説明

アレルゲン低減化剤、アレルゲン低減化物品及びアレルゲン低減化物品の製造方法

【課題】 物品の外観、触感、難燃性及び摩擦堅牢度を大きく損なうことなく、花粉アレルゲン及びダニアレルゲンの双方を十分に低減できるアレルゲン低減化性能を物品に付与することができるアレルゲン低減化剤、それを用いたアレルゲン低減化物品、及びアレルゲン低減化材の製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明のアレルゲン低減化剤は、ヒドロキシカルボン酸を配位子として有する有機金属化合物又は有機半金属化合物を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダニや花粉等のアレルゲンを低減化することができるアレルゲン低減化剤、並びに、それを用いたアレルゲン低減化材などのアレルゲン低減化物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎など、多くのアレルギー疾患が問題となってきている。その主な原因は、住居内性ダニ類、特に室内塵中に多いチリダニのアレルゲン(Der f1、Der f2)や、主に春季に猛威をふるうスギ花粉アレルゲン(Cry j1、Cry j2)等の多くのアレルゲンが生活空間内に増えてきたことにある。
【0003】
チリダニは死虫であってもアレルゲン性の高い物質を生活空間に供給するので、チリダニを駆除してもアレルギー疾患の根本的な解決には至らない。一方、スギ花粉アレルゲンは、鼻粘膜等に付着すると生体外異物として認識され、抗原抗体反応による炎症を引き起こす。これらに起因するアレルギー疾患の症状軽減或いは新たな感作を防ぐためには、生活空間から完全にアレルゲンを取り除くか、アレルゲンを変性させるなどして不活性化させることが必要となる。
【0004】
このような状況のもと、これまでにもアレルゲンを吸着したり無害化したりするためのアレルゲン低減化剤が種々提案されている。例えば、下記特許文献1には、生皮などのなめしに用いられているタンニン酸を含有する抗アレルゲン剤が開示されている。また、下記特許文献2には、茶抽出物や没食子酸エステルなどを含有する抗アレルゲン組成物が開示されている。更に、下記特許文献3には、アレルゲン低減化成分として芳香族ヒドロキシ化合物などを含有させたアレルゲン低減化繊維が開示されている。また、下記特許文献4には、合成無機物質を主成分とする特定の平均粒子径を有する水不溶性粒子からなるアレルゲン低減化剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平2−16731号公報
【特許文献2】特開平6−279273号公報
【特許文献3】特開2003−96615号公報
【特許文献4】WO2005/014770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アレルゲンを低減化する性能は素材から製品まで多岐にわたる物品で求められている。素材は加工時に、製品では使用時に熱や光を受けることがある。物品が繊維基材や繊維製品である場合は、摩擦や洗濯などにより物理的な力を受けることがある。
【0007】
上記特許文献1〜3に記載のアレルゲン低減化剤は、熱や光を受けると分子構造に起因する変色が起こりやすく耐変色性に劣るものであった。また、アレルゲン低減化剤を付着させる物品が繊維基材や繊維製品であるときには、摩擦堅牢度の低下が大きかった。これらの問題が実使用上において大きな弊害となっていた。
【0008】
一方、特許文献4に記載のアレルゲン低減化剤は、熱や光による変色は低減されているものの、花粉アレルゲンを低減化する効果が十分でないこと、アレルゲン低減化剤を付着させた物品の難燃性が低下する場合があること、アレルゲン低減化剤を付着させる物品が繊維基材や繊維製品であるときには表面の触感や摩擦堅牢度が大きく低下することなどの問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、物品の外観、触感、難燃性及び摩擦堅牢度を大きく損なうことなく、花粉アレルゲン及びダニアレルゲンの双方を十分に低減できるアレルゲン低減化性能を物品に付与することができるアレルゲン低減化剤、それを用いたアレルゲン低減化物品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ヒドロキシカルボン酸を配位子として有する有機金属化合物又は有機半金属化合物が含まれる処理液に繊維基材を浸漬し、高温で加熱乾燥して得られたものが、ダニ及び花粉アレルゲンの双方に対して優れたアレルゲン低減化性能を発現できるとともに、変色が十分少なく、難燃性や摩擦堅牢度の低下が十分小さいことを見出した。
【0011】
上述したように、上記特許文献4に開示されているアルミナゾルなどの表面が正に帯電した合成無機微粒子を付着させた繊維基材は、表面のごわつき感があり、難燃性の低下が見られる場合があった。これに対して、上記有機金属化合物又は有機半金属化合物と、上記の合成無機微粒子とを併用した場合、処理した繊維基材が、同量の合成無機微粒子を単独で用いたときと比較して、難燃性の低下が少なく、かつ、繊維基材の表面のごわつき感も少なくなることを見出した。
【0012】
また本発明者らは、物品に付着させたアレルゲン低減化剤の摩擦耐久性を向上させるためにバインダーの使用を検討したところ、特許文献4に開示されているアルミナゾルなどの粒子表面が正に帯電した合成無機微粒子とバインダーとは相溶性が低く、両者を混合すると処理液中に沈殿が生じ対象物にアレルゲン低減化剤の付着処理ができないことが分かった。そこで、本発明者らが更に検討を行ったところ、上記有機金属化合物又は有機半金属化合物と、上記合成無機微粒子とを併用することにより、処理液中での上記合成無機微粒子とバインダーの相溶性が向上することを見出した。
【0013】
そして、本発明者らは、以上の知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、ヒドロキシカルボン酸を配位子として有する有機金属化合物又は有機半金属化合物を含有するアレルゲン低減化剤を提供する。
【0015】
本発明のアレルゲン低減化剤によれば、物品の外観、触感、難燃性及び摩擦堅牢度を大きく損なうことなく、花粉アレルゲン及びダニアレルゲンの双方を十分に低減できるアレルゲン低減化性能を物品に付与することができる。特に物品が繊維基材又は繊維製品である場合、その摩擦堅牢度の低下を十分抑えることができる。
【0016】
本発明のアレルゲン低減化剤は、粒子表面が正に帯電した合成無機微粒子を更に含むことができる。
【0017】
従来、粒子表面が正に帯電した合成無機微粒子とバインダーとは相溶性が低く、両者を混合すると処理液中に沈殿が生じ、対象物を処理することができなかったが、上記本発明に係る有機金属化合物又は有機半金属化合物と、合成無機微粒子とを併用した上記のアレルゲン低減化剤によれば、バインダーと混合しても沈殿を生じにくいため、バインダーを併用した処理液の作製が可能となる。このような処理液で処理された物品においては、アレルゲン低減化剤の耐久性を更に向上させることができる。特に物品が繊維基材又は繊維製品である場合、摩擦堅牢度の低下を小さくすることができ、洗濯によるアレルゲン低減化性能の低下も十分抑制することができる。
【0018】
本発明はまた、アレルゲン低減化剤を有しアレルゲン低減化能を有する物品であって、物品に、本発明のアレルゲン低減化剤を付着させてなるアレルゲン低減化物品を提供する。
【0019】
本発明のアレルゲン低減化物品は、本発明のアレルゲン低減化剤を有することにより、花粉アレルゲン及びダニアレルゲンの双方を十分に低減できるアレルゲン低減化性能を有しつつ、物品が本来有している外観、触感、難燃性及び摩擦堅牢度については十分維持されたものになり得る。
【0020】
本発明はまた、物品に、ヒドロキシカルボン酸を配位子として有する有機金属化合物又は有機半金属化合物、粒子表面が正に帯電した合成無機微粒子、及びバインダーを含む液状組成物を接触させる、アレルゲン低減化物品の製造方法を提供する。
【0021】
従来、粒子表面が正に帯電した合成無機微粒子とバインダーとは相溶性が低く、両者を混合すると処理液中に沈殿が生じ、対象物を処理することができなかったが、上記本発明に係る有機金属化合物又は有機半金属化合物と合成無機微粒子とを併用することで、バインダーを混合しても沈殿を生じにくくすることができ、バインダーを併用した処理液の作製が可能となる。したがって、物品に、上記液状組成物を接触させることにより、物品の外観、触感、難燃性及び摩擦堅牢度を大きく損なうことなく、花粉アレルゲン及びダニアレルゲンの双方を十分に低減できるアレルゲン低減化性能を有するアレルゲン低減化物品を得ることができる。特に物品が繊維基材又は繊維製品である場合、摩擦堅牢度の低下が小さく、洗濯によるアレルゲン低減化性能の低下が十分抑制されたアレルゲン低減化繊維材又はアレルゲン低減化繊維製品の実現が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、物品の外観、触感、難燃性及び摩擦堅牢度を大きく損なうことなく、花粉アレルゲン及びダニアレルゲンの双方を十分に低減できるアレルゲン低減化性能を物品に付与することができるアレルゲン低減化剤、それを用いたアレルゲン低減化物品及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のアレルゲン低減化剤は、ヒドロキシカルボン酸を配位子として有する有機金属化合物又は有機半金属化合物を含有することを特徴とするものである。また、本発明のアレルゲン低減化剤は、粒子表面が正に帯電した合成無機微粒子を更に含有することができる。
【0024】
上記有機金属化合物の金属としては、例えば、チタン、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム等が挙げられる。上記有機半金属化合物の半金属としては、例えば、ケイ素等が挙げられる。
【0025】
上記有機金属化合物又は有機半金属化合物の配位子であるヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、及びヒドロキシ酪酸等が挙げられる。なお、ヒドロキシ酪酸は、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、又は4−ヒドロキシ酪酸のいずれであってもよい。
【0026】
上記有機金属化合物又は有機半金属化合物の具体例としては、例えば、乳酸チタン、リンゴ酸チタン、クエン酸チタン、ヒドロキシ酪酸チタン、アンモニウム乳酸チタン、乳酸亜鉛、乳酸アルミニウム、乳酸シラン、乳酸ジルコニウム、アンモニウム乳酸ジルコニウムなどが挙げられる。なお、乳酸チタンとしては、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン(Ti(OH)[OCH(CH)COOH])、テトラキス乳酸チタン(Ti[HOCH(CH)COO])のいずれであってもよい。
【0027】
上記有機金属化合物又は有機半金属化合物は、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、アミン、イミン等の塩基性化合物で中和されていてもよい。
【0028】
本発明のアレルゲン低減化剤は、上記有機金属化合物又は有機半金属化合物を単独で含むものであっても十分なアレルゲン低減化性能を発揮するが、アレルゲンをより低減化できるという観点から、アレルゲン低減化性能を有し、粒子表面が正に帯電した合成無機微粒子を更に含有していることが望ましい。
【0029】
本発明のアレルゲン低減化剤に用いられる合成無機微粒子としては、例えば、アルミナゾル、酸化スズゾル、ジルコニアゾル、酸化セリウムゾル等が挙げられる。合成無機微粒子の平均粒子径は、10〜100nmが好ましく、バインダーとの相溶性の観点から、10〜50nmがより好ましい。本発明のアレルゲン低減化剤における合成無機微粒子の含有量は、上記有機金属化合物又は有機半金属化合物1質量部に対し、合成無機微粒子の固形分で0.1〜10質量部が好ましく、アレルゲン低減化剤を付着させた物品の難燃性と表面の触感の観点から、0.1〜5質量部がより好ましい。なお、本発明において、平均粒子径とは、体積累積50%のメジアン径のことをいい、固形分とは試料を105℃で3時間加熱したときに残存する成分のことをいう。
【0030】
物品に、上記有機金属化合物又は有機半金属化合物と上記合成無機微粒子とを含むアレルゲン低減化剤を付着させて得られるアレルゲン低減化物品は、同量の合成無機微粒子を単独で付着させて得られる物品よりも難燃性低下が抑えられ、且つ、物品が繊維基材又は繊維製品などの場合には表面のごわつき感が抑えられている。
【0031】
従来、上記合成無機微粒子とバインダーとは相溶性が低く併用が困難であった。これに対して、上記有機金属化合物又は有機半金属化合物と、上記合成無機微粒子とを併用することにより、合成無機微粒子とバインダーとの相溶性が向上し、バインダーとの併用が可能となる。したがって、上記有機金属化合物又は有機半金属化合物と、上記合成無機微粒子とを含有する本発明に係るアレルゲン低減化剤によれば、バインダーを併用した処理液の作製が可能となり、このような処理液で処理された物品においては、アレルゲン低減化剤の耐久性を更に向上させることができる。特に物品が繊維基材又は繊維製品である場合、摩擦堅牢度の低下を小さくすることができ、洗濯によるアレルゲン低減化性能の低下も十分抑制することができる。
【0032】
本発明のアレルゲン低減化剤には、必要に応じて、水や有機溶媒などの溶媒、ポリフェノール化合物等従来公知のアレルゲン低減性能を有する成分、分散剤(好ましくは非イオン界面活性剤)、増粘剤、防腐剤、金属酸化物などが添加されていてもよい。
【0033】
溶媒の添加量は、得られるアレルゲン低減化剤の用途によって適宜設定することができ、例えば、上記有機金属化合物又は有機半金属化合物と、上記合成無機微粒子(固形分)との総量1質量部に対し、1〜100質量部という割合が挙げられる。
【0034】
溶媒としては、環境や安全性の観点から、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールや水が好ましい。水を溶媒とした場合、必要に応じて、ホモジナイザー、コロイドミル、ボールミル。サンドグラインダー、超音波分散機等の乳化機や分散機を用いてもよい。また、水を溶媒とした場合、アレルゲン低減化剤のpHは特に限定されないが、剤の安定性の観点から、2〜11であることが好ましく、3〜10であることがより好ましい。
【0035】
本発明のアレルゲン低減化剤は、対象物(例えば、製品や素材などの各種物品)に付着させることで、住環境中のアレルゲン低減化を図ることができる。
【0036】
物品に、本発明のアレルゲン低減化剤を付着させることにより、優れたアレルゲン低減化性能を有するアレルゲン低減化物品を得ることができる。
【0037】
本発明のアレルゲン低減化剤を付着させる物品としては、住環境中の製品が挙げられる。
【0038】
住環境中の製品としては、例えば、壁、天井、カーテン、カーペット、床、畳、家具(ソファー、布張り椅子、テーブルなど)、寝具(ベッド、布団、シーツなど)、車内用品(シート、チャイルドシート、フロアマットなど)、玩具、ぬいぐるみ、衣類、その他繊維製品、空気清浄機や空調機のフィルター等が挙げられる。
【0039】
物品は素材であってもよい。この場合、本発明のアレルゲン低減化剤を、種々の基材に付着させることにより、優れたアレルゲン低減化性能を有するアレルゲン低減化材を得ることができる。
【0040】
基材としては、例えば、繊維、プラスチック、ウレタンフォーム、天然皮革、紙、ガラス、木材、活性炭、セラミック等が挙げられる。繊維としては、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリオレフィン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン等の再生繊維、炭素繊維及びこれらの複合繊維、不織布、フェルト等が挙げられる。
【0041】
基材の形状は、使用形態に応じて適宜選択することができる。アレルゲン低減化材を製造後に適宜加工してもよい。
【0042】
本発明に係るアレルゲン低減化材は、例えば、衣類、壁紙、天井材等の内装材、カーシート、フロアマット等の自動車用内装材、空気清浄機や空調機のフィルター、アレルゲン吸着シート、カーテン、カーペット等のアレルゲン低減用装飾材等の各種部材として、アレルゲン低減が必要とされる空間で利用することができる。
【0043】
アレルゲン低減化剤の物品への付着量は、アレルゲン低減性能や、物品の風合い、外観、難燃性の観点から、上記有機金属化合物又は有機半金属化合物と合成無機微粒子(固形分)との総量が0.01〜20g/mであることが好ましい。
【0044】
アレルゲン低減化剤を物品に付着させる方法としては、本発明のアレルゲン低減化剤を含む液状組成物を調製し、スプレーやコーティング、キスロール、スタンプ等の方法により物品の表面に塗布する方法や、上記液状組成物に物品を浸漬する方法等が挙げられる。これらの方法は、物品の種類、アレルゲン低減化剤の付着量などに応じて適宜選択される。例えば、物品が繊維基材である場合、生地目付200g/mである繊維基材を、上記液状組成物を用いてアレルゲン低減化剤の付着量が基材に対して、0.05〜7.5質量%となる条件で浸漬処理することができる。
【0045】
上記液状組成物は、例えば、以下の方法により調製することができる。
【0046】
まず、上記有機金属化合物又は有機半金属化合物と、水やアルコールなどの溶媒との混合液に、水酸化ナトリウム、アンモニア、アミン化合物等の塩基性化合物で適宜中和処理を施す。その後、混合液に上記合成無機微粒子を添加し、室温で撹拌する。こうして、本発明に係るアレルゲン低減化剤を得る。
【0047】
次に、アレルゲン低減化剤を付着させる物品の種類、付着量、付着させる方法などに応じて、上記で得られたアレルゲン低減化剤を適宜濃縮、或いは水やアルコール等の溶媒で適宜希釈することにより、液状組成物が得られる。
【0048】
液状組成物の溶媒としては、環境や安全性の観点から、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールや水が好ましい。
【0049】
本実施形態の液状組成物には、物品に付着させたアレルゲン低減化剤の耐摩擦性を向上させるために、バインダーを添加することが好ましい。特に物品が繊維基材又は繊維製品である場合、摩擦堅牢度の低下を小さくすることができ、洗濯によるアレルゲン低減化性能の低下も十分抑制することができる。
【0050】
バインダーは従来公知のものを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール、アクリルエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、メチルセルロース、アクリル−スチレン共重合体エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、シリコーンエマルジョン等が挙げられる。
【0051】
バインダーの添加量は、上記有機金属化合物又は有機半金属化合物と、上記合成無機微粒子(固形分)の総量1質量部に対して0.1〜0.5質量部が好ましい。
【0052】
アレルゲン低減化剤を付着させる物品が繊維基材又は繊維製品の場合、液状組成物には繊維加工に用いられる従来公知の成分、例えば、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、柔軟剤、防皺剤等を適宜添加することができる。
【0053】
上記の方法等で物品にアレルゲン低減化剤を付着させた後、物品の種類や付着量に応じて適当な条件で風乾或いは加熱乾燥などの熱処理を施すことができる。加熱乾燥の条件は、例えば、物品が繊維基材又は繊維製品の場合、通常の繊維加工における熱処理条件を適用でき、具体例としては110〜200℃で30秒〜5分間加熱するという条件が挙げられる。
【実施例1】
【0054】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0055】
<アレルゲン低減化材の製造>
以下の実施例及び比較例は、すべて生地目付200g/mのポリエステル100%黒染色布を用いて行った。
【0056】
(実施例1)
乳酸チタン(Ti(OH)[OCH(CH)COOH])10gに水90gを加えてアレルゲン低減化剤を得、更にこれを水で100倍に希釈して処理液を調製した。
【0057】
次に、得られた処理液を用いて、ポリエステル100%黒染色布((株)色染社製)をピックアップ50質量%(アレルゲン低減化剤(固形分)の付着量が布に対して0.1質量%×50質量%=0.05質量%となる条件)となるように浸漬処理した。そして、浸漬処理後の布を120℃で2分間乾燥し、20℃で湿度65%の条件下で一晩放置することにより、アレルゲン低減化材を得た。
【0058】
(実施例2)
乳酸チタン(Ti(OH)[OCH(CH)COOH])10gに水90gを加えてアレルゲン低減化剤を得、更にこれを水で20倍に希釈して処理液を調製した。
【0059】
次に、得られた処理液を用いて、ポリエステル100%黒染色布((株)色染社製)をピックアップ50質量%(アレルゲン低減化剤(固形分)の付着量が布に対して0.5質量%×50質量%=0.25質量%となる条件)となるように浸漬処理した。そして、浸漬処理後の布を120℃で2分間乾燥し、20℃で湿度65%の条件下で一晩放置することにより、アレルゲン低減化材を得た。
【0060】
(実施例3)
乳酸チタン(Ti(OH)[OCH(CH)COOH])10gに水90gを加え、得られた水溶液のpHが8になるまで48質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加し中和処理を施して、アレルゲン低減化剤を得た。なお、中和前の水溶液のpHは2であった。ここで得られたアレルゲン低減化剤を用いて処理液を調製したこと以外は実施例2と同様にして、アレルゲン低減化材を得た。
【0061】
(実施例4)
乳酸チタン(Ti(OH)[OCH(CH)COOH])10gに水90gを加え、得られた水溶液のpHが8になるまで25質量%アンモニア水を添加し中和処理を施して、アレルゲン低減化剤を得た。なお、中和前の水溶液のpHは2であった。ここで得られたアレルゲン低減化剤を用いて処理液を調製したこと以外は実施例2と同様にして、アレルゲン低減化材を得た。
【0062】
(実施例5)
乳酸チタン(Ti(OH)[OCH(CH)COOH])9gに水86gを加え、得られた水溶液のpHが8になるまで25質量%アンモニア水を添加し中和処理を施した。次に、ここにアルミナゾル(日産化学工業(株)製、商品名「アルミナゾル−520」、平均粒子径10〜20nm、アルミナ含有量20質量%)5gを添加して十分に撹拌した。その後、この混合液をホモジナイザーで処理してアレルゲン低減化剤を得た。なお、中和前の水溶液のpHは2であった。ここで得られたアレルゲン低減化剤を用いて処理液を調製したこと以外は実施例2と同様にして、アレルゲン低減化材を得た。
【0063】
(実施例6)
乳酸チタン(Ti(OH)[OCH(CH)COOH])5gに水70gを加え、得られた水溶液のpHが8になるまで25質量%アンモニア水を添加し中和処理を施した。次に、ここにアルミナゾル(日産化学工業(株)製、商品名「アルミナゾル−520」、平均粒子径10〜20nm、アルミナ含有量20質量%)25gを添加して十分に撹拌した。その後、この混合液をホモジナイザーで処理してアレルゲン低減化剤を得た。なお、中和前の水溶液のpHは2であった。ここで得られたアレルゲン低減化剤を用いて処理液を調製したこと以外は実施例2と同様にして、アレルゲン低減化材を得た。
【0064】
(実施例7)
乳酸チタン(Ti(OH)[OCH(CH)COOH])5gに水70gを加え、得られた水溶液のpHが8になるまで25質量%アンモニア水を添加し中和処理を施した。次に、ここにアルミナゾル(日産化学工業(株)製、商品名「アルミナゾル−520」、平均粒子径10〜20nm、アルミナ含有量20質量%)25gを添加して十分に撹拌した。その後、この混合液をホモジナイザーで処理してアレルゲン低減化剤を得た。なお、中和前の水溶液のpHは2であった。
【0065】
次に、得られたアレルゲン低減化剤を処理液として用いて、ポリエステル100%黒染色布((株)色染社製)を、ピックアップ75質量%(アレルゲン低減化剤の付着量が布に対して10質量%×75質量%=7.5質量%となる条件)となるように浸漬処理した。そして、浸漬処理後の布を120℃で2分間乾燥し、20℃で湿度65%の条件下で一晩放置することにより、アレルゲン低減化材を得た。
【0066】
(実施例8)
乳酸チタン(Ti(OH)[OCH(CH)COOH])9gに水90gを加え、得られた水溶液のpHが8になるまで25質量%アンモニア水を添加し中和処理を施した。次に、ここにタンニン酸(ナカライテクス(株)製)1gを添加して十分に撹拌してアレルゲン低減化剤を得た。なお、中和前の水溶液のpHは2であった。ここで得られたアレルゲン低減化剤を用いて処理液を調製したこと以外は実施例2と同様にして、アレルゲン低減化材を得た。
【0067】
(実施例9)
乳酸チタン(Ti(OH)[OCH(CH)COOH])5gに水90gを加え、得られた水溶液のpHが8になるまで25質量%アンモニア水を添加し中和処理を施した。次に、ここにタンニン酸(ナカライテクス(株)製)5gを添加して十分に撹拌してアレルゲン低減化剤を得た。なお、中和前の水溶液のpHは2であった。ここで得られたアレルゲン低減化剤を用いて処理液を調製したこと以外は実施例2と同様にして、アレルゲン低減化材を得た。
【0068】
(実施例10)
乳酸ジルコニウム10gに水90gを加えてアレルゲン低減化剤を得た。ここで得られたアレルゲン低減化剤を用いて処理液を調製したこと以外は実施例2と同様にして、アレルゲン低減化材を得た。
【0069】
(実施例11)
クエン酸アルミニウム(Al[HOC(CHCOO)COO])10gに水90gを加えてアレルゲン低減化剤を得た。ここで得られたアレルゲン低減化剤を用いて処理液を調製したこと以外は実施例2と同様にして、アレルゲン低減化材を得た。
【0070】
(実施例12)
乳酸チタン(Ti(OH)[OCH(CH)COOH])5gに水70gを加え、得られた水溶液のpHが8になるまで25質量%アンモニア水を添加し中和処理を施した。次に、ここにアルミナゾル(日産化学工業(株)製、商品名「アルミナゾル−520」、平均粒子径10〜20nm、アルミナ含有量20質量%)25gを添加して十分に撹拌した。その後、この混合液をホモジナイザーで処理してアレルゲン低減化剤を得た。なお、中和前の水溶液のpHは2であった。
【0071】
得られたアレルゲン低減化剤を水で希釈し、アクリル系バインダー(日華化学(株)製、商品名「カセゾールARS−2」、固形分60質量%)を添加し、アレルゲン低減化剤(固形分)を0.5質量%、バインダー(固形分)を0.05質量%含有する処理液を調製した。この処理液に、ポリエステル100%黒染色布((株)色染社製)を、ピックアップ50質量%(アレルゲン低減化剤(固形分)の付着量が布に対して0.5質量%×50質量%=0.25質量%、バインダー(固形分)の付着量が布に対して0.05質量%×50質量%=0.025質量%となる条件)となるように浸漬処理した。そして、浸漬処理後の布を120℃で2分間乾燥し、20℃で湿度65%の条件下で一晩放置することにより、アレルゲン低減化材を得た。
【0072】
(実施例13)
乳酸チタン(Ti(OH)[OCH(CH)COOH])5gに水70gを加え、得られた水溶液のpHが8になるまで25質量%アンモニア水を添加し中和処理を施した。次に、ここにアルミナゾル(日産化学工業(株)製、商品名「アルミナゾル−520」、平均粒子径10〜20nm、アルミナ含有量20質量%)25gを添加して十分に撹拌した。その後、この混合液をホモジナイザーで処理してアレルゲン低減化剤を得た。なお、中和前の水溶液のpHは2であった。ここで得られたアレルゲン低減化剤と、バインダーとしてアクリル系バインダー(日華化学(株)製、商品名「カセゾールUM−70」、固形分30質量%)を用いたこと以外は実施例12と同様にして、アレルゲン低減化材を得た。
【0073】
(実施例14)
乳酸チタン(Ti(OH)[OCH(CH)COOH])5gに水70gを加え、得られた水溶液のpHが8になるまで25質量%アンモニア水を添加し中和処理を施した。次に、ここにアルミナゾル(日産化学工業(株)製、商品名「アルミナゾル−520」、平均粒子径10〜20nm、アルミナ含有量20質量%)25gを添加して十分に撹拌した。その後、この混合液をホモジナイザーで処理してアレルゲン低減化剤を得た。なお、中和前の水溶液のpHは2であった。ここで得られたアレルゲン低減化剤と、バインダーとしてシリコン系バインダー(日華化学(株)製、商品名「ネオステッカーSI」、固形分40質量%)を用いたこと以外は実施例12と同様にして、アレルゲン低減化材を得た。
【0074】
(実施例15)
乳酸チタン(Ti(OH)[OCH(CH)COOH])5gに水70gを加え、得られた水溶液のpHが8になるまで25質量%アンモニア水を添加し中和処理を施した。次に、ここにアルミナゾル(日産化学工業(株)製、商品名「アルミナゾル−520」、平均粒子径10〜20nm、アルミナ含有量20質量%)25gを添加して十分に撹拌した。その後、この混合液をホモジナイザーで処理してアレルゲン低減化剤を得た。なお、中和前の水溶液のpHは2であった。
【0075】
得られたアレルゲン低減化剤を水で希釈し、アクリル系バインダー(日華化学(株)製、商品名「カセゾールARS−2」、固形分60質量%)を添加し、アレルゲン低減化剤(固形分)を0.5質量%、バインダー(固形分)を0.25質量%含有する処理液を調製した。この処理液に、ポリエステル100%黒染色布((株)色染社製)を、ピックアップ50質量%(アレルゲン低減化剤(固形分)の付着量が布に対して0.5質量%×50質量%=0.25質量%、バインダー(固形分)の付着量が布に対して0.25質量%×50質量%=0.125質量%となる条件)となるように浸漬処理した。そして、浸漬処理後の布を120℃で2分間乾燥し、20℃で湿度65%の条件下で一晩放置することにより、アレルゲン低減化材を得た。
【0076】
(比較例1)
テトライソプロポキシチタン10gにイソプロピルアルコール90gを加えて分散液を得た。この分散液を用いて処理液を調製したこと以外は実施例2と同様にして、アレルゲン低減化材を得た。
【0077】
(比較例2)
テトラエトキシシラン10gにイソプロピルアルコール90gを加えて分散液を得た。この分散液を用いて処理液を調製したこと以外は実施例2と同様にして、アレルゲン低減化材を得た。
【0078】
(比較例3)
アルミナゾル(日産化学工業(株)製、商品名「アルミナゾル−520」、平均粒子径10〜20nm、アルミナ含有量20質量%)50gに水50gを加えて分散液を得た。この分散液を用いて処理液を調製したこと以外は実施例2と同様にして、アレルゲン低減化材を得た。
【0079】
(比較例4)
アルミナゾル(日産化学工業(株)製、商品名「アルミナゾル−520」、平均粒子径10〜20nm、アルミナ含有量20質量%)25gに水75gを加えて分散液を得た。この分散液を用いて処理液を調製したこと以外は実施例2と同様にして、アレルゲン低減化材を得た。
【0080】
(比較例5)
タンニン酸(ナカライテクス(株)製)10gに水90gを加えて分散液を得た。この分散液を用いて処理液を調製したこと以外は実施例2と同様にして、アレルゲン低減化材を得た。
【0081】
(比較例6)
アルミナゾル(日産化学工業(株)製、商品名「アルミナゾル−520」、平均粒子径10〜20nm、アルミナ含有量20質量%)50gに水50gを加えて分散液を得た。この分散液を水で希釈し、アクリル系バインダー(日華化学(株)製、商品名「カセゾールARS−2」、固形分60質量%)を添加し、アルミナゾル(固形分)を0.5質量%、バインダー(固形分)を0.05質量%含有する処理液を調製した。しかし、処理液に沈殿物が生じ、ポリエステル100%黒染色布((株)色染社製)を処理できなかった。
【0082】
(比較例7)
アルミナゾル(日産化学工業(株)製、商品名「アルミナゾル−520」、平均粒子径10〜20nm、アルミナ含有量20質量%)50gに水50gを加えて分散液を得た。この分散液を水で希釈し、ウレタン系バインダー(日華化学(株)製、商品名「カセゾールUM−70」、固形分30質量%)を添加し、アルミナゾル(固形分)を0.5質量%、バインダー(固形分)を0.05質量%含有する処理液を調製した。しかし、処理液に沈殿物が生じ、ポリエステル100%黒染色布((株)色染社製)を処理できなかった。
【0083】
(比較例8)
アルミナゾル(日産化学工業(株)製、商品名「アルミナゾル−520」、平均粒子径10〜20nm、アルミナ含有量20質量%)50gに水50gを加えて分散液を得た。この分散液を水で希釈し、シリコン系バインダー(日華化学(株)製、商品名「ネオステッカーSI」、固形分40質量%)を添加し、アルミナゾル(固形分)を0.5質量%、バインダー(固形分)を0.05質量%含有する処理液を調製した。しかし、処理液に沈殿物が生じ、ポリエステル100%黒染色布((株)色染社製)を処理できなかった。
【0084】
[アレルゲン低減化材の評価]
上記実施例1〜11及び比較例1〜5で得られたアレルゲン低減化材について、アレルゲン低減化率及び外観、摩擦堅牢度、表面の感触、難燃性を以下の方法により評価した。結果を表1に示す。また、上記実施例12〜15で得られたアレルゲン低減化材の洗濯耐久性を以下の方法により評価した。結果を表2に示す。
【0085】
(ダニアレルゲン低減化率)
実施例及び比較例で得られたアレルゲン低減化材を5cm×5cmに切り取ったものを試料とした。この試料を試験管に投入し、標準ダニアレルゲン懸濁液(Der f2濃度=50ng/ml)10mlを加え、試料とダニアレルゲンを接触させた。4時間後に試験管から液を搾り出し、遠心分離を行った。得られた試料中のダニアレルゲン濃度をELISAキット(シバヤギ社製)にて測定した。また、未加工のポリエステル100%黒染色布((株)色染社製)を5cm×5cmに切り取ったものを空試験試料とし、上記と同様の操作を行って空試験試料中のダニアレルゲン濃度を測定した。
【0086】
上記で測定された結果からダニアレルゲン低減化率を下記の式(1)により算出した。式(1)中、Aは空試験試料中のダニアレルゲン濃度(ng/ml)、Bは試料中のダニアレルゲン濃度(ng/ml)を表す。
ダニアレルゲン低減化率(%)=[(A−B)/A]×100 …(1)
【0087】
(スギ花粉アレルゲン低減化率)
実施例及び比較例で得られたアレルゲン低減化材を5cm×5cmに切り取ったものを試料とした。この試料を試験管に投入し、標準スギ花粉アレルゲン懸濁液(Cry j1濃度=10ng/ml)10mlを加え、試料とスギ花粉アレルゲンを接触させた。4時間後に試験管から液を搾り出し、遠心分離を行った。得られた試料中のスギ花粉アレルゲン濃度をELISAキット(シバヤギ社製)にて測定した。また、未加工のポリエステル100%黒染色布((株)色染社製)を5cm×5cmに切り取ったものを空試験試料とし、上記と同様の操作を行って空試験試料中のスギ花粉アレルゲン濃度を測定した。
【0088】
上記で測定された結果からスギ花粉アレルゲン低減化率を下記の式(2)により算出した。式(2)中、Cは空試験試料中のスギ花粉アレルゲン濃度(ng/ml)、Dは試料中のスギ花粉アレルゲン濃度(ng/ml)を表す。
スギ花粉アレルゲン低減化率(%)=[(D−C)/D]×100 …(2)
【0089】
(外観)
実施例及び比較例で得られたアレルゲン低減化材の外観を目視にて観察し、下記基準に基づいて3段階で判定した。
○:未加工のポリエステル100%黒染色布と同等の色調である。
△:素材表面が全体にやや白っぽくなったり、やや変色しているように見える。
×:素材表面に白い斑が見られる、又は、変色が見られる。
【0090】
(表面の触感)
実施例及び比較例で得られたアレルゲン低減化材の表面の触感を下記基準に基づいて3段階で判定した。
○:未加工のポリエステル100%黒染色布と同等の触感である。
△:未加工のポリエステル100%黒染色布よりも、ややごわつき感が感じられる。
×:未加工のポリエステル100%黒染色布よりも、ごわつき感が感じられる。
【0091】
(摩擦堅牢度)
実施例及び比較例で得られたアレルゲン低減化材について、JIS L0849(2004)(II型)にしたがって、乾燥及び湿潤試験を行い、摩擦用白綿布の汚染度と汚染用グレースケールとの比較に基づいて級数を判定した。
【0092】
(難燃性)
実施例及び比較例で得られたアレルゲン低減化材を、FMVSS−302法にしたがった方法で試験し、下記基準に基づいて難燃性を3段階で判定した。
○:A標線前又はA標線から127mmまでに自己消火
△:A標線から127mmとB標線との間で自己消火
×:B標線までに自己消火しない
【0093】
(洗濯耐久性)
洗濯方法は、JIS L 0217(1995)付表1の103法に従った。すなわち、洗剤40mLを使用し、浴比1:30として、40℃で5分間洗濯したのち、排水及び脱水し、2分間の濯ぎ洗いを2回繰り返した。この工程を洗濯1回とし、10回繰り返して洗濯10回とした(L=10)。次いで、風乾を行った後、20℃、65%RHの条件下に24時間放置し、アレルゲン低減化材の調湿を行った。その後、アレルゲン低減化率を上記の方法により測定した。
【0094】
【表1】



【0095】
【表2】



【0096】
表1に示されるように、実施例1〜11のアレルゲン低減化材は、基材であるポリエステル100%黒染色布の外観や表面の触感、摩擦堅牢度、難燃性を大きく損なうことなく優れたアレルゲン低減化性能が得られることが確認された。
【0097】
一方、比較例1〜5のアレルゲン低減化材は、アレルゲン低減化性能、外観、摩擦堅牢度、難燃性をすべて満足させることができなかった。アルミナゾルの付着量が同じである実施例6と比較例4とを比較すると、実施例6のアレルゲン低減化材は、表面の触感、摩擦堅牢度、難燃性は大きく損なわれていないのに対し、比較例4では、表面の触感、摩擦堅牢度、難燃性を満足していない。
【0098】
表3に示されるように、比較例6〜8では処理浴に沈殿物が生じてポリエステル100%黒染色布を処理できなかったのに対し、実施例12〜15では各種のバインダーの添加が可能となり、洗濯耐久性がより優れたアレルゲン低減化材が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明によれば、物品の外観、触感、難燃性及び摩擦堅牢度を大きく損なうことなく、花粉アレルゲン及びダニアレルゲンの双方を十分に低減できるアレルゲン低減化性能を物品に付与することができるアレルゲン低減化剤を提供することができる。
【0100】
また、本発明によれば、本発明のアレルゲン低減化剤を用いて、花粉アレルゲン及びダニアレルゲンの双方を十分に低減できるアレルゲン低減化性能を有しつつ、物品が本来有している外観、触感、難燃性及び摩擦堅牢度については十分維持されたアレルゲン低減化物品を提供することができる。物品が繊維基材又は繊維製品である場合、摩擦堅牢度が十分維持され、なおかつ、洗濯によってアレルゲン低減化性能が低下しにくいアレルゲン低減化繊維材又は繊維製品の実現が可能となる。
【0101】
従来、粒子表面が正に帯電した合成無機微粒子とバインダーとは相溶性が低く、両者を混合すると処理液中に沈殿が生じ、対象物を処理することができなかったが、ヒドロキシカルボン酸を配位子として有する有機金属化合物又は有機半金属化合物と、合成無機微粒子とを併用した本発明に係るアレルゲン低減化剤によれば、バインダーと混合しても沈殿を生じにくいため、バインダーを併用した処理液の作製が可能となる。このような処理液で処理された物品においては、アレルゲン低減化剤の耐久性を更に向上させることができる。特に物品が繊維基材又は繊維製品である場合、摩擦堅牢度の低下を小さくすることができ、洗濯によるアレルゲン低減化性能の低下も十分抑制することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシカルボン酸を配位子として有する有機金属化合物又は有機半金属化合物を含有する、アレルゲン低減化剤。
【請求項2】
粒子表面が正に帯電した合成無機微粒子を更に含有する、請求項1に記載のアレルゲン低減化剤。
【請求項3】
アレルゲン低減化剤を有しアレルゲン低減化能を有する物品であって、
物品に、請求項1又は2に記載のアレルゲン低減化剤を付着させてなる、アレルゲン低減化物品。
【請求項4】
物品に、ヒドロキシカルボン酸を配位子として有する有機金属化合物又は有機半金属化合物、粒子表面が正に帯電した合成無機微粒子、及びバインダーを含む液状組成物を接触させる、アレルゲン低減化物品の製造方法。


【公開番号】特開2012−12522(P2012−12522A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151232(P2010−151232)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】