説明

アレルギー性皮膚炎治療剤

【課題】ステロイド系薬品を使用せずに、又は使用量を減らしても、アレルギー疾患による皮膚障害の除去作用を有するアレルギー性皮膚炎治療剤を提供する。
【解決手段】半導体特性を有するナノダイヤモンドの体温励起キャリアーによる抗菌性、紫外線防護機能、血流血促進効果及び自発電荷による保水特性を利用する。活性化エネルギーレベル0.1−1.0ev、粒子径5−300nmの半導体ナノダイヤモンドを重量比で0.0005−3.0wt%溶液、軟膏剤又は繊維に分散付着させてなる。スプレイ塗布、刷込み又は配合布バンド固定により患部に接触させることにより症状を緩和する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体特性を有するナノダイヤモンド(以下、半導体ダイヤモンド又はナノダイヤモンドという。)の殺菌作用及び血流促進作用を利用した新規なアレルギー性皮膚炎治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境又は生活習慣の変化に伴い、様々な外的物質に曝されるようになり,そ
の外的物質から体を守ろうとして、人に限らず愛玩動物(ペット)の生体内で抗原抗体反応が頻繁に起こるようになり、それが様々なアレルギー疾患を多く発生させてきている。
その原因として、工場及び自動車からの廃ガス等による空気汚染及び汚染された空気の太陽光による刺激性ガスオキシダントの発生、また、雑音による身体ストレス、更に各種の食品添加物との複合効果による影響が考えられる。特にペットの場合、飼育環境及び食物の改善に起因する長寿命の影響による身体免疫力の劣化も大きいと考えられる。
【0003】
従来、アレルギー疾患の中のアレルギー性皮膚炎、接触性皮膚炎、及びアトピー性皮膚炎の治療法としては、人及びペットの場合は、副腎皮質系ホルモン剤、通称ステロイド系薬品の内服及び塗布、また、並行しての食事療法が行われているが、治療期間が長くなり、適切な使用を誤ると、副作用が見られることが多い。ステロイド剤を構成する基剤もしくは配合剤が抗原あるいは刺激源となって発症する皮膚障害もあるが、外用薬の副作用としては、皮膚萎縮,創傷修復遅延、毛細血管拡張、ステロイド紫班、ステロイド潮紅その他経皮吸収による全身性副作用等がある。内用薬の副作用としては、感染症の誘発増強及び消化性潰瘍等が長期間の使用により現れる場合が多い。
【0004】
食物療法では、体質改善による症状の減少効果を期待する療法もあるが、特殊なアレルゲン除去食品を使用するため、経費がかかる。また、皮膚アレルギー症状は痒みを伴うため、掻破による滲出液及びこれによるブドウ球菌感染症による病状の促進が懸念される。
特にペットの場合、この傾向が多く、治療にはステロイド系薬品と食事療法が並行して用いられ、治癒期間が長くなる場合が多く、費用負担が大きい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】アトピー性皮膚炎 山本一哉著 株式会社 ぎょうせい 1995
【非特許文献2】アトピー性皮膚炎 五十嵐敦之著 株式会社 保健同人社 H14年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の事情に鑑み、ステロイド系薬品を使用せずに、又は使用量を減らしても、アレルギー疾患による皮膚障害の除去作用を有するアレルギー性皮膚炎治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ナノダイヤモンドは、製造時の添加物又は不純物により活性化エネルギーレベル0.1−1.0eVを有する室温程度の温度で熱励起キャリアーが生じる半導体特性を有する場合がある。このような半導体特性を有するナノダイヤモンドを生体に接触させると、荷電粒子が多く発生することで、荷電粒子による酸化反応又は還元反応により強力な殺菌効果が得られることが本発明者らによって初めて見出された。この荷電粒子による酸化反応又は還元反応による殺菌効果により、アレルギー性皮膚炎の痒みに基づく掻破傷による滲出液及びこれによるブドウ球菌等による細菌性感染症の防御作用が期待できることが判明した。
本発明者らは、ナノダイヤモンドが、その特殊な構造による保湿効果、殺菌効果、血流促進による皮膚表面の生体機能促進効果及び波長400nm以下の紫外線―赤外線変換による紫外線防護効果を有することに着目し、これらの効果による皮膚障害除去作用がアレルギー皮膚炎治療に有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
ナノダイヤモンドから発生する荷電粒子の抗アレルギー作用、アレルギー性皮膚炎の痒みに基づく掻破傷による滲出液及びこれによるブドウ球菌等による細菌性感染症の防御作用は、本発明者らによって初めて見出された有用な薬理作用であり、このような荷電粒子の抗アレルギー作用については今まで報告されていない。
【0009】
上記目的は、下記の本発明により達成される。すなわち、
(1)ナノダイヤモンドを有効成分とするアレルギー性皮膚炎治療剤。
(2)ナノダイヤモンドは、活性化エネルギーレベル0.1−1.0eVを有するものであるアレルギー性皮膚炎治療剤。
(3)ナノダイヤモンドは、5−300nmの粒子サイズを有するものであるアレルギー性皮膚炎治療剤。
(4)ナノダイヤモンドを溶液又は油脂に分散混合させてなる上記(1)(2)又は(3)のアレルギー性皮膚炎治療剤。
(5)ナノダイヤモンド混合溶液又は混合ゲルは、母材に対してナノダイヤモンドを重量比で0.0005wt%から3.0wt%配合したものである(4)のアレルギー性皮膚炎治療剤。
(6)ナノダイヤモンドをスプレイ法、捺染染色法又は溶融紡糸法により繊維布に付着させてなる上記(1)(2)又は(3)のアレルギー性皮膚炎治療剤。
(7)ナノダイヤモンドを配合した繊維布は、母材に対してナノダイヤモンドを重量比で0.0005wt%から3.0wt%配合したものである(6)のアレルギー性皮膚炎治療剤。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、細胞毒性のない半導体ナノダイヤモンドを使用するため、使用量及び使用期間による副作用がなく、ステロイド剤に比較して用法に制約がない。
請求項2の発明によれば、一般の電気絶縁性ダイヤモンドと異なり、体温加熱程度で励起されるキャリアーが多く発生する活性化エネルギーレベル0.1−1.0eVの半導体ナノダイヤモンドを使用するため、荷電粒子による制菌効果、生体効果及び自発電荷による皮膚接触面での保水効果が大きい。
請求項3の発明によれば、5−300nm粒子サイズのナノダイヤモンドを使用するため、溶液又は軟膏基剤への分散が容易になる。爆発法ナノダイヤモンドの基本サイズは5nm付近にあるが、300nmを越す凝集体になると個別粒子からの励起電荷がトラップされるので、荷電粒子放射効果が減少する。
請求項4の発明によれば、半導体ナノダイヤモンド粉末は溶液又は油脂基剤に混入して使用されるため、空気中への飛散が少なく、効率よく患部に付着できる。
請求項5及び7の発明によれば、溶液、軟膏及び繊維布への配合量として0.0005wt%から3.0wt%が選択されるので、励起荷電粒子の数が適切であるとともに、所期の生体効果が得られ、本発明のアレルギー性皮膚炎治療剤の製造効率も良い。0.0005wt%以下ではナノダイヤモンドそのものの個数が減るので、励起荷電粒子の数が減り、生体効果が下がる。3.0wt%を越すとナノダイヤモンド粒子相互の数が増すので、患部及び染色布では重なって付着し易く、効率が悪い。また、3.0wt%を越すと溶融紡糸法では、ノズルの磨耗が問題になり製造効率が落ちる。
請求項6の発明によれば、半導体ナノダイヤモンドは繊維布に分散付着された状態で使用できるため、患部に必要量を安定に接触できる。溶液又は油脂基剤に混入したものと繊維布に分散付着したものとの併用により、一層高い治療効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ナノダイヤモンド配合液と純水の接触角による表面張力評価を示す図面代用写真である
【図2】400nm波長カットによる太陽光線波長変換効果を示す図である。
【図3】ナノダイヤモンド配合繊維布の体温励起キャリアーによる帯電効果を示す図である。
【図4】ナノダイヤモンド配合繊維布の血流促進効果を示す図である。
【図5】ナノダイヤモンド配合繊維制菌効果を示す図である。
【図6】本発明の係るアレルギー皮膚炎治療剤の治療効果を示す、ヒトの足のフクラハギの部分を写した図面代用拡大写真である。
【図7】従来の皮膚炎治療薬であるステロイド薬剤の治療効果を示す、ヒトの足のフクラハギの部分を写した図面代用拡大写真である。
【図8】同じくフクラハギの他の部分を写した図面代用拡大写真である。
【図9】イヌの赤疹部位を写した図面代用拡大写真である。
【図10】同部位の赤疹が収まった状態を写した図面代用写真である。
【図11】赤疹が収まった部位に発毛した状態を写した図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、本発明の実施の形態について説明する。
本発明によるアレルギー皮膚炎治療剤は、半導体ナノダイヤモンド結晶面の帯電効果及び紫外線防御効果による皮膚表面の防護作用及び保水作用並びに体温励起による荷電粒子放射効果を利用した殺菌作用及び血流促進作用を利用するものである。
【0013】
[製造方法]
ナノダイヤモンドの製造方法には、炭素粉末の爆発圧縮力を利用して炭素粉末をナノダイヤモンドに変換する方法と、CB火薬を非酸化性雰囲気中で爆発させ火薬を構成する分子中のCカーボンをナノダイヤモンドに変換する方法とがあるが、何れの場合も製造時の添加物又は不純物により、活性化エネルギーレベル0.1−1.0eVを有する室温程度の温度で熱励起キャリアーが生じる半導体特性を有するものが得られる。
【0014】
[ナノダイヤモンドの結晶構造]
ナノダイヤモンドの結晶構造は、中心核がSP3ダイヤモンド構造、ついでSP2+Xの中間層及び最外層として、SP2のグラファイト層から構成され、(100)面はプラスに、(111)面はマイナスに帯電した自発電荷を有する特殊な構造を有している。この強い静電ポテンシャルにより水和層が形成され、強い保水能力が形成される。この強い保水能力が皮膚面に浸透し、皮膚のバリアー能力を高め、細菌感染から皮膚を守るとともに、痒みを軽減する。
【0015】
[ナノダイヤモンドの未知の属性:薬理作用]
このようなナノダイヤモンドを生体に接触させた場合は、荷電粒子が多く発生する。この荷電粒子による酸化又は還元反応により、殺菌効果が得られる。従って、アレルギー皮膚炎の痒みにより生じる掻破傷による滲出液及び、これによるブドウ球菌等による細菌性感染症の防御作用が期待できる。
【0016】
自発電荷を有するナノダイヤモンドをスプレイ溶液又は軟膏として皮膚疾患部に塗布した場合又は繊維布に溶融紡糸又は染色法で付着した場合は、ナノダイヤモンドは自発電荷により粒子相互が疾病患部及び繊維表面で電磁気相互作用により異方性をもって配列しやすく、患部近傍での体温加熱により個々のナノ粒子から発生した荷電粒子は積算され、大きな起電力を発生し、生体電流を生じる。この生体電池現象から生じる3−20μAの電流が患部皮膚直下の血管を広げ、血流を促進し、治療効果を高め、アレルギー皮膚炎の皮膚萎縮、皮膚線条、紫班、毛細血管拡張症を防止する。
【0017】
紫外線には免疫抑制作用があり、紫外線に対する感受性を高める薬(オクソラレン)を内服又は外用後、長波長の紫外線を照射する治療法(PUVA療法)がアトピー性皮膚炎にも効果があるとされ、治療に用いられている。しかしながら、太陽光線には人体に有害な40nm以下の短波長紫外線も多く含まれ、この波長帯域の有害紫外線の除去が必要とされている。活性化 エネルギーレベル0.1−1.0eVを有するダイヤモンドのバン
ドギャップ幅は粒子サイズにより5−4.5eVであり、波長400nm以下の紫外線をよく吸収し、生体に効果のある生体赤外線といわれる波長3−15μmに変換し、患部の血行促進,皮膚再生に有効に寄与する。
【0018】
[毒性評価]
本発明は、以上の半導体ナノダイヤモンドの保水性、殺菌効果、短波長紫外線除去、起電力による血行促進効果をアレルギー性皮膚炎に適宜応用して、その相乗効果により治療効果を発揮するものである。また、ナノダイヤモンドは略球状で、針状のCNTに見られる発癌性はなく、ダイヤモンド自体は化学的に不活性なため、生体毒性はなく、使用量での制約はない。各種の微粉末炭素材料、ナノダイヤモンド(ND),カーボンブラック(CB),カーボンナノチューブ(MWCNT&SWCNT)の細胞毒性評価が下記参考文献3及び4でなされているが、NDは最も安全性があると報告されている。
参考文献
1)爆発法ナノダイヤモンドの今 大澤映二 科学と工業 83 (4)2009 2)Crystallnity and Suraface electrostatics of diamond nanocrystals
Amanda S Barnard etal J.Mater.Chem 2007 17
3)Differential Biocompatibility of Carbon nanotubes and nanodiamonds
Amnda N Schrand etal Univ. of Dayton Diamond and Related Material
2007 (16)
4)Cytotoxiety and genotoxity of carbon nanomaterials Medical
application Webster 2008 Chapter 8 New York
【0019】
[用法・剤形]
アレルギー性皮膚炎治療剤の投与方法は、塗布など外用に限られ、剤形は、特に限定されないが、スプレー、軟膏、ローション、クリーム、ジェル、乳液など、通常、皮膚に用いられるものを挙げることができる。また、溶融紡糸又は染色法で付着した繊維布の使用も可能である。
【0020】
[用法・用量例 その1]
ナノダイヤモンド(以下、ナノダイヤという場合がある。)を純水又はグリセリン等有機溶媒を含む水溶液中に分散させて、患部にスプレイして使用する。ナノダイヤは静電ポテンシャルにより水分子を強く吸着しているため、水分子の極性ポテンシャルにより、溶液中では粒子間に電気反発力が働き凝集しない。水溶液への分散濃度は0.0005wt%から3.0wt%が有効であるが、最も好ましいのは0.001−0.1wt%である。また、ナノダイヤモンドをワセリン等の基材に練りこんで患部に塗布しても有効であるが、水溶液状態での患部への直接塗布の方が保水効果等で有効である。
【0021】
分散濃度は、ナノダイヤのサイズが小さくなるほど低濃度でその効果を発揮するので、5nm単結晶ナノダイヤ(商標NanoAmando)が最も有効である。300nmを越すと、ダイヤは、一般には凝集体構造をとり、体温程度で励起される個々のナノダイヤから出る荷電粒子は表面への拡散途中でトラップされやすく、人体に浸透する粒子の数が減少するからである。0.0005wt%以下では、患部に付着する濃度が足りず、有効性が減少し3wt%を越すと、ナノダイヤが患部の上で凝集しやすく、粒子個々の有効性
が減るので、好ましくない。使用されるナノダイヤの活性化エネルギーレベルは、0.1−1.0eVが望ましい。特に有効な活性化エネルギーレベルは0.3−0.7eVである。0.1eV以下では、20℃以下の温度でキャリアーが励起され、体温付近での放射される数が減るので好ましくなく、1.0eVを越すと体温では励起されにくくなるので、同じく放射されるキャリアーが減少し、薬効が低下する。
【0022】
[用法・容量例 その2]
ナノダイヤを上記スプレイ法にて皮膚アレルギー患部への刺激が少ない天然繊維木綿等に付着させるか、又は浸漬又は捺染染色法にて染色付着させ患部を覆うことも有効である。付着濃度としては、0.001wt%から0.1wt%が好ましい。0.001wt%以下では、荷電粒子の数が減少し、薬品としての有効性が減る。0.1wt%以上の濃度での染色又はスプレイ付着は、繊維表面でのナノダイヤの凝集度が増すため、粒子個々の有効性が減少し、経済的ではなくなる。ナノダイヤを患部にスプレイ法にて付着させた後、ダイヤ配合繊維布で覆うことは、更にその薬効を高める。
【0023】
[用法・用量例 その3]
ナノダイヤを所定の高分子繊維素材に混入し、溶融紡糸法にて繊維を作り、繊維布に加工するか、又は直接不織布に加工し、患部を覆うことも有効である。この高分子繊維素材として、2種以上の互いに溶解しない非相溶系の複合高分子素材を用いて、配合されたナノダイヤの表面エネルギーと複合高分子素材の表面エネルギーとの差で、ナノダイヤの分布がどちらかの高分子に集中するダブルパーコレーション現象を利用してナノダイヤを繊維表面に出すことが好ましい。繊維内部のナノダイヤからの励起荷電粒子は表面への浸透過程でトラップされやすく、効果が減少するからである。
【0024】
配合量としては、0.001wt%から3.0wt%までが有効である。0.001wt%以下では、励起荷電粒子の効果が減少し、薬品としての有効性が減る。3.0wt%以上では、ナノダイヤの機械的な研磨作用及び繊維強度の減少により、溶融紡糸法での繊維製造が困難になるためである。
参考文献
5) Dispersion of Fillers and the Electrical conductivity of Polymer
blends filled with Carbon black M.Sumita et al Polymer Bulletin
25. 1991
【0025】
[実施例]
次に、実施例の、ナノダイヤの皮膚アレルギー医療効果に関係する保水性、制菌性、紫外線防護特性、及び血流促進に寄与する基礎特性について説明し、患部塗布試験の結果を示す。
【0026】
[保水性テスト]
皮膚へのナノダイヤ浸透に関係する溶液の表面張力についての測定結果を図1に示す。
純水及びナノダイヤ0.1wt%配合水溶液の、20℃のCu板上での0.1g水滴の接触角を測定した。純水の接触角は20度であるが、ナノダイヤ配合水の接触角は10度でナノダイヤの自発電荷により水分子相互の吸着力が減少され、表面張力が下がっていることを示す。表面張力が下がることにより、皮膚に浸透しやすく、細胞毒性のないナノダイヤが皮膚表面に留まり、皮膚に水分を補給し、皮膚を活性化するとともに、皮膚のバリアー機能を向上させることにより、治癒に貢献していると考えられる。
【0027】
[紫外線防護特性]
図2に、0.001wt%配合繊維及び無添加繊維の集合体について、室温放置、400nm以下の紫外線カット太陽光及び太陽光を照射した場合の温度上昇の比較を、下部においた熱電対により測定した結果を温度差として示す。太陽光線は波長250nmの短波長紫外線から25000nmの長波長赤外線から構成される。この波長帯域の中で400nm以下の短波長紫外線は、皮膚に障害を与える有害紫外線であり、3−20μmの赤外線は生体赤外線と称され、皮膚に照射されると加温効果で血行を促進し、皮膚を活性化するので、治療にも使用されている。室温での温度差は0.1℃、400nmカットガラス透過太陽光では0.5℃、屋外照射光では1.6℃と差が開いている。
【0028】
半導体ナノダイヤモンドのバンド幅は5−4.5eVで、ドーピングによる活性化エネルギーレベルは0.1−1.0eVであるので、400nm以下の短波長有害紫外線を効率よく吸収し、3−20μの温熱赤外線に変換し、加温効果が増すので、皮膚に付着したナノダイヤが短波長紫外線から皮膚を防護し加温による循環系の向上に寄与していることが示される。
【0029】
[血流促進効果]
図3及び図4に、ナノダイヤ0.001及び0.005wt%配合繊維布を腕に巻いた場合の、発生電圧及び血流測定を示す。電圧は静電電位計で、血流はドップラー流量計で測定した。半導体ナノダイヤを配合した布は、配合されたダイヤが体温で励起され、個々の粒子が電位を有し、個々の粒子の電位が積算されるので、300V−500Vの電圧を発生する。この電位により、3−20μAの生体電流が流れ、血流がナノダイヤ配合率0.001wt%では10%、0.01%では約30%促進する。この血流の促進は皮膚の活性化に寄与するので、特に皮膚アレルギー治療に効果を発揮する。その他の皮膚疾患や炎症、例えば、創傷、火傷、虫さされ、水虫などの治療剤として有効であり、古い角質ピーリング剤、発毛・育毛剤としても有効である。繊維の製造法によりナノダイヤの配列が重複し、パーコレーション配列からずれるので、発生電位と配合量の関係が逆転する場合がある。
【0030】
[制菌効果]
ポリエステル繊維素材にナノダイヤを0.001 wt%配合し、溶融紡糸法により繊維を作成し、表面減量加工後、その抗菌特性を測定した。測定はJIS L1902菌液吸収法を採用し、黄色ブドウ球菌ATCC6538Pを用いて行った。静菌活性値4.1が得られ、単結晶ナノダイヤ半導体粒子からの荷電粒子放射効果による抗菌性が認められた。ナノダイヤ配合率0.005wt%では静菌活性値は5.4になる。アレルギー皮膚疾患では発疹が発生し、痒みがあるので、掻くことにより皮膚が損傷し、ブドウ菌等が付着化膿する場合が多く、治療期間を長引かせる。ナノダイヤの励起キャリアーによる抗菌性は、Agイオン抗菌繊維0.2wt%配合、抗菌値2.4に比較して4桁程度多く、
患部の痒み及び化膿防止に効果がある。浸染法では、繊維表面にナノダイヤが集中するので、抗菌特性は更に向上すると思われる。
【0031】
[皮膚アレルギー塗布テスト]
続いて、本発明のアレルギー性皮膚炎治療剤をヒトに使用した臨床試験及びイヌに使用した動物試験の結果を説明する。
【0032】
《臨床試験》
(1)70歳女性の両足フクラハギに出来たアレルギー疾病に対して、本発明のアレルギー性皮膚炎治療剤であるナノダイヤ配合液と、比較例としてステロイド軟膏及び保湿剤を塗布した場合の経過観察テストの結果を示す。
(2)各薬剤は入浴後一日一回の塗布を行った。左足には本発明に係るナノダイヤ配合液のみを塗布し、右足にはステロイド薬剤と保湿剤の混合液を塗布し、試験した。
ナノダイヤ配合液は、純水にナノダイヤを0.01wt%配合し、その配合液を霧状で患部に塗布した。ステロイド薬剤は、ステロイドとしてジブルブレドナート0.5mg/1g基剤及び保湿剤としてヒルドイド0.3wt%配合軟膏を用いた。
(3)皮膚疾患による痒みは、ナノダイヤ0.01%配合液の場合は塗布後5日で、ステロイド薬剤の場合は塗布後2日で、それぞれ収まった。
(4)皮膚疾患による発疹について、30日経過後の結果を下記に示す。
図6は、ナノダイヤ液0.01%塗布30日後の70歳女性の左足フクラハギの部分の写真であり、図7は、ステロイド剤ジブルブレドナート0.5mg/1g基材+保湿剤ヒルドイド0.3%軟膏塗布30日後の70歳女性の右足フクラハギの部分の赤発疹大の部分の写真であり、図8は、ステロイド剤ジブルブレドナート0.5mg/1g基材+保湿剤ヒルドイド0.3%軟膏塗布より30日後の70歳女性の右足フクラハギの部分の赤発疹小の部分の写真である。
[発疹の数]
ナノダイヤ0.01%配合液の場合は、図6に示すように、発疹が完全に消滅。ステロイド薬剤の場合は、図7に示すように、赤色5mm径の発疹(7×6cm2)が1−2個残存し、図8に示すように、薄赤1−2mm径の発疹(7×6cm2)が10−30個残存した。
このように、ステロイド薬剤の場合は、再発及び毛細血管拡張症と思われる赤い発疹が残りやすい。また、皮膚機能の回復が充分でなく、衣服等の摩擦によると思われる発疹及び痒みの再発が多く認められた。
【0033】
《動物試験》
(1)食品アレルギーと診断され、発疹のある犬(柴犬メス5歳)に対して、ステロイド内用薬剤としてインベスタンを1日1錠(夕食後)用い、外用薬としてナノダイヤ0.01%配合液を発疹部位にスプレイ塗布した。
(2)結果
図9に示した赤色発疹は、図10に示すように、2日後に収まり、患部を痒みのために掻く動作は収まった。図11に示すように、30日後には、発疹が消滅した部位に発毛した。本発明のアレルギー性皮膚炎治療剤とステロイド薬剤との相乗作用で早期の治療効果が認められた。
【0034】
以上の結果より、本発明のアレルギー性皮膚炎治療剤は、ステロイド薬剤を使用せずとも、又は使用量を減量しても、ヒト又は動物において抗アレルギー活性を有し、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性皮膚炎に有効な治療剤であることが明らかである。さらに、本発明の皮膚治療剤は細胞毒性がないため、ステロイド剤に比較して副作用がなく、併用に際して使用方法及び期間に特別の制約はない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体特性を有するナノダイヤモンドを有効成分とするアレルギー性皮膚炎治療剤。
【請求項2】
ナノダイヤモンドは、活性化エネルギーレベル0.1−1.0eVを有するものである請求項1に記載のアレルギー性皮膚炎治療剤。
【請求項3】
ナノダイヤモンドは、5−300nmの粒子サイズを有するものである請求項1に記載のアレルギー性皮膚炎治療剤。
【請求項4】
ナノダイヤモンドを溶液又は油脂に分散混合させてなる請求項1、2又は3に記載のアレルギー性皮膚炎治療剤。
【請求項5】
ナノダイヤモンド混合溶液又は混合ゲルは、母材に対してナノダイヤモンドを重量比で0.0005wt%から3.0wt%配合したものである請求項4に記載のアレルギー性皮膚炎治療剤。
【請求項6】
ナノダイヤモンドをスプレイ法、捺染染色法又は溶融紡糸法により繊維布に付着させてなる請求項1、2又は3に記載のアレルギー性皮膚炎治療剤。
【請求項7】
ナノダイヤモンドを配合した繊維布は、母材に対してナノダイヤモンドを重量比で0.0005wt%から3.0wt%配合したものである請求項6に記載のアレルギー性皮膚炎治療剤。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−219026(P2012−219026A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83408(P2011−83408)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(591178698)
【出願人】(510088446)ブラバス・ジャパン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】