説明

アルミノシリケートZSM−12を作製する方法

アルミノシリケートZSM−12は、シリカ源及びアルミナ源を含有する反応混合物から、小結晶形態で新たに調製することができる。アルミノシリケートZSM−12の小結晶形態は、ボロシリケートZSM−12骨格におけるホウ素をアルミニウムに置き換えることによって、ボロシリケートZSM−12の小結晶形態から調製することもできる。アルミノシリケートZSM−12は、炭化水素供給原料油の異性化脱ろうなどのプロセスにおける異性化選択性触媒として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミノシリケートZSM−12組成物、アルミノシリケートZSM−12を直接的及び間接的に調製する方法、並びにZSM−12の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
モレキュラーシーブは、ガス流精製プロセス及び炭化水素転換プロセスなどのプロセスに関する化学工業に使用される一群の重要な材料である。モレキュラーシーブは、異なる大きさの相互接続細孔を有する多孔質固体である。モレキュラーシーブは通常、細孔に入ることができる分子を選択的に吸着し、大きすぎる分子を排除する1つ又は複数の分子寸法の細孔を有する一次元、二次元又は三次元の結晶性細孔構造を有する。孔径、細孔形状、格子の間隔又はチャネル、組成、結晶形態及び構造は、様々な炭化水素の吸着及び転換プロセスにおけるそれらの使用を決定する、モレキュラーシーブのいくつかの特徴である。
【0003】
石油工業及び石油化学工業では、最も商業的に有用なモレキュラーシーブはゼオライトとして知られている。ゼオライトは、[SiO]及び[AlO]四面体又は八面体の酸素原子を共有する角から形成される開骨格構造を有するアルミノシリケートである。移動性の余分な骨格カチオンが細孔に存在することで、ゼオライト骨格に沿った荷電を平衡化する。これらの荷電は、四面体の骨格カチオン(例えば、Si4+)を三価又は五価のカチオンと置換した結果である。余分な骨格カチオンは、これらの荷電を平衡にして骨格の電気的中性を保存し、これらのカチオンは、他のカチオン及び/又はプロトンと交換可能である。
【0004】
合成アルミノシリケートモレキュラーシーブ、特にゼオライトは、通常、水性媒体中にて、しばしば構造指向剤又はテンプレート剤の存在下でアルミナ源及びシリカ源を混合することによって合成される。形成されるモレキュラーシーブの構造は、様々な源の溶解性、シリカ対アルミナの比、カチオンの性質、合成条件(温度、圧力、混合撹拌)、添加の順序及びテンプレート剤の型などによって一部決定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
構造コードMTWを有するとして国際ゼオライト協会(IZA)に同定されたモレキュラーシーブが知られている。ZSM−12は公知の結晶質MTW材料であり、様々な触媒反応を含めて多くのプロセスに有用である。したがって、ZSM−12、特にこの材料の小結晶形態(small crystal form)を作製するための新規な方法が引き続き必要とされている。
【0006】
さらに、現在、触媒的n−パラフィン異性化に適当であるモレキュラーシーブを特定する必要がある。高品質の潤滑油は、現代の機械及び自動車の操作に必須である。大部分の潤滑油供給原料油は、高品質の潤滑油を生成するために脱ろうしなければばらない。接触脱ろうは、ワックスの溶媒抽出を超える利点を有し、前者は価値のある炭化水素処理技術である。接触脱ろうは、供給原料油におけるn−パラフィンのクラッキング及び/又は異性化によって達成することができる。
【0007】
一部の従来技術は接触脱ろうプロセスを比較的高い温度及び圧力で操作する結果、広範なクラッキング及び低価値の軽質ガスの生成をもたらす。したがって、より低い温度でのn−パラフィンの異性化による接触脱ろうが望ましい。したがって、炭化水素の異性化選択性及び転換率を改善した新規な触媒が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従って、酸化アルミニウムに対する酸化ケイ素のモル比が30から100の間であり、焼成後に表5の粉末X線回折(XRD)線を有するアルミノシリケートZSM−12モレキュラーシーブが提供される。
【0009】
アルミノシリケートZSM−12は、結晶化条件下で、(1)少なくとも1種の酸化ケイ素源、(2)少なくとも1種の酸化アルミニウム源、(3)周期表の1族及び2族から選択される少なくとも1種の元素源、(4)水酸化物イオン、(5)1,6−ビス(2,3−ジメチルイミダゾリウム)ヘキサンカチオン、並びに(6)任意選択により、ZSM−12を合成するのに適当な第二窒素含有構造指向剤、を接触させることによって調製される。
【0010】
本明細書における教示によって合成されるアルミノシリケートZSM−12は、合成されたまま、及び無水状態において、モル比を単位として、以下のとおりの組成を有する。
【表1】


表中、
(1)Mは、周期表の1族及び2族から選択される少なくとも1種の元素であり、
(2)Qは、カチオン性1,6−ビス(2,3−ジメチルイミダゾリウム)ヘキサンであり、Q>0であり、かつ
(3)Aは、第二窒素含有構造指向剤であり、A≧0である。
【0011】
本発明のさらなる態様によると、
(a)(1)少なくとも1種の酸化ケイ素源、(2)少なくとも1種の酸化ホウ素源、(3)周期表の1族及び2族から選択される少なくとも1種の元素源、(4)水酸化物イオン、(5)構造指向剤として、カチオン性1,4−ビス(トリメチルアンモニウム)ブタン又はカチオン性1,4−ビス(N−メチルピペリジニウム)ブタン、並びに(6)水を含有する反応混合物を調製するステップと、
b)ボロシリケートZSM−12の結晶を形成するのに十分な結晶化条件下に該反応混合物を維持するステップと、
c)該ボロシリケートZSM−12の骨格におけるホウ素をアルミニウムと置き換えることで、アルミノシリケートZSM−12を生成するステップと
によって、アルミノシリケートZSM−12を調製する方法が提供される。
【0012】
本発明は、供給原料を異性化条件下にて、酸化アルミニウムに対する酸化ケイ素のモル比が30から100の間であり、焼成後に表5の粉末XRD線を有するZSM−12モレキュラーシーブと接触させることによって、炭化水素質供給原料を転換するためのプロセスをも含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】比較例1に従って調製された不純なZSM−12の粉末XRDパターンを示す図である。
【図2】本発明の例2〜4及び6に従って調製された純粋なアルミノシリケートZSM−12の粉末XRDパターンを示す図である。
【図3】アルミノシリケートZSM−12の従来の(標準)試料に関するパターンと比較して、本発明の例7〜9に従って調製されたボロシリケートZSM−12の粉末XRDパターンを示す図である。
【図4】本発明の例8に従って調製されたボロシリケートZSM−12の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図5】本発明の例8に従って調製されたボロシリケートZSM−12の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図6】ボロシリケートZSM−12に関するパターンと比較して、本発明の例11に従って調製されたアルミノシリケートZSM−12の粉末XRDパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
導入
「活性源(active source)」という用語は、反応することが可能であり、ゼオライト構造に組み込むことができる形態における少なくとも1種の元素を供給することができる試薬又は前駆体材料を意味する。「源(source)」及び「活性源」という用語は、本明細書において、互いに交換して使用することができる。
【0015】
「周期表」という用語は、2007年6月22日付けのIUPAC元素周期表バージョンを指し、周期表族の番号付け体系は、Chemical and Engineering News、63(5)、27(1985)に記載されているとおりである。
【0016】
「異性化条件」という用語は、本明細書において、炭化水素質供給原料におけるn−パラフィンの異性化を可能又は促進する適当な温度、圧力、供給量及び触媒組成物などの物理的及び/又は化学的パラメーターの1つ又は複数のセットを指すために使用することができる。
【0017】
「異性化選択性」という用語は、本明細書において、触媒炭化水素転換プロセスの生成物におけるイソパラフィンに異性化される、炭化水素供給原料中の転換されたn−C10+アルカンの百分率を指すために使用することができる。
【0018】
ノルマル(n−)パラフィンに対するイソパラフィン(i−)の比(i/n比)は、特に断りのない限り、重量比を指す。
【0019】
許される範囲において、本出願書に引用されている全ての公表、特許及び特許出願は、こうした開示内容が本発明と矛盾しない範囲で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
別段の指定がない限り、そこから個々の成分又は成分の混合物が選択され得る、元素、材料又は他の成分のグループの記述は、列挙されている成分及びそれらの混合物の全ての可能な下位概念の組合せを含めることが意図されている。また、「含める」という用語及びその変形は非限定的であることが意図されており、一覧における品目の記述は、本発明の材料、組成物及び方法にも有用であり得る他の同様の品目を排除しない。
【0021】
アルミノシリケート及びボロシリケートZSM−12の反応混合物
アルミノシリケートZSM−12(Al−ZSM−12)を調製する際、1,6−ビス(2,3−ジメチルイミダゾリウム)ヘキサンジカチオンが、単独又は第二窒素含有構造指向剤(本明細書において下記で組成可変物「A」と称される)との組合せで使用される。Al−ZSM−12を作製するのに有用な1,6−ビス(2,3−ジメチルイミダゾリウム)ヘキサンは、以下の構造(1)によって表される。
【化1】

【0022】
一般に、Al−ZSM−12は、
(a)(1)少なくとも1種の酸化ケイ素源、(2)少なくとも1種の酸化アルミニウム源、(3)周期表の1族及び2族から選択される少なくとも1種の元素源、(4)水酸化物イオン、(5)1,6−ビス(2,3−ジメチルイミダゾリウム)ヘキサンカチオン、並びに(6)任意選択により、第二窒素含有構造指向剤を含有する反応混合物を調製するステップと、
(b)Al−ZSM−12モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な条件下で該反応混合物を維持するステップと
によって調製される。
【0023】
アルミノシリケートZSM−12モレキュラーシーブが形成される反応混合物の組成は、モル比を単位として、下記表1において同定されている。
【表2】


表中、
(1)Mは、周期表の1族及び2族から選択される少なくとも1種の元素であり、
(2)Qは、カチオン性1,6−ビス(2,3−ジメチルイミダゾリウム)ヘキサンであり、及びQ>0であり、並びに
(3)Aは第二窒素含有構造指向剤であり、及びA≧0である。
【0024】
Q/Aモル比は、反応混合物に第二窒素含有構造指向剤(A)がない場合を含むことを留意すべきである。その場合、反応混合物は、カチオン性1,6−ビス(2,3−ジメチルイミダゾリウム)ヘキサン(Q)だけを構造指向剤として含有する。一下位実施形態において、Q/Aモル比は0.05から0.3である。別の下位実施形態において、Q/Aモル比は0.05から0.2である。別の下位実施形態において、Q/Aモル比は0.05から約0.11である。
【0025】
本発明の一態様によると、アルミノシリケートZSM−12の小結晶形態は、ボロシリケートZSM−12骨格におけるホウ素をアルミニウムに合成後に置き換えることによって、ボロシリケートZSM−12の小結晶形態から調製することができる。前駆体ボロシリケートZSM−12の小結晶形態は、下に記載されているとおりに調製することができる。次いで、ボロシリケートZSM−12におけるホウ素をアルミニウムに置き換えることで、Si/Al比が低い小結晶サイズのアルミノシリケートZSM−12の合成への代替だが簡易な経路をもたらす。
【0026】
ボロシリケートZSM−12におけるホウ素をアルミニウムに置き換えることは、ボロシリケートZSM−12を硝酸アルミニウムなどのアルミニウム塩で適切に処理することによって容易に達成することができる。一実施形態において、本発明によってアルミニウムに置き換えることができるボロシリケートZSM−12におけるホウ素の割合は、約ゼロ(0)から約100%、通常約75%から約100%、しばしば約85%から約100%の範囲であってよい。下位実施形態において、ボロシリケート骨格におけるホウ素の少なくとも約50%がアルミニウムに置き換えられている。
【0027】
ボロシリケートZSM−12(B−ZSM−12)を調製する際、下記の構造2及び3によって表される1,4−ビス(トリメチルアンモニウム)ブタンジカチオン又は1,4−ビス(N−メチルピペリジニウム)ブタンジカチオンは、それぞれ、構造指向剤として使用される。
【化2】


【化3】

【0028】
一般に、ボロシリケートZSM−12は、
(a)(1)少なくとも1種の酸化ケイ素源、(2)少なくとも1種の酸化ホウ素源、(3)周期表の1族及び2族から選択される少なくとも1種の元素源、(4)水酸化物イオン、(5)構造指向剤としてカチオン性1,4−ビス(トリメチルアンモニウム)ブタン又はカチオン性1,4−ビス(N−メチルピペリジニウム)ブタン、並びに(6)水を含有する反応混合物を調製するステップと、
(b)ボロシリケートZSM−12の結晶を形成するのに十分な条件下で該反応混合物を維持するステップと
によって調製される。
【0029】
ボロシリケートZSM−12モレキュラーシーブが形成される反応混合物の組成は、モル比を単位として、下記の表2において同定される。
【表3】


表中、Mは、周期表の1族及び2族から選択される少なくとも1種の元素であり、Xは、カチオン性1,4−ビス(トリメチルアンモニウム)ブタン又はカチオン性1,4−ビス(N−メチルピペリジニウム)ブタンである。
【0030】
本発明において有用な酸化ケイ素源として、煙霧シリカ、沈殿シリケート、シリカヒドロゲル、ケイ酸(silicic acid)、コロイド状シリカ、テトラ−アルキルオルトシリケート(例えば、テトラエチルオルトシリケート)及びシリカ水酸化物が挙げられる。
【0031】
本発明において有用な酸化アルミニウム源として、アルミネート、アルミナ、並びにAlCl、AlSO、Al(OH)、カオリン粘土及び他のゼオライトなどのアルミニウム化合物が挙げられる。
【0032】
本発明において有用な酸化ホウ素源として、ホウケイ酸ガラス、アルカリボレート、ホウ酸、ホウ酸エステル、及び特定のゼオライトが挙げられる。酸化ホウ素源の非限定的な例として、カリウムテトラボレート十水和物及びホウ素ベータゼオライト(B−ベータゼオライト)が挙げられる。
【0033】
元素M源は、結晶化プロセスに有害ではない任意のM含有化合物であってよい。M含有化合物として、その酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩、クエン酸塩及び酢酸塩を挙げることができる。一下位実施形態において、組成可変物Mは、ナトリウム(Na)又はカリウム(K)である。一下位実施形態において、M含有化合物は、臭化物、ヨウ化物又はカリウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物である。
【0034】
モレキュラーシーブ反応混合物は、1種より多い源によって供給することができる。また、2種以上の反応成分が1種の源によって提供されてもよい。一例として、ボロシリケートモレキュラーシーブは、Cormaらに対して1999年10月26日に発行された米国特許第5,972,204号において教示されているとおり、ホウ素含有ベータモレキュラーシーブから合成することができる。
【0035】
Al−ZSM−12を合成するための反応混合物に使用される任意選択の第二窒素含有構造指向剤(A)は、MTW型材料を合成するのに適当な線状又は環状の第4級又はジ第4級アンモニウム化合物などの有機窒素含有化合物である。ZSM−12を合成するのに適当な構造指向剤は当技術分野において知られている(例えば、「モレキュラーシーブハンドブック(Handbook of Molecular Sieves)」、Szostak、Van Nostrand Reinhold、1992年;Szostakに対して1986年4月29日に発行された米国特許第4,585,639号;及びKuehlに対して1984年11月13日に発行された米国特許第4,482,531号を参照されたい)。例示的な構造指向剤として、メチルトリエチルアンモニウムカチオン及びテトラエチルアンモニウムカチオンなどのテトラアルキルアンモニウムカチオン;カチオン性ジメチルピロリジニウム;カチオン性ジメチルピペリジニウム;並びにカチオン性ジメチルピリジニウムが挙げられる。
【0036】
反応混合物は、バッチ式又は連続的に調製することができる。本発明のアルミノシリケートZSM−12の結晶サイズ、結晶形態及び結晶化時間は、反応混合物の性質及び結晶化条件で変動し得る。
【0037】
構造指向剤(Q及びA)は、通常、モレキュラーシーブの形成に有害ではない任意のアニオンであってよいアニオンを伴う。代表的なアニオンとして、塩化物、臭化物、ヨウ化物、水酸化物、酢酸塩、硫酸塩、テトラフルオロボレート及びカルボキシレートなどが挙げられる。
【0038】
結晶化及び合成後処理
実際に、ZSM−12は、(a)上記のとおりに反応混合物を調製すること、及び(b)モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件下で反応混合物を維持することによって合成される。反応混合物は、モレキュラーシーブの結晶が形成されるまで高温で保持される。モレキュラーシーブの水熱結晶化は、通例圧力下及び反応混合物が自生圧力(autogenous pressure)を受けるように通例オートクレーブ内で、典型的には、アルミノシリケート形成には140℃から約190℃及び通例約150℃から約170℃、並びにボロシリケート形成には約140℃から約200℃及び通例約150℃から約170℃の温度で行われる。
【0039】
反応混合物は、結晶化ステップ中に穏やかな撹拌又は激しい撹拌を受けてよい。本明細書に記載されているZSM−12モレキュラーシーブが、非晶質材料、ゼオライトと一致しない骨格トポロジーを有する相及び/又は他の不純物(例えば、有機炭化水素)など1種又は複数の微少量の不純物を含有し得ることは当業者によって理解されよう。
【0040】
水熱結晶化ステップ中、ZSM−12の結晶は、反応混合物から自然発生的に核生成するようにしてもよい。種材料としてのゼオライトの結晶を使用することは、完全な結晶化が生じるのに必要な時間を減少するのに有利であり得る。さらに、種結晶を導入することは、いかなる所望でない相よりも、ゼオライトの核形成及び/又形成を促進することによって、得られる生成物の純度の増加をもたらすことができる。種結晶として使用される場合、種子結晶は、反応混合物に使用される二酸化ケイ素源の重量の約0.5%から約5%の量で添加される。
【0041】
結晶が形成すると、固体生成物は、濾過などの機械的分離技術によって反応混合物から分離することができる。結晶を水洗浄し、次いで乾燥させることで、「合成されたまま」の結晶を得る。乾燥ステップは、大気圧又は真空下で行うことができる。
【0042】
ZSM−12は合成されたまま使用することができるが、通常、ゼオライトは熱処理される(焼成される)。「合成されたまま」という用語は、構造指向剤及び/又は元素Mの除去前の、結晶化後の形態におけるZSM−12を指す。有機物質は熱処理(例えば、焼成)によって、好ましくは酸化雰囲気(例えば、空気、又は他の0kPaより大きい酸素分圧のガス)中にて、ゼオライトから有機物質を除去するのに十分な温度(当業者によって容易に決定可能)で除去することができる。有機物質は、光分解技術によって、例えば、SDA含有ゼオライト生成物を可視光より短い波長を有する光線又は電磁放射線に、ゼオライトから有機物質を選択的に除去するのに十分な条件下で、実質的にNavrotsky及びParikhに対する米国特許第6,960,327号に記載されているとおりに暴露することによっても、除去することができる。
【0043】
通例、イオン交換によってZSM−12からアルカリ金属カチオンを除去すること、及びアルカリ金属カチオンを水素、アンモニウム又は所望の金属イオンに置き換えることが望ましい場合もある。ZSM−12は、Pt、Pd、Ni、Rh、Ir、Ru、Osを含めた周期表の8〜10族から選択される金属又はそれらの組合せなど様々な金属と、含浸又は物理的混合など並びにイオン交換によって組み合わせることができる。
【0044】
イオン交換、例えばパラジウム交換に続いて、ゼオライトは通常水で洗浄され、90℃から約120℃の範囲の温度で乾燥させる。洗浄後、ゼオライトを空気、水蒸気又は不活性ガス中にて、約315℃から約650℃の範囲の温度で、約1時間から約24時間、又はそれ以上の範囲の時間焼成し、特に炭化水素異性化及び脱ろうプロセスに有用な触媒活性生成物を生成することができる。
【0045】
モレキュラーシーブの特性決定
本明細書における教示に従って調製されたアルミノシリケートZSM−12は、表3においてモル比を単位として示されているとおりの、合成されたまま及び無水状態における組成を有する。
【表4】


表中、M、Q及びAは、上記のとおりである。
【0046】
本発明に従って調製されたアルミノシリケートZSM−12は、一般に約30から約100、及び一下位実施形態において約30から約80、及び別の下位実施形態において約30から約60のSiO/Alモル比を有する。本発明のアルミノシリケートZSM−12は通常、相互成長結晶(intergrown crystals)の凝集体として結晶化し、ここで、各凝集体は複数の細長い結晶子を含有する。各個々の結晶子は、約15nmから約25nmの範囲における幅及び約60nmから約80nmの範囲における長さを持ち、約20nm×約60nmの結晶子の平均寸法を持つ針状であってもよい。
【0047】
本明細書に記載されている方法によって合成されるZSM−12生成物は、それらの粉末X線回折(XRD)パターンによって特徴づけられる。回折パターンにおける軽微な変動は、格子定数における変化による、特定のボロシリケートZSM−12試料の骨格種のモル比の変動に起因し得る。さらに、十分小さい結晶はピークの形状及び強度に影響を及ぼし、有意なピーク広幅化に至る。回折パターンにおける軽微な変動は、ゼオライト調製に使用される有機テンプレートの構造における変動にも起因し得る。焼成が粉末XRDパターンにおける軽微なシフトを引き起こすこともある。これらの軽微な摂動にもかかわらず、基本的な結晶格子構造は変化しないままである。
【0048】
表4のXRDパターン線は、本明細書に示される教示に従って作製された、合成されたままのアルミノシリケートZSM−12を代表するものである。
【表5】

【0049】
表5のXRDパターン線は、本明細書に示される教示に従って作製された、焼成アルミノシリケートZSM−12を代表する。
【表6】

【0050】
本発明に従って調製されたボロシリケートZSM−12は、表6においてモル比を単位として示されているとおりの、合成されたまま及び無水状態における組成物を有し、ここで、X及びMは上記のとおりである。
【表7】

【0051】
本発明のボロシリケートZSM−12は通常、相互成長結晶の楕円形凝集体として結晶化し、ここで、凝集体は、約1μmの長さ及び約0.3μmから約0.5μmの範囲における幅を有する。
【0052】
表7のXRDパターン線は、本明細書に示される教示に従って作製された、合成されたままのボロシリケートZSM−12を代表するものである。
【表8】

【0053】
本明細書に示される粉末XRDパターン及びデータは、標準的技術によって収集された。放射線はCuK−α放射線であった。ピークの高さ及び位置は、θがブラッグ角である2θの関数として、ピークの相対的絶対強度から読み取られており、記録された線に対応するオングストローム単位の面間隔dを算出することができる。
【0054】
アルミノシリケートZSM−12の応用
Al−ZSM−12を含む触媒組成物
本発明のアルミノシリケートZSM−12を含む触媒組成物は、重量パーセントを単位として、表8に示されているとおりの組成を有することができる。
【表9】

【0055】
触媒としての商業的応用に関し、アルミノシリケートZSM−12は、適当なサイズ及び形状に形成することができる。この形成は、ペレット化、押出し及びそれらの組合せなどの技術によって行うことができる。押出しによって形成する場合、押し出される材料は、円筒状(cylinder)、三葉状(trilobe)、溝付きであってもよく、又は軸対称であり、供給原料材料がアルミノシリケートZSM−12押出し生成物の内面に拡散及びアクセスするのを促進する他の形状を有していてもよい。
【0056】
本発明のプロセスに使用するための触媒を調製する際、アルミノシリケートZSM−12結晶は、炭化水素転換プロセスに用いられる温度及び他の条件に耐えうるバインダーとの複合体とすることができる。バインダーを添加することで、触媒の粉砕強度を向上させることもできる。
【0057】
バインダー材料は、結晶質又は非晶質であってよい1種又は複数の耐火性酸化物を含んでいてもよく、又はゼラチン状沈殿物、コロイド、ゾル若しくはゲルの形態であってもよい。シリカゾルの形態のシリカは好ましいバインダーである。好ましいシリカゾルは、約30重量%のシリカ及び直径約7〜9nmの粒径を有し、これは、良好な摩滅抵抗性及び優れた粉砕強度を有する触媒をもたらす。
【0058】
本発明に有用なアルミノシリケートZSM−12の小結晶形態を含めて、モレキュラーシーブからペレット又は押出し物を形成することは、一般に、バインダーに加えて押出し助剤及び粘度調整剤の使用を伴う。これらの添加剤は通常、セルロース系材料、例えば、METHOCELセルロースエーテル(Dow Chemical Co.)、エチレングリコール及びステアリン酸などの有機化合物である。こうした化合物は当技術分野において知られている。これらの添加剤は、ペレット化後に、有害な残留物、即ち望ましくない反応性を持つもの又はゼオライトの細孔を閉塞し得るものを残さないことが重要である。
【0059】
触媒組成物を調製するための方法は当業者によく知られており、噴霧乾燥、ペレット化、押出し及び様々な球体作製技術などの従来技術が挙げられる。
【0060】
アルミノシリケートZSM−12及びバインダーの相対的比率は、広範に変動し得る。一般に、アルミノシリケートZSM−12含有量は、乾燥複合物の約1重量パーセント(wt%)から約99重量パーセント(wt%)の範囲であり、通例乾燥複合物の約5重量%から約95重量%、及びより典型的には乾燥複合物の約15重量%から約50重量%の範囲である。
【0061】
触媒は所望により、周期表の8〜10族から選択される1種又は複数の金属を含有することができる。一下位実施形態において、触媒は、Pt、Pd、Ni、Rh、Ir、Ru、Osからなる族から選択される金属及びそれらの混合物を含有する。別の下位実施形態において、触媒はパラジウム(Pd)又は白金(Pt)を含有する。本明細書に記載されている各実施形態に関し、触媒の8〜10族の金属含有量は、一般に0重量%から約10重量%、通常約0.05重量%から約5重量%、通例約0.1重量%から約3重量%、及びしばしば約0.3から約1.5重量%の範囲であってよい。一実施形態において、アルミノシリケートZSM−12は、パラジウム交換されていてもよい。
【0062】
追加として、他の元素を、周期表の8〜10族から選択される金属と組み合わせて使用することができる。こうした「他の元素」の例として、Sn、Re及びWが挙げられる。本発明の触媒材料に使用することができる元素の組合せの例として、Pt/Sn、Pt/Pd、Pt/Ni及びPt/Reが挙げられるが、これらには限定されない。これらの金属又は他の元素は、イオン交換、細孔充填含浸又は初期湿潤含浸(incipient wetness impregnation)を含めた1つ又は複数の様々な従来技術を使用して、アルミノシリケートZSM−12複合物に容易に導入することができる。触媒活性の金属(単数又は複数)への言及は、元素状態における、又は酸化物、硫化物、ハロゲン化物及びカルボキシレートなど何らかの形態におけるこうした金属(単数又は複数)を包含することが意図されている。
【0063】
イソパラフィンへのn−パラフィンの選択的異性化
本明細書に記載されている新規な方法に従って調製されたアルミノシリケート又はボロシリケートZSM−12は、n−パラフィン選択的異性化を伴う触媒炭化水素転換プロセスに有用であり得る。対照的に、「クラッキング」は、より小さい成分に分解することによって炭化水素の分子量を減少させるプロセス又は反応を指す。
【0064】
本発明のアルミノシリケートZSM−12を含む触媒組成物は、比較的低い温度(例えば、260℃から280℃)にて高い転換率でn−パラフィンの異性化に高い傾向を示し、したがってクラッキングに低い傾向を示す。さらに、本発明の触媒組成物は、モノメチルイソパラフィンよりもジメチルイソパラフィンの生成に対して選択性が高い(例えば、表9を参照のこと)。
【0065】
本発明によると、炭化水素を転換するためのプロセスは、炭化水素質供給原料を異性化条件下で、本明細書に記載されているとおりに合成され約30から約100、及び一下位実施形態において約30から約80、及び別の下位実施形態において約30から約60のSiO/Alモル比を有するアルミノシリケートZSM−12と接触させることを含む。
【0066】
本発明の触媒組成物は、灯油及びジェット燃料などの比較的軽い留分から、全原油、常圧蒸留残油、真空塔残油、循環油、合成石油(例えば、頁岩油、タール及びオイル油など)、ガス油、真空ガス油、ろう下油、フィッシャー・トロプシュ誘導ワックス及び他の重油などの高沸騰の原料油までに及ぶ様々な供給原料油を脱ろうするのに使用することができる。単独の直鎖n−パラフィン、又は16個以上の炭素原子を有する若干分岐鎖のパラフィンのみを伴う直鎖n−パラフィンはいずれも時々、本明細書においてワックスと称される。
【0067】
供給原料油はしばしば、一般に約177℃を超えて沸騰するC10+供給原料油である。本発明のプロセスは、ガス油、灯油及びジェット燃料、潤滑油原料油、暖房用油、並びに流動点及び粘度を特定の仕様限界内に保持する必要がある他の留分を含めて、中間蒸留原料油などの含ろう蒸留原料油に特に有用であり得る。潤滑油原料油は、一般に230℃を超えて、より通例には315℃を超えて沸騰する。水素化処理された原料油は通常、有意な量の含ろうn−パラフィンを含有しているので、この種類及びまた他の留分の原料油の便利な源である。
【0068】
本発明のプロセスのための供給原料油は、パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族化合物及び複素環化合物を含有することができ、相当な割合の、供給原料油のろう性質に寄与するより高い分子量のn−パラフィン及び若干分岐したパラフィンを有することができる。処理中、n−パラフィン及び若干分岐したパラフィンは、高い転換率で比較的低い程度のクラッキングを受けることがある。
【0069】
本発明のプロセスに使用することができる一部の通常の供給原料油の例として、水素化処理又は水素化分解ガス油、水素化処理潤滑油ラフィネート(raffinate)、ブライトストック(brightstock)、潤滑油原料油、合成油、ろう下油、フィッシャー・トロプシュ合成油、高流動点ポリオレフィン、ノルマルアルファオレフィンワックス、スラックワックス、脱油ワックス及び微結晶ワックスが挙げられる。
【0070】
一実施形態において、本発明は、C10+n−パラフィンを含む炭化水素質供給原料を水素化転換するためのプロセスを提供する。こうしたプロセスは、供給原料を水素の存在下及び異性化条件下でアルミノシリケートZSM−12を含む触媒組成物と接触させることで、少なくとも約80%の異性化選択性にて供給原料の約90%超の転換率でイソパラフィン生成物を生成することができる。アルミノシリケートZSM−12は、本明細書に記載されているように、調製することができ、記載されているような特徴及び特質を有することができる。
【0071】
本発明の異性化脱ろうプロセスの条件として、一般に、通常約240℃から約320℃、通例約255℃から約290℃、しばしば約260℃から約280℃の範囲内の温度、並びに約15psigから約5000psig、通常約50psigから約3000psig、及びしばしば約100psigから約2500psigの圧力が挙げられる。供給原料と触媒との接触は、一般に、水素の存在下で実施される。水素対炭化水素比は一般に、炭化水素1バレル当たり約2000から約10,000標準立方フィートのHの範囲内、及び通常炭化水素1バレル当たり約2500から約5000標準立方フィートのHの範囲内である。接触中の液空間速度(LHSV)は、一般に、約0.1から約20、より通例には約0.1から約5、及びしばしば約0.5から約5である。
【0072】
本発明の一態様によると、n−ヘキサデカンは、ずっと低い濃度のクラッキングで比較的高い濃度のイソパラフィン生成物を供給するように、より重い(例えば、C10+)ノルマルパラフィンを選択的に異性化する触媒を同定するため、「より重い」n−アルカン供給原料を代表するモデル化合物として使用することができる。一下位実施形態において、n−ヘキサデカンは、n−C10+アルカンを、ジメチルイソアルカンを優位に含むイソパラフィン生成物に異性化するn−パラフィン異性化選択性触媒を同定するために使用することができる。
【0073】
本発明の異性化脱ろうプロセスは、モノメチル−及びジメチルイソアルカンの混合物を含むイソパラフィン転換生成物を提供する。n−ヘキサデカンを含む炭化水素供給原料に関し、本発明のプロセスは、モノメチルC15アルカンと一緒にジメチルC14アルカンを含むことができるイソパラフィン生成物を提供し、ここで、ジメチルイソアルカンはモノメチルイソアルカンより優位であり得る。別の言い方をすれば、ジメチルイソアルカンは、該生成物中のイソアルカンの50%超であることができる。一実施形態において、約260℃から約280℃の温度で、該生成物におけるモノメチルイソパラフィンに対するジメチルイソパラフィンの比は、少なくとも約2である。一部の実施形態において、ジメチルイソアルカンは一般に、該生成物中のイソアルカンの約66%超、通常約70%超、しばしば少なくとも約75%、及び一実施形態において該生成物中のイソアルカンの約80%であることができる。
【0074】
本発明の一実施形態において、約260℃から約280℃の温度で、アルミノシリケートZSM−12を含む選択的異性化触媒は、供給原料中少なくともn−パラフィンの約96%を転換することで、少なくとも約85%の異性化選択性(≦15%のクラッキング)でイソパラフィンを含む生成物を提供する。一下位実施形態において、供給原料は、約265℃から約270℃の範囲における温度を含む異性化条件下にて触媒と接触させることで、少なくとも約88%の異性化選択性(≦12%のクラッキング)にてn−ヘキサデカンの少なくとも約95%の転換を提供することができる。
【0075】
一下位実施形態において、本発明の触媒組成物は、異性化条件下にて約260〜280℃の温度で、供給原料におけるn−ヘキサデカンの少なくとも約96%転換を、少なくとも約75%のイソ−C16収率で提供する。別の下位実施形態において、例えば、触媒組成物は約84%から約88%の範囲におけるイソ−C16収率を提供することができる。
【0076】
別の実施形態において、約280℃の温度で、本発明の異性化選択性触媒はn−ヘキサデカン供給原料からC10アルカン生成物を生成することができ、ここで、C10アルカン生成物は少なくとも約45のイソ/ノルマル重量比を有する(例13に定義されている条件下)。
【0077】
炭化水素質供給原料は、固定床システム、移動床システム、流動床システム、バッチシステム又はそれらの組合せにおいて触媒と接触させることができる。水素化処理及び水素化分解に用いられるものと同様の反応器が適当である。固定床システム又は移動床システムのいずれかが好ましい。固定床システムにおいて、予熱した供給原料は、本発明のアルミノシリケートZSM−12ゼオライトから調製された触媒の固定床を含有する少なくとも1つの反応器を通過させられる。供給原料の流れは、上向き、下向き又は放射状であってよい。段間冷却を、例えば反応器床間に冷水素を注入することによって、行うことができる。反応器は、通常水素化分解器に使用される温度、圧力及び流量を監視及び制御するための計測手段を装備することができる。複数の床を本発明の組成物及びプロセスと併せて使用することもでき、ここで、2種以上の床はそれぞれ異なる触媒組成物を含有することができ、そのうち少なくとも1つは本発明のアルミノシリケートZSM−12を含むことができる。
【実施例】
【0078】
以下の例は本発明を実証するものであり、限定するものではない。
【0079】
(比較例1)
メチルトリエチルアンモニウムクロリドを使用するZSM−12ゼオライトの合成
これは、反応混合物における唯一の有機成分として、即ちジ第4級ジカチオン(diquaternary dication)構造指向剤の非存在下で、メチルトリエチルアンモニウムカチオンを使用した場合の、不純なZSM−12の調製を示す比較例である。
【0080】
ケイ酸ナトリウム溶液(Fisher銘柄、28重量%のSiO、8.9重量%のNaO)105.6gを、600mLのテフロン(登録商標)ライナー内で脱イオン水104.4gと混合した。次に75%メチルトリエチルアンモニウムクロリド溶液(Sachem)40gを脱イオン水120.5g中に溶解し、シリケート溶液と混合した。次いで硝酸アルミニウム九水和物4.02gを脱イオン水227.1g中に溶解した。硝酸アルミニウム溶液を次いで、連続撹拌しながらシリケート溶液に添加することで、均一な懸濁液を形成した。次に硫酸(98%)6.4gを懸濁液に添加し、混合することで、均一なゲルを形成した。ゲルを1時間混合した。次いで、ライナーをParr Steelオートクレーブ反応器内に密封した。オートクレーブを静的条件下で4時間の時間をかけて155℃に加熱し、次いで、155℃で80時間放置した。冷却した反応器から固体生成物を真空濾過によって回収し、大量の水で洗浄した。固体を次いで、乾燥器内にて95℃で12時間超の間乾燥させた。粉末XRDパターン(図1)は、生成物が少量のZSM−5を不純物として有するZSM−12であることを示した。
【0081】
小結晶Al−ZSM−12の直接合成(例2〜6)
(例2)
ケイ酸ナトリウム溶液(Fisher銘柄、28重量%のSiO、8.9重量%のNaO)105.6gを、600mLのテフロン(登録商標)ライナー内で脱イオン水104.4gと混合した。次に、第2ステップにおいて、75%メチルトリエチルアンモニウムクロリド溶液(Sachem)32g及び1,6−ビス(2,3−ジメチルイミダゾリウム)ヘキサン二臭化物塩11.02gを脱イオン水122.5g中に溶解し、この溶液をシリケート溶液と混合した。次いで硝酸アルミニウム九水和物4.02gを脱イオン水227.1g中に溶解した。硝酸アルミニウム溶液を連続撹拌しながらシリケート溶液に添加することで、均一な懸濁液を形成した。次に硫酸(98%)6.4gを懸濁液に添加し、混合することで、均一なゲルを形成した。ゲルを1時間混合した。次いで、ライナーをParr Steelオートクレーブ内に密封した。オートクレーブを静的条件下で155℃に4時間の時間をかけて加熱し、次いで、155℃で80時間放置した。冷却した反応器から、固体生成物を真空濾過によって回収し、大量の水で洗浄した。固体を次いで、95℃で12時間超の間乾燥器内で乾燥させた。粉末X線回折パターンは、生成物が純粋なZSM−12であることを示した。XRDパターンにおけるピーク広幅化は、上で注記したとおりの小結晶子サイズと完全に一致した。
【0082】
(例3)
75%メチルトリエチルアンモニウムクロリド溶液36.29g、1,6−ビス(2,3−ジメチルイミダゾリウム)ヘキサン二臭化物塩5.51g及び脱イオン水121.52gを第2ステップにおいて使用したことを除いて、例2を繰り返した。粉末XRDパターンは、生成物が純粋なZSM−12であることを示した。
【0083】
(例4)
75%メチルトリエチルアンモニウムクロリド溶液38.04g、1,6−ビス(2,3−ジメチルイミダゾリウム)ヘキサン二臭化物塩2.75g及び脱イオン水121gを第2ステップで使用し、例2を繰り返した。粉末XRDパターンは、生成物が純粋なZSM−12であることを示した。
【0084】
(比較例5)
硝酸アルミニウム九水和物7.02gを(硝酸アルミニウム九水和物4.02gの代わりに)使用したことを除いて、例2を繰り返した。オートクレーブを静的条件下で155℃に4時間の時間をかけて加熱し、次いで、155℃で5日間放置した。粉末X線回折パターンは、生成物がモルデナイトの微少量不純物を有するZSM−12であることを示した。
【0085】
(例6)
静的条件下で加熱する代わりに、ゲルをオーバーヘッドスターラーで、75rpmで混合したことを除いて、比較例5を繰り返した。粉末XRDパターンは、生成物が純粋なZSM−12であることを示した。アルミノシリケートZSM−12のこの調製物のSi/Al比は、22であると決定された。
【0086】
小結晶ボロシリケートZSM−12の合成(例7〜10)
(例7)
1,4−ビス(トリメチルアンモニウム)ブタンジヒドロキシド([OH]=0.86mmol/g)の水溶液3.49g、ヨウ化カリウム0.37g及び脱イオン水7.71gを一緒に混合した。次いでカリウムテトラボレート十水和物(KTB)0.035gを溶液中に溶解し、CAB−O−SIL M−5(Cabot Corporation)0.90gを添加し、混合することで、均一な懸濁液を形成した。混合物をテフロン(登録商標)カップに入れ、蓋をし、密封した23mlのステンレス鋼Parrオートクレーブ内に入れた。オートクレーブを160℃で乾燥器内のスピット(spit)に置き、43rpmで7日間混合した。反応器を乾燥器から取り出し、冷却し、固体を濾過及び脱イオン水での洗浄によって回収した。固体を次いで、乾燥器内にて95℃で乾燥させた。生成物のSi/B比は、誘導結合プラズマ−発光分光法(ICP−OES)によって測定され、31.8であった。
【0087】
(例8及び9)
KTB0.07gが一例において使用され(例8)及びKTB0.10gが他方において使用された(例9)ことを除いて、ボロシリケートZSM−12の2つの調製を例7におけるとおりに行った。例8及び9からの生成物のSi/B比は、それぞれ34.7及び28.0であった。
【0088】
図3は、標準の(従来の)ZSM−12と比較した、例7、例8及び例9からの生成物の粉末XRDパターンを示す。例7〜9のB−ZSM−12生成物のパターンの広い方のピークは、各調製物のより小さい結晶サイズと一致している。興味深いことに、この系列の3種の試料に関し、最も高いホウ素濃度を持つゲルが、最も広い回折ピークを持つゼオライト生成物を生じるようである。図4及び5は、例8の生成物の走査電子顕微鏡写真(SEM)を示す。結晶質凝集体は、長さ約1μm及び幅0.3〜0.5μmの楕円体であった。各凝集体内の個々の結晶子は、幅が約30nmから約40nmの範囲である微細な針状晶であった。
【0089】
(例10)
1,4−ビス(N−メチルピペリジニウム)ブタンジヒドロキシド([OH]=0.51mmol/g)の水溶液5.94g、ヨウ化カリウム0.37g及び脱イオン水4.86gを一緒に混合した。次いでカリウムテトラボレート十水和物(KTB)0.035gを溶液中に溶解し、CAB−O−SIL M−5を0.90g添加し、混合することで、均一な懸濁液を形成した。次いでゲルを例7に記載されているとおりに加熱した。この調製の生成物は、粉末XRD分析によってB−ZSM−12として同定された。
【0090】
(例11)
小結晶B−ZSM−12からの小結晶Al−ZSM−12の間接的合成
例8からの小結晶B−ZSM−12生成物を595℃の温度に焼成し、ゼオライトから有機物を除去した。焼成は、マッフル炉内で、4%酸素/窒素中にて1℃/分で595℃まで加熱すること、及び595℃に6時間温度を維持することによって行った。焼成されたゼオライト0.71gを次いで、テフロン(登録商標)ライナー中の硝酸アルミニウムの1M溶液15mLに添加した。テフロン(登録商標)ライナーに蓋をし、ステンレス鋼Parrオートクレーブ内に密封した。オートクレーブを160℃で終夜加熱した。冷却した後、固体を濾過によって除去し、脱イオン水約500mLで洗浄することで、小結晶アルミノシリケートZSM−12を得た。
【0091】
図6は、この調製(例11)の生成物に関する粉末XRDパターンを例8の原(前駆体)材料のそれと比較している。より低い角度への回折ピークのシフトは、アルミニウムが骨格に挿入された場合のゼオライト格子の拡大に一致している。Al−ZSM−12生成物を次いで、以下の手順を使用してアンモニウム形態に交換した。ゼオライト0.59gを、脱イオン水5.8g中の硝酸アンモニウム0.59gの溶液に添加した。交換を終夜95℃で進行させた。ゼオライトを次いで濾過によって回収し、第2のアンモニウム交換を実施した。
【0092】
(例12)
間接的に合成したアルミノシリケートZSM−12のパラジウム交換
小結晶Al−ZSM−12のアンモニウム交換(例11)後、ゼオライトを以下のとおりにパラジウム交換した。0.156N水酸化アンモニウム2.56g、脱イオン水4.41g、及びPd(NH(NOの溶液0.59gを混合することによって調製した溶液に、Al−ZSM−12 0.59gを添加した。Pd(NH(NO0.72gを、脱イオン水42.01g及び0.148M水酸化アンモニア溶液6.00g中に溶解することによって、パラジウム溶液を形成した。結果として生じたスラリーのpHを数滴の水酸化アンモニウムで10.0に調節した。交換を2日間進行させた。固体を次いで濾過によって回収し、乾燥させた。パラジウム交換ゼオライトを次いで、マッフル炉内で、1℃/分で482℃まで加熱すること、及び482℃で3時間温度を維持することによって焼成した。焼成されたパラジウム交換ゼオライトの触媒活性をn−ヘキサデカン転換に関して試験した(例えば、例13を参照のこと)。
【0093】
(例13)
Pd交換Al−ZSM−12でのn−ヘキサデカンの転換
例13に従って調製されたパラジウム交換アルミノシリケートZSM−12(Pd/Al−ZSM−12)を、下記表9に示されているとおりの温度、圧力、重量空間速度(WHSV)及び水素注入口(MSCFB)の条件下でn−ヘキサデカンの選択的異性化に使用した。
【0094】
生成物をオンラインキャピラリーガスクロマトグラフィー(GC)によって分析した。GCからの生データを自動データ回収/処理システムによって回収し、炭化水素転換率を生データから算出した。収率を重量パーセント生成物として表した。この例の目的のため、異性化選択性は、生成物においてイソパラフィンに異性化される供給原料におけるn−C16の百分率として定義される。
【0095】
データは表9に要約されている。この試料に関し、約282℃(540°F)の温度が94%転換に必要であった。この温度で、異性化選択性は82.6(17.4%のクラッキング)であった。この選択性は、例13において認められるものより幾分低かったが、やはりモノメチルC15と比較した場合、イソパラフィン分布においてジメチルC14(>64%)の生成が強く優先された。これらのデータは、本発明のボロシリケートZSM−12(前駆体)が、例えば例12の手順に従って、異性化選択性水素化転換プロセスに使用するためのアルミノシリケート酸触媒に転換するのに成功することができたことを実証している。
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化アルミニウムに対する酸化ケイ素のモル比が30から100であり、焼成後に実質的に以下の表に示されているとおりのX線回折パターンを有するアルミノシリケートZSM−12モレキュラーシーブ。
【表1】

【請求項2】
合成されたまま、かつ無水状態において、モル比を単位として以下のとおりの組成を有する、請求項1に記載のアルミノシリケートZSM−12モレキュラーシーブ
【表2】


[表中、
(1)Mは、周期表の1族及び2族から選択される少なくとも1種の元素であり、
(2)Qは、カチオン性1,6−ビス(2,3−ジメチルイミダゾリウム)ヘキサンであり、及びQ>0であり、並びに
(3)Aは、第二窒素含有構造指向剤であり、及びA≧0である]。
【請求項3】
アルミノシリケートZSM−12のSiO/Alモル比が30から約80の範囲である、請求項2に記載のアルミノシリケートZSM−12モレキュラーシーブ。
【請求項4】
アルミノシリケートZSM−12のSiO/Alモル比が30から約60の範囲である、請求項2に記載のアルミノシリケートZSM−12モレキュラーシーブ。
【請求項5】
約15nmから約25nmの範囲における幅を有する針状結晶子として特徴付けられる、請求項1に記載のアルミノシリケートZSM−12モレキュラーシーブ。
【請求項6】
(1)少なくとも1種の酸化ケイ素源、(2)少なくとも1種の酸化アルミニウム源、(3)周期表の1族及び2族から選択される少なくとも1種の元素源、(4)水酸化物イオン、並びに(5)1,6−ビス(2,3−ジメチルイミダゾリウム)ヘキサンカチオンを、結晶化条件下で接触させることを含む、アルミノシリケートZSM−12を調製する方法。
【請求項7】
アルミノシリケートZSM−12モレキュラーシーブが、モル比を単位として以下のものを含む反応混合物から調製される、請求項6に記載の方法
【表3】


[表中、
(1)Mは、周期表の1族及び2族から選択される少なくとも1種の元素であり、
(2)Qは、カチオン性1,6−ビス(2,3−ジメチルイミダゾリウム)ヘキサンであり、及びQ>0であり、並びに
(3)Aは、第二窒素含有構造指向剤であり、及びA≧0である]。
【請求項8】
モレキュラーシーブが、焼成後に実質的に以下の表に示されているとおりのX線回折パターンを有する、請求項6に記載の方法。
【表4】

【請求項9】
(a)(1)少なくとも1種の酸化ケイ素源、(2)少なくとも1種の酸化ホウ素源、(3)周期表の1族及び2族から選択される少なくとも1種の元素源、(4)水酸化物イオン、(5)構造指向剤としてのカチオン性1,4−ビス(トリメチルアンモニウム)ブタン又はカチオン性1,4−ビス(N−メチルピペリジニウム)ブタン、並びに(6)水を含有する反応混合物を調製するステップと、
(b)ボロシリケートZSM−12の結晶を形成するのに十分な結晶化条件下で該反応混合物を維持するステップと、
(c)ボロシリケートZSM−12の骨格におけるホウ素をアルミニウムに置き換えることで、アルミノシリケートZSM−12を生成するステップと
を含む、アルミノシリケートZSM−12を調製する方法。
【請求項10】
ボロシリケートZSM−12モレキュラーシーブが、モル比を単位として以下のものを含む反応混合物から調製される、請求項9に記載の方法
【表5】


[表中、Mは、周期表の1族及び2族から選択される少なくとも1種の元素であり、Xは、カチオン性1,4−ビス(トリメチルアンモニウム)ブタン又はカチオン性1,4−ビス(N−メチルピペリジニウム)ブタンである]。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−511464(P2013−511464A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540076(P2012−540076)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/057354
【国際公開番号】WO2011/063189
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】