アルミ合金判別方法および選別設備
【課題】合金系別にアルミニウム合金を判別する方法と、それを利用したアルミ合金選別設備を提供する。
【解決手段】回収する複数の校正用試料(第1アルミ合金)と排除する対比用試料(第2アルミ合金)のエネルギーの異なるX線の単位面積毎の透過X線強度測定結果を測定平面にプロットし、校正用試料の測定結果の分布を上側曲線と下側曲線で挟んだ判別帯を画定し、判別帯により測定平面を中密度領域と高密度領域と低密度領域に分け、対比用試料の測定結果分布と対比して高密度領域内または低密度領域内の校正用試料の測定結果に関する第1閾値を決め、中密度領域内の校正用試料の測定結果から第2閾値を決めておき、被選別試料に係る単位面積毎の透過X線強度測定値が高密度領域または低密度領域に含まれる割合が第1閾値より小さく、中密度領域に含まれる割合が第2閾値より大きいときに、回収対象品と判定する判別方法。
【解決手段】回収する複数の校正用試料(第1アルミ合金)と排除する対比用試料(第2アルミ合金)のエネルギーの異なるX線の単位面積毎の透過X線強度測定結果を測定平面にプロットし、校正用試料の測定結果の分布を上側曲線と下側曲線で挟んだ判別帯を画定し、判別帯により測定平面を中密度領域と高密度領域と低密度領域に分け、対比用試料の測定結果分布と対比して高密度領域内または低密度領域内の校正用試料の測定結果に関する第1閾値を決め、中密度領域内の校正用試料の測定結果から第2閾値を決めておき、被選別試料に係る単位面積毎の透過X線強度測定値が高密度領域または低密度領域に含まれる割合が第1閾値より小さく、中密度領域に含まれる割合が第2閾値より大きいときに、回収対象品と判定する判別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ合金を合金系統別に判別する方法と選別する設備に関し、特に鋳造材由来のアルミニウム合金と展伸材由来のアルミニウム合金とを選別回収するだけでなく、展伸材アルミニウム合金をさらにその系統別に選別回収するためのアルミ合金判別方法と選別設備に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムは極めてリサイクル性に優れた材料であって、リサイクルによる二次地金への溶解エネルギーは新地金の溶解エネルギーの3〜5%に過ぎない。このため、リサイクルシステムを効率よく運用することにより、アルミニウムはエネルギー消費の少ない地球環境に優しい材料かつ製造原価の小さい材料として広範囲に利用できる。
アルミニウムあるいはアルミニウム合金は、現状においても、省資源化の観点と低コスト化の観点とからリサイクルされることが一般的である。このため、従来から、迅速かつ大量にアルミニウムおよびアルミニウム合金を他の金属から選別して回収する技術が開発されてきた。
【0003】
たとえば、特許文献1には、比較的一般的な金属選別回収装置が開示されている。開示された金属選別機は、ストックヤードに貯蔵された廃棄物を前処理後に破砕し、発泡成形材を分離して、残った重い廃棄物を金属選別装置に送って、銅片またはアルミニウム片を分離するシステムである。金属選別装置では、磁力選別機により鉄系金属を分別し、渦電流選別機により非鉄系金属を分別する。さらに、非鉄金属は、さらに色選別機と比重検出選別機のそれぞれで銅片、アルミニウム片を選別する。また、渦電流選別機で非金属として分離されたものも、風力選別機で金属小片を分別し、振動式選別機にかけて銅片とアルミニウム片を回収する。
【0004】
開示された金属選別回収装置によれば、アルミニウムは、廃棄物から、ほぼ全自動で、高純度に選別回収することができる。
なお、特許文献1には、色選別機の代わりに、金属の種類によってX線の透過具合が異なることを利用するX線式選別機を用いた例が記載されている。開示されたX線式選別機は、X線検出センサの前に形状センサを設けて、破砕片の厚さを測定して、単位厚さあたりの透過X線強度を算出し、材質毎に予め取得したデータと照合して、破砕片の材質を推定するものである。
【0005】
ただし、アルミニウム合金は合金種によって添加元素の含有量が異なるが、合金種毎に分別して回収することはできなかったため、回収したアルミ等は、合金種にかかわらず混合して溶融し、成分組成の調整をして、品位の低い二次合金や鋳物合金としてリサイクルされてきた。
こうして回収したアルミ等から再生した鋳造材は、主として自動車の内燃エンジンに利用されてきた。自動車の生産量は大きく、アルミニウム合金鋳造材の需要が大きいため、回収されたアルミニウムおよびアルミ合金は十分消化されてきた。
【0006】
ところが、近年、自動車エンジンは漸次に脱石油燃料化され、内燃エンジンは電気モータ等に代替されていく趨勢にあって、近い将来、鋳造材需要の減退によりアルミニウムリサイクルは成立しなくなるおそれがある。
このように、将来を案ずると、回収アルミ類は自動車以外の需要先を開拓する必要に迫られている。需要を拡大するためには、自動車需要に頼る鋳造材としての再利用だけでは難しく、展伸材由来の回収アルミニウム合金を展伸材として供給できるようにする必要がある。
【0007】
アルミニウム合金はアルミニウムに添加される金属の組成により合金種が決まり、合金種毎に適切な用途が決まっているので、高品位のアルミニウム合金にとって不純物になる金属が混入すると、品位が低下してリサイクル目的とするアルミ合金用途に使用することができない。従来は、廃棄物から選別回収されたアルミニウムおよびアルミニウム合金は、合金種に関わりなく一緒に混合されてリサイクルされるため、混合されたアルミニウム合金に成分として不足する元素を加えることにより生産できる鋳造材として再利用するしかなかった。
【0008】
たとえば、合金番号6063のアルミニウム合金は、添加成分の少ない高品位な合金で展伸性能に優れサッシなどに利用される展伸材になる。合金番号6063の合金は、取り外した窓枠として建築廃材中に大量に含まれるが、大量のサッシが廃棄物として回収されても、現状ではアルミニウムおよびアルミニウム合金の種別を区別して分別回収する適当な手段がないため、また、同時に回収される鋳造品などと混ざるので、一緒に溶解して低品位の二次合金地金や鋳造材にする他になかった。
【0009】
そこで、廃棄物中のアルミニウムおよびアルミニウム合金について、合金系別に分別回収することができれば、回収アルミニウム合金類のほとんどを将来需要の限られる低価格の鋳造材として再生するのではなく、回収された合金の系別に従ってたとえばサッシ材など大量の需要が見込める材料として再利用することもできるようになる。
【0010】
また、従来のリサイクルではアルミスクラップから二次合金地金を製造するために、比較的大きなエネルギーを消費する、成分分析および成分調整するための溶解工程を経る必要があるのに対して、たとえばサッシ廃棄物をサッシ材として再利用する場合は、サッシ廃棄物から異物を選別除去し、サッシ用アルミニウム合金のみの状態にすることができれば、二次合金地金の製造工程の溶解エネルギーおよび再生工程を大幅に節減することができる。
【0011】
このため、アルミニウムおよびアルミニウム合金を合金系別に、たとえばサッシ用展伸材とその他の展伸材または鋳造材とに分けて、回収することが求められる。このためには、アルミニウムおよびアルミニウム合金を合金系別に区別して判定する方法が必要になる。
しかし従来は、合金系別に区別して判定する適当な方法がなく、区別なく市中から回収されてきた一般廃棄物中の種々のアルミニウムおよびアルミニウム合金を処理して、合金の種類に従って選別回収することができなかった。
【0012】
なお、特許文献2には、使用済み自動車のアルミニウム展伸材とアルミニウム鋳造材を分離して回収することにより、回収したアルミニウム展伸材を再び自動車用アルミニウム展伸材として再生するリサイクル方法とリサイクルプラントが開示されている。
開示された方法では、使用済み自動車において展伸材が使用されている部分が明確に知られているところから、第1分別工程で、解体するときに、アルミニウム鋳物の部分や混入するとアルミニウム合金を低品位にする鉄やケイ素などの不純物要因を取り除いて、残りの部分を処理対象として分別する。
【0013】
第2分別工程では、第1分別工程で分別された部分を破砕して、磁選などの周知の手法により、アルミニウムを主成分とする破砕片を分別する。既に第1分別工程でアルミニウム展伸材の使用率が大きい部分のみになっているので、第2分別工程で分別された破砕片からは、高品位のアルミニウム材料を再生することができる。そこで、続く素材製造工程では、第2分別工程で分別された破砕片を溶解して、自動車用アルミニウム展伸材用素材を製造することができる。
【0014】
特許文献2に開示されたアルミニウム展伸材の回収システムは、自動車に使用される部材を熟知した作業者が展伸材の分別を手作業により行うものであって、ストックヤードに集積された一般の廃棄物のようにアルミニウム展伸材とアルミニウム鋳物が混合している状態から、アルミニウム展伸材を自動的に選別する目的で使用することはできない。
【0015】
さらに、特許文献3には、アルミニウム合金破砕金属片に対して展伸材と鋳造材に由来するものを自動的に識別し、その結果に基づいて選別することが可能な自動識別装置が開示されている。
開示された方法は、破砕片の形態に基づいて展伸材に由来するものと鋳造材に由来するものとを多変量解析法の一種である判別分析法を用いて識別するもので、重量、体積、面積、縦寸法、横寸法、最大高、重心高などを測定して、判別分析に用いる変数を算定し、これらの変数を予め登録した大量のケースデータに照らし合わせて判定する。ケースデータは、過去において実際に得られた展伸材および鋳造材について測定した結果を蓄積したものである。
【0016】
開示方法は、廃自動車のシュレッダー処理施設で廃棄されるアルミニウム破砕片のように、同じ形態の廃棄物が繰り返し発生するプロセスに適用するときに大きな成果が得られるが、アルミニウム合金展伸材の本質的な特性に基づく手法ではないので、一般廃棄物や出所を特定しない産業廃棄物など、廃棄物に含まれるアルミニウム合金展伸材の形態が特定できない場合には、十分な判別率を達成することが難しいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平7−256231号公報
【特許文献2】特開2003−277837号公報
【特許文献3】特開2009−262009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来、アルミニウムおよびアルミニウム合金を他の金属から分離して回収する方法は実用化されているが、アルミニウム合金の種類別に選別して回収する、精度が高く効率よい手段が知られていなかった。
たとえば、特許文献2に開示された分別方法は、熟練作業員による第1分別工程に依存するもので、自動化に困難がある。また、特許文献3に開示された判定方法は、各方向から撮影した外形画像を扱う複雑な画像処理と高度な判定アルゴリズムを実行する必要があるうえ、サンプルとして収集した破砕片の形態データと照合して判定するためサンプルと異なる形状をもつ破砕片については的確な判定を行うことができない。
このように、アルミニウム合金の種類別に分けて判定する適当な方法が得られないため、アルミニウム合金の種類別に選別して回収する設備を提供することができなかった。
【0019】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、展伸材として利用できる重金属添加物が少ない高品位のアルミニウム合金系別をその他のアルミニウム合金系別から選別するアルミ合金判別方法を提供すると共に、展伸材として利用できるアルミニウム合金系別を選別して回収するアルミ合金選別設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、本発明に係るアルミ合金判別方法は、
(1)回収の対象となる第1アルミ合金からなり厚さの異なる複数の校正用試料と排除の対象となる第2アルミ合金からなる対比用試料を準備する工程と、
(2)校正用試料および対比用試料に対してエネルギーの異なる2つのX線を照射して単位面積毎の透過X線の強度を測定する工程と、
(3)エネルギーの異なる2つのX線に係る透過量をそれぞれ軸とする2次元座標で規定される測定平面に単位面積毎の測定結果を配置する工程と、
(4)校正用試料に関する測定結果を示す点の分布濃度が大きな領域を上側曲線と下側曲線で挟むようにした判別帯を測定平面中に画定して、測定平面を判別帯の中の中密度領域と、上側曲線より外側の高密度領域と、下側曲線より外側の低密度領域に分ける工程と、
(5)対比用試料に関する測定結果の分布と対比して、高密度領域または低密度領域に含まれる校正用試料に関する測定結果の割合に基づいて校正用試料と対比用試料の選別をする第1閾値を決め、中密度領域に含まれる校正用試料に関する測定結果の割合から校正用試料であることを判定する第2閾値を決める工程と、
(6)被選別試料に2つのX線を照射して、単位面積毎の透過X線の強度を測定する工程と、
(7)単位面積毎の2つのX線強度測定値を高密度領域と中密度領域と低密度領域に分類する工程と、
(8)高密度領域または低密度領域に含まれる割合が所定の第1閾値より小さくて、中密度領域に含まれる割合が所定の第2閾値より大きいときに、被選別試料が回収対象品であると判定する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0021】
厚みの異なる複数の試料それぞれの全面にわたり単位面積毎に、異なるエネルギーを有する2つのX線を照射して透過したX線強度を測定して、2種類のX線透過強度を横軸と縦軸にする座標面からなる測定平面上にプロットする。異なるエネルギーを有するX線は、同じX線を使って、遮蔽板を透過させたものと、遮蔽板を透過させないものとにより実現することができる。縦軸に遮蔽板を通って弱められたX線の強度を、また横軸に遮蔽板を通さない強いX線の強度を取ると、試料の厚みが厚くなるに従って座標面の右上から原点に向かって弓形の曲線上に分布するグラフが得られる。このグラフは、試料によって、X線透過率の低い元素ほど座標面上で左上側に描かれ、X線透過率の高い元素ほど右下側に描かれる。
【0022】
したがって、この測定方法を用いて、標準材料について判別用グラフを描いたときに、元素構成の異なる材料の測定点が判別用グラフから外れた位置に現れることを利用することにより、材料の厚さが変動しても、元素の含有割合に基づいて正しく金属の判別をすることができる。
ここで、単位面積は、試料の面積を分割して測定するときに、1つの測定値が出力する最小の面積で、X線センサーの1つの素子が検知する範囲の整数倍の面積になる。
【0023】
なお、ベルトコンベアと、ベルトコンベアの上に設けた1つのX線線源と、ベルトコンベアの下にX線線源と対応して2本のX線検出リニアセンサをベルトコンベアの移動方向に直交する方向に並列に設けたX線検出器と、で構成された測定装置を使うことによって、試料の全面にわたり単位面積毎に、強さの異なる2つのX線の透過強度を測定する方法を提供することができる。
2本のX線検出リニアセンサの一方の面に遮蔽板を置き、X線強度を減衰させることにより、2本のセンサ間で異なるX線強度を測定することができる。遮蔽板は、X線が透過する際にX線強度を適度に減衰させる機能を有するものであって、金属板など各種の材料を利用することができ、薄い銅板であってもよい。一方のX線照射光路に遮蔽板のX線透過特性を加味することにより、実質的に、被測定物を透過した2つのX線の間にエネルギー差を与えたと同じ効果をもたらすことができる。
【0024】
この測定方法では、ベルトコンベアで搬送する試料にX線を照射し、2本のX線検出リニアセンサで試料を透過したX線を測定した結果を用い、試料中の同じ位置に当たる単位測定面積に関する2つのX線透過強度の測定値を対応させることができる。2つの測定位置を対応させるには、ベルトコンベアが2本のX線検出リニアセンサ間の距離を走行する時間を使って距離差を補正すればよい。
異なる金属同士を判定するために有効に利用できる測定平面中の判定曲線は、校正用試料を使って校正することにより求めることができる。また、判定に用いる閾値は、校正用試料に係る測定値の分布および排除対象の材料で形成する対比用試料について求めた測定結果に基づいて決定する。
【0025】
校正用試料は、回収対象となる材料で形成した厚さが異なるものを複数準備する。このような試料について、エネルギーが異なる2つのX線を照射して透過したX線強度を測定して、測定結果を2つのX線の透過量を2軸とする2次元座標にプロットすると、厚さの変化に従って弓形の曲線にそって分布する。
ただし、照射X線のゆらぎやX線透過経路のゆらぎなどのため、同じ厚さの測定点でも、X線強度の測定値は多少のばらつきを示す。そのため、グラフ上には、ある程度の幅を持ったプロット群が形成される。したがって、判定領域は、多くの測定点を包含させるため、幅を持った帯の形になるように決める必要がある。
【0026】
異なる金属同士を判別するような簡単なケースでは、被判別試料の全面における測定点が100%判定帯に含まれることをもって選別対象の金属材であると判定することができる。しかし、測定点が近い位置にばらつく合金同士を対象とするときなどは、判定帯の幅をあまり大きくすると排除すべき金属が紛れ込みやすくなるので、判定帯の幅は適当に抑えた上で、両材料の差を確率的に判定する方がより信頼性が高くなる。すなわち、上側曲線と下側曲線に挟まれた判定領域のなかを中密度領域と呼ぶとして、中密度領域を外れる測定点が存在しても多くの測定点が中密度領域に含まれるときは、校正用試料の材質からなる材料であると確率的に判定することができる。
【0027】
従来、このX線透過型判別方法は、たとえばアルミニウムと銅など、混在した異種金属間の選別に利用されてきたが、アルミニウム合金の異なる系同士に対しては密度差が小さいため適用が困難であった。
本発明のアルミ合金判別方法は、アルミニウム合金の系統によってはX線吸収率が僅かに異なること、つまりX線透過強度が低下するアルミニウム合金はいずれも銅や亜鉛などのアルミニウムより重い金属を多く含んでいること、さらに上記のX線透過型判別方法における単位面積毎の測定結果がばらつきをもって分布すること、に注目して、測定結果に対して統計的処理を施して僅かの差異を検出することにより、鋳造材に由来するアルミニウム合金や展伸材に由来するアルミニウム合金について、合金系別に判別することを可能としたものである。
【0028】
ただし、アルミニウム合金間の透過X線強度の差は十分に大きくはないうえ、廃棄物の厚さは大きな範囲にわたって変化するため、単なる透過X線の強度差に基づいて、アルミニウム合金の成分差を検知し選別することは難しい。
本発明のアルミ合金判別方法は、校正用試料を使って得た判別領域と閾値を利用することにより、測定値の分布の統計的相違を検出して、アルミニウム合金の系別を判定するものである。
【0029】
本発明のアルミ合金判別方法では、中密度領域に分類される測定結果の割合が統計的に求めた第2閾値(たとえば46%)より大きいことを検証することにより回収対象とするアルミニウム合金(第1アルミ合金)である蓋然性を判定し、さらに、高密度領域に分類される測定結果の割合が統計的に求めた第1閾値(たとえば24%)より小さいことを検証することにより排除対象となる重金属を多く含む別種のアルミニウム合金(第2アルミ合金)と区別して、合格した材料を選別対象のアルミニウム合金と判断する。
【0030】
アルミニウム合金間では、X線透過率の差が小さいのでより精密な手法を用いる必要がある。そこで、排除対象の第2アルミ合金からなる対比用試料を準備し、対比用試料に対して校正用試料と同じ測定をして、その測定結果と校正用試料に関する測定結果と対比して、判別帯の位置および第1閾値、第2閾値を調整することにより、第1アルミ合金と第2アルミ合金の間の選別性能を向上させたものである。
【0031】
なお、正確には、本発明の方法により現状で選別できるアルミニウム合金(第1アルミ合金)は、アルミニウムに重金属成分をあまり含まない、たとえば合金番号1000系のアルミニウムと、合金番号3000系、5000系および6000系の重金属を含まないアルミニウム合金であり、主として展伸材由来の廃棄物が属する。
これら系別のアルミニウム合金は、重金属を僅かしか含まないので、回収後融合して組成調整することにより、適宜のアルミニウム合金として再生することができる。
【0032】
また、排除されるアルミニウム合金(第2アルミ合金)は、銅を数%含む合金番号2000系と亜鉛を数%含む7000系の合金である。
第2アルミ合金は、銅や亜鉛がアルミニウムよりX線を多く吸収するので、同じ厚さなら透過X線強度に関する測定結果が上記2次元座標面において、より左上側に位置することになる。
なお、ここで第2アルミ合金とされたものは、観点を変えると、排除により精度良く選別することができる。
【0033】
アルミニウム合金同士を判定するために利用する測定平面中の判定曲線は、校正用試料を使って校正することにより求めることができる。また、判定に用いる閾値は、校正用試料に係る測定値の分布および排除対象の材料(第2アルミ合金)で形成する対比用試料について求めた測定結果に基づいて決定する。
厚さが異なる複数の校正用試料について、エネルギーが異なる2つX線の透過X線強度を測定した結果を測定平面にプロットすると、弓形の曲線にそって幅を有する帯状に分布する。したがって、判定曲線は、帯幅を有する弓状の判定帯にする必要がある。
【0034】
排除の対象となる第2アルミ合金は、第1アルミ合金よりX線透過率が低い高密度金属であるから、測定値のプロット位置は上記2次元座標面において第1アルミ合金より高密度側である左上側に偏る。
そこで、第1閾値は、第1アルミ合金に関する測定結果が統計的ゆらぎのため高密度領域に含まれる割合が大きくなる場合にも第1閾値を超えない値であって、第2アルミ合金に関しては統計的ゆらぎのため高密度領域に含まれる測定結果が減少しても第1閾値以下にならないような値であることが好ましい。
また、第2閾値は、第1アルミ合金に関する測定結果が統計的ゆらぎのため中密度領域に含まれる割合が小さくなっても第2閾値以下にならないような値を選択することが好ましい。
【0035】
第2アルミ合金と対比して判別帯と閾値を決定すれば、第1アルミ合金と第2アルミ合金の間の測定結果における分布が近接している場合でも、相互間の小差を検知して、十分な確度で選別回収することができる。
なお、第1アルミ合金の判定確度をより大きくするためには、十分な回数の試行錯誤を繰り返して決めることが望ましい。
以上のように、本発明のアルミ合金判別方法は、校正用試料を使って得た判別領域と閾値を利用することにより、測定値の分布の統計的相違を検出して、アルミニウム合金の系別を判定できるようにしたものである。
【0036】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るアルミ合金選別設備は、アルミニウム合金選別を行うX線透過型金属選別機と、他の廃棄物からアルミニウム合金を選別してX線透過型金属選別機にアルミニウム合金を供給する前処理設備を備える。
X線透過型金属選別機は、アルミニウムおよびアルミニウム合金の被選別試料を搬送するベルトコンベアと、ベルトコンベアの上方に設けたX線線源と、ベルトコンベアの下に設けて透過してきたX線の強度を測定する2連のX線センサであって、2連のうち一方はセンサにかぶせた金属板を透過させてX線強度を弱化させて検出するようにしたX線センサと、2連のX線センサの出力を用い、ベルトコンベアの搬送距離に基づいて、試料の同じ位置における単位面積毎の透過X線の強度を算定し、単位面積毎の2つのX線強度を、第1アルミ合金の校正用試料を用いて予め校正して求めた第2アルミ合金との選別を可能とする高密度領域と中密度領域と低密度領域とに分類して、高密度領域に含まれる割合が所定の第1閾値より小さくて中密度領域に含まれる割合が所定の第2閾値より大きいときに、第1アルミ合金と判定し、測定された試料がベルトコンベアの終端位置に到達したときに判定結果に従って第1アルミ合金を第1貯留槽に他のアルミ合金を第2貯留槽に分配させる指令を発生する判定装置と、判定装置の指令に従って試料を回収側と排除側に分配する分配装置とを有するX線透過型金属選別機を備える。
【0037】
本発明に係るアルミ合金選別設備における前処理設備は、所定寸法以上の廃棄物を選別して供給する篩装置と、所定寸法以上の廃棄物から非金属品を排除する金属選別機と、金属選別機から供給された金属廃棄物からアルミニウムおよびアルミニウム合金を選別して供給するアルミニウム選別機を含むことが望ましい。
【0038】
また、アルミニウム選別機としてX線透過型金属選別機が適しており、2連のX線センサの出力を用い、ベルトコンベアの搬送距離に基づいて、試料の同じ位置における単位面積毎の透過X線の強度を算定し、単位面積毎の2つのX線強度を、アルミニウムおよびアルミニウム合金の校正用試料を用いて予め校正して求めたアルミニウムとアルミニウム合金を他の金属から選別できるようにしたアルミニウム領域から外れたときにアルミニウムおよびアルミニウム合金以外の金属と判定して排除するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明のアルミ合金判別方法とこれを用いたアルミ合金選別設備は、廃棄物からアルミニウムとアルミニウム合金を選別して得られたアルミスクラップを供給して、展伸材由来のアルミ合金や鋳造材由来のアルミ合金を合金系別に選別して回収することにより、アルミニウム回収におけるエネルギーと作業工程を著しく節減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の1実施形態に係るアルミ合金判別方法を実施する金属選別機の構成を概念的に説明する斜視図である。
【図2】本実施形態のアルミ合金判別方法においてX線透過状態を測定する原理を説明する図面である。
【図3】本実施形態のアルミ合金判別方法における測定結果を求める手法を説明する図面である。
【図4】本実施形態に係るアルミ合金判別方法において校正用試料の測定値をプロットした例を示す図面である。
【図5】アルミ合金判別方法により銅とアルミを選別する原理を示す図面である。
【図6】アルミ合金の化学成分表である。
【図7】排除対象のアルミ合金について試行した測定結果をプロットしたグラフである。
【図8】本実施形態に係るアルミ合金判別方法において判定に使う領域と閾値を決める原理を説明する図面である。
【図9】本実施形態に係るアルミ合金判別方法において校正用試料の測定値を分類した状態を示す図面である。
【図10】本実施形態に係るアルミ合金判別方法の手順を説明する流れ図である。
【図11】本実施形態に係るアルミ合金判別方法におけるアルミ合金の判定結果例を示す表である。
【図12】本発明の1実施形態に係るアルミ合金選別設備の処理手順を表す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明に係るアルミ合金判別方法及びアルミ合金選別設備について、実施例に基づき図面を参照しながら詳しく説明する。
【0042】
図1は、本発明の1実施形態において使用するX線透過型金属選別機の構成を概念的に説明する斜視図である。
本実施形態に係るアルミ合金判別方法は、図1に示すようなX線透過型金属選別機を使用することにより実施することができる。本実施形態におけるX線透過型金属選別機は、試料21を搬送するベルトコンベア1と、ベルトコンベア1の上方に設けたX線線源3と、ベルトコンベア1の下に設けて試料21を透過してきたX線の強度を測定する2連のX線センサ5と、測定信号を用いて演算することにより試料の判別を行う判定回路7とを備える。
【0043】
2連のX線センサ5は、第1X線検出リニアセンサ9と第2X線検出リニアセンサ11を平行に配置したもので、第1X線検出リニアセンサ9はX線入射面に金属板(遮蔽板)13をかぶせて試料21を透過したX線を弱化させて強度測定するようになっている。2つのX線検出リニアセンサ9,11は同じ型式のセンサで、X線検出素子を線上に並べ、各素子の測定結果を走査して順次出力する構造を有する。各素子は、素子毎に測定位置が決まっており、試料21の単位面積部分を透過して来たX線の強度に応じた測定信号を出力する。
【0044】
試料21はベルトコンベア1により移動しているので、X線検出リニアセンサ9,11は、試料21の全面積にわたって透過X線強度を測定することになる。
なお、第1X線検出リニアセンサ9と第2X線検出リニアセンサ11の測定位置を対応させやすくするために、X線検出リニアセンサ9,11は、ベルトコンベア1の移送方向と直交するように配置することが好ましい。
【0045】
X線線源3から放射されるX線15は、ベルトコンベア1上の試料21が搭載される領域を広く照射するが、X線検出リニアセンサ9,11が検出するX線は、線上に並んだ検出素子列に入射するX線に限られるので、照射X線はスリット光17,19とみなすことができる。また、第1X線検出リニアセンサ9に入射するX線は金属板13のX線吸収特性により変成されるので、X線スリット光17,19は実質的に互いに特性の異なるX線で形成されたものとみなすことができる。
【0046】
図2と図3は本実施形態で使用するX線透過型金属選別機において、試料21上のある点におけるX線透過状態を検知する手法を説明する図面である。
X線透過型金属選別機は、金属の元素番号が大きいほどX線透過率が小さくなることを利用して、金属の種別を判定するものである。
X線の透過量は試料の厚みに影響を受けるので、異なる特性を有するX線を照射して得た2つの透過X線強度測定結果を用いて厚みの影響分を補正している。また、X線の測定ではX線放射のゆらぎやX線測定のゆらぎが無視できないため、1つの試料について多数の測定を行い、結果を統計的に処理することにより信頼性を確保するようにしている。
【0047】
図2および図3に示すように、第2X線検出リニアセンサ11は、ベルトコンベア1によって運動している試料21のある位置23におけるX線透過状態を、第1X線検出リニアセンサ9が測定した時点から、所定の時間Δだけ経過した後に測定する。時間Δは、センサ列の間隔Dをベルトコンベア1の速度vで割って得られる時間である。したがって、試料21の同じ測定位置23,25において2つの異なる強度のX線について測定した2つのX線透過強度測定値は、簡単に対応させることができる。
【0048】
このようにして、厚みの異なる複数の試料21について2つの異なるX線を照射して得た各単位面積毎のX線透過強度の測定値を、各試料の全面積にわたり所定の測定平面にプロットする。
測定平面は、第1X線検出リニアセンサ9の測定出力を縦軸に、第2X線検出リニアセンサ11の測定出力を横軸にした2次元座標面である。測定平面の縦軸は、X線検出センサを金属板13でカバーすることにより実質的に弱いX線を照射した場合に対応させたものである。測定平面のスケールは、横軸および縦軸、いずれも、それぞれのセンサの出力範囲と整合させている。したがって、目盛りは物理単位と直接の整合性はない。
【0049】
図4は、サッシ材として多用される合金番号6063のアルミニウム合金について厚み1mm,3mm,7mm,12mm,25mmとした5つの校正用試料を準備し、これら試料にX線を照射して、第1X線検出リニアセンサと第2X線検出リニアセンサで測定した結果を、試料全面について、測定平面にプロットしたものである。
なお、図4等のグラフでは、第1X線検出リニアセンサによる測定値と第2X線検出リニアセンサによる測定値について、X線が全く透過しない状態が零点となり、ベルト上に試料が載っていない状態の測定値がフルスケール位置にくるように正規化して表示している。
測定結果は照射X線のゆらぎやX線透過経路のゆらぎなどのためばらつきを持つため、測定結果のプロットは塊状に分布するが、試料の厚い方から薄い方に向かって、原点と右上の端点を結ぶ弓形の曲線にそって分布することが分かる。
【0050】
これにより、合金番号6063のアルミニウム合金で作られたサンプルの測定値は、厚みにつれて図4に表された弓形曲線に沿うものとして表されることが分かる。
測定値のばらつきを考慮し、弓形曲線に上側曲線と下側曲線とで挟まれた判定領域を設定することによって、合金番号6063のアルミニウム合金の測定値の大部分が判定領域に含まれるようにすることができる。
なお、試料のアルミニウム合金より原子量が大きくX線透過率の小さい材料の測定結果はこの弓形曲線より左上側にプロットされ、原子量が小さくX線透過率の大きい材料では弓形曲線の右下側にプロットされる。
【0051】
したがって、たとえば銅のようにアルミニウム合金とX線透過率が異なる金属であれば、上記の手法により2つの金属を簡単に区別することができる。
図5は、各種のアルミニウム合金で作成した試料について測定した結果と、銅の試料について同じ手順で測定した結果を、同じ測定平面上に一緒にプロットした図面である。
図に見るように、アルミニウム合金全般を含むようにするためには判定領域の幅を少し大きくする必要があるが、銅の測定結果はアルミニウム合金の測定結果より測定平面上左上側に大きくそれていて、アルミニウム合金のための判定領域に含まれる割合は小さい。
【0052】
このように、測定結果が判定領域にある程度含まれることを条件として、簡単にアルミニウム合金と銅とを判別することができる。そこで、従来は、このX線透過型判別方法は、混在した異種金属間の選別に利用されてきたが、アルミニウム合金の異なる系同士に対してはX線透過率の差が小さいため適用が困難であった。
【0053】
しかし、発明者らの研究の結果、アルミニウム合金についても、添加された重金属の存在を利用し、今般開発した精密な判定手順を用いることにより、用途に対応する種別間で区別することができることが判明した。
【0054】
図6は、アルミ合金の化学成分表である。表は、アルミニウムおよびアルミニウム合金の系別を代表する合金について、合金の種類毎に決められた化学成分を表している。
図6の表によると、合金番号1050のアルミニウムはもちろん、熱交換器用材などに用いられる合金番号3003、建築用サッシなどに用いられる合金番号6063、溶接構造材などに使用される合金番号5083のアルミニウム合金には、アルミニウムより原子量が大きい重金属を大量に含まないことが分かる。
【0055】
これらのアルミニウムおよびアルミニウム合金は、アルミニウム以外の金属をあまり含まないので、回収後互いに混合しても、合金母材として適宜の金属を混入して成分調整することにより、広く各種のアルミニウム合金を生成することができる。特に、合金番号6063はサッシとして大量に廃棄されるので、まとめて回収することにより、簡単な処理でサッシ用の展伸材として再利用することができる。
【0056】
一方、図6の表には、ジュラルミンの名称で知られる合金番号2024に銅が3.8〜4.9%含まれること、溶接構造用材料となる合金番号7N01に亜鉛が4.0〜5.0%含まれることが示されている。
【0057】
そこで、重金属をあまり含まないアルミニウムおよびアルミニウム合金の群を回収対象として第1アルミ合金と呼び、重金属を含むアルミニウム合金の群を排除対象として第2アルミ合金と呼んで区別するものとすると、第1アルミ合金と第2アルミ合金では、重金属の含有量が異なるためX線透過率が異なり、先のアルミ合金判別方法を適用したときに、測定結果のプロットが測定平面上僅かに偏ることが予想される。
【0058】
図7は、第2アルミ合金の代表として、合金番号2024について、先に説明した手順で測定した結果を同じ測定平面にプロットした結果を示す。図面には、図4に示した合金番号6063に適した判定領域が記入されている。
図7によると、合金番号2024の測定結果のプロット群は、合金番号6063のものより僅かに左上側、すなわち高密度側にずれていることが分かる。
ただし、特に合金番号2024の厚みの薄い試料などは、測定結果のプロットの中心部分が合金番号6063の判定領域にほとんど含まれていて、両者の別を判定することは難しいように見られる。
【0059】
そこで発明者らは、鋭意研究の結果、対象とするアルミ合金を限定して、判定領域と判定水準を適宜に調整することにより、判定を可能にすることができた。
図8は、本実施形態のアルミ合金判別方法において判定領域と判定のための閾値を決める原理を概念的に説明する図面である。
【0060】
本判別方法により1つの試料を測定したとき、試料全面にわたる測定結果は、X線照射やX線測定におけるゆらぎなどのため変動するので、中央の確率が高く周辺の確率が低い分布を示す。この分布を、図8では、代表して正規分布で表わすことにする。同じ材質を有する別の試料について測定すると、測定結果はばらついて、図中に複数の実線で示すように、先の分布に対して中央値がずれた分布を示す。第1アルミ合金には組成の異なる複数のアルミニウム合金が含まれるので、分布のゆらぎはさらに大きくなる。
一方、第2アルミ合金は重金属を含有するため第1アルミ合金よりX線透過率が小さくなり、図中に波線で表わすように、高密度側に偏った測定結果分布を示す。
【0061】
そこで、測定結果が分布する弓形の曲線に沿って、上側曲線と下側曲線で挟まれた判定領域を定めて、測定結果のプロットが上側曲線より高密度側の高密度領域に含まれる高密度割合と、判定領域である中密度領域に含まれる中密度割合を求めて、これらの割合に基づいて合金の種類を判定するようにする。
すなわち、第1アルミ合金の測定が高密度側にゆらいでも、第2アルミ合金とは区別できるような高密度割合を見いだして、第1閾値とする。さらに第1アルミ合金の測定結果が低密度側にゆらいでも、アルミニウムより軽い金属やプラスチックスなどではないと判定できるような中密度割合を見いだして、第2閾値とする。
【0062】
廃棄物片から第1アルミ合金を選別するときは、廃棄物片の全面について測定した結果のうち高密度領域に含まれる割合を算出する。
高密度領域に含まれる測定結果の割合が第1閾値より小さい場合には、廃棄物片は第2アルミ合金ではなく、第1アルミ合金である可能性が高い。さらに、中密度領域に含まれる測定結果の割合が第2閾値より大きければ、第1アルミ合金より低密度の物質である可能性を排除することができる。
【0063】
本実施形態のアルミ合金判別方法では、測定結果に対して2つの基準を用いて判定するので、第1アルミ合金を高い確度で判別することができる。
なお、判定領域を規定する上側曲線と下側曲線および第1閾値と第2閾値は、判定成績を左右する重要な指標であるが、曲線をどのように規定するかによって閾値が変化する。また判別対象群や判別装置などによって最適値が変化する。したがって、これらの指標は、実際に使用する構成について試行錯誤により求める必要がある。
【0064】
図9は、本実施形態に係るアルミ合金判別方法を用いて合金番号6063で作成した、1mmから25mmまでの厚さが異なる5つの校正用試料について測定した結果を、試料の全面にわたり高密度領域(黒点)、中密度領域(中間色点)、低密度領域(灰色点)の3つの領域毎に分類して表示したものである。判定領域である中密度領域は、試行錯誤により決めたものである。
厚さ1mmの試料では灰色で示す低密度領域と黒で示す高密度領域に含まれる測定点が比較的多くなっているが、厚さが増えるにつれて、中間色で示す中密度領域に含まれる面積が増加しており、厚さにより各密度領域の割合に若干の差が表れる。
【0065】
測定対象の試料はすべて選別対象となる第1アルミ合金でできているので、これらのデータをすべて含む条件で判定をする必要がある。このためには、判定領域の位置を適当に決めるが、それだけでは正確な判定が難しいので、測定結果の分布に係る指標を取り込んでいる。
本実施例では、判定領域に含まれる第1アルミ合金測定結果の割合は、すべてのケースで、46%以上となっている。しかし、排除したい第2アルミ合金である合金番号2024と合金番号7N01について測定した結果をみると、ほとんどのケースで46%以下になっているが、46%を超えるケースも存在する。
【0066】
一方、第2アルミ合金では高密度領域に含まれる測定結果の割合が大きく、測定結果の分布がゆらいでも、その値が24%までは低下しないことが確認できた。
したがって、中密度領域に含まれる割合について下限を定める第2閾値を46%とする上に、高密度領域に含まれる測定点の割合について上限を定める第1閾値を24%に設定して、2つの基準を満たすことを条件とすることにより、第1アルミ合金と第2アルミ合金を区別することができることが分かった。
【0067】
図10は、上記手法を利用した本実施形態のアルミ合金判別方法の手順を説明するフロー図である。
本実施形態のアルミ合金判別方法では、廃棄物について判定を行う前に、判定基準を決定する。判定基準は判定領域と第1閾値と第2閾値により定まる。その後に、判定対象試料について測定し、判定基準に従って判定する。
【0068】
判定基準を決定するためには、まず、厚さの異なる第1アルミ合金製校正用試料と第2アルミ合金製対比用試料を準備する(S11)。準備した校正用試料と対比用試料を順次X線透過型金属選別機にかけて、エネルギーの異なる2つのX線を照射して単位面積毎の透過X線強度を測定する(S12)。単位面積毎の測定結果を、測定平面に配置する(S13)。測定平面は、2つの透過X線強度を2つの軸とする2次元座標面である。なお、測定結果を測定平面に配置する工程は、コンピュータの中で行えばよい。
【0069】
測定結果をプロットした測定平面において、校正用試料について測定結果の分布濃度が大きな領域を結ぶことにより判別帯を画定することができる(S14)。ついで、判別帯を挟む上側曲線と下側曲線を引いて、測定平面を上側曲線と下側曲線に挟まれた中密度領域と、上側曲線の外側の高密度領域と、下側曲線の外側の低密度領域とに分ける(S15)。
【0070】
対比用試料測定結果の分布と対比して、高密度領域に含まれる校正用試料の測定結果の割合に基づいて校正用試料と対比用試料の選別をする第1閾値を決める(S16)。ついで、中密度領域に含まれる校正用試料の測定結果の割合から第1アルミ合金であることを判定する第2閾値を決める(S17)。
こうして、X線透過型金属選別機により被選別試料の仕分けを行うための判定基準を画定する。
【0071】
測定条件に対応する判定基準が決まった後に、対象とする被選別試料について測定して判定を行う。
被選別試料は、X線透過型金属選別機のベルトコンベアに搭載され、移動中に2つの実質的に異なるX線スリット光に照射され、単位面積毎の透過X線強度が測定され、出力される(S21)。単位面積毎の2つのX線強度測定値を高密度領域と中密度領域と低密度領域に分類する(S22)。測定結果が高密度領域に含まれる割合が先に定めた第1閾値より小さくて、中密度領域に含まれる割合が先に定めた第2閾値より大きいときには(S23)、被選別試料が回収対象品であると判定する(S24)。また、この条件のいずれかが満たされない場合は、被選別試料は排除すべき物と判定する(S25)。
被選別試料の判定をした後に、被選別試料が残っていれば判定工程の初めに戻って判定を繰り返し、すべての被選別試料について判定が済んだら、作業を終了する(S26)。
【0072】
図11は、各種の試料について本実施形態のアルミ合金判別方法を適用したときに、測定結果が各領域に含まれた割合を示した表である。各試料は、板厚が1mmから25mmあるいは30mmまで、いろいろに変化している。表に示した数値は、測定結果を高密度領域(H)と中密度領域(M)と低密度領域(L)に分配したときの割合を示す。
最下欄に、各合金種について、全試料が第1アルミ合金と判定した場合に○、第2アルミ合金と判定した場合に×を記入している。
第1アルミ合金に含まれる合金番号1000,3003,5083,6063はすべて条件を満たして第1アルミ合金と判定され、第2アルミ合金に含まれる合金番号2024と7N01はすべて条件を満たさず第2アルミ合金と判定されている。このように、本実施形態の判別方法により、試行対象の試料をすべて第1アルミ合金と第2アルミ合金に正しく選別することができた。
【0073】
図12は、本発明の1実施形態に係るアルミ合金選別設備における処理手順の流れを説明する流れ図である。
従来、迅速かつ大量にアルミニウムおよびアルミニウム合金と他金属を選別するアルミ合金選別設備はあったが、合金系別にアルミニウム合金を迅速かつ大量に選別する技術は見られなかった。
本実施形態のアルミ合金選別設備は、上記説明したアルミ合金判定方法を利用したX線透過型金属選別機を組み込んで、市中から回収された廃棄物などから得られるミックスメタルから選別して得たアルミニウム合金破砕片をさらに選別して、いわゆるアルミニウム合金展伸材を選別して回収するものである。
【0074】
本実施形態のアルミ合金選別設備に使用するX線透過型金属選別機は、アルミニウムおよびアルミニウム合金の被選別試料を搬送するベルトコンベアと、ベルトコンベアの上方に設けたX線線源装置と、ベルトコンベアの下に設けて透過してきたX線の強度を測定する2本のX線検出リニアセンサを並列に並べた2連のX線センサであって、一方のX線検出リニアセンサはセンサにかぶせた金属板を透過させてX線強度を弱化させて検出するようにしたX線センサと、2連のX線センサの出力を用い、ベルトコンベアの搬送距離に基づいて、試料の同じ位置における単位面積毎の透過X線の強度を算定し、単位面積毎の2つのX線強度を、第1アルミ合金の校正用試料を用いて予め校正して求めた第2アルミ合金との選別を可能とする高密度領域と中密度領域と低密度領域とに分類して、高密度領域に含まれる割合が所定の第1閾値より小さくて中密度領域に含まれる割合が所定の第2閾値より大きいときに、第1アルミ合金と判定し、測定された試料がベルトコンベアの終端位置に到達したときに判定結果に従って第1アルミ合金を第1貯留槽に他のアルミ合金を第2貯留槽に分配させる指令を発生する判定装置と、判定装置の指令に従ってエアノズルを駆動するなどして試料を選別対象側と非対象側に分配する分配装置とを有する。
【0075】
本実施形態のアルミ合金選別設備は、渦電流金属選別機と2式のX線透過型金属選別機を備えて、篩で選別した10mm角以上の破砕片に対して、3段階の選別を施して、アルミニウム合金展伸材を回収する。
図12を参照すると、アルミニウムの他に、鉄、銅、ゴム、プラスチックスなどを含んで構成される市中スクラップから得られるミックスサンプルは、篩にかけて10mm角以上の大きさを持った破砕片を選別する。10mm角以下の細かい破砕片は選別機で精度よく分離することが難しいので、除去する。
【0076】
10mm角以上の破砕片に整えられたミックスサンプルは、1段階目の選別として渦電流金属選別機にかけて、ゴムや木くずや樹脂などの非金属類を除去し、各種金属だけで構成されるミックスメタルを選別する。
選別されたミックスメタルは、2段階目の選別としてアルミ選別用に条件設定されたX線透過型金属選別機にかけることにより、アルミ以外の金属と大きな異物が付いたアルミニウム類を除去して、アルミニウムおよびアルミニウム合金の破片で構成されるアルミスクラップを分離する。
【0077】
アルミニウム類のみが集合したアルミスクラップは、3段階目の選別として、先に説明した本発明のアルミ合金判別方法に従って合金系別の選別ができるように条件設定されたX線透過型金属選別機にかけることにより、合金番号6063のアルミニウム合金を分離して回収する。
本実施形態のアルミ合金選別設備は、合金番号6063のアルミニウム合金を展伸材主原料として十分利用できる高い品位で回収することができる。再生された合金番号6063のアルミニウム合金は、展伸材として、たとえば窓枠サッシとして再利用することができる。
【0078】
なお、最後の3段階目の選別で得られるアルミニウム合金には、1000系、3000系、5000系、6000系のアルミニウム合金も混入する可能性があるが、これらの成分はいずれもアルミニウム以外の成分金属の含有量が小さく、合金番号6063の再生工程において歩留り向上に資するので、混在させても特に支障がない。
最後に除去されるアルミニウム合金は、2000系や7000系のアルミニウム合金やアルミダイキャストである。これらのアルミニウム合金は、鋳造材として再生利用することができる。
なお、本発明のアルミ合金判定方法およびこれを使用したアルミ合金選別設備は、合金番号6063の再生に限らず、1000系、3000系、5000系のアルミニウム合金を目的として判別するようにすることもできる。また、逆の観点からすると、2000系や7000系のアルミニウム合金を精度良く判別することも可能にするものでもある。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係るアルミ合金判定方法およびこれを使用したアルミ合金選別設備は、アルミ合金廃棄物から展伸材を選択的に回収することができるので、回収したアルミ類を展伸材として再生することを可能として再利用先を拡大し、かつ、展伸材の再生工程における溶融エネルギーと作業工程を著しく節減させることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 ベルトコンベア
3 X線線源
5 X線センサ
7 判定回路
9 第1X線検出リニアセンサ
11 第2X線検出リニアセンサ
13 金属板
15 照射されるX線
17,19 X線スリット光
21 試料
23,25 測定位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ合金を合金系統別に判別する方法と選別する設備に関し、特に鋳造材由来のアルミニウム合金と展伸材由来のアルミニウム合金とを選別回収するだけでなく、展伸材アルミニウム合金をさらにその系統別に選別回収するためのアルミ合金判別方法と選別設備に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムは極めてリサイクル性に優れた材料であって、リサイクルによる二次地金への溶解エネルギーは新地金の溶解エネルギーの3〜5%に過ぎない。このため、リサイクルシステムを効率よく運用することにより、アルミニウムはエネルギー消費の少ない地球環境に優しい材料かつ製造原価の小さい材料として広範囲に利用できる。
アルミニウムあるいはアルミニウム合金は、現状においても、省資源化の観点と低コスト化の観点とからリサイクルされることが一般的である。このため、従来から、迅速かつ大量にアルミニウムおよびアルミニウム合金を他の金属から選別して回収する技術が開発されてきた。
【0003】
たとえば、特許文献1には、比較的一般的な金属選別回収装置が開示されている。開示された金属選別機は、ストックヤードに貯蔵された廃棄物を前処理後に破砕し、発泡成形材を分離して、残った重い廃棄物を金属選別装置に送って、銅片またはアルミニウム片を分離するシステムである。金属選別装置では、磁力選別機により鉄系金属を分別し、渦電流選別機により非鉄系金属を分別する。さらに、非鉄金属は、さらに色選別機と比重検出選別機のそれぞれで銅片、アルミニウム片を選別する。また、渦電流選別機で非金属として分離されたものも、風力選別機で金属小片を分別し、振動式選別機にかけて銅片とアルミニウム片を回収する。
【0004】
開示された金属選別回収装置によれば、アルミニウムは、廃棄物から、ほぼ全自動で、高純度に選別回収することができる。
なお、特許文献1には、色選別機の代わりに、金属の種類によってX線の透過具合が異なることを利用するX線式選別機を用いた例が記載されている。開示されたX線式選別機は、X線検出センサの前に形状センサを設けて、破砕片の厚さを測定して、単位厚さあたりの透過X線強度を算出し、材質毎に予め取得したデータと照合して、破砕片の材質を推定するものである。
【0005】
ただし、アルミニウム合金は合金種によって添加元素の含有量が異なるが、合金種毎に分別して回収することはできなかったため、回収したアルミ等は、合金種にかかわらず混合して溶融し、成分組成の調整をして、品位の低い二次合金や鋳物合金としてリサイクルされてきた。
こうして回収したアルミ等から再生した鋳造材は、主として自動車の内燃エンジンに利用されてきた。自動車の生産量は大きく、アルミニウム合金鋳造材の需要が大きいため、回収されたアルミニウムおよびアルミ合金は十分消化されてきた。
【0006】
ところが、近年、自動車エンジンは漸次に脱石油燃料化され、内燃エンジンは電気モータ等に代替されていく趨勢にあって、近い将来、鋳造材需要の減退によりアルミニウムリサイクルは成立しなくなるおそれがある。
このように、将来を案ずると、回収アルミ類は自動車以外の需要先を開拓する必要に迫られている。需要を拡大するためには、自動車需要に頼る鋳造材としての再利用だけでは難しく、展伸材由来の回収アルミニウム合金を展伸材として供給できるようにする必要がある。
【0007】
アルミニウム合金はアルミニウムに添加される金属の組成により合金種が決まり、合金種毎に適切な用途が決まっているので、高品位のアルミニウム合金にとって不純物になる金属が混入すると、品位が低下してリサイクル目的とするアルミ合金用途に使用することができない。従来は、廃棄物から選別回収されたアルミニウムおよびアルミニウム合金は、合金種に関わりなく一緒に混合されてリサイクルされるため、混合されたアルミニウム合金に成分として不足する元素を加えることにより生産できる鋳造材として再利用するしかなかった。
【0008】
たとえば、合金番号6063のアルミニウム合金は、添加成分の少ない高品位な合金で展伸性能に優れサッシなどに利用される展伸材になる。合金番号6063の合金は、取り外した窓枠として建築廃材中に大量に含まれるが、大量のサッシが廃棄物として回収されても、現状ではアルミニウムおよびアルミニウム合金の種別を区別して分別回収する適当な手段がないため、また、同時に回収される鋳造品などと混ざるので、一緒に溶解して低品位の二次合金地金や鋳造材にする他になかった。
【0009】
そこで、廃棄物中のアルミニウムおよびアルミニウム合金について、合金系別に分別回収することができれば、回収アルミニウム合金類のほとんどを将来需要の限られる低価格の鋳造材として再生するのではなく、回収された合金の系別に従ってたとえばサッシ材など大量の需要が見込める材料として再利用することもできるようになる。
【0010】
また、従来のリサイクルではアルミスクラップから二次合金地金を製造するために、比較的大きなエネルギーを消費する、成分分析および成分調整するための溶解工程を経る必要があるのに対して、たとえばサッシ廃棄物をサッシ材として再利用する場合は、サッシ廃棄物から異物を選別除去し、サッシ用アルミニウム合金のみの状態にすることができれば、二次合金地金の製造工程の溶解エネルギーおよび再生工程を大幅に節減することができる。
【0011】
このため、アルミニウムおよびアルミニウム合金を合金系別に、たとえばサッシ用展伸材とその他の展伸材または鋳造材とに分けて、回収することが求められる。このためには、アルミニウムおよびアルミニウム合金を合金系別に区別して判定する方法が必要になる。
しかし従来は、合金系別に区別して判定する適当な方法がなく、区別なく市中から回収されてきた一般廃棄物中の種々のアルミニウムおよびアルミニウム合金を処理して、合金の種類に従って選別回収することができなかった。
【0012】
なお、特許文献2には、使用済み自動車のアルミニウム展伸材とアルミニウム鋳造材を分離して回収することにより、回収したアルミニウム展伸材を再び自動車用アルミニウム展伸材として再生するリサイクル方法とリサイクルプラントが開示されている。
開示された方法では、使用済み自動車において展伸材が使用されている部分が明確に知られているところから、第1分別工程で、解体するときに、アルミニウム鋳物の部分や混入するとアルミニウム合金を低品位にする鉄やケイ素などの不純物要因を取り除いて、残りの部分を処理対象として分別する。
【0013】
第2分別工程では、第1分別工程で分別された部分を破砕して、磁選などの周知の手法により、アルミニウムを主成分とする破砕片を分別する。既に第1分別工程でアルミニウム展伸材の使用率が大きい部分のみになっているので、第2分別工程で分別された破砕片からは、高品位のアルミニウム材料を再生することができる。そこで、続く素材製造工程では、第2分別工程で分別された破砕片を溶解して、自動車用アルミニウム展伸材用素材を製造することができる。
【0014】
特許文献2に開示されたアルミニウム展伸材の回収システムは、自動車に使用される部材を熟知した作業者が展伸材の分別を手作業により行うものであって、ストックヤードに集積された一般の廃棄物のようにアルミニウム展伸材とアルミニウム鋳物が混合している状態から、アルミニウム展伸材を自動的に選別する目的で使用することはできない。
【0015】
さらに、特許文献3には、アルミニウム合金破砕金属片に対して展伸材と鋳造材に由来するものを自動的に識別し、その結果に基づいて選別することが可能な自動識別装置が開示されている。
開示された方法は、破砕片の形態に基づいて展伸材に由来するものと鋳造材に由来するものとを多変量解析法の一種である判別分析法を用いて識別するもので、重量、体積、面積、縦寸法、横寸法、最大高、重心高などを測定して、判別分析に用いる変数を算定し、これらの変数を予め登録した大量のケースデータに照らし合わせて判定する。ケースデータは、過去において実際に得られた展伸材および鋳造材について測定した結果を蓄積したものである。
【0016】
開示方法は、廃自動車のシュレッダー処理施設で廃棄されるアルミニウム破砕片のように、同じ形態の廃棄物が繰り返し発生するプロセスに適用するときに大きな成果が得られるが、アルミニウム合金展伸材の本質的な特性に基づく手法ではないので、一般廃棄物や出所を特定しない産業廃棄物など、廃棄物に含まれるアルミニウム合金展伸材の形態が特定できない場合には、十分な判別率を達成することが難しいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平7−256231号公報
【特許文献2】特開2003−277837号公報
【特許文献3】特開2009−262009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来、アルミニウムおよびアルミニウム合金を他の金属から分離して回収する方法は実用化されているが、アルミニウム合金の種類別に選別して回収する、精度が高く効率よい手段が知られていなかった。
たとえば、特許文献2に開示された分別方法は、熟練作業員による第1分別工程に依存するもので、自動化に困難がある。また、特許文献3に開示された判定方法は、各方向から撮影した外形画像を扱う複雑な画像処理と高度な判定アルゴリズムを実行する必要があるうえ、サンプルとして収集した破砕片の形態データと照合して判定するためサンプルと異なる形状をもつ破砕片については的確な判定を行うことができない。
このように、アルミニウム合金の種類別に分けて判定する適当な方法が得られないため、アルミニウム合金の種類別に選別して回収する設備を提供することができなかった。
【0019】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、展伸材として利用できる重金属添加物が少ない高品位のアルミニウム合金系別をその他のアルミニウム合金系別から選別するアルミ合金判別方法を提供すると共に、展伸材として利用できるアルミニウム合金系別を選別して回収するアルミ合金選別設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、本発明に係るアルミ合金判別方法は、
(1)回収の対象となる第1アルミ合金からなり厚さの異なる複数の校正用試料と排除の対象となる第2アルミ合金からなる対比用試料を準備する工程と、
(2)校正用試料および対比用試料に対してエネルギーの異なる2つのX線を照射して単位面積毎の透過X線の強度を測定する工程と、
(3)エネルギーの異なる2つのX線に係る透過量をそれぞれ軸とする2次元座標で規定される測定平面に単位面積毎の測定結果を配置する工程と、
(4)校正用試料に関する測定結果を示す点の分布濃度が大きな領域を上側曲線と下側曲線で挟むようにした判別帯を測定平面中に画定して、測定平面を判別帯の中の中密度領域と、上側曲線より外側の高密度領域と、下側曲線より外側の低密度領域に分ける工程と、
(5)対比用試料に関する測定結果の分布と対比して、高密度領域または低密度領域に含まれる校正用試料に関する測定結果の割合に基づいて校正用試料と対比用試料の選別をする第1閾値を決め、中密度領域に含まれる校正用試料に関する測定結果の割合から校正用試料であることを判定する第2閾値を決める工程と、
(6)被選別試料に2つのX線を照射して、単位面積毎の透過X線の強度を測定する工程と、
(7)単位面積毎の2つのX線強度測定値を高密度領域と中密度領域と低密度領域に分類する工程と、
(8)高密度領域または低密度領域に含まれる割合が所定の第1閾値より小さくて、中密度領域に含まれる割合が所定の第2閾値より大きいときに、被選別試料が回収対象品であると判定する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0021】
厚みの異なる複数の試料それぞれの全面にわたり単位面積毎に、異なるエネルギーを有する2つのX線を照射して透過したX線強度を測定して、2種類のX線透過強度を横軸と縦軸にする座標面からなる測定平面上にプロットする。異なるエネルギーを有するX線は、同じX線を使って、遮蔽板を透過させたものと、遮蔽板を透過させないものとにより実現することができる。縦軸に遮蔽板を通って弱められたX線の強度を、また横軸に遮蔽板を通さない強いX線の強度を取ると、試料の厚みが厚くなるに従って座標面の右上から原点に向かって弓形の曲線上に分布するグラフが得られる。このグラフは、試料によって、X線透過率の低い元素ほど座標面上で左上側に描かれ、X線透過率の高い元素ほど右下側に描かれる。
【0022】
したがって、この測定方法を用いて、標準材料について判別用グラフを描いたときに、元素構成の異なる材料の測定点が判別用グラフから外れた位置に現れることを利用することにより、材料の厚さが変動しても、元素の含有割合に基づいて正しく金属の判別をすることができる。
ここで、単位面積は、試料の面積を分割して測定するときに、1つの測定値が出力する最小の面積で、X線センサーの1つの素子が検知する範囲の整数倍の面積になる。
【0023】
なお、ベルトコンベアと、ベルトコンベアの上に設けた1つのX線線源と、ベルトコンベアの下にX線線源と対応して2本のX線検出リニアセンサをベルトコンベアの移動方向に直交する方向に並列に設けたX線検出器と、で構成された測定装置を使うことによって、試料の全面にわたり単位面積毎に、強さの異なる2つのX線の透過強度を測定する方法を提供することができる。
2本のX線検出リニアセンサの一方の面に遮蔽板を置き、X線強度を減衰させることにより、2本のセンサ間で異なるX線強度を測定することができる。遮蔽板は、X線が透過する際にX線強度を適度に減衰させる機能を有するものであって、金属板など各種の材料を利用することができ、薄い銅板であってもよい。一方のX線照射光路に遮蔽板のX線透過特性を加味することにより、実質的に、被測定物を透過した2つのX線の間にエネルギー差を与えたと同じ効果をもたらすことができる。
【0024】
この測定方法では、ベルトコンベアで搬送する試料にX線を照射し、2本のX線検出リニアセンサで試料を透過したX線を測定した結果を用い、試料中の同じ位置に当たる単位測定面積に関する2つのX線透過強度の測定値を対応させることができる。2つの測定位置を対応させるには、ベルトコンベアが2本のX線検出リニアセンサ間の距離を走行する時間を使って距離差を補正すればよい。
異なる金属同士を判定するために有効に利用できる測定平面中の判定曲線は、校正用試料を使って校正することにより求めることができる。また、判定に用いる閾値は、校正用試料に係る測定値の分布および排除対象の材料で形成する対比用試料について求めた測定結果に基づいて決定する。
【0025】
校正用試料は、回収対象となる材料で形成した厚さが異なるものを複数準備する。このような試料について、エネルギーが異なる2つのX線を照射して透過したX線強度を測定して、測定結果を2つのX線の透過量を2軸とする2次元座標にプロットすると、厚さの変化に従って弓形の曲線にそって分布する。
ただし、照射X線のゆらぎやX線透過経路のゆらぎなどのため、同じ厚さの測定点でも、X線強度の測定値は多少のばらつきを示す。そのため、グラフ上には、ある程度の幅を持ったプロット群が形成される。したがって、判定領域は、多くの測定点を包含させるため、幅を持った帯の形になるように決める必要がある。
【0026】
異なる金属同士を判別するような簡単なケースでは、被判別試料の全面における測定点が100%判定帯に含まれることをもって選別対象の金属材であると判定することができる。しかし、測定点が近い位置にばらつく合金同士を対象とするときなどは、判定帯の幅をあまり大きくすると排除すべき金属が紛れ込みやすくなるので、判定帯の幅は適当に抑えた上で、両材料の差を確率的に判定する方がより信頼性が高くなる。すなわち、上側曲線と下側曲線に挟まれた判定領域のなかを中密度領域と呼ぶとして、中密度領域を外れる測定点が存在しても多くの測定点が中密度領域に含まれるときは、校正用試料の材質からなる材料であると確率的に判定することができる。
【0027】
従来、このX線透過型判別方法は、たとえばアルミニウムと銅など、混在した異種金属間の選別に利用されてきたが、アルミニウム合金の異なる系同士に対しては密度差が小さいため適用が困難であった。
本発明のアルミ合金判別方法は、アルミニウム合金の系統によってはX線吸収率が僅かに異なること、つまりX線透過強度が低下するアルミニウム合金はいずれも銅や亜鉛などのアルミニウムより重い金属を多く含んでいること、さらに上記のX線透過型判別方法における単位面積毎の測定結果がばらつきをもって分布すること、に注目して、測定結果に対して統計的処理を施して僅かの差異を検出することにより、鋳造材に由来するアルミニウム合金や展伸材に由来するアルミニウム合金について、合金系別に判別することを可能としたものである。
【0028】
ただし、アルミニウム合金間の透過X線強度の差は十分に大きくはないうえ、廃棄物の厚さは大きな範囲にわたって変化するため、単なる透過X線の強度差に基づいて、アルミニウム合金の成分差を検知し選別することは難しい。
本発明のアルミ合金判別方法は、校正用試料を使って得た判別領域と閾値を利用することにより、測定値の分布の統計的相違を検出して、アルミニウム合金の系別を判定するものである。
【0029】
本発明のアルミ合金判別方法では、中密度領域に分類される測定結果の割合が統計的に求めた第2閾値(たとえば46%)より大きいことを検証することにより回収対象とするアルミニウム合金(第1アルミ合金)である蓋然性を判定し、さらに、高密度領域に分類される測定結果の割合が統計的に求めた第1閾値(たとえば24%)より小さいことを検証することにより排除対象となる重金属を多く含む別種のアルミニウム合金(第2アルミ合金)と区別して、合格した材料を選別対象のアルミニウム合金と判断する。
【0030】
アルミニウム合金間では、X線透過率の差が小さいのでより精密な手法を用いる必要がある。そこで、排除対象の第2アルミ合金からなる対比用試料を準備し、対比用試料に対して校正用試料と同じ測定をして、その測定結果と校正用試料に関する測定結果と対比して、判別帯の位置および第1閾値、第2閾値を調整することにより、第1アルミ合金と第2アルミ合金の間の選別性能を向上させたものである。
【0031】
なお、正確には、本発明の方法により現状で選別できるアルミニウム合金(第1アルミ合金)は、アルミニウムに重金属成分をあまり含まない、たとえば合金番号1000系のアルミニウムと、合金番号3000系、5000系および6000系の重金属を含まないアルミニウム合金であり、主として展伸材由来の廃棄物が属する。
これら系別のアルミニウム合金は、重金属を僅かしか含まないので、回収後融合して組成調整することにより、適宜のアルミニウム合金として再生することができる。
【0032】
また、排除されるアルミニウム合金(第2アルミ合金)は、銅を数%含む合金番号2000系と亜鉛を数%含む7000系の合金である。
第2アルミ合金は、銅や亜鉛がアルミニウムよりX線を多く吸収するので、同じ厚さなら透過X線強度に関する測定結果が上記2次元座標面において、より左上側に位置することになる。
なお、ここで第2アルミ合金とされたものは、観点を変えると、排除により精度良く選別することができる。
【0033】
アルミニウム合金同士を判定するために利用する測定平面中の判定曲線は、校正用試料を使って校正することにより求めることができる。また、判定に用いる閾値は、校正用試料に係る測定値の分布および排除対象の材料(第2アルミ合金)で形成する対比用試料について求めた測定結果に基づいて決定する。
厚さが異なる複数の校正用試料について、エネルギーが異なる2つX線の透過X線強度を測定した結果を測定平面にプロットすると、弓形の曲線にそって幅を有する帯状に分布する。したがって、判定曲線は、帯幅を有する弓状の判定帯にする必要がある。
【0034】
排除の対象となる第2アルミ合金は、第1アルミ合金よりX線透過率が低い高密度金属であるから、測定値のプロット位置は上記2次元座標面において第1アルミ合金より高密度側である左上側に偏る。
そこで、第1閾値は、第1アルミ合金に関する測定結果が統計的ゆらぎのため高密度領域に含まれる割合が大きくなる場合にも第1閾値を超えない値であって、第2アルミ合金に関しては統計的ゆらぎのため高密度領域に含まれる測定結果が減少しても第1閾値以下にならないような値であることが好ましい。
また、第2閾値は、第1アルミ合金に関する測定結果が統計的ゆらぎのため中密度領域に含まれる割合が小さくなっても第2閾値以下にならないような値を選択することが好ましい。
【0035】
第2アルミ合金と対比して判別帯と閾値を決定すれば、第1アルミ合金と第2アルミ合金の間の測定結果における分布が近接している場合でも、相互間の小差を検知して、十分な確度で選別回収することができる。
なお、第1アルミ合金の判定確度をより大きくするためには、十分な回数の試行錯誤を繰り返して決めることが望ましい。
以上のように、本発明のアルミ合金判別方法は、校正用試料を使って得た判別領域と閾値を利用することにより、測定値の分布の統計的相違を検出して、アルミニウム合金の系別を判定できるようにしたものである。
【0036】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るアルミ合金選別設備は、アルミニウム合金選別を行うX線透過型金属選別機と、他の廃棄物からアルミニウム合金を選別してX線透過型金属選別機にアルミニウム合金を供給する前処理設備を備える。
X線透過型金属選別機は、アルミニウムおよびアルミニウム合金の被選別試料を搬送するベルトコンベアと、ベルトコンベアの上方に設けたX線線源と、ベルトコンベアの下に設けて透過してきたX線の強度を測定する2連のX線センサであって、2連のうち一方はセンサにかぶせた金属板を透過させてX線強度を弱化させて検出するようにしたX線センサと、2連のX線センサの出力を用い、ベルトコンベアの搬送距離に基づいて、試料の同じ位置における単位面積毎の透過X線の強度を算定し、単位面積毎の2つのX線強度を、第1アルミ合金の校正用試料を用いて予め校正して求めた第2アルミ合金との選別を可能とする高密度領域と中密度領域と低密度領域とに分類して、高密度領域に含まれる割合が所定の第1閾値より小さくて中密度領域に含まれる割合が所定の第2閾値より大きいときに、第1アルミ合金と判定し、測定された試料がベルトコンベアの終端位置に到達したときに判定結果に従って第1アルミ合金を第1貯留槽に他のアルミ合金を第2貯留槽に分配させる指令を発生する判定装置と、判定装置の指令に従って試料を回収側と排除側に分配する分配装置とを有するX線透過型金属選別機を備える。
【0037】
本発明に係るアルミ合金選別設備における前処理設備は、所定寸法以上の廃棄物を選別して供給する篩装置と、所定寸法以上の廃棄物から非金属品を排除する金属選別機と、金属選別機から供給された金属廃棄物からアルミニウムおよびアルミニウム合金を選別して供給するアルミニウム選別機を含むことが望ましい。
【0038】
また、アルミニウム選別機としてX線透過型金属選別機が適しており、2連のX線センサの出力を用い、ベルトコンベアの搬送距離に基づいて、試料の同じ位置における単位面積毎の透過X線の強度を算定し、単位面積毎の2つのX線強度を、アルミニウムおよびアルミニウム合金の校正用試料を用いて予め校正して求めたアルミニウムとアルミニウム合金を他の金属から選別できるようにしたアルミニウム領域から外れたときにアルミニウムおよびアルミニウム合金以外の金属と判定して排除するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明のアルミ合金判別方法とこれを用いたアルミ合金選別設備は、廃棄物からアルミニウムとアルミニウム合金を選別して得られたアルミスクラップを供給して、展伸材由来のアルミ合金や鋳造材由来のアルミ合金を合金系別に選別して回収することにより、アルミニウム回収におけるエネルギーと作業工程を著しく節減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の1実施形態に係るアルミ合金判別方法を実施する金属選別機の構成を概念的に説明する斜視図である。
【図2】本実施形態のアルミ合金判別方法においてX線透過状態を測定する原理を説明する図面である。
【図3】本実施形態のアルミ合金判別方法における測定結果を求める手法を説明する図面である。
【図4】本実施形態に係るアルミ合金判別方法において校正用試料の測定値をプロットした例を示す図面である。
【図5】アルミ合金判別方法により銅とアルミを選別する原理を示す図面である。
【図6】アルミ合金の化学成分表である。
【図7】排除対象のアルミ合金について試行した測定結果をプロットしたグラフである。
【図8】本実施形態に係るアルミ合金判別方法において判定に使う領域と閾値を決める原理を説明する図面である。
【図9】本実施形態に係るアルミ合金判別方法において校正用試料の測定値を分類した状態を示す図面である。
【図10】本実施形態に係るアルミ合金判別方法の手順を説明する流れ図である。
【図11】本実施形態に係るアルミ合金判別方法におけるアルミ合金の判定結果例を示す表である。
【図12】本発明の1実施形態に係るアルミ合金選別設備の処理手順を表す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明に係るアルミ合金判別方法及びアルミ合金選別設備について、実施例に基づき図面を参照しながら詳しく説明する。
【0042】
図1は、本発明の1実施形態において使用するX線透過型金属選別機の構成を概念的に説明する斜視図である。
本実施形態に係るアルミ合金判別方法は、図1に示すようなX線透過型金属選別機を使用することにより実施することができる。本実施形態におけるX線透過型金属選別機は、試料21を搬送するベルトコンベア1と、ベルトコンベア1の上方に設けたX線線源3と、ベルトコンベア1の下に設けて試料21を透過してきたX線の強度を測定する2連のX線センサ5と、測定信号を用いて演算することにより試料の判別を行う判定回路7とを備える。
【0043】
2連のX線センサ5は、第1X線検出リニアセンサ9と第2X線検出リニアセンサ11を平行に配置したもので、第1X線検出リニアセンサ9はX線入射面に金属板(遮蔽板)13をかぶせて試料21を透過したX線を弱化させて強度測定するようになっている。2つのX線検出リニアセンサ9,11は同じ型式のセンサで、X線検出素子を線上に並べ、各素子の測定結果を走査して順次出力する構造を有する。各素子は、素子毎に測定位置が決まっており、試料21の単位面積部分を透過して来たX線の強度に応じた測定信号を出力する。
【0044】
試料21はベルトコンベア1により移動しているので、X線検出リニアセンサ9,11は、試料21の全面積にわたって透過X線強度を測定することになる。
なお、第1X線検出リニアセンサ9と第2X線検出リニアセンサ11の測定位置を対応させやすくするために、X線検出リニアセンサ9,11は、ベルトコンベア1の移送方向と直交するように配置することが好ましい。
【0045】
X線線源3から放射されるX線15は、ベルトコンベア1上の試料21が搭載される領域を広く照射するが、X線検出リニアセンサ9,11が検出するX線は、線上に並んだ検出素子列に入射するX線に限られるので、照射X線はスリット光17,19とみなすことができる。また、第1X線検出リニアセンサ9に入射するX線は金属板13のX線吸収特性により変成されるので、X線スリット光17,19は実質的に互いに特性の異なるX線で形成されたものとみなすことができる。
【0046】
図2と図3は本実施形態で使用するX線透過型金属選別機において、試料21上のある点におけるX線透過状態を検知する手法を説明する図面である。
X線透過型金属選別機は、金属の元素番号が大きいほどX線透過率が小さくなることを利用して、金属の種別を判定するものである。
X線の透過量は試料の厚みに影響を受けるので、異なる特性を有するX線を照射して得た2つの透過X線強度測定結果を用いて厚みの影響分を補正している。また、X線の測定ではX線放射のゆらぎやX線測定のゆらぎが無視できないため、1つの試料について多数の測定を行い、結果を統計的に処理することにより信頼性を確保するようにしている。
【0047】
図2および図3に示すように、第2X線検出リニアセンサ11は、ベルトコンベア1によって運動している試料21のある位置23におけるX線透過状態を、第1X線検出リニアセンサ9が測定した時点から、所定の時間Δだけ経過した後に測定する。時間Δは、センサ列の間隔Dをベルトコンベア1の速度vで割って得られる時間である。したがって、試料21の同じ測定位置23,25において2つの異なる強度のX線について測定した2つのX線透過強度測定値は、簡単に対応させることができる。
【0048】
このようにして、厚みの異なる複数の試料21について2つの異なるX線を照射して得た各単位面積毎のX線透過強度の測定値を、各試料の全面積にわたり所定の測定平面にプロットする。
測定平面は、第1X線検出リニアセンサ9の測定出力を縦軸に、第2X線検出リニアセンサ11の測定出力を横軸にした2次元座標面である。測定平面の縦軸は、X線検出センサを金属板13でカバーすることにより実質的に弱いX線を照射した場合に対応させたものである。測定平面のスケールは、横軸および縦軸、いずれも、それぞれのセンサの出力範囲と整合させている。したがって、目盛りは物理単位と直接の整合性はない。
【0049】
図4は、サッシ材として多用される合金番号6063のアルミニウム合金について厚み1mm,3mm,7mm,12mm,25mmとした5つの校正用試料を準備し、これら試料にX線を照射して、第1X線検出リニアセンサと第2X線検出リニアセンサで測定した結果を、試料全面について、測定平面にプロットしたものである。
なお、図4等のグラフでは、第1X線検出リニアセンサによる測定値と第2X線検出リニアセンサによる測定値について、X線が全く透過しない状態が零点となり、ベルト上に試料が載っていない状態の測定値がフルスケール位置にくるように正規化して表示している。
測定結果は照射X線のゆらぎやX線透過経路のゆらぎなどのためばらつきを持つため、測定結果のプロットは塊状に分布するが、試料の厚い方から薄い方に向かって、原点と右上の端点を結ぶ弓形の曲線にそって分布することが分かる。
【0050】
これにより、合金番号6063のアルミニウム合金で作られたサンプルの測定値は、厚みにつれて図4に表された弓形曲線に沿うものとして表されることが分かる。
測定値のばらつきを考慮し、弓形曲線に上側曲線と下側曲線とで挟まれた判定領域を設定することによって、合金番号6063のアルミニウム合金の測定値の大部分が判定領域に含まれるようにすることができる。
なお、試料のアルミニウム合金より原子量が大きくX線透過率の小さい材料の測定結果はこの弓形曲線より左上側にプロットされ、原子量が小さくX線透過率の大きい材料では弓形曲線の右下側にプロットされる。
【0051】
したがって、たとえば銅のようにアルミニウム合金とX線透過率が異なる金属であれば、上記の手法により2つの金属を簡単に区別することができる。
図5は、各種のアルミニウム合金で作成した試料について測定した結果と、銅の試料について同じ手順で測定した結果を、同じ測定平面上に一緒にプロットした図面である。
図に見るように、アルミニウム合金全般を含むようにするためには判定領域の幅を少し大きくする必要があるが、銅の測定結果はアルミニウム合金の測定結果より測定平面上左上側に大きくそれていて、アルミニウム合金のための判定領域に含まれる割合は小さい。
【0052】
このように、測定結果が判定領域にある程度含まれることを条件として、簡単にアルミニウム合金と銅とを判別することができる。そこで、従来は、このX線透過型判別方法は、混在した異種金属間の選別に利用されてきたが、アルミニウム合金の異なる系同士に対してはX線透過率の差が小さいため適用が困難であった。
【0053】
しかし、発明者らの研究の結果、アルミニウム合金についても、添加された重金属の存在を利用し、今般開発した精密な判定手順を用いることにより、用途に対応する種別間で区別することができることが判明した。
【0054】
図6は、アルミ合金の化学成分表である。表は、アルミニウムおよびアルミニウム合金の系別を代表する合金について、合金の種類毎に決められた化学成分を表している。
図6の表によると、合金番号1050のアルミニウムはもちろん、熱交換器用材などに用いられる合金番号3003、建築用サッシなどに用いられる合金番号6063、溶接構造材などに使用される合金番号5083のアルミニウム合金には、アルミニウムより原子量が大きい重金属を大量に含まないことが分かる。
【0055】
これらのアルミニウムおよびアルミニウム合金は、アルミニウム以外の金属をあまり含まないので、回収後互いに混合しても、合金母材として適宜の金属を混入して成分調整することにより、広く各種のアルミニウム合金を生成することができる。特に、合金番号6063はサッシとして大量に廃棄されるので、まとめて回収することにより、簡単な処理でサッシ用の展伸材として再利用することができる。
【0056】
一方、図6の表には、ジュラルミンの名称で知られる合金番号2024に銅が3.8〜4.9%含まれること、溶接構造用材料となる合金番号7N01に亜鉛が4.0〜5.0%含まれることが示されている。
【0057】
そこで、重金属をあまり含まないアルミニウムおよびアルミニウム合金の群を回収対象として第1アルミ合金と呼び、重金属を含むアルミニウム合金の群を排除対象として第2アルミ合金と呼んで区別するものとすると、第1アルミ合金と第2アルミ合金では、重金属の含有量が異なるためX線透過率が異なり、先のアルミ合金判別方法を適用したときに、測定結果のプロットが測定平面上僅かに偏ることが予想される。
【0058】
図7は、第2アルミ合金の代表として、合金番号2024について、先に説明した手順で測定した結果を同じ測定平面にプロットした結果を示す。図面には、図4に示した合金番号6063に適した判定領域が記入されている。
図7によると、合金番号2024の測定結果のプロット群は、合金番号6063のものより僅かに左上側、すなわち高密度側にずれていることが分かる。
ただし、特に合金番号2024の厚みの薄い試料などは、測定結果のプロットの中心部分が合金番号6063の判定領域にほとんど含まれていて、両者の別を判定することは難しいように見られる。
【0059】
そこで発明者らは、鋭意研究の結果、対象とするアルミ合金を限定して、判定領域と判定水準を適宜に調整することにより、判定を可能にすることができた。
図8は、本実施形態のアルミ合金判別方法において判定領域と判定のための閾値を決める原理を概念的に説明する図面である。
【0060】
本判別方法により1つの試料を測定したとき、試料全面にわたる測定結果は、X線照射やX線測定におけるゆらぎなどのため変動するので、中央の確率が高く周辺の確率が低い分布を示す。この分布を、図8では、代表して正規分布で表わすことにする。同じ材質を有する別の試料について測定すると、測定結果はばらついて、図中に複数の実線で示すように、先の分布に対して中央値がずれた分布を示す。第1アルミ合金には組成の異なる複数のアルミニウム合金が含まれるので、分布のゆらぎはさらに大きくなる。
一方、第2アルミ合金は重金属を含有するため第1アルミ合金よりX線透過率が小さくなり、図中に波線で表わすように、高密度側に偏った測定結果分布を示す。
【0061】
そこで、測定結果が分布する弓形の曲線に沿って、上側曲線と下側曲線で挟まれた判定領域を定めて、測定結果のプロットが上側曲線より高密度側の高密度領域に含まれる高密度割合と、判定領域である中密度領域に含まれる中密度割合を求めて、これらの割合に基づいて合金の種類を判定するようにする。
すなわち、第1アルミ合金の測定が高密度側にゆらいでも、第2アルミ合金とは区別できるような高密度割合を見いだして、第1閾値とする。さらに第1アルミ合金の測定結果が低密度側にゆらいでも、アルミニウムより軽い金属やプラスチックスなどではないと判定できるような中密度割合を見いだして、第2閾値とする。
【0062】
廃棄物片から第1アルミ合金を選別するときは、廃棄物片の全面について測定した結果のうち高密度領域に含まれる割合を算出する。
高密度領域に含まれる測定結果の割合が第1閾値より小さい場合には、廃棄物片は第2アルミ合金ではなく、第1アルミ合金である可能性が高い。さらに、中密度領域に含まれる測定結果の割合が第2閾値より大きければ、第1アルミ合金より低密度の物質である可能性を排除することができる。
【0063】
本実施形態のアルミ合金判別方法では、測定結果に対して2つの基準を用いて判定するので、第1アルミ合金を高い確度で判別することができる。
なお、判定領域を規定する上側曲線と下側曲線および第1閾値と第2閾値は、判定成績を左右する重要な指標であるが、曲線をどのように規定するかによって閾値が変化する。また判別対象群や判別装置などによって最適値が変化する。したがって、これらの指標は、実際に使用する構成について試行錯誤により求める必要がある。
【0064】
図9は、本実施形態に係るアルミ合金判別方法を用いて合金番号6063で作成した、1mmから25mmまでの厚さが異なる5つの校正用試料について測定した結果を、試料の全面にわたり高密度領域(黒点)、中密度領域(中間色点)、低密度領域(灰色点)の3つの領域毎に分類して表示したものである。判定領域である中密度領域は、試行錯誤により決めたものである。
厚さ1mmの試料では灰色で示す低密度領域と黒で示す高密度領域に含まれる測定点が比較的多くなっているが、厚さが増えるにつれて、中間色で示す中密度領域に含まれる面積が増加しており、厚さにより各密度領域の割合に若干の差が表れる。
【0065】
測定対象の試料はすべて選別対象となる第1アルミ合金でできているので、これらのデータをすべて含む条件で判定をする必要がある。このためには、判定領域の位置を適当に決めるが、それだけでは正確な判定が難しいので、測定結果の分布に係る指標を取り込んでいる。
本実施例では、判定領域に含まれる第1アルミ合金測定結果の割合は、すべてのケースで、46%以上となっている。しかし、排除したい第2アルミ合金である合金番号2024と合金番号7N01について測定した結果をみると、ほとんどのケースで46%以下になっているが、46%を超えるケースも存在する。
【0066】
一方、第2アルミ合金では高密度領域に含まれる測定結果の割合が大きく、測定結果の分布がゆらいでも、その値が24%までは低下しないことが確認できた。
したがって、中密度領域に含まれる割合について下限を定める第2閾値を46%とする上に、高密度領域に含まれる測定点の割合について上限を定める第1閾値を24%に設定して、2つの基準を満たすことを条件とすることにより、第1アルミ合金と第2アルミ合金を区別することができることが分かった。
【0067】
図10は、上記手法を利用した本実施形態のアルミ合金判別方法の手順を説明するフロー図である。
本実施形態のアルミ合金判別方法では、廃棄物について判定を行う前に、判定基準を決定する。判定基準は判定領域と第1閾値と第2閾値により定まる。その後に、判定対象試料について測定し、判定基準に従って判定する。
【0068】
判定基準を決定するためには、まず、厚さの異なる第1アルミ合金製校正用試料と第2アルミ合金製対比用試料を準備する(S11)。準備した校正用試料と対比用試料を順次X線透過型金属選別機にかけて、エネルギーの異なる2つのX線を照射して単位面積毎の透過X線強度を測定する(S12)。単位面積毎の測定結果を、測定平面に配置する(S13)。測定平面は、2つの透過X線強度を2つの軸とする2次元座標面である。なお、測定結果を測定平面に配置する工程は、コンピュータの中で行えばよい。
【0069】
測定結果をプロットした測定平面において、校正用試料について測定結果の分布濃度が大きな領域を結ぶことにより判別帯を画定することができる(S14)。ついで、判別帯を挟む上側曲線と下側曲線を引いて、測定平面を上側曲線と下側曲線に挟まれた中密度領域と、上側曲線の外側の高密度領域と、下側曲線の外側の低密度領域とに分ける(S15)。
【0070】
対比用試料測定結果の分布と対比して、高密度領域に含まれる校正用試料の測定結果の割合に基づいて校正用試料と対比用試料の選別をする第1閾値を決める(S16)。ついで、中密度領域に含まれる校正用試料の測定結果の割合から第1アルミ合金であることを判定する第2閾値を決める(S17)。
こうして、X線透過型金属選別機により被選別試料の仕分けを行うための判定基準を画定する。
【0071】
測定条件に対応する判定基準が決まった後に、対象とする被選別試料について測定して判定を行う。
被選別試料は、X線透過型金属選別機のベルトコンベアに搭載され、移動中に2つの実質的に異なるX線スリット光に照射され、単位面積毎の透過X線強度が測定され、出力される(S21)。単位面積毎の2つのX線強度測定値を高密度領域と中密度領域と低密度領域に分類する(S22)。測定結果が高密度領域に含まれる割合が先に定めた第1閾値より小さくて、中密度領域に含まれる割合が先に定めた第2閾値より大きいときには(S23)、被選別試料が回収対象品であると判定する(S24)。また、この条件のいずれかが満たされない場合は、被選別試料は排除すべき物と判定する(S25)。
被選別試料の判定をした後に、被選別試料が残っていれば判定工程の初めに戻って判定を繰り返し、すべての被選別試料について判定が済んだら、作業を終了する(S26)。
【0072】
図11は、各種の試料について本実施形態のアルミ合金判別方法を適用したときに、測定結果が各領域に含まれた割合を示した表である。各試料は、板厚が1mmから25mmあるいは30mmまで、いろいろに変化している。表に示した数値は、測定結果を高密度領域(H)と中密度領域(M)と低密度領域(L)に分配したときの割合を示す。
最下欄に、各合金種について、全試料が第1アルミ合金と判定した場合に○、第2アルミ合金と判定した場合に×を記入している。
第1アルミ合金に含まれる合金番号1000,3003,5083,6063はすべて条件を満たして第1アルミ合金と判定され、第2アルミ合金に含まれる合金番号2024と7N01はすべて条件を満たさず第2アルミ合金と判定されている。このように、本実施形態の判別方法により、試行対象の試料をすべて第1アルミ合金と第2アルミ合金に正しく選別することができた。
【0073】
図12は、本発明の1実施形態に係るアルミ合金選別設備における処理手順の流れを説明する流れ図である。
従来、迅速かつ大量にアルミニウムおよびアルミニウム合金と他金属を選別するアルミ合金選別設備はあったが、合金系別にアルミニウム合金を迅速かつ大量に選別する技術は見られなかった。
本実施形態のアルミ合金選別設備は、上記説明したアルミ合金判定方法を利用したX線透過型金属選別機を組み込んで、市中から回収された廃棄物などから得られるミックスメタルから選別して得たアルミニウム合金破砕片をさらに選別して、いわゆるアルミニウム合金展伸材を選別して回収するものである。
【0074】
本実施形態のアルミ合金選別設備に使用するX線透過型金属選別機は、アルミニウムおよびアルミニウム合金の被選別試料を搬送するベルトコンベアと、ベルトコンベアの上方に設けたX線線源装置と、ベルトコンベアの下に設けて透過してきたX線の強度を測定する2本のX線検出リニアセンサを並列に並べた2連のX線センサであって、一方のX線検出リニアセンサはセンサにかぶせた金属板を透過させてX線強度を弱化させて検出するようにしたX線センサと、2連のX線センサの出力を用い、ベルトコンベアの搬送距離に基づいて、試料の同じ位置における単位面積毎の透過X線の強度を算定し、単位面積毎の2つのX線強度を、第1アルミ合金の校正用試料を用いて予め校正して求めた第2アルミ合金との選別を可能とする高密度領域と中密度領域と低密度領域とに分類して、高密度領域に含まれる割合が所定の第1閾値より小さくて中密度領域に含まれる割合が所定の第2閾値より大きいときに、第1アルミ合金と判定し、測定された試料がベルトコンベアの終端位置に到達したときに判定結果に従って第1アルミ合金を第1貯留槽に他のアルミ合金を第2貯留槽に分配させる指令を発生する判定装置と、判定装置の指令に従ってエアノズルを駆動するなどして試料を選別対象側と非対象側に分配する分配装置とを有する。
【0075】
本実施形態のアルミ合金選別設備は、渦電流金属選別機と2式のX線透過型金属選別機を備えて、篩で選別した10mm角以上の破砕片に対して、3段階の選別を施して、アルミニウム合金展伸材を回収する。
図12を参照すると、アルミニウムの他に、鉄、銅、ゴム、プラスチックスなどを含んで構成される市中スクラップから得られるミックスサンプルは、篩にかけて10mm角以上の大きさを持った破砕片を選別する。10mm角以下の細かい破砕片は選別機で精度よく分離することが難しいので、除去する。
【0076】
10mm角以上の破砕片に整えられたミックスサンプルは、1段階目の選別として渦電流金属選別機にかけて、ゴムや木くずや樹脂などの非金属類を除去し、各種金属だけで構成されるミックスメタルを選別する。
選別されたミックスメタルは、2段階目の選別としてアルミ選別用に条件設定されたX線透過型金属選別機にかけることにより、アルミ以外の金属と大きな異物が付いたアルミニウム類を除去して、アルミニウムおよびアルミニウム合金の破片で構成されるアルミスクラップを分離する。
【0077】
アルミニウム類のみが集合したアルミスクラップは、3段階目の選別として、先に説明した本発明のアルミ合金判別方法に従って合金系別の選別ができるように条件設定されたX線透過型金属選別機にかけることにより、合金番号6063のアルミニウム合金を分離して回収する。
本実施形態のアルミ合金選別設備は、合金番号6063のアルミニウム合金を展伸材主原料として十分利用できる高い品位で回収することができる。再生された合金番号6063のアルミニウム合金は、展伸材として、たとえば窓枠サッシとして再利用することができる。
【0078】
なお、最後の3段階目の選別で得られるアルミニウム合金には、1000系、3000系、5000系、6000系のアルミニウム合金も混入する可能性があるが、これらの成分はいずれもアルミニウム以外の成分金属の含有量が小さく、合金番号6063の再生工程において歩留り向上に資するので、混在させても特に支障がない。
最後に除去されるアルミニウム合金は、2000系や7000系のアルミニウム合金やアルミダイキャストである。これらのアルミニウム合金は、鋳造材として再生利用することができる。
なお、本発明のアルミ合金判定方法およびこれを使用したアルミ合金選別設備は、合金番号6063の再生に限らず、1000系、3000系、5000系のアルミニウム合金を目的として判別するようにすることもできる。また、逆の観点からすると、2000系や7000系のアルミニウム合金を精度良く判別することも可能にするものでもある。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係るアルミ合金判定方法およびこれを使用したアルミ合金選別設備は、アルミ合金廃棄物から展伸材を選択的に回収することができるので、回収したアルミ類を展伸材として再生することを可能として再利用先を拡大し、かつ、展伸材の再生工程における溶融エネルギーと作業工程を著しく節減させることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 ベルトコンベア
3 X線線源
5 X線センサ
7 判定回路
9 第1X線検出リニアセンサ
11 第2X線検出リニアセンサ
13 金属板
15 照射されるX線
17,19 X線スリット光
21 試料
23,25 測定位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収の対象となる第1アルミ合金からなり厚さの異なる複数の校正用試料と排除の対象となる第2アルミ合金からなる対比用試料を準備する工程と、
前記校正用試料および前記対比用試料のおのおのに対してエネルギーの異なる2つのX線を照射して単位面積毎の透過X線の強度を測定する工程と、
前記2つのX線に係る透過量を2軸とする2次元座標で規定される測定平面に単位面積毎の測定結果を配置する工程と、
前記校正用試料に関する測定結果を示す点の分布濃度が大きな領域を上側曲線と下側曲線で挟むようにした判別帯を前記測定平面上に画定して、該測定平面を前記判別帯の中の中密度領域と、上側曲線より外側の高密度領域と、下側曲線より外側の低密度領域に分ける工程と、
前記対比用試料に関する測定結果の分布と対比して、前記高密度領域または前記低密度領域に含まれる前記校正用試料に関する測定結果の割合に基づいて前記校正用試料と前記対比用試料の選別をする第1閾値を決め、前記中密度領域に含まれる前記校正用試料に関する測定結果の割合から前記校正用試料であることを判定する第2閾値を決める工程と、
被選別試料に前記2つのX線を照射して単位面積毎の透過X線の強度を測定する工程と、
前記測定された単位面積毎の2つのX線強度測定値を前記高密度領域と前記中密度領域と前記低密度領域に分類する工程と、
前記高密度領域または前記低密度領域に含まれる割合が所定の第1閾値より小さくて、前記中密度領域に含まれる割合が所定の第2閾値より大きいときに、前記被選別試料が回収対象品と判定する工程とを含む、
アルミ合金判別方法。
【請求項2】
前記強度の異なる2つのX線を照射する手順は、1つのX線線源により被測定物を照射して、該被測定物を透過したX線を2本のX線検出リニアセンサにより測定するものであって、該X線検出リニアセンサの1本に一部のX線を吸収する遮蔽板をかぶせることにより、強度の異なるX線を照射したと同様の効果をもたらすことを特徴とする請求項1記載のアルミ合金判別方法。
【請求項3】
アルミニウムおよびアルミニウム合金の被選別試料を搬送するベルトコンベアと、
該ベルトコンベアの上方に設けたX線線源装置と、
前記ベルトコンベアの下に設けて透過してきたX線の強度を測定する2本のX線検出リニアセンサを並列に並べた2連のX線センサであって、一方のX線検出リニアセンサはセンサにかぶせた遮蔽板を透過させてX線強度を弱化させて検出するようにしたX線センサと、
前記2連のX線センサの出力を用い、前記ベルトコンベアの搬送距離に基づいて、試料の同じ位置における単位面積毎の透過X線の強度を算定し、単位面積毎の2つのX線強度を、第1アルミ合金の校正用試料を用いて予め校正して求めた第2アルミ合金との選別を可能とする高密度領域と中密度領域と低密度領域とに分類して、前記高密度領域または前記低密度領域に含まれる割合が所定の第1閾値より小さくて前記中密度領域に含まれる割合が所定の第2閾値より大きいときに、前記第1アルミ合金と判定し、測定された試料が前記ベルトコンベアの終端位置に到達したときに前記判定結果に従って第1アルミ合金を第1貯留槽に他のアルミ合金を第2貯留槽に分配させる指令を発生する判定装置と、
該判定装置の指令に従って前記試料を選別対象側と非対象側に分配する分配装置と
を有するX線透過型金属選別機と、
アルミニウムおよびアルミニウム合金の廃棄物を他の廃棄物から選別して回収し、前記X線透過型金属選別機の前記ベルトコンベアに供給する前処理設備と、
を備えるアルミ合金選別設備。
【請求項4】
前記前処理設備は、
篩い分けして供給される所定寸法以上の廃棄物から非金属品を排除して金属廃棄物を供給する金属選別機と、
該金属選別機から供給された金属廃棄物からアルミニウムおよびアルミニウム合金を選別して供給するアルミニウム選別機を含む、請求項3記載のアルミ合金選別設備。
【請求項5】
前記アルミニウム選別機は、2連のX線センサの出力を用い、ベルトコンベアの搬送距離に基づいて、試料の同じ位置における単位面積毎の透過X線の強度を算定し、単位面積毎の2つのX線強度を測定平面に配置して、アルミニウムおよびアルミニウム合金の校正用試料を用いて予め校正して求めた判別曲線より高密度の領域に配置されたときにアルミニウムおよびアルミニウム合金以外の金属と判定して排除する更に別のX線透過型金属選別機である、請求項4記載のアルミ合金選別設備。
【請求項1】
回収の対象となる第1アルミ合金からなり厚さの異なる複数の校正用試料と排除の対象となる第2アルミ合金からなる対比用試料を準備する工程と、
前記校正用試料および前記対比用試料のおのおのに対してエネルギーの異なる2つのX線を照射して単位面積毎の透過X線の強度を測定する工程と、
前記2つのX線に係る透過量を2軸とする2次元座標で規定される測定平面に単位面積毎の測定結果を配置する工程と、
前記校正用試料に関する測定結果を示す点の分布濃度が大きな領域を上側曲線と下側曲線で挟むようにした判別帯を前記測定平面上に画定して、該測定平面を前記判別帯の中の中密度領域と、上側曲線より外側の高密度領域と、下側曲線より外側の低密度領域に分ける工程と、
前記対比用試料に関する測定結果の分布と対比して、前記高密度領域または前記低密度領域に含まれる前記校正用試料に関する測定結果の割合に基づいて前記校正用試料と前記対比用試料の選別をする第1閾値を決め、前記中密度領域に含まれる前記校正用試料に関する測定結果の割合から前記校正用試料であることを判定する第2閾値を決める工程と、
被選別試料に前記2つのX線を照射して単位面積毎の透過X線の強度を測定する工程と、
前記測定された単位面積毎の2つのX線強度測定値を前記高密度領域と前記中密度領域と前記低密度領域に分類する工程と、
前記高密度領域または前記低密度領域に含まれる割合が所定の第1閾値より小さくて、前記中密度領域に含まれる割合が所定の第2閾値より大きいときに、前記被選別試料が回収対象品と判定する工程とを含む、
アルミ合金判別方法。
【請求項2】
前記強度の異なる2つのX線を照射する手順は、1つのX線線源により被測定物を照射して、該被測定物を透過したX線を2本のX線検出リニアセンサにより測定するものであって、該X線検出リニアセンサの1本に一部のX線を吸収する遮蔽板をかぶせることにより、強度の異なるX線を照射したと同様の効果をもたらすことを特徴とする請求項1記載のアルミ合金判別方法。
【請求項3】
アルミニウムおよびアルミニウム合金の被選別試料を搬送するベルトコンベアと、
該ベルトコンベアの上方に設けたX線線源装置と、
前記ベルトコンベアの下に設けて透過してきたX線の強度を測定する2本のX線検出リニアセンサを並列に並べた2連のX線センサであって、一方のX線検出リニアセンサはセンサにかぶせた遮蔽板を透過させてX線強度を弱化させて検出するようにしたX線センサと、
前記2連のX線センサの出力を用い、前記ベルトコンベアの搬送距離に基づいて、試料の同じ位置における単位面積毎の透過X線の強度を算定し、単位面積毎の2つのX線強度を、第1アルミ合金の校正用試料を用いて予め校正して求めた第2アルミ合金との選別を可能とする高密度領域と中密度領域と低密度領域とに分類して、前記高密度領域または前記低密度領域に含まれる割合が所定の第1閾値より小さくて前記中密度領域に含まれる割合が所定の第2閾値より大きいときに、前記第1アルミ合金と判定し、測定された試料が前記ベルトコンベアの終端位置に到達したときに前記判定結果に従って第1アルミ合金を第1貯留槽に他のアルミ合金を第2貯留槽に分配させる指令を発生する判定装置と、
該判定装置の指令に従って前記試料を選別対象側と非対象側に分配する分配装置と
を有するX線透過型金属選別機と、
アルミニウムおよびアルミニウム合金の廃棄物を他の廃棄物から選別して回収し、前記X線透過型金属選別機の前記ベルトコンベアに供給する前処理設備と、
を備えるアルミ合金選別設備。
【請求項4】
前記前処理設備は、
篩い分けして供給される所定寸法以上の廃棄物から非金属品を排除して金属廃棄物を供給する金属選別機と、
該金属選別機から供給された金属廃棄物からアルミニウムおよびアルミニウム合金を選別して供給するアルミニウム選別機を含む、請求項3記載のアルミ合金選別設備。
【請求項5】
前記アルミニウム選別機は、2連のX線センサの出力を用い、ベルトコンベアの搬送距離に基づいて、試料の同じ位置における単位面積毎の透過X線の強度を算定し、単位面積毎の2つのX線強度を測定平面に配置して、アルミニウムおよびアルミニウム合金の校正用試料を用いて予め校正して求めた判別曲線より高密度の領域に配置されたときにアルミニウムおよびアルミニウム合金以外の金属と判定して排除する更に別のX線透過型金属選別機である、請求項4記載のアルミ合金選別設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図2】
【図3】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【公開番号】特開2012−73080(P2012−73080A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217328(P2010−217328)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 資源・素材学会発行 春季大会講演集2010(発行日:2010年3月30日)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構共同研究事業「省エネルギー革新技術開発事業/事前研究(先導前)/アルミニウム・リサイクルの新プロセスの事前研究」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(599061969)一般社団法人日本アルミニウム協会 (1)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 資源・素材学会発行 春季大会講演集2010(発行日:2010年3月30日)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構共同研究事業「省エネルギー革新技術開発事業/事前研究(先導前)/アルミニウム・リサイクルの新プロセスの事前研究」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(599061969)一般社団法人日本アルミニウム協会 (1)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]