされたアルミニウム構造体に窒素ブローでめっき液を十分除去した後、水洗しアルミニウム構造体を得る。
【0035】
一方、樹脂が溶解等しない範囲で溶融塩として無機塩浴を用いることもできる。無機塩浴とは、代表的にはAlCl−XCl(X:アルカリ金属)の2成分系あるいは多成分系の塩である。このような無機塩浴はイミダゾリウム塩浴のような有機塩浴に比べて一般に溶融温度は高いが、水分や酸素など環境条件の制約が少なく、全体に低コストでの実用化が可能とできる。樹脂が発泡メラミン樹脂である場合は、発泡ウレタン樹脂に比べて高温での使用が可能であり、60℃〜150℃での無機塩浴が用いられる。
【0036】
以上の工程により骨格の芯として樹脂成形体を有するアルミニウム構造体が得られる。各種フィルタや触媒担体などの用途によっては、このまま樹脂と金属の複合体として使用しても良いが、使用環境の制約などから、樹脂が無い金属多孔体として用いる場合には樹脂を除去する。本発明においては、アルミニウムの酸化が起こらないように、以下に説明する溶融塩中での分解により樹脂を除去する。
【0037】
(樹脂の除去:溶融塩による処理)
溶融塩中での分解は以下の方法で行う。表面にアルミニウムめっき層を形成した樹脂成形体を溶融塩に浸漬し、アルミニウム層に負電位(アルミニウムの標準電極電位より卑な電位)を印加しながら加熱して発泡樹脂成形体を除去する。溶融塩に浸漬した状態で負電位を印加すると、アルミニウムを酸化させることなく発泡樹脂成形体を分解することができる。加熱温度は発泡樹脂成形体の種類に合わせて適宜選択できる。樹脂成形体がウレタンである場合には分解は約380℃で起こるため溶融塩浴の温度は380℃以上にする必要があるが、アルミニウムを溶融させないためにはアルミニウムの融点(660℃)以下の温度で処理する必要がある。好ましい温度範囲は500℃以上600℃以下である。また印加する負電位の量は、アルミニウムの還元電位よりマイナス側で、かつ溶融塩中のカチオンの還元電位よりプラス側とする。このような方法によって、連通気孔を有し、表面の酸化層が薄く酸素量の少ないアルミニウム多孔体を得ることができる。
【0038】
樹脂の分解に使用する溶融塩としては、アルミニウムの電極電位が卑となるようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物の塩が使用できる。具体的には塩化リチウム(LiCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化アルミニウム(AlCl)からなる群より選択される1種以上を含むと好ましい。このような方法によって連通気孔を有し、表面の酸化層が薄く酸素量の少ないアルミニウム多孔体を得ることができる。
アルミニウム多孔体は多孔質であるため、活物質を充填する際には、活物質スラリーを塗布するだけで活物質が多孔体中に浸透していき、多孔質体の空孔中に保持される。この操作を活物質が所定の量が充填されるまで繰り返し、次いで乾燥し、調厚して電極を得る。
【0039】
本発明のアルミニウム電極を用いる電池としてリチウム電池及び溶融塩電池を例に挙げて説明する。
(リチウム電池)
アルミニウム多孔体をリチウムイオン電池の正極に使用する場合は、活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)等を使用する。活物質は導電助剤及びバインダーと組み合わせて使用する。従来のリチウムイオン電池用正極材料は、アルミニウム箔の表面に活物質を塗布している。単位面積当たりの電池容量を向上するために、活物質の塗布厚みを厚くしている。また活物質を有効に利用するためにはアルミニウム箔と活物質とが電気的に接触している必要があるので活物質は導電助剤と混合して用いられている。これに対し、本発明で用いるアルミニウム多孔体は気孔率が高く単位面積当たりの表面積が大きい。このため、多孔体の表面に薄く活物質を担持させても活物質を有効に利用でき、電池の容量を向上できるとともに、導電助剤の混合量を少なくすることができる。リチウム電池は、上記の正極材料を正極とし、負極には黒鉛、電解質には有機電解液を使用する。このようなリチウムイオン電池は、小さい電極面積でも容量を向上できるため、従来のリチウム電池よりも電池のエネルギー密度を高くすることができる。
【0040】
〔アルミニウム多孔体に充填する活物質〕
アルミニウム多孔体をリチウムイオン電池の正極に使用する場合は、活物質としてリチウムを脱挿入できる材料を使用することができ、このような材料をアルミニウム多孔体に充填することでリチウムイオン二次電池に適した電極を得ることができる。正極活物質の材料としては、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、ニッケルコバルト酸リチウム(LiCo0.3Ni0.7)、マンガン酸リチウム(LiMn)、チタン酸リチウム(LiTi12)、リチウムマンガン酸化合物(LiMMn2−y);M=Cr、Co、Ni)、リチウム酸等を使用する。活物質は導電助剤及びバインダーと組み合わせて使用する。従来のリチウムリン酸鉄及びその化合物(LiFePO、LiFe0.5Mn0.5PO)であるオリビン化合物などの遷移金属酸化物が挙げられる。また、これらの材料の中に含まれる遷移金属元素を、別の遷移金属元素に一部置換してもよい。
【0041】
更に他の正極活物質の材料としては例えば、TiS、V、FeS、FeS、LiMSx(MはMo、Ti、Cu、Ni、Feなどの遷移金属元素、又はSb、Sn、Pb)などの硫化物系カルコゲン化物、TiO、Cr、V、MnOなどの金属酸化物を骨格としたリチウム金属が挙げられる。ここで、上記したチタン酸リチウム((LiTi12)は負極活物質として使用することも可能である。
【0042】
図1は二次電池の基本的構成を例示する図である。図示したものでは、正極1、負極2および両電極1,2間に挟まれるセパレータ(イオン伝導層)3を有する。このリチウムイオン二次電池においては、正極1にはリチウム−コバルト複合酸化物などの正極活物質粉末5を導電性粉末6及びバインダ樹脂と混合して正極集電体7に担持させて板状としたものを用い、負極2には同様に炭素系の負極活物質粉末8をバインダ樹脂と混合して負極集電体9に担持させて板状としたものを用いる。セパレータとしてはポリエチレン、ポリプロピレンの微多孔膜を用い、これにリチウムイオンを含む非水系の電解液で満たして用いる。図示していないが、正極集電体、負極集電体はそれぞれ、正極端子及び負極端子にリード線で接続されている。
【0043】
(非水電解液を用いるキャパシタ用電極)
図10は非水電解液を用いるキャパシタ用電極材料を用いた非水電解液を用いるキャパシタの一例を示す断面模式図である。セパレータ142で仕切られた有機電解液143中に、アルミニウム多孔体に電極活物質を担持した電極材料を分極性電極141として配置している。電極材料141はリード線144に接続しており、これら全体がケース145中に収納されている。アルミニウム多孔体を集電体として使用することで、集電体の表面積が大きくなり、活物質としての活性炭を薄く塗布しても高出力、高容量化可能な非水電解液を用いるキャパシタを得ることができる。
【0044】
非水電解液を用いるキャパシタ(キャパシタ)用の電極を製造するには、集電体に活物質として活性炭を使用する。活性炭は導電助剤やバインダーと組み合わせて使用する。導電助剤としては黒鉛、カーボンナノチューブ等が使用できる。またバインダーとしてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム等を使用できる。
活性炭ペーストを充填する。キャパシタの容量を大きくするためには主成分である活性炭の量が多い方が良く、乾燥後(溶媒除去後)の組成比で活性炭が90%以上あることが好ましい。また導電助剤やバインダーは必要ではあるが容量低下の要因であり、バインダーは更に内部抵抗を増大させる要因となるためできる限り少ない方がよい。導電助剤は10質量%以下、バインダーは10質量%以下が好ましい。
【0045】
活性炭は表面積が大きい方がキャパシタの容量が大きくなるため、比表面積が2000m2/g以上あることが好ましい。また、導電助剤としてはケッチェンブラックやアセチレンブラック、炭素繊維やこれらの複合材料が使用できる。また、バインダーとしてはポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガムなどが使用できる。溶媒はバインダーの種類によって水や有機溶媒を適当に選択すればよい。有機溶媒ではN−メチル−2−ピロリドンが使用される場合が多い。また、溶媒に水を使う場合、充填性を高めるために界面活性剤を使用しても良い。
【0046】
上記活性炭を主成分とする電極材料を混合して攪拌することにより活性炭ペーストが得られる。かかる活性炭ペーストを上記集電体に充填して乾燥させ、必要に応じてローラープレス等により調厚することによりキャパシタ用電極が得られる。
【0047】
(キャパシタの作製)
上記のようにして得られた電極を適当な大きさに打ち抜いて2枚用意し、セパレータを挟んで対向させる。そして、必要なスペーサを用いてセルケースに収納し、電解液を含浸させる。最後に絶縁ガスケットを介してケースに蓋をして封口することにより非水電解液を用いるキャパシタを作製することができる。非水系の材料を使用する場合は、キャパシタ内の水分を限りなく少なくするため、キャパシタの作製は水分の少ない環境下で行い、封止は減圧環境下で行う。なお、本発明の集電体、電極を用いていればキャパシタとしては特に限定されず、これ以外の方法により作製されるものでも構わない。
また、負極は特に限定されず従来の負極用電極を使用可能であるが、アルミ箔を集電体に用いた従来の電極では容量が小さいため、前述の発泡状ニッケルのような多孔体に活物質を充填した電極が好ましい。
【0048】
電解液は水系・非水系ともに使用できるが、非水系の方が電圧を高く設定できるため好ましい。水系では電解質として水酸化カリウムなどが使用できる。非水系としては、イオン液体がカチオンとアニオンの組み合わせで多数有る。カチオンとしては低級脂肪族4級アンモニウム、低級脂肪族4級ホスホニウム及びイミダゾリニウム等が使用され、アニオンとしては、金属塩化物イオン、金属フッ化物イオン、及びビス(フルオロスルフォニル)イミド等のイミド化合物などが知られている。また、極性非プロトン性有機溶媒があり、具体的にはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びスルホラン等が使用される。非水電解液中の支持塩としては4フッ化ホウ酸リチウム、6フッ化リン酸リチウム、およびイミド塩等が使用されている。
【0049】
(溶融塩電池)
アルミニウム多孔体は、溶融塩電池用の電極材料として使用することもできる。アルミニウム多孔体を正極材料として使用する場合は、活物質として亜クロム酸ナトリウム(NaCrO2)、二硫化チタン(TiS2)等、電解質となる溶融塩のカチオンをインターカレーションすることができる金属化合物を使用する。活物質は導電助剤及びバインダーと組み合わせて使用する。導電助剤としてはアセチレンブラック等が使用できる。またバインダーとしてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を使用できる。活物質として亜クロム酸ナトリウムを使用し、導電助剤としてアセチレンブラックを使用する場合には、PTFEはこの両者をより強固に固着することができ好ましい。
【0050】
アルミニウム多孔体は、溶融塩電池用の負極材料として用いることもできる。アルミニウム多孔体を負極材料として使用する場合は、活物質としてナトリウム単体やナトリウムと他の金属との合金、カーボン等を使用できる。ナトリウムの融点は約98℃であり、また温度が上がるにつれて金属が軟化するため、ナトリウムと他の金属(Si、Sn、In等)とを合金化すると好ましい。このなかでも特にナトリウムとSnとを合金化したものは扱いやすいため好ましい。ナトリウム又はナトリウム合金は、アルミニウム多孔体の表面に電解メッキ、溶融メッキ等の方法で担持させることができる。また、アルミニウム多孔体にナトリウムと合金化させる金属(Si等)をメッキ等の方法で付着させた後、溶融塩電池中で充電することでナトリウム合金とすることもできる。
【0051】
図11は上記の電池用電極材料を用いた溶融塩電池の一例を示す断面模式図である。溶融塩電池は、アルミニウム多孔体のアルミ骨格部の表面に正極用活物質を担持した正極121と、アルミニウム多孔体のアルミ骨格部の表面に負極用活物質を担持した負極122と、電解質である溶融塩を含浸させたセパレータ123とをケース127内に収納したものである。ケース127の上面と負極との間には、押え板124と押え板を押圧するバネ125とからなる押圧部材126が配置されている。押圧部材を設けることで、正極121、負極122、セパレータ123の体積変化があった場合でも均等押圧してそれぞれの部材を接触させることができる。正極121の集電体(アルミニウム多孔体)、負極122の集電体(アルミニウム多孔体)はそれぞれ、正極端子128、負極端子129に、リード線130で接続されている。
【0052】
電解質としての溶融塩としては、動作温度で溶融する各種の無機塩又は有機塩を使用することができる。溶融塩のカチオンとしては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)等のアルカリ金属、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)等のアルカリ土類金属から選択した1種以上を用いることができる。
【0053】
溶融塩の融点を低下させるために、2種以上の塩を混合して使用することが好ましい。
例えばカリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド<K-N(SOF);KFSA>とナトリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド<Na-N(SOF);NaFSA>とを組み合わせて使用すると、電池の動作温度を90℃以下とすることができる。
【0054】
ところで、二次電池としては、電池容量を大きくするために正極、負極及びセパレータを何層にも積み重ねてなる電極積層体を電池に収納するのが一般的である。この電極積層体として図2及び図3に示すものがある。
図2に示すものは、電池ケース21内に正極板23とセパレータ24と負極板25をこの順に積層した電極積層体22を収容したものである(以下「積層型」という)。なお、図示していないが、複数枚の正極板23の各一端には正極タブが設けられ、これに正極リードが接続され、また、複数枚の負極板25の各一端には負極タブがもうけられ、これに負極リードが接続され、このリードは電池ケース21から外部に引き出される。電池ケース21の内部には溶融塩電解質が封入されている。
【0055】
図3に長尺の電極を巻回して得た円筒型の電極積層体を示す。
図3において、巻回型の電極積層体30は、正極31、負極32、セパレータ33およびセパレータ34からなり、セパレータ33、負極32、セパレータ34、正極の順に積層されて巻回されたのちに、加圧することにより、扁平状に形成され、電池ケースに収納される。図示していないが正極31には正極タブが、負極32には負極タブがそれぞれ接合されている。巻回された電極積層体が収納された電池ケースの内部には溶融塩電解質が含浸封入されている。
【0056】
図4に長尺の電極を巻回した偏平型の電極積層体示す
扁平型電池はセパレータ43を挟んで正極41と負極42とが対向配置された扁平渦巻状電極体40を有しており、この扁平渦巻状電極体40が、周縁同士がヒートシールされた閉口部46を備えるアルミラミネートから成る外装体45の収納空間内に配置されている構造である。また、このような構造の電池においては図示しないが、上記正極41と固定された正極集電タブと、上記負極42と固定された負極集電が外方に突出配置されて、二次電池としての充電及び放電が可能な構造となっている。
以下では、上記円筒形及び偏平型の電極積層体を巻回型の電極積層体という。
【0057】
上記の積層型と巻回型とを対比すると、巻回型の方が製造工程が簡単であるため、小型の二次電池用の電極としては有利である。そして、巻回型の電極は、長尺の電極を巻回することによって得られるが、円筒型の電極においてはその電池容量を高めるためには巻回中心部にも電極材料が密に存在していることが好ましく、このためには巻回中心部において小さな曲率半径で電極を巻き取る必要がある。また、偏平型の電極においては内側の電極の折れ曲がり部分は小さな曲率半径で折り曲げられることとなる。
【0058】
本発明者らが作製したアルミニウム多孔体に活物質を充填して得られた電極を用いて試験をしたところ、この電極は曲げ性が良くなく、φ20mmまでしか巻けず、これよりも小さい曲率半径で巻回すると割れ等が発生することが分かった。
本発明者らが種々試験を重ねた結果、アルミニウム多孔体への活物質の充填密度を調整することにより、電極を小さい曲率半径で巻回することが可能であることが分かった。
【0059】
従来の、アルミ箔に活物質を担持させたものにおける活物質の充填率は通常は65%である。
アルミニウム多孔体についても充填率を従来の物と同様に65%とすると小さい曲率半径で巻回すると割れ等が発生することが分かった。
なお、本発明におけるアルミニウム多孔体に活物質を充填してなる電極についての充填率とは以下に定義されるものである。
充填率=[アルミニウム多孔体を除く固体物質の真体積/(電極のみかけの体積−アルミニウム多孔体の真体積)]×100
【0060】
本発明者らは前記のアルミニウム多孔体の製造方法によって種々のアルミニウム多孔体を作製し、これに活物質を充填して試験を行ったところ、本発明者らが種々試験をした結果、集電体として適したものは、厚み1.0〜5.0mm、気孔率80〜98%、アルミニウム目付量90〜450g/m、気孔径50〜1000μmのものであり、アルミニウム多孔体に活物質を充填して、調厚して得られる電極において活物質の充填量を40〜65%とし、調厚後の厚みを0.1〜0.9mmとすることによって、φ2mmという径で巻回することができることを見出した。このφ2mmというのは現在用いられているニッケル−水素電池における巻回中心の巻き径とほぼ同等である。充填率が小さいほど曲げ性は良くなるが、充填率が小さすぎると電池容量が確保できなくなる。充填率は好ましくは50〜60%である。
【実施例】
【0061】
以下では、本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明する。これらの実施例は例示であって、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲の範囲によって示され、特許請求の範囲の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0062】
[実施例1]
(導電層の形成)
ウレタン樹脂多孔体として、気孔率97%、1インチ当たりの気孔数(セル数)約46個、気孔径約552μm、厚さ1mm、長さ1000mmのウレタン発泡体を準備した。このポリウレタンフォームの表面にスパッタ法で目付量10g/mのアルミニウム膜を形成して導電化処理した。
【0063】
(溶融塩めっき)
表面に導電層を形成したウレタン発泡体をワークとして、給電機能を有する治具にセットした後、アルゴン雰囲気かつ低水分(露点−30℃以下)としたグローブボックス内に入れ、温度40℃の溶融塩アルミめっき浴(33mol%EMIC−67mol%AlCl)に浸漬した。ワークをセットした治具を整流器の陰極側に接続し、対極のアルミニウム板(純度99.99%)を陽極側に接続した。電流密度3.6A/dmの直流電流を90分間印加してめっきすることにより、ウレタン発泡体表面に150g/mの重量のアルミニウムめっき層が形成されたアルミニウム構造体を得た。攪拌はテフロン(登録商標)製の回転子を用いてスターラーにて行った。ここで、電流密度はウレタン発泡体の見かけの面積で計算した値である。
【0064】
(発泡樹脂成形体の分解)
前記アルミニウム構造体を温度500℃のLiCl−KCl共晶溶融塩に浸漬し、−1Vの負電位を30分間印加した。溶融塩中にポリウレタンの分解反応による気泡が発生した。その後大気中で室温まで冷却した後、水洗して溶融塩を除去し、樹脂が除去されたアルミニウム多孔体を得た。得られたアルミニウム多孔体は連通気孔を有し、気孔率が芯材としたウレタン発泡体と同様に高いものであった。
得られたアルミニウム多孔体は純度が99.99%以上であり、厚み1mm、気孔率97%、アルミニウム目付量150g/m、気孔径552μmのものであった。
【0065】
(アルミニウム多孔体への活物質スラリーの充填)
(正極)
活物質としては平均粒径が5μmのコバルト酸リチウム粉末(正極活物質)を用意し、このコバルト酸リチウム粉末と、アセチレンブラック(導電助剤)と、PVDF(バインダー)とを質量%で90:5:5の割合で混合した。この混合物にN−メチル−2−ピロリドン(有機溶剤)を滴下して混合し、ペースト状の正極合剤スラリーを作製した。次に、この正極合剤スラリーをアルミニウム多孔体に充填した。その後、100℃で40分間乾燥させて有機溶剤を除去することにより正極用電極を得た。充填率は54%であった。
これをローラを用いて厚さ0.45mmに調厚したところ、充填率は56%となった。
【0066】
(負極)
活物質としては平均粒径が7μmのチタン酸リチウム粉末(負極正極活物質)を用意し、これに導電剤として平均粒子径0.4μmの炭素粉末と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを重量比で90:7:3となるように配合し、これらをN−メチル−2ピロリドン(有機溶剤)を滴下して混合し、ペースト状の負極合剤スラリーを作製した。次に、この正極合剤スラリーをアルミニウム多孔体に充填した。その後、100℃で40分間乾燥させて有機溶剤を除去することにより負極用電極を得た。充填率は54%であった。これをローラを用いて厚さ0.45mmに調厚したところ、充填率は54%となった。
【0067】
(セパレータ)
厚さ12μmのポリエチレン製多孔質フィルムを用いた。
【0068】
(電極積層体の作製)
前記のセパレータ、負極用電極、正極用電極を積層した後、中心部の巻き径は2mmとなるように渦巻状に巻回して円筒状の電極積層体を作製した。アルミニウム多孔体に割れを生じることなく巻回が可能であった。
【0069】
[実施例2]
正極及び負極へのスラリーの充填量を減らした以外は実施例1と同様にして、調厚後の充填率が40%の電極積層体を得た。これを2mmで巻き取ると割れが生じること巻き取ることができた。
【0070】
[比較例1]
正極及び負極へのスラリーの充填量を増加した以外は実施例1と同様にして、調厚後の充填率が65%の電極積層体を得た。これを2mmで巻き取ると割れが生じた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、積層電極多孔質樹脂成形体の芯材表面にアルミニウム膜を形成して成るシート状のアルミニウム構造体から多孔質樹脂成形体を安定して連続的に分解除去することができるので、各種フィルタ、触媒担体、電池用電極などにおいて、アルミニウムの特性が活かされる場合に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
(図1〜4)
1 正極
2 負極2
3 セパレータ(イオン伝導層)
4 電極積層体
5 正極活物質粉末
6 導電性粉末6
7 正極集電体7
8 負極活物質粉末
9 負極集電体
21 電池ケース
22 電極積層体
23 正極板
24 セパレータ
25 負極板
30 電極積層体
31 正極
32 負極
33、34 セパレータ
40 扁平渦巻状電極体
41 正極
42 負極
43 セパレータ
46 閉口部
45 外装体
(図5〜11)
1 発泡樹脂成形体
2 導電層
3 アルミニウムめっき層
11 帯状樹脂
12 サプライボビン
13 デフレクタロール
14 懸濁液
15 槽
16 熱風ノズル
17 絞りロール
18 巻取りボビン
21a,21b めっき槽
22 帯状樹脂
23,28 めっき浴
24 円筒状電極
25,27 正電極
26 電極ローラ
121 正極
122 負極
123 セパレータ
124 押さえ板
125 バネ
126 押圧部材
127 ケース
128 正極端子
129 負極端子
130 リード線
141 分極性電極
142 セパレータ
143 有機電解液
144 リード線
145 ケース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み1.0〜5.0mm、気孔率80〜98%、アルミニウム目付量90〜450g/m、気孔径50〜1000μmの三次元網目状アルミニウム多孔体に、活物質を含むスラリーを充填して乾燥し、次いで厚みを0.1〜0.9mmに調厚し、活物質の充填率を40〜65%とすることを特徴とする電極の製造方法。
【請求項2】
前記活物質の充填率を50〜60%とすることを特徴とする請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記三次元網目状アルミニウム多孔体が、導電処理をした多孔質基材の表面にアルミニウムの被膜を設け、次いで、該多孔体基材を除去することによって得られたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記アルミニウムの被膜が溶融塩めっきによって行われたことを特徴とする請求項3に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたことを特徴とする電極。
【請求項6】
請求項5に記載の電極とセパレータとを積層して巻回したことを特徴とする円筒状の電極積層体。
【請求項7】
請求項5に記載の電極をセパレータと積層して巻回したことを特徴とする偏平状の電極積層体。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の電極積層体を用いたことを特徴とする非水電解質電池。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の電極積層体を用いたことを特徴とする非水電解液を用いたキャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−114795(P2013−114795A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257605(P2011−257605)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】