説明

アレイ型受光装置、光受信モジュール、及び光トランシーバ

【課題】複数の受光素子部を備えるアレイ型受光装置に配置される複数の配線を介して生じるクロストークが軽減されるアレイ型受光装置、光受信モジュール、及び光トランシーバの提供。
【解決手段】本発明に係るアレイ型受光装置は、第1導電型電極と第2導電型電極とを備える受光素子部が複数備えられる受光素子アレイと、キャリアと、を備えるアレイ型受光装置であって、前記キャリアは、前記各受光素子部の前記第1導電型電極に接続される第1導電型配線と、該受光素子部の前記第2導電型電極に接続される第2導電型配線と、からそれぞれなる複数の配線対と、前記複数の配線対の一の配線対と該配線対の隣に位置する配線対との間を延伸する第1の接地電極と、前記背面の少なくとも一部に形成されるとともに前記第1の接地電極と電気的に接続される第2の接地電極と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ型受光装置に関し、特に、アレイ型受光装置に配置される複数の配線を介して生じるクロストーク軽減に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の受光素子を備えるアレイ型受光装置が用いられている。例えば、2個の受光素子を備えるアレイ型受光装置について以下に説明する。図11Aは、従来技術に係るアレイ型受光装置101を前面側から見た斜視図である。アレイ型受光装置101は、2個の受光素子部を備える受光素子アレイ103と、受光素子アレイ103を保持するキャリア102と、を備える2チャンネルアレイ型受光装置である。
【0003】
受光素子アレイ103の各受光素子部は、第1導電型電極(例えば、P型電極)と第2導電型電極(例えば、N型電極)とを有し、第1導電型電極及び第2導電型電極は、キャリア102に配置される第1導電型配線及び第2導電型配線にそれぞれ接続される。第1導電型配線のうち、キャリア102の前面に形成される部分を前面第1導電型配線電極123と、キャリア102の上面に形成される部分を上面第1導電型配線電極124とする。同様に、第2導電型配線のうち、キャリア102の前面に形成される部分を前面第2導電型配線電極126と、キャリア102の上面に形成される部分を上面第2導電型配線電極127とする。
【0004】
キャリア102には、受光素子アレイ103の2個の受光素子部にそれぞれ接続される2対の配線対が形成されており、キャリア102の前面に、図の右側から順に、前面第2導電型配線電極126a,前面第1導電型配線電極123a,前面第1導電型配線電極123b,前面第2導電型配線電極126bが形成されている。
【0005】
図11Bは、従来技術に係るアレイ型受光装置101を背面側から見た斜視図である。キャリア102の背面の一部に、接地電極134が形成されている。図12は、従来技術に係る光受信モジュール105主要部を前面側から見た斜視図である。光受信モジュール105は、図11Aに示すアレイ型受光装置101と、基台部104と、前置増幅回路147と、基準電圧用端子149a,149bと、を備えており、前置増幅回路147の信号電圧用端子148a,148bが第1導電型配線とが、基準電圧用端子149a,149bと第2導電型配線とが、それぞれ、パターン接続用ワイヤで接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−93131号公報
【特許文献2】特開2001−257335号公報
【特許文献3】特開2003−243777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術に係る複数の受光素子を備えるアレイ型受光装置では、隣接する2個の受光素子にそれぞれ接続される配線の間などで、すなわち、隣接するチャンネル間で、電気的クロストークが発生し、これがノイズの原因となるため、当該アレイ型受光装置を内蔵する光モジュール及び光トランシーバの誤作動の原因となる。例えば、図11Aにアレイ型受光装置101において、2個の受光素子部それぞれの第1導電型配線が隣接している。それゆえ、2本の第1導電型配線の間で、電気的クロストークが主に発生している。
【0008】
アレイ型半導体受光装置としては、例えば波長多重伝送用のアレイ型タップフォトダイオードモジュールに関する従来技術の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1に係る従来技術では、隣接するチャンネル間の光の干渉によるクロストークを低減する方法が提供されているが、このようなアレイ型受光装置では、隣接する受光素子間、及び受光素子に接続する配線間の電気的クロストークが発生し、ノイズの原因となるため、これを内蔵する光モジュール及び光トランシーバの誤動作の原因となる場合がある。
【0009】
隣接する受光素子間の電気的クロストークを低減する方法が、特許文献2に開示されている。特許文献2に係る従来技術では、受光素子アレイにおいて、光信号を受光し信号検出回路に入力する手段を設けた受光素子と、電極間電位差を一定にしたダミーの受光素子を交互に配列し、受光素子間のクロストークを低減する方法が提示されている。
【0010】
同様に、特許文献3に開示されている従来技術では、半導体レーザアレイにおいて、素子間の分離領域にシールド部を形成し、接地電位に接続することにより、隣接するチャンネル間のクロストークを低減する方法が提示されており、この技術を受光素子アレイに応用することも可能である。
【0011】
しかしながら、特許文献2及び3に示す従来技術を応用して、隣接するチャンネル間のクロストークを低減した受光素子アレイを適用した場合においても、アレイ型受光装置に、受光素子アレイと前置増幅回路とを接続する配線が配置され、隣接する配線間の電気的クロストークが発生し、ノイズの原因となるため、これを内蔵する光モジュール及び光トランシーバの誤動作の原因となる場合がある。
【0012】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の受光素子部を備えるアレイ型受光装置に配置される複数の配線を介して生じるクロストークが軽減されるアレイ型受光装置、光受信モジュール、及び光トランシーバの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係るアレイ型受光装置は、第1導電型電極と第2導電型電極とを備え入力される光信号を電気信号に変換する受光素子部が複数並んで半導体基板上に備えられる、受光素子アレイと、前記受光素子アレイが接続配置される前面と、前記前面の反対側に位置する背面と、を有するキャリアと、を備えるアレイ型受光装置であって、前記キャリアは、[前記各受光素子部の前記第1導電型電極に接続され、前記前面の一部に形成される第1導電型配線と、該受光素子部の前記第2導電型電極に接続され、該第1導電型配線と並んで前記前面の一部に形成される第2導電型配線と、からそれぞれなる複数の配線対]と、[前記前面の一部に形成され、さらに、前記複数の配線対の一の配線対と、該配線対の隣に位置する配線対との間を、延伸する、第1の接地電極]と、前記背面の少なくとも一部に形成されるとともに前記第1の接地電極と電気的に接続される第2の接地電極と、を備える、ことを特徴とする。
【0014】
(2)上記(1)に記載のアレイ型受光装置であって、前記複数の受光素子部は、前記一の配線対となる第1の受光素子部と前記隣に位置する配線対となる第2の受光素子部であり、前記複数の配線対は、前記第1の受光素子部と接続される第1の配線対と、前記第2の受光素子部と接続される第2の配線対であり、前記第1の配線対及び前記第2の配線対において、間を延伸する前記第1の接地電極に対して内側に配置される配線は、ともに前記第1導電型配線であってもよい。
【0015】
(3)上記(1)又は(2)に記載のアレイ型受光装置であって、前記キャリアは、前記前面の上縁と前記背面の上縁との間に位置する上面を、さらに有し、各前記配線対の前記第1導電型配線と前記第2導電型配線は、ともに、前記前面の上縁へ延伸し、さらに、該上縁を亘って前記上面のそれぞれ一部に形成され、前記第1の接地電極は、前記一の配線対と前記隣に位置する配線対との間を、前記前面の上縁へ延伸し、さらに、該上縁を亘って前記上面の一部に形成されてもよい。
【0016】
(4)上記(1)に記載のアレイ型受光装置であって、前記第1の接地電極は、隣り合って並ぶ2対の前記配線対の間それぞれを、延伸してもよい。
【0017】
(5)上記(4)に記載のアレイ型受光装置であって、前記キャリアは、前記前面の上縁と前記背面の上縁との間に位置する上面を、さらに有し、各前記配線対の前記第1導電型配線と前記第2導電型配線は、ともに、前記前面の上縁へ延伸し、さらに、該上縁を亘って前記上面のそれぞれ一部に形成され、前記第1の接地電極は、隣り合って並ぶ2対の前記配線対の間それぞれを、前記前面の上縁へ延伸し、さらに、該上縁を亘って前記上面の一部に形成されてもよい。
【0018】
(6)上記(3)に記載のアレイ型受光装置であって、各前記配線対の前記第1導電型配線が前記上面の一部に形成される部分と、該配線対の前記第2導電型配線が前記上面の一部に形成される部分とは、切削溝によって電気的に絶縁されていてもよい。
【0019】
(7)上記(6)に記載のアレイ型受光装置であって、前記第1の接地電極が前記上面の一部に形成される部分が内側切削溝に含まれ、前記内側切削溝の両側に広がる外側切削溝それぞれによって、さらに外側に位置する前記一の配線対及び前記隣に位置する配線対の該部分に対してそれぞれ内側に配置される配線と、前記第1の接地電極が前記上面の一部に形成される部分とは電気的に絶縁されていてもよい。
【0020】
(8)上記(6)に記載のアレイ型受光装置であって、前記第1の接地電極が前記上面の一部に形成される部分は、両側に位置する前記一の配線対及び前記隣に位置する配線対の該部分に対してそれぞれ内側に配置される配線と、切削溝によってそれぞれ電気的に絶縁されていてもよい。
【0021】
(9)上記(5)に記載のアレイ型受光装置であって、各前記配線対の前記第1導電型配線が前記上面の一部に形成される部分と、該配線対の前記第2導電型配線が前記上面の一部に形成される部分とは、切削溝によって電気的に絶縁されていてもよい。
【0022】
(10)上記(9)に記載のアレイ型受光装置であって、前記第1の接地電極が前記上面の一部に形成される部分それぞれは、内側切削溝それぞれに含まれ、前記内側切削溝の両側に広がる外側切削溝それぞれによって、さらに外側に位置する隣り合って並ぶ2対の前記配線対の該部分に対してそれぞれ内側に配置される配線と、前記第1の接地電極が前記上面の一部に形成される部分それぞれとは電気的に絶縁されていてもよい。
【0023】
(11)上記(9)に記載のアレイ型受光装置であって、前記第1の接地電極が前記上面の一部に形成される部分それぞれは、両側に位置する隣り合って並ぶ2対の前記配線対の該部分に対してそれぞれ内側に配置される配線と、切削溝によってそれぞれ電気的に絶縁されていてもよい。
【0024】
(12)上記(1)に記載のアレイ型受光装置であって、各前記受光素子部は、前記半導体基板の裏面に入射する光を受光するPN接合部を、さらに備え、前記第1導電型電極は、該PN接合部の一方側に導通し、前記第2導電型電極は、該PN接合部の他方側に導通してもよい。
【0025】
(13)上記(1)に記載のアレイ型受光装置であって、前記キャリアは、前記第1の接地電極が前記前面に形成される領域の内部と前記第2の接地電極が前記背面に形成される領域の内部とを貫通する、1又は複数の貫通穴を有し、前記1又は複数の貫通穴それぞれの側面に形成され、前記第1の接地電極及び前記第2の接地電極とそれぞれ接している、1又は複数の第3の接地電極を、さらに備えてもよい。
【0026】
(14)上記(1)に記載のアレイ型受光装置であって、前記キャリアは、前記前面の下縁と前記背面の下縁との間に位置する底面を、さらに有し、前記第1の接地電極と前記前面の下縁を亘って接し、前記第2の接地電極と前記背面の下縁を亘って接するとともに、前記底面の少なくとも一部に形成される、第3の接地電極を、さらに備えていてもよい。
【0027】
(15)上記(5)に記載のアレイ型受光装置であって、前記第1の接地電極が上記上面の一部に形成される部分は、前記背面の上縁へ延伸し、前記背面の上縁を亘って、前記第2の接地電極と接していてもよい。
【0028】
(16)本発明に係る光受信モジュールは、上記(1)乃至(15)のいずれかに記載の受光装置を内蔵する、光受信モジュールであってもよい。
【0029】
(17)本発明に係る光トランシーバは、上記(16)に記載の光受信モジュールを備える、光トランシーバであってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、複数の受光素子部を備えるアレイ型受光装置に配置される複数の配線を介して生じるクロストークが軽減されるアレイ型受光装置、光受信モジュール、及び光トランシーバが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアレイ型受光装置を前面側より見た斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る受光素子アレイを電極側より見た斜視図である。
【図3A】本発明の第1の実施形態に係るキャリアを前面側より見た斜視図である。
【図3B】本発明の第1の実施形態に係るキャリアを背面側より見た斜視図である。
【図4A】本発明の第1の実施形態に係るキャリアの製造工程を示す概略斜視図である。
【図4B】本発明の第1の実施形態に係るキャリアの製造工程を示す概略斜視図である。
【図4C】本発明の第1の実施形態に係るキャリアの製造工程を示す概略斜視図である。
【図4D】本発明の第1の実施形態に係るキャリアの製造工程を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る光受信モジュール主要部を前面側から見た斜視図である。
【図6A】本発明の第2の実施形態に係るアレイ型受光装置を前面側より見た斜視図である。
【図6B】本発明の第2の実施形態に係るアレイ型受光装置を背面側より見た斜視図である。
【図7A】本発明の第2の実施形態に係るキャリアの製造工程を示す概略斜視図である。
【図7B】本発明の第2の実施形態に係るキャリアの製造工程を示す概略斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るアレイ型受光装置を前面側より見た斜視図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る受光素子アレイを電極側から見た斜視図である。
【図10A】本発明の第3の実施形態に係るキャリアを前面側より見た斜視図である。
【図10B】本発明の第3の実施形態に係るキャリアを背面側より見た斜視図である。
【図11A】従来技術に係るアレイ型受光装置を前面側から見た斜視図である。
【図11B】従来技術に係るアレイ型受光装置を背面側から見た斜視図である。
【図12】従来技術に係る光受信モジュール主要部を前面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る実施形態について、以下に、詳細な説明をする。ただし、以下に示す図は、あくまで、各実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0033】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアレイ型受光装置1を前面側より見た斜視図である。当該実施形態に係るアレイ型受光装置1は、キャリア2と、キャリア2に保持される受光素子アレイ3と、を備えている。受光素子アレイ3に2個の受光素子部が並んで半導体基板上に形成される、2チャンネル受光素子アレイである。受光素子アレイ3の2対の電極が、キャリア2に形成される2対の配線対とそれぞれ接続される。受光素子アレイ3の半導体基板の裏面には受光窓19が備えられ、受光素子アレイ3は受光窓19に入射する光を受光して電気信号に変換している。電気信号は、後述する前置増幅回路などによって増幅され、光電流として検出される。2個の受光素子部を、図の右側から順に、第1の受光素子部、第2の受光素子部とする。2個の受光素子部の受光窓19が、図の右側から順に、受光窓19a,19bとして、示されている。
【0034】
図2は、当該実施形態に係る受光素子アレイ3を電極側より見た斜視図である。2個の受光素子部は、図の左側から順に、第1の受光素子部、第2の受光素子部である。受光素子アレイ3の各受光素子部に、入射する光を受光するPN接合部が備えられ、PN接合部の一方側が、それぞれ受光メサ部12の頂上部であり、他方側が、それぞれn型InPコンタクト層部13である。PN接合部の周囲(図の上下の両側)に、P型電極メサ部14とN型電極メサ部15が形成されている。P型電極メサ部14にP型電極16(第1導電型電極)が形成され、P型電極16は、PN接合部の一方側である受光メサ部12の頂上部に導通している。N型電極メサ部15にN型電極17(第2導電型電極)が形成され、N型電極17は、PN接合部の他方側であるn型InPコンタクト層部13に導通している。図には、2個の受光素子部の受光メサ部12が、左側から順に受光メサ部12a,12bと、n型InPコンタクト層部13が、同様に、n型InPコンタクト層部13a,13bとして、示されており、他の部位についても同様である。
【0035】
図2において、2個の受光素子部の間に、ダミー電極メサ部36が形成され、その上部にダミー電極20が形成されている。ダミー電極20は、P型電極16a,16b、N型電極17a,17bのいずれにも電気的に接続されていない。なお、ダミー電極メサ部36およびダミー電極20の形状は、図2に示す本実施例に限定されるものではなく、P型電極16a,16b、N型電極17a,17bと電気的に接続されていなければ、どのような形状・大きさであっても構わない。ダミー電極メサ部36の変形例として好ましい形状の一つには、2個の受光素子部の間にストライプ状に形成して両者のアイソレーションを高めることが考えられる。
【0036】
図2に示す通り、受光素子アレイ3は、半絶縁性のFeドープInP基板11上に、2個のn型InPコンタクト層部13a,13bが形成されており、各々の上に、受光メサ部12a,12bが形成されている。受光メサ部12a,12bの各中心部の間隔は0.25mmである。受光メサ部12a,12bは、頂上部側から見て、P型InGaAsコンタクト層、P型InGaAlAsバッファ層、N型InGaAs光吸収層、及びN型InGaAlAsバッファ層から成る多層構造である。受光メサ部12a及びn型InPコンタクト層部13aと、受光メサ部12b及びn型InPコンタクト層部13bは、それぞれPN接合部を形成し、各々独立に、FeドープInP基板11の裏面から入射される光を受光することが可能である。FeドープInP基板11の表面全体は絶縁性の保護膜18により被膜されているが、受光メサ部12a、12bの上面に円形パターンで、またn型InPコンタクト層部13a、13bの一部に矩形パターンで、開口部が設けられている。受光メサ部12aの周囲に、P型電極メサ部14a及びN型電極メサ部15aが、受光メサ部12bの周囲に、P型電極メサ部14b及びN型電極メサ部15bが、それぞれ形成されており、それらの高さは受光メサ部12a,12bの高さと同じかそれより高い。受光メサ部12aの頂上部であるP型InGaAsコンタクト層に開口部を介して電気的に接続するP型電極16aは、P型電極メサ部14aの上面まで、またn型InPコンタクト層部13aに開口部を介して電気的に接続するN型電極17aは、N型電極メサ部15aの上面まで引き出されている。第2の受光素子部のP型電極16b及びN型電極17bについても、同様である。
【0037】
さらに受光メサ部12aと受光メサ部12bの間にダミー電極メサ部36が形成されており、それらの高さは受光メサ部12a,12bの高さと同じかそれより高い。
【0038】
図3Aは、当該実施形態に係るキャリア2を前面側より見た斜視図である。図3Bは、当該実施形態に係るキャリア2を背面側より見た斜視図である。キャリア2は、受光素子アレイ3が接続配置される前面と、前面の反対側に位置する背面と、前面の上縁と背面の上縁の間に延びて位置する上面と、前面の下縁と背面の下縁の間に延びて位置する底面と、2個の側面とを有している。ここで、上面は、複数の平面と、隣接する平面の間に配置される複数の曲面からなる面である。キャリア2は、幅1mm(背面の右縁と左縁の距離)、高さ1mm(背面の上縁と下縁の距離)、厚さ0.15mm(前面の上縁と背面の上縁の距離)の窒化アルミニウム部材21に、受光素子アレイ3の2対の電極にそれぞれ接続される2対の配線対と、接地電極30などが形成されている。当該実施形態に係るアレイ型受光装置1の主な特徴は、接地電極30の形状にある。
【0039】
図3Aの右側に、第1の受光素子部に接続される第1の配線対が、図3Aの左側に、第2の受光素子部に接続される第2の配線対が示されている。第1の配線対は、P型配線22a(第1導電型配線)とN型配線25a(第2導電型配線)からなっている。P型配線22aは、前面の上縁を亘って前面と上面のそれぞれ一部に形成されており、前面に形成される前面P型配線電極23aと、上面に形成される上面P型配線電極24aからなっている。同様に、N型配線25aは、前面の一部に形成される前面N型配線電極26aと、上面の一部に形成される上面N型配線電極27aからなっている。第2の配線対は、第1の配線対と同様に、P型配線22b(第1導電型配線)とN型配線25b(第2導電型配線)からなっており、P型配線22bは、前面P型配線電極23bと上面P型配線電極24bからなり、N型配線25bは、前面N型配線電極26bと上面N型配線電極27bからなっている。ここで、2対の配線対は、図3Aに示す通り、キャリア2の前面に、N型配線25a、P型配線22a、P型配線22b、N型配線25bの順に、図の右側から並んでいる。
【0040】
前面P型配線電極23a,23b、前面N型配線電極26a,26bの一部に、AuSnはんだ材28a,28b,29a,29bがそれぞれ形成されている。受光素子アレイ3をキャリア2に搭載する際に、P型電極16aがAuSnはんだ材28aに、P型電極16bがAuSnはんだ材28bに、N型電極17aがAuSnはんだ材29aに、N型電極17bがAuSnはんだ材29bに、はんだ接続され、それぞれ電気的に接続されるとともに、受光素子アレイ3がキャリア2に固定され、キャリア2は受光素子アレイ3を保持することが可能となる。
【0041】
また、後述する通り、前面接地電極31の一部に、AuSnはんだ材35が形成されている。受光素子アレイ3をキャリア2に搭載する際に、ダミー電極20がAuSnはんだ材35にはんだ接続されることにより、受光素子アレイ3はより安定的にキャリア2に固定される。
【0042】
図3Aに示す通り、前面P型配線電極23aは、AuSnはんだ材28aが形成される一端(下端)から、等しい幅で前面の上縁へ直線的に延伸して、前面の上縁に及んでいる。また、前面N型配線電極26aは、AuSnはんだ材29aが形成される一端(左下端)から、等しい幅で前面の右側へ直線的に延伸し、直角に屈曲し、より広くかつ等しい幅で、前面の上側へ直線的に延伸し、途中でさらに幅が広くなるとともに、前面の上縁に及んでいる。前面N型配線電極26aは、前面P型配線電極23aと並んで形成されている。前面P型配線電極23b及び前面N型配線電極26bは、後述する前面接地電極31の帯状の部分に対して対称的に、図の左側に形成されている。
【0043】
接地電極30は、第1の接地電極と、第2の接地電極と、第3の接地電極からなっている。第1の接地電極は、前面の上縁を亘って前面と上面のそれぞれ一部に形成されており、前面に形成される前面接地電極31と、上面に形成される上面接地電極32からなっている。第2の接地電極は、背面接地電極34であり、背面接地電極34は、背面の上縁の一部に及んでおり、該上縁の一部を亘って上面接地電極32と接している。キャリア2に、前面接地電極31(第1の接地電極)が前面に形成される領域の内部と、背面接地電極34が背面に形成される領域の内部とを貫通する、貫通穴が形成されており、貫通穴の側面に貫通穴接地電極33が形成される。第3の接地電極は、貫通穴接地電極33であり、貫通穴接地電極33は、貫通穴の両端を亘ってそれぞれ、前面接地電極31(第1の接地電極)及び背面接地電極34(第2の接地電極)と接している。第3の接地電極により、第1の接地電極と第2の接地電極は電気的に接続されている。また、第1の接地電極と第2の接地電極は、背面の上縁を亘って接していることにより、電気的に接続されている。なお、ここでは、1個の貫通穴接地電極33が形成されているが、1個に限定されることはなく、1個又は複数の貫通穴接地電極であってもよい。第1の接地電極に印加される電圧が、安定して基準電圧に維持されていればよく、第1の接地電極と第2の接地電極の電気的接続の手段は、必要に応じて選択すればよい。当該実施形態に係るキャリア2では、第3の接地電極の両端が第1の接地電極と第2の接地電極とそれぞれ接しており、さらに、第1の接地電極と第2の接地電極が背面の上縁を亘って接していることにより、第1の接地電極が、安定して第2の接地電極と導通している。他には、例えば、キャリア2の底面全体に亘って接地電極を形成することにより、第1の接地電極と第2の接地電極が電気的に接続されてもよい。
【0044】
前面接地電極31は、貫通穴接地電極33の前面接地電極31側一端(円形状)を囲うリング形状の部分と、リング形状の部分から上側へ等しい幅で直線的に延伸して前面の上縁に及んでいる帯状の部分からなっている。前面接地電極31の当該帯状の部分の一部に、AuSnはんだ材35が形成されており、受光素子アレイ3をキャリア2に搭載する際に、ダミー電極20がAuSnはんだ材35にはんだ接続される。前面接地電極31(第1の接地電極)は、第1の配線対(一の配線対)と第2の配線対(一の配線対の隣に位置する配線対)との間を、前面の上縁へ延伸している。図3Aに示す通り、第1の配線対及び第2の配線対において、前面接地電極31の帯状の部分に対して内側に配置される配線は、ともにP型配線22a,22bであり、2本のP型配線22a,22bは互いに平行に近接して配置されており、電気的クロストークが発生する可能性がある。しかし、前面接地電極31が2本のP型配線22a,22bの間に配置されていることにより、電気的クロストークが抑制されている。また、AuSnはんだ材29a,29bが形成される前面N型配線電極26a,26bの一端において、N型配線25a,25bは近接している。前面N型配線電極26a,26bの一端付近においても電気的クロストークが発生する可能性があるところ、前面接地電極31により、電気的クロストークが抑制されている。さらに、アレイ型受光装置1のキャリア2には、受光素子アレイ3の電極側が接続配置されるので、受光素子アレイ3の2個の受光素子部の間に発生し得る電気的クロストークも、前面接地電極31により抑制される。受光素子アレイ3のダミー電極20と、キャリア2の前面接地電極31とが、AuSnはんだ材35によりはんだ接続されていることにより、電気的クロストークがさらに抑制されるとの格別な効果を奏している。
【0045】
さらに、前述の通り、2対の配線対及び接地電極30は、キャリア2の上面の一部にもそれぞれ形成されている。図3Aに示す通り、上面P型配線電極24aは、上面の一部に形成されるとともに、前面の上縁まで及んでいる前面P型配線電極23aと接している。同様に、上面N型配線電極27aは、上面の一部に形成されるとともに、前面の上縁まで及んでいる前面N型配線電極26aと接している。そして、上面N型配線電極27aは、上面P型配線電極24aと並んで形成されている。上面P型配線電極24b及び上面N型配線電極27bは、上面接地電極32に対して対称的に、図の左側に形成されている。よって、キャリア2の上面においても、2個の上面P型配線電極24a,24bの間に、上面接地電極32が配置されている。すなわち、上面接地電極32(第1の接地電極)は、第1の配線対(一の配線対)と第2の配線対(一の配線対の隣に位置する配線対)との間に形成されており、上面においても、接地電極が2本のP型配線22a,22bの間に配置されていることにより、上面において生じ得る電気的クロストークが抑制されている。
【0046】
図3A及び図3Bに示す通り、キャリア2の上面は、後述する切削によって形成される切削溝を複数有しており、切削溝によって、複数の電極それぞれが互いに電気的に絶縁されている。上面P型配線電極24aの中心部と上面P型配線電極24bの中心部の間隔は0.25mmである。キャリア2の上面において、各配線対のP型配線22とN型配線25の間に切削溝41が配置され、切削溝41には金属などの導電性の物質が形成されておらず、各配線対のP型配線22とN型配線25とは切削溝41によって電気的に絶縁されている。図3A及び図3Bに、上面P型配線電極24aと上面N型配線電極27aの間に配置される切削溝41aが、上面P型配線電極24bと上面N型配線電極27bの間に配置される切削溝41aが、それぞれ示されている。また、前述の通り、2個の上面P型配線電極24a,24bの間に、上面接地電極32が配置されるが、上面接地電極32は、キャリア2の上面が有する内側切削溝43に形成されている。なお、上面接地電極32は、内側切削溝43の曲面の少なくとも一部に形成されていればよく、このとき、上面接地電極32は、内側切削溝43の曲面領域に含まれている。上面接地電極32は、前面の上縁に及んで前面接地電極31と接し、さらに、背面の上縁に及んで背面接地電極34と接しているのが望ましい。内側切削溝43の図3Aの右側には外側切削溝42a(図示せず)が、左側には外側切削溝42bが、上面にそれぞれ形成されている。外側切削溝42a,42bには金属などの導電性の物質が形成されておらず、外側切削溝42a,42bによって、内側切削溝43に形成される上面接地電極32は、さらに外側に配置される2個の上面P型配線電極24a,24bとそれぞれ電気的に絶縁される。内側切削溝43と、両側に配置される外側切削溝42a,42bとは、切削溝の曲面の曲率が異なっている。内側切削溝43の曲面の曲率半径は、外側切削溝42a,42bがつくる曲面の曲率半径より小さく、すなわち、前者の曲率は、後者の曲率より大きい。
【0047】
以下、当該実施形態に係るキャリア2の製造方法の一部について説明する。図4A乃至図4Dは、当該実施形態に係るキャリア2の製造工程を示す概略斜視図である。窒化アルミニウム部材21の前面に、蒸着法によってTi/Pt/Au膜を堆積することにより、前面P型配線電極23a,23b、前面N型配線電極26a,26b、及び前面接地電極31を所望の形状に形成する(図4A)。ここで、Ti/Pt/Au膜に用いられる”/”は、基板に近い側、基板に遠い側の順に、配置されていることを記しており、以下、本明細書において同じである。なお、電極材料がTi/Pt/Au膜に限定されないのは言うまでもない。
【0048】
窒化アルミニウム部材21の上面のうち上面接地電極32が形成される領域に、切削工程により切削溝を形成する(図4B)。この切削溝が後に内側切削溝43となる。そして、窒化アルミニウム部材21の上面全体に、Ti/Pt/Au膜からなる導体膜90を形成する(図4C)。このとき、切削溝の曲面にも導体膜90が形成されている。
【0049】
次に、切削工程により切削溝41a,41bと外側切削溝42a,42bを形成する。このとき、図4Bに示す切削溝より曲面よりも浅く、かつ、曲率が小さく(曲率半径が大きく)なる曲面の切削溝を形成することにより、図4Bに示す切削溝のうち、該切削工程の後に残存する(該切削工程で切削されていない)部分が内側切削溝43となり、内側切削溝43に形成される導体膜90が、上面接地電極32となる。また、該切削工程により新たに生じた切削溝がそれぞれ、外側切削溝42a,42bとなる。さらに、切削溝41a,41bを形成することにより、上面(の平面)に形成される導体膜90が、それぞれ、図4Dの右側から順に、上面N型配線電極27a,上面P型配線電極24a,上面P型配線電極24b,上面N型配線電極27bとなる。よって、上面接地電極32(第1の接地電極)は、外側切削溝42a,42bにより、さらに外側に配置される上面P型配線電極24a,24b(P型配線22a,22b)と、それぞれ電気的に絶縁され、同様に、切削溝41により、各配線対のP型配線22とN型配線25とは電気的に絶縁される。
【0050】
当該実施形態に係るアレイ型受光装置1の特性評価を行った結果を以下に示す。ここで、受光素子アレイ3の第1の受光素子部の特性を評価するために、N型配線25aを接地し、P型配線22aに3Vの逆バイアス電圧を印加し、波長1550nm、強度10μWの光信号を受光窓19aに入力したところ、0.7A/Wの受光感度が得られた。3Vの逆バイアス電圧における暗電流は、室温で3nA以下、85℃で30nA以下、と十分に低い値であった。高温逆バイアス通電試験(200℃,6V)では、2000時間後の暗電流は85℃で100nA以下であり、高い信頼性を示した。端子間容量はキャリア2の第1の配線対に発生する寄生容量を含めて100fF、順方向抵抗は20Ωであった。3Vの逆バイアス電圧を印加し、波長1550nm、強度100μWの光信号を入力して、周波数応答特性を測定した結果、85℃にて、3dB遮断周波数は25GHz以上、帯域内偏差は1dB以下が得られた。
【0051】
同様に、受光素子アレイ3の第2の受光素子部の特性を評価するために、N型配線25bを接地し、P型配線22bに3Vの逆バイアス電圧を印加し、上記と同様の試験を実施した結果、同程度の特性が得られた。特に、受光感度、3dB遮断周波数のチャンネル間偏差は3%以内であった。
【0052】
図5は、当該実施形態に係る光受信モジュール5主要部を前面側から見た斜視図である。当該実施形態に係る光受信モジュール5は、40Gbps以上の伝送容量を有するDQPSK光受信モジュールである。当該実施形態に係る光受信モジュール5は、基台部4を備えており、アレイ型受光装置1が基台部4に接続配置される。基台部4は、金属などの導電性の物質により形成されており、下段面と立ち上がり面と上段面とがこの順に連なる階段状の部分を有している。図5に示す通り、アレイ型受光装置1のキャリア2の背面が基台部4の立ちあがり面に沿うとともに、キャリア2の底面が基台部4の下段面に沿うように、アレイ型受光装置1は基台部4の階段状の部分に配置される。
【0053】
光受信モジュール5の基台部4の上段面に、前置増幅回路47が備えられている。前置増幅回路47は、受光素子アレイ3が出力する電気信号を増幅するものであり、前置増幅回路47の上面には、信号電圧用端子48a、48bなどが配置されている。信号電圧用端子48a,48bの各中心部の間隔は0.25mmである。
【0054】
アレイ型受光装置1のキャリア2の上面は、基台部4の上段面よりも高くなっている。また、前置増幅回路47は、基台部4の上段面のうち、立ち上がり面との縁付近に配置される。また、信号電圧用端子48a,48bの間隔は、上面P型配線電極24a,24bの間隔と等しく、互いに近接するように、アレイ型受光装置1と前置増幅回路47が基台部4に配置されているので、パターン接続用ワイヤの長さを最短とすることが可能である。
【0055】
前置増幅回路47の両側に、それぞれ基準電圧用端子49a,49bが、基台部4の上段面に配置されている。上面N型配線電極27a,27bは、それぞれ基準電圧用端子49a、49bと、パターン接続用ワイヤにより電気的に接続されている。ここでも、パターン接続用ワイヤの長さを短くするよう、基準電圧用端子49a,49bが基台部4の上段面に配置されるのが望ましい。ここで、基台部4が基準電圧となっており、キャリア2に形成される背面接地電極34(図示せず)が基台部4の立ち上がり面に接続配置されており、キャリア2の接地電極30と基台部4は電気的に接続されている。基台部4が接地される場合、基準電圧は0Vとなり、キャリア2のN型配線25及び受光素子アレイ3のN型電極17に印加される電圧は基準電圧である0Vとなる。
【0056】
受光素子アレイ3の2個のN型電極17a,17bに印加される電圧と、2個のN型電極17a,17bにそれぞれ接続されるキャリア2のN型配線25a,25bに印加される電圧とは、ともに基準電圧である0Vであるとき、電気クロストークは主に、受光素子アレイ3の2個のP型電極16a,16bとの間、及び、P型電極16a,16bにそれぞれ接続されるP型配線22a,22bとの間に、それぞれ生じ得る。とくに、並んで配置される2対の配線対(4本の配線)のうち、2本のP型配線22a,22bは内側に隣接して延伸しており、2本のP型配線22a,22bの間で、電気クロストークが起こりやすい構造となっているところ、2本のP型配線22a,22bの間に、前面接地電極31(第1の接地電極)の帯状の部分が延伸していることにより、電気クロストークが抑制されている。すなわち、2対の配線対が、図3Aに示す通り、キャリア2の前面に、N型配線25a,P型配線22a,P型配線22b,N型配線25bの順に、図の右側から並んでおり、さらに、N型配線25a,25bが接地される場合に、本発明の効果はさらに顕著に表れている。なお、前述の通り、受光素子アレイ3のダミー電極20と、キャリア2の前面接地電極31とが、AuSnはんだ材35によりはんだ接続されていることにより、電気的クロストークがさらに抑制されるとの格別な効果を奏している。
【0057】
光受信モジュール5に、図5に示すアレイ型受光装置1や前置増幅回路47などの他に、DQPSK光受信モジュールとして動作させるために必要となるレンズ、ミラー、ハーフビームスプリッタなどの光学系部品から構成される干渉光学系(図示せず)、受光素子バイアス回路(図示せず)などがさらに備えられている。光受信モジュール5の入力側には光ファイバが接続されており、DQPSK光信号が入力されると、干渉光学系にて干渉された後、受光素子アレイ3で受光され、受光素子アレイ3が電気信号に変換して出力する。当該実施形態に係る光トランシーバは、当該実施形態に係る光受信モジュール5を備える光トランシーバである。
【0058】
光受信モジュール5の高速応答特性を改善するために、アレイ型受光装置1のキャリア2に形成されるP型配線22と前置増幅回路47とを接続するパターン接続用ワイヤの配線長を短くするのが望ましい。配線長を短くするには、前述の通り、信号電圧用端子48a,48bの間隔を、上面P型配線電極24a,24bの間隔と等しくし、さらに、信号電圧用端子48a,48bと上面P型配線電極24a,24bとが、それぞれ互いに近接するように、アレイ型受光装置1と前置増幅回路47が基台部4に配置されているのが望ましい。さらに、キャリア2の上面の平面部分の高さと、基台部4の上段面に配置される前置増幅回路47の上面の高さとが、近い値であるのが望ましく、等しくなっているのがさらに望ましい。
【0059】
さらに配線長を短くするには、キャリア2の厚さ(前面の上縁と背面の上縁の距離)、すなわち、上面の幅をさらに短くするのがさらに望ましい。しかし、キャリア2の上面の幅が短い場合、ホトリソグラフィ加工による電極配線パターンの形成が困難となり、当該実施形態に係る製造方法のように、切削工程によって形成される切削溝によって配線間分離を行うこととなる。しかし、切削工程における位置ずれ精度などにより、切削溝の幅や、上面に形成される電極の幅には制限がかかるので、隣接する配線間に接地配線を設けることが困難な場合が生じてしまう。
【0060】
ここで、前置増幅回路47の信号電圧用端子48a,48bの間隔は0.25mmであるが、切削工程における位置ずれ精度などにより、設計において切削溝の幅が0.1mm以上、配線電極の幅が0.1mm以上必要な場合を例に考える。例えば、図12に示す従来技術に係るキャリア102のように、接地電極を前面に配置しない場合は、信号電圧用端子148a,148bの間隔が0.25mmであるとき、2本のP型配線の中心間距離を前置増幅回路の信号電圧用端子148a,148bの間隔と等しくすることが可能である。しかし、当該実施形態に係るアレイ型受光装置1のように、2本のP型配線22a,22bの間に第1の接地電極を配置する場合は、切削工程における位置ずれ精度による上記の制限により、2本のP型配線の中心間距離が0.4mm以上必要となり、信号電圧用端子の間隔が0.25mmであるとき、2本のP型配線の中心間距離を、前置増幅回路の信号電圧用端子の間隔と等しくすることが出来ず、両者の間隔が整合しないという問題が発生する。しかし、当該実施形態に係るアレイ型受光装置1において、キャリア2の上面接地電極32を内側切削溝43に形成し、上面接地電極32を外側切削溝42a,42bによって上面P型配線電極24a,24bそれぞれと電気的に絶縁することにより、係る問題が解決され、本発明の効果はさらに高まることとなる。
【0061】
近年、光モジュールの伝送容量の高速化に伴って、波長が異なる複数の光を同時に送受信することにより搬送波を多重化する光波長分割多重伝送方式や、PSK(Phase Shift Keying)と呼ばれる光の位相を変調した信号を伝播する方式が用いられている。このような光伝送方式に用いられる光送信モジュールでは、複数の半導体レーザ素子を直線状に配列した半導体レーザアレイと、複数の信号端子を備えた駆動回路を用いることにより、小型、低コスト、低消費電力の光送信モジュールの開発が、また光受信モジュールでは、複数の半導体受光素子を直線状に配列した受光素子アレイと、複数の信号端子を備えた前置増幅回路を用いることにより、小型、低コスト、低消費電力の光受信モジュールの開発が進められている。
【0062】
光受信モジュールの底面、すなわち光トランシーバに内蔵される際に固定される面に対し、前置増幅回路などの回路基板、及び光信号の入力方向が平行である光受信モジュールに、表面入射型または裏面入射型の受光素子アレイを内蔵する場合、受光素子アレイの受光面を光受信モジュール底面に対して垂直に搭載する必要がある。このような場合、前面から上面に亘って電極配線を有するキャリアを適用し、その前面に受光素子アレイを搭載する。さらにキャリアを前置増幅回路の近傍に搭載し、キャリア上面の電極配線部から前置増幅回路の各端子に接続することとなる。この場合、キャリアの前面のみならず上面においても、隣接する配線間の電気的クロストークが問題となるところ、当該実施形態に係るアレイ型受光装置1によって、電気的クロストークが抑制される。電気的クロストークが抑制されることにより、アレイ型受光装置1で発生するノイズが抑制され、アレイ型受光装置1を内蔵する光モジュール及び光トランシーバの誤動作が抑制される。
【0063】
とくに当該実施形態に係るアレイ型受光装置1のように、DQPSK光受信モジュールに内蔵される2チャンネルアレイ型受光装置の場合、2個の各受光素子部に接続される配線が、N型、P型、P型、N型の並びで配置され、2チャンネル間のP型配線が隣接していることにより電気的クロストークが問題となるところ、本発明を適用することにより、電気的クロストークが大幅に低減されることとなり、本発明の効果はさらに高まる。
【0064】
なお、当該実施形態に係るアレイ型受光装置1の受光素子アレイ3は、半導体基板の裏面より入射する光を受光する裏面入射型の受光素子部を備えているが、これに限定されることはなく、表面入射型の受光素子部を備えていてもよい。また、当該実施形態に係るアレイ型受光装置1のキャリア2は、光受信モジュール5の底面(基台部4の上段面及び下段面)に対して垂直に搭載される縦型キャリアとしたが、これに限定されることはなく、例えば、光受信モジュール5の底面に平行に搭載される平面型キャリアであってもよい。この場合、キャリア2の上面に電極を形成する必要はなく、各受光素子部に接続される配線対は、キャリア2の前面にのみ形成される。この場合であっても、接地電極が隣り合う配線対の間を延伸することにより、電気的クロストークが抑制される。この場合であっても、各配線対の内側の配線はP型配線(第1導電型配線)である場合に、本発明の効果はより顕著となる。
【0065】
さらに、当該実施形態に係るキャリア2は、前面と背面が互いに平行であり、上面に形成される切削溝を別にすれば、直方体の形状をしているが、これに限定されることはない。上面の幅を短くするために、また、受光素子アレイ3の受光面(例えば、受光窓19)での反射光が入力側に戻ることを抑制するために、上面の幅(前面の上縁と背面の上縁の距離)を底面の幅(前面の下縁と背面の下縁)より狭くする形状をとする場合であってもよい。この場合、受光素子アレイ3の受光窓19は、キャリア2の底面に対して、垂直に配置されておらず、キャリア2の前面及び受光素子アレイ3の受光窓19は、底面に対して傾斜面となっている。必要があれば、逆に、上面の幅が底面の幅より広くする形状とする場合であってもよい。
【0066】
なお、当該実施形態に係わるアレイ型受光装置1は、前面接地電極31による電気的クロストーク低減効果を高めるために、背面接地電極34を設置したが、これは必須ではない。また、電気的クロストーク低減効果を高めるために、前面接地電極31と背面接地電極34を、上面接地電極32と貫通穴接地電極33の両方によって電気的に接続する構造とし、電気的接続性を強化したが、これは必須ではなく、上面接地電極32または貫通穴接地電極33の何れかのみを設置する構造としても良い。
【0067】
[第2の実施形態]
本発明の第の実施形態に係るアレイ型受光装置9の基本的な構成は、第1の実施形態に係るアレイ型受光装置1と同じである。当該実施形態に係るアレイ型受光装置9は、第1の実施形態に係るアレイ型受光装置1と、キャリア10の前面及び上面の形状が主に異なっている。
【0068】
また、当該実施形態に係るアレイ型受光装置9は、第1の実施形態に係るアレイ型受光装置1とは、配線電極パターンの形状、貫通穴接地電極33の有無についても異なっている。
【0069】
図6Aは、本発明の第2の実施形態に係るアレイ型受光装置9を前面側より見た斜視図である。図6Bは、当該実施形態に係るアレイ型受光装置9を背面側より見た斜視図である。第1の実施形態に係るキャリア2では、貫通穴接地電極33によって、前面接地電極31と背面接地電極34が電気的に接続されている。これに対して、当該実施形態に係るキャリア10では、前面接地電極37が前面を下方に延伸し、前面の下縁に及んでおり、同様に、背面接地電極38が背面を下方に延伸し、背面の下縁に及んでいる。さらに、底面の全面に底面接地電極(第3の接地電極:図示せず)が形成されている。底面接地電極は、前面接地電極37と前面の下縁を亘って接しており、さらに背面接地電極38と背面の下縁を亘って接している。これにより、前面接地電極37と背面接地電極38とが、底面接地電極を介して電気的に接続されている。なお、ここでは、底面接地電極は、底面の全面に形成されるとしたが、これに限定されることはなく、底面の一部に形成されていても、底面接地電極が前面の下縁に及んで前面接地電極37と接し、さらに、背面の下縁に及んで背面接地電極38と接していればよい。
【0070】
第1の実施形態に係るキャリア2の上面には、内側切削溝43に上面接地電極32を形成し、上面接地電極32は、外側切削溝42a,42bによって、さらに外側に配置される2個の上面P型配線電極24a,24bとそれぞれ電気的に絶縁される。これに対して、当該実施形態に係るキャリア10の上面の平面部分に、上面接地電極32が形成され、上面接地電極32の両側に配置される切削溝45a,45bによって、さらに外側に配置される2個の上面P型配線電極24a,24bとそれぞれ電気的に絶縁される。上記以外の当該実施形態に係るキャリア10の構造について、例えば、受光素子アレイが搭載される領域の電極パターン、AuSnはんだ材の配置等は、第1の実施形態に係るキャリア2と同じである(図3A参照)。
【0071】
図7A及び図7Bは、当該実施形態に係るキャリア10の製造工程を示す概略斜視図である。第1の実施形態と同様に、窒化アルミニウム部材21の前面に、蒸着法によってTi/Pt/Au膜を堆積することにより、前面P型配線電極23a,23b、前面N型配線電極26a,26b、及び前面接地電極31を所望の形状に形成する。そして、窒化アルミニウム部材21の上面全体に、Ti/Pt/Au膜からなる導体膜90を形成する(図7A)。
【0072】
次に、切削工程により切削溝41a,41bと切削溝45a,45bを形成する(図7B)。図7Bの右側から順に、切削溝41a,45a,45b,41bにより、上面に形成される導体膜90が、それぞれ、図7Bの右側から順に、上面N型配線電極27a,上面P型配線電極24a,上面接地電極32,上面P型配線電極24b,上面N型配線電極27bとなる。よって、上面接地電極32(第1の接地電極)は、切削溝45a,45bにより、さらに外側に配置される上面P型配線電極24a,24b(P型配線22a,22b)と、それぞれ電気的に絶縁され、同様に、切削溝41により、各配線対のP型配線22とN型配線25とは電気的に絶縁される。
【0073】
キャリア10の上面に形成される2個の上面P型配線電極24a,24bの間隔を所定の値としたいところ、切削工程における位置ずれ精度などによる制限に対して余裕がある場合に、当該実施形態に係るアレイ型受光装置9のキャリア10の形状が望ましい。この場合、図7Bに示す切削工程によって、当該実施形態に係るキャリア10を形成することができ、製造工程の増大が抑制され、本発明の効果はさらに高まる。
【0074】
また、上面接地電極32をパターン接続用ワイヤによって、基台部の接地配線電極に接続してもよく、この場合、電気的クロストークの抑制効果をさらに高めることが可能となる。
【0075】
なお、当該実施形態に係わるアレイ型受光装置9には、前面接地電極37による電気的クロストーク低減効果を高めるために、背面接地電極38を設置したが、これは必須ではない。また電気的クロストーク低減効果を高めるために、前面接地電極37と背面接地電極38を、上面接地電極32と底面接地電極(図示しない)の両方によって電気的に接続する構造とし、電気的接続性を強化したが、これは必須ではなく、上面接地電極32または底面接地電極の何れかのみを設置する構造としても良い。
【0076】
なお、前面接地電極37の形状は、本実施例に限定されるものではないが、図6Aに例示するように、前面接地電極37が、N型配線25a,25bの近傍にまで及んでいるのが望ましく、電気的なノイズをさらに低減することができる。
【0077】
[第3の実施形態]
図8は、本発明の第3の実施形態に係るアレイ型受光装置6を前面側より見た斜視図である。当該実施形態に係るアレイ型受光装置6は、第1の実施形態に係るアレイ型受光装置1と同様に、キャリア7と、キャリア7に保持される受光素子アレイ8と、を備えている。受光素子アレイ8に4個の受光素子部が並んで半導体基板上に形成される、4チャンネル受光素子アレイである。第1の実施形態に係る受光素子アレイ3と同様に、受光素子アレイ8の半導体基板の裏面には受光窓59が備えられている。4個の受光素子部を、図の右側から順に、第1の受光素子部、第2の受光素子部、第3の受光素子部、第4の受光素子部とする。4個の受光素子部の受光窓59が、図の右側から順に、受光窓59a,59b,59c,59dとして、示されている。なお、当該実施形態に係る光受信モジュールは、当該実施形態に係るアレイ型受光装置6を内蔵する光受信モジュールであり、当該実施形態に係る光トランシーバは、当該実施形態に係る光受信モジュールを備える光トランシーバである。
【0078】
図9は、当該実施形態に係る受光素子アレイ8を電極側から見た斜視図である。4個の受光素子部は、図の左側から順に、第1の受光素子部、第2の受光素子部、第3の受光素子部、第4の受光素子部である。受光素子アレイ8の各受光素子部の構造は、図2に示す第1の実施形態に係る受光素子アレイ3の各受光素子部の構造と基本的に同じである。しかしながら、図2に示す受光素子アレイ3の各受光素子部において、PN接合部の図の上下の両側に、P型電極メサ部14とN型電極メサ部15が形成されているのに対して、図
8に示す受光素子アレイ8の各受光素子部において、図の左右の両側に、P型電極メサ部54とN型電極メサ部55が形成されている。さらに、P型電極メサ部54にP型電極56(第1導電型電極)が、N型電極メサ部55にN型電極57(第2導電型電極)が、それぞれ形成されている。
【0079】
図9に示す通り、受光素子アレイ8は、半絶縁性のFeドープInP基板51上に、4個のn型InPコンタクト層部53a、53b、53c、53dが形成されており、各々の上に、受光メサ部52a、52b、52c、52dが形成されている。受光メサ部52a、52b、52c、52dのうち、隣り合う中心部の間隔はともに0.25mmである。4個の受光素子部は同一の構造であるため、第1の受光素子部を例に説明する。受光メサ部52aは、頂上部側から見て、P型InGaAsコンタクト層、P型InGaAlAsバッファ層、N型InGaAs光吸収層、及びN型InGaAlAsバッファ層から成る多層構造である。受光メサ部52a及びn型InPコンタクト層部53aはPN接合部を形成し、各受光素子部毎に独立して、FeドープInP基板51の裏面から入射される光を受光することが可能である。FeドープInP基板51の表面全体は絶縁性の保護膜58により被膜されているが、受光メサ部52aの上面に円形パターンで、またn型InPコンタクト層部53aの一部に矩形パターンで、開口部が設けられている。受光メサ部52aの周囲には、P型電極メサ部54a、N型電極メサ部55aが形成されており、それらの高さは受光メサ部52aの高さと同じかそれより高い。受光メサ部52aの頂上部であるP型InGaAsコンタクト層に開口部を介して電気的に接続するP型電極56aは、P型電極メサ部54aの上面まで、またn型InPコンタクト層部53aに開口部を介して電気的に接続するN型電極57aは、N型電極メサ部55aの上面まで引き出されている。第2の受光素子部、第3の受光素子部、及び第4の受光素子部の構造についても、第1の受光素子部と同様である。
【0080】
図10Aは、当該実施形態に係るキャリア7を前面側より見た斜視図である。図10Bは、当該実施形態に係るキャリア7を背面側より見た斜視図である。当該実施形態に係るキャリア7は、図3A及び図3Bに示す第1の実施形態に係るキャリア2と同様に、前面と、背面と、上面と、底面と、2個の側面とを有している。キャリア7は、幅4.1mm、高さ0.6mm、厚さ0.15mmの窒化アルミニウム部材61に、受光素子アレイ8の4対の電極にそれぞれ接続される4対の配線対と、接地電極70などが形成されている。
【0081】
図10Aの右側から順に、第1の受光素子部に接続される第1の配線対、第2の受光素子部に接続される第2の配線対、第3の受光素子部に接続される第3の配線対、及び第4の受光素子部に接続される第4の配線対が示されている。第1の配線対を例に説明すると、第1の配線対は、P型配線62a(第1導電型配線)とN型配線65a(第2導電型配線)からなっている。P型配線62aは、前面の上縁を亘って前面と上面のそれぞれ一部に形成されており、前面に形成される前面P型配線電極63aと、上面に形成される上面P型配線電極64aからなっている。同様に、N型配線65aは、前面の一部に形成される前面N型配線電極66aと、上面の一部に形成される上面N型配線電極67aからなっている。
【0082】
前面P型配線電極63a及び前面N型配線電極66aの一部に、AuSnはんだ材68a,69aがそれぞれ形成されている。受光素子アレイ8をキャリア7に搭載する際に、P型電極56aがAuSnはんだ材68aに、N型電極57aがAuSnはんだ材69aに、はんだ接続され、それぞれ電気的に接続されると同時に、受光素子アレイ8がキャリア7に固定され、キャリア7は受光素子アレイ8を保持することが可能となる。
【0083】
図10Aに示す通り、前面P型配線電極63aは、AuSnはんだ材68aが形成される一端(下端)から、等しい幅で前面の上縁へ直線的に延伸して、前面の上縁に及んでいる。また、前面N型配線電極66aは、AuSnはんだ材69aが形成される一端(下端)から、前面P型配線電極63aに平行に、等しい幅で前面の上縁へ直線的に延伸して、前面の上縁に及んでいる。すなわち、前面N型配線電極66aは、前面P型配線電極63aと並んで形成されている。
【0084】
さらに、第1の配線対は、キャリア7の上面の一部にもそれぞれ形成されている。図10Aに示す通り、上面P型配線電極64aは、上面の一部に形成されるとともに、前面の上縁まで及んでいる前面P型配線電極63aと接している。同様に、上面N型配線電極67aは、上面の一部に形成されるとともに、前面の上縁まで及んでいる前面N型配線電極66aと接している。そして、上面N型配線電極67aは、上面P型配線電極64aと並んで形成されている。
【0085】
なお、第2の配線対、第3の配線対、及び第4の配線対についても、第1の配線対と同様である。各配線対は、図10Aの右側に位置するP型配線62と、図10Aの左側に位置するN型配線65とが並んでおり、4対の配線対は、図10Aに示す通り、キャリア7の前面に、P型配線62a、N型配線65a、P型配線62b、N型配線65b、P型配線62c、N型配線65c、P型配線62d、N型配線65dの順に、図の右側から並んでいる。
【0086】
接地電極70は、第1の実施形態に係る接地電極30と同様に、第1の接地電極と、第2の接地電極と、第3の接地電極からなっている。第1の接地電極は、前面の上縁を亘って前面と上面のそれぞれ一部に形成されており、前面に形成される前面接地電極71と、上面に形成される上面接地電極72a,72b,72cからなっている。第2の接地電極は、背面接地電極74であり、背面接地電極74は、背面の上縁の一部に及んでおり、該上縁の一部を亘って上面接地電極72a,72b,72cとそれぞれ接している。キャリア7に、前面接地電極71(第1の接地電極)が前面に形成される領域の内部と、背面接地電極74が背面に形成される領域の内部とを貫通する、3個の貫通穴が形成されており、貫通穴の側面に貫通穴接地電極73a,73b,73cが形成される。第3の接地電極は、3個の貫通穴接地電極73a,73b,73cであり、貫通穴接地電極73a,73b,73cは、貫通穴の両端を亘ってそれぞれ、前面接地電極71(第1の接地電極)及び背面接地電極74(第2の接地電極)と接している。なお、ここでは、3個の貫通穴接地電極73a,73b,73cが形成されているが、3個に限定されることはなく、1個又は複数の貫通穴接地電極であってもよい。また、上面接地電極72a,72b,72c(第1の接地電極)は、背面接地電極74(第2の接地電極)と背面の上面に亘って接することによっても、電気的に接続している。第1の接地電極に印加される電圧が、安定して基準電圧に維持されていればよく、第1の接地電極と第2の接地電極の電気的接続の手段は、必要に応じて選択すればよい。当該実施形態に係るキャリア7では、3個の貫通穴接地電極(第3の接地電極)それぞれの両端が第1の接地電極と第2の接地電極とそれぞれ接しており、さらに、第1の接地電極と第2の接地電極が背面の上縁3箇所を亘って接していることにより、第1の接地電極が、安定して第2の接地電極と導通している。
【0087】
前面接地電極71は、貫通穴接地電極73a,73b,73cの前面接地電極71側一端(円形状)が配置される横長に延伸する矩形状の部分と、矩形状の部分から、上側へ等しい幅で直線的に延伸してそれぞれ前面の上縁に及んでいる3個の帯状の部分から成っている。前面接地電極71(第1の接地電極)の帯状の部分は、隣り合って並ぶ2対の配線対の間それぞれを、前面の上縁へ延伸している。さらに、キャリア7の上面に形成される上面接地電極72a,72b,72cは、前面接地電極71の3個の帯状の部分と、前面の上縁を亘って、接している。すなわち、第1の接地電極は、前面及び上面に亘って、隣り合って並ぶ2対の配線対の間それぞれに、配置されている。
【0088】
隣り合って並ぶ2対の配線対の配線間で、例えば、N型配線65aとP型配線62bの間で、電気的クロストークが発生する可能性がある。しかし、第1の接地電極が、前面及び上面に亘って、隣り合って並ぶ2対の配線対の間それぞれに、配置されていることにより、電気的クロストークが抑制されている。また、隣り合って並ぶ2個の受光素子部の2対の電極間で、例えば、N型電極57aとP型電極56bの間で、発生し得る電気的クロストークも、前面接地電極71により抑制される。なお、第1の実施形態に係るキャリア2と同様に、受光素子アレイ8において、隣り合って並ぶ2個の受光素子部の間にダミー電極を設置し、キャリア10において、前面接地電極71の対応する帯状の部分の一部にAuSnはんだ材を形成し、受光素子アレイ8をキャリア7に搭載する際に、ダミー電極をAuSnはんだ材にはんだ接続させてもよい。この場合、対応する2対の配線対の間、当該2個の受光素子部の間に発生し得る電気的クロストークをさらに抑制することが出来る。
【0089】
ここで、上面P型配線電極64a,64b,64c,64dのうち、隣り合う中心部の間隔はともに0.25mmである。第1の実施形態に係るキャリア2と同様に、上面P型配線電極64a,64b,64c,64dと、上面N型配線電極67a,67b,67c,66dと、上面接地電極72a,72b,72cとは、それぞれ、複数の切削溝によって、電気的に絶縁されている。上面接地電極72a,72b,72cは、内側切削溝83a,83b,83cに形成されており、例えば、上面接地電極72aは、両側に配置される外側切削溝85a,86aによって、さらに外側に配置される上面N型配線電極67aと上面P型配線電極64bとそれぞれ電気的に絶縁されている。なお、内側切削溝83aの曲面の曲率半径は、両側に配置される外側切削溝85a,86aがつくる曲面の曲率半径より小さく、すなわち、前者の曲率は、後者の曲率より大きい。上面接地電極72b,72cについても同様である。
【0090】
当該実施形態に係るアレイ型受光装置6の特性評価を行った結果を以下に示す。ここで、受光素子アレイ8の第1の受光素子部の特性を評価するため、N型配線65aを接地し、P型配線62aに3Vの逆バイアス電圧を印加し、波長1550nm、強度10μWの光信号を受光窓59aに入力したところ、0.7A/Wの受光感度が得られた。3Vの逆バイアス電圧における暗電流は、室温で3nA以下、85℃で30nA以下、と十分に低い値であった。高温逆バイアス通電試験(200℃,6V)では、2000時間後の暗電流は85℃で100nA以下であり、高い信頼性を示した。端子間容量はキャリア7の寄生容量を含めて100fF、順方向抵抗は20Ωであった。3Vの逆バイアス電圧を印加し、波長1550nm、強度100μWの光信号を入力して、周波数応答特性を測定した結果、85℃にて、3dB遮断周波数は25GHz以上、帯域内偏差は1dB以下が得られた。同様に、受光素子アレイ8の第2の受光素子部、第3の受光素子部、及び第4の受光素子部についても同等の特性が得られた。特に、受光感度、3dB遮断周波数のチャンネル間偏差は3%以内であった。
【0091】
第1の接地電極と第2の接地電極が安定して電気的に接続されていることにより、隣り合って並ぶ2対の配線対の配線間で発生する電気的クロストークが抑制される。電気的クロストークが抑制されることにより、アレイ型受光装置6で発生するノイズが抑制され、アレイ型受光装置6を内蔵する光モジュール及び光トランシーバの誤動作が抑制される。当該実施形態に係るアレイ型受光装置6は、4チャンネルアレイ型受光装置であり、4個の波長の光を同時に受信することが可能であり、光波長分割多重伝送方式に適用することが可能である。例えば、100ギガビットイーサネット(登録商標)伝送システムに適用可能な25ギガビット、4チャンネルアレイ型受光装置として適用可能である。
【0092】
なお、当該実施形態に係るキャリア7では、前面接地電極71(第1の接地電極)の3個の帯状の部分が、すべての隣り合って並ぶ2対の配線対の間それぞれに配置されているが、これに限定されることはない。一部の2対の配線対の間にのみ配置される場合であっても、当該2対の配線対の配線間に生じ得る電気的クロストークが抑制される。例えば、前面接地電極71(第1の接地電極)の帯状の部分が、第1の配線対(一の配線対)と第2の配線対(一の配線対の隣に位置する配線対)との間にのみ配置される場合であってもよい。
【0093】
以上、本発明の実施形態に係るアレイ型受光装置、光受信モジュール、光トランシーバについて、説明した。ここでは、P型電極を第1導電型電極、N型電極を第2導電型電極、P型配線を第1導電型配線、及びN型配線を第2導電型配線としたが、これに限定される必要はなく、N型を第1導電型及びP型を第2導電型としてもよいのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0094】
1 アレイ型受光装置、2 キャリア、3 受光素子アレイ、4 基台部、5 光受信モジュール、6 アレイ型受光装置、7 キャリア、8 受光素子アレイ、9 アレイ型受光装置、10 キャリア、11 FeドープInP基板、12,12a,12b 受光メサ部、13,13a,13b n型InPコンタクト層部、14,14a,14b P型電極メサ部、15,15a,15b N型電極メサ部、16,16a,16b P型電極、17,17a,17b N型電極、18 保護膜、19a,19b 受光窓、20 ダミー電極、21 窒化アルミニウム部材、22,22a,22b P型配線、23a,23b 前面P型配線電極、24a,24b 上面P型配線電極、25、25a,25b N型配線、26a,26b 前面N型配線電極、27a,27b 上面N型配線電極、28a,28b,29a,29b AuSnはんだ材、30 接地電極、31 前面接地電極、32 上面接地電極、33 貫通穴接地電極、34 背面接地電極、35 AuSnはんだ材、36 ダミー電極メサ部、37 前面接地電極、38 背面接地電極、41,41a,41b 切削溝、42a,42b 外側切削溝、43 内側切削溝、45a,45b 切削溝、47 前置増幅回路、48a,48b 信号電圧用端子、49a,49b 基準電圧用端子、51 FeドープInP基板、52a,52b,52c,52d 受光メサ部、53a,53b,53c,53d n型InPコンタクト層部、54,54a,54b,54c,54d P型電極メサ部、55,55a,55b,55c,55d N型電極メサ部、56,56a,56b,56c,56d P型電極、57,57a,57b,57c,57d N型電極、58 保護膜、59,59a,59b,59c,59d 受光窓、61 窒化アルミニウム部材、62,62a,62b,62c,62d P型配線、63a,63b,63c,63d 前面P型配線電極、64a,64b,64c,64d 上面P型配線電極、65,65a,65b,65c,65d N型配線、66a,66b,66c,66d 前面N型配線電極、67a,67b,67c,67d 上面N型配線電極、68a,68b,68c,68d,69a,69b,69c,69d AuSnはんだ材、70 接地電極、71 前面接地電極、72a,72b,72c 上面接地電極、73a,73b,73c 貫通穴接地電極、74 背面接地電極、83a,83b,83c 内側切削溝,85a,85b,85c,86a,86b,86c 外側切削溝、90 導体膜、101 アレイ型受光装置、102 キャリア、103 受光素子アレイ、104 基台部、105 光受信モジュール、123,123a,123b 前面第1導電型配線電極、124,124a,124b 上面第1導電型配線電極、126,126a,126b 前面第2導電型配線電極、127,127a,127b 上面第2導電型配線電極、134 接地電極、147 前置増幅回路、148a,148b 信号電圧用端子、149a,149b 基準電圧用端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型電極と第2導電型電極とを備え入力される光信号を電気信号に変換する受光素子部が複数並んで半導体基板上に備えられる、受光素子アレイと、
前記受光素子アレイが接続配置される前面と、前記前面の反対側に位置する背面と、を有するキャリアと、
を備えるアレイ型受光装置であって、
前記キャリアは、
前記各受光素子部の前記第1導電型電極に接続され、前記前面の一部に形成される第1導電型配線と、該受光素子部の前記第2導電型電極に接続され、該第1導電型配線と並んで前記前面の一部に形成される第2導電型配線と、からそれぞれなる複数の配線対と、
前記前面の一部に形成され、さらに、前記複数の配線対の一の配線対と、該配線対の隣に位置する配線対との間を、延伸する、第1の接地電極と、
前記背面の少なくとも一部に形成されるとともに前記第1の接地電極と電気的に接続される第2の接地電極と、を備える、
ことを特徴とする、アレイ型受光装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアレイ型受光装置であって、
前記複数の受光素子部は、前記一の配線対となる第1の受光素子部と前記隣に位置する配線対となる第2の受光素子部であり、
前記複数の配線対は、前記第1の受光素子部と接続される第1の配線対と、前記第2の受光素子部と接続される第2の配線対であり、
前記第1の配線対及び前記第2の配線対において、間を延伸する前記第1の接地電極に対して内側に配置される配線は、ともに前記第1導電型配線である、
ことを特徴とする、アレイ型受光装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のアレイ型受光装置であって、
前記キャリアは、前記前面の上縁と前記背面の上縁との間に位置する上面を、さらに有し、
各前記配線対の前記第1導電型配線と前記第2導電型配線は、ともに、前記前面の上縁へ延伸し、さらに、該上縁を亘って前記上面のそれぞれ一部に形成され、
前記第1の接地電極は、前記一の配線対と前記隣に位置する配線対との間を、前記前面の上縁へ延伸し、さらに、該上縁を亘って前記上面の一部に形成される、
ことを特徴とする、アレイ型受光装置。
【請求項4】
請求項1に記載のアレイ型受光装置であって、
前記第1の接地電極は、隣り合って並ぶ2対の前記配線対の間それぞれを、延伸する、
ことを特徴とする、アレイ型受光装置。
【請求項5】
請求項4に記載のアレイ型受光装置であって、
前記キャリアは、前記前面の上縁と前記背面の上縁との間に位置する上面を、さらに有し、
各前記配線対の前記第1導電型配線と前記第2導電型配線は、ともに、前記前面の上縁へ延伸し、さらに、該上縁を亘って前記上面のそれぞれ一部に形成され、
前記第1の接地電極は、隣り合って並ぶ2対の前記配線対の間それぞれを、前記前面の上縁へ延伸し、さらに、該上縁を亘って前記上面の一部に形成される、
ことを特徴とする、アレイ型受光装置。
【請求項6】
請求項3に記載のアレイ型受光装置であって、
各前記配線対の前記第1導電型配線が前記上面の一部に形成される部分と、該配線対の前記第2導電型配線が前記上面の一部に形成される部分とは、切削溝によって電気的に絶縁されている、
ことを特徴とする、アレイ型受光装置。
【請求項7】
請求項6に記載のアレイ型受光装置であって、
前記第1の接地電極が前記上面の一部に形成される部分が内側切削溝に含まれ、前記内側切削溝の両側に広がる外側切削溝それぞれによって、さらに外側に位置する前記一の配線対及び前記隣に位置する配線対の該部分に対してそれぞれ内側に配置される配線と、前記第1の接地電極が前記上面の一部に形成される部分とは電気的に絶縁されている、
ことを特徴とする、アレイ型受光装置。
【請求項8】
請求項6に記載のアレイ型受光装置であって、
前記第1の接地電極が前記上面の一部に形成される部分は、両側に位置する前記一の配線対及び前記隣に位置する配線対の該部分に対してそれぞれ内側に配置される配線と、切削溝によってそれぞれ電気的に絶縁されている、
ことを特徴とする、アレイ型受光装置。
【請求項9】
請求項5に記載のアレイ型受光装置であって、
各前記配線対の前記第1導電型配線が前記上面の一部に形成される部分と、該配線対の前記第2導電型配線が前記上面の一部に形成される部分とは、切削溝によって電気的に絶縁されている、
ことを特徴とする、アレイ型受光装置。
【請求項10】
請求項9に記載のアレイ型受光装置であって、
前記第1の接地電極が前記上面の一部に形成される部分それぞれは、内側切削溝それぞれに含まれ、前記内側切削溝の両側に広がる外側切削溝それぞれによって、さらに外側に位置する隣り合って並ぶ2対の前記配線対の該部分に対してそれぞれ内側に配置される配線と、前記第1の接地電極が前記上面の一部に形成される部分それぞれとは電気的に絶縁されている、
ことを特徴とする、アレイ型受光装置。
【請求項11】
請求項9に記載のアレイ型受光装置であって、
前記第1の接地電極が前記上面の一部に形成される部分それぞれは、両側に位置する隣り合って並ぶ2対の前記配線対の該部分に対してそれぞれ内側に配置される配線と、切削溝によってそれぞれ電気的に絶縁されている、
ことを特徴とする、アレイ型受光装置。
【請求項12】
請求項1に記載のアレイ型受光装置であって、
各前記受光素子部は、前記半導体基板の裏面に入射する光を受光するPN接合部を、さらに備え、
前記第1導電型電極は、該PN接合部の一方側に導通し、
前記第2導電型電極は、該PN接合部の他方側に導通する、
ことを特徴とする、アレイ型受光装置。
【請求項13】
請求項1に記載のアレイ型受光装置であって、
前記キャリアは、前記第1の接地電極が前記前面に形成される領域の内部と前記第2の接地電極が前記背面に形成される領域の内部とを貫通する、1又は複数の貫通穴を有し、
前記1又は複数の貫通穴それぞれの側面に形成され、前記第1の接地電極及び前記第2の接地電極とそれぞれ接している、1又は複数の第3の接地電極を、さらに備える、
ことを特徴とする、アレイ型受光装置。
【請求項14】
請求項1に記載のアレイ型受光装置であって、
前記キャリアは、前記前面の下縁と前記背面の下縁との間に位置する底面を、さらに有し、
前記第1の接地電極と前記前面の下縁を亘って接し、前記第2の接地電極と前記背面の下縁を亘って接するとともに、前記底面の少なくとも一部に形成される、第3の接地電極を、さらに備える、
ことを特徴とする、アレイ型受光装置。
【請求項15】
請求項5に記載のアレイ型受光装置であって、
前記第1の接地電極が上記上面の一部に形成される部分は、前記背面の上縁へ延伸し、前記背面の上縁を亘って、前記第2の接地電極と接している、
ことを特徴とする、アレイ型受光装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の受光装置を内蔵する、光受信モジュール。
【請求項17】
請求項16に記載の光受信モジュールを備える、光トランシーバ。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−256853(P2012−256853A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87431(P2012−87431)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【出願人】(301005371)日本オクラロ株式会社 (311)
【Fターム(参考)】