説明

アルミニウム膜形成方法

【課題】簡便な方法で、均質かつ緻密なアルミニウム膜を形成する。
【解決手段】第一のアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体および有機溶媒を含有するアルミニウム膜形成用組成物を、金属酸化物層の表面に塗布して、塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、前記塗布膜に対して、加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも一種の処理を行い、アルミニウム膜を形成するアルミニウム膜形成工程と、を含むアルミニウム膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属アルミニウム材料は、その高い導電性と高い光学特性から、DRAMに代表される半導体デバイスの電極配線の用途や光学装置の反射膜の用途等に幅広く用いられている。
一般的にアルミニウム膜形成方法は、スパッタ法、蒸着法、化学気相成長方法がこれまで主流であった(特許文献1)。しかし、これらの方法は、真空チャンバーや高圧電流装置などの高価な装置を必要とするため高コストである。また、大口径の基体への適用が困難であるという問題がある。さらには、昨今の半導体デバイスの微細化、ならびに光学装置の形状の複雑化が進む中で、これら従来の手法では、膜中の欠陥の発生やステップカバレージ性の低下が生じるという問題もある。
これに対して、塗布による成膜方法は、高価な装置を必要とせず、成膜コストが比較的安価であり、液体材料の浸透力を利用して狭トレンチ基体上への良好な成膜も期待できる。
これまでに、水素化アルミニウム化合物、アルキル水素化アルミニウム等を用いた塗布型組成物によるアルミニウム膜成膜法が報告されている(特許文献2)。
また、チタン化合物等を含む液状の組成物を第一の圧力下で基体に塗布し、第二の圧力下において該基体を加熱処理後、該基体上に、アルミニウム膜形成用組成物を塗布し、該基体を加熱処理するアルミニウム膜形成方法が報告されている(特許文献3)。
これらの成膜法の利点として、簡便に低コストで、均一かつ緻密な膜質のアルミニウム膜を形成できること、および、開口幅が小さく、アスペクト比の大きいトレンチの内部等に良質のアルミニウム膜を形成できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−86673号公報
【特許文献2】特開2002−338891号公報
【特許文献3】特開2006−237392号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.K.Ruffら、J.Amer.Chem.Soc.、82巻,2141ページ,1960年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のアルミニウム膜形成方法において、下地膜を形成しない場合には、得られるアルミニウム膜の均一性が得られないという問題があった。
一方、チタン化合物等を含む液状の組成物を用いて、下地膜を形成した後に、該下地膜の表面上にアルミニウム膜を形成する場合には、全体の工程数(特に下地膜を形成する工程)が多くなるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑みて、基体上に、従来方法に比べてより簡便に、均質かつ緻密なアルミニウム膜を形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、金属酸化物層の表面に、特定のアルミニウム膜形成用組成物を塗布して、塗布膜を形成する工程と、該塗布膜に加熱処理等を行なってアルミニウム膜を形成する工程を含むアルミニウム膜形成方法によれば、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1]第一のアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体、および有機溶媒を含有するアルミニウム膜形成用組成物を、金属酸化物層の表面に塗布して、塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、前記塗布膜に対して、加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも一種の処理を行い、アルミニウム膜を形成するアルミニウム膜形成工程と、を含むことを特徴とする、アルミニウム膜形成方法。
[2]前記金属酸化物層が、銅、コバルト、タングステン、アルミニウム、ニッケル、ルテニウム、及びシリコンからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物からなる層である、前記[1]に記載のアルミニウム膜形成方法。
[3]前記アルミニウム膜形成用組成物が、さらに、前記錯体に含まれない第二のアミン化合物を含有する、前記[1]または[2]に記載のアルミニウム膜形成方法。
[4]前記第二のアミン化合物の配合量が、前記錯体および第二のアミン化合物の合計100質量%に対して、3〜70質量%である、前記[3]に記載のアルミニウム膜形成方法。
[5]前記アルミニウム膜形成用組成物が、さらにチタン化合物を含有する、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のアルミニウム膜形成方法。
[6]前記チタン化合物の配合量が、前記錯体およびチタン化合物の合計100モル%に対して、0.00001〜1モル%である、前記[5]に記載のアルミニウム膜形成方法。
[7]前記塗布膜形成工程の前に、基体上に前記金属酸化物層を形成する金属酸化物層形成工程を含む、前記[1]〜[6]のいずれかに記載のアルミニウム膜形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアルミニウム膜形成方法によれば、従来のように下地膜の形成に多くの工程を必要とせず、形成の容易な酸化銅等からなる金属酸化物層(下地膜)を形成するだけで、簡便に、均質かつ緻密なアルミニウム膜を基体上に形成させることができる。
また、金属酸化物層と、その上に形成されるアルミニウム膜は高い密着性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のアルミニウム膜形成方法は、(a)第一のアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体、および有機溶媒を含有するアルミニウム膜形成用組成物を、金属酸化物層の表面に塗布して、塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、(b)前記塗布膜に対して、加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも一種の処理を行い、アルミニウム膜を形成するアルミニウム膜形成工程とを含む。
【0010】
[工程(a)]
工程(a)は、第一のアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体、および有機溶媒を含有するアルミニウム膜形成用組成物を、金属酸化物層の表面に塗布して、塗布膜を形成する塗布膜形成工程である。
前記金属酸化物層を形成する金属酸化物は、好ましくは銅、コバルト、タングステン、アルミニウム、ニッケル、ルテニウム、及びシリコンからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属原子の酸化物であり、より好ましくは銅、コバルト、タングステン、ルテニウムの酸化物である。
【0011】
ここで、金属酸化物層とは、金属酸化物以外の材料からなる基体上に積層された金属酸化物の層、又は、金属酸化物からなる基体そのものをいう。
金属酸化物以外の材料からなる基体を構成する材料の材質、形状等は特に限定されるものではないが、材質は次工程の加熱処理に耐えられるものが好ましい。材質の具体例としては、ガラス、プラスチック、セラミックス、シリコン基板等が挙げられる。ガラスとしては、例えば石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、ソーダガラス、鉛ガラス等が挙げられる。プラスチックとしては、例えばポリイミド、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。さらに、これらの材質の形状は特に限定されるものでないが、バルク形状、板状、フィルム形状等が挙げられる。
基体上に金属酸化物層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スパッタ法、蒸着法、化学気相成長法等を用いて基体上に金属膜を成膜した後、得られた金属膜を酸素雰囲気下で加熱処理する方法等が挙げられる。加熱処理の温度は好ましくは50〜600℃、より好ましくは75〜400℃である。加熱時間は好ましくは1〜60分間、より好ましくは2〜10分間である。
なお、基体上に金属酸化物層を形成する工程(金属酸化物層形成工程)は、通常、工程(a)の前に設けられる。
【0012】
また、金属酸化物からなる基体とは、上述した金属原子の酸化物からなる基体であり、該金属原子をバルク形状、板状、フィルム形状等に成形し、酸素雰囲気下で加熱処理する方法等によって得ることができる。加熱処理の温度は好ましくは50〜600℃、より好ましくは75〜400℃である。加熱時間は好ましくは1〜60分間、より好ましくは2〜10分間である。
なお、金属酸化物以外の材料からなる基体と金属酸化物層との積層体、及び金属酸化物からなる基体は平面でも段差のある非平面でもよく、その形態は特に限定されるものではない。
【0013】
上記の金属酸化物層の表面に、後述するアルミニウム膜形成用組成物を塗布する方法としては、例えばスピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スプレー法、液滴吐出法等の方法を適宜用いることができる。塗布するに際して、アルミニウム膜形成用組成物が塗布される金属酸化物層の形状、大きさ等を考慮して、基体の隅々にまでアルミニウム膜形成用組成物が行き亘るような塗布条件が採用される。例えば塗布法としてスピンコート法を採用する場合には、スピナーの回転数を、好ましくは300〜2,500rpm、より好ましくは500〜2,000rpmとすることができる。
【0014】
本発明のアルミニウム膜形成方法に使用されるアルミニウム膜形成用組成物は、(A)第一のアミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体、および(B)有機溶媒を必須成分として含有し、その他に必要に応じて、(C)前記錯体に含まれない第二のアミン化合物及び(D)チタン化合物の一方または両方を含有することもできる。
ここで、水素化アルミニウム(しばしば慣用的に「アラン」と呼ばれる。)とは、アルミニウムと水素原子からなる化合物であり、一般的にはAlHで表される。
【0015】
本発明の方法に使用されるアルミニウム膜形成用組成物に含有される(A)第一のアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体は、例えばJ.K.Ruffら、J.Amer.Chem.Soc.,82巻,2141ページ,1960年、G.W.Fraserら、J.Chem.Soc.,3742ページ,1963年およびJ.L.Atwoodら、J.Amer.Chem.Soc.,113巻,8133ページ,1991年等に記載された方法に準じて合成することができる。
具体的には、例えば水素化リチウムアルミニウムのジエチルエーテル懸濁液にアミン化合物の塩化水素酸塩を添加し、例えばNガス中にて室温で撹拌しながら反応させて合成することができる。反応温度、反応溶媒等は、所望するアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体の種類に応じて適宜に選択される。
【0016】
本発明において用いられる第一のアミン化合物は、モノアミン化合物又はポリアミン化合物である。
上記モノアミン化合物としては、例えば下記式(1)
N ・・・(1)
(上記式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはアラルキル基である。)
で表されるモノアミン化合物、それ以外のモノアミン化合物を挙げることができる。
上記式(1)中のR、RおよびRのアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基は直鎖状であっても環状であってもよく、また分岐していてもよい。
【0017】
上記アルキル基としては、例えば炭素数1〜12のアルキル基を挙げることができる。具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、シクロヘキシル基、2−メチルブチル基、2−エチルヘキシル基等を挙げることができる。
上記アルケニル基としては、例えば不飽和基を有するアルケニル基を挙げることができる。具体例としては、例えばビニル基、アリル基、クロチル基、エチニル基等を挙げることができる。
上記アルキニル基としては、例えばフェニルエチニル基等を挙げることができる。
上記アリール基としては、例えばフェニル基等を挙げることができる。
上記アラルキル基としては、例えばベンジル基等を挙げることができる。
【0018】
上記式(1)で示される化合物の具体例としては、例えばアンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリシクロプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、トリ−2−メチルブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、ジメチルフェニルアミン、ジエチルフェニルアミン、ジイソブチルフェニルアミン、メチルジフェニルアミン、エチルジフェニルアミン、イソブチルジフェニルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、メチルエチルアミン、メチルブチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジオクチルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、メチルフェニルアミン、エチルフェニルアミン、イソブチルフェニルアミン、メチルアリルアミン、メチルビニルアミン、メチル(フェニルエチニル)アミン、フェニル(フェニルエチニル)アミン、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、シクロプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、2−メチルブチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、フェニルアミン、ベンジルアミン等を挙げることができる。
【0019】
上記式(1)で表されるモノアミン化合物以外のモノアミン化合物の具体例としては、例えば1−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(キヌクリジン)、1−アザシクロヘキサン、1−アザ−シクロヘキサン−3−エン、N−メチル−1−アザシクロヘキサン−3−エン等を挙げることができる。
【0020】
上記ポリアミン化合物としては、例えばジアミン化合物、トリアミン化合物、テトラアミン化合物等を挙げることができる。
上記ジアミン化合物としては、例えばエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジフェニルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、フェニレンジアミン等を挙げることができる。
上記トリアミン化合物としては、例えばジエチレントリアミン、1,7−ジメチル−1,4,7−トリアザヘプタン、1,7−ジエチル−1,4,7−トリアザヘプタン、N,N’,N’’−トリメチル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン等を挙げることができる。
上記テトラアミン化合物としては、例えばトリメチレンテトラアミン、トリエチレンテトラアミン等を挙げることができる。
【0021】
これらアミン化合物のうち、上記式(1)で表されるモノアミン化合物を使用することが好ましい。中でも、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、メチルエチルアミン、メチルブチルアミン、メチルフェニルアミン、エチルフェニルアミン、イソブチルフェニルアミン、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、シクロプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、2−メチルブチルアミン、n−ヘキシルアミン又はフェニルアミンを使用することがより好ましく、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリイソブチルアミン又はトリ−t−ブチルアミンを使用することが特に好ましい。
これらのアミン化合物は、一種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明の方法に使用されるアルミニウム膜形成用組成物に含有される(B)有機溶媒は、上記の第一のアミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体、及び後述する任意の添加成分を溶解し、かつ、これらと反応しないものであれば特に限定されない。例えば、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、その他の極性溶媒等を用いることができる。
【0023】
上記炭化水素溶媒としては、例えばn−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、シクロオクタン、デカン、シクロデカン、ジシクロペンタジエンの水素化物、ベンゼン、トルエン、キシレン、デュレン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、スクワラン等を挙げることができる。
【0024】
上記エーテル溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、フェントール、2−メチルフェントール、3−メチルフェントール、4−メチルフェントール、ベラトロール、2−エトキシアニソール、1,4−ジメトキシベンゼン等を挙げることができる。
上記極性溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム等を挙げることができる。
これらの有機溶媒は、単独でも、あるいは2種以上を混合して使用することもできる。
【0025】
これらの中でも、溶解性と形成される溶液の安定性の観点から、炭化水素溶媒、又は、炭化水素溶媒とエーテル溶媒との混合溶媒を用いるのが好ましい。その際、炭化水素溶媒としては、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、ベンゼン、トルエン又はキシレンを使用することが好ましい。エーテル溶媒としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、フェントール、ベラトロール、2−エトキシアニソール、1,4−ジメトキシベンゼンを使用することが好ましい。
【0026】
本発明の方法に使用されるアルミニウム膜形成用組成物に、必要に応じて含有される(C)前記錯体に含まれない第二のアミン化合物は、モノアミン化合物又はポリアミン化合物である。
第二のアミン化合物は、本明細書の段落0016〜0020に記載された、第一のアミン化合物と同じアミン化合物を使用することができる。
中でも、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−t−ブチルアミン、メチルエチルアミン、メチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンを使用することが好ましく、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミンがより好ましい。
これらのアミン化合物は、単独でも、あるいは2種以上の化合物を混合して使用することもできる。これら第二のアミン化合物を加えることにより、アルミニウム膜形成用組成物の保存安定性および高温下での材料安定性が向上する。
【0027】
本発明の方法に使用されるアルミニウム膜形成用組成物に、必要に応じて含有される(D)チタン化合物としては、例えば下記式(2)〜(6)で表される化合物を挙げることができる。
Ti(OR ・・・(2)
(上記式(2)中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン化フェニル基である。)
【0028】
Ti(OR4−x ・・・(3)
(上記式(3)中、Rは上記式(2)のRと同じである。Lは下記化学式(7)で表される基である。xは0〜3の整数である。)
【化1】

(上記化学式(7)中のRおよびR10は同一もしくは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、またはハロゲン化フェニル基である。)
【0029】
Ti(OR11(X)4−y ・・・(4)
(上記式(4)中、R11は炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基であり、Xはハロゲン原子である。yは0〜3の整数である。)
Ti(NR1213 ・・・(5)
(上記式(5)中、R12およびR13は同一もしくは異なり、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基である。)
Ti(Cp)(Y)4−n ・・・(6)
(上記式(6)中、Cpはシクロペンタジエニル基である。Yはハロゲン原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。nは1〜4の整数である。)
【0030】
上記式(2)、(3)中のRおよびRは、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、トリフルオロメチル基である。より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基である。
また、上記化学式(1)中のRないしR10は、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、トルフルオロメチル基である。より好ましくは、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、トルフルオロメチル基である。
【0031】
上記式(2)で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばチタニウムメトキシド、チタニウムエトキシド、チタニウム−n−プロポキシド、チタニウム−n−ノニルオキシド、チタニウムステアリルオキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウム−n−ブトキシド、チタニウムイソブトキシド、チタニウム−t−ブトキシド、チタニウムトリメチルシロキシド、チタニウム−2−エチルヘキソオキシド、チタニウムメトキシプロポキシド、チタニウムフェノキシド、チタニウムメチルフェノキシド、チタニウムフルオロメトキシド、及びチタニウムクロロフェノキシド等を挙げることができる。
【0032】
上記式(3)で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばテトラキス(ペンタ−2,4−ジケト)チタニウム、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタ−3,5−ジケト)チタニウム、テトラキス(1−エトキシブタン−1,3−ジケト)チタニウム、テトラキス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタ−2,4−ジケト)チタニウム、(2,2−ジメチルヘキサ−3,5−ジケト)チタニウム、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)チタニウムジメトキシド、ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタ−3,5−ジケト)チタニウムジメトキシド、ビス(1−エトキシブタン−1,3−ジケト)チタニウムジメトキシド、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタ−2,4−ジケト)チタニウムジメトキシド、(2,2−ジメチルヘキサ−3,5−ジケト)チタニウムジメトキシド、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)チタニウムジ−i−プロポキシド、ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタ−3,5−ジケト)チタニウムジ−i−プロポキシド、ビス(1−エトキシブタン−1,3−ジケト)チタニウムジ−i−プロポキシド、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタ−2,4−ジケト)チタニウムジ−i−プロポキシド、(2,2−ジメチルヘキサ−3,5−ジケト)チタニウムジ−i−プロポキシド等を挙げることができる。
【0033】
上記式(4)で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばトリメトキシチタニウムクロライド、トリエトキシチタニウムクロライド、トリ−n−プロポキシチタニウムクロライド、トリ−i−プロポキシチタニウムクロライド、トリ−n−ブトキシチタニウムクロライド、トリ−t−ブトキシチタニウムクロライド、トリイソステアロイルチタニウムクロライド、ジメトキシチタニウムジクロライド、ジエトキシチタニウムジクロライド、ジ−n−プロポキシチタニウムジクロライド、ジ−i−プロポキシチタニウムジクロライド、ジ−n−ブトキシチタニウムジクロライド、ジ−t−ブトキシチタニウムジクロライド、ジイソステアロイルチタニウムジクロライド、メトキシチタニウムトリクロライド、エトキシチタニウムトリクロライド、n−プロポキシチタニウムトリクロライド、i−プロポキシチタニウムトリクロライド、n−ブトキシチタニウムトリクロライド、t−ブトキシチタニウムトリクロライド、イソステアロイルチタニウムトリクロライド、チタニウムテトラクロライド等を挙げることができる。
【0034】
上記式(5)で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばテトラキス(ジメチルアミノ)チタニウム、テトラキス(ジエチルアミノ)チタニウム、テトラキス(ジ−t−ブトキシアミノ)チタニウム、テトラキス(ジ−i−プロポキシアミノ)チタニウム、テトラキス(ジフェニルアミノ)チタニウム等を挙げることができる。
【0035】
上記式(6)で表されるチタン化合物の具体例としては、例えばジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルチタニウムジブロマイド、シクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド、シクロペンタジエニルチタニウムトリブロマイド、ジシクロペンタジエニルジメチルチタニウム、ジシクロペンタジエニルジエチルチタニウム、ジシクロペンタジエニルジ−t−ブチルチタニウム、ジシクロペンタジエニルフェニルチタニウムクロライド、ジシクロペンタジエニルメチルチタニウムクロライド等を挙げることができる。
【0036】
本発明の方法に使用されるアルミニウム膜形成用組成物に、必要に応じて含有される(C)前記錯体に含まれない第二のアミン化合物の配合量は、(A)第一のアミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体と(C)第二のアミン化合物との合計100質量%に対して、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、特に好ましくは3質量%〜50質量%である。
【0037】
本発明の方法に使用されるアルミニウム膜形成用組成物に、必要に応じて含有される(D)チタン化合物の配合量は、(A)第一のアミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体及び(D)チタン化合物の合計100モル%に対して、好ましくは1モル%以下であり、より好ましくは0.00001〜1モル%であり、特に好ましくは0.00005〜0.01モル%である。チタン化合物をこの範囲の含有量とすることにより、良好な埋め込み性と、組成物の安定性を両立することができる。
【0038】
アルミニウム膜形成用組成物中の(B)有機溶媒と(C)第二のアミン化合物とを除いた質量が組成物の全質量中に占める割合(以下、「非揮発成分含有率」という。)は、成膜すべきアルミニウム膜の膜厚に応じて変動させるのが望ましい。例えば、アルミニウム膜の膜厚が200nm未満の場合、アルミニウム膜形成用組成物中の非揮発成分の含有率は、好ましくは50質量%未満であり、より好ましくは30質量%以下である。また、アルミニウム膜の膜厚が200nm以上である場合には、アルミニウム膜形成用組成物の非揮発成分の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。
【0039】
本発明の方法に使用されるアルミニウム膜形成用組成物の製造方法は特に限定されるものではない。例えば、上記第一のアミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体を有機溶媒の存在下で合成した後、副生物等の不溶物をフィルター等で除去した溶液をそのままアルミニウム膜形成用組成物として用いることができる。あるいはまた、この溶液に所望の有機溶媒を添加した後、反応に用いた溶媒、例えばジエチルエーテルを減圧下で除去することによって、アルミニウム膜形成用組成物としてもよい。
【0040】
本発明の方法に使用されるアルミニウム膜形成用組成物が第二のアミン化合物を含有するものである場合、アルミニウム膜形成用組成物は、例えば上記のようにして製造した、第一のアミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体を含有する溶液に、攪拌しながら所定量の第二のアミン化合物の溶液を添加して調製することができる。添加するときの溶液の温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは5〜100℃である。攪拌する時間は、好ましくは0.1〜120分間、より好ましくは0.2〜60分間である。このような条件で混合することにより、安定な組成物を得ることができる。
【0041】
本発明の方法に使用されるアルミニウム膜形成用組成物がチタン化合物を含有するものである場合、アルミニウム膜形成用組成物は、例えば上記のようにして製造した、第一のアミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体を含有する溶液に、攪拌しながら所定量のチタン含有化合物の溶液を添加して調製することができる。添加するときの溶液の温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは5〜100℃である。攪拌する時間は、好ましくは0.1〜120分間、より好ましくは0.2〜60分間である。このような条件で混合することにより、安定な組成物を得ることができる。
【0042】
上記工程(a)の後、塗布したアルミニウム膜形成用組成物中に含有される有機溶媒等の低沸点成分を除去するために、溶媒除去工程として加熱処理を行ってもよい。加熱する温度及び時間は、使用する溶媒の種類、沸点(蒸気圧)により異なるが、例えば100〜350℃において、5〜90分間とすることができ、好ましくは100〜250℃において、10〜60分間である。このとき、系全体を減圧にすることで、溶媒の除去をより低温で行うこともできる。
【0043】
[工程(b)]
工程(b)は、前記工程(a)において得られた塗布膜に対して加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも一種の処理を行う工程である。
【0044】
上記加熱処理温度は、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70℃〜600℃であり、特に好ましくは100℃〜400℃である。加熱時間は、好ましくは30秒間〜120分間であり、より好ましくは1〜90分間、特に好ましくは10〜60分間である。
上記光照射処理に用いる光源としては、例えば水銀ランプ、重水素ランプ、希ガスの放電光、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、希ガスハロゲンエキシマレーザー等を挙げることができる。上記水銀ランプとしては、例えば低圧水銀ランプ又は高圧水銀ランプ等を挙げることができる。上記希ガスの放電光に用いる希ガスとしては、例えばアルゴン、クリプトン、キセノン等を挙げることができる。上記希ガスハロゲンエキシマレーザーに使用する希ガスハロゲンとしては、例えばXeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArCl等を挙げることができる。
【0045】
これらの光源の出力としては、好ましくは10〜5,000Wであり、より好ましくは100〜1,000Wである。これらの光源の波長は特に限定されないが、好ましくは170nm〜600nmである。また、形成されるアルミニウム膜の膜質の観点から、レーザー光の使用が特に好ましい。
また、より良好なアルミニウム膜を形成する目的で、酸化性ガス雰囲気下でプラズマ酸化させることもできる。このときのプラズマ酸化の酸化条件としては、例えばRF電力を20〜100Wとし、導入ガスとして酸素ガスを90〜100%とし、残りをアルゴンガスとし、導入ガスの導入圧を0.05〜0.2Paとし、プラズマ酸化時間を10秒間から240秒間とすることができる。
【0046】
上記塗布膜形成工程、溶媒除去工程、及び加熱処理及び/又は光照射処理工程を実施する際の雰囲気は、アルミニウム膜の形成を促進する観点から、酸化条件であることが好ましい。
酸化条件を実現する酸化性ガスとしては、例えば水蒸気、酸素、オゾン、一酸化炭素、炭素数が1〜3までの過酸化物、アルコール、アルデヒド等が挙げられる。中でも水蒸気、酸素、オゾンが好ましい。また、上記酸化性ガスと不活性ガスとを混合することも酸化条件のコントロールの観点から好ましい。上記不活性ガスとしては、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。不活性ガスと酸化性ガスの合計に占める酸化性ガスの割合は、好ましくは1〜70モル%であり、より好ましくは3〜40モル%である。
【0047】
上記加熱処理及び光照射処理は、どちらか一方のみを行ってもよく、加熱処理と光照射処理の双方を行ってもよい。加熱処理と光照射の双方を行う場合には、その順番の前後は問わず、加熱処理と光照射を同時に行ってもよい。中でも、加熱処理のみを行う、又は加熱処理と光照射の双方を行うことが好ましい。また、より良好なアルミニウム膜を形成する観点から、上記加熱処理及び/又は光照射処理工程とは別にプラズマ酸化を実施してもよい。
また、アルミニウム膜を形成する手法として、上記塗布膜形成工程において酸化性ガスを含まない不活性ガス雰囲気下でアルミニウム膜を形成し、次いで陽極酸化することでアルミニウム膜を形成する手法を採用することもできる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の操作は、特に記した場合を除き、すべて乾燥窒素雰囲気下で実施した。また、用いた溶媒は、すべて事前にモレキュラーシーブス4A(ユニオン昭和社製)で脱水し、かつ窒素ガスをバブリングすることにより脱気した。
比抵抗はナプソン社製の探針抵抗率測定器(形式「RT−80/RG−80」)により測定した。
膜厚及び膜密度はフィリップス社製の斜入射X線分析装置(形式「X’Pert MRD」)により測定した。
ESCAスペクトルは日本電子社製の測定器(形式「JPS80」)にて測定した。
反射率は日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計(型式「U−4100」)にて測定した。
また、密着性について、JIS K−5600−5−6に準拠して碁盤目テープ法により評価した。
【0049】
(合成例1)アルミニウム膜形成用組成物の調製
1−1.第一のアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体の合成
磁気攪拌子を入れた200mLの三口フラスコ中に水素化リチウムアルミニウム3.80gを仕込んだ。三口フラスコの3つの接続口にはそれぞれ100mLの粉体添加用漏斗、窒素気流に接続した吸引栓三方コック、及びガラス栓を接続した。トリエチルアミンの塩化水素酸塩17.80gを粉体添加用漏斗に仕込んだ後に、三口フラスコを吸引栓三方コックを介して窒素シール下においた。
上記の三口フラスコにガラス製シリンジを用いてヘキサン100mLを加えた。マグネチックスターラにより回転数1,000rpmで攪拌しながら、トリエチルアミンの塩化水素酸塩を10分間かけて三口フラスコ中に徐々に落とした後、更に2時間攪拌を継続した。
その後、ポリテトラフロロエチレン製のチューブの先端に脱脂綿(日本薬局方脱脂綿)を詰めたものを用いて、反応混合物を圧送により別容器に取り出し、次いでポリテトラフロロエチレン製の孔径0.1μmのメンブランフィルタ(Whatman Inc.製)により濾過した。濾液は300mLなす型フラスコで受け、濾過終了後に磁気攪拌子を入れ、吸引栓三方コックを装着した。
この吸引栓三方コックを、トラップを介して真空ポンプに接続し、マグネチックスターラによって回転数300rpmで攪拌しながら減圧にて溶媒を除去した。溶媒除去後、残存物をポリテトラフロロエチレン製の孔径0.1μmのメンブランフィルタ(Whatman Inc.製)を用いて濾過することにより、トリエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体10.25gを、無色透明の液体として得た(収率55%)。
【0050】
1−2.第一のアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体と第二のアミン化合物と溶媒との混合調製
上記1−1で得られたトリエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体4.00gにトリエチルアミン1.01gを加えた後、4−メチルアニソールを加えて全量を8.00gとすることにより、トリエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体を50質量%含有する溶液を調製した。
【0051】
1−3.チタン化合物を含有する溶液の調製
シクロペンタジエニルチタニウムトリクロリド0.11gを30mLガラス容器に仕込み、ここへ4−メチルアニソールを加えて全量を25.00gとした。十分に攪拌した後、室温で4時間静置し、次いでこれをポリテトラフロロエチレン製の孔径0.1μmのメンブランフィルタ(Whatman Inc.製)を用いて濾過することにより、シクロペンタジエニルチタニウムトリクロリドを20μmol/g含有する溶液を得た。
【0052】
1−4.アルミニウム膜形成用組成物の調製
上記1−2で調製したトリエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体を50質量%含有する溶液0.50mLに、上記1−3で調製したシクロペンタジエニルチタニウムトリクロリドを20μmol/g含有する溶液27μlを、室温にて攪拌下に加え、次いで1分間攪拌を継続することにより、アルミニウム膜形成用組成物を調製した。
【0053】
(合成例2)第二のアミン化合物を含まないアルミニウム膜形成用組成物の調製
上記1−1で調製したトリエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体を50質量%含有する溶液0.50mLに、上記1−3で調製したシクロペンタジエニルチタニウムトリクロリドを20μmol/g含有する溶液27μlを、室温にて攪拌下に加え、次いで1分間攪拌を継続することにより、第二のアミン化合物を含まないアルミニウム膜形成用組成物を調製した。
(合成例3)チタン化合物を含まないアルミニウム膜形成用組成物の調製
上記1−2で調製したトリエチルアミンと水素化アルミニウムとの錯体を50質量%含有する溶液0.50mLを1分間攪拌を継続することにより、チタン化合物を含まないアルミニウム膜形成用組成物を調製した。
【0054】
(実施例1)
シリコン基板にスパッタ法により金属銅を成膜した。得られた膜を酸素雰囲気下において400℃で加熱を行い酸化銅とした。得られた金属酸化物層の厚さは80nmであった。
次いで酸化銅で成膜されたシリコン基板をスピンコーターに再び装着し、上記(合成例1)で調製したアルミニウム膜形成用組成物4mlを酸化銅層表面に滴下し、回転数600rpmで10秒間スピンさせた。この基板を150℃のホットプレートで10分間加熱した。その後、基板を更に300℃で10分間加熱したところ、基板表面は金属光沢を有する膜で覆われた。
この膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。膜厚=160nm、酸化銅を含むシート抵抗値=0.34Ω/□、700nm波長での反射率=65%であった。
また、密着性について、JIS K−5600−5−6に準拠して碁盤目テープ法により評価したところ、基板上に形成された酸化銅膜とアルミニウム膜との剥離が全く見られなかった。
【0055】
(実施例2)
上記(合成例1)で調製したアルミニウム膜形成用組成物4mlの代わりに、上記(合成例2)で調製した第二のアミン化合物を含まないアルミニウム膜形成用組成物4mlを用いる以外は実施例1と同様にして、基板表面に金属光沢を有する膜を得た。
この膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。膜厚=170nm、酸化銅を含むシート抵抗値=0.34Ω/□、700nm波長での反射率=55%であった。
また、密着性について、JIS K−5600−5−6に準拠して碁盤目テープ法により評価したところ、基板上に形成された酸化銅膜とアルミニウム膜との剥離が全く見られなかった。
【0056】
(実施例3)
上記(合成例1)で調製したアルミニウム膜形成用組成物4mlの代わりに、上記(合成例3)で調製したチタン化合物を含まないアルミニウム膜形成用組成物4mlを用いる以外は実施例1と同様にして、基板表面に金属光沢を有する膜を得た。
この膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。膜厚=100nm、酸化銅を含むシート抵抗値=0.64Ω/□、700nm波長での反射率=35%であった。
また、密着性について、JIS K−5600−5−6に準拠して碁盤目テープ法により評価したところ、基板上に形成された酸化銅膜とアルミニウム膜との剥離が全く見られなかった。
【0057】
(実施例4)
シリコン基板にスパッタ法によりタングステンを成膜した。得られた膜を酸素雰囲気下において600℃で加熱を行い酸化タングステンとした。得られた金属酸化物層の厚さは100nmであった。
次いで酸化タングステンで成膜されたシリコン基板をスピンコーターに再び装着し、上記(合成例1)で調製したアルミニウム膜形成用組成物4mlを酸化タングステン層表面に滴下し、回転数600rpmで10秒間スピンさせた。この基板を150℃のホットプレートで10分間加熱した。その後、基板を更に300℃で10分間加熱したところ、基板表面は金属光沢を有する膜で覆われた。
この膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。膜厚=120nm、酸化タングステンを含むシート抵抗値=0.60Ω/□、700nm波長での反射率=53%であった。
また、密着性について、JIS K−5600−5−6に準拠して碁盤目テープ法により評価したところ、基板上に形成された酸化タングステン膜とアルミニウム膜との剥離が全く見られなかった。
【0058】
(実施例5)
シリコン基板にスパッタ法によりコバルトを成膜した。得られた膜を酸素雰囲気下において600℃で加熱を行い酸化コバルトとした。得られた金属酸化物層の厚さは50nmであった。
次いで酸化コバルトで成膜されたシリコン基板をスピンコーターに再び装着し、上記(合成例1)で調製したアルミニウム膜形成用組成物4mlを酸化コバルト層表面に滴下し、回転数600rpmで10秒間スピンさせた。この基板を150℃のホットプレートで10分間加熱した。その後、基板を更に300℃で10分間加熱したところ、基板表面は金属光沢を有する膜で覆われた。
この膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。膜厚=130nm、酸化コバルトを含むシート抵抗値=0.55Ω/□、700nm波長での反射率=60%であった。
また、密着性について、JIS K−5600−5−6に準拠して碁盤目テープ法により評価したところ、基板上に形成された酸化コバルト膜とアルミニウム膜との剥離が全く見られなかった。
【0059】
(実施例6)
シリコン基板にスパッタ法によりルテニウムを成膜した。得られた膜を酸素雰囲気下において600℃で加熱を行い酸化ルテニウムとした。得られた金属酸化物層の厚さは40nmであった。
次いで酸化ルテニウムで成膜されたシリコン基板をスピンコーターに再び装着し、上記(合成例1)で調製したアルミニウム膜形成用組成物4mlを酸化ルテニウム表面に滴下し、回転数600rpmで10秒間スピンさせた。この基板を150℃のホットプレートで10分間加熱した。その後、基板を更に300℃で10分間加熱したところ、基板表面は金属光沢を有する膜で覆われた。
この膜のESCAスペクトルを観察したところ、73.5eVにAl2pに帰属されるピークが観察され、この膜がアルミニウム膜であることが分かった。膜厚=100nm、酸化ルテニウムを含むシート抵抗値=0.60Ω/□、700nm波長での反射率=40%であった。
また、密着性について、JIS K−5600−5−6に準拠して碁盤目テープ法により評価したところ、基板上に形成された酸化ルテニウム膜とアルミニウム膜との剥離が全く見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体、および有機溶媒を含有するアルミニウム膜形成用組成物を、金属酸化物層の表面に塗布して、塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
前記塗布膜に対して、加熱処理および光照射処理から選ばれる少なくとも一種の処理を行い、アルミニウム膜を形成するアルミニウム膜形成工程と、
を含むことを特徴とする、アルミニウム膜形成方法。
【請求項2】
前記金属酸化物層が、銅、コバルト、タングステン、アルミニウム、ニッケル、ルテニウム、及びシリコンからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物からなる層である、請求項1に記載のアルミニウム膜形成方法。
【請求項3】
前記アルミニウム膜形成用組成物が、さらに、前記錯体に含まれない第二のアミン化合物を含有する、請求項1または2に記載のアルミニウム膜形成方法。
【請求項4】
前記第二のアミン化合物の配合量が、前記錯体および第二のアミン化合物の合計100質量%に対して、3〜70質量%である、請求項3に記載のアルミニウム膜形成方法。
【請求項5】
前記アルミニウム膜形成用組成物が、さらにチタン化合物を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム膜形成方法。
【請求項6】
前記チタン化合物の配合量が、前記錯体およびチタン化合物の合計100モル%に対して、0.00001〜1モル%である、請求項5に記載のアルミニウム膜形成方法。
【請求項7】
前記塗布膜形成工程の前に、基体上に前記金属酸化物層を形成する金属酸化物層形成工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミニウム膜形成方法。

【公開番号】特開2013−44002(P2013−44002A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181196(P2011−181196)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】