アレルギー疾患を処置する方法および組成物
本発明では、ヒトTSLP受容体を特異的に認識し、それと拮抗する抗体、およびこれらの抗体を用いてTSLPシグナリングが介在する疾患または障害を処置または改善する方法を開示している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
サイトカインおよび免疫細胞は、特異的な生理学的機構または経路、例えば様々な炎症性障害に至る経路に介在する。ヒト胸腺間質性リンホポエチン(TSLP)は、ヒト上皮細胞から産生されるIL−7様サイトカインである。それは、B細胞の分化を促進し、また胸腺細胞および成熟T細胞の両方を共刺激し得る。TSLPは、ヒトCD11c+樹状細胞(DC)上の特異的ヘテロ二量体受容体に結合する。受容体ヘテロ二量体は、共通のガンマ様受容体鎖(TSLP受容体;TSLPR)およびIL−7R−α鎖により構成される。例えば、Tonozuka et al., Cytogenet. Cell Genet. 93:23-25, 2001;Pandey et al., Nat. Immunol. 1:59-64, 2000;L.S.Park et al., J. Exp. Med. 192:659-670, 2000 および Reche et al., J. Immunol. 167:336-343, 2001 参照。受容体へリガンドが結合することにより、DCによるTH2−誘引性ケモカイン類、TARC(胸腺および活性化調節ケモカイン)およびMDC(マクロファージ由来ケモカイン)の分泌が誘導される。さらに、TSLPはまた、強力なDC活性化、ナイーブCD4+T細胞拡大、および後続のTH2表現型への分極化、向アレルギー性サイトカイン類インターロイキン4(IL−4)、IL−5、IL−13および腫瘍壊死因子−αの産生を誘導する。
【背景技術】
【0002】
また、TSLPシグナリングにより、Stat5転写因子の活性化がもたらされることも見出された。さらに、急性および慢性の両アトピー性皮膚炎患者らは、皮膚病変においてTSLPを過剰発現することが報告されていることから、TSLP発現がインビボでのアレルギー性炎症に関与していることが推察される。皮膚ケラチノサイトのほかに、高レベルのTSLP発現が、気管支上皮細胞、平滑筋および肺線維芽細胞でも見い出されることから、呼吸器アレルギー適応症におけるTSLPについての潜在的役割についても確認されている。さらに、IgE活性化マスト細胞は、非常に高いレベルのTSLPを発現するもので、TH2表現型の維持に関与し得る機構をもたらす。
【0003】
西欧諸国における人口の約20%は、喘息、鼻炎、アトピー性皮膚炎および食物アレルギーを含む炎症性障害、例えばアレルギー疾患に罹患している。アトピー性皮膚炎患者の50%〜80%は、喘息またはアレルギー性鼻炎を発病または発症している。現在までのところ、アレルギー誘発性喘息、アトピー性皮膚炎、およびアレルギー性鼻炎には治療法が無い。例えば喘息にはベータ−2アドレナリン受容体アンタゴニスト、アトピー性皮膚炎にはエリデル(Elidel)、およびアレルギー性鼻炎にはH1−抗ヒスタミンといった現行の処置は、対症療法として使用されている。したがって、当業界ではこれらの炎症性障害、特にアレルギー性炎症を処置するより良い治療法に対する要望が高まっている。本発明は、この問題および他の問題に取り組むものである。
【発明の概要】
【0004】
発明の要約
本発明の一態様は、標的タンパク質ヒト胸腺間質性リンホポエチン受容体(hTSLPR)に特異的な抗原結合領域を伴う単離されたヒトまたはヒト化抗体またはその機能性フラグメントに関するものであり、抗体またはその機能性フラグメントはhTSLPRに結合する。一関連実施態様において、hTSLPRへの結合は、少なくとも炎症性メディエーター放出を阻止する細胞表面hTSLP受容体結合により決定される。
【0005】
さらなる実施態様において、本発明は、抗体またはその機能性フラグメントの単離抗原結合領域を提供する。ある種の実施態様では、単離された抗原結合領域は、配列番号1に示されたアミノ酸配列およびその保存的変異型を有するCDRH1領域を含む。本明細書記載の保存的変異型は、同定されたアミノ酸配列のいずれかにおけるアミノ酸残基を含む。一関連実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号2に示されたアミノ酸配列およびその保存的変異型を有するCDRH2領域である。別の関連実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号3に示されたアミノ酸配列およびその保存的変異型を有するCDRH3領域である。
【0006】
別の実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号4に示されたアミノ酸配列およびその保存的変異型を有するCDRL1領域である。さらに別の関連実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号5に示されたアミノ酸配列およびその保存的変異型を有するCDRL2領域である。さらに別の関連実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号6に示されたアミノ酸配列およびその保存的変異型を有するCDRL3領域である。
【0007】
別の実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号7に示された可変領域アミノ酸配列、および配列番号7のCDR領域とCDR領域における少なくとも60、70、80、90または95パーセントの配列同一性を有する配列を有する重鎖である。一関連実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号8に示された可変領域アミノ酸配列、および配列番号8のCDR領域とCDR領域における少なくとも60、70、80、90または95パーセントの配列同一性を有する配列を有する軽鎖である。
【0008】
別の態様において、本発明は、hTSLPRに対するモノクローナルアンタゴニスト抗体を提供する。本発明の抗TSLPR抗体の中には、配列番号7の重鎖可変領域配列および配列番号8の軽鎖可変領域配列を含むレファレンス抗体の場合と同じ結合特異性を有するものもある。これらの抗体としては、レファレンス抗体の場合と同じ結合特異性を呈する完全ヒト抗体も挙げられる。抗体の中には、配列番号1、2または3の重鎖相補性決定領域(CDR)配列および/または配列番号4、5または6の軽鎖CDR配列を有するものがある。
【0009】
抗hTSLPR抗体の中には、それぞれ配列番号1、配列番号2および配列番号3である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、およびそれぞれ配列番号4、配列番号5および配列番号6である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を有するものもある。本発明の他の抗体の中には、配列番号7と少なくとも85%同一である重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号8と少なくとも85%同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列を含むものもある。本発明の他の抗hTSLPR抗体の中には、配列番号7と同一である重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号8と同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列をヒトIgG定常領域(例、IgG1またはIgG4)と共に有するものもある。
【0010】
本発明の抗hTSLPR抗体としては、マウス抗体もある。他の抗体としてはキメラ抗体もある。キメラ抗体の中には、ヒト重鎖定常領域およびヒト軽鎖定常領域を有するものもある。本発明の他の抗hTSLPR抗体としては、ヒト化抗体もある。本発明の他の抗hTSLPR抗体としては、配列番号7の重鎖可変領域配列および配列番号8の軽鎖可変領域配列を含む抗体と同じ結合特異性を呈する完全ヒト抗体もある。本発明はまた、1本鎖抗体、例えばFabフラグメントを提供する。抗hTSLPR抗体の中には、IgG1アイソタイプに属するものもある。他の抗体の中には、IgG4アイソタイプに属するものもある。
【0011】
別の態様において、本発明は、本発明抗hTSLPR抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含むポリペプチドをコード化する単離または組換えポリヌクレオチド(例、DNA)を提供する。例えば、ポリヌクレオチドは、それぞれ上記で示した重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む抗体重鎖をコード化し得る。ポリヌクレオチドはまた、それぞれ上記で示したCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む抗体軽鎖をコード化し得る。本発明のポリヌクレオチドには、配列番号7の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟重鎖可変領域配列をコード化するものもある。他のポリヌクレオチドには、配列番号8の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟軽鎖可変領域配列をコード化するものもある。これらのポリヌクレオチドの中には、配列番号7の成熟領域と同一である成熟重鎖可変領域配列または配列番号8の成熟領域と同一である成熟軽鎖可変領域配列をコード化するものもある。本発明の重および軽鎖をコード化するポリヌクレオチドの典型的配列は、配列番号13および14をそれぞれ含む。
【0012】
別の態様において、本発明は、(1)本発明の抗hTSLPR抗体の重鎖をコード化する組換えDNAセグメント、および(2)抗体の軽鎖をコード化する第2の組換えDNAセグメントをもつ単離宿主細胞を提供する。宿主細胞の中には、組換えDNAセグメントが、第1および第2プロモーターとそれぞれ機能し得るように結合されており、宿主細胞で発現され得る場合もある。これらの宿主細胞の中には、個々に重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列(例、配列番号1、2および3)、および個々に軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列(例、配列番号4、5および6)を有するモノクローナル抗体を発現するものもある。他の宿主細胞には、配列番号7の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟重鎖可変領域配列、および配列番号8の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟軽鎖可変領域配列を含む抗hTSLPR抗体を発現するものもある。これらの宿主細胞の中には、配列番号7の成熟領域と同一である成熟重鎖可変領域配列および配列番号8の成熟領域と同一である成熟軽鎖可変領域配列を含む抗hTSLPR抗体を発現するものもある。宿主細胞には、ヒト以外の哺乳類細胞(例、CHO、NS0、SP2/0)も含まれる。
【0013】
別の態様において、本発明は、対象、例えばヒト患者における炎症性疾患または障害の処置方法を提供する。これらの方法では、抗hTSLPR抗体の有効量を含む医薬組成物を対象に投与する。典型的には、抗hTSLPR抗体は、配列番号7の重鎖可変領域配列および配列番号8の軽鎖可変領域配列を含む抗hTSLPR抗体の場合と同じ結合特異性を有する。これらの治療方法の中には、完全ヒト抗体を使用するものもある。方法によっては、抗TSLPR抗体が、それぞれ配列番号1、2および3である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、およびそれぞれ配列番号4、5および6である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む場合もある。方法によっては、使用する抗hTSLPR抗体が、配列番号7の成熟領域と同一である成熟重鎖可変領域配列、および配列番号8の成熟領域と同一である成熟軽鎖可変領域配列を含む場合もある。上記方法の中には、アレルギー性炎症疾患に苦しむ対象の処置を目的とするものもある。処置が奏功し得るアレルギー性炎症疾患の例には、アトピー性皮膚炎、喘息またはアレルギー性鼻炎がある。
【0014】
さらに別の実施態様において、本発明は、抗体またはその機能性フラグメントの単離抗原結合領域を提供する。ある種の実施態様では、単離抗原結合領域は、配列番号1に示されたアミノ酸配列、またはその保存的変異型を有するCDRH1領域を含む。本明細書に記載されている、保存的変異型は、同定されたアミノ酸配列のいずれかにおけるアミノ酸残基を含む。関連実施態様では、単離抗原結合領域は、配列番号2に示されたアミノ酸配列、またはその保存的変異型を有するCDRH2領域である。別の関連実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号3に示されたアミノ酸配列、またはその保存的変異型を有するCDRH3領域である。
【0015】
別の実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号4に示されたアミノ酸配列、またはその保存的変異型を有するCDRL1領域である。さらに別の関連実施態様では、単離抗原結合領域は、配列番号5に示されたアミノ酸配列、またはその保存的変異型を有するCDRL2領域である。さらに別の関連実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号6に示されたアミノ酸配列、またはその保存的変異型を有するCDRL3領域である。
【0016】
別の実施態様では、単離抗原結合領域は、配列番号7に示された可変領域アミノ酸配列、および配列番号7のCDR領域とCDR領域において少なくとも60、70、80、90または95パーセントの配列同一性を有する配列を有する重鎖である。一関連実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号8に示された可変領域アミノ酸配列、および配列番号8のCDR領域とCDR領域において少なくとも60、70、80、90または95パーセントの配列同一性を有する配列を有する軽鎖である。
【0017】
別の態様において、本発明は、hTSLPRに対するモノクローナルアンタゴニスト抗体を提供する。本発明の抗TSLPR抗体の中には、配列番号7の重鎖可変領域および配列番号8の軽鎖可変領域を含むレファレンス抗体の場合と同じ結合特異性を有するものもある。これらの抗体の中には、レファレンス抗体の場合と同じ結合特異性を呈する完全ヒト抗体もある。
【0018】
別の態様において、本発明は、本発明の抗hTSLPR抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含むポリペプチドをコード化する単離または組換えポリヌクレオチド(例、DNA)を提供する。例えば、ポリヌクレオチドは、それぞれ上記で示した重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む抗体重鎖をコード化し得る。ポリヌクレオチドはまた、それぞれ上記で示したCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む抗体軽鎖をコード化し得る。本発明のポリヌクレオチドには、配列番号7の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟重鎖可変領域配列をコード化するものもある。他のポリヌクレオチドには、配列番号8の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟軽鎖可変領域配列をコード化するものもある。これらのポリヌクレオチドの中には、配列番号7の成熟領域と同一である成熟重鎖可変領域配列または配列番号8の成熟領域と同一である成熟軽鎖可変領域配列をコード化するものもある。
【0019】
別の態様において、本発明は、(1)本発明の抗hTSLPR抗体の重鎖をコード化する組換えDNAセグメント、および(2)抗体の軽鎖をコード化する第2組換えDNAセグメントをもつ単離宿主細胞を提供する。宿主細胞によっては、組換えDNAセグメントが、第1および第2プロモーターとそれぞれ機能し得るように結合されており、宿主細胞で発現され得る場合もある。これらの宿主細胞の中には、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列(例、配列番号1、2および3)、および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列(例、配列番号4、5および6)をそれぞれ有するモノクローナル抗体を発現するものもある。他の宿主細胞には、配列番号7の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟重鎖可変領域配列、および配列番号8の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟軽鎖可変領域配列を含む抗hTSLPR抗体を発現するものもある。これらの宿主細胞の中には、配列番号7の成熟領域と同一である成熟重鎖可変領域配列および配列番号8の成熟領域と同一である成熟軽鎖可変領域配列を含む抗hTSLPR抗体を発現するものもある。宿主細胞には、ヒト以外の哺乳類細胞(例、CHO、NS0、SP2/0)も含まれる。
【0020】
別の態様において、本発明は、対象、例えばヒト患者における炎症性疾患または障害の処置方法を提供する。これらの方法では、抗hTSLPR抗体の有効量を含む医薬組成物を対象に投与する。典型的には、抗hTSLPR抗体は、配列番号7の重鎖可変領域配列および配列番号8の軽鎖可変領域配列を含む抗hTSLPR抗体および/または配列番号9の重鎖および配列番号10の軽鎖を含む単離抗体の場合と同じ結合特異性を有する。これらの治療方法の中には、完全ヒト抗体を使用する場合もある。これらの方法の中には、アレルギー性炎症疾患に苦しむ対象の処置を指向するものもある。処置に応答し得るアレルギー性炎症疾患の例には、アトピー性皮膚炎、喘息またはアレルギー性鼻炎がある。
【0021】
本発明は、他の態様において、配列番号9の重鎖および配列番号10の軽鎖を含む(から成る)単離抗hTSLPR抗体を提供する。本発明はまた、配列番号9の重鎖および配列番号10の軽鎖を含む(から成る)抗体を、一般に容認された医薬業務上必要とされている公知の医薬上許容される担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【0022】
さらに別の実施態様において、本発明は、抗体またはそのフラグメントである第1成分および第2アミノ酸配列を有する第2成分から成る免疫コンジュゲートを提供する。例えば、免疫コンジュゲートは細胞毒素であるか、または免疫コンジュゲートは、hTSLPRとは異なる標的についての結合特異性を有する結合タンパク質または抗体である。
【0023】
別の実施態様において、本発明は、先に記載した本発明の抗体またはその抗体フラグメント(例、配列番号9および10の抗体)を有するキットを提供する。実施態様によっては、キットは、さらに医薬上許容される担体または賦形剤を含む場合もある。他の関連実施態様では、キット中の抗体は単位用量で存在する。さらに別の関連実施態様において、キットは、対象への投与に関する使用説明書を含む。
【0024】
明細書の残りの部分および請求の範囲を参照することにより、本発明の性質および利点に対する理解がさらに深められ得るはずである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ELISAにおけるヒトTSLPRへのNV163−1Fab’およびNV164−1−Fab’の結合。ELISAプレートをhTSLPRでコーティングした。プレートを、抗hTSLPR Fab’、HRP−コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2特異抗体、およびTMB基質と連続的にインキュベーションした。NV163−1−Fab’およびNV164−1−Fab’を、示されている通り2.1×10−14〜3.3×10−8Mの濃度範囲で使用した。NV164−1は、配列番号7および8の可変領域を含む。NV164−1−IgG1は、配列番号9の重鎖および配列番号10の軽鎖により構成されており、NV164−1は本発明の一具体例である。NV161−1は、配列番号21および配列番号22の可変領域を含む。
【図2】ELISAにおけるヒトTSLPR、マウスTSLPRおよびヒトIL7RαへのNV163−1−Fab’およびNV164−1−Fab’の結合特異性。ELISAプレートを、hTSLPR、mTSLPRまたはhILRaでコーティングした。プレートを、抗hTSLPR Fab’、次いでHRP−コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2特異抗体およびTMB基質とインキュベーションした。Nv163−1−Fab’およびnv164−1−Fab’を、示されている通り2.1×10−14〜3.3×10−8Mの濃度範囲で使用した。
【図3】ルシフェラーゼリポーター遺伝子検定法におけるNV163−1−Fab’およびNV164−1−Fab’のアンタゴニスト活性。hTSLPR/hIL7Rα/Stat5−Lucを安定して過剰発現するBa/F3細胞を、Fab’とプレインキュベーションし、次いで1ng/mlのヒトTSLPで刺激した。6時間インキュベーション後、Bright-Glo を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。NV163−1−Fab’およびNV164−1−Fab’を、示されている通り1.7×10−13〜3.0×10−8Mの濃度範囲で使用した。この図は、多数の個々の実験の代表的なものである。IC50は、NV163−1−Fab’については2.7±1.9nMであり、NV164−1−Fab’については4.0±2.1nMである(n=4)。
【図4】ELISAにおけるヒトTSLPR、マウスTSLPRおよびヒトIL7RαへのNVP164−1−IgG1の結合特異性。ELISAプレートを、hTSLPR、mTSLPRまたはhILRαでコーティングした。プレートを、抗hTSLPR、NVP−164−IgG1、次いでHRP−コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2特異抗体およびTMB基質とインキュベーションした。NVP164−1−IgG1を、示されている通り1.2×10−17〜1.2×10−7Mの濃度範囲で使用した。
【図5】ELISAにおけるヒトおよびカニクイザルTSLPRへのNVP164−1−IgG1の交差反応性。ELISAプレートを、hTSLPRまたはcTSLPRでコーティングした。プレートを、抗hTSLPR、NVP164−1−IgG1、次いでHRP−コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2特異抗体およびTMB基質とインキュベーションした。NVP164−1−IgG1を、示されている通り2.1×10−14〜1.0×10−7Mの濃度範囲で使用した。
【図6】ELISAにおけるヒトTSLPRへのNV164−1−IgG1およびNV115−3B−IgG1の結合。ELISAプレートを、hTSLPRでコーティングした。プレートを、NV164−1−IgG1またはNV115−3B−IgG1、次いでHRP−コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2特異抗体およびTMB基質とインキュベーションした。NV164−1−IgG1およびNV115−3B−IgG1を、示されている通り2.1×10−14〜1.0×10−7Mの濃度範囲で使用した。
【図7】ルシフェラーゼリポーター遺伝子検定法におけるNV164−1−IgG1およびNV115−3B−IgG1のアンタゴニスト活性。hTSLPR/hIL7Rα/Stat5−Lucを安定して過剰発現するBa/F3細胞を、抗体とプレインキュベーションし、次いで1ng/mlの組換えヒトTSLPで刺激した。6時間インキュベーション後、Bright-Glo(Promega)を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。抗体を、示されている通り1.7×10−13〜3.0×10−8Mの濃度範囲で使用した。このグラフは、個々の代表的実験の1つから作成されている。IC50は、NV164−1−IgG1については221±101pM(n=8)であり、NV115−3B−IgG1については126±72pMである(n=6)。
【図8】ルシフェラーゼリポーター遺伝子検定法における天然供給源TSLPに対するNV164−1−IgG1およびNV115−3B−IgG1のアンタゴニスト活性。hTSLPR/hIL7Ra/Stat5−Lucを安定して過剰発現するBa/F3細胞を、抗体とプレインキュベーションし、次いで1ng/mlの天然ヒトTSLPで刺激した。6時間インキュベーション後、Bright-Gloを用いてルシフェラーゼ活性を測定した。抗体を、示されている通り6.7×10−14〜6.7×10−9Mの濃度範囲で使用した。IC50は、NV164−1−IgG1については40±10pMであり、NV115−3B−IgG1については50±25pMである。
【図9】1次ヒト単球からのTARC分泌の阻害。ヒト血液を健康な成人ボランティアから採取した。PBMCをフィコール密度遠心分離により単離した。単球単離キットII(Miltenyi Biotec.)を用いて単球を単離した。新たに単離した単球を抗体と20分間インキュベーションし、次いで1ng/mlのヒトTSLPで24時間処理した。TARCの分泌量をサンドイッチELISAにより測定した。抗体を、示されている通り6.7×10−13〜6.7×10−8Mの濃度範囲で使用した。IC50は、NV164−1−IgG1については11±10pMであり、NV115−3B−IgG1については10±4pMである。
【図10】単一用量カニクイザル薬物動態データ。抗体の血中残存量を競合ELISAにより測定した。遊離抗体力価の増加が後の時点で観察されていることから、標識抗体は抗イディオタイプ抗体により結合されているため、ELISAプレートへの結合には利用され得なかったことが推察される。したがって、これは免疫原性を示唆している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な記載
本発明は、一つにはヒトTSLPRに対するアンタゴニスト抗体の本発明者らによる開発に基づいている。インビトロで作製されたマウスまたはキメラ抗hTSLPR抗体で生成される抗hTSLPR抗体は、TSLPシグナリングにより伝達される活性、例えばTSLP伝達による細胞増殖を阻害し得ることが見出された。すなわち、これらの抗体は、TSLPシグナリング活性により伝達されるかまたはそれらに随伴する多数の疾患または障害、例えばアトピー性皮膚炎および喘息などのアレルギー性炎症疾患に対する治療剤または予防剤として有用である。以下の項では、本発明組成物の製造および使用、および本発明方法の実施に関するガイダンスを提供する。
【0027】
I.定義
特に断らなければ、本明細書で使用されている技術的および科学的用語は全て、当業者が一般的に理解しているものと同じ意味を有するものとする。次の参考文献は、当業者に対し、本発明で使用されている用語の多くの一般的定義を提供する:Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology, Smith et al.(編), Oxford University Press (改訂版, 2000); Dictionary of Microbiology and Molecular Biology, Singleton et al. (編),John Wiley & Sons (3PrdP版, 2002); および A Dictionary of Biology (Oxford Paperback Reference),Martin および Hine(編),Oxford University Press (4PthP版, 2000)。さらに、本発明の実践に際し読者の助けとなるように以下に定義を記す。
【0028】
本発明をさらに理解し易くするため、まずある一定の用語について定義する。さらに詳細な記載全体を通して追加的定義を示す。
【0029】
「免疫応答」の語は、侵入性病原体、病原体が感染した細胞または組織、癌性細胞、または自己免疫性または病的炎症の場合には、正常なヒト細胞または組織を選択的に損傷するか、破壊するか、または人体から排除する例えばリンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、および上記細胞または肝臓により産生される可溶性高分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の作用をいう。
【0030】
「シグナル伝達経路」は、細胞の一部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達においてある一定の役割を演じる様々なシグナル伝達分子間における生化学的関係をいう。
【0031】
本明細書でいう「抗体」の語は、抗体全体およびその抗原結合フラグメント(すなわち、「抗原結合部分」)または1本鎖を包含する。天然に存する「抗体」は、ジスルフィド結合により相互連結された少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書では略してVH)および重鎖定常領域により構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3により構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書では略してVL)および軽鎖定常領域により構成される。軽鎖定常領域は、1ドメイン、CLにより構成される。さらにVHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存性の高い領域が散在した、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域に細別され得る。各VHおよびVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4という順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDRおよび4つのFRにより構成される。重および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合に介在し得る。
【0032】
本明細書で使用されている抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗原部分」)の語は、抗原(例、TSLPR)への特異的結合能力を保持している抗体の完全長または1つまたはそれ以上のフラグメントをいう。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のフラグメントにより遂行され得ることが立証された。抗体の「抗原結合部分」という語の範囲内に含まれる結合フラグメントの例には、VL、VH、CLおよびCH1ドメインから成る1価フラグメントであるFabフラグメント、ヒンジ領域がジスルフィド架橋により結合された2つのFabフラグメントを含む2価フラグメントであるF(ab)2フラグメント、VHおよびCH1ドメインから成るFdフラグメント、抗体の単一アームのVLおよびVHドメインから成るFvフラグメント、VHドメインから成るdAbフラグメント(Ward et al., 1089 Nature 341:544-546)および単離された相補性決定領域(CDR)がある。
【0033】
さらに、Fvフラグメントの2つのドメインVLおよびVHは、別々の遺伝子によりコードされるが、それらは、VLおよびVH領域が対合して1価分子を形成している単一タンパク質鎖(1本鎖Fv(scFv)としても知られている;例えば、Bird et al., 1988 Science 242:423-426;および Huston et al., 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883 参照)としてそれらを構成させ得る合成リンカーにより、組換え技法を用いて接合され得る。上記1本鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合部分」という語の範囲内に含まれるものとする。これらの抗体フラグメントは、当業者に周知の慣用的技術を用いて得られ、インタクト抗体の場合と同様の実用性についてフラグメントをスクリーニングにかける。
【0034】
本明細書で使用されている「単離抗体」の語は、抗原特異性が異なる他の抗体を実質的に含まない抗体をいう(例、TSLPRと特異的に結合する単離抗体は、TSLPR以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、TSLPRと特異的に結合する単離抗体は、他の抗原、例えば他の種からのTSLPR分子との交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は、他の細胞性材料および/または化学物質を実質的に含まないものであり得る。
【0035】
本明細書で使用されている「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」の語は、単一分子組成の抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、特定の一エピトープについて単一結合特異性および親和性を示す。
【0036】
本明細書で使用されている「ヒト抗体」の語は、フレームワークおよびCDR領域が両方ともヒト起源の配列から誘導された可変領域を有する抗体を含むものとする。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もまた上記ヒト配列、例えばヒト生殖細胞系配列、またはヒト生殖細胞系配列の突然変異体から誘導される。本発明のヒト抗体は、ヒト配列によりコード化されないアミノ酸残基(例、インビトロでのランダムまたは位置指定突然変異導入により導入された突然変異またはインビボでの体細胞突然変異)を含み得る。
【0037】
「ヒトモノクローナル抗体」の語は、フレームワークおよびCDR領域が両方ともヒト配列に由来する可変領域を有する単一結合特異性を示す抗体をいう。一実施態様において、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合されたヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するヒト以外のトランスジェニック動物、例えばトランスジェニックマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマにより産生される。
【0038】
本明細書で使用されている「組換えヒト抗体」の語は、組換え手段により調製、発現、作製または単離されたヒト抗体、例えばヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックまたはトランスクロモソーマルである動物(例、マウス)またはそこから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子の全部または一部分の配列のスプライシングを含む他の手段により調製、発現、作製または単離された抗体を全て包含する。上記組換えヒト抗体は、フレームワークおよびCDR領域がヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列から誘導された可変領域を有する。しかしながら、ある種の実施態様では、上記組換えヒト抗体に対し、インビトロ突然変異が誘発(またはヒトIg配列についてトランスジェニックである動物を使用するとき、インビボ体細胞突然変異が誘発)され得るため、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VHおよびVL配列に由来し、関連したものでありながら、インビボでのヒト抗体生殖細胞系レパートリー内に天然には存在し得ない配列である。
【0039】
「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるかまたは改変されたクラス、エフェクター機能および/または種の定常領域、またはキメラ抗体に新しい特性を付与する全く異なる分子、例えば酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬剤などに結合されるように、定常領域またはその一部分が改変、置換または交換されているか、または(b)可変領域またはその一部分が、異なるかまたは改変された抗原特異性を有する可変領域により改変、置換または交換されている抗体分子である。例えば、下記実施例で示す通り、マウス抗hTSLPR抗体は、その定常領域をヒト免疫グロブリンからの定常領域と置き換えることにより修飾され得る。ヒト定常領域により置換されているため、キメラ抗体は、元のマウス抗体と比べてヒトでの抗原性が低いながらもヒトTSLPRを認識する際にその特異性を保持し得る。
【0040】
「ヒト化」抗体は、ヒトでの免疫原性が低いながらも非ヒト抗体の反応性を保持している抗体である。これは、例えば、非ヒトCDR領域を保持し、抗体の残りの部分をそれらのヒト対応物質(すなわち、定常領域および可変領域のフレームワーク部分)と置換することにより達成され得る。例えば、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855, 1984; Morrison および Oi, Adv. Immunol., 44:65-92, 1988; Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536, 1988; Padlan, Molec. Immun., 28:489-498, 1991;および Padlan, Molec. Immun., 31:169-217, 1994 参照。ヒト遺伝子工学技術の他の例には米国特許第5766886号で開示された Xoma 技術があるが、これに限定されるわけではない。
【0041】
本明細書で使用されている「ヒューマニアリング(Humaneering)」の語は、非ヒト抗体を遺伝子操作されたヒト抗体に変換する方法をいう(例えば、KaloBios の Humaneering(登録商標)技術参照)。
【0042】
本明細書で使用されている「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子により提供される抗体クラス(例、IgM、IgE、IgG、例えばIgG1またはIgG4)をいう。
【0043】
「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という表現を、本明細書では「抗原に特異的に結合する抗体」という表現と互換的に使用する。
【0044】
本明細書で使用されている、「ヒトTSLPRと特異的に結合する」抗体とは、200×10−12Mまたはそれ未満、150×10−12Mまたはそれ未満、または100×10−12Mまたはそれ未満のKDでヒトTSLPRに結合する抗体をいう。
【0045】
本明細書で使用されている「結合特異性」の語は、唯一の抗原決定基と反応する個々の抗体結合部位の能力をいう。抗体結合部位は、分子のFab部分に位置し、重および軽鎖の超可変領域から構築される。抗体の結合親和力は、単一抗原決定基と単一抗体結合部位間の反応の強度である。それは、抗原決定基と抗体結合部位間ではたらく引力と斥力の合計である。親和力は、抗原−抗体反応を説明する平衡定数である。
【0046】
2物体間の特異的結合とは、少なくとも1×107M−1、108M−1、109M−1または1010M−1の平衡定数(KA)での結合を意味する。抗体(例、抗hTSLPR抗体)に「特異的に(または選択的に)結合する」という表現は、タンパク質および他の生物製剤の異種集団におけるコグネイト抗原(例、ヒトTSLPRポリペプチド)の存在の決め手となる結合反応をいう。上記で示した平衡定数(KA)に加えて、本発明の抗hTSLPR抗体はまた、典型的には約1×10−2s−1、1×10−3s−1、1×10−4s−1またはそれ未満の解離定数(Kd)を有し、非特異的抗原(例、BSA)への結合に関するその親和力の少なくとも2倍である親和力でヒトTSLPRに結合する。「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という表現は、「抗原に特異的に結合する抗体」なる表現と本明細書では互換的に使用される。
【0047】
「エピトープ」の語は、抗体と特異的に結合し得るタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの化学的活性を示す表面分子群から成り、通常は特異的な3次元構造特性および特異的電荷特性を有する。コンホメーション的および非コンホメーション的エピトープは、後者ではなく前者への結合が変性溶媒の存在下では失われるという点で区別される。
【0048】
「核酸」の語は、本明細書では「ポリヌクレオチド」の語と互換的に使用され、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそのポリマーの1本鎖または2本鎖形態をいう。この語は、合成的、天然に存するもの、および非天然のものであり、レファレンス核酸と類似した結合特性を有し、レファレンスヌクレオチドと類似した形で代謝される、既知ヌクレオチド類似体または修飾されたバックボーン残基または結合を含む核酸を包含する。上記類似体の例には、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)があるが、限定するわけではない。
【0049】
特に断らなければ、特定核酸配列はまた、その保存的修飾変異型(例、縮重コドン置換形態)および相補的配列、並びに明確に示された配列を無条件で包含する。具体的には、下記で詳述しているとおり、縮重コドン置換は、1個またはそれ以上の選択された(または全ての)コドンの第3位を混合塩基および/またはデオキシイノシン残基により置き換えた配列を作製することにより達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081, 1991; Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608, 1985; および Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98, 1994)。
【0050】
「アミノ酸」の語は、天然および合成アミノ酸、並びに天然に存するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物質を包含する。天然アミノ酸は、遺伝コードによりコード化されるもの、並びに後で修飾されるそれらのアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメートおよびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルホスホニウムに結合しているアルファ炭素を有する化合物をいう。上記類似体は、修飾R基(例、ノルロイシン)または修飾ペプチドバックボーンを有するが、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。アミノ酸模倣物質は、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存するアミノ酸と同様に機能する化学的化合物をいう。
【0051】
本明細書で互換的に使用されている、「ポリペプチド」および「タンパク質」の語は、アミノ酸残基の重合体をいう。これらの語は、1個またはそれ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的化学模倣物質であるアミノ酸重合体、並びに天然アミノ酸重合体および非天然アミノ酸重合体に適用される。特に断らなければ、特定ポリペプチド配列はまた、無条件でその保存的修飾変異型も包含する。
【0052】
「保存的修飾変異型」の語は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用される。特定核酸配列に関して述べると、保存的修飾変異型とは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコード化する核酸、または核酸がアミノ酸配列をコード化しない場合には、本質的に同一の配列をいう。遺伝コードの縮重故に、所定のタンパク質をコード化する機能的に同一の核酸は多数存在する。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全てアミノ酸アラニンをコード化する。すなわち、アラニンがコドンにより特定されているどの位置においても、コドンは、コード化されたポリペプチドを改変することなく、示された対応するコドンのいずれかに改変され得る。上記核酸変異が「サイレント変異」であり、1種の保存的修飾変異である。また、ポリペプチドをコード化する本明細書における核酸配列はいずれも、核酸のあらゆる可能なサイレント変異を表す。当業者であれば、核酸における各コドン(ただし、通常メチオニンについての唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンについての唯一のコドンであるTGGを除く)に修飾を加えることにより、機能的に同一の分子が得られることを認めるはずである。したがって、ポリペプチドをコード化する核酸の各サイレント変異は表された各配列において潜在的なものである。
【0053】
ポリペプチド配列についての「保存的修飾変異型」は、ポリペプチド配列に対する個々の置換、欠失または付加を含むもので、アミノ酸が化学的に酷似したアミノ酸により置換されている。機能的に酷似したアミノ酸を示す同類置換表は当業界では周知である。上記の保存的修飾変異型は、さらに本発明の多型変異型、種間相同体および対立遺伝子も包含する。以下の8群は、互いに同類置換関係にあるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、トレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)(例、Creighton, Protein (1984)参照)。
【0054】
2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列という状況における「同一の」または「同一性」パーセントなる語は、同一である2つまたはそれ以上の配列または部分配列をいう。下記の配列比較アルゴリズムの一つを用いるか、または手動によるアラインメントおよび視覚検査により測定される比較ウインドウ全体、または指定領域における最大対応性について比較およびアラインメントを行ったとき、2つの配列が同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドを特定されたパーセンテージで有する場合(すなわち、特定領域全体において、または特定されていない場合、配列全体において60%の同一性、所望により65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%の同一性)、その2配列は「実質的に同一」である。所望により、同一性は、少なくとも約50ヌクレオチド(または10アミノ酸)長のある一定領域、またはさらに好ましくは100〜500または1000またはそれ以上のヌクレオチド(または20、50、200またはそれ以上のアミノ酸)長のある一定領域にわたって存在する。
【0055】
配列比較については、典型的には一配列が試験配列と比較する対象であるレファレンス配列として機能する。配列比較アルゴリズムを用いるとき、試験およびレファレンス配列をコンピューターに入力し、部分配列座標を指定し、必要ならば、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。デフォルトプログラムパラメーターが使用され得るか、または代替パラメーターが指定され得る。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターに基づいた、レファレンス配列に対する試験配列についての配列同一性パーセントを計算する。
【0056】
本明細書で使用されている「比較ウインドウ」は、20〜600、通常約50〜約200、さらに一般的には約100〜約150から成る群から選択される連続位置の数のいずれか1つのセグメントを指すものであり、2つの配列を最適となるように整列させた後、一方の配列と同数の連続位置をもつレファレンス配列との比較が可能となる。比較するための配列のアラインメント方法は当業界では公知である。比較を目的とする配列の最適アラインメントは、例えば、Smith および Waterman (1970) Adv. Appl. Math. 2:482cのローカルホモロジーアルゴリズムにより、Needleman および Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970 のホモロジーアラインメントアルゴリズムにより、Pearson および Lipman, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988 の類似性検索方法により、これらのアルゴリズムのコンピューターへの実装(Genetics Computer Group のWisconsin GeneticsソフトウェアパッケージにおけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、ウィスコンシン、マディソン、サイエンス・ドライブ575)により、または手動的アラインメントおよび視覚検査(例、Brent et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (ringbou ed., 2003)参照)により実施され得る。
【0057】
配列同一性および配列類似性パーセントの測定に適切なアルゴリズムの2つの例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、それぞれ Altschul et al., Nuc. Acids Res. 25:3389-3402, 1977; および Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410, 1990 に記載されている。BLAST解析を遂行するソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information を通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムでは、まずクエリーシーケンスにおける長さWの短いワードを同定することにより、高スコアリング配列対(HSP)を同定するものとし、これらは、データベース配列における同じ長さのワードと整列させたとき、正と評価される閾値スコアTとマッチするかまたはそれを満たす。Tは、近隣ワードスコア閾値と称される(Altschul et al.、前出)。これら最初の近隣ワードヒットは、それらを含むさらに長いHSPを見つけるための検索を開始する際のシードとして作用する。ワードヒットは、累積アラインメントスコアを増加させ得るところまで、各配列に沿って両方向に拡張される。ヌクレオチド配列については、パラメーターM(マッチする残基の対についての報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチの残基についてのペナルティスコア;常に<0)を用いて累積スコアを算出する。アミノ酸配列の場合、スコアリングマトリックスを用いて、累積スコアを算出する。各方向におけるワードヒットの拡張は、次の場合に停止する:累積アラインメントスコアがその最大到達値から量Xだけ低下した場合、1つまたはそれ以上の負のスコアの残基アラインメントの蓄積により、累積スコアが0またはそれ未満になった場合、またはいずれかの配列の末端に到達した場合。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)は、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長3および期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリング行列(Henikoff および Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915, 1989 参照)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4および両鎖の比較を使用する。
【0058】
BLASTアルゴリズムはまた、2配列間の類似性の統計分析を遂行する(例、Karlin および Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787, 1993 参照)。BLASTアルゴリズムにより与えられる類似性の一尺度は最小合計確率(P(N))であり、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間におけるマッチが偶然起こる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸とレファレンス核酸の比較において最小合計確率が、約0.2未満、さらに好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸はレファレンス配列と類似しているとみなされる。
【0059】
上記で示した配列同一性のパーセンテージ以外に、2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であるということの別の指標は、第1の核酸によりコード化されたポリペプチドが第2の核酸によりコード化されたポリペプチドに対して産生した抗体と免疫学的に交差反応性を示すことである。すなわち、例えば、2つのペプチドが同類置換でのみ異なる場合、ポリペプチドは、典型的には第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一である場合の別の指標は、下記に記載している通り、2つの分子またはそれらの相補体がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイゼーションすることである。2つの核酸配列が実質的に同一である場合のさらに別の指標は、同じプライマーが配列の増幅に使用され得ることである。
【0060】
「機能し得るように結合された」という表現は、2つまたはそれ以上のポリヌクレオチド(例、DNA)セグメント間の機能的関係をいう。典型的には、この表現は、転写される配列に対する転写調節配列の機能的関係をいう。例えば、プロモーターまたはエンハンサー配列は、それが適切な宿主細胞または他の発現系においてコーディング配列の転写を刺激またはモジュレーションする場合、コーディング配列に機能し得るように結合されている。一般的に、転写配列に機能し得るように結合されたプロモーター転写調節配列は、転写配列に物理的に連続している、すなわち、それらはシス作用関係にある。しかしながら、エンハンサーなどの転写調節配列の中には、それらが転写を促進するコーディング配列に物理的に連続するかまたは極めて接近して位置する必要が無いものある。
【0061】
「ベクター」の語は、それが結合されている別のポリヌクレオチドを輸送し得るポリヌクレオチド分子をいうものとする。ベクターの一タイプは「プラスミド」であり、追加的DNAセグメントがライゲーションされ得る環状2本鎖DNAループをいう。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされ得る。ある種のベクターは、それが導入された宿主細胞において自律複製し得る(例、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、それによって宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ある種のベクターは、それらが機能し得るように結合されている遺伝子の発現を指令し得る。本明細書においては上記ベクターを「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称す。一般に、組換えDNA技術において有用性のある発現ベクターは、プラスミド形態をとることが多い。本明細書では、プラスミドはベクターの最も一般的な使用形態であるため、「プラスミド」と「ベクター」は互換的に使用され得る。しかしながら、本発明は、均等内容の機能を果たすウイルスベクター(例、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルス)などの発現ベクターの他の形態も包含するものとする。
【0062】
「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)の語は、組換え発現ベクターが導入されている細胞をいう。上記の語は、特定の対象細胞だけでなく、上記細胞の子孫も指すものと理解するべきである。突然変異または環境的影響に起因してある種の改変が後続世代で起こり得るため、上記の子孫は、事実上、親細胞と同一ではない場合もあり得るが、依然として本明細書で使用している「宿主細胞」の語の範囲内に包含されるものとする。
【0063】
「炎症性疾患または状態」の語は、創傷または感染部位での局所的炎症を特徴とする状態を指すもので、自己免疫疾患、感染性炎症状態のある種の形態、臓器移植または他の移植片特有の望ましくない好中球活性および局所的組織部位での望ましくない好中球蓄積を特徴とする事実上他のあらゆる状態を包含する。これらの状態には、髄膜炎、脳水腫、関節炎、腎炎、成人呼吸窮迫症候群、膵炎、筋炎、神経炎、結合組織疾患、静脈炎、動脈炎、血管炎、アレルギー、アナフィラキシー、エールリヒア症、痛風、臓器移植および/または潰瘍性大腸炎があるが、これらに限定されるわけではない。
【0064】
「対象」の語は、ヒトおよびヒト以外の動物を包含する。ヒト以外の動物には、あらゆる脊椎動物、例えば哺乳類および非哺乳類、例えばヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類および爬虫類がある。特に示されていない場合、本明細書において「患者」または「対象」の語は互換的に使用される。
【0065】
「処置する」の語は、化合物または薬剤の投与により、病気(例、アレルギー性炎症性疾患)の症状、合併症または生化学的徴候の開始を阻止するかまたは遅らせ、症状を緩和し、または疾患、状態または障害のさらなる発現を阻止または阻害することを含む。処置は、予防的(病気の開始を阻止するか、または遅らせるか、またはその臨床的または潜在的症状の発現を阻止するため)または発病後の症状の治療的抑制または緩和であり得る。
【0066】
「シグナル伝達経路」または「シグナリング経路」(例、TSLPシグナリング経路)という表現は、細胞と刺激性化合物または薬剤との相互作用から生じる、少なくとも1つの生化学的反応をいうが、より一般的には一連の生化学的反応をいう。すなわち、刺激性化合物(例、TSLP)と細胞の相互作用により、シグナル伝達経路を通って伝わり、最終的には細胞性応答、例えば免疫応答を誘発する「シグナル」が発生する。
【0067】
II.ヒトTSLPRに対するアンタゴニスト抗体
1.概観
本発明は、ヒトTSLPRと特異的に結合する抗体を提供する。これらの抗hTSLPR抗体は、TSLP伝達によるシグナリング活性、例えば、下記実施例に記載している通りTSLP伝達による細胞増殖と拮抗し得る。モノクローナルまたはポリクローナル抗体の一般的製造方法は、当業界では公知である。例えば、Harlow & Lane, Using Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press,コールドスプリングハーバー、ニューヨーク、1998; Kohler & Milstein, Nature 256:495-497, 1975; Kozbor et al., Immunology Today 4:72, 1983;および Cole et al., 77-96頁、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, 1985参照。
【0068】
好ましくは、本発明の抗hTSLPR抗体はモノクローナルである。モノクローナル抗体とは、単一クローンから誘導される抗体をいう。本発明抗hTSLPR抗体の産生には、任意のモノクローナル抗体製造技術が使用され得、例えばBリンパ球のウイルスまたはオンコジーン形質転換が挙げられる。ハイブリドーマ製造用の一動物系はマウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ生産は十分に確立された手法である。下記実施例で説明するように、モノクローナル抗hTSLPR抗体は、ヒト以外の動物(例、マウス)をhTSLPRポリペプチドまたはそのフラグメント、融合タンパク質または変異型で免疫化することにより製造され得る。次いで、動物から単離したB細胞を骨髄腫細胞と融合することにより、抗体産生ハイブリドーマを製造する。hTSLPRポリペプチドまたは融合タンパク質を用いるELISA検定法でハイブリドーマをスクリーニングすることにより、モノクローナルマウス抗hTSLPR抗体が得られる。免疫化プロトコルおよび融合用の免疫化脾臓細胞の単離技術は当業界では公知である。融合パートナー(例、マウス骨髄腫細胞)および融合手順もまた当業界では公知である、例、Harlow & Lane 前出。
【0069】
抗体は、主に6つの重および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を通して標的抗原と相互作用する。典型的には、本発明の抗hTSLPR抗体は、配列番号1、2、3、4、5および6に示したCDR配列と同一であるそれらの重鎖CDR配列または軽鎖CDR配列の少なくとも1つを有する。本発明の抗hTSLPR抗体の中には、配列番号7および8に示した配列とそれぞれ同一である重鎖および軽鎖の可変領域を有するものもある。
【0070】
本発明の抗hTSLPR抗体は、2本の重鎖および2本の軽鎖を含むインタクト抗体であり得る。それらはまた、インタクト抗体または1本鎖抗体の抗原結合フラグメントであり得る。本発明の抗hTSLPR抗体は、ヒト以外の動物で産生された抗体を含む。それらもまた、本明細書記載の抗hTSLPR抗体の修飾形態である修飾抗体を含む。多くの場合、修飾抗体は、具体的に示したマウス抗体の場合と類似しているか、または改善された特性を有する組換え抗体である。例えば、下記実施例で具体的に示しているマウス抗hTSLPR抗体は、定常領域を欠失させ、それを抗体の半減期、例えば血清半減期、安定性または親和性を増加させ得る異なる定常領域で置換することにより修飾され得る。修飾抗体は、例えば、異なる特性をもつ異なる抗体からフレームワーク配列へ移植されたマウス抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより作製され得る(Jones et al., 1986, Nature 321, 522-525)。上記のフレームワーク配列は、公的DNAデータベースから入手され得る。
【0071】
修飾抗体としては、部分的ヒト免疫グロブリン配列(例、定常領域)および部分的非ヒト免疫グロブリン配列を含むキメラ抗体も挙げられる。他の修飾抗体にはヒト化抗体がある。一般的に、ヒト化抗体は、ヒト以外の供給源からそこへ導入されている1個またはそれ以上のアミノ酸残基を有する。非ヒト抗体のヒト化方法は当業界では公知である、例、米国特許第5,585,089号および同第5,693,762号; Jones et al., Nature 321: 522-25, 1986; Riechmann et al., Nature 332: 323-27, 1988;および Verhoeyen et al., Science 239: 1534-36, 1988。これらの方法は、非ヒト抗hTSLPR抗体からのCDRの少なくとも一部分をヒト抗体の対応する領域と置換することによって本発明のヒト化抗hTSLPR抗体を作製するのに容易に使用され得る。実施態様によっては、本発明のヒト化抗hTSLPR抗体が、対応するヒトフレームワーク領域に移植された各免疫グロブリン鎖における3つのCDR(すなわち、配列番号1、2、3、4、5および6)を全て有する場合もある。
【0072】
上記抗hTSLPR抗体に対しては、結合特異性またはエフェクター機能の喪失または結合親和性の許容し得ない低下を伴うことなく、可変および定常領域の両方において重大ではないアミノ酸置換、付加または欠失が行われ得る。通常、上記改変が組み込まれた抗体は、それらが由来するレファレンス抗体と実質的な配列同一性を呈する。例えば、本発明抗hTSLPR抗体の中には、その成熟軽鎖可変領域が、配列番号8に示した抗hTSLPR抗体の成熟軽鎖可変領域の配列と少なくとも75%または少なくとも85%(例、少なくとも90%、例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するものもある。同様に、抗体の成熟重鎖可変領域は、典型的には、配列番号7に示した抗hTSLPR抗体の成熟重鎖可変領域の配列と少なくとも75%または少なくとも85%(例、少なくとも90%、例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を示す。
【0073】
2.ヒト抗hTSLPR抗体
また、同じ結合特異性および同等または改善された結合親和性を呈する完全ヒト抗体も本発明に含まれる。例えば、ヒト抗体は、配列番号7の重鎖可変領域配列および配列番号8の軽鎖可変領域配列を含むレファレンスヒト抗体の場合と比べて同じかまたは改善された結合特性を有し得る。キメラまたはヒト化抗体と比べて、本発明のヒト抗hTSLPR抗体は、ヒト対象に投与された場合さらに低い抗原性を呈する。
【0074】
ヒト抗hTSLPR抗体は、当業界で公知の方法を用いて作製され得る。例えば、非ヒト抗体の場合と比べて同じ結合特性を維持するかまたは改善された同特性を与えながら、抗体において非ヒト抗体可変領域をヒト可変領域と置き換えるインビボ方法が、米国特許出願第10/778726号(公開第20050008625号)に開示されている。その方法は、完全ヒト抗体による非ヒトレファレンス抗体の可変領域のエピトープ誘導置換に基づくものである。作製されたヒト抗体は、一般的にレファレンス非ヒト抗体とは構造的に関連していないが、レファレンス抗体と同じ抗原上の同じエピトープに結合する。簡単に述べると、連続エピトープ誘導相補性置換方法は、抗原への試験抗体の結合に応答するリポーター系の存在下で限定量の抗原への結合についての「コンペティター」とレファレンス抗体の多様なハイブリッドのライブラリー(「試験抗体」)間における細胞での競争を設定することにより可能となる。コンペティターは、レファレンス抗体またはその誘導体、例えば1本鎖Fvフラグメントであり得る。コンペティターはまた、レファレンス抗体と同じエピトープに結合する抗原の天然または人工リガンドでもあり得る。コンペティターの必要条件は、それがレファレンス抗体と同じエピトープに結合すること、およびそれが抗原結合についてレファレンス抗体と競争することのみである。試験抗体は、非ヒトレファレンス抗体からの共通した一抗原結合V領域、およびヒト抗体のレパートリーライブラリーなどの多様な供給源から無作為に選択された他のV領域を有する。レファレンス抗体からの共通V領域が、抗原の同一エピトープ上において同じ配向で試験抗体の位置を決定するガイドとしての役割を果たすことにより、選択はレファレンス抗体への最高抗原結合忠実度へ偏向したものとなる。
【0075】
試験抗体と抗原間の所望の相互作用を検出するのに多くのタイプのリポーター系が使用され得る。例えば、相補的リポーターフラグメントを抗原および試験抗体にそれぞれ結合させ得ることにより、試験抗体が抗原に結合したとき、フラグメント相補性によるリポーター活性化のみが起こる。試験抗体−および抗原−リポーターフラグメント融合体がコンペティターと共発現されたとき、リポーター活性化は、抗原についての試験抗体の親和力に比例する、コンペティターとの試験抗体の競合能力に左右されることになる。使用され得る他のリポーター系には、米国特許出願第10/208730号(公開番号第20030198971号)に開示された自動阻害リポーター再活性化系のリアクチベーター(RAIR)、または米国特許出願第10/076845号(公開番号第20030157579号)に開示された競合的活性化系がある。
【0076】
連続エピトープ誘導相補性置換系で選択を実施することにより、コンペティター、抗原およびリポーター成分と一緒に単一試験抗体を発現する細胞が同定される。これらの細胞において、各試験抗体は、限定量の抗原への結合についてコンペティターと一対一で競合する。リポーターの活性は、試験抗体に結合した抗原の量に比例しており、それは抗原についての試験抗体の親和力および試験抗体の安定性に比例している。最初、試験抗体は、試験抗体として発現されたときのレファレンス抗体の場合と比べたそれらの活性に基づいて選択される。第1ラウンドの選択の結果は、「ハイブリッド」抗体のセットであり、それぞれレファレンス抗体からの同一非ヒトV領域およびライブラリーからのヒトV領域により構成され、それぞれレファレンス抗体と同じ抗原上のエピトープに結合する。第1ラウンドで選択された複数のハイブリッド抗体の一つは、レファレンス抗体の場合と同等またはそれより高い抗原についての親和力を有する。
【0077】
第2のV領域置換段階では、第1段階で選択されたヒトV領域を、コグネイトヒトV領域の多様なライブラリーによる残りの非ヒトレファレンス抗体V領域についてのヒト置換体を選択するためのガイドとして使用する。第1ラウンドで選択されたハイブリッド抗体はまた、第2ラウンドの選択のためのコンペティターとしても使用され得る。第2ラウンドの選択の結果は、レファレンス抗体とは構造的に異なるが、同じ抗原への結合についてレファレンス抗体と競合する完全ヒト抗体のセットである。選択されたヒト抗体の中には、レファレンス抗体と同じ抗原上の同一エピトープに結合するものもある。これらの選択されたヒト抗体の中で、1つまたはそれ以上が、レファレンス抗体の場合と同等またはそれより高い親和力で同一エピトープに結合する。
【0078】
レファレンス抗体として上記マウスまたはキメラ抗hTSLPR抗体の一つを用いることにより、この方法は、同じ結合特異性および同じかまたは高い結合親和性でヒトTSLPRに結合するヒト抗体を作製するのに容易に使用され得る。さらに、上記のヒト抗hTSLPR抗体はまた、ヒト抗体を注文生産している会社、例えばKaloBios,Inc.(マウンテン・ビュー、カリフォルニア)から市販されている。
【0079】
4.他のタイプの抗hTSLPR抗体
また、本発明の抗hTSLPR抗体には、1本鎖抗体、二重特異性抗体および多重特異性抗体がある。多数の実施態様において、本発明抗体は1本鎖抗体である。1本鎖抗体は、1本の安定して折りたたまれたポリペプチド鎖に重鎖および軽鎖の両方からの抗原結合領域を含む。それ自体、1本鎖抗体は、典型的にはモノクローナル抗体の結合特異性および親和性を保持しているが、古典的免疫グロブリンよりかなり小さいサイズを有する。ある種の適用について、本発明の抗hTSLPR1本鎖抗体は、インタクト抗hTSLPR抗体と比べて多くの有利な特性を提供し得る。これらの例には、体からの迅速なクリアランス、診断的イメージングおよび治療の両方に関する高い組織浸透性、およびマウスに基づく抗体との比較における免疫原性の著しい減少がある。1本鎖抗体使用に関する他の潜在的な利点には、ハイスループットスクリーニング方法における高いスクリーニング能力および経腸適用についての可能性がある。
【0080】
本発明の1本鎖抗hTSLPR抗体は、文献に記載された方法を用いて製造され得る。上記技術の例には、米国特許第4946778号および同第5258498号;Huston et al., Methods in Enzymology 203:46-88, 1991; Shu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:7995-7999, 1993;および Skerra et al., Science 240:1038-1040, 1988に記載されたものがある。
【0081】
一部の実施態様において、本発明では、抗hTSLPR抗体を誘導体化または別の機能性分子に結合することにより、多結合部位または標的エピトープに結合する二重特異性または多重特異性分子を作製する。機能性分子は、別のペプチドまたはタンパク質(例、サイトカイン、細胞傷害剤、免疫刺激または阻害剤、Fabフラグメントまたは上記で検討した他の抗体結合フラグメント)を含む。例えば、抗hTSLPR抗体またはその抗原結合部分は、1個またはそれ以上の他の結合分子、例えば別の抗体、抗体フラグメント、ペプチドまたは結合性模倣物質に(例、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的会合などにより)機能的に結合され得る。すなわち、本発明の二重特異性および多重特異性抗hTSLPR抗体は、ヒトTSLPRについての第1の結合特異性および第2標的エピトープについての第2の結合特異性をもつ少なくとも1つのモノクローナル抗hTSLPR抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。第2の標的エピトープは、Fc受容体、例えばヒトFcγRIまたはヒトFcγ受容体であり得る。したがって、本発明は、FcγR1、FcγRまたはFcεR発現性エフェクター細胞(例、単球、マクロファージまたは多形核細胞(PMN))、およびヒトTSLPRを発現する標的細胞(例、ヒトCD11c+樹状細胞)の両方に結合し得る二重特異性および多重特異性分子を含む。これらのマルチ特異性(例、二重特異性または多重特異性)分子は、ヒトTSLPR発現性細胞をエフェクター細胞にターゲッティングし、Fc受容体が伝えるエフェクター細胞活性、例えばヒトTSLPR発現性細胞の食作用、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、サイトカイン放出またはスーパーオキシドアニオンの生成を誘導する。
【0082】
本発明の二重特異性および多重特異性抗hTSLPR抗体は、文献に記載された方法により作製され得る。これらの例には、化学技術(例、Kranz, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:5807, 1981 参照)、ポリドーマ技術(例、米国特許第4474893号参照)、または組換えDNA技術がある。また、本発明の二重特異性および多重特異性分子は、当業界で公知の方法を用いて本明細書記載の要領で、結合特異性構成部分、例えば抗FcRおよび抗ヒトTSLPR結合特異性部分をコンジュゲートすることにより製造され得る。例えば、二重特異性および多重特異性分子の各結合特異性部分を別々に作製し、次いで互いにコンジュゲートすることが可能である。結合特異性部分がタンパク質またはペプチドであるとき、様々なカップリングまたは架橋剤が共有結合的コンジュゲーションに使用され得る。架橋剤の例には、プロテインA、カルボジイミド、N−スクシニミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、およびスルホスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC)がある。結合特異性部分が抗体(例、2つのヒト化抗体)であるとき、それらはスフルヒドリル結合を介して2つの重鎖のC−末端ヒンジ領域にコンジュゲートされ得る。ヒンジ領域は、コンジュゲーション前に奇数、例えば1個のスルフヒドリル残基を含むように修飾され得る。
【0083】
二重特異性および多重特異性分子のそれらの特異的標的への結合は、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)またはウエスタン・ブロット検定法により確認され得る。一般的にこれらの検定法では、それぞれ興味の対象である複合体に特異的な標識試薬(例、抗体)を用いることにより、特に興味の対象であるタンパク質−抗体複合体の存在を検出する。例えば、FcR−抗体複合体は、例えば抗体−FcR複合体を認識し、特異的に結合する酵素結合抗体または抗体フラグメントを用いて検出され得る。別法として、複合体は、様々な他の免疫検定法のいずれかを用いて検出され得る。例えば、抗体を放射性標識し、ラジオイムノアッセイ(RIA)で使用することが可能である(例、Weintraub, B., Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques, The Endocrine Society, 1986年3月 参照)。放射性同位元素は、γカウンターまたはシンチレーション計数管の使用またはオートラジオグラフィーなどの手段により検出され得る。
【0084】
III.抗hTSLPR抗体製造用のポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
本発明は、上記抗hTSLPR抗体鎖のセグメントまたはドメインを含むポリペプチドをコード化する実質的に精製されたポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)を提供する。本発明のポリヌクレオチドの中には、配列番号9に示した重鎖可変領域のヌクレオチド配列および/または配列番号10に示した軽鎖可変領域のヌクレオチド配列を含むものもある。本発明の他のポリヌクレオチドには、配列番号9、10、21または22のヌクレオチド配列と実質的に同一(例、少なくとも65、80%、95%または99%)であるヌクレオチド配列を含むものもある。適切な発現ベクターから発現されたとき、これらのポリヌクレオチドによりコード化されるポリペプチドは、抗原結合能力を呈し得る。
【0085】
また、本発明は、上記で示した抗hTSLPR抗体の重または軽鎖からの少なくとも1つのCDR領域および通常3つのCDR領域全てをコード化するポリヌクレオチドを提供する。他のポリヌクレオチドには、上記で示した抗hTSLPR抗体の重鎖および/または軽鎖の可変領域配列の全部または実質的に全部をコード化するものもある。例えば、これらのポリヌクレオチドの中には、配列番号7に示した重鎖可変領域のアミノ酸配列および/または配列番号8に示した軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコード化するものもある。別法として、これらのポリヌクレオチドの中には、配列番号21に示した重鎖可変領域のアミノ酸配列および/または配列番号22に示した軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコード化するものもある。コードの縮重故に、様々な核酸配列が免疫グロブリンアミノ酸配列をそれぞれコード化することになる。
【0086】
本発明のポリヌクレオチドは、抗hTSLPR抗体の可変領域配列のみをコード化し得る。それらはまた、抗体の可変領域および定常領域の両方をコード化する。本発明核酸のポリヌクレオチド配列の中には、配列番号7または21に示した成熟重鎖可変領域配列と実質的に同一(例、少なくとも80%、90%または99%)である成熟重鎖可変領域配列をコード化するものもある。他のポリヌクレオチド配列には、配列番号8または22に示した成熟軽鎖可変領域配列と実質的に同一(例、少なくとも80%、90%または99%)である成熟軽鎖可変領域配列をコード化するものもある。ポリヌクレオチド配列の中には、マウス抗体の重鎖および軽鎖の両方の可変領域を含むポリペプチドをコード化するものもある。他のポリヌクレオチドには、それぞれマウス抗体の重鎖および軽鎖の可変領域と実質的に同一である2つのポリペプチドセグメントをコード化するものもある。
【0087】
ポリヌクレオチド配列は、de novo 固相DNA合成または抗hTSLPR抗体またはそのフラグメントをコード化する既存配列(例、下記実施例記載の配列)のPCR突然変異導入により製造され得る。核酸の直接的化学合成は、当業界で公知の方法により達成され得、例えば、Narang et al., 1979, Meth. Enzymol. 68:90 のホスホトリエステル方法、Brown et al., Meth. Enzymol. 68:109, 1979 のホスホジエステル方法、Beaucage et al., Tetra. Lett., 22:1859, 1981 のジエチルホスホルアミダイト方法、および米国特許第4458066号の固体支持体方法がある。PCRによるポリヌクレオチド配列への突然変異導入は、例えば PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification, H.A. Erlich (編), Freeman Press、ニューヨーク、ニューヨーク、1992; PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al. (編), Academic Press,サンディエゴ、カリフォルニア、1990; Mattila et al., Nucleic Acids Res. 19:967, 1991;および Eckert et al., PCR Methods and Applications 1:17, 1991に記載された要領で実施され得る。
【0088】
また本発明は、上記の抗hTSLPR抗体を製造するための発現ベクターおよび宿主細胞を提供する。様々な発現ベクターを用いることにより、抗hTSLPR抗体鎖または結合フラグメントをコード化するポリヌクレオチドを発現させることが可能である。ウイルス性およびウイルス性発現ベクターは両方とも、哺乳類宿主細胞での抗体の産生に使用され得る。非ウイルス性ベクターおよび系には、典型的にはタンパク質またはRNAを発現させるための発現カセットを伴う、プラスミド、エピソームベクター、およびヒト人工染色体(例えば、Harrington et al., Nat Genet 15:345, 1997 参照)がある。例えば、哺乳類(例、ヒト)細胞における抗hTSLPRポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現に有用な非ウイルス性ベクターには、pThioHis A、BおよびC、pcDNA3.1/His、pEBVHis A、BおよびC(Invitrogen、サンディエゴ、カリフォルニア)、MPSVベクター、および他のタンパク質発現に関して当業界で公知の多くの他のベクターがある。有用なウイルス性ベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルスに基づくベクター、SV40、乳頭腫ウイルス、HBPエプスタイン・バール(Epstein Barr)ウイルスに基づくベクター、ワクシニアウイルスベクターおよびセムリキ(Semliki)森林熱ウイルス(SFV)に基づくベクターがある。Brent et al., 前出、Smith, Annu. Rev. Microbiol. 49:807, 1995;および Rosenfeld et al., Cell 68:143, 1992 参照。
【0089】
発現ベクターの選択は、ベクターを発現させるように意図された宿主細胞により変動する。典型的には、発現ベクターは、抗hTSLPR抗体鎖またはフラグメントをコード化するポリヌクレオチドに機能し得るように結合されたプロモーターおよび他の調節配列(例、エンハンサー)を含む。実施態様によっては、誘導性プロモーターを用いることにより誘導条件下以外での挿入配列の発現を阻止する場合もある。誘導性プロモーターには、例えばアラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモーターまたは熱ショックプロモーターがある。形質転換生物体の培養物は、宿主細胞による耐容性が良好な発現産物をもたらすコーディング配列についての集団の偏向を伴わない非誘導条件下において拡大され得る。プロモーターに加えて、他の調節エレメントもまた、抗hTSLPR抗体鎖またはフラグメントの有効な発現に要求されるかまたは所望され得る。これらのエレメントは、典型的にはATG開始コドンおよび隣接リボソーム結合部位または他の配列を含む。さらに、発現効率は、使用する細胞系に適切なエンハンサーを含ませることにより増強され得る(例えば、Scharf et al., Results Probl. Cell Differ. 20:125, 1994;および Bittner et al., Meth. Enzymol., 153:516, 1987 参照)。例えば、SV40エンハンサーまたはCMVエンハンサーは、哺乳類宿主細胞での発現を高めるのに使用され得る。
【0090】
また、発現ベクターは、挿入された抗hTSLPR抗体配列によりコード化されるポリペプチドとの融合タンパク質を形成させるために分泌シグナル配列位置を設定し得る。多くの場合、挿入された抗hTSLPR抗体配列を、ベクターに組み込ませる前にシグナル配列に結合する。また、抗hTSLPR抗体軽および重鎖可変ドメインをコード化する配列を受け入れるのに使用されるベクターが、定常領域またはその一部をコード化する場合もある。上記ベクターが定常領域との融合タンパク質として可変領域を発現させ得ることにより、インタクト抗体またはそのフラグメントが製造される。典型的には、上記定常領域はヒトに由来する。
【0091】
抗hTSLPR抗体鎖を受容および発現する宿主細胞は、原核生物または真核生物に由来し得る。エシェリキア・コリ(E.coli)は、本発明ポリヌクレオチドのクローニングおよび発現に有用な一原核生物宿主である。使用に適した他の微生物宿主には、バチルス・サチリス(Bacillus subtilis、枯草菌)などの桿菌、および他の腸内細菌科、例えばサルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)および様々なシュードモナス(Pseudomonas)などの種類がある。また、これらの原核生物宿主では、典型的には宿主細胞と適合し得る発現制御配列(例、複製起点)を含む発現ベクターが作製され得る。さらに、かなり多数の様々な公知プロモーター、例えばラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ベータ−ラクタマーゼプロモーター系、またはファージラムダからのプロモーター系が存在する。典型的にはプロモーターは、所望によりオペレーター配列と共に発現を制御し、転写および翻訳を開始および完了させるためにリボソーム結合部位配列などを有する。酵母などの他の微生物もまた、本発明の抗hTSLPRポリペプチドの発現に使用され得る。バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞もまた使用され得る。
【0092】
一部の好ましい実施態様では、哺乳類宿主細胞を用いて、本発明の抗hTSLPRポリペプチドを発現および製造させる。例えば、それらは、内生免疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞系(例、実施例に記載の1D6.C9骨髄腫ハイブリドーマクローン)または外生発現ベクターを受容する哺乳類細胞系(例、下記で具体的に示したSP2/0骨髄腫細胞)であり得る。これらは、正常な死に至る動物またはヒト細胞または正常または異常な不死動物またはヒト細胞を包含する。例えば、CHO細胞系、様々なCos細胞系、ヒーラ細胞、骨髄腫細胞系、形質転換B細胞およびハイブリドーマを含め、インタクト免疫グロブリンを分泌し得る多数の適切な宿主細胞系が開発されている。哺乳類組織細胞培養を用いるポリペプチドの発現については、例えばWinnacker, FROM GENES TO CLONES, VCH Publishers、ニューヨーク、ニューヨーク、1987 で包括的に検討されている。哺乳類宿主細胞用の発現ベクターは、複製起点、プロモーターおよびエンハンサーなどの発現制御配列(例えば、Queen, et al., Immunol. Rev. 89:49-68, 1986 参照)、およびリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写ターミネーター配列などの必要なプロセッシング情報部位を含み得る。これらの発現ベクターは、通常哺乳類遺伝子または哺乳類ウイルスから誘導されたプロモーターを含む。適切なプロモーターは、構成的、細胞型特異的、段階特異的および/またはモジュレーション可能または調節可能なものであり得る。有用なプロモーターには、メタロチオネインプロモーター、構成的アデノウイルス主要後期プロモーター、デキサメタゾン−誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRP po1IIIプロモーター、構成的MPSVプロモーター、テトラサイクリン−誘導性CMVプロモーター(例えばヒト極初期CMVプロモーター)、構成的CMVプロモーターおよび当業界で公知のプロモーター−エンハンサーの組み合わせがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0093】
興味の対象であるポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターの導入方法は、細胞性宿主のタイプにより異なる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは、原核生物細胞に常用されており、リン酸カルシウム処理または電気穿孔は、他の細胞性宿主に使用され得る。(包括的には、Sambrook, et al.前出、参照)。他の方法には、例えば、電気穿孔、リン酸カルシウム処理、リポソームを介した形質転換、注入および顕微注入、弾丸導入法、ウイロソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン:核酸コンジュゲート、ネイキッド(裸)DNA、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22との融合(Elliot および O'Hare, Cell 88:223, 1997)、薬剤によるDNA取込みの促進およびエクスビボ形質導入がある。組換えタンパク質を長期間高収率で生産するためには、多くの場合安定した発現が望ましい。例えば、抗hTSLPR抗体鎖または結合フラグメントを安定して発現する細胞系は、ウイルス複製起点または内生発現エレメントおよび選択可能なマーカー遺伝子を含む本発明発現ベクターを用いて製造され得る。ベクターの導入後、細胞を強化培地中で1〜2日間成長させた後、それらを選択培地に切り替える。選択可能なマーカーの目的は、選択に対する抵抗性を付与することであり、その存在により、選択培地において導入された配列を有効に発現する細胞を成長させることができる。細胞型に適切な組織培養技術を用いることにより、抵抗性のある安定したトランスフェクション細胞を増殖させることができる。
【0094】
IV.抗hTSLPR抗体の特性
上記抗hTSLPR抗体が宿主細胞または内生的にハイブリドーマにおいて発現ベクターから発現されると、それらは培養培地および宿主細胞から容易に精製され得る。通常、抗体鎖は、シグナル配列により発現され、培養培地へ放出される。しかしながら、抗体鎖が天然では宿主細胞により分泌されない場合、抗体鎖は、弱いデタージェントでの処理により放出され得る。次いで、抗体鎖は、硫酸アンモニウム沈降、固定化標的へのアフィニティー・クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む慣用的方法により精製され得る。これらの方法は全て公知であり、当業界では常用手順で実施されている、例、Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, ニューヨーク、1982;および Harlow & Lane、前出。
【0095】
例として、本発明の抗hTSLPR抗体を発現する選択されたハイブリドーマを、モノクローナル抗体精製用の2リットルのスピナーフラスコで成長させ得る。上清をろ過し、濃縮した後、プロテインA−セファロースまたはプロテインG−セファロース(Pharmacia、ピスキャタウェイ、ニュージャージー)でのアフィニティー・クロマトグラフィーにかけ得る。溶離したIgGをゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーでチェックすることにより、純度を確実なものにし得る。緩衝液をPBS中へと交換し、OD280読み取りにより濃度を測定する。モノクローナル抗体をアリコートに分け、−80℃で貯蔵する。
【0096】
本発明の抗hTSLPRモノクローナル抗体は、それらの製造方法とは関係なく、hTSLPRまたはその抗原性フラグメントに特異的に結合する。hTSLPRまたはその抗原性フラグメントへの抗体結合についての解離定数が、1μM以下、好ましくは100nM以下、最も好ましくは1nM以下であるとき、特異的結合が存在する。hTSLPRへの抗体の結合能は、興味の対象である抗体を直接標識することにより検出され得るか、または抗体を非標識とし、様々なサンドイッチ検定方法を用いて結合を間接的に検出することが可能である。例えば、Harlow & Lane、前出参照。上記結合特異性を有する抗体は、下記実施例で検討している1D6.C9マウス抗hTSLPR抗体が呈する有利な特性を共有していると思われる。
【0097】
本発明の抗hTSLPRモノクローナル抗体は、TSLPが伝達するシグナリング活性と拮抗し得る。これらの活性の例を挙げると、例えばTARCおよびMDCなどの樹状細胞によるTH2−誘引性ケモカインの分泌、樹状細胞の活性化、ナイーブCD4+T細胞拡大およびTH2表現型への分極化、例えばIL−4、IL−5、IL−13 TNFαなどの向アレルギー性サイトカインの産生がある。抗hTSLPR抗体が、TSLP伝達による細胞活性を阻害し得るか否かを決定するのに多数の検定法が使用され得る。これらの例を挙げると、実施例記載の検定法のいずれか、例えばBa/F3/hTSLPR/hIL7Rα細胞を用いる細胞増殖検定法、Ba/F3/hTSLPR/IL7Rα/Stat5−Luc細胞を用いるルシフェラーゼリポーター検定法およびTARC分泌検定法がある。また、TSLPシグナリング活性を測定するさらなる検定法についても文献に記載されている。例えば、Reche et al., J. Immunol., 167:336-43, 2001;および Isaksen et al., J Immunol. 168:3288-94, 2002 参照。
【0098】
一部実施態様において、本発明の抗hTSLPR抗体は、hTSLPRポリペプチドへの配列番号7に示した可変領域配列を有するレファレンス抗hTSLPR抗体の結合を遮断するかまたはそれと競合する。これらは、上記の完全ヒト抗hTSLPR抗体であり得る。それらはまた、レファレンス抗体と同じエピトープに結合する他のマウス、キメラまたはヒト化抗hTSLPR抗体であり得る。レファレンス抗体結合を遮断するかまたはそれと競合する能力は、試験されている抗hTSLPR抗体が、レファレンス抗体により特定されるエピトープと同一または酷似したエピトープ、またはレファレンス抗hTSLPR抗体に結合されたエピトープに十分近位にあるエピトープに結合することを示している。上記抗体は、特にレファレンス抗体について確認された有利な特性を共有すると思われる。レファレンス抗体を遮断またはそれと競合する能力は、例えば競合結合検定法により測定され得る。競合結合検定法では、例えばTSLPRポリペプチドなどの共通抗原へのレファレンス抗体の特異的結合を阻害する能力について試験抗体を調べる。過剰の試験抗体がレファレンス抗体の結合を実質的に阻害する場合、試験抗体は抗原への特異的結合についてレファレンス抗体と競合する。実質的な阻害とは、通常少なくとも10%、25%、50%、75%または90%の割合で試験抗体がレファレンス抗体の特異的結合を低下させることを意味する。
【0099】
ヒトTSLPRへの結合に関する抗hTSLPR抗体とレファレンス抗hTSLPR抗体との競合を評価するのに使用され得る多数の公知競合結合検定法がある。これらの例としては、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素免疫検定法(EIA)、サンドイッチ競合検定法(Stahli et al., Methods in Enzymology 9:242-253, 1983 参照)、固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirkland et al., J. Immunol. 137:3614-3619, 1986 参照)、固相直接標識検定法、固相直接標識サンドイッチ検定法(Harlow および Lane、前出参照)、I−125標識を用いる固相直接標識RIA(Morel et al., Molec. Immunol. 25:7-15, 1988 参照)、固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheung et al., Virology 176:546-552, 1990)および直接標識RIA(Moldenhauer et al., Scand. J. Immunol. 32:77-82, 1990)が挙げられる。典型的には、上記の検定法は、これら、非標識試験抗hTSLPR抗体および標識レファレンス抗体のいずれかを含む固体表面または細胞に結合させた精製抗原の使用を含む。競合的阻害は、試験抗体の存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を測定することにより測定される。通常、試験抗体は過剰に存在する。競合検定法により同定された抗体(競合抗体)は、レファレンス抗体と同じエピトープに結合する抗体および立体障害が起こるほどレファレンス抗体に結合されたエピトープに十分近接している隣接エピトープに結合する抗体を含む。
【0100】
選択された抗TSLPRモノクローナル抗体が特有のエピトープに結合しているか否かを測定するため、市販の試薬(例、イリノイ、ロックフォードのPierceからの試薬)を用いて各抗体をビオチニル化し得る。非標識モノクローナル抗体およびビオチニル化モノクローナル抗体を用いる競合試験は、TSLPRポリペプチド被覆ELISAプレートを用いて実施され得る。ビオチニル化MAb結合は、ストレップ−アビジン−アルカリ性ホスファターゼプローブで検出され得る。精製抗hTSLPR抗体のアイソタイプを決定するため、アイソタイプELISAが実施され得る。例えば、マイクロタイタープレートのウェルを4℃で一晩1μg/mlの抗ヒトIgGによりコーティングする。1%BSAで遮断した後、プレートを1μg/mlまたはそれ未満のモノクローナル抗hTSLPR抗体または精製アイソタイプ対照と周囲温度で1〜2時間反応させる。次いで、ウェルをヒトIgG1またはヒトIgM特異的アルカリ性ホスファターゼコンジュゲートプローブと反応させ得る。次いで、プレートを展開し、分析することにより、精製抗体のアイソタイプが決定され得る。
【0101】
hTSLPRポリペプチドを発現する生細胞へのモノクローナル抗hTSLPR抗体の結合を立証するためには、フローサイトメトリーが使用され得る。簡単に述べると、hTSLPRを発現する細胞系(標準成長条件下で成長させた)を、0.1%BSAおよび10%胎児ウシ血清を含むPBS中の様々な濃度の抗hTSLPR抗体と混合し、37℃で1時間インキュベーションする。洗浄後、細胞を一次抗体染色と同じ条件下でフルオレセイン標識抗ヒトIgG抗体と反応させる。側方散乱光を用いて単細胞でゲート設定するFACScan機器により試料を分析する。蛍光顕微鏡を用いる別の検定法も、フローサイトメトリー検定法に加えて、またはその代わりに使用され得る。細胞を上記と全く同様にして染色し、蛍光顕微鏡により調べ得る。この方法により、個々の細胞が視覚化され得るが、抗原の密度によって感度が減少した可能性はある。
【0102】
本発明の抗hTSLPR抗体を、hTSLPRポリペプチドまたは抗原性フラグメントとの反応性についてウエスタンブロッティングによりさらに試験する。簡単に述べると、精製hTSLPRポリペプチドまたは融合タンパク質、またはTSLPRを発現する細胞からの細胞抽出物を調製し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動にかける。電気泳動後、分離した抗原をニトロセルロース膜に移し、10%胎児ウシ血清で遮断し、試験されるモノクローナル抗体でプロービングする。ヒトIgG結合は、抗ヒトIgGアルカリ性ホスファターゼを用いて検出され、BCIP/NBT基質錠(Sigma Chem. Co.、セントルイス、ミズーリ)で展開され得る。
【0103】
V.免疫グロブリンスカホールド
生成されるポリペプチドが標的タンパク質に特異的である少なくとも1つの結合領域を含むものである限り、広く多様な抗体/免疫グロブリンフレームワークまたはスカホールドが使用され得る。上記フレームワークまたはスカホールドは、5つの主要イディオタイプのヒト免疫グロブリンまたはそのフラグメント(例えば本明細書における他の箇所で開示されたもの)を含み、好ましくはヒト化の特徴を有する他の動物種の免疫グロブリンを含む。ラクダ科で同定されたものなどの1本重鎖抗体は、この点について特に興味深い。当業者は、新規のフレームワーク、スカホールドおよびフラグメントを発見および開発し続けている。
【0104】
一態様において、本発明は、本発明のCDRが移植され得る非免疫グロブリンスカホールドを用いた非免疫グロブリンに基づく抗体の作製に関するものである。標的タンパク質に特異的な結合領域を含むものであれば、既知または将来的な非免疫グロブリンフレームワークおよびスカホールドが使用され得る。上記化合物は、「標的特異的結合領域を含むポリペプチド」として本明細書では称される。公知非免疫グロブリンフレームワークまたはスカホールドには、アドネクチン類(フィブロネクチン)(Compound Therapeutics, Inc.、ワルサム、マサチューセッツ)、アンキリン(Molecular Partners AG、チューリヒ、スイス国)、ドメイン抗体(Domantis, Ltd(ケンブリッジ、マサチューセッツ)および Ablynx nv(ズウィナールデ、ベルギー国))、リポカリン(アンチカリン)(Pieris Proteolab AG、フライシンク、ドイツ国)、小モジュラー免疫医薬(Trubion Pharmaceuticals Inc.、シアトル、ワシントン)、マキシボディ(Avidia, Inc.(マウンテン・ビュー、カリフォルニア))、プロテインA(Affibody AG、スウェーデン国)およびアフィリン(ガンマ−クリスタリンまたはユビキチン)(Scil Proteins GmbH、ハーレ、ドイツ国)があるが、これらの限定されるわけではない。
【0105】
(i)アドネクチン類−Compound Therapeutics
アドネクチンスカホールドは、フィブロネクチンIII型ドメイン(例、フィブロネクチンIII型の第10モジュール(10Fn3ドメイン))に基づいている。フィブロネクチンIII型ドメインは、2つのベータシート間に分布する7または8本のベータ鎖を有し、それら自体互いに詰あってタンパク質のコアを形成し、さらにベータ鎖を互いに連結し、溶媒暴露されている(CDRと類似した)ループを含む。ベータシートサンドイッチの各エッジに少なくとも3つの上記ループが存在し、エッジはベータ鎖の方向に対し直角をなすタンパク質の境界である。(米国特許第6818418号)。
【0106】
全体的なフォールド構造は、ラクダおよびラマIgGにおける全抗原認識単位を含む、重鎖の可変領域である、最小機能性抗体フラグメントの場合と密接に関連しているが、これらのフィブロネクチンに基づくスカホールドは免疫グロブリンではない。この構造故に、非免疫グロブリン抗体は、抗体の場合と性質および親和性が類似した抗原結合特性を模倣する。これらのスカホールドは、インビボでの抗体の親和性成熟過程と類似したインビトロでのループランダム化および再編成戦略で使用され得る。これらのフィブロネクチンに基づく分子は、スカホールドとして使用され得、そこで分子のループ領域が、標準クローニング技術を用いて本発明のCDRと置換され得る。
【0107】
(ii)アンキリン−Molecular Partners
この技術は、種々の標的への結合に使用され得る可変領域を担うためのスカホールドとしてのアンキリン由来の反復モジュールを伴うタンパク質の使用に基づいている。アンキリン反復モジュールは、2つの逆平行α−ヘリックスおよびβ−ターンから成る33アミノ酸ポリペプチドである。可変領域の結合は、主としてリボソームディスプレーを用いることにより最適化される。
【0108】
(iii)マキシボディ/アビマー−Avidia
アビマーは、LRP−1などの天然Aドメイン含有タンパク質から誘導される。これらのドメインは、本来タンパク質−タンパク質相互作用に使用され、ヒトでは250を超えるタンパク質が構造的にAドメインに基づいている。アビマーは、アミノ酸リンカーを介して結合された多数の異なる「Aドメイン」モノマー(2〜10)により構成される。例えば20040175756、20050053973、20050048512および20060008844に記載された方法を用いて標的抗原に結合し得るアビマーが作製され得る。
【0109】
(vi)プロテインA−Affibody
Affibody(登録商標)アフィニティーリガンドは、プロテインAのIgG-結合ドメインの一つのスカホールドに基づいた3ヘリックス束により構成される単純な小型タンパク質である。プロテインAは、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)菌由来の表面タンパク質である。このスカホールドドメインは58アミノ酸から成り、そのうち13をランダム化することにより、多数のリガンド変異型をもつAffibody(登録商標)ライブラリーを作製する(例、米国特許第5831012号参照)。Affibody(登録商標)分子は抗体を模倣するが、抗体の分子量150kDaと比べて、それらの分子量は6kDaである。小さいサイズであるにもかかわらず、Affibody(登録商標)分子の結合部位は抗体のそれと類似している。
【0110】
(v)アンチカリン(Anticalins)−Pieris
Anticalins(登録商標)は、Pieris ProteoLab AG 社により開発された製品である。それらは、通常化学的感受性または不溶性化合物の生理学的輸送または貯蔵に関与する小さく強力な(robust)タンパク質の広範に及ぶ群である、リポカリンから誘導される。幾つかの天然リポカリンは、人体組織または体液から見いだされる。
【0111】
タンパク質構造は、堅固なフレームワークの上部に超可変ループを伴う、免疫グロブリンを想起させるものである。しかしながら、抗体またはそれらの組換えフラグメントとは対照的に、リポカリン類は、160〜180アミノ酸残基をもつ1本のポリペプチド鎖により構成され、周辺の分だけ単一免疫グロブリンドメインより大きい。
【0112】
結合ポケットを構成する4つのループのセットは、著しい構造的可塑性を示し、様々な側鎖を受け入れる。すなわち、結合部位は、高い親和性および特異性をもつ異なる形状の指示された標的分子を認識できるように独自の過程で新形態をとり得る。
【0113】
リポカリンファミリーの一タンパク質、Pieris Brassicae のビリン結合タンパク質(BBP)は、4ループのセットを突然変異させることによるアンチカリンの開発に使用されてきた。「アンチカリン」について記載している親出願の一例は、PCT国際公開第199916873号である。
【0114】
(vi)Affilin−Scil Proteins
Affilin(登録商標)分子は、タンパク質および小分子に向かう特異的親和性について設計された小さな非免疫グロブリンタンパク質である。新しいAffilin(登録商標)分子は、それぞれ異なるヒト由来のスカホールドタンパク質に基づくものである、2つのライブラリーから非常に迅速に選択され得る。Affilin(登録商標)分子は、免疫グロブリンタンパク質との構造相同性を全く示さない。Scil Proteinsは、2種の Affilin(登録商標)スカホールドを使用しており、その一方は、ヒト構造的水晶体タンパク質であるガンマクリスタリン(crystalline)であり、他方は「ユビキチン」スーパーファミリータンパク質である。ヒトスカホールドは両方とも非常に小さく、高い熱安定性を示し、pH変化および変性剤にほぼ抵抗性がある。この高い安定性は、主としてタンパク質の拡大されたベータシート構造によるものである。ガンマクリスタリン由来タンパク質の例は、国際公開第200104144号に記載されており、「ユビキチン様」タンパク質の例は国際公開第2004106368号に記載されている。
【0115】
VI.抗hTSLPR抗体の治療適用
抗hTSLPR抗体は、TSLPシグナリング活性を阻害することにより多くの治療または予防適用で使用され得る。これらの例としては、例えばB細胞の発達、T細胞の発達、T細胞受容体遺伝子転置またはStat5転写因子の調節に影響を及ぼすものなど、TSLPシグナリングが介在する疾患または状態の処置がある。例えば、抗hTSLPRアンタゴニスト抗体は、TH2細胞が伝える望ましくない免疫応答を抑制または低減化するのに使用され得る。特に、それらは、TSLPシグナリングに随伴するかまたはそれが伝達するアレルギー性炎症障害に罹患したヒト患者を処置するのに適切である。本発明の抗hTSLPR抗体による処置に敏感に反応するアレルギー性炎症疾患には、例えば(1)喘息、すなわち気流閉塞および気管支過敏性に関連した気道の慢性炎症性疾患、(2)アトピー性皮膚炎、すなわち長期にわたる断続的処置を必要とする増悪性慢性炎症性皮膚疾患、および(3)アレルギー性鼻炎、すなわちアトピーに結びついたTH2リンパ球が伝達する鼻粘膜の炎症性障害がある。米国およびヨーロッパの主要数カ国では、喘息、アトピー性皮膚炎およびアレルギー性鼻炎について診断された有病率は、それぞれ2013年には現在の4600万から5300万、現在の3170万から3720万、および5590万から6450万に増加すると予測される。アトピー性皮膚炎患者の約50〜80パーセントは、喘息またはアレルギー性鼻炎に罹患しているかまたはそれらを発症すると思われる。
【0116】
アレルギーの処置に現在利用可能なほとんどの薬剤は、対症療法的なものであり、長期疾患修飾性をもたらすと思われる免疫モジュレーション分野で為されている努力は比較的小さいものに過ぎない。本発明の抗hTSLPR抗体は、これらのアレルギー性疾患のいずれかに罹患している対象(特にヒト患者)の新規で有効な処置法を提供し得る。TSLPがTSLP受容体シグナル伝達経路を活性化するのを阻止することにより、それらはTH2応答およびアレルギー性炎症の開始および維持の両方に関与するサイトカインの産生を遮断し得る。したがって、この方法は、アトピー性皮膚炎、喘息およびアレルギー性鼻炎の患者において長期にわたる治療効果および疾患修飾的利点を誘導する可能性を有する。
【0117】
別の実施態様において、本発明は、上記抗体または機能性フラグメントまたは保存的変異型の少なくともいずれか1種に組み合わせて医薬上許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0118】
ある種の実施態様において、本発明は、受容体標的hTSLPを有する細胞の存在に随伴する障害または状態の処置方法を提供する。本方法では、処置を必要とする対象に上記医薬組成物の有効量を投与する。関連実施態様において、処置される障害または状態は呼吸器障害である。
【0119】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、気道過敏症(AHR)、粘膜過剰生産、線維症および血清IgEレベルの上昇を特徴とする肺の一般的な持続性炎症性疾患である気管支喘息である。
【0120】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、幼少期に最もよくみられる皮膚疾患であり、強度のそう痒および慢性湿疹様斑を特徴とするアトピー性(アレルギー性)皮膚炎である。
【0121】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、COPD、急性肺傷害(ALI)、急性/成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸困難、アレルギー性気道炎症、末梢気道病変、肺癌、鎌状赤血球症および肺高血圧症患者における急性胸部症候群、並びに他の薬物療法、特に他の薬物吸入療法の結果として起こる気道過敏症の増悪などの他の炎症性または閉塞性気道疾患および状態から選択される。
【0122】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、例えば急性、アラキドン酸誘発性、カタル性、クループ性、慢性または結核性気管支炎を含め、あらゆるタイプまたは発生原因の気管支炎である。
【0123】
別の実施態様において、処置される障害または状態には、例えば、アルミニウム症、炭粉症、石綿症、石粉症、ダチョウ塵肺症、鉄症、珪石症、タバコ肺および綿肺症を含め、あらゆるタイプまたは発生原因の塵肺症(慢性にせよ、急性にせよ、気道閉塞を伴うことが多く、塵埃の反復吸入により誘発される通例職業性の炎症性肺疾患)が含まれる。
【0124】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、アトピー性鼻炎(花粉症)および慢性副鼻腔炎から選択される。
【0125】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、皮膚の他の炎症状態、例えば乾癬または全身性エリテマトーデスから選択される。
【0126】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、炎症性腸疾患、例えば潰瘍性大腸炎およびクローン病である。
【0127】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、他の線維症状態、例えば全身性硬化症(scelrosis)、肝臓線維症、肺線維症、特発性線維症または肺類線維腫から選択される。
【0128】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、腫瘍再発または転移である。Th2サイトカインの阻害により、動物モデルにおいて抗ウイルス性ワクチンが増強されることが示されており、HIVおよび他の感染性疾患の処置に有益であり得る[Ahlers, J. D., et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002]。
【0129】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、喘息、慢性気管支炎、COPD、中耳炎および副鼻腔炎などの慢性的基礎状態を増悪する呼吸器ウイルス感染症である。処置される呼吸器ウイルス感染症は、例えば中耳炎、副鼻腔炎または肺炎など、二次細菌感染症に随伴し得る。
【0130】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、他の疾患または状態、特に炎症成分を有する疾患または状態、例えば慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎を含む骨および関節の疾患、および他の疾患、例えばアテローム性動脈硬化症、多発性硬化症、および例えば心臓、腎臓、肝臓、肺または骨髄移植後の急性および慢性同種移植拒絶から選択される。
【0131】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、内毒素性ショック、糸球体腎炎、脳および心虚血、アルツハイマー病、のう胞性線維症、ウイルス感染症およびそれらに関連した増悪、後天性免疫不全症候群(AIDS)、多発性硬化症(MS)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)関連胃炎、および癌、特に卵巣癌の増大である。
【0132】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、ヒトライノウイルス、他のエンテロウイルス、コロナウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルスまたはアデノウイルスにより誘発されるヒトでのウイルス感染により誘発される症状である。
本発明による処置は、対症療法的または予防的なものであり得る。
【0133】
例えば炎症性気道疾患での炎症状態の阻止における本発明薬剤の有効性は、例えば、Wada et al, J. Exp. Med (1994) 180:1135-40; Sekido et al, Nature (1993) 365:654-57; Modelska et al., Am. J. Respir. Crit. Care. Med (1999) 160:1450-56;および Laffon et al (1999) Am. J. Respir. Crit. Care Med. 160:1443-49 に記載されている要領で、気道炎症または炎症状態の動物モデル、例えばラットまたはウサギモデルにおいて立証され得る。
【0134】
さらに別の実施態様において、本発明は、hTSLP受容体を有する細胞の同定方法を提供する。この方法では、さらに検出可能な標識を有する上記抗体または抗体フラグメントのいずれかと細胞を接触させる。標識は、放射性、蛍光性、磁性、常磁性または化学発光性である。さらに本方法は、標識細胞の上記イメージングまたは分離段階のいずれかを含み得る。
【0135】
別の実施態様において、上記のヒトまたはヒト化抗体または抗体フラグメントのいずれかは合成的なものである。
別の実施態様において、本発明は、医薬組成物および追加的治療剤を提供する。
【0136】
追加的治療剤は、特に上記で挙げた疾患などの閉塞性または炎症性気道疾患の処置において、抗炎症剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤または鎮咳薬剤物質から成る群から選択され、例えば上記薬剤の治療活性の増強剤として、または上記薬剤の必要とされる投薬量または潜在的副作用を減らす手段としての役割を果たし得る。本発明の治療剤は、一定の医薬組成物において他の薬剤物質と混合され得るか、または他の薬剤物質とは別々に、それより先に、それと同時にまたはそれの後に投与され得る。したがって、本発明は、上記の本発明薬剤と抗炎症剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤または鎮咳薬剤物質の組み合わせを含み、本発明薬剤と上記薬剤物質は同一または異なる医薬組成物中に含まれるものとする。
【0137】
適切な抗炎症剤には、ステロイド類、特に糖質副腎皮質ステロイド類、例えばブデソニド、ジプロピオン酸ベクラメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、シクレソニドまたはフランカルボン酸モメタゾン、または国際公開第02/88167号、国際公開第02/12266号、国際公開第02/100879号、国際公開第02/00679号(特に、実施例3、11、14、17、19、26、34、37、39、51、60、67、72、73、90、99および101のもの)、国際公開第03/35668号、国際公開第03/48181号、国際公開第03/62259号、国際公開第03/64445号、国際公開第03/72592号、国際公開第04/39827号および国際公開第04/66920号記載のステロイド類;非ステロイド系糖質コルチコイド受容体アゴニスト、例えばドイツ国特許第10261874号、国際公開第00/00531号、国際公開第02/10143号、国際公開第03/82280号、国際公開第03/82787号、国際公開第03/86294号、国際公開第03/104195号、国際公開第03/101932号、国際公開第04/05229号、国際公開第04/18429号、国際公開第04/19935号および国際公開第04/26248号に記載のもの;LTB4アンタゴニスト、例えばBIIL 284、CP−195543、DPC11870、LTB4エタノールアミド、LY 293111、LY 255283、CGS025019C、CP−195543、ONO−4057、SB 209247、SC−53228および米国特許第5451700号記載のもの;LTD4アンタゴニスト、例えば、モンテルカスト、プランルカスト、ザフィルルカスト、アコレート、SR2640、Wy−48,252、ICI 198615、MK−571、LY−171883、Ro 24−5913およびL−648051;PDE4阻害剤、例えばシロミラスト(Ariflo(登録商標)GlaxoSmithKline)、ロフルミラスト(Byk Gulden)、V−11294A(Napp)、BAY19−8004(Bayer)、SCH−351591(Schering-Plough)、アロフィリン(Almirall Prodesfarma)、PD189659/PD168787(Parke-Davis)、AWD−12−281(Asta Medica)、CDC−801(Celgene)、SelCID(TM)CC−10004(Celgene)、VM554/UM565(Vernalis)、T−440(Tanabe)、KW−4490(Kyowa Hakko Kogyo)および国際公開第92/19594号、国際公開第93/19749号、 国際公開第93/19750号、国際公開第93/19751号、国際公開第98/18796, 国際公開第 99/16766号、国際公開第01/13953号、国際公開第 03/104204, 国際公開第03/104205号、国際公開第03/39544, 国際公開第 04/000814号、国際公開第04/000839号、国際公開第 04/005258号、国際公開第04/018450号、国際公開第 04/018451号、国際公開第04/018457号、国際公開第 04/018465号、国際公開第04/018431号、国際公開第04/018449号、国際公開第04/018450号、国際公開第04/018451号、国際公開第04/018457号、国際公開第04/018465号、国際公開第 04/019944, 国際公開第04/019945号、国際公開第04/045607号および国際公開第04/037805号に開示されたもの;A2Aアゴニスト、例えば欧州特許第1052264号、欧州特許第1241176号、欧州特許第409595A2号、国際公開第94/17090号、国際公開第96/02543号、国際公開第96/02553号、国際公開第98/28319号、国際公開第99/24449号、国際公開第99/24450号、国際公開第99/24451号、国際公開第99/38877号、国際公開第99/41267号、国際公開第99/67263号、国際公開第99/67264号、国際公開第99/67265号、国際公開第99/67266号、国際公開第00/23457号、国際公開第00/77018号、国際公開第00/78774号、国際公開第01/23399号、国際公開第01/27130号、国際公開第01/27131号、国際公開第01/60835号、国際公開第01/94368号、国際公開第02/00676号、国際公開第02/22630号、国際公開第02/96462号および国際公開第03/086408号に記載されたもの;およびA2Bアンタゴニスト、例えば国際公開第02/42298号記載のものがある。
【0138】
適切な気管支拡張剤には、抗コリン作用性または抗ムスカリン性薬剤、特に臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、チオトロピウム塩類およびCHF4226(Chiesi)、およびグリコピロレート、並びに欧州特許第424021号、米国特許第3714357号、米国特許第5171744号、国際公開第01/04118号、国際公開第02/00652号、国際公開第02/51841号、国際公開第 02/53564号、国際公開第03/00840号、国際公開第03/33495号、国際公開第03/53966号、国際公開第03/87094号、国際公開第04/018422号および国際公開第04/05285号記載のもの、およびベータ−2アドレナリン受容体アゴニスト、例えばアルブテロール(サルブタモール)、メタプロテレノール、テルブタリン、サルメテロール・フェノテロール、プロカテロールおよび特にホルモテロール、カルモテロールおよびその医薬上許容される塩類、および国際公開第00/75114号(この文献については、出典明示により援用する)の式(I)の化合物(遊離または塩または溶媒和物形態)、好ましくはその実施例の化合物、特に化合物(5−[(R)−2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン)およびその医薬上許容される塩類、並びに国際公開第04/16601号の式(I)の化合物(遊離または塩または溶媒和物形態)、および欧州特許第1440966号、日本国特許第05025045号、国際公開第93/18007号、国際公開第99/64035号、米国2002/0055651号、国際公開第01/42193号、国際公開第01/83462号、国際公開第02/66422号、国際公開第02/70490号、国際公開第02/76933号、国際公開第03/24439号、国際公開第03/42160号、国際公開第03/42164号、国際公開第03/72539号、国際公開第03/91204号、国際公開第03/99764号、国際公開第04/16578号、国際公開第04/22547号、国際公開第04/32921号、国際公開第04/33412号、国際公開第04/37768号、国際公開第04/37773号、国際公開第04/37807号、国際公開第04/39762号、国際公開第04/39766号、国際公開第04/45618号、国際公開第04/46083号、国際公開第04/80964号、欧州特許第1460064号、国際公開第04/087142号、国際公開第04/089892号、欧州特許第01477167号、米国特許第2004/0242622号、米国特許第2004/0229904号、国際公開第04/108675号、国際公開第04/108676号、国際公開第05/033121号、国際公開第05/040103号および国際公開第05/044787号の化合物がある。
【0139】
適切なデュアル型抗炎症性・気管支拡張性薬剤には、デュアル型ベータ−2アドレナリン受容体アゴニスト/ムスカリン拮抗物質、例えば米国特許第2004/0167167号、国際公開第04/74246号および国際公開第04/74812号に開示されたものがある。
【0140】
適切な抗ヒスタミン性薬剤物質には、塩酸セチリジン、アセタミノフェン、フマル酸クレマスチン、プロメタジン、ロラチジン、デスロラチジン、塩酸ジフェンヒドラミンおよびフェキソフェナジン、アクチバスチン、アステミゾール、アゼラスチン、エバスチン、エピナスチン、ミゾラスチンおよびテフェナジン並びに日本国特許第2004107299号、国際公開第03/099807号および国際公開第04/026841号に開示されたものがある。
【0141】
また、本発明治療剤と抗コリン作用性または抗ムスカリン性薬剤、ステロイド類、ベータ−2アゴニスト、PDE4阻害剤、ドーパミン受容体アゴニスト、LTD4アンタゴニストまたはLTB4アンタゴニストとの組み合わせも使用され得る。本発明薬剤と抗炎症剤の他の有用な組み合わせは、ケモカイン受容体の他のアンタゴニスト、例えばCCR−1、CCR−3、CCR−4、CCR−5、CCR−6、CCR−7、CCR−8、CCR−9およびCCR10、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、特にCCR−5アンタゴニスト、例えばSchering-Plough アンタゴニストSC−351125、SCH−55700およびSCH−D、Takeda アンタゴニスト、例えばN−[[4−[[[6,7−ジヒドロ−2−(4−メチルフェニル)−5H−ベンゾシクロヘプテン−8−イル]カルボニル]アミノ]フェニル]−メチル]−テトラヒドロ−N,N−ジメチル−2H−ピラン−4−アミニウムクロリド(TAK−770)、米国特許第6166037号(特に請求項18および19)、国際公開第0066558号(特に請求項8)、国際公開第0066559号(特に請求項9)、国際公開第04/018425号および国際公開第04/026873号記載のCCR−5アンタゴニストとの組み合わせである。
【0142】
また、さらなる治療剤が、他のサイトカイン結合分子、特に他のサイトカインの抗体から成る群から選択され得、特に例えばPCT/EP2005/00836に記載された抗IL−4抗体、抗IgE抗体、例えばXolair(登録商標)、抗IL31抗体、抗IL31R抗体、例えば国際公開第05/007699号に記載された抗IL13抗体、抗エンドグリン抗体、抗IL1b抗体、抗TSLP抗体または別の抗hTSLPR抗体との組み合わせがある。
【0143】
本発明の抗hTSLPRアンタゴニスト抗体は、対象の治療および予防の両処置に使用され得る。治療適用では、抗hTSLPRアンタゴニスト抗体(例、ヒト化抗hTSLPR抗体)を含む組成物を、TSLPシグナリングにより誘発されるかまたはそれに随伴するアレルギー疾患に既に罹患している対象に投与する。組成物は、病状およびその合併症を治療するか、その進行を部分的に止めるかまたは検出可能な形で遅らせるのに十分な量で抗体を含む。予防適用では、モノクローナル抗hTSLPR抗体を含む組成物を、アレルギー性炎症障害にまだ罹患していない患者に投与する。むしろ、それらは、アレルギー性炎症障害を発症する危険があるか、その素因を有する対象に向けられたものである。対象に対する上記適用により、患者の抵抗力を高めるか、またはTSLPシグナリングが介在するアレルギー性炎症障害の進行を遅らせることが可能となる。
【0144】
VII.医薬組成物
本発明は、医薬上許容される担体と一緒に製剤化された抗hTSLPRモノクローナル抗体(インタクトまたは結合フラグメント)を含む医薬組成物を適用する。さらに組成物は、所与のアレルギー性障害の処置または予防に適した他の治療剤、例えば上記で示した公知抗アレルギー剤を含み得る。医薬用担体は、組成物を増強または安定化させるか、または組成物を製造し易くする。医薬上許容される担体には、生理学的に適合し得る溶媒、分散媒質、コーティング剤、抗菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。
【0145】
本発明の医薬組成物は、当業界で公知の様々な方法により投与され得る。投与経路および/または方式は、所望の結果により異なる。投与は静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下経路であるか、または標的部位の近位への投与が好ましい。医薬上許容される担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例、注射または注入による)に適切なものとすべきである。投与経路によっては、活性化合物、すなわち抗体、二重特異性および多重特異性分子は、酸の作用および化合物を不活化し得る他の天然条件から化合物を保護する材料でコーティングされ得る。
【0146】
組成物は無菌かつ流動性にするべきである。例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合に要求される粒子サイズの維持により、そして界面活性剤の使用により適切な流動性が維持され得る。多くの場合、等張剤、例えば糖類、マンニトールまたはソルビトールなどのポリアルコール類、および塩化ナトリウムを組成物中に含ませるのが好ましい。例えばモノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンなどの吸収遅延剤を組成物中に含ませることにより、注射可能組成物の長期間吸収が実現し得る。
【0147】
本発明の医薬組成物は、当業界でよく知られた方法に従って製造され、常用手順で実施され得る。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Co., 第20版、2000;および Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson 編、Marcel Dekker, Inc., ニューヨーク、1978 参照。医薬組成物は、好ましくはGMP条件下で製造される。典型的には、治療上効果的な用量または有効用量の抗hTSLPR抗体を本発明医薬組成物中で使用する。抗hTSLPR抗体は、当業者に周知の慣用的方法により医薬上許容される投薬形態に製剤化される。投薬レジメンを調節することにより、最適な所望の応答(例、治療応答)が誘導される。例えば、単一ボーラスを投与することもあれば、時間をかけて幾つかの分割用量を投与することもあれば、治療状況の緊急性による指示に応じて用量を減少または増加させることもあり得る。投与が容易で投薬量の均一性が保たれる単位用量形態で非経口組成物を製剤化するのが特に有利である。本明細書で使用されている単位用量形態とは、処置される対象用の単位投薬量として適合させた物理的に独立した単位をいい、各単位は、必要とされる医薬用担体と共に所望の治療効果を生じるように算出された予め定められた量の活性化合物を含有する。
【0148】
本発明医薬組成物における有効成分の実際の用量レベルを変えることにより、患者に毒性を呈することなく、特定の患者、組成物および投与方式について所望の治療応答を引き出すのに有効な量の有効成分を含ませることができる。選択される用量レベルは、使用される本発明の特定組成物、またはそのエステル、塩またはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用されている特定化合物の排出速度、処置の持続時間、使用される特定組成物と併用される他の薬剤、化合物および/または材料、処置されている患者の年齢、性別、体重、全般的健康状態および病歴などの因子を含む様々な薬物動態因子により変動する。
【0149】
医師または獣医は、医薬組成物中で使用する本発明抗体の投薬を、所望の治療効果の達成に要求されるレベルより低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投薬量を増加させ得る。一般に、本明細書記載のアレルギー性炎症障害の処置についての本発明組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトか動物かという点、投与されている他の医薬、および処置が予防的なものか治療的なものかという点を含む、多くの異なる因子により変動する。安全性および有効性を最適にするためには、処置の投薬量を滴定することが必要である。抗体での投与については、用量は、宿主体重に基づくと約0.0001〜100mg/kg、さらに通常は0.01〜5mg/kgの範囲である。例えば、投薬量は、体重に基づくと1mg/kgまたは10mg/kgまたは1〜10mg/kgの範囲内であり得る。典型的な治療計画は、2週間ごとに1回または月1回または3〜6か月ごとに1回の投与を必要とする。
【0150】
抗体は、通常複数回にわたって投与される。一投薬間の間隔は、週単位、月単位または年単位であり得る。また、患者における抗hTSLPR抗体の血中レベルの測定結果による指示に応じて間隔は不定期的な場合もあり得る。方法によっては、投薬量を調節することにより、血漿抗体濃度を1〜1000μg/mlに到達させる場合もあれば、25〜300μg/mlとする場合もある。別法として、抗体は持効型製剤として投与され得、その場合投与頻度は少なくて済む。投薬量および頻度は、患者における抗体の半減期により異なる。一般に、ヒト化抗体は、キメラ抗体および非ヒト抗体の場合より長い半減期を示す。投薬量および投与頻度は、処置が予防的なものか治療的なものかにより異なり得る。予防適用では、比較的低用量を長期間にわたって比較的間隔をあけて投与する。患者によっては、残りの生涯ずっと処置を受け続ける場合もある。治療適用では、病気の進行が低下するかまたは終結するまで、好ましくは患者が病状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高用量を必要とする場合もある。その後、患者は予防的措置を受けることになり得る。
【0151】
以上、本明細書では、主に、NVP164−1として知られる抗体に関するものとして本発明の実施態様について述べてきた。しかしながら、本明細書の読者であれば、全ての均等内容の実施態様がNVP163−1として知られる抗体に関しても具体的および個々に想定され、それら自体下記に添付の請求の範囲に従い得る本発明実施態様を形成することは容易に理解できるはずである。
【実施例】
【0152】
実施例
以下の実施例は、本発明のさらなる説明であり、その範囲を制限するものではない。本発明の他の変形も当業者であれば容易に理解できるはずであり、添付の請求の範囲に包含されるものとする。
【0153】
1.ELISA
ELISAに使用されるタンパク質は、hTSLPR/hFc(R&D systems,#981−TR)、hIL7Rα/hFc(R&D systems,#306−IR)またはmTSLPR/hFc(R&D Systems,#546−TR)であった。Maxisorp 384ウェルプレート(Nunc、ロチェスター、ニューヨーク、# 464718)を、4℃で一晩、5μg/μLの各タンパク質25μLでコーティングした。コーティングしたプレートを、PBS+0.05% Tween 20(PBST)で洗浄し、PBS中1%のBSA80μLにより遮断し、PBSTで再び洗浄した。プレートを、20μLのHRP−コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2特異抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,#109−035−097)および20μLのTMB基質(KPL,#50−76−05)と連続的にインキュベーションし、650nMの吸光度で読み取った。プレートをインキュベーション間にPBSTで洗浄した。図1、2、4、5および6参照。
【0154】
2.リポーター遺伝子検定法(RGA)
hTSLPR/hIL7Rα/Stat5−Lucを安定して過剰発現するマウスプロB細胞系、Ba/F3細胞をRGAに使用した。10%FBSおよび10ng/mLのhTSLP(R&D Systems,#1398−TS/CF)を含有するRPMI−1640において、安定した細胞を維持した。細胞をRPMI−1640+10%FBSで1回洗浄し、5×105細胞/mLで再懸濁し、37℃組織培養インキュベーター中において5%CO2で一晩、384ウェルプレート中20μL/ウェルで播種した。10μLの4×TSLP(4ng/μL)を添加する前、10μLの抗体を細胞に加え、37℃で1時間インキュベーションした。37℃で6時間インキュベーションした後、20μLのBright-Glo (Promega,#2620)を各ウェルに添加し、発光プレートリーダーを用いてプレートを読み取った。図3、7および8参照。
【0155】
3.さらなる特性確認
国際公開第2007/112146号の文書でNV115−3Bとして称されるTSLPR抗体は、NV115−3B−IgG1のFabフラグメントである。NV115−3B−IgG1は、Fabフラグメントの完全長IgG1である。NV115−3B−IgG1は、強い免疫原性によりその各霊長類薬物動態(PK)試験(下記図10C参照)に通ることができず、後続の多回投与毒性試験は除外された。上記国際公開第2007/112146号からのTSLPR抗体は、本発明者らがこの免疫原性の問題を起こし得ると予測していた重および軽鎖配列の両方における2サブクラスのヒト生殖細胞系配列を当初より含んでいた。単一サブクラスの重鎖および単一サブクラスの軽鎖を有するように、第2世代候補NV164−1を作製した。NV164−1は、ヒトTSLPRへの結合特異性(図4)、カニクイザルTSLPRとの交差反応性(図5)、およびインビトロ検定法における同等の生物活性(図6、7、8および9)を示した。それに続いて、低および高用量での霊長類PK試験でそれを試験した(図10AおよびB)。PKの結果は、高用量(30mg/kg)では、潜在的免疫原性に対する寛容を生じ、低用量(5mg/kg)ではある程度の免疫原性を誘導するが、NV115−3B−IgG1より免疫原性はかなり低いことを示していた。したがって、生殖細胞系配列の単一サブクラスをもつこの標的に対し遺伝子操作が加えられた抗体は、免疫原性に対して有益な効果を有することがわかる。
【0156】
NV164−1についての様々な配列情報を、下記配列番号1〜14に示す。
NV163−1についての様々な配列情報を、下記配列番号15〜24に示す。
【0157】
配列情報
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
サイトカインおよび免疫細胞は、特異的な生理学的機構または経路、例えば様々な炎症性障害に至る経路に介在する。ヒト胸腺間質性リンホポエチン(TSLP)は、ヒト上皮細胞から産生されるIL−7様サイトカインである。それは、B細胞の分化を促進し、また胸腺細胞および成熟T細胞の両方を共刺激し得る。TSLPは、ヒトCD11c+樹状細胞(DC)上の特異的ヘテロ二量体受容体に結合する。受容体ヘテロ二量体は、共通のガンマ様受容体鎖(TSLP受容体;TSLPR)およびIL−7R−α鎖により構成される。例えば、Tonozuka et al., Cytogenet. Cell Genet. 93:23-25, 2001;Pandey et al., Nat. Immunol. 1:59-64, 2000;L.S.Park et al., J. Exp. Med. 192:659-670, 2000 および Reche et al., J. Immunol. 167:336-343, 2001 参照。受容体へリガンドが結合することにより、DCによるTH2−誘引性ケモカイン類、TARC(胸腺および活性化調節ケモカイン)およびMDC(マクロファージ由来ケモカイン)の分泌が誘導される。さらに、TSLPはまた、強力なDC活性化、ナイーブCD4+T細胞拡大、および後続のTH2表現型への分極化、向アレルギー性サイトカイン類インターロイキン4(IL−4)、IL−5、IL−13および腫瘍壊死因子−αの産生を誘導する。
【背景技術】
【0002】
また、TSLPシグナリングにより、Stat5転写因子の活性化がもたらされることも見出された。さらに、急性および慢性の両アトピー性皮膚炎患者らは、皮膚病変においてTSLPを過剰発現することが報告されていることから、TSLP発現がインビボでのアレルギー性炎症に関与していることが推察される。皮膚ケラチノサイトのほかに、高レベルのTSLP発現が、気管支上皮細胞、平滑筋および肺線維芽細胞でも見い出されることから、呼吸器アレルギー適応症におけるTSLPについての潜在的役割についても確認されている。さらに、IgE活性化マスト細胞は、非常に高いレベルのTSLPを発現するもので、TH2表現型の維持に関与し得る機構をもたらす。
【0003】
西欧諸国における人口の約20%は、喘息、鼻炎、アトピー性皮膚炎および食物アレルギーを含む炎症性障害、例えばアレルギー疾患に罹患している。アトピー性皮膚炎患者の50%〜80%は、喘息またはアレルギー性鼻炎を発病または発症している。現在までのところ、アレルギー誘発性喘息、アトピー性皮膚炎、およびアレルギー性鼻炎には治療法が無い。例えば喘息にはベータ−2アドレナリン受容体アンタゴニスト、アトピー性皮膚炎にはエリデル(Elidel)、およびアレルギー性鼻炎にはH1−抗ヒスタミンといった現行の処置は、対症療法として使用されている。したがって、当業界ではこれらの炎症性障害、特にアレルギー性炎症を処置するより良い治療法に対する要望が高まっている。本発明は、この問題および他の問題に取り組むものである。
【発明の概要】
【0004】
発明の要約
本発明の一態様は、標的タンパク質ヒト胸腺間質性リンホポエチン受容体(hTSLPR)に特異的な抗原結合領域を伴う単離されたヒトまたはヒト化抗体またはその機能性フラグメントに関するものであり、抗体またはその機能性フラグメントはhTSLPRに結合する。一関連実施態様において、hTSLPRへの結合は、少なくとも炎症性メディエーター放出を阻止する細胞表面hTSLP受容体結合により決定される。
【0005】
さらなる実施態様において、本発明は、抗体またはその機能性フラグメントの単離抗原結合領域を提供する。ある種の実施態様では、単離された抗原結合領域は、配列番号1に示されたアミノ酸配列およびその保存的変異型を有するCDRH1領域を含む。本明細書記載の保存的変異型は、同定されたアミノ酸配列のいずれかにおけるアミノ酸残基を含む。一関連実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号2に示されたアミノ酸配列およびその保存的変異型を有するCDRH2領域である。別の関連実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号3に示されたアミノ酸配列およびその保存的変異型を有するCDRH3領域である。
【0006】
別の実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号4に示されたアミノ酸配列およびその保存的変異型を有するCDRL1領域である。さらに別の関連実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号5に示されたアミノ酸配列およびその保存的変異型を有するCDRL2領域である。さらに別の関連実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号6に示されたアミノ酸配列およびその保存的変異型を有するCDRL3領域である。
【0007】
別の実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号7に示された可変領域アミノ酸配列、および配列番号7のCDR領域とCDR領域における少なくとも60、70、80、90または95パーセントの配列同一性を有する配列を有する重鎖である。一関連実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号8に示された可変領域アミノ酸配列、および配列番号8のCDR領域とCDR領域における少なくとも60、70、80、90または95パーセントの配列同一性を有する配列を有する軽鎖である。
【0008】
別の態様において、本発明は、hTSLPRに対するモノクローナルアンタゴニスト抗体を提供する。本発明の抗TSLPR抗体の中には、配列番号7の重鎖可変領域配列および配列番号8の軽鎖可変領域配列を含むレファレンス抗体の場合と同じ結合特異性を有するものもある。これらの抗体としては、レファレンス抗体の場合と同じ結合特異性を呈する完全ヒト抗体も挙げられる。抗体の中には、配列番号1、2または3の重鎖相補性決定領域(CDR)配列および/または配列番号4、5または6の軽鎖CDR配列を有するものがある。
【0009】
抗hTSLPR抗体の中には、それぞれ配列番号1、配列番号2および配列番号3である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、およびそれぞれ配列番号4、配列番号5および配列番号6である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を有するものもある。本発明の他の抗体の中には、配列番号7と少なくとも85%同一である重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号8と少なくとも85%同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列を含むものもある。本発明の他の抗hTSLPR抗体の中には、配列番号7と同一である重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号8と同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列をヒトIgG定常領域(例、IgG1またはIgG4)と共に有するものもある。
【0010】
本発明の抗hTSLPR抗体としては、マウス抗体もある。他の抗体としてはキメラ抗体もある。キメラ抗体の中には、ヒト重鎖定常領域およびヒト軽鎖定常領域を有するものもある。本発明の他の抗hTSLPR抗体としては、ヒト化抗体もある。本発明の他の抗hTSLPR抗体としては、配列番号7の重鎖可変領域配列および配列番号8の軽鎖可変領域配列を含む抗体と同じ結合特異性を呈する完全ヒト抗体もある。本発明はまた、1本鎖抗体、例えばFabフラグメントを提供する。抗hTSLPR抗体の中には、IgG1アイソタイプに属するものもある。他の抗体の中には、IgG4アイソタイプに属するものもある。
【0011】
別の態様において、本発明は、本発明抗hTSLPR抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含むポリペプチドをコード化する単離または組換えポリヌクレオチド(例、DNA)を提供する。例えば、ポリヌクレオチドは、それぞれ上記で示した重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む抗体重鎖をコード化し得る。ポリヌクレオチドはまた、それぞれ上記で示したCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む抗体軽鎖をコード化し得る。本発明のポリヌクレオチドには、配列番号7の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟重鎖可変領域配列をコード化するものもある。他のポリヌクレオチドには、配列番号8の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟軽鎖可変領域配列をコード化するものもある。これらのポリヌクレオチドの中には、配列番号7の成熟領域と同一である成熟重鎖可変領域配列または配列番号8の成熟領域と同一である成熟軽鎖可変領域配列をコード化するものもある。本発明の重および軽鎖をコード化するポリヌクレオチドの典型的配列は、配列番号13および14をそれぞれ含む。
【0012】
別の態様において、本発明は、(1)本発明の抗hTSLPR抗体の重鎖をコード化する組換えDNAセグメント、および(2)抗体の軽鎖をコード化する第2の組換えDNAセグメントをもつ単離宿主細胞を提供する。宿主細胞の中には、組換えDNAセグメントが、第1および第2プロモーターとそれぞれ機能し得るように結合されており、宿主細胞で発現され得る場合もある。これらの宿主細胞の中には、個々に重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列(例、配列番号1、2および3)、および個々に軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列(例、配列番号4、5および6)を有するモノクローナル抗体を発現するものもある。他の宿主細胞には、配列番号7の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟重鎖可変領域配列、および配列番号8の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟軽鎖可変領域配列を含む抗hTSLPR抗体を発現するものもある。これらの宿主細胞の中には、配列番号7の成熟領域と同一である成熟重鎖可変領域配列および配列番号8の成熟領域と同一である成熟軽鎖可変領域配列を含む抗hTSLPR抗体を発現するものもある。宿主細胞には、ヒト以外の哺乳類細胞(例、CHO、NS0、SP2/0)も含まれる。
【0013】
別の態様において、本発明は、対象、例えばヒト患者における炎症性疾患または障害の処置方法を提供する。これらの方法では、抗hTSLPR抗体の有効量を含む医薬組成物を対象に投与する。典型的には、抗hTSLPR抗体は、配列番号7の重鎖可変領域配列および配列番号8の軽鎖可変領域配列を含む抗hTSLPR抗体の場合と同じ結合特異性を有する。これらの治療方法の中には、完全ヒト抗体を使用するものもある。方法によっては、抗TSLPR抗体が、それぞれ配列番号1、2および3である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、およびそれぞれ配列番号4、5および6である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む場合もある。方法によっては、使用する抗hTSLPR抗体が、配列番号7の成熟領域と同一である成熟重鎖可変領域配列、および配列番号8の成熟領域と同一である成熟軽鎖可変領域配列を含む場合もある。上記方法の中には、アレルギー性炎症疾患に苦しむ対象の処置を目的とするものもある。処置が奏功し得るアレルギー性炎症疾患の例には、アトピー性皮膚炎、喘息またはアレルギー性鼻炎がある。
【0014】
さらに別の実施態様において、本発明は、抗体またはその機能性フラグメントの単離抗原結合領域を提供する。ある種の実施態様では、単離抗原結合領域は、配列番号1に示されたアミノ酸配列、またはその保存的変異型を有するCDRH1領域を含む。本明細書に記載されている、保存的変異型は、同定されたアミノ酸配列のいずれかにおけるアミノ酸残基を含む。関連実施態様では、単離抗原結合領域は、配列番号2に示されたアミノ酸配列、またはその保存的変異型を有するCDRH2領域である。別の関連実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号3に示されたアミノ酸配列、またはその保存的変異型を有するCDRH3領域である。
【0015】
別の実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号4に示されたアミノ酸配列、またはその保存的変異型を有するCDRL1領域である。さらに別の関連実施態様では、単離抗原結合領域は、配列番号5に示されたアミノ酸配列、またはその保存的変異型を有するCDRL2領域である。さらに別の関連実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号6に示されたアミノ酸配列、またはその保存的変異型を有するCDRL3領域である。
【0016】
別の実施態様では、単離抗原結合領域は、配列番号7に示された可変領域アミノ酸配列、および配列番号7のCDR領域とCDR領域において少なくとも60、70、80、90または95パーセントの配列同一性を有する配列を有する重鎖である。一関連実施態様において、単離抗原結合領域は、配列番号8に示された可変領域アミノ酸配列、および配列番号8のCDR領域とCDR領域において少なくとも60、70、80、90または95パーセントの配列同一性を有する配列を有する軽鎖である。
【0017】
別の態様において、本発明は、hTSLPRに対するモノクローナルアンタゴニスト抗体を提供する。本発明の抗TSLPR抗体の中には、配列番号7の重鎖可変領域および配列番号8の軽鎖可変領域を含むレファレンス抗体の場合と同じ結合特異性を有するものもある。これらの抗体の中には、レファレンス抗体の場合と同じ結合特異性を呈する完全ヒト抗体もある。
【0018】
別の態様において、本発明は、本発明の抗hTSLPR抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含むポリペプチドをコード化する単離または組換えポリヌクレオチド(例、DNA)を提供する。例えば、ポリヌクレオチドは、それぞれ上記で示した重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む抗体重鎖をコード化し得る。ポリヌクレオチドはまた、それぞれ上記で示したCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む抗体軽鎖をコード化し得る。本発明のポリヌクレオチドには、配列番号7の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟重鎖可変領域配列をコード化するものもある。他のポリヌクレオチドには、配列番号8の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟軽鎖可変領域配列をコード化するものもある。これらのポリヌクレオチドの中には、配列番号7の成熟領域と同一である成熟重鎖可変領域配列または配列番号8の成熟領域と同一である成熟軽鎖可変領域配列をコード化するものもある。
【0019】
別の態様において、本発明は、(1)本発明の抗hTSLPR抗体の重鎖をコード化する組換えDNAセグメント、および(2)抗体の軽鎖をコード化する第2組換えDNAセグメントをもつ単離宿主細胞を提供する。宿主細胞によっては、組換えDNAセグメントが、第1および第2プロモーターとそれぞれ機能し得るように結合されており、宿主細胞で発現され得る場合もある。これらの宿主細胞の中には、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列(例、配列番号1、2および3)、および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列(例、配列番号4、5および6)をそれぞれ有するモノクローナル抗体を発現するものもある。他の宿主細胞には、配列番号7の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟重鎖可変領域配列、および配列番号8の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟軽鎖可変領域配列を含む抗hTSLPR抗体を発現するものもある。これらの宿主細胞の中には、配列番号7の成熟領域と同一である成熟重鎖可変領域配列および配列番号8の成熟領域と同一である成熟軽鎖可変領域配列を含む抗hTSLPR抗体を発現するものもある。宿主細胞には、ヒト以外の哺乳類細胞(例、CHO、NS0、SP2/0)も含まれる。
【0020】
別の態様において、本発明は、対象、例えばヒト患者における炎症性疾患または障害の処置方法を提供する。これらの方法では、抗hTSLPR抗体の有効量を含む医薬組成物を対象に投与する。典型的には、抗hTSLPR抗体は、配列番号7の重鎖可変領域配列および配列番号8の軽鎖可変領域配列を含む抗hTSLPR抗体および/または配列番号9の重鎖および配列番号10の軽鎖を含む単離抗体の場合と同じ結合特異性を有する。これらの治療方法の中には、完全ヒト抗体を使用する場合もある。これらの方法の中には、アレルギー性炎症疾患に苦しむ対象の処置を指向するものもある。処置に応答し得るアレルギー性炎症疾患の例には、アトピー性皮膚炎、喘息またはアレルギー性鼻炎がある。
【0021】
本発明は、他の態様において、配列番号9の重鎖および配列番号10の軽鎖を含む(から成る)単離抗hTSLPR抗体を提供する。本発明はまた、配列番号9の重鎖および配列番号10の軽鎖を含む(から成る)抗体を、一般に容認された医薬業務上必要とされている公知の医薬上許容される担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【0022】
さらに別の実施態様において、本発明は、抗体またはそのフラグメントである第1成分および第2アミノ酸配列を有する第2成分から成る免疫コンジュゲートを提供する。例えば、免疫コンジュゲートは細胞毒素であるか、または免疫コンジュゲートは、hTSLPRとは異なる標的についての結合特異性を有する結合タンパク質または抗体である。
【0023】
別の実施態様において、本発明は、先に記載した本発明の抗体またはその抗体フラグメント(例、配列番号9および10の抗体)を有するキットを提供する。実施態様によっては、キットは、さらに医薬上許容される担体または賦形剤を含む場合もある。他の関連実施態様では、キット中の抗体は単位用量で存在する。さらに別の関連実施態様において、キットは、対象への投与に関する使用説明書を含む。
【0024】
明細書の残りの部分および請求の範囲を参照することにより、本発明の性質および利点に対する理解がさらに深められ得るはずである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ELISAにおけるヒトTSLPRへのNV163−1Fab’およびNV164−1−Fab’の結合。ELISAプレートをhTSLPRでコーティングした。プレートを、抗hTSLPR Fab’、HRP−コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2特異抗体、およびTMB基質と連続的にインキュベーションした。NV163−1−Fab’およびNV164−1−Fab’を、示されている通り2.1×10−14〜3.3×10−8Mの濃度範囲で使用した。NV164−1は、配列番号7および8の可変領域を含む。NV164−1−IgG1は、配列番号9の重鎖および配列番号10の軽鎖により構成されており、NV164−1は本発明の一具体例である。NV161−1は、配列番号21および配列番号22の可変領域を含む。
【図2】ELISAにおけるヒトTSLPR、マウスTSLPRおよびヒトIL7RαへのNV163−1−Fab’およびNV164−1−Fab’の結合特異性。ELISAプレートを、hTSLPR、mTSLPRまたはhILRaでコーティングした。プレートを、抗hTSLPR Fab’、次いでHRP−コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2特異抗体およびTMB基質とインキュベーションした。Nv163−1−Fab’およびnv164−1−Fab’を、示されている通り2.1×10−14〜3.3×10−8Mの濃度範囲で使用した。
【図3】ルシフェラーゼリポーター遺伝子検定法におけるNV163−1−Fab’およびNV164−1−Fab’のアンタゴニスト活性。hTSLPR/hIL7Rα/Stat5−Lucを安定して過剰発現するBa/F3細胞を、Fab’とプレインキュベーションし、次いで1ng/mlのヒトTSLPで刺激した。6時間インキュベーション後、Bright-Glo を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。NV163−1−Fab’およびNV164−1−Fab’を、示されている通り1.7×10−13〜3.0×10−8Mの濃度範囲で使用した。この図は、多数の個々の実験の代表的なものである。IC50は、NV163−1−Fab’については2.7±1.9nMであり、NV164−1−Fab’については4.0±2.1nMである(n=4)。
【図4】ELISAにおけるヒトTSLPR、マウスTSLPRおよびヒトIL7RαへのNVP164−1−IgG1の結合特異性。ELISAプレートを、hTSLPR、mTSLPRまたはhILRαでコーティングした。プレートを、抗hTSLPR、NVP−164−IgG1、次いでHRP−コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2特異抗体およびTMB基質とインキュベーションした。NVP164−1−IgG1を、示されている通り1.2×10−17〜1.2×10−7Mの濃度範囲で使用した。
【図5】ELISAにおけるヒトおよびカニクイザルTSLPRへのNVP164−1−IgG1の交差反応性。ELISAプレートを、hTSLPRまたはcTSLPRでコーティングした。プレートを、抗hTSLPR、NVP164−1−IgG1、次いでHRP−コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2特異抗体およびTMB基質とインキュベーションした。NVP164−1−IgG1を、示されている通り2.1×10−14〜1.0×10−7Mの濃度範囲で使用した。
【図6】ELISAにおけるヒトTSLPRへのNV164−1−IgG1およびNV115−3B−IgG1の結合。ELISAプレートを、hTSLPRでコーティングした。プレートを、NV164−1−IgG1またはNV115−3B−IgG1、次いでHRP−コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2特異抗体およびTMB基質とインキュベーションした。NV164−1−IgG1およびNV115−3B−IgG1を、示されている通り2.1×10−14〜1.0×10−7Mの濃度範囲で使用した。
【図7】ルシフェラーゼリポーター遺伝子検定法におけるNV164−1−IgG1およびNV115−3B−IgG1のアンタゴニスト活性。hTSLPR/hIL7Rα/Stat5−Lucを安定して過剰発現するBa/F3細胞を、抗体とプレインキュベーションし、次いで1ng/mlの組換えヒトTSLPで刺激した。6時間インキュベーション後、Bright-Glo(Promega)を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。抗体を、示されている通り1.7×10−13〜3.0×10−8Mの濃度範囲で使用した。このグラフは、個々の代表的実験の1つから作成されている。IC50は、NV164−1−IgG1については221±101pM(n=8)であり、NV115−3B−IgG1については126±72pMである(n=6)。
【図8】ルシフェラーゼリポーター遺伝子検定法における天然供給源TSLPに対するNV164−1−IgG1およびNV115−3B−IgG1のアンタゴニスト活性。hTSLPR/hIL7Ra/Stat5−Lucを安定して過剰発現するBa/F3細胞を、抗体とプレインキュベーションし、次いで1ng/mlの天然ヒトTSLPで刺激した。6時間インキュベーション後、Bright-Gloを用いてルシフェラーゼ活性を測定した。抗体を、示されている通り6.7×10−14〜6.7×10−9Mの濃度範囲で使用した。IC50は、NV164−1−IgG1については40±10pMであり、NV115−3B−IgG1については50±25pMである。
【図9】1次ヒト単球からのTARC分泌の阻害。ヒト血液を健康な成人ボランティアから採取した。PBMCをフィコール密度遠心分離により単離した。単球単離キットII(Miltenyi Biotec.)を用いて単球を単離した。新たに単離した単球を抗体と20分間インキュベーションし、次いで1ng/mlのヒトTSLPで24時間処理した。TARCの分泌量をサンドイッチELISAにより測定した。抗体を、示されている通り6.7×10−13〜6.7×10−8Mの濃度範囲で使用した。IC50は、NV164−1−IgG1については11±10pMであり、NV115−3B−IgG1については10±4pMである。
【図10】単一用量カニクイザル薬物動態データ。抗体の血中残存量を競合ELISAにより測定した。遊離抗体力価の増加が後の時点で観察されていることから、標識抗体は抗イディオタイプ抗体により結合されているため、ELISAプレートへの結合には利用され得なかったことが推察される。したがって、これは免疫原性を示唆している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な記載
本発明は、一つにはヒトTSLPRに対するアンタゴニスト抗体の本発明者らによる開発に基づいている。インビトロで作製されたマウスまたはキメラ抗hTSLPR抗体で生成される抗hTSLPR抗体は、TSLPシグナリングにより伝達される活性、例えばTSLP伝達による細胞増殖を阻害し得ることが見出された。すなわち、これらの抗体は、TSLPシグナリング活性により伝達されるかまたはそれらに随伴する多数の疾患または障害、例えばアトピー性皮膚炎および喘息などのアレルギー性炎症疾患に対する治療剤または予防剤として有用である。以下の項では、本発明組成物の製造および使用、および本発明方法の実施に関するガイダンスを提供する。
【0027】
I.定義
特に断らなければ、本明細書で使用されている技術的および科学的用語は全て、当業者が一般的に理解しているものと同じ意味を有するものとする。次の参考文献は、当業者に対し、本発明で使用されている用語の多くの一般的定義を提供する:Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology, Smith et al.(編), Oxford University Press (改訂版, 2000); Dictionary of Microbiology and Molecular Biology, Singleton et al. (編),John Wiley & Sons (3PrdP版, 2002); および A Dictionary of Biology (Oxford Paperback Reference),Martin および Hine(編),Oxford University Press (4PthP版, 2000)。さらに、本発明の実践に際し読者の助けとなるように以下に定義を記す。
【0028】
本発明をさらに理解し易くするため、まずある一定の用語について定義する。さらに詳細な記載全体を通して追加的定義を示す。
【0029】
「免疫応答」の語は、侵入性病原体、病原体が感染した細胞または組織、癌性細胞、または自己免疫性または病的炎症の場合には、正常なヒト細胞または組織を選択的に損傷するか、破壊するか、または人体から排除する例えばリンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、および上記細胞または肝臓により産生される可溶性高分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の作用をいう。
【0030】
「シグナル伝達経路」は、細胞の一部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達においてある一定の役割を演じる様々なシグナル伝達分子間における生化学的関係をいう。
【0031】
本明細書でいう「抗体」の語は、抗体全体およびその抗原結合フラグメント(すなわち、「抗原結合部分」)または1本鎖を包含する。天然に存する「抗体」は、ジスルフィド結合により相互連結された少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書では略してVH)および重鎖定常領域により構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3により構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書では略してVL)および軽鎖定常領域により構成される。軽鎖定常領域は、1ドメイン、CLにより構成される。さらにVHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存性の高い領域が散在した、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域に細別され得る。各VHおよびVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4という順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDRおよび4つのFRにより構成される。重および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合に介在し得る。
【0032】
本明細書で使用されている抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗原部分」)の語は、抗原(例、TSLPR)への特異的結合能力を保持している抗体の完全長または1つまたはそれ以上のフラグメントをいう。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のフラグメントにより遂行され得ることが立証された。抗体の「抗原結合部分」という語の範囲内に含まれる結合フラグメントの例には、VL、VH、CLおよびCH1ドメインから成る1価フラグメントであるFabフラグメント、ヒンジ領域がジスルフィド架橋により結合された2つのFabフラグメントを含む2価フラグメントであるF(ab)2フラグメント、VHおよびCH1ドメインから成るFdフラグメント、抗体の単一アームのVLおよびVHドメインから成るFvフラグメント、VHドメインから成るdAbフラグメント(Ward et al., 1089 Nature 341:544-546)および単離された相補性決定領域(CDR)がある。
【0033】
さらに、Fvフラグメントの2つのドメインVLおよびVHは、別々の遺伝子によりコードされるが、それらは、VLおよびVH領域が対合して1価分子を形成している単一タンパク質鎖(1本鎖Fv(scFv)としても知られている;例えば、Bird et al., 1988 Science 242:423-426;および Huston et al., 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883 参照)としてそれらを構成させ得る合成リンカーにより、組換え技法を用いて接合され得る。上記1本鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合部分」という語の範囲内に含まれるものとする。これらの抗体フラグメントは、当業者に周知の慣用的技術を用いて得られ、インタクト抗体の場合と同様の実用性についてフラグメントをスクリーニングにかける。
【0034】
本明細書で使用されている「単離抗体」の語は、抗原特異性が異なる他の抗体を実質的に含まない抗体をいう(例、TSLPRと特異的に結合する単離抗体は、TSLPR以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、TSLPRと特異的に結合する単離抗体は、他の抗原、例えば他の種からのTSLPR分子との交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は、他の細胞性材料および/または化学物質を実質的に含まないものであり得る。
【0035】
本明細書で使用されている「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」の語は、単一分子組成の抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、特定の一エピトープについて単一結合特異性および親和性を示す。
【0036】
本明細書で使用されている「ヒト抗体」の語は、フレームワークおよびCDR領域が両方ともヒト起源の配列から誘導された可変領域を有する抗体を含むものとする。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もまた上記ヒト配列、例えばヒト生殖細胞系配列、またはヒト生殖細胞系配列の突然変異体から誘導される。本発明のヒト抗体は、ヒト配列によりコード化されないアミノ酸残基(例、インビトロでのランダムまたは位置指定突然変異導入により導入された突然変異またはインビボでの体細胞突然変異)を含み得る。
【0037】
「ヒトモノクローナル抗体」の語は、フレームワークおよびCDR領域が両方ともヒト配列に由来する可変領域を有する単一結合特異性を示す抗体をいう。一実施態様において、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合されたヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するヒト以外のトランスジェニック動物、例えばトランスジェニックマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマにより産生される。
【0038】
本明細書で使用されている「組換えヒト抗体」の語は、組換え手段により調製、発現、作製または単離されたヒト抗体、例えばヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックまたはトランスクロモソーマルである動物(例、マウス)またはそこから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子の全部または一部分の配列のスプライシングを含む他の手段により調製、発現、作製または単離された抗体を全て包含する。上記組換えヒト抗体は、フレームワークおよびCDR領域がヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列から誘導された可変領域を有する。しかしながら、ある種の実施態様では、上記組換えヒト抗体に対し、インビトロ突然変異が誘発(またはヒトIg配列についてトランスジェニックである動物を使用するとき、インビボ体細胞突然変異が誘発)され得るため、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VHおよびVL配列に由来し、関連したものでありながら、インビボでのヒト抗体生殖細胞系レパートリー内に天然には存在し得ない配列である。
【0039】
「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるかまたは改変されたクラス、エフェクター機能および/または種の定常領域、またはキメラ抗体に新しい特性を付与する全く異なる分子、例えば酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬剤などに結合されるように、定常領域またはその一部分が改変、置換または交換されているか、または(b)可変領域またはその一部分が、異なるかまたは改変された抗原特異性を有する可変領域により改変、置換または交換されている抗体分子である。例えば、下記実施例で示す通り、マウス抗hTSLPR抗体は、その定常領域をヒト免疫グロブリンからの定常領域と置き換えることにより修飾され得る。ヒト定常領域により置換されているため、キメラ抗体は、元のマウス抗体と比べてヒトでの抗原性が低いながらもヒトTSLPRを認識する際にその特異性を保持し得る。
【0040】
「ヒト化」抗体は、ヒトでの免疫原性が低いながらも非ヒト抗体の反応性を保持している抗体である。これは、例えば、非ヒトCDR領域を保持し、抗体の残りの部分をそれらのヒト対応物質(すなわち、定常領域および可変領域のフレームワーク部分)と置換することにより達成され得る。例えば、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855, 1984; Morrison および Oi, Adv. Immunol., 44:65-92, 1988; Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536, 1988; Padlan, Molec. Immun., 28:489-498, 1991;および Padlan, Molec. Immun., 31:169-217, 1994 参照。ヒト遺伝子工学技術の他の例には米国特許第5766886号で開示された Xoma 技術があるが、これに限定されるわけではない。
【0041】
本明細書で使用されている「ヒューマニアリング(Humaneering)」の語は、非ヒト抗体を遺伝子操作されたヒト抗体に変換する方法をいう(例えば、KaloBios の Humaneering(登録商標)技術参照)。
【0042】
本明細書で使用されている「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子により提供される抗体クラス(例、IgM、IgE、IgG、例えばIgG1またはIgG4)をいう。
【0043】
「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という表現を、本明細書では「抗原に特異的に結合する抗体」という表現と互換的に使用する。
【0044】
本明細書で使用されている、「ヒトTSLPRと特異的に結合する」抗体とは、200×10−12Mまたはそれ未満、150×10−12Mまたはそれ未満、または100×10−12Mまたはそれ未満のKDでヒトTSLPRに結合する抗体をいう。
【0045】
本明細書で使用されている「結合特異性」の語は、唯一の抗原決定基と反応する個々の抗体結合部位の能力をいう。抗体結合部位は、分子のFab部分に位置し、重および軽鎖の超可変領域から構築される。抗体の結合親和力は、単一抗原決定基と単一抗体結合部位間の反応の強度である。それは、抗原決定基と抗体結合部位間ではたらく引力と斥力の合計である。親和力は、抗原−抗体反応を説明する平衡定数である。
【0046】
2物体間の特異的結合とは、少なくとも1×107M−1、108M−1、109M−1または1010M−1の平衡定数(KA)での結合を意味する。抗体(例、抗hTSLPR抗体)に「特異的に(または選択的に)結合する」という表現は、タンパク質および他の生物製剤の異種集団におけるコグネイト抗原(例、ヒトTSLPRポリペプチド)の存在の決め手となる結合反応をいう。上記で示した平衡定数(KA)に加えて、本発明の抗hTSLPR抗体はまた、典型的には約1×10−2s−1、1×10−3s−1、1×10−4s−1またはそれ未満の解離定数(Kd)を有し、非特異的抗原(例、BSA)への結合に関するその親和力の少なくとも2倍である親和力でヒトTSLPRに結合する。「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という表現は、「抗原に特異的に結合する抗体」なる表現と本明細書では互換的に使用される。
【0047】
「エピトープ」の語は、抗体と特異的に結合し得るタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの化学的活性を示す表面分子群から成り、通常は特異的な3次元構造特性および特異的電荷特性を有する。コンホメーション的および非コンホメーション的エピトープは、後者ではなく前者への結合が変性溶媒の存在下では失われるという点で区別される。
【0048】
「核酸」の語は、本明細書では「ポリヌクレオチド」の語と互換的に使用され、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそのポリマーの1本鎖または2本鎖形態をいう。この語は、合成的、天然に存するもの、および非天然のものであり、レファレンス核酸と類似した結合特性を有し、レファレンスヌクレオチドと類似した形で代謝される、既知ヌクレオチド類似体または修飾されたバックボーン残基または結合を含む核酸を包含する。上記類似体の例には、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)があるが、限定するわけではない。
【0049】
特に断らなければ、特定核酸配列はまた、その保存的修飾変異型(例、縮重コドン置換形態)および相補的配列、並びに明確に示された配列を無条件で包含する。具体的には、下記で詳述しているとおり、縮重コドン置換は、1個またはそれ以上の選択された(または全ての)コドンの第3位を混合塩基および/またはデオキシイノシン残基により置き換えた配列を作製することにより達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081, 1991; Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608, 1985; および Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98, 1994)。
【0050】
「アミノ酸」の語は、天然および合成アミノ酸、並びに天然に存するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物質を包含する。天然アミノ酸は、遺伝コードによりコード化されるもの、並びに後で修飾されるそれらのアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメートおよびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルホスホニウムに結合しているアルファ炭素を有する化合物をいう。上記類似体は、修飾R基(例、ノルロイシン)または修飾ペプチドバックボーンを有するが、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。アミノ酸模倣物質は、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存するアミノ酸と同様に機能する化学的化合物をいう。
【0051】
本明細書で互換的に使用されている、「ポリペプチド」および「タンパク質」の語は、アミノ酸残基の重合体をいう。これらの語は、1個またはそれ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的化学模倣物質であるアミノ酸重合体、並びに天然アミノ酸重合体および非天然アミノ酸重合体に適用される。特に断らなければ、特定ポリペプチド配列はまた、無条件でその保存的修飾変異型も包含する。
【0052】
「保存的修飾変異型」の語は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用される。特定核酸配列に関して述べると、保存的修飾変異型とは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコード化する核酸、または核酸がアミノ酸配列をコード化しない場合には、本質的に同一の配列をいう。遺伝コードの縮重故に、所定のタンパク質をコード化する機能的に同一の核酸は多数存在する。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全てアミノ酸アラニンをコード化する。すなわち、アラニンがコドンにより特定されているどの位置においても、コドンは、コード化されたポリペプチドを改変することなく、示された対応するコドンのいずれかに改変され得る。上記核酸変異が「サイレント変異」であり、1種の保存的修飾変異である。また、ポリペプチドをコード化する本明細書における核酸配列はいずれも、核酸のあらゆる可能なサイレント変異を表す。当業者であれば、核酸における各コドン(ただし、通常メチオニンについての唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンについての唯一のコドンであるTGGを除く)に修飾を加えることにより、機能的に同一の分子が得られることを認めるはずである。したがって、ポリペプチドをコード化する核酸の各サイレント変異は表された各配列において潜在的なものである。
【0053】
ポリペプチド配列についての「保存的修飾変異型」は、ポリペプチド配列に対する個々の置換、欠失または付加を含むもので、アミノ酸が化学的に酷似したアミノ酸により置換されている。機能的に酷似したアミノ酸を示す同類置換表は当業界では周知である。上記の保存的修飾変異型は、さらに本発明の多型変異型、種間相同体および対立遺伝子も包含する。以下の8群は、互いに同類置換関係にあるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、トレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)(例、Creighton, Protein (1984)参照)。
【0054】
2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列という状況における「同一の」または「同一性」パーセントなる語は、同一である2つまたはそれ以上の配列または部分配列をいう。下記の配列比較アルゴリズムの一つを用いるか、または手動によるアラインメントおよび視覚検査により測定される比較ウインドウ全体、または指定領域における最大対応性について比較およびアラインメントを行ったとき、2つの配列が同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドを特定されたパーセンテージで有する場合(すなわち、特定領域全体において、または特定されていない場合、配列全体において60%の同一性、所望により65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%の同一性)、その2配列は「実質的に同一」である。所望により、同一性は、少なくとも約50ヌクレオチド(または10アミノ酸)長のある一定領域、またはさらに好ましくは100〜500または1000またはそれ以上のヌクレオチド(または20、50、200またはそれ以上のアミノ酸)長のある一定領域にわたって存在する。
【0055】
配列比較については、典型的には一配列が試験配列と比較する対象であるレファレンス配列として機能する。配列比較アルゴリズムを用いるとき、試験およびレファレンス配列をコンピューターに入力し、部分配列座標を指定し、必要ならば、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。デフォルトプログラムパラメーターが使用され得るか、または代替パラメーターが指定され得る。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターに基づいた、レファレンス配列に対する試験配列についての配列同一性パーセントを計算する。
【0056】
本明細書で使用されている「比較ウインドウ」は、20〜600、通常約50〜約200、さらに一般的には約100〜約150から成る群から選択される連続位置の数のいずれか1つのセグメントを指すものであり、2つの配列を最適となるように整列させた後、一方の配列と同数の連続位置をもつレファレンス配列との比較が可能となる。比較するための配列のアラインメント方法は当業界では公知である。比較を目的とする配列の最適アラインメントは、例えば、Smith および Waterman (1970) Adv. Appl. Math. 2:482cのローカルホモロジーアルゴリズムにより、Needleman および Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970 のホモロジーアラインメントアルゴリズムにより、Pearson および Lipman, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988 の類似性検索方法により、これらのアルゴリズムのコンピューターへの実装(Genetics Computer Group のWisconsin GeneticsソフトウェアパッケージにおけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、ウィスコンシン、マディソン、サイエンス・ドライブ575)により、または手動的アラインメントおよび視覚検査(例、Brent et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (ringbou ed., 2003)参照)により実施され得る。
【0057】
配列同一性および配列類似性パーセントの測定に適切なアルゴリズムの2つの例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、それぞれ Altschul et al., Nuc. Acids Res. 25:3389-3402, 1977; および Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410, 1990 に記載されている。BLAST解析を遂行するソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information を通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムでは、まずクエリーシーケンスにおける長さWの短いワードを同定することにより、高スコアリング配列対(HSP)を同定するものとし、これらは、データベース配列における同じ長さのワードと整列させたとき、正と評価される閾値スコアTとマッチするかまたはそれを満たす。Tは、近隣ワードスコア閾値と称される(Altschul et al.、前出)。これら最初の近隣ワードヒットは、それらを含むさらに長いHSPを見つけるための検索を開始する際のシードとして作用する。ワードヒットは、累積アラインメントスコアを増加させ得るところまで、各配列に沿って両方向に拡張される。ヌクレオチド配列については、パラメーターM(マッチする残基の対についての報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチの残基についてのペナルティスコア;常に<0)を用いて累積スコアを算出する。アミノ酸配列の場合、スコアリングマトリックスを用いて、累積スコアを算出する。各方向におけるワードヒットの拡張は、次の場合に停止する:累積アラインメントスコアがその最大到達値から量Xだけ低下した場合、1つまたはそれ以上の負のスコアの残基アラインメントの蓄積により、累積スコアが0またはそれ未満になった場合、またはいずれかの配列の末端に到達した場合。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)は、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長3および期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリング行列(Henikoff および Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915, 1989 参照)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4および両鎖の比較を使用する。
【0058】
BLASTアルゴリズムはまた、2配列間の類似性の統計分析を遂行する(例、Karlin および Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787, 1993 参照)。BLASTアルゴリズムにより与えられる類似性の一尺度は最小合計確率(P(N))であり、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間におけるマッチが偶然起こる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸とレファレンス核酸の比較において最小合計確率が、約0.2未満、さらに好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸はレファレンス配列と類似しているとみなされる。
【0059】
上記で示した配列同一性のパーセンテージ以外に、2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であるということの別の指標は、第1の核酸によりコード化されたポリペプチドが第2の核酸によりコード化されたポリペプチドに対して産生した抗体と免疫学的に交差反応性を示すことである。すなわち、例えば、2つのペプチドが同類置換でのみ異なる場合、ポリペプチドは、典型的には第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一である場合の別の指標は、下記に記載している通り、2つの分子またはそれらの相補体がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイゼーションすることである。2つの核酸配列が実質的に同一である場合のさらに別の指標は、同じプライマーが配列の増幅に使用され得ることである。
【0060】
「機能し得るように結合された」という表現は、2つまたはそれ以上のポリヌクレオチド(例、DNA)セグメント間の機能的関係をいう。典型的には、この表現は、転写される配列に対する転写調節配列の機能的関係をいう。例えば、プロモーターまたはエンハンサー配列は、それが適切な宿主細胞または他の発現系においてコーディング配列の転写を刺激またはモジュレーションする場合、コーディング配列に機能し得るように結合されている。一般的に、転写配列に機能し得るように結合されたプロモーター転写調節配列は、転写配列に物理的に連続している、すなわち、それらはシス作用関係にある。しかしながら、エンハンサーなどの転写調節配列の中には、それらが転写を促進するコーディング配列に物理的に連続するかまたは極めて接近して位置する必要が無いものある。
【0061】
「ベクター」の語は、それが結合されている別のポリヌクレオチドを輸送し得るポリヌクレオチド分子をいうものとする。ベクターの一タイプは「プラスミド」であり、追加的DNAセグメントがライゲーションされ得る環状2本鎖DNAループをいう。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされ得る。ある種のベクターは、それが導入された宿主細胞において自律複製し得る(例、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、それによって宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ある種のベクターは、それらが機能し得るように結合されている遺伝子の発現を指令し得る。本明細書においては上記ベクターを「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称す。一般に、組換えDNA技術において有用性のある発現ベクターは、プラスミド形態をとることが多い。本明細書では、プラスミドはベクターの最も一般的な使用形態であるため、「プラスミド」と「ベクター」は互換的に使用され得る。しかしながら、本発明は、均等内容の機能を果たすウイルスベクター(例、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルス)などの発現ベクターの他の形態も包含するものとする。
【0062】
「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)の語は、組換え発現ベクターが導入されている細胞をいう。上記の語は、特定の対象細胞だけでなく、上記細胞の子孫も指すものと理解するべきである。突然変異または環境的影響に起因してある種の改変が後続世代で起こり得るため、上記の子孫は、事実上、親細胞と同一ではない場合もあり得るが、依然として本明細書で使用している「宿主細胞」の語の範囲内に包含されるものとする。
【0063】
「炎症性疾患または状態」の語は、創傷または感染部位での局所的炎症を特徴とする状態を指すもので、自己免疫疾患、感染性炎症状態のある種の形態、臓器移植または他の移植片特有の望ましくない好中球活性および局所的組織部位での望ましくない好中球蓄積を特徴とする事実上他のあらゆる状態を包含する。これらの状態には、髄膜炎、脳水腫、関節炎、腎炎、成人呼吸窮迫症候群、膵炎、筋炎、神経炎、結合組織疾患、静脈炎、動脈炎、血管炎、アレルギー、アナフィラキシー、エールリヒア症、痛風、臓器移植および/または潰瘍性大腸炎があるが、これらに限定されるわけではない。
【0064】
「対象」の語は、ヒトおよびヒト以外の動物を包含する。ヒト以外の動物には、あらゆる脊椎動物、例えば哺乳類および非哺乳類、例えばヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類および爬虫類がある。特に示されていない場合、本明細書において「患者」または「対象」の語は互換的に使用される。
【0065】
「処置する」の語は、化合物または薬剤の投与により、病気(例、アレルギー性炎症性疾患)の症状、合併症または生化学的徴候の開始を阻止するかまたは遅らせ、症状を緩和し、または疾患、状態または障害のさらなる発現を阻止または阻害することを含む。処置は、予防的(病気の開始を阻止するか、または遅らせるか、またはその臨床的または潜在的症状の発現を阻止するため)または発病後の症状の治療的抑制または緩和であり得る。
【0066】
「シグナル伝達経路」または「シグナリング経路」(例、TSLPシグナリング経路)という表現は、細胞と刺激性化合物または薬剤との相互作用から生じる、少なくとも1つの生化学的反応をいうが、より一般的には一連の生化学的反応をいう。すなわち、刺激性化合物(例、TSLP)と細胞の相互作用により、シグナル伝達経路を通って伝わり、最終的には細胞性応答、例えば免疫応答を誘発する「シグナル」が発生する。
【0067】
II.ヒトTSLPRに対するアンタゴニスト抗体
1.概観
本発明は、ヒトTSLPRと特異的に結合する抗体を提供する。これらの抗hTSLPR抗体は、TSLP伝達によるシグナリング活性、例えば、下記実施例に記載している通りTSLP伝達による細胞増殖と拮抗し得る。モノクローナルまたはポリクローナル抗体の一般的製造方法は、当業界では公知である。例えば、Harlow & Lane, Using Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press,コールドスプリングハーバー、ニューヨーク、1998; Kohler & Milstein, Nature 256:495-497, 1975; Kozbor et al., Immunology Today 4:72, 1983;および Cole et al., 77-96頁、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, 1985参照。
【0068】
好ましくは、本発明の抗hTSLPR抗体はモノクローナルである。モノクローナル抗体とは、単一クローンから誘導される抗体をいう。本発明抗hTSLPR抗体の産生には、任意のモノクローナル抗体製造技術が使用され得、例えばBリンパ球のウイルスまたはオンコジーン形質転換が挙げられる。ハイブリドーマ製造用の一動物系はマウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ生産は十分に確立された手法である。下記実施例で説明するように、モノクローナル抗hTSLPR抗体は、ヒト以外の動物(例、マウス)をhTSLPRポリペプチドまたはそのフラグメント、融合タンパク質または変異型で免疫化することにより製造され得る。次いで、動物から単離したB細胞を骨髄腫細胞と融合することにより、抗体産生ハイブリドーマを製造する。hTSLPRポリペプチドまたは融合タンパク質を用いるELISA検定法でハイブリドーマをスクリーニングすることにより、モノクローナルマウス抗hTSLPR抗体が得られる。免疫化プロトコルおよび融合用の免疫化脾臓細胞の単離技術は当業界では公知である。融合パートナー(例、マウス骨髄腫細胞)および融合手順もまた当業界では公知である、例、Harlow & Lane 前出。
【0069】
抗体は、主に6つの重および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を通して標的抗原と相互作用する。典型的には、本発明の抗hTSLPR抗体は、配列番号1、2、3、4、5および6に示したCDR配列と同一であるそれらの重鎖CDR配列または軽鎖CDR配列の少なくとも1つを有する。本発明の抗hTSLPR抗体の中には、配列番号7および8に示した配列とそれぞれ同一である重鎖および軽鎖の可変領域を有するものもある。
【0070】
本発明の抗hTSLPR抗体は、2本の重鎖および2本の軽鎖を含むインタクト抗体であり得る。それらはまた、インタクト抗体または1本鎖抗体の抗原結合フラグメントであり得る。本発明の抗hTSLPR抗体は、ヒト以外の動物で産生された抗体を含む。それらもまた、本明細書記載の抗hTSLPR抗体の修飾形態である修飾抗体を含む。多くの場合、修飾抗体は、具体的に示したマウス抗体の場合と類似しているか、または改善された特性を有する組換え抗体である。例えば、下記実施例で具体的に示しているマウス抗hTSLPR抗体は、定常領域を欠失させ、それを抗体の半減期、例えば血清半減期、安定性または親和性を増加させ得る異なる定常領域で置換することにより修飾され得る。修飾抗体は、例えば、異なる特性をもつ異なる抗体からフレームワーク配列へ移植されたマウス抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより作製され得る(Jones et al., 1986, Nature 321, 522-525)。上記のフレームワーク配列は、公的DNAデータベースから入手され得る。
【0071】
修飾抗体としては、部分的ヒト免疫グロブリン配列(例、定常領域)および部分的非ヒト免疫グロブリン配列を含むキメラ抗体も挙げられる。他の修飾抗体にはヒト化抗体がある。一般的に、ヒト化抗体は、ヒト以外の供給源からそこへ導入されている1個またはそれ以上のアミノ酸残基を有する。非ヒト抗体のヒト化方法は当業界では公知である、例、米国特許第5,585,089号および同第5,693,762号; Jones et al., Nature 321: 522-25, 1986; Riechmann et al., Nature 332: 323-27, 1988;および Verhoeyen et al., Science 239: 1534-36, 1988。これらの方法は、非ヒト抗hTSLPR抗体からのCDRの少なくとも一部分をヒト抗体の対応する領域と置換することによって本発明のヒト化抗hTSLPR抗体を作製するのに容易に使用され得る。実施態様によっては、本発明のヒト化抗hTSLPR抗体が、対応するヒトフレームワーク領域に移植された各免疫グロブリン鎖における3つのCDR(すなわち、配列番号1、2、3、4、5および6)を全て有する場合もある。
【0072】
上記抗hTSLPR抗体に対しては、結合特異性またはエフェクター機能の喪失または結合親和性の許容し得ない低下を伴うことなく、可変および定常領域の両方において重大ではないアミノ酸置換、付加または欠失が行われ得る。通常、上記改変が組み込まれた抗体は、それらが由来するレファレンス抗体と実質的な配列同一性を呈する。例えば、本発明抗hTSLPR抗体の中には、その成熟軽鎖可変領域が、配列番号8に示した抗hTSLPR抗体の成熟軽鎖可変領域の配列と少なくとも75%または少なくとも85%(例、少なくとも90%、例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するものもある。同様に、抗体の成熟重鎖可変領域は、典型的には、配列番号7に示した抗hTSLPR抗体の成熟重鎖可変領域の配列と少なくとも75%または少なくとも85%(例、少なくとも90%、例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を示す。
【0073】
2.ヒト抗hTSLPR抗体
また、同じ結合特異性および同等または改善された結合親和性を呈する完全ヒト抗体も本発明に含まれる。例えば、ヒト抗体は、配列番号7の重鎖可変領域配列および配列番号8の軽鎖可変領域配列を含むレファレンスヒト抗体の場合と比べて同じかまたは改善された結合特性を有し得る。キメラまたはヒト化抗体と比べて、本発明のヒト抗hTSLPR抗体は、ヒト対象に投与された場合さらに低い抗原性を呈する。
【0074】
ヒト抗hTSLPR抗体は、当業界で公知の方法を用いて作製され得る。例えば、非ヒト抗体の場合と比べて同じ結合特性を維持するかまたは改善された同特性を与えながら、抗体において非ヒト抗体可変領域をヒト可変領域と置き換えるインビボ方法が、米国特許出願第10/778726号(公開第20050008625号)に開示されている。その方法は、完全ヒト抗体による非ヒトレファレンス抗体の可変領域のエピトープ誘導置換に基づくものである。作製されたヒト抗体は、一般的にレファレンス非ヒト抗体とは構造的に関連していないが、レファレンス抗体と同じ抗原上の同じエピトープに結合する。簡単に述べると、連続エピトープ誘導相補性置換方法は、抗原への試験抗体の結合に応答するリポーター系の存在下で限定量の抗原への結合についての「コンペティター」とレファレンス抗体の多様なハイブリッドのライブラリー(「試験抗体」)間における細胞での競争を設定することにより可能となる。コンペティターは、レファレンス抗体またはその誘導体、例えば1本鎖Fvフラグメントであり得る。コンペティターはまた、レファレンス抗体と同じエピトープに結合する抗原の天然または人工リガンドでもあり得る。コンペティターの必要条件は、それがレファレンス抗体と同じエピトープに結合すること、およびそれが抗原結合についてレファレンス抗体と競争することのみである。試験抗体は、非ヒトレファレンス抗体からの共通した一抗原結合V領域、およびヒト抗体のレパートリーライブラリーなどの多様な供給源から無作為に選択された他のV領域を有する。レファレンス抗体からの共通V領域が、抗原の同一エピトープ上において同じ配向で試験抗体の位置を決定するガイドとしての役割を果たすことにより、選択はレファレンス抗体への最高抗原結合忠実度へ偏向したものとなる。
【0075】
試験抗体と抗原間の所望の相互作用を検出するのに多くのタイプのリポーター系が使用され得る。例えば、相補的リポーターフラグメントを抗原および試験抗体にそれぞれ結合させ得ることにより、試験抗体が抗原に結合したとき、フラグメント相補性によるリポーター活性化のみが起こる。試験抗体−および抗原−リポーターフラグメント融合体がコンペティターと共発現されたとき、リポーター活性化は、抗原についての試験抗体の親和力に比例する、コンペティターとの試験抗体の競合能力に左右されることになる。使用され得る他のリポーター系には、米国特許出願第10/208730号(公開番号第20030198971号)に開示された自動阻害リポーター再活性化系のリアクチベーター(RAIR)、または米国特許出願第10/076845号(公開番号第20030157579号)に開示された競合的活性化系がある。
【0076】
連続エピトープ誘導相補性置換系で選択を実施することにより、コンペティター、抗原およびリポーター成分と一緒に単一試験抗体を発現する細胞が同定される。これらの細胞において、各試験抗体は、限定量の抗原への結合についてコンペティターと一対一で競合する。リポーターの活性は、試験抗体に結合した抗原の量に比例しており、それは抗原についての試験抗体の親和力および試験抗体の安定性に比例している。最初、試験抗体は、試験抗体として発現されたときのレファレンス抗体の場合と比べたそれらの活性に基づいて選択される。第1ラウンドの選択の結果は、「ハイブリッド」抗体のセットであり、それぞれレファレンス抗体からの同一非ヒトV領域およびライブラリーからのヒトV領域により構成され、それぞれレファレンス抗体と同じ抗原上のエピトープに結合する。第1ラウンドで選択された複数のハイブリッド抗体の一つは、レファレンス抗体の場合と同等またはそれより高い抗原についての親和力を有する。
【0077】
第2のV領域置換段階では、第1段階で選択されたヒトV領域を、コグネイトヒトV領域の多様なライブラリーによる残りの非ヒトレファレンス抗体V領域についてのヒト置換体を選択するためのガイドとして使用する。第1ラウンドで選択されたハイブリッド抗体はまた、第2ラウンドの選択のためのコンペティターとしても使用され得る。第2ラウンドの選択の結果は、レファレンス抗体とは構造的に異なるが、同じ抗原への結合についてレファレンス抗体と競合する完全ヒト抗体のセットである。選択されたヒト抗体の中には、レファレンス抗体と同じ抗原上の同一エピトープに結合するものもある。これらの選択されたヒト抗体の中で、1つまたはそれ以上が、レファレンス抗体の場合と同等またはそれより高い親和力で同一エピトープに結合する。
【0078】
レファレンス抗体として上記マウスまたはキメラ抗hTSLPR抗体の一つを用いることにより、この方法は、同じ結合特異性および同じかまたは高い結合親和性でヒトTSLPRに結合するヒト抗体を作製するのに容易に使用され得る。さらに、上記のヒト抗hTSLPR抗体はまた、ヒト抗体を注文生産している会社、例えばKaloBios,Inc.(マウンテン・ビュー、カリフォルニア)から市販されている。
【0079】
4.他のタイプの抗hTSLPR抗体
また、本発明の抗hTSLPR抗体には、1本鎖抗体、二重特異性抗体および多重特異性抗体がある。多数の実施態様において、本発明抗体は1本鎖抗体である。1本鎖抗体は、1本の安定して折りたたまれたポリペプチド鎖に重鎖および軽鎖の両方からの抗原結合領域を含む。それ自体、1本鎖抗体は、典型的にはモノクローナル抗体の結合特異性および親和性を保持しているが、古典的免疫グロブリンよりかなり小さいサイズを有する。ある種の適用について、本発明の抗hTSLPR1本鎖抗体は、インタクト抗hTSLPR抗体と比べて多くの有利な特性を提供し得る。これらの例には、体からの迅速なクリアランス、診断的イメージングおよび治療の両方に関する高い組織浸透性、およびマウスに基づく抗体との比較における免疫原性の著しい減少がある。1本鎖抗体使用に関する他の潜在的な利点には、ハイスループットスクリーニング方法における高いスクリーニング能力および経腸適用についての可能性がある。
【0080】
本発明の1本鎖抗hTSLPR抗体は、文献に記載された方法を用いて製造され得る。上記技術の例には、米国特許第4946778号および同第5258498号;Huston et al., Methods in Enzymology 203:46-88, 1991; Shu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:7995-7999, 1993;および Skerra et al., Science 240:1038-1040, 1988に記載されたものがある。
【0081】
一部の実施態様において、本発明では、抗hTSLPR抗体を誘導体化または別の機能性分子に結合することにより、多結合部位または標的エピトープに結合する二重特異性または多重特異性分子を作製する。機能性分子は、別のペプチドまたはタンパク質(例、サイトカイン、細胞傷害剤、免疫刺激または阻害剤、Fabフラグメントまたは上記で検討した他の抗体結合フラグメント)を含む。例えば、抗hTSLPR抗体またはその抗原結合部分は、1個またはそれ以上の他の結合分子、例えば別の抗体、抗体フラグメント、ペプチドまたは結合性模倣物質に(例、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的会合などにより)機能的に結合され得る。すなわち、本発明の二重特異性および多重特異性抗hTSLPR抗体は、ヒトTSLPRについての第1の結合特異性および第2標的エピトープについての第2の結合特異性をもつ少なくとも1つのモノクローナル抗hTSLPR抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。第2の標的エピトープは、Fc受容体、例えばヒトFcγRIまたはヒトFcγ受容体であり得る。したがって、本発明は、FcγR1、FcγRまたはFcεR発現性エフェクター細胞(例、単球、マクロファージまたは多形核細胞(PMN))、およびヒトTSLPRを発現する標的細胞(例、ヒトCD11c+樹状細胞)の両方に結合し得る二重特異性および多重特異性分子を含む。これらのマルチ特異性(例、二重特異性または多重特異性)分子は、ヒトTSLPR発現性細胞をエフェクター細胞にターゲッティングし、Fc受容体が伝えるエフェクター細胞活性、例えばヒトTSLPR発現性細胞の食作用、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、サイトカイン放出またはスーパーオキシドアニオンの生成を誘導する。
【0082】
本発明の二重特異性および多重特異性抗hTSLPR抗体は、文献に記載された方法により作製され得る。これらの例には、化学技術(例、Kranz, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:5807, 1981 参照)、ポリドーマ技術(例、米国特許第4474893号参照)、または組換えDNA技術がある。また、本発明の二重特異性および多重特異性分子は、当業界で公知の方法を用いて本明細書記載の要領で、結合特異性構成部分、例えば抗FcRおよび抗ヒトTSLPR結合特異性部分をコンジュゲートすることにより製造され得る。例えば、二重特異性および多重特異性分子の各結合特異性部分を別々に作製し、次いで互いにコンジュゲートすることが可能である。結合特異性部分がタンパク質またはペプチドであるとき、様々なカップリングまたは架橋剤が共有結合的コンジュゲーションに使用され得る。架橋剤の例には、プロテインA、カルボジイミド、N−スクシニミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、およびスルホスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC)がある。結合特異性部分が抗体(例、2つのヒト化抗体)であるとき、それらはスフルヒドリル結合を介して2つの重鎖のC−末端ヒンジ領域にコンジュゲートされ得る。ヒンジ領域は、コンジュゲーション前に奇数、例えば1個のスルフヒドリル残基を含むように修飾され得る。
【0083】
二重特異性および多重特異性分子のそれらの特異的標的への結合は、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)またはウエスタン・ブロット検定法により確認され得る。一般的にこれらの検定法では、それぞれ興味の対象である複合体に特異的な標識試薬(例、抗体)を用いることにより、特に興味の対象であるタンパク質−抗体複合体の存在を検出する。例えば、FcR−抗体複合体は、例えば抗体−FcR複合体を認識し、特異的に結合する酵素結合抗体または抗体フラグメントを用いて検出され得る。別法として、複合体は、様々な他の免疫検定法のいずれかを用いて検出され得る。例えば、抗体を放射性標識し、ラジオイムノアッセイ(RIA)で使用することが可能である(例、Weintraub, B., Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques, The Endocrine Society, 1986年3月 参照)。放射性同位元素は、γカウンターまたはシンチレーション計数管の使用またはオートラジオグラフィーなどの手段により検出され得る。
【0084】
III.抗hTSLPR抗体製造用のポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
本発明は、上記抗hTSLPR抗体鎖のセグメントまたはドメインを含むポリペプチドをコード化する実質的に精製されたポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)を提供する。本発明のポリヌクレオチドの中には、配列番号9に示した重鎖可変領域のヌクレオチド配列および/または配列番号10に示した軽鎖可変領域のヌクレオチド配列を含むものもある。本発明の他のポリヌクレオチドには、配列番号9、10、21または22のヌクレオチド配列と実質的に同一(例、少なくとも65、80%、95%または99%)であるヌクレオチド配列を含むものもある。適切な発現ベクターから発現されたとき、これらのポリヌクレオチドによりコード化されるポリペプチドは、抗原結合能力を呈し得る。
【0085】
また、本発明は、上記で示した抗hTSLPR抗体の重または軽鎖からの少なくとも1つのCDR領域および通常3つのCDR領域全てをコード化するポリヌクレオチドを提供する。他のポリヌクレオチドには、上記で示した抗hTSLPR抗体の重鎖および/または軽鎖の可変領域配列の全部または実質的に全部をコード化するものもある。例えば、これらのポリヌクレオチドの中には、配列番号7に示した重鎖可変領域のアミノ酸配列および/または配列番号8に示した軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコード化するものもある。別法として、これらのポリヌクレオチドの中には、配列番号21に示した重鎖可変領域のアミノ酸配列および/または配列番号22に示した軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコード化するものもある。コードの縮重故に、様々な核酸配列が免疫グロブリンアミノ酸配列をそれぞれコード化することになる。
【0086】
本発明のポリヌクレオチドは、抗hTSLPR抗体の可変領域配列のみをコード化し得る。それらはまた、抗体の可変領域および定常領域の両方をコード化する。本発明核酸のポリヌクレオチド配列の中には、配列番号7または21に示した成熟重鎖可変領域配列と実質的に同一(例、少なくとも80%、90%または99%)である成熟重鎖可変領域配列をコード化するものもある。他のポリヌクレオチド配列には、配列番号8または22に示した成熟軽鎖可変領域配列と実質的に同一(例、少なくとも80%、90%または99%)である成熟軽鎖可変領域配列をコード化するものもある。ポリヌクレオチド配列の中には、マウス抗体の重鎖および軽鎖の両方の可変領域を含むポリペプチドをコード化するものもある。他のポリヌクレオチドには、それぞれマウス抗体の重鎖および軽鎖の可変領域と実質的に同一である2つのポリペプチドセグメントをコード化するものもある。
【0087】
ポリヌクレオチド配列は、de novo 固相DNA合成または抗hTSLPR抗体またはそのフラグメントをコード化する既存配列(例、下記実施例記載の配列)のPCR突然変異導入により製造され得る。核酸の直接的化学合成は、当業界で公知の方法により達成され得、例えば、Narang et al., 1979, Meth. Enzymol. 68:90 のホスホトリエステル方法、Brown et al., Meth. Enzymol. 68:109, 1979 のホスホジエステル方法、Beaucage et al., Tetra. Lett., 22:1859, 1981 のジエチルホスホルアミダイト方法、および米国特許第4458066号の固体支持体方法がある。PCRによるポリヌクレオチド配列への突然変異導入は、例えば PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification, H.A. Erlich (編), Freeman Press、ニューヨーク、ニューヨーク、1992; PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al. (編), Academic Press,サンディエゴ、カリフォルニア、1990; Mattila et al., Nucleic Acids Res. 19:967, 1991;および Eckert et al., PCR Methods and Applications 1:17, 1991に記載された要領で実施され得る。
【0088】
また本発明は、上記の抗hTSLPR抗体を製造するための発現ベクターおよび宿主細胞を提供する。様々な発現ベクターを用いることにより、抗hTSLPR抗体鎖または結合フラグメントをコード化するポリヌクレオチドを発現させることが可能である。ウイルス性およびウイルス性発現ベクターは両方とも、哺乳類宿主細胞での抗体の産生に使用され得る。非ウイルス性ベクターおよび系には、典型的にはタンパク質またはRNAを発現させるための発現カセットを伴う、プラスミド、エピソームベクター、およびヒト人工染色体(例えば、Harrington et al., Nat Genet 15:345, 1997 参照)がある。例えば、哺乳類(例、ヒト)細胞における抗hTSLPRポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現に有用な非ウイルス性ベクターには、pThioHis A、BおよびC、pcDNA3.1/His、pEBVHis A、BおよびC(Invitrogen、サンディエゴ、カリフォルニア)、MPSVベクター、および他のタンパク質発現に関して当業界で公知の多くの他のベクターがある。有用なウイルス性ベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルスに基づくベクター、SV40、乳頭腫ウイルス、HBPエプスタイン・バール(Epstein Barr)ウイルスに基づくベクター、ワクシニアウイルスベクターおよびセムリキ(Semliki)森林熱ウイルス(SFV)に基づくベクターがある。Brent et al., 前出、Smith, Annu. Rev. Microbiol. 49:807, 1995;および Rosenfeld et al., Cell 68:143, 1992 参照。
【0089】
発現ベクターの選択は、ベクターを発現させるように意図された宿主細胞により変動する。典型的には、発現ベクターは、抗hTSLPR抗体鎖またはフラグメントをコード化するポリヌクレオチドに機能し得るように結合されたプロモーターおよび他の調節配列(例、エンハンサー)を含む。実施態様によっては、誘導性プロモーターを用いることにより誘導条件下以外での挿入配列の発現を阻止する場合もある。誘導性プロモーターには、例えばアラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモーターまたは熱ショックプロモーターがある。形質転換生物体の培養物は、宿主細胞による耐容性が良好な発現産物をもたらすコーディング配列についての集団の偏向を伴わない非誘導条件下において拡大され得る。プロモーターに加えて、他の調節エレメントもまた、抗hTSLPR抗体鎖またはフラグメントの有効な発現に要求されるかまたは所望され得る。これらのエレメントは、典型的にはATG開始コドンおよび隣接リボソーム結合部位または他の配列を含む。さらに、発現効率は、使用する細胞系に適切なエンハンサーを含ませることにより増強され得る(例えば、Scharf et al., Results Probl. Cell Differ. 20:125, 1994;および Bittner et al., Meth. Enzymol., 153:516, 1987 参照)。例えば、SV40エンハンサーまたはCMVエンハンサーは、哺乳類宿主細胞での発現を高めるのに使用され得る。
【0090】
また、発現ベクターは、挿入された抗hTSLPR抗体配列によりコード化されるポリペプチドとの融合タンパク質を形成させるために分泌シグナル配列位置を設定し得る。多くの場合、挿入された抗hTSLPR抗体配列を、ベクターに組み込ませる前にシグナル配列に結合する。また、抗hTSLPR抗体軽および重鎖可変ドメインをコード化する配列を受け入れるのに使用されるベクターが、定常領域またはその一部をコード化する場合もある。上記ベクターが定常領域との融合タンパク質として可変領域を発現させ得ることにより、インタクト抗体またはそのフラグメントが製造される。典型的には、上記定常領域はヒトに由来する。
【0091】
抗hTSLPR抗体鎖を受容および発現する宿主細胞は、原核生物または真核生物に由来し得る。エシェリキア・コリ(E.coli)は、本発明ポリヌクレオチドのクローニングおよび発現に有用な一原核生物宿主である。使用に適した他の微生物宿主には、バチルス・サチリス(Bacillus subtilis、枯草菌)などの桿菌、および他の腸内細菌科、例えばサルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)および様々なシュードモナス(Pseudomonas)などの種類がある。また、これらの原核生物宿主では、典型的には宿主細胞と適合し得る発現制御配列(例、複製起点)を含む発現ベクターが作製され得る。さらに、かなり多数の様々な公知プロモーター、例えばラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ベータ−ラクタマーゼプロモーター系、またはファージラムダからのプロモーター系が存在する。典型的にはプロモーターは、所望によりオペレーター配列と共に発現を制御し、転写および翻訳を開始および完了させるためにリボソーム結合部位配列などを有する。酵母などの他の微生物もまた、本発明の抗hTSLPRポリペプチドの発現に使用され得る。バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞もまた使用され得る。
【0092】
一部の好ましい実施態様では、哺乳類宿主細胞を用いて、本発明の抗hTSLPRポリペプチドを発現および製造させる。例えば、それらは、内生免疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞系(例、実施例に記載の1D6.C9骨髄腫ハイブリドーマクローン)または外生発現ベクターを受容する哺乳類細胞系(例、下記で具体的に示したSP2/0骨髄腫細胞)であり得る。これらは、正常な死に至る動物またはヒト細胞または正常または異常な不死動物またはヒト細胞を包含する。例えば、CHO細胞系、様々なCos細胞系、ヒーラ細胞、骨髄腫細胞系、形質転換B細胞およびハイブリドーマを含め、インタクト免疫グロブリンを分泌し得る多数の適切な宿主細胞系が開発されている。哺乳類組織細胞培養を用いるポリペプチドの発現については、例えばWinnacker, FROM GENES TO CLONES, VCH Publishers、ニューヨーク、ニューヨーク、1987 で包括的に検討されている。哺乳類宿主細胞用の発現ベクターは、複製起点、プロモーターおよびエンハンサーなどの発現制御配列(例えば、Queen, et al., Immunol. Rev. 89:49-68, 1986 参照)、およびリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写ターミネーター配列などの必要なプロセッシング情報部位を含み得る。これらの発現ベクターは、通常哺乳類遺伝子または哺乳類ウイルスから誘導されたプロモーターを含む。適切なプロモーターは、構成的、細胞型特異的、段階特異的および/またはモジュレーション可能または調節可能なものであり得る。有用なプロモーターには、メタロチオネインプロモーター、構成的アデノウイルス主要後期プロモーター、デキサメタゾン−誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRP po1IIIプロモーター、構成的MPSVプロモーター、テトラサイクリン−誘導性CMVプロモーター(例えばヒト極初期CMVプロモーター)、構成的CMVプロモーターおよび当業界で公知のプロモーター−エンハンサーの組み合わせがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0093】
興味の対象であるポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターの導入方法は、細胞性宿主のタイプにより異なる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは、原核生物細胞に常用されており、リン酸カルシウム処理または電気穿孔は、他の細胞性宿主に使用され得る。(包括的には、Sambrook, et al.前出、参照)。他の方法には、例えば、電気穿孔、リン酸カルシウム処理、リポソームを介した形質転換、注入および顕微注入、弾丸導入法、ウイロソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン:核酸コンジュゲート、ネイキッド(裸)DNA、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22との融合(Elliot および O'Hare, Cell 88:223, 1997)、薬剤によるDNA取込みの促進およびエクスビボ形質導入がある。組換えタンパク質を長期間高収率で生産するためには、多くの場合安定した発現が望ましい。例えば、抗hTSLPR抗体鎖または結合フラグメントを安定して発現する細胞系は、ウイルス複製起点または内生発現エレメントおよび選択可能なマーカー遺伝子を含む本発明発現ベクターを用いて製造され得る。ベクターの導入後、細胞を強化培地中で1〜2日間成長させた後、それらを選択培地に切り替える。選択可能なマーカーの目的は、選択に対する抵抗性を付与することであり、その存在により、選択培地において導入された配列を有効に発現する細胞を成長させることができる。細胞型に適切な組織培養技術を用いることにより、抵抗性のある安定したトランスフェクション細胞を増殖させることができる。
【0094】
IV.抗hTSLPR抗体の特性
上記抗hTSLPR抗体が宿主細胞または内生的にハイブリドーマにおいて発現ベクターから発現されると、それらは培養培地および宿主細胞から容易に精製され得る。通常、抗体鎖は、シグナル配列により発現され、培養培地へ放出される。しかしながら、抗体鎖が天然では宿主細胞により分泌されない場合、抗体鎖は、弱いデタージェントでの処理により放出され得る。次いで、抗体鎖は、硫酸アンモニウム沈降、固定化標的へのアフィニティー・クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む慣用的方法により精製され得る。これらの方法は全て公知であり、当業界では常用手順で実施されている、例、Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, ニューヨーク、1982;および Harlow & Lane、前出。
【0095】
例として、本発明の抗hTSLPR抗体を発現する選択されたハイブリドーマを、モノクローナル抗体精製用の2リットルのスピナーフラスコで成長させ得る。上清をろ過し、濃縮した後、プロテインA−セファロースまたはプロテインG−セファロース(Pharmacia、ピスキャタウェイ、ニュージャージー)でのアフィニティー・クロマトグラフィーにかけ得る。溶離したIgGをゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーでチェックすることにより、純度を確実なものにし得る。緩衝液をPBS中へと交換し、OD280読み取りにより濃度を測定する。モノクローナル抗体をアリコートに分け、−80℃で貯蔵する。
【0096】
本発明の抗hTSLPRモノクローナル抗体は、それらの製造方法とは関係なく、hTSLPRまたはその抗原性フラグメントに特異的に結合する。hTSLPRまたはその抗原性フラグメントへの抗体結合についての解離定数が、1μM以下、好ましくは100nM以下、最も好ましくは1nM以下であるとき、特異的結合が存在する。hTSLPRへの抗体の結合能は、興味の対象である抗体を直接標識することにより検出され得るか、または抗体を非標識とし、様々なサンドイッチ検定方法を用いて結合を間接的に検出することが可能である。例えば、Harlow & Lane、前出参照。上記結合特異性を有する抗体は、下記実施例で検討している1D6.C9マウス抗hTSLPR抗体が呈する有利な特性を共有していると思われる。
【0097】
本発明の抗hTSLPRモノクローナル抗体は、TSLPが伝達するシグナリング活性と拮抗し得る。これらの活性の例を挙げると、例えばTARCおよびMDCなどの樹状細胞によるTH2−誘引性ケモカインの分泌、樹状細胞の活性化、ナイーブCD4+T細胞拡大およびTH2表現型への分極化、例えばIL−4、IL−5、IL−13 TNFαなどの向アレルギー性サイトカインの産生がある。抗hTSLPR抗体が、TSLP伝達による細胞活性を阻害し得るか否かを決定するのに多数の検定法が使用され得る。これらの例を挙げると、実施例記載の検定法のいずれか、例えばBa/F3/hTSLPR/hIL7Rα細胞を用いる細胞増殖検定法、Ba/F3/hTSLPR/IL7Rα/Stat5−Luc細胞を用いるルシフェラーゼリポーター検定法およびTARC分泌検定法がある。また、TSLPシグナリング活性を測定するさらなる検定法についても文献に記載されている。例えば、Reche et al., J. Immunol., 167:336-43, 2001;および Isaksen et al., J Immunol. 168:3288-94, 2002 参照。
【0098】
一部実施態様において、本発明の抗hTSLPR抗体は、hTSLPRポリペプチドへの配列番号7に示した可変領域配列を有するレファレンス抗hTSLPR抗体の結合を遮断するかまたはそれと競合する。これらは、上記の完全ヒト抗hTSLPR抗体であり得る。それらはまた、レファレンス抗体と同じエピトープに結合する他のマウス、キメラまたはヒト化抗hTSLPR抗体であり得る。レファレンス抗体結合を遮断するかまたはそれと競合する能力は、試験されている抗hTSLPR抗体が、レファレンス抗体により特定されるエピトープと同一または酷似したエピトープ、またはレファレンス抗hTSLPR抗体に結合されたエピトープに十分近位にあるエピトープに結合することを示している。上記抗体は、特にレファレンス抗体について確認された有利な特性を共有すると思われる。レファレンス抗体を遮断またはそれと競合する能力は、例えば競合結合検定法により測定され得る。競合結合検定法では、例えばTSLPRポリペプチドなどの共通抗原へのレファレンス抗体の特異的結合を阻害する能力について試験抗体を調べる。過剰の試験抗体がレファレンス抗体の結合を実質的に阻害する場合、試験抗体は抗原への特異的結合についてレファレンス抗体と競合する。実質的な阻害とは、通常少なくとも10%、25%、50%、75%または90%の割合で試験抗体がレファレンス抗体の特異的結合を低下させることを意味する。
【0099】
ヒトTSLPRへの結合に関する抗hTSLPR抗体とレファレンス抗hTSLPR抗体との競合を評価するのに使用され得る多数の公知競合結合検定法がある。これらの例としては、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素免疫検定法(EIA)、サンドイッチ競合検定法(Stahli et al., Methods in Enzymology 9:242-253, 1983 参照)、固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirkland et al., J. Immunol. 137:3614-3619, 1986 参照)、固相直接標識検定法、固相直接標識サンドイッチ検定法(Harlow および Lane、前出参照)、I−125標識を用いる固相直接標識RIA(Morel et al., Molec. Immunol. 25:7-15, 1988 参照)、固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheung et al., Virology 176:546-552, 1990)および直接標識RIA(Moldenhauer et al., Scand. J. Immunol. 32:77-82, 1990)が挙げられる。典型的には、上記の検定法は、これら、非標識試験抗hTSLPR抗体および標識レファレンス抗体のいずれかを含む固体表面または細胞に結合させた精製抗原の使用を含む。競合的阻害は、試験抗体の存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を測定することにより測定される。通常、試験抗体は過剰に存在する。競合検定法により同定された抗体(競合抗体)は、レファレンス抗体と同じエピトープに結合する抗体および立体障害が起こるほどレファレンス抗体に結合されたエピトープに十分近接している隣接エピトープに結合する抗体を含む。
【0100】
選択された抗TSLPRモノクローナル抗体が特有のエピトープに結合しているか否かを測定するため、市販の試薬(例、イリノイ、ロックフォードのPierceからの試薬)を用いて各抗体をビオチニル化し得る。非標識モノクローナル抗体およびビオチニル化モノクローナル抗体を用いる競合試験は、TSLPRポリペプチド被覆ELISAプレートを用いて実施され得る。ビオチニル化MAb結合は、ストレップ−アビジン−アルカリ性ホスファターゼプローブで検出され得る。精製抗hTSLPR抗体のアイソタイプを決定するため、アイソタイプELISAが実施され得る。例えば、マイクロタイタープレートのウェルを4℃で一晩1μg/mlの抗ヒトIgGによりコーティングする。1%BSAで遮断した後、プレートを1μg/mlまたはそれ未満のモノクローナル抗hTSLPR抗体または精製アイソタイプ対照と周囲温度で1〜2時間反応させる。次いで、ウェルをヒトIgG1またはヒトIgM特異的アルカリ性ホスファターゼコンジュゲートプローブと反応させ得る。次いで、プレートを展開し、分析することにより、精製抗体のアイソタイプが決定され得る。
【0101】
hTSLPRポリペプチドを発現する生細胞へのモノクローナル抗hTSLPR抗体の結合を立証するためには、フローサイトメトリーが使用され得る。簡単に述べると、hTSLPRを発現する細胞系(標準成長条件下で成長させた)を、0.1%BSAおよび10%胎児ウシ血清を含むPBS中の様々な濃度の抗hTSLPR抗体と混合し、37℃で1時間インキュベーションする。洗浄後、細胞を一次抗体染色と同じ条件下でフルオレセイン標識抗ヒトIgG抗体と反応させる。側方散乱光を用いて単細胞でゲート設定するFACScan機器により試料を分析する。蛍光顕微鏡を用いる別の検定法も、フローサイトメトリー検定法に加えて、またはその代わりに使用され得る。細胞を上記と全く同様にして染色し、蛍光顕微鏡により調べ得る。この方法により、個々の細胞が視覚化され得るが、抗原の密度によって感度が減少した可能性はある。
【0102】
本発明の抗hTSLPR抗体を、hTSLPRポリペプチドまたは抗原性フラグメントとの反応性についてウエスタンブロッティングによりさらに試験する。簡単に述べると、精製hTSLPRポリペプチドまたは融合タンパク質、またはTSLPRを発現する細胞からの細胞抽出物を調製し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動にかける。電気泳動後、分離した抗原をニトロセルロース膜に移し、10%胎児ウシ血清で遮断し、試験されるモノクローナル抗体でプロービングする。ヒトIgG結合は、抗ヒトIgGアルカリ性ホスファターゼを用いて検出され、BCIP/NBT基質錠(Sigma Chem. Co.、セントルイス、ミズーリ)で展開され得る。
【0103】
V.免疫グロブリンスカホールド
生成されるポリペプチドが標的タンパク質に特異的である少なくとも1つの結合領域を含むものである限り、広く多様な抗体/免疫グロブリンフレームワークまたはスカホールドが使用され得る。上記フレームワークまたはスカホールドは、5つの主要イディオタイプのヒト免疫グロブリンまたはそのフラグメント(例えば本明細書における他の箇所で開示されたもの)を含み、好ましくはヒト化の特徴を有する他の動物種の免疫グロブリンを含む。ラクダ科で同定されたものなどの1本重鎖抗体は、この点について特に興味深い。当業者は、新規のフレームワーク、スカホールドおよびフラグメントを発見および開発し続けている。
【0104】
一態様において、本発明は、本発明のCDRが移植され得る非免疫グロブリンスカホールドを用いた非免疫グロブリンに基づく抗体の作製に関するものである。標的タンパク質に特異的な結合領域を含むものであれば、既知または将来的な非免疫グロブリンフレームワークおよびスカホールドが使用され得る。上記化合物は、「標的特異的結合領域を含むポリペプチド」として本明細書では称される。公知非免疫グロブリンフレームワークまたはスカホールドには、アドネクチン類(フィブロネクチン)(Compound Therapeutics, Inc.、ワルサム、マサチューセッツ)、アンキリン(Molecular Partners AG、チューリヒ、スイス国)、ドメイン抗体(Domantis, Ltd(ケンブリッジ、マサチューセッツ)および Ablynx nv(ズウィナールデ、ベルギー国))、リポカリン(アンチカリン)(Pieris Proteolab AG、フライシンク、ドイツ国)、小モジュラー免疫医薬(Trubion Pharmaceuticals Inc.、シアトル、ワシントン)、マキシボディ(Avidia, Inc.(マウンテン・ビュー、カリフォルニア))、プロテインA(Affibody AG、スウェーデン国)およびアフィリン(ガンマ−クリスタリンまたはユビキチン)(Scil Proteins GmbH、ハーレ、ドイツ国)があるが、これらの限定されるわけではない。
【0105】
(i)アドネクチン類−Compound Therapeutics
アドネクチンスカホールドは、フィブロネクチンIII型ドメイン(例、フィブロネクチンIII型の第10モジュール(10Fn3ドメイン))に基づいている。フィブロネクチンIII型ドメインは、2つのベータシート間に分布する7または8本のベータ鎖を有し、それら自体互いに詰あってタンパク質のコアを形成し、さらにベータ鎖を互いに連結し、溶媒暴露されている(CDRと類似した)ループを含む。ベータシートサンドイッチの各エッジに少なくとも3つの上記ループが存在し、エッジはベータ鎖の方向に対し直角をなすタンパク質の境界である。(米国特許第6818418号)。
【0106】
全体的なフォールド構造は、ラクダおよびラマIgGにおける全抗原認識単位を含む、重鎖の可変領域である、最小機能性抗体フラグメントの場合と密接に関連しているが、これらのフィブロネクチンに基づくスカホールドは免疫グロブリンではない。この構造故に、非免疫グロブリン抗体は、抗体の場合と性質および親和性が類似した抗原結合特性を模倣する。これらのスカホールドは、インビボでの抗体の親和性成熟過程と類似したインビトロでのループランダム化および再編成戦略で使用され得る。これらのフィブロネクチンに基づく分子は、スカホールドとして使用され得、そこで分子のループ領域が、標準クローニング技術を用いて本発明のCDRと置換され得る。
【0107】
(ii)アンキリン−Molecular Partners
この技術は、種々の標的への結合に使用され得る可変領域を担うためのスカホールドとしてのアンキリン由来の反復モジュールを伴うタンパク質の使用に基づいている。アンキリン反復モジュールは、2つの逆平行α−ヘリックスおよびβ−ターンから成る33アミノ酸ポリペプチドである。可変領域の結合は、主としてリボソームディスプレーを用いることにより最適化される。
【0108】
(iii)マキシボディ/アビマー−Avidia
アビマーは、LRP−1などの天然Aドメイン含有タンパク質から誘導される。これらのドメインは、本来タンパク質−タンパク質相互作用に使用され、ヒトでは250を超えるタンパク質が構造的にAドメインに基づいている。アビマーは、アミノ酸リンカーを介して結合された多数の異なる「Aドメイン」モノマー(2〜10)により構成される。例えば20040175756、20050053973、20050048512および20060008844に記載された方法を用いて標的抗原に結合し得るアビマーが作製され得る。
【0109】
(vi)プロテインA−Affibody
Affibody(登録商標)アフィニティーリガンドは、プロテインAのIgG-結合ドメインの一つのスカホールドに基づいた3ヘリックス束により構成される単純な小型タンパク質である。プロテインAは、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)菌由来の表面タンパク質である。このスカホールドドメインは58アミノ酸から成り、そのうち13をランダム化することにより、多数のリガンド変異型をもつAffibody(登録商標)ライブラリーを作製する(例、米国特許第5831012号参照)。Affibody(登録商標)分子は抗体を模倣するが、抗体の分子量150kDaと比べて、それらの分子量は6kDaである。小さいサイズであるにもかかわらず、Affibody(登録商標)分子の結合部位は抗体のそれと類似している。
【0110】
(v)アンチカリン(Anticalins)−Pieris
Anticalins(登録商標)は、Pieris ProteoLab AG 社により開発された製品である。それらは、通常化学的感受性または不溶性化合物の生理学的輸送または貯蔵に関与する小さく強力な(robust)タンパク質の広範に及ぶ群である、リポカリンから誘導される。幾つかの天然リポカリンは、人体組織または体液から見いだされる。
【0111】
タンパク質構造は、堅固なフレームワークの上部に超可変ループを伴う、免疫グロブリンを想起させるものである。しかしながら、抗体またはそれらの組換えフラグメントとは対照的に、リポカリン類は、160〜180アミノ酸残基をもつ1本のポリペプチド鎖により構成され、周辺の分だけ単一免疫グロブリンドメインより大きい。
【0112】
結合ポケットを構成する4つのループのセットは、著しい構造的可塑性を示し、様々な側鎖を受け入れる。すなわち、結合部位は、高い親和性および特異性をもつ異なる形状の指示された標的分子を認識できるように独自の過程で新形態をとり得る。
【0113】
リポカリンファミリーの一タンパク質、Pieris Brassicae のビリン結合タンパク質(BBP)は、4ループのセットを突然変異させることによるアンチカリンの開発に使用されてきた。「アンチカリン」について記載している親出願の一例は、PCT国際公開第199916873号である。
【0114】
(vi)Affilin−Scil Proteins
Affilin(登録商標)分子は、タンパク質および小分子に向かう特異的親和性について設計された小さな非免疫グロブリンタンパク質である。新しいAffilin(登録商標)分子は、それぞれ異なるヒト由来のスカホールドタンパク質に基づくものである、2つのライブラリーから非常に迅速に選択され得る。Affilin(登録商標)分子は、免疫グロブリンタンパク質との構造相同性を全く示さない。Scil Proteinsは、2種の Affilin(登録商標)スカホールドを使用しており、その一方は、ヒト構造的水晶体タンパク質であるガンマクリスタリン(crystalline)であり、他方は「ユビキチン」スーパーファミリータンパク質である。ヒトスカホールドは両方とも非常に小さく、高い熱安定性を示し、pH変化および変性剤にほぼ抵抗性がある。この高い安定性は、主としてタンパク質の拡大されたベータシート構造によるものである。ガンマクリスタリン由来タンパク質の例は、国際公開第200104144号に記載されており、「ユビキチン様」タンパク質の例は国際公開第2004106368号に記載されている。
【0115】
VI.抗hTSLPR抗体の治療適用
抗hTSLPR抗体は、TSLPシグナリング活性を阻害することにより多くの治療または予防適用で使用され得る。これらの例としては、例えばB細胞の発達、T細胞の発達、T細胞受容体遺伝子転置またはStat5転写因子の調節に影響を及ぼすものなど、TSLPシグナリングが介在する疾患または状態の処置がある。例えば、抗hTSLPRアンタゴニスト抗体は、TH2細胞が伝える望ましくない免疫応答を抑制または低減化するのに使用され得る。特に、それらは、TSLPシグナリングに随伴するかまたはそれが伝達するアレルギー性炎症障害に罹患したヒト患者を処置するのに適切である。本発明の抗hTSLPR抗体による処置に敏感に反応するアレルギー性炎症疾患には、例えば(1)喘息、すなわち気流閉塞および気管支過敏性に関連した気道の慢性炎症性疾患、(2)アトピー性皮膚炎、すなわち長期にわたる断続的処置を必要とする増悪性慢性炎症性皮膚疾患、および(3)アレルギー性鼻炎、すなわちアトピーに結びついたTH2リンパ球が伝達する鼻粘膜の炎症性障害がある。米国およびヨーロッパの主要数カ国では、喘息、アトピー性皮膚炎およびアレルギー性鼻炎について診断された有病率は、それぞれ2013年には現在の4600万から5300万、現在の3170万から3720万、および5590万から6450万に増加すると予測される。アトピー性皮膚炎患者の約50〜80パーセントは、喘息またはアレルギー性鼻炎に罹患しているかまたはそれらを発症すると思われる。
【0116】
アレルギーの処置に現在利用可能なほとんどの薬剤は、対症療法的なものであり、長期疾患修飾性をもたらすと思われる免疫モジュレーション分野で為されている努力は比較的小さいものに過ぎない。本発明の抗hTSLPR抗体は、これらのアレルギー性疾患のいずれかに罹患している対象(特にヒト患者)の新規で有効な処置法を提供し得る。TSLPがTSLP受容体シグナル伝達経路を活性化するのを阻止することにより、それらはTH2応答およびアレルギー性炎症の開始および維持の両方に関与するサイトカインの産生を遮断し得る。したがって、この方法は、アトピー性皮膚炎、喘息およびアレルギー性鼻炎の患者において長期にわたる治療効果および疾患修飾的利点を誘導する可能性を有する。
【0117】
別の実施態様において、本発明は、上記抗体または機能性フラグメントまたは保存的変異型の少なくともいずれか1種に組み合わせて医薬上許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0118】
ある種の実施態様において、本発明は、受容体標的hTSLPを有する細胞の存在に随伴する障害または状態の処置方法を提供する。本方法では、処置を必要とする対象に上記医薬組成物の有効量を投与する。関連実施態様において、処置される障害または状態は呼吸器障害である。
【0119】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、気道過敏症(AHR)、粘膜過剰生産、線維症および血清IgEレベルの上昇を特徴とする肺の一般的な持続性炎症性疾患である気管支喘息である。
【0120】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、幼少期に最もよくみられる皮膚疾患であり、強度のそう痒および慢性湿疹様斑を特徴とするアトピー性(アレルギー性)皮膚炎である。
【0121】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、COPD、急性肺傷害(ALI)、急性/成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、呼吸困難、アレルギー性気道炎症、末梢気道病変、肺癌、鎌状赤血球症および肺高血圧症患者における急性胸部症候群、並びに他の薬物療法、特に他の薬物吸入療法の結果として起こる気道過敏症の増悪などの他の炎症性または閉塞性気道疾患および状態から選択される。
【0122】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、例えば急性、アラキドン酸誘発性、カタル性、クループ性、慢性または結核性気管支炎を含め、あらゆるタイプまたは発生原因の気管支炎である。
【0123】
別の実施態様において、処置される障害または状態には、例えば、アルミニウム症、炭粉症、石綿症、石粉症、ダチョウ塵肺症、鉄症、珪石症、タバコ肺および綿肺症を含め、あらゆるタイプまたは発生原因の塵肺症(慢性にせよ、急性にせよ、気道閉塞を伴うことが多く、塵埃の反復吸入により誘発される通例職業性の炎症性肺疾患)が含まれる。
【0124】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、アトピー性鼻炎(花粉症)および慢性副鼻腔炎から選択される。
【0125】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、皮膚の他の炎症状態、例えば乾癬または全身性エリテマトーデスから選択される。
【0126】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、炎症性腸疾患、例えば潰瘍性大腸炎およびクローン病である。
【0127】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、他の線維症状態、例えば全身性硬化症(scelrosis)、肝臓線維症、肺線維症、特発性線維症または肺類線維腫から選択される。
【0128】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、腫瘍再発または転移である。Th2サイトカインの阻害により、動物モデルにおいて抗ウイルス性ワクチンが増強されることが示されており、HIVおよび他の感染性疾患の処置に有益であり得る[Ahlers, J. D., et al. Proc Natl Acad Sci U S A, 2002]。
【0129】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、喘息、慢性気管支炎、COPD、中耳炎および副鼻腔炎などの慢性的基礎状態を増悪する呼吸器ウイルス感染症である。処置される呼吸器ウイルス感染症は、例えば中耳炎、副鼻腔炎または肺炎など、二次細菌感染症に随伴し得る。
【0130】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、他の疾患または状態、特に炎症成分を有する疾患または状態、例えば慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎を含む骨および関節の疾患、および他の疾患、例えばアテローム性動脈硬化症、多発性硬化症、および例えば心臓、腎臓、肝臓、肺または骨髄移植後の急性および慢性同種移植拒絶から選択される。
【0131】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、内毒素性ショック、糸球体腎炎、脳および心虚血、アルツハイマー病、のう胞性線維症、ウイルス感染症およびそれらに関連した増悪、後天性免疫不全症候群(AIDS)、多発性硬化症(MS)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)関連胃炎、および癌、特に卵巣癌の増大である。
【0132】
別の実施態様において、処置される障害または状態は、ヒトライノウイルス、他のエンテロウイルス、コロナウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルスまたはアデノウイルスにより誘発されるヒトでのウイルス感染により誘発される症状である。
本発明による処置は、対症療法的または予防的なものであり得る。
【0133】
例えば炎症性気道疾患での炎症状態の阻止における本発明薬剤の有効性は、例えば、Wada et al, J. Exp. Med (1994) 180:1135-40; Sekido et al, Nature (1993) 365:654-57; Modelska et al., Am. J. Respir. Crit. Care. Med (1999) 160:1450-56;および Laffon et al (1999) Am. J. Respir. Crit. Care Med. 160:1443-49 に記載されている要領で、気道炎症または炎症状態の動物モデル、例えばラットまたはウサギモデルにおいて立証され得る。
【0134】
さらに別の実施態様において、本発明は、hTSLP受容体を有する細胞の同定方法を提供する。この方法では、さらに検出可能な標識を有する上記抗体または抗体フラグメントのいずれかと細胞を接触させる。標識は、放射性、蛍光性、磁性、常磁性または化学発光性である。さらに本方法は、標識細胞の上記イメージングまたは分離段階のいずれかを含み得る。
【0135】
別の実施態様において、上記のヒトまたはヒト化抗体または抗体フラグメントのいずれかは合成的なものである。
別の実施態様において、本発明は、医薬組成物および追加的治療剤を提供する。
【0136】
追加的治療剤は、特に上記で挙げた疾患などの閉塞性または炎症性気道疾患の処置において、抗炎症剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤または鎮咳薬剤物質から成る群から選択され、例えば上記薬剤の治療活性の増強剤として、または上記薬剤の必要とされる投薬量または潜在的副作用を減らす手段としての役割を果たし得る。本発明の治療剤は、一定の医薬組成物において他の薬剤物質と混合され得るか、または他の薬剤物質とは別々に、それより先に、それと同時にまたはそれの後に投与され得る。したがって、本発明は、上記の本発明薬剤と抗炎症剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤または鎮咳薬剤物質の組み合わせを含み、本発明薬剤と上記薬剤物質は同一または異なる医薬組成物中に含まれるものとする。
【0137】
適切な抗炎症剤には、ステロイド類、特に糖質副腎皮質ステロイド類、例えばブデソニド、ジプロピオン酸ベクラメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、シクレソニドまたはフランカルボン酸モメタゾン、または国際公開第02/88167号、国際公開第02/12266号、国際公開第02/100879号、国際公開第02/00679号(特に、実施例3、11、14、17、19、26、34、37、39、51、60、67、72、73、90、99および101のもの)、国際公開第03/35668号、国際公開第03/48181号、国際公開第03/62259号、国際公開第03/64445号、国際公開第03/72592号、国際公開第04/39827号および国際公開第04/66920号記載のステロイド類;非ステロイド系糖質コルチコイド受容体アゴニスト、例えばドイツ国特許第10261874号、国際公開第00/00531号、国際公開第02/10143号、国際公開第03/82280号、国際公開第03/82787号、国際公開第03/86294号、国際公開第03/104195号、国際公開第03/101932号、国際公開第04/05229号、国際公開第04/18429号、国際公開第04/19935号および国際公開第04/26248号に記載のもの;LTB4アンタゴニスト、例えばBIIL 284、CP−195543、DPC11870、LTB4エタノールアミド、LY 293111、LY 255283、CGS025019C、CP−195543、ONO−4057、SB 209247、SC−53228および米国特許第5451700号記載のもの;LTD4アンタゴニスト、例えば、モンテルカスト、プランルカスト、ザフィルルカスト、アコレート、SR2640、Wy−48,252、ICI 198615、MK−571、LY−171883、Ro 24−5913およびL−648051;PDE4阻害剤、例えばシロミラスト(Ariflo(登録商標)GlaxoSmithKline)、ロフルミラスト(Byk Gulden)、V−11294A(Napp)、BAY19−8004(Bayer)、SCH−351591(Schering-Plough)、アロフィリン(Almirall Prodesfarma)、PD189659/PD168787(Parke-Davis)、AWD−12−281(Asta Medica)、CDC−801(Celgene)、SelCID(TM)CC−10004(Celgene)、VM554/UM565(Vernalis)、T−440(Tanabe)、KW−4490(Kyowa Hakko Kogyo)および国際公開第92/19594号、国際公開第93/19749号、 国際公開第93/19750号、国際公開第93/19751号、国際公開第98/18796, 国際公開第 99/16766号、国際公開第01/13953号、国際公開第 03/104204, 国際公開第03/104205号、国際公開第03/39544, 国際公開第 04/000814号、国際公開第04/000839号、国際公開第 04/005258号、国際公開第04/018450号、国際公開第 04/018451号、国際公開第04/018457号、国際公開第 04/018465号、国際公開第04/018431号、国際公開第04/018449号、国際公開第04/018450号、国際公開第04/018451号、国際公開第04/018457号、国際公開第04/018465号、国際公開第 04/019944, 国際公開第04/019945号、国際公開第04/045607号および国際公開第04/037805号に開示されたもの;A2Aアゴニスト、例えば欧州特許第1052264号、欧州特許第1241176号、欧州特許第409595A2号、国際公開第94/17090号、国際公開第96/02543号、国際公開第96/02553号、国際公開第98/28319号、国際公開第99/24449号、国際公開第99/24450号、国際公開第99/24451号、国際公開第99/38877号、国際公開第99/41267号、国際公開第99/67263号、国際公開第99/67264号、国際公開第99/67265号、国際公開第99/67266号、国際公開第00/23457号、国際公開第00/77018号、国際公開第00/78774号、国際公開第01/23399号、国際公開第01/27130号、国際公開第01/27131号、国際公開第01/60835号、国際公開第01/94368号、国際公開第02/00676号、国際公開第02/22630号、国際公開第02/96462号および国際公開第03/086408号に記載されたもの;およびA2Bアンタゴニスト、例えば国際公開第02/42298号記載のものがある。
【0138】
適切な気管支拡張剤には、抗コリン作用性または抗ムスカリン性薬剤、特に臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、チオトロピウム塩類およびCHF4226(Chiesi)、およびグリコピロレート、並びに欧州特許第424021号、米国特許第3714357号、米国特許第5171744号、国際公開第01/04118号、国際公開第02/00652号、国際公開第02/51841号、国際公開第 02/53564号、国際公開第03/00840号、国際公開第03/33495号、国際公開第03/53966号、国際公開第03/87094号、国際公開第04/018422号および国際公開第04/05285号記載のもの、およびベータ−2アドレナリン受容体アゴニスト、例えばアルブテロール(サルブタモール)、メタプロテレノール、テルブタリン、サルメテロール・フェノテロール、プロカテロールおよび特にホルモテロール、カルモテロールおよびその医薬上許容される塩類、および国際公開第00/75114号(この文献については、出典明示により援用する)の式(I)の化合物(遊離または塩または溶媒和物形態)、好ましくはその実施例の化合物、特に化合物(5−[(R)−2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン)およびその医薬上許容される塩類、並びに国際公開第04/16601号の式(I)の化合物(遊離または塩または溶媒和物形態)、および欧州特許第1440966号、日本国特許第05025045号、国際公開第93/18007号、国際公開第99/64035号、米国2002/0055651号、国際公開第01/42193号、国際公開第01/83462号、国際公開第02/66422号、国際公開第02/70490号、国際公開第02/76933号、国際公開第03/24439号、国際公開第03/42160号、国際公開第03/42164号、国際公開第03/72539号、国際公開第03/91204号、国際公開第03/99764号、国際公開第04/16578号、国際公開第04/22547号、国際公開第04/32921号、国際公開第04/33412号、国際公開第04/37768号、国際公開第04/37773号、国際公開第04/37807号、国際公開第04/39762号、国際公開第04/39766号、国際公開第04/45618号、国際公開第04/46083号、国際公開第04/80964号、欧州特許第1460064号、国際公開第04/087142号、国際公開第04/089892号、欧州特許第01477167号、米国特許第2004/0242622号、米国特許第2004/0229904号、国際公開第04/108675号、国際公開第04/108676号、国際公開第05/033121号、国際公開第05/040103号および国際公開第05/044787号の化合物がある。
【0139】
適切なデュアル型抗炎症性・気管支拡張性薬剤には、デュアル型ベータ−2アドレナリン受容体アゴニスト/ムスカリン拮抗物質、例えば米国特許第2004/0167167号、国際公開第04/74246号および国際公開第04/74812号に開示されたものがある。
【0140】
適切な抗ヒスタミン性薬剤物質には、塩酸セチリジン、アセタミノフェン、フマル酸クレマスチン、プロメタジン、ロラチジン、デスロラチジン、塩酸ジフェンヒドラミンおよびフェキソフェナジン、アクチバスチン、アステミゾール、アゼラスチン、エバスチン、エピナスチン、ミゾラスチンおよびテフェナジン並びに日本国特許第2004107299号、国際公開第03/099807号および国際公開第04/026841号に開示されたものがある。
【0141】
また、本発明治療剤と抗コリン作用性または抗ムスカリン性薬剤、ステロイド類、ベータ−2アゴニスト、PDE4阻害剤、ドーパミン受容体アゴニスト、LTD4アンタゴニストまたはLTB4アンタゴニストとの組み合わせも使用され得る。本発明薬剤と抗炎症剤の他の有用な組み合わせは、ケモカイン受容体の他のアンタゴニスト、例えばCCR−1、CCR−3、CCR−4、CCR−5、CCR−6、CCR−7、CCR−8、CCR−9およびCCR10、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、特にCCR−5アンタゴニスト、例えばSchering-Plough アンタゴニストSC−351125、SCH−55700およびSCH−D、Takeda アンタゴニスト、例えばN−[[4−[[[6,7−ジヒドロ−2−(4−メチルフェニル)−5H−ベンゾシクロヘプテン−8−イル]カルボニル]アミノ]フェニル]−メチル]−テトラヒドロ−N,N−ジメチル−2H−ピラン−4−アミニウムクロリド(TAK−770)、米国特許第6166037号(特に請求項18および19)、国際公開第0066558号(特に請求項8)、国際公開第0066559号(特に請求項9)、国際公開第04/018425号および国際公開第04/026873号記載のCCR−5アンタゴニストとの組み合わせである。
【0142】
また、さらなる治療剤が、他のサイトカイン結合分子、特に他のサイトカインの抗体から成る群から選択され得、特に例えばPCT/EP2005/00836に記載された抗IL−4抗体、抗IgE抗体、例えばXolair(登録商標)、抗IL31抗体、抗IL31R抗体、例えば国際公開第05/007699号に記載された抗IL13抗体、抗エンドグリン抗体、抗IL1b抗体、抗TSLP抗体または別の抗hTSLPR抗体との組み合わせがある。
【0143】
本発明の抗hTSLPRアンタゴニスト抗体は、対象の治療および予防の両処置に使用され得る。治療適用では、抗hTSLPRアンタゴニスト抗体(例、ヒト化抗hTSLPR抗体)を含む組成物を、TSLPシグナリングにより誘発されるかまたはそれに随伴するアレルギー疾患に既に罹患している対象に投与する。組成物は、病状およびその合併症を治療するか、その進行を部分的に止めるかまたは検出可能な形で遅らせるのに十分な量で抗体を含む。予防適用では、モノクローナル抗hTSLPR抗体を含む組成物を、アレルギー性炎症障害にまだ罹患していない患者に投与する。むしろ、それらは、アレルギー性炎症障害を発症する危険があるか、その素因を有する対象に向けられたものである。対象に対する上記適用により、患者の抵抗力を高めるか、またはTSLPシグナリングが介在するアレルギー性炎症障害の進行を遅らせることが可能となる。
【0144】
VII.医薬組成物
本発明は、医薬上許容される担体と一緒に製剤化された抗hTSLPRモノクローナル抗体(インタクトまたは結合フラグメント)を含む医薬組成物を適用する。さらに組成物は、所与のアレルギー性障害の処置または予防に適した他の治療剤、例えば上記で示した公知抗アレルギー剤を含み得る。医薬用担体は、組成物を増強または安定化させるか、または組成物を製造し易くする。医薬上許容される担体には、生理学的に適合し得る溶媒、分散媒質、コーティング剤、抗菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。
【0145】
本発明の医薬組成物は、当業界で公知の様々な方法により投与され得る。投与経路および/または方式は、所望の結果により異なる。投与は静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下経路であるか、または標的部位の近位への投与が好ましい。医薬上許容される担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例、注射または注入による)に適切なものとすべきである。投与経路によっては、活性化合物、すなわち抗体、二重特異性および多重特異性分子は、酸の作用および化合物を不活化し得る他の天然条件から化合物を保護する材料でコーティングされ得る。
【0146】
組成物は無菌かつ流動性にするべきである。例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合に要求される粒子サイズの維持により、そして界面活性剤の使用により適切な流動性が維持され得る。多くの場合、等張剤、例えば糖類、マンニトールまたはソルビトールなどのポリアルコール類、および塩化ナトリウムを組成物中に含ませるのが好ましい。例えばモノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンなどの吸収遅延剤を組成物中に含ませることにより、注射可能組成物の長期間吸収が実現し得る。
【0147】
本発明の医薬組成物は、当業界でよく知られた方法に従って製造され、常用手順で実施され得る。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Co., 第20版、2000;および Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson 編、Marcel Dekker, Inc., ニューヨーク、1978 参照。医薬組成物は、好ましくはGMP条件下で製造される。典型的には、治療上効果的な用量または有効用量の抗hTSLPR抗体を本発明医薬組成物中で使用する。抗hTSLPR抗体は、当業者に周知の慣用的方法により医薬上許容される投薬形態に製剤化される。投薬レジメンを調節することにより、最適な所望の応答(例、治療応答)が誘導される。例えば、単一ボーラスを投与することもあれば、時間をかけて幾つかの分割用量を投与することもあれば、治療状況の緊急性による指示に応じて用量を減少または増加させることもあり得る。投与が容易で投薬量の均一性が保たれる単位用量形態で非経口組成物を製剤化するのが特に有利である。本明細書で使用されている単位用量形態とは、処置される対象用の単位投薬量として適合させた物理的に独立した単位をいい、各単位は、必要とされる医薬用担体と共に所望の治療効果を生じるように算出された予め定められた量の活性化合物を含有する。
【0148】
本発明医薬組成物における有効成分の実際の用量レベルを変えることにより、患者に毒性を呈することなく、特定の患者、組成物および投与方式について所望の治療応答を引き出すのに有効な量の有効成分を含ませることができる。選択される用量レベルは、使用される本発明の特定組成物、またはそのエステル、塩またはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用されている特定化合物の排出速度、処置の持続時間、使用される特定組成物と併用される他の薬剤、化合物および/または材料、処置されている患者の年齢、性別、体重、全般的健康状態および病歴などの因子を含む様々な薬物動態因子により変動する。
【0149】
医師または獣医は、医薬組成物中で使用する本発明抗体の投薬を、所望の治療効果の達成に要求されるレベルより低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投薬量を増加させ得る。一般に、本明細書記載のアレルギー性炎症障害の処置についての本発明組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトか動物かという点、投与されている他の医薬、および処置が予防的なものか治療的なものかという点を含む、多くの異なる因子により変動する。安全性および有効性を最適にするためには、処置の投薬量を滴定することが必要である。抗体での投与については、用量は、宿主体重に基づくと約0.0001〜100mg/kg、さらに通常は0.01〜5mg/kgの範囲である。例えば、投薬量は、体重に基づくと1mg/kgまたは10mg/kgまたは1〜10mg/kgの範囲内であり得る。典型的な治療計画は、2週間ごとに1回または月1回または3〜6か月ごとに1回の投与を必要とする。
【0150】
抗体は、通常複数回にわたって投与される。一投薬間の間隔は、週単位、月単位または年単位であり得る。また、患者における抗hTSLPR抗体の血中レベルの測定結果による指示に応じて間隔は不定期的な場合もあり得る。方法によっては、投薬量を調節することにより、血漿抗体濃度を1〜1000μg/mlに到達させる場合もあれば、25〜300μg/mlとする場合もある。別法として、抗体は持効型製剤として投与され得、その場合投与頻度は少なくて済む。投薬量および頻度は、患者における抗体の半減期により異なる。一般に、ヒト化抗体は、キメラ抗体および非ヒト抗体の場合より長い半減期を示す。投薬量および投与頻度は、処置が予防的なものか治療的なものかにより異なり得る。予防適用では、比較的低用量を長期間にわたって比較的間隔をあけて投与する。患者によっては、残りの生涯ずっと処置を受け続ける場合もある。治療適用では、病気の進行が低下するかまたは終結するまで、好ましくは患者が病状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高用量を必要とする場合もある。その後、患者は予防的措置を受けることになり得る。
【0151】
以上、本明細書では、主に、NVP164−1として知られる抗体に関するものとして本発明の実施態様について述べてきた。しかしながら、本明細書の読者であれば、全ての均等内容の実施態様がNVP163−1として知られる抗体に関しても具体的および個々に想定され、それら自体下記に添付の請求の範囲に従い得る本発明実施態様を形成することは容易に理解できるはずである。
【実施例】
【0152】
実施例
以下の実施例は、本発明のさらなる説明であり、その範囲を制限するものではない。本発明の他の変形も当業者であれば容易に理解できるはずであり、添付の請求の範囲に包含されるものとする。
【0153】
1.ELISA
ELISAに使用されるタンパク質は、hTSLPR/hFc(R&D systems,#981−TR)、hIL7Rα/hFc(R&D systems,#306−IR)またはmTSLPR/hFc(R&D Systems,#546−TR)であった。Maxisorp 384ウェルプレート(Nunc、ロチェスター、ニューヨーク、# 464718)を、4℃で一晩、5μg/μLの各タンパク質25μLでコーティングした。コーティングしたプレートを、PBS+0.05% Tween 20(PBST)で洗浄し、PBS中1%のBSA80μLにより遮断し、PBSTで再び洗浄した。プレートを、20μLのHRP−コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2特異抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,#109−035−097)および20μLのTMB基質(KPL,#50−76−05)と連続的にインキュベーションし、650nMの吸光度で読み取った。プレートをインキュベーション間にPBSTで洗浄した。図1、2、4、5および6参照。
【0154】
2.リポーター遺伝子検定法(RGA)
hTSLPR/hIL7Rα/Stat5−Lucを安定して過剰発現するマウスプロB細胞系、Ba/F3細胞をRGAに使用した。10%FBSおよび10ng/mLのhTSLP(R&D Systems,#1398−TS/CF)を含有するRPMI−1640において、安定した細胞を維持した。細胞をRPMI−1640+10%FBSで1回洗浄し、5×105細胞/mLで再懸濁し、37℃組織培養インキュベーター中において5%CO2で一晩、384ウェルプレート中20μL/ウェルで播種した。10μLの4×TSLP(4ng/μL)を添加する前、10μLの抗体を細胞に加え、37℃で1時間インキュベーションした。37℃で6時間インキュベーションした後、20μLのBright-Glo (Promega,#2620)を各ウェルに添加し、発光プレートリーダーを用いてプレートを読み取った。図3、7および8参照。
【0155】
3.さらなる特性確認
国際公開第2007/112146号の文書でNV115−3Bとして称されるTSLPR抗体は、NV115−3B−IgG1のFabフラグメントである。NV115−3B−IgG1は、Fabフラグメントの完全長IgG1である。NV115−3B−IgG1は、強い免疫原性によりその各霊長類薬物動態(PK)試験(下記図10C参照)に通ることができず、後続の多回投与毒性試験は除外された。上記国際公開第2007/112146号からのTSLPR抗体は、本発明者らがこの免疫原性の問題を起こし得ると予測していた重および軽鎖配列の両方における2サブクラスのヒト生殖細胞系配列を当初より含んでいた。単一サブクラスの重鎖および単一サブクラスの軽鎖を有するように、第2世代候補NV164−1を作製した。NV164−1は、ヒトTSLPRへの結合特異性(図4)、カニクイザルTSLPRとの交差反応性(図5)、およびインビトロ検定法における同等の生物活性(図6、7、8および9)を示した。それに続いて、低および高用量での霊長類PK試験でそれを試験した(図10AおよびB)。PKの結果は、高用量(30mg/kg)では、潜在的免疫原性に対する寛容を生じ、低用量(5mg/kg)ではある程度の免疫原性を誘導するが、NV115−3B−IgG1より免疫原性はかなり低いことを示していた。したがって、生殖細胞系配列の単一サブクラスをもつこの標的に対し遺伝子操作が加えられた抗体は、免疫原性に対して有益な効果を有することがわかる。
【0156】
NV164−1についての様々な配列情報を、下記配列番号1〜14に示す。
NV163−1についての様々な配列情報を、下記配列番号15〜24に示す。
【0157】
配列情報
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号7または配列番号21の重鎖可変領域配列を含む、単離抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
配列番号7の重鎖可変領域配列および配列番号8の軽鎖可変領域配列または配列番号21の重鎖可変領域配列および配列番号22の軽鎖可変領域配列を含む、単離抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
それぞれ配列番号1、2および3またはそれぞれ配列番号15、16および17のCDRH1、H2およびH3またはそれぞれ配列番号4、5および6またはそれぞれ配列番号18、19および20のCDRL1、L2およびL3配列を含む、請求項2記載の抗体。
【請求項4】
それぞれ配列番号1、2および3またはそれぞれ配列番号15、16および17のCDRH1、H2およびH3およびそれぞれ配列番号4、5および6またはそれぞれ配列番号18、19および20のCDRL1、L2およびL3配列を含む、請求項2記載の抗体。
【請求項5】
配列番号7と少なくとも80%同一である重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号8と少なくとも80%同一である軽鎖可変領域配列アミノ酸配列を含むか、または配列番号21と少なくとも80%同一である重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号22と少なくとも80%同一である軽鎖可変領域配列アミノ酸配列を含む、請求項2記載の抗体。
【請求項6】
キメラ抗体である、請求項2記載の抗体。
【請求項7】
ヒト重鎖定常領域およびヒト軽鎖定常領域を含む、請求項1または2記載の抗体。
【請求項8】
ヒト化抗体である、請求項2記載の抗体。
【請求項9】
ヒト抗体である、請求項2記載の抗体。
【請求項10】
1本鎖抗体である、請求項2記載の抗体。
【請求項11】
Fabフラグメントである、請求項2記載の抗体。
【請求項12】
IgG1またはIgG4アイソタイプに属する、請求項2記載の抗体。
【請求項13】
配列番号9の重鎖および配列番号10の軽鎖を含む単離抗体。
【請求項14】
請求項2〜13のいずれか1項記載の抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含むポリペプチドをコード化する単離または組換えポリヌクレオチド。
【請求項15】
抗体がヒト抗体である、請求項14記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
重鎖可変領域をコード化するポリヌクレオチドが配列番号11であり、軽鎖可変領域をコード化するポリヌクレオチドが配列番号12である、請求項14記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
(1)請求項2〜13のいずれか1項記載の抗体の重鎖をコード化する組換えDNAセグメントおよび(2)請求項2〜13のいずれか1項記載の抗体の軽鎖をコード化する第2組換えDNAセグメントを含む単離された宿主細胞であって、DNAセグメントがそれぞれ第1および第2プロモーターに機能し得るように結合され、宿主細胞において発現され得るものである、単離された宿主細胞。
【請求項18】
細胞がCHOまたはNSO細胞系である、請求項17記載の単離された宿主細胞。
【請求項19】
対象における炎症性疾患または障害の処置方法であって、請求項2〜13のいずれか1項記載の抗体の有効量を含む医薬組成物を対象に投与することを含む方法。
【請求項20】
対象がヒトである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
対象がアレルギー性炎症疾患に罹患している、請求項19または20記載の方法。
【請求項22】
アレルギー性炎症疾患がアトピー性皮膚炎、喘息またはアレルギー性鼻炎である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
医薬上許容される担体または賦形剤と一緒に請求項1〜13のいずれか1項記載の抗体を含む、特に請求項19〜22のいずれか1項記載の方法で使用される、医薬組成物。
【請求項24】
皮下または静脈内投与に適切である、請求項23記載の組成物。
【請求項1】
配列番号7または配列番号21の重鎖可変領域配列を含む、単離抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
配列番号7の重鎖可変領域配列および配列番号8の軽鎖可変領域配列または配列番号21の重鎖可変領域配列および配列番号22の軽鎖可変領域配列を含む、単離抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
それぞれ配列番号1、2および3またはそれぞれ配列番号15、16および17のCDRH1、H2およびH3またはそれぞれ配列番号4、5および6またはそれぞれ配列番号18、19および20のCDRL1、L2およびL3配列を含む、請求項2記載の抗体。
【請求項4】
それぞれ配列番号1、2および3またはそれぞれ配列番号15、16および17のCDRH1、H2およびH3およびそれぞれ配列番号4、5および6またはそれぞれ配列番号18、19および20のCDRL1、L2およびL3配列を含む、請求項2記載の抗体。
【請求項5】
配列番号7と少なくとも80%同一である重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号8と少なくとも80%同一である軽鎖可変領域配列アミノ酸配列を含むか、または配列番号21と少なくとも80%同一である重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号22と少なくとも80%同一である軽鎖可変領域配列アミノ酸配列を含む、請求項2記載の抗体。
【請求項6】
キメラ抗体である、請求項2記載の抗体。
【請求項7】
ヒト重鎖定常領域およびヒト軽鎖定常領域を含む、請求項1または2記載の抗体。
【請求項8】
ヒト化抗体である、請求項2記載の抗体。
【請求項9】
ヒト抗体である、請求項2記載の抗体。
【請求項10】
1本鎖抗体である、請求項2記載の抗体。
【請求項11】
Fabフラグメントである、請求項2記載の抗体。
【請求項12】
IgG1またはIgG4アイソタイプに属する、請求項2記載の抗体。
【請求項13】
配列番号9の重鎖および配列番号10の軽鎖を含む単離抗体。
【請求項14】
請求項2〜13のいずれか1項記載の抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含むポリペプチドをコード化する単離または組換えポリヌクレオチド。
【請求項15】
抗体がヒト抗体である、請求項14記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
重鎖可変領域をコード化するポリヌクレオチドが配列番号11であり、軽鎖可変領域をコード化するポリヌクレオチドが配列番号12である、請求項14記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
(1)請求項2〜13のいずれか1項記載の抗体の重鎖をコード化する組換えDNAセグメントおよび(2)請求項2〜13のいずれか1項記載の抗体の軽鎖をコード化する第2組換えDNAセグメントを含む単離された宿主細胞であって、DNAセグメントがそれぞれ第1および第2プロモーターに機能し得るように結合され、宿主細胞において発現され得るものである、単離された宿主細胞。
【請求項18】
細胞がCHOまたはNSO細胞系である、請求項17記載の単離された宿主細胞。
【請求項19】
対象における炎症性疾患または障害の処置方法であって、請求項2〜13のいずれか1項記載の抗体の有効量を含む医薬組成物を対象に投与することを含む方法。
【請求項20】
対象がヒトである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
対象がアレルギー性炎症疾患に罹患している、請求項19または20記載の方法。
【請求項22】
アレルギー性炎症疾患がアトピー性皮膚炎、喘息またはアレルギー性鼻炎である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
医薬上許容される担体または賦形剤と一緒に請求項1〜13のいずれか1項記載の抗体を含む、特に請求項19〜22のいずれか1項記載の方法で使用される、医薬組成物。
【請求項24】
皮下または静脈内投与に適切である、請求項23記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【公表番号】特表2010−530233(P2010−530233A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512681(P2010−512681)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057731
【国際公開番号】WO2008/155365
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057731
【国際公開番号】WO2008/155365
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】
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