説明

アルミハニカムコアの多段プリクラッシュ製造方法及びその製造方法により製造されたアルミハニカムコア

【課題】ハニカムコアの形状を保持することが出来ると共に、プリクラッシュ部分の均一な箔厚状態を保つことか出来るアルミハニカムコアの多段プリクラッシュ製造方法及びその製造方法により製造されたアルミハニカムコアを提供する。
【解決手段】 この発明のアルミハニカムコアの多段プリクラッシュ製造方法としては、図2(a)〜(d)に示すように、エッチング溶液に浸す前に、上記のようなコア先端部分を10mmのプリクラッシュ(初期荷重低減加工)部分1aを施し、次いでこのハニカムコア1を、アルカリ溶液(例えば、水酸化ナトリリウム)等のエッチング溶液に浸すことでハニカムコア1の箔厚を一定にする。そして、図2(c)に示すように、エッチングしたハニカムコア1xに2回目のプリクラッシュ(初期荷重低減加工)部分1yを施して、図2(d)に示すような多段状のプリクラッシュを成形したアルミハニカムコアを製造するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルミハニカムコアの多段プリクラッシュ製造方法及びその製造方法により製造されたアルミハニカムコアに係わり、更に詳しくは形状を保持することが出来ると共に、プリクラッシュ部分の均一な箔厚状態を保つことか出来る多段プリクラッシュ製造方法及びその製造方法により製造されたアルミハニカムコアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属材料(例えば、薄いスチール板,アルミ箔等)や、非金属材料(例えば、紙,プラスチック等)を素材として形成した六角柱の構造体、即ち、ハニカムコア(Honeycomb come) の構造体は、空間(空気)が95〜99%、コア材(六角柱を構成する材料)が5〜1%の容積比率であるため、非常に軽量で縦剛性が高く、安価で製造が容易であることから、車輛の衝突試験材や衝撃吸収材の他、建築材用芯材、建築材用のサンドイッチパネル、容器等、その他あらゆる分野において使用されている。
【0003】
上記のような各素材から成るハニカムコアは、軽量で設計度の自由度が大きく、交換が容易で経時変化が少なく、更にリサイクル性に富む等のメリットを有する反面、ハニカム構造の特性より反力特性が一方向であるため、衝突緩和装置用としては課題があった。
【0004】
そこで、ハニカムコアを衝撃緩衝材、衝撃吸収材として使用する場合には、コア内に発泡ウレタン等を注入充填したり、二段セルにして吸収エネルギーを段階的に吸収させたり、更に金属製のハニカムコアの場合、コアの長手方向の肉厚を順次変化させて、ハニカムコアの衝撃吸収を可変にした構造のものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、ハニカムコアの座屈強度を変化させる方法として、ハニカムコアの一部を座屈加工したプリクラッシュ(初期荷重低減加工)したハニカムコアも知られている。このプリクラッシュして形成したハニカムコアは、衝撃緩衝特性及び衝撃吸収特性を有するものである。なお、ここでプリクラッシュとは、ハニカムコアの前端部,中央部,後端部の少なくとも一か所以上に荷重を掛けて座屈加工が施されている状態のハニカムコアであり、このようなプリクラッシュされているハニカムコアは、コアの長手方向の一端側から衝撃荷重が加わった際、初期のピーク荷重が取り除かれ高い初期荷重を必要とせずに、予め座屈加工された前端部分から後端側に向かって座屈状態が全体的に安定して進行(加工)されていくハニカムコアを言う。
【0006】
ところで、従来のプリクラッシュしたアルミハニカムコアは、一体型バリアのコア先端部分は衝突時の初期荷重が高くなることを防止させるために、10mmのプリクラッシュが要求されている。このようなプリクラッシュしたアルミハニカムコアを製造する方法としては、図4(a)〜(c)に示すように、エッチングする前のハニカムコア1の先端部分1aを10mmのプリクラッシュ(初期荷重低減加工)してフランジ状に形成することで剛性を保ち、次いでアルカリ溶液(例えば、水酸化ナトリウム)等のエッチング溶液に浸すことでハニカムコア1の箔厚を一定にする方法が行われている。
【0007】
しかし、プリクラッシュを行ったアルミハニカムコア1xの部分は、重なり合った部分が密着して防波堤のような役割になっているため、プリクラッシュした細部までエッチング溶液が入り込まず、この結果設計上必要とされる箔厚までエッチングされずに減少されない部分が存在してしまい、初期荷重が設計値より高くなり、また初期ピ−ク値が残ってしまうと言う問題があった。
【0008】
このような問題を解決するために、ハニカムコア1をエッチングした後にプリクラッシュする方法も考えられるが、箔厚が非常に薄いことから、自重に耐えることが出来ず、崩れてしまい製品を製造することが困難であった。
【特許文献1】特許第3408933号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、かかる従来の問題点に着目して案出されたもので、ハニカムコアの形状を保持することが出来ると共に、プリクラッシュ部分の均一な箔厚状態を保つことが出来るアルミハニカムコアの多段プリクラッシュ製造方法及びその製造方法により製造されたアルミハニカムコアを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は上記目的を達成するため、この発明のアルミハニカムコアの多段プリクラッシュ製造方法は、先端をプリクラッシュしたハニカムコアをエッチングした後、エッチングしたハニカムコアをプリクラッシュすることを要旨とするものである。
【0011】
ここで、前記先端をプリクラッシュしたハニカムコアを、エッチングとプリクラッシュとを繰返し行い多段プリクラッシュを成形することも可能である。
【0012】
また、この発明のアルミハニカムコアは、前記多段プリクラッシュ製造方法を使用して、多段状のプリクラッシュを成形することを要旨とするものである。
【0013】
このように、先端をプリクラッシュしたハニカムコアをエッチングした後、エッチングしたハニカムコアをプリクラッシュして多段状に形成することで、ハニカムコアの形状を保持することが出来ると共に、プリクラッシュ部分の均一な箔厚状態を保つことか出来るものである。
【0014】
このようなプリクラッシュされているハニカムコアは、コアの長手方向の一端側から衝撃荷重が加わった際、初期のピーク荷重が取り除かれ高い初期荷重を必要とせずに、予め座屈加工された前端部分から後端側に向かって座屈状態が全体的に安定して進行(加工)されていく状態のもので、このようなプリクラッシュされているハニカムコアを、新規な構造材料とすることも可能である。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、上記のように構成したので、ハニカムコアの形状を保持することが出来ると共に、プリクラッシュ部分の均一な箔厚状態を保つことが出来る効果がある。また、多段状のプリクラッシュを成形することで、ハニカムコアの先端部分の不均一な厚みを抑えることが出来、現在のピーク値を低いレベルに抑えることが出来、安定した品質を確保することが出来る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。
なお、従来例と同一構成要素は、同一符号を付して説明は省略する。
【0017】
図1は、この発明を実施したプリクラッシュしたアルミハニカムコアの斜視図を示し、このハニカムコア1の一体型バリアのコア先端部分は衝突時の初期荷重が高くなることを防止させるために、10mmのプリクラッシュ(初期荷重低減加工)部分1aを施してフランジ状に形成することで剛性を保っている。
【0018】
この発明のアルミハニカムコアの多段プリクラッシュ製造方法としては、図2(a)〜(d)に示すように、エッチング溶液に浸す前に、上記のようなコア先端部分を10mmのプリクラッシュ(初期荷重低減加工)部分1aを施し、次いでこのハニカムコア1を、アルカリ溶液(例えば、水酸化ナトリウム)等のエッチング溶液に浸すことでハニカムコア1の箔厚を一定にする。
【0019】
そして、図2(c)に示すように、エッチングしたハニカムコア1xに2回目のプリクラッシュ(初期荷重低減加工)部分1yを施して、図2(d)に示すような多段状のプリクラッシュを成形したアルミハニカムコアを製造するものである。
【0020】
なお、プリクラッシュは2回に限定されず、エッチング及びプリクラッシュを繰返し行うことで、箔厚が変化した多段状のアルミハニカムコアを製造することが出来る。
【0021】
図3は、従来のプリクラッシュしたアルミハニカムコア(Qa)と、この発明の実施形態1におけるアルミハニカムコア(Qb)及び実施形態2におけるハニカムコア(Qc)をプリクラッシュした荷重と変位との実験結果を示すグラフ説明図である。
【0022】
このグラフ説明図から明らかなように、従来のプリクラッシュしたアルミハニカムコアの場合には、初期荷重の変位で設計値の範囲から外れる部分Pがあるが、この発明の実施形態1,2(Qa,Qb)では、何れも設計値の範囲であることが判った。
【0023】
なお、実験条件としては、以下の通りである。測定は、μメターにて実施した。
(a)従来のプリクラッシュしたアルミハニカムコア 10mmの1段階プリクラッシュ
(b)この発明の2段プリクラッシュした実施形態1のアルミハニカムコア 5mm ずつの2段プリクラッシュ
(c)この発明の2段プリクラッシュした実施形態2のアルミハニカムコア 5mm ずつの2段プリクラッシュ
【0024】
従来のアルミハニカムコア及びこの発明の実施形態1,2のアルミハニカムコアは、別バッチで製作したが、エッチング条件(液温,濃度,時間、浸漬距離)は、同条件で製作した。また、ハニカムコアは、同じブロックから切り出した。
【0025】
図5(a)は、従来のプリクラッシュ製法でエッチングした後の先端から10mmの箔厚(μm)のサンプルの散布図であり、図5(b)は、この発明の実施形態における多段プリクラッシュ製法でエッチングした後の先端から10mmの箔厚(μm)のサンプルの散布図であり、散布図から明らかなように、この発明の実施形態では、バラツキが少ないことが判る。
【0026】
以上のように、先端をプリクラッシュしたハニカムコア1をエッチングした後、エッチングしたハニカムコア1xをプリクラッシュして多段状に形成することで、ハニカムコアの形状を保持することが出来ると共に、プリクラッシュ部分の均一な箔厚状態を保つことか出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明を実施したプリクラッシュしたアルミハニカムコアの斜視図である。
【図2】(a)〜(d)は、多段状にプリクラッシュするハニカムコアの製造工程説明図である。
【図3】従来のプリクラッシュしたアルミハニカムコア(Qa)と、この発明の実施形態1におけるアルミハニカムコア(Qb)及び実施形態2におけるハニカムコア(Qc)をプリクラッシュした荷重と変位との実験結果を示すグラフ説明図である。
【図4】(a)〜(c)は、従来のプリクラッシュするハニカムコアの製造工程説明図である。
【図5】(a)は、従来のプリクラッシュ製法でエッチングした後の先端から10mmの箔厚(μm)のサンプルの散布図、(b)は、この発明の実施形態における多段プリクラッシュ製法でエッチングした後の先端から10mmの箔厚(μm)のサンプルの散布図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ハニカムコア
1x エッチングしたハニカムコア
1a,1y プリクラッシュ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング前に先端をプリクラッシュした一体型バリアコアから成るアルミハニカムコアの製造方法において、
前記先端をプリクラッシュしたハニカムコアをエッチングした後、エッチングしたハニカムコアをプリクラッシュするアルミハニカムコアの多段プリクラッシュ製造方法。
【請求項2】
前記先端をプリクラッシュしたハニカムコアを、エッチングとプリクラッシュとを繰返し行い多段プリクラッシュを成形するアルミハニカムコアの多段プリクラッシュ製造方法。
【請求項3】
前記ハニカムコアの製造方法を使用して、多段状のプリクラッシュを成形して成るアルミハニカムコア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−116557(P2006−116557A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305123(P2004−305123)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】