説明

アレルギー疾患用治療剤または予防剤

【課題】 アレルギー疾患の治療剤または予防剤を提供すること。
【解決手段】
高められた分子状水素濃度を有する水を含む、I型アレルギー反応が関連する疾患または障害の液状治療剤または液状予防剤により、上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高められた分子状水素濃度を有する水を含む、I型アレルギー反応が関連する疾患または障害の液状治療剤または液状予防剤、ならびにI型アレルギー反応が関連する疾患または障害を患っている患者を治療するための、高められた分子状水素濃度を有する水の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
I型アレルギーまたは即時型過敏症は、種々のアレルギー性疾患、例えば、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、鼻炎、結膜炎、花粉症および蕁麻疹に関与している。
【0003】
I型アレルギー反応を含む免疫グロブリンE(IgE)介在型の免疫反応においては、肥満細胞がエフェクター細胞として重要な役割を果たすが、これは造血前駆細胞に由来し、粘膜組織や結合組織において局所的に成熟細胞に分化する。この肥満細胞の表面には高親和性IgE受容体FcεRI(IgEの結合するαサブユニットと、βサブユニットおよび2つのγサブユニットとからなる)が発現しており、FcεRIに結合しているIgE分子と抗原が反応することにより、受容体の凝集、情報伝達系の活性化が起こり、その結果として、予め形成されていたヒスタミンや腫瘍壊死因子α(TNFα:tumor necrosis factor α)のようなメディエーターの脱顆粒・放出やサイトカインの産生、ロイコトリエンの分泌等が生じる(非特許文献1)。
【0004】
従って、このような肥満細胞の活性化を阻害できる薬剤の開発は、アレルギー性疾患の治療に関して大きな可能性を有するものであると期待される。
【0005】
ところで、最近になって、分子状水素が多くの酸化ストレス関連疾患の動物モデルにおいて良好な効果を奏することが示されてきた。水素ガスの吸入が酸化ストレスの軽減によって脳梗塞体積を減少させることが最初に示され(非特許文献2)、その後、水素ガスが肝虚血再潅流障害(非特許文献3)、心筋虚血再潅流障害(非特許文献4)、新生児低酸素性脳症(非特許文献5)および小腸移植誘発性炎症(非特許文献6)に対して予防効果を有することが報告されている。
【0006】
また、非特許文献7〜9では、水素ガスを含有する水素冨化水の経口摂取がストレス性認知障害(非特許文献7)、アテローム硬化症(非特許文献8)、難聴(非特許文献9)およびパーキンソン病(非特許文献10)に対して有効であることが報告されている。さらに、非特許文献11では、糖尿病や耐糖能異常を患う患者に水素冨化水を経口摂取させることにより、脂質代謝およびグルコース代謝が改善されたことが報告されている。
【0007】
しかしながら、水素と、アレルギー性疾患との関係については未だ報告はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. Kalesnikoff, S.J. Galli, New developments in mast cell biology, Nat Immunol 9 (2008) 1215-1223.
【非特許文献2】I. Ohsawa, M. Ishikawa, K. Takahashi, M. Watanabe, K. Nishimaki, K. Yamagata, K. Katsura, Y. Katayama, S. Asoh, S. Ohta, Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals, Nat Med 13 (2007) 688-694.
【非特許文献3】K. Fukuda, S. Asoh, M. Ishikawa, Y. Yamamoto, I. Ohsawa, S. Ohta, Inhalation of hydrogen gas suppresses hepatic injury caused by ischemia/reperfusion through reducing oxidative stress, Biochem Biophys Res Commun 361 (2007) 670-674.
【非特許文献4】K. Hayashida, M. Sano, I. Ohsawa, K. Shinmura, K. Tamaki, K. Kimura, J. Endo, T. Katayama, A. Kawamura, S. Kohsaka, S. Makino, S. Ohta, S. Ogawa, K. Fukuda, Inhalation of hydrogen gas reduces infarct size in the rat model of myocardial ischemia-reperfusion injury, Biochem Biophys Res Commun 373 (2008) 30-35.
【非特許文献5】J. Cai, Z. Kang, W.W. Liu, X. Luo, S. Qiang, J.H. Zhang, S. Ohta, X. Sun, W. Xu, H. Tao, R. Li, Hydrogen therapy reduces apoptosis in neonatal hypoxia-ischemia rat model, Neurosci Lett 441 (2008) 167-172.
【非特許文献6】B.M. Buchholz, D.J. Kaczorowski, R. Sugimoto, R. Yang, Y. Wang, T.R. Billiar, K.R. McCurry, A.J. Bauer, A. Nakao, Hydrogen inhalation ameliorates oxidative stress in transplantation induced intestinal graft injury, Am J Transplant 8 (2008) 2015-2024.
【非特許文献7】K. Nagata, N. Nakashima-Kamimura, T. Mikami, I. Ohsawa, S. Ohta, Consumption of molecular hydrogen prevents the stress-induced impairments in hippocampus-dependent learning tasks during chronic physical restraint in mice, Neuropsychopharmacology 34 (2009) 501-508.
【非特許文献8】I. Ohsawa, K. Nishimaki, K. Yamagata, M. Ishikawa, S. Ohta, Consumption of hydrogen water prevents atherosclerosis in apolipoprotein E knockout mice, Biochem Biophys Res Commun 377 (2008) 1195-1198.
【非特許文献9】Y.S. Kikkawa, T. Nakagawa, R.T. Horie, J. Ito, Hydrogen protects auditory hair cells from free radicals, Neuroreport 20 (2009) 689-694.
【非特許文献10】Y. Fu, M. Ito, Y. Fujita, M. Ito, M. Ichihara, A. Masuda, Y. Suzuki, S. Maesawa, Y. Kajita, M. Hirayama, I. Ohsawa, S. Ohta, K. Ohno, Molecular hydrogen is protective against 6-hydroxydopamine-induced nigrostriatal degeneration in a rat model of Parkinson's disease, Neurosci Lett 453 (2009) 81-85.
【非特許文献11】S. Kajiyama, G. Hasegawa, M. Asano, H. Hosoda, M. Fukui, N. Nakamura, J. Kitawaki, S. Imai, K. Nakano, M. Ohta, T. Adachi, H. Obayashi, T. Yoshikawa, Supplementation of hydrogen-rich water improves lipid and glucose metabolism in patients with type 2 diabetes or impaired glucose tolerance, Nutr Res 28 (2008) 137-143.
【非特許文献12】M.K. Choo, E.K. Park, M.J. Han, D.H. Kim, Antiallergic activity of ginseng and its ginsenosides, Plant Med 69 (2003) 518-522.
【非特許文献13】T.J. Sullivan, K.L. Parker, W. Stenson, C.W. Parker, Modulation of cyclic AMP in purified rat mast cells. I. Responses to pharmacologic, metabolic, and physical stimuli, J Immunol 114 (1975) 1473-1479.
【非特許文献14】Y. Sato, S. Kajiyama, A. Amano, Y. Kondo, T. Sasaki, S. Handa, R. Takahashi, M. Fukui, G. Hasegawa, N. Nakamura, H. Fujinawa, T. Mori, M. Ohta, H. Obayashi, N. Maruyama, A. Ishigami, Hydrogen-rich pure water prevents superoxide formation in brain slices of vitamin C-depleted SMP30/GNL knockout mice, Biochem Biophys Res Commun 375 (2008) 346-350.
【非特許文献15】Y. Suzuki, T. Yoshimaru, T. Inoue, O. Niide, C. Ra, Role of oxidants in mast cell activation, Chem Immunol Allergy 87 (2005) 32-42.
【非特許文献16】J.R. Gordon, S.J. Galli, Release of both preformed and newly synthesized tumor necrosis factor alpha (TNF-alpha)/cachectin by mouse mast cells stimulated via the Fc epsilon RI. A mechanism for the sustained action of mast cell-derived TNF-alpha during IgE-dependent biological responses, J Exp Med 174 (1991) 103-107.
【非特許文献17】N. Nakao, T. Kurokawa, T. Nonami, G. Tumurkhuu, N. Koide, T. Yokochi, Hydrogen peroxide induces the production of tumor necrosis factor-alpha in RAW 264.7 macrophage cells via activation of p38 and stress-activated protein kinase, Innate Immun14 (2008) 190-196.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、アレルギー疾患の治療剤または予防剤を提供することである。
【0010】
本願発明の他の課題は、以下の記載から明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、高められた分子状水素濃度を有する水がI型アレルギー反応の抑制作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
受身皮下アナフィラキシー(PCA:Passive cutaneous anaphylaxis)は即時型アレルギー反応の動物モデルであり、抗アレルギー薬の評価に頻繁に使用されているが、PCA反応における水素の効果について試験を行ったところ、水素水で処理したマウスにおいてPCA反応が阻害されること、そしてその際にヒスタミンの放出も抑制されることが見出された。また、水素によるアレルギー反応阻害の分子機構を解析することにより、PCA反応の阻害効果には肥満細胞中のTNFαの発現抑制が関与することも見出された。
【0013】
なお、分子状水素は、細胞内に存在する活性酸素種のうち主にヒドロキシルラジカルを選択的に水に変えて無毒化するといわれているが、細胞にとって有益な役割も果たしている活性酸素種であるスーパーオキサイド、過酸化水素にはあまり影響を与えないことが報告されている(非特許文献2)。
【0014】
従って、本発明は、高められた分子状水素濃度を有する水を含む、I型アレルギー反応が関連する疾患または障害の液状治療剤または液状予防剤に関する。
【0015】
本発明はまた、上記分子状水素濃度が液状治療剤または液状予防剤の全重量を基準として0.05ppm以上である、上記液状治療剤または液状予防剤に関する。
【0016】
本発明はまた、上記I型アレルギー反応が関連する疾患または障害が、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、鼻炎、結膜炎、花粉症または蕁麻疹である、上記液状治療剤または液状予防剤に関する。
【0017】
本発明はまた、I型アレルギー反応が関連する疾患または障害を患っている患者を治療するための、高められた分子状水素濃度を有する水の使用に関する。
【0018】
本発明はまた、I型アレルギー反応が関連する疾患または障害に罹るのを予防するための、高められた分子状水素濃度を有する水の使用に関する。
【0019】
本発明はまた、I型アレルギー反応が関連する疾患または障害の液状治療剤または液状予防剤を製造するための、高められた分子状水素濃度を有する水の使用に関する。
【0020】
本発明はまた、I型アレルギー反応が関連する疾患または障害を患っているヒトを含む動物の治療方法であって、高められた分子状水素濃度を有する水の治療的有効量を上記ヒトを含む動物に投与することを含む、上記治療方法に関する。
【0021】
本発明はまた、ヒトを含む動物においてI型アレルギー反応が関連する疾患または障害に罹るのを予防する方法であって、高められた分子状水素濃度を有する水の予防的有効量を、上記ヒトを含む動物に投与することを含む、上記予防方法に関する。
【0022】
本発明はまた、高められた分子状水素濃度を有する水であって、ヒトを含めた動物に投与することにより、I型アレルギー反応が関連する疾患または障害の治療または予防に使用するための上記高められた分子状水素濃度を有する水に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】図1Aは、ICRマウスでのPCA反応における水素水経口摂取の効果を示す。
【図1B】図1Bは、ICRマウスでのPCA反応における水素水経口摂取の効果を示す。
【図2】図2は、ICRマウスでの血清ヒスタミンおよび8−OHdGレベルにおける水素水経口摂取の効果を示す。
【図3】図3は、ICRマウスから得られた腹腔滲出細胞中の肥満細胞数における水素水経口摂取の効果を示す。
【図4A】図4Aは、ICRマウスから得られた肥満細胞におけるアレルギー関連遺伝子の発現における水素水経口摂取の効果を示す(mRNA発現レベル)。
【図4B】図4Bは、ICRマウスから得られた肥満細胞におけるアレルギー関連遺伝子の発現における水素水経口摂取の効果を示す(蛋白質発現レベル)。
【図4C】図4Cは、ICRマウスから得られた肥満細胞におけるアレルギー関連遺伝子の発現における水素水経口摂取の効果を示す(蛋白質発現レベル)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明では、「高められた分子状水素濃度を有する水」が使用される。「高められた分子状水素濃度」とは、通常の飲用水、例えば水道水もしくは天然水、またはこれらを処理して得られる蒸留水、脱イオン水などの水の常温・常圧における分子状水素(H)濃度(0.00ppm)よりも高い溶存分子状水素濃度を意味し、好ましくは、「高められた分子状水素濃度を有する水」の全重量を基準として0.05ppm以上の分子状水素濃度を意味する。ここで、分子状水素濃度の上限は、水素の水への溶解度、すなわち、飽和溶存水素量に依存するだけで特に制限はない。飽和溶存水素量は、25℃、常圧においては1.55ppmである。上記「高められた分子状水素濃度を有する水」の分子状水素濃度は、温度・圧力等の条件にもよるが、例えば、0.1〜2.0ppm、0.5ppm〜1.6ppm、0.8ppm〜1.2ppmの範囲にある。なお、本明細書においては、このような「高められた分子状水素濃度を有する水」を「水素水」とも呼ぶ。
【0025】
このような水素水自体は既知であり、例えば、実用新案登録第3139460号公報の記載に従い、スタティックミキサーを有する気液混合部、途中に加圧ポンプを経る液体供給配管によって上記の気液混合部に接続される原料液体容器、気体供給配管によって上記気液混合部に接続される水素ボンベ、および製造された水素水を回収するための水素水回収配管を備えた装置を用いる連続加圧流通方式によって、水素(気体)を水に溶解させることにより製造することができる。具体的には、水を加圧ポンプによって加圧して液体供給配管によって気液混合部に供給し、一方で、加圧された状態で水素ボンベに充填された水素ガスも該ボンベ内の圧力を利用して気体供給配管によって気液混合部に供給する。この気液混合部に送られた水と水素ガス(両者とも加圧された状態である)を上記混合部内のミキサーに送り、加圧下において撹拌しながら水素を水に溶解させる。このような方法により、大量の本発明水素水を連続的に製造することが可能である。
【0026】
水素水は、常温常圧の開放系で静置すると、時間の経過とともに、溶存していた水素分子が水から放出されてしまう。そのため、水素水は、密封可能な容器中に保存する必要がある。例えばアルミニウム製の缶やアルミパウチにおいて保存するのが好ましく、使用の直前に開封するのが好ましい。
【0027】
上記水素水に含まれる分子状水素濃度は、市販のH2−N hydrogen needle sensor(Unisense社、Aarhus、デンマーク)及びPA2000 2 channel picoammeter(Unisense社、Aarhus、デンマーク)を使用して、常温(25℃)で測定することができる。
具体的には、容器に入れた水素水に、PA−2000に接続したH2−Nのセンサー部分を浸し、PA2000に表示される電流値が安定するまで5分ほど待って、電流値を読み取る。また、これとは別に、分子状水素を含有しない通常の飲用水(水道水)の電流値と、分子状水素を飽和に含した飽和水素水の電流値も同様に測定する(ここで、25℃における水道水の分子状水素濃度は0.00ppmであり、25℃における飽和水素水の分子状水素濃度は1.55ppmである)。水道水および飽和水素水の電流値の測定結果から、分子状水素濃度および電流値に関する検量線を作成し、測定対象である水素水において得られた電流値を当該検量線に当てはめることによって、当該水素水に含まれる分子状水素濃度を求めることができる。
【0028】
本発明では、上記水素水を、アレルギー疾患、特にI型アレルギー反応が関連するアレルギー疾患または障害の治療・予防に治療剤または予防剤として使用する。すなわち、本発明において、水素水とは、アレルギー疾患、特にI型アレルギー反応が関連するアレルギー疾患または障害の治療または予防のための有効成分としての分子状水素と、それを溶存させるためのキャリアーとしての水とを含む医薬組成物である。この際、典型的には、純粋な水素水が使用されるが、必要ならば、水素水の効果を損なわないことを条件として、水素水は、他の添加剤、例えばフレーバー、着色料、他の有効物質、ゲル化剤、防腐剤等を含んでいてもよい。これらの任意付加的に使用される添加剤は、それの種類によって、水素水の原料となる水に最初から加えるか、製造過程もしくは製造直後、または使用直前に加えることができる。
【0029】
I型アレルギー反応とは、肥満細胞や好塩基球表面に結合したIgEクラスに属する抗体に対応抗原が結合すると、その刺激によりヒスタミン、ロイコトリエン等の化学伝達物質が放出されるが、その作用によってもたらされる血管透過性亢進、末梢血管拡張、平滑筋収縮、粘液分泌亢進、白血球遊走等の反応を含めた、典型的な即時型アレルギーまたは即時型過敏反応を意味する。
【0030】
このようなI型アレルギー反応に関連するアレルギー疾患または障害としては、例えば、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、鼻炎、結膜炎、花粉症または蕁麻疹が挙げられる。
【0031】
本発明においては、治療または予防の対象者は、ヒトを含む動物、好ましくはヒトである。本明細書において使用する場合に「患者」は、ヒトを含む動物、好ましくはヒトを意味する。
【0032】
本発明の治療剤または予防剤は、例えば、経口的に摂取することができ、あるいは入浴やシャワー等によっても摂取することができる。経口によって摂取する場合には、そのまま飲料として摂取することができ、それにより、水素水中の水素分子が効率的に体内に吸収され、全身の細胞内に効率的に取り込まれる。水素分子は分子が小さいために細胞膜を透過しやすく、細胞の隅々まで到達することができる。また、ガスで摂取する場合と比べると、吸入器などが不要であるので、より簡便に流通、使用することができ、また細胞内への取り込みがより直接的に行えるという利点がある。
【0033】
投与量は、副作用がないのでさほど厳密な投与量の管理を必要とするものではないが、通常、0.1ppmの溶存水素量(水素水全重量を基準として)を有する水素水に換算して、1日につき成人1人あたり300ml〜2000mlの範囲である。この際、これらの用量は、1日あたり1回またはそれ以上の回数によって投与することができ、特に200ml〜300mlの範囲の用量ずつに分けて、それを1日あたり数回投与するのが好ましい。上記投与量は、治療・予防の対象者の年齢、体重や一般的な健康状態、治療・予防されるべき疾患、障害もしくは状態の性質や重症度等を考慮して調節することができる。
【0034】
上述のように、上記水素水はI型アレルギー反応を抑制し、従って、I型アレルギー反応に関連する疾患または障害の治療、予防に有用である。
【0035】
本発明はさらに、治療的有効量または予防的有効量の水素水および場合により少なくとも1種の添加剤を混合することを含む、I型アレルギー反応が関連する疾患または障害用の液状治療剤または予防剤を製造する方法を提供する。
【0036】
本明細書において使用する場合に「治療的有効量」とは、所与の疾患または障害の臨床症状を治癒、軽減、または部分的に抑止するのに十分な量を意味する。I型アレルギー反応が関連する疾患または障害に対しての上記水素水の治療的有効量は、通常、0.1ppmの溶存水素量を有する水素水に換算して、1日につき成人1人あたり300ml〜2000mlの範囲である。
【0037】
本明細書において使用する場合に「予防的有効量」とは、対象者(ヒトを含む動物)が所与の疾患または障害の臨床症状に罹らないように予防するのに十分な量を意味する。I型アレルギー反応が関連する疾患または障害に対しての上記水素水の予防的有効量は、通常、0.1ppmの溶存水素量を有する水素水に換算して、1日につき成人1人あたり300ml〜2000mlの範囲である。
【0038】
これらの量は、対象者の体重や一般的な健康状態、あるいは疾患または障害の性質や重症度を考慮して調節することができる。
【実施例】
【0039】
以下において、本発明の複数の実施例を示すが、本発明は、これらの実施例等によって何等限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0040】
<材料および方法>
試薬
マウスモノクローナル抗ジニトロフェノール(DNP)IgEは、ヤマサ(東京、日本)から購入した。コンプリートプロテアーゼインヒビターカクテルはRoche社(Nutley、米国)から入手した。FcεRIα、CD44、TNFαおよびICAM1(細胞間接着分子1:intercellular adhesion molecule 1)に対する抗体は、Santa Cruz Biotechnology社(Santa Cruz、米国)から入手した。β-アクチンに対する抗体は、Sigma社(St. Louis、米国)から入手した。西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗ウサギ抗体および西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗マウス抗体、およびECL chemiluminescence kitはGE Healthcare社(Piscataway、米国)から入手した。水素水については、アルミパウチ容器タイプの水素水(商品名:「おいしい水素水」、アルミパウチ容器タイプ500ml)をブルー・マーキュリー社(東京、日本)から提供を受けた。
【0041】
動物および処置
4週齢のオスのICRマウス(日本SLC、浜松、日本)を温湿度管理された飼育室で12時間明暗サイクルの下、飼育した。実験に先立って、全てのマウスにCE−2ペレット(日本クレア、東京、日本)および水を1週間自由に摂取させ、周囲環境に馴化させた。その後、マウスに、CE−2ダイエット(CE−2 diets)を摂取させ、水素水または対照水を2週間または4週間自由に摂取させた。対照水は、水素水を大気開放下で穏やかに24時間撹拌することによって製造した。各群につき6匹のマウスを使用した。分子状水素濃度はH2−N hydrogen needle sensor(水素針センサー)(Unisense社、Aarhus、デンマーク)を用いて測定した。水素水における分子状水素濃度は約1ppmであり、一方、対照水の分子状水素濃度は水道水の分子状水素濃度と同等であった。アルミパウチ容器の水素水は開封直後に60mlのガラス容器に入れ、その後容器内の空気を抜いてから蓋をした。摂取の間に水素が失われるのを最小限にするために、容器の蓋には、ボールベアリングを含む金属チューブを設けた。毎日、水素水を含有する容器を新たに用意し、マウスに付与した。実験を通して、体重、食餌の消費、および水の摂取量を毎日記録した。この試験は、岐阜県国際バイオ研究所の委員会によって承認されたものであり、動物は、岐阜県国際バイオ研究所の実験動物に関するガイドラインに従って扱った。
【0042】
受身皮下アナフィラキシー反応の測定
PCA反応は非特許文献12に記載された方法にわずかな改変を施して行った。ICRマウスの背部の毛を剃った2箇所の皮膚にそれぞれ10μgの抗DNP−IgEを注射した。24時間後に、マウスに1μg/μlのBSA(ウシ血清アルブミン)標識DNPおよび1%のエバンスブルー(Sigma社)を含む200μlのPBSを尾静脈から静脈内に注射した。1時間後、マウスを屠殺し、背部の皮膚を剥がした。皮膚の写真を撮った後、抗DNP−IgEを注射した皮膚領域(1cm×1cm)を1NのKOHに37℃で24時間溶解し、漏出したエバンスブルー色素を、アセトンと0.2Mリン酸との混合液(13:5)を用いて抽出した。色素の量を620nmで光学的に測定した。
【0043】
血清解析
PCA反応後、血液サンプルを腹大動脈から採取し、直ちに遠心分離により血清を分離した。血清ヒスタミンおよび8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)のレベルを、それぞれヒスタミンELISAキット(塩野義製薬、大阪、日本)および8−OHdG ELISAキット(日研ザイル、静岡、日本)を用いて測定した。
【0044】
腹腔滲出細胞の調製
5mlのCa2+不含Tyrodeバッファーを腹腔内に注射した後に、腹部を穏やかに2分間マッサージした。その後、21Gの注射針とシリンジとを用いて腹水を回収した。非特許文献13の方法に従って、肥満細胞を冨化した腹腔滲出細胞を調製した。回収した腹水に2mlの31.5%BSAを添加し、300×gで10分間遠心分離を行った後、上層と中間層とを捨て、底に形成した細胞ペレットを解析用に保存した。
【0045】
肥満細胞数の計測
腹腔滲出細胞における肥満細胞数を測定するために、肥満細胞をトルイジンブルー(Sigma社)で3分間染色した。PBS(−)で3回洗浄した後、顕微鏡BZ−8000(キーエンス、大阪、日本)下で細胞数を計数した。
【0046】
定量的RT−PCR
total RNAをmiRNeasy mini kit(Qiagen社、Hilden、独国)を用いて単離し、PrimeScript RT reagent kit(宝酒造、大津、日本)を用いてcDNAをtotal RNAから合成した。定量的RT−PCR(qRT−PCR)は、SYBR Premix Ex Taq II Kit(宝酒造)と以下のプライマーセット:
FcεRIα-センス鎖:5’-CCATAGCAGGAAAGGGTCAC-3’
FcεRIα-アンチセンス鎖:5’-CGATGGTCACTGGAAGGTCT-3’;
TNFα-センス鎖:5’-AAGCCTGTAGCCCACGTCGTA-3’
TNFα-アンチセンス鎖:5’-GGCACCACTAGTTGGTTGTCTTTG-3’;
CD44-センス鎖:5’-TTTAACCTATATGCAGCAAGCCACT-3’
CD44-アンチセンス鎖:5’-CAGAATCATCACCACTATGGCAAG-3’;
ICAM1-センス鎖:5’-CAATTCACACTGAATGCCAGCTC-3’
ICAM1-アンチセンス鎖:5’-CAAGCAGTCCGTCTCGTCCA-3’;
β-アクチン-センス鎖:5’-CACCACACCTTCTACAATGAGCTG-3’
β-アクチン-アンチセンス鎖:5’-CACAGCTTCTCTTTGATGTCACGC-3’
を用いて、サーマルサイクラーDice(宝酒造、大津、日本)で行った。β‐アクチンを内部対照として使用した。PCR反応は、95℃で30秒間の最初の変性段階と、95℃−5秒間および60℃−30秒間の40サイクルからなる。
【0047】
ウエスタンブロット解析
肥満細胞を冨化した腹腔滲出細胞ペレットをコンプリートプロテアーゼインヒビターカクテルを含有するRIPA溶解バッファーに再懸濁した。蛋白質濃度をDCプロテインアッセイキット(BioRad社、Hercules、米国)を用いて測定した。細胞溶解液をドデシル硫酸ナトリウム‐ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に付し、PVDF膜(Du Pont社、Boston、米国)に電気的にブロッティングした。5%の脱脂乳を含むPBS−Tween20(PBS−T)において1時間ブロッキングを行った後、膜を一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。その後、膜をPBS−Tで3回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識二次抗体とともに室温で1時間インキュベートした。PBS−Tで3回洗浄した後に、ECL chemiluminescence kitおよびLAS−4000ルミノ・イメージアナライザー(富士フィルム、東京、日本)を用いて蛋白質を検出した。全てのデータはStudentのT検定により解析した。差は、p<0.05の場合に有意であるとした。
【0048】
<結果>
水素水の経口摂取は、受身皮下アナフィラキシー反応を改善する。
水素水の経口摂取が即時型アレルギー反応に影響を及ぼし得るかどうかを調べるために、動物モデルとしてPCA反応を使用した。ICRマウスを水素水または対照水のいずれかで2〜4週間飼育し、その後にPCA試験に付した。実験期間を通して2つの群の間に、体重、飼料消費量および水分摂取量に関して有意な差はなかった。図1Aに示すように、対照水で処置されたマウスと比較すると、水素水で2週間および4週間処置したマウスでは血液循環から皮膚へのエバンスブルー色素の漏出がほぼ完全に抑制されていた。IgEのみ(DNP−BSAおよびエバンスブルー色素なし)を注射したマウスも対照として示す。即時型アレルギー反応における水素水の阻害効果を確認するために、皮膚から抽出したエバンスブルー色素を測定した(図1B)。水素水で2〜4週間マウスを処置すると、漏出する色素の量が、対照水で処置したマウスの約40%にまで減少した(それぞれp<0.05およびp<0.01)。これらの結果は、水素水の経口摂取がI型アレルギー反応を改善することを示すものである。
【0049】
水素水の経口摂取は、血清ヒスタミンレベルを減少させるが、8−OHdGレベルは減少させない。
血清ヒスタミンレベルを肥満細胞活性化および急性全身アナフィラキシーのマーカーとして測定した。PCA試験の結果(図1)と同じく、血清ヒスタミンレベルが、対照水で処置したマウスと比較して、水素水で4週間処置したマウスにおいて顕著に減少した(p<0.01)(図2A)。水素水で2週間処置した場合には、ヒスタミンレベルは穏やかな減少を示したが、この減少は統計学的に有意ではなかった。水素がヒドロキシラジカルを除去できることが報告されているので(非特許文献2)、8−OHdG(酸化的DNA損傷の感受性マーカー)の血清レベルにおける、水素水での処置の効果の評価を行った。しかしながら、水素水または対照水で2または4週間処置したマウスの間で血清レベルにおける差は見られなかった(図2B)。これらの血清分析は、水素水の経口摂取は急性の全身アナフィラキシーを軽減させるが、全身性の酸化ストレスには直接影響を及ぼさないことを示唆するものである。
【0050】
水素水の経口摂取は、腹腔滲出細胞における肥満細胞数には影響を及ぼさない。
水素水の経口摂取によるI型アレルギー反応の阻害が、肥満細胞の総数の減少によって起こっている可能性もありうる。従って、水素水か対照水のどちらかを4週間自由に摂取させたマウスから得られた腹腔滲出細胞における肥満細胞の数を計測した。図3Aおよび3Bに示すように、肥満細胞数は、水素水処置マウスおよび対照水処置マウスに由来する腹腔滲出細胞との間で差を示さなかった。これらの結果は、水素水の経口摂取が腹腔滲出細胞における肥満細胞数に影響を及ぼさないことを示唆するものである。
【0051】
水素水の経口摂取は、肥満細胞におけるTNFαの発現をmRNAレベルと蛋白質レベルの両方で減少させる。
腹腔滲出細胞における肥満細胞数は水素水処置により変化しなかったので、水素水処置が肥満細胞におけるアレルギー関連遺伝子の発現を変化させるかどうかを調べた。水素水または対照水のいずれかを4週間自由摂取させた後に、1群あたり6匹のマウスからプールした腹腔滲出細胞からtotal RNAを単離し、選択した遺伝子(FcεRIα、CD44、TNFαおよびICAM1)に関してqRT−PCRを行った。図4Aに示すように、水素水処置マウスにおけるTNFα mRNAの発現が、対照水処置マウス(p<0.01)におけるよりも有意に低下し、一方、FcεRIα、CD44およびICAM1に関しては大きな差は観察されなかった。同様の結果が、別に行った2つの独立した実験においても得られた。その後、細胞全溶解液を各個体の腹腔滲出細胞から調製し、ウエスタンブロット解析をFcεRIα、CD44、TNFαおよびICAM1蛋白質に関して実施した。個々の動物間で多少のばらつきが観察されたが(図4B)、定量性デンシトメトリック解析では、水素水を摂取したマウスにおけるTNFαの発現レベルが、対照水を摂取させたマウスと比較して有意に減少し(p<0.05)(図4C)、これはqRT−PCRの結果と一致した(図4A)。しかしながら、他の蛋白質に関しては2群間で大きな差は見られなかった。これらの全てのデータを考慮すると、水素水の経口摂取が肥満細胞におけるTNFαの発現をmRNAレベルおよび蛋白質レベルの両方で減少させるものと考えられる。
【0052】
<考察>
今回、水素水の経口摂取がI型アレルギーを改善できることを、即時型アレルギー反応のin vivo実験モデルとしてのPCAを用いて実証した。気体形態にある水素や水素水の有益な効果が、種々の酸化ストレス関連疾患、例えば脳梗塞、心筋梗塞およびパーキンソン病に関して報告されているが(非特許文献2〜11)、今回得られた結果は、アレルギー疾患における水素の予防効果を初めて実証するものである。
【0053】
活性酸素種(ROS:reactive oxygen species)、例えばスーパーオキサイド、過酸化水素およびヒドロキシルラジカルは、核酸、蛋白質および脂質への損傷を引き起こし、これらは細胞機能障害をもたらすものである。これらのうち、低レベルのスーパーオキサイドや過酸化水素は細胞の情報伝達を制御し、正常な細胞の機能において重要な役割を果たすが、一方、ヒドロキシルラジカルは極めて毒性であり、上記のような生理学的機能は知られていない。in vitro試験において、水素はヒドロキシルラジカルを減少させるが、スーパーオキサイドや過酸化水素は減少させない(非特許文献2)。水素のこのような選択的な捕捉特性は、他の非特異的抗酸化物質、例えばビタミンCと比べて有利なものであると考えられる。しかしながら、水素水がマウスの脳切片においてスーパーオキサイドの形成を妨げることが最近報告されていることから(非特許文献14)、水素は、in vivoの一定の条件下でスーパーオキサイドとヒドロキシルラジカルの両方を減少させ得るものと考えることができる。ROSに対する水素の捕捉効果は、細胞や組織の状況によって異なるのかもしれない。
【0054】
即時型アレルギー反応において、受容体に結合したIgEと抗原との架橋による肥満細胞活性化は、ROS、例えばスーパーオキサイドおよび過酸化水素の産生を誘導する。NADPHオキシダーゼにより起こると考えられるROSの産生、およびチロシンキナーゼおよびホスファチジルイノシトール‐3−キナーゼの活性化は、脱顆粒、サイトカイン産生およびロイコトリエン分泌を含む肥満細胞応答の制御において重要な役割を果たしている(非特許文献15)。従って、水素が誘導するPCA反応の減弱(図1)および血清ヒスタミンレベルの抑制(図2)は、細胞内ROSレベルの減少によって引き起こされるであろう、肥満細胞における脱顆粒の阻害によるものであると考えられる。
【0055】
水素水処置マウスの肥満細胞において起こっている分子レベルの事象を理解するべく、肥満細胞を冨化した腹腔滲出細胞を調製し、分析した。水素は容易に蒸発するが、調製手順が迅速且つ簡単なため、単離した腹腔滲出細胞はin vivoの条件を反映しているものと思われる。腹腔滲出細胞のトルイジンブルー染色により、肥満細胞数は水素水摂取マウスと対照水摂取マウスの間で相違しないことが示された(図3)。その後、アレルギー関連遺伝子(FcεRIα、CD44、TNFαおよびICAM1)の腹腔滲出細胞における発現レベルを調べたが、mRNAレベルおよび蛋白質レベルの両方において、TNFαの発現レベルが、対照水を摂取させたマウスと比較して水素水を摂取したマウスにおいて有意に減少し、他の遺伝子の発現レベルは変わらなかった(図4)。肥満細胞の活性化により、予め蓄えられていたTNFαが急速に放出され、引き続いて大量のTNFαが合成され持続的に放出される(非特許文献16)。従って、水素による前処置は、顆粒中に予め蓄えられるTNFαのレベルを減少させることができ、そしておそらくは抗原チャレンジに応答したTNFαの新規合成を阻害することもでき、これらがアレルギー反応の軽減に寄与するものであると考えられる。最近、過酸化水素がp38およびストレス活性化プロテインキナーゼの活性化を介して、マクロファージ細胞におけるTNFαの産生を誘導することが報告された(非特許文献17)。水素は細胞内ROSレベルの減少を介してTNFαの発現を阻害する可能性が高いのかもしれない。本発明者等の知る限りでは、これが、水素処置によって生じる遺伝子発現変化を実証した最初の報告である。
【0056】
本発明者等の今回の発明は、水素水の経口摂取がI型アレルギー反応において予防効果を有すること、およびヒスタミン放出およびTNFαの発現の抑制が上記反応の阻害作用を仲介することを示すものである。
【0057】
<図面の説明>
図1:ICRマウスでのPCA反応における水素水経口摂取の効果
ICRマウスに、水素水または対照水を2または4週間自由に摂取させた。その後、抗DNP−IgE(10μg)を背部の皮膚2箇所にそれぞれ注射した。24時間後、1μg/μlのDNP−BSAおよび1%のエバンスブルー色素を含む200μlのPBSを尾静脈から静脈内に注射した。(A)1時間後、マウスを屠殺し、背面の皮膚を剥がして撮影した。示した写真は、3つの独立した実験(それぞれ1群あたり6匹のマウスを含む)を表すものである。(B)写真を撮った後、抗DNP−IgEを注射した皮膚領域(1cm×1cm)を採り、1NのKOHに溶解し、その中のエバンスブルー色素の量を光学的に測定した。PCA反応の阻害は、対照水摂取マウスにおけるエバンスブルー含有量に対してのパーセントとして表される。値は1群6匹の平均±SDである。アスタリスクは統計学的に有意であることを示す(p<0.05、**p<0.01)。対照:IgEは注射したが、DNP−BSAおよびエバンスブルー色素は注射していないマウス。
【0058】
図2:ICRマウスでの血清ヒスタミンおよび8−OHdGレベルにおける水素水経口摂取の効果
水素水または対照水を2または4週間自由に摂取させた後に、ICRマウスの皮下に抗DNP−IgEを注射し、引き続いて24時間後にDNP−BSAおよびエバンスブルー色素の静脈注射を行った。1時間後、マウスを屠殺し、腹大動脈から血液サンプルを採取し、遠心分離により血清を分離した。血清ヒスタミンレベル(A)および血清8−OHdGレベル(B)を市販のELISAキットを用いて測定した。値は1群6匹の平均±SDである。アスタリスクは統計学的に有意であることを示す(p<0.01、N.S.:有意性なし)。
【0059】
図3:ICRマウスから得られた腹腔滲出細胞中の肥満細胞数における水素水経口摂取の効果
ICRマウスに、水素水または対照水のいずれかを4週間自由に摂取させた。その後、5mlのCa2+不含Tyrodeバッファーを腹腔内に注射し、腹部を穏やかにマッサージした。腹水を回収した後、肥満細胞を冨化した腹腔滲出細胞を31.5%BSA(比重1.07)−密度勾配遠心法によって調製した。腹腔滲出細胞をトルイジンブルーで3分間染色して、写真を撮り(A)、そして肥満細胞数を顕微鏡下で計測した(B)。値は1群6匹の平均±SDである。
【0060】
図4:ICRマウスから得られた肥満細胞におけるアレルギー関連遺伝子の発現における水素水経口摂取の効果
水素水または対照水のいずれかを4週間自由に摂取させた後に、Ca2+不含Tyrodeバッファーを腹腔内に注射し、腹部を穏やかにマッサージした。腹水を回収して、31.5%BSA(比重1.07)−密度勾配遠心法に付すことにより、肥満細胞を冨化した腹腔滲出細胞を単離した。(A)total RNAを1群あたり6匹のマウスからプールした腹腔滲出細胞から単離し、アレルギー関連遺伝子(FcεRIα、CD44、TNFαおよびICAM1)および内部参照用遺伝子(β‐アクチン)に関するqRT−PCRに付した。アスタリスクは統計学的に有意であることを示す(**p<0.01)。値は3回の独立したqRT−PCR反応の平均±SDである。(BおよびC)細胞全溶解液を各腹腔滲出細胞から調製し、アレルギー関連蛋白質(FcεRIα、CD44、TNFαおよびICAM1)およびβ‐アクチンに関するウエスタンブロット解析に付し、引き続いて定量性デンシトメトリック解析を行った。値は各群における6匹の動物の平均±SDである。アスタリスクは統計学的に有意であることを示す(p<0.05)。値は1群6匹の平均±SDである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高められた分子状水素濃度を有する水を含む、I型アレルギー反応が関連する疾患または障害の液状治療剤または液状予防剤。
【請求項2】
上記分子状水素濃度が液状治療剤または液状予防剤の全重量を基準として0.05ppm以上である、請求項1記載の液状治療剤または液状予防剤。
【請求項3】
上記I型アレルギー反応が関連する疾患または障害が、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、鼻炎、結膜炎、花粉症または蕁麻疹である、請求項1または2のいずれか1つに記載の液状治療剤または液状予防剤。
【請求項4】
液状治療剤または液状予防剤が飲料の形態にある、請求項1〜3のいずれか1つに記載の液状治療剤または液状予防剤。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公開番号】特開2010−275241(P2010−275241A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130293(P2009−130293)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(307042880)株式会社ブルー・マーキュリー (1)
【出願人】(597112472)財団法人岐阜県研究開発財団 (25)
【Fターム(参考)】